JP5206605B2 - イオントラップ質量分析装置 - Google Patents

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Description

本発明は、電場によりイオンを捕捉して蓄積するイオントラップを備えるイオントラップ質量分析装置に関する。
質量分析装置の一種として、イオン源において生成された各種イオンをイオントラップに一旦蓄積し、その後に、該イオントラップ自体でイオンの質量分離を行う又はイオンをイオントラップから吐き出してその外部で飛行時間型質量分析器等により質量分離を行って検出する、質量分析装置が知られている。この種の質量分析装置では、各種イオンをイオントラップに蓄積した後に、特定の質量電荷比m/zをもつ又は特定の質量電荷比範囲に含まれるイオンのみをイオントラップ内に選択的に残し、その残したイオンをプリカーサイオンとして衝突誘起解離(Collision-induced dissociation、以下「CID」と略す)などの手法により開裂させ、開裂により生成されたプロダクトイオンをイオントラップから出射して質量分析することも可能である。
イオントラップとしては、複数のロッド電極を平行に配置したリニア型の構成も知られているが、図3(a)に示すように、円環状のリング電極31と該リング電極31を挟んで対向配置された一対のエンドキャップ電極32、33とからなる3次元四重極型のイオントラップ3が広く利用されている。以下、3次元四重極型イオントラップについて説明する。
上記イオントラップ3では、基本的に、エンドキャップ電極32、33を例えば接地電位とし、振幅可変の高周波高電圧をリング電極31に印加することにより、それら電極で囲まれる空間に四重極高周波電場を形成し、その電場の作用によってイオンを閉じ込める。リング電極31に高周波高電圧を印加するための構成の一例としては、リング電極31にコイルを接続し、そのコイルのインダクタンスと、リング電極31と2つのエンドキャップ電極32、33との間の静電容量、及びリング電極31に接続された他の全ての回路要素の静電容量とでLC共振回路を形成する。このLC共振回路に、これを駆動する高周波駆動源(RF励振回路)を直接又は変圧器結合を通じて接続する。この構成では、高いQ値を利用して振幅を増幅し、小さな駆動電圧で以て、リング電極31に大振幅の高周波電圧を印加することができる(例えば特許文献1など参照)。一般的なイオントラップでは、リング電極31の内接半径は10[mm]程度のディメンジョンであり、リング電極31に印加される高周波高電圧の周波数は500〜1000[kHz]程度の範囲である。
よく知られているように、イオントラップにおけるイオン安定捕捉条件は、図4に示すようなマシューダイヤグラムを用いて説明することができる。この図の、縦軸はaz、横軸はqzである。図4に示すaz−qz面において実線で囲まれた領域Sは、イオンがイオントラップ内の捕捉領域に安定して存在できる範囲であり、領域Sの外側はイオンが発散してしまう不安定領域である。パラメータaz,qzはイオンの質量電荷比によって定まり、これらの値の組(az,qz)が特定の範囲に存在する場合に、このイオンは特定の周波数(永年周波数)で振動を繰り返し捕捉領域に閉じ込められる。
上記イオン安定捕捉条件によれば、エンドキャップ電極が接地電位である場合、次の(1)式に示すq値が0.908以上になる条件ではイオンは捕捉されないことが明らかである。
q=8・z・e・V/m・(r0 2+2・z0 2)・Ω2 …(1)
ここで、e:電気素量、z:イオンの電荷数、V:リング電極に印加される高周波高電圧の振幅、Ω:リング電極に印加される高周波高電圧の周波数(角周波数)、m:イオンの質量、r0:リング電極の内接半径、z0:イオントラップ中心点からエンドキャップ電極までの最短距離、である。
一方、上述のようにリング電極31に高周波高電圧を印加した場合、イオントラップ3内には図3(b)に示すような形状の擬電位ポテンシャルが形成されることが知られている(非特許文献1参照)。イオンは擬電位ポテンシャルが落ち込んだポテンシャル井戸の中で振動しつつ捕捉される。つまり、擬電位ポテンシャルがイオン捕捉ポテンシャルである。理論的には、このポテンシャル井戸の深さDは、q<0.4の条件の下で、次の(2)式で近似される。
D=z・e・V2/m・(r0 2+2・z0 2)・Ω2=(V/8)・q…(2)
ところで、イオントラップ質量分析装置においてMS/MS(又はMSn)分析を行う場合、イオンをイオントラップ3内に蓄積した後、イオントラップ3内にイオンを捕捉しつつエンドキャップ電極32、33間に小振幅の高周波電圧を印加することで、その周波数に応じた質量電荷比を有するイオンを共鳴励振させてイオントラップ3内から除外する。つまり、プリカーサイオンの選別(アイソレーション)を行う。引き続いて、イオントラップ3内にCIDガスを導入するとともに、エンドキャップ電極32、33間に所定周波数の小振幅の高周波電圧を印加する。その電圧により形成される高周波電場により、イオントラップ3内に残されたプリカーサイオンは共鳴励振され、運動エネルギーを得てCIDガス分子と衝突する。それにより、プリカーサイオンは開裂し、より小さな質量電荷比を持つプロダクトイオンが生成される。このとき、プロダクトイオンをイオントラップ3内に捕捉・蓄積するために、イオン選別に引き続き、リング電極31には捕捉用の高周波高電圧が印加される。
上記のようにCIDによりプリカーサイオンを開裂させるには該イオンに十分な運動エネルギーを与える必要があり、そのためにはリング電極に印加する高周波高電圧の振幅Vを或る程度大きくする必要がある。しかしながら、(1)式に示したようにq値は振幅Vに比例するため、振幅Vを大きくしすぎると、特定のプロダクトイオンに対するq値が0.908を超えてしまい、理論上捕捉不可能となる。
そこで従来一般的には、十分な擬電位ポテンシャルを確保しつつ、CIDに必要な運動エネルギーをプリカーサイオンに与えるために、CID時のq値を、ターゲットとするプリカーサイオンの質量電荷比に対して0.3程度に設定するようにしている。しかしながら、この条件では、プリカーサイオンの質量電荷比の約1/3が、捕捉可能なプロダクトイオンの質量電荷比の下限になる。例えばm/z=1000のプリカーサイオンをCIDする際には、m/zが約300以下のプロダクトイオンに対してq値が0.908以上となってしまい、その軌道が不安定となって軌道半径が増大し、電極に衝突するなどして消失してしまう。
より低い質量電荷比のプロダクトイオンを捕捉するためにはCID時のq値を下げる必要があるが、(2)式に示したように、擬電位ポテンシャルDはqに比例するため、CID時のq値を下げると擬電位ポテンシャルが十分に確保できなくなり、プロダクトイオンが生成する前にプリカーサイオンが消失してしまうことになる。その結果、生成されるプロダクトイオンの量も少なく、検出感度が悪化する。
捕捉可能な最低質量(Low Mass Cutoff、以下「LMC」」と略す)を低く維持するためにq値を保ったままで擬電位ポテンシャルDを大きくするには、リング電極31へ印加する高周波高電圧の振幅Vのみを大きくするのではなく、周波数Ωを大きくしてその二乗に比例して振幅Vも大きくすることが考えられる。一方、(1)式から明らかなように、高周波高電圧の周波数Ωを2倍としたときに同じq値を維持するには、振幅Vを4倍にする必要がある。プリカーサイオンの選別を行う際にその選択性を高めるにはqが高いほうが好ましく、選択対象のプリカーサイオンの質量電荷比が高いと振幅Vをかなり大きくしなければならない。
例えば、r0=10[mm]、z0=7[mm]、周波数500[kHz]の条件の下でq=0.8の動作点でm/z=3000のイオンを選択するには、高周波高電圧の振幅Vは約6[kV]ですむが、周波数を2倍の1[MHz]とすると振幅Vを4倍の24[kV]まで上げる必要がある。このようにリング電極31への印加電圧を上げることは、電極間での放電、或いは、LC共振回路の駆動能力の限界などの問題から、実際上不可能である。
特開2004−214077号公報
谷口純一、河藤栄三、「高速液体クロマトグラフ/イオントラップ飛行時間型質量分析計の開発」、分析化学、日本分析化学会、分析化学、2008年1月5日、第57巻、第1号、p.1−13
本発明は上記課題を解決するために成されたものであり、その目的とするところは、プリカーサイオンの選別に影響を与えることなく、CIDの際にq値を低くしつつ擬電位ポテンシャルを深くすることで、LMCを低くしてより低い質量電荷比を有するプロダクトイオンを捕捉・蓄積し質量分析に供することができるイオントラップ質量分析装置を提供することにある。
上記課題を解決するために成された本発明は、複数の電極からなるイオントラップを有し、該イオントラップに捕捉した各種イオンの中で特定の質量電荷比を有するイオンを選択的に残すイオン選別を行い、それに引き続いて、選択したイオンを衝突誘起解離(CID)により開裂させる操作を実行するイオントラップ質量分析装置において、
c)前記イオン選別時に前記複数の電極の少なくとも1つに、イオン捕捉用の高周波電圧を印加する第1の電圧印加手段と、
d)前記衝突誘起解離時に前記イオン選別時とは異なる少なくとも1つの電極に、該イオン選別時よりも周波数の高いイオン捕捉用の高周波電圧を印加する第2の電圧印加手段と、
を備えることを特徴としている。
本発明の一態様として、上記イオントラップは、リング電極と、これを挟んで対向配置された一対のエンドキャップ電極、とからなる3次元四重極型イオントラップとすることができる。
従来のイオントラップ質量分析装置では、イオン選別時とCID時とで同じ電極に捕捉用の高周波高電圧を印加するようにしていたのに対し、本発明に係るイオントラップ質量分析装置では、イオン選別時とCID時とで、別々の電極に対し捕捉用高周波高電圧を印加する。さらに、CID時の捕捉用高周波高電圧の周波数をイオン選別時の捕捉用高周波高電圧の周波数よりも高くする。
例えば3次元四重極型イオントラップを用いた装置の場合、イオン選別時にはリング電極に捕捉用高周波高電圧を印加し、CID時にはエンドキャップ電極に捕捉用高周波高電圧を印加する。従来でも、エンドキャップ電極間に高周波(交流)電圧を印加することは行われていたが、これは前述したように、イオン選別やCIDのために特定の質量電荷比を有するイオンを共鳴励振させることが目的であって、その振幅は高々10[V]程度にすぎない。これに対し、本発明に係るイオントラップ質量分析装置において、例えばエンドキャップ電極に印加される捕捉用高周波高電圧の振幅は100[V]以上と桁違いに大きいものであり、その作用は全く相違する。
いまイオントラップ内に形成される擬電位ポテンシャルを一定に維持するという条件の下では、CID時における捕捉用高周波高電圧の周波数を上げると、その振幅も大きくする必要があるが、擬電位ポテンシャルは振幅の二乗に比例する(上記(2)式参照)のに対し、q値は振幅に比例する(上記(1)式参照)だけである。そのため、擬電位ポテンシャルを一定に維持するように高周波高電圧の周波数を上げ、振幅を大きくしたときに、q値は小さくなる。これにより、低いq値においても十分な擬電位ポテンシャルを確保することができ、より低い質量電荷比のイオンに対する安定捕捉条件をも満たすことができるようになるから、捕捉可能なイオンの質量電荷比の下限、つまりLMCを下げることができる。
なお、3次元四重極型イオントラップにおいてCID時にエンドキャップ電極に捕捉用高周波高電圧を印加する場合、対向するエンドキャップ電極には、極性が逆である共鳴励振用の小振幅の交流(高周波)電圧も同時に印加する必要がある。そこで、捕捉用高周波高電圧に共鳴励振用の相対的に低電圧の高周波電圧を重畳させるようにすればよい。
本発明に係るイオントラップ質量分析装置によれば、例えばMS/MS分析のためのプリカーサイオンをイオントラップ内に残すべく特定の質量電荷比を有するイオンを選別する際の質量選択性を従来通り良好に維持したまま、CIDによるイオン開裂時における擬電位ポテンシャルを十分に確保しつつq値を下げて、低質量電荷比のプロダクトイオンも良好に捕捉することができるようになる。それにより、従来では観測ができなかった又は検出感度が低かった低質量電荷比のプロダクトイオンを十分に高い感度で検出することができる。
本発明の一実施例によるイオントラップ質量分析装置の要部の構成図。 本実施例のイオントラップ質量分析装置におけるMS/MS分析動作を示すフローチャート。 一般的な3次元四重極型イオントラップの概略構成(a)と擬電位ポテンシャル形状を示す図(b)。 イオントラップ内におけるイオンの安定捕捉条件を説明するためのマシューダイヤグラムを示す図。
本発明の一実施例によるイオントラップ質量分析装置について、添付図面を参照して説明する。図1は本実施例のイオントラップ質量分析装置の要部の構成図である。
図示しない真空室の内部には、イオン源1、イオンガイド2、イオントラップ3、及び質量分析/検出部4が配設されている。イオン源1は、試料が液体試料である場合にはエレクトロスプレイイオン化法などの大気圧イオン化法、試料が気体試料である場合には電子イオン化法や化学イオン化法など、試料が固体試料である場合にはレーザ脱離イオン化法など、各種のイオン化法を用いて試料成分をイオン化するものとすることができる。
イオントラップ3は、図3(a)と同様に、1個の円環状のリング電極31と、それを挟むように対向して設けられた一対のエンドキャップ電極32、33とから成る3次元四重極型のイオントラップである。入口側エンドキャップ電極32のほぼ中央にはイオン入射口34が穿設され、出口側エンドキャップ電極33のほぼ中央にはイオン入射口34とほぼ一直線上にイオン出射口35が穿設されている。
質量分析/検出部4は例えば飛行時間型質量分析器とイオン検出器との組み合わせであるが、例えばイオントラップ3自体の質量分離機能を利用してイオンを質量電荷比に応じて分離する場合には、質量分析/検出部4は単にイオン検出器とすればよい。
リング電極31にはリング電圧発生部6が接続され、エンドキャップ電極32、33にはエンドキャップ電圧発生部5が接続されている。リング電圧発生部6は、高周波電圧源61、コイル62、可変容量コンデンサ63などを含み、LC共振回路を利用して高周波高電圧を生成してリング電極31に印加する。
エンドキャップ電圧発生部5は、交流電圧発生部50、直流電圧発生部55、電圧切替部56、を含み、交流電圧発生部50は、交流低電圧源51、高周波高電圧源52、トランス結合部53、コンデンサ54などを含む。交流電圧発生部50において、高周波高電圧源52では振幅が100[V]以上でkVオーダーにまで及ぶ所定周波数の高周波高電圧が生成され、交流低電圧源51では振幅が遙かに小さく高々10[V]程度である交流電圧が生成される。これら電圧はトランス結合部53で重畳されるが、両エンドキャップ電極32、33に対し高周波高電圧は同相であるのに対し、交流低電圧は互いに逆相となる。
イオントラップ3の内部にはバルブ等を含むガス導入部7からクーリングガス又はCIDガスが選択的に導入される。通常、クーリングガスとしては、測定対象であるイオンと衝突してもそれ自身がイオン化せず又は開裂もしない安定したガス、例えばヘリウム、アルゴン、窒素などの不活性ガスが利用される。CIDガスも一般的にはクーリングガスと同じ種類のガスである。
リング電圧発生部6、エンドキャップ電圧発生部5、ガス導入部7等の動作はCPUを中心に構成される制御部8により制御される。
図2は本実施例のイオントラップ質量分析装置におけるMS/MS分析動作フローチャートである。
イオン源1は目的試料を所定のイオン化法によりイオン化する(ステップS1)。生成されたイオンはイオンガイド2によって輸送され、イオン入射口34を通してイオントラップ3内に導入されてその内部に捕捉される(ステップS2)。通常、イオントラップ3へイオンを導入する際には、電圧切替部56により直流電圧発生部55とエンドキャップ電極32、33とが接続され、入射側のエンドキャップ電極32にはイオンガイド2から送られてくるイオンを引き込むような直流電圧が印加され、出射側のエンドキャップ電極33にはイオントラップ3に入射したイオンが押し戻されるような直流電圧が印加される。このとき、リング電極31には所定周波数、所定振幅の高周波高電圧を印加し、捕捉用の高周波電場をイオントラップ3内に形成する。
イオントラップ3内に各種イオンを蓄積した後に、プリカーサイオンを選択的に残すためのイオン選別を実施する(ステップS3)。即ち、電圧切替部56により交流電圧発生部50とエンドキャップ電極32、33とを接続し、交流低電圧源51では、プリカーサイオンとして残したいイオンの質量電荷比に対応した周波数にノッチを有する周波数成分を持つ小振幅の交流電圧を発生させ、高周波高電圧源52は電圧発生を停止する。これにより、互いに逆相の小振幅の交流電圧がエンドキャップ電極32、33間に印加され、ノッチ周波数に対応する質量電荷比以外のイオンは励振され、大きく振動してイオン入射口34及びイオン出射口35から排出されてしまったりエンドキャップ電極32、33内面に衝突したりして消滅する。このようにして特定の質量電荷比を有するプリカーサイオンのみを選択的にイオントラップ3内に残す。このとき、リング電極31には、ステップS2に引き続き高周波高電圧が印加され、これによりプリカーサイオンを捕捉する。
その後に、CIDによりプリカーサイオンを開裂させる(ステップS4)。即ち、ガス導入部7によりCIDガスをイオントラップ3内に導入する。また、交流低電圧源51は、プリカーサイオンの質量電荷比に応じた周波数を持つ小振幅の交流電圧を生成し、高周波高電圧源52は後述する周波数及び振幅の高周波高電圧を生成し、それらが重畳された電圧がエンドキャップ電極32、33に印加される。すると、運動エネルギーを付与されたプリカーサイオンが励振してCIDガスに衝突し、開裂を生じてプロダクトイオンを生成する。生成されたプロダクトイオンは高周波高電圧により形成される電場により捕捉される。
こうして生成されたプロダクトイオンは元のプリカーサイオンよりも質量電荷比が小さくなるから、こうした低質量電荷比のイオンを捕捉できるような捕捉電場をイオントラップ3内に形成する必要がある。ここでは、そのための高周波高電圧をリング電極31ではなくエンドキャップ電極32、33に印加することが大きな特徴であるが、詳しくは後述する。
CIDによりプロダクトイオンを生成してイオントラップ3内に蓄積した後に、ガス導入部7よりクーリングガスをイオントラップ3内に導入する。そして、共鳴励振用の交流低電圧の発生を停止し、高周波高電圧のみをエンドキャップ電極32、33に印加することで形成した捕捉電場によりイオンを捕捉しつつ、イオンをクーリングする(ステップS5)。
所定時間クーリングを実施した後に、電圧切替部56により、エンドキャップ電極32、33間に直流電圧を印加する。これにより、イオントラップ3内に保持していたイオンに初期加速エネルギーを付与し、イオン出射口35を通してイオンを出射させて質量分析/検出部4に導入する(ステップS6、S7)。同一の加速電圧により加速されたイオンは質量電荷比が小さいほど大きな速度を有するから、質量電荷比が小さいほど先行して飛行時間型質量分析器中を飛行してイオン検出器に到達して検出される。
イオントラップ3からのイオンの出射時点を起点として質量分析/検出部4からの検出信号を時間経過に伴って記録すると、飛行時間とイオン強度との関係を示し飛行時間スペクトルが得られる。飛行時間はイオンの質量電荷比と対応するから、飛行時間を質量電荷比に換算することで質量スペクトルが作成される。
なお、2回以上のイオン選別とCIDを伴うMSn分析を実行する際には、図2においてステップS3、S4を複数回繰り返せばよい。
上記ステップS4のCIDにおいては、従来、ステップS2のイオン捕捉時やステップS3のイオン選別時などと同様に、リング電極31に高周波高電圧を印加することでイオンを捕捉するようにしていた。これに対し、この実施例のイオントラップ質量分析装置では、リング電極31でなくエンドキャップ電極32、33に高周波高電圧を印加し、それによってイオントラップ3内にイオン捕捉用の高周波電場を発生させている。このとき一般的には、リング電極31への電圧印加は停止してリング電極31を接地電位に保つ。
CID時にエンドキャップ電極32、33に高周波高電圧を印加する際のパラメータとその利点とについて説明する。
ステップS3のイオン選別時には、高い質量分解能で特定のプリカーサイオンを残すために、上記の(1)式で示されるq値をできるだけ高くする必要がある。そのため、プリカーサイオンの質量電荷比に対し、q=0.8程度の高いq値が設定される。例えば、Ω=500[kHz]で、r0=10[mm]、z0=7[mm]の現実的なディメンジョンを持つイオントラップにおいて、m/z=3000のイオンをq=0.8でアイソレーションするためには、高周波高電圧の振幅Vを6[kV]程度にする必要がある。
一方、CID時には、プリカーサイオンが開裂するのに十分な運動エネルギーを与えつつ、開裂により生成された低質量電荷比のプロダクトイオンを良好に捕捉するために、上記(1)式で示されるq値を小さくする一方、上記(2)式で示される擬電位ポテンシャルを大きくする必要がある。(2)式のように擬電位ポテンシャルDは高周波高電圧の振幅Vの二乗に比例するのに対し、(1)式のようにq値は振幅Vに比例する。また、擬電位ポテンシャルD、q値ともに、周波数Ωの二乗に反比例する。したがって、いまq値を一定にするという条件を考えると、高周波高電圧の周波数Ωが2倍になったときに振幅Vを4倍にする必要がある。その場合、擬電位ポテンシャルDは4倍になる。つまり、捕捉用の高周波高電圧の周波数Ωを2倍、振幅Vを4倍にすることにより、q値を一定に維持しつつ擬電位ポテンシャルDを4倍に上げることができる。
しかしながら、従来のようにCID時にもリング電極に高周波高電圧を印加する場合、上記のようなLC共振回路による高周波高電圧回路では正弦波信号の周波数を大きく変えることは容易ではないから、CID時のみ高周波高電圧の周波数を上げることは困難であり、イオン選別時とCID時とで高周波高電圧の周波数を同一にする必要がある。上記のような条件の下で、m/z=3000のイオンをq=0.8でアイソレーションする場合、高周波高電圧の周波数Ωを上記の2倍の1[MHz]とすると、その振幅Vは4倍の24[kV]程度まで上げなければいけないことになる。このような高電圧を印加することは、電極間放電の問題等により実現不可能である。
これに対し本実施例のイオントラップ質量分析装置では、CID時にはリング電極31ではなくエンドキャップ電極32、33に高周波高電圧を印加するようにしているため、イオン選別時の高周波高電圧の周波数とは独立に、CID時の高周波高電圧の周波数を定めることができる。例えば、エンドキャップ電極32、33に周波数Ωが1[MHz]である捕捉用高周波高電圧を印加した場合、q値一定の条件の下では、擬電位ポテンシャルDは周波数Ωが500[kHz]である場合の4倍になる。また擬電位ポテンシャルDが一定であるという条件であれば、CID時のq値を半分にすることができる。
具体的には、エンドキャップ電極32、33に印加する捕捉用高周波電圧の周波数が500[kHz]でm/z=1000のイオンをq=0.3でCIDする際の高周波高電圧の振幅Vは767[V]であり、擬電位ポテンシャルDは28.8[V]である。この高周波高電圧の周波数を1[MHz]に上げると、擬電位ポテンシャルDが同一となる条件(振幅が1534[V])では、q値を半分の0.15まで下げることができる。そのため周波数Ω=500[kHz]ではプリカーサイオンの質量電荷比の約1/3であるm/z=300程度が観察可能なプロダクトイオンの下限であったのに対し、周波数Ω=1[MHz]では約半分のm/z=150程度が下限となり、より低質量電荷比のプロダクトイオンの観察が可能となる。
なお、上記説明では、イオン選別時に捕捉用高周波高電圧をリング電極31に印加し、CID時に捕捉用高周波高電圧をエンドキャップ電極32、33に印加するものとしたが、これは逆でもよい。即ち、イオン選別時に捕捉用高周波高電圧をエンドキャップ電極32、33に印加し、CID時に捕捉用高周波高電圧をリング電極31に印加するようにしてもよい。いずれの場合でも、イオンをイオントラップ3内に保持したまま高周波高電圧を印加する電極を切り替える必要があるから、イオン選別用の捕捉電圧の振幅を下げると同時に、又はイオン選別用の捕捉電圧の振幅を下げた時点からイオンが散逸しない時間内に、CID用の捕捉電圧を立ち上げることが必要である。
また、CID時の高周波高電圧の周波数が高いほど同じq値に対する擬電位ポテンシャルは大きくなる。これはプロダクトイオンの捕捉効率の点では望ましいが、それだけ高周波高電圧の振幅も上げる必要が生じる。そのため、電極での放電や回路を構成する素子の耐電圧等の制約の下でCID時の高周波高電圧の周波数や振幅の上限が決まる。
また、上記実施例は高周波高電圧として正弦波形状の電圧を利用したものであるが、高周波高電圧として矩形波状電圧を用いた、いわゆるデジタルイオントラップにも本発明を適用することは可能である。
また、3次元四重極型イオントラップではなくリニア型イオントラップにも本発明を適用して同様の効果を得ることができることも明らかである。
1…イオン源
2…イオンガイド
3…イオントラップ
31…リング電極
32…入口側エンドキャップ電極
33…出口側エンドキャップ電極
34…イオン入射口
35…イオン出射口
4…質量分析/検出部
5…エンドキャップ電圧発生部
50…交流電圧発生部
51…交流低電圧源
52…高周波高電圧源
53…トランス結合部
54…コンデンサ
55…直流電圧発生部
56…電圧切替部
6…リング電圧発生部
61…高周波電圧源
62…コイル
63…可変容量コンデンサ
7…ガス導入部
8…制御部

Claims (3)

  1. 複数の電極からなるイオントラップを有し、該イオントラップに捕捉した各種イオンの中で特定の質量電荷比を有するイオンを選択的に残すイオン選別を行い、それに引き続いて、選択したイオンを衝突誘起解離(CID)により開裂させる操作を実行するイオントラップ質量分析装置において、
    a)前記イオン選別時に前記複数の電極の少なくとも1つに、イオン捕捉用の高周波電圧を印加する第1の電圧印加手段と、
    b)前記衝突誘起解離時に前記イオン選別時とは異なる少なくとも1つの電極に、該イオン選別時よりも周波数の高いイオン捕捉用の高周波電圧を印加する第2の電圧印加手段と、
    を備えることを特徴とするイオントラップ質量分析装置。
  2. 請求項1に記載のイオントラップ質量分析装置であって、
    前記イオントラップは、リング電極と、該リング電極を挟んで対向して配置された一対のエンドキャップ電極とからなり、
    前記第1の電圧印加手段は前記リング電極にイオン捕捉用の高周波電圧を印加し、前記第2の電圧印加手段は前記エンドキャップ電極にイオン捕捉用の高周波電圧を印加することを特徴とするイオントラップ質量分析装置。
  3. 請求項2に記載のイオントラップ質量分析装置であって、
    前記衝突誘起解離時に前記第2の電圧印加手段は、前記イオン捕捉用の高周波高電圧に、該高周波高電圧よりも低い共鳴励振用の高周波電圧を重畳させて前記エンドキャップ電極に印加することを特徴とするイオントラップ質量分析装置。
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