JP2017108553A - 電力変換装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】低コストで、かつ環境条件が大きく変動しても比較的速やかに太陽電池の最大電力点を追従したい。
【解決手段】DC−DC変換部(例えば、昇圧チョッパ11)は、太陽電池1の出力電圧を変換する。制御部20は、太陽電池1の出力電圧を所定のステップ幅で周期的に変化させて、前記太陽電池の出力電力が最大になるようDC−DC変換部を制御する。制御部20は、太陽電池1の出力電力によって定まる所定範囲内に前記太陽電池の出力電圧が収まるようにDC−DC変換部を制御する。
【選択図】図1

Description

本発明は、太陽電池で発電された直流電力を交流電力に変換する電力変換装置に関する。
従来より、太陽電池の発電電力を最大限に取得するための制御として、MPPT (Maximum Power Point Tracking) 制御が良く利用されている。MPPT制御は、太陽電池の動作電圧(出力電圧)を所定のステップ幅で変動させ、太陽電池の最大電力点を探索する制御である。
太陽電池は環境変数(日射量、周囲温度など)により発電特性が変わり、その時々に応じた最大電力点が異なってくる性質がある。従来のMPPT制御において、それらの環境特性が安定した状態では発電効率を高く維持できる。しかしながら、急激な日射変動や急激な温度変化が生じると最大電力点が大きく変化し、動作電圧のステップ移動で新たな最大電力点を捉えるまでに長い時間を要していた。最大電力点に到達するまでの期間が長くなると、その分、太陽電池から取り出せる電力の量が低下する。
そこで日射計や温度計を設置し、日射強度および温度を測定して最大電力点を求め、当該最大電力点に動作電圧を追従させる制御が考えられる(例えば、特許文献1参照)。
国際公開第2012/105197号
しかしながら、日射計や温度計を設置するとコストがかかり、実用性に欠ける面がある。また太陽電池が設置される場所により太陽電池の傾斜角が変わる影響、季節により日射入射角が変わる影響、経年劣化等は考慮されていない。
本発明はこうした状況に鑑みなされたものであり、その目的は、低コストで、かつ環境条件が大きく変動しても比較的速やかに太陽電池の最大電力点を追従できる電力変換装置を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明のある態様の電力変換装置は、太陽電池の出力電圧を変換するDC−DC変換部と、前記太陽電池の出力電圧を所定のステップ幅で周期的に変化させて、前記太陽電池の出力電力が最大になるよう前記DC−DC変換部を制御する制御部と、を備える。前記制御部は、前記太陽電池の出力電力によって定まる所定範囲内に前記太陽電池の出力電圧が収まるように前記DC−DC変換部を制御する。
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせ、本発明の表現を方法、装置、システムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
本発明によれば、速やかに太陽電池の最大電力点を追従できる電力変換装置を実現することができる。
本発明の実施の形態に係る電力変換装置の構成を説明するための図である。 図1の制御部の構成例を示す図である。 太陽電池の電力−電圧特性(P−V曲線)を示す図である。 山登り法を用いたMPPT制御の基本アルゴリズムを示すフローチャートである。 太陽電池の電流−電圧特性(I−V曲線)とフィルファクタ値を説明するための図である。 図6(a)−(d)は、太陽電池のフィルファクタ値と、電力−電圧特性の例を示す図である。 図7(a)−(b)は、日射量変動によるP−V曲線の変動例を示す図である。 実施例1に係る電圧指令値のステップ幅Vaddの動的変更処理の基本動作を示すフローチャートである。 記憶部に構築される最大電力点記憶テーブルの一例を示す図(状態1)である。 記憶部に構築される最大電力点記憶テーブルの一例を示す図(状態2)である。 図10に示した各電力区分における電圧指令値、及び電圧指令値の電圧変動範囲の上限値と下限値をプロットした図である。 記憶部に構築される最大電力点記憶テーブルの別の例を示す図である。 図12に示した各電力区分における電圧指令値、及び電圧指令値の電圧変動範囲の上限値と下限値をプロットした図である。 電圧制限範囲内に太陽電池の電圧指令値Vを制限するためのフローチャートを示す。 図15(a)−(b)は、電圧指令値の変動範囲を設定しない場合の例と、電圧指令値の変動範囲を設定した場合の例を比較した図である。 実施例2に係る電圧指令値の変動範囲の設定処理の一例を示すフローチャートである。
図1は、本発明の実施の形態に係る電力変換装置2の構成を説明するための図である。電力変換装置2は太陽電池1と系統3及び/又は交流負荷(不図示)との間に設置され、太陽電池1から供給される直流電力を交流電力に変換して系統3に供給する、または交流負荷に供給する。
電力変換装置2は、昇圧チョッパ11、インバータ回路12、フィルタ回路13及び制御部20を備える。昇圧チョッパ11は太陽電池1の出力電圧を昇圧し、インバータ回路12に出力する。昇圧チョッパ11は、第1コンデンサC1、第1リアクトルL1、第1スイッチング素子Q1、整流ダイオードD2及び第2コンデンサC2を含む。
第1コンデンサC1は、太陽電池1からの入力電圧を平滑化する。第1リアクトルL1は、第1スイッチング素子Q1のオン/オフに応じて、太陽電池1からの出力電流に基づくエネルギーの蓄積および放出を行う。整流ダイオードD2は電流の逆流を阻止する。第2コンデンサC2は、昇圧チョッパ11の出力電圧を平滑化する。
第1スイッチング素子Q1は、第1リアクトルL1と整流ダイオードD2間のノードと、ローサイド基準電位の間に接続される。第1スイッチング素子Q1には例えば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)を使用できる。第1還流ダイオードD1は、第1スイッチング素子Q1に並列に、逆向きに接続される。なお第1スイッチング素子Q1にMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)を使用してもよい。この場合、第1還流ダイオードD1は、ソースからドレイン方向に形成される寄生ダイオードを利用できる。第1スイッチング素子Q1は、制御部20により生成される第1駆動信号S1に応じてオン/オフ動作する。
なお太陽電池1から出力される直流電圧を、異なるレベルの直流電圧に変換するDC−DCコンバータであれば、昇圧チョッパ11以外のDC−DCコンバータ(例えば、絶縁型DC−DCコンバータ)を使用してもよいし、降圧型のDC−DCコンバータを使用してもよい。
インバータ回路12は、太陽電池1から出力され、昇圧チョッパ11により昇圧された直流電力を系統3と同期した交流電力に変換する。図1ではインバータ回路12をフルブリッジ回路で構成する例を示している。フルブリッジ回路は、第5スイッチング素子Q5と第6スイッチング素子Q6が直列接続された第1アームと、第7スイッチング素子Q7と第8スイッチング素子Q8が直列接続された第2アームを含み、第1アームと第2アームが並列接続される。第1アームの中点と第2アームの中点から交流電力が出力される。
第5スイッチング素子Q5〜第8スイッチング素子Q8には例えば、IGBTを使用できる。第5還流ダイオードD5〜第8還流ダイオードD8は、第5スイッチング素子Q5〜第8スイッチング素子Q8にそれぞれ並列に、逆向きに接続される。なお第5スイッチング素子Q5〜第8スイッチング素子Q8にMOSFETを使用してもよい。この場合、第5還流ダイオードD5〜第8還流ダイオードD8は、ソースからドレイン方向に形成される寄生ダイオードを利用できる。
第5スイッチング素子Q5及び第8スイッチング素子Q8は、制御部20により生成される第2駆動信号S2に応じてオン/オフ動作する。第6スイッチング素子Q6及び第7スイッチング素子Q7は、制御部20により生成される第2駆動信号S2の反転信号に応じてオン/オフ動作する。
フィルタ回路13は、第2リアクトルL2、第3リアクトルL3及び第3コンデンサC23を含み、インバータ回路12から出力される交流電力の高周波成分を減衰させて、インバータ回路12の出力電圧および出力電流を正弦波に近づける。フィルタ回路13から出力される交流電力は、系統連系スイッチ(不図示)を介して系統3と連系される。
制御部20は、昇圧チョッパ11及びインバータ回路12を制御する。制御部20の構成は、ハードウェア資源とソフトウェア資源の協働、またはハードウェア資源のみにより実現できる。ハードウェア資源としてアナログ素子、マイクロコンピュータ、DSP、ROM、RAM、FPGA、その他のLSIを利用できる。ソフトウェア資源としてファームウェア等のプログラムを利用できる。
制御部20は、第1電流センサCT1で検出される昇圧チョッパ11の入力電流Iin(太陽電池1の出力電流)と、第1電圧センサ(不図示)で検出される昇圧チョッパ11の入力電圧Vin1(太陽電池1の出力電圧)をもとに太陽電池1の出力電力Pを算出する。
制御部20は、昇圧チョッパ11の入力電圧Vin1をもとに、第1スイッチング素子Q1のゲート端子に入力する第1駆動信号S1を生成する。第1駆動信号S1は例えばPWM信号で生成され、第1スイッチング素子Q1のデューティ比を制御する。
本実施の形態では制御部20はMPPT制御を実行して、太陽電池1を最大電力点で発電させるよう制御する。具体的には制御部20は第1スイッチング素子Q1のデューティ比を制御して入力電圧Vin1を、太陽電池1の最大電力点に対応する最適動作電圧に追従させるよう制御する。
制御部20は、第2電圧センサ(不図示)で検出されるインバータ回路12の入力電圧Vin2と、第2電流センサCT2で検出されるインバータ回路12の出力電流Ioutと、第3電圧センサ(不図示)で検出される出力電圧Voutをもとに、第5スイッチング素子Q5〜第8スイッチング素子Q8のゲート端子に入力する第2駆動信号S2及びその反転信号を生成する。第2駆動信号S2は例えばPWM信号で生成され、制御部20は、第5スイッチング素子Q5及び第8スイッチング素子Q8のデューティ比を制御する。第2駆動信号S2の反転信号は、第6スイッチング素子Q6及び第7スイッチング素子Q7のデューティ比を制御する。
図2は、図1の制御部20の構成例を示す図である。図2(a)は、図1の制御部20が昇圧チョッパを制御する際のブロック図であり、図2(b)は、図1の制御部20がインバータ回路を制御する際のブロック図である。制御部20は、MPPT制御部21、第1減算部24、第1補償部25、第1比較部26を含む昇圧回路制御部と、第2減算部27、第2補償部28、第3減算部29、第3補償部210、加算部211及び第2比較部212を含むインバータ回路制御部とからなる。MPPT制御部21は、処理部22及び記憶部23を含む。
処理部22は、電圧指令値V1を所定のステップ幅(Vadd)で変化させて、太陽電池1の出力電力Pが最大となる最適動作電圧Vmaxを探索する。太陽電池1の最大出力電力点Pmaxは山登り法により探索できる。山登り法の具体的な説明は後述する。
第1減算部24は、MPPT制御部21により生成された電圧指令値Vから、検出された入力電圧Vin1を減算して偏差ΔVを算出する。第1補償部25は当該偏差ΔVをもとに、PI補償またはP補償により指令値(第1駆動信号S1のデューティ比を示す値となる)を生成する。第1比較部26は当該指令値と、三角波のキャリア信号を比較して、このデューティー比を有する第1駆動信号S1を生成する。生成された第1駆動信号S1は第1スイッチング素子Q1のゲート端子に入力される。
昇圧回路制御によりMPPT制御が成され、太陽電池1の出力電力が増減すると、昇圧チョッパ11の出力電圧が増減するため、インバータ回路制御部は、昇圧チョッパ11の出力電圧(インバータ回路12の入力電圧Vin2)が一定になるようにインバータ回路12を制御する。
昇圧電圧指令値V2を目標値から変更させないためには、入力電力が増えれば、出力電流指令値Iを増やして出力電力を増やす。入力電力が減れば、出力電流指令値Iを減らして出力電力を減らす動作が必要となる。具体的には、図2(b)に示すように、第2減算部27は、インバータ回路12の入力電圧Vin2の電圧指令値V2からインバータ回路12の入力電圧Vin2を減算して偏差ΔV2を算出する。尚、電流指令値V2は、系統電圧のピーク値よりも高く設定される。第2補償部28は、当該偏差ΔV2をもとにPI補償またはP補償により電流指令値Iを生成する。
第3減算部29は、電流指令値Iから、検出された出力電流Ioutを減算して偏差ΔIを算出する。第3補償部210は当該偏差ΔIをもとに、PI補償またはP補償により指令値を生成する。加算部211は当該指令値に、インバータ回路12の出力電圧Voutをインバータ回路12の入力電圧Vin2で割った電圧を加算して、系統電圧による外乱成分を補償する。第2比較部212は、外乱成分が補償された指令値と、三角波のキャリア信号を比較して、第2駆動信号S2を生成する。生成された第2駆動信号S2及びその反転信号は第5スイッチング素子Q5〜第8スイッチング素子Q8のゲート端子に入力される。
図3は、太陽電池の電力−電圧特性(P−V曲線)を示す図である。太陽電池1は、開放電圧側から最大電力点Pmaxに到達するまでは電圧を下げるほど出力電力が上昇するが、最大電力点Pmaxを超えると電圧を下げるほど出力電力が低下する。従って最大電力点Pmaxの左側では、現在の動作電圧を右側にシフトさせ、最大電力点Pmaxの右側では動作電圧を左側にシフトさせる山登り法を用いたMPPT制御が実行される。
図4は、山登り法を用いたMPPT制御の基本アルゴリズムを示すフローチャートである。処理部22は、フラグflagに初期値として0または1を設定する(S5)。処理部22は、昇圧チョッパ11の入力電圧Vin1(n)と昇圧チョッパ11の入力電流Iin(n)から太陽電池1の出力電力P(n)を検出する(S10)。処理部22は、検出した太陽電池1の出力電力P(n)と入力電圧Vin1(n)を記憶部23に記憶する。
処理部22は、現在の出力電力P(n)から1単位過去の出力電力P(n−1)を減算して出力電力Pの変化量ΔPを算出する(S11)。
処理部22は、出力電力Pの変化量ΔPが負の場合(S12のN)で前回電圧指令値を演算する際にステップ幅Vaddを加算したか減算したかを示すフラグflagが減算を示す場合(S13のN)、現在の入力電圧Vin1(n)にステップ幅Vaddを加算して電圧指令値V(n)を算出する(S14)。尚、ここでは、フラグflag=1の際に、ステップ幅Vaddを前回加算したものとし、フラグflag=0の際に、ステップ幅Vaddを前回減算したものとしている。加算後、フラグflagに1をセットする。
処理部22は、出力電力Pの変化量ΔPが負の場合(S12のN)でフラグflag=1(前回加算)の場合(S13のY)、現在の入力電圧Vin1(n)からステップ幅Vaddを減算して電圧指令値V(n)を算出する(S15)。減算後、フラグflagに0をセットする。
処理部22は、出力電力Pの変化量ΔPが正または0の場合(S12のY)でフラグflag=0の場合(S16のN)、現在の入力電圧Vin1(n)からステップ幅Vaddを減算して電圧指令値V(n)を算出する(S17)。減算後、フラグflagに0をセットする。
処理部22は、出力電力Pの変化量ΔPが正または0の場合(S12のY)でフラグflag=1の場合(S16のY)、現在の入力電圧Vin1(n)にステップ幅Vaddを加算して電圧指令値V(n)を算出する(S18)。加算後、フラグflagに1をセットする。
電圧指令値V(n)が更新され、時刻nが1単位進む(S19)。ステップS10からステップS19までの処理が太陽電池1が発電している間(S110のN)継続される。太陽電池1の発電が停止すると(S110のY)、本MPPT制御が終了する。
図5は、太陽電池の電流−電圧特性(I−V曲線)とフィルファクタ値を説明するための図である。フィルファクタ値(曲線因子ともいう)は、太陽電池の性能を表す代表的な指標の1つである。フィルファクタ値(FF値)は下記(式1)により規定される。
FF=Pmax/Pt=(Imax・Vmax)/(Isc・Voc) …(式1)
Iscは短絡電流であり、太陽電池の出力電極間に負荷を接続せずに、出力電極間をショートした場合に流れる電流を示す。Vocは開放電圧であり、出力電極間を開放した状態にける出力電極間の電位差を示す。フィルファクタ値は1に近いほど内部損失が少なく、外部に取り出せる電気エネルギーが多いことを意味している。従ってフィルファクタ値が高い太陽電池ほど高性能であるといえる。一般にフィルファクタ値が0.85以上の太陽電池は高性能カテゴリに分類され、0.6〜0.7程度の太陽電池は低性能カテゴリに分類される。
図6(a)−(d)は、太陽電池のフィルファクタ値と、電力−電圧特性の例を示す図である。図6(a)−(b)はフィルファクタ値が0.6の太陽電池の電力−電圧特性の一例を示している。図6(c)−(d)はフィルファクタ値が0.8の太陽電池の電力−電圧特性の一例を示している。前者(FF値=0.6)と後者(FF値=0.8)を比較すると、日射変動などにより発電電力が同じ量変化した場合、前者の方が最適動作電圧Vmaxの変動範囲が広いことが分かる。
太陽電池のP−V曲線およびI−V曲線は、日射量や温度によって変化する。特に日射量に応じて大きく変化する。日射量が多いほどP−V曲線およびI−V曲線は上方にシフトする。一般に、太陽電池の仕様書やカタログには、一定の温度(例えば25℃)及び一定の日射量(例えば、1.0kW/m)を前提としたフィルファクタ値が記載されている。上述のように太陽電池には日射特性や温度特性があるため、フィルファクタ値も日射量や温度により変化する。
図7(a)−(b)は、日射量変動によるP−V曲線の変動例を示す図である。図7(a)はフィルファクタ値が0.6の太陽電池のP−V曲線の変動例を示し、図7(b)はフィルファクタ値が0.8の太陽電池のP−V曲線の変動例を示している。フィルファクタ値が0.6の太陽電池では開放電圧Vocと最適動作電圧Vmaxの差が相対的に大きい。一方、フィルファクタ値が0.8の太陽電池では開放電圧Vocと最適動作電圧Vmaxの差が相対的に小さい。
またフィルファクタ値が0.6の太陽電池では日射量変動前後における開放電圧の差(Voc2−Voc1)が相対的に大きくなる。一方、フィルファクタ値が0.8の太陽電池では日射量変動前後における開放電圧の差(Voc2−Voc1)が相対的に小さくなる。
またフィルファクタ値が0.6の太陽電池では日射量変動前後における最適動作電圧の差(Vmax2−Vmax1)が相対的に大きくなる。一方、フィルファクタ値が0.8の太陽電池では日射量変動前後における最適動作電圧の差(Vmax2−Vmax1)が相対的に小さくなる。
ところで太陽電池のMPPT効率に関するベンチマーク規格として、欧州規格(EN50530)がある。この規格には、日射量が長時間安定した試験パターンに加えて、日射量の短時間急変が頻発する試験パターンが規定されている。従来のMPPT制御は、日射量が長時間安定した試験パターンに対しては十分な応答特性を確保できていたが、日射量の短時間急変が頻発する試験パターンに対しては十分な応答特性を確保できていなかった。以下、本実施の形態では、日射量の急変に対するMPPT制御の過渡応答特性を改善する技術を提示する。
(実施例1)
実施例1では制御部20は、電圧指令値のステップ幅Vaddを太陽電池1の特性に基づいて可変させる。例えば、太陽電池1のフィルファクタ値に基づいて、電圧指令値のステップ幅Vaddの大きさを変化させる。具体的にはフィルファクタ値が小さいほどステップ幅Vaddを大きく設定する。
図6(b)、(d)、及び図7(a)−(b)に示したようにフィルファクタ値が小さい方が、P−V曲線の傾きが緩やかになる。すなわち、フィルファクタ値が小さいほど最適動作電圧の変動範囲が広くなる。従ってフィルファクタ値が小さいほどステップ幅Vaddを大きく設定することにより、太陽電池1の最大電力点Pmaxに到達する予測時間を、フィルファクタ値に関わらずほぼ一定にすることができる。
処理部22は、予め設定された変換テーブルや変換関数に基づき、フィルファクタ値に応じたステップ幅Vaddを導出する。フィルファクタ値は制御部20に、出荷時に内部設定されてもよいし、入力部30(図1参照)から外部設定されてもよい。入力部30は電力変換装置2の筐体の外側に設置され、ユーザや保守管理者が操作してフィルファクタ値を入力することができる。太陽電池1を交換した場合、ユーザや保守管理者は、新たな太陽電池1のフィルファクタ値を入力部30から設定する。
また処理部22は、太陽電池1の最大電力点Pmaxを捉えることにより、太陽電池1のフィルファクタ値を推測することもできる。上記(式1)に示したように、太陽電池1の短絡電流Iscと開放電圧Vosが既知であれば、最大電力点Pmaxを捉えることによりフィルファクタ値を算出することができる。処理部22は電圧指令値が、ある動作点を超えて次にその動作点に戻る往復移動したとき、当該動作点を最大電力点Pmaxと判定する。処理部22は最大電力点Pmaxを検出すると、検出した最大電力点Pmaxの電力値と電圧値(最適動作電圧)を記憶部23に記憶する。
処理部22は、検出した最大電力点Pmaxの電力値を上記(式1)に適用して、フィルファクタ値を算出する。上述のように最大電力点Pmaxは日射変動等により変動する。処理部22は、新たな最大電力点Pmaxを検出すると、新たに検出した最大電力点Pmaxの電力値と電圧値を記憶部23に記憶する。それとともに、処理部22は新たな最大電力点Pmaxの電力値を上記(式1)に適用して、新たなフィルファクタ値を算出する。
また処理部22は、一定期間における太陽電池1の出力電力の変化量に応じて、電圧指令値のステップ幅Vaddの大きさを変化させてもよい。具体的には太陽電池1の出力電力の変化量が小さいほどステップ幅Vaddを小さく設定する。処理部22は、予め設定された変換テーブルや変換関数に基づき、太陽電池1の出力電力の変化量に応じたステップ幅Vaddを導出する。なお太陽電池1の出力電力の変化量が所定値以上の場合は第1のステップ幅Vaddを選択し、所定値より小さい場合は第1のステップ幅Vaddより小さな第2のステップ幅Vaddを選択するシンプルな制御を用いてもよい。また当該ステップ幅Vaddの動的変更処理は、太陽電池1の出力電力が閾値よりも大きい状態のとき有効にし、閾値以下の状態のとき無効にしてもよい。
図8は、実施例1に係る電圧指令値のステップ幅Vaddの動的変更処理の基本動作を示すフローチャートである。処理部22は、昇圧チョッパ11の入力電圧Vin1(k)と昇圧チョッパ11の入力電流Iin(k)から太陽電池1の出力電力P(k)を検出する(S20)。処理部22は、検出した太陽電池1の出力電力P(k)を記憶部23に記憶する。処理部22は、現在の出力電力P(k)から1単位過去の出力電力P(k−1)を減算して出力電力Pの変化量ΔPを算出する(S21)。処理部22は、出力電力Pの変化量ΔPに応じて、電圧指令値のステップ幅Vaddの大きさを決定する(S22)。時刻kが1単位進む(S23)。ステップS20からステップS23までの処理が太陽電池1が発電している間(S24のN)継続される。太陽電池1の発電が停止すると(S24のY)、本ステップ幅Vaddの動的変更処理が終了する。
図8の時刻kと時刻(k−1)間の期間は、図4に示した時刻nと時刻(n−1)間の期間より長く設定されることを想定するが、両期間の長さを同じに設定してもよい。
上述したフィルファクタ値に応じたステップ幅Vaddの可変処理と、太陽電池1の出力電力の変化量に応じたステップ幅Vaddの動的変更処理は、いずれか一方が使用されてもよいし、両者が併用されてもよい。両者が併用される場合、いずれかの処理では、入力変数に対する出力変数をステップ幅Vaddの絶対的な数値ではなく、ステップ幅Vaddの拡大/縮小率で規定すればよい。例えば、フィルファクタ値に応じたステップ幅Vaddの値に、太陽電池1の出力電力の変化量に応じた拡大/縮小率を掛けた値を、最終的なステップ幅Vaddとする。
以上説明したように実施例1によれば、太陽電池1のフィルファクタ値および/または太陽電池1の出力電力の変化量に応じて、電圧指令値のステップ幅Vaddを変更することにより、MPPT制御の過渡応答特性を改善することができる。例えば、フィルファクタ値が低い太陽電池1でも、フィルファクタ値が高い太陽電池1と変わらない時間で、太陽電池1の最大電力点Pmaxを捉えることができる。
また日射量の変動により太陽電池1の出力電力の変化量が大きくなった場合でも、電圧指令値のステップ幅Vaddを拡大することにより、太陽電池1の最大電力点を捉えるまでの時間が延びることを抑制できる。すなわち、環境条件が大きく変動しても比較的速やかに太陽電池1の最大電力点Pmaxを追従できる。上述した欧州規格(EN50530)の日射量の短時間急変が頻発する試験パターンにも十分対応できる。
また日射計や温度計を使用せずに、太陽電池1の出力電力から環境条件の変動を推測するため、コストを抑えることができる。また従来のMPPT制御に対して、ソフトウェアの更新で実装することができるため、既存の資産を有効活用でき、コスト上昇を抑えることができる。
(実施例2)
実施例2では制御部20は、電圧指令値の変動範囲に制限を加える。具体的には太陽電池1の出力電力に応じて、電圧指令値の変動範囲の位置を移動させる。
上述のように処理部22は、最大電力点Pmaxを検出すると、検出した最大電力点Pmaxの電力値と電圧値を記憶部23に記憶する。処理部22は、記憶部23に記憶された最大出力電力点Pmaxの電力値と電圧値をもとに、太陽電池1の出力電力ごとの最適動作電圧を求める。処理部22は、当該最適動作電圧を基準位置として含む、太陽電池1の出力電力ごとの電圧指令値の変動範囲を設定する。具体的には、最適動作電圧を中心に変動範囲の上限値Vth1と下限値Vth2を設定する。
処理部22は、記憶部23に記憶された複数の最大電力点の電力値と電圧値をもとに、太陽電池1の出力電力と最適な電圧指令値の1次関数を生成し、当該1次関数を用いて太陽電池1の出力電力ごとの最適動作電圧を求める。記憶された最大電力点の数が3点以上の場合、処理部22は、隣接する2点間ごとに1次関数を生成する。以下、具体例を挙げながら説明する。
図9は、記憶部23に構築される最大電力点記憶テーブル23aの一例を示す図(状態1)である。図9に示すテーブル23aでは太陽電池1の出力電力を200W単位で区分している。図9に示す例では、日射量の上昇とともに太陽電池1の出力電力が上昇し、太陽電池1の出力電力が1000Wに到達したとき、処理部22が最大電力点Pmaxとして検出する。処理部22は、電力区分が950Wの行に最大電力点Pmaxの電力値Pmaxとして1000Wを、電圧値Vmaxとして190Vを記憶する。
次に日射量のさらなる上昇とともに太陽電池1の出力電力が上昇し、太陽電池1の出力電力が2000Wに到達したとき、処理部22が最大電力点Pmaxとして検出する。処理部22は、電力区分が1950Wの行に最大電力点Pmaxの電力値Pmaxとして2000Wを、電圧値Vmaxとして222Vを記憶する。
図10は、記憶部23に構築される最大電力点記憶テーブル23aの一例を示す図(状態2)である。処理部22は、2点の最大電力点Pmaxから1次関数(y=ax+b)を生成する。x=電圧値V、y=電力値Pとし、1次関数(y=ax+b)に第1最大電力点Pmax1(190、1000)の値と、第2最大電力点Pmax2(222、2000)の値を代入することにより、傾きa=31.25、切片b=−4938が得られる。y=ax+bをx=(y−b)/aに置き換え、yに各区分の電力値を代入すると、電力区分ごとの最適動作電圧が得られる。図10に示す例は、最適動作電圧に5Vを加えた電圧値を、各電力区分における電圧指令値の変動範囲の上限値に設定している。また、最適動作電圧から5Vを引いた電圧値を、各電力区分における電圧指令値の変動範囲の下限値に設定している。
図11は、図10に示した各電力区分における最適動作電圧、及び電圧指令値の変動範囲の上限値と下限値をプロットした図である。処理部22は、各出力電力において電圧指令値の変動範囲を、図11に示した電圧制限範囲内に制限する。
図12は、記憶部23に構築される最大電力点記憶テーブル23aの別の例を示す図である。図12に示すテーブル23aも太陽電池1の出力電力を200W単位で区分している。図12に示す例では、日射量の上昇とともに太陽電池1の出力電力が上昇し、太陽電池1の出力電力が600Wに到達したとき、処理部22が最大電力点Pmaxとして検出する。処理部22は、電力区分が550Wの行に最大電力点Pmaxの電力値Pmaxとして600Wを、電圧値Vmaxとして160Vを記憶する。
次に日射量のさらなる上昇とともに太陽電池1の出力電力が上昇し、太陽電池1の出力電力が1000Wに到達したとき、処理部22が最大電力点Pmaxとして検出する。処理部22は、電力区分が950Wの行に最大電力点Pmaxの電力値Pmaxとして1000Wを、電圧値Vmaxとして190Vを記憶する。
上述のように処理部22は、2点の最大電力点Pmaxから1次関数(y=ax+b)を生成する。1次関数(y=ax+b)に第1最大電力点Pmax1(160、600)の値と、第2最大電力点Pmax2(190、1000)の値を代入することにより、傾きa=13.33、切片b=−1533が得られる。yに各区分の電力値を代入することにより、電力区分ごとの最適動作電圧が得られる。
次に日射量のさらなる上昇とともに太陽電池1の出力電力が上昇し、太陽電池1の出力電力が2000Wに到達したとき、処理部22が最大電力点Pmaxとして検出する。処理部22は、電力区分が1950Wの行に最大電力点Pmaxの電力値Pmaxとして2000Wを、電圧値Vmaxとして222Vを記憶する。
処理部22は、今回検出した最大電力点Pmaxと前回検出した最大電力点Pmaxから1次関数(y=ax+b)を生成する。1次関数(y=ax+b)に第2最大電力点Pmax2(190、1000)の値と、第3最大電力点Pmax3(222、2000)の値を代入することにより、傾きa=31.25、切片b=−4938が得られる。yに各区分の電力値を代入することにより、950Wを超える電力区分ごとの新たな最適動作電圧が得られる。950W以下の電力区分ごとの最適動作電圧は変わらない。
次に日射量のさらなる上昇とともに太陽電池1の出力電力が上昇し、太陽電池1の出力電力が4600Wに到達したとき、処理部22が最大電力点Pmaxとして検出する。処理部22は、電力区分が4550Wの行に最大電力点Pmaxの電力値Pmaxとして4600Wを、電圧値Vmaxとして265Vを記憶する。
処理部22は、今回検出した最大電力点Pmaxと前回検出した最大電力点Pmaxから1次関数(y=ax+b)を生成する。1次関数(y=ax+b)に第3最大電力点Pmax3(222、2000)の値と、第4最大電力点Pmax4(265、4600)の値を代入することにより、傾きa=60.47、切片b=−11423が得られる。yに各区分の電力値を代入することにより、1950Wを超える電力区分ごとの新たな最適動作電圧が得られる。1950W以下の電力区分ごとの最適動作電圧は変わらない。
図13は、図12に示した各電力区分における最大動作電圧、及び電圧指令値の電圧変動範囲の上限値と下限値をプロットした図である。処理部22は、各出力電力において電圧指令値の変動範囲を、図13に示した電圧制限範囲内に制限する。
図12、図13に示す例では、図9−図11に示す例と同様に処理部22は、1点目と2点目の最大電力点Pmaxを捉えたら、2点の最大電力点Pmaxをもとに1次関数を生成する。さらに日射が安定し、3点目、4点目の最大電力点Pmaxを捉えたら、処理部22はその都度、新たな1次関数を生成する。図13に示すように全体として折れ線状の電圧制限範囲が生成される。これにより、発電電力の上昇に伴い徐々にずれる最大電力点Pmaxの電圧値の範囲をより正確に制限することができる。
図14は、電圧制限範囲内に太陽電池の電圧指令値Vを制限するためのフローチャートを示す。このフローチャートは、図4のフローチャートのステップS19とステップS110との間にステップS191−ステップS195を追加したものであり、これにより上記制限を実現する。
ステップS10からステップS19までの間に電圧指令値Vが生成されると、まず図13に示す現在の電力値P(n)に対応する電力区分から電圧制限範囲の上限値Vth1、下限値Vth2を更新する(ステップS191)。そして、上限値Vth1と電圧指令値Vを比較し(ステップS192)、電圧指令値V*が上限値Vth1よりも大きい場合(ステップS192のY)は、電圧指令値Vを上限値Vth1に設定して(ステップS193)ステップS110へ移行する。また、ステップS192において、電圧指令値Vが上限値Vth1よりも小さい、或いは等しい場合(ステップS192のN)は、ステップS194へ移行し、電圧指令値Vと下限値Vth2を比較する。
電圧指令値Vが下限値Vth2よりも小さい場合(ステップS194のY)は、電圧指令値Vを下限値Vth2に設定して(ステップS195)ステップS110へ移行する。また、ステップS194において、電圧指令値Vが下限値Vth2よりも大きい、或いは等しい場合(ステップS194のN)は、電圧指令値Vを変更することなくステップS110へ移行する。このようにステップS191〜ステップS195が実行されることにより、電圧指令値Vが電圧制限範囲内に制限される。
図15(a)−(b)は、電圧指令値の変動範囲を設定しない場合の例と、電圧指令値の変動範囲を設定した場合の例を比較した図である。図15(a)が変動範囲を設定しない場合の例を示し、図15(b)が変動範囲を設定した場合の例を示している。図15(a)に示すように変動範囲が設定されていない場合、日射量の増加によりP−V曲線が上昇している間は基本的に、現在の入力電圧Vin1(n)の急上昇に合わせて電圧指令値が増加方向へ大きく移動し続ける。日射量の増加が止まりP−V曲線の上昇が止まると、電圧指令値が、増加への移動により太陽電池1の出力電力が低下する地点に到達する。その後、電圧指令値が減少方向へ移動し、最大電力点Pmax2に到達する。
一方、図15(b)に示すように変動範囲が設定されている場合、日射量の増加により現在の入力電圧Vin1(n)が上昇している間でも、各出力電力区分毎の電圧指令値の変動範囲の上限値に電圧指令値が制限される。従ってP−V曲線が上昇している間、各出力電力時における変動範囲の上限値近辺に沿って電圧指令値が移動する。日射量の増加が止まりP−V曲線の上昇が止まると、電圧指令値が、増加方向への移動により太陽電池1の出力電力が低下する地点に到達する。その後、電圧指令値が減少方向へ移動し、最大電力点Pmax2に到達する。
図15(a)と図15(b)を比較すると、前者の方が、各出力電力における本来の最適動作電圧から大きく離れて電圧指令値が移動する。従って前者は日射変動中の発電効率の低下が大きくなり積算電力のロスが大きくなる。また日射変動後の最大電力点に到達するまでの時間も長くなる。一方、後者は日射変動中の発電効率の低下が抑えられ積算電力のロスが小さくなる。また日射変動後の最大電力点に到達するまでの時間が短くなる。なお図15(a)−(b)では日射量が少ない状態から多い状態に遷移する場合の例を示したが、日射量が多い状態から少ない状態に遷移する場合も同様の知見があてはまる。
図16は、実施例2に係る電圧指令値の変動範囲の設定処理の一例を示すフローチャートである。処理部22は、昇圧チョッパ11の入力電圧と昇圧チョッパ11の入力電流から太陽電池1の出力電力を検出する(S30)。処理部22は、検出した太陽電池1の出力電力が、太陽電池1の最大電力点であるか否か判定する(S31)。最大電力点である場合(S31のY)、処理部22は、検出した最大電力点の電力値と電圧値を記憶部23に記憶する(S32)。処理部22は、当該最大電力点の検出が2つ目以降の最大電力点の検出であるか否か判定する(S33)。1つ目の最大電力点の検出である場合(S33のN)、ステップS34以降の処理に遷移せずにステップS30に戻る。
2つ目以降の最大電力点の検出である場合(S33のY)、処理部22は今回検出した最大電力点と、1つ前に検出した最大電力点の2点をもとに1次関数を生成する(S34)。処理部22は生成した1次関数をもとに、太陽電池1の出力電力ごとの最適動作電圧を生成する(S35)。処理部22は生成した各最適動作電圧をもとに、出力電力ごとの電圧指令値の変動範囲を設定する(S36)。ステップS30からステップS36までの処理が太陽電池1が発電している間(S37のN)継続される。太陽電池1の発電が停止すると(S37のY)、本電圧指令値の変動範囲の設定処理が終了する。
図16のフローチャートに示した例では、最大電力点が2つ検出された時点で1次関数を生成した。この点、最大電力点が1つ検出された時点で、当該最大電力点の電力値と電圧値、及び太陽電池1の開放電圧Vocをもとに1次関数を生成してもよい。具体的には、最大電力点Pmaxの最適動作電流Imaxを、最適電圧電圧Vmaxの変動に関わらず、短絡電流Iscとほぼ等しい電流値で一定に推移すると仮定する。当該仮定を前提とすると、上記(式1)に示したフィルファクタ値FFの算出式は、下記(式2)のように変形できる。
FF=Vmax/Voc …(式2)
最適動作電流Imaxが最適電圧電圧Vmaxの変動に関わらず一定という前提下では、最大電力点の電力値は最適電圧電圧Vmaxに比例する関係になる。従って上記(式2)のフィルファクタ値FFを、最適動作電圧Vmaxと出力電力との1次関数の傾きaとみなすことができる。フィルファクタ値FFが小さいほど、傾きaが緩くなり電圧指令値の変動範囲が広がる関係になる。
太陽電池1の開放電圧Vocは既知または常時検出可能であるため、1つ目の最大電力点を検出した時点で、処理部22は当該最大電力点の電圧値を開放電圧Vocで割ることにより、最初の1次関数の傾きaの概算値を算出することができる。従って最大電力点が1点のみ得られ、その後に終始日射変動が続き、2点目の最大電力点を検出できない場合でも、電圧指令値の変動範囲を設定することができる。また、2点目の最大電力点を検出できた場合でも、1点目の最大電力点から2点目の最大電力点への遷移中にも、図14(a)−(b)で説明した積算電力のロスが小さくなる効果を享受することができる。従ってトータルの発電効率を向上させることができる。
太陽電池1の最大電力点は日射量に応じて、非線形に変動する特性を有している。日射量が少ないほど最適動作電圧の変動範囲が広くなる。そこで処理部22は、太陽電池1の出力電力が低いほど電圧指令値の変動範囲を広く設定することができる。この制御を行う場合、処理部22は、予め設定された変換テーブルや変換関数に基づき、太陽電池1の出力電力に応じた電圧指令値の変動範囲を導出する。
また処理部22は、検出される入力電圧が、電圧指令値の変動範囲の上限値または下限値に一定時間以上張り付いている場合、当該電圧指令値の変動範囲を広げてもよい。上限値または下限値に一定時間以上張り付いている場合、1次関数をもとに推定した最適動作電圧の位置が本来の最適動作電圧の位置とずれており、本来の最適動作電圧が、電圧指令値の変動範囲の外に存在する可能性がある。この場合、電圧指令値の変動範囲の上限値及び/又は下限値を拡大方向に移動させることにより、本来の最適動作電圧が、電圧指令値の変動範囲内に存在する状態に速やかに是正する。
太陽電池1の最大電力点は日射量や温度に応じて変動する。太陽電池1の運転時間が長くなると最大電力点がずれてくる。処理部22は、記憶部23に記憶された最大電力点の電力値と電圧値を定期的に更新する。例えば、処理部22は現在の電圧指令値の変動範囲を、記憶部23に既に記憶された最大電力点の電力値と電圧値に基づく1次関数をもとに生成する。一方で新たに検出された最大電力点の電力値と電圧値は将来使用するために分けて記憶する。例えば、最大電力点記憶テーブルを2つ用意し、新たに検出された最大電力点の電力値と電圧値は、現在使用しているテーブルではない方のテーブルに記憶する。
所定時間後(例えば、30分後)または明日の運転開始時に処理部22は、テーブルを切り替えて最大電力点の電力値と電圧値を更新する。処理部22は、新しい最大電力点の電力値と電圧値に基づく1次関数を生成する。これにより、より現在の状況に近いデータをもとに1次関数を生成することができ、電圧指令値の変動範囲を高精度に設定することができる。
以上説明したように実施例2によれば、電圧指令値の変動範囲を設定することにより、日射変動に対するMPPT制御の追従性能を向上させることができる。当該追従性能の向上は、フィルファクタ値が小さい太陽電池ほど顕著に現れる。実施例1に示した電圧指令値のステップ幅Vaddの可変制御と組み合わせて使用すれば、太陽電池1のMPPT制御の過渡応答特性をより大きく改善させることができる。
また日射計や温度計を使用せずに、太陽電池1の出力電力から環境条件の変動を推測するため、コストを抑えることができる。また従来のMPPT制御に対して、ソフトウェアの更新で実装することができるため、既存の資産を有効活用でき、コスト上昇を抑えることができる。
以上、本発明を実施の形態をもとに説明した。実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
上述の実施例1では、太陽電池1のフィルファクタ値および/または太陽電池1の出力電力の変化量に応じて、電圧指令値のステップ幅Vaddを変更する処理を説明した。この点、太陽電池1を構成するパネルの直列数に応じて電圧指令値のステップ幅Vaddを変更してもよい。パネルの直列数が多くなるほど入力電圧が高くなるため、電圧指令値のステップ幅Vaddを大きくする。
なお、実施の形態は、以下の項目によって特定されてもよい。
[項目1]
太陽電池(1)の出力電圧を変換するDC−DC変換部(11)と、
前記太陽電池(1)の出力電圧を所定のステップ幅で周期的に変化させて、前記太陽電池の出力電力が最大になるよう前記DC−DC変換部(11)を制御する制御部(20)と、を備え、
前記制御部(20)は、前記太陽電池(1)の出力電力によって定まる所定範囲内に前記太陽電池(1)の出力電圧が収まるように前記DC−DC変換部(11)を制御することを特徴とする電力変換装置(2)。
これによれば、最大電力点の追従性能を向上させることができる。
[項目2]
前記制御部(20)は、
前記太陽電池(1)の最大電力点を検出したときの電力値と電圧値を記憶する記憶部(23)と、
前記記憶部(23)に記憶された最大電力点の電力値と電圧値をもとに、前記太陽電池(1)の出力区分ごとの最適動作電圧を求め、当該最適動作電圧を基準位置とした前記出力区分ごとに前記所定範囲を設定する処理部(22)と、
を含むことを特徴とする項目1に記載の電力変換装置(2)。
「最適動作電圧」とは、太陽電池(1)が最大電力点で動作しているときの電圧値を指す。
これによれば、出力電力ごとの最適動作電圧に応じた、電圧指令値の変動範囲を設定することができる。
[項目3]
前記処理部(22)は、前記記憶部(23)に記憶された複数の最大電力点の電力値と電圧値をもとに、前記太陽電池(1)の出力電力と最適動作電圧の1次関数を生成し、当該1次関数を用いて前記太陽電池の出力区分ごとの最適動作電圧を求めることを特徴とする項目2に記載の電力変換装置(2)。
これによれば、出力電力ごとの最適動作電圧を簡単な演算で推測することができる。
[項目4]
前記処理部(22)は、前記記憶部(23)に記憶された最大電力点の数が3点以上のとき、隣接する2点間ごとに前記1次関数を生成することを特徴とする項目3に記載の電力変換装置(2)。
これによれば、出力電力ごとの最適動作電圧を、より高精度に推測することができる。
[項目5]
前記処理部(22)は、前記記憶部(23)に記憶された1つの最大電力点の電力値と電圧値と、前記太陽電池(1)の開放電圧をもとに、前記太陽電池(1)の出力電力と前記最適動作電圧の1次関数を生成し、当該1次関数を用いて前記太陽電池(1)の出力区分ごとの最適動作電圧を求めることを特徴とする項目2に記載の電力変換装置(2)。
これによれば、最大電力点が1つ検出された時点で、1次関数を生成することができる。
[項目6]
前記処理部(22)は、前記記憶部(23)に記憶された最大電力点の電力値と電圧値を定期的に更新することを特徴とする項目2から5のいずれかに記載の電力変換装置(2)。
これによれば、現在の環境条件をより反映した、出力電力ごとの電圧指令値の変動範囲を設定することができる。
[項目7]
前記制御部(20)は、前記出力区分の電力値が低いほど前記所定範囲を広く設定することを特徴とする項目1から6のいずれかに記載の電力変換装置(2)。
これによれば、より適正な所定範囲を設定することができる。
[項目8]
前記制御部(20)は、前記太陽電池(1)の出力電圧が周期的に更新される電圧指令値になるように前記DC−DC変換部(20)を制御し、
前記電圧指令値は、前記太陽電池(1)の出力電力の増減と前回更新された電圧指令値の更新内容に応じて現在の前記太陽電池(1)の出力電圧に前記所定のステップ幅を加算して前記電圧指令値とするか、減算して前記電圧指令値とするかを決定し、決定された前記電圧指令値が前記所定範囲から外れる際に前記電圧指令値を前記所定範囲内に補正することを特徴とする項目1乃至項目7の何れかに記載の電力変換装置(2)。
これによれば、MPPT制御において電圧指令値を所定範囲内に収めることができる。
1 太陽電池、 2 電力変換装置、 3 系統、 11 昇圧チョッパ、 12 インバータ回路、 13 フィルタ回路、 CT1 第1電流センサ、 CT2 第2電流センサ、 Q1 第1スイッチング素子、 Q5 第5スイッチング素子、 Q6 第6スイッチング素子、 Q7 第7スイッチング素子、 Q8 第8スイッチング素子、 D1 第1還流ダイオード、 D2 整流ダイオード、 D5 第5還流ダイオード、 D6 第6還流ダイオード、 D7 第7還流ダイオード、 D8 第8還流ダイオード、 C1 第1コンデンサ、 C2 第2コンデンサ、 C3 第3コンデンサ、 L1 第1リアクトル、 L2 第2リアクトル、 L3 第3リアクトル、 20 制御部、 21 MPPT制御部、 22 処理部、 23 記憶部、 24 第1減算部、 25 第1補償部、 26 第1比較部、 27 第2減算部、 28 第3補償部、 29 第3減算部、 210 第3補償部、 211 加算部、 212 第2比較部、 30 入力部。

Claims (8)

  1. 太陽電池の出力電圧を変換するDC−DC変換部と、
    前記太陽電池の出力電圧を所定のステップ幅で周期的に変化させて、前記太陽電池の出力電力が最大になるよう前記DC−DC変換部を制御する制御部と、を備え、
    前記制御部は、前記太陽電池の出力電力によって定まる所定範囲内に前記太陽電池の出力電圧が収まるように前記DC−DC変換部を制御することを特徴とする電力変換装置。
  2. 前記制御部は、
    前記太陽電池の最大電力点を検出したときの電力値と電圧値を記憶する記憶部と、
    前記記憶部に記憶された最大電力点の電力値と電圧値をもとに、前記太陽電池の出力区分ごとの最適動作電圧を求め、当該最適動作電圧を基準位置とした前記出力区分ごとに前記所定範囲を設定する処理部と、
    を含むことを特徴とする請求項1に記載の電力変換装置。
  3. 前記処理部は、前記記憶部に記憶された複数の最大電力点の電力値と電圧値をもとに、前記太陽電池の出力電力と最適動作電圧の1次関数を生成し、当該1次関数を用いて前記太陽電池の出力区分ごとの最適動作電圧を求めることを特徴とする請求項2に記載の電力変換装置。
  4. 前記処理部は、前記記憶部に記憶された最大電力点の数が3点以上のとき、隣接する2点間ごとに前記1次関数を生成することを特徴とする請求項3に記載の電力変換装置。
  5. 前記処理部は、前記記憶部に記憶された1つの最大電力点の電力値と電圧値と、前記太陽電池の開放電圧をもとに、前記太陽電池の出力電力と最適動作電圧の1次関数を生成し、当該1次関数を用いて前記太陽電池の出力区分ごとの最適動作電圧を求めることを特徴とする請求項2に記載の電力変換装置。
  6. 前記処理部は、前記記憶部に記憶された最大電力点の電力値と電圧値を定期的に更新することを特徴とする請求項2から5のいずれかに記載の電力変換装置。
  7. 前記制御部は、前記出力区分の電力値が低いほど前記所定範囲を広く設定することを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の電力変換装置。
  8. 前記制御部は、前記太陽電池の出力電圧が周期的に更新される電圧指令値になるように前記DC−DC変換部を制御し、
    前記電圧指令値は、前記太陽電池の出力電力の増減と前回更新された電圧指令値の更新内容に応じて現在の前記太陽電池の出力電圧に前記所定のステップ幅を加算して前記電圧指令値とするか、減算して前記電圧指令値とするかを決定し、決定された前記電圧指令値が前記所定範囲から外れる際に前記電圧指令値を前記所定範囲内に補正することを特徴とする請求項1乃至請求項7の何れかに記載の電力変換装置。
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