以下に、図面を参照しながら開示された発明を実施するための複数の形態を説明する。各形態において先行する形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した他の形態を適用することができる。また、後続の実施形態においては、先行する実施形態で説明した事項に対応する部分に百以上の位だけが異なる参照符号を付することにより対応関係を示し、重複する説明を省略する場合がある。各実施形態で具体的に組合せが可能であることを明示している部分同士の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、明示してなくとも実施形態同士を部分的に組み合せることも可能である。
(第1実施形態)
図1は、本発明を適用した第1実施形態の電力システム1を示すブロック図である。電力システム1は、電力変換装置2を含む。電力システム1は、系統3に接続された需要家に設置されている。電力システム1は、例えば、個人の住宅、または事業所において構成されている。系統3は、電力供給会社などの供給者によって提供される電力網である。系統3は、単相3線方式の電源であり、中性線(N)と、電圧線(U、V)とを有する。電力システム1は、系統3から電力を受ける負荷(LD)4を備える。
電力システム1は、小規模な直流電源5、6を備える。直流電源は、充放電可能な蓄電池5、および住宅などに設置された小規模発電装置6を備える。小規模発電装置6として、例えば、太陽光発電装置、風力発電装置、水力発電装置、または燃料電池を用いることができる。これら小規模発電装置6は、最大の発電電力を引き出すために、最大電力点追従制御によって制御することができる。図示の例においては、太陽光発電装置6が採用されている。太陽光発電装置6は太陽電池6とも呼ばれる。
蓄電池5は、高電圧、大容量の二次電池である。蓄電池5は、リチウムイオン電池によって提供することができる。電力システム1および電力変換装置2は、系統3および/または太陽電池6から供給される電力によって蓄電池5を充電する機能を有する。蓄電池5が充電されるときの作動状態は充電モードとも呼ばれる。蓄電池5の電圧Vbは、太陽電池6が発電する太陽電池電圧Vpより高い。電力変換装置2は、蓄電池電圧Vbを太陽電池電圧Vpより高く維持するように制御される。電力システム1は、蓄電池5および/または太陽電池6から系統3へ電力を出力する機能を有する。この機能は、逆潮流機能とも呼ばれる。蓄電池5は放電することによって、図示されない他の負荷へ給電することができる。また、蓄電池5は放電することによって、系統3へ電力を供給することができる。
電力変換装置2は、系統3と蓄電池5と太陽電池6との間に設けられている。電力変換装置2は、系統3および太陽電池6から蓄電池5へ充電する充電モードと、太陽電池6および蓄電池5から系統3へ電力を供給する逆潮流モードとを実行可能である。
電力変換装置2は、蓄電池5に接続される第1の直流端11aと、太陽電池6に接続される第2の直流端11bとを有する。さらに、電力変換装置2は、系統3に接続された交流端12を備える。電力変換装置2は、2つの直流端11a、11bから供給される直流電力を交流電力に変換し、得られた交流電力を系統3に供給する。
電力変換装置2は、第1の直流端11aに接続された双方向チョッパ回路13を備える。双方向チョッパ回路13は、少なくとも昇圧回路として機能することができる。双方向チョッパ回路13は、直流端11aから供給される蓄電池電圧Vbを昇圧するコンバータ回路である。双方向チョッパ回路13は、蓄電池5の電圧を昇圧し、出力する。さらに、双方向チョッパ回路13は、蓄電池5へ電力を受け入れることができる。双方向チョッパ回路13は、降圧回路としても機能することができる。双方向チョッパ回路13は、リアクトルL1と、スイッチ素子Qb1と、スイッチ素子Qb2とを備える。
双方向チョッパ回路13の出力は、電圧を平滑化するための平滑コンデンサC1に供給される。平滑コンデンサC1は、後述のチョッパ回路などと共有して利用される。リアクトルL1の一端には、蓄電池電圧Vbが供給される。リアクトルL1の他端は、スイッチ素子Qb1とスイッチ素子Qb2との接続点に接続されている。スイッチ素子Qb1、Qb2は、昇圧出力の間において直列接続されており、スイッチ素子Qb1はロワアームを、スイッチ素子Qb2はアッパアームを提供する。リアクトルL1の一端と昇圧出力との間には、スイッチ素子Qb2が接続されている。スイッチ素子Qb2は、蓄電池5への電力の受け入れを可能とする。
平滑コンデンサC1は、昇圧出力の間に並列接続されている。この構成によると、スイッチ素子Qb1のスイッチングによって蓄電池電圧Vbが昇圧され、昇圧出力に供給される。また、スイッチ素子Qb1がスイッチングしないときには、蓄電池電圧Vbが直接に昇圧出力に供給される。さらに、スイッチ素子Qb2がON状態にあるとき、蓄電池5への充電電流を受け入れ可能である。
インバータ回路14は、双方向チョッパ回路13と交流端12との間に設けられている。インバータ回路14は、直流電力を交流電力に変換して系統3へ出力することができる回路である。インバータ回路14は、双方向チョッパ回路13によって昇圧された電圧、または蓄電池電圧Vbを交流波形に変換して交流端12に供給する。インバータ回路14は、双方向チョッパ回路13から出力された直流電力を変調する変調機能と、直流電力を交流電力に変換する直交変換機能とを有する。インバータ回路14は、交流電力を直流電力に変換して蓄電池5へ出力することができる回路である。インバータ回路14は、直交変換を双方向に実行可能である。
インバータ回路14は、フルブリッジ回路と、ノーマルコイルL2と、平滑コンデンサC2とを備える。フルブリッジ回路は、複数のスイッチ素子をHブリッジに接続した回路である。フルブリッジ回路は、少なくとも4つのスイッチ素子Q1、Q2、Q3、およびQ4を備える。スイッチ素子Q1およびQ4は、蓄電池電圧Vbと同じ極性の電圧を出力するので、正転対のスイッチ素子と呼ばれる。スイッチ素子Q2およびQ3は、蓄電池電圧Vbと逆極性の電圧を出力するので、反転対のスイッチ素子と呼ばれる。ノーマルコイルL2は、フルブリッジ回路の交流端に接続されている。ノーマルコイルL2は、ブリッジ回路のひとつの交流端と、系統3との間に直列接続されている。平滑コンデンサC2は、ノーマルコイルL2と交流端12との間に位置付けられ、交流端12に並列接続されている。
電力変換装置2は、第2の直流端11bに接続された昇圧チョッパ回路15を備える。昇圧チョッパ回路15は、昇圧回路としてだけ機能することができる。昇圧チョッパ回路15は、太陽電池6の電圧を昇圧し、出力する。昇圧チョッパ回路15は、直流端11bから供給される太陽電池電圧Vpを昇圧するコンバータ回路である。昇圧チョッパ回路15は、リアクトルL3と、スイッチ素子Qpvと、ダイオードD1とを備える。
昇圧チョッパ回路15の出力は、平滑コンデンサC1に供給される。太陽電池6の出力は、昇圧チョッパ回路15から、平滑コンデンサC1の両端に供給される。リアクトルL3の一端には、太陽電池電圧Vpが供給される。リアクトルL3の他端は、スイッチ素子QpvとダイオードD1との接続点に接続されている。スイッチ素子QpvとダイオードD1とは、昇圧出力の間において直列接続されており、スイッチ素子Qpvはロワアームを、ダイオードD1はアッパアームを提供する。
平滑コンデンサC1は、昇圧出力の間に並列接続されている。この構成によると、スイッチ素子Qpvのスイッチングによって太陽電池電圧Vpが昇圧され、昇圧出力に供給される。また、スイッチ素子Qpvがスイッチングしないときには、太陽電池電圧Vbが直接に昇圧出力に供給される。
上記構成によると、系統3の電力は、インバータ回路14から双方向チョッパ回路13を経由して蓄電池5に供給、すなわち充電可能である。蓄電池5の電力は、双方向チョッパ回路13からインバータ回路14を経由して系統3に逆潮流供給可能である。太陽電池6の電力は、昇圧チョッパ回路15からインバータ回路14を経由して系統3に逆潮流供給可能である。さらに、逆潮流時において、太陽電池6の電力は、昇圧チョッパ回路15から双方向チョッパ回路13を経由して蓄電池5に供給可能である。
電力変換装置2は、直流端11aと双方向チョッパ回路13との間に、ノイズを除去するためのフィルタ回路FLTを備える。電力変換装置2は、直流端11bと双方向チョッパ回路13との間に、ノイズを除去するためのフィルタ回路FLTを備える。電力変換装置2は、インバータ回路14と交流端12との間にノイズを除去するためのフィルタ回路FLTを備える。電力変換装置2は、交流端12とフィルタ回路FLTとの間に遮断器RL1、RL2を備える。遮断器RL1、RL2は、系統3と電力変換装置2との接続を遮断する。
電力変換装置2は、各部の電圧、電流を検出するための複数のセンサを備える。電力変換装置2は、蓄電池5の端子間電圧を蓄電池電圧Vbとして検出する電圧センサと、系統3の系統電圧Vacを検出する電圧センサとを備える。さらに、電力変換装置2は、太陽電池6の端子間電圧を太陽電池電圧Vpとして検出する電圧センサと、平滑コンデンサC1の端子におけるコンデンサ電圧Vcを検出する電圧センサとを備える。電力変換装置2は、太陽電池6から供給される電流ILpを検出する電流センサCS1と、ノーマルコイルL2に流れる電流ILを検出する電流センサCS2とを備える。
電力変換装置2は、双方向チョッパ回路13とインバータ回路14と昇圧チョッパ回路15とを制御する制御装置19を備える。制御装置19は、コンピュータによって読み取り可能な記憶媒体を備えるマイクロコンピュータによって提供される。記憶媒体は、コンピュータによって読み取り可能なプログラムを格納している。記憶媒体は、メモリによって提供されうる。プログラムは、制御装置19によって実行されることによって、制御装置19をこの明細書に記載される装置として機能させ、この明細書に記載される制御方法を実行するように制御装置19を機能させる。制御装置19が提供する手段は、所定の機能を達成する機能的ブロック、またはモジュールとも呼ぶことができる。
制御装置19は、ノーマルコイルL2の電流に応じて、系統3の交流電力に同期した交流電力を系統3に供給するように双方向チョッパ回路13とインバータ回路14とを制御する。制御装置19は、正弦波に相当する滑らかな凸状の電流波形が得られるように、双方向チョッパ回路13のスイッチングと、インバータ回路14のスイッチングとを制御する。制御装置19は、ノーマルコイルL2の検出電流ILが目標電流IL*に一致するように、双方向チョッパ回路13を制御する。また、制御装置19は、ノーマルコイルL2の電流ILが目標電流IL*に一致するように、インバータ回路14を制御する。
制御装置19は、力率を改善するためのフィードバック制御によって双方向チョッパ回路13を制御する。制御装置19は、比例積分制御(PI制御)によって双方向チョッパ回路13を制御する。PI制御においては、検出電流ILが目標電流IL*に一致するように、スイッチ素子Qb1またはQb2がスイッチングされる。PI制御においては、検出電流ILと目標電流IL*との偏差に比例する比例成分と、偏差を積分した積分成分とに応じて、スイッチ素子Qb1、Qb2のスイッチングディーティ比が調節される。
制御装置19は、力率を改善するためのフィードバック制御によってインバータ回路14を制御する。制御装置19は、ヒステリシス制御によってインバータ回路14を制御する。ヒステリシス制御においては、検出電流ILが目標電流IL*に一致するように、スイッチ素子Q1−Q4がスイッチングされる。ヒステリシス制御においては、目標電流IL*に基づいて設定された上限値と下限値との間に検出電流ILを維持するように、スイッチ素子Q1−Q4がスイッチングされる。
制御装置19は、太陽電池6の発電効率を高く維持するように昇圧チョッパ回路15を制御する。制御装置19は、太陽電池6において最大の電力が発電されるように昇圧チョッパ回路15を制御する。このような制御は、最大電力点追従制御として知られている。
制御装置19は、双方向チョッパ回路13を制御する双方向チョッパ制御部20と、インバータ回路14を制御するインバータ制御部50と、昇圧チョッパ回路15を制御する昇圧チョッパ制御部60とを備える。双方向チョッパ制御部20は、スイッチ素子Qb1、Qb2の駆動信号を出力する。インバータ制御部50は、スイッチ素子Q1−Q4の駆動信号を出力する。双方向チョッパ制御部20とインバータ制御部50とは、主制御部を提供する。昇圧チョッパ制御部60は、スイッチ素子Qpvの駆動信号を出力する。
複数のスイッチ素子Q1−Q4、Qb1、Qb2、およびQpvは、IGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)素子、またはパワーMOSFET(金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ)素子など、種々の電力用半導体素子によって提供することができる。
図2は、制御装置19が実行する電力変換制御180を示す。ステップ181では、制御装置19は、蓄電池5から放電する逆潮流モードであるか、蓄電池5へ充電する充電モードであるかを判定する。この判定は、利用者からの指示などの外部指令に基づいて制御装置19において設定される電流指令が放電方向であるか否かによって実行することができる。ステップ181において肯定的に判定されると、逆潮流モード処理182−188を実行するために、ステップ182へ進む。ステップ181において否定的に判定されると、充電モード処理189−195を実行するために、ステップ189へ進む。
(逆潮流モード処理)
ステップ182では、制御装置19は、系統電圧Vacの絶対値(|Vac|)と蓄電池電圧Vbとを比較する。制御装置19は、|Vac|<Vbであるか否かを判定する。|Vac|<Vbが肯定される場合、ステップ183へ進む。ステップ183では、制御装置19は、インバータ回路14をスイッチング駆動する。このとき、制御装置19は、インバータ回路14をヒステリシス制御する。ステップ184では、制御装置19は、双方向チョッパ回路13を制御する。このとき、制御装置19は、スイッチ素子Qb1をOFF状態に固定し、スイッチ素子Qb2をON状態に固定する。
ステップ183−184が実行される場合、蓄電池電圧Vbは系統電圧Vacより大きいから、昇圧を要することなく系統電圧Vacを供給できる。この時、インバータ回路14だけがスイッチング駆動され、直交変換と降圧制御とを提供する。双方向チョッパ回路13は、スイッチングが停止され、蓄電池電圧Vbを平滑コンデンサC1にそのまま出力するようにスイッチ素子Qb1、Qb2のON/OFF状態が固定される。この結果、双方向チョッパ回路13におけるスイッチング損失が抑制される。
さらに、スイッチ素子Qb2がON状態に固定されるから、インバータ回路14の停止期間においても太陽電池6から昇圧チョッパ回路15を経由して供給される電力を、蓄電池5へ流して蓄電池5を充電することができる。これにより、インバータ回路14の停止期間における平滑コンデンサC1の電圧上昇が抑制される。
ステップ182において|Vac|<Vbが否定される場合、ステップ185へ進む。ステップ185−186では、制御装置19は、系統電圧Vacの極性に同期してインバータ回路14をスイッチング駆動する。ステップ185では、制御装置19は、系統電圧Vacと0(ゼロ)とを比較する。すなわち、制御装置19は系統電圧Vacのゼロクロスを検出する。ステップ185においてVac<0が肯定される場合、ステップ186へ進む。ステップ186では、制御装置19は、スイッチ素子Q1、Q4をOFF状態に制御し、スイッチ素子Q2、Q3をON状態に制御する。ステップ185においてVac<0が否定される場合、ステップ187へ進む。ステップ187では、制御装置19は、スイッチ素子Q1、Q4をON状態に制御し、スイッチ素子Q2、Q3をOFF状態に制御する。ステップ188では、制御装置19は、双方向チョッパ回路13を制御する。このとき、制御装置19は、リアクトル電流ILの変化を目標電流IL*の変換に同期させながら蓄電池電圧Vbを系統電圧Vacに昇圧するようにスイッチ素子Qb1をPI制御し、スイッチ素子Qb2をOFF状態に固定する。
ステップ185−188が実行される場合、蓄電池電圧Vbは系統電圧Vacより低いから、昇圧しなければ系統3への逆潮流を実行できない。この時、インバータ回路14は系統電圧Vacと同じ低い周波数で極性が同期するようにスイッチング駆動され、直交変換だけ提供する。双方向チョッパ回路13は、スイッチ素子Qb1がスイッチング駆動されることにより、蓄電池電圧Vbを昇圧し、平滑コンデンサC1に供給する。このとき、スイッチ素子Qb2はOFF状態に固定される。この結果、インバータ回路14におけるスイッチング損失が抑制される。
(充電モード処理)
ステップ189では、制御装置19は、系統電圧Vacの絶対値(|Vac|)と蓄電池電圧Vbとを比較する。制御装置19は、|Vac|<Vbであるか否かを判定する。|Vac|<Vbが肯定される場合、ステップ190へ進む。ステップ190では、制御装置19は、インバータ回路14をスイッチング駆動する。このとき、制御装置19は、インバータ回路14をヒステリシス制御する。ステップ191では、制御装置19は、双方向チョッパ回路13を制御する。このとき、制御装置19は、スイッチ素子Qb1をOFF状態に固定し、スイッチ素子Qb2をON状態に固定する。
ステップ190−191が実行される場合、蓄電池電圧Vbは系統電圧Vacより大きいから、系統電圧Vacを昇圧する必要がある。この時、インバータ回路14だけがスイッチング駆動され、交直変換と昇圧制御とを提供する。双方向チョッパ回路13は、スイッチングが停止され、平滑コンデンサC1から電力を受け入れるようにスイッチ素子Qb1、Qb2のON/OFF状態が固定される。この結果、双方向チョッパ回路13におけるスイッチング損失が抑制される。
ステップ189において|Vac|<Vbが否定される場合、ステップ192へ進む。ステップ192−195では、制御装置19は、系統電圧Vacの極性に同期してインバータ回路14をスイッチング駆動する。ステップ192では、制御装置19は、系統電圧Vacと0(ゼロ)とを比較する。すなわち、制御装置19は系統電圧Vacのゼロクロスを検出する。ステップ192においてVac<0が肯定される場合、ステップ193へ進む。ステップ193では、制御装置19は、スイッチ素子Q1、Q4をOFF状態に制御し、スイッチ素子Q2、Q3をON状態に制御する。ステップ192においてVac<0が否定される場合、ステップ194へ進む。ステップ194では、制御装置19は、スイッチ素子Q1、Q4をON状態に制御し、スイッチ素子Q2、Q3をOFF状態に制御する。ステップ195では、制御装置19は、双方向チョッパ回路13を制御する。このとき、制御装置19は、スイッチ素子Qb1をOFF状態に固定し、リアクトル電流ILの変化を目標電流IL*の変換に同期させながら充電電流を望ましい値に調節するようにスイッチ素子Qb2をPI制御する。
ステップ192−195が実行される場合、蓄電池電圧Vbは系統電圧Vacより低い。この時、インバータ回路14は系統電圧Vacと同じ低い周波数で極性が同期するようにスイッチング駆動され、交直変換だけ提供する。双方向チョッパ回路13は、スイッチ素子Qb2がスイッチング駆動されることにより、充電電流を制御する。このとき、スイッチ素子Qb1はOFF状態に固定される。この結果、インバータ回路14におけるスイッチング損失が抑制される。
図3は、逆潮流モードにおいて制御装置19が提供する制御ロジックの一部を示す。図中には、逆潮流モードにおける双方向チョッパ制御部20およびインバータ制御部50を提供する制御ロジックが図示されている。
逆潮流モードにおいては、|Vac|>Vbのときには、双方向チョッパ回路13のスイッチ素子Qb1が系統3に同期した電力を系統3に供給するためのPI制御によってスイッチング制御され、インバータ回路14は直流から交流への変換のためだけにスイッチング制御される。PI制御は、ノーマルコイルL2に流れる電流ILに基づいて実行される。逆潮流モードにおいては、|Vac|<Vbのときには、インバータ回路14のスイッチ素子Q1−Q4が系統3に同期した電力を系統3に供給するためのヒステリシス制御によってスイッチング制御され、双方向チョッパ回路13のスイッチ素子Qb1はOFF状態に固定される。ヒステリシス制御は、ノーマルコイルL2に流れる電流ILに基づいて実行される。さらに、逆潮流モードにおいては、|Vac|<Vbのときには、双方向チョッパ回路13のスイッチ素子Qb2がON状態に固定され、太陽電池6から出力された電力を蓄電池5に充電可能とされる。
双方向チョッパ回路13の入出力の関係は、Vac=T/(T−Ton)×Vbと表される。ここで、Tはデューティ信号の周期、Tonはスイッチ素子Qb1のオン期間である。Ton/T=duty(時比率)から、duty=1−(Vb/Vac)である。この実施形態では、変調率とも呼ばれる時比率dutyを調節することにより蓄電池電圧Vbと系統電圧Vacとが所定の関係になるように双方向チョッパ回路13が制御される。
双方向チョッパ制御部20は、逆潮流モードにおいてPI制御を実行するためのブロック群21−44を備える。双方向チョッパ制御部20は、逆潮流モードにおいてスイッチ素子Qb1を制御するためのブロック群21−40を備える。双方向チョッパ制御部20は、制御のための目標値を設定する指令値作成器21を備える。逆潮流モードにおいては、指令値作成器21は、出力したい電流量を決定する出力指令値電流量作成器21aである。出力電流と系統電圧Vacは力率を1に近づける必要がある。そこで、位相同期制御器22において系統電圧Vac(交流電圧)のゼロクロスタイミングと周期を求め、系統電圧Vacと位相を合わせた正弦波を正弦波発生器23において作成する。この正弦波と電流量を、乗算器24において掛け合わせることにより出力電流の指令値IL*を得る。絶対値ブロック26により、ノーマルコイルL2に流れる電流ILの絶対値が与えられる。加算器ブロック27において、指令値IL*と電流ILとの偏差が算出される。
比例項ブロック28は、偏差に比例ゲインKpを掛けることにより、PI制御のための比例項を算出する。積分項ブロック29は、PI制御のための積分ゲインKiを設定する。乗算器ブロック30は、偏差に積分ゲインKiを掛ける。さらに、乗算器ブロック30の出力は、積分器ブロック31によって積分され、PI制御のための積分項が算出される。比例項と積分項とは、加算器ブロック32によって加算され、制御量が算出される。
加算器ブロック33は、蓄電池電圧Vbから制御量を減算する。絶対値ブロック34は、系統電圧Vacの絶対値を算出する。算出された絶対値は、1/Nブロック35によって逆数に変換される。乗算器ブロック36は、加算器ブロック33の出力に、1/Nブロック35の出力を乗算する。定数ブロック37は、定数1を発生する。加算器ブロック38は、定数1から乗算器ブロック36の出力を減算する。加算器ブロック38の出力は、パルス幅変調ブロック(PWM)40に入力される。パルス幅変調ブロック40は、変調率に応じたデューティ信号をスイッチ素子Qb1に供給する。
さらに、双方向チョッパ制御部20は、スイッチ素子Qb1を制御するための第1の切替制御ブロック(SWC1)39を備える。逆潮流モードにおける第1の切替制御ブロック39は、符号39aで示される。第1の切替制御ブロック39aは、蓄電池電圧Vbと系統電圧Vacとの関係に応じてPI制御の実行期間を制御する。第1の切替制御ブロック39aは、スイッチ素子Qb1のPWM変調された信号によるスイッチング制御の期間と、OFF状態への固定制御の期間とを設定する。系統電圧Vacの絶対値が蓄電池電圧Vbより大きいとき、すなわち|Vac|≧Vbのとき、パルス幅変調ブロック40を作動状態として、スイッチ素子Qb1がPI制御によって制御されることを許容する。
一方、第1の切替制御ブロック39aは、系統電圧Vacの絶対値が蓄電池電圧Vbより小さいとき、双方向チョッパ回路13の昇圧を停止する。すなわち|Vac|<Vbのとき、第1の切替制御ブロック39aは、パルス幅変調ブロック40をOFF状態とする。この結果、パルス幅変調ブロック40は、スイッチ素子Qb1をOFF状態に固定する。言い換えると、第1の切替制御ブロック39aは、双方向チョッパ回路13がPI制御によって制御されることを禁止する。第1の切替制御ブロック39aは、系統電圧Vacが蓄電池電圧Vbより低いとき、双方向チョッパ回路13による昇圧を停止する停止手段を提供する。これにより、双方向チョッパ回路13は、|Vac|≧Vbのときだけ蓄電池電圧Vbから、昇圧された電圧を供給する。|Vac|<Vbのとき、双方向チョッパ回路13の出力には、スイッチ素子Qb2の寄生ダイオードを通して蓄電池電圧Vbが供給される。なお、|Vac|=Vbのときには、パルス幅変調ブロック40は作動状態または停止状態のいずれかの状態におくことができる。双方向チョッパ制御部20は、系統電圧Vacが蓄電池電圧Vbより大きいとき、系統3に交流電力を出力するように双方向チョッパ回路13をPI制御によって制御するPI制御手段を提供する。
双方向チョッパ制御部20は、逆潮流モードにおいてスイッチ素子Qb2を制御するためのブロック群41−44を備える。ON信号ブロック41は、スイッチ素子Qb2をON状態に駆動する信号を出力する。OFF信号ブロック42は、スイッチ素子Qb2をOFF状態に駆動する信号を出力する。選択器ブロック43は、第2の切替制御ブロック44からの指令に基づいてスイッチ素子Qb2の駆動信号を切換える。
双方向チョッパ制御部20は、スイッチ素子Qb2を制御するための第2の切替制御ブロック(SWC1)44を備える。逆潮流モードにおける第2の切替制御ブロック44は、符号44aで示される。第2の切替制御ブロック44aは、蓄電池電圧Vbと系統電圧Vacとの関係に応じて双方向チョッパ回路13のハイサイド側のスイッチ素子Qb2を制御する。第2の切替制御ブロック44aは、スイッチ素子Qb2のON状態への固定制御の期間と、OFF状態への固定制御の期間とを設定する。系統電圧Vacの絶対値が蓄電池電圧Vbより大きいとき、すなわち|Vac|≧Vbのとき、スイッチ素子Qb2はOFF状態に固定的に制御される。
一方、第2の切替制御ブロック44aは、系統電圧Vacの絶対値が蓄電池電圧Vbより小さいとき、すなわち|Vac|<Vbのとき、スイッチ素子Qb2をON状態に固定する。これにより、双方向チョッパ回路13は、|Vac|≧Vbのときは蓄電池電圧Vbを出力する。|Vac|<Vbのとき、スイッチ素子Qb2がON状態に固定されるから、太陽電池6で発電された電力を蓄電池5に導入し、蓄電池5を充電することができる。この結果、平滑コンデンサC1の電圧の過剰な上昇が抑制される。なお、|Vac|=Vbのときには、スイッチ素子Qb2はON状態またはOFF状態のいずれかの状態におくことができる。
インバータ制御部50は、インバータ回路14を制御する。インバータ制御部50は、ヒステリシス制御を提供するためのブロック群51−52を備える。ブロック群51−52は、検出電流ILが目標電流IL*に追従して変化するように、インバータ回路14のスイッチ素子Q1−Q4を駆動する。ヒステリシス指令値作成器51は、上述の双方向チョッパ回路13の制御のために求めた電流指令値IL*からヒステリシス制御のための上限値HHと下限値HLを作成する。この上限値HHと下限値HLの間の電流が流れるようにヒステリシス制御が実行される。
ヒステリシス制御ブロック(HYS)52は、検出電流ILと、上限値HHと、下限値HLとを入力する。ヒステリシス制御ブロック52は、検出電流ILが上限値HHと下限値HLとの間に維持されるように、スイッチング信号を出力する。ヒステリシス制御ブロック52は、検出電流ILが上限値HHまたは下限値HLに到達するごとに、正転対のスイッチング素子Q1、Q4と反転対のスイッチング素子Q2、Q3とのON状態とOFF状態とが反転するようにスイッチング信号を出力する。
より具体的には、検出電流ILが上限値HHに到達すると、すなわち上限値HH<検出電流ILになると、スイッチング素子Q1およびQ4をOFF状態とし、スイッチ素子Q2およびQ3をON状態とする反転駆動のためのスイッチング信号を出力する。検出電流ILが下限値HLに到達すると、すなわち下限値HL>検出電流ILになると、スイッチング素子Q1およびQ4をON状態とし、スイッチ素子Q2およびQ3をOFF状態とする正転駆動のためのスイッチング信号を出力する。ヒステリシス制御ブロック52は、インバータ回路14から供給される交流電力を滑らかな正弦波に変調するためにインバータ回路14をヒステリシス制御によって制御するヒステリシス制御手段を提供する。
選択ブロック54は、ヒステリシス制御ブロック52からの信号と、後述する極性制御ブロック(PSC)53からの信号とのいずれかを選択する。デッドタイム付加ブロック56は、選択ブロック54を通過したスイッチング信号に、デッドタイムを付加して、スイッチ素子Q1およびQ4の駆動信号を出力する。反転ブロック(INV)57は、選択ブロック54を通過したスイッチング信号を反転する。デッドタイム付加ブロック58は、反転ブロック57によって反転されたスイッチング信号に、デッドタイムを付加して、スイッチ素子Q2およびQ3の駆動信号を出力する。
極性制御ブロック53は、系統電圧Vacの極性に応じて反転するスイッチング信号を出力する。すなわち、系統電圧Vacがゼロ以上のとき、スイッチ素子Q1およびQ4をON状態とし、スイッチ素子Q2およびQ3をOFF状態とするスイッチング信号を出力する。また、系統電圧Vacがゼロ未満のとき、スイッチ素子Q2およびQ3をON状態とし、スイッチ素子Q1およびQ4をOFF状態とするスイッチング信号を出力する。極性制御ブロック53は、双方向チョッパ回路13によって昇圧された直流電力を交流電力に変換するためだけにインバータ回路14を制御する極性制御手段を提供する。
さらに、インバータ制御部50は、蓄電池電圧Vbと系統電圧Vacとの関係に応じてヒステリシス制御の実行期間を制御する第3の切替制御ブロック(SWC3)55を備える。逆潮流モードにおける第3の切替制御ブロック55は、符号55aで示される。第3の切替制御ブロック55aは、インバータ回路14を、高速スイッチング状態と、低速スイッチング状態とに切替える切替手段でもある。高速スイッチング状態では、インバータ回路14は、正弦波を出力するためにヒステリシス制御される。低速スイッチング状態では、インバータ回路14は、双方向チョッパ回路13の出力を変調なしで出力するために系統電圧Vacの極性に応じて制御される。
第3の切替制御ブロック55aは、系統電圧Vacの絶対値が蓄電池電圧Vbより大きいとき、すなわち|Vac|≧Vbのとき、極性制御ブロック53の出力だけによってインバータ回路14が制御されることを許容する。このとき、第3の切替制御ブロック55aは、ヒステリシス制御ブロック52の出力によってインバータ回路14が制御されることを禁止する。これにより、インバータ回路14は、|Vac|≧Vbのときは、双方向チョッパ回路13によって昇圧された電圧を系統3に供給する。インバータ回路14は、双方向チョッパ回路13によって昇圧された直流電力を交流電力に変換し、系統3に供給する。
一方、第3の切替制御ブロック55aは、系統電圧Vacの絶対値が蓄電池電圧Vbより小さいとき、すなわち|Vac|<Vbのとき、ヒステリシス制御ブロック52の出力だけによってインバータ回路14が制御されることを許容する。このとき、第3の切替制御ブロック55aは、極性制御ブロック53の出力によってインバータ回路14が制御されることを禁止する。これにより、インバータ回路14は、|Vac|<Vbのときは、ヒステリシス制御によって変調された電圧を系統3に供給する。なお、|Vac|=Vbのときには、ヒステリシス制御ブロック52または極性制御ブロック53によってインバータ回路14を制御することができる。
図4は、充電モードにおいて制御装置19が提供する制御ロジックの一部を示す。図中には、充電モードにおける双方向チョッパ制御部20およびインバータ制御部50を提供する制御ロジックが図示されている。
充電モードにおいては、|Vac|>Vbのときには、双方向チョッパ回路13のスイッチ素子Qb2が系統3に同期した電流を系統3から蓄電池5へ供給するためのPI制御によってスイッチング制御され、インバータ回路14は交流から直流への変換のためだけにスイッチング制御される。PI制御は、ノーマルコイルL2に流れる電流ILに基づいて実行される。充電モードにおいては、|Vac|<Vbのときには、インバータ回路14のスイッチ素子Q1−Q4が系統3に同期した電流を系統3から蓄電池5へ供給するためのヒステリシス制御によってスイッチング制御され、双方向チョッパ回路13のスイッチ素子Qb1はOFF状態に固定され、スイッチ素子Qb2はON状態に固定される。ヒステリシス制御は、ノーマルコイルL2に流れる電流ILに基づいて実行される。
双方向チョッパ制御部20は、充電モードにおいてPI制御を実行するためのブロック群21−49を備える。双方向チョッパ制御部20は、逆潮流モードにおいてスイッチ素子Qb1を制御するためのブロック群39(39b)、49を備える。OFF信号ブロック49は、スイッチ素子Qb1をOFF状態に駆動する信号を出力する。充電モードにおける第1の切替制御ブロック39は、符号39bで示される。第1の切替制御ブロック39bは、系統電圧Vacおよび蓄電池電圧Vbの状態にかかわらず、スイッチ素子Qb1をOFF状態に維持するようにOFF信号ブロック49を制御する。
双方向チョッパ制御部20は、充電モードにおいてスイッチ素子Qb2を制御するためのブロック群21−48を備える。充電モードにおいては、指令値作成器21は、指令値充電電流量作成器21bである。指令値充電電流量作成器21bにおいて、蓄電池5に充電したい電力を系統電圧Vacで割り、指令値電流量を作成する。ブロック22−33、36、40は既に説明したとおりである。逆潮流モードの電流方向を正とすると、電流指令値IL*は、系統電圧Vacと反転した正弦波となる。検出電流ILは、絶対値ブロック26に入力される。絶対値ブロック47は、系統電圧Vacの絶対値を算出し、加算器ブロック33に供給する。加算器ブロック33の出力は、1/Nブロック48において逆数に換算され、乗算器ブロック36に供給される。乗算器ブロック36は、1/Nブロック48の出力と蓄電池電圧Vbとを乗算する。乗算器ブロック36の出力は、パルス幅変調ブロック(PWM)40に入力される。
充電モードにおける第2の切替制御ブロック44は、符号44bで示される。第2の切替制御ブロック44bは、スイッチ素子Qb2のPWM変調された信号によるスイッチング制御の期間と、ON状態への固定制御の期間とを設定する。第2の切替制御ブロック44bは、系統電圧Vacの絶対値が蓄電池電圧Vbより大きいとき、すなわち|Vac|≧Vbのとき、パルス幅変調ブロック40を作動状態として、スイッチ素子Qb2がPI制御によって制御されることを許容する。この結果、双方向チョッパ回路13は、|Vac|≧Vbの間中、系統3の電力に検出電流ILを同期させながら、降圧作動を実行し、蓄電池5に充電電流を供給する。
一方、第2の切替制御ブロック44bは、系統電圧Vacの絶対値が蓄電池電圧Vbより小さいとき、すなわち|Vac|<Vbのとき、パルス幅変調ブロック40を制御することによって、スイッチ素子Qb2をON状態に固定する。言い換えると、第2の切替制御ブロック44bは、双方向チョッパ回路13がPI制御によって制御されることを禁止する。なお、スイッチ素子Qb2がON状態に固定されることで、充電モードにおける|Vac|<Vbのときでも、平滑コンデンサC1から蓄電池5への充電は許容されている。第2の切替制御ブロック44bは、系統電圧Vacが蓄電池電圧Vbより低いとき、双方向チョッパ回路13を停止する停止手段を提供する。なお、|Vac|=Vbのときには、パルス幅変調ブロック40は作動状態または停止状態(Qb2はON状態)のいずれかの状態におくことができる。
インバータ制御部50のヒステリシス制御を提供するためのブロック群51−52は、検出電流ILが目標電流IL*に追従して変化するように、インバータ回路14のスイッチ素子Q1−Q4を駆動する。ヒステリシス制御ブロック52は、検出電流ILが上限値HHと下限値HLとの間に維持されるように、スイッチング信号を出力する。より具体的には、検出電流ILが上限値HHに到達すると、すなわち上限値HH<検出電流ILになると、スイッチング素子Q1およびQ4をON状態とし、スイッチ素子Q2およびQ3をOFF状態とする正転駆動のためのスイッチング信号を出力する。検出電流ILが下限値HLに到達すると、すなわち下限値HL>検出電流ILになると、スイッチング素子Q1およびQ4をOFF状態とし、スイッチ素子Q2およびQ3をON状態とする反転駆動のためのスイッチング信号を出力する。
充電モードにおける第3の切替制御ブロック55は、符号55bで示される。第3の切替制御ブロック55bは、系統電圧Vacの絶対値が蓄電池電圧Vbより高いとき、すなわち|Vac|≧Vbのとき、極性制御ブロック53の出力だけによってインバータ回路14が制御されることを許容する。このとき、第3の切替制御ブロック55bは、ヒステリシス制御ブロック52の出力によってインバータ回路14が制御されることを禁止する。これにより、インバータ回路14は、|Vac|≧Vbのときは、系統電圧Vacを整流し、双方向チョッパ回路13に供給する。
一方、第3の切替制御ブロック55bは、系統電圧Vacの絶対値が蓄電池電圧Vbより小さいとき、すなわち|Vac|<Vbのとき、ヒステリシス制御ブロック52の出力だけによってインバータ回路14が制御されることを許容する。このとき、第3の切替制御ブロック55bは、極性制御ブロック53の出力によってインバータ回路14が制御されることを禁止する。これにより、インバータ回路14は、|Vac|<Vbのときは、ヒステリシス制御によって変調された電流を双方向チョッパ回路13に供給する。なお、|Vac|=Vbのときには、ヒステリシス制御ブロック52または極性制御ブロック53によってインバータ回路14を制御することができる。
図2−図4において説明したように、この実施形態では、双方向チョッパ回路13とインバータ回路14とは、一方が電流位相制御のためにスイッチング駆動されるとき、他方は所定のON状態またはOFF状態に固定的に駆動される。しかも、双方向チョッパ回路13とインバータ回路14とは、系統電圧Vacと蓄電池電圧Vbとの大小関係の変化により設定される交互の期間に基づいて、交互にスイッチング駆動と固定的駆動とが切替えられる。この結果、系統3の電流に表れる高調波成分を抑制しながら、スイッチング損失を抑制することができる。
図5には、逆潮流モードと充電モードとの両方における昇圧チョッパ制御部60を提供する制御ロジックが図示されている。昇圧チョッパ制御部60は、太陽電池6の効率が所定の高レベルに維持されるように太陽電池6の端子間電圧と平滑コンデンサC1の電圧Vcとの電圧差を調節する。昇圧チョッパ制御部60は、太陽電池6から取り出される電力を最大化するための最大電力点追従制御(MPPT:Maximum Power Point Tracking control)を提供する。
昇圧チョッパ制御部60は、最大電力追従制御を提供するためのブロック群61−72を備える。指令値作成器61は、最大電力点追従制御により指令値を作成する。加算器ブロック62において、指令値と太陽電池6に流れる電流ILpとの偏差が算出される。
比例項ブロック63は、偏差に比例ゲインKpを掛けることにより、PI制御のための比例項を算出する。積分項ブロック64は、PI制御のための積分ゲインKiを設定する。乗算器ブロック65は、偏差に積分ゲインKiを掛ける。さらに、乗算器ブロック65の出力は、積分器ブロック66によって積分され、PI制御のための積分項が算出される。比例項と積分項とは、加算器ブロック67によって加算され、制御量が算出される。
加算器ブロック68は、制御量から太陽電池電圧Vpを減算する。加算器ブロック69は、加算器ブロック68の出力に平滑コンデンサC1の電圧Vcを加算する。1/Nブロック70は、電圧Vcを逆数に変換する。乗算器ブロック71は、加算器ブロック69の出力に、1/Nブロック70の出力を乗算する。乗算器ブロック71の出力は、パルス幅変調ブロック(PWM)72に入力される。パルス幅変調ブロック72は、変調率に応じたデューティ信号をスイッチ素子Qpvに供給する。
昇圧チョッパ制御部60は、太陽電池6からの電力を効率よく得るための最大電力追従制御を行うためのPI制御に基づいて昇圧チョッパ回路15を制御する。昇圧チョッパ制御部60は、最大電力追従制御により得られた指令値を太陽電池6が出力するようスイッチ素子Qpvを、すなわち逆潮流モードにおいても、充電モードにおいても、さらに系統電圧Vacと蓄電池電圧Vbとの大小関係に関係なく、いつでも、スイッチング制御する。
図6には、第1実施形態の逆潮流モードにおける作動を示す各部の波形が図示されている。図中には、蓄電池電圧Vbの波形、系統電圧Vacの波形、平滑コンデンサC1の電圧Vcの波形、系統3の系統電流Iacの波形、太陽電池6からの出力電流Ipの波形が図示されている。さらに、図中には、スイッチ素子Qb1、Qb2の制御信号を示す波形、およびスイッチ素子Q1−Q4の制御信号を示す波形が図示されている。
系統電圧Vacの絶対値が蓄電池電圧Vbより小さい期間t0−t1、およびt2−t3においては、インバータ回路14だけによって直交変換と電圧変換とが実行される。このとき、双方向チョッパ制御部20は、双方向チョッパ回路13をスイッチング駆動しない。このため、平滑コンデンサC1の両端には、蓄電池電圧Vbが印加される。インバータ回路14は、ヒステリシス制御ブロック52から供給されるスイッチング信号によって制御される。系統電流Iacは、系統電圧Vacに同期して正弦波状に制御される。
系統電圧Vacの絶対値が蓄電池電圧Vbより大きい期間t1−t2、t3−t4においては、双方向チョッパ回路13によって蓄電池5の電圧が昇圧され、平滑コンデンサC1に供給される。このとき、双方向チョッパ回路13は、双方向チョッパ制御部20によってPI制御される。この結果、平滑コンデンサC1の両端には系統電圧Vacに追従する電圧が印加される。このとき、インバータ回路14は、極性制御ブロック53から供給されるスイッチング信号によって制御される。よって、インバータ回路14の直交変換機能だけが利用される。このため、交流端12には、双方向チョッパ回路13によって昇圧された交流電圧が供給される。系統電流Iacは、系統電圧Vacに同期して正弦波状に制御される。
系統電圧Vacの極性は、期間t1−t2においては正である。系統電圧Vacの極性は、期間t3−t4においては負である。このような系統電圧Vacの極性の反転に応じて、期間t1−t2におけるインバータ回路14のスイッチング状態と、期間t3−t4におけるインバータ回路14のスイッチング状態とは、反転した関係にある。
この実施形態によると、電力変換装置2は、蓄電池5に接続される第1の直流端11aと、小規模発電装置6に接続される第2の直流端11bと、系統3に接続される交流端12とを備える。電力変換装置2は、第1の直流端11aに接続され、リアクトルL1、ローサイドのスイッチ素子Qb1、およびハイサイドのスイッチ素子Qb2を備え、蓄電池5への充電電流と蓄電池5からの放電電流とを通電可能な双方向チョッパ回路13と、交流端12に接続され直交変換が可能なインバータ回路14と、双方向チョッパ回路13とインバータ回路14との間に設けられた平滑コンデンサC1とを備える。電力変換装置2は、第2の直流端11bに接続され、小規模発電装置6から供給される電力を平滑コンデンサC1に供給する昇圧チョッパ回路15を備える。電力変換装置2は、系統3へ電力を供給する逆潮流モードにおいて、系統3の系統電圧Vacが蓄電池5の蓄電池電圧Vbより小さい場合(|Vac|<Vb)にインバータ回路14を系統3への電流が系統3の電圧Vacに同期するようにスイッチング駆動し、系統3の系統電圧Vacが蓄電池5の蓄電池電圧Vbより大きい場合(|Vac|>Vb)に双方向チョッパ回路13を系統3への電流が系統3の電圧Vacに同期するようにスイッチング駆動することにより、双方向チョッパ回路13とインバータ回路14とを交互にスイッチング駆動する主制御部20、50を備える。この主制御部20、50は、系統3の系統電圧Vacが蓄電池5の蓄電池電圧vbより大きい場合(|Vac|>Vb)にリアクトルL1と平滑コンデンサC1との間に配置されたハイサイドのスイッチ素子Qb2をOFF状態に固定的に駆動し、系統3の系統電圧Vacが蓄電池5の蓄電池電圧Vbより小さい場合(|Vac|<Vb)にリアクトルL1と平滑コンデンサC1との間に配置されたハイサイドのスイッチ素子Qb2をON状態に固定的に駆動する切替制御部44aを備える。この構成によると、|Vac|<Vbであるときに、すなわち系統3への電流が系統の電圧に同期するようにインバータ回路14がスイッチング駆動されているときに、ハイサイドのスイッチ素子Qb2がON状態に固定的に駆動される。この結果、インバータ回路14が系統3へ出力しないときにおいても、小規模発電装置6から出力される電力を昇圧チョッパ回路15から蓄電池5へ吸収することができる。
さらに、小規模発電装置6による発電効率を高く維持するように昇圧チョッパ回路15を制御する昇圧チョッパ制御部60を備える。この構成によると、昇圧チョッパ回路15は発電効率を高く維持するように制御されるが、系統3への電流が系統3の電圧に同期するようにインバータ回路14がスイッチング駆動されているときに、ハイサイドのスイッチ素子Qb2がON状態に固定的に駆動されるから、小規模発電装置6から出力される電力を昇圧チョッパ回路15から蓄電池5へ吸収することができる。この昇圧チョッパ制御部60は、小規模発電装置6による発電電力を最大化する最大電力点追従制御を実行する。昇圧チョッパ制御部60は、平滑コンデンサC1の電圧Vcに応じて昇圧チョッパ回路15のスイッチング駆動を補正し、平滑コンデンサC1の電圧変動による影響を抑制する補正部(ブロック69−71)を備える。
さらに、インバータ回路14と交流端12との間に設けられたノーマルコイルL2を備え、主制御部20、50は、ノーマルコイルL2の電流ILが目標電流になるように比例積分制御によって双方向チョッパ回路14をスイッチング駆動し、ノーマルコイルL2の電流ILが目標電流になるようにヒステリシス制御によってインバータ回路14をスイッチング駆動する。
上記の切替制御部44aは第2の切替制御部44aである。この場合、主制御部20、50は、系統3の系統電圧Vacが蓄電池5の蓄電池電圧Vbより大きい場合(|Vac|>Vb)に双方向チョッパ回路13を系統3への電流が系統3の電圧に同期するようにローサイドのスイッチ素子Qb1をスイッチング駆動し、系統3の系統電圧Vacが蓄電池5の蓄電池電圧Vbより小さい場合(|Vac|<Vb)にローサイドのスイッチ素子Qb1をOFF状態に固定的に駆動する第1の切替制御部39aと、系統3の系統電圧Vacが蓄電池5の蓄電池電圧Vbより小さい場合(|Vac|<Vb)にインバータ回路14を系統3への電流が系統の電圧に同期するようにスイッチング駆動し、系統3の系統電圧Vacが蓄電池5の蓄電池電圧Vbより大きい場合(|Vac|>Vb)にインバータ回路14を系統3の電圧の極性に同期してスイッチング駆動する第3の切替制御部55aとを備える。
また、実施形態によると、電力変換装置2は、系統3および小規模発電装置6から蓄電池5に充電する充電モードを提供できる。
上述のように、この実施形態では、双方向チョッパ回路13とインバータ回路14とが交互にスイッチング駆動される。よって、平滑コンデンサC1の電圧Vcが蓄電池電圧Vbよりも系統電圧Vacが大きい期間において、電圧Vcが上昇する方向へ凸状の波形となる。すなわち、PI制御による双方向チョッパ回路13のスイッチング駆動と、ヒステリシス制御によるインバータ回路14のスイッチング駆動とを交互に実行することにより、スイッチング損失が抑制される。
一方、上記のような交互駆動に起因して、平滑コンデンサC1の電圧が変動する。この凸状の電圧変動の影響により昇圧チョッパ回路15は、PI制御によって安定的に制御できなくなる場合がある。そこで、この実施形態では、平滑コンデンサC1の電圧Vcを昇圧チョッパ制御部60において、加算器ブロック69から加算することにより平滑コンデンサC1の電圧変動の影響を抑制している。すなわち、昇圧チョッパ制御部60は、平滑コンデンサC1の電圧変動の影響を抑制するように構成され、最大電力点追従制御が、安定的に実行される。これにより、昇圧チョッパ制御部60における制御ロジックを変更するだけで、太陽電池6の出力を昇圧チョッパ回路15を経由して平滑コンデンサC1の両端に加えることができる。
さらに、インバータ回路14がヒステリシス制御されるとき、双方向チョッパ回路13のスイッチ素子Qb2はON状態に固定的に駆動され、太陽電池6の出力を蓄電池6に吸収可能である。よって、平滑コンデンサC1の電圧の過剰な上昇が抑制される。
この実施形態によると、インバータ回路14において大幅なスイッチング損失の抑制と、導通損失の抑制とを図ることができる。また、昇圧チョッパ回路15においても、スイッチング損失の抑制と、導通損失の抑制とを図ることができる。この結果、電力変換装置2の全体においても大幅な損失の抑制が図られる。
(第2実施形態)
図7に図示されるように、リアクトルをバイパスするようにダイオードを設けてもよい。双方向チョッパ回路13は、ダイオードD2を備える。ダイオードD2のアノードはリアクトルL1と直流端11aとの間に接続されている。ダイオードD2のカソードは双方向チョッパ回路13の出力端、すなわちスイッチ素子Qb2と平滑コンデンサC1との間に接続されている。ダイオードD2は、蓄電池電圧VbをリアクトルL1およびスイッチ素子Qb2を通すことなく、インバータ回路14へ直接的に供給することを可能としている。系統電圧Vacが蓄電池電圧Vbより低いとき、蓄電池5からの電力をダイオードD2を通して平滑コンデンサC1およびインバータ回路14に供給することができる。
昇圧チョッパ回路15は、ダイオードD3を備える。ダイオードD3のアノードはリアクトルL3と直流端11bとの間に接続されている。ダイオードD3のカソードは昇圧チョッパ回路15の出力端、すなわちダイオードD1と平滑コンデンサC1との間に接続されている。ダイオードD3は、太陽電池6の出力をリアクトルL3を通すことなく、インバータ回路14へ直接的に供給することを可能としている。系統電圧Vacが太陽電池6の発電電圧より低いとき、太陽電池6からの電力をダイオードD3を通して平滑コンデンサC1およびインバータ回路14に供給することができる。
(他の実施形態)
以上、開示された発明の好ましい実施形態について説明したが、開示された発明は上述した実施形態に何ら制限されることなく、種々変形して実施することが可能である。上記実施形態の構造は、あくまで例示であって、開示された発明の技術的範囲はこれらの記載の範囲に限定されるものではない。開示された発明の技術的範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味及び範囲内での全ての変更を含むものである。
例えば、制御装置が提供する手段と機能は、ソフトウェアのみ、ハードウェアのみ、あるいはそれらの組合せによって提供することができる。例えば、制御装置をアナログ回路によって構成してもよい。