JP5958235B2 - クリーニングブレード、クリーニング装置、プロセスカートリッジ、および画像形成装置 - Google Patents
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Description
請求項1に係る発明は、
少なくとも被クリーニング部材と接触する接触部分が、ダイナミック超微小硬度が0.25以上0.65以下であり且つ下記式(1)で求められる指標Kが15以上である部材で構成されるクリーニングブレードである。
(式(1))
指標K=[23℃破断伸び(%)]×[10℃反撥弾性(%)]×(−1)
×[tanδピーク温度(℃)]÷[ヤング率(MPa)]÷1000
(ただし、前記tanδピーク温度は0℃未満である。)
少なくとも被クリーニング部材と接触する接触部分を含む領域を構成する接触部材と、
前記接触部材以外の領域を構成し、前記接触部材と異なる材料で構成され、且つ50℃の反撥弾性が70%以下である非接触部材と、
を有する請求項1に記載のクリーニングブレードである。
少なくとも被クリーニング部材と接触する接触部分を含む領域を構成する接触部材と、
前記接触部材以外の領域を構成し、前記接触部材と異なる材料で構成され、且つ100%永久伸びが1.0%以下である非接触部材と、
を有する請求項1または請求項2に記載のクリーニングブレードである。
請求項4に係る発明は、
前記接触部分が、少なくとも、ソフトセグメント材料としてのポリオールと、ハードセグメント材料としてのイソシアネート基に対して反応し得る官能基を有する樹脂と、ポリイソシアネートと、の重合体であるポリウレタン部材である請求項1〜請求項3の何れか1項に記載のクリーニングブレードである。
請求項1〜請求項4の何れか1項に記載のクリーニングブレードを備えたクリーニング装置である。
請求項5に記載のクリーニング装置を備え、画像形成装置に対して脱着自在であるプロセスカートリッジである。
像保持体と、
前記像保持体を帯電する帯電装置と、
帯電した前記像保持体の表面に静電潜像を形成する静電潜像形成装置と、
前記像保持体の表面に形成された静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像装置と、
前記像保持体上に形成されたトナー像を記録媒体上に転写する転写装置と、
前記転写装置によって前記トナー像が転写された後の前記像保持体の表面に、前記クリーニングブレードを接触させてクリーニングする請求項5に記載のクリーニング装置と、
を備える画像形成装置である。
本実施形態に係るクリーニングブレードは、少なくとも被クリーニング部材と接触する部分が以下の(a)および(b)を満たす部材で構成される。
(a)ダイナミック超微小硬度が0.25以上0.65以下
(b)下記式(1)で求められる指標Kが15以上
(式(1))
指標K=[23℃破断伸び(%)]×[10℃反撥弾性(%)]×(−1)
×[tanδピーク温度(℃)]÷[ヤング率(MPa)]÷1000
また、クリーニングブレードが、前記接触部材と該接触部材以外の領域とがそれぞれ異なる材料にて構成されている場合には、接触部材以外の領域を構成する部材を「非接触部材」と称する。非接触部材は、1種の材料で構成されていても材料異なる2種以上の部材から構成されていてもよい。
これに対しては、クリーニングブレードの被クリーニング部材と接触する部分の硬度を高めることで優れたクリーニング性が発揮され、特に前記接触する部分のダイナミック超微小硬度を0.25以上とすることでクリーニング性が向上される。
これに対し本実施形態に係るクリーニングブレードでは、上記指標Kを特定数値以下に制御することで、上記の硬度の調整によるクリーニング性が維持されつつ、且つ欠けの発生が抑制される。
クリーニングブレードにおいて、欠けの発生がどの物性と密接な関係を示すのかは不明であったため、各種の物性を変えたクリーニングブレードを準備して欠けの発生度合いとの相関を探った。各種の物性の中で、例えば23℃破断伸びに関しては、ある条件下では欠けの発生との相関が取れた結果が得られるものの、条件を変えてしまうと破断伸びの大小に関係なく欠けの発生が顕著に悪化する部分が生じるなど、相関が崩れてしまい、必ずしも破断伸びだけでは欠けとの関係を論理的に説明するには至らなかった。また、10℃反撥弾性、tanδピーク温度、およびヤング率に関しても、破断伸びと同じく、条件の違いによって相関が得られる場合と相関が崩れる場合とが見出され、これら単一の物性だけでは欠けとの関係を論理的に説明するには至らなかった。
また、各種物性の中から2つの物性を取り上げて欠けの発生度合いとの相関を探った。例えば、23℃破断伸びと10℃反撥弾性の2物性値を調整してこの両者の積と欠けの発生度合いとの相関を探ったが、論理的な関係は見出せず、またこれ以外にも各種2つの物性を取り上げたが、欠けとの関係を論理的に説明するには至らなかった。更に、各種の3つの物性を取り上げて欠けの発生度合いとの相関を探った場合においても、やはり論理的な関係は見出せなかった。
つまり、本実施形態に係るクリーニングブレードは、ある固定された条件下では単一の物性でも欠けとの相関を説明し得る場合がある一方で他の条件下ではその相関が崩れてしまい、そのある条件との関係についての説明が行えなかった欠けの発生度合いに関して、どの物性同士が絡み合って影響を及ぼしているのかを見出したものである。
尚、前記指標Kの数値は、更に25以上であることがより望ましい。
23℃破断伸び(%)の測定は、JIS K6251(2010年)に準じて23℃環境下にて行われる。尚、クリーニングブレードの被クリーニング部材と接触する部分を含む領域を構成する接触部材がダンベル状3号形試験片の寸法以上の大きさである場合には、該部材からダンベル状3号形試験片の寸法のものを切り出すことで、上記の測定が行われる。一方、接触部材がダンベル状3号形試験片の寸法未満の大きさである場合には、該部材と同じ材料によってダンベル状3号形試験片を形成し、この試験片について上記の測定が行われる。
例えば23℃破断伸びは、例えば接触部材がポリウレタンである場合であればポリオールの高分子量化によって大きくなる傾向にあり、また架橋剤の低減によって大きくなる傾向にある。
但し、23℃破断伸びの調整は上記の方法に限定されるものではない。
10℃反撥弾性(%)の測定は、JIS K6255(1996年)に準じて10℃環境下にて行われる。尚、クリーニングブレードの接触部材がJIS K6255に規定の試験片の寸法以上の大きさである場合には、該部材から試験片の寸法のものを切り出すことで、上記の測定が行われる。一方、接触部材が試験片の寸法未満の大きさである場合には、該部材と同じ材料によって試験片を形成し、この試験片について上記の測定が行われる。
例えば10℃反撥弾性は、架橋剤の三官能化や増量により架橋密度を高くすることによって大きくなる傾向にあり、また例えば接触部材がポリウレタンである場合であればポリオールの低分子量化や疎水性ポリオールの導入等の方法によってガラス転移温度(Tg)を低下させることにより大きくなる傾向にある。
但し、10℃反撥弾性の調整は上記の方法に限定されるものではない。
クリーニングブレードの接触部材におけるtanδ(損失正接)のピーク温度とは、ガラス転移温度(Tg)を表す。
ここで、tanδ値は、以下に説明する貯蔵および損失弾性率から導かれるものである。線形弾性体に、正弦波の歪みを定常振動的に与えた場合、応力は式(2)で表される。尚、|E*|は複素弾性率と呼ばれる。また、レオロジー学の理論より、弾性体成分は式(3)で、粘性体成分は式(4)で表される。ここで、E’は貯蔵弾性率、E''は損失弾性率と呼ばれる。δは応力と歪みとの位相差角を表し、“力学的損失角”と呼ばれるものである。tanδ値は、式(5)のごとくE''/E’で表され、“損失正弦”と呼ばれるものであり、その値が大きい程、その線形弾性体は、ゴム弾性を有するものとなる。
・式(2) σ=|E*|γcos(ωt)
・式(3) E’=|E*|cosδ
・式(4) E''=|E*|sinδ
・式(5) tanδ=E''/E’
tanδ値は、レオペクトラ−DVE−V4(レオロジ−(株)製)によって静止歪み5%、10Hz 正弦波引張加振を温度範囲−60℃以上100℃以下で測定される。
例えばtanδピーク温度は、例えば接触部材がポリウレタンである場合であればポリオールの低分子量化によって高くなる傾向にあり、また、架橋剤量を増やすことによって高くなる傾向にある。
但し、tanδピーク温度の調整は上記の方法に限定されるものではない。
ヤング率は、単位断面積にかかる力ΔSと単位長さでの伸びΔaを測定することにより下記式より算出する。
・式:E=ΔS/Δa
ここで、ΔSは、負荷Fとサンプルの膜厚t、サンプル幅wより、また、Δaは、サンプル基準長さL、負荷印加時のサンプル伸びΔLより、それぞれ下記のようにして算出される。
・式:ΔS=F/(w×t)
・式:Δa=ΔL/L
ヤング率の測定には、引張り試験機(アイコーエンジニアリング社製引張り試験機MODEL−1605N)が使用される。尚、クリーニングブレードの接触部材が上記測定用のサンプル(試験片)の寸法以上の大きさである場合には、該部材からサンプルの寸法のものを切り出すことで、上記の測定が行われる。一方、接触部材がサンプルの寸法未満の大きさである場合には、該部材と同じ材料によってサンプルを形成し、このサンプルについて上記の測定が行われる。
例えばヤング率は、化学架橋を増す(架橋点を増す)ことによって大きくなる傾向にあり、また例えば接触部材がポリウレタンである場合であればハードセグメント量を増すことによって大きくなる傾向にある。
但し、ヤング率の調整は上記の方法に限定されるものではない。
また、クリーニングブレードの接触部材のダイナミック超微小硬度について説明する。
ダイナミック超微小硬度は、圧子を試料に一定の押込み速度(mN/s)で進入させたときの試験荷重P(mN)と押込み深さD(μm)より、下記式より算出される硬度である。
式:DH=α×P/D2
上記式において、αは圧子形状による定数を表す。
なお、上記ダイナミック超微小硬度の測定は、ダイナミック超微小硬度計DUH−W201S((株)島津製作所社製)により行われる。ダイナミック超微小硬度は、軟質材料測定により、ダイヤモンド三角錐圧子(陵間角:115°、α:3.8584)を、押込み速度0.047399mN/s、試験荷重4.0mN、環境23℃で進入させた際の押込み深さDを測定することにより求められる。
例えばダイナミック超微小硬度は、例えばクリーニングブレードの接触部材の材質がポリウレタンである場合であれば該ポリウレタンの結晶性を高めることによって高くなる傾向にある。また、化学架橋を増す(架橋点を増す)ことによって高くなる傾向にあり、更にハードセグメント量を増すことによって高くなる傾向にある。
但し、ダイナミック超微小硬度の調整は上記の方法に限定されるものではない。
尚、ダイナミック超微小硬度は、0.28以上0.63以下であることがより望ましく、0.3以上0.6以下であることが更に望ましい。
(a)ダイナミック超微小硬度が0.25以上0.65以下
(b)下記式(1)で求められる指標Kが15以上
(式(1))
指標K=[23℃破断伸び(%)]×[10℃反撥弾性(%)]×(−1)
×[tanδピーク温度(℃)]÷[ヤング率(MPa)]÷1000
尚、クリーニングブレードが、前記接触部材と該接触部材以外の領域とがそれぞれ異なる材料にて構成されている場合には、接触部材以外の領域を構成する部材を「非接触部材」と称する。
図1は、第1の実施形態に係るクリーニングブレードを示す概略図であり、被クリーニング部材の一例である電子写真感光体の表面に接触した状態を示す図である。また、図2は第2の実施形態に係るクリーニングブレードが、図3は第3の実施形態に係るクリーニングブレードが、電子写真感光体の表面に接触した状態を示す図である。
本実施形態に係るクリーニングブレードにおける接触部材は、前述の(a)および(b)を満たす限り、特に限定されるものではない。例えば、ポリウレタンゴム、シリコンゴム、フッ素ゴム、プロロピレンゴム、ブタジエンゴム等が挙げられる。尚、前記(a)のダイナミック超微小硬度の要件を満たす観点から、ポリウレタンゴムが望ましく、特に高結晶化されたポリウレタンゴムがより望ましい。
結晶性の指標としては、吸熱ピークトップ温度(溶融温度)が挙げられる。本実施形態に係るクリーニングブレードでは、示差走査熱量測定(DSC)による吸熱ピークトップ温度(溶融温度)が180℃以上であることが望ましく、更には185℃以上であることがより望ましく、190℃以上であることが更に望ましい。尚、上限値としては220℃以下であることが望ましく、更には215℃以下であることがより望ましく、210℃以下であることが更に望ましい。
また、本実施形態では、ポリウレタンゴムがハードセグメントとソフトセグメントとを有し、前記ハードセグメントの凝集体の平均粒子径が5μm以上20μm以下であることが望ましい。
ハードセグメントの凝集体の平均粒子径が5μm以上であることにより、ブレード表面での結晶面積が増え、摺動性向上の利点がある。一方、20μm以下であることにより、低摩擦化を維持しつつ、靱性(耐欠け性)を失わないとの利点がある。
上記平均粒子径は、更に5μm以上15μm以下であることがより望ましく、5μm以上10μm以下であることが更に望ましい。
ハードセグメントの凝集体の粒度分布(標準偏差σ)が2以上であることは、つまり様々な粒子径のものが混在していることを表し、小さい凝集体によって、ソフトセグメントとの接触面積が増えることによる高硬度化の効果が得られ、一方大きい凝集体によって、摺動性向上の効果が得られる。
上記粒度分布は、更に2以上5以下であることがより望ましく、2以上3以下であることが更に望ましい。
尚、画像の2値化は、画像処理ソフトOLYMPUS Stream essentials(オリンパス社製)を用い、結晶部を黒、非晶部を白になるよう色相/彩度/輝度の閾値を調整する。
標準偏差σ=√{(X1−M)2+(X2−M)2+・・・
・・・+(X500−M)2}/500
Xn:測定粒径n(n=1から500)
M:測定粒径の平均値
ここで、「ハードセグメント」および「ソフトセグメント」とは、ポリウレタンゴム材料中で、前者を構成する材料の方が、後者を構成する材料よりも相対的に硬い材料からなり、後者を構成する材料の方が前者を構成する材料よりも相対的に柔らかい材料からなるセグメントを意味する。
まず、ソフトセグメント材料としては、ポリオールとして、ジオールと二塩基酸との脱水縮合で得られるポリエステルポリオール、ジオールとアルキルカーボネートの反応により得られるポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリエーテルポリオール等が挙げられる。なお、ソフトセグメント材料として用いられる上記ポリオールの市販品としては、例えば、ダイセル化学社製のプラクセル205やプラクセル240などが挙げられる。
また、ハードセグメント材料としては、イソシアネート基に対して反応し得る官能基を有する樹脂を用いることが望ましい。また、柔軟性のある樹脂であることが望ましく、柔軟性の点から直鎖構造を有する脂肪族系の樹脂であることがより望ましい。具体例としては、2つ以上のヒドロキシル基を含むアクリル樹脂や、2つ以上のヒドロキシル基を含むポリブタジエン樹脂、2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂等を用いることが望ましい。
2つ以上のヒドロキシル基を含むポリブタジエン樹脂の市販品としては、例えば、出光興産社製、R−45HT等が挙げられる。
また、物性面では、従来のエポキシ樹脂と比べて、分子量に比して粘度が低いエポキシ樹脂が好適である。具体的には、重量平均分子量が900±100の範囲内であり、25℃における粘度が15000±5000mPa・sの範囲内であることが望ましく、15000±3000mPa・sの範囲内であることがより望ましい。この特性を有するエポキシ樹脂の市販品としては、例えば、DIC製、EPLICON EXA−4850−150等が挙げられる。
ハードセグメント材料比が、10質量%以上であることにより、耐摩耗性が得られ、長期に渡って良好なクリーニング性が維持される。一方、ハードセグメント材料比が30質量%以下であることにより、硬くなり過ぎることがなく、柔軟性や伸張性が得られ、欠けの発生が抑制されて、長期に渡って良好なクリーニング性が維持される。
ポリウレタンゴムの合成に用いられるポリイソシアネートとしては、例えば、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、2,6−トルエンジイソシアネート(TDI)、1,6−ヘキサンジイソシアネート(HDI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)および3,3−ジメチルフェニル−4,4−ジイソシアネート(TODI)などが挙げられる。
尚、求められる大きさ(粒子径)のハードセグメント凝集体の形成し易さという点から、ポリイソシアネートとしては、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)がより望ましい。
20質量部以上であることにより、ウレタン結合量が多く確保されてハードセグメント成長し、求められる硬度が得られる。一方40質量部以下であることにより、ハードセグメントが大きくなり過ぎず、伸張性が得られ、クリーニングブレードの欠けの発生が抑制される。
架橋剤としては、ジオール(2官能)、トリオール(3官能)、テトラオール(4官能)等が挙げられ、これらを併用してもよい。また、架橋剤としてアミン系化合物を用いてもよい。尚、3官能以上の架橋剤を用いて架橋されたものであることが望ましい。3官能の架橋剤としては、例えば、トリメチロールプロパン、グリセリン、トリイソプロパノールアミン等が挙げられる。
本実施形態における前記接触部材を構成するポリウレタンゴム部材の製造は、プレポリマー法やワンショット法など、ポリウレタンの一般的な製造方法が用いられる。プレポリマー法は強度、耐摩耗性に優れるポリウレタンが得られるため本実施形態には好適であるが、製法により制限されるものではない。
具体的には、ポリウレタン組成物を調整する際に、ポリオールやプレポリマーの温度を低くしたり、硬化・成形の温度を低くしたりすることにより、架橋の進行が遅くなるよう調整する。これらの温度(ポリオールやプレポリマーの温度、硬化・成形の温度)を低く設定して反応性を下げることにより、ウレタン結合部が凝集し、ハードセグメントの結晶体が得られるので、ハードセグメント凝集体の粒子径が求められる結晶径となるよう温度を調整する。
これにより、ポリウレタン組成物に含まれる分子が並んだ状態となり、DSCを測定した際に、結晶融解エネルギーの吸熱ピークトップ温度が前記範囲の結晶体を含むポリウレタンゴム部材が成形される。
なお、ポリオール、ポリイソシアネート、および架橋剤の量や、架橋剤の比率等は求められる範囲に調整する。
次に、このソフトセグメント材料とハードセグメント材料との混合物に対して、イソシアネート化合物(例えば4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート)を加えて、例えば窒素雰囲気下で反応させる。この際の温度は60℃以上150℃以下であることが望ましく、更には80℃以上130℃以下であることが望ましい。また反応時間は0.1時間以上3時間以下であることが望ましく、更には1時間以上2時間以下であることが望ましい。
次いで、このプレポリマーを昇温し減圧下で脱泡する。この際の温度は60℃以上120℃以下であることが望ましく、更には80℃以上100℃以下であることが望ましい。また反応時間は10分間以上2時間以下であることが望ましく、更には30分間以上1時間以下であることが望ましい。
その後、プレポリマーに対して、架橋剤(例えば1,4−ブタンジオールやトリメチロールプロパン)を加えて混合し、クリーニングブレード形成用の組成物を調製する。
更に架橋反応させることで接触部材が形成される。この架橋反応の際の熟成加熱の温度は70℃以上130℃以下であることが望ましく、80℃以上130℃以下であることがより望ましく、更には100℃以上120℃以下であることが望ましい。また反応時間は1時間以上48時間以下であることが望ましく、更には10時間以上24時間以下であることが望ましい。
前記接触部材においては、ポリウレタンゴム中における化学架橋(架橋剤による架橋)「1」に対する物理架橋(ハードセグメント同士の水素結合による架橋)の比率が、1:0.8乃至1:2.0であることが望ましく、更には1:1乃至1:1.8であることが望ましい。
化学架橋に対する物理架橋の比率が上記下限値以上であることにより、ハードセグメント凝集体がより成長され結晶由来の低摩擦性の効果が得られる。一方、上記上限値以下であることにより、靱性維持の効果が得られる。
σ=2C1(λ−1/λ2)+2C2(1−1/λ3)
σ:応力、λ:歪、C1:化学架橋密度、C2:物理架橋
尚、引張り試験による応力−歪曲線より10%伸長時のσとλを用いる。
ソフトセグメントに対するハードセグメントの比率が上記下限値以上であることにより、ハードセグメント凝集体量も増えることにより低摩擦性の効果が得られる。一方、上記上限値以下であることにより、靱性維持の効果が得られる。
本実施形態に係るクリーニングブレードにおける非接触部材は、特に限定されずに公知の如何なる材料をも用い得る。
・反撥弾性
中でも50℃の反撥弾性が70%以下である材料で構成されることが望ましい。
しかし、反撥弾性が上記範囲である非接触部材を設けることにより、前記異音の発生が効果的に抑制される。
但し、50℃反撥弾性の調整は上記の方法に限定されるものではない。
また、本実施形態に係るクリーニングブレードにおける非接触部材は、100%永久伸びが1.0%以下である材料で構成されることが望ましい。
100%永久伸びが上記範囲である非接触部材を設けることにより、へたり(永久変形)の発生が抑制され、クリーニングブレードの接触圧が維持され、結果として優れたクリーニング性が維持される。
JIS K6262(1997年)に準拠して、短冊状試験片を用い、100%引張りひずみを与えて24時間放置し、下記式の通り標線間距離より求められる。
Ts=(L2−L0)/(L1−L0)×100
Ts:永久伸び
L0:引張り前の標線間距離
L1:引張り時の標線間距離
L2:引張り後の標線間距離
尚、クリーニングブレードの非接触部材がJIS K6262に規定の短冊状試験片の寸法以上の大きさである場合には、該部材から短冊状試験片の寸法のものを切り出すことで、上記の測定が行われる。一方、非接触部材が短冊状試験片の寸法未満の大きさである場合には、該部材と同じ材料によって短冊状試験片を形成し、この短冊状試験片について上記の測定が行われる。
但し、100%永久伸びの調整は上記の方法に限定されるものではない。
ポリオールとしては、ポリテトラメチルエーテルグリコール、ポリエチレンアジペート、ポリカプロラクトンなどが挙げられる。
ポリイソシアネートとしては、2,6−トルエンジイソシアネート(TDI)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、パラフェニレンジイソシアネート(PPDI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)、3,3−ジメチルジフェニル−4,4’−ジイソシアネート(TODI)などが挙げられる。中でもMDIが望ましい。
更に、ポリウレタンを硬化させる硬化剤として、1,4−ブタンジオール、トリメチロールプロパン、エチレングリコールやこれらの混合物などの硬化剤が挙げられる。
尚、図2に示す二層構成などの複数層構成の場合には、上記方法により得られた第一層および第二層(3層以上の層構成である場合には複数の層)を、相互に貼り合わせることにより作製される。上記貼り合わせる方法としては、両面テープ、各種接着剤等が好適に用いられる。また、成型時に時間差を置いて各層の材料を金型に流し込み、接着層を設けずに材料間で結合させることによって複数の層を接着してもよい。
本実施形態のクリーニングブレードを利用して被クリーニング部材をクリーニングする場合、クリーニングの対象となる被クリーニング部材としては、画像形成装置内において、表面のクリーニングが要求される部材であれば特に限定されず、例えば、中間転写体や、帯電ロール、転写ロール、被転写材搬送ベルト、用紙搬送ロール、像保持体からトナーを除去するクリーニングブラシからさらにトナーを除去するデトーニングロール等も挙げられるが、本実施形態においては、像保持体であることが特に望ましい。
次に、本実施形態のクリーニングブレードを用いたクリーニング装置、プロセスカートリッジ、および、画像形成装置について説明する。
本実施形態のクリーニング装置は、被クリーニング部材表面に接触し、被クリーニング部材表面をクリーニングするクリーニングブレードとして、本実施形態のクリーニングブレードを備えたものであれば特に限定されない。例えば、クリーニング装置の構成例としては、被クリーニング部材側に開口部を有するクリーニングケース内に、エッジ先端が開口部側となるようクリーニングブレードを固定すると共に、クリーニングブレードにより被クリーニング部材表面から回収された廃トナー等の異物を異物回収容器に導く搬送部材を備えた構成などが挙げられる。また、本実施形態のクリーニング装置には、本実施形態のクリーニングブレードが2つ以上用いられていてもよい。
また、クリーニングブレード先端部が像保持体に食込む長さが0.8mm以上1.2mm以下の範囲であることが望ましく、0.9mm以上1.1mm以下の範囲であることがより望ましい。
クリーニングブレードと像保持体との接触部における角度W/A(Working Angle)は8°以上14°以下の範囲であることが望ましく、10°以上12°以下の範囲であることがより望ましい。
次に、本実施形態のクリーニングブレード、並びに、これを用いた画像形成装置およびクリーニング装置の具体例について、図面を用いてより詳細に説明する。
図4は、本実施形態の画像形成装置の一例を示す概略模式図であり、いわゆるタンデム型の画像形成装置について示したものである。
図4中、21は本体ハウジング、22、22a乃至22dは作像エンジン、23はベルトモジュール、24は記録媒体供給カセット、25は記録媒体搬送路、30は各感光体ユニット、31は感光体ドラム、33は各現像ユニット、34はクリーニング装置、35、35a乃至35dはトナーカートリッジ、40は露光ユニット、41はユニットケース、42はポリゴンミラー、51は一次転写装置、52は二次転写装置、53はベルトクリーニング装置、61は送出しロール、62は搬送ロール、63は位置合わせロール、66は定着装置、67は排出ロール、68は排紙部、71は手差し供給装置、72は送出しロール、73は両面記録用ユニット、74は案内ロール、76は搬送路、77は搬送ロール、230は中間転写ベルト、231、232は支持ロール、521は二次転写ロール、531はクリーニングブレードを表す。
ここで、感光体ユニット30は、例えば感光体ドラム31と、この感光体ドラム31を予め帯電する帯電装置(帯電ロール)32と、感光体ドラム31上の残留トナーを除去するクリーニング装置34とを一体的にサブカートリッジ化したものである。
尚、感光体ユニット30を現像ユニット33から切り離して単独のプロセスカートリッジとしてもよいことは勿論である。また、図4中、符号35(35a乃至35d)は各現像ユニット33に各色成分トナーを補給するためのトナーカートリッジである(トナー補給経路は図示せず)。
更にまた、中間転写ベルト230の最上流作像エンジン22aの上流側にはベルトクリーニング装置53が配設されており、中間転写ベルト230上の残留トナーを除去する。
更にまた、本体ハウジング21には両面記録用ユニット73が付設されており、この両面記録用ユニット73は、記録媒体の両面に画像記録を行う両面モード選択時に、片面記録済みの記録媒体を排出ロール67を逆転させ、かつ、入口手前の案内ロール74にて内部に取り込み、搬送ロール77にて内部の記録媒体戻し搬送路76に沿って記録媒体を搬送し、再度位置合わせロール63側へと供給するものである。
図5は、本実施形態のクリーニング装置の一例を示す模式断面図であり、図4中に示すクリーニング装置34と共にサブカートリッジ化された感光体ドラム31、帯電ロール32や、現像ユニット33も示した図である。
図5中、32は帯電ロール(帯電装置)、331はユニットケース、332は現像ロール、333はトナー搬送部材、334は搬送パドル、335はトリミング部材、341はクリーニングケース、342はクリーニングブレード、344はフィルムシール、345は搬送部材を表す。
図1は、本実施形態のクリーニングブレードの一例を示す模式断面図であり、図5中に示すクリーニングブレード342を、これに接触する感光体ドラム31と共に示した図である。
現像に際しては、現像ロール332に現像剤を供給した後、例えばトリミング部材335にて現像剤を層厚規制した状態で、感光体ドラム31に対向する現像領域に搬送される。
一方、各作像エンジン22(22a乃至22d)において、感光体ドラム31上の残留トナーはクリーニング装置34にて清掃され、また、中間転写ベルト230上の残留トナーはベルトクリーニング装置53にて清掃される。
こうした作像過程において、夫々の残留トナーはクリーニング装置34(またはベルトクリーニング装置53)によって清掃される。
〔参考比較例A1〕
−クリーニングブレードA1−
・接触部材(エッジ)の形成
まず、ポリカプロラクトンポリオール(ダイセル化学工業(株)製、プラクセル205、平均分子量529、水酸基価212KOHmg/g)およびポリカプロラクトンポリオール(ダイセル化学工業(株)製、プラクセル240、平均分子量4155、水酸基価27KOHmg/g)と、をポリオール成分のソフトセグメント材料として用いた。また、2つ以上のヒドロキシル基を含むアクリル樹脂(綜研化学社製、アクトフローUMB−2005B)をハードセグメント材料として用い、上記ソフトセグメント材料およびハードセグメント材料を8:2(質量比)の割合で混合した。
続いて、上記イソシアネート化合物を更に34.3部加え、窒素雰囲気下で70℃で3時間反応させて、プレポリマーを得た。尚、プレポリマーの使用に際して利用したイソシアネート化合物の全量は40.56部であった。
脱水処理したポリテトラメチルエーテルグリコールに、ジフェニルメタン−4,4−ジイソシアネートを混入し120℃で15分反応させ、生成したプレポリマーに硬化剤として1,4−ブタジオールおよびトリメチロールプロパンを併用したものを、非接触部材形成用組成物A1として用いた。
参考比較例A1とはダイナミック超微小硬度が異なるクリーニングブレードを作製した。
具体的には、参考比較例A1の接触部材(エッジ)の形成において、化学架橋の量(架橋点の量)やハードセグメントの量を変更することでダイナミック超微小硬度が下記表1に記載のものとなるよう調整した以外は、参考比較例A1に記載の方法によりクリーニングブレードを得た。
以下の方法により、ダイナミック超微小硬度の差異によるトナーすり抜けの度合い、即ちクリーニング性能を評価した。参考実施例および参考比較例で得られたクリーニングブレードを、富士ゼロックス社製DocuCentre−IV C5575に搭載し、NF(Normal Force)を1.3gf/mm、W/A(Working Angle)を11°に合わせ、10k枚プリントを行った。
〔実施例B1〜B5、比較例B1〜B4〕
参考比較例A1の接触部材(エッジ)の形成において、ポリオールの分子量の調整、架橋剤の量の調整、架橋剤の官能基数の数の調整、疎水性ポリオール導入の有無、化学架橋(架橋点)の増減、ハードセグメント量の調整によって、接触部材(エッジ)の各種物性を下記表2に示すとおり変更した以外は、参考比較例A1に記載の方法によりクリーニングブレードを得た。
尚、クリーニングブレードの各種物性を測定したところ、下記表2に示す通りであった。
エッジと背面に分かれたクリーニングブレードではなく、感光体に接触する第一層と背面側の第二層との二層構成を有するクリーニングブレードを作製した。
・第一層の形成
参考例B1の接触部材(エッジ)の形成において、ポリオールの分子量の調整、架橋剤の量の調整、架橋剤の官能基数の数の調整、疎水性ポリオール導入の有無、化学架橋(架橋点)の増減、ハードセグメント量の調整によって、接触部材(エッジ)の各種物性を下記表2に示すとおり変更し、且つ形状を半円柱形状の接触部材(エッジ)ではなく平板状(第一層)に変更することで、各種物性が表2に記載のものとなる第一層を形成した。
第二層用の組成物として、前記参考比較例A1で調製した第二層形成用組成物A1を用いた。
尚、上記第一層と第二層との接着は、前述の通り第一層を平板状に形成した後の遠心成形機に、第二層形成用の組成物を流し込み硬化させることによって行い、第一層の背面に第二層を形成し、それ以外は比較例B1に記載の方法によりクリーニングブレードを得た。
以下の方法により、欠け発生の度合い(グレード)を評価した。実施例および比較例で得られたクリーニングブレードを、富士ゼロックス社製DocuCentre−IV C5575に搭載し、NF(Normal Force)を1.3gf/mm、W/A(Working Angle)を11°に合わせ、10k枚プリントを行った。
その時点での欠けの大きさおよび個数によって、以下の基準に従い欠け発生の度合い(グレード)を評価した。尚、欠け発生の度合い(グレード)は、軸方向の中心部位100mmの範囲で計測した。
グレード10:欠け未発生
グレード9 :欠けサイズ1μm以下、個数1個以上5個未満
グレード8 :欠けサイズ1μm以下、個数5個以上10個未満
グレード7 :欠けサイズ1μm以下、個数10個以上
グレード6 :欠けサイズ1μmを超え5μm以下、個数1個以上5個未満
グレード5 :欠けサイズ1μmを超え5μm以下、個数5個以上10個未満
グレード4 :欠けサイズ1μmを超え5μm以下、個数10個以上
グレード3 :欠けサイズ5μmを超える、個数1個以上5個未満
グレード2 :欠けサイズ5μmを超える、個数5個以上10個未満
グレード1 :欠けサイズ5μmを超える、個数10個以上
Claims (7)
- 少なくとも被クリーニング部材と接触する接触部分が、ダイナミック超微小硬度が0.25以上0.65以下であり且つ下記式(1)で求められる指標Kが15以上である部材で構成されるクリーニングブレード。
(式(1))
指標K=[23℃破断伸び(%)]×[10℃反撥弾性(%)]×(−1)
×[tanδピーク温度(℃)]÷[ヤング率(MPa)]÷1000
(ただし、前記tanδピーク温度は0℃未満である。) - 少なくとも被クリーニング部材と接触する接触部分を含む領域を構成する接触部材と、
前記接触部材以外の領域を構成し、前記接触部材と異なる材料で構成され、且つ50℃の反撥弾性が70%以下である非接触部材と、
を有する請求項1に記載のクリーニングブレード。 - 少なくとも被クリーニング部材と接触する接触部分を含む領域を構成する接触部材と、
前記接触部材以外の領域を構成し、前記接触部材と異なる材料で構成され、且つ100%永久伸びが1.0%以下である非接触部材と、
を有する請求項1または請求項2に記載のクリーニングブレード。 - 前記接触部分が、少なくとも、ソフトセグメント材料としてのポリオールと、ハードセグメント材料としてのイソシアネート基に対して反応し得る官能基を有する樹脂と、ポリイソシアネートと、の重合体であるポリウレタン部材である請求項1〜請求項3の何れか1項に記載のクリーニングブレード。
- 請求項1〜請求項4の何れか1項に記載のクリーニングブレードを備えたクリーニング装置。
- 請求項5に記載のクリーニング装置を備え、画像形成装置に対して脱着自在であるプロセスカートリッジ。
- 像保持体と、
前記像保持体を帯電する帯電装置と、
帯電した前記像保持体の表面に静電潜像を形成する静電潜像形成装置と、
前記像保持体の表面に形成された静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像装置と、
前記像保持体上に形成されたトナー像を記録媒体上に転写する転写装置と、
前記転写装置によって前記トナー像が転写された後の前記像保持体の表面に、前記クリーニングブレードを接触させてクリーニングする請求項5に記載のクリーニング装置と、
を備える画像形成装置。
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