JP5455653B2 - イオンを解離するための化学構造に敏感ではない方法および装置 - Google Patents

イオンを解離するための化学構造に敏感ではない方法および装置 Download PDF

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Description

本発明は一般に、通常イオントラップとして利用される電極配置におけるイオンの操作または処理に関する。さらに具体的には、本発明は、オフ共鳴励起および非線形トラップ場の条件下で電極構造において1種以上のイオンを励起するための方法および装置に関する。これらの方法および装置は、例えば、直列多段質量分光分析(MS/MSおよびMS)を含む質量分光分析に関連する操作と併せて実施されてもよい。イオンの励起は、例えば、衝突誘起解離(CID)に用いられてもよい。
イオントラップとして作動するイオン処理装置は、質量分光分析、および調査中の試料物質のイオン、特にイオン化された種の操作および制御を必要とするその他の用途に有用である。そのようなイオン処理装置は、電極の三次元(3−D)または二次元(2−Dもしくは「線形」)の配置によって形成されてもよい。3−Dイオントラップの場合、電極セットは通常、中心(z)軸に沿って互いに間隔を空けた2つの対向する端部キャップ(エンドキャップ)と、これらの端部キャップの間に対称に位置するリング電極とを含む。リング電極は、z軸に直交する放射(r)軸(径方向軸)上にて径方向に間隔をあけてz軸について環状に通過する断面を有する。2−Dのイオントラップの場合、電極セットは通常、中心(z)軸について同軸に配置され、z軸の方向に引き延ばされた4つの電極を含む。通常、2−Dイオントラップの引き延ばされた各電極は、中心z軸から径方向間隔(xまたはy)をあけて中心z軸に直交するx−y面に位置づけられ、通常、同一セットの他の電極と平行に走る。3−Dおよび2−Dの双方の場合において、電極の内側表面は通常双曲線状であり、3−Dの中心または2−Dの中心軸に向かって内側に向いた頂部を伴って、純粋な四重極の電場を形成する。しかしながら、2−Dの場合、引き延ばされた電極は、理想的な双曲線の輪郭に近似する円筒状の棒(ロッド)であってもよい。3−Dおよび2−Dの双方の場合において、電極の得られた配置は、一般に電極の内側表面によって境界付けられる内部空間を規定する。2−Dの場合、z軸に沿って電極の寸法を引き延ばした結果、内部空間は、同じ軸に沿って軸方向に引き延ばされたものとなる。
操作において、イオントラップの内部空間に、イオンが導入され、捕捉され、保存され、単離され、断片化され、種々の反応に供されてもよく、検出のために内部空間から排出されてもよい。3−Dの場合、3−空間(例えば、円筒座標rおよびzによって分解される)におけるイオンの可動域は、イオントラップの電極構造に3−DのACトラップ場電位を加えることによって制御されてもよい。トラップ電圧の駆動周波数は高周波(RF)のスペクトルに関連する範囲内に入る。2−Dの場合、x−y面に沿ったイオンの放射状可動域は、対向する電極の対の間で2−DのAC(RF)トラップ場電位を加えることによって制御されてもよい。さらに、2−Dの場合、イオンの軸方向の可動域または中心z軸に沿ったイオンの動きは、電極の軸方向の末端間に軸方向のDCバリア電位を加えることによって制御されてもよい。イオントラップの適当な電極間へのRFトラップ電圧の印加は、3−Dイオントラップの中心または2−Dイオントラップの中心軸について対称である四重極電場を生成する。RFトラップ電圧の振幅および周波数は、質量/電荷数(m/z)の比の所望の範囲が3−Dの中心または2−Dの中心軸のまわりに集中される軌道に制約されるように設定されてもよい。
RFトラップ場に加えて、補助的なまたは補足のAC(RFであってもよい)双極または四重極の励起場が、3−Dまたは2−Dのイオントラップのいずれかでの対向する少なくとも1対の電極間に加えられて、その電極対の軸に沿って選択されたm/z比のイオンの振動の振幅を大きくしてもよい。補足のAC場を加えて、イオンの排出、および衝突活性化解離(CAD)とも呼ばれる衝突が誘起する解離(CID)を含む種々の目的のため、イオンの運動エネルギーを高めてもよい。補足のAC場は通常、所与のm/z比のイオンが補足のAC場から効率よくエネルギーを吸収するイオントラップ内の共鳴状態を創るように加えられる。共鳴状態は、軸(それに沿って補足のAC電圧が加えられる)の方向でイオンの振動の永年周波数が、加えられた補足のAC電圧の周波数と一致する場合に生じる。補足のAC電圧の周波数は通常、RFトラップ電圧の周波数の約半分以下に設定され、補足のAC電圧の振幅は通常、RFトラップ電圧のわずかな比率に設定される。所与のm/z比のイオンの永年周波数はRFトラップ電圧の振幅および周波数に依存するので、RFトラップ電圧は、そのイオンを補足のAC場との共鳴に至らせるように調整されてもよい。一例として、駆動周波数1.05MHzでRFトラップ電圧を300Vに設定してもよく、485kHzの共鳴周波数で補足のAC電圧を3.0Vに設定してもよい。次いでRFトラップ電圧を走査して、連続するm/z比のイオンの各永年周波数を、補足のAC電圧の485kHzの周波数と同等にシフトさせてもよく、それによって質量という点での連続性において異なったイオンが共鳴して励起するようになる。あるいは、イオンの永年周波数を走査して、固定した周波数の補足のAC電圧とうまく調和させる代わりに、RFトラップ電圧を一定に保つ一方で補足のAC電圧の周波数を、共鳴条件が満たされる点にスイープ(掃引)させる。したがって、RFトラップ電圧の振幅もしくは周波数または補足のAC電圧の周波数に傾斜をつける(または走査する)ことによって異なるm/z比のイオンが連続して共鳴してもよい。
一般に、より小さい補足のAC電圧の振幅を利用して、CIDのためにイオンを励起し、それによってイオンの振動の振幅が十分に大きくなってバックグラウンドの気体分子との衝突を引き起こし、その結果イオンをさらに小さい質量種に断片化するまたは解離するが、RFトラップ場によって付与された復元力にイオンが打ち勝って失われる(例えば、電極に衝突するまたはイオントラップから排出することによって)には十分ではない。さらに大きな振幅(しかし、依然としてRFトラップ電圧の振幅のわずかな比率)の補足のAC電圧を利用して、イオントラップから共鳴して排出するのに十分なほどイオンを励起する。したがって、高い効率のCIDを達成することは従来、前駆イオンの内部エネルギーが十分に蓄積して解離を起こす一方で前駆イオンの排出および断片化イオンが回避されるように、イオンの運動エネルギーの取り込みの慎重なバランスを必要としていた。
電極セットの内部空間に存在するイオンは、内部空間の中で有効な電場すべてに反応し、それらの動きはその電場すべてによって影響される。これらの電場には、上記のAC(および任意でDC)の場の場合のような電気的手段で意図的に加えられた場、および電極セットの物理的(幾何学的)特徴のために生成される機械的(物理的)な場が含まれる。機械的に生成される場は意図的であってもよく、意図的でなくてもよく、イオントラップの操作様式によって望ましくてもよく、もしくは最適であってもよく、またはそうでなくてもよい。加えられた場および機械的に生成された場の双方は、内部空間にさらされた電極の内部表面の構成(輪郭、形状、特徴など)によって支配される。中心軸に最も近い内部表面上の点、例えば、双曲線状の端部キャップ電極の頂部(3−Dの場合)、または双曲線状のリング電極(3−Dの場合)もしくは引き延ばされた電極(2−Dの場合)の先端の線は、RFトラップ場に対して最大の影響を有するので、RFトラップ場によってイオントラップの内部の3−Dの中心または2−Dの中心軸の回りの容積に制約されるイオンに対して最大の影響を有する。
理想的な場合では、3−Dまたは2−DのRFトラップ場は純粋に四重極である。純粋な四重極のRFトラップ場では、高次の多重極電場は存在せず、所与の座標方向でのイオンの振動の永年周波数は、直交する座標方向での振動の永年周波数とは独立している。イオンの永年周波数はまた、イオンの振動の振幅とも独立している。さらに、理想的な四重極場の強度は、x軸またはy軸のいずれかに沿って3−Dイオントラップの中心から、または2−Dイオントラップの中心軸から離れるとともに線形に増大する。できるだけ理想的な場合に近づくようにアプローチし、多極モーメントによって引き起こされる四重極電場の歪みをできるだけ小さくできるように、多数の従来のイオントラップの電極は双曲線状の形状をとり、互いに間隔を空けられている。純粋な四重極トラップ場の使用は、イオントラップからのイオンの排出を簡略化する。これは、対称性を有する四重極の場合、一成分方向におけるイオンの動きを増やすことが直交する方向におけるイオンの動きに影響しないからである。したがって、補足のACの双極を利用して、3−D電極構造の対向する端部キャップの軸に沿ったイオンのみ、または2−D電極構造の対向する1対の引き延ばされた電極の間の軸に沿ったイオンのみを排出してもよい。
他方、多重極場の重ね合わせによって歪められている四重極場から成るトラップ場では、一方向におけるイオンの動きが直交する方向でのイオンの動きに連結されてもよい。さらに、四重極成分およびより高次の多重極成分から成る組み合わせた場におけるイオンの永年周波数は、イオントラップにおけるイオンの位置の関数になる。補足のAC場によって促進された共鳴状態に応答してイオンの振動の振幅が増大するので、高次の多重極の存在は、イオンを共鳴の外にシフトさせ、それによって共鳴励起法の使用を複雑にする。したがって、幾つかの最近開発された技法は、多重極によって可能にされた非線形の共鳴状態を慎重に利用するが、トラップ場における有意な多重極は通常回避される。本開示の譲受人に通例譲渡される、例えば、下記特許文献1を参照のこと。
CIDを実施するための既知の方法では、RFトラップ電圧が、3−Dイオントラップに加えられて、安定なイオンを捕捉する。次いで、単離法を実施することによって、所望の質量以外または質量範囲外のイオンをすべて電極構造から追い出す。次いで選択されたm/z比を有する単離されたイオン(前駆イオンまたは親イオン)を分離する。例えば、z軸、すなわち、それに沿って端部キャップが位置し、双極がかけられる軸に沿ったイオンの動きに相当する当該のイオン質量の永年周波数に一致する補足の周波数にて端部キャップに補足のAC双極電圧が加えられてもよい。補足の励起の周波数と永年周波数との一致は、共鳴状態を創り、それによって、当該イオンはエネルギーを効率よく受け取り、バックグラウンドの気体分子と衝突し、それによって生成物イオン(例えば、娘イオン)に断片化される。RFトラップ電圧の操作パラメータは、生成物イオンがイオントラップに保持されるように選択される。次いでRFトラップ電圧の振幅が走査され(傾斜がつけられ)、端部キャップの軸(例えば、z軸)に沿ってイオントラップから質量という点で連続的に生成物イオンを排出する。排出された生成物イオンの検出によって質量スペクトルの生成が可能になる。この技法の例は下記特許文献2に記載されている。
この技法での問題の1つは、所与の当該イオンの永年周波数が前もって正確に測定できないことである。したがって、この技法は一貫したCID性能を送達することができない。さらに、CIDに必要とされるエネルギーは断片化される特定の化合物(化学構造)に依存しているので、補足のAC電圧は異なった当該イオンについて個々に最適化される必要がある。
CIDを実施するための別の方法は、本開示の譲受人に通例譲渡された、下記特許文献3(「‘826特許」)に記載されている。‘826特許に教示されているように、対象の前駆(親)イオンを単離した後、CID段階の間、低周波数(例えば、500Hz)の信号と組み合わせて補足のAC励起電圧を加える。低周波数の信号は、加えられたRFトラップ電圧の振幅を変調する。その結果、イオンの永年周波数が、補足の励起周波数と周期的に調和する。この方法で、CIDに必要とされる正確な補足励起の周波数は分からなくてもよい。しかしながら、補足励起の電圧の振幅は、対象の個々イオンについて最適化される必要がある。
下記特許文献4に記載された、共鳴励起を介してCIDを実施するための別の方法では、イオントラップに加えられる励起電圧の振幅は、特定のイオントラップ機器について断片化されるイオンのm/z比に線形の関係を有する。較正工程を採用して、機器ベース当たりで線形の関係を較正する。しかしながら、化学構造が、較正用化合物に基づいて較正を行った際の当該化合物のイオンの化学構造と異なっているのであれば、補足励起の電圧の振幅は依然として対象の個々イオンについて最適化される必要がある。
下記特許文献5に記載された、共鳴励起を介してCIDを実施するための別の方法は、複数の別々の周波数の混合から成る補足の広帯域の波形の振幅に傾斜を付けることによって、特定の実験に必要とされるCIDのエネルギーの化合物依存性に対処する。この方法は、異なった化合物について加えられた波形の振幅の最適化を必要としない。しかしながら、広帯域の波形は、その質量が前駆(親)イオンに近い生成物(娘)イオンを破壊するか、または排出し、結果的に情報を失う。さらに、CIDの時間は波形の反復サイクルの整数倍であることに制約される。
別の方法は、下記非特許文献1における赤方偏移シフトオフ共鳴大振幅励起(RSORLAE)と呼ばれる。前駆イオンを単離した後、加えられたRFトラップ場の振幅を低レベルから高レベルに10msの間にわたって高める「ジャンプ走査」を行う。次いで、前駆イオンの励起に備えてRFトラップ場の振幅を突然低レベルに落とす。励起期間の間、前駆イオンは共鳴して励起するのではない。それどころか、大きな振幅(21Vp−p)にて、約5%赤方偏移した周波数、すなわち、共鳴周波数の赤方偏移した周波数でAC励起場が加えられる。しかしながら、この方法は、ペプチドイオンについて有望な結果が得られる一方で、広い範囲の異なった化合物および化学構造には好適ではない。
下記特許文献6は、共鳴周波数の代わりに、オフ共鳴周波数を有する補足のAC場を採用することによって、イオントラップからイオンを排出する方法を記載している。オフ共鳴周波数は、共鳴周波数をほぼ一致させることとして述べられる。補足のAC場の振幅を十分に大きい値に設定して、共鳴励起を受けずにイオントラップからイオンを排出させる。しかしながら、この特許は、CIDを上手く達成するのにオフ共鳴波形をどのように採用すればいいのか教示していないし、またはそれを可能にしていない。さらに、この特許は、どの目的または利点で四重極場と組み合わせた多重極場およびオフ共鳴波形を使用するかを教示していないし、十分に認識させるものではない。
米国特許第7,034,293号明細書 米国特許第4,736,101号明細書 米国特許第5,302,826号明細書 米国特許第6,124,591号明細書 米国特許第6,410,913号明細書 米国特許第5,451,782号明細書 米国特許第5,291,017号明細書 米国特許第5,714,755号明細書 米国特許第5,198,665号明細書 米国特許第5,300,772号明細書 米国特許第5,521,380号明細書 米国特許第5,793,038号明細書 米国特許第6,710,336号明細書
Quin外、"Matrix-Assisted Laser Desorption Ion Trap Mass Spectrometry: Efficient Isolation and Effective Fragmentation of Peptide Ions, "、Anal. Chem.、1996年、68巻、2108〜2112ページ
したがって、イオントラップでイオンを励起する、特にCIDを達成するための改善された方法および装置を提供する必要がある。化学構造にかかわりなく多種多様なイオンについて一貫した反復可能な方法で実施されてもよいCID技法を提供することも必要である。
前述の問題に対処するために、当業者に認識されているかもしれない全部もしくは一部および/または他の問題において、本開示は、以下に述べられる実施態様における実施例として記載されるような方法、プロセス、システム、装置、機器および/またはデバイス(道具)を提供する。
実施態様の1つによれば、イオントラップにおいて前駆イオンを励起するための方法が提供される。前駆イオンは、四重極および多重極の場を含む非線形のトラップ場に捕捉される。高周波(RF)トラップ電圧を、RFトラップ振幅およびRFトラップ周波数で、イオントラップの電極構造に加えることによって四重極場が生成される。補足交流(AC)電圧は、補足AC振幅および補足AC周波数で電極構造に加えられて、永年周波数が補足AC周波数に向かって掃引される。補足ACの周波数は、オフセット量だけ前駆イオンの永年周波数とは異なる。イオントラップの複数の操作パラメータの少なくとも1つが、前駆イオンが、補足AC電圧と共鳴することなく補足AC電圧から十分なエネルギーを吸収して衝突誘起解離(CID)するように調整されることにより、イオンの永年周波数が調整される。操作パラメータには、RFトラップ振幅、RFトラップ周波数および補足AC周波数が挙げられてもよい。
別の実施態様によれば、前駆イオンについて衝突誘起解離(CID)を行うためのイオントラップが提供される。イオントラップは内部空間を規定する複数の電極を含む。イオントラップはさらに、高周波(RF)トラップの電圧を、RFトラップ振幅およびRFトラップ周波数で、電極構造に加えて、四重極トラップ場を生成するように構成された第1の回路と、非線形のトラップ場を生成するために、四重極トラップ場に多重極場を重ね合わせる装置と、補足交流(AC)の電圧を、補足AC振幅および補足AC周波数で、電極構造に加えて、永年周波数を補足AC周波数に向かって掃引させるように構成された第2の回路と、イオントラップの複数の操作パラメータの少なくとも1つを調整することにより、イオンの永年周波数を調整するように構成された第3の回路とを含む。補足AC周波数は、オフセット量だけ前駆イオンの永年周波数とは異なる。操作パラメータの少なくとも1つを調整する際、イオンが、補足AC電圧と共鳴することなく補足AC電圧から十分なエネルギーを吸収してCIDを受ける。操作パラメータには、RFトラップ振幅、RFトラップ周波数および補足AC周波数が挙げられてもよい。

本発明のその他のデバイス、装置、システム、方法、特徴および利点は、以下の図面および詳細な説明の審査の際、当業者に明らかである、または明らかになるであろう。そのような追加のシステム、方法、特徴および利点はすべて本説明の中に含められ、本発明の範囲内であり、添付の特許請求の範囲によって保護されることが意図される。
本発明が実施される操作環境の実施例である質量分光分析システムの実施例の模式図である。 本発明が実施されるイオントラップに提供されてもよい三次元(3−D)構造の電極構造の実施例の断面図である。 本発明が実施されるイオントラップに提供されてもよい二次元(2−D)構造の電極構造の実施例の断面図である。 本開示で記載される実施態様に従って加えられてもよい信号の時間系列の実施例を説明する信号の説明図である。 本開示で記載される実施態様に係る方法を説明するフローチャートである。
図面を参照して本発明をさらに良好に理解することができる。図中の構成要件は必ずしも共通の尺度を持つわけではなく、代わりに本発明の原理を説明する際、強調されている。図中、同様の参照符号は、異なった図を通して相当する部分を示す。
本開示で提供される主題は一般に、イオンを操作する、処理する、または制御するために採用される装置に提供される種類の電極および電極の配置に関する。電極の配置を利用して種々の機能を実施してもよい。非限定例として、中性分子をイオン化するためのチャンバー;イオンの焦点合わせ、ゲートおよび/または輸送のためのレンズまたはイオンガイド;イオンを冷却するまたは温めるための装置;イオンのトラップ、保存および/または排出のための装置;所望ではないイオンから所望のイオンを単離する装置;質量分析機またはソーター;質量フィルタ;直列または複数の質量分光分析(MS/MSまたはMS)を行うためのステージ;前駆イオンを断片化または解離するための衝突セル;連続ビーム、順次アナライザ、パルスまたは時系列ベースのいずれかでのイオンを処理するためのステージ;イオンサイクロトロンセルならびに異なった極性のイオンを分離するための装置として、電極の配置を利用してもよい。しかしながら、本開示で記載される電極および電極の配置の種々の適用は、これらの種類の手順、装置およびシステムに限定されない。電極および電極の配置の実施例と装置および方法における関連する実施態様とは、図1〜図5を参照して以下でさらに詳細に説明する。
図1は、イオントラップに基づいた質量分光分析(MS)システム100の実施例の高度に一般化し、簡略化した模式図である。図1で説明されるMSシステム100は、本開示で記載される実施態様が適用可能である操作環境の一実施例にすぎない。本開示で記載される実施態様における利用から離れて、図1に描かれた種々の構成要件または機能は一般に既知なので、手短な要約しか必要としない。
MSシステム100は、一般に上述され、図2および図3を参照して以下でさらに説明される三次元(3−D)または二次元(2−Dまたは「線形」)のいずれかの配置で構成される複数の電極構造を含んでもよいイオントラップ102のような処理装置を含む。種々のDCおよびACの電圧源は、本開示のどこかに記載されるようにイオントラップ102の種々の導電性の構成要素と動作可能に接続してもよい。これらの電圧源は、DC信号発生器112、RFトラップ場信号発生器114および補足AC場信号発生器116を含んでもよい。補足AC場発生器116を利用して、例えば、以下に記載されるように、オフ共鳴の補足波形信号を加えてもよい。1以上の種類の電圧源または単一の発生器が必要に応じて提供されて、所望の方法でイオントラップ102を操作してもよい。例えば、補足AC場発生器116は、単一周波数の補足AC信号を、イオントラップ102に加える固定周波数発生器を表してもよく、さらに、広帯域の波形または周波数の集合を有する補足AC信号をイオントラップ102に加える別個の複数周波数発生器を表すものであってもよい。例えば、単離波形、CIDの波形および/または排出波形を加えるような種々の目的で任意の波形発生器を採用してもよい。1つ以上の補足AC場発生器116が必要に応じて提供されて、例えば、単離、CID、分析走査および多重極の生成のような種々の機能を実行してもよい。さらに一般に1つ以上の信号「源」または「発生器」が、その機能を実行するために必要に応じて、ハードウエア、ファームウエア、アナログおよび/もしくはデジタルの回路、ならびに/またはソフトウエアを含んでもよい。さらに、ライブラリに保存されてもよい予備計算した信号を提供するための適当なメモリおよびその他の回路および構成要素で、1つ以上の信号「源」または「発生器」が置き換えられてもよい。特にイオントラップ102がイオントラップ102のq軸(a=0)に沿って操作するように構成される場合、DC信号発生器112は必要とされないことが多いことがさらに理解されるであろう。
試料またはイオン源122がイオントラップ102と相互作用して、内部イオン化または外部イオン化のいずれかによってイオントラップ102内にイオンを提供する。例えば、内部イオン化の場合、試料またはイオン源122は、イオン化されるべき試料材料をイオントラップ102に導入し、イオントラップ102で試料材料をイオン化するために好適なイオン化法(例えば、EI、CI、APIなど)を実施する1つ以上の装置を表すものであってもよい。あるいは、外部イオン化の場合、試料またはイオン源122は、試料材料をイオン化し、得られたイオンをイオントラップ102に導入する1つ以上の装置を表すものであってもよい。1つ以上の気体源(図示せず)は、必要に応じて不活性のバックグランド気体または活性のある試薬気体を導入するためにイオントラップ102と連通していてもよい。イオントラップ102は、質量分析のために排出したイオンを検出するための1つ以上の検出器132と連通していてもよい。イオン検出器132は、イオン検出器132からの出力信号を受け取るための検出後信号プロセッサ134と連通していてもよい。検出後信号プロセッサ134は、必要に応じて出力データを取得し、質量スペクトルを生成するための信号処理機能、例えば、増幅、加算、保存などを実行するための種々の回路および構成要素を表すものであってもよい。
図1にて信号のラインで説明されるように、MSシステム100の種々の構成要素および機能的実体は、好適な電子コントローラ142と通信し、それによって制御されている。電子コントローラ142は、1つ以上のコンピュータの装置または電子処理装置を表していてもよく、その機能を実行するために必要に応じてハードウエア、ファームウエア、アナログおよび/もしくはデジタルの回路、ならびに/またはソフトウエアの属性を含んでもよい。実施例として、電子コントローラ142は、DC信号発生器112、RFトラップ場信号発生器114および補足AC信号発生器116によって、操作パラメータとイオントラップ102に供給される信号のタイミングとを制御してもよい。さらに、電子コントローラ142は、本開示に記載される方法の1つ以上の工程を全体的にまたは部分的に実行してもよく、または制御してもよい。
図2は、図1で説明されたイオントラップ102のような、イオンを操作するまたは処理するのに利用されてもよい3−D構造の電極構造(またはセット、配置、システム、装置または組立品)200の実施例を説明する。参照の目的で、図2はr−z面における電極構造200の断面を示す。3−D構造の場合、説明の目的で、z軸に沿った方向または向きを軸方向であると言い、直交するr軸に沿った方向または向きを径方向または横軸であると言う。
3−Dの電極構造200は、複数の電極、すなわち、環状のリング電極204および2つの端部キャップ電極208および212を含む。図2で説明される実施例は、改変されて以下に記載されるような多重極を創る場合を除いて、その他の四重極イオン処理装置と同様に3−Dイオントラップ用の典型的な四重極電極配置である。電極204、208および212は、その形状がz軸について掃引されるという理解とともに断面で示されている。電極構造200の中で所望の電場を生成するために必要とされるとき、各電極204、208および212は、1つ以上のその他の電極204、208および212と電気的に相互に相互接続されている。電極204、208および212は、一般に電極構造200の機械的なまたは幾何的な中心228に向いた各内側表面216、220および224を含む。電極構造200は、電極204、208および212の間で一般に規定される内側空間またはチャンバー232を有する。電極204、208および212の各内側表面216、220および224は一般に内側空間232に向くので、実際には、内側空間232に存在するイオンにさらされている。
電極204、208および212は、電極構造200の中心228からr−z面にて特定されたある距離で位置決めされる。具体的には、リング電極208は中心228から放射状の距離rに位置し、端部キャップ電極208および212は、それぞれ中心228から軸方向の距離zに位置する。通例採用されるトラップの構造では、r=(21/2)zまたはr =2z である。他の実施態様では、端部キャップ電極208および212の軸方向位置zは、互いに故意に異なるようにされており(例えば、電極208または212の一方が電極212または208の他方よりも中心からはるか遠くに位置する)、および/または特定の種類の電場効果を導入する、もしくは他の望ましくない場の効果を補正するような目的でr =2z を逸脱するようにされている(例えば、「引き離し」構成)。例えば、電極204、208および212の配置は、引き離されてもよく、またはさもなければ、改変されて、電極204、208および212によって生成される四重極トラップ場により高次の多重極場を重ね合わせてもよい。
各電極204、208および212は、外側表面を有し、外側表面の少なくとも一部分がカーブしている。本実施例では、各電極204、208および212のr−z面での断面の輪郭、または内部表面216、220および224の少なくとも形状がカーブしている。一部の実施態様では、r−z面での各断面の輪郭は、一般に双曲線状で、四重極イオントラップ場の利用を円滑にする。なぜなら、双曲線の輪郭は、おおよそ、四重極場に情報を与える等電位線の輪郭に整合するからである。双曲線の輪郭は完全な双曲線に合ってもよいし、完全な双曲線から幾分逸脱してもよい。他の実施態様では、電極204、208および212の各断面の輪郭は、非理想的な双曲線形状、例えば、大体双曲線形状または円形形状であってもよい。用語「一般に双曲線状」および「カーブしている」は、そのような実施態様すべてを包含することを意図している。一部の実施態様では、理想的な双曲線からの逸脱を行って所望の方法で場の効果を改変し、例えば、上記で言及したように四重極トラップ場に、より高次の多重極場を重ね合わせる。
例えば、試料またはイオンの注入、気体の注入、軸方向のイオンの排出などのような機能を容易にするために、1つ以上の開口部を1つ以上の電極204、208および212に形成してもよい。図2で説明される具体的な実施例では、各開口部242および246が端部キャップ208および212に形成されて、好適な不安定さに基づく排出法または共鳴に基づく排出法の適用に応答したz軸に沿った方向での排出を容易にする。例えば、補足のACの双極場は、端部キャップ208および212の間に生成されて、開口部242および246の方向でイオンを排出させてもよい。実際に、好適なイオン検出器(図示せず)を、開口部242および246の少なくとも1つと整列するように配置して、排出されたイオンの流れを測定する。内部空間232において生成される電場の対称の所望の程度を維持するために、たった1つのイオン検出器しか提供されないとしても、たった1つの開口部の代わりに2つの対向する開口部242および246が設けられることが所望されるかもしれない。同様に、開口部は、電極204、208および212のすべてに形成されていてもよい。一部の実施態様では、例えば、それぞれ、本開示の譲受人に通例譲渡された、上記特許文献7、上記特許文献8および上記特許文献1に記載されるように、電圧信号の適当な重ね合わせおよびその他の操作条件を提供することによって、イオンは、単一の開口部を通って単一の方向で優先的に排出されてもよい。
図3に、図1で説明されたイオントラップ102のような、イオンを操作するまたは処理するのに利用されてもよい2−D構造の電極構造(またはセット、配置、システム、装置または組立品)300の実施例を示す。図3はまた、図3がx−y面内の電極構造300の断面を示すように参照目的でデカルト(x、y、z)座標を含む。2−D構造の場合、記述上、z軸に沿った方向または向きを軸方向であると言い、直交するx軸およびy軸に沿った方向または向きを径方向または横軸であると言う。
2−Dの電極構造300は、複数の電極302、304、306および308を含む。2−Dの配置の場合、電極302、304、306および308は、z軸に沿って引き伸ばされた4つの別々の電極を表現する。すなわち、電極302、304、306および308のそれぞれは、z方向と一般に平行な方向に延びる優勢な細長い寸法(例えば、長さ)を有する。別の実施態様では、4つの電極302、304、306および308以外の電極が提供されてもよい。図3で説明される実施例は、改変されて以下に記載されるような多重極を創る場合を除いて、その他の四重極イオン処理装置と同様に2−Dイオントラップ用の典型的な四重極電極配置である。各電極302、304、306および308は、電極構造300の中で所望の電場を生成するために必要とされる1つ以上の他の電極302、304、306および308と互いに電気的に相互接続されている。電極302、304、306および308は、電極構造300の中心z軸に一般に向いた各内部表面312、314、316および318を含む。電極構造300は、一般に電極302、304、306および308の間で規定される内部空間またはチャンバー332を有する。2−D配置の場合、z軸に沿って電極302、304、306および308が引き伸ばされた結果として、内部空間332は、当該軸に沿って引き伸ばされたものとなる。電極302、304、306および308の内部表面312、314、316および318は、一般に内部空間332を向くので、実際は内部空間332に存在するイオンにさらされる。
電極302、304、306および308は、電極構造300またはその内部空間332の中心長手軸328まわりに同軸的に位置する。多数の実施態様において、中心軸328は、電極構造300の幾何的中心に一致し、本実施例では、z軸であるとみなされる。各電極302、304、306および308は、中心軸328からx−y面内で径方向のある距離rに位置する。一部の実施態様では、中心軸328に対する電極302、304、306および308の各径方向位置は等しい。他の実施態様では、1つ以上の電極302、304、306および308の径方向位置は、特定の種類の電場効果を導入する、例えば、上述のように四重極トラップ場の上に高次の多重極場を重ね合わせる、または他の望ましくない電場効果を補正するような目的で、他の電極302、304、306および308の径方向位置とは意図的に異なるようにされている。
各電極302、304、306および308のx−y面における断面の輪郭、または内部表面312、314、316および318の少なくとも形状は、カーブしている、または一般に、上述の3−Dの場合のように双曲線状である。上記で言及したように、完全な双曲線からの逸脱を意図的に行って、所望の方法で場の効果を改変し、例えば、四重極トラップ場の上に高次の多重極場を重ね合わせてもよい。一部の実施態様では、電極302、304、306および308の断面の輪郭は、幾分非理想的な双曲線形状、例えば、円であってもよく、その場合、電極302、304、306および308は、円筒状の棒として特徴づけられてもよい。さらに他の実施態様では、電極302、304、306および308の断面の輪郭は、さらに直線的(直線で囲まれたようなもの)であってもよく、その場合、電極302、304、306および308は、カーブした板として特徴づけられてもよい。そのような実施態様のすべてにおいて、各電極302、304、306および308は、電極構造300の内部空間332を向いた各頂部342、344、346および348を有するものとして特徴づけられてもよい。
例えば、試料またはイオンの注入、気体の注入、径方向のイオンの排出などのような機能を容易にするために、上述の3−Dの場合のように、1つ以上の開口部352を1つ以上の電極302、304、306および308に形成してもよい。開口部352はz軸に沿って引き延ばされたものであってもよく、その場合、開口部352は、電極構造300の引き延ばされた内部空間332内に生成され引き延ばされたイオン占有空間のためのスロットまたはスリットして特徴づけられてもよい。一部の実施態様では、上述のように、電圧信号の適当な重ね合わせおよびその他の操作条件を提供することによって、イオンは、単一の開口部を通って単一の方向に優先的に排出されてもよい。あるいは、既知の技法によって、2−D電極構造300の端部の一方から、イオンが軸方向に排出されてもよい。
別の実施態様では、2−D電極構造300は、上述のように2−Dまたは「直線」的な電極の配置を有するが、カーブする。すなわち、中心軸328と電極302、304、306および308とがカーブする。図3の断面図は同様にこの実施態様を表す。
便宜上、以下の説明は、特定されない限り、説明が同様に図3に示される2−Dの電極構造300に同様に加えられるという理解と共に、図2に示される3−Dの電極構造200を主として参照する。
一般に、電極構造200は、外部イオン化の場合、イオンを受け取って、または内部イオン化もしくはトラップ時イオン化の場合、イオン化される中性の分子または原子を受け取って、好適な方法でかつ好適な入口位置を介して内部空間232に入れることが可能である。外部イオン化による内部空間232へのイオンの導入、および内部イオン化による内部空間232でのイオンの生成は、一般に内部空間232にイオンを「提供する」と言う。イオンを「提供すること」はまた、断片化または解離の過程での前駆イオンからの生成物イオンのトラップ時生成と言う。
電極構造200の操作において、種々の電圧信号が1つ以上の電極204、208および212に加えられて、イオンの処理および操作に関連する異なった目的で、内部空間232にて種々の軸方向に、および/または径方向に向いた電場を生成する。この電場は、種々の機能、例えば、内部空間232にイオンを注入すること、内部空間232にてイオンを捕捉し、ある時間イオンを保存すること、内部空間232から質量選択的にイオンを排出して質量スペクトル情報を生成すること、不所望のイオンを内部空間232から排出することによって内部空間232にて選択されたイオンを単離すること、直列質量分光分析の一部として内部空間232でのイオンの解離を促進することなどに役立つ。
適当な振幅および周波数のRF電圧信号を電極204、208および212に加えて主要なRF四重極トラップ場を生成し、中心軸または機械的中心に対して放射状の方向(径方向)に沿って質量対電荷数の比(m/z比、または単に「質量」)の範囲の安定な(捕捉可能な)イオンの動きを制約する。トラップ場の電位φは、一般式φ=U−Vcos(Ωt)で表されてもよく、式中、Uは任意の直流(DC)電圧であり、Vは周期的電圧の振幅であり、Ωは周期的電圧のrad/sにおける周波数である。角周波数Ωは関係Ω=2πfに従ってHzにおける周波数fに変換できる。例えば、3−D構造の場合(図2)、3−D(r−z)のRF四重極トラップ場は、RFトラップ場の電位φをリング電極204に加えることによって生成されてもよい。電位φをリング電極204に加える一方で、電位φを端部キャップ208および212に加えてもよく、端部キャップ208および212はアース(接地)されてもよい。あるいは、RF成分Vcos(Ωt)をリング電極204に加え、DC成分Uを端部キャップ208および212双方に加える。2−Dの構造(図3)の場合、2−D(x−y)のRF四重極トラップ場は、同じ一般式V(t)=±(U−Vcos(Ωt))のRF信号を対向する一対のy−電極302および304に加え、同時に第1のRF信号と同じ振幅および周波数であるが、第1のRF信号と180°位相が異なるRF信号を対向する一対のx−電極306および308に加えることによって生成されてもよい。2−Dの場合、2−DのRF四重極トラップ場とDCの軸方向(z)のバリア場との組み合わせが、電極構造300において基本的な線形のイオントラップを形成する。
RF四重極トラップ場におけるイオンの動きは、マシューの方程式によって記載されてもよく、それは周知の二次線形微分方程式である。マシューの方程式に対する解aおよびqは、イオントラップのイオンの操作点または作動点として知られる。3−Dおよび2−Dの双方の構造について、および方向u(x,yもしくはz,またはrもしくはz)について一般化されて、解aおよびqは、以下のように表されてもよい。
Figure 0005455653
および
Figure 0005455653
式中、Uは、加えられた直流(DC)の電圧(もしも存在するのであれば)の大きさであり、Vは、加えられたRF電圧の振幅であり、Ωは、RF電圧の角周波数であり、e(またはz)は、イオンの電荷であり、mはイオンの質量であり、r、KおよびKは装置に依存した定数である。DC電圧が加えられない実施態様では、a=0である。aおよびqに対する方程式の特定の形態は、例えば、対象の方向(x,y,z,r)、イオントラップ(3−Dまたは2−D)の構造、対向する電極表面間の間隔、トラップ電圧が加えられる電極などのような因子に依存する。特定の形態は当業者に既知であるので、本開示では繰り返さない。本開示で一般に関心があるのは、イオンについてのqの値が、イオンのm/z(またはm/e)比、加えられたRFトラップ場の振幅Vおよび加えられたRFトラップ場の周波数Ωの関数であるという事実である。イオンの操作点(a,q)は、所与のイオントラップについて、(横q軸および縦a軸を有する)安定性ダイアグラム上に位置して、イオンが安定な領域内にあってその動きが安定であるかどうか(すなわち、その軌道が電極に達していない)を決定することができる。
RF四重極トラップ場によって付与される力の成分は、典型的には、電極構造200の内部空間232の幾何学中心228で最小なので(電気的四重極は幾何学中心228を対称の中心に置くと想定して)、四重極の操作パラメータの範囲内で安定であるm/z比を有するイオンはすべて、イオンが占有する空間内またはイオンの位置が一般に中心228の周りに(または2−Dの場合、中心軸328に沿って)分布するクラウドの範囲内の動きに制約される。したがって、このイオンが占有する空間は、内部空間232の全容積よりもはるかに小さくてもよく、2−Dの場合、構造は中心軸328に沿って引き延ばされていてもよい。多数の実施態様において、望ましくない電場不良の影響を低減すること、質量の分解能および感度を改善することなどのような目的で、イオンを冷却するまたは熱化する周知の方法によって、さらにイオンが占有する空間のサイズを小さくしてもよい。イオンを冷却する方法は、好適な不活性のバックグランド気体(制動気体、冷却気体または緩衝気体とも呼ばれる)を内部空間202に導入することを必要とする。イオンと気体分子との衝突によってイオンに運動エネルギーを放棄させるので、それらの暴走を制動する。好適なバックグランド気体の例として、水素、ヘリウム、窒素、キセノンおよびアルゴンが挙げられるが、これらに限定されない。電極構造200の好適な開口部または電極構造200のエンクロージャに連通する好適な気体源がこの目的で提供されてもよい。例えば、気体源362は図3に示されるように位置してもよい。
DC(もしも存在するのであれば)および主要なRFトラップ信号に加えて、適当な振幅および周波数(従来の実施態様では双方とも、通常、主要なRFトラップ信号より小さい)の追加のAC電圧信号を、対向する端部キャップ電極208および212(または2−Dの場合、電極対302/304または306/308)に加えて、補足のAC双極励起場を生成してもよく、その周波数はRFスペクトルの範囲内に入ってもよい。補足のAC場を加えてもよい一方で、主要なRFトラップ場を加え、得られる場の重ね合わせは、組み合わせ場または複合場として特徴付けられる。あるいは、補足のAC四重極励起場は、当業者によって十分に理解されているように加えられてもよい。
従来、補足のAC場を利用して、選択されたm/z比の捕捉されたイオンを共鳴して励起している。通常、補足のAC電圧の周波数は、RFトラップ電圧の周波数(通常1.05MHz程度)の半分より小さく設定される。捕捉された各イオンは、その質量(m/z比)、電極構造200または300の物理的特徴(通常固定されている)、ならびにRFトラップ電圧の振幅および周波数(その値は電子機器によって変化させることができる)に依存する振動の永年周波数を有する。イオンの基本的な永年周波数ωsecは、周知の関係ωsec=1/2βΩに従ってRFトラップ電圧の周波数Ωの関数であり、その際、βは言い換えれば、対象の方向u(x,y,zまたはr)についてのマシューの操作パラメータaおよびqの関数である。βに関する種々の方程式および近似式が文献に存在するが、以下は、a<<qかつq<0.4のとき適度に正確である。
Figure 0005455653
イオンの永年周波数が補足のAC電圧の周波数と一致すると、イオンは補足のAC電場から効率的にエネルギーを吸収し、その結果、その永年周波数と関連する成分の方向でイオンの振動の振幅が大きくなる。したがって、捕捉されたイオンの共鳴励起を用いて衝突誘起解離(CID)または試薬気体とのイオン分子のその他の相互作用または反応を促進してもよく、または容易にしてもよい。さらに、励起場の成分の強度(振幅)は、イオン振動の増大率を決定し、選択された質量のイオンがRFトラップ場によって付与される復元力に打ち勝つのを可能にするように、ならびに排除、イオン単離、または質量選択性の走査および検出のために、電極構造200から排出されるのを可能にするように、当該強度は十分に高く調整されてもよい。したがって、一部の実施態様では、中心228に直交する方向に沿って、例えば、z軸の方向(それに沿って端部キャップ電極208および212が配置される)で内部空間232からイオンが排出されてもよい。上述のように、排出されたイオンは1つ以上の開口部242および246を通過し、適宜配置されたイオン検出器に到達し、排出されたイオンの流れを測定する。同様に、2−Dの電極構造300の場合、補足のAC双極が加えられるy−電極302/304またはx−電極306/308の対向する対の方向でイオンが排出されてもよい。
当業者によって十分に理解されているように、イオンの永年周波数はそのm/z比に依存し、RFトラップ電圧の振幅または周波数を変える(走査するまたは傾斜をつける)ことによって変化させてもよいので、RFトラップ電圧を制御して質量が連続するように、すなわち、質量選択性の方法で、異なったm/z比のイオンを共鳴して励起してもよい。例えば、RFトラップ電圧の振幅を大きくすることは、所与のm/z比のイオンの永年周波数を増やす。RFトラップ電圧は傾斜をつけられるので、異なったm/z比のイオンが連続的に、加えられた補足のAC励起場との共鳴に至る。したがって、例えば、補足のAC励起場を固定した周波数に維持する一方で、RFトラップ電圧の振幅に傾斜をつけることによって、質量選択性を基にして共鳴励起によるイオンの排出を実行してもよい。あるいは、RFトラップ電圧の周波数またはAC励起電圧の周波数に傾斜をつけて、質量という点での共鳴励起を達成してもよい。
さらに、CIDプロセスを含む特定の実験は、選択されたm/z比(単数)または比(複数)の所望のイオンが、さらなる試験または手順のために電極構造200に保持され、他のm/z比を有する残りの不所望のイオンが、電極構造200から除かれることを必要としてもよい。所望のイオンを所望でないイオンから単離する好適な技法が実施されてもよい。特に、共鳴励起による排出は、イオンの単離を実行するのにも有用である。例えば、補足のAC励起信号を対向する電極208および212の対に加え、電極208および212の軸に沿った共鳴励起によって、選択されたm/z比の不所望のイオンをトラップ場から排出してもよい。イオンの単離に採用される技法の例には、単一周波数信号の使用(走査されたRFトラップ信号と組み合わせて)、誂えた励起波形の使用、ノッチでフィルタをかけたノイズ波形の使用、広帯域波形の使用、個々の周波数の集まり、多重周波数照射(MFI)、および当業者に既知のその他のものが挙げられるが、これらに限定されない。その他の例は、それぞれ、本開示の譲受人に共通に譲渡された上記特許文献9〜13に記載されている。
上記のような従来の共鳴励起法および特にCID法とは対照的に、本発明は、以下に記載するように、オフ共鳴CID補足AC波形信号により前駆(または親)イオンを励起することによってCIDを達成する。さらに、四重極場に1つ以上の高次の多重極場を故意に重ね合わせることによって確立した非線形のトラップ場にオフ共鳴波形を加える。制動気体の存在下、補足のAC場を加える前に、四重極トラップ場に安定して捕捉されたイオンについては、イオンを振動させる運動エネルギーが、ゼロと、イオンの平均運動エネルギーが同様に時間と共に低下するように時間と共に低下する最大値との間で変化する。補足のAC場を加えると、イオンの振動(加えられた補足のAC場の軸に沿うもの)の振幅が、したがって、イオンの運動エネルギーが時間と共に増大する。AC信号からのエネルギーが、制動気体との熱を生じる衝突によるイオンの並進運動エネルギーおよび内部エネルギーの低下よりも大きい比率で加えられるほどAC信号の振幅が十分大きいなら、補足のAC場の適用は、結果として断片化や排出を生じる。以下で明らかになるであろうように、さらに長い時間イオンを励起でき、それによって排出または損失よりもイオンの断片化を促進するだけでなく、化学構造に大きく存在しない非共鳴の体制で断片化を可能にする方法にて、非線形のトラップ場におけるオフ共鳴CID補足AC場の適用は、イオンの挙動を修正する。
純粋な(または理想的なまたは「線形の」)トラップ場では、四重極だけが存在し、すなわち、他に有意な多極モーメントは存在せず、復元力は四重極場の中心からのイオンの変位の線形の関数である。すなわち、RF場の強度は中心から距離が離れると共に線形に増大する。さらに、純粋なトラップ場におけるイオンの永年周波数は、中心に対するイオンの位置に存在しない。ここで、純粋なトラップ場を記載するのに使用される用語「線形」は、2−Dのイオントラップ構造を記載するのに使用される用語「線形(直線的)」と混同すべきではないことに留意されたい。本発明の実施態様は、非線形のトラップ場の「線形」のイオントラップ、すなわち、2−D構造を有するイオントラップへの適用を含む。
純粋な四重極トラップ場とは対照的に、本発明で採用される非線形のトラップ場では、1つ以上の高次の多重極場が四重極場に加えられる。非線形のトラップ場では、復元力とイオンの位置との関係は線形ではなく、イオンの永年周波数は、トラップパラメータがすべて一定に保持されるなら、その位置の関数である。一般に、本発明によれば、多重極場、または四重極場に重ねあわされた場の種類は限定されない。多重極場は、例えば六重極場または十重極場のような奇数次の場(奇数の極対を有する)であってもよく、それが、四重極場に非対称の歪みを生じる。あるいは、多重極場は、例えば八重極場または十二重極場のような偶数次の場(偶数の極対を有する)であってもよく、それが、四重極場に対称の歪みを生じる。
イオンの永年周波数とその位置との特定の関係は、多重極の符号および大きさ(強度)を含む、存在する多重極場の種類に依存する。例えば、四重極トラップ場と同じ符号の六重極場または八重極場を四重極トラップ場に加えると、イオンの振動の振幅が大きくなるにつれてイオンの永年周波数は増加する。イオンの動きの振幅が大きくなると共に永年周波数が低下するように、多重極場の他の種類または向きが選択されてもよい。
多重極場または本発明の実施態様で生成した場を、好適な機械的または電気的な手段によって四重極場に重ね合わせてもよい。多重極場を機械的に創るための技法の一部の実施例には、上述したもののようなイオントラップの理想的な電極構造に対する物理的な(幾何学的な、空間的な等)改変が挙げられる。電極の形状もしくは大きさおよび/または他の電極に対するその位置を改変してもよい。例えば、1つ以上の電極を、理想的な双曲線の輪郭から逸脱する様式で形作り、四重極場に六重極および/または八重極を加えてもよい。例えば、電極の形状は、理想的な双曲線または双曲面と比較してさらに「鈍く」ても、または「鋭く」てもよい。さらに、電極の形状は、電極の断面をイオントラップの座標軸に対して非対称にするように改変してもよい。例えば、図2における上の端部キャップ電極208の断面形状が、z軸について回転対称であり、すなわち、z軸の左側で電極208の半分がz軸の右側での別の半分の鏡像に見える。同様に、図3における上のy−電極302の断面形状がy軸について対称である。所望の「鈍い」または「鋭い」変更を行った後でさえ、この対称は保持されているかもしれない。他方、多重極の歪みは、断面の半分が断面の他方の半分と比べて異なって成形されて、その各軸に対して非対称に成形される電極208および302のような電極によっても形成されてもよい。
あるいは、電極の形状における逸脱は、局限されてもよく、さもなければ、電極の残りの部分に関して特有なものであってもよい。例えば、隆起または膨らみが1つ以上の電極の表面から突き出してもよい。そのような隆起または膨らみは、1つ以上の電極の頂部領域で提供されてもよく、電極の開口部に近接していてもよい。機械的に多重極を創作する別の実施例では、対向する対の電極または端部キャップ電極の位置が、上述のような理想的な間隔から引き離されて、四重極場に八重極成分を加えてもよい。3−Dの中心または2−Dの中心軸からの電極の距離の「引き離し」は対称であっても、非対称であってもよい。すなわち、各対向する電極を理想的な間隔から同じ距離だけ引き離しさせてもよく、または対向する対の電極の一方の電極を他方の電極よりも中心または中心軸から遠くに動かし、非対称の歪みを生じてもよい。別の実施例として、対向する対の電極の一方を他方の電極より大きいサイズに作製し、四重極場に八重極成分を加えてもよい。別の実施例として、対向する対の電極の一方を回転し(トラップ構造の幾何学的中心に対して)、または別の電極に向けて移動させて、四重極場に六重極成分を加えてもよい。
電気的手段を利用して多重極場を重ね合わせる実施例として、RFトラップ電位と同じ周波数および位相にて、補助的双極電位を、対向する一対の電極に加えてもよい。この補助的双極電位は、所望の強度(例えば、30%の補助的双極電位)の六重極成分を四重極場に加え、詳細は、上記で引用した特許文献1に記載されており、その内容全体を本開示に組み込むものとする。一方の電極のRF電圧の振幅を、対向する電極での振幅とは異なるものとすることによって奇数次の多重極場を生成してもよい。
2つ以上の前述の機械的技法と電気的技法との組み合わせを実施してもよい。各場合において、有意な六重極および/または八重極を加えてもよい。六重極および八重極より高次でかつ種々の強度の1つ以上の多重極成分が、結果として加えられるようにしてもよい。
本発明で採用される非線形のトラップ場は、故意に加えられた多重極成分の結果であることに留意されたい。これら多重極成分、特に六重極および八重極の成分の場の強度は、例えば、加えられる四重極RFトラップ場の強度の約1%またはそれ以上大きくてもよい。他の実施例では、これら多重極成分の場の強度は、加えられる四重極RFトラップ場の強度の約1%〜約10%の範囲であってもよい。他の実施例では、多重極がRFトラップ場の意図された操作を妨害しない限り、多重極の場の強度は、加えられる四重極RFトラップ場の強度の10%より大きくてもよい。したがって、本発明で利用される故意に加えられた多重極成分は、機械加工および組立の不完全さから生じる典型的には弱い、意図的ではない場の不良および歪みから、電極における開口部の使用から、必然的に有限の電極のサイズ(すなわち、実際の電極は先端を切り取られ;その表面は、純粋に四重極場を結果として生じる完全な双曲線構造の非対称ラインに向かって無限に延びることはない)から、空間−電荷効果などから区別されるべきである。
本発明の実施態様において、CIDの開始時に、RFトラップ電圧で、1種以上の前駆イオンが保存される。そのRFトラップ電圧のもとでは、前駆イオンの永年周波数が、加えられるオフ共鳴AC波形の周波数とはオフセット量だけ異なる。別の方法で述べると、CIDに利用される補足AC励起場の周波数は、前駆イオンの永年周波数または周波数とは意図的に異なるように設定される。例えば、補足AC励起場の周波数は、約2kHzだけ永年周波数からオフセットされても(ずらされても)よい。別の実施例では、約3kHzのオフセットがCIDについてよく機能することが見い出されている。別の実施例では、補足AC励起場の周波数は、0kHzより大きく(例えば、約0.5kHz)、約5kHzまでの範囲の値だけ、永年周波数からオフセットされる。前駆イオンについての操作q(またはβ)の値に対するRFトラップ電圧の振幅は、既知の手段によって較正されてもよいので、約数百Hzの精度で親イオンの永年周波数を推定してもよい。補足AC励起電圧の振幅は、オフ共鳴補足AC励起の周波数にて、対象イオンのCIDを達成するように十分大きく設定される。一実施例として、AC励起電圧の振幅は、RFトラップ電圧の約0.01%〜約1%の範囲であってもよく、別の実施例では、この範囲は約0.02%〜約0.5%である。他の実施態様では、AC励起の振幅は前述の範囲外でもよい。さらに一般的には、AC励起の振幅の設定は、例えば、トラップ構造、q値およびCID期間の持続時間、RFトラップの周波数などのような因子に基づいてもよい。AC励起の振幅は、以下に記載されるように経験的に決定されてもよい。CIDの間、AC励起の振幅を固定しても(一定に保っても)よい一方で、RFトラップ電圧に傾斜をつける(以下参照)または傾斜をつけてもよい。
その後、RFトラップ電圧の振幅(または周波数)を増加もしくは低減するように傾斜させ、またはオフ共鳴AC周波数を高い側もしくは低い側にスイープして前駆イオン(単一種または複数種)の断片化を生じる。以下でさらに説明されるように、本発明は、個々のイオンについてAC励起場の振幅を最適化す必要がなく、化学構造の異なるイオンが最適な断片化のための正確なエネルギーを確実に受け取れるようにする。したがって、本発明は、前駆イオンの化学構造または特定の前駆イオンを断片化するのに必要とされたAC励起場の振幅の事前の知識なしで、最適にイオンを断片化することができる。
実施態様の1つでは、CIDの開始時に、前駆イオンの永年周波数が、加えられるオフ共鳴AC波形の周波数より高いRFトラップ電圧にて、前駆イオン(単一種または複数種)が保存される。すなわち、オフ共鳴AC励起電圧の周波数は、例えば、約2kHzのオフセット値だけ永年周波数よりも低く設定される。オフ共鳴ACの波形を加える一方で、RFトラップ電圧の振幅に下り(小さくなる)傾斜をつける。RFトラップ電圧に下り傾斜をつけるので、前駆イオンの永年周波数とオフ共鳴AC波形の周波数との間の差異は徐々に減る。これによって前駆イオンはオフ共鳴AC場からさらなるエネルギーを徐々に吸収することが可能になる。このオフ共鳴CID励起場による前駆イオンの励起は、前駆イオンの振動の振幅を増大させる。吸収されたエネルギーが断片化の閾値に達したとき、前駆イオンは断片化して生成物イオンを形成する。さらに安定な親イオンについては、断片化にはさらなるエネルギーを必要とする。したがって、さらに安定な親イオンは安定性の低い(または不安定な)イオンより後で断片化する。
しかしながら、上記で言及したように、本発明で利用されるトラップ場は、イオン振動の振幅の増大がイオンの永年周波数に影響を及ぼすように、四重極場と少なくとも1つの高次多重極場とが複合したものである。したがって、適当な符号の六重極または八重極が四重極場に重ね合わされる実施例では、オフ共鳴CID場からのエネルギーの取り込みによる前駆イオンの振動の増大は、そのイオンの永年周波数の増大を引き起こす。この場合、RFトラップ電圧の下り走査がイオンの永年周波数の低下を生じ、イオンの振動の結果的な増大がイオンの永年周波数の増大を生じる。励起された前駆イオンは、イオントラップに存在するバックグランド衝突気体の分子と衝突する。不安定なイオンについては、衝突エネルギーは十分高いのでイオンを壊す(断片化する)。安定なイオンについては、衝突はそれらの振動の振幅の低下を生じるので、それらの永年周波数の低下を生じる。これらのイオンの振動の振幅の低下のために、また、RFトラップ電圧の振幅のレベル低下のために、これらイオンの永年周波数は加えられたオフ共鳴CID電圧の周波数に再び近づき、その結果、これらのイオンはオフ共鳴CID励起場で再び励起される。これらのイオンがバックグランド衝突気体と衝突すると、それらは、今回は、さらなる運動エネルギーおよび内部エネルギーを得るので断片化される。
上述のプロセスはCID期間の終了まで複数回繰り返されてもよい。不安定なイオンはCID期間の相対的に早い部分で断片化し、安定なイオンは、CID期間の相対的に遅い部分で断片化する。この方法は、補足CIDの励起場の振幅を変える必要がなく、異なったイオンが最適な断片化のために正確なエネルギーを受け取れるようにするので、異なった親イオン構造についてCID衝突エネルギーを最適化する必要性を排除する(例えば、補足AC場の振幅を調整する必要があることによって)。
CIDプロセスの間、前駆イオンは非共鳴状態で励起されることに留意されたい。相対的に安定なイオン、すなわち、CID期間の早期に断片化されないそれらのイオンは、その位置におけるその永年周波数の依存性、言い換えれば、非線形のトラップ場のために、その永年周波数が補足CID励起場のオフ共鳴周波数へ向かっておよびそれから離れてシフトするので、周期的にまたはオン/オフ方式で励起される。さらに本発明のCID励起法は、CID段階の間、前駆イオンをイオントラップから排出させることはない。
別の実施態様では、CIDの開始時に、前駆イオンの永年周波数が、加えられるオフ共鳴AC波形の周波数よりも、例えば、2kHzまたは他の適当なオフセット値だけ低いRFトラップ電圧にて、前駆イオンが保存される。この実施態様では、前駆イオンを保存し、オフ共鳴AC波形を加えた後、RFトラップ電圧の振幅を下りに傾斜させる代わりに上り傾斜させる。この実施態様では、四重極トラップ場に重ね合わせる高次多重極場は、イオンの振動の振幅の増大と共にイオンの永年周波数が低下するように選択されてもよい。
別の実施態様では、CID期間の間、RFトラップ電圧を一定に保持し、周波数スイープの波形を加える。すなわち、非線形のトラップ場の特徴に依存して補足のオフ共鳴ACの周波数を変化させる(高くなるようにまたは低くなるようにスイープする)。
補足のCID励起電圧の振幅は、例えば、CIDが、約0.3のマシューのq値と共に約15ms実行される場合、選択された操作パラメータ下で経験的に決定されてもよい。例えば、補足のCID励起電圧の振幅が以下のカーブによって境界を設けられた領域にあるならば、前駆イオンは適度の収率で断片化されることが見い出されている。
振幅補足CID=0.0070×質量親イオン+0.0210、および
振幅補足CID=0.0005×質量親イオン+0.3619
式中、振幅補足CIDについての値はボルト(V)で与えられ、質量親イオンについての値はダルトン(Da)で与えられる。
しかしながら、振幅補足CIDが2つのカーブの範囲内に入る限り、振幅補足CIDの質量親イオンに対する関係は、線形であることが要求されないことに留意されたい。異なるように大きさを決めたイオントラップ、または、異なったトラップ電圧パラメータ、または異なったCID電圧パラメータについては、補足CIDの励起電圧(振幅補足CID)の振幅が適宜調整される必要があってもよい。
図4は、本発明の実施態様の実施例に従って利用される種々の波形(電圧信号)のタイミングの順序の図示である。具体的には、図4(a)は、イオントラップに加えられるRFトラップ電圧の時間の関数としての振幅を示している。図4(b)は、CID励起に利用される補足AC電圧の適用のタイミングを示している。図4(c)は、イオントラップにおける前駆イオン、例えば、親イオン、またはCIDの追加の繰り返しにおける、娘イオン、孫娘イオンなどを単離するために利用される補足AC電圧の適用のタイミングを示している。図4(c)はまた、CID段階から生じる生成物イオン(娘イオン、孫娘イオンなど)の分析的走査を行うために利用される補足AC電圧の適用のタイミングを示している。前に言及したように、特に異なった時間に加えられるという事実を考慮して、1つ以上の電圧源(発生器、合成機など)を用いて種々の補足AC電圧を加えてもよい。図4には示していないが、追加の補足AC電圧を加えて、上述のように電気的手段によって多重極場を重ね合わせてもよい。図4に描かれた操作は、4つの主な段階または工程:イオン化(および保存)A、イオンの単離B、CID C、および分析的走査Dにわたる。
図4におけるイオン化段階の存在は、イオントラップが内部イオン化のために構成されているまたは操作されることが前提である。イオン化段階の間、分析される試料材料がイオントラップに導入され、上述のような好適なイオン化装置によってイオン化される。イオン化の間、図4で区分Aに相当する、RFトラップ電圧の振幅は、質量m(p)の所望の前駆(または親)イオンを含む所望の範囲内の質量(m/z比)を有する試料イオンをすべて捕捉するのに好適である値Vに設定される。所望の範囲の外の質量を有するイオンはイオントラップから排除されるので保存されない。外部イオン化の場合、好適なイオン化装置が試料材料をイオン化し、得られたイオンをイオントラップに導入し、そこで同様の方法にてRFトラップ電圧によってイオンが保存される。外部イオン化の場合、図4に示されるイオン化段階は、導入および保存の段階と考えてもよい。
所望の範囲のイオンを保存した後、RFトラップ場をVから、図4の区分Bに相当するVに至るように傾斜させる。開示の前半で参照したもののような好適な単離法が採用されてもよい。一実施例において、RFトラップ場をVで保持する一方で、好適な補足AC単離波形を適用させる(図4(c))。この場合、補足ACの単離波形は、様々な周波数を混合したものから成る複合波形または広帯域波形である。そのような広帯域波形は、補足ACの単離波形によって前駆イオンが励起されて排出を促されないように、単離されるべき前駆イオンの永年周波数に相当する周波数に中心を持つノッチまたはウインドウを有する。補足AC電圧の周波数は共鳴状態下でイオントラップから望ましくないイオンを排出するために設定されてもよく、あるいは、補足AC電圧の振幅は、十分に高く設定されて、本開示の教示に従ってオフ共鳴状態下で排出を生じるようにしてもよい。別の実施例では、RFトラップ場をVからVに至るように傾斜させる間でさえ、補足ACの単離波形を有効にしてもよい。他の実施例では、RFトラップ場の振幅が一定に保持される一方で、組み合わせた場の周波数が走査される。
図4で具体的に説明される実施例では、RFトラップ場をVに傾斜させた後、固定周波数の補足AC単離波形を有効にし、次いでRFトラップ場をVに至るように傾斜させる。RFトラップ場のVからVへの傾斜は、m(p)−1以下の質量を有するイオンすべての排出を引き起こす。次いでRFトラップ場は、補足AC電圧信号の組成に依存してVからVに落とされ、あるいは、VからVに至るように下り傾斜がつくようにさせる。この時間の間、補足AC電圧が加えられて、m(p)+1以上の質量を有するイオンすべてを排出する。この目的で、VからVの間の間隔に相当する図4(c)に示される補足AC電圧信号の一部は、m(p)+1以上の質量を有するイオンの永年周波数に等しいまたは近い周波数を含む、広帯域波形または周波数の集合を含む波形であってもよい。
単離段階の最後で、質量m(p)の前駆イオンがイオントラップに単離され、RFトラップ場はVに下げられ、その振幅は前駆イオンを保存するのに十分である。次いでCID段階が開始され、上述の実施態様に従って前駆イオンを生成物イオンに断片化する。CID段階の間、RFトラップ場は、Vから、図4の区分Cに相当するVに至るように傾斜させる一方で、補足CID励起波形が加えられる(図4(b))。実施例として、補足CID励起波形の周波数は、好適なオフセット量(上述のような)によって前駆体の永年周波数より低い値に設定され、RFトラップ場は、VからVに下げられる。一般に、Vの振幅は、生成物イオンを保存するのに十分な値である。
CID段階の最後で、生成物イオンは、好適な技法によってイオントラップから分析的に走査され、検出され、処理されて生成物イオンの質量スペクトルを生じる。説明された実施例では、分析的走査段階の間、RFトラップ場は、Vから、図4の区分Dに相当するVに至るように傾斜させる一方で、補足AC分析的走査波形が加えられる(図4(c))。この段階の間、補足AC電圧の周波数は、共鳴状態下でイオントラップから生成物イオンを排出するように設定されてもよく、あるいは、補足AC電圧の振幅が十分高く設定されて本開示の教示に従ってオフ共鳴状態下で質量選択性の排出を生じてもよい。別の実施例では、組み合わせた場の周波数が走査される一方で、分析的走査段階の間、RFトラップ場の振幅は一定に保持される。
一般に、図4で説明されるプロセスは、所望の回数繰り返されて生成物イオンを連続的に生成し、それを分析する。例えば、次の反復では、前の反復で生じた娘イオンが親イオンとして単離され、CIDにより孫娘イオンを生じてもよい。次いで、孫娘イオンは分析的に走査されてもよく、あるいは、親イオンとして単離され、CIDにより曾孫娘イオンを生じてもよい。
図5は、オフ共鳴状態下でイオンを励起する方法の実施例を説明するフローチャート500である。この方法は、トラップ場および補足場を、3−Dまたは2−Dの構造のいずれかの電極構造、例えば、上述の電極構造200および300のいずれかに加えることを必要としてもよい。フローチャート500はまた、この方法を実行することが可能である装置またはシステムを表すものであってもよい。装置またはシステムには、素子(デバイス)、回路、およびその他のハードウエアや、ソフトウエアが含まれてもよい。
この方法は502で始まり、そこでは、好適な予備工程、例えば、電極構造にイオンを提供するために必要に応じて外部イオン化または内部イオン化を行うこと、衝突冷却および/またはCIDのために気体(単一種または複数種)を導入すること、分析する価値がないイオンを排除すること、予備走査、較正を行うことなどが行われる。ブロック506では、選択された質量範囲の当該イオンが電極構造にて捕捉される。例えば、RF電圧を、必要に応じて、電極構造の1つ以上の電極に加えて、所望の空間形態および機能を有する四重極(またはさもなければ対称もしくは近対称)RFトラップ場を生成してもよい。上述のように、トラップ場はまた、四重極成分と組み合わせて1つ以上の高次多重極成分を含む。高次多重極成分(単数または複数)は機械的に生成されてもよく、および/または電気的に生成されてもよい。ブロック510では、好適な技法によって、対象の質量または質量範囲の1種以上の前駆(例えば、親)イオン(またはそれに続く反復の場合、娘イオン、孫娘イオンなどのような生成物イオン)が単離される。例えば、単離のために選択される技法は、RFトラップ場の1つ以上のパラメータを変更すること、RFトラップ場を補足する追加の場を課すこと、追加の信号を電極構造に加えることなどを必要としてもよい。ブロック514では、いったん対象のイオン(単一種または複数種)が電極構造にて単離されたら、非線形のトラップ場と組み合わせてオフ共鳴AC波形の使用を必要とする上記方法の1つを用いてCIDプロセスを実行する。CIDプロセスは、前駆イオン(単一種または複数種)の1種以上の生成物イオンへの解離または断片化を生じる。CID段階の完了の際、プロセスは524で終了してもよく、そこでは、例えば、質量走査、質量スペクトルの生成などのような好適な次の工程が必要とされてもよい。
任意で、ブロック518で示されるように、電極構造からの生成物イオンを排出するまたは走査するための好適な技法を実行することによって、プロセスが継続してもよい。実施例として、質量不安定法または共鳴励起法を介して生成物イオンが排出されてもよい。さらなる実施例として、生成物イオンは、オフ共鳴法を介して排出されてもよい。
別の選択肢として、決定ブロック520で示されるように、上記プロセスの1つ以上の工程が所望に応じて反復され、解離および質量分析の連続的反復がなされてもよい。例えば、電極構造の操作パラメータは、対象の生成物イオン(単一種または複数種)を捕捉し、単離し、次いでそれが解離されて次の世代の生成物イオンを生じるように設定されてもよい。本発明のオフ共鳴CID法は、所望に応じて、CIDの各反復に採用されてもよい。したがって、図5で説明される方法は、所望に応じて反復されてn番目世代の生成物イオンを生じるように設定されてもよい。各反復については、ブロック520でなされる決定の結果に応じて、プロセスはブロック506(またはブロック510)に戻るか、または524で終了し、その際、質量走査、質量スペクトルの生成などのような好適な次の工程が行われてもよい。
上記で言及したように、図5は、説明された方法を実行するための装置、デバイス、機器またはシステム500の実施例を表すものであってもよい。従って、ブロック506〜518は、これらのブロック506〜518に相当する、上述された機能または工程を実行するための1つ以上の手段または構造を描いているとみなされてもよい。これらの機能を実施することが可能である装置、デバイス、機器およびシステムの実施例は、図1〜4と併せて上述されている。
本開示に記載された方法および装置は、一般に上述された、かつ例として図1で説明されたMSシステム100において実施されてもよいことが理解されるであろう。しかしながら、本主題は、図1で説明された特定のMSシステム100または図1で説明された回路および構成要件の特定の配置に限定されない。さらに、本主題はMSに基づいた適用に限定されない。
本開示で記載された主題は、イオンを捕捉するための磁場およびイオンをトラップ(またはイオンサイクロトロンセル)から排出するための電場を採用するフーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴(FT−ICR)に基づいて操作するイオントラップへの適用も見い出してもよい。主題はまた、静電気トラップへの適用も見い出してもよい。これらのイオン捕捉および質量分光分析法を実施するための装置および方法は、当業者に周知なので、本明細書ではさらに詳細に記載しない。
本発明の範囲から逸脱することなく本発明の種々の局面または詳細を変更してもよいことがさらに理解されるであろう。さらに、前述の記載は説明のみを目的とし、限定目的ではなく、本発明は特許請求の範囲によって定義される。

Claims (20)

  1. イオントラップにおいて前駆イオンを励起する方法であって、
    (a)四重極場および多重極場を含む非線形トラップ場に前駆イオンを捕捉する工程であって、前記四重極場は、前記イオントラップの電極構造に、高周波(RF)トラップ電圧を、RFトラップ振幅およびRFトラップ周波数で加えることによって生成されるものであることと、
    (b)前記電極構造に、前記前駆イオンの永年周波数とはオフセット量だけ異なる補足交流(AC)電圧を、補足AC振幅および補足AC周波数で加えて、前記永年周波数を前記補足AC周波数に向かって掃引させる工程と、
    (c)前記イオントラップの複数の操作パラメータの少なくとも1つを調整することにより、前記イオンの前記永年周波数を調整する工程であって、前記操作パラメータは、前記RFトラップ振幅、前記RFトラップ周波数、および前記補足AC周波数を含み、それによって前記前駆イオンが、前記補足AC電圧と共鳴することなく衝突誘起解離(CID)するのに十分なエネルギーを前記補足AC電圧から吸収することを含む方法。
  2. 前記補足AC電圧が、三次元構造の前記電極構造に加えられる、請求項1記載の方法。
  3. 前記補足AC電圧が、二次元構造の前記電極構造に加えられる、請求項1記載の方法。
  4. 理想的な四重極配置から逸脱している前記電極構造に、前記RFトラップ電圧を加えることによって、前記四重極場に前記多重極場を重ね合わせる工程を含む、請求項1記載の方法。
  5. 前記補足AC電圧に加えて、補助電圧を、前記電極構造に加えることによって、前記四重極場に前記多重極場を重ね合わせる工程を含む、請求項1記載の方法。
  6. 前記多重極場が、前記四重極場の1%以上の強度を有する多重極場成分を含む、請求項1記載の方法。
  7. 前記非線形トラップ場の中心からの前記前駆イオンの距離が増大すると共に増大する前記前駆イオンの前記永年周波数を、前記多重極場が生じる、請求項1記載の方法。
  8. 前記非線形トラップ場の中心からの前記前駆イオンの距離が増大すると共に低下する前記前駆イオンの前記永年周波数を、前記多重極場が生じる、請求項1記載の方法。
  9. 前記補足AC振幅が、前記RFトラップ振幅の0.01%〜1%の範囲である、請求項1記載の方法。
  10. 前記オフセット量が0.5kHz〜5kHzの範囲である、請求項1記載の方法。
  11. 前記補足AC周波数が、前記永年周波数よりも小さく、かつ前記調整する工程が、前記RFトラップ振幅を下り傾斜がつくようにすることを含む、請求項1記載の方法。
  12. 前記補足AC周波数が、前記永年周波数よりも大きく、かつ前記調整する工程が、前記RFトラップ振幅を上り傾斜がつくようにすることを含む、請求項1記載の方法。
  13. 前記調整する工程が、前記補足AC周波数をスイープすることを含む、請求項1記載の方法。
  14. 前記調整する工程が、前記RFトラップ周波数をスイープすることを含む、請求項1記載の方法。
  15. 前記調整する工程が、前記前駆イオンを生成物イオンに断片化させるものであり、当該方法が前記イオントラップの外で当該生成物イオンを分析的に走査することをさらに含む、請求項1記載の方法。
  16. 前記前駆イオンの解離から生成された生成物イオンについて、前記非線形トラップ場に捕捉する工程と、前記補足AC電圧を加える工程と、前記操作パラメータの少なくとも1つを調整する工程とを反復することをさらに含む、請求項1記載の方法。
  17. 前駆イオンについて衝突誘起解離(CID)を実行するためのイオントラップであって、
    電極構造を形成する複数の電極であって、その中で内部空間を規定する複数の電極と、
    前記電極構造に、高周波(RF)トラップ電圧を、RFトラップ振幅およびRFトラップ周波数で加えて、四重極トラップ場を生成するように構成された第1の回路と、
    前記四重極トラップ場に多重極場を重ね合わせて非線形トラップ場を生成するための手段と、
    前記電極構造に、前記前駆イオンの永年周波数とはオフセット量だけ異なる補足交流(AC)電圧を、補足AC振幅および補足AC周波数で加えて、前記永年周波数を前記補足AC周波数に向かって掃引させるように構成された第2回路と、
    前記前駆イオンが、前記補足AC電圧と共鳴することなく衝突誘起解離(CID)するのに十分なエネルギーを、前記補足AC電圧から吸収するように、前記イオントラップの複数の操作パラメータの少なくとも1つを調整することにより前記イオンの前記永年周波数を調整するように構成された第3の回路であって、前記操作パラメータは、前記RFトラップ振幅、前記RFトラップ周波数、および前記補足AC周波数を含む第3の回路とを含む、イオントラップ。
  18. 前記多重極場を重ね合わせるための手段が、理想的な四重極配置から逸脱している前記電極構造の複数の電極を含む、請求項17記載のイオントラップ。
  19. 前記多重極場を重ね合わせるための手段が、前記補足AC電圧に加えて、補助電圧を前記電極構造に加えるように構成された第4の回路を含む、請求項17記載のイオントラップ。
  20. 前記多重極場を重ね合わせるための手段が、前記四重極場の1%以上の強度を有する多重極場成分を重ね合わせるための手段を含み、前記オフセット量が0.5kHz〜5kHzの範囲である、請求項17記載のイオントラップ。
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