図面を参照しながら、ここに開示される発明を実施するための複数の形態を説明する。各形態において、先行する形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。また、後続の実施形態においては、先行する実施形態で説明した事項に対応する部分に百以上の位だけが異なる参照符号を付することにより対応関係を示し、重複する説明を省略する場合がある。各形態において、構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については他の形態の説明を参照し適用することができる。
(第1実施形態)
図1において、発明を実施するための第1実施形態に係る電力変換装置1と、この電力変換装置1を含む電力システム2とが図示されている。電力システム2は、系統3に接続された需要家に設置されている。電力システム2は、例えば、個人の住宅、または事業所において構成されている。系統3は、電力供給会社などの供給者によって提供される電力網、または小規模発電施設によって提供される交流電源である。系統3を供給する小規模発電施設は、個人の住宅、または事業所に設置することができる。系統3は、単相3線方式の電源であり、中性線(N)と、電圧線(U、V)とを有する。
電力システム2は、小規模な直流電源4を備える。直流電源4は、住宅などに設置された太陽電池および/または燃料電池といった直流を出力する発電機器によって提供される。
電力変換装置1は、系統3に接続された交流端5と、直流電源4に接続された直流端6とを備える。電力変換装置1は、直流端6から供給される直流電力を交流電力に変換し、交流電力を交流端5から系統3に供給する。電力変換装置1は、インバータ回路7と、降圧型のコンバータ回路8とを備える。
インバータ回路7は、系統3と直流電源4との間に設けられている。インバータ回路7は、コンバータ回路8と交流端5との間に設けられている。インバータ回路7は、少なくとも直流電力を交流電力に変換可能である。インバータ回路7は、直流端6から供給された直流電力を変調する変調機能と、直流電力を交流電力に変換する直交変換機能とを少なくとも有する。インバータ回路7は、直流電力を交流電力に変換する直交変換と、交流電力を直流電力に変換する交直変換とが可能な双方向変換回路によって提供することができる。インバータ回路7は、直流電源4から系統3へ電力を逆潮流させるとき、系統3の交流電圧Vacの位相と、電力変換装置1から系統3へ出力される出力電流の位相とを一致させることができる。インバータ回路7は、直流端6から供給される直流電力を交流電力に変換する直交変換機能と、直流電圧Vdcを調整して系統3の交流電圧Vacに一致させる電圧変換機能とを提供する。
インバータ回路7は、フルブリッジ回路と、ノーマルコイルLnと、コンデンサCfとを備える。フルブリッジ回路は、複数のスイッチ素子Q1−Q4をHブリッジに接続した回路である。フルブリッジ回路は、少なくとも4つのスイッチ素子Q1、Q2、Q3、およびQ4を備える。スイッチ素子Q1、Q2、Q3、およびQ4は、IGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)素子である。スイッチ素子Q1およびQ4は、直流電圧Vdcと同じ極性の電圧を出力するので、正転対のスイッチ素子と呼ばれる。スイッチ素子Q2およびQ3は、直流電圧Vdcと逆極性の電圧を出力するので、反転対のスイッチ素子と呼ばれる。
ノーマルコイルLnは、インバータ回路7と交流端5との間に設けられている。ノーマルコイルLnは、フルブリッジ回路の交流端5に接続されている。ノーマルコイルLnは、ブリッジ回路のひとつの交流端5と、系統3との間に直列接続されている。コンデンサCfは、ノーマルコイルLnと交流端5との間に並列接続されている。ノーマルコイルLnは、ノーマルモードコイルとも呼ばれる。
コンバータ回路8は、系統3と直流電源4との間に設けられている。コンバータ回路8は、昇圧型のコンバータ回路8である。コンバータ回路8は、少なくとも直流電源4から供給される直流電圧を昇圧しインバータ回路7に供給可能である。
コンバータ回路8は、リアクトルLrと、スイッチ素子Qaと、ダイオードD1と、平滑コンデンサCsとを備える。スイッチ素子Qaは、IGBT素子である。リアクトルLrの一端には、直流電圧Vdcが供給される。リアクトルLrの他端は、スイッチ素子QaとダイオードD1との接続点に接続されている。スイッチ素子QaとダイオードD1とは、平滑コンデンサCsの両端間において直列接続されている。ダイオードD1はブリッジ回路のアッパアームを提供し、スイッチ素子Qaはブリッジ回路のロワアームを提供する。平滑コンデンサCsは、インバータ回路7とコンバータ回路8との間に位置している。
この構成によると、インバータ回路7とコンバータ回路8とによって、直流電源4から系統3への電力変換が提供可能である。電力変換には、直流電源4の電圧と系統3の電圧との間の変換、および直流から交流への変換とが含まれる。
電力変換装置1は、インバータ回路7と交流端5との間にノイズを除去するためのフィルタ回路9を備える。電力変換装置1は、交流端5とフィルタ回路9との間に遮断器10を備える。遮断器10は、系統3と電力変換装置1との接続を遮断する。電力変換装置1は、直流端6とコンバータ回路8との間に、ノイズを除去するためのフィルタ回路11を備える。フィルタ回路11は、正極線と負極線との間に接続されたコンデンサを含むことができる。
電力変換装置1は、各部の電圧、電流を検出するための複数のセンサを備える。電力変換装置1は、直流電圧Vdcを検出する電圧センサ12と、交流電圧Vacを検出する電圧センサ13とを備える。電力変換装置1は、直流電源4から供給される電流(入力電流とも呼ばれる)を検出する電流センサ14を備える。電力変換装置1は、ノーマルコイルLnに流れる電流を検出する電流センサ15を備える。電力変換装置1は、平滑コンデンサCsの端子間電圧を検出する電圧センサ16を備える。
電力変換装置1は、インバータ回路7とコンバータ回路8とを制御する制御装置17を備える。制御装置17は、電子制御装置(Electronic Control Unit)である。制御装置は、少なくともひとつの演算処理装置(CPU)と、プログラムとデータとを記憶する記憶媒体としての少なくともひとつのメモリ装置(MMR)とを有する。制御装置は、コンピュータによって読み取り可能な記憶媒体を備えるマイクロコンピュータによって提供される。記憶媒体は、コンピュータによって読み取り可能なプログラムを非一時的に格納している。記憶媒体は、半導体メモリまたは磁気ディスクなどによって提供されうる。制御装置は、ひとつのコンピュータ、またはデータ通信装置によってリンクされた一組のコンピュータ資源によって提供されうる。プログラムは、制御装置によって実行されることによって、制御装置をこの明細書に記載される装置として機能させ、この明細書に記載される方法を実行するように制御装置を機能させる。制御装置は、多様な要素を提供する。それらの要素の少なくとも一部は、機能を実行するための手段と呼ぶことができ、別の観点では、それらの要素の少なくとも一部は、構成的なブロック、またはモジュールと呼ぶことができる。
この実施形態では、電力変換装置1は、直流電源4から系統3への電力供給、すなわち逆潮流を提供する。直流電源4が入力側とされ、系統3すなわち交流電源が出力側とされる。電力変換装置1は、基本的な動作方式として切換え駆動方式を採用する。この切換え駆動方式では、インバータ回路7を高速スイッチング駆動し、コンバータ回路8を固定的に駆動するモードと、インバータ回路7を固定的に駆動し、コンバータ回路8を高速スイッチング駆動するモードとが提供される。それらのモードの間において、インバータ回路7とコンバータ回路8との両方が高速スイッチング駆動されることを排除するものではない。
切換え駆動方式では、交流電圧Vacの絶対値|Vac|が直流電圧Vdcより低い期間において、インバータ回路7をスイッチング制御し直流電力を交流電力に変換する。このときコンバータ回路8のスイッチ素子Qaは継続的にOFF状態に維持される。切換え駆動方式では、交流電圧Vacの絶対値|Vac|が直流電圧Vdc、すなわち入力電圧より高い期間において、コンバータ回路8をスイッチング制御し直流電力を交流電力に変換する。このとき、インバータ回路7のスイッチ素子Q1−Q4は、正転対と反転対とが交互にON状態となるように、交流電圧Vacの極性に合わせて相補的にON/OFF制御される。すなわち、コンバータ回路8が高速スイッチング駆動されるとき、インバータ回路7は60Hzまたは50Hzといった比較的低速でスイッチング駆動される。
実施形態では、コンバータ回路8はノーマルコイルLnに流れる電流ILを使って比例積分(PI)制御される。コンバータ回路8のフィードバック制御は、出力電流を指令値Irefに追従させる比例積分制御である。インバータ回路7はノーマルコイルLnに流れる電流ILを使ってヒステリシス制御される。インバータ回路7のフィードバック制御は、出力電流を指令値Irefに追従させるヒステリシス制御である。インバータ回路7のフィードバック制御およびコンバータ回路8のフィードバック制御は、ノーマルコイルLnに流れる電流ILに基づいて出力電流の位相を系統(交流電源)3の交流電圧Vacの位相に一致させるように実行される。この構成によると、ノーマルコイルLnに流れる電流ILに基づいてフィードバック制御が実行されるから、交流端5へ出力される出力電流の位相を正確に制御できる。
制御装置17は、ヒステリシス制御によってインバータ回路7を制御する。ヒステリシス制御においては、検出された電流ILが指令値Irefに一致するように、スイッチ素子Q1−Q4がスイッチングされる。ヒステリシス制御においては、指令値Irefに基づいて設定された上限値IL+と下限値IL−との間に電流ILを維持するように、スイッチ素子Q1−Q4がスイッチングされる。
制御装置17は、比例積分制御(PI制御)によってコンバータ回路8を制御する。比例積分制御においては、電流ILが指令値Irefに一致するように、スイッチ素子Qaがスイッチングされる。比例積分制御においては、電流ILと指令値Irefとの偏差に比例する比例成分と、偏差を積分した積分成分とに応じて、スイッチ素子Qaのスイッチングディーティ比が調節される。
この構成によると、インバータ回路7もコンバータ回路8も高調波を低減したい入力電流であるノーマルコイルLnに流れる電流ILで制御するので、制御し易く正弦波に近い電流に制御することができる。
制御装置17は、インバータ回路7を高速スイッチング駆動することにより電圧を調節し、電力変換を提供するインバータスイッチング期間を提供する。制御装置17は、コンバータ回路8を高速スイッチング駆動することにより電圧を調節し、電力変換を提供するコンバータスイッチング期間を提供する。制御装置17は、インバータスイッチング期間とコンバータスイッチング期間とを交互に実行することにより、直流電源4から系統3への逆潮流を提供する。制御装置17は、インバータ回路7だけがデューティ駆動される期間と、コンバータ回路8だけがデューティ駆動される期間とを設けるように、インバータスイッチング期間と、コンバータスイッチング期間とを切換える。インバータ回路7だけによる電力変換と、コンバータ回路8だけによる電力変換とを切換えることにより、スイッチングに伴う損失が抑制される。さらに、制御装置17は、インバータ回路7による電力変換と、コンバータ回路8による電力変換とが併用される併用期間を提供してもよい。
制御装置17は、インバータスイッチング期間およびコンバータスイッチング期間の開始タイミングおよび停止タイミングを設定する手段を提供する。開始タイミングおよび停止タイミングの基本時期は、直流電圧Vdcと交流電圧Vac(交流電圧の絶対値|Vac|)との交点に基づいて設定することができる。すなわち、Vdc>|Vac|をインバータスイッチング期間に対応付け、Vdc<|Vac|をコンバータスイッチング期間に対応付けることができる。なお、Vdc=|Vac|のときは、いずれか一方の期間に対応付けることができる。
制御装置17は、ノーマルコイルLnに流れる電流ILに応じて、電流の指令値Irefを作成する電流指令値作成部20を備える。電流指令値作成部20において、出力したい電力から出力電圧を割り、電流の指令値Irefを演算する。電流センサ15によって検出される電流ILは、系統3へ出力される交流電流であり、出力電流でもある。制御装置17は、指令値Irefの位相を同期させる位相同期部21を備える。位相同期部21は、位相が調節された指令値Irefを出力する。出力電流と出力電圧は力率を1に近づける必要があるため、位相同期部21において交流電圧Vacのゼロクロスタイミングと周期を求め、交流電圧Vacとの位相を合わせた電流の指令値Irefとする。
制御装置17は、インバータ回路7の制御に適するように指令値Irefを補正する第1の補正部22を備える。制御装置17は、コンバータ回路8の制御に適するように指令値Irefを補正する第2の補正部23を備える。補正部22、23においては、平滑コンデンサCs等による電流遅れを補償しカバーするよう指令値Irefを補正する。
制御装置17は、インバータ回路7のスイッチ素子Q1−Q4を制御するための駆動信号を発生するためのインバータ制御部24を備える。インバータ制御部24は、系統3の交流電圧に応じた電圧を出力するようにインバータ回路7をフィードバック制御するための駆動信号と、直交変換回路として機能するようにインバータ回路7を直交変換制御するための駆動信号とを出力する。直交変換制御は、交流電圧の極性に応じてインバータ回路7を制御するから、極性制御とも呼ばれる。この実施形態では、フィードバック制御として、ヒステリシス制御が利用されている。
インバータ制御部24は、ヒステリシス制御のために、指令値Irefから、ヒステリシス制御指令値としての上限値IL+と下限値IL−とを作成する。この上限値IL+と下限値IL−の間を電流ILが流れるようにヒステリシス制御が実行される。交流電圧Vacの絶対値|Vac|が直流電圧Vdcよりも小さい場合、ノーマルコイルLnの電流ILが上限値IL+を超えた場合はスイッチ素子Q1、Q4がON状態とされ、スイッチ素子Q2、Q3がOFF状態とされる。電流ILが下限値IL−を下回った場合はスイッチ素子Q1、Q4がOFF状態とされ、スイッチ素子Q2、Q3がON状態とされる。
インバータ制御部24は、極性制御のために、駆動信号を出力する。交流電圧Vacの絶対値|Vac|が直流電圧Vdcよりも大きい場合、交流電圧Vacが正の場合はスイッチ素子Q1、Q4がON状態とされ、スイッチ素子Q2、Q3がOFF状態とされる。交流電圧Vacが負の場合はスイッチ素子Q1、Q4がOFF状態とされ、スイッチ素子Q2、Q3がON状態とされる。
制御装置17は、コンバータ回路8のスイッチ素子Qaを制御するための駆動信号を発生するためのコンバータ制御部25を備える。コンバータ制御部25は、系統3の交流電圧に応じた電圧を出力するようにコンバータ回路8をフィードバック制御するための駆動信号と、直流電源4からの入力電圧をそのまま出力するようにコンバータ回路8を直結制御するための駆動信号とを出力する。この実施形態では、フィードバック制御として、比例積分制御(PI制御)が利用されている。コンバータ制御部25は、指令値IrefとノーマルコイルLnに流れる入力電流ILとの差分をとりPI制御演算を実行し、スイッチ素子Qaの駆動信号のデューティ比Dutyを算出する。
制御装置17は、インバータ回路7の制御手法を切換える第1の切替制御部26を備える。第1の切替制御部26は、フィードバック制御と極性制御とを切換える。第1の切替制御部26は、直流電圧Vdcと交流電圧Vacの絶対値|Vac|とに基づいて、フィードバック制御または極性制御のいずれが一方をインバータ回路7の制御手法として決定する。ここでは、Vdc=|Vac|を境界として、2つの制御が切替えられる。第1の切替制御部26は、制御手法に応じた駆動信号を設定する。制御特性の切換えには、ヒステリシスを設けてもよい。
ヒステリシス制御が選択される場合(|Vac|<Vdc)、電流ILと、指令値Irefとに基づいて、電流ILが指令値Irefに追従するようにフィードバック制御が実行される。ここでは、インバータ制御部24によって与えられるヒステリシス制御が利用される。ヒステリシス制御においては、指令値Irefに基づいて設定された電流上限値IL+と、指令値Irefに基づいて設定された電流下限値IL−との間に検出された電流ILが維持される。ここでは、IL+<ILになると、反転対のスイッチ素子Q2、Q3がON状態に駆動され、IL<IL−になると、正転対のスイッチ素子Q1、Q4がON状態に駆動される。
極性制御が選択される場合(|Vac|>Vdc)、交流電圧Vacの極性に対応して、正転対のスイッチ素子Q1、Q4と、反転対のスイッチ素子Q2、Q3とが相補的にON状態に駆動される。交流電圧Vacが正であるときに正転対のスイッチ素子Q1、Q4がON状態に駆動される。交流電圧Vacが負であるときに反転対のスイッチ素子Q2、Q3がON状態に駆動される。
制御装置17は、コンバータ回路8の制御手法を切換える第2の切替制御部27を備える。第2の切替制御部27は、フィードバック制御と直結制御とを切換える。切替制御部27は、直流電圧Vdcが交流電圧Vacの絶対値|Vac|より小さい場合には、スイッチ素子Qaを上記PI制御演算により設定されたデューティ比DutyでスイッチングできるようにPWM(パルス幅変調)演算によりスイッチング制御を行う。一方で、直流電圧Vdcが系統3の交流電圧Vacの絶対値|Vac|より大きい場合には、スイッチ素子Qaを継続的にOFF状態に制御する。
第2の切替制御部27では、直流電圧Vdcと、交流電圧Vacの絶対値|Vac|とに基づいて、フィードバック制御または直結制御のいずれが一方がコンバータ回路8の制御手法として決定される。ここでは、|Vac|がVdcを上回るとコンバータ回路8のフィードバック制御が開始される。その後、|Vac|がVdcを下回るとコンバータ回路8のフィードバック制御が終了される。第2の切替制御部27では、制御手法に応じた駆動信号が設定される。
直結制御が選択される場合、すなわち|Vac|が下降する過程において、|Vac|がVdcを下回った後は、スイッチ素子Qaは継続的にOFF状態に制御される。これにより、ダイオードD1を経由して、コンバータ回路8は直結状態になる。
フィードバック制御が選択される場合、すなわち|Vac|が上昇する過程において、|Vac|がVdcを上回った後は、スイッチ素子Qaは、ディーティ設定部27bによって設定されたデューティ比によってスイッチング制御される。これにより、コンバータ回路8は、直流電圧Vdcを交流電圧Vacに変換し、さらに出力電流を指令値Irefに一致させるように制御される。
制御装置17は、インバータ回路7のスイッチ素子Q1−Q4の駆動信号にデッドタイムを与えるデッドタイム生成部28を備える。制御装置17は、コンバータ回路8のスイッチ素子Qaの駆動信号にデッドタイムを与えるデッドタイム生成部29を備える。
制御装置17は、インバータ回路7のスイッチ素子Q1−Q4を駆動するためのゲート駆動部30を備える。制御装置17は、コンバータ回路8のスイッチ素子Qaを駆動するためのゲート駆動部31を備える。制御装置17の要素21−31は、フィードバック制御部を提供する。
制御装置17は、最大電力制御(最大電力追従制御ともいう)を提供するための最大電力制御部40を備える。最大電力制御部40は、指令値Irefを増加方向および/または減少方向へ変化させる。最大電力制御部40は、指令値Irefの変化前後の入力電力を監視する。最大電力制御部40は、直流電源4から取り出される入力電力が最大になる指令値Iref、すなわち電力変換装置1の運転状態を探索する。さらに、最大電力制御部40は、最大の入力電力が得られる運転状態を維持するように指令値Irefを調節する。最大電力制御部40は、その内部に複数の要素をもつ。最大電力制御部40は、作成部32、比較部33、判断部34、演算部35を備える。最大電力制御部40は、以下に説明される多様な入力信号を入力している。
作成部32は、最大電力制御のための指令値Irefの補正量を算出する。補正量は、出力電流の指令値の振幅Iref_ampとして算出される。比較部33は、直流電源4から取り出される入力電力と、目標とする目標電力とを比較し、その比較結果に応じて、入力電力が最大となる運転状態を探索し、最大電力の近傍を維持するように指令値Irefの増減を決定する。判断部34は、入力電力と目標電力との比較による最大電力制御、すなわち探索の可否を判断する。演算部35は、最大電力制御に必要な信号を処理する。演算部35は、入力電力の実効値を算出する。この実施形態では、入力電力の実効値が最大になるように指令値Irefが調節される。
最大電力制御部40は、最大電力追従制御を行うために、異なる指令値Irefにおける2つの入力電力を比較し、どちらの指令値Irefがより大きい入力電力を取り出すかを判定する比較部を提供する。例えば、所定の時間、所定の期間、所定の制御周期数だけ離れた2つまたはそれを超える複数の時点における入力電力が比較される。最大電力制御部40は、例えば、現在の入力電力と、過去の入力電力とを比較する比較部を提供する。現在の入力電力は、今回の制御周期における入力電力とすることができる。過去の入力電力は、1制御周期分だけ前の入力電力とすることができる。過去の入力電力は、2以上の制御周期数だけ前の入力電力でもよい。
最大電力制御部40は、指令値Irefを一方向に変化させる探索との関係の下で、最大電力点を越えたか否か、または最大電力点を越えるであろうと予測される事象が検出されたか否かを判定する判定部を提供する。最大電力点を越えたことは、入力電力の変化傾向が反転したことを検出することによって判定することができる。また、最大電力点を越えるであろうと予測される事象は、指令値Irefの変化が所定の上限値を上回ることによって検出することができる。最大電力制御部40は、最大電力点を越えた場合、または最大電力点を越えると予測される場合に、指令値Irefを最大電力が得られる値に設定し、維持する保持制御部を提供する。保持制御部による指令値Irefの設定は、探索のための指令値Irefの変化と対比して、短時間における大きい電流幅の変化となる。よって、保持制御部により与えられる指令値Irefの変化は、スキップ的な変化とも呼ぶことができる。保持制御部により与えられる指令値Irefの変化は、最大電力点を越えることに対して、最大電力点の方向へ、または最大電力点を越える前へ戻す変化である。よって、保持制御部により与えられる指令値Irefの変化は、スキップ戻しとも呼ぶことができる。
この実施形態では、保持制御部は、最大電力点を越えた後に、指令値Irefを探索中の変化方向とは逆方向に、所定の値だけ、短時間に変化させる。さらに、保持制御部は、その変化後の値を所定期間にわたって維持する。探索中に指令値Irefが増加される場合、最大電力点を越えた後に、指令値Irefは所定幅だけ短時間に減少させられる。これにより、電力変換装置1の遅い応答性を補償して、最大電力点の近傍の指令値Irefが設定される。具体的には、現在より前の指令値Iref(i−1)を利用して、スキップ的な変化のための変化幅が設定される。さらに、スキップ的な変化によって、探索方向における最大電力点より前の指令値に戻すために、所定の係数が用いられる。変化幅は、指令値Irefを最大電力が得られる指令値より前の値に瞬時に引き下げるように設定される。すなわち、探索のための指令値Irefの変化によって最大電力点を通過することを前提として、その通過前、望ましくは通過直前の指令値へ戻す機能が提供される。
この実施形態では、保持制御部は、最大電力点を越えると予測される場合に、指令値Irefを探索中の変化方向とは逆方向に、所定の値だけ、短時間に変化させる。さらに、保持制御部は、その変化後の値を所定期間にわたって維持する。探索中に指令値Irefが増加される場合、最大電力点を越えると予測された後に、指令値Irefは所定幅だけ短時間に減少させられる。これにより、電力変換装置1の遅い応答性を補償して、最大電力点の近傍の指令値Irefが設定される。具体的には、現在より前の指令値Iref(i−1)を利用して、スキップ的な変化のための変化幅が設定される。さらに、スキップ的な変化によって、探索方向における最大電力点より前の指令値に戻すために、所定の係数が用いられる。変化幅は、指令値Irefを最大電力が得られる指令値より前の値に瞬時に引き下げるように設定される。すなわち、探索のための指令値Irefの変化によって最大電力点を通過することを前提として、その通過前、望ましくは通過直前の指令値へ戻す機能が提供される。
最大電力制御部40は、指令値Irefをスキップ的に変化させた後に、入力電力が再び上昇を開始するまで、最大電力を探索する処理を停止する探索停止部を提供する。探索停止部は、指令値Irefがスキップ的に変化した後に、入力電力が再び上昇を開始すると、指令値Irefの変化を再開し、最大電力を探索する処理を再開する。
図2は、最大電力制御部40における信号処理を示すブロック図である。最大電力制御部40は、ひとつまたは複数の制御周期数だけ前の指令値Iref_amp_preを利用する。この指令値Iref_amp_preは、指令値Iref(i−1)でもある。最大電力制御部40は、指令値Irefの差分dIref_ampを利用する。差分dIref_ampは、最大電力点を越えた後の指令値Iref(i)と、その前の指令値Iref(i−1)との差である。指令値Iref_amp_preおよび差分dIref_ampは、最大電力制御部40内において得られる。最大電力制御部40は、入力電圧Vinを利用する。入力電圧Vinは、電圧センサ12から入力される。最大電力制御部40は、入力電力Pinを利用する。入力電力Pinは、入力電圧Vinと電流である指令値Irefとから求めることができる。入力電圧Vinは実効値として算出される。
最大電力制御部40は、指令値を徐々に変化させる探索部40aを提供する。最大電力制御部40は、通常時、すなわち最大電力点を探索しているとき、指令値Irefを徐々に増加させる。指令値は徐々に減少されてもよい。探索方向の選択は、直流電源4の出力特性に応じて選定することができる。最大電力制御部40は、指令値Irefを増加させるために、出力電流の指令値のための補正量である振幅Iref_ampを徐々に増加させる。このとき、最大電力制御部40は、最大電力探索部を提供する。制御周期ごとの増加量をβ(ベータ)として、振幅Iref_ampは、下記(1)式で与えられる。(1)式は、(2)式と表すこともできる。なお、nは1以上の自然数とすることができ、制御周期数を示す。(i)は今回の制御周期における値を示し、(i−n)は制御周期数n回だけ前の値を示す。
Iref_amp=Iref_amp+β ・・・(1)
Iref_amp(i)=Iref_amp(i−n)+β ・・・(2)
最大電力制御部40は、行き過ぎ復帰制御部40bを提供する。行き過ぎ復帰制御部は、最大電力探索によって指令値Irefが最大電力点を行き過ぎた場合に、指令値Irefを最大電力点の前の値に復帰させる。最大電力制御部40は、指令値Irefが最大電力点を越えることによって入力電力Pinが最大電力Pmaxより下がった場合に、指令値Irefをスキップ的に減少させる。
最大電力制御部40は、通常の増加探索の結果、入力電力Pinが最大電力Pmaxより低下したこと(Pin<Pmax)を判定する機能を提供する。この機能は、最大電力点を越えたことを判定する機能である。最大電力制御部40は、指令値Irefをスキップ的に減少させるために、振幅Iref_ampを前の指令値Iref_amp_preよりもさらに小さい値に戻す。指令値が戻されるときの指令値の変化量(制御周期1回における変化量)は、最大電力点を探索するときの指令値の変化量(制御周期1回における変化量)より大きい。最大電力制御部40は、下記(3)式によって振幅Iref_ampを設定する。
Vocは直流電源4、例えば太陽電池の開放時の電圧である。α(アルファ)は回路の素子、直流電源4など部品の個体差による変動を補償するための調整値である。αは、1.0未満の値である。αは、およそ0〜0.1程度の値とすることができる。開放電圧Vocは必ず入力電圧Vinよりも大きいため、係数(Vin/Voc+α)は1.0未満の値となる。よって、前の指令値よりさらに小さい指令値へ引き下げが実現される。(3)式は、(4)式と表すこともできる。
Iref_amp=(Vin/Voc+α)×Iref_amp_pre ・・・(3)
Iref_amp(i)=(Vin/Voc+α)×Iref_amp(i−n) ・・・(4)
最大電力制御部40は、指令値Irefをスキップ変化させた後に、所定の期間を経過すると、再び最大電力点を探索する。電力変換装置1の応答遅れが比較的大きいから、スキップ変化後の探索によって指令値Irefが最大電力点に到達する前に、実際の電流の実効値は指令値Irefに追いつくこととなる。
最大電力制御部40は、過大変動復帰制御部40cを提供する。過大変動復帰制御部は、最大電力探索の間に、最大電力制御に大きい影響を与える過大な変動が生じた場合に、指令値Irefを最大電力点の前の値に復帰させる。最大電力制御部40は、直流電源4から出力される電流、電力変換装置1における入力電流が急激に低下した場合に、指令値Irefをスキップ的に変化させる。
入力電流の低下は、指令値Irefの変化量として算出することができる。例えば、前の制御周期における指令値と今回の制御周期における指令値との差分dIref_ampと、所定の閾値との比較によって急激な電流の低下が判定される。より具体的には、差分dIref_ampが、予め設定された上限値dIref_maxを上回ると急激な電流の低下を判定することができる。急激な電流の低下は、最大電力点を越えることが予測される場合に相当する。
急激な電流の低下は、直流電源4の出力の低下によって生じる。例えば、太陽電池に供給される日射量が急激に減少した場合である。この場合、電力変換装置1は、その遅い応答性に起因して、指令値Irefが最大電力点を越える値になる場合がある。さらに、最大電力点の探索のために指令値Irefが徐々に増加させられている場合、指令値Irefの増加に反して入力電流が急激に減少するため、指令値Irefは最大電力点を越えた値になりやすい。指令値が戻されるときの指令値の変化量(制御周期1回における変化量)は、最大電力点を探索するときの指令値の変化量(制御周期1回における変化量)より大きい。最大電力制御部40は、下記(5)式によって振幅Iref_ampを設定する。係数(1−Vin/Voc−α)は1.0未満の値となる。(5)式は、(6)式と表すこともできる。
Iref_amp=(1-Vin/Voc-α)×Iref_amp_pre ・・・(5)
Iref_amp(i)=(1-Vin/Voc-α)×Iref_amp(i-n) ・・・(6)
最大電力制御部40は、指令値Irefをスキップ変化させた後に、所定の期間を経過すると、再び最大電力点を探索する。電力変換装置1の応答遅れが比較的大きいから、スキップ変化後の探索によって指令値Irefが最大電力点に到達する前に、実際の電流の実効値は指令値Irefに追いつくこととなる。
最大電力制御部40は、指令値Irefがスキップ的に変化した後に、探索部40aによる最大電力の探索を停止させ、所定の条件が満たされてから、すなわち所定の期間が経過してから最大電力の探索を再開させる探索停止制御部40dを提供する。この実施形態では、スキップ的な変化の後に、所定期間にわたって最大電力の探索が停止される。行き過ぎ復帰制御部および/または過大変動復帰制御部によって指令値Irefがスキップ的に戻された場合、その直後から最大電力探索制御のために電力比較を行うと、電力変換装置1の遅い応答性に起因する遅延により、最大電力点を通過したと誤検出する場合がある。この場合、指令値は繰り返して下げられるから、過度の減少を生じる。このような過度の低下を防止するために、所定期間にわたって最大電力の探索が停止される。
具体的には、指令値がスキップ的に引き下げられた後に、入力電力(実効値)Pinが再び増加するまでの期間、探索を停止する。入力電力Pinが再び増加すると最大電力の探索のための指令値Irefの計画された変化と、電力の比較とが再開される。ここでは、今回の制御周期における入力電力Pin(i)と、前の制御周期における入力電力Pin(i−1)とを比較することにより入力電力の増加が判定される。これより日射量が急変した場合でも、過剰な電力低下を引き起こすことなく最大電力追従制御を実現することができる。
図3は、最大電力制御に関連する機能を実現するための制御処理150を示すフローチャートである。ステップ151では、最大電力の探索、すなわち電力比較が許可されているか否かが判定される。最大電力の探索は、上述のスキップ的な変化の直後に禁止され、その後、後述のステップ158、159の処理によって許可される。最大電力探索が許可されている場合、ステップ152へ進む。
ステップ152では、最大電力の探索によって指令値Irefが最大電力点を越えたか否かが判定される。ここでは、入力電力Pin(i)と入力電力Pin(i−1)との比較により、Pin(i)>Pin(i−1)ではない場合に、最大電力点を越えたことが判定される。ステップ152は、直流電源4からの入力電力が増加から減少に転じると最大電力点を越えたと判定する判定手段を提供する。最大電力点を超えていない場合、最大電力の探索を継続するためにステップ153へ進む。ステップ153では、上記(1)式により指令値Irefが増加される。
ステップ154では、過大な変動が生じたか否かが判定される。ここでは、振幅Iref_ampの変化量、すなわち差分dIref_ampが、予め設定された上限値dIref_maxを上回るか否かが判定される。ステップ154は、所定の制御周期の間における指令値の差分が所定の閾値を上回ると、最大電力点を越えると予測する予測手段を提供する。過大な変動が生じていない場合、ステップ155へ進む。
ステップ155では、ステップ153において設定された振幅Iref_ampが最大電力制御のための補正量として決定される。この結果、電力変換装置1は、振幅Iref_ampによって補正された指令値Irefによって制御される。
ステップ152において入力電力Pin(i)が、前の入力電力Pin(i−1)より増加していない場合、ステップ156へ進む。この場合、最大電力点を越えたと判定できる。
ステップ156では、上記(3)式により指令値Irefがスキップ的に引き下げられる。ステップ156を経由する場合、ステップ155では、指令値Irefを急激に引き下げるための振幅Iref_ampが決定される。ステップ156は、過去の制御周期における指令値Iref_amp_preと、入力電圧Vinと、直流電源4の開放電圧Vocとに基づいて、最大電力点を越える前の値を設定する行き過ぎ復帰設定手段を提供する。
ステップ154において差分dIref_ampが上限値dIref_maxを上回る場合、ステップ157へ進む。この場合、指令値Irefが最大電力点を越えると予測される。
ステップ157では、上記(5)式により指令値Irefがスキップ的に引き下げられる。ステップ157は、過去の制御周期における指令値Iref_amp_preと、入力電圧Vinと、直流電源4の開放電圧Vocとに基づいて、最大電力点を越える前の値を設定する過大変動復帰設定手段を提供する。ステップ157を経由する場合、ステップ155では、指令値Irefを急激に引き下げるための振幅Iref_ampが決定される。
図4は、電力変換装置1の作動の一例を示す。以下の説明では、直流電源4を入力側、系統3を出力側とする。
|Vac|>Vdcの期間(時刻t11と時刻t12との間)においては、コンバータ回路8はノーマルコイルLnの電流を使ってPI(比例積分)制御される。コンバータ回路8は昇圧回路として機能する。PI制御においては、指令値IrefとノーマルコイルLnに流れる電流との差分をとりPI制御演算を行い、スイッチングのためのデューティ比Dutyが算出される。よって、この期間においてコンバータ回路8のスイッチ素子Qaがデューティ比Dutyの高周波数でスイッチング駆動される。この期間においては、インバータ回路7は、整流のためのスイッチング状態に固定的に制御される。インバータ回路7は、交流電圧が正の場合はスイッチ素子Q1、Q4がONされ、Q2、Q3がOFFされる。交流電圧が負の場合はスイッチ素子Q1、Q4がOFFされ、Q2、Q3がONされる。
|Vac|<Vdcの期間(時刻t12と時刻t13との間)においては、インバータ回路7はノーマルコイルLnの電流を使ってヒステリシス制御される。インバータ回路7は直流電源4から供給される電圧を降圧して系統3へ供給する。インバータ回路7のヒステリシス制御は、上限値と下限値の間の電流が流れるようにスイッチ素子Q1−Q4がスイッチング駆動される。ノーマルコイル電流が上限値を上回るとスイッチ素子Q1、Q4がONされ、Q2、Q3がOFFされる。ノーマルコイル電流が下限値を下回るとスイッチ素子Q1、Q4がOFFされ、Q2、Q3がONされる。このときコンバータ回路8は、電力を直通的に流すように固定的に制御される。
この構成によると、インバータ回路7もコンバータ回路8も高調波を低減したい入力電流であるノーマルコイルLnの電流で制御するので、制御し易く正弦波に近い電流に制御することができる。
直流電源4が太陽電池である場合、直流電源4の出力は、日射量の変化によって頻繁に変動する。太陽電池が発電する最大電力は、日射量に対応して変化する。そこで、従来、その時点で太陽電池が発電できる電力を最大限に負荷に出力できるように制御する最大電力追従制御(MPPT:Maximum Power Point Tracking)が知られている。このMPPTを実現するために、従来、特許文献1に開示される山登り法が知られている。この山登り法は、最大電力点を探索する。
この山登り法では、ある一定の制御周期で現在の電力と前周期の電力とを比較し、電流指令値を一定量ずつ増減させる。例えば、太陽電池出力制御用のコンバータ回路のスイッチングのデューティ比を制御することにより出力電力を増減させる。例えば、デューティ比を増加させたときに電力が増加した場合は、最大出力電力が得られる作動点が、現時点での作動点よりデューティ比を増加される正側にある。一方、電力が減少した場合は負側にあるといえる。そこで、最大電力点が正側にあると判定された場合、その次の制御周期において現時点のデューティ比からある一定値だけデューティ比を増加させる。このような探索動作を繰り返すことにより実際の出力電力が最大出力電力に近づくように制御される。
図5は、最大電力追従制御における動作点の変化を示す。直流電源4である太陽電池は、図示されるように最大電力が得られる動作点の両側において、異なる傾斜をもつ動作特性を有する。図示の例では、最大の電力が得られる動作点PC、PFより電流が小さい側、図中の左側の傾斜は、動作点PC、PFより電流が大きい側、図中の右側の傾斜より小さい。最大電力の探索は、傾斜が小さい側から電流値を変化させることにより進められる。
動作点PAから最大電力の探索が開始される場合、動作点はPA−PB−PCへ推移する。最大電力が得られる動作点PCを通過し、動作点PDに到達すると、電力の低下が観測される。この場合、制御装置は、電流を減少させ、最大電力が得られる動作点PCに接近させようとする。ところが、応答性が低い電力変換装置1においては、動作点PDを通過し、さらに動作点PEにまで到達することがある。このような過大な低下が生じると、最大電力を得ることが困難である。このような場合、この実施形態では、動作点PEから動作点PAまたはその近傍へスキップ的に戻す処理が実行される。これにより、電力の過剰な低下を抑制して再び探索を開始することができる。スキップ的な変化は、最大電力が得られる動作点PCより高電圧側から低電圧側への変化によって提供される。また、スキップ的な変化の先は、動作点PAに限られない。動作点PCより動作点PA側の範囲に設定することができる。
図中において、実線PSHは、日射量が多い高日射状態における直流電源4の出力を示す。破線PSLは、日射量が少ない低日射状態における直流電源4の出力を示す。高日射状態PSHから低日射状態PSLへの変化が生じる場合、動作点は最大電力点を越えた位置へ移動しやすい。例えば、高日射状態PSHにおいて動作点PCが得られていても、低日射状態PSLへ変化すると、応答性が遅い電力変換装置1の場合、動作点が破線矢印で示されるように推移することがある。日射量の減少に起因する電力の変化に対して、制御が遅れるからである。この場合、電流値は大幅に変化する。このような場合、この実施形態では、動作点PHから動作点PGまたはその近傍へのスキップ的な変化処理が実行される。これにより、電流の指令値が急激に変化するから、電力の過剰な低下が抑制される。スキップ的な変化は、最大電力が得られる動作点PFより高電圧側から低電圧側への変化によって提供される。また、スキップ的な変化の先は、動作点PGに限られない。動作点PFより動作点PG側の範囲に設定することができる。
最大出力追従制御が、この実施形態のような電力変換装置1、すなわちインバータ回路7とコンバータ回路8とを交互に高周波スイッチング駆動する交互駆動制御を適用した太陽電池用パワーコンディショナに適応する場合、解決されるべき課題がある。この場合、交互駆動制御は出力電流を正弦波に形成するよう制御するため、入力電流には系統3の周波数の倍数のリップル、例えば100Hzまたは120Hzのリップルが重畳する。そのため最大電力追従制御で与える電流指令値の変化が、すぐに入力電流の変化に反映されず、最大電力に達してから電流を下げていく際に応答性が追いつかず、出力電力がさらに低下してしまうことがある。特許文献2のように指令値に入力電圧/正規化電圧の係数を掛けたものを出力電流指令値としても指令値に対する応答性が悪いため電力低下を招くことがある。
この実施形態では、電力変換装置1の応答性の遅さに起因する電力の過剰な低下を抑制するために、電流の指令値が探索時の変化方向とは逆方向へスキップ的に戻される。まず、通常時は最大電力を探索するために電流の指令値を一定量づつ増加させる。やがて、入力電力が最大電力を超えると、指令値を上記(3)式で与えられる指令値へ切換えることにより、最大電力となる前の指令値に引き下げる。この制御によると、再び最大電力点に向けて探索が行われる間に、実際の電流実効値が指令値に追いつく。このため、電力変換装置1の動作点が、最大電力が得られる動作点の近傍に維持される。
電流が急激に低下した場合にも、電流の指令値が探索時の変化方向とは逆方向へスキップ的に戻される。電流の指令値の変化分が所定の閾値を上回ると、上記(5)式で与えられる指令値へ切換えることにより、最大電力が得られる動作点より探索時の変化方向に関して逆方向に位置する動作点へ戻される。この制御によると、再び最大電力点に向けて探索が行われる間に、実際の電流実効値が指令値に追いつく。このため、電力変換装置1の動作点が、最大電力が得られる動作点の近傍に維持される。
さらに、この実施形態では、指令値がスキップ的に引き下げられた後に、所定の期間は最大電力の探索のための電力比較を停止し、所定の期間の後に最大電力の探索を再開させる。このため、スキップ的な変化の直後における過渡的な状態に起因する誤動作を回避することができる。
図6は、横軸を時間とするグラフであって、日射量SOL、直流電源4から取り出される電力POW、および電力変換装置1の効率EFFが示されている。時刻t21において、日射量SOLが急激に低下している。破線OPTは理想的な電力POWの変化を示す。実線EMBはこの実施形態による電力POWの変化を示す。この実施形態によると、破線OPTに近い挙動が得られる。また、効率EFFの低下も抑制されている。
図中において、一点鎖線MF1は、行き過ぎ復帰制御部によるスキップ的な変化を採用しない場合の変形例1を示す。この変形例1では、電力POWが最大電力を越えるたびに電力POWの過剰な低下が発生している。図中において、細かい破線MF2は、過大変動復帰制御部によるスキップ的な変化を採用しない場合の変形例2を示す。図示されるように、時刻t21の後、電力POWは大きく低下している。この後、最大電力の付近に復帰するまでに長期間を要する。
図7は、日射量SOLが時刻t31において急激に増加する場合のグラフである。この実施形態によると、実線EMBに示すように、破線OPTに近い出力POWが得られる。また、効率EFFの低下も抑制されている。
(第2実施形態)
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例である。上記実施形態では、インバータ回路7とコンバータ回路8との両方がノーマルコイルLnの電流ILに応じて制御される。これに代えて、この実施形態では、インバータ回路7をノーマルコイルLnの電流ILに応じて制御し、コンバータ回路8は直流電源4からの入力電流Isに応じて制御する。
図8に図示されるように、コンバータ制御部225は、電流センサ14から電流Isを入力する。コンバータ制御部225は、最大電力追従制御から得られる指令値、および中間コンデンサ等に流れる電流を考慮した指令値Irefと電流Isとの差分をとりPI制御演算を実行し、スイッチ素子Qaの駆動信号のデューティ比Dutyを算出する。この実施形態によると、ノーマルコイルLnの電流ILによってインバータ回路7を制御することにより、系統3へ供給される電流の高調波が抑制される。一方で、|Vac|>Vdcの期間において、直流電源4からの電流Isによってコンバータ回路8を制御することにより直流電源4からの電流変化に対する応答性を改善することができる。
(第3実施形態)
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例である。上記実施形態では、上記(3)、(5)式に基づいて指令値にスキップ的な変化を与えた。これに代えて、この実施形態では、予めマップに設定された数値に基づいて指令値にスキップ的な変化が与えられる。
図9に図示されるように、最大電力制御部40は、係数記憶部336を備える。係数記憶部336は、上記(3)、(5)式における係数部分に相当する数値を、上記係数部分における変数を検索のためのパラメータとするマップ上に記憶している。
例えば、係数(Vin/Voc+α)と、係数(1−Vin/Voc−α)とに相当する数値が、直流電源4の運転状態に応じて計測または演算され、予め設定される。係数記憶部336は、係数(Vin/Voc+α)と、係数(1−Vin/Voc−α)とに相当する数値を、直流電源4の運転状態を示すパラメータに対応付けて記憶する。係数記憶部336が、直流電源4の運転状態に対応した係数を提供することにより、前の制御周期における指令値と、提供された係数とに基づいてスキップ的な変化を与えるための指令値が演算される。例えば、入力電流Is、入力電圧Vin、開放電圧Vocそして前の制御周期の指令値Iref_amp_preを検索のためのパラメータとするマップ上に上記係数またはスキップ的な変化のための指令値を記憶しておくことができる。この場合、上記パラメータに基づいて係数またはスキップ的な変化のための指令値が設定される。
(第4実施形態)
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例である。上記実施形態では、ステップ的に指令値を引き下げた後に、再び電力が増加に転じるまで最大電力の探索を停止している。これに代えて、この実施形態では、所定の時間だけ最大電力の探索を停止する。
図10に図示される最大電力制御部40は、時間計測部437を備える。時間計測部437は、指令値がステップ的に引き下げられた後の経過時間を計測し、所定時間が経過するまで最大電力の探索のための指令値の増加と電力比較とを停止させ、所定時間が経過すると最大電力の探索のための指令値の増加と電力比較とを再開させる。上記所定時間は、固定の一定時間、直流電源4の運転状態などの外乱要因に応じて可変の時間、所定の制御周期の数など種々の変数を利用して設定することができる。
(他の実施形態)
上記実施形態では、スイッチ素子としてIGBT素子を例示した。これに代えて、MOSFET素子など種々の電力制御用のスイッチ素子を利用してもよい。
上記実施形態では、インバータ回路7の高速スイッチング制御と、コンバータ回路8の高速スイッチング制御とが交互に切換えられる。これに代えて、インバータ回路7とコンバータ回路8とが同時に高速スイッチング制御される期間が設けられてもよい。これらの構成においても、交流電力のピーク付近ではコンバータ回路8だけが高速スイッチング制御され、交流電力のゼロクロス付近ではインバータ回路7だけが高速スイッチング制御されるから、スイッチング損失が抑制される。
ここに開示される発明は、その発明を実施するための実施形態に何ら制限されることなく、種々変形して実施することが可能である。開示される発明は、実施形態において示された組み合わせに限定されることなく、種々の組み合わせによって実施可能である。実施形態は追加的な部分をもつことができる。実施形態の部分は、省略される場合がある。実施形態の部分は、他の実施形態の部分と置き換え、または組み合わせることも可能である。実施形態の構造、作用、効果は、あくまで例示である。開示される発明の技術的範囲は、実施形態の記載に限定されない。開示される発明のいくつかの技術的範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味及び範囲内での全ての変更を含むものと解されるべきである。
例えば、制御装置が提供する手段と機能は、ソフトウェアのみ、ハードウェアのみ、あるいはそれらの組合せによって提供することができる。例えば、制御装置をアナログ回路によって構成してもよい。