本発明による表示装置について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の第一の実施形態による表示装置の断面の一部を示し、その層構成を模式的に示した概略図である。
表示装置1は、表示パネルである映像光源20と、前記映像光源20よりも観察者側に配置され、前記映像光源20からの入射光を制御して前記観察者側に出射する光学機能層10と、前記光学機能層10よりも観察者側に配置された前面板30と、を少なくとも備えている。また、好ましい実施形態においては、図1に示すように、前面板30よりも観察者側に、反射防止フィルター40が配置されていてもよく、また、映像光源20と光学機能層10との間には、波長フィルター層60や電磁波遮蔽層80が配置されていてもよい。さらに、図示はしないが、前面板30または反射防止フィルター40の最前面には、ハードコート層や防眩層等の機能層が配置されていてもよい。以下、本願発明による表示装置を構成する各部材について説明する。
<光学機能層>
映像光源20と前面板30との間に配置される光学機能層10は、映像光源20側から入射した光を制御して観察者側に出射するシート状の部材である。光学機能層10は、複数の層を有しており、図1に示したように、基材層11と、前記基材層11上に設けられ、シート面に沿って並列された複数の光透過部13と、前記光透過部13の間に並列して設けられた複数の光吸収部14とを備えている。
光学機能層10は、上記のように、映像光源20側からの映像光の光路を制御するとともに、迷光や外光を適切に吸収する機能を有するものの、上記したようにゴーストや自己モアレが発生し、像鮮明性を損なう場合がある。本発明においては、光学機能層10の光吸収部14が、シート厚方向断面において、映像光源20側の面が曲線または折れ線状に映像光源20側に突出した凸部を有しているため、この凸部のレンズ効果によりゴーストや自己モアレを解消できる。また、光透過部13の凸部の頂部が、映像光源と空気界面を介して接するかまたは5mm以下の間隔を有するように光学機能層10と映像光源20とが配置されているため、映像光源20と光学機能層10とが光学密着することがなくなり、ニュートンリングの発生も抑制できる。その結果、映像のコントラストを向上できるととともに、ゴーストや自己モアレを解消し、かつニュートンリングの発生を抑制しながら像鮮明性も維持できる。ニュートンリングの発生を防止する観点からは、上記したように映像光源20と光学機能層10とが接触しないように隙間を空けて配置すればよいが、映像光源20と光学機能層10との間隔(映像光源20と光透過部の凸部の頂部との距離)が5mmを超えると映像がぼけてしまうことから、隙間の距離は短い方が好ましい。本発明による表示装置においては、たとえ映像光源20の表面に、光学機能層10の光透過部13の凸部の頂部が空気界面を介して接している場合であっても、ニュートンリングの発生を防止することができる。
光学機能層10を構成する基材層11は、後記する光透過部13を形成するための基材となる層である。基材層11は、ポリエチレンテレフタレート(PET)を主成分とした材料で構成されることが好ましい。基材層がPETを主成分とする場合、基材層には他の樹脂が含まれてもよい。また、各種添加剤を適宜添加してもよい。一般的な添加剤としては、フェノール系等の酸化防止剤、ラクトン系等の安定剤等を挙げることができる。ここで「主成分」とは、基材層を形成する材料全体に対して上記PETが50質量%以上含有されていることを意味する(以下、同様とする。)。
但し、基材層を構成する材料の主成分は、必ずしもPETである必要なく、その他の材料でもよい。これには例えば、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、テレフタル酸−イソフタル酸−エチレングリコール共重合体、テレフタル酸−シクロヘキサンジメタノール−エチレングリコール共重合体などのポリエステル系樹脂、ナイロン6などのポリアミド系樹脂、ポリプロピレン、ポリメチルペンテンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリメチルメタクリレートなどのアクリル系樹脂、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体などのスチレン系樹脂、トリアセチルセルロース等のセルロース系樹脂、イミド系樹脂、ポリカーボネート樹脂等を挙げることができる。また、これら樹脂中には、必要に応じて適宜、紫外線吸収剤、充填剤、可塑剤、帯電防止剤などの添加剤を加えても良い。なお、性能に加え、量産性、価格、入手可能性等の観点からは、PETを主成分とする樹脂によって基材層を構成することが好ましい。
次に、光学機能層10の光透過部13について説明する。図2〜4は、光学機能層の一部を拡大した模式断面図である。光透過部13は、映像光を透過する機能を有する要素であり、図2に示すように、基材層11上に設けられ、光透過部13の基材11とは反対側の面は、曲線状に突出した凸部17が形成された形状を有している。光透過部13の断面は、紙面奥から手前側に延在する形状を備えている。
光透過部13のシート厚み方向の断面形状として、図2では、曲線状に突出した凸部17の形状が、略半円断面形状を有する光透過部を例示したが、凸部17の形状は略半円形状に限らず、凸部の両端部の角が円弧状に形成され、いわゆるRが取られている形状であってもよい。Rの大きさは特に限定されることはないが、後述する光吸収部の窪みの深さと同程度が好ましく、例えば0.5〜6.0μmとすることができる。また、光透過部13の凸部の形状は、図3に示すように、折れ線状の突出した凸部として略三角形断面を有する光透過部であってもよく、あるいは、図4に示すような、断面が複数の辺から構成された折れ線状の形状を有する凸部形状であってもよい。光透過部13の凸部の高さは、1〜6μmであることが好ましい。この範囲とすることにより、より一層、ゴーストや自己モアレを解消し、かつニュートンリングの発生を抑制しながら像鮮明性を維持することができる。
図2〜4では、上記したような形状を有する凸部17が、光透過部13に隣接する一対の光吸収部14の間(即ち、光透過部1単位あたり)に1つの割合で形成されているものであっが、本発明の好ましい実施形態においては、図5に示すように、光透過部1単位あたり凸部が2〜10個形成されていることがより好ましい。上記したような自己モアレやゴーストの発生を解消するには、光透過部の一単位あたりに形成される凸部の数が多いほど好ましいが、凸部の数が10個を超えるような光学機能層を作製するのは、製造工程の制約から、一般的に困難になる。
上記した光透過部は、光透過部構成組成物を硬化させることによって形成することができる。なお、光透過部の屈折率は特に限定されることはないが、適用する材料の入手性の観点等から1.49〜1.56であることが好ましい。
このような光透過部構成組成物としては、例えば、光硬化型プレポリマー、反応性希釈モノマーおよび光重合開始剤を配合した光硬化型樹脂組成物が好ましく用いられる。
上記光硬化型プレポリマーとしては、例えば、エポキシアクリレート系、ウレタンアクリレート系、ポリエーテルアクリレート系、ポリエステルアクリレート系、ポリチオール系等のプレポリマーを挙げることができる。
また、上記反応性希釈モノマーとしては、例えば、ビニルピロリドン、2−エチルヘキシルアクリレート、β−ヒドロキシアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート等を挙げることができる。
また、上記光重合開始剤としては、例えば、ヒドロキシベンゾイル化合物(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾインアルキルエーテル等)、ベンゾイルホルメート化合物(メチルベンゾイルホルメート等)、チオキサントン化合物(イソプロピルチオキサントン等)、ベンゾフェノン(ベンゾフェノン等)、リン酸エステル化合物(1,3,5−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシド等)、ベンジルジメチルケタール等が挙げられる。これらのうち光透過部13、13、…の着色防止の観点から好ましいのは、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンおよびビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシドである。なお、上記光重合開始剤(S1)は、光透過部構成組成物全量を基準(100質量%)として、0.5〜5.0質量%含まれていることが好ましい。
これらの光硬化型プレポリマー、反応性希釈モノマーおよび光重合開始剤は、それぞれ、1種あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
また必要に応じて、光透過部構成組成物中に、塗膜の改質や塗布適性、金型からの離型性を改善させるため、種々の添加剤としてシリコーン系添加剤、レオロジーコントロール剤、脱泡剤、離型剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤等を添加することも可能である。
次に、光学機能層を構成する光吸収部について説明する。光吸収部14は、図1に示したように、光学機能層10の光透過部13の間に配置される略台形断面を有する要素である。略台形断面の下辺に相当する面が、光透過部13の凸部の底と面一になるように、隣接する光透過部13の間に並列に配置されている。また、図示はしないが、光吸収部の形状は、略三角形断面であってもよい。また、本発明の好ましい実施形態においては、光吸収部が、図6(a)に示すように、略台形断面の下辺に相当する面(映像光源側の面)が凹状に窪んだ形状を有する。ここで、「窪んだ形状」とは、観察者側(基材層11側)に凹状に窪んだ部分を意味する。窪み18の深さは、1μm〜6μmであることが好ましい。窪み18の深さが1μmより小さい場合は、後に説明する映像光を拡散させる効果が、不十分になる場合がある。一方、窪み18の深さが6μmを超える場合は、後記するような方法によっては、所定形状となるように光吸収部を形成するのが困難になる。また、略台形断面における斜辺は、光学機能層10のシート面の法線方向に対して0度以上10度以下の角度をなしていることが好ましい。なお、斜辺の角度が0度に近い場合は、実質、台形ではなく矩形となる。
光吸収部の断面形状は、図6(b)に示すように、光吸収部14bの斜辺が折れ線状となっていてもよく、また、図6(c)に示すように、光吸収部14cの斜辺が曲線状とされていてもよい。
図6(a)に示した場合には、光吸収部14aの断面形状が略台形となっている。詳しくは、光吸収部14aの断面形状が、上辺および下辺と、上辺および下辺を結ぶ2つの斜辺とを有する略等脚台形である。ただし、当該略等脚台形断面の長い下辺に相当する面(映像光源側の面)は窪みを有するため、上辺および下辺は正確には平行ではない。また、当該略等脚台形断面の斜辺は光学機能層のシート入光面の法線に対して角度θ1をなしている。θ1は0度〜10度の範囲であることが好ましい。さらに好ましい角度は0度〜6度である。
図6(b)に示した場合には、光吸収部14bの斜辺(光透過部13b、13bの斜辺)は、1つの辺からではなく、2つの辺Hb1およびHb2ら構成されている。すなわち断面において折れ線状の斜辺を有している。詳しくは、光吸収部14bの斜辺において、映像光源側に近い側の斜辺Hb1は光学機能層のシート入光面の法線に対して角度θ2をなしている。一方、観察者側に近い側の斜辺Hb2は光学機能層のシート出光面の法線に対して角度θ3をなしている。この角度は、θ2>θ3の関係であるとともに、いずれも0度以上10度以下の範囲であることが好ましい。さらに好ましい角度は0度より大きく6度以下である。また、図6(b)の例は、一方の斜辺が2つの斜辺により構成されている例であるが、さらに多くの辺で折れ線状が構成されてもよい。
図6(c)に示した場合には、光吸収部14cの斜面(光透過部13cの斜辺)は曲線状で構成されている。このように光吸収部における略台形断面形状である斜辺が曲線状であってよい。この場合でも、映像光源側に近い側の曲線Hc1と光学機能層のシート入光面の法線とのなす角θ2よりも、観察者側に近い側の曲線Hc2と光学シートの出光面の法線とのなす角θ3の方が小さいことが好ましい。さらにその角度もいずれの部分でも0度より大きく10度以下の範囲であることが好ましい。さらに好ましい角度は0度より大きく6度以下である。ここで、曲線のある部分が光学機能層のシート入光面(または出光面)の法線との成す角は、曲線を10等分し、各隣接する端部同士を結ぶ線と、光学機能層のシート入光面(または出光面)の法線との成す角により定義される。
その他、光吸収部の形状は本実施形態のものに限定されるものではなく、外光を適切に吸収することが可能であれば適宜変更することが可能である。これには、例えば断面形状が略矩形である場合等を挙げることができる。ただし、いずれの形態の場合も、映像光源側の面は曲線または折れ線状に凹んだ窪みを有する。
また、光吸収部14は、光透過部13の屈折率Npと同じか、または小さい屈折率Nbを有する所定の材料により構成されている。このように光透過部13の屈折率Npと光吸収部14の屈折率NbとをNp≧Nbとすることにより、光吸収部14と光透過部13との界面で、所定の条件で光透過部13に入射した光源からの映像光を適切に反射させるとともに吸収することができる。NpとNbとの屈折率の差は特に限定されるものではないが、0〜0.06であることが好ましい。
また、本実施形態では上記のようにNp≧Nbの関係が好ましいが、必ずしもこれに限定されるものではなく、光透過部の屈折率を光吸収部の屈折率よりも小さく形成することも可能である。
本実施形態における光吸収部は、光吸収粒子とバインダ樹脂とを含む光吸収部構成組成物が光透過部間に充填されることにより構成されている。すなわち、バインダ樹脂中に光吸収粒子が分散されている。これにより、光学機能層に入射した映像光のうち、光透過部と光吸収部との界面で反射せずに、光吸収部の内側に入射した映像光を、光吸収粒子で吸収することができる。さらには所定の角度で入射した観察者側からの外光を適切に吸収することができ、コントラストを向上させることも可能となる。このとき光吸収部のバインダ樹脂が、上記の屈折率Nbである材料により構成される。バインダ樹脂として用いられる材料は特に限定されないが、例えば、下記のような光硬化型プレポリマー、反応性希釈モノマーおよび光重合開始剤を配合した光硬化型樹脂組成物が好ましく用いられる。
上記光硬化型プレポリマーとしては、例えば、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、およびブタジエン(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
また、上記反応性希釈モノマーとしては、例えば、単官能モノマーとして、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクトン、ビニルイミダゾール、ビニルピリジン、スチレン等のビニルモノマー、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、パラクミルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレ−ト、ベンジルメタクリレ−ト、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルホリン等の(メタ)アクリル酸エステルモノマー、(メタ)アクリルアミド誘導体が挙げられる。また、多官能モノマーとして、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジメチロール−トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAポリプロポキシジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレ−ト、グリセリルトリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化グリセリルトリ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレ−ト、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレ−ト、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレ−ト、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレ−ト等が挙げられる。
また、上記光重合開始剤としては、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシド等が挙げられる。これらの中から、光硬化型樹脂組成物を硬化させるための照射装置および光硬化型樹脂組成物の硬化性から任意に選択することができる。本発明において、光硬化型樹脂組成物に含まれる光重合開始剤の量は、光硬化型樹脂組成物の硬化性およびコストの観点から、光硬化型樹脂組成物全量を基準(100質量%)として、0.5〜10.0質量%であることが好ましい。
これらの光硬化型プレポリマー、反応性希釈モノマーおよび光重合開始剤は、それぞれ、1種あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
具体的には、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレートおよびメトキシトリエチレングリコールアクリレートからなる光重合性成分(詳しくは、光硬化型プレポリマーおよび反応性希釈モノマー)を、屈折率、粘度、あるいは光学機能層12の性能への影響等を考慮し、任意に配合して用いることができる。
なお、添加剤として、シリコーン、消泡剤、レベリング剤および溶剤等を光硬化型樹脂組成物に添加してもよい。
光吸収粒子は、光吸収部構成組成物中に含まれ、光吸収部を構成したとき、迷光や外光を吸収するように作用する。
光吸収粒子としては、カーボンブラック等の光吸収性の着色粒子が好ましく用いられる。ただし、光吸収粒子はこれらに限定されるものではなく、映像光の特性に合わせて特定の波長を選択的に吸収する着色粒子を光吸収粒子として使用してもよい。具体的には、カーボンブラック、グラファイト、黒色酸化鉄等の金属塩、染料、顔料等で着色した有機微粒子や着色したガラスビーズ等を挙げることができる。特に、着色した有機微粒子が、コスト面、品質面、入手の容易さ等の観点から好ましく用いられる。より具体的には、カーボンブラックを含有したアクリル架橋微粒子や、カーボンブラックを含有したウレタン架橋微粒子等が好ましく用いられる。こうした着色粒子は、通常、上記の光硬化型樹脂組成物中に3〜30質量%の範囲で含まれる。着色粒子の平均粒径は、1〜20μmであることが好ましい。ここで「平均粒径」とは、質量分布法による粒度測定で得られるものを意味する。平均粒径が1μm以上の着色粒子を用いることによって、以下に説明するようにして光吸収部14を形成する際に、着色粒子がドクターブレードによって掻き落とされずに、光透過部の上底部分の上に残留することを防止できる。
なお、光を吸収させるための手段は、本実施形態のように光吸収粒子による方法に限定されるものではない。他には例えば、光吸収部を構成する光吸収部構成組成物全体を顔料や染料によって着色し、全体が着色された光吸収部を形成することを挙げられる。
次に、光学機能層10を通る映像光の光路について説明する。これまでに説明したように、光学機能層10は、光透過部13が映像光源20側に凸部17を有し、光吸収部14の映像光源側の面(略台形断面の下辺)が窪み18を有している。このような形状を有する光学機能層とすることによって、映像光の利用効率を向上させることができる。図7を用いて、光学機能層が映像光の利用効率を向上させることができることについて以下に説明する。図7は、光学機能層を通る映像光の光路例を概略的に示した図である。
図7に示すように、光透過部13に所定の角度をもって入射した映像光L1は、まず凸部17に入射して屈折する。凸部17から光透過部13に入射した映像光L1の屈折角θaは、凸部17が備えられていない場合、すなわち光透過部の映像光源側の面が、基材層11の面に対して平行に形成されている場合に比べて小さくなる。このように、凸部17に入射した映像光は集光する方向に屈折する。光透過部13に入射した映像光の一部は、光吸収部14の斜辺から光吸収部に入射して吸収されるが、上記のように光透過部13に入射した映像光を集光させる方向に屈折させることによって、光吸収部14で吸収される映像光を減らすことができる。すなわち、凸部17で映像光が集光されることにより、凸部17がない場合には光吸収部14の斜辺に当たっていた映像光の一部が、光吸収部14の斜辺に当たらなくなる、もしくは光吸収部14の斜辺に当たるときの角度が大きくなって全反射することによって、光吸収部14で吸収されなくなる。このようにして光吸収部14で吸収されなくなった映像光は、光学機能層10の基材層11側の面から観察者側に出射する。
一方、光吸収部14に所定の角度をもって入射した映像光L2は、まず窪み18から光吸収部14に入射して屈折する。窪み18から光吸収部14に入射した映像光L2の屈折角θbは、窪み18が備えられていない場合、すなわち光吸収部の映像光源側の面が基材層11の面に対して平行に形成されている場合に比べて大きくなる。このように、窪み18から光吸収部14に入射した映像光は拡散する方向に屈折する。光吸収部14に入射した映像光の一部は光吸収部14で吸収されるが、上記のように光吸収部14に入射した映像光を拡散させる方向に屈折させることによって、光吸収部14の斜辺から光透過部13側に映像光を出射し、光吸収部14の光吸収粒子で吸収される映像光を減らすことができる。すなわち、窪み18で映像光が拡散されることにより、窪み18がない場合には光吸収部14で吸収されていた映像光の一部が、光吸収部14の光吸収粒子で吸収されずに、光透過部13を通って光学機能層10の基材層11側の面から観察者側に出射する。
以上のように、光学機能層によれば、光透過部13が凸部17を有することと、光吸収部14が窪み18を有することとによって、光吸収部14で吸収される映像光を減らして映像光の利用効率を上げることができる。
また、上記のように光学機能層によれば視野角拡大方向で映像光の利用効率を向上できるので、視野角が拡大した分、光吸収部14を深く(光学機能層の厚さ方向に厚く)して、視野角同等でコントラストを向上させることもできる。さらに、光透過部13と光吸収部14との屈折率差による、光透過部13と光吸収部14との界面での全反射を用いる場合は、光透過部13の凸部17により、全反射光が拡散されるので、視野角特性の改善や、全反射の波長分散による色ムラを改善することができる。
次に、上記した光学機能層の製造方法について説明する。図8は、光学機能層10の製造方法の一例について、一部の過程を概略的に説明する断面図である。図9は、光学機能層の製造方法の一例について、他の過程を概略的に説明する斜視図である。
光学機能層10を製造する際、図8に示すように、基材層11(基材層を含む基材11’)の上に、光透過部13を形成し、シート10’を得る。光透過部13を形成するには、まず、所定のピッチで光透過部13の形に対応した形の溝を有する金型ロール42を準備する。次に、金型ロール42とニップロール41との間に基材11’を送り込む。図8に示した矢印は、基材11’を送り込む方向である。基材11’の送り込みに合わせて、金型ロール42と基材11’との間に供給装置40から光透過部構成組成物30の液滴を供給し続ける。供給装置40から基材11’上に光透過部構成組成物30を供給するとき、金型ロール42と基材11’との間に、光透過部構成組成物30が溜まったバンク31が形成されるようにする。このバンク31において、光透過部構成組成物30が基材11’の幅方向に広がる。
上記のようにして金型ロール42と基材11’との間に供給された光透過部構成組成物は、金型ロール42およびニップロール41間の押圧力により、基材11’と金型ロール42との間に充填される。その後、光照射装置44によって光透過部構成組成物に光を照射し、光透過部構成組成物を硬化させることによって光透過部13を形成することができる。光透過部13が形成された後、シート11’上に光透過部13が形成されたシート10’は、剥離ロール43を介して引かれることによって、金型ロール42から引き剥がされる。
次に、図9に示すように、シート10’の光透過部13間に、光吸収部14を形成して、光学機能層10を得る。具体的には、光透過部13上に光吸収部構成組成物36を供給し、ドクターブレード35によって該光吸収部構成組成物36を光透過部13間の溝37に充填しつつ、余剰分の光吸収部構成組成物36を掻き落とし、光透過部13間の溝37に残った光吸収部構成組成物36に光を照射して硬化させることにより、光吸収部14を形成することができる。なお、図9に示した矢印は、シート10’の送り方向である。
このとき、光透過部13の弾性率は10MPa以上2000MPa未満であることが好ましい。光透過部13の弾性率が2000MPa以上になると、硬くなり、ワレや欠けの不具合が発生したり、上記のようにして光吸収部14を形成する際に、光学機能層の表面に外観不良を生じたり、光学機能層の透過率が低下したりするおそれがある。すなわち、光透過部13が硬すぎると、光透過部13上に供給した光吸収部構成組成物36のうち余剰分をドクターブレード35で掻き取る際、ドクターブレード35を光透過部13に押し付けても光透過部13が変形しないため、余剰分の光吸収部構成組成物36を掻き落としきれないおそれがある。光透過部13の弾性率が上記範囲であれば、ドクターブレード35を押し付けた際、光透過部13の変形により、余剰分の光吸部構成組成物36の掻き取り不良をなくし、光学機能層の表面に外観不良を生じたり、光学機能層12の透過率が低下したりすることを防止できる。なお、光透過部13の弾性率が10MPa以下だと光透過部13が軟らか過ぎるため、図8に示した過程において、光透過部13が金型ロール42から離型し難くなる。
<映像光源>
本発明による表示装置の映像光源20としては、一般的なプラズマディスプレイパネル(PDP)が挙げられるが、これに限定されるものではなく、液晶ディスプレイ(LCD)、電場発光ディスプレイ(EL)、ブラウン管ディスプレイ(CRT)であってもよい。
<前面板>
表示装置1の光学機能層10よりも観察者側に配置される前面板30は、上記した光学機能層の表面を保護する機能を有するとともに、表示装置外観に意匠性を持たせる機能を有するものである。前面板としては、通常、ガラス板が用いられるが、これに限定されるものではなく、透明樹脂板であってもよい。透明樹脂板としては、上記の機能を有するものであれば特に制限なく使用することができ、例えば、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂板や、アクリル樹脂板、ポリマーボネート樹脂板等が挙げられる。
<その他の層>
本発明の実施形態においては、表示装置1は、上記した光学機能層10、映像光源20および前面板30に加えて、図1に示したように、前面板30の観察者側に、反射防止フィルター40が配置されていてもよく、また、映像光源20と光学機能層10との間には、波長フィルター層60や電磁波遮蔽層80が配置されていてもよい。また、前面板または反射防止フィルター40の最前面には、ハードコート層や防眩層等の機能層が配置されていてもよい。これらの各機能層は、粘着層を介して積層される。この粘着層には、必要に応じて、UV吸収剤、近赤外線吸収剤、ネオン線吸収剤、および調色色素などを含める場合もある。
まず、電磁波遮蔽層80について説明する。電磁波遮蔽層80は、映像光源20側から発生する電磁波を遮断する機能を有する層である。当該機能を有する層であれば、電磁波を遮断する手段は特に限定されるものではない。これには、例えば、透明基材上に銅メッシュ層がエッチング方式、印刷方式、蒸着方式、スパッタ方式で形成されるものを挙げることができ、遮断すべき電磁波により適宜設計される。尚、銅メッシュ層を形成する方法として、透明基材と金属箔とを接着剤で積層した後に金属箔をフォトリソグラフィー法でパターニングする方法(例えば、特開平11−145678号公報)を選択する場合には、当該接着剤にも上記酸化防止剤を添加することで、電磁波遮蔽層の変色を防ぐことができる。
次に、波長フィルター層60について説明する。波長フィルター層60は、所定の波長の光の透過を抑制する機能を有する層である。透過を抑制されるべき波長は必要に応じて適宜選択することができる。波長フィルター層の具体例としては、PDPから出射されるネオン線をカットしたり、赤外線、近赤外線や紫外線をカットしたりする層、色調を調整する層等を挙げることができる。以下に、近赤外線をカットする層(近赤外線吸収フィルタ)、ネオン線をカットする層(ネオン光吸収フィルタ)、色調を調整する層(色調調整フィルタ)、および紫外線をカットする層(紫外線吸収フィルタ)について説明する。
近赤外線吸収フィルターとしては、近赤外線吸収剤を有する市販フィルム(例えば、東洋紡績社製、商品名No.2832)を用いたり、近赤外線吸収色素を粘着層や樹脂層へ含有させた組成物を成膜したり、或いはこれを透明基材または他の機能性フィルター上に塗布し、必要に応じ乾燥、硬化処理等を経て形成したものを用いることができる。
近赤外線吸収色素としては、PDPが発光するキセノンガス放電に起因して生じる近赤外線領域、即ち、800nm〜1100nmの波長域を吸収するものを用いる。該帯域の近赤外線の透過率が20%以下、さらに10%以下であることが好ましい。同時に近赤外線吸収フィルターは、可視光領域、即ち、380nm〜780nmの波長域で、十分な光線透過率を有することが望ましい。
近赤外線吸収色素としては、具体的には、ポリメチン系化合物、シアニン系化合物、フタロシアニン系化合物、ナフタロシアニン系化合物、ナフトキノン系化合物、アントラキノン系化合物、ジチオール系化合物、インモニウム系化合物、ジインモニウム系化合物、アミニウム系化合物、ピリリウム系化合物、セリリウム系化合物、スクワリリウム系化合物、銅錯体類、ニッケル錯体類、ジチオール系金属錯体類の有機系近赤外線吸収色素、酸化タングステン、酸化スズ、酸化インジウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化クロム、酸化ジルコニウム、酸化ニッケル、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化アンモン、酸化鉛、酸化ビスマス、酸化ランタン等の無機系近赤外線吸収色素、を1種、または2種以上を併用することができる。
また、近赤外線吸収色素を分散するバインダ樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂等の樹脂が用いられる。バインダ樹脂の乾燥、硬化方式としては、溶液(またはエマルジョン)からの溶媒(または分散媒)の乾燥による乾燥固化方式、熱、紫外線、電子線などのエネルギーによる重合、架橋反応を利用した硬化方式、或いは樹脂中の水酸基、エポキシ基等の官能基と硬化剤中のイソシアネート基などとの架橋、重合等の反応を利用した硬化方式などが適用できる。
本発明による表示装置に含まれていてもよいネオン光吸収フィルターは、映像光源がプラズマディスプレイパネル(PDP)である場合に、PDPから放射されるネオン光即ちネオン原子の発光スペクトルを吸収するべく設置される。ネオン光の発光スペクトル帯域は波長550nm〜640nmの為、ネオン光吸収フィルターの分光透過率は波長550nm〜640nmにおいて50%以下になるように設計することが好ましい。ネオン光吸収フィルターは、少なくとも550nm〜640nmの波長領域内に吸収極大を有する色素として従来から利用されてきた色素を近赤外線吸収フィルターのところに挙げたようなバインダ樹脂に分散させた組成物を成膜したり、或いはこれを透明基材または他の機能性フィルター上に塗布し、必要に応じ乾燥、硬化処理等を経て形成したりすることができる。該色素の具体例としては、シアニン系、オキソノール系、メチン系、サブフタロシアニン系もしくはポルフィリン系等を挙げることができる。当該バインダ樹脂としては、上記近赤外線吸収フィルターのところに挙げたような樹脂を用いることができる。
色調調整フィルターは、パネルからの発光の色純度や色再現範囲、電源OFF時のディスプレイ色などの改善の為にディスプレイ用フィルタの色を調整するためのものである。例えば色調調整色素をバインダ樹脂に分散させた組成物を成膜したり、或いはこれを透明基材または他の機能性フィルター上に塗布し、必要に応じ乾燥、硬化処理等を経て形成したりすることができる。色調調整色素としては、可視領域である380nm〜780nmに最大吸収波長を有する公知の色素から、目的に応じて任意に色素を組み合わせて使用することができる。色調調整色素として用いることのできる公知の色素としては、特開2000−275432号公報、特開2001−188121号公報、特開2001−350013号公報、特開2002−131530号公報等に記載の色素が好適に使用できる。さらにこのほかにも、黄色光、赤色光、青色光等の可視光を吸収するアントラキノン系、ナフタレン系、アゾ系、フタロシアニン系、ピロメテン系、テトラアザポルフィリン系、スクアリリウム系、シアニン系等の色素を使用することができる。当該バインダ樹脂としては、上記近赤外線吸収フィルターのところに挙げたような樹脂を用いることができる。
紫外線吸収フィルターとしては、例えば、紫外線吸収剤をバインダ樹脂に分散させた組成物を成膜したり、あるいはこれを透明基材または他の機能性フィルター上に塗布し、必要に応じ乾燥、硬化処理等を経て形成したりすることができる。紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール、ベンゾフェノン等の有機系化合物、微粒子状の酸化亜鉛、酸化セリウム等からなる無機系化合物からなるものが挙げられる。当該バインダ樹脂としては、上記近赤外線吸収フィルターのところに挙げたような樹脂を用いることができる。
次に、反射防止層40について説明する。反射防止層40は最も観察者側に配置されて外光の反射を防止する機能を有する層である。これによれば、外光が前面板の観察者側の面側の表面で反射して観察者側へ戻って、いわゆる映り込みが生じて映像が見え難くなることを抑制することができる。このような反射防止層は、市販の反射防止フィルムを用いる等して構成することが可能である。
これまでの説明では、映像光源20、光学機能層10、前面板30、電磁波遮蔽層80、波長フィルター層60、および反射防止層40を備えた表示装置10について説明したが、本発明による表示装置は、少なくとも、映像光源20と光学機能層10と前面板30とを備えていればよく、用途に応じてこれまでに説明した層以外の様々な機能を有する層も備えることができる。本発明の表示装置に備えられ得るその他の層としては、従来の表示装置に用いられていたものを特に限定することなく用いることができる。具体的には、防眩層やハードコート層などを、粘着層を用いて貼合することで構成することができる。また、粘着層を構成する粘着剤組成物にはUV吸収剤、近赤外線吸収剤、ネオン線吸収剤、および調色色素などを含め、粘着剤層に波長フィルター層も兼ねさせる場合がある。これらの層の積層順、および積層数は、表示装置の用途に応じて適宜決定される。以下、防眩層、およびハードコート層の機能ならびに粘着層について説明する。
防眩層は、いわゆるぎらつきを抑制する機能を有する層であり、アンチグレア層、AG層と呼ばれることもある。このような防眩層としては市販のものを用いることができる。
ハードコート層は、HC層とも呼ばれることもある。これは、画像表示面に傷がつくことを抑えるために耐擦傷性を付与することができる機能を有するフィルムが配置された層である。
粘着剤とは、接着の際には単に適度な加圧(通常、軽く手で押圧する程度)のみにより、表面の粘着性のみで接着可能なものをいう。粘着剤の接着力発現には、通常特に、加熱、加湿、放射線(紫外線や電子線等)照射といった物理的なエネルギー乃至作用が不要で、且つ重合反応等の化学反応も不要である。又、粘着剤は、接着後も再剥離可能な程度の接着力を経時的に維持し得るものである。粘着層の厚さは20μm〜50μm以下であることが好ましい。なお、粘着層の厚さとは、粘着層20の最も厚い部分の厚さをいう。
粘着層は、以下に説明する上記した光学機能層10と前面板30あるいは上記した各種機能層との密着性を高くするという観点からは、粘着層に用いられる粘着剤として、酸価を有する粘着剤を用いることが好ましい。酸価を有する粘着剤としては、例えば天然ゴムや合成樹脂のうち酸価を有するものが挙げられる。酸価を有する粘着剤としては、分子中にカルボキシル基を有する物質から成るものが挙げられるが、具体的には、アクリル系粘着剤であることが、透明性が高い点から好ましい。また、アクリル系粘着剤の酸価は1以上であることが密着性を良好にできる点から好ましい。
粘着層が含む酸価を有するアクリル系粘着剤としては、公知の粘着剤として慣用されているものの中から、適度な接着力、透明性、塗工適性を有し、映像光源からの光の透過スペクトルを実質的に変化させることの無いものを適宜選択する。
酸価を有するアクリル系粘着剤は、少なくとも(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーを含んで重合させたものであって、炭素原子数1〜18程度のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーとカルボキシル基を有するモノマーとの共重合体であるのが一般的である。粘着剤層20に含まれる粘着剤の接着能力は、粘着剤分子中に存在するカルボキシル基が電磁波遮蔽層21の銅メッシュ層の表面に強く吸着することによって発現する。なお、本発明において(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸および/またはメタクリル酸をいう。
(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーの例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸sec−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸sec−ブチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチル、(メタ)アクリル酸イソアミル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ウンデシルおよび(メタ)アクリル酸ラウリル等を挙げることができる。中でも、アクリル酸ブチルおよびアクリル酸2−エチルヘキシルが好ましく、さらに、アクリル酸ブチルとアクリル酸2−エチルヘキシルを組み合わせて用いることが好ましい。また、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、通常はアクリル系粘着剤中に30.0質量部〜99.5質量部の量で共重合されている。
また、アクリル系粘着剤を形成するカルボキシル基を有するモノマーとしては、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、マレイン酸モノブチルおよびβ−カルボキシエチルアクリレート等のカルボキシル基を含有するモノマーを挙げることができる。
さらに、本発明で用いられるアクリル系粘着剤には、上記の他に、アクリル系粘着剤の特性を損なわない範囲内で他の官能基を有するモノマーが共重合されていても良い。他の官能基を有するモノマーの例としては、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピルおよびアリルアルコール等の水酸基を含有するモノマー;(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミドおよびN−エチル(メタ)アクリルアミド等のアミド基を含有するモノマー;N−メチロール(メタ)アクリルアミドおよびジメチロール(メタ)アクリルアミド等のアミド基とメチロール基とを含有するモノマー;アミノメチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基を含有するモノマー;アリルグリシジルエーテル、(メタ)アクリル酸グリシジルエーテルなどのエポキシ基含有モノマーなどが挙げられる。この他にもフッ素置換(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリロニトリルなどのほか、スチレン、メチルスチレン、ビニルピリジン等のビニル基含有芳香族化合物、酢酸ビニル、ハロゲン化ビニル化合物などを挙げることができる。
さらに、本発明で用いられるアクリル系粘着剤には、上記のような他の官能基を有するモノマーの他に、他のエチレン性二重結合を有するモノマーを使用することができる。ここでエチレン性二重結合を有するモノマーの例としては、マレイン酸ジブチル、マレイン酸ジオクチルおよびフマル酸ジブチル等のα,β−不飽和二塩基酸のジエステル;プロピオン酸ビニル等のビニルエステル;ビニルエーテル;ビニルトルエン等のビニル芳香族化合物等を挙げることができる。
また、上記のようなエチレン性二重結合を有するモノマーの他に、エチレン性二重結合を2個以上有する化合物を併用することもできる。このような化合物の例としては、ジビニルベンゼン、ジアリルマレート、ジアリルフタレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレ−ト、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、メチレンビス(メタ)アクリルアミド等を挙げることができる。
さらに、上記のようなモノマーの他に、アルコキシアルキル鎖を有するモノマー等を使用することができる。(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルの例としては、(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−メトキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−メトキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−メトキシブチル、(メタ)アクリル酸4−メトキシブチル、(メタ)アクリル酸2−エトキシエチル、(メタ)アクリル酸3−エトキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−エトキシブチルなどを挙げることができる。これらアクリル系粘着剤の市販品としては、例えば、日本合成化学社製、商品名:「5 407」等が好適に用いられる。
粘着層は、酸化防止剤を含有することにより、密着性が良好となる酸価を有する粘着剤を用いながら電磁波遮蔽層の変色を防ぐことができる。当該酸化防止剤として用いられる化合物は、ベンゾトリアゾール系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤、ホスファイト系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、硫黄含有有機金属塩系酸化防止剤等から選択して用いることができるが、接着層が含む酸化防止剤がベンゾトリアゾール系酸化防止剤であることが、電磁波遮蔽層の銅メッシュ層の青色変色防止性能の点から好ましい。
上記ベンゾトリアゾール系酸化防止剤としては、少なくとも下記式(1)の構造を骨格として含むことを特徴とする化合物、並びに、そのナトリウム塩、カリウム塩、アミン塩が挙げられる。下記式(1)の構造に有していてもよい置換基としては、例えば、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、ハロゲン原子等が挙げられる。
具体的には、1,2,3−ベンゾトリアゾール(1H−ベンゾトリアゾール)、1H−ベンゾトリアゾールナトリウム塩、4−メチル−1H−ベンゾトリアゾール、5−メチル−1H−ベンゾトリアゾール、4−メチル−1H−ベンゾトリアゾールカリウム塩、5−メチル−1H−ベンゾトリアゾールカリウム塩、4−メチル−1H−ベンゾトリアゾールアミン塩、5−メチル−1H−ベンゾトリアゾールアミン塩、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール等が挙げられ、中でも1,2,3−ベンゾトリアゾール(1H−ベンゾトリアゾール)が好ましい。
粘着層において、上記粘着剤100質量部に対して上記ベンゾトリアゾール系酸化防止剤を1質量部以上含むことが好ましい。このような組成とすることにより、映像光源と電磁波遮蔽層とを粘着層を介して貼着した場合の接着力が向上し、かつ電磁波遮蔽層の銅メッシュ層の表面の変色を防止することができる。酸化防止剤の含有量が上記範囲未満の場合、酸化防止剤を粘着層に含有させても電磁波遮蔽層の銅メッシュ層の変色を十分に防ぐことができない恐れがある。
また、特に、上記粘着剤の酸価が1以上であり、且つ、粘着層が、上記粘着剤100質量部に対して上記ベンゾトリアゾール系酸化防止剤を1質量部以上含むことが好ましい。
さらに、本発明に係る粘着層には、所望に応じて、イソシアネート化合物等の硬化剤(架橋剤)、粘着付与剤、シランカップリング剤、充填剤等を配合することができる。
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明する。ただし本発明は実施例に限定されるものではない。
実施例1
(1)光透過部形成用金型の作製
表面に銅メッキを施した円柱状のロールに、2種類のダイヤモンドバイトを用いて円周方向に溝を切削した。1本目のダイヤモンドバイトは、先端幅35μm、深さ方向に斜面角度2.3°の斜面であり、深さ91μmのとき、バイトの幅が42μmとなる光透過部の略台形部分を形成するためのバイトである。2本目のダイヤモンドバイトは、幅35μmのとき深さ3μmとなる三角形状であり、光透過部の凸部(三角形状)を形成するバイトである。先ず、1本目のダイヤモンドバイトを用いて、銅メッキを施したロールの外周面に、全幅に渡って等間隔で、ロール軸方向の溝間ピッチを45μmとして金型ロールの銅メッキ層の外周を切削して溝を形成した。次いで、2本目のダイヤモンドバイトを用いて、溝の底を3μm切削し、45μm送った後、繰り返し同様に切削をおこなった。深さ91μm、溝底幅35μm、溝底にはさらに幅35μm、深さ3μmの三角形状が形成され、斜面角度2.3°、金型表面幅3μm、開口幅42μmの金型を等ピッチで形成した。上記のようにして切削したロールの一つの溝の一部の断面形状は図10に示す通りであった。このロールの外周面にクロムメッキを施して、光透過部形成用金型ロールを製作した。
(2)光透過性樹脂組成物の調製
ビスフェノールA―エチレンオキシド2モル付加物を40.0質量部と、イソホロンジイソシアネートを15.0質量部と、ウレタン化触媒としてビスマストリ(2−エチルヘキサノエート)(2−エチルヘキサン酸50%溶液)を0.02質量部と、を混合して80℃で5時間反応させ、その後、その後2−ヒドロキシエチルアクリレートを5.0質量部加えて80℃で5時間反応させ、光硬化型プレポリマー(P1)を得た。
次に光硬化性プレポリマー(P1)を60.0質量部と、反応性希釈モノマー(M1)としてのフェノキシエチルアクリレートを15.0質量部、およびビスフェノールA−エチレンオキシドを4モル付加したジアクリレートを25.0質量部と、金型離型剤(S1)としてのテトラデカノール−エチレンオキシドを10モル付加したリン酸エステル(モノエステル/ジエステル=モル比1/1)を0.05質量部、およびステアリルアミン−エチレンオキシドの15モル付加物を0.05質量部と、光重合開始剤(I1)としての1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンン(商品名:イルガキュア184、チバ・スペシャリティケミカルズ株式会社製)を3.0質量部と、を混合し、均一化して光透過性樹脂組成物を得た。
なお、この光透性樹脂組成物を厚さ100μmで塗工し、高圧水銀灯により800mJ/cm2の紫外線を照射して樹脂組成物を硬化させ、多波長アッベ屈折計DR−M4(株式会社アタゴ製)を用いて589nmの屈折率を測定したところ、1.550であった。
(3)光学機能層の光透過部の形成
上記の(1)で作製した金属ロールとニップロールとの間に、基材として、厚さ100μmのPETフィルム(商品名:A4300、東洋紡績社製)を搬送した。この基材の搬送に合わせ、上記(2)で得られた光透過性樹脂組成物を基材の一方の面に供給装置から供給し、金型ロールおよびニップロール間の押圧力により、基材と金型ロールとの間に光透過部構成組成物を充填した。その後、基材側から高圧水銀灯により800mJ/cm2の紫外線を照射して光透過部構成組成物を硬化させて、光透過部を形成した。その後、剥離ロールにより、金型ロールから、光透過部が形成された基材を離型し、光透過部を含む厚さが205μm±20μmであるシート(中間部材)を作製した。
この光透過部の弾性率を、圧縮式微小硬度計(FISCHER HM2000)を用いて微小圧子材料に負荷をかけ、これを除荷することによって測定した。このとき、負荷力は100mN、負荷速度は4μm/10秒、保持時間は60秒とした。その結果、光透過部の弾性率は800MPaであった。また、このとき、光透過部は金型ロールの溝に対応した形状であった。
(4)光吸収部形成用樹脂組成物の調製
光硬化型プレポリマー(P2)として、エチレンオキシド、2,2’−[(1−メチルエチリデン)ビス(4,1−フェニレンオキシメチレン)]ビス−、ホモポリマー、2−プロペノアート20.0を質量部と、反応性希釈モノマー(M2)としての2−フェノキシエチル=アクリラートを20.0質量部、α−アクリロイル−ω−フェノキシポリ(オキシエチレン)を20.0質量部、および2−{2−[2−(アクリロイルオキシ)(メチル)エトキシ](メチル)エトキシ}(メチル)エチル=アクリラートを13.0質量部と、光吸収粒子としての平均粒径4.0μmのカーボンブラックを25%含有したアクリル架橋微粒子(ガンツ化成株式会社製)を20.0質量部と、光重合開始剤(I2)としての1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(商品名:イルガキュア184、チバ・スペシャリティケミカルズ株式会社製)を7質量部と、を混合し、均一化して光吸収部構成組成物を得た。
なお、この光吸収部構成組成物の光吸収粒子を除いた組成物を厚さ10μmで塗工し、高圧水銀灯により800mJ/cm2の紫外線を照射して硬化させ、多波長アッベ屈折計DR−M4(株式会社アタゴ製)を用いて589nmの屈折率を測定したところ、1.540であった。
(5)光学機能層の光吸収部の形成
上記(4)で得られた光吸収部成型用樹脂組成物を、上記(3)で作製した中間部材上に供給装置から供給した。また、中間部材の進行方向と略垂直に配置されたドクターブレードを用いて、中間部材上に供給した光吸収部構成組成物を中間部材に形成された略V字形状の溝(光透過部間の溝)内に充填するとともに、余剰分の光吸収部構成組成物を掻き落とした。その後、高圧水銀灯により800mJ/cm2の紫外線を照射して光吸収部形成用樹脂組成物を硬化させて光吸収部を形成した。この状態では、光吸収部の表面には、深さ3μmの窪みが発生していた。
光吸収部と同一材料の光吸収粒子を除いた樹脂を、光吸収部の上の凹み部にコーティング後、余剰分をドクターブレードで掻き取り、高圧水銀灯により800mJ/cm2の紫外線を照射して光吸収部構成組成物を硬化させ、硬化させたところ、窪みは1.5μmに改善された。
(8)表示装置の組み立て
上記で得られた光学機能層と厚み2mmのガラス板とを、光学機能層の基材側にガラス板が配置されるようにして、粘着剤を用いて貼り合わせた。粘着剤としては、アクリル系樹脂の粘着剤(商品名:SKダイン2094、綜研化学株式会社、固形分25.0%、溶剤は酢酸エチルとメチルエチルケトン)を100質量部と、架橋剤(E−5XM、L−45、綜研化学株式会社、固形分5.0%)を0.28質量部と、1,2,3−ベンゾトリアゾールを0.25質量部と、希釈溶剤(トルエン/メチルエチルケトン/シクロヘキサノン=27.69g/27.69g/4.61g)を32.0質量部と、を混合したものを用いた。
プラズマディスプレイ(TH−P50G2、Panasonic社製)に貼合されていたもとの光学機能層とガラス板とを剥がし、代わりに、上記で得られた貼り合わせた光学機能層およびガラス板を組み込んで各部材を挟持した。この時、光学機能層の光透過部の凸部の頂部が空気界面を介して、プラズマディスプレイパネルと接した状態であった。この状態で、ニュートンリングおよびゴーストが発生するか、目視にて確認した。
実施例2
実施例1の光学機能層の光透過部の凸部の三角形状を、幅35μm深さ3μmのレンチキュラーレンズ形状(円弧の一部の形状)に変更した以外は、実施例1と同様にして表示装置を作製し、上記と同様にして評価を行った。
実施例3
実施例1の光学機能層の光透過部の凸部を、幅8μm、深さ1μmの三角形状の凸部を溝底に4ピッチ分形成したした以外は、実施例1と同様にして表示装置を作製し、上記と同様にして評価を行った。なお、このような形状の光透過部を形成するためしたロールの一つの溝の一部の断面形状は図11に示す通りであった。
実施例4
実施例2の光学機能層の光透過部の凸部を、幅8μm、深さ1μmのレンチキュラーレンズ形状の凸部を溝底に4ピッチ分形成した以外は、実施例2と同様にして表示装置を作製し、上記と同様にして評価を行った。
比較例1
実施例1の光学機能層の作製において、2本面のダイヤモンドバイトを用いずに金型を形成した以外は、実施例1と同様にして光学機能層を形成した。得られた光学機能層は、実施例1の光学機能層において凸部(三角形状の凸部)を有していない構造を有するものである。この光学機能層を用いて、実施例1と同様にして表示装置を作製した。この時、光学機能層の光透過部の略台形断面の上辺に相当する部分が、プラズマディスプレイパネルと接した状態であった。この状態で、ニュートンリングおよびゴーストが発生するか、目視にて確認した。
比較例2
比較例1で作製した表示装置において、プラズマディスプレイパネルと光学機能層との間に10mmの間隔があくようにして、各部材を挟持して表示装置を組み立てた。得られた表示装置の評価を上記と同様にして行った。