JP5928597B2 - イオントラップにおけるイオン選択方法及びイオントラップ装置 - Google Patents

イオントラップにおけるイオン選択方法及びイオントラップ装置 Download PDF

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Description

本発明は、高周波電場の作用によってイオンを捕捉するイオントラップにおいて特定のイオンを選択的にイオントラップ内に残すイオン選択方法、及び、該イオン選択方法を実施するためのイオントラップ装置に関する。該イオントラップ装置は例えば、飛行時間型質量分析装置と組み合わせたイオントラップ飛行時間型質量分析装置や、該イオントラップ自体の質量分離機能を利用して質量分析を行うイオントラップ型質量分析装置などに用いられる。
イオントラップ飛行時間型質量分析装置やイオントラップ型質量分析装置などにおいてイオントラップは、高周波電場の作用によりイオンを捕捉して閉じ込めたり、特定の質量電荷比m/zを持つイオンを選別したり、さらにはそうして選別したイオンを解離させたりするために用いられる。典型的なイオントラップは、内面が回転1葉双曲面形状である1個のリング電極と、このリング電極を挟んで対向配置された内面が回転2葉双曲面形状である一対のエンドキャップ電極とからなる3次元四重極型の構成であるが、これ以外に、平行配置された4本のロッド電極から成るリニア型の構成も知られている。本明細書では、便宜上、特に明記することなく3次元四重極型イオントラップを例に挙げて説明を進めるが、後述するように、本発明はリニア型イオントラップにも適用可能である。
従来の一般的なイオントラップ、即ち、いわゆるアナログ駆動方式のイオントラップ(後述するDITとの対比を明確にするため、以下の説明では「AIT(=Analogue Ion Trap)」と略す)では、通常、正弦波状の高周波電圧をリング電極に印加することで、リング電極及びエンドキャップ電極で囲まれる空間にイオン捕捉用の高周波電場を形成し、この高周波電場の作用によりイオンを振動させつつ該空間に閉じ込める。これに対し、近年、正弦波状の高周波電圧の代わりに矩形波電圧をリング電極に印加することでイオンの閉じ込めを行うイオントラップが開発されている(特許文献1、非特許文献1など参照)。この種のイオントラップは、通常、ハイ、ローの二値の電圧レベルを有する矩形波電圧が使用されることから、デジタルイオントラップ(Digital Ion Trap、以下「DIT」略す)と呼ばれる。
DITを利用した質量分析装置(以下「DIT−MS」と略す)においてMS/MS分析を行う場合、所定の質量電荷比範囲のイオンをイオントラップ内空間に捕捉した後に、或る特定の質量電荷比を有するイオンのみを残し他の不要なイオンをイオントラップ内から排除するプリカーサ分離(選択)操作を行う必要がある。例えば非特許文献1に記載のDIT−MSでは、まずラフアイソレーションと呼ばれる高速の手法によりプリカーサ分離を行ったあとに、さらに双極子励起(Dipole Excitation)による共鳴励起排出を利用して高分解能のプリカーサ分離を行うようにしている。
上記ラフアイソレーションは、いわゆるマチュー(Mathieu:「マシュー」、「マチウ」とも呼ばれる)方程式の解の安定条件に基づいて作成される安定領域図上の安定領域を横切る線の位置を変化させるように印加電圧を変化させることで、捕捉可能な下限質量(LMCO=Low Mass Cut Off)及び上限質量(HMCO=High Mass Cut Off)を変化させてプリカーサ分離を行う手法である。特許文献2にはこうした手法をAITに適用することが記載されている。上記非特許文献1、及び非特許文献2においてDAWI(=Digital Asymmetric Waveform Isolation)と呼ばれる手法では、矩形波電圧のデューティ比を変えることでLMCO及びHMCOを変化させ、プリカーサ分離を実現している。
AITに対してDITが優位である点の一つは、共鳴励起排出による質量分離性能が高いことである。通常、DITにおいて共鳴励起排出を行う場合には、リング電極に印加する矩形波電圧の周波数と同期した(典型的には該矩形波電圧を分周した)単一周波数の矩形波信号を一対のエンドキャップ電極に印加する。その状態で、リング電極に印加している矩形波電圧の角周波数を下げる方向に走査すると、イオントラップ内に捕捉されているイオンの中で、質量電荷比が大きくなる方向に順にイオンが選択的に共鳴励起されてイオントラップ外部に排出される(フォワードスキャン)。逆に、リング電極に印加している矩形波電圧の周波数を上げる方向に走査すると、イオントラップ内に捕捉されているイオンの中で、質量電荷比が小さくなる方向に順にイオンが選択的に共鳴励起されてイオントラップ外部に排出される(リバーススキャン)。そこで、目的の質量電荷比を持つイオンのみがイオントラップ内に残るように、双極子励起によるフォワードスキャンとリバーススキャンとを連続的に行うことにより、高いプリカーサ分離能を実現することができる。
しかしながら、非特許文献1に記載されたような方法によって、特定のイオンを高い質量分離能で以てプリカーサ分離しようとすると、かなり時間が掛かるという問題がある。これは、フォワードスキャンやリバーススキャンによって不要なイオンを確実に除去するには、それぞれの不要イオンに対し所定の排出時間だけ周波数を保持しなければならず、それ故に、周波数を走査する速度を一定以下に抑える必要があるためである。
典型的なケースでは、充分な質量分離能を実現するのにプリカーサ分離だけで数百msec以上もの時間を要する。例えば、イオントラップ自体で質量分離を行うDIT−MSでは、一般的に、(A)イオントラップに所定の質量電荷比の範囲内のイオンを捕捉してからクーリングし、(B)目的とするプリカーサイオンのみをイオントラップ内に残すようにイオン選択(上記のプリカーサ分離)を実施し、(C)プリカーサイオンを衝突誘起解離により開裂させ、(D)開裂により生じたプロダクトイオンを共鳴排出させてマススペクトルを取得する、という手順でMS/MS分析が実行される。それら各行程の中で(A)、(C)、(D)の各行程にはそれぞれ数十msec程度の時間が掛かるだけであり、(B)の行程だけで数百msecもの時間が掛かるとなると、これは分析のスループットを低下させる大きな要因となる。近年の質量分析では、分析のスループットの向上が非常に重要であるため、DITにおけるプリカーサ分離の時間短縮は避けられない大きな課題である。
イオントラップにおいてプリカーサ分離を行う方法は上述した手法に限らず、ほかにもいくつかの手法が知られている。例えば、AITでは、イオンの振動周波数がリング電極に印加される高周波電圧の振幅に依存して変化するという関係を利用し、目的とするイオン(プリカーサイオン)の振動周波数にノッチ(抜け)がある広帯域の周波数スペクトルを有する信号をエンドキャップ電極に印加することにより、目的イオン以外の様々な不要なイオンを同時に排除するプリカーサ分離手法が知られている。このような広帯域信号として、特許文献3に記載のFNF(=Filtered Noise Field)信号がよく用いられるが、そのほかに特許文献4に記載のSWIFT(=Stored Wave Inverse Fourier Transform)信号なども知られている。
それら文献に記載の方法はAITを対象としたものであるが、DITの場合でもAITと同様に、FNF信号等の広帯域信号を用いてプリカーサ分離を行うことができる。例えば特許文献3には、FNF信号を利用したプリカーサ分離をDITに適用する場合の具体的な手法や装置構成が開示されている。こうしたプリカーサ分離手法は上記のラフアイソレーションとして使用することはできるものの、分解能の点で、ラフアイソレーションに続く高分解能のプリカーサ分離として利用することは難しい。
特表2007−527002号公報 米国特許第4818869号明細書 米国特許第5134286号明細書 欧州特許出願公開第0362432号明細書
古橋、ほか6名、「デジタルイオントラップ質量分析装置の開発」、島津評論、島津評論編集部、2006年3月31日、第62巻、第3・4号、pp.141-151 ブランシア(F.L.Brancia)、ほか4名、「デジタル・アシンメトリック・ウェイブフォーム・アイソレーション (DAWI) ・イン・ア・デジタル・リニア・イオン・トラップ (Digital Asymmetric Waveform Isolation (DAWI) in a Digital Linear Ion Trap)」、ジャーナル・オブ・アメリカン・ソサイエティ・フォー・マス・スペクトロメトリ(Journal of American Society for Mass Spectrometry)、2010年、21、pp.1530-1533
本発明は上記課題を解決するために成されたものであり、その目的とするところは、プリカーサイオン等のイオン選択に際して高い質量分離能を確保しながらその行程時間を短縮することができるイオントラップにおけるイオン選択方法及びイオントラップ装置を提供することである。
上記課題を解決するために成された本発明に係る第1の態様のイオン選択方法は、3以上の電極からなるイオントラップに捕捉されたイオンの中で、特定の質量電荷比を持つイオン又は特定の質量電荷比範囲を持つイオン群を選択するイオン選択方法であって、
a)前記イオントラップに捕捉されているイオンに対し、マチュー方程式に基づく安定領域図上の動作線の位置を変更することで捕捉され得る下限質量を変えて一部のイオンを排出するイオン排出操作を行うことにより、選択対象である特定の質量電荷比又は特定の質量電荷比範囲よりも低い質量電荷比を持つ不要なイオンを除去する低質量側イオン分離ステップと、
b)前記イオントラップに捕捉されているイオンに対し、共鳴励起を利用して一部のイオンを排出するイオン排出操作を行うことにより、選択対象である特定の質量電荷比又は特定の質量電荷比範囲よりも高い質量電荷比を持つ不要なイオンを除去する高質量側イオン分離ステップと、
を、この順序で、逆の順序で、又は同時に実施することを特徴としている。
また上記課題を解決するために成された本発明に係る第2の態様のイオン選択方法は、3以上の電極からなるイオントラップに捕捉されたイオンの中で、特定の質量電荷比を持つイオン又は特定の質量電荷比範囲を持つイオン群を選択するイオン選択方法であって、
a)前記イオントラップに捕捉されているイオンに対し、第1の方向にイオンを振動させる所定の単一周波数の励起電圧を用いた共鳴励起を利用して一部のイオンを排出するイオン排出操作を行うことにより、選択対象である特定の質量電荷比又は特定の質量電荷比範囲よりも低い質量電荷比を持つ不要なイオンを除去する低質量側イオン分離ステップと、
b)前記イオントラップに捕捉されているイオンに対し、前記第1の方向とは異なる第2の方向にイオンを振動させる所定の単一周波数の励起電圧を用いた共鳴励起を利用して一部のイオンを排出するイオン排出操作を行うことにより、選択対象である特定の質量電荷比又は特定の質量電荷比範囲よりも高い質量電荷比を持つ不要なイオンを除去する高質量側イオン分離ステップと、
を、この順序で、逆の順序で、又は同時に実施することを特徴としている。
また上記課題を解決するために成された本発明に係る第1の態様のイオントラップ装置は、上記第1の態様によるイオン選択方法を実施するための3以上の電極からなるイオントラップを含むイオントラップ装置であって、
a)前記3以上の電極にそれぞれ所定の電圧を印加する電圧発生手段と、
b)前記イオントラップに各種イオンが捕捉されている状態で、選択対象である特定の質量電荷比又は特定の質量電荷比範囲よりも低い質量電荷比を持つ不要なイオンを除去するために、マチュー方程式に基づく安定領域図上の動作線の位置を変更することで捕捉され得る下限質量を変えて一部イオンを排出するイオン排出操作と、選択対象である特定の質量電荷比又は特定の質量電荷比範囲よりも高い質量電荷比を持つ不要なイオンを除去するために、共鳴励起を利用してイオンを排出するイオン排出操作とを、この順序で、逆の順序で、又は同時に実施するように、前記電圧発生手段で生成される電圧を制御する制御手段と、
を備えることを特徴とする。
また上記課題を解決するために成された本発明に係る第2の態様のイオントラップ装置は、上記第2の態様によるイオン選択方法を実施するための3以上の電極からなるイオントラップを含むイオントラップ装置であって、
a)前記3以上の電極にそれぞれ所定の電圧を印加する電圧発生手段と、
b)前記イオントラップに各種イオンが捕捉されている状態で、選択対象である特定の質量電荷比又は特定の質量電荷比範囲よりも低い質量電荷比を持つ不要なイオンを除去するために、第1の方向にイオンを振動させる所定の単一周波数の励起電圧を用いた共鳴励起を利用して一部のイオンを排出するイオン排出操作と、選択対象である特定の質量電荷比又は特定の質量電荷比範囲よりも高い質量電荷比を持つ不要なイオンを除去するために、前記第1の方向とは異なる第2の方向にイオンを振動させる所定の単一周波数の励起電圧を用いた共鳴励起を利用して一部のイオンを排出するイオン排出操作とを、この順序で、逆の順序で、又は同時に実施するように、前記電圧発生手段で生成される電圧を制御する制御手段と、
を備えることを特徴とする。
なお、第1及び第2の態様のイオン選択方法において、好ましくは、前記低質量側イオン分離ステップ及び前記高質量側イオン分離ステップに先立ち、
選択対象である特定の質量電荷比又は特定の質量電荷比範囲を含む広い質量電荷比範囲のイオンを選択的にイオントラップ内に残し、それ以外の不要なイオンを除去する粗分離ステップを実施し、該粗分離ステップによるイオン選択が行われた状態のイオンに対して、選択対象である特定の質量電荷比又は特定の質量電荷比範囲よりも低い質量電荷比のイオンを前記粗分離ステップよりも高い分離能で以て除去する前記低質量側イオン分離ステップ、及び、選択対象である特定の質量電荷比又は特定の質量電荷比範囲よりも高い質量電荷比のイオンを前記粗分離ステップよりも高い分離能で以て除去する前記高質量側イオン分離ステップ、を実施するとよい。
また、第1及び第2の態様のイオントラップ装置において、好ましくは、
前記制御手段が、選択対象である特定の質量電荷比又は特定の質量電荷比範囲を含む広い質量電荷比範囲のイオンを選択的にイオントラップ内に残し、それ以外の不要なイオンを除去する粗分離を実行し、該粗分離によるイオン選択が行われた状態のイオンに対して、選択対象である特定の質量電荷比又は特定の質量電荷比範囲よりも低い質量電荷比のイオンを前記粗分離よりも高い分離能で以て除去するとともに、選択対象である特定の質量電荷比又は特定の質量電荷比範囲よりも高い質量電荷比のイオンを前記粗分離よりも高い分離能で以て除去するように、前記電圧発生手段で生成される電圧を制御する構成とするとよい。
ここで、粗分離の具体的な手法は特に限定されるものではなく、例えば、既述のFNF信号を利用した手法、SWIFT信号を利用した手法、非特許文献2に記載されたDAWIを利用した手法、などを用いることができる。ただし、イオン選択をできるだけ短時間で終了するという観点から、広い質量電荷比範囲に亘るイオンに対し、分離能は低くても不要イオンを除去するに要する時間が短い手法であることが好ましい。
また、本発明に係る第1及び第2の態様のイオン選択方法が実施されるイオントラップ装置、並びに、本発明に係る第1及び第2の態様のイオントラップ装置は、3次元四重極型イオントラップ又はリニア型イオントラップのいずれでもよい。上述したように、3次元四重極型イオントラップは、リング電極と、該リング電極を挟んで対向配置された一対のエンドキャップ電極との、3個の電極からなる。一方、リニア型イオントラップは、中心軸を取り囲むように互いに平行に配置された4本のロッド電極からなる。
また、本発明に係る第1及び第2の態様のイオン選択方法が実施されるイオントラップ装置、並びに、本発明に係る第1及び第2の態様のイオントラップ装置において、イオン選択の際に各電極に印加される電圧は交流電圧であるが、その波形形状は、正弦波状、又は、矩形波などのパルス波形状のいずれでもよい。即ち、イオントラップ装置は、前述したAIT又はDITのいずれでもよい。特に矩形波電圧は異なる2種類の電圧値をスイッチング素子で切り替えることにより生成することができるから、そのスイッチング素子の切替え周波数を変更することで周波数を容易に切り替えることができ、また、スイッチング素子の切替え周波数を一定にしたまま切替えタイミングを変更することでデューティ比も容易に切り替えることができる。したがって、電極に印加する交流電圧の周波数やデューティ比を変化させる制御を行う際には、交流電圧として矩形波電圧を用いたDITが都合がよい。
本発明に係る第1の態様のイオン選択方法及びイオントラップ装置において、「マチュー方程式に基づく安定領域図上の動作線の位置を変更することで捕捉され得る下限質量を変えて一部イオンを排出するイオン排出操作」とは、例えば非特許文献2に記載されたDAWIや特許文献2に記載された手法である。具体的には、例えばDITにおいては電極に印加する矩形波電圧のデューティ比を変化させることで動作線の位置を変更することができる。また、矩形波電圧に対し直流バイアス電圧を与えてオフセットを生じさせることでも動作線の位置を変更することができる。これはAITでも同様であり、正弦波電圧に対し直流バイアス電圧を与えてオフセットを生じさせることで動作線の位置を変更することができる。
マチュー方程式に基づく安定領域図上において、捕捉可能な下限質量(LMCO)に対応した安定領域境界線と動作線との交点の付近では、捕捉電場により形成される擬電位ポテンシャル井戸は充分深く、動作点の変化に対する井戸深さの変化量は小さい。そのため、下限質量は、主としてイオントラップ内でのイオンの振動振幅に依存し、そのばらつきは小さい。これに対し、安定領域図上において、捕捉可能な上限質量(HMCO)に対応した安定領域境界線と動作線との交点の付近では、捕捉電場により形成される擬電位ポテンシャル井戸はかなり浅く、しかも動作点の変化に対する井戸深さの変化量が大きい。そのため、上限質量のばらつきは大きい。こうしたことから、マチュー方程式に基づく安定領域図上の動作線の位置を変更することによるイオン排出操作では、選択したい目的の質量電荷比又は質量電荷比範囲よりも高質量の不要イオンを除去する際には分離能が低いものの、目的の質量電荷比又は質量電荷比範囲よりも低質量の不要イオンを除去する際には充分に高い分離能が得られることになる。
そこで第1の態様のイオン選択方法及びイオントラップ装置では、例えばDAWIのようなマチュー方程式に基づく安定領域図上の動作線の位置を変更することによるイオン排出操作を行うことで、選択対象である特定の質量電荷比又は特定の質量電荷比範囲よりも低い質量電荷比を持つ不要なイオンを除去する。このイオン排出操作では、多種のイオンを同時に排出することができるので、時間が短くても上述したように低質量側において充分に高い分離能を達成できる。
一方、この方法では高質量側における分離能が低いので、上記イオン排出操作と同時に又はその前後に、共鳴励起を利用したイオン排出操作を行うことにより、選択対象である特定の質量電荷比又は特定の質量電荷比範囲よりも高い質量電荷比を持つ不要なイオンを除去する。
ここで用いる共鳴励起排出は、3以上の電極のうちの対向する一対の電極に互いに逆極性の電圧を印加することで行われる一軸方向のみの双極子励起と、例えば対向する一対の電極への逆極性の電圧印加と同極性の電圧印加とを選択的に行うことで互いに直交する二軸方向への励起を可能とした四重極励起(Quadrupole Excitation)のいずれでもよいが、四重極励起のほうが望ましい。四重極励起による共鳴励起排出では、特に単一周波数のみで励起を行った場合に、排出されるイオンと排出されずにイオントラップ内に残るイオンとの質量電荷比の境界が非常に明確に現れる。この明確性は、排出される質量電荷比範囲を広げるために励起電圧自体を大きくしても保たれる。そのため、単一周波数の四重極励起を行うと、或る程度の広い質量電荷比範囲のイオンを高い分離能(例えば1Da程度の分離能)で以て排除することができる。
以上のように本発明に係る第1の態様のイオン選択方法及びイオントラップ装置では、選択対象である特定の質量電荷比又は特定の質量電荷比範囲よりも低い側と高い側とで異なる手法で、且つ、いずれも高い分離能が実現可能な手法で、不要イオンの排除を実施するので、目的のイオンやイオン群のみを高い分離能で以てイオントラップ内に残すことができる。また特に、上述したように先に粗分離を行っておくことにより、高い分離能で以て除去すべきイオンの質量電荷比範囲が限られるので、上述した高分離能のイオン排出操作に要する時間は短くて済み、イオン選択の所要時間も短縮することができる。特に、選択対象である特定の質量電荷比又は特定の質量電荷比範囲よりも高い側のイオンの排除を単一周波数の四重極励起により行うようにすることで、粗分離で残った或る程度広い質量電荷比範囲のイオンを、周波数走査を行うことなく、つまりは非常に短い時点で、高い分離能で以て排除することができる。
また本発明に係る第2の態様のイオン選択方法及びイオントラップ装置では、選択対象である特定の質量電荷比又は特定の質量電荷比範囲より高い側と同様に低い側でも共鳴励起によりイオンを排出するが、両者のイオン振動方向が異なるように共鳴励起を実施する。即ち、上述したように四重極励起では直交する二軸方向への励起を選択的に行うことが可能であるから、例えば低質量側イオン分離と高質量側イオン分離とをいずれも四重極励起により行い、それらにおけるイオンの振動方向が異なる軸方向になるように印加電圧を設定すればよい。また、低質量側イオン分離と高質量側イオン分離とのいずれか一方を双極子励起により行ってもよいが、前述の理由、即ち、排除可能な質量電荷比範囲の広さや質量分離能の高さの点において、双極子励起よりは四重極励起のほうが好ましい。
このように低質量側と高質量側とでイオンの振動方向が異なる共鳴励起排出を行うことで、たとえ両方の共鳴励起を同時に行っても、つまりはそれら両方の共鳴励起がともに発生するように重畳させた電圧を電極に印加しても、それぞれの共鳴は独立に発生し、互いに影響を及ぼすことが殆どない。それによって、共鳴励起排出に要する時間を短縮しながら、高い分離能を実現することができる。また、第1の態様と同様に、上述したように先に粗分離を行っておくことにより、高い分離能で以て除去すべきイオンの質量電荷比範囲が限られるので、上述した高分離能のイオン排出操作に要する時間はさらに短くて済み、イオン選択の所要時間も短縮することができる。
本発明に係るイオン選択方法及びイオントラップ装置によれば、プリカーサ分離等のイオン選択行程時に、目的とするイオンやイオン群を高い分離能で以て且つ短時間でイオントラップ内に残すようにすることができる。それにより、例えばイオントラップを使用した質量分析装置において、MSn分析のスループットを向上させることができる。
本発明の一実施例であるDIT−TOFMSの要部の構成図。 3次元四重極型イオントラップの構成図。 本発明による第1イオン選択方法の概略フローチャート。 本発明による第2イオン選択方法の概略フローチャート。 双極子励起及び四重極励起におけるイオンの挙動を説明するための模式図。 DAWIによるイオン排出操作を説明するためのマチューの安定領域図。 DITにおいて電極に印加される矩形波電圧波形を示す図。 DAWIによるイオン排出操作の際の矩形波電圧波形を示す図。 1000Daのイオンに対応した双極子励起を行ったときのイオンの振動状態をシミュレーションした結果を示す図。 1000Daのイオンに対応した双極子励起を行ったときの質量電荷比と最大振動量との関係をシミュレーションした結果を示す図。 従来の共鳴励起排出による問題点を説明するための模式図。 1000Daのイオンを選択するべく双極子励起による共鳴励起排出を行ったときのイオントラップ内に存在するイオン数をシミュレーションした結果を示す図。 第1イオン選択方法による共鳴励起排出(低質量側が双極子励起、高質量側が四重極励起)を実施したときにイオントラップ内に存在するイオン数をシミュレーションした結果を示す図。 第1イオン選択方法による共鳴励起排出(低質量側、高質量側ともに四重極励起)を実施したときにイオントラップ内に存在するイオン数をシミュレーションした結果を示す図。 従来のFNF信号を利用したイオン選択方法による実験結果を示す図。 FNF信号を利用した粗分離の実施後にDAWIによる分離を行った場合の実験結果を示す図。 図16に示した分離実施後にさらに四重極励起による分離を行った場合の実験結果を示す図。 図16に示した分離実施後にさらに四重極励起による分離を行った場合の他の実験結果を示す図。
[第1イオン選択方法]
まず、本発明に係るイオン選択方法の一手法について図面を参照して説明する。ここでは、イオントラップとして図2に示すような3次元四重極型のイオントラップ2を使用するものとする。即ち、イオントラップ2は、環状のリング電極21と、該リング電極21を挟んで対向配置された一対のエンドキャップ電極22、24と、を含む。両エンドキャップ電極22、24の中心には、略一直線上に、イオン入射孔23とイオン出射孔25とが形成されている。このイオン入射孔23とイオン出射孔25の中心を貫く直線が該イオントラップ2のz軸である。また、z軸に直交しリング電極21の径方向に延伸する軸がイオントラップ2のr軸である。
周知のように、こうしたイオントラップ2においては、電極21、22、24で囲まれる空間に捕捉されているイオンの振動を共鳴励起によって促進し、つまりその振動を増大させ、イオントラップ2から排出することができる。図5に示すように、共鳴励起には主として、双極子励起、四重極励起などがある。
双極子励起において、励振の角周波数Ωは次の(1)式で表される。
Ω=(1/2)βiω,{n±(1/2)βi}ω n=1, 2, …, ∞ …(1)
ここで、ωはイオンを捕捉している高周波電圧(リング電極21に印加されている電圧)の角周波数で、iはイオンの運動の方向を示す。図2に示すような3次元四重極型イオントラップでは、iは対称軸方向を示すz軸方向と径方向を示すr軸方向との二方向であり、リニア型イオントラップでは対称軸方向に垂直な二方向、つまりx軸方向及びy軸方向である。βはイオンの運動を表すパラメータであり、イオンの質量、イオントラップに印加される高周波電圧の振幅及び周波数、直流電圧、さらには電極間距離、によって決定される。
上記の励振の角周波数Ωを用いて、励起波の周波数fは、f=Ω/2π、と表される。双極子励起による共鳴励起を行う場合には、励起させたいイオンについて上記の(1)式によって求まる周波数の励起電圧を対向する電極に極性を反転させて印加する。即ち、図5(a)に示すように、対向する一対のエンドキャップ電極22、24に互いに逆極性の交流電圧(正弦波でも矩形波でもよい)を印加する。これにより、捕捉されているイオンは図5(a)に示すようにz軸に沿った一軸方向に振動する。つまり、3次元四重極型のイオントラップでは、実際上、z軸方向にのみ双極子励起を行える。
一方、四重極励起においては、励振の角周波数Ωは次の(2)式で表される。
Ω=βiω,(n±βi)ω n=1, 2, …, ∞ …(2)
この場合、図5(b)に示すように、対向する電極(一対のエンドキャップ電極22、24)に同位相の交流電圧を印加する。これにより、捕捉されているイオンは図5(b)に示すようにz軸及びr軸の二方向に振動し得る。なお、このような四重極励起は、両側のエンドキャップ電極22、24に同極性の励起電圧を印加するのみならず、イオンを捕捉するべくリング電極21に印加している高周波電圧に励起のための交流電圧を重畳させることで実現することができる。
従来知られているFNF信号やSWIFT信号によるイオン選択(質量分離)も上述したような共振励起排出を利用している。FNF信号やSWIFT信号によるイオン選択を行う場合、上記の(1)式又は(2)式で求まる周波数を持つ電圧波形を、選択したい(残したい)質量電荷比に対応する共鳴周波数を除いて、つまりノッチを形成するように、重ね合わせた励起電圧波形を用いる。その場合、励起方向は排出されるイオン全てについて同じ方向であり、双極子励起では対称軸方向への励起が、四重極励起では対称軸方向への励起又は径方向への励起が行われる。
上記のような従来の共振励起排出によるイオン選択方法では、励起電圧の周波数スペクトル上で、選択したいイオン(又はイオン群)に対応した共振励起がなされない周波数(又は周波数領域)を挟んでその両側に、励起電圧の低質量側周波数領域と高質量側周波数領域とが存在する。選択したいイオンに対するイオン選択性、つまり分離能は、低質量側周波数領域の端部と高質量側周波数領域の端部との影響をそれぞれ受ける。その結果、イオントラップ内に残したいイオンまで排出されてしまうという現象が起こる。図9は、励起電圧印加前にz軸方向の最大振幅が1mmである1000Daのイオンと995Daのイオンに対して、1000Daのイオンに対応した双極子励起の共鳴周波数を持つ励起電圧を印加したときのイオンの振動状態をシミュレーションした結果を示す図である。図9(a)に示されているように、1000Daのイオンは共鳴励起によって大きく振動し、0.5msec程度の時間経過時点でイオントラップから排出される。一方、図9(b)に示されているように、目的イオンではない995Daのイオンも励起電圧の印加によって振動振幅が大きくなっている。
このように、印加される励起電圧の周波数とそのイオンが励起される周波数とがずれていても、質量電荷比が近いイオンは励起されることになる。その結果、図10に示すように、共鳴励起排出したい質量電荷比の近傍(この例では±4Da程度の幅)のイオンも同時に排出されてしまう。なお、図10は、1000Daのイオンに対応した双極子励起を行ったときのイオン質量電荷比と最大振動量との関係をシミュレーションした結果を示す図である。
図11は、従来の共鳴励起排出による問題点を説明するための模式図であり、共振励起によるイオンの振動振幅と質量電荷比との関係を示す図である。高い分離能で特定のイオンを選択するためには、該イオンの振動振幅が小さい(好ましくはゼロである)ことが望ましいが、上記現象により、図11中に模式的に示すように、選択したいイオンにおいても振動振幅の拡大が生じる(P1→P2)。また、その特定のイオンに質量電荷比が近いイオンの振動振幅も拡大する。これによって、質量分離能の低下が起こる。なお、図11は、説明を簡単にするために、選択したいイオンを挟む低質量側周波数領域の上端部と高質量側周波数領域の下端部の二つの励起電圧による影響のみを示しているが、実際には、それら端部以外の励起電圧の影響も受けることになるため、選択したいイオンの振動振幅は一層拡大する。
図12は、1000Daのイオンを選択するために従来一般的である双極子励起による共鳴励起排出を用いた場合の、イオントラップ内に存在するイオン数をシミュレーションした結果を示す図である。図12(a)はイオントラップ内に初期的に存在するイオンの数を示しており、980Daから1020Daまでの質量電荷比範囲で1Da毎にそれぞれ50個のイオンが存在する状況を想定している。イオントラップ内にイオン捕捉用電場を形成するために、リング電極に波高値1kVである矩形波電圧を印加するものとし、その矩形波電圧の周波数は1000Daのイオンがβz=0.5となるように調整した。
図12(b)は、(βz1/2)ωに相当する992.4Daに対応した単一周波数の励起電圧をエンドキャップ電極に印加することで双極子励起による共鳴励起排出を実施した時点から、10msec後にイオントラップ内に残っているイオンの数を示している。これは、1000Daのイオンに対し低質量側の近傍のイオンを排除した状態である。
一方、図12(c)は、(βZ2/2)ωに相当する1004.5Daに対応した単一周波数の励起電圧をエンドキャップ電極に印加することで双極子励起による共鳴励起排出を実施した時点から、10msec後にイオントラップ内に残っているイオンの数を示している。これは、1000Daのイオンに対し高質量側の近傍のイオンを排除した状態である。
これら二つの単一周波数の周波数の励起電圧をそれぞれ単独でエンドキャップ電極に印加した場合には、図12(b)及び(c)で分かるように、排出されたイオンと排出されずに残ったイオンとの境界が明瞭に現れ、シャープに分離している。
これに対し、図12(d)は、上記二つの周波数の励起電圧、即ち、992.4Daに対応した単一周波数の励起電圧及び1004.5Daに対応した単一周波数の励起電圧、をエンドキャップ電極に同時に印加することで双極子励起による共鳴励起排出を実施した時点から、10msec後にイオントラップ内に残っているイオンの数を示している。この図12(d)に示すように、二つの周波数の励起電圧を同時に、つまりは重畳して印加した場合には、残したい1000Daのイオンも排除されてしまっていることが分かる。
また、このような双極子励起による共鳴励起排出において、1000Daのイオンがイオントラップ内に残るように、同時に印加する二つの励起電圧の周波数間隔を広げると、図12(e)に示すように、1000Daのイオンのみならず、その近傍のイオンもイオントラップ内に残ってしまう。
以上の結果から分かるように、従来一般的な双極子励起による共鳴励起排出では、選択したいイオンよりも低質量側及び高質量側でそれぞれ単独に励起を行った場合には高い分離能で目的イオンを選択することができるものの、高速化を図るために低質量側と高質量側とで同時に励起を行おうとすると、つまりは複数の周波数の励起電圧を重畳させると分離能が下がり、目的イオンのみを選択するのが困難である。その理由は、目的イオンを挟む低質量側周波数領域の励起電圧と高質量側周波数領域の励起電圧、特に目的イオンに近い端部同士が相互に作用するためであると考えられる。双極子励起ではイオンの振動方向が一軸方向に決まってしまい、二つの励起電圧によるイオンの振動方向は同一とならざるをえないが、それら振動方向が互いに相違すれば、低質量側の励起電圧と高質量側の励起電圧との相互作用を軽減できると考えられる。そこで、本発明の第1イオン選択方法では、低質量側、高質量側の少なくとも一方にイオンの振動方向を選択可能な四重極励起を用い、低質量側と高質量側とでイオンを励起する方向を変えるようにした。
図13は、低質量側では図12に示した例と同様に双極子励起により対称軸方向(z軸方向)に励起を行い、高質量側では四重極励起により径方向(r軸方向)に励起するようにしたときのシミュレーション結果である。図13(a)は、1007.0Daに対応する単一周波数の四重極励起によって径方向に励起したときに、その10msec後にイオントラップ内に残っているイオン数を示している。なお、径方向への四重極励起では双極子励起に比べて励起エネルギが小さいため、励起電圧の振幅を双極子励起の2倍の2Vに設定している。この図13(a)から明らかなように、1000Daよりも高質量電荷比であるイオンが良好に排除されている。
図13(b)は、図13(a)に示した高質量側イオンの除去のための径方向の四重極励起と、図12(b)に示した低質量側イオンの除去のための対称軸方向の双極子励起とを同時に行ったときの、10msec後のイオントラップ内のイオン数を示した図である。この場合、径方向の励起により除去される質量電荷比範囲が1Da程度低質量側にずれるような結果となり、目的とする1000Daのイオンも排除されてしまっている。そこで、径方向に励起されるイオンの質量電荷比が1007.8Daに適合するように、励起電圧の周波数の調整を試みた。その結果、図13(c)に示すように、ほぼ1000Daのイオンのみの分離が可能となった。即ち、以上のようなシミュレーション結果から、選択したい目的イオンよりも低質量側と高質量側とでイオンを励起する方向を異なるようにすることで、それら励起のための電圧を同時に印加する(互いに周波数の異なる二つの励起電圧を重畳させて印加する)ようにしても、高い分離能を実現することが確認できた。
上述の、図13(c)に結果を示したシミュレーションでは、低質量側における対称軸方向への励起を双極子励起により行っているが、径方向への励起と同様に、対称軸方向への励起も四重極励起によって行った場合のシミュレーション結果が図14である。ただし、対称軸方向への四重極励起を行う場合、βz=0.5付近で励起を行うと、励起電圧の周期が通常のβzωに相当するイオンの励起と同時に、その近傍で(1−βz)ωに相当するイオンの励起も起こってしまう。その結果、図14(a)に示すように、単一周波数の励起電圧を印加したにも拘わらず、ごく近い二つの質量電荷比範囲で励起が起こる。そのために、低質量側と高質量側とで励起の方向を変えたつもりでいても、実は同じ方向に励起されているという事態が起こり得る。そこで、所望しない(1−βz)ωの周波数での励起の影響を避けるために、1000Daのイオンのβzの値が0.5ではなく0.45となるように、リング電極に印加するイオン捕捉のための高周波電圧の周波数を設定した。これによって得られたシミュレーション結果が図14(b)〜(e)である。
図14(b)は、単一周波数の励起電圧をエンドキャップ電極に印加して、対称軸方向への四重極励起によるイオン排出を行ったときに10msec経過後にイオントラップ内に残っているイオン数を示す図である。エンドキャップ電極及びリング電極への印加電圧は、1000Daよりも低い質量電荷比のイオンを排出するように設定されている。励起電圧の振幅は径方向へ励起する場合と同じく2Vとしているが、図13(a)と比べて、励起される質量電荷比範囲がさらに狭くなっていることが分かる。
図14(c)は、単一周波数の励起電圧をエンドキャップ電極に印加し、1000Daよりも高い質量電荷比のイオンを径方向に四重極励起するようしたときの、励起電圧印加時点から10msec後にイオントラップ内に残っているイオンの数を示す図である。また、図14(b)及び図14(c)の結果をもたらす励起電圧をエンドキャップ電極に同時に印加した場合のシミュレーション結果が図14(d)である。図13(b)とは異なり、図14(d)は図14(b)の結果と図14(c)の結果とを重ね合わせた状態となっていることが分かる。したがって、このように低質量側、高質量側ともに四重極励起を用いた場合には、低質量側において双極子励起により対称軸方向の励起を行った例(図13参照)で実施したような励起電圧の周波数調整を行うことなく、目的とする1000Daのイオンを高い分離能(この例では1Da程度の分離能)で選択することができる。
図14(e)はさらに、対称軸方向の励起電圧の振幅を10V、径方向の励起電圧の振幅を5Vに拡大することで、排出する質量電荷比範囲を広げた場合のシミュレーション結果を示している。この図で分かるように、励起電圧の振幅を上げることで、除去されるイオンの質量電荷比範囲が拡大している。そのため、後述するように高分離のイオン分離を行う前に粗分離を実行する際に、その粗分離においてイオントラップ内に残るイオンの質量電荷比範囲が広くてもよく、粗分離が容易でそれに要する時間も短くて済む。また図14(e)から、四重極励起では励起電圧の振幅を大きくしても高い分離能が維持され、目的とする1000Daのイオンの分離が良好に行えることも確認できる。
以上のように、図2に示したような3次元四重極型のイオントラップ2においては、選択したいイオンを挟んで低質量側と高質量側とで異なる方向にイオンを励起するような、それぞれ単一周波数による共鳴励起排出操作を行うことによって、イオン排出に要する時間を短縮しながら、高い分離能で目的イオンを選択できることが確認できた。なお、上述したように、図14(b)〜(e)に示したシミュレーションでは、不所望の(1−βz)ωの周波数での励起の影響を避けるべく1000Daのイオンのβzの値が0.45となるようにリング電極への印加電圧の周波数を調整していたが、βzの値として0.5を避けた適宜の値とすればよく、例えばβz>0.5である0.55としてもよい。
なお、リニア型イオントラップでは、4本のロッド電極の中心軸をz軸としたときにそれに垂直な二方向(x軸、y軸)に対してイオンの捕捉を行っており、上記3次元四重極型イオントラップと同様の手法によって、イオン選択の分離能を高めることが可能である。リニア型イオントラップにおいて双極子励起を行う場合には、励起させたい方向に位置する電極に印加されている電圧にそれぞれ励起電圧波形を重畳させることで、異なる方向への励起が可能である。例えば低質量側はx軸方向への励起、高質量側はy軸方向への励起を行いたい場合、x軸方向に位置する電極には低質量除去のための励起電圧、y軸方向に位置する電極には高質量除去のための励起電圧を重畳すればよい。
一方、リニア型イオントラップにおいて四重極励起を行う場合には、イオントラップの無次元パラメータaが0であると両方向の励起が同時に起こってしまい、励起方向を異なるようにすることができない。しかしながら、中心軸を挟んで対向する電極に直流電圧を印加するか、又は、イオン捕捉のための高周波電圧が矩形波である場合にはそのデューティ比を変えてaの値を0以外にすることで、それぞれの方向のβ値(βx,βy)を異なる値にすることができ、それによって励起する方向を特定の方向に限定することが可能である。
[第2イオン選択方法]
次に、本発明に係るイオン選択方法の他の一つの手法について図面を参照して説明する。ここでは、シミュレーションではなく実機により得られた実験結果に基づいて、イオン選択の手法と効果を説明する。
図15〜図18はいずれも実機による得られたマススペクトルである。図15は従来のFNF信号を用いたイオン選択を行って得られたマススペクトルであり、(a)はGlu-fibの第1同位体ピークを含むピーク群を粗分離した状態で得られるマススペクトルを示している。このようにイオントラップ内で粗く分離されたイオンに対し、FNF信号を用いたイオン選択によりさらに細かい分離を行って得られたマススペクトルが図15(b)及び(c)である。(b)は選択したいピークの信号強度が分離後にも大きくなるように条件を設定して分離を行った結果である。分離後でもピークの信号強度は分離前の約80%を維持しており、充分に高い信号強度であるといえる。しかしながら、この場合には、目的とするピークの前後に不要な同位体ピークが残ってしまっている。
一方、図15(c)は不要な同位体ピークが残らないように条件を設定してFNF信号を用いたイオン選択を行った場合の結果である。この場合には、目的とするGlu-fibの第1同位体ピーク以外の不要なピークは充分に排除されている。しかしながら、第1同位体ピーク自体の信号強度も、分離前の10%程度と、かなり減衰している。このように、FNF信号を用いたイオン選択では、目的ピークの強度低下を抑えると分離が悪くなり、分離を重視すると目的ピークの強度低下が顕著になる。
これに対し、図16(b)は、図15の場合と粗分離までは同じイオン排出操作を行い、その後にDAWIを行って得られたマススペクトルである。Glu-fibの第1同位体ピークよりも高質量側には他の不要なピークが殆どそのまま残っているものの、低質量側では他の不要なピークは充分に排除されている。また、目的とする第1同位体ピークの信号強度は、図16(a)に示した粗分離を行った場合の信号強度と同程度である。なお、図16(b)の信号強度は図16(a)よりも増加しているが、これはMALDIにおいてレーザ照射毎に生成されるイオン量のばらつきの範囲内である。このようにDAWIを用いた場合、高質量側では充分な分離能が得られないものの、低質量側に関しては高い分離能で質量選択を行うことができる。
このように低質量側と高質量側とで分離能に大きな差が生じる理由は、次のように理解できる。図6は、マチュー方程式に基づく3次元四重極型イオントラップにおける安定領域図である。図中、βx=0、βr=0、βr=1で囲まれる領域がイオンが捕捉領域に安定に存在し得る安定領域である。通常のイオン捕捉状態では、図中のaz=0の横線が動作線となり、幅広い質量電荷比範囲のイオンが安定領域内に入ることになる。DAWIやこれに類似したイオン選択方法でイオンを排出する際には、動作線が矢印で示すように右上がり斜めに傾く。この動作線が安定領域の境界線と交差する点、具体的にはβx=0と交差する点が捕捉可能な上限質量(HMCO)、βr=1と交差する点が捕捉可能な下限質量(LMCO)である。上限質量と下限質量とで挟まれる動作線は短く、安定して捕捉される質量電荷比範囲が狭いことが分かる。
イオントラップに捕捉されているイオンは、該イオントラップ内に形成される高周波電場による擬電位ポテンシャルの井戸の中で振動しているが、この擬電位ポテンシャルの井戸の深さはqzに比例するため、下限質量側では擬電位ポテンシャルの井戸は深い。また、βr=1に沿う下限質量付近ではqzの変化は小さいので擬電位ポテンシャル井戸の深さの変化も小さい。即ち、イオンが捕捉されるか否かは主として振動振幅に依存し、下限質量のばらつきは小さい。その結果、低質量側では高い分離能が得られることになる。これに対し、上限質量側では擬電位ポテンシャルの井戸は浅く、βx=0に沿う上限質量付近ではqzの変化がかなり大きいので擬電位ポテンシャル井戸の深さの変化も大きい。即ち、イオンの振動振幅が同程度でも擬電位ポテンシャル井戸の深さが変化すると、捕捉されたり捕捉されなかったりすることになる。その結果、上限質量のばらつきは大きく、高質量側では分離能が低くなる。
図16(b)に示したように、DAWIを実施した結果、低質量側では不要なイオンが充分に排除されているものの、高質量側では不要なイオンが残っており、これはDAWIでは排除することはできない。そこで、この第2イオン選択方法では、高質量側の不要イオンの除去は上述した第1のイオン選択方法と同様に、共鳴励起排出を用いることとした。図17の(a)はGlu-fibに対しイオン選択を行わずに得られたマススペクトル、(b)はDAWIによりGlu-fibの第1同位体ピークの低質量側のピークを排除した後に、単一の励起周波数による四重極励起によって高質量側のピークを排除して得られたマススペクトルである。なお、条件を最適化すれば必ずしも必要であるとは限らないが、この実測では、DAWIの実行後に数msec程度の短いクーリングを実施し、それから四重極励起を実施した。
図17(b)を図16(b)と比較すれば明らかなように、Glu-fibの第1同位体ピーク以外のピークはほぼ排除されている。また、Glu-fibの第1同位体ピークの信号強度は分離前(図17(a))の信号強度の約90%であり、分離前のイオン量がほぼ維持されていることが分かる。
以上のように、DAWIにより低質量側の不要イオンを排除した後に四重極励起により高質量側の不要イオンを排除するという、この第2イオン選択方法によれば、第1のイオン選択方法と同様に、目的イオンの信号強度の減少を抑えながら高い分離能で目的イオンのみを選択することができる。
また、この第2イオン選択方法では、さらに狭い範囲での質量選択を行うことが可能で、その結果を図18で示している。図18の(a)は、ACTH(7-38)の二量体に対しイオン選択を行わずに得られたマススペクトル、(b)はその第2同位体ピークについて第2イオン選択方法によるイオン選択を行って得られたマススペクトルである。二量体であるため同位体ピークの間隔は0.5Daと狭くなっているが、図18(b)から分かるように、0.5Da差である不要なピークが充分に除去され、しかも目的ピークの信号強度は分離前の約80%を維持している。このように、この第2イオン選択方法によれば、目的ピークにごく近接して不要ピークが存在している場合でも、目的ピークのみを適切に選択可能である。
[第1及び第2イオン選択方法を実施する装置]
次に、上述した第1及び第2イオン選択方法を実施するイオントラップ装置を備えた質量分析装置の一実施例について添付図面を参照して説明する。
図1は本実施例のイオントラップ飛行時間型質量分析装置(IT−TOFMS)の要部の構成図である。
本実施例によるIT−TOFMSは、目的試料をイオン化するイオン源1と、図2に示した構成の3次元四重極型のイオントラップ2と、飛行時間型質量分離器3と、イオン検出器4と、該イオン検出器4で得られたデータを処理して例えばマススペクトル等を作成するデータ処理部5と、イオントラップ2を駆動するイオントラップ駆動部6と、各部を制御する制御部7とを、備える。
イオン源1におけるイオン化法は特に限定されず、試料が液体状である場合にはエレクロトスプレイイオン化(ESI)法や大気圧化学イオン化(APCI)法などの大気圧イオン化法が用いられ、試料が固体状である場合にはマトリクス支援レーザ脱離イオン化法(MALDI)などが用いられる。
検出器4は例えば、入射したイオンを電子に変換するコンバージョンダイノードと、その変換された電子を増倍して検出する二次電子増倍管とからなるものとすることができる。また、飛行時間型質量分離器3を設ける代わりに、イオントラップ2自体の質量分離機能を利用して順番に排出したイオンを直接、イオン検出器4に導入して検出する構成としてもよい。
イオントラップ駆動部6は、クロック発生部61、主電圧タイミング制御部62、補助電圧発生部63、主電圧発生部64、などを含む。リング電極21にイオン捕捉用の矩形波電圧を印加するための主電圧発生部64は、第1電圧VHを発生する第1電圧源65と、第2電圧VL(VL<VH)を発生する第2電圧源66と、第1電圧源65の出力端と第2電圧源66の出力端との間に直列に接続された第1スイッチ67及び第2スイッチ68と、を含む。スイッチ67、68は電力用MOSFET等、高速動作可能な電力用スイッチング素子である。
主電圧タイミング制御部62は図示しないRF電圧波形メモリを含み、RF電圧波形メモリに記憶されているRF電圧波形データを読み出し、該データに基づく例えば相補的な2系統の駆動パルスを生成してスイッチ67、68に供給する。第1スイッチ67がオンし第2スイッチ68がオフするとき第1電圧VHが出力され、逆に第2スイッチ68がオンし第1スイッチ67がオフするとき第2電圧VLが出力されるから、主電圧発生部64からの出力電圧VOUTは理想的には、図7に示すような、ハイレベルがVH、ローレベルがVLである所定周波数fの矩形波電圧となる。通常、VHとVLとは絶対値が同じで極性が逆の高電圧であり、その絶対値は数百V〜1kV程度である。また、周波数fは通常数十kHz〜数MHz程度の範囲である。なお、通常、リング電極21に印加される矩形波電圧は所定周波数の繰り返し波形であるため単純であるが、RF電圧波形メモリに記憶されたRF電圧波形データを用いることにより、デューティ比(図7中のd)を任意に決めたり、2系統の駆動パルスが同時にオンしないように微妙にタイミングを調整したりすることが容易になる。
一方、補助電圧発生部63は、一対のエンドキャップ電極22、24にそれぞれ、直流電圧又は低電圧の矩形波電圧を印加する。一般的には、イオントラップ2内にイオンを導入する際や、イオントラップ2内に捕捉したイオンを飛行時間型質量分離器3に向けて放出する際には、エンドキャップ電極22、24に直流電圧を印加し、イオン選択等のために共鳴励起排出を行う際には矩形波低電圧をエンドキャップ電極22、24に印加する。非特許文献1に記載されているように、DITにおいて共鳴励起排出を行う際には、通常、リング電極21に印加される矩形波電圧を1/4分周した周波数の矩形波低電圧がエンドキャップ電極22、24に印加される。したがって、主電圧タイミング制御部62は、主電圧発生部64に供給する駆動パルスを1/4(又は適宜の比)で分周したパルス信号を補助電圧発生部63に与え、補助電圧発生部63はそのパルス信号に基づき、周波数がf/4であって所定の電圧値を有する矩形波低電圧を生成すればよい。通常、矩形波低電圧の電圧値はリング電極21に印加される矩形波高電圧の電圧値VH、VLに比べて格段に低い値であり、例えば、数V〜10V程度である。
また、イオン選択における粗分離をFNF信号等の広帯域信号により行う場合には、例えば、特開2012−49056号公報に記載されているように、広帯域信号をデジタル化したデータを補助電圧発生部63のメモリに記憶しておき、該メモリから順次読み出したデータを、主電圧タイミング制御部62で用いられる基準クロック信号に同期したクロック信号によりD/A変換して広帯域信号を生成すればよい。もちろん、双極子励起、四重極励起のいずれにしても、それら共鳴励起排出を実施するための電圧を生成する手法については、既知の様々な手法を採用することができる。
本実施例のIT−TOFMSにおいて第1イオン選択方法によるプリカーサ分離を実行する場合の動作の一例について、図3のフローチャートを参照して説明する。
イオン源1において試料から生成された各種イオンは、イオン入射孔23を経てイオントラップ2内に導入される。このとき、主電圧発生部64から所定周波数の矩形波高電圧がリング電極21に印加される一方、エンドキャップ電極22、24は一定電位に維持され、それによりイオントラップ2内に形成される捕捉電場によって各種イオンは捕捉される。なお、図示していないが、通常、イオントラップ2内にはクーリングガスが導入され、イオントラップ2内に導入されたイオンはクーリングガスとの接触によりクーリングされる。
続いて、予め指示されているプリカーサイオンのみを選択的にイオントラップ2内に残すようにイオン選択行程が実施される。まず、第1段階として、プリカーサイオンの質量電荷比を含む所定の質量電荷比範囲に入るイオンを残し、該範囲よりも高い質量電荷比及び低い質量電荷比を持つイオンを除去するように粗分離を実行する(ステップS1)。この粗分離は分離能が低くてもよいが短時間でイオン除去が可能であることが望ましく、例えばFNF信号を用いた手法やDAWIによる手法などを利用すればよい。粗分離において残す質量電荷比範囲は狭いほうがよいが、目的とするプリカーサイオンが粗分離で減ることはできるだけ避ける必要がある。そこで、図12に示したシミュレーション結果から判断すると、プリカーサイオンに対して例えば±3〜5Da程度の範囲のイオンを残すように、FNF信号のノッチ幅等の条件を設定すればよい。
上記粗分離に引き続く第2段階として、プリカーサイオンよりも低質量側に残った不要イオンと高質量側に残った不要イオンとをそれぞれ除去するために、制御部7の制御の下に補助電圧発生部63は、それぞれに対応した所定の単一周波数の励起電圧を重畳した電圧を生成し、エンドキャップ電極22、24に同極性の電圧を印加する。また、このときリング電極21には適宜の矩形波電圧を印加する(ステップS2)。上述したように、例えば低質量側、高質量側ともに四重極励起を行うが、一方の励起方向を対称軸(z軸)方向、他方の励起方向を径(r軸)方向とするように電圧条件を設定する。それによって、同時に二つの周波数による励起が行われても相互干渉は殆ど生じず、プリカーサイオンが励振されることを避けながら、それ以外の不要なイオンを大きく振動させてイオントラップ2内から除去することができる。
このように2段階のイオン選択により目的とするプリカーサイオンのみをイオントラップ2内に残したあと、イオントラップ2内に衝突誘起解離ガスを導入し、プリカーサイオンを励起するようにエンドキャップ電極22、24に電圧を印加する。それにより、プリカーサイオンが衝突誘起解離ガスに接触して開裂を生じるから、所定時間、開裂操作を行い、それによって生成されたプロダクトイオンをクーリングした後に、イオン出射孔25を通してイオントラップ2から放出し、飛行時間型質量分離器3に導入して質量分析する。データ処理部5はイオン検出器4から順次得られる検出信号に基づいて、プロダクトイオンのマススペクトルを作成する。
本実施例のIT−TOFMSでは、イオン選択によってプリカーサイオン以外の不要なイオンが高い分離能で以て殆ど除去されており、またプリカーサイオン自体の減少は抑えられているので、不所望のノイズピークの少ない高精度及び高感度のマススペクトルを得ることができる。また、プリカーサイオン分離のためのイオン選択は2段階で行われるものの、周波数走査などの時間の掛かる操作はないので、イオン選択行程を短時間で終了させることができ、分析のスループットを上げることができる。
次に、本実施例のIT−TOFMSにおいて第2イオン選択方法によるプリカーサ分離を実行する場合の動作の一例について、図4のフローチャートを参照して説明する。
上述したように、試料から生成された各種イオンをイオントラップ2内に捕捉したあとに、プリカーサイオンのみを選択的にイオントラップ2内に残すようにイオン選択行程が実施される。まず、第1段階としては上記第1イオン選択方法の実施時と同様に、粗分離が行われる(ステップS11)。この粗分離の手法は特に変わりはない。
上記粗分離に引き続く第2段階として、プリカーサイオンよりも低質量側に残った不要イオンを除去するために、制御部7の制御の下に、主電圧タイミング制御部62は、リング電極21に印加される矩形波高電圧のデューティ比がプリカーサイオンの質量電荷比に対応した所定の値になるようなパルス信号を生成し主電圧発生部64へと送る。これにより、主電圧発生部64からリング電極21に印加される矩形波高電圧のデューティ比は、例えば図8に示すように変化する。通常、矩形波高電圧のデューティ比が0.5である場合(図8(a)参照)には、それによってイオントラップ2内に形成される捕捉用電場により実現される安定領域図上の動作線は、図6中のaz=0の横線となる。そして、上述したようにデューティ比が変更されると、安定領域図上の動作線は傾き、捕捉可能な下限質量が変化する。したがって、この下限質量が目的のプリカーサイオンよりも少し低くなるようにデューティ比を定めておけば、粗分離の結果、プリカーサイオンよりも低い側に残っている不要なイオンは除去される(ステップS12)。
引き続き、プリカーサイオンよりも高質量側に残った不要イオンを除去するために、制御部7の制御の下に補助電圧発生部63は、プリカーサイオンの質量電荷比に対応した所定周波数の励起電圧をエンドキャップ電極22、24に印加する。これにより、共鳴励起により、プリカーサイオンよりも大きな質量電荷比を持つ不要なイオンを大きく振動させてイオントラップ2内から除去することができる。
このようにして目的とするプリカーサイオンのみをイオントラップ2内に残したあとは、上記と同様に、プリカーサイオンを開裂させて得られたプロダクトイオンを質量分析し、マススペクトルを取得すればよい。
なお、第2イオン選択方法では、ステップS11における粗分離とステップS12におけるDAWIによる低質量側イオンの高分解能除去とを実質的に同時に実行してもよい。即ち、始めからDAWIによるイオン選択を行い、プリカーサイオンよりも低質量側の近接した不要イオンまで除去するとともに、高質量側ではプリカーサイオンが除去されることがないように上限質量を適度に大きくしてイオン除去を行えばよい。
また、DITにおいてDAWIと同等のイオン選択、つまりは安定領域図上の動作線の位置を変えて下限質量及び上限質量を変えることによるイオン排除を行うには、矩形波高電圧のデューティ比を変える以外に、直流的なオフセットを与えるようにしてもよい。つまり、図7において、VL≠−VHとなるようにすることで、0Vを挟んで正極性側と負極性側の面積比が変わり、デューティ比を変更したのと実質的に同じ作用を生じさせることができる。
また、上記説明では、専らDITについて述べたが、本発明はAITに適用することもできる。AITにおいてもDITと同様に共鳴励起排出が可能であることは言うまでもなく、また特許文献2に記載されているようにエンドキャップ電極又はリング電圧に一時的に直流電圧を印加することでDITにおけるDAWIと同等のイオン排出を行うことができることは明らかである。
さらにまた上記説明では、専らイオントラップとして3次元四重極型イオントラップについて述べたが、同様の原理でイオンの捕捉や共鳴励起排出を実行可能なリニア型イオントラップにも本発明を適用でき、上述した効果を奏することは明らかである。
1…イオン源
2…イオントラップ
21…リング電極
22、24…エンドキャップ電極
23…イオン入射孔
25…イオン出射孔
3…飛行時間型質量分離器
4…イオン検出器
5…データ処理部
6…イオントラップ駆動部
61…クロック発生部
62…主電圧タイミング制御部
63…補助電圧発生部
64…主電圧発生部
65…第1電圧源
66…第2電圧源
67…第1スイッチ
68…第2スイッチ
7…制御部

Claims (7)

  1. 3以上の電極からなるイオントラップに捕捉されたイオンの中で、特定の質量電荷比を持つイオン又は特定の質量電荷比範囲を持つイオン群を選択するイオン選択方法であって、
    a)前記イオントラップに捕捉されているイオンに対し、マチュー方程式に基づく安定領域図上の動作線の位置を変更することで捕捉され得る下限質量を変えて一部のイオンを排出するイオン排出操作を行うことにより、選択対象である特定の質量電荷比又は特定の質量電荷比範囲よりも低い質量電荷比を持つ不要なイオンを除去する低質量側イオン分離ステップと、
    b)前記イオントラップに捕捉されているイオンに対し、共鳴励起を利用して一部のイオンを排出するイオン排出操作を行うことにより、選択対象である特定の質量電荷比又は特定の質量電荷比範囲よりも高い質量電荷比を持つ不要なイオンを除去する高質量側イオン分離ステップと、
    を、この順序で、逆の順序で、又は同時に実施することを特徴とするイオントラップにおけるイオン選択方法。
  2. 3以上の電極からなるイオントラップに捕捉されたイオンの中で、特定の質量電荷比を持つイオン又は特定の質量電荷比範囲を持つイオン群を選択するイオン選択方法であって、
    a)前記イオントラップに捕捉されているイオンに対し、第1の方向にイオンを振動させる所定の単一周波数の励起電圧を用いた共鳴励起を利用して一部のイオンを排出するイオン排出操作を行うことにより、選択対象である特定の質量電荷比又は特定の質量電荷比範囲よりも低い質量電荷比を持つ不要なイオンを除去する低質量側イオン分離ステップと、
    b)前記イオントラップに捕捉されているイオンに対し、前記第1の方向とは異なる第2の方向にイオンを振動させる所定の単一周波数の励起電圧を用いた共鳴励起を利用して一部のイオンを排出するイオン排出操作を行うことにより、選択対象である特定の質量電荷比又は特定の質量電荷比範囲よりも高い質量電荷比を持つ不要なイオンを除去する高質量側イオン分離ステップと、
    を、この順序で、逆の順序で、又は同時に実施することを特徴とするイオントラップにおけるイオン選択方法。
  3. 請求項1又は2に記載のイオントラップにおけるイオン選択方法であって、
    前記低質量側イオン分離ステップ及び前記高質量側イオン分離ステップに先立ち、
    選択対象である特定の質量電荷比又は特定の質量電荷比範囲を含む広い質量電荷比範囲のイオンを選択的にイオントラップ内に残し、それ以外の不要なイオンを除去する粗分離ステップを実施し、該粗分離ステップによるイオン選択が行われた状態のイオンに対して、選択対象である特定の質量電荷比又は特定の質量電荷比範囲よりも低い質量電荷比のイオンを前記粗分離ステップよりも高い分離能で以て除去する前記低質量側イオン分離ステップ、及び、選択対象である特定の質量電荷比又は特定の質量電荷比範囲よりも高い質量電荷比のイオンを前記粗分離ステップよりも高い分離能で以て除去する前記高質量側イオン分離ステップ、を実施することを特徴とするイオントラップにおけるイオン選択方法。
  4. 3以上の電極からなるイオントラップを含むイオントラップ装置であって、
    a)前記3以上の電極にそれぞれ所定の電圧を印加する電圧発生手段と、
    b)前記イオントラップに各種イオンが捕捉されている状態で、選択対象である特定の質量電荷比又は特定の質量電荷比範囲よりも低い質量電荷比を持つ不要なイオンを除去するために、マチュー方程式に基づく安定領域図上の動作線の位置を変更することで捕捉され得る下限質量を変えて一部イオンを排出するイオン排出操作と、選択対象である特定の質量電荷比又は特定の質量電荷比範囲よりも高い質量電荷比を持つ不要なイオンを除去するために、共鳴励起を利用してイオンを排出するイオン排出操作とを、この順序で、逆の順序で、又は同時に実施するように、前記電圧発生手段で生成される電圧を制御する制御手段と、
    を備えることを特徴とするイオントラップ装置。
  5. 3以上の電極からなるイオントラップを含むイオントラップ装置であって、
    a)前記3以上の電極にそれぞれ所定の電圧を印加する電圧発生手段と、
    b)前記イオントラップに各種イオンが捕捉されている状態で、選択対象である特定の質量電荷比又は特定の質量電荷比範囲よりも低い質量電荷比を持つ不要なイオンを除去するために、第1の方向にイオンを振動させる所定の単一周波数の励起電圧を用いた共鳴励起を利用して一部のイオンを排出するイオン排出操作と、選択対象である特定の質量電荷比又は特定の質量電荷比範囲よりも高い質量電荷比を持つ不要なイオンを除去するために、前記第1の方向とは異なる第2の方向にイオンを振動させる所定の単一周波数の励起電圧を用いた共鳴励起を利用して一部のイオンを排出するイオン排出操作とを、この順序で、逆の順序で、又は同時に実施するように、前記電圧発生手段で生成される電圧を制御する制御手段と、
    を備えることを特徴とするイオントラップ装置。
  6. 請求項4又は5に記載のイオントラップ装置であって、
    前記制御手段が、選択対象である特定の質量電荷比又は特定の質量電荷比範囲を含む広い質量電荷比範囲のイオンを選択的にイオントラップ内に残し、それ以外の不要なイオンを除去する粗分離を実行し、該粗分離によるイオン選択が行われた状態のイオンに対して、選択対象である特定の質量電荷比又は特定の質量電荷比範囲よりも低い質量電荷比のイオンを前記粗分離よりも高い分離能で以て除去するとともに、選択対象である特定の質量電荷比又は特定の質量電荷比範囲よりも高い質量電荷比のイオンを前記粗分離よりも高い分離能で以て除去するように、前記電圧発生手段で生成される電圧を制御することを特徴とするイオントラップ装置。
  7. 請求項4に記載のイオントラップ装置であって、
    イオンを捕捉する電場を形成するために少なくとも1つの電極に矩形波電圧を印加するデジタル駆動方式のイオントラップであり、
    前記安定領域図上の動作線の位置を変更することで捕捉され得る下限質量を変えて一部イオンを排出するために、前記矩形波電圧のデューティ比を変更することを特徴とするイオントラップ装置。
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