JP5924903B2 - 地中梁における人通孔回りの補強構造 - Google Patents

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本発明は、鉄筋コンクリート造の地中梁に形成される人通孔回りの補強構造に関する。
一般に、多層集合住宅などの大きな建物においては、最下階の床スラブの下部空間がスパン毎に地中梁(基礎梁)で分割されるので、設備配管等のメンテナンスに備えて、地中梁の一部に作業員が通過できる大きな開口(人通孔)が形成される。しかしながら、梁を貫通する人通孔などの開口の直径は梁の強度確保のために梁の大きさに合わせて制限されており、鉄筋コンクリート造の梁においては、梁成の1/3以下に抑制することが望まれている。従って、開口が大きいほど梁成が大きくなり、元々梁成が大きな地中梁に、人通孔のような大開口を形成すれば地中梁の高さが著しく高くなって、地盤掘削量やコンクリート量が増し、コスト高となることは避けられなかった。そこで、梁成を抑えて人通孔をできるだけ大きく形成できるように種々の補強構成が考えられている。
特許文献1には、地中梁を対象にしたものではないが、大きな開口を有する鉄筋コンクリート梁において、開口の内側に鋼管が嵌挿され、鉄筋コンクリート梁の剪断補強筋が鋼管の外周面に接合されている鉄筋コンクリート梁の補強構造が記載されている。
特許文献2には、上端の梁主筋及び下端の梁主筋と、せん断補強筋が配筋された鉄筋コンクリート造の梁に開口を形成し、この開口の回りに複数の補強用の斜め筋を配筋するにあたり、斜め筋を2本一組で互いに交差させて配筋し、斜め筋の両端に形成されたフックの一方を上端の梁主筋に、他方のフックを下端の梁主筋に係合させるように配置することが記載されている。
特開2007−51533号公報 特開2006−183311号公報
しかしながら、特許文献1のものでは、鋼管と剪断補強筋を溶接する工程が必要があって、コストが高く付くという問題がある。また、鋼管と剪断補強筋が溶接されているので、コンクリートと鋼管の間に、結露などによって生じた水分が染み込むなどして溶接部分に錆を発生させ、鉄筋コンクリート梁の強度低下を招く可能性があり、これを防止する処置を必要とし、これがコストアップの要因ともなっていた。
特許文献2のものでは、梁を貫通する開口の上部および下部におけるコンクリートにあばら筋となる鉄筋による補強がなく、コンクリートの肉厚も薄いので、この部分の強度低下が発生することは避けられなかった。つまり、開口の上下における上端の梁主筋と下端の梁主筋が上下に歪むような変形が生じやすいという問題があった。
本発明は上述の事柄を考慮に入れてなされたものであって、製造コストの安い簡単な構成にして施工が容易であり、人通孔の周囲どの部分においても十分な強度を得ることができ、かつ、施工後も特別な処置を施さなくても長期間にわたって強度を保つことができるようにした地中梁における人通孔回りの補強構造を提供することを課題とする。
上記の目的を達成するために、本発明が講じた技術的手段は、次の通りである。即ち、請求項1に記載の発明による地中梁における人通孔回りの補強構造は、地中梁に形成される人通孔の梁長手方向両側に夫々2本1組でX字状に配筋され、人通孔側の端部が梁主筋にフックで緊結され、他端部がコンクリートに定着され、且つ、梁幅方向に間隔を隔てて対向配置される4組の斜め補強筋と、人通孔の梁長手方向両側で且つせん断補強の有効な範囲に夫々上下の梁主筋群にわたって巻掛け配筋される孔周囲せん断補強筋を備える孔周囲補強筋と、人通孔の上部および下部に夫々最外側の梁主筋と平行な状態で、かつ、梁主筋のうち梁幅方向における外側の梁主筋のそれぞれ直下および直上に配筋される本の軸方向補強筋と最外側の梁主筋とにわたって巻掛け配筋される孔上下部あばら筋を備える上下一対の孔部補強筋が埋設され、
さらに、前記2本1組でX字状に配筋された状態では、2本のうち、一方の斜め補強筋の人通孔側の端部が下端の梁主筋のうち梁幅方向の内側の梁主筋にフックで緊結される一方、他方の斜め補強筋の人通孔側の端部が上端の梁主筋のうち梁幅方向の内側の梁主筋にフックで緊結されており、また、一方の斜め補強筋の他端部がコンクリートに定着され、他方の斜め補強筋の他端部がコンクリートに定着されているとともに、各コンクリート定着部は梁主筋に平行な水平方向に屈曲しており、前記孔部補強筋が、前記軸方向補強筋の両端側と最外側の梁主筋とをフックで緊結して配筋されるキャップタイ形状の拘束筋を備え
しかも、前記軸方向補強筋は、人通孔の梁長手方向両側における前記せん断補強の有効な範囲に配筋されていることを特徴としている。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の地中梁における人通孔回りの補強構造であって、前記梁主筋に対する前記斜め補強筋の角度は約45度〜60度の範囲で設定されることを特徴としている。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の地中梁における人通孔回りの補強構造であって、孔周囲補強筋が、孔周囲せん断補強筋のうち人通孔に最も近く配筋される孔周囲せん断補強筋を2本束ね筋とすることで構成される孔際せん断補強筋を備えることを特徴としている。
請求項1に記載の発明によれば、人通孔の上下のコンクリート部分に、人通孔の上部および下部に夫々梁主筋と平行に配筋される複数本の軸方向補強筋と最外側の梁主筋とにわたって巻掛け配筋される孔上下部あばら筋とを備える上下一対の孔部補強筋が埋設されるので、人通孔を設けたことによる梁主筋の曲がりを確実に防ぐことができる。また、人通孔の梁長手方向両側には、夫々、斜め補強筋と、上下の梁主筋群にわたって巻掛け配筋される孔周囲せん断補強筋とを備える孔周囲補強筋が埋設されるので、上下の軸方向補強筋の変形や位置ずれを防ぐと共に、人通孔の側面を補強することができる。つまり、人通孔はその周囲どの部分においても補強されるので、強度的な問題を発生させることなく人通孔の大きさを大きくすることができる。
前記斜め補強筋は、一端だけ、つまり、人通孔側の端部だけをフックに形成して梁主筋に係合させる形状であるため、配筋作業が容易であり、施工が容易となり、それだけ製造コストを削減することができる。
さらに、請求項1に記載の発明では、複数本の軸方向補強筋と最外側の梁主筋とにわたって巻掛け配筋される孔上下部あばら筋のように全てを軸方向補強筋と梁主筋とにわたって巻き掛けるのではなく、孔上下部あばら筋ほどの拘束力を要求されない人通孔両側方の箇所(軸方向補強筋の両端側)に、孔上下部あばら筋に代え、軸方向補強筋と最外側の梁主筋とをフックで緊結して配筋されるキャップタイ形状の拘束筋を加えて前記孔部補強筋を構成することにより、配筋作業を容易にすると共に、鉄筋量の低減が可能である。また、請求項2に記載の発明のように、前記梁主筋に対する前記斜め補強筋の角度は約45度〜60度の範囲で設定されるのが望ましい。
前記孔周囲補強筋は、斜め補強筋と、人通孔の梁長手方向両側で且つせん断補強の有効な範囲に夫々上下の梁主筋群にわたって巻掛け配筋される孔周囲せん断補強筋とで構成してもよいが、孔際が最も応力的に耐力を必要とするため太径の鉄筋で補強することも考えられるが、コンクリートのかぶり厚さ確保の問題もある為、請求項3に記載の発明のように、孔周囲せん断補強筋のうち人通孔に最も近く配筋される孔周囲せん断補強筋を2本束ね筋とすることで構成される孔際せん断補強筋を加えて構成することが、細径の鉄筋を用いて、せん断補強の効果を高め得る点で、望ましい。
尚、前記軸方向補強筋の長さは、後述する通り、梁成をDとしたとき、≧Dとすることが望ましい。また、各鉄筋は所定のかぶり厚を確保するように梁コンクリートの内部に埋設されるものであり、外気に接することがないので錆などの問題が発生することはない。
上述したように、本発明によれば、簡単な構成でありながら人通孔の周囲における地中梁の補強を十分に行うことができるので、製造コストを削減しながら比較的大きな人通孔を形成できると共に、永く安定した地中梁を形成することができる。
本発明の実施形態に係る地中梁における人通孔回りの補強構造が採用された地中梁の全体構成を示す図である。 本発明の実施形態に係る地中梁における人通孔回りの補強構造の構成を示す要部の透視斜視図である。 図2の人通孔回りの補強構造を人通孔の軸芯方向から見た側面図である。 図3のA−A断面図である。 図3のB−B断面図である。 斜め補強筋の配筋状態を説明する側面図と正面図である。 孔周囲補強筋の配筋状態を説明する側面図と正面図である。 孔部補強筋の配筋状態を説明する側面図である。 孔部補強筋の配筋状態を示し、(A)は図8のA−A断面図、(B)は図8のB−B断面図である。
図1に示すように、多層集合住宅などの大きな建物を構築する場合、基礎1として各柱2の脚部間を連結するように鉄筋コンクリート造の地中梁3,4を形成することが多い。また、地中梁3には作業者が通り抜けできると共に配管を通すことができるように人通孔5を形成することが行なわれている。
前記人通孔5は、作業性を考慮すると大きくすることが好ましいが、強度的には地中梁3の長さおよび高さに合わせて、その大きさが制限されている。そこで、地中梁3内に配筋する鉄筋により人通孔回りの補強構造を形成し、人通孔5を形成した部分における補強を施す。
本発明の実施形態においては、人通孔回りの補強構造6が次の通りに構成されている。即ち、図2〜図5に示すように、地中梁3に形成される人通孔5の梁長手方向両側に夫々2本1組でX字状に配筋され、人通孔5側の端部が梁主筋7a,7bにフックで緊結され、他端部がコンクリートに定着され、且つ、梁幅方向に間隔を隔てて対向配置される4組の斜め補強筋8と、人通孔5の両側に配筋される孔周囲補強筋9と、人通孔5の上部と下部に配筋される上下一対の孔部補強筋10とで構成されている。
孔周囲補強筋9は、人通孔5の梁長手方向両側で且つせん断補強の有効な範囲Cに夫々上下の梁主筋7a,7b群にわたって巻掛け配筋される孔周囲せん断補強筋11と、孔周囲せん断補強筋11のうち人通孔5に最も近く配筋される孔周囲せん断補強筋11を2本束ね筋とすることで構成される孔際せん断補強筋12とで構成されている。
孔部補強筋10は、人通孔5の上部および下部に夫々最外側の梁主筋7a,7bと平行に配筋される2本の軸方向補強筋13と最外側の梁主筋7a,7bとにわたって巻掛け配筋される複数本の孔上下部あばら筋14と、人通孔5より両側方に位置する軸方向補強筋13の両端側と最外側の梁主筋7a,7bとをフックで緊結して配筋される複数組のキャップタイ形状の拘束筋15とで構成されている。斜め補強筋8の人通孔5側とは反対側の端部(コンクリートに定着される側の端部)は、図6に示すように、適当長さ(鉄筋径をdとしたとき≧10dとなる長さ)だけ水平方向に屈曲して定着長を確保している。
尚、梁主筋7a,7bに対する斜め補強筋の角度は約60度に設定されているが、約45度〜60度の範囲で適宜設定される。前記軸方向補強筋13の長さは、梁成をDとしたとき、≧Dとすることが望ましい。また、各鉄筋は所定のかぶり厚を確保するように梁コンクリートの内部に埋設される。せん断補強の有効な範囲Cとは、図7に示すように、人通孔5の中心から垂直、水平に延びる軸線に対して45度の斜線を延ばし、地中梁の上,下端の梁主筋7a,7bと交差する位置までの範囲である。従って、人通孔5を梁成の中心から下方へ偏心して形成する場合、梁下端ではせん断補強の有効な範囲Cが狭くなり、梁上端では逆にせん断補強の有効な範囲Cが広がることになる。
上記の構成によれば、人通孔5の上下のコンクリート部分に、人通孔5の上部および下部に夫々梁主筋7a,7bと平行に配筋される2本の軸方向補強筋13と最外側の梁主筋7a,7bとにわたって巻掛け配筋される孔上下部あばら筋14および拘束筋15とを備える上下一対の孔部補強筋10が埋設されるので、人通孔5を設けたことによる梁主筋7a,7bの曲がりを確実に防ぐことができる。また、人通孔5の梁長手方向両側には、夫々、斜め補強筋8と、上下の梁主筋群にわたって巻掛け配筋される孔周囲せん断補強筋11および孔際せん断補強筋12から成る孔周囲補強筋9が埋設されるので、上下の軸方向補強筋13の変形や位置ずれを防ぐと共に、人通孔5の側面を補強することができる。つまり、人通孔5はその周囲どの部分においても補強されるので、強度的な問題を発生させることなく人通孔5の大きさを大きくすることができ、人通孔5の直径Hを地中梁3の梁成Dの1/2.4まで大きくすることが可能である。
3 地中梁
5 人通孔
6 人通孔回りの補強構造
7a,7b 梁主筋
8 斜め補強筋
9 孔周囲補強筋
10 孔部補強筋
11 孔周囲せん断補強筋
12 孔際せん断補強筋
13 軸方向補強筋
14 孔上下部あばら筋
15 拘束筋

Claims (3)

  1. 地中梁に形成される人通孔の梁長手方向両側に夫々2本1組でX字状に配筋され、人通孔側の端部が梁主筋にフックで緊結され、他端部がコンクリートに定着され、且つ、梁幅方向に間隔を隔てて対向配置される4組の斜め補強筋と、人通孔の梁長手方向両側で且つせん断補強の有効な範囲に夫々上下の梁主筋群にわたって巻掛け配筋される孔周囲せん断補強筋を備える孔周囲補強筋と、人通孔の上部および下部に夫々最外側の梁主筋と平行な状態で、かつ、梁主筋のうち梁幅方向における外側の梁主筋のそれぞれ直下および直上に配筋される本の軸方向補強筋と最外側の梁主筋とにわたって巻掛け配筋される孔上下部あばら筋を備える上下一対の孔部補強筋が埋設され、
    さらに、前記2本1組でX字状に配筋された状態では、2本のうち、一方の斜め補強筋の人通孔側の端部が下端の梁主筋のうち梁幅方向の内側の梁主筋にフックで緊結される一方、他方の斜め補強筋の人通孔側の端部が上端の梁主筋のうち梁幅方向の内側の梁主筋にフックで緊結されており、また、一方の斜め補強筋の他端部がコンクリートに定着され、他方の斜め補強筋の他端部がコンクリートに定着されているとともに、各コンクリート定着部は梁主筋に平行な水平方向に屈曲しており、前記孔部補強筋が、前記軸方向補強筋の両端側と最外側の梁主筋とをフックで緊結して配筋されるキャップタイ形状の拘束筋を備え
    しかも、前記軸方向補強筋は、人通孔の梁長手方向両側における前記せん断補強の有効な範囲に配筋されていることを特徴とする地中梁における人通孔回りの補強構造。
  2. 前記梁主筋に対する前記斜め補強筋の角度は約45度〜60度の範囲で設定される請求項1に記載の地中梁における人通孔回りの補強構造。
  3. 孔周囲補強筋が、孔周囲せん断補強筋のうち人通孔に最も近く配筋される孔周囲せん断補強筋を2本束ね筋とすることで構成される孔際せん断補強筋を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の地中梁における人通孔回りの補強構造。
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