JP4894918B2 - イオントラップ質量分析装置 - Google Patents

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Description

本発明は、電場によってイオンを閉じ込めるためのイオントラップを備えるイオントラップ質量分析装置に関する。
質量分析装置において、電場によりイオンを捕捉する(閉じ込める)イオントラップを利用した装置が従来から知られている。典型的なイオントラップは、略円環状のリング電極と、このリング電極を挟むように配設される一対のエンドキャップ電極とを有する、いわゆる3次元四重極イオントラップである。従来、こうしたイオントラップでは、リング電極に正弦波状の高周波電圧を印加することで電極で囲まれる空間に捕捉電場を形成し、この捕捉電場によりイオンを振動させつつ閉じ込めるようにしている。これに対し、最近、正弦波電圧の代わりに矩形波電圧をリング電極に印加することでイオンの閉じ込めを行うデジタルイオントラップ(Digital Ion Trap:DIT)が開発されている(非特許文献1など参照)。
試料が生体由来の試料であるような場合、上記のようなイオントラップに捕捉されるイオンを生成するイオン源としてはマトリックス支援レーザ脱離イオン源(Matrix Assisted Laser Desorption Ionization:MALDI)などのレーザ脱離イオン源(Laser Desorption Ionization:LDI)がよく用いられる。
MALDIとDITとを組み合わせたイオントラップ質量分析装置では、レーザ光をパルス的にサンプルに1回照射し、それによりサンプルから発生したイオンをイオントラップに導入する。この際にイオンの捕捉効率を高めるべく、予めイオントラップの内部に不活性ガスを導入しておき、入射して来たイオンを不活性ガスに接触させることでイオンが持つ運動エネルギーを減じさせる、クーリングという操作を行う。そうしてイオンを安定的にイオントラップの内部に捕捉した後に、特定の質量電荷比(m/z)を有するイオンを励振させてイオントラップから排出し、これを検出器で検出する。励振するイオンの質量電荷比を走査することで質量走査を行い、これにより得られる検出信号に基づいて質量スペクトルを作成することができる。
しかしながら、一般的にMALDIでは、1回のレーザ光照射によっては十分な量のイオンが発生しないことが多く、そうした場合には、上記のような1回の質量分析により得られる質量スペクトルデータのS/Nは低い。そこで、従来の装置では、レーザ光照射によるイオンの生成→イオントラップへのイオンの導入→クーリング(イオンの捕捉)→質量分離・検出、というプロセスを任意の回数、例えば10回繰り返し、それぞれ得られた質量プロファイルをコンピュータ上で積算処理することにより、S/Nの高い質量スペクトルデータを得るようにしている。
ところが、上記一連のプロセスの繰り返し回数を増やすほど質量スペクトルデータのS/Nは改善されるものの、測定結果つまり最終的な質量スペクトル、を取得できるまでの測定時間が長くなってしまうという問題がある。例えば、本願発明者らが実験に使用した装置では1回のプロセスで約1.1秒の測定時間を要するため、積算回数を10回とすれば測定時間は約11秒、積算回数を30回とすれば測定時間は約33秒となってしまう。そのため、分析のスループットが低く、分析のコストは高くなる。
古橋、竹下、小河、岩本、「デジタルイオントラップ質量分析装置の開発」、島津評論、島津評論編集部、2006年年3月31日、第62巻、第3・4号、pp.141−151
本発明は上記課題を解決するために成されたものであり、その主な目的は、従来と同等の品質(例えばS/N)の測定データを取得するために測定時間を短縮することができ、分析のスループットの向上、コストの削減に寄与するイオントラップ質量分析装置を提供することにある。
上記課題を解決するために成された本発明は、パルス状にイオンを供給するイオン供給源と、複数の電極で囲まれる空間に形成される電場によりイオンを捕捉するイオントラップと、を具備し、前記イオン供給源より供給されたイオンを前記イオントラップに導入して捕捉し、該イオントラップにより又は該イオントラップから吐き出した後に質量分析するイオントラップ質量分析装置において、
a)前記イオントラップを構成する複数の電極の少なくとも1つに、該イオントラップ内にイオンを捕捉するための交流電圧を印加する電圧印加手段と、
b)前記イオントラップ内にイオンを捕捉した状態で該イオントラップ内に前記イオン供 給源から供給されたイオンを追加的に導入するべく、複数の電極の1つに交流電圧を印加することにより前記イオントラップ内にイオンを捕捉した状態で、前記イオン供給源からパルス状に供給されたイオンが前記イオントラップのイオン導入口に達するときに、前記 交流電圧の振幅を一定として周波数を一時的に上昇させるように、又は、前記交流電圧の 周波数を一定として振幅を一時的に小さくするように、前記電圧印加手段を制御する制御手段と、
を備えることを特徴としている。
上述のように交流電圧の周波数を高くするか又は振幅を小さくすると、イオントラップ内でのポテンシャル井戸が浅くなり、外部からイオントラップ内へ入射しようとするイオンは交流電圧の位相の影響を受けにくくなる。即ち、交流電圧の位相に依らずイオンはイオントラップ内に導入され易くなる。但し、このとき、その直前にイオントラップに捕捉されているイオンに対する拘束力は弱まるため、イオントラップ内に存在するイオンは徐々に発散してゆく。そこで、このようなイオンの発散によるイオン量の減少が実質的にない又は少なくて済む程度に交流電圧を変化させる期間を短くし、既にイオントラップ内に捕捉されているイオンの量の減少を抑えつつ、新たに外部からイオンを追加してイオンの量を増加させる。これにより、イオントラップに捕捉するイオン量を増加させた後に質量分析を行うことができる。
前述したような質量分析の一連のプロセスの中で、イオンの生成やイオントラップへのイオンの導入に要する時間は短く、これに対しクーリングや質量分離・検出に要する時間は長い。特に、イオントラップにおいて質量分析(質量分離)を行う場合には、質量分離・検出に要する時間が測定時間の中で支配的である。したがって、上述のようにイオン供給及びイオントラップ内へのイオン導入を複数回繰り返し、その後に質量分離・検出を行うことにより、1回当たりの測定時間をそれほど増加させずに信号強度を大きくすることができる。
なお、イオン供給源でイオンが生成されたりイオンが出射されたりした時点からそのイオンがイオントラップの導入口に到達するまでのイオンの移動時間は、イオン供給源とイオントラップとの間の距離やその間の電場の強さなどに依存する。また、同一の電場内では質量の小さなイオンほど移動速度が速いため、上記イオンの移動時間はイオンの質量にも依存する。したがって、制御手段は、イオン供給源よりパルス状にイオンが供給されてから上記イオンの移動時間だけ経過した時点で交流電圧が所定時間だけ変化するように、電圧印加手段を制御するとよい。
また本発明に係るイオントラップ質量分析装置では、イオントラップを構成する少なくとも1つの電極に印加する交流電圧を矩形波電圧とする、いわゆるデジタルイオントラップとすることが好ましい。デジタルイオントラップの場合、交流電圧(矩形波電圧)の周波数や振幅の切替えをごく短時間で行うことができるので、イオン導入口に到来したイオンを効率良くイオントラップ内に導入することができるとともに、それまで捕捉していたイオンの散逸も抑えることができる。
本発明に係るイオントラップ質量分析装置の一態様として、前記イオン供給源は、試料にパルス状のレーザ光を照射して該試料又は該試料中の成分をイオン化するレーザイオン源である構成とすることができる。例えば、前記イオン供給源はマトリックス支援レーザ脱離イオン源(MALDI)とすることができる。この構成では、レーザ光の照射タイミングでイオン生成のタイミングが決まるから、制御手段はレーザ駆動パルスの生成位置(時刻)を基準にしてそれから所定時間が経過した後に交流電圧を変化させればよく、タイミングの制御は容易になる。
また本発明に係るイオントラップ質量分析装置の別の態様として、前記イオン供給源は、試料由来のイオンを電場又は磁場の作用により一旦保持し、圧縮してパルス状に出射させるイオン保持部を備える構成としてもよい。こうしたイオン保持部として、例えば特許第3386048号公報に開示された構成を用いることができる。この場合、イオン保持部に蓄えるイオンの発生源(イオン化装置)は特に限定されないが、例えばエレクトロスプレイイオン化法(ESI)、大気圧化学イオン化法(APCI)、大気圧光イオン化法(APPI)などの各種の大気圧イオン化法を利用したものとすることができる。
また本発明に係るイオントラップ質量分析装置では、イオントラップを線形イオントラップとしてもよいが、リング電極と一対のエンドキャップ電極とを有する3次元四重極型のイオントラップとすることが好ましい。
また本発明に係るイオントラップ質量分析装置では、前記イオン供給源から供給されたイオンを前記イオントラップまで輸送するために静電レンズによるイオン輸送手段をさらに備える構成とすることができる。ここで、静電レンズとしては例えばアインツァルレンズ(単電位レンズ)を用いることができる。静電レンズによるイオン輸送手段を用いた場合、イオンがイオン供給源からイオントラップに到達するまでの間のイオンの質量の相違による移動時間の広がりが小さくて済むので、それだけ広い質量範囲のイオンを高い効率で以てイオントラップに導入し易くなる。
また、本発明に係るイオントラップ質量分析装置では、前記イオントラップ内にイオンを捕捉した後に、前記交流電圧の周波数又は振幅を変化させることにより該イオントラップにおいて特定の質量電荷比を有するイオンを選択的に該イオントラップから排出し、その排出されたイオンを検出器により検出する構成とすることができる。このようにイオントラップ自体でイオンの質量分析を行う場合、イオンの生成やイオントラップへのイオンの導入に要する時間に比べて質量分離・検出に要する時間がかなり長いため、本発明を適用した場合の測定時間の短縮の効果が大きい。
また、本発明に係るイオントラップ質量分析装置では、前記イオントラップ内にイオンを捕捉した後に、捕捉されているイオンを該イオントラップから一斉に排出し、その排出されたイオンを質量分析器に導入して質量分析した後に検出器により検出する構成としてもよい。ここで質量分析器及び検出器としては例えば飛行時間型質量分析計を用いることができる。
また、本発明に係るイオントラップ質量分析装置では、同一試料に由来するイオンを追加的にイオントラップ内に導入するのではなく、異なる試料に由来するイオンを追加的にイオントラップ内に効率良く導入することができる。即ち、異なる試料に由来するイオンをイオントラップ内で混合させることができる。これを利用して、質量分析において質量データの精度を上げるために効果的である、内部標準法による質量較正を実現することが可能である。
質量較正を行うための本発明に係るイオントラップ質量分析装置の一実施態様として、
前記イオン供給源は分析対象試料由来のイオンと質量較正用試料由来のイオンとを選択的に供給するものであり、
前記イオン供給源から分析対象試料由来のイオン又は質量較正用試料由来のイオンのいずれか一方を供給して、これを前記イオントラップ内に捕捉した状態で、前記イオン供給源から分析対象試料由来のイオン又は質量較正用試料由来のイオンのいずれか他方を供給して、これを前記イオントラップ内に追加的に導入し、分析対象試料由来のイオンと質量較正用試料由来のイオンとの混合イオンを前記イオントラップにより又は該イオントラップから吐き出した後に質量分析する分析制御手段と、
前記分析制御手段による制御の下に得られた質量スペクトルデータの中で質量較正用試料由来のイオンのデータを用いて質量較正を行うデータ処理手段と、
をさらに備える構成とすることができる。
この実施態様によるイオントラップ質量分析装置では、例えば、まずイオン供給源により分析対象試料に由来するイオンを供給し、これをイオントラップ内に安定的に捕捉する。その後に、イオン供給源により質量較正用試料に由来するイオンを供給し、上述したように先行して捕捉されているイオンの損失を抑えながら、イオントラップ内に質量較正用試料由来のイオンを追加的に導入する。この追加的なイオンの導入は効率良く行われるため、分析対象試料由来のイオン、質量較正用試料由来のイオンともに、十分な量のイオンをイオントラップ内に捕捉することができる。もちろん、1回のイオン導入でイオン量が不足する場合には、同様の手法で追加的にイオントラップ内へイオンを導入すればよい。こうしてイオントラップ内で混合されたイオンを質量分析に供することで、両イオンのピークが現れた質量スペクトルを得ることができ、データ処理手段では内部標準法による精度の高い質量較正が行える。
この場合、イオン供給源において分析対象試料由来のイオンの生成と質量較正用試料由来のイオンの生成とは異なるタイミングで行うことができる。換言すれば同時生成ではないので、分析対象試料と質量較正用試料との混合試料のイオン化を行う必要はなく、またイオン化条件も独立に設定可能である。
具体的に上記イオン供給源は、例えば、分析対象試料と質量較正用試料とを異なる位置に有する試料プレートと、試料にパルス状のレーザ光を照射して該試料中の成分をイオン化するレーザ光照射手段と、該レーザ照射手段によるレーザ光照射位置に分析対象試料と質量較正用試料とを選択的に位置させるべく前記試料プレートを移動させる移動手段と、を含む構成とすることができ、これにはマトリックス支援レーザ脱離イオン源が含まれる。
通常の内部標準法では分析対象試料と質量較正用試料とを混ぜた混合試料を用意する必要があるのに対し、上記実施態様による手法では分析対象試料と質量較正用試料とを別々に用意すればよく、試料調製に関しては外部標準法と同様の手間で済む。また、それぞれの試料に合わせて最適な溶媒やマトリックスを選択できるので、その点でも試料調製作業の煩雑さを解消でき、イオン発生量も増やすことができる。さらにまた、両試料のイオン化を異なるタイミングで行うので、一方のイオンが多量に発生する場合に、他方のイオンが発生しにくくなるという「イオン化競合」の問題もない。これにより、試料の調製が容易で簡単になり、しかも各試料のイオン化も良好に、つまり高い効率で以て行うことができる。
上述のように試料以外のイオン化条件も試料毎に最適化することができるから、レーザ光照射手段は、分析対象試料をイオン化するときと質量較正用試料をイオン化するときとでレーザ光強度を変化させるようにするとよい。
また上記実施態様によるイオントラップ質量分析装置は、分析対象試料から生成されるイオンをそのまま質量分析するのではなく、そうしたイオンを1乃至複数回開裂させ、それにより生成されるプロダクトイオンの質量分析を行う、MS/MS分析やMSn分析にも適用できる。
即ち、上記実施態様によるイオントラップ質量分析装置では、イオントラップ内に捕捉したイオンのうちの特定の質量を持つイオンを残し他のイオンをイオントラップ内から除去するように前記イオントラップを構成する複数の電極の少なくとも1つに電圧を印加するイオン選別手段と、前記イオントラップ内に捕捉したイオンの開裂を促進させる開裂促進手段と、をさらに備え、
分析対象試料由来のイオンを先行して前記イオントラップ内に捕捉し、前記イオン選別手段により特定の質量を持つイオンを該イオントラップ内に残した後に、前記開裂促進手段によりその残したイオンの開裂を促進し、その後に、質量較正用試料由来のイオンを前記イオントラップ内に追加的に導入する構成とすることができる。
或いは、上記実施態様によるイオントラップ質量分析装置では、イオントラップ内に捕捉したイオンのうちの特定の質量を持つイオンを残し他のイオンをイオントラップ内から除去するように前記イオントラップを構成する複数の電極の少なくとも1つに電圧を印加するイオン選別手段をさらに備え、
分析対象試料由来のイオンを先行して前記イオントラップ内に捕捉し、前記イオン選別手段により特定の質量を持つイオンを該イオントラップ内に残した後に、質量較正用試料由来のイオンを前記イオントラップ内に追加的に導入する構成としてもよい。
こうした構成によれば、MS/MS分析やMSn分析で得られる質量スペクトルに現れるイオンピークの質量も、内部標準法による質量較正の下での高い精度で算出することができる。
本発明に係るイオントラップ質量分析装置によれば、イオントラップにイオンを捕捉した状態でさらに新たに生成したイオンをそのイオントラップ内に追加して導入することができる。そのため、イオントラップ内に捕捉するイオンの量を増加させた後に質量分離・検出を行うことができ、従来よりも、高い信号強度で目的イオンを検出することができる。それにより、従来のように質量分析を繰り返してその結果を積算しなくても、或いはそうした質量分析の繰り返しと積算の回数を減らしても、十分に高いS/Nの質量スペクトルを作成することができる。また、同程度のS/Nの質量スペクトルを作成するために必要な測定時間を従来よりも大幅に削減することができ、分析のスループットを向上させることができるとともに、1つの試料の分析に要するコストを削減することができる。
また、前述のように異なる質量のイオンは同一時刻にイオン供給源を出発してもイオン導入口には時間的にずれて到達するため、イオントラップ内へイオンを受け容れ可能な時間幅が短いと導入可能なイオンの質量幅が狭くなる。これに対し、本発明に係るイオントラップ質量分析装置では、イオンを受け容れ可能な時間幅を比較的広くすることができる。例えば後述する本願発明者が行ったシミュレーション計算の条件では、この時間幅を30[μs]程度まで広げても、それまでに捕捉していたイオンを殆ど減少させずに済む。この30[μs]という時間幅は例えば交流電圧の周波数が500[kHz]である場合には15周期分に相当し、かなり広いと言え、十分に広い質量範囲のイオンをイオントラップに追加導入するのに有効である。
また本発明に係るイオントラップ質量分析装置を質量較正に利用した実施態様によれば、一般的な内部標準法のための試料調製の煩雑さやイオン生成上の問題を回避しつつ、内部標準法と同等の高い質量精度を達成することができる。また、一般的な質量分析だけでなく、MS/MS分析やMSn分析においても、実質的に内部標準法と同様の高い精度の質量較正を行うことが可能である。
本発明の第1実施例によるMALDI−DIT−MSの全体構成図。 質量分析のために実行される一連の処理の手順を示すフローチャート。 第1実施例のMALDI−DIT−MSにおけるイオンの追加導入を行う際の要部の波形図及び動作を示す図。 3次元四重極イオントラップの基本的な構成を示す図。 マチウ方程式の解の安定条件を説明するための図。 第1実施例のMALDI−DIT−MSにおけるイオン追加導入の効果を検証するためのシミュレーション結果を示す図。 第1実施例のMALDI−DIT−MSにおけるイオン追加導入の効果を検証するためのシミュレーション結果を示す図。 第1実施例のMALDI−DIT−MSにおけるイオン追加導入の効果を検証するための実験結果を示す図。 本発明の第2実施例によるMALDI−DIT−MSの全体構成図。 第2実施例によるMALDI−DIT−MSにおいて実行される典型的な質量分析の処理の手順を示すフローチャート。 実測により得られる質量スペクトル。 実測データに基づく質量較正後の質量誤差の計算結果を示す図。
符号の説明
1…サンプルプレート
2…サンプル
2A…分析対象試料
2B…質量較正用試料
3…レーザ照射部
4…反射鏡
13…アパーチャ
14…アインツェルレンズ
20…イオントラップ
21…リング電極
22…入口側エンドキャップ電極
23…出口側エンドキャップ電極
24…捕捉領域
25…イオン導入口
26…イオン排出口
27…入口側電場補正用電極
28…引き出し電極
29…クーリングガス供給部
30…イオン検出器
31…コンバージョンダイノード
32…二次電子増倍管
40…制御部
42…捕捉電圧発生部
43…補助電圧発生部
44…データ処理部
51…試料台
52…試料台駆動部
53…CIDガス供給部
まず、このイオントラップ質量分析装置におけるイオン追加導入の原理を説明する。いま、図4に示すように円筒座標系(r,Z)において典型的な3次元四重極イオントラップを考える。即ち、イオントラップ20は、内周面が回転1葉双曲面形状を有する1個の円環状のリング電極21と、それを挟むように対向して設けられた、内周面が回転2葉双曲面形状を有する一対のエンドキャップ電極22、23とから成り、電極21、22、23で囲まれた空間が捕捉領域24となる。図示するように、リング電極21に捕捉用の高周波(RF)電圧(以下単に「RF電圧」という)としてU−VcosΩtなる電圧が印加される場合を考える。
上記RF電圧が印加されているときに捕捉領域24に形成される四重極電場における各種イオンの運動は、Z方向、r方向について次の(1)及び(2)式で示す独立の運動方程式で記述することができる。
2r/dt2+(z/mr0 2)(U−VcosΩt)r=0 …(1)
2Z/dt2+(2z/mr0 2)(U−VcosΩt)Z=0 …(2)
なお、mはイオンの質量、zはイオンの電荷、r0はリング電極21の内接半径である。いま、az,ar,qz,qrを(3)及び(4)式のように定義すると、
z=−2ar=−8U/[(m/z)r0 2 Ω2] …(3)
z=−2qr=4V/[(m/z)r0 2 Ω2] …(4)
上記運動方程式(1)及び(2)式は、次の(5)及び(6)式のマチウ(Mathieu)方程式の形で表すことができる。
2r/dζ2+(ar−2qr・cos2ζ)r=0 …(5)
2Z/dζ2+(az−2qz・cos2ζ)Z=0 …(6)
但し、ζ=(Ωt)/2
このマチウ方程式の解の性質は、マチウパラメータaz,qzを用いて表すことができる。図5はこのマチウ方程式の解の安定条件を説明するための図であり、縦軸がaz、横軸がqzである。図5に示すaz−qz面において実線で囲まれた領域が上記方程式の安定解となる。即ち、上記マチウパラメータaz,qzはイオンの質量電荷比m/zによって定まり、これらの値の組(az,qz)が特定の範囲に存在する場合に、このイオンは特定の周波数で振動を繰り返し捕捉領域24に捕捉される。具体的には、図5中で実線で囲まれた安定領域がイオンが捕捉領域24に安定して存在できる範囲であり、その外側がイオンが発散してしまう不安定領域である。
デジタルイオントラップの場合には上記RF電圧の代わりに矩形波電圧を印加するわけであるが、基本的に上記の関係がそのまま利用できることはよく知られている(例えば上記非特許文献1など参照)。この場合、矩形波電圧のローレベル電圧をV2、ハイレベル電圧をV1とし、デューティ比が0.5であるとすると、
V=(1/2)(V1−V2) …(7)
U=(1/2)V1+(1/2)V2 …(8)
である。つまりVは矩形波電圧の振幅である。(4)式から、マチウパラメータqzは矩形波電圧の振幅に比例し、周波数に反比例することが分かる。したがって、周波数を高くするか又は振幅を小さくすると、マチウパラメータqzは低くなる。
一方、捕捉領域24において四重極電場により形成される擬似的なポテンシャル井戸の深さは、
(π2/48)・V・qz …(9)
である。したがって、マチウパラメータqzが低くなると、ポテンシャル井戸も浅くなる。
いま、イオントラップ20の捕捉領域24に安定的に捕捉されているイオンは、例えば図5中にPで示すように安定領域内の中央に近い位置にある。この状態から、リング電極21に印加する矩形波電圧の周波数を上げる又は振幅を小さくすると、マチウパラメータqzが低くなり捕捉領域24のポテンシャル井戸も浅くなる。ポテンシャル井戸が浅いと、外部からこのイオントラップ20に入射しようとするイオンが高周波電場の位相の影響を受けにくくなるため、高周波電場の位相に関係なくイオントラップ20内に入り易くなる。これにより、リング電極21に矩形波電圧が印加されている状態でもイオントラップ20内に新たなイオンを追加導入し易くなる。
但し、マチウパラメータqzが低くなると、イオンの存在位置は例えば図5中のPからP’の方向に移動する。つまり、安定領域の境界に近くなり、或いは一部は不安定領域に入るために、それ以前に捕捉領域24に捕捉されていたイオンに対する拘束は弱くなり、次第に周囲に発散し始める。そのため、マチウパラメータqzを低くする時間を短時間に抑えることで、捕捉領域24に捕捉しているイオンが安定軌道を外れて排除される前にqzを元の高い値に戻し、捕捉領域24内のイオンの量を減少させずにパケット状のイオンを新たに捕捉領域24に追加するようにする。
[第1実施例]
本発明の一実施例(第1実施例)であるマトリックス支援レーザ脱離イオン化デジタルイオントラップ型質量分析装置(MALDI−DIT−MS)について、構成と動作とを詳細に説明する。図1は本実施例によるMALDI−DIT−MSの全体構成図である。
イオントラップ20は上述した3次元四重極型のイオントラップであって、1個の円環状のリング電極21と、それを挟むように(図1では上下に)対向して設けられた一対のエンドキャップ電極22、23とから成る。入口側エンドキャップ電極22のほぼ中央にはイオン導入口25が穿設され、その外側にはイオン導入口25付近の電場の乱れを補正するための入口側電場補正用電極27が配設されている。一方、出口側エンドキャップ電極23のほぼ中央にはイオン導入口25とほぼ一直線上にイオン排出口26が穿設され、その外側には後述のイオン検出器30に向けてイオンを引き出すための引き出し電極28が配設されている。また、後述のようにイオントラップ20内でイオンをクーリングするためのクーリングガス(一般的には不活性ガス)を供給するクーリングガス供給部29が設けられている。
イオンを生成するためのMALDIイオン源(本発明におけるイオン供給源に相当)は、サンプルプレート1上に用意されたサンプル2に照射するレーザ光を発するレーザ照射部3と、該レーザ光を反射するとともにサンプル2に集光する反射鏡4と、を含む。サンプル2の観察像は反射鏡10を介してCCDカメラ11に導入され、CCDカメラ11で形成されるサンプル観察像がモニタ12の画面上に表示される。サンプルプレート1とイオントラップ20との間には、拡散するイオンを遮蔽するアパーチャ13と、イオンをイオントラップ20まで輸送するためのイオン輸送光学系としてのアインツェルレンズ14が配設されている。もちろん、アインツェルレンズ14以外の各種の構成のイオン輸送光学系、特に静電レンズ光学系を用いることができる。
一方、イオン排出口26の外側には、導入されたイオンを電子に変換するコンバージョンダイノード31と変換された電子を増倍して検出する二次電子増倍管32とを含むイオン検出器30が配設されている。このイオン検出器30により正イオン、負イオンの両方の検出が可能となっており、イオン検出器30による検出信号はデータ処理部44に入力されてデジタル値に変換された上でデータ処理が実行される。
イオントラップ20のリング電極21には捕捉電圧発生部(本発明における電圧印加手段に相当)42から所定周波数の矩形波電圧が印加されるようになっており、一対のエンドキャップ電極22、23にはそれぞれ補助電圧発生部43より所定の電圧(直流電圧又は高周波電圧)が印加されるようになっている。捕捉電圧発生部42は、後述するように矩形波電圧を発生するために、例えば、所定の正の電圧を発生する正電圧発生部と、所定の負の電圧を発生する負電圧発生部と、正電圧と負電圧とを高速に切り替えることにより矩形波電圧を発生するスイッチング部と、を含む構成とすることができる。CPU等を含んで構成される制御部(本発明における制御手段に相当)40は、捕捉電圧発生部42、補助電圧発生部43及びレーザ照射部3の動作を制御する。
次に、本実施例によるMALDI−DIT−MSの特徴的な動作を中心に質量分析の手順について説明する。図2はイオンを質量分析するために実行される一連の処理(操作)の手順を示すフローチャートである。
図2(a)は従来と同様の、イオン追加導入を行わない場合の質量分析の手順である。即ち、まず制御部40の制御の下にレーザ照射部3から短時間レーザ光を出射しサンプル2に当てる。レーザ光照射によりサンプル2中のマトリックスは急速に加熱され、目的成分を伴って気化する。この際に目的成分はイオン化される(ステップS1)。発生したイオンはアパーチャ13を通過し、アインツェルレンズ14により形成される静電場によって収束されつつイオントラップ20に向かって送られ、イオン導入口25を経てイオントラップ20内に導入される(ステップS2)。レーザ光の照射時間はごく短時間であるためイオンの生成時間も短い。そのため、発生したイオンはパケット状にイオン導入口25に到達する。
上記イオン導入時にはリング電極21へ捕捉電圧が印加されておらず、入口側エンドキャップ電極22は電圧ゼロに維持され、出口側エンドキャップ電極23には分析対象のイオンと同極性の適宜の直流電圧が印加される。これにより、イオントラップ20内に入射したイオンはイオン排出口26付近まで進むと、出口側エンドキャップ電極23に印加されている直流電圧により形成される電場により跳ね返されて捕捉領域24の方向に戻る。
上記イオン導入に先立って、イオントラップ20の内部にはクーリングガス供給部29によりヘリウム等のクーリングガスが導入される。前述のようにイオンがイオントラップ20の内部に導入された直後に、制御部40の制御の下に捕捉電圧発生部42は所定の矩形波電圧を捕捉電圧としてリング電極21に印加し始める。矩形波電圧の印加により、イオントラップ20の内部にはイオンを振動させながら捕捉する捕捉電場が形成される。導入されたイオンは当初、比較的大きな運動エネルギーを持つが、イオントラップ20内に存在するクーリングガスに衝突して運動エネルギーは次第に奪われ(つまりクーリングが行われ)、捕捉電場に捕捉され易くなる(ステップS3)。
適宜の時間(例えば100[ms]程度)、クーリングを行って捕捉領域24にイオンを安定的に捕捉した後に、上記矩形波電圧をリング電極21に印加したまま補助電圧発生部43により所定周波数の高周波信号をエンドキャップ電極22、23に印加することで、特定の質量を有するイオンを共鳴励起(励振)させる。高周波信号として例えばリング電極21に印加している矩形波電圧の分周信号を用いることができる。励振された特定質量を持つイオンはイオン排出口26から吐き出され、イオン検出器30に導入されて検出される。これによりイオンの質量分離及び検出が行われる(ステップS4)。
リング電極21に印加する矩形波電圧の周波数及びエンドキャップ電極22、23に印加する高周波信号の周波数を適宜走査することで、イオン排出口26を通してイオントラップ20から吐き出すイオンの質量を走査し、これを順番にイオン検出器30で検出することにより、データ処理部44で質量スペクトルを作成することができる。
上記手順では、1回のレーザ光照射によりサンプル2から発生するイオンをイオントラップ20の捕捉領域24に捕捉し、これを質量分離・検出に供するので、必ずしも目的イオンの量が十分には多くなく信号強度が低い場合がある。そこで、そうした場合に、本実施例によるMALDI−DIT−MSでは、図2(b)に示す手順で質量分析を実行することが可能である。
ステップS1A〜S3Aは上記ステップS1〜S3と同じであり、これによりイオントラップ20の捕捉領域24にイオンを捕捉する。次に、イオントラップ20の捕捉領域24にイオンを捕捉した状態で再びサンプル2にレーザ光を短時間照射することでイオンを生成させ(ステップS1B)、発生したイオンをイオン導入口25を通してイオントラップ20内に追加的に導入する(ステップS2B)。そして、追加導入されたイオンに対するクーリングを行い(ステップS3B)、2回分のイオン導入により捕捉領域24に安定的に捕捉されているイオンを質量分離・検出する(ステップS4)。
図2(b)はイオンの追加導入を1回だけ行う例であるが、ステップS1B〜S3Bの実行を繰り返すことで、任意の回数だけイオントラップ20へのイオンの追加導入を行うことができる。
次に、イオントラップ20内へイオンを追加導入する際の特徴的な制御について、図3により説明する。図3はイオンの追加導入を行う際の要部の波形図及び動作を示す図である。捕捉電圧として周波数がf1である矩形波電圧をリング電極21に印加することにより目的イオンを捕捉領域24に安定的に捕捉している状態で、制御部40はレーザ照射部3に対し短い時間幅のレーザ駆動パルスを送る。レーザ照射部3はこの駆動パルスに応じて短時間だけレーザ光を出射し、サンプル2からイオンが発生する。イオンの発生時間は同時にイオンが発生したものとみなせるほど短い。発生したイオンはサンプルプレート1近傍から上方に引き出され、アインツェルレンズ14により輸送されてイオン導入口25に向かって進行する。
制御部40はレーザ駆動パルスを発生してから、所定の遅延時間t1だけ経過した時点で矩形波電圧の周波数をf1よりも高い(例えば4倍)のf2に変更するように捕捉電圧発生部42を制御する。このとき振幅は一定である。ここで遅延時間t1は、サンプルプレート1近傍を出発したパケット状のイオンがイオン導入口25に到達するまでの移動時間に相当する値に決めればよい。この移動時間は、サンプルプレート1からイオン導入口25までの距離、アインツェルレンズ14の構造やそれに印加される電圧などに依存する。また、イオン生成が全く同時刻であったとしても、質量の小さなイオンほど早くイオン導入口25に到達するから、上記移動時間は分析対象のイオンの質量にも依存する。そこで、この移動時間を予めシミュレーション計算又は実験的に求めて、制御部40に記憶しておき、これを利用して遅延時間t1を決めるとよい。また分析対象のイオンの質量範囲などに応じて遅延時間t1変更できるようにしておくことが好ましい。
矩形波電圧の周波数の切替えは、図3に示すように瞬時に行われる。矩形波電圧の周波数がf1→f2に高くなると前述のように捕捉領域24における疑似的なポテンシャル井戸が浅くなるため、イオン導入口25に到達したイオンは跳ね返されずにイオントラップ20内に入射する。一方で前述のように捕捉領域24内ではイオンに対する拘束が弱まるためにイオンは発散しようとするが、周波数がf2に維持される時間t2はイオンが発散して電極21、22、23に衝突したりイオン排出口26などから排出されたりして消失してしまう時間よりも短く設定されている。その時間t2が経過すると、制御部40はすぐに周波数を元のf1に戻すように捕捉電圧発生部42を制御する。したがって、捕捉領域24から発散しようとしたイオンは再び電場により引き戻され、さらに新たに入射して来たイオンも捕捉領域24に捕捉されるので、イオン量はそれ以前よりも増加する。
以上のようにして、本実施例のMALDI−DIT−MSでは、イオントラップ20内に1乃至複数回イオンを追加導入することにより捕捉されるイオン量を増加させ、その後に質量分離・検出を行うことで、高い信号強度で目的イオンを検出することができる。
なお、上記説明では、矩形波電圧の周波数を一時的に上げることによりマチウパラメータqzを低くしていたが、その代わりに矩形波電圧の振幅を一時的に小さくすることによりマチウパラメータqzを下げてもよい。
上記実施例によるMALDI−DIT−MSのイオン捕捉効率を検証するために行ったシミュレーション計算の結果を説明する。
図6は、捕捉電圧としてV=±500[V]、f=250[kHz]の対称矩形波電圧をリング電極に印加する場合のシミュレーション結果であり、横軸はイオンの質量、縦軸はイオン個数を示している。図6(a)に示すように、イオン供給源では、質量1000〜4000[Da]の範囲で500[Da]毎に100個ずつのイオンが同時刻(t=0[μs])に生成するものとした。
図6(b)は、レーザ駆動パルス発生時点(t=0)に周波数を1[MHz]にしてこれを20[μs]維持し、それから周波数を250[kHz]に変更した場合に、t=250[μs]の時点でイオントラップ内に残るイオンの個数をシミュレーションした結果である。他の条件としては、入口側エンドキャップ電極22への印加電圧はゼロ、出口側エンドキャップ電極23への印加電圧は、t=0[μs]において10[V]で矩形波電圧の周波数の切替え時点から10[μs]後に10[V]→0[V]に切り替えた。この結果を見ると1500〜4000[Da]の質量範囲で100%に近い高い効率でイオンが捕捉されていることが分かる。即ち、イオンの追加導入の効率が高く、且つ追加導入可能なイオンの質量範囲も広いことが明らかである。
マチウパラメータqzを低くした場合、捕捉領域24のポテンシャル井戸が浅くなるために大きなエネルギーを以て入射して来たイオンは捕捉できない。またイオンを減速するための電圧を出口側エンドキャップ電極23に印加するために、イオンは電位の低い側へ引き寄せられる。そこで、V=500[V]、f=500[kHz]の矩形波電圧を印加してクーリングを100[ms]行った質量1500[Da]、3000個のイオンについて、矩形波電圧のfを1[MHz]に変化させ、且つエンドキャップ電極23に10[V]の電圧を印加したときの、時間経過とイオントラップ20内に残るイオン個数との関係をシミュレーションにより求めた。図7はこのシミュレーション結果を示す図である。
この結果では、30[μs]を超えるまでは全てのイオンがイオントラップ20内に残り、その後、イオンは徐々に減少するが、約半数のイオンが200[μs]までイオントラップ20に残っていることが分かる。したがって、周波数を一時的に上げる期間が30[μs]以内であれば、それ以前に捕捉しているイオンをほぼ完全に維持できることになる。一方、イオン導入口25に到達したイオンがイオン導入口25を経てイオントラップ20内に入って捕捉されるまでに要する時間はたかだか20[μs]程度である。したがって、一時的な周波数上昇によるマチウパラメータqzの低下を行う時間を20〜30[μs]程度に設定しておけば、既に捕捉しているイオンの数を殆ど減らさずに、新たに生成されたイオンを効率良くイオントラップ20に取り込んでイオンの量を増加させることができる、ということがシミュレーションでも確認できた。
上述のようなイオントラップ20へのイオンの追加導入は1回だけでなく2回以上の任意の回数だけ繰り返すことができ、その繰り返し回数に応じて質量分析に供するイオンの量を増加させることができる。このイオン追加導入の回数による信号強度増加の効果を確認するための実験結果を図8により説明する。
サンプルはアンジオテンシン(Angiotensin)II(m/z:1046)、マトリックスはα-シアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸(CHCA)である。まず、最初にイオントラップ20にイオンを導入する際にはリング電極21に捕捉電圧を印加せず、レーザ光照射によってサンプル2から発生させたイオンをイオントラップ20に導入した直後に、エンドキャップ電極22、23にイオンと同極性の直流電圧を印加してイオンを閉じ込める。それから僅かに遅れて捕捉電圧(矩形波電圧)をリング電極21に印加し始め、イオントラップ20内に閉じ込められたイオンを安定した軌道に沿って運動させる。
イオントラップ20にイオンを追加導入する際には、レーザ光照射によってサンプル2から発生したイオンがイオン導入口25に達した瞬間に矩形波電圧の周波数を上げ、それから約20[μs]後に周波数を元に戻す。追加的に導入されたイオンは捕捉領域24でクーリングガスに接触させることで十分なクーリングを行い、安定的に捕捉する。
この実験では、イオントラップ20へのイオン追加導入なし(つまり最初の1回のみのイオン導入)、1回イオン追加導入、2回イオン追加導入を行い、それぞれのシーケンスを10回繰り返し、それぞれ検出された質量プロファイルを10回分積算して最終的な質量スペクトルを作成した。この結果を図8に示す。図8中には質量のピークの信号強度を数値で示している。このように追加イオン導入回数を増加させることで信号強度を増加してS/Nを改善できることが実験上でも確認できた。
また、前述のようにイオントラップ20内にイオンを追加導入することで、測定時間が長引くことを抑えながら信号強度の増加を図ることができる。即ち、イオンの追加導入を行うために図2に示したように、イオン生成→イオン導入→クーリング、という操作が必要になるが、これら一連の操作はその後の質量分析に要する時間に比べると短い。そのため、本願発明者が行った上記実験では、イオン追加導入なし、1回イオン追加導入、2回イオン追加導入のための測定時間は、それぞれ11.1秒、12.2秒及び13.3秒であった。つまり、殆ど測定時間の僅かな増加で上述のように大きな信号強度増加の効果を得ることができることが分かる。
[第2実施例]
次に、本発明の他の実施例(第2実施例)として、上述したイオントラップへのイオンの追加導入の機能を質量較正に利用したMALDI−DIT−MSについて説明する。一般的に質量分析装置において高い質量精度のデータを得るためには、質量電荷比が既知である標準試料を用いた質量較正が不可欠である。従来のMALDI−IT−MSにおける質量較正は、イオントラップを搭載しない、例えばMALDI−TOFMSと同様の手法で行われている。一般的にMALDI−TOFMSで質量較正を行う場合、外部標準法と内部標準法という2つの方法がある。
外部標準法による質量較正を行う場合、分析担当者は、サンプルプレート上の分析対象試料(アナライト)とは別の位置に、質量電荷比が既知である化合物を含む質量較正用試料(キャリブラント)を測定前に塗布しておく。そして、まず質量較正用試料の測定を実行し、その測定結果を用いて装置の質量較正を行った後に分析対象試料の測定を行う。或いは、分析対象試料の測定後に質量較正用試料の測定を行い、全ての測定後に質量較正用試料の測定により得られたデータを用いて質量較正式を導出し、その式を用いて事後処理的に分析対象試料の質量分析データの質量較正を行うこともできる。さらに、より正確をきすために、分析対象試料の測定前及び測定後にそれぞれ質量較正用試料の測定を実行し、それにより得られたデータを用いて質量較正を行う場合もある。こうした質量較正のための一連の測定や演算処理は、装置付属の専用ソフトウエア上で行うことができるようになっている場合が多い。
一方、内部標準法による質量較正を行う場合、分析担当者は、分析対象試料に予め質量較正用試料を混ぜ込んだ試料を用意しておく。その上で、上記混合試料の測定を行い、得られたデータ(質量スペクトル)上の質量較正用試料由来のピークを用いてデータの質量較正を行い、その較正後、分析対象試料由来のピークの質量を読み取る。
一般に、質量精度の高い較正を行うという点では、外部標準法よりも内部標準法のほうが望ましい。内部標準法を実施するためには、混合試料を測定して得られた質量スペクトル上で、それぞれに由来するピークが全て十分な強度及び分解能で含まれていなければならない。ところが、実際には、一方のイオンが多量に発生する場合、他方のイオンが発生しにくくなるという「イオン化競合」が頻繁に起こるため、上記のような適切な質量スペクトルが得られないことが多い。これを回避するには、分析対象試料と質量較正用試料との混合比を最適化することが望ましいが、分析対象試料の種類毎に最適な混合比は相違するため、このような最適化の作業にはかなり手間がかかる。そのため試料の数が多く、高いスループットを望む場合には、実質的不可能である。
また、分析対象試料と質量較正用試料とで最適な溶媒や最適なマトリックスが相違する場合には、混合試料を調製すること自体が困難であるため、内部標準法を採用できない。そのため、外部標準法を用いざるをえず、質量較正の精度が落ちることになる。
また、MALDI−IT−MSで、MS/MS分析やMSn分析を行う場合には、プリカーサイオン選別の過程で、イオントラップからプリカーサイオン以外のイオンが排除されるため、内部標準法を採用することができない。したがって、この場合にも、外部標準法を用いざるをえず、質量較正の精度が落ちることになる。
こうした問題に対し、上述したようなイオン追加導入の技術を利用して、分析対象試料と質量較正用試料との混合試料を調製することなく内部標準法に則った質量較正を実現することができる。図9はこの第2実施例によるMALDI−DIT−MSの全体構成図、図10は第2実施例によるMALDI−DIT−MSにおいて実行される典型的な質量分析の処理の手順を示すフローチャートである。図9において、図1に示した第1実施例によるMALDI−DIT−MSと同一の構成要素には同一の符号を付して説明を略す。
この第2実施例のMALDI−DIT−MSでは、サンプルプレート1上の異なる位置に分析対象試料2Aと質量較正用試料2Bとが用意されている。このサンプルプレート1を保持する試料台51は、モータなどの駆動源を含む試料台駆動部52により移動可能であり、それによりレーザ光照射位置に分析対象試料2Aと質量較正用試料2Bとを選択的に位置させることができる。分析対象試料2Aと質量較正用試料2Bとはそれぞれ独立に調製すればよいから、溶媒やマトリックスはそれぞれに適したものを選択すればよく、外部標準法による質量較正を行う場合と全く同じ手法で調製することができる。また、CIDガス供給部53は、イオントラップ20内でイオンを衝突誘起解離(CID)により開裂させるために、アルゴンなどのCIDガスを導入するものである。
分析が開始されると、制御部40は試料台駆動部52によりレーザ照射位置に分析対象試料2Aを位置させ、レーザ照射部3から短時間レーザ光を出射し分析対象試料2Aに当てる。これにより、分析対象試料2A中の目的成分はイオン化される(ステップS11)。なお、レーザ光照射の直前に、イオントラップ20の内部にはクーリングガス供給部29によりクーリングガスが導入される。レーザ光照射に伴って発生したイオンは、アパーチャ13、アインツェルレンズ14を経て、イオン導入口25を通ってイオントラップ20内に導入される(ステップS12)。このイオン導入時にはリング電極21へ捕捉電圧を印加せず、入口側エンドキャップ電極22には分析対象のイオンと逆極性の適宜の直流電圧が印加され、出口側エンドキャップ電極23には分析対象のイオンと同極性の適宜の直流電圧が印加される。
イオンがイオントラップ20の内部に導入された直後に、制御部40の制御の下に補助電圧発生部43は、入口側エンドキャップ電極22に分析対象のイオンと同極性の直流電圧を印加し、導入されたイオンをイオントラップ20内に閉じ込める。それから僅かに遅れて、捕捉電圧発生部42は所定の矩形波電圧を捕捉電圧としてリング電極21に印加し始める。これにより、イオントラップ20内に閉じ込めたイオンを捕捉電場によって安定した軌道で運動させる。捕捉されたイオンはイオントラップ20内に予め導入されたクーリングガスとの衝突により運動エネルギーを失い、軌道が小さくなって確実に捕捉される(ステップS13)。
次に、イオントラップ20に捕捉された分析対象試料2A由来の各種のイオンの中で特定の質量電荷比を有するイオンをプリカーサイオンとして選択的に残すために、それ以外のイオンをイオントラップ20から排出する(ステップS14)。このようなプリカーサイオン選別を行う手法は、従来から知られている手法、例えば米国特許第6,900,433号公報に記載の方法や特開2003-16991号公報に記載の方法などを利用することができる。
一例を挙げると、一対のエンドキャップ電極22、23間に逆位相の高周波電圧を印加すると、その高周波電圧の周波数と一致する固有周波数(振動数)を有するイオンが共鳴して振動する。その共鳴振動の振幅は次第に大きくなり、やがてそのイオンはイオントラップ20内から飛び出したり電極内面に衝突したりして排除される。共鳴振動するイオンの質量はその固有周波数と所定の関係を有する。したがって、或る質量を持つ不要なイオンを排除するには、そのイオンの質量に応じた周波数の高周波電圧をエンドキャップ電極22、23に印加すればよい。
或いは、残したいイオンの質量に対応した周波数にノッチを持つ周波数スペクトルを有する広帯域の交流電圧をエンドキャップ電極22、23に印加する。すると、そのノッチ周波数に応じた質量電荷比を有するイオンのみが共鳴振動せずにイオントラップ20内に留まり、それ以外のイオンはイオントラップ20内から排除される。上記のようなノッチを有する広帯域電圧の生成方法としては、多数の周波数の相違する正弦波電圧を合成する、ホワイトノイズにノッチを形成する、といった方法がある。
プリカーサ選別の後、イオントラップ20内に残したプリカーサイオンを開裂させるべく、CIDガス供給部53よりアルゴンなどのCID(衝突誘起解離)ガスをイオントラップ20内へ供給し、その直後に、補助電圧発生部43はエンドキャップ電極22、23にプリカーサイオンの質量で決まる永年振動数と等しい周波数の励起電圧を印加する。それにより、プリカーサイオンは振動し、CIDガスに衝突することで開裂して各種のプロダクトイオンを生成する(ステップS15)。
さらに上記開裂操作の後、生成されたプロダクトイオンの軌道を小さくして安定化するために、クーリングガス供給部29からイオントラップ20内にクーリングガスを導入し、プロダクトイオンをクーリングする(ステップS16)。
制御部40は上記レーザ光照射によるイオン生成・導入が終わると、試料台駆動部52により、質量較正用試料2Bがレーザ照射位置に来るように試料台51を移動させる。遅くてもステップS16のクーリング終了時点までには、質量較正用試料2Bがレーザ照射位置にセットされる。
クーリングの後、制御部40は先の分析対象試料2Aのイオン化時と同様に、レーザ照射部3から短時間レーザ光を出射し質量較正用試料2Bに当てる。これにより、質量較正用試料2B中の成分はイオン化される(ステップS17)。なお、レーザ光照射の直前に、イオントラップ20の内部にはクーリングガス供給部29によりクーリングガスが導入される。また制御部40は第1実施例におけるイオン追加導入時と同様に、レーザ駆動パルスを発生してから所定の遅延時間だけ経過した時点で、矩形波電圧の周波数を短時間(例えば20〜30[μs]程度)の間だけ上げるように捕捉電圧発生部42を制御する。すると、レーザ光照射に伴って発生したパケット状のイオンが、アパーチャ13、アインツェルレンズ14を経て、イオン導入口25からイオントラップ20内に導入されようとするタイミングでちょうど捕捉電圧の周波数は高くなる。これにより、既にイオントラップ20内に保持されている分析対象試料2A由来のイオン(主として開裂により生じたプロダクトイオン)の損失を抑えつつ、新たに質量較正用試料2B由来のイオンをイオントラップ20内に効率良く導入して保持することができる(ステップS18)。
その後、追加導入された質量較正用試料2B由来のイオンの軌道を小さくして安定化するために、クーリングガス供給部29からイオントラップ20内にクーリングガスを導入し、追加導入されたイオンをクーリングする(ステップS19)。この結果、イオントラップ20内には、分析対象試料2A由来のイオンの中で特定の質量電荷比を持つプリカーサイオンから生成された各種プロダクトイオンと、質量較正用試料2B由来のイオンとが混在した状態で安定的に保持される。
適宜の時間のクーリングの後、第1実施例のステップS4と同様に、リング電極21に印加する矩形波電圧の周波数及びエンドキャップ電極22、23に印加する高周波信号の周波数を適宜走査することで、共鳴励起させるイオンの質量を走査し、それに伴ってイオントラップ20から吐き出されるイオンを順番にイオン検出器30で検出する(ステップS20、S21)。これにより、データ処理部44で所定の質量範囲の質量スペクトルを作成することができる。その質量スペクトルには、分析対象試料2A由来のプロダクトイオン等のピークと質量較正用試料2B由来のイオンのピークとが現れる。質量較正用試料2B由来のイオンは質量が既知であるから、データ処理部44では、質量スペクトル上に現れているピークの中で質量較正用試料2B由来のイオンピークを抽出し、そのイオンピークを用いて質量較正を行う。そして、較正後に、目的とする各種イオンのピークの質量を読み取り、同定などの処理に供する。
即ち、イオントラップ20内で混在する分析対象試料2A由来のイオンと質量較正用試料2B由来のイオンとを同時に測定し、後者の結果を利用して質量較正を行った上で、前者の結果を精度良く求める、という点で、これは内部標準法による質量較正そのものであって、高い質量精度を実現できる。一方で、分析対象試料2Aと質量較正用試料2Bとは予め混合する必要がなく、それぞれ別々に、異なる溶媒と異なるマトリックスを使用して(もちろん同一のものを使用してもよい)調製すればよく、この点だけを捉えれば、外部標準法と同じ簡便性が達成される。つまり、この第2実施例に係る装置で実現される質量較正は、内部標準法による質量精度の高さと外部標準法における試料調製の容易性とを併せ持ったものであると言うことができる。
上記説明では、分析対象試料2Aと質量較正用試料2Bとをそれぞれ1回ずつイオン化しイオントラップ20内に導入しているが、それぞれの試料由来のイオンをイオントラップ20内に追加導入して質量分析に供するイオン量を増加させるようにしてもよい。
また、分析対象試料2A由来のイオンをそのまま観察したい場合には、図10に示したフローチャートでステップS14〜S16の操作を省略すればよい。この場合には、先に質量較正用試料2Bのイオン化及びイオン導入を行って、その後に分析対象試料2Aのイオン化及びイオン追加導入を行うように、順序を入れ替えてもよい。また、上述のように分析対象試料2A由来のイオンの開裂を1回のみ行うのではなく、プリカーサ選別と開裂操作とを複数回繰り返してもよい。
また、分析対象試料2A由来のイオンの中で特定の質量電荷比を持つイオンを選択的に残す操作(ステップS14のプリカーサ選別と同じ操作)を行い、それを開裂させることなく、引き続いて質量較正用試料2Bのイオン化及びイオン追加導入を行うようにしてもよい。
また、一般に、試料の種類によってイオン生成効率は相違するため、分析対象試料2Aのイオン化の際に照射するレーザ光の強度と、質量較正用試料2Bのイオン化の際に照射するレーザ光の強度とは、それぞれ独立に設定できるようにしておくことが好ましい。適切なレーザ光強度は、実際の試料を用いた予備的な実験により決めることができる。
第2実施例のMALDI−DIT−MSを用いたMS/MS分析の実測例を説明する。分析対象試料としてウシ血清アルブミンのトリプシン消化物、質量較正用試料としてポリエチレングリコール(PEG)を用いた。PEGは、広い質量範囲に亘り44[Da]間隔で多数のイオンピークが現れるという、質量較正用試料に適した性質を持つ。なお、マトリックスはいずれの試料に対してもCHCAである。
図11(a)は図10で説明した手順(プリカーサイオンはm/z=1880)で得られた質量スペクトルであり、図中に星印で示したのが質量が既知であるPEG由来のイオンピークである。それ以外が、分析対象試料由来のイオン(主としてプロダクトイオン)ピークである。図11(b)、(c)には、比較対照のために、PEG及び分析対象試料(ウシ血清アルブミンのトリプシン消化物)それぞれを単独で分析して取得した質量スペクトルを示す。
この図11(b)に示したPEGの質量スペクトルデータを利用した外部標準法により、図11(a)中に現れる分析対象成分由来のイオンの質量較正を行った場合における、質量誤差の計算結果が図12(a)である。図12(a)で分かるように、質量誤差のばらつき自体は小さいが、全体的に−0.2[Da]程度シフトしている。一方、図11(a)中に現れるPEG由来のイオンピークを用いた内部標準法により、同じく図11(a)中に現れる分析対象成分由来のイオンの質量較正を行った場合における、質量誤差の計算結果が図12(b)である。この場合には、質量誤差は±0.1[Da]の範囲に収まっており、外部標準法のような−0.2[Da]程度シフトする現象もみられない。これにより、高い精度で質量較正が可能であることが確認できた。
なお、上記実施例は本発明の一例にすぎず、本発明の趣旨の範囲で適宜、変形、追加、修正を行っても本願請求の範囲に包含されることは当然である。

Claims (15)

  1. パルス状にイオンを供給するイオン供給源と、複数の電極で囲まれる空間に形成される電場によりイオンを捕捉するイオントラップと、を具備し、前記イオン供給より供給されたイオンを前記イオントラップに導入して捕捉し、該イオントラップにより又は該イオントラップから吐き出した後に質量分析するイオントラップ質量分析装置において、
    a)前記イオントラップを構成する複数の電極の少なくとも1つに、該イオントラップ内にイオンを捕捉するための交流電圧を印加する電圧印加手段と、
    b)前記イオントラップ内にイオンを捕捉した状態で該イオントラップ内に前記イオン供給源から供給されたイオンを追加的に導入するべく、複数の電極の1つに交流電圧を印加することにより前記イオントラップ内にイオンを捕捉した状態で、前記イオン供給源からパルス状に供給されたイオンが前記イオントラップのイオン導入口に達するときに、前記交流電圧の振幅を一定として周波数を一時的に上昇させるように、又は、前記交流電圧の周波数を一定として振幅を一時的に小さくするように、前記電圧印加手段を制御する制御手段と、
    を備えることを特徴とするイオントラップ質量分析装置。
  2. 請求項1に記載のイオントラップ質量分析装置であって、前記交流電圧は矩形波電圧であることを特徴とするイオントラップ質量分析装置。
  3. 請求項1に記載のイオントラップ質量分析装置であって、前記イオントラップは、リング電極と一対のエンドキャップ電極とを有する3次元四重極イオントラップであることを特徴とするイオントラップ質量分析装置。
  4. 請求項3に記載のイオントラップ質量分析装置であって、前記イオン供給源は、試料にパルス状のレーザ光を照射して該試料又は該試料中の成分をイオン化するレーザイオン源であることを特徴とするイオントラップ質量分析装置。
  5. 請求項に記載のイオントラップ質量分析装置であって、前記イオン供給源はマトリックス支援レーザ脱離イオン源であることを特徴とするイオントラップ質量分析装置。
  6. 請求項5に記載のイオントラップ質量分析装置であって、前記イオン供給源から供給されたイオンを前記イオントラップまで輸送するために静電レンズによるイオン輸送手段をさらに備えることを特徴とするイオントラップ質量分析装置。
  7. 請求項に記載のイオントラップ質量分析装置であって、前記静電レンズはアインツァルレンズ(単電位レンズ)であることを特徴とするイオントラップ質量分析装置。
  8. 請求項1に記載のイオントラップ質量分析装置であって、前記イオントラップ内にイオンを捕捉した後に、前記交流電圧の周波数又は振幅を変化させることにより該イオントラップにおいて特定の質量電荷比を有するイオンを選択的に該イオントラップから排出し、その排出されたイオンを検出器により検出することを特徴とするイオントラップ質量分析装置。
  9. 請求項1に記載のイオントラップ質量分析装置であって、前記イオントラップ内にイオンを捕捉した後に、捕捉されているイオンを該イオントラップから一斉に排出し、その排出されたイオンを質量分析器に導入して質量分析した後に検出器により検出することを特徴とするイオントラップ質量分析装置。
  10. 請求項1に記載のイオントラップ質量分析装置であって、
    前記イオン供給源は分析対象試料由来のイオンと質量較正用試料由来のイオンとを選択的に供給するものであり、
    前記イオン供給源により分析対象試料由来のイオン又は質量較正用試料由来のイオンのいずれか一方を供給し、これを前記イオントラップ内に捕捉した状態で、前記イオン供給源により分析対象試料由来のイオン又は質量較正用試料由来のイオンのいずれか他方を供給して、これを前記イオントラップ内に追加的に導入し、分析対象試料由来のイオンと質量較正用試料由来のイオンとの混合イオンを前記イオントラップにより又は該イオントラップから吐き出した後に質量分析する分析制御手段と、
    前記分析制御手段による制御の下に得られた質量スペクトルデータの中で質量較正用試料由来のイオンのデータを用いて質量較正を行うデータ処理手段と、
    をさらに備えることを特徴とするイオントラップ質量分析装置。
  11. 請求項10に記載のイオントラップ質量分析装置であって、
    前記イオン供給源は、分析対象試料と質量較正用試料とを異なる位置に有する試料プレートと、試料にパルス状のレーザ光を照射して該試料中の成分をイオン化するレーザ光照射手段と、該レーザ照射手段によるレーザ光照射位置に分析対象試料と質量較正用試料とを選択的に位置させるべく前記試料プレートを移動させる移動手段と、を含むことを特徴とするイオントラップ質量分析装置。
  12. 請求項11に記載のイオントラップ質量分析装置であって、前記イオン供給源はマトリックス支援レーザ脱離イオン源であることを特徴とするイオントラップ質量分析装置。
  13. 請求項12に記載のイオントラップ質量分析装置であって、前記レーザ光照射手段は、分析対象試料をイオン化するときと質量較正用試料をイオン化するときとでレーザ光強度を変化させることを特徴とするイオントラップ質量分析装置。
  14. 請求項12に記載のイオントラップ質量分析装置であって、
    前記イオントラップ内に捕捉したイオンのうちの特定の質量を持つイオンを残し他のイオンをイオントラップ内から除去するように前記イオントラップを構成する複数の電極の少なくとも1つに電圧を印加するイオン選別手段と、前記イオントラップ内に捕捉したイオンの開裂を促進させる開裂促進手段と、をさらに備え、
    分析対象試料由来のイオンを先行して前記イオントラップ内に捕捉し、前記イオン選別手段により特定の質量を持つイオンを該イオントラップ内に残した後に、前記開裂促進手段によりその残したイオンの開裂を促進し、その後に、質量較正用試料由来のイオンを前記イオントラップ内に追加的に導入するようにしたことを特徴とするイオントラップ質量分析装置。
  15. 請求項12に記載のイオントラップ質量分析装置であって、
    前記イオントラップ内に捕捉したイオンのうちの特定の質量を持つイオンを残し他のイオンをイオントラップ内から除去するように前記イオントラップを構成する複数の電極の少なくとも1つに電圧を印加するイオン選別手段をさらに備え、
    分析対象試料由来のイオンを先行して前記イオントラップ内に捕捉し、前記イオン選別手段により特定の質量を持つイオンを該イオントラップ内に残した後に、質量較正用試料由来のイオンを前記イオントラップ内に追加的に導入するようにしたことを特徴とするイオントラップ質量分析装置。
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