JP2005032476A - 質量分析装置 - Google Patents

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豊田岐聡
Morio Ishihara
石原盛男
Mitsuyasu Iwanaga
岩永光恭
Yoshihiro Nukina
貫名義裕
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Abstract

【課題】イオン化部から質量分析部までイオンを輸送するイオン輸送系において、分析に必要なイオンを高効率に透過すると共に、不要なイオンを質量分析部に到達する前に排除可能な多重極イオンガイドを備えた質量分析装置を提供する。
【解決手段】複数のロッド状電極に高周波電圧を印加して、イオン源から出たイオンを輸送するイオンガイドを備えた質量分析装置において、ガイド用の高周波電圧に重畳して、さらに、所定の質量電荷比を持ったイオンの固有振動周波数の高周波電圧を、イオンガイドに印加するようにした。
【選択図】 図4

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、分析対象イオンを高効率で透過させると共に、不要イオンを高効率で排除可能なイオン輸送技術を備えた質量分析装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
質量分析装置は、試料から生成するイオンを真空中で飛行させ、飛行の過程で質量の異なるイオンを分離して、スペクトルとして記録する装置である。質量分析装置には、扇形磁場を用いてイオンの質量分散を行なわせる磁場型質量分析装置、四重極電極を用いて質量によるイオンの選別(フィルタリング)を行なわせる四重極質量分析装置(QMS)、質量によるイオンの飛行時間の違いを利用してイオンを分離する飛行時間型質量分析装置(TOFMS;time of flight MS)などが知られている。
【0003】
これらの質量分析装置の内、磁場型質量分析装置とQMSは、連続的にイオンを生成するタイプのイオン源に適合しているのに対し、TOFMSは、パルス状にイオンを生成するタイプのイオン源に適合している。従って、連続型のイオン源をTOFMSに利用しようとすれば、イオン源の利用のしかたに工夫が必要である。直交加速型飛行時間型質量分析装置(OA−TOFMS;orthogonal acceleration TOFMS)は、連続型のイオン源からパルス状のイオンを射出することができるように工夫されたTOFMSの一例である。
【0004】
図1に、典型的なOA−TOFMSの構成を示す。OA−TOFMSは、電子衝撃(EI)イオン源、化学イオン化(CI)イオン源、電界脱離(FD)イオン源、誘導結合プラズマ(ICP)イオン源、エレクトロスプレイ(ESI)イオン源、高速原子衝撃(FAB)イオン源などの連続型の外部イオン源1と、第1および第2の隔壁および図示しない真空ポンプによって構成される差動排気壁10と、該差動排気壁10の第1の隔壁上に設けられた第1のオリフィス2と、該差動排気壁10内に置かれたリングレンズ3と、該差動排気壁10を構成する第2の隔壁上に設けられた第2のオリフィス4と、イオンガイド5が置かれた中間室11と、収束レンズおよび偏向器から成るレンズ群6、イオン押し出しプレートと加速レンズ(グリッド)から成るランチャー7、イオンを反射するリフレクター8、およびイオン検出器9などのイオン光学系を構成する構成物が置かれた測定室13とを備えている。
【0005】
このような構成において、外部イオン源1において試料から生成したイオンは、まず最初に、第1のオリフィス2を通って差動排気壁10に導入される。そして、差動排気壁10内で拡散しようとするイオンは、差動排気壁10内のリングレンズ3によって集束され、第2のオリフィス4を通って中間室11に導入される。中間室11に導入されたイオンは、中間室11内で運動エネルギーを落とし、イオンガイド5から発生する高周波電界によってイオンビーム径を小さくして、高真空な測定室13へと誘導される。中間室11と測定室13を仕切る隔壁には、第3のオリフィス12が設けられている。イオンガイド5から誘導されてきたイオンは、この第3のオリフィス12によって、丸い一定の径を持ったイオンビームに整形されて、測定室13に導入される。
【0006】
測定室13の入口には、収束レンズと偏向器とから成るレンズ群6、および図示しない入射ビーム規制スリットが設置されている。測定室13に入ってきたイオンビームは、レンズ群6によりビームの拡散や偏向を是正され、入射ビーム規制スリットでビームの断面形状を整えられた後、ランチャー7に導入される。ランチャー7内には、イオン押し出しプレートとグリッドが対向配置されて成るイオン溜と、該イオン溜の軸方向に対して直交する方向に並ぶ加速レンズとが設置されている。
【0007】
イオンビームは、最初、図2に示すように、20〜50eVの低エネルギー状態で、イオン押し出しプレート14とグリッド15および加速レンズ16によって挟まれたイオン溜17に向けて、平行に進入する。イオン溜17内を平行に移動する一定の長さを持ったイオンビーム18は、イオン押し出しプレート14に、図3に示すような、イオンの極性と同じ極性の、数kV程度のパルス状の加速電圧を印加することにより、イオンビーム18の進入軸方向(X軸方向)とは垂直な方向(Z軸方向)にパルス状に加速され、イオンパルス19となって、イオン溜17と対向する位置に設けられた図示しないリフレクターに向けて飛行を開始する。
【0008】
垂直方向に加速されたイオンは、測定室13に導入されたときのX軸方向の速度と、それとは垂直な方向にイオン押し出しプレート、グリッド、及び加速レンズによって与えられたZ軸方向の速度とが足し合わされるため、完全なZ軸方向ではなく、わずかに斜めを向いたZ軸方向に飛行し、リフレクター8で反射されて、イオン検出器9に到達する。
【0009】
イオンの加速の過程では、イオンの質量の大小にかかわらず、同じ電位差がイオンに作用するため、軽いイオンほど速度が速くなり、重いイオンほど速度が遅くなる。その結果、イオンの質量の違いがイオン検出器8に到達するまでの到達時間の違いとなって現れ、イオンの質量の違いをイオンの飛行時間の違いとして分離することができる。
【0010】
このようにして、連続型のイオン源1から生成したイオンビームを、イオン押し出しプレート、グリッド、及び加速レンズから成るランチャー7によってパルス状に加速することにより、連続型のイオン源を、パルス状のイオン源に対して適合性を持つTOFMSに適用することができる。
【0011】
次に、上記質量分析装置におけるイオン輸送系について説明する。試料を質量分析部以外でイオン化する質量分析装置では、通常、イオンを生成するイオン源と、生成されたイオンの質量を分析する質量分析部との間に、イオン輸送系、いわゆるイオンガイドが設置される。
【0012】
イオン輸送系の電極構成としては、静電的なレンズ構成を持つものと、多重極の高周波場を用いるものとに大別される。通常、後者は、4本以上の偶数本のロッド状電極が平行配置された電極系から成る多重極イオンガイドである。
【0013】
図3(a)、(b)に、4本および8本のロッド状電極が平行配置された多重極イオンガイドの例を示す。隣り合わせのロッド状電極には、電圧の符号が反対になるように、高周波電圧Φ=Vaccos(Ωt)が印加され、ロッド状電極間の空間に、高周波多重極場が形成される。ここで、Vacは、ロッド状電極に印加される最大高周波電圧、Ωは、ロッド状電極に印加される高周波電圧の角振動周波数(=2πf)、tは、時間である。イオンは、この高周波電界の中を、振動しながら透過する。
【0014】
多重極イオンガイドでは、比較的長い距離でも、イオンを安定に輸送することができ、更に、真空度の低い場合等は、エネルギー収束性が向上することが期待できるため、多くの質量分析装置に採用されている。
【0015】
従来の多重極イオンガイド方式では、多重電極に印加される高周波電圧は、一定に固定され、可動設定されていなかったが、最近になって、多重電極に印加される高周波電圧を、可動設定することにより、イオンガイドを透過できるイオン種を選別できるようにした質量分析装置が提案されている(特許文献1)。
【0016】
また、ロッド状電極に、高周波電圧と共に、直流電圧を印加して、前段のオリフィスとの間に電位差を設けることにより、所定の質量よりも小さな質量のイオンを排除するようにしたイオンガイドを採用した質量分析装置も提案されている(特許文献2)。
【0017】
一方、多重極場を発生させることができるイオン制御装置としては、多重極イオンガイドの他にも、多重極電極を構成するロッド状電極に、高周波電圧と直流電圧を重畳して印加して、そこを通過するイオンを、その質量電荷比に応じて選別するための、マスフィルターとして働かせる、四重極質量分析装置や、多重極場が形成された狭い空間内に、イオンを蓄積させる働きを持った、イオントラップなどが知られている。
【0018】
このうち、イオントラップでは、イオン閉じ込め用の高周波電圧(大文字のRFで表わす)に重畳させて、蓄積された所定のイオンの固有振動数に共鳴する周波数の高周波電圧(小文字のrfで表わす)を、イオントラップを構成する電極に与え、トラップ内から、特定の質量電荷比を持ったイオンのみを排除するrf共鳴排出法(rf Resonant Ejection)が知られている(非特許文献1、2)。
【0019】
この技術は、イオントラップ内に閉じ込められているイオンの中から、所定の質量電荷比を持ったイオンのみを、選択的に排除するものであり、この技術を、同じ多重極場を用いた応用技術の1つである、多重極イオンガイドに応用すれば、イオン輸送時に、輸送中のイオンの中から、所定の質量電荷比を持ったイオンのみを、選択的に排除することが可能になる。
【0020】
【特許文献1】
特開2002−260575号公報。
【0021】
【特許文献2】
特開2002−367560号公報。
【0022】
【非特許文献1】
豊田岐聡著、修士論文「RFイオントラップを用いた分子イオンの光解離反応の研究」、大阪大学大学院理学研究科物理専攻松尾研究室、平成8年12
月、17〜20頁。
【0023】
【非特許文献2】
R. E. Kaiser, R. G. Cocks, G. C. Stafford, J. E. P. Syka and P. H. Hemberger, Int. J. Mass Spectrom. Ion Processes., vol. 106, (1991), pp. 78−115.
【0024】
【発明が解決しようとする課題】
実際、イオン輸送時に、輸送中のイオンの中から、所定の質量電荷比を持ったイオンのみを、選択的に排除したいという要望は多い。
【0025】
例えば、誘導結合プラズマ質量分析装置(ICP−MS)は、数MHz〜数十MHzの高周波による誘導コイル内の磁界によって発生させた誘導電流で、アルゴンガスなどをイオン化して、高温(5000〜7000゜K)のプラズマを発生させ、そのプラズマ中に導入した試料を、原子状態にまで分解・イオン化し、質量分析する装置である。主に元素分析に用いられる。
【0026】
このとき、アルゴンイオンが、大量に、質量分析部に導入され、妨害イオンとなる。そこで、アルゴンイオンのみを選択的に除去することが求められる。
【0027】
また、ガスクロマログラフ質量分析装置(GC−MS)は、試料を高精度で分離する技術の1つであるガスクロマトグラフ装置と、質量分析装置とを結合した装置であるが、ガスクロマトグラフ装置で、試料を分離するためのキャリアガスとして用いられているヘリウムガスが、大量に電子衝撃イオン源に導入されて、大量のヘリウムイオンが発生し、それが、大量に、質量分析部に導入され、妨害イオンとなる。
【0028】
実際のGC−MSでは、ヘリウムガスが、大量に、電子衝撃イオン源に導入されるのを防ぐために、ヘリウムセパレータを用いているが、必ずしも効果は十分ではなく、何らかの方法により、ヘリウムイオンのみを選択的に除去することが求められる。
【0029】
また、液体クロマトグラフ質量分析装置(LC−MS)や、電気泳動質量分析装置(CE−MS)では、液体クロマトグラフ装置や電気泳動装置で成分分離した液体試料を、質量分析装置に導入して、検出する場合、エレクトロスプレーイオン源(ESI)や大気圧化学イオン化イオン源(APCI)などのイオン化インターフェイスが利用される。
【0030】
ところが、これらの液体試料は、そのほとんどが溶媒であることから、イオン源では、溶媒に起因する大量の低質量イオンが発生する。通常、溶媒は、目的成分よりも早く、カラムを通過して、イオン源へと到達するから、質量分析部では、目的成分のイオンに先立って、溶媒に起因する大量の低質量イオンが、イオンガイドを通過して、導入されることになる。
【0031】
このような大量の低質量イオンは、イオンガイドや質量分析部の空間電荷に影響を与え、後から到来する高質量イオンの分析に悪影響を及ぼすことがある。そこで、溶媒由来のイオンのみを選択的に除去することが求められる。
【0032】
本発明の目的は、上述した点に鑑み、イオン化部から質量分析部までイオンを輸送するイオン輸送系において、分析に必要なイオンを高効率に透過すると共に、不要なイオンを質量分析部に到達する前に排除可能な多重極イオンガイドを備えた質量分析装置を提供することにある。
【0033】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成するため、本発明の質量分析装置は、
複数のロッド状電極に高周波電圧を印加して、イオン源から出たイオンを輸送するイオンガイドを備えた質量分析装置において、
ガイド用の高周波電圧に重畳して、さらに、所定の質量電荷比を持ったイオンの固有振動周波数の高周波電圧を、イオンガイドに印加するようにしたことを特徴としている。
【0034】
また、異なるイオンの固有振動周波数の高周波電圧を重畳させたイオンガイドを複数台配列したことを特徴としている。
【0035】
また、前記所定の質量電荷比を持ったイオンは、妨害イオン、または夾雑物イオンであることを特徴としている。
【0036】
また、前記イオン源は、誘導結合プラズマイオン源であることを特徴としている。
【0037】
また、前記イオンは、アルゴンイオンであることを特徴としている。
【0038】
また、前記イオン源は、ガスクロマトグラフ装置と接続された電子衝撃イオン源であることを特徴としている。
【0039】
また、前記イオンは、ヘリウムイオンであることを特徴としている。
【0040】
また、前記イオン源は、液体クロマトグラフ装置、または電気泳動装置と接続されたエレクトロスプレーイオン源、または大気圧化学イオン化イオン源であることを特徴としている。
【0041】
また、前記イオンは、溶媒分子由来のイオンであることを特徴としている。
【0042】
また、前記ロッド状電極の近傍に、イオン検出器を備えたことを特徴としている。
【0043】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図4は、本発明にかかる質量分析装置に使用される多重極イオンガイドの一実施例を示したものである。この多重極イオンガイドは、従来の技術で取り上げた、磁場型質量分析装置、四重極質量分析装置、飛行時間型質量分析装置など、多くの種類の、質量分析装置の、イオン輸送系に組み込まれて、使用される。
【0044】
本実施例は、4本のロッド状電極20、21、22、23で構成されたイオンガイドの、隣り合った電極に、180゜位相の異なる第1の高周波(RF)と、同じく180゜位相の異なる第2の高周波(rf)とが、重畳して印加できるように構成されている。ここで、RFは、イオンガイド内にイオンを閉じ込めるために、ロッド状電極に印加される高周波、また、rfは、イオンガイド内に閉じ込められた、所定の質量電荷比を持つイオンの固有振動周波数に相当する高周波である。
【0045】
このような構成において、4本のロッド状電極にRFを印加して、すべてのイオンを、イオンガイド内に閉じ込めると共に、4本のロッド状電極に、更にrfを印加することによって、イオンガイド内に閉じ込められているイオンの内、rfの周波数を固有振動周波数とする、所定の質量電荷比を持つイオンに対してのみ、イオンガイド内での振動運動の振幅を、共鳴により増大させて、イオンガイドの外に飛び出させるようにする。
【0046】
これにより、イオン化部から質量分析部までイオンを輸送するイオン輸送系において、分析に必要なイオンを高効率に透過すると共に、不要なイオンを質量分析部に到達する前に排除可能な多重極イオンガイドを実現することができる。
【0047】
今、イオントラップのrf共鳴排出法の理論をイオンガイドに応用すると、まず、イオンガイド内に閉じ込められているイオンの、質量電荷比に応じた固有振動周波数ω0iは、式(1)で表わされる。
【0048】
【数1】
Figure 2005032476
ここで、βは、縦軸をa、横軸をqとする、いわゆる多重極場のスタビリティ・ダイアグラムに関わるパラメーターであり、多重極場の直流電圧成分に関わるパラメーターaと、多重極場の高周波成分に関わるパラメーターqとにより、式(2)のように定義される。
【0049】
【数2】
Figure 2005032476
また、イオンガイドの光軸に直交する方向を、Z軸方向とすると、多重極場の直流電圧成分に関わるパラメーターaと、多重極場の高周波成分に関わるパラメーターqは、それぞれ、式(3)と式(4)とで定義される。
【0050】
【数3】
Figure 2005032476
【数4】
Figure 2005032476
ここで、eは、素電荷(単位:クーロン)、mは、質量数、rは、イオンガイドの中心からロッド状電極までの距離(単位:メートル)、Ωは、ロッド状電極に印加される高周波RFの角振動周波数(単位:ヘルツ)、Vdcは、ロッド状電極に印加される直流電圧(単位:ボルト)、Vacは、ロッド状電極に印加される高周波RFの最大電圧(単位:ボルト)である。また、ロッド状電極に印加される高周波RFの周波数をfとすると、Ω=2πfである。
【0051】
ところで、イオンガイドでは、一般に、ロッド状電極に印加される直流電圧Vdcは、ゼロに設定されることが多い。それは、ロッド状電極に、高周波電圧と共に、直流電圧を印加すると、多重極場が、単にイオンを閉じ込めるだけのものではなくなり、特定の質量電荷比を持ったイオンを排除する、マスフィルターとしての作用が発生するので、それを避けるためである。イオンガイドの役割としては、特定の質量電荷比を持ったイオンを排除することなく、すべてのイオンを輸送できることが望ましい。
【0052】
従って、Vdcを0に設定すると、a=0となり、式(2)は、式(5)のように簡単になる。
【0053】
【数5】
Figure 2005032476
式(4)と式(5)を、式(1)に代入すると、質量数mのイオンの、イオンガイド内での固有振動周波数ω0Zの一般式は、式(6)で表わされる。
【0054】
【数6】
Figure 2005032476
今、排除するイオンを132Xe、ロッド状電極に印加されるガイド用高周波RFの周波数fを800kHz、ロッド状電極に印加されるガイド用高周波RFの最大電圧Vacを180V、ロッド状電極に印加される直流電圧Vdcをゼロとして、式(4)および式(6)に基づいて、q値とrf固有振動周波数ω0Zを計算すると、次のような値が得られた。
【0055】
Figure 2005032476
尚、1.602177×10−19は、素電荷e(単位:クーロン)、131.90414は、132Xeの質量、1.66054×10−27は、原子質量単位m(単位:kg)、0.0113138は、イオンガイドの中心からロッド状電極までの距離(単位:メートル)である。
【0056】
すなわち、ロッド状電極に印加されるイオン排除用高周波rfの周波数を、45.05kHzに設定すれば、132Xeのイオンのみを、イオンガイドでイオンを輸送中に、選択的に排除することが可能になる。
【0057】
このイオンガイドは、132Xeイオンの排除ばかりでなく、誘導結合プラズマ質量分析装置(ICP−MS)で大量に観測される妨害イオン、例えばアルゴンイオンArや、ガスクロマトグラフ装置と接続された電子衝撃イオン源で大量に発生する妨害イオン、例えばヘリウムイオンHeや、液体クロマトグラフ質量分析装置(LC−MS)や電気泳動質量分析装置(CE−MS)での試料のイオン化の際に発生する、溶媒由来の低質量イオンなどの排除にも有効である。
【0058】
このようなイオンガイドを、複数台用意して、イオンガイドごとに異なる周波数のrfを印加して、タンデムに配列し、イオンが次々に、各イオンガイドを通過するようにすれば、複数の異なる質量電荷比を持つイオンの排除も可能である。その場合、イオンガイド間の干渉を避けるために、イオンガイド間に、シールド機能を持たせたスリットを設けても良い。
【0059】
また、排除されたイオンを、ロッド状電極の近傍に設置したイオン検出器で検出するようにすれば、排除されたイオンも、同時に観測することができる。
【0060】
尚、ロッド状電極に印加される直流電圧は、上記実施例では、ゼロに設定したが、本発明は、必ずしも、ロッド状電極に印加される直流電圧が、ゼロの場合に限定されるものではない。任意の直流電圧が、ロッド状電極に印加されている状態でも、本発明が実施可能であることは、言うまでもない。
【0061】
また、イオンガイド1台当たりに印加されるrfの数は、上記実施例では、1周波数に限定したが、これは、周波数が、ある程度離れていれば、複数の周波数を印加することも可能である。
【0062】
【発明の効果】
本発明の結果、イオン化部から質量分析部までイオンを輸送するイオン輸送系において、分析に必要なイオンを高効率に透過すると共に、不要なイオンを質量分析部に到達する前に排除可能な多重極イオンガイドを備えた質量分析装置を提供することが可能になった。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来の飛行時間型質量分析装置を示す図である。
【図2】従来の飛行時間型質量分析装置を示す図である。
【図3】従来のイオンガイドを示す図である。
【図4】本発明の一実施例を示す図である。
【符号の説明】
1・・・外部イオン源、2・・・第1のオリフィス、3・・・リングレンズ、4・・・第2のオリフィス、5・・・イオンガイド、6・・・レンズ群、7・・・ランチャー、8・・・リフレクター、9・・・イオン検出器、10・・・差動排気壁、11・・・中間室、12・・・第3のオリフィス、13・・・測定室、14・・・イオン押し出しプレート、15・・・グリッド、16・・・加速レンズ、17・・・イオン溜、18・・・イオンビーム、19・・・イオンパルス、20〜23・・・ロッド状電極。

Claims (10)

  1. 複数のロッド状電極に高周波電圧を印加して、イオン源から出たイオンを輸送するイオンガイドを備えた質量分析装置において、
    ガイド用の高周波電圧に重畳して、さらに、所定の質量電荷比を持ったイオンの固有振動周波数の高周波電圧を、イオンガイドに印加するようにしたことを特徴とする質量分析装置。
  2. 異なるイオンの固有振動周波数の高周波電圧を重畳させたイオンガイドを複数台配列したことを特徴とする請求項1記載の質量分析装置。
  3. 前記所定の質量電荷比を持ったイオンは、妨害イオン、または夾雑物イオンであることを特徴とする請求項1または2記載の質量分析装置。
  4. 前記イオン源は、誘導結合プラズマイオン源であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の質量分析装置。
  5. 前記イオンは、アルゴンイオンであることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の質量分析装置。
  6. 前記イオン源は、ガスクロマトグラフ装置と接続された電子衝撃イオン源であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の質量分析装置。
  7. 前記イオンは、ヘリウムイオンであることを特徴とする請求項1、2、3、または6記載の質量分析装置。
  8. 前記イオン源は、液体クロマトグラフ装置、または電気泳動装置と接続されたエレクトロスプレーイオン源、または大気圧化学イオン化イオン源であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の質量分析装置。
  9. 前記イオンは、溶媒分子由来のイオンであることを特徴とする請求項1、2、3、または8記載の質量分析装置。
  10. 前記ロッド状電極の近傍に、イオン検出器を備えたことを特徴とする請求項1ないし9のいずれか1つに記載の質量分析装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2010518378A (ja) * 2007-02-01 2010-05-27 サイオネックス コーポレイション 質量分光計のための微分移動度分光計プレフィルタ

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