本発明の実施形態について図1〜図11に基づいて説明すると、以下の通りである。
[媒体加工システムの構成]
図1は、本実施形態に係る媒体加工システム1の構成を示すブロック図である。
図1に示すように、媒体加工システム1は、媒体加工装置2と、媒体加工指示装置3と、加工データ作成装置4とを備えている。
媒体加工装置2は、媒体に対して複数種類の加工を行うことで所望の加工物を得る装置である。媒体加工装置2が行う加工としては、印刷、カット(切断)などが挙げられる。
媒体加工指示装置3は、加工物を得るために必要な加工を指示する装置である。具体的には、媒体加工指示装置3は、加工指示データを媒体加工装置2に与えることによって、媒体加工装置2に対して加工指示データに基づく加工データの加工を指示する。加工データは、後に詳しく説明するが、加工対象となる画像などのデータである。加工指示データは、後に詳しく説明するが、加工データに対して施す加工の内容および手順を示すデータである。
加工データ作成装置4は、上記の加工データを作成する装置であり、例えば、加工データ作成のためのソフトウェアがインストールされたパーソナルコンピュータによって構成されている。このようなソフトウェアとしては、多様な画像処理を行うことができるDTP(Desk Top Publishing)のソフトウェアや、RIP(Raster Image Processor)の処理を行うソフトウェアが挙げられる。特に、RIPソフトウェアとしては、編集画面を提供し、画像を複数貼り付けるといった機能を有することにより自由度の高い画像編集を行うことができるレイアウトウインドウ方式が好ましい。
加工データは、加工の対象となる版のデータであり、かつ加工を規定するためのデータである。版は、カラー(カラー画像)、単色、クリア(クリアコート)、カットなどの加工の最小単位である。例えば、透明な媒体上にカラー画像の発色を良好にするための下地として白を印刷し、その上にカラー画像を印刷し、さらにその上に保護層としてクリアコートを施す場合がある。この場合は、白(単色)の版、カラーの版およびクリアの版が用意される。カットのための加工データ(カッティングデータ)は、カットの形状を規定するデータである。
ここでは、少なくとも1つの版を含む加工の処理単位をジョブと規定する。また、版は、後述する媒体加工指示装置3によって、必要に応じて異なる加工の処理単位であるレイヤーに組み換えられる。また、ジョブは、複数の版を1つのファイルにまとめたものであってもよいし、複数ファイルに格納された版の情報を結合するための情報であってもよい。
〔媒体加工装置の構成〕
媒体加工装置2は、制御部21、プリンタ22、カッタ23およびメモリ24を備えている。
〈制御部〉
制御部21は、プリンタ22およびカッタ23の動作を制御するとともに、メモリ24へのデータの読み書きを制御する。また、制御部21は、媒体加工指示装置3の制御部31と相互に通信することによってデータの授受を行う。制御部21は、これらの動作を行うために、マイクロプロセッサを含んでおり、各種のプログラムを実行する。このプログラムは、プリンタ22およびカッタ23を動作させるためのプログラムや、通信プログラムを含んでいる。
〈プリンタおよびカッタ〉
プリンタ22は、媒体加工装置2の加工機能を実現するための印刷機器であり、媒体に多重印刷を施すことができる。このプリンタ22は、例えば、インクジェットプリンタとして構成されている。また、プリンタ22は、ロール状の媒体を搬送しながら印刷を行うロール機または媒体を固定した状態で印刷を行うフラットベッド機が用いられる。ロール機は、媒体を搬送するので、ヘッドを印刷幅の方向にのみ走査させる。これに対し、フラットベッド機は、媒体を固定するので、ヘッドを搭載したキャリッジを搬送ガイドによって印刷幅の方向にのみ搬送して走査させるだけでなく、搬送ガイド(以降「Yバー」と称する)を走査方向に直交する方向に搬送する。
カッタ23は、媒体をカットする切断機器であり、カッティングプロッタなどで構成されている。
なお、プリンタ22およびカッタ23は、別体に構成されていてもよいが、一体に構成されていてもよい。例えば、プリンタ22にカッティング機能を搭載することによって、プリンタ22およびカッタ23を一体に構成してもよいし、カッタ23にプリンタ機能を搭載することによってプリンタ22およびカッタ23を一体に構成してもよい。
また、媒体加工装置2は、プリンタ22およびカッタ23以外の加工機能を備えていてもよい。例えば、このような機能としては、媒体にラミネート加工を施すラミネート機などが挙げられる。
〈メモリ〉
メモリ24は、プリンタ22およびカッタ23による加工に必要な各種のデータを記憶する書き替え可能な記憶装置である。このメモリ24は、上記のデータとして、装置構成情報および加工指示データを記憶している。このうち、加工指示データは、媒体加工指示装置3から取得されて、制御部21によってメモリ24に書き込まれる。
装置構成情報は、媒体加工装置2において加工処理を実施できるための装置構成についての情報である。この装置構成情報としては、加工機能および詳細仕様が含まれる。
加工機能は、印刷機能や切断機能といった媒体を加工できる機能である。媒体加工装置2の場合、プリンタ22およびカッタ23を備えているので、印刷機能および切断機能を有していることになる。この加工機能は、媒体加工装置2の電源投入時における初期化動作のときに、制御部21によって、プリンタ22およびカッタ23が有効に動作可能であることが確認されると、メモリ24に書き込まれる。
詳細仕様は、加工機能についての詳細な仕様である。印刷機能の場合、詳細仕様は、プリンタタイプ、ヘッド構成、搭載インク種類などである。切断機能の場合、詳細仕様は、通常カット、ハーフカットや点線カットなどである。これらの詳細仕様は、媒体加工装置2の電源投入時における初期化動作のときに、制御部21によって、プリンタ22およびカッタ23が有効に動作可能であることが確認されると、プリンタ22およびカッタ23から取得されてメモリ24に書き込まれる。
プリンタタイプは、前述のロール機およびフラットベッド機等である。
ヘッド構成は、通常のカラー印刷のみが可能な通常ヘッドまたはカラー印刷および特色印刷が可能な特殊ヘッドが挙げられる。特色印刷は、透明媒体や着色媒体に下地を形成するための白や銀などのインクや、前述のクリアコートを形成するためのクリアインクによる印刷である。また、ヘッド構成は、ヘッド配列も含んでいる。ヘッドをヘッド走査方向に沿って一列に配列する通常の直線配列や、複数のヘッドをヘッド走査方向に直交する方向にオフセットして配列するスタガ配列が挙げられる。1つのヘッドに配置されたノズル群を分割して複数のヘッドとして扱うことで同様の構成とすることも、ヘッド構成に含まれる。
搭載インク種類は、前述のカラー印刷用のインクや特色印刷用のインクである。各種のインクは、それぞれのインクを収容するインクタンクの配置位置によって電気的または使用者の設定によってインク種類を特定することができる。
通常カットは、完全に切断する通常の切断である。ハーフカットは、完全に切断するのではなく、切り込みを入れるだけの部分的な切断である。また、点線カットは、完全に切断するのではなく、点線状(ミシン目)の切断である。
加工指示データは、媒体加工指示装置3から加工の指示として与えられるデータである。この加工指示データは、複数の加工の種類(内容)と、各加工を実行する順を含んでいる。または、加工データは、各加工を実行する順にしたがって、加工の種類(内容)を指示する。
〔媒体加工指示装置の構成〕
媒体加工指示装置3は、制御部31、入力部32、表示部33、メモリ34、データベース35および加工指示決定処理部36を備えている。
〈制御部〉
制御部31は、入力部32および表示部33の動作を制御するとともに、メモリ34およびデータベース35へのデータの読み書きを制御する。また、制御部31は、媒体加工装置2の制御部21と相互に通信することによってデータの授受を行う。さらに、制御部31は、加工指示決定処理部36にデータや指示を与えたり、加工指示決定処理部36からのデータに基づいて各種の処理を行ったりする。制御部31は、これらの動作を行うために、マイクロプロセッサを含んでおり、所定のプログラムを実行することにより、上記の制御動作を行う。
〈入力部および表示部〉
入力部32は、媒体加工に必要な各種のデータを入力するために設けられており、タッチパネルや操作ボタンなどの操作手段を有する入力装置である。入力部32には、媒体加工指示装置3への各種の指示操作やデータの入力操作がユーザによって行われる。また、前述の装置構成情報や後述のレイヤーの並び順を入れ替える操作なども入力部32から行われる。
表示部33は、媒体加工指示を作成するための各種の表示情報を表示するために設けられており、液晶表示装置などで構成されている。この表示情報としては、後述のレイヤー構造を示す画像、加工物の完成予想のイメージを表示するプレビュー画像、各種の警告、加工予測時間などが挙げられる。
〈メモリ〉
メモリ34は、前述のプリンタ22およびカッタ23による加工に必要な各種のデータを記憶する書き替え可能な記憶装置である。このメモリ34は、上記のデータとして、前述の装置構成情報、加工データおよび加工指示データを記憶している。装置構成情報は、媒体加工装置2から取得されるか、あるいはユーザが入力部32から入力することによって取得される。加工データは、加工データ作成装置4からジョブの形態で取得されて、制御部31によってメモリ34に書き込まれ、ジョブ単位で管理される。加工指示データは、加工指示決定処理部36によって決定されて、制御部31によってメモリ34に書き込まれる。
〈データベース〉
データベース35は、加工指示データを作成するために必要な情報を保存している。データベース35は、上記の情報として、動作基本情報およびレイヤー組み合わせテーブルを記憶している。
動作基本情報は、装置構成情報に応じて媒体加工装置2が可能な動作の基本的な情報である。印刷機能の動作基本情報は、プリンタタイプ、ヘッド構成および搭載インク種類によって可能となる印刷動作である。切断機能の動作基本機能は、通常カット機能や点線カット機能によって可能となる切断動作である。
レイヤー組み合わせテーブルは、ヘッド構成によって組み合わせて加工することが可能なロール機の場合の媒体の搬送方向またはフラットベッド機の場合のYバーの搬送方向とを対応付けたテーブルである。ロール機およびフラットベッド機に関わらず、ヘッド構成によっては、レイヤー組み合わせに応じた媒体やYバーの搬送方向が必要である。以下に、その理由についてロール機の場合を例示して説明する。固定した媒体に対してYバーを搬送するフラットベッド機の場合、同じ印刷を行うとき、Yバーの搬送方向は、ロール機における媒体の搬送方向と異なるが、ヘッドと媒体との相対的な動作が変わらないようにYバーの搬送方向を定義すればよい。具体的には、下記の例における媒体の搬送方向を逆にしてYバーの搬送方向とすればよい。
図2は、スタガ配列のヘッドユニットと媒体との関係を示す平面図である。図3(a)は、ロール機によって当該ヘッドユニットを用いて媒体上に白とカラーとを重ねた状態を示す側面図である。また、図3(b)は、ロール機によって上記ヘッドユニットを用いて媒体上にカラーと白とを重ねた状態を示す側面図である。
図2に示すように、ヘッドユニットHUは、カラー印刷用のカラーヘッドCHと、特色印刷のための特色ヘッドSPHとが搭載されている。特色ヘッドSPHは、カラーヘッドCHに対して媒体Mの搬送方向にシフトする位置に配置されている。このヘッドユニットHUによれば、カラーヘッドCHおよび特色ヘッドSPHが同時にインクを吐出するので、1回の走査でカラーのレイヤーと特色インクのレイヤーとを形成することができる。
これにより、図3(a)に示すように、媒体M1が正(送り出し)の搬送方向に搬送されると、白インクが特色ヘッドSPHによって先行して媒体M1に吐出された後に、カラーインクがカラーヘッドCHによって白のレイヤー上に吐出される。この結果、有色の媒体M1の上に白のレイヤーが形成され、さらにその上にカラーのレイヤーが重ねられて、発色の良好なカラーのレイヤーが形成される。
これに対し、図3(b)に示すように、媒体M2が逆(引き戻し)の搬送方向に搬送されると、カラーインクがカラーヘッドCHによって先行して媒体M2に吐出された後に、白インクが特色ヘッドSPHによってカラーのレイヤー上に吐出される。この結果、無色の媒体M2の上にカラーのレイヤーが形成され、さらにその上に白のレイヤーが重ねられて、媒体M2の裏側から見た発色の良好なカラーのレイヤーが形成される。
このように、ロール機およびフラットベッド機では、媒体やYバーの搬送方向に応じて、カラーインクによって形成されるレイヤーと特色インクによって形成されるレイヤーとの重なる位置が異なる。このため、組み合わされるレイヤーに対する搬送方向を規定するために、レイヤー組み合わせテーブルにおいて、レイヤーの組み合わせと搬送方向とを対応付けている。
〈加工指示決定処理部〉
加工指示決定処理部36(加工指示手段)は、レイヤーに含まれる加工データで規定される加工をレイヤーの並び順で施すように媒体加工装置2に指示する。このため、加工指示決定処理部36は、前述の装置構成情報、加工データ、動作基本情報およびレイヤー組み合わせテーブルに基づいて、加工指示を決定して加工指示データを作成する。加工指示決定処理部36は、上記の処理を行うために、レイヤー作成部361、加工可否判定部362、加工時間算出部363、レイヤー表示部364、プレビュー表示部365および加工順序決定部366を含んでいる。
レイヤー作成部361(レイヤー作成手段)は、加工データを構成する前述の版を所定のグループに分類し、加工の種類に基づいて、グループごとに形成される個別のレイヤー(加工の処理単位)に組み替える。また、レイヤー作成部361は、レイヤーを加工順に設定された並び順に配置する。具体的には、レイヤー作成部361は、ジョブが1つの版から構成されている場合、版をそのまま1つのレイヤーとするが、ジョブが複数の版から構成されている場合、必要に応じて版を合成してレイヤーに組み替える。例えば、レイヤー作成部361は、カラー、特色(銀,白,クリア)、カットなどのように版(加工)の種類によってレイヤーを作成する。
レイヤー作成部361は、このようなレイヤー作成処理を、版の種類に応じて行ってもよいし、ユーザの指示によって行ってもよい。また、レイヤー作成部361は、ユーザによってレイヤーの並び順が変更されているか否かを判定し、変更されている場合、その変更指示に応じてレイヤーを作成し直す。
図4(a)は、上記のようなレイヤー作成の一例を示す図であり、図4(b)はそのレイヤーによって印刷された結果を示す側面図である。
図4(a)に示すように、1つのジョブ(第1ジョブ)がカラー版によって構成され、他のジョブ(第2ジョブ)がクリア版およびカラー版によって構成されている場合、レイヤー作成部361は、第1および第2ジョブの2つのカラー版を合成して1つのカラーレイヤーを作成し、第1ジョブのクリア版から1つのクリアレイヤーを作成する。このレイヤーに基づいて印刷加工が行われると、図4(b)に示すように、媒体上にカラーレイヤーによるカラーの印刷層と、クリアレイヤーによるクリアの印刷層とが形成される。
なお、複数の版から1つのレイヤーを作成するには、レイヤーにおける複数の版の上下の関係を規定する必要がある。例えば、レイヤー作成部361は、図4(a)に示すように、2つのカラー版を1つのレイヤーに合成する場合には、2つのカラー版のどちらが上に位置するかを規定した上でレイヤーを作成する。
背景(カラー(1))の版の上にキャラクタ(カラー(2))の版を重ねて1つのレイヤーとする場合、背景とキャラクタとが重なる領域において、背景をキャラクタ上に透過させないようにするか否かなどの各種の形態が存在する。透過処理の方法としては、例えば、ディザ合成処理、乗算処理、スクリーン処理などがある。このような形態については、レイヤーにおける版の上限関係に基づいて規定することができる。
また、複数の版から版の形態が異なる複数のレイヤーを作成することもある。例えば、レイヤー作成部361は、画像のレイヤーを複数重ねる場合、インク色(Y,M,C,K)ごとに分けてレイヤーを作成して、各レイヤーの並び順を設定する。この設定は、予め規定されているインク色の好ましい重ね順や、ユーザの指示に基づいて行われる。
印刷する色の順序(重ねる色の順序)によっては印刷色の色味が変わってくるので、色の順序も規定できることが好ましい。複数のカラーの版を、1つのカラーのレイヤーとしてもよいが、印刷色の色味を調整するには、Y,M,C,Kのそれぞれのレイヤーを1回ずつ印刷することが好ましい。ロール機では、搬送方向の反転回数が増加するので、ヘッドの原点位置がずれることによって印刷画質が低下する。これに対し、フラットベッド機では、ヘッドが原点に戻るので、フィードが不要であり、何回でも印刷レイヤーを多数重ねても印刷画質が低下しない。したがって、このようなレイヤーの作成は、フラットベッド機に適しているといえる。
レイヤー作成部361は、同じレイヤーを重ねる場合、ユーザの指示に基づいて、当該レイヤーに加工回数を設定する。例えば、厚盛り印刷のように、同じ加工データによって印刷を繰り返す場合、いくつもレイヤーを重ねる必要があるが、そのための設定が煩雑となる。このような手間を省くために、1つのレイヤーに含まれる加工データの全てまたは一部について加工回数を必要に応じて設定しておくとよい。
レイヤー作成部361は、複数のレイヤーがそれぞれ画像の印刷の処理を含む場合、上下に重なった画像のそれぞれが印刷出力されるオーバープリントの有無を複数のレイヤー間で設定する。複数のレイヤーを重ねることで、各レイヤーの画像が重なることがある。この場合、「重なった部分も指定通り印刷する(オーバープリントする)」か、「重なって下になる部分は印刷しない(オーバープリントしない)」かの処理が用意されており、ユーザがいずれか一方を選択することができる。例えば、銀の上にカラーを形成して特殊効果を得る場合などは、重なり部分も指定通り印刷する必要があるが、特定の図柄の画像下には銀が不要である場合も存在する。このような場合に、レイヤー間でのオーバープリントの有無を選択可能にしておけば、どちらの場合であっても対応できる。
加工可否判定部362(加工可否判定手段)は、媒体加工装置2が加工データで規定される加工を実施可能であるか否かを判定する。加工可否判定部362は、具体的には、メモリ34に記憶されている装置構成情報およびレイヤー作成部361が作成したレイヤーに基づき、データベース35に記憶されている動作基本情報およびレイヤー組み合わせテーブルを参照して可否判定を行う。加工可否判定部362は、加工データの加工が媒体加工装置2に可能であると判定した場合は、その動作を決定する。また、加工可否判定部362は、加工データの加工が媒体加工装置2に実施不可能であると判定した場合は、その動作を特定して、警告表示データを作成する。
例えば、プリンタ22がクリアインクを搭載していない機種のためにクリアコートができなかったり、媒体加工装置2がカッタ23を備えていないためにカット加工ができなかったりといった場合のように、加工そのものができない場合がある。このような場合、加工可否判定部362は、レイヤーに含まれる加工データで規定される加工が、動作基本情報で規定される動作を行うことにより実現されるとき、媒体加工装置2がその動作を行うための構成を備えているか否かを装置構成情報に基づいて判断する。
あるいは、ロール機でインク層を多数重ねるために、逆の搬送方向に媒体をフィードさせることによって媒体の引き戻しの回数が多くなると、画像原点が著しくずれて画質が悪化するなどの、加工そのものは可能であるが加工品質が劣化する場合がある。このような場合であっても、加工可否判定部362が加工の可否を判定することによって、上記のような後処理を行うことができる。
この場合、加工可否判定部362は、前述のレイヤー組み合わせテーブルを参照して、レイヤー作成部361が作成したレイヤーから認識できる搬送方向の反転回数(引き戻しの回数)を取得し、その反転回数に基づいて加工の可否を判定する。これは、反転回数が所定回数を越えると印刷品質(加工品質)の劣化が生じると予測されることから、加工可否判定部362は、反転回数が所定回数を越えるときに、加工が不可能であると判定する。
加工可否判定部362は、媒体加工装置2が加工データの加工を実施できないと判定したとき、そのことをユーザに警告表示することによって設定の変更を促したり、加工指示決定処理部36の処理を停止したりといった後処理を行ってもよい。また、加工可否判定部362は、加工データを必要に応じて別装置で使用できるようなデータとして処理すること(例えば別途カット専用機でカットさせる)を加工指示決定処理部36に指示するという後処理を行ってもよい。
加工時間算出部363(加工時間算出手段)は、媒体加工装置2が、作成されたレイヤーに応じた複数種類の加工の全てを完了するために要する加工時間の予測値を算出する。加工時間算出部363は、加工時間を算出するために、装置構成情報、加工条件情報およびレイヤー構成などの加工時間を決定する要素を参照する。制御部31は、算出された加工時間のデータに基づいて、表示部33に予測加工時間を表示する。
加工に要する処理は、装置構成によって基本的に決まる。例えば、印刷の場合、プリンタタイプやヘッド構成などによって、1つの印刷レイヤーを印刷するために必要な最小限の時間が特定できる。これにより、詳細な加工条件情報やレイヤー構成(レイヤーにおける加工データや並び順)に応じた加工時間を加味することで、より正確な加工時間を算出することができる。
ここで、加工条件情報は、印刷の場合、解像度、パス数、走査範囲などであり、ユーザによって設定されてメモリ34に記憶されたり、加工データに応じて特定されたりする。また、レイヤーの重ね方によっては、ヘッド走査方向(主走査方向)に対する副走査方向におけるプリンタ22の可動部分の動作量が異なる。この可動部分は、フラットベッド機であればYバーであり、ロール機であれば媒体のフィード装置である。したがって、加工時間算出部363は、前記レイヤーの並び順が変更されるごとに、加工時間を算出し直す。
レイヤー表示部364(レイヤー表示手段)は、作成されたレイヤーに基づいて、各レイヤーの配置状態(積層の状態)をレイヤーの並び順にしたがって加工の種類とともに表示するレイヤー表示データを作成する。表示データで表現される表示の形態は、特に限定されず、図4(b)に示すように、媒体を最下層としてその上に各レイヤーが重なるものであってもよいし、その逆にレイヤーが重なるものや、横方向にレイヤーが重なるものであってもよい。
プレビュー表示部365(プレビュー表示手段)は、作成されたレイヤーに基づいて、予想される加工物の完成状態をプレビュー表示するためのプレビュー表示データを作成する。具体的には、プレビュー表示部365は、各レイヤーをその並び順で重ねるように表示する。また、プレビュー表示部365は、レイヤーに規定された前述のオーバープリントの有無や版の上限関係などに基づいてプレビュー表示データを作成する。
加工順序決定部366は、プリンタ22がロール機である場合に、その加工順序を決定する。ロール機の場合、前述のように、フラットベッド機と異なり、媒体を搬送するので、その搬送方向によって、レイヤーに基づく加工結果が異なる。このため、加工順序決定部366は、装置構成情報のプリンタタイプに基づいて、プリンタ22がロール機またはフラットベッド機のいずれであるかを判定し、プリンタ22がロール機であれば、加工順序を決定する処理を行って、加工順序データを作成する。加工順序決定部366は、この加工順序決定処理において、前述のレイヤー組み合わせテーブルを参照して、複数のレイヤーを組み合わせることができる場合、その組み合わせを決定したり、当該組み合わせに応じた媒体の搬送方向を決定したりする。
なお、加工順序決定部366の詳細な処理については、後に詳しく説明する。
[媒体加工システムの動作]
上記のように構成される媒体加工システム1の動作について、図5および図6のフローチャートを参照して説明する。
図5は、媒体加工指示装置3が加工指示データを作成する手順を示すフローチャートである。図6は、当該フローチャートにおける加工順序決定の処理の詳細な手順を示すフローチャートである。
〔加工指示データ作成処理〕
図5に示すように、まず、媒体加工指示装置3によって、加工データ作成装置4から加工データが取得される(ステップS1)。この加工データは、制御部31によってメモリ34に書き込まれる。
次いで、レイヤー作成部361によって、レイヤーが上記の加工データに基づいて作成される(ステップS2)。このとき、レイヤー作成部361は、加工データの版に応じて、ユーザの所望するレイヤーや、加工に都合のよいレイヤーを作成する。
また、媒体加工指示装置3の制御部31によって、媒体加工装置2または入力部32(ユーザ入力)から装置構成情報が取得され(ステップS3)。この装置加工情報は、制御部31によってメモリ34に書き込まれる。
装置構成情報が取得されると、加工可否判定部362によって、上記の装置構成情報およびレイヤーに基づいて、加工の可否が判定される(ステップS4)。ここで、加工可否判定部362は、加工が不可あると判定すると、警告表示データを作成して制御部31に与える。制御部31によって、警告表示データに基づいて、加工ができないことが不具合の原因とともに表示部33に警告表示される(ステップS5)。
ステップS4において、加工が可能であると判定されると、加工順序決定部366によって、ヘッド構成に基づいて、ヘッド構成がスタガ配列であるか否かが判定される(ステップS6)。ここで、加工順序決定部366によって、ヘッド構成がスタガ配列であると判定された場合、続いて加工順序が決定される(ステップS7)。このとき、加工順序決定部366は、加工順序データを作成する。また、加工順序決定部366が、ヘッド構成がスタガ配列でないと判定した場合、処理がステップS8に移行する。
続いて、レイヤー表示部364によって、各レイヤーの表示処理が行われるとともに、プレビュー表示部365によって、予想される加工物の完成状態をプレビュー表示する処理が行われる(ステップS8)。このとき、レイヤー表示部364は、レイヤー作成部361によって作成されたレイヤーに基づいて、各レイヤーの積層の状態を表示するレイヤー表示データを作成する。また、プレビュー表示部365は、レイヤー作成部361によって作成されたレイヤーに基づいて、プレビュー表示のためのプレビュー表示データを作成する。
制御部31は、レイヤー表示データに基づいて、表示部33にレイヤーの積層の状態を表示するとともに、プレビュー表示データに基づいて、表示部33に予想される加工物の完成状態をプレビュー表示する。また、このとき、制御部31は、加工時間算出部363によって算出された加工時間データに基づいて、表示部33に予測される加工時間を表示する。
レイヤー表示およびプレビュー表示がされることにより、ユーザは、レイヤーの並び順に不都合がないか否かを確認することができる。そして、レイヤーの並び順に不都合がある場合は、ユーザによってその並び順が変更される。
レイヤー作成部361によって、そのレイヤーの並び順が変更されたか否かが判定される(ステップS9)。レイヤーの並び順が変更されていると判定された場合は、処理がステップS6に移行する。
ステップS9において、レイヤーの並び順が変更されていないと判定された場合、加工指示決定処理部36によって、加工指示のための指令が決定されて(ステップS10)、処理を終える。このとき、加工指示決定処理部36は、レイヤー作成部362によって作成されたレイヤーと、加工順序決定部366によって作成された加工順序データとを含む加工指示データを作成する。この加工指示データは、制御部31によってメモリ34に書き込まれる。
制御部31は、上記の加工指示データを媒体加工装置2に送信することによって、加工を指示する。この指示を受けた媒体加工装置2において、制御部21は、加工指示データをメモリ24に書き込み、この加工指示データに基づいて、プリンタ22およびカッタ23の動作を制御する。これにより、プリンタ22およびカッタ23は、加工指示データに指定された内容および手順にしたがって動作する。
〔加工順序決定処理〕
続いて、加工順序決定部366によるロール機の加工順序の決定の手順について説明する。
図6に示すように、まず、レイヤーの組み合わせの加工が可能か否かが判定され(ステップS11)、複数のレイヤーが作成されていれば、組み合わされるレイヤーが決定される(ステップS12)。また、組み合わされるレイヤーが決定されると、その組み合わせに応じて媒体の搬送方向が決定される(ステップS13)。
加工順序決定部366は、ステップS12の処理を実行するときに、レイヤーの組み合わせのパターンが複数存在する場合、それぞれのパターンのうちのいずれか1つ組み合わせを決定し、その組み合わせに基づいて、ステップS13以降の処理を行う。
レイヤーの数によっては、搬送方向の反転が多数繰り返されることがある。この場合は、媒体の引き戻しによって、ヘッドの原点位置がずれのるので、印刷品質が劣化してしまう。そこで、搬送方向が決定されると、その搬送方向の反転回数に基づいて、印刷品質が劣化するか否かが判定される(ステップS14)。このとき、加工順序決定部366は、搬送方向の反転回数が2回未満であれば、印刷品質の劣化がないと判断する。
ステップ14において品質が劣化すると判定されると、印刷品質の劣化が警告される(ステップS18)。このとき、加工順序決定部366は、品質劣化警告データを作成して制御部31に与える。制御部31は、品質劣化警告データに基づいて、印刷品質の劣化を表示部33に表示する。
ステップS14において印刷品質が劣化しないと判定されると、高速高品質モードが設定されているか否かが判定される(ステップS15)。高速高品質モードは、レイヤーの組み合わせのパターンが複数存在する場合、最も高速かつ高品質で印刷を行うことができる組み合わせを選択するモードである。
ステップS15において高速高品質モードが設定されていると判定されると、組み合わせのレイヤーが他にあるか否かが判定される(ステップS16)。ここで、組み合わせのレイヤーが他にあると判定されると、処理をステップS12に戻す。これにより、他の組み合わせのレイヤーについて、ステップS12〜ステップS14,ステップS18の処理が行われる。
ステップS16において、組み合わせのレイヤーが他にないと判定されると、決定した複数の組み合わせのレイヤーから高速かつ高品質の組み合わせレイヤーが選択される(ステップS17)。このとき、加工順序決定部366は、搬送方向の反転回数の最も少ない組み合わせのレイヤーを選択して決定する。また、加工順序決定部366は、決定した複数の組み合わせのレイヤーについて、搬送方向の反転回数が全て同じであれば、最初に決定した組み合わせのレイヤーを選択して決定する。さらに、加工順序決定部366は、決定した組み合わせのレイヤーが1つしかなければ、その組み合わせのレイヤーを決定する。
〔レイヤー組み合わせの具体例〕
ここで、加工順序決定部366によって決定されるレイヤーの組み合わせの具体例について説明する。
図7は、多重印刷におけるレイヤーの一例を示す側面図である。図8(a)は、図7のレイヤーに基づいて決定されるレイヤーの組み合わせの一例を示す図であり、図8(b)は図8(a)のレイヤーの組み合わせに基づいて決定される媒体の搬送方向の一例を示す図である。図9(a)は、図7のレイヤーに基づいて決定されるレイヤーの組み合わせの他の例を示す図であり、図9(b)は図9(a)のレイヤーの組み合わせに基づいて決定される媒体の搬送方向の一例を示す図である。
ここでは、図7に示すように、透明な媒体M2上に、カラー(1)、白、カラー(2)の各レイヤーを重ねる場合について説明する。また、この場合、カラーインクおよび白インクがプリンタ22に搭載されているので、各レイヤーによる加工が可能であるものとし、図2に示すスタガ配列のヘッドユニットHUを用いるものとする。
この場合、加工順序決定部366は、データベース35におけるレイヤー組み合わせテーブルおよび装置構成情報(ヘッド構成)を参照して、媒体M2に最も近いカラー(1)のレイヤーと、その上の白のレイヤーとの組み合わせが可能であるか否かを判定する。
この場合、前述のように、ヘッドユニットHUによって、カラーおよび白の同時印刷が可能であるので、加工順序決定部366は、図8(a)に示すように、第1の加工順として、カラー(1)のレイヤーと白のレイヤーとの組み合わせが可能であると判定する。また、このとき、加工順序決定部366は、この組み合わせでは、ヘッド構成に基づけば、ロール機の場合、媒体M2の搬送方向を逆方向にする必要があることから(図3(b)参照)、搬送方向を逆方向に決定する。一方、加工順序決定部366は、フラットベッド機の場合、前述のように、Yバーの搬送方向がロール機における媒体の搬送方向と逆の関係となることから、搬送方向を正方向に決定する。加工順序決定部366は、カラー(2)のレイヤーについては、他に組み合わせるべきレイヤーがないため、単独に処理するレイヤーとして第2の加工順に決定するが、この時点では当該レイヤーについての搬送方向を決定していない。
さらに、加工順序決定部366は、ロール機の場合、カラー(1)のレイヤーと白のレイヤーとの組み合わせについて媒体M2を逆方向に搬送させる必要があることから、図8(b)に示すように、その前に正方向の空フィードを行うように設定する。そして、加工順序決定部366は、媒体M2の搬送を正方向と逆方向とを交互に繰り返す必要があることから、カラー(2)のレイヤーについての搬送方向を正方向と決定する。加工順序決定部366は、フラットベッド機の場合、上記のような媒体M2の搬送方向と逆にしてYバーの搬送方向を決定する。このようにして、レイヤーの組み合わせと、それに対応する搬送方向が決定される。
図7に示すレイヤー構造の場合、他のレイヤーの組み合わせが存在するので、加工順序決定部366は、データベース35におけるレイヤー組み合わせテーブルおよび装置構成情報(ヘッド構成)を参照して、白のレイヤーと、その上のカラー(2)のレイヤーとの組み合わせが可能であるか否かを判定する。
この場合、前述のように、ヘッドユニットHUによって、カラーおよび白の同時印刷が可能であるので、加工順序決定部366は、図9(a)に示すように、第2の加工順として、白のレイヤーとカラー(2)のレイヤーとの組み合わせが可能であると判定する。また、このとき、加工順序決定部366は、ロール機の場合、この組み合わせでは、ヘッド構成に基づけば、媒体M2の搬送方向を正方向にする必要があることから(図3(a)参照)、搬送方向を正方向に決定する。一方、加工順序決定部366は、フラットベッド機の場合、Yバーの搬送方向を逆方向に決定する。加工順序決定部366は、カラー(1)のレイヤーについては、他に組み合わせるべきレイヤーがないため、単独に処理するレイヤーとして第1の加工順に決定するが、この時点では当該レイヤーについての搬送方向を決定していない。
さらに、加工順序決定部366は、ロール機の場合、白のレイヤーとカラー(2)のレイヤーとの組み合わせについて媒体M2を正方向に搬送させる必要があることから、図9(b)に示すように、その前に印刷するカラー(1)のレイヤーについての搬送方向を逆方向と決定する。加工順序決定部366は、フラットベッド機の場合、上記のような媒体M2の搬送方向と逆にしてYバーの搬送方向を決定する。そして、加工順序決定部366は、前述の搬送を交互に繰り返す原則に基づいて、カラー(1)のレイヤーを印刷する前に正方向の空フィードを行うように設定する(ロール機のみ)。このようにして、レイヤーの組み合わせと、それに対応する搬送方向が決定される。
このように、図7に示すレイヤー構造の場合、2通りの組み合わせが存在する。これらの組み合わせでは、印刷に関する実質的な搬送方向の反転がそれぞれ1回ずつであるので、ロール機の場合、印刷品質の劣化がなく、印刷速度も同じである。ここで、レイヤーを組み合わせない方法としてカラー(1)、白、カラー(2)の各レイヤーを1層ずつ印刷する方法を用いてもよい。この方法では、搬送方向が正、逆、正の順となり、搬送動作は同じであるが、印刷しながら媒体をフィードするために、印刷時間が最も遅くなる。
続いて、加工順序決定部366によって決定されるレイヤーの組み合わせの他の具体例について説明する。
図10は、レイヤーの構成の一例を示す斜視図である。図11は、レイヤーの構成の他の例を示す斜視図である。
図10に示す例では、媒体上に、白、カラー、カットの各レイヤーを重ねる。この場合も、上記のヘッドユニットHUを用いるとすると、前述の例と同様、白のレイヤーとカラーのレイヤーとを組み合わせることができる。したがって、第1の加工順でこのレイヤーの印刷を行い、第2の加工順でカットの処理を行う。また、ロール機での媒体の搬送は、白のレイヤーとカラーのレイヤーとの組み合わせで逆方向となり、続くカットのレイヤーで正方向となる。
なお、上記の場合、カットのレイヤーをカラーのレイヤーの後に処理するように設定しているが、これでは、インク上をカットすることになり、印刷後の画像を汚損する可能性がある。そのような不都合を回避するには、カットのレイヤーを白のレイヤーの下に入れ替えることが好ましい。このようなレイヤーの入れ替えは、ユーザの設定によって可能である。また、この場合の媒体の搬送は、カットで正方向となり、逆フィード(引き戻し)の後に、白のレイヤーおよびカラーのレイヤーの組み合わせで正方向となる。
一方、図11に示す例では、図10に示す例におけるカットのレイヤーの代わりにクリアのレイヤーが設けられている。この例でも、上記のヘッドユニットHUを用いるとすると、白のレイヤーとカラーのレイヤーとを組み合わせることができる。したがって、第1の加工順でこのレイヤーの印刷を行い、第2の加工順でクリアの処理を行う。また、ロール機での媒体の搬送は、白のレイヤーとカラーのレイヤーとの組み合わせで正方向となり、続くクリアのレイヤーで逆方向となる。
[加工指示決定処理部のソフトウェアによる実現形態]
加前述の工指示決定処理部36における各ブロックは、前述の制御部31のマイクロプロセッサによってソフトウェア(媒体加工指示プログラム)によって実現される。つまり、この媒体加工指示プログラムは、コンピュータを媒体加工指示装置3として機能させる。
あるいは、上記の各ブロックは、ハードウェアロジックによって構成されてもよいし、DSP(Digital Signal Processor)を用いたプログラムによる処理で実現されてもよい。
上記のソフトウェアのプログラムコード(実行形式プログラム、中間コードプログラム、ソースプログラム)は、コンピュータで読み取り可能に記録した記録媒体に記録されてもよい。本発明の目的は、当該記録媒体を媒体加工指示装置3に供給し、制御部31のプロセッサが記録媒体に記録されているプログラムコードを読み出して実行することによっても達成することが可能である。
上記の印刷媒体としては、例えば、磁気テープやカセットテープ等のテープ系、フロッピー(登録商標)ディスク/ハードディスク等の磁気ディスクやCD−ROM/MO/MD/BD/DVD/CD−R等の光ディスクを含むディスク系を用いることができる。あるいは、上記の印刷媒体としては、ICカード(メモリカードを含む)/光カード等のカード系、あるいはマスクROM/EPROM/EEPROM/フラッシュROM等の半導体メモリ系なども用いることができる。
また、媒体加工指示装置3を通信ネットワークと接続可能に構成し、上記のプログラムコードを通信ネットワークを介して供給してもよい。この通信ネットワークとしては、例えば、インターネット、イントラネット、エキストラネット、LAN、ISDN、VAN、CATV通信網、仮想専用網(virtual private network)、電話回線網、移動体通信網、衛星通信網等が利用可能である。また、通信ネットワークを構成する伝送媒体としては、特に限定されず、例えば、IEEE1394、USB、電力線搬送、ケーブルTV回線、電話線、ADSL回線等の有線でも、IrDAやリモコンのような赤外線、Bluetooth(登録商標)、802.11無線、HDR、携帯電話網、衛星回線、地上波デジタル網等の無線でも利用可能である。なお、本発明は、上記プログラムコードが電子的な伝送で具現化された、搬送波に埋め込まれたコンピュータデータ信号の形態でも実現され得る。
[実施形態の効果]
以上のように、媒体加工システム1は、媒体加工指示装置3を備えている。この媒体加工指示装置3では、レイヤー作成部361が、カラー(Y,M,C,K)印刷、特色(白,銀,クリア)印刷、カットなどの複数の加工をグループ化してレイヤーを作成する。これにより、ユーザによって任意に設定された加工データを媒体加工指示装置3に与えるだけで、複雑な設定を必要とすることなく、当該加工データに基づいて作成されたレイヤーによって媒体加工装置2に加工の指示を与えることができる。
例えば、透明な媒体に表裏から認識される画像を作成する場合、媒体上に、カラー、白、カラー、クリアの順で版を重ねるように設定する必要がある。さらに、これらのカラー版と白の版との間に銀の版を形成する場合、カラー、銀、白、銀、カラー、クリアのように版を重ねるよう設定する必要がある。このような場合、従来では、非常に複雑な設定を行う必要があった。これに対し、レイヤーを重ねることで加工順序を設定することにより、上記のような画像を作成する場合、上記の加工順にしたがってレイヤーを配置するだけでよい。
また、レイヤー表示部364が、レイヤーを加工順に重ねた状態で加工の種類とともに表示する。これにより、加工順がそのまま加工物のイメージとして表示されるので、ユーザは必要に応じて加工物のイメージ通りにレイヤーを並べ変えることができ、直観的に加工順序を設定することが可能となる。
なお、前述の加工決定指示処理部36は、レイヤーに基づく加工物のイメージを用いてインクの消費量を概算し、このインク概算消費量と現在のインク残量とを比較して、インク残量がインク概算消費量より少ないときには、警告を発するようにしてもよい。これにより、インク残量が少ないときには、ジョブを削除したり、オーバープリントを設定したり、レイヤーを入れ替えたりするなどの再設定をした上でインク消費量を概算し直せば、現在のインク残量で実現可能な印刷表現を検討することができる。
[付記事項]
媒体加工指示装置3は、媒体に複数種類の加工を行うことで所望の加工物を得る媒体加工装置2に対して、加工物を得るために必要な加工を指示する媒体加工指示装置3であって、加工を規定する加工データを、所定のグループに分類し、前記加工の種類に基づいて、前記グループごとに形成される個別のレイヤーに組み替えて加工順に設定された並び順に配置するレイヤー作成部361と、レイヤーの配置状態を並び順にしたがって加工の種類とともに表示するレイヤー表示部364と、レイヤーに含まれる加工データで規定される加工を並び順で施すように媒体加工装置2に指示する加工指示手段と、媒体加工装置2による加工後の予測される加工物の状態をレイヤーの並び順にしたがってレイヤーを重ねるようにプレビュー表示するプレビュー表示部365とを備えている。
上記の構成では、カラー(Y,M,C,K)印刷、特色(白,銀,クリア)印刷、カットなどの複数種類の加工を規定する各加工データは、媒体加工指示装置3に入力されると、レイヤー作成部361によって、所定のグループに分類される。このグループは、例えば、加工の種類に応じたものであってもよいし、同時に処理できる加工を1つにまとめるものであってもよい。このようにグループに分類された加工データは、レイヤー作成部361によって、上記のような加工の種類に基づいて、グループごとに形成されるレイヤーに組み替えられて、加工順に設定された並び順に配置される。これにより、加工データは、加工の種類に基づいたレイヤーという新たな形態に組み替えられて、媒体加工装置2の加工が可能であったり、媒体加工装置2の加工に都合がよかったりする並び順に配置される。
このように作成されたレイヤーは、レイヤー表示手段によって、並び順に加工の種類とともに表示される。レイヤーが加工の種類とともに表示されることにより、レイヤーの加工順がそのまま加工物のイメージとなる。
そして、媒体加工装置2は、加工指示決定処理部36によって、レイヤーに含まれる加工データで規定される加工をレイヤーの並び順で施すように指示される。これにより、媒体加工装置2は、加工データで規定される加工をレイヤーの並び順で実行する。
したがって、ユーザによって任意に設定された加工データを媒体加工指示装置3に与えるだけで、複雑な設定を必要とすることなく、当該加工データに基づいて作成されたレイヤーによって媒体加工装置2に加工の指示を与えることができる。また、レイヤーが表示されることにより、指定された加工がどのような順で行われるかを、加工に先立ってレイヤーの並び順で確認することができる。しかも、レイヤーがその並び順にしたがって表示されるので、一旦レイヤーが表示された後に並び順を変更しても、それに応じてレイヤーの表示も変更されることになる。しかも、上記の構成では、プレビュー表示部365によって、加工物の状態がレイヤーの並び順にしたがってレイヤーを重ねるようにプレビュー表示される。これにより、誤った加工順の指示をしても、レイヤーの重なる状態がプレビュー表示に反映されるので、その誤りに容易に気付くことができる。また、プレビュー表示が並び順にしたがっているので、一旦レイヤーが表示された後に並び順を変更しても、それに応じてプレビュー表示も変更されることになる。
媒体加工指示装置3において、加工データは、当該加工データを含む少なくとも1つのジョブとして入力される。
上記の構成では、少なくとも1の加工データがジョブとして入力されることにより、加工データをジョブ単位で管理することができる。これにより、所望の効果を得る加工をジョブとしてまとめて保存しておいて再利用したり、他のジョブと組み合わせて新しい効果を得たりすることができる。
媒体加工指示装置3は、媒体加工装置2が指示された加工の全てを完了するために要する加工時間を、少なくとも媒体加工装置2の構成および前記レイヤーの並び順に基づいて算出する加工時間算出部363をさらに備えている。
上記の構成では、加工時間算出部363によって、加工時間が、少なくとも媒体加工装置2の構成およびレイヤーの並び順に基づいて算出される。加工時間は、媒体加工装置2の構成によって異なるし、レイヤーの並び順によっても異なる。特に、レイヤーの並び順は、印刷の場合、ロール機を用いるとき、媒体の搬送方向や搬送方向の反転回数を決定する要素となるので、変更すると加工時間を変えることがある。このように加工時間が算出されることにより、加工に要するおおよその時間を把握することができる。
これにより、必要に応じて加工時間を短縮するような加工順となるように新たにレイヤーを並べ変えることができる。また、加工時間の算出は、レイヤーの並び順に基づいているので、レイヤーが並び替えられると、新たに行われることになる。
媒体加工指示装置3は、入力された加工データおよび媒体加工装置2の構成に基づいて、媒体加工装置2が加工データで規定される加工を実施可能であるか否かを判定する加工可否判定部362をさらに備えている。
上記の構成では、加工可否判定部362によって、加工データおよび媒体加工装置2の構成に基づいて、媒体加工装置2が加工データで規定される加工を実施可能であるか否が判定される。これにより、媒体加工装置2が加工データの加工に必要な構成を備えていなかった場合に、媒体加工装置2がその加工を実施できないことを判定することができる。したがって、その判定結果に基づいて、それを警告表示することでユーザに加工データの設定の変更を促したり、加工指示動作そのものを停止したりするといった後処理を行うことができる。
媒体加工指示装置3において、加工可否判定部362は、加工品質の劣化の有無を予測して、加工品質に劣化が生じると予測されるときに、媒体加工装置2が加工を実施不可能であると判定する。
上記の構成では、加工可否判定部362によって、加工品質の劣化の有無が予測され、劣化が予測されるときに、媒体加工装置2が加工を実施不可能であると判定される。例えば、ロール機では、レイヤーの重ね方によっては、加工品質(印刷画質)が低下する可能性がある。具体的には、インク層を重ねる回数が多いために媒体を引き戻す回数が多くなり、画像原点が著しくずれて画質の劣化が生じる。このような場合でも、加工の可否を判定することによって、媒体加工装置2が加工に必要な構成を備えていない前述の場合と同様、媒体加工装置2が加工を実施できないときの措置をとることができる。
媒体加工指示装置3において、レイヤー作成部361は、レイヤーごとに、レイヤーに含まれる加工データの全てまたは一部についての加工回数を設定する。
上記の構成では、レイヤー作成部361によって、レイヤーごとに、レイヤーに含まれる加工データの全てまたは一部についての加工回数が設定される。これにより、同じ加工データによる加工を複数回行う場合に、1つの加工を指定された回数繰り返す加工指示を作成することができる。それゆえ、同じ加工データをいくつもレイヤーで重ねるという繁雑な設定を行う必要がなくなる。
媒体加工指示装置3において、レイヤー作成部361は、複数のレイヤーが画像の印刷を行う加工データを含む場合、上下に重なった画像のそれぞれが印刷出力されるオーバープリントの有無を複数の前記レイヤー間で設定する。
上記の構成では、複数のレイヤーが画像の印刷を行う加工データを含む場合、レイヤー作成部361によって、上下に重なった画像についてのオーバープリントの有無が複数のレイヤー間で設定される。これにより、重なる画像をオーバープリントの状態で印刷出力するか、あるいはオーバープリントしない状態で出力することができる。
媒体加工システム1は、媒体に複数種類の加工を行うことで所望の加工物を得る媒体加工装置2と、前述のいずれかの媒体加工指示装置3とを備えている。これにより、媒体加工システム1において、前述の媒体加工指示装置3と同様、媒体の加工を容易に設定したり、加工物の状態をレイヤーの表示で確認したりすることができる。
媒体加工指示プログラムは、コンピュータを媒体加工指示装置3における加工指示決定処理部36における各部として機能させるためのプログラムである。また、記録媒体は、媒体加工指示プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体である。