JP5936843B2 - ミシン - Google Patents
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Description
図17は上記ミシン100の上布CUに対する布端検出装置110の拡大正面図である。図示のように、この布端検出装置110は、送り歯による搬送方向に直交する方向(紙面左右方向)に沿ったスリット状の照射光を照射する光源111と、その照射光を受光するラインセンサ112とを備え、これら光源111とラインセンサ112の間を上布CUが通過し、当該上布CUに照射光が遮蔽されることにより光強度が低くなる位置をラインセンサ112の出力から特定し、これに基づいて上布CUの側端部の位置検出を行っている。なお、下布の布端検出装置120もこれと同様の構成となっている。
そして、上記各布端検出装置110,120で検出された上布と下布のそれぞれの側端部の位置に基づいて上布と下布を横送り機構で適正な位置に調整することで、縫い代が目標値となるように縫製を行っている。
しかしながら、布端検出装置110はミシンフレームに固定装備されているため、上布CUの縫い代の設定値が小さい場合或いは大きな場合には、図18(B)や図18(C)に示すように、上布CUが左右いずれかに偏った状態で縫製が行われる。
その結果、現在の上布CUの側端部からラインセンサ112の検出領域の端部までの距離が小さい左右いずれかの方向については、当該距離d1(<d0)の範囲でしか側端部の位置変化に対応することができなくなり、上布CUの側端部がd1より大きく変動すると、側端部位置が見失われ、縫製が継続できなくなってエラー停止等の事態が生じるとい問題があった。
図19は縫製時における上下布(上布CUのみ図示)に対するミシン100の縫い針101の針落ち位置と横送り機構130と布端検出装置110との位置関係を平面視で示した説明図である。図中の符号Fは上下布の搬送による進行方向を示している。
また、図19に示すように、横送り方向の一方を正方向、もう一方の方向を逆方向とする場合において、図20(A)では上下布の側端部の直線区間Sの布端検出装置110による検出出力を示し、図20(B)では上下布の湾曲区間Kの布端検出装置110による検出出力を示す。
このように、上下布の側端部の形状に応じて正逆いずれかの方向にずれが大きく生じることが縫製前から分かっている場合には、ズレが生じやすい方向について検出範囲を広く確保することがのぞましいが、従来のミシン100ではそのような要求に対応することができなかった。
前記被縫製物を前記水平面に平行且つ前記送り方向に直交する被縫製物幅方向に沿って移動させる横送り機構と、
前記被縫製物の前記被縫製物幅方向における側端部から針落ち位置までの長さである縫い代を検出するための端部検出装置と、
前記端部検出装置の検出に基づいて前記被縫製物の縫い代が目標値となるように前記横送り機構を制御するミシンにおいて、
前記端部検出装置は、搬送される前記被縫製物の側端部を照射するための光源と、複数の受光部が前記被縫製物幅方向に沿って複数並んで設けられ、前記被縫製物の側端部により遮蔽された照射光の一部分の光量の違いから当該被縫製物の側端部の前記被縫製物幅方向の位置検出を行う検出素子とを有し、
前記端部検出装置を前記被縫製物幅方向に沿って移動させるアクチュエータと、
前記縫い代の目標値の変化に応じて、前記アクチュエータの移動制御を行う制御部とを備え、
前記制御部は、前記被縫製物幅方向に沿って並んで設けられた前記複数の受光部からなる前記端部検出装置の検出範囲内の、前記縫い代の目標値に対応する目標位置が当該検出範囲内の設定手段により定められた任意の位置となるように前記アクチュエータの移動制御を行うと共に、
前記制御部は、
縫製の途中で前記縫い代の目標値が変化する場合であって、新たな縫い代の目標値に対応する前記端部検出装置の検出範囲内の目標位置から当該検出範囲の前記設定手段により定められた任意の位置までの距離が予め定めた一定量に満たない場合には、前記新たな縫い代の目標値に対応する前記端部検出装置の検出範囲内の目標位置を新たな目標位置として確定し、
前記新たな縫い代の目標値に対応する前記端部検出装置の検出範囲内の目標位置から当該検出範囲の前記設定手段により定められた任意の位置までの距離が前記一定量以上となる場合には、
前記新たな縫い代の目標値に対応する前記端部検出装置の検出範囲内の目標位置が当該検出範囲の前記設定手段により定められた任意の位置となるように前記アクチュエータの移動制御を行うことを特徴とする。
前者の場合は、例えば、被縫製物の側端部が直線状であるような場合に好適である。また、後者の場合には、例えば、被縫製物の側端部が何れかの方向に曲がっている場合であって、これを考慮して予め曲がり方向に応じて被縫製物の側端部の位置ズレが生じやすい方向に検出範囲を広く確保できるように中心位置よりも片側にオフセットした規定位置を定めた場合に好適である。
これらにより、被縫製物の側端部の検出範囲からの逸脱や、被縫製物の側端部に対して被縫製物幅方向の片側のみが位置検出範囲が足りなくなる事態をより効果的に回避することができ、広範囲での被縫製物の位置変動により好適に対応することが可能となる。
さらに、制御部は、新たな縫い代の目標値に対応する端部検出装置の検出範囲内の目標位置から当該検出範囲の中心位置までの距離が予め定めた一定量に満たない場合には、新たな縫い代の目標値に対応する端部検出装置の検出範囲内の目標位置を新たな目標位置として確定するので、例えば、縫い代の目標値の変化量がアクチュエータの分解能よりも小さい場合であっても、分解能の制約を受けることなく、端部検出装置の検出範囲内に新たな目標位置を設定することができ、端部検出装置の移動制御を行うことができない場合であっても被縫製物の側端部を検出することが可能である。
本発明の実施形態について説明する。図1は本実施形態であるミシンとしての上下送りミシン100の主要部を示す斜視図、図2は主要部の正面方向から見た構成を簡略的に示した説明図である。
なお、以下の説明では、水平な一方向をY軸方向、水平であってY軸方向に直交する方向をX軸方向、鉛直上下方向をZ軸方向というものとする。
また、後述する上布CU(上側被縫製物)及び下布CD(下側被縫製物)の主送り機構20による送り方向はY軸方向に平行であり、送りの進行方向をY軸(正)方向とし、その逆方向をY軸(逆)方向というものとする。
また、後述する横送り機構30,40は、上布CU及び下布CDをX軸方向の双方向に移動可能であり、図1における紙面右側をX軸方向(正)、紙面左側をX軸(逆)方向というものとする。なお、このX軸方向は「被縫製物幅方向」に相当する。
図1及び図2に示すように、上下送りミシン100は、縫い針を保持する針棒を上下動させる図示しない針棒上下動機構と、縫製時に上布CUと下布CDとをY軸(正)方向に送る主送り機構20と、針落ち位置に対してY軸(逆)方向側に位置し、上布CUをX軸方向の正逆に移動させる上側横送り機構30と、針落ち位置に対してY軸(逆)方向側に位置し、下布CDをX軸方向の正逆に移動させる下側横送り機構50と、これら横送り動作の際に上布CUと下布CDとが互いに干渉しないようにこれらを仕切る仕切り板11と、針落ち位置と上側横送り機構30との間に設けられた布端検出装置としての上布検出装置40と、針落ち位置と下側横送り機構50との間に設けられた布端検出装置としての下布検出装置60と、上布検出装置40をX軸方向に沿って移動可能な上側検出範囲調節機構46と、下布検出装置60をX軸方向に沿って移動可能な下側検出範囲調節機構66と、針板14の下側で縫い針から上糸を捕捉して下糸に絡める図示しない釜機構と、上布検出装置40及び下布検出装置60の周辺の構成の制御を行う制御装置13と、ミシン100の全体を制御するミシンコントローラ19とを備えている。
なお、針棒上下動機構と釜機構は、従来周知のものと同一であり、その詳細な説明は省略する。
図2に示すように、主送り機構20は、針板14の上で連続的に上下動して上布CUと下布CDとを押さえる布押さえ23と、針板14の下側に設けられY軸方向に沿った長円運動を行って針板14の開口部から出没する送り歯21と、針板14の上側に設けられY軸方向に沿った長円運動を行う送り足22と、布押さえ23、送り歯21及び送り足22に上下動又は長円運動を付与する不図示の動作伝達機構とを備えている。
送り歯21は長円運動における上側区間がY軸(正)方向となるように周回運動を行い、送り足22は長円運動における下側区間がY軸(正)方向となるように周回運動を行う。そして、これにより、送り歯21と送り足22とで針板14上の上布CUと下布CDとを挟み込んで一定の送りピッチで間欠的に送り動作を行うようになっている。
上記送り歯21、送り足22及び布押さえ23は、いずれも針棒上下動機構及び釜機構の駆動源となるミシンモータ15(図6参照)から動力を得ている。
即ち、送り歯21は、ミシンモータ15の回転動作を上下の往復動作に変換する伝達機構と前後の往復動作に変換する伝達機構とにより上下と前後の往復動作を同期的に付与することで長円運動を行わせることを可能としている。
送り足22も同様であり、ミシンモータ15の回転動作を前後動に変換して送り足22を支持するロッドに付与することで送り足22を前後に往動させると共に、ミシンモータ15の回転動作を上下動に変換して送り足22を支持するロッドに付与することで上下動させる。これにより、送り足22に長円運動を行わせることを可能としている。
また、布押さえ23を支持するロッドに対してはミシンモータの回転動作を上下動に変換して伝達し、当該上下動を実現する。
このとき、針棒が上死点の時の主軸角度を0°とすると、主軸角度270〜90°の範囲では縫い針は上布CU及び下布CDに刺さっていない状態にある。そして、上述した送り歯21及び送り足22による布送り動作は、主軸角度270〜90°の角度範囲で送り動作を行う。
仕切り板11は、X軸方向に沿った長尺の平板であり、X軸(正)方向側の端部でミシンフレームにより片持ち状態で支持されている。
仕切り板11の下側は、ミシンベッド部の上面から幾分上方に離間して隙間が形成されており、当該隙間を通って下布CDが搬送される。また、仕切り板11の上側では上布CUが搬送され、これにより、上布CUと下布CDとを分離して個別に横送りを行うことが可能となっている。
図3は上側横送り機構30の断面図である。
上側横送り機構30は、主送り機構20に搬送される上布CUに対して主送り機構20と共にY軸(正)方向に上布CUを搬送する回転体31と、回転体31の外周に沿って均一間隔で配置されると共に上布CUの上面に接して上布CUをX軸方向(横送り方向)に移動させる複数のピニオン32と、回転体31に対して上布CUをY軸(正)方向に搬送するためのトルクを付与する搬送駆動機構33と、複数のピニオン32に対して横送りのための回転動力を付与する横送り駆動機構34と、これら各部を支持する枠体35とを備えている。
また、回転体31は、その内部において、X軸方向からみて放射状に45°間隔で八つのピニオン32を回転可能に支持している。これらの各ピニオン32は、回転体31の外周に形成されたX軸方向に沿ったスリット状の開口から、その外周の一部分が露出するように支持されており、回転体31は上布CUに対してこれらのピニオン32を介して当接可能となっている。
搬送モータ331は、ステッピングモータであり、その出力軸はX軸方向に沿った状態で枠体35に保持されている。そして、搬送モータ331の出力軸に設けられた主動スプロケット333からタイミングベルト335、従動スプロケット334を介して中空支軸332にトルクが付与されて回転体31がX軸回りに回転を行う。
なお、前述した主送り機構20は、送り歯21及び送り足22で上布CUを送る構造上、周期的な間欠送りを行うことが不可避となるが、搬送モータ331は、その動作タイミングや回転速度を任意に制御可能なステッピングモータであることから、主送り機構20に同期して上布CUの搬送を行うことが可能となっている。
ウォーム歯車343は、回転体31の内側において各ピニオン32の中央に位置しており、全てのピニオン32に噛合している。
横送りモータ341はステッピングモータであり、その出力軸は伝達軸342に直結されている。また、ステッピングモータであるため、その動作タイミングや回転速度は任意に制御することができる。
また、横送りモータ341の駆動によって、ウォーム歯車343が回転し、各ピニオン32が回転することで、上布CUのY軸方向の搬送を妨げることなくX軸方向にも移動させることができる。これにより、上布CUの縫い代の調節を行うことができる。
なお、回転体31が回転中に各ピニオン32を回転駆動させるためには、中空支軸332に対して伝達軸342が相対的に回転を生じている必要がある。このため、上布CUの横送りを実行する際には、各ピニオン32に必要な回転が得られるように、搬送モータ331の回転速度に対して所定の速度差が生じるように横送りモータ341の回転速度を制御する。
この下側横送り機構50は、ミシンベッド部の内部に装備され、その回転体の上部が針板14の上面よりも幾分高く突出するように設けられており、仕切り板11の下側を搬送される下布CDに下から当接してY軸方向への送りとX軸方向への移動とを行うことを可能としている。
また、この下側横送り機構50が備える搬送モータ531及び横送りモータ541(図6参照)は上側横送り機構30の搬送モータ331及び横送りモータ341と共に制御装置13によって制御が行われる。
図4は上布検出装置40及び下布検出装置60の斜視図である。図示のように、上布検出装置40と下布検出装置60は、両面に光沢のある薄い金属板からなる反射板12を支持する基部18の上部と下部とによりX軸方向に沿って滑動可能に支持されている。
基部18は、X軸方向に沿った長尺の構造体であり、X軸(正)方向の端部でミシンフレームに片持ちで支持され、X軸(逆)方向の端部からは反射板12が延出されている。
また、基部18のX軸(逆)方向の端部上面と下面とからは、上布検出装置40と下布検出装置60とがそれぞれX軸(逆)方向に向かって延出されており、これら各検出装置40,60の延出端部がX軸(逆)方向に向かってコ字状に開口した形状を形成している。そして、上布検出装置40及び下布検出装置60によるコ字状開口部の内側には、反射板12がその表裏の反射面をX−Y平面に沿わせた状態で挟持されている。
つまり、上布検出装置40の延出端部の下面は反射板12の上反射面に対向し、下布検出装置60の延出端部の上面は反射板12の下反射面に対向している。
縫製時には、上記開口部の反射板12の下側に下布CDのX軸方向(正)側の側端部が差し込まれた状態で当該側端部の有無及びそのX軸方向における位置の検出が行われると共に、上記開口部の反射板12の上側に上布CUのX軸方向(正)側の側端部が差し込まれた状態で当該側端部の有無及びそのX軸方向における位置の検出が行われる。
イメージセンサ65は、X軸方向幅が10〜20[μm]程度の微細な受光素子がX軸方向に沿って並んで形成されており、反射板12による光源ユニット62のスリット状の照射光の反射位置で反射光の長手方向における各位置での光強度を検出する。
発光LED64は点光源であり拡散光を照射するが、照射位置での下布CDの存在を検知できればいいので平行光でなくともよい。
受光LED63は、反射板12による発光LED64照射光の反射位置に設けられている。
図5は上布検出装置40と下布検出装置60とをY軸(正)方向の視線から見た正面図である。
図示のように、上述した上布検出装置40と下布検出装置60のそれぞれには、上布検出装置40又は下布検出装置60を基部18に対してX軸方向に沿って移動可能とする上側検出範囲調節機構46と下側検出範囲調節機構66とが併設されている。
上記上側検出範囲調節機構46は、上布検出装置40をX軸方向に沿って移動させるアクチュエータとしての位置調整モータ47と、上布検出装置40の筐体41のX軸(正)方向側の端部上面に設けられたラック歯48と、位置調整モータ47の出力軸に設けられ、ラック歯48に噛合するピニオン歯車49とを備えている。
上記位置調整モータ47はステッピングモータであり、制御装置13の制御の元で駆動し、位置調整モータ47の駆動により、上布検出装置40をX軸方向に沿って任意に移動させることが可能となっている。
図6は上下送りミシン100の制御系を示すブロックである。
上下送りミシン100は、縫製時においてミシン全体を制御するミシンコントローラ19と上布検出装置40及び下布検出装置60の周辺の構成を制御する制御装置13とを備えている。
ミシンコントローラ19には、縫い針を上下動させるためのミシンモータ15が駆動回路15aを介して接続されている。また、ミシンモータ15により回転駆動する図示しないミシン主軸には、その軸角度を検出するエンコーダ16が設けられており、インターフェイス16aを介して検出軸角度をミシンコントローラ19に出力するようになっている。かかるエンコーダ16は、主軸角度の分解能が0.25[deg]、即ち、主軸1回転で1440パルスの出力を行う。
さらに、上下送りミシン100は、各種設定を入力したり、各種情報を表示したりするための操作パネル17を備えており、かかる操作パネル17もインターフェイス17aを介してミシンコントローラ19に接続されている。
また、制御装置13には、下布検出装置60と上布検出装置40とが、それぞれインターフェイス60a,40aを介して接続されている。なお、各イメージセンサ65,45は、いずれも検出信号をアナログで出力するため、制御装置13は、各イメージセンサ65,45のA/Dコンバータ135,136を備え、デジタル化された検出データを得ることが可能となっている。
上下送りミシン100は、毎針の針数における縫い代の値が設定された縫製データ(後述)に従って縫製が行われる。まず、ミシンコントローラ19と制御装置13による基本的な縫製動作の概要について説明する。
そして、縫い代の設定値と検出された縫い代とを比較し、例えば、上布CUにおける検出された縫い代が小さい場合には、上側横送り機構30の横送りモータ341を搬送モータ331よりも高速で回転させ、中空支軸332に対して伝達軸342を相対的に回転させて回転体31の各ピニオン32に回転を付与し、上布CUをX軸(正)方向に移動させる。これにより、上布CUの縫い代が増加する方向に調整される。また、上布CUにおける検出された縫い代が大きい場合には、上側横送り機構30の横送りモータ341を搬送モータ331よりも低速で回転させて各ピニオン32に回転を付与し、上布CUの縫い代が減少する方向に移動させる。
なお、下布CDにおける下側横送り機構50に対する制御も同様に行われる。
そして、縫製データに定められた針数の運針が完了すると、ミシンモータが停止して縫製が終了となる。
上下送りミシン100は、上述のように、一連の縫製を行う複数の針数の中で縫い代の設定値が変化するように設定され、縫製時には、毎針の縫い代の設定値通りとなるように上下の横送り機構30,50を制御する。このように、毎針の縫い代を設定通りとするために、毎針毎に上布検出装置40と下布検出装置60とにより、上布CU及び下布CD(以下、これらを便宜上「布地」と総称する場合がある)の縫い代を検出している。
そして、上下送りミシン100では、毎針の縫い代の検出において予め第一の縫い代調節制御と第二の縫い代調節制御のいずれか一方を択一的に実行することを特徴の一つとしている。
まず、制御装置13が行う第一の縫い代調節制御について説明する。
上述のように、予め縫い代の設定値が決まっている場合には、制御装置13は、縫い代の設定値(目標値)に対応するイメージセンサ45,65の検出範囲内の目標位置を求めて、当該目標位置と実際に検出された布地の側端部の位置とを比較して、布地がいずれの方向にズレを生じているかを判断する。
また、縫製開始の最初の縫い代の設定値の目標位置P0が、イメージセンサ45,65の検出範囲の両端部のいずれからも距離d0(検出範囲のX軸方向幅を2d0とする)となる中心位置Cと一致するように、各検出範囲調節機構46,66による位置決め制御が行われる。これは、布地の側端部がX軸方向の正逆いずれの方向に急な位置変動が生じた場合であっても、布地の検出範囲外への逸脱を抑止するためである。
そして、縫製時にはこの目標位置P0と布地の側端部の検出位置とを比較して、布地がいずれの方向に位置ズレを生じているかに応じて、上下の横送り機構30,50により布地をX軸の正逆いずれかの方向に移動させる制御が行われる。
例えば、図7(B)に示すように、縫い代の新たな設定値W1がW1=W0−d1であってd1<1[mm]である場合、上布検出装置40及び下布検出装置60は現在の位置を維持したまま針落ち位置Nから距離W1となる新たな目標位置P1が設定される。
そして、この目標位置P1と布地の側端部の検出位置とを比較して、上下の横送り機構30,50による布地の横送り動作制御が行われる。
この場合、各検出装置40,60の移動動作のような機械的な動作を伴うことなく、布地の側端部の位置判定を行うための目標位置の設定の変更のようなソフトウェア上の処理が行われるだけなので、制御装置13の処理能力に応じた速度で処理を行うことができる。
次に、制御装置13が行う第二の縫い代調節制御について説明する。
第二の縫い代調節制御では、縫製の途中で縫い代の設定値が新たな設定値W1に変わる場合であって、針落ち位置Nから距離W1となる位置が前述した検出範囲の中心位置Cから一定距離(例えば1[mm])以上離れた場合に、各検出範囲調節機構46,66を動作させて、新たな目標位置P1と検出範囲の中心位置Cとが一致するように移動制御を実行する。つまり、新たな目標位置P1は検出範囲の中心位置Cと一致する状態となる。
そして、この中心位置Cと布地の側端部の検出位置とを比較して、上下の横送り機構30,50による布地の移動制御が行われる。
縫い代の設定値が変更された場合には、新たな縫い代の設定値に対応する検出範囲内での位置が検出範囲の中心位置Cと一致するように常に第二の縫い代調節制御を実行することが望ましいが、位置調節モータ47,67の分解能により微細な位置調節に限界があるので、各検出装置40,60の移動量が小さい場合には、第一の縫い代調節制御を実行することで、常に、布地の側端部の位置を縫い代の設定値通りに維持することを可能としている。
また、図7及び図8において検出範囲調節機構66の図示を省略している。
図9は上布CU及び下布CDに対して行われる縫製例を示している。上下送りミシン100において、この上布CU及び下布CD(以下、布地とする)は図示上方に向かって搬送され、縫い目は上端から下端に向かって形成されるものとする。
この布地に対して、300針の運針を行う過程で縫い代の初期設定値を10[mm]とし、11[mm]まで変化させる縫製を行う。具体的には、縫い開始から94針までは縫い代の設定値を10[mm]として運針を行い、95〜99針の間では1針毎に縫い代を0.1[mm]ずつ増やし、100〜194針の間では縫い代を10.5[mm]に維持して運針を行い、195〜199針の間では再び1針毎に縫い代を0.1[mm]ずつ増やし、200〜300針の間では縫い代を11[mm]に維持して運針を行う。
なお、これらの設定は上布CUと下布CDとについて共通している。
針数(PINNUM)、主軸角度(FREQ)、変更ポイント(POINT)は縫製開始からの各データ番号における第一又は第二の縫い代調節制御の実施タイミングをエンコーダ16の出力パルスの積算値(エンコーダ単位系)に換算するためのパラメータである。これらのパラメータは次式(1)の関係が成立する。
POINT=(PINNUM−1)×1440+(FREQ/360)×1440 …(1)
このため、この開始タイミングをエンコーダ単位系に換算すると上式(1)のようになる。なお、1440はエンコーダ16の分解能(主軸1回転の出力パルス数)である。
これらに基づいて第一及び第二の縫い代調節制御の処理を説明する。
また、上下の布検出装置40,60の初期位置は、縫い代初期値である針落ち位置Nから10[mm]の位置に上下のイメージセンサ45,65の検出範囲の中心位置Cに一致するように配置される。
例えば、データ番号のカウント値i=0の場合には変更ポイントは135630となる。
例えば、データ番号のカウント値i=0の場合にはズレ量(OFFSET)の数値は「1」である。この加算により針落ち位置Nから10.1[mm]の位置に新たな目標位置P1が設定される(図7参照)。この場合、新たな目標位置P1は中心位置Cに対してX軸(正)方向に0.1[mm]ズレた位置となる。そして、布地の側端部はこの目標位置P1に上下の横送り機構30,50によって横送りが行われて縫い代が10.1[mm]に修正される。
さらに、制御装置13は、加算された設定オフセット値が10に達したか否かを判定する(ステップS15)。そして、設定オフセット値が10に達していない場合には処理をステップS7に戻す。
この設定オフセット値が10に満たない間は、検出範囲内の目標位置と中心位置Cとのズレ量が1[mm]に達していないことを意味しており、従って、制御装置13は、上布検出装置40及び下布検出装置60の移動を行うことなく検出範囲内の目標位置のみを変更する第一の縫い代調節制御を実行することとなる。
なお、厳密には、ステップS15において、積算された設定オフセットは、+10又は-10に達したか否かが判定される。即ち、検出範囲内の目標位置と中心位置CとのX軸(正)方向側へのズレ量が1[mm]に達した場合にも、検出範囲内の目標位置を中心位置Cに一致させる制御が行われる。この場合、制御装置13は位置調節モータ47,67を駆動して上布検出装置40及び下布検出装置60をX軸(逆)方向に1[mm]移動させる。
上述のように、上下送りミシン100では、上布CUと下布CDの検出装置40,60をX軸方向に沿って移動させる位置調節モータ47,67を備え、縫い代の設定値(目標値)が変化した場合に、縫い代の目標値に対応する上布CUと下布CDのイメージセンサ45,65の検出範囲内の目標位置が中心位置Cから予め定めた一定距離(例えば1[mm])以上離れた場合に、目標位置と中心位置Cとが一致するように上側と下側の検出装置40,60を上側と下側の検出範囲調節機構46,66によって移動させる第二の縫い代調節制御を行うので、上布CUと下布CDの側端部の位置検出をイメージセンサ45,65の検出範囲の中心位置Cで行うことができ、上布CUと下布CDの側端部が検出範囲から逸脱して側端部が検出不能となる事態を効果的に抑制し、安定的に縫い代の調節制御を行うことが可能となる。
なお、図13(A)に示す例では、前述した第二の縫い代調節制御における上布CUと下布CDの検出装置40,60の移動動作を高速で瞬間的に行う場合を例示し、移動の所要時間を考慮していないが、実際にはアクチュエータの性能によっては、図15(A)に示すように移動動作にはある程度の所要時間が必要となる。
従って、移動速度及びその所要時間が既知である場合には、検出装置40,60の移動速度に合わせて、図15(B)に示すように検出範囲内の目標位置を中心位置Cに徐々に近づけるように変化させることが望ましい。例えば、検出装置40,60が10[ms]で1.0[mm]移動する場合において、検出範囲内の目標位置を1[ms]毎に0.1[mm]ずつ中心位置Cに近づけるように設定を切り換えても良い。これにより、検出装置40,60の移動を行っている最中でも、高精度に布地の側端部に位置検出を行うことが可能となる。
しかしながら、上記のように、目標位置P0,P1の設定については、規定位置を中心位置Cとして行う場合に限定されるものではない。
例えば、所定の針数の区間では、上下布の側端部形状がカーブしていることが予め分かっているような場合には、運針の過程で基準位置に対してカーブしている方向に上下布がズレを生じやすく(例えば、側端部形状が左カーブしている場合には左にズレを生じやすい)、この場合には、規定位置を中心位置Cとするよりも、左側のズレの発生により対応可能となるように、規定位置を中心位置Cから右側にオフセットした位置として、左側の検出範囲を右側よりも広く確保することが望ましい。
従って、操作パネル17により予め規定位置を任意に設定可能とし、当該設定された規定位置をメモリなどに保有すると共に、カーブ区間などの場合には、設定された検出範囲内の規定位置に目標位置P0、P1を一致させるように各検出範囲調節機構46,66の移動制御を行ったり、また、設定された検出範囲内の規定位置から一定距離m以上離れているか否かにより各検出範囲調節機構46,66の移動制御を行うか否かを決定したりしても良い。
13 制御装置(制御部)
15 ミシンモータ
16 エンコーダ
19 ミシンコントローラ
20 主送り機構
30 上側横送り機構
40 上布検出装置(端部検出装置)
42 光源ユニット
45 イメージセンサ
46 上側検出範囲調節機構
47 位置調整モータ(アクチュエータ)
50 下側横送り機構
60 下布検出装置(端部検出装置)
62 光源ユニット
65 イメージセンサ
66 下側検出範囲調節機構
67 位置調節モータ(アクチュエータ)
100 上下送りミシン
C 中心位置
Claims (2)
- 被縫製物を水平面に沿って所定の送り方向に送る主送り機構と、
前記被縫製物を前記水平面に平行且つ前記送り方向に直交する被縫製物幅方向に沿って移動させる横送り機構と、
前記被縫製物の前記被縫製物幅方向における側端部から針落ち位置までの長さである縫い代を検出するための端部検出装置と、
前記端部検出装置の検出に基づいて前記被縫製物の縫い代が目標値となるように前記横送り機構を制御するミシンにおいて、
前記端部検出装置は、搬送される前記被縫製物の側端部を照射するための光源と、複数の受光部が前記被縫製物幅方向に沿って複数並んで設けられ、前記被縫製物の側端部により遮蔽された照射光の一部分の光量の違いから当該被縫製物の側端部の前記被縫製物幅方向の位置検出を行う検出素子とを有し、
前記端部検出装置を前記被縫製物幅方向に沿って移動させるアクチュエータと、
前記縫い代の目標値の変化に応じて、前記アクチュエータの移動制御を行う制御部とを備え、
前記制御部は、前記被縫製物幅方向に沿って並んで設けられた前記複数の受光部からなる前記端部検出装置の検出範囲内の、前記縫い代の目標値に対応する目標位置が当該検出範囲内の中心位置となるように前記アクチュエータの移動制御を行うと共に、
前記制御部は、
縫製の途中で前記縫い代の目標値が変化する場合であって、新たな縫い代の目標値に対応する前記端部検出装置の検出範囲内の目標位置から当該検出範囲の前記中心位置までの距離が予め定めた一定量に満たない場合には、前記新たな縫い代の目標値に対応する前記端部検出装置の検出範囲内の目標位置を新たな目標位置として確定し、
前記新たな縫い代の目標値に対応する前記端部検出装置の検出範囲内の目標位置から当該検出範囲の前記中心位置までの距離が前記一定量以上となる場合には、
前記新たな縫い代の目標値に対応する前記端部検出装置の検出範囲内の目標位置が当該検出範囲の前記中心位置となるように前記アクチュエータの移動制御を行うことを特徴とするミシン。 - 被縫製物を水平面に沿って所定の送り方向に送る主送り機構と、
前記被縫製物を前記水平面に平行且つ前記送り方向に直交する被縫製物幅方向に沿って移動させる横送り機構と、
前記被縫製物の前記被縫製物幅方向における側端部から針落ち位置までの長さである縫い代を検出するための端部検出装置と、
前記端部検出装置の検出に基づいて前記被縫製物の縫い代が目標値となるように前記横送り機構を制御するミシンにおいて、
前記端部検出装置は、搬送される前記被縫製物の側端部を照射するための光源と、複数の受光部が前記被縫製物幅方向に沿って複数並んで設けられ、前記被縫製物の側端部により遮蔽された照射光の一部分の光量の違いから当該被縫製物の側端部の前記被縫製物幅方向の位置検出を行う検出素子とを有し、
前記端部検出装置を前記被縫製物幅方向に沿って移動させるアクチュエータと、
前記縫い代の目標値の変化に応じて、前記アクチュエータの移動制御を行う制御部とを備え、
前記制御部は、前記被縫製物幅方向に沿って並んで設けられた前記複数の受光部からなる前記端部検出装置の検出範囲内の、前記縫い代の目標値に対応する目標位置が当該検出範囲内の設定手段により定められた任意の位置となるように前記アクチュエータの移動制御を行うと共に、
前記制御部は、
縫製の途中で前記縫い代の目標値が変化する場合であって、新たな縫い代の目標値に対応する前記端部検出装置の検出範囲内の目標位置から当該検出範囲の前記設定手段により定められた任意の位置までの距離が予め定めた一定量に満たない場合には、前記新たな縫い代の目標値に対応する前記端部検出装置の検出範囲内の目標位置を新たな目標位置として確定し、
前記新たな縫い代の目標値に対応する前記端部検出装置の検出範囲内の目標位置から当該検出範囲の前記設定手段により定められた任意の位置までの距離が前記一定量以上となる場合には、
前記新たな縫い代の目標値に対応する前記端部検出装置の検出範囲内の目標位置が当該検出範囲の前記設定手段により定められた任意の位置となるように前記アクチュエータの移動制御を行うことを特徴とするミシン。
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