特許文献1のアスファルト保温シートは、非常に高い保温性を有するが、その高い保温性のために、トラックの荷台に取り付けて走行した際などに、積層されたシートの間に溜まった空気が膨張し、シート全体が風船状に膨らんでしまうことがあった。このように保温シートが膨らむことにより、シートを取り外して折り畳み等によって片付ける作業が行いづらくなるという問題が生じていた。
さらに、このアスファルト保温シートを実際にトラックの荷台に配置するに際し、高い保温性を確保できるようにしながら取り付けを行うこと、また、取り付けたシートを取り外すことは、必ずしも容易ではなかった。
また、特許文献1に記載されているシートは、周囲の温度よりも高い領域でも、周囲の温度よりも低い領域でも、優れた保温性を発揮するため、アスファルト以外にも、種々資材の保温(および保冷)に対して適用できる可能性がある。しかし、特許文献1に記載されているようなシート形状のままでは、種々の資材を被覆するに際し、高い取り扱い性が得られず、また必ずしも高い保温性能が得られるわけではない。
上記に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、高い保温性を有しながら、取り扱い性に優れた保温シート、トラック荷台用シートおよび保温ケースを提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明にかかる保温シートは、第一の樹脂シートと、第二の樹脂シートと、前記第一の樹脂シートと第二の樹脂シートの間に配置され、前記第一の樹脂シートおよび第二の樹脂シートよりも高い保温性を有する保温層と、からなる積層体を有し(ただし、前記第一の樹脂シートおよび第二の樹脂シートの一方がターポリンシートであり、他方がポリエステル帆布である場合を除く)、前記積層体の端縁の少なくとも一部においては少なくとも前記第一の樹脂シートと前記第二の樹脂シートとが融着され、前記積層体の端縁の残りの部分においては前記第一の樹脂シート、第二の樹脂シート、保温層が縫合され、前記第一の樹脂シートおよび第二の樹脂シートの少なくとも一方には、前記積層体の内部と連通する部位に、貫通孔が形成されていることを要旨とする。
ここで、前記第一の樹脂シートおよび第二の樹脂シートのうち、前記貫通孔が形成されている方の樹脂シートには、前記貫通孔を横切って、紐状部材が設けられ、さらに前記紐状部材の上から前記貫通孔を覆ってシート片が設けられていることが好ましい。
また、前記第一の樹脂シートおよび第二の樹脂シートの少なくとも一方と前記保温層は、面ファスナによって相互に固定されているとよい。
前記第一の樹脂シートおよび第二の樹脂シートはそれぞれ、ターポリンシートまたはポリエチレンシートよりなることが好ましい。
前記第一の樹脂シートおよび第二の樹脂シートは、同種の樹脂材料よりなることが好ましい。
前記保温層は、複数層積層された不織布シートよりなることが好ましい。
本発明にかかる第一のトラック荷台用シートは、上記のような保温シートより形成され、トラックの荷台の上面を覆うことを要旨とする。
ここで、前記トラック荷台用シートはトラックの幅方向に分割された2枚の分割シートよりなり、前記荷台の側あおり板の上端に取り付けられ、前記荷台の上面を開閉可能に覆う飛散防止装置に、前記各分割シートが取り付けられることが好ましい。
さらにこの場合、前記分割シートに、面ファスナが取り付けられ、前記分割シートが、前記面ファスナによって前記飛散防止装置を構成するパイプフレームに固定されるとよい。
本発明にかかる第二のトラック荷台用シートは、上記のような保温シートより形成され、トラックの荷台の側面に設けられることを要旨とする。
ここで、前記第一の樹脂シートおよび第二の樹脂シートのうち一方の面に、磁石が取り付けられていることが好ましい。
本発明にかかる保温ケースは、上記のような保温シートが、開口部を有する箱状に形成されてなることを要旨とする。
ここで、上記保温ケースは、前記保温ケースの内部の温度を計測し、記録する温度計測・記録部を有することが好ましい。
さらに、前記温度計測・記録部は、ICタグに前記温度を記録するものであるとよい。
上記発明にかかる保温シートは、第一の樹脂シートと第二の樹脂シートの間に保温層を挟んだ積層体を有することにより、対象物を被覆した際に、高い保温性を発揮する。そして、第一の樹脂シートと第二の樹脂シートの少なくとも一方に積層体の内部と連通する貫通孔が形成されていることにより、積層体内に溜まった空気が外部に脱出可能であるので、積層体が有する高い保温性のために保温シート内の空気が熱膨張し、保温シートが膨らむのが抑制される。また、保温シートが膨らんだ場合にも、保温シートの折り畳みなどの際に、貫通孔を介して内部の空気を速やかに抜くことができる。これにより、上記保温シートは、保温シート使用後の折り畳みなどに関して、高い取り扱い性を有する。
ここで、第一の樹脂シートおよび第二の樹脂シートのうち、貫通孔が形成されている方の樹脂シートに、貫通孔を横切って、紐状部材が設けられ、さらに紐状部材の上から貫通孔を覆ってシート片が設けられている場合には、貫通孔がシート片で覆われていることで、貫通孔から保温シート内部に、アスファルト合材等の保温対象物や、雨水、埃等の異物が侵入することが防止される。そして、このシート片が紐状部材を介して貫通孔を被覆していることで、貫通孔が形成された樹脂シートの面とシート片の間に間隙が維持され、貫通孔を介した保温シートからの空気の脱出が起こりやすくなっている。これにより、保温シートの膨らみの抑制と取り扱い性の向上が効果的に達成される。
また、第一の樹脂シートおよび第二の樹脂シートの少なくとも一方と保温層が、面ファスナによって相互に固定されている場合には、第一の樹脂シートや第二の樹脂シートと保温層の間で相互に対する滑り運動が起こるのが防止される。特に保温シートがトラックの荷台等を被覆するのに使用された場合に、保温シートの上に人間が乗ることが想定されるが、このように、保温シートを構成する面の間での滑りが防止されることで、保温シート上に乗る際の作業性と安全性が向上する。この点においても、保温シートの取り扱い性が高められる。
第一の樹脂シートおよび第二の樹脂シートがそれぞれ、ターポリンシートまたはポリエチレンシートよりなる場合には、高い保温性と防水性を有する保温シートが得やすくなり、種々の物品の保温に好適に用いることができる。
第一の樹脂シートおよび第二の樹脂シートが、同種の樹脂材料よりなる場合には、保温シートの構成や製造工程、使用方法を簡素なものとすることができる。
保温層が、複数層積層された不織布シートよりなる場合には、高い保温効果を達成することができる。
上記発明にかかる第一のトラック荷台用シートは、上記のような保温シートより形成されるので、高い保温性と取り扱い性を備えている。特に、大きな面積を占めるうえ、大気への放熱が活発に起こる荷台の上面を覆うシートに上記の保温シートが適用されることで、上記保温シートの有する高い保温性が効果的に利用される。また、荷台の上面を覆う保温シートは、日射を直接受け、保温シート内部での空気の膨張が起きやすいので、貫通孔を有することで、保温シートの膨張が抑制されること、および折り畳み時等に空気の脱出を促進できることが、大きな効果を発揮する。
ここで、トラック荷台用シートがトラックの幅方向に分割された2枚の分割シートよりなり、荷台の側あおり板の上端に取り付けられ、荷台の上面を開閉可能に覆う飛散防止装置に、各分割シートが取り付けられる場合には、飛散防止装置を閉状態とするだけで、保温シートが荷台の上面を覆った状態となる。また、飛散防止装置を開状態とするだけで、保温シートを荷台の上面から外すことができる。さらに、飛散防止装置に分割シートを取り付けたままにしておくことができるので、使用のたびに分割シートを着脱する必要がない。このように、トラック荷台用シートの取り扱い性がさらに高められる。
さらにこの場合、分割シートに、面ファスナが取り付けられ、分割シートが、面ファスナによって飛散防止装置を構成するパイプフレームに固定される構成によれば、飛散防止装置への分割シートの取り付け、および飛散防止装置からの分割シートの取り外しを簡便に行うことができる。
上記発明にかかる第二のトラック荷台用シートも、上記のような保温シートより形成されるので、高い保温性と取り扱い性を備えている。荷台の側面を介した積載物からの放熱も無視することができないものであり、この部位を上記のような高い保温性を有する保温シートで覆うことで、積載物に対する保温性を効果的に高めることができる。また、荷台の側面は、長細い形状を有しており、この側面に沿ったシートも必然的に長細い形状となり、折り畳み等に際して、取り扱いが行いにくい場合もある。そこで、貫通孔が形成され、折り畳み時等の空気の脱出が促進されることで、保温シートの熱膨張によって取り扱いの困難性が増すのが防止される。
ここで、第一の樹脂シートおよび第二の樹脂シートのうち一方の面に、磁石が取り付けられている場合には、この磁石によって、鉄系材料よりなる荷台の側面に荷台用シートを固定することができる。これにより、取り付けおよび取り外しに関して、荷台用シートの取り扱い性がさらに高くなる。
上記発明にかかる保温ケースは、上記のような保温シートより形成されるので、高い保温性を有する。そして、開口部を有する箱状に形成されていることにより、簡便な操作で保温対象物を覆い、保温することができる。
ここで、保温ケースが、保温ケースの内部の温度を計測し、記録する温度計測・記録部を有する場合には、保温対象物の保管や運搬の際に、保温対象物の温度を管理することができる。
さらに、温度計測・記録部が、ICタグに前記温度を記録するものである場合には、非接触で温度情報を読み取ることができるので、温度管理を簡便に行うことができる。また、温度情報の読み取りに際し、保温ケースの一部を開けたりして、保温対象物を露出させる必要がないので、保温効率を高く維持することができる。
以下、本発明の実施形態にかかる保温シートおよびトラック荷台用シート、ならびに保温ケースについて、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本明細書において、「保温」とは、対象物を周囲の温度よりも高温に保持することのみならず、対象物を周囲の温度よりも低温に保持する、いわゆる「保冷」も含むものである。
<保温シート>
本発明の一実施形態にかかる保温シートの構成を、図1〜4に示す。
(積層構造)
本発明の一実施形態にかかる保温シート1は、図1,2に示すように、第一の樹脂シート10と、保温層11と、第二の樹脂シート12をこの順に積層した積層体を主としてなる。保温シート1において、裏面と表面が特に指定される訳ではないが、対象物を被覆して保温する際に、主に大気等の外部環境と接する側(外側)に配置して使用することが想定される面を第一の樹脂シート10とし、主に対象物側(内側)に配置して使用することが想定される面を第二の樹脂シート12として、便宜的に区別するものとする。
第一の樹脂シート10および第二の樹脂シート12は、それぞれ、合成樹脂材料よりなるシートである。ただし、本発明においては、別に出願している、第一の樹脂シート10および第二の樹脂シート12の一方がターポリンシートであり、他方がポリエステル帆布である構成は、除くものとする。
第一の樹脂シート10および第二の樹脂シート12を構成する材料としては、高い強度と柔軟性を有するものが好ましく、さらには、保温シート1を屋外でも好適に使用できるように、高い耐水性を有するものが好ましい。保温シート1とした時に、高い耐水性を得るとともに、空気を内部に閉じ込めて高い保温効率を得る観点から、第一の樹脂シート10および第二の樹脂シート12は、少なくとも、間に挟まれる保温層11よりも高い密度を有する緻密な組織よりなることが好ましい。
具体的には、第一の樹脂シート10および第二の樹脂シート12はそれぞれ、オレフィン系樹脂、エステル系樹脂、塩化ビニル系樹脂から選択される材料、またはそれらが複合された材料よりなる場合を、好適なものとして挙げることができる。特に、ターポリンシートまたはポリエチレンシートを用いることが好適である。ターポリンシートは、ポリエステル等の樹脂繊維よりなるシートを、塩化ビニル等の防水性の高い熱可塑性樹脂よりなるフィルムで挟んで形成されたものである。
第一の樹脂シート10および第二の樹脂シート12は、同種の樹脂シートよりなっても、異種の樹脂シートよりなってもよい。保温シートの構成および製造工程、使用方法の簡素化の観点からは、第一の樹脂シート10と第二の樹脂シート12とが、同種の樹脂シートよりなることが好ましい。例えば、第一の樹脂シート10および第二の樹脂シート12の両方をターポリンシートから構成する場合や、それらの両方をポリエチレンシートから構成する場合を、好適なものとして挙げることができる。ターポリンシートやポリエチレンシートは、遮熱性に優れるとともに、耐油性や耐薬品性にも優れ、大気側に配置される第一の樹脂シート10および保温対象物側に配置される第二の樹脂シート12のいずれにおいても、求められる機能を好適に果たすことができる。第一の樹脂シート10においては、大気への放熱を阻止する観点から、遮熱性が求められ、第二の樹脂シート12においては、特にアスファルト合材のような油性材料や薬品類を被覆する場合に、高い耐油性や耐薬品性が求められるからである。
第一の樹脂シート10と第二の樹脂シート12が同種の樹脂シートよりなるという場合に、両者が全く同一のシート材よりなっても、主たる構成材料が同じで、厚さや表面処理等の状態が異なるシート材よりなってもよい。例えば、大気側に配置される第一の樹脂シート10においては、保温シート1の保温性を高めるとともに、耐候性を付与するため、例えばシルバーターポリンと称されるもののように、ラミネート加工等によって、シート材の表面に金属成分を含有する層を形成しておいてもよい。さらに、第一の樹脂シート10の表面に、社名やロゴマーク等を適宜印刷してもよい。
保温層11は、第一の樹脂シート10および第二の樹脂シート12よりも高い保温性を有する材料よりなる。具体的な保温層は、天然繊維または合成繊維が、不織布状、綿状、ウール状とされたもの、合成樹脂の発泡体等、第一の樹脂シート10および第二の樹脂シート12よりも低密度の高分子よりなる材料を挙げることができる。本保温シート1においては、保温層11が空気の層を保持し、それが第一の樹脂シート10と第二の樹脂シート12との間に挟まれているため、高い断熱作用が得られ、保温性が高くなっている。
特に、保温層11は、合成樹脂製の不織布よりなる保温シートを複数層積層してなることが好適である。図1,2に示した例では、保温層11は、合成樹脂製不織布よりなる2枚の保温シート11a,11bよりなる。不織布は組織内に空気を保持することで保温性に優れ、さらに複数層積層されることで、各層の間にも空気の層が形成され、高い保温性を発揮する。保温シート11a,11bは、いかなる合成樹脂よりなる不織布であってもよいが、保温性に優れ、熱に強く、吸水性が低いうえ、軽量であるポリエステル製不織布が好ましい。また、強度に優れるという点から、スパンボンド不織布であることが好ましい。保温シートの層数は、所望する保温性が得られ、かつ厚さが保温シート1の取り扱い性を妨げない範囲で、適宜選択すればよい。後述するように保温シート1をアスファルト合材の搬送用に使用するに際し、多くの場合には、図1,2に示す例のように保温シートを2枚使用すれば、十分な保温性が得られるが、寒冷地での使用が想定される場合には、例えば保温シートを4枚使用すればよい。保温シート11a,11bは、端縁において、第一の樹脂シート10、第二の樹脂シート12とともに相互に固定されるだけでもよいし、縫製等によって別途相互に固定されていてもよい。好ましくは、保温シート11a,11b間でのずれを防止するため、端縁以外でも相互に別途固定されている方がよい。
第一の樹脂シート10、保温層11、第二の樹脂シート12よりなる積層構造の端縁の少なくとも一部は、熱融着等によって融着される。融着された端縁からは、保温シート1の内部の空気が脱出できないので、融着は、保温シート1の保温性を高めるのに寄与する。融着に際し、第一の樹脂シート10、保温層11、第二の樹脂シート12の全てを一体に融着してもよいし、第一の樹脂シート10と第二の樹脂シート12のみを融着してもよい。不織布11をともに融着せず、第一の樹脂シート10と第二の樹脂シート12のみを融着すれば、各シート層間での自由な空気の流れを確保し、保温シート1全体に均質な空気の層を形成することができる。この意味で、保温シート1の端縁の融着部位の少なくとも一部において、第一の樹脂シート10と第二の樹脂シート12のみを融着した部位を設けることが望ましい。
積層構造の端縁のうち、融着されていない部位においては、ミシン縫製等によって、第一の樹脂シート10、保温層11、第二の樹脂シート12が縫合されている。縫合部は、空気の脱出口としても機能し、熱膨張した空気が保温シート1内部に籠るのを抑制する。また、縫合を行う際に、製品番号等を記載したタグ等を同時に縫い付けることができ、製品管理が容易になる。
図1,2に示した例では、第一の樹脂シート10、保温層11、第二の樹脂シート12が長方形に形成され、それらの長辺の長さは略等しいが、短辺の長さは保温層11のみ短くなっている。そして、2つの対向する長辺に沿った端縁においては、図1(b)に示すように、第一の樹脂シート10と第二の樹脂シート12が熱融着されている。一方、短辺のうち1辺に沿った端縁においては、図1(c)に示すように、第一の樹脂シート10、2枚の保温シート11a,11b、第二の樹脂シート12が縫合されている。他方の短辺に沿った端縁においては、第一の樹脂シート10、2枚の保温シート11a,11b、第二の樹脂シート12が融着されている。図中では、融着部位を細い実線で、縫合部位を破線で示している。
このように、端縁の少なくとも一部を融着することで、保温シート1内部に空気を閉じ込めることができ、高い保温性が得られる。一方、端縁の一部を縫合することにより、適度な空気の抜け道を確保し、保温シート1の膨張を防止することができる。融着する部位と縫合する部位の割合は、必要とされる保温性と、保温シート1の膨張防止の必要度を考慮して、適宜定めればよい。後述するように、本保温シート1においては、空気の脱出口を確保するために、第二の樹脂シート12にスリット13が別途形成されるので、膨張防止がそのスリット13によって十分達成されるならば、端縁の全部が融着されてもよい。一方、図1,2の例では、対向する短辺の一方のみが縫合されたが、両方とも縫合するなどして、縫合部を増やしてもよい。
このようにして形成された保温シート1全体の厚さは、典型的には、1〜2mmとなる。保温シートを2枚使用する場合には、保温シート1全体の厚さは1mmに近く、4枚使用する場合には、2mmに近くなる。
保温シート1には、ハトメ孔等、固定を行うための構造が適宜形成される。図1,2では、端縁の融着、縫合が行われた後、長方形の各頂点の近傍に、ハトメ孔14aが形成されている。
(スリットの構成)
本保温シート1においては、図3(b)に示すように、第二の樹脂シート12上において、積層体の内部と連通する部位に、空気抜きのための貫通孔としてのスリット13が形成されている。そして、第二の樹脂シート12の外側の面(保温層11に接するのと反対側の面)には、スリット13の長手方向外側に対向して設けられた2つのハトメ孔14b,14bの間に、ロープ(紐状部材)15が張り渡されている。さらに、ロープの上から、カバーシート(シート片)16がスリット13を覆って配置されている。カバーシート16は、端縁の少なくとも一部が開放された状態で、第二の樹脂シート12に縫いとめられている。
上記のように、保温シート1においては、端縁の少なくとも一部が融着された第一の樹脂シート10と第二の樹脂シート12の間に複数の保温シートよりなる保温層11が挟まれ、空気の層が保持される。その気密性のため、スリット13がなければ、被覆している保温対象からの熱や、日射によって加熱を受けると、保温シート1内に保持されている空気の層が加熱されて膨張し、保温シート1全体が風船状に膨らんでしまう。例えば保温シート1をトラックの荷台に設置している場合に、保温シート1の膨張が起こると、トラックの走行中に風を受ける面積が大きくなり、保温シート1が飛びやすくなったり、使用後のシートの折り畳み等における取り扱いが困難になったりする。スリット13が形成されていると、熱膨張した空気がスリット13を介して保温シート1の外に脱出することができるので、このような保温シート1の膨張を低減することができる。また、保温シート1が使用中に膨張してしまったとしても、折り畳み作業等に際し、保温シート1を厚さ方向に圧縮するような力を加えれば、内部の空気がスリット13から脱出し、シートの膨らみを容易に解消することができる。このような膨張の防止と空気の脱出の促進は、保温シート1の端縁に形成された縫合部位によっても行われるが、ミシン目等によって縫合部位に形成される空隙は小さく、十分にそれらの機能を発揮することができない。そこで、スリット13を形成することにより、膨張の防止と空気の脱出の促進を十分に達成することができる。
スリット13の大きさや形状、保温シート1上での位置および密度は、空気の脱出が十分に起こり、かつ要求される保温性が確保できるように、適宜決定すればよい。図3(a)では、スリット13を保温シート1の長手方向端部近傍に配置することで、保温シート1を広げて使用する際には保温性が妨げられにくくなり、折り畳む際には内部の空気を抜きやすくなるようにしている。上記では、被対象物からの熱による保温シート1の膨張を防止するのに高い効果を得るために、スリット13は、第二の樹脂シート12に設けているが、第一の樹脂シート10に設けても、ある程度の効果を得ることができる。また、第一の樹脂シート10および第二の樹脂シート12の両方にスリット13を設けてもよく、特に第一の樹脂シート10および第二の樹脂シート12を同じ樹脂材料より構成し、保温シート1を裏表の区別なく使用可能とする場合には、両面にスリット13を設けておくことで、保温シート1の使用の利便性が高められる。
スリット13を被覆するカバーシート16は、必ずしも設けられなければならないものではないが、これが存在することで、雨水や埃、アスファルト合材等の保温対象物のような異物がスリット13から保温シート1内部に侵入することが防止される。そして、カバーシート16とスリット13の間にロープ15が介在されることで、スリット13とカバーシート16の間に間隙が形成され、カバーシート16が存在していても、スリット13を介した空気の脱出がスムーズに起こる。
カバーシート16も、第二の樹脂シート12を構成する樹脂材料よりなることが好ましい。また、ロープ15の材質としては、柔軟性と強度に優れる等の観点から、綿ロープを例示することができる。ロープ15の太さは、カバーシート16とスリット13の間に十分な空隙を形成できるように選択すればよい。また、カバーシート16の第二の樹脂シート12への固定部位は、空気の通り道が十分確保され、かつ異物の侵入防止に効果を発揮するように適宜選択すればよい。例えば、長方形のカバーシート16の短辺のみ第二の樹脂シート12に固定し、長辺は開放しておく、あるいは3辺を第二の樹脂シート12に固定し、1辺は開放しておく等の構成を例示することができる。カバーシート16は、メッシュ材のように、それ自体も通気性を有しながら、所定の大きさ以上の異物を通過させない材料よりもなってもよい。この場合には、ロープ15を設ける必要はなく、また、カバーシート16の端縁全体を第二の樹脂シート12に縫いとめておけばよい。
(不織布層と第一の樹脂シートの固定)
本保温シート1において、保温層11と第一の樹脂シート10の間は、面内方向での相互間のずれを防ぐため、固定手段によって固定されていることが好ましい。図4に、保温層11と第一の樹脂シート10の間の構造を示す。2枚の保温シート11a,11bは、図4(a)中に破線で示したように、相互に縫合されている。そして、第一の樹脂シート10側となる保温シート11aの面には、雌雄一方の面ファスナ(例えばマジックテープ(登録商標))17aが縫いつけられている。そして、第一の樹脂シート10の保温層11側の面には、保温シート11aに固定された面ファスナ17aと対向する位置に、雌雄他方の面ファスナ17bが縫いつけられている。そして、図1,2に示すように第一の樹脂シート10と保温層11が重ねられた状態で、保温層11に形成された面ファスナ17aと第一の樹脂シート10に形成された面ファスナ17bが係合され、保温層11と第一の樹脂シート10が相互に面内方向に固定される。
保温層11が不織布よりなり、第一の樹脂シート10がターポリン材よりなる場合のように、保温層11と第一の樹脂シート10の組み合わせによっては、それら相互間で面内方向に滑りが起きやすい場合があり、第一の樹脂シート10と保温層11の間が固定されていなければ、保温シート1上を人間が歩いた際などに、これらの層の間に滑りが発生しやすい。保温シート1上を人間が歩くことは、保温シート1がトラックの荷台に設置され、荷台上で作業員が作業を行う場合などに想定される。第一の樹脂シート10と保温層11の間を面内方向に固定しておけば、このような滑りを低減することができ、保温シート1の上を人間が歩く際の作業性と安全性を高めることができる。
面ファスナの数と配置は、第一の樹脂シート10と保温層11の間のずれが十分に防止されるように決定すればよい。図4(a)のように、保温シート1の面内中ほどの中心対称な位置に4か所の面ファスナ17a,17bを設けておくことは、この観点から好適である。また、第一の樹脂シート10と不織布の間を固定する固定手段は、面ファスナに限られないが、面ファスナは、小面積でも面方向のずれに対して強い保持力を発揮するうえ、取り付けが容易である等の点で好適である。また、意匠面となる第一の樹脂シート10の外側表面(保温層11と反対側の面)には、面ファスナを取り付けるためのわずかな縫い目が露出するだけであり、社名やロゴマークなどを印刷するのに妨げとならない点においても好適である。例えば、第一の樹脂シート10と保温層11を面内中ほどでミシン縫製等によって縫合することでも、両者を固定する機能は果たせるが、縫い目に囲まれた領域の中で空気の溜めこみと膨張が起こりやすいうえ、第一の樹脂シート10の外側表面に多くの縫い目が露出してしまう。
上記では、面ファスナは、第一の樹脂シート10と保温シート11の間に設けているが、第二の樹脂シート12と保温シート11の間にも設けてもよい。すると、保温シート1全体として、層間の滑りを高度に防止することができる。特に第一の樹脂シート10および第二の樹脂シート12を同じ樹脂材料より構成し、保温シート1を裏表の区別なく使用可能とする場合には、両方の部位に面ファスナを設けておくことで、保温シート1の使用の利便性が高められる。
(保温シートの用途)
本保温シート1は、上記のように、高い保温性を備えたシートであるため、種々の物品の保温に使用することができる。第二の樹脂シート12側の面を保温対象物に接する内側とし、第一の樹脂シート10側の面を大気等に接する外側として、本保温シート1で保温対象物を被覆すれば、大気よりも高温の状態にある保温対象物から大気等への放熱や、大気よりも低温の状態にある保温対象物の加熱を効果的に抑制することができる。
中でも、本保温シート1は、アスファルト合材に対して好適に用いることができる。アスファルト合材は、工場などにおける製造工程において、所定の温度に加熱され、工事現場等、施工場所に運搬される。アスファルト合材の施工において、温度は非常に重要なパラメータであり、アスファルト合材の温度が低下すると、冷えたアスファルトの塊が発生し、その施工が著しく困難になる。これにより、施工部の仕上がり性も低下してしまう。そこで、本保温シート1でアスファルト合材を覆って搬送を行えば、アスファルト合材の温度の低下を抑制することができるので、製造場所においてアスファルト合材を過剰に加熱しておくことや施工場所で再加熱することを行わなくても、アスファルト合材を良好な温度条件で施工に用いることができる。これにより、施工が行いやすくなり、仕上がり性も向上する。過剰な加熱や再加熱を省略できることは、施工の手間とコストを省くことのみならず、施工時のエネルギー消費および二酸化炭素排出を削減し、地球環境の保護にも資するものである。また、アスファルト合材は、加熱された状態で運搬されるものであり、その熱による保温シートの膨張が無視できないので、空気抜きのスリット13が形成された本保温シート1の構成は、アスファルト合材への適用において、有用である。
本保温シート1は第一の樹脂シート10と第二の樹脂シート12の間に保温層11が挟まれた構成を有することにより、常温よりも高温の領域においても、常温よりも低温の領域においても、高い保温性を有する。よって、本保温シートは、アスファルト合材をはじめとする周囲の温度よりも高温に加熱された対象物を高温の状態に保持する用途のみならず、周囲の温度よりも低温に冷却された対象物を低温の状態に保持する用途にも好適に使用することができる。例えば種々の薬剤や飲食物は、品質保持のために、保管時や運搬時に低温に維持することが求められることも多いが、本保温シート1は、これらの資材を被覆するのに好適に用いられる。また、外気の温度と保温対象物の温度差が小さい場合の保温にも、本保温シート1を好適に用いることができ、例えば、寝袋やブランケット、担架等、人体を保温する物品を構成するのにも用いることができる。
<トラック荷台用シート>
本発明の実施形態にかかるトラック荷台用シート(以下単に荷台用シートまたはシートと称する場合がある)は、上記で説明した本発明の実施形態にかかる保温シート1より形成され、トラック(特に平ボディトラック、ダンプトラック等)の荷台に積載されたアスファルト合材などの積載物を被覆する。トラックの荷台の形状および積載物の形状等に応じて、トラック荷台用シートは任意の形状に形成することができるが、以下の実施形態を好適なものとして挙げることができる。
平ボディトラックやダンプトラックの荷台は、大気中に露出されており、積載物の温度を維持することは困難であるが、上記保温シート1を用いて積載物を覆うシートを構成することで、高い保温性を得ることができる。また、荷台は日光の直射を受けるため、保温シート内に溜め込まれた空気の膨張が起こりやすいが、上記保温シート1よりなる荷台用シートを用いれば、スリット13が形成されていることにより、膨張の防止と空気の脱出の促進が図られ、保温シート1の折り畳み時などに高い取り扱い性が得られる。
(第一の実施形態)
本発明の第一の実施形態にかかるトラック荷台用シート30を、トラック90の荷台91に取り付けた状態の上面図を、図5に模式的に示す。荷台用シート30は、1枚の長方形状の保温シート1よりなり、トラック90の荷台91の上面のほぼ全領域を覆っている。第一の樹脂シート10側の面を上にして荷台用シート30を積載物の上にかぶせた状態で、四方に設けられたハトメ孔14aにロープ96を挿通し、荷台91に固定することで、荷台用シート30を荷台91に取り付けることができる。
本実施形態にかかる荷台用シート30によれば、全体が一枚の保温シート1よりなる簡素な構成を有するため、高い保温性が得られる。特に、荷台91の面積が小さく、荷台用シート30の荷台91への着脱作業が比較的行いやすい場合などに、本実施形態にかかる荷台用シート30を好適に用いることができる。なお、図5では、荷台用シート30の設置部位が分かり易いように、荷台91と略同一の面積の荷台用シート30を荷台91に張り渡したように示してあるが、実際には、荷台91の面積に対して余裕をもった大きな面積のシート30を、積載物上にふわりとかけた方が、高い保温効果が得られる。
(第二の実施形態)
図6,7に、本発明の第二の実施形態にかかるトラック荷台用シート40の構成を示す。本荷台用シート40は、2枚の分割シート40a,40aよりなり、トラック90の荷台91の上面を、トラック90の幅方向に2分割して覆っている。本荷台用シート40は、手動操作または自動操作によって開閉可能な飛散防止装置93を有するトラック90に取り付けられる。飛散防止装置93は、大型のダンプトラックにおいてしばしば設けられるものであり、箱形の荷台91の左右の側方面を形成する側あおり板92aの上方に設けられ、閉状態において荷台91の上方を覆うことで、積載物の飛散を防止する役割を果たす。飛散防止装置93は、板状部93aまたは鉄骨よりなるパイプフレーム93b、あるいはその両方を有してなる。パイプフレーム93bには、飛散防止効果を高めるため、しばしばシート体が張り渡される。
2枚の分割シート40a,40aは、それぞれ車体の左右の飛散防止装置93のパイプフレーム93bに、パイプフレーム93bが形成する面を被覆するように、固定される。分割シート40a,40aは、飛散防止装置93を閉状態とした時に、第一の樹脂シート10側の面が上方に向き、第二の樹脂シート12側の面が荷台91側を向くように、パイプフレーム93bの内側(荷台91に面する側)に取り付けられる。図6,7に示した例では、分割シート40a,40aの一部が、パイプフレーム93bの上端部で、外側に折り返されている。飛散防止装置93を閉状態とすると、図6に示すように、パイプフレーム93bが荷台91の上面に配置されるのに伴い、2枚の分割シート40a,40aが荷台91上面の左右それぞれの側を被覆し、2枚合わせて荷台91上面全体を被覆するようになる。一方、図7に示すように、飛散防止装置93を上方に起立した開状態とすると、2枚の分割シート40a,40aが荷台91の上方から除去され、荷台91(および積載物)が露出するようになる。
分割シート40a,40aのパイプフレーム93bへの取り付けは、面ファスナを用いると、容易に行うことができる。たとえば、分割シート40a,40aの第一の樹脂シート10側の面上の、パイプフレーム93bを構成する鉄骨と接触する部位に、面ファスナを取り付けた帯状の取付部材を配置しておけばよい。取付部材は、帯状のシートの両端に雌雄の面ファスナがそれぞれ取り付けられてなり、その長手方向中途部位で分割シート40a,40aに縫い付けられる。そして、分割シート40a,40aを飛散防止装置93のパイプフレーム93bの外側に配置してから、この取付部材の帯状部をパイプフレーム93bの鉄骨に巻き付け、帯状部の両端の面ファスナを相互に係止すればよい。
このように、荷台91の上方を覆う荷台用シート40を分割シート40a,40aより構成し、飛散防止装置93に取り付けることで、飛散防止装置93を開閉するだけで、荷台用シート40の荷台91上方への配置および荷台91上方からの除去の作業を行うことができる。また、本荷台用シート40を使用しない間も分割シート40a,40aを飛散防止装置93に取り付けたままにしておくことができるので、保温対象の積載物を積み降ろしするたびに分割シート40a,40aを着脱する必要がない。さらに、面ファスナを用いて分割シート40a,40aを飛散防止装置93のパイプフレーム93bに取り付けられるようにすれば、分割シート40a,40aの着脱が必要な際にも、その着脱を容易に行うことができる。
図6では、分かり易いように、2枚の分割シート40a,40aの間に空隙を設けてあるが、実際には、保温性を高めるために、2枚の分割シート40a,40aは、飛散防止装置93を閉状態としたときに車両の幅方向中央付近で相互に重なりを有するように取り付けられることが好ましい。さらに、この重なり部分に、2枚の分割シート40a,40aを相互に固定する面ファスナ等の固定部材が設けられることが好ましい。また、上記第一の実施形態の場合と同様に、荷台91の面積に対して余裕をもった分割シート40a,40aを、飛散防止装置93にふわりと取り付けることが好ましい。
なお、上記のように、2枚の分割シート40aをパイプフレーム93bの内側に取り付ける形態の他、パイプフレーム93bの外側(荷台91に面しない側)に取り付ける形態としてもよい。この場合には、分割シートをパイプフレーム93bに固定するための面ファスナは、第二の樹脂シート12側の面上に取り付ければよい。
(第三の実施形態)
トラック90の荷台91においては、上面から大気への放熱に加え、側面を介した放熱も無視することができない。そこで、本発明の第三の実施形態にかかるトラック荷台用シート50は、トラック90の荷台91の側面を構成する壁面に設けられるものである。ここで、荷台91の側面とは、左右両側の側壁面92a,92aに限られず、車両後方の後方壁面92bおよび車両前方の前方壁面92cを含むものである。側壁面92a,92aおよび後方壁面92bは、開閉可能なあおり板であってもよい。
図8にトラック荷台用シート50の構成を示す。荷台用シート50は、トラック90の荷台91の側壁面92a,92a、後方壁面92b、前方壁面92cのいずれかの外側面と略同一形状の長方形の保温シート1よりなる。そして、第二の樹脂シート12側の面には、複数の磁石51が固定されている。そして、保温シート1の短辺からは、帯状の固定補助部材52が延出している。固定補助部材52の先端部にも、磁石51が取り付けられている。なお、この例では、保温シート1の第二の樹脂シート12側の面に、スリット13のかわりに略円形の貫通孔13’が形成され、カバーシート16に覆われている。
荷台用シート50は、荷台91の側壁面92a,92a、後方壁面92b、前方壁面92cに沿うようにして、荷台91の外側に取り付けられる。この際、第二の樹脂シート12側の面が荷台91の内側、つまり荷台91の側面92a,92a,92b,92cに接触する側に向けられる。そして、第一の樹脂シート10側の面が荷台91の外側に向けられる。トラック90の荷台91の側面は、鉄系の材料より構成されることが多く、磁石51が貼り付くことができる。よって、荷台用シート50の荷台91の側面への取り付けに際しては、ハトメ孔14aにロープ等を挿通し、車体に固定するとともに、磁石51を荷台91の側面に貼り付ければよい。これにより、荷台用シート50を容易かつ確実に荷台91に取り付けることができる。荷台用シート50の取り外しも容易に行うことができる。また、複数の荷台用シート50を荷台91の側面に取り付ける際に、固定補助部材52を隣接する荷台用シート50に重ね、磁石51で固定することで、複数の荷台用シート50間に空隙が生じないようにして、保温性を高めることができる。また、トラック90のキャビン後方となる前方壁面92cは、側壁面92a,92aとの間に段差を有する場合があり、このような場合には、固定補助部材52を前方壁面92cを覆うのに使用すれば、この段差を避けて荷台用シート50を取り付けることができる。
図9に、トラック90の荷台91への荷台用シート50の取り付け例を示す。ここでは、荷台91の4か所の壁面に、それぞれ独立した荷台用シート50が取り付けられている。つまり、左右の側壁面92a,92aには、側部用シート50a,50aが取り付けられ、前方壁面92cおよび後方壁面92bには、前後部用シート50b,50bが取り付けられている。図9では、固定補助部材52の記載を省略しているが、隣接する荷台用シート50に重なるように配置され、隣接する壁面に固定されている。
あるいは、4か所の壁面全体を1周するように、1枚の長尺状の荷台用シート50を取り付けてもよい。いずれの場合にも、荷台91の側面92a,92a,92b,92cからの放熱を防ぐ本実施形態にかかる荷台用シート50は、荷台91の上面を覆う第一の実施形態にかかる荷台用シート30または第二の実施形態にかかる荷台用シート40と併用することで、荷台91の積載物に対して、高い保温性を提供することができる。
なお、荷台91の側面92a,92a,92b,92cに取り付ける荷台用シートとしては、上記荷台用シート50のように、荷台91の外側に取り付けるものの他、内側に取り付けるものも考えられる。この場合、荷台用シートを荷台91の側面に取り付けるための磁石は、第二の樹脂シート12側ではなく、第一の樹脂シート10側の面に取り付け、第二の樹脂シート12側を荷台91の内側に向けて荷台91の側面92a,92a,92b,92cに取り付ければよい。
<保温ケース>
本発明の一実施形態にかかる保温ケース60の構成を、図10〜12に示す。本保温ケース60は、上記で説明した本発明の実施形態にかかる保温シート1より形成され、種々の対象物を被覆する。
保温ケース60は、上記保温シート1よりなる被覆部61を本体としてなる。被覆部61は、下面に開口部62を有する箱状の形状を有してなり、開口部62が形成されている面以外の5面は保温シート1よりなっている。保温シート1は、第一の樹脂シート10側の面が、外側つまり大気側に配置され、第二の樹脂シート12側の面が内側つまり箱形状の内部空間側に配置されている。
地面、床面等の載置面に載置した対象物の上方に、被覆部61の開口部62を配置してから、被覆部61を下方に移動させ、開口部62の端縁を載置面に接触させて被覆部61を載置面に立てることで、対象物を被覆部61の内部空間に収容し、被覆することができる。載置面と被覆部61の間に空隙が生じないようにすれば、対象物を外気と接触しないように被覆部61で被覆することができ、簡便な操作で、対象物を高効率に保温することができる。
保温ケース60で被覆して保温する対象物は、どのようなものでもかまわない。しかし、開口部62を有する箱形状にあらかじめ成形した被覆部61を対象物の上方からかぶせるという形態を保温ケース60が有するため、上記のトラック荷台用シートで被覆する好適な対象物として想定されたアスファルト合材のような不定形の対象物よりも、容器に収容されて形状の定まった対象物に対して使用する方が、被覆部61の取り扱いが容易であり、また高い保温効率が得やすい。このような対象物としては、缶に収容された薬剤や、箱状の容器に収容された食品、飲料を例示することができる。薬剤や飲食物は、品質保持のために、所定の温度、特に低温に維持することが求められる場合が多い。なお、保温ケース60の被覆部61の内側面は、第二の樹脂シート12となっており、特に第二の樹脂シート12を構成する材料が薬剤に対して耐性を有する場合には、薬剤を収容した容器の一部が開口されている場合等にも、保温ケース60を用いることができる。
保温ケース60は、さらに、被覆部61内部の温度管理のために、温度計測・記録部を有することが好ましい。温度計測・記録部は、被覆部61内部の温度を計測し、記録するためのものである。温度計測・記録部における温度の計測のための部位は、サーミスタ、熱電対等の温度センサ63によって具現される。本実施形態においては、温度センサ63は、第1チャンネル63a,第2チャンネル63b,第3チャンネル63cの3つ計測部からなり、被覆部61内の異なる部位の温度を計測している。温度計測・記録部における温度の記録のための部位は、ICタグ(RFIDタグ)64等によって具現することができる。図10(b)、(c)に示すように、温度センサ63とICタグ64の間は、信号ケーブル65によって接続され、所定時間間隔で、温度センサ63の各チャンネル63a〜63cが計測した温度が、ICタグ64に伝達されて記録される。温度計測・記録部にICタグ64が用いられる場合には、電磁波を用いて、記録されている温度情報を非接触で外部から読み取ることができる。つまり、対象物の保管や運搬の途中等において、温度情報の読み取りのために、被覆部61の一部を開けて対象物を大気に露出させながらケーブル接続等を行う必要がなく、被覆部61の保温効果が損なわれない。
図10(c)および図11に、温度センサ63の構成および取り付け方法の一例を示す。温度センサ63は、温度を検知する素子部66と、素子部66を覆うように配置され、素子部66で検知された温度を電気信号としてICタグ64に出力する計測コネクタ67よりなる。素子部66は、被覆部61を構成する保温シート1に埋め込んで固定され、温度を検知する部位が被覆部61の内部の空間に露出される。計測コネクタ67には信号ケーブル65が接続されている。このように、温度センサ63が、別体の素子部66と計測コネクタ67より構成されることで、温度センサ63の取り付け位置に関する自由度や、メンテナンスの利便性が高くなる。
ここで、計測コネクタ67に接続された信号ケーブル65は、図11に示すように、被覆部61の内部空間、または被覆部61を構成する保温シート1における層間の空間(例えば第一の樹脂シート10と保温層11の間)を通って、ICタグ64まで配線されていることが好ましい。これは、保温ケース60の取り扱い性を高くするためである。なお、温度センサ63が、この例のように素子部66と計測コネクタ67に分離されず、一体の部材として構成されている場合には、被覆部61に固定された温度センサ63とICタグ64の間が直接接続されることになり、温度センサ63の取り付け位置の自由度やメンテナンスの利便性は低くなるが、温度センサ63の取り付けおよび配線に関して、機械的強度が高くなる。
図12は、ICタグ64の取り付け方法の一例を示す断面図である。ここでは、ICタグ64は、被覆部61を構成する保温シート1の層間に挟んで固定されている。つまり、ICタグ64は、保温シート1を構成する第一の樹脂シート10と保温層11の間に配置されている。このようにすることで、ICタグ64が被覆部61の外側に露出されず、保温ケース60の取り扱い性が高くなる。上記のように、ICタグ64は非接触で温度情報を読み出すことができるので、このようにシート材に被覆されていることが、温度の読み取りにおいて障害とならない。
なお、以上において説明した保温ケース60は、あらかじめ所定の温度に加熱または冷却した対象物を外気から遮断し、対象物の温度を保持するためのものであったが、保温ケース60は、被覆部61内に、さらにヒータのような加熱手段や冷凍機のような冷却手段を備えるものであってもよい。そして、温度センサ63で計測された温度を参照しながら、所定温度に被覆部61内の空間を維持するように、加熱手段や冷却手段の出力を調節すればよい。すると、被覆部61を介した不可避的な熱伝達による保温効率の低下を補い、対象物を所定温度に維持しやすくなる。
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。また、上記各実施形態にかかるトラック荷台用シートは、所定の積層構造とスリットを有する保温シートよりなり、取り扱い性がさらに向上されるような形状とされ、また磁石のような取り扱い性を高める部材が付加されたものであるが、任意の保温シートを同様の形状とし、同様の部材を付加したトラック荷台用シートによれば、形状自体が有する高い取り扱い性の効果を享受することができる。
また、上記実施形態にかかる保温シートは、既に記載したように、対象物を周囲の温度より高温に保持することにも、低温に保持することにも用いることができる。対象物を低温に保持する目的や、人体等、外気よりは高温であるが、保温シートの膨張が問題になるほど高温ではない対象物を保温する目的にのみ用いる物品に加工して、本保温シートを用いる場合には、空気抜き用のスリット(貫通孔)を設けなくてもよい。例えば、対象物を低温に維持するために、高い保温効率と高い取扱い性を有する保冷ケースを得る目的で、上記実施形態において説明したような形状を有する保温ケースを構成する場合に、保温シートの面にスリット等の貫通孔を設けなくても、その目的を達成することができる。