JP2016023440A - 鉄骨梁 - Google Patents
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Abstract
Description
近年、鉄骨梁と床スラブとの接合部の設計において、床スラブによる鉄骨梁の拘束効果を考慮した設計が行われるようになり、鉄骨梁のフランジに設けられたスタッドにより鉄骨梁と床スラブのコンクリートとを確実に一体化させることが重要となっている。
また、補強部材がフランジに接合される簡便な構成であることにより、施工性がよいとともに、補強部材を任意の範囲に限定的に施工することもできるため、施工費を抑えることができる。
また、補強部材がスタッドの近傍に配置される簡便な構成であることにより、施工性がよいとともに、補強部材を任意の範囲に限定的に施工することもできるため、施工費を抑えることができる。
このような構成とすることにより、補強部材が床スラブと確実に定着し、スタッドを確実に補強することができる。また、スタッドに対して容易に配置することができる。
鉄骨梁の材軸方向の一方の端部から他方の端部側に向かって、鉄骨梁の材軸方向の長さの0.1の長さ範囲では、フランジの横移動(鉄骨梁の材軸方向に直交する水平方向の移動)が他の範囲よりも大きく、スタッドの周辺における床スラブのコンクリートのコーン状破壊が生じやすいため、少なくともこの範囲に補強部材を配置することにより、スタッドの周辺における床スラブのコンクリートのコーン状破壊を抑制、またはコーン状破壊が発生しても急激な荷重低下を伴わない構造とすることができる。
また、補強部材の設置範囲を鉄骨梁の材軸方向の一方の端部から他方の端部側に向かって、鉄骨梁の材軸方向の長さの0.4の長さ以下の範囲とすることにより、補強部材の設置範囲を鉄骨梁の材軸方向の長さ全体とする場合と比べて、配置する補強部材の数を少なくすることができるため、施工性がよく、施工費を抑えることができる。
なお、本発明では、補強部材を配置する際に基準となる鉄骨梁の材軸方向の端部とは、鉄骨梁の端部が火打ち材などで補強されている場合は、火打ち材よりも材軸方向の中央側の無補強区間の端部を示すものとし、鉄骨梁の材軸方向の長さとは、この無補強区間の長さとする。
本発明では、補強部材が設けられていることにより、スタッドの材軸方向の配列の1箇所当たりの降伏耐力が、フランジの軸降伏耐力の0.5%以上に設定すれば、圧縮力によるフランジの横座屈を防止することができる。
また、補強部材の施工性がよく、補強部材を任意の範囲に限定的に施工することもできるため、施工費を抑えることができる。
以下、本発明の第1実施形態による鉄骨梁について、図1乃至図4に基づいて説明する。
図1乃至3に示すように、第1実施形態による鉄骨梁1Aは、H形鋼で構成され、材軸方向の両端部1a,1aが柱11の角型鋼管に剛接合されている。なお、本実施形態では、柱11に通しダイアフラム13,13が設けられており、鉄骨梁1Aのフランジと柱11とは通しダイアフラム13,13を介して接合されている。本実施形態では、鉄骨梁1Aは、柱11の接合される面の幅方向の中心に接合されておらず、この幅方向の一方側に寄せて接合されている。
また、本実施形態では、鉄骨梁1Aとは別に、柱11に材軸方向(延在方向)を鉄骨梁1Aの材軸方向と直交する方向とする他の2つの鉄骨梁12,12が接合されている。これらの鉄骨梁12,12は、柱11の接合される面の幅方向の中心に接合されている。
また、本実施形態では、柱11と鉄骨梁1Aとの接合部に、火打ち材などの補強材が設けられていないものとする。
また、本実施形態では、スタッド3の材軸方向の配列の1箇所当たりの降伏耐力が、上フランジ2の軸降伏耐力の0.5%以上に設定されている。
また、本実施形態では、補強部材5Aは、折り曲げ部51がスタッド3と当接している。なお、補強部材5Aは、折り曲げ部51がスタッド3と離間していてもよい。
なお、本実施形態では、補強部材5Aの設置範囲は、鉄骨梁1Aの両方の端部1aからそれぞれ他方の端部1a側に向かって、鉄骨梁1Aの材軸方向の長さ(L)の0.4の長さ(0.4L)範囲としている。
上述した第1実施形態による鉄骨梁1Aによれば、床スラブ4のコンクリート41と定着する補強部材5Aが、スタッド3の近傍に配置されていることにより、床スラブ4のスタッド3が補強されるため、スタッド3の周辺における床スラブ4のコンクリート41のコーン状破壊を抑制、またはコーン状破壊が発生しても急激な荷重低下を伴わない構造とすることができる。
また、補強部材5Aがスタッド3の近傍に配置される簡便な構成であることにより、施工性がよいとともに、補強部材5Aを任意の設置範囲に限定的に施工することもできるため、施工費を抑えることができる。
また、補強部材5Aは、U字状に折り曲げられた折り曲げ部を有する異形棒鋼であることにより、床スラブ4と確実に定着し、スタッド3を確実に補強することができる。また、スタッド3に対して容易に配置することができる。
また、補強部材5Aの設置範囲を鉄骨梁1Aの材軸方向の両方の端部1aからそれぞれ他方の端部1a側に向かって、鉄骨梁1Aの材軸方向の長さの0.4の長さ以下の範囲とすることにより、補強部材5Aの設置範囲を鉄骨梁1Aの材軸方向の長さ全体とする場合と比べて、配置する補強部材5Aの数を少なくすることができるため、施工性がよく、施工費を抑えることができる。
(解析モデル)
図5に検証を行う解析ケースの一覧を示し、図6に解析モデルを示している。鉄骨梁1は、H形断面梁で、4節点シェル要素によって構成されている。また、床スラブ4は弾性ビーム要素41によって、スタッド3は弾塑性バネ要素(Z方向ばね)31によってそれぞれモデル化されている。
鋼材のヤング係数は、205,000N/mm2とし、ポワソン比は、0.3とする。
床スラブ4のコンクリートのヤング係数は20,500N/mm2とし、ポワソン比は、1/6とする。荷重条件は、鉄骨梁1の端部1a,1aにそれぞれ強制変位を漸増負荷する(鉄骨梁1の端部1a,1aを図6に示す矢印方向に変形させる)。
図7乃至図9に示すように、鉄骨梁1の材軸方向の両方の端部1aからそれぞれ他方の端部1a側に向かって、鉄骨梁1の材軸方向の長さ(L)の0.1の長さ(0.1L)範囲では、補強部材の設置範囲が小さいほど荷重変形関係において最大荷重以降の荷重低下が著しく、また、上フランジの最大横たわみ量が顕著であることがわかる。
このため、第1実施形態のように、補強部材の設置範囲が、少なくとも鉄骨梁1の両方の端部1aからそれぞれ他方の端部1a側に向かって、鉄骨梁1の材軸方向の長さ(L)の0.1の長さ(0.1L)範囲であることにより、上フランジ2の横移動を効率よく防止できることがわかる。
図10に示すように、第2実施形態による鉄骨梁1Bは、上フランジ2の上部に鉄骨梁1Bの材軸方向全体にわたって上フランジ2の幅方向の中心線を挟むようにしてスタッド3,3…が2列に配列されていて、鉄骨梁1Bの材軸方向に直交する水平方向には2つのスタッド3,3が並んでいる。なお、図10(a)では、上フランジ2、スタッド3,3…、補強部材5Bを示すために、床スラブ4の図示を省略している。
また、第2実施形態では、鉄骨梁1Bは、第1実施形態と同様に側梁を構成しているが、柱11に対して柱11の幅方向の中心に接合されている。
また、第2実施形態では、スタッド3の材軸方向の配列の1箇所当たりの降伏耐力は、鉄骨梁1Bの材軸方向に直交する水平方向に並んだ2つのスタッド3,3の降伏耐力の合計としている。
また、第2実施形態においても、補強部材5Bの設置範囲は、少なくとも鉄骨梁1Bの両方の端部1aからそれぞれ他方の端部1a側に向かって、鉄骨梁1Bの材軸方向の長さ(L)の0.1の長さ(0.1L)範囲となっている。
図11に示すように、第3実施形態による鉄骨梁1Cでは、補強部材5Cが異形棒鋼を全体の形状が略J字状となるように、長さ方向の一方の端部53近傍で折り曲げた部材で構成されている。そして、補強部材5Cの折り曲げ部54の内側にスタッド3が配置されている。なお、図11(a)では、上フランジ2、スタッド3,3…、補強部材5Cを示すために、床スラブ4の図示を省略している。
また、第3実施形態においても、補強部材5Cの設置範囲は、少なくとも鉄骨梁1Cの両方の端部1aからそれぞれ他方の端部1a側に向かって、鉄骨梁1Cの材軸方向の長さ(L)の0.1の長さ(0.1L)範囲となっている。
図12に示すように、第4実施形態による鉄骨梁1Dでは、補強部材5Dに床スラブ4の溶接金網を利用している。溶接金網は、鉄骨梁1Dの材軸方向に延びる複数の丸棒とおよびこの材軸方向に直交する水平方向へ延びる複数の丸棒とが格子状に配置されたワイヤメッシュ筋で構成されている。
そして、補強部材5Dは、少なくとも鉄骨梁1Dの両方の端部1aからそれぞれ他方の端部1a側に向かって、鉄骨梁1Dの材軸方向の長さ(L)の0.1の長さ(0.1L)範囲全体において、材軸方向に直交する水平方向の一方の端部側に形成されている複数の格子のうちの一部以上の内部にそれぞれスタッド3が配置されている。
なお、図12(a)では、上フランジ2、スタッド3,3…、補強部材5Dを示すために、床スラブ4の図示を省略している。
また、床スラブ4の溶接金網を補強部材5Dとして利用することにより、補強部材5Cに特殊な材料を用意することがないため、施工性を向上させることができるとともに施工費を抑えることができる。
図13に示すように、第5実施形態による鉄骨梁1Eでは、補強部材5Eに、床スラブ4の断面形状が波型のデッキプレートを利用している。第5実施形態では、デッキプレートは、その波型の凹凸が、鉄骨梁1Eの材軸方向に並ぶように配置されている。そして、デッキプレートは、少なくとも鉄骨梁1Eの両方の端部1aからそれぞれ他方の端部1a側に向かって、鉄骨梁1Eの材軸方向の長さ(L)の0.1の長さ(0.1L)範囲全体において、凹凸の下側に突出している部分が上フランジ2にそれぞれ溶接されている。図13において符号61が溶接部を示している。
なお、図13(a)では、上フランジ2、スタッド3,3…、補強部材5Eを示すために、床スラブ4の図示を省略している。
また、床スラブ4のデッキプレートを補強部材5Eとして利用することにより、補強部材5Cに特殊な材料を用意することがないため、施工性を向上させることができるとともに施工費を抑えることができる。
図14に示すように、第6実施形態による鉄骨梁1Fでは、補強部材5Fが異形棒鋼を全体の形状が略L字状となるように、長さ方向の中間部で曲げられた異形棒鋼で構成されている。補強部材5Fは、折り曲げ部55から一方の端部側が材軸方向に直交する水平方向に延在し、折り曲げ部55から他方の端部側が鉛直方向に延在する向きに配置されている。
そして、補強部材5Fの折り曲げ部55から一方の端部側を水平部56、折り曲げ部55から他方の端部側を鉛直部57とすると、鉛直部57は鉄骨梁1Fの材軸方向に直交する水平方向の他方側(床スラブ4が配置されていない側)に配置され、水平部56は、鉄骨梁1Fの上部と鉄骨梁1Fの材軸方向に直交する水平方向の一方側(床スラブ4が配置されている側)に配置されている。
なお、第6実施形態においても、補強部材5Fの設置範囲は、少なくとも鉄骨梁1Fの両方の端部1aからそれぞれ他方の端部1a側に向かって、鉄骨梁1Fの材軸方向の長さ(L)の0.1の長さ(0.1L)範囲となっている。
なお、図14(a)では、上フランジ2、スタッド3,3…、補強部材5Fを示すために、床スラブ4およびコンクリート42の図示を省略している。
また、第6実施形態においても、補強部材5Fを配置し、鉄骨梁1Fの床スラブ4が配置されている側の反対側にも補強部材5Fを埋設するようにコンクリート42を打設する簡便な構成であることにより、施工性がよく、施工費を抑えることができる。また、補強部材5Fおよびコンクリート42を任意の設置範囲に限定的に施工することもできる。
図15に示すように、第7実施形態による鉄骨梁1Gでは、補強部材5Gが所定の長さの異形棒鋼で構成され、一方の端部が上フランジ2の上部に接合されている。
補強部材5Gは、上方から見ると、鉄骨梁1Gの延在方向に直交する方向に延在し、鉄骨梁1Gの延在方向から見ると、鉄骨梁1G側となる一方の端部側が床スラブ4側となる他方の端部側よりも低い位置となるように、中間部に一方の端部側と他方の端部側に対して傾斜した傾斜部58(図15(b)参照)が形成されている。
補強部材5Gの異形棒鋼と上フランジ2とは、例えばフレア溶接によって接合されていたり、上フランジ2の上部に溶接されたカプラに接合されていたりしている。図15において符号62が接合部を示している。
なお、図15(a)では、上フランジ2、スタッド3,3…、補強部材5Gを示すために、床スラブ4の図示を省略している。
また、第7実施形態においても、補強部材5Gを上フランジ2に接合する簡便な構成であることにより、施工性がよく、施工費を抑えることができる。また、補強部材5Gを任意の設置範囲に限定的に施工することもできる。
例えば、上記の実施形態では、鉄骨梁1A〜1Gは、側梁としているが、鉄骨梁1A〜1Gの材軸方向に直交する方向の他方側に、上フランジ2の上部および鉄骨梁1A〜1Gの材軸方向に直交する方向の一方側の床スラブ4と一体化しておらず、図16に示すような、施工高さの異なる床スラブ7が構築される段差梁や、鉄骨梁1A〜1Gの他方側に床スラブ4が構築されない開口部が形成される開口部位の梁としてもよい。
また、上記の実施形態では、柱11と鉄骨梁1A〜1Gとの接合部に、火打ち材などの補強材が設けられていないが、設けられていてもよい。
このようにすることにより、床スラブ4の鉄骨梁1A〜1G近傍の領域に配管用の孔部などが形成されていて、上記のような補強部材5A〜5Gを配置できない場合にも、鉄骨梁1A〜1Gの上フランジ2の横移動を拘束可能であり、上記の実施形態と同様の効果を奏する。
また、この場合の火打ち材は、少なくとも上フランジ2の横移動を拘束可能に構成されていればよいため、上下のフランジの横移動を拘束する火打ち材を使用する場合と比べて、施工性がよく、施工費を抑えることができる。
また、上記の実施形態では、鉄骨梁1A〜1Gは、H形鋼としているが、I形鋼など他の断面形状の梁材としてもよい。
また、上記の実施形態では、柱11は角型鋼管としているが、角型鋼管以外の柱11としてもよい。例えば、柱11は、溶接ボックスコラム、円形鋼管、H形鋼、RC柱、SRC柱、CFT柱などとしてもよい。
また、鉄骨梁1A〜1Gは、図17に示すように、ウェブに孔部1bが形成された有孔梁としてもよい。なお、図17では、鉄骨梁1A〜1Gの端部1a側の孔部1bが形成されている部分を補強するように、ウェブの孔部1bと対応する孔部7bが形成された補強プレート7がウェブに接合されている。
また、鉄骨梁1A〜1Gは、図18に示すように、ウェブの端部1a側に端部補剛プレート8が接合されて補剛された鉄骨梁としてもよい。なお、図18では、端部補剛プレート8は、上下方向に延在し板面が鉄骨梁1A〜1Gの材軸方向を向く第1板部8aと、第1板部8aと接合され鉄骨梁1A〜1Gの材軸方向に延在し板面が上下方向を向く第2板材8bとを有している。
また、上記の実施形態では、スタッド3は、頭付きスタッドとしているが、上フランジ2の上面2aに接合されて、コンクリートと定着する部材であれば、頭付スタッド以外の部材でもよい。
また、スタッド3の配列や数、隣り合うスタッド3,3の間隔は適宜設定されてよい。
また、上記の実施形態では、スタッド3の前記材軸方向の配列の1箇所当たりの降伏耐力が、上フランジ2の軸降伏耐力の0.5%以上に設定されているが、0.5パーセント未満に設定されていてもよい。
1a 端部
2 上フランジ(フランジ)
2a 上面
3 スタッド
4 床スラブ
5A〜5G 補強部材
11 柱
12 鉄骨梁
41,42 コンクリート
Claims (5)
- 両端部が柱に剛接合されるとともに、フランジの上部に材軸方向に沿って複数のスタッドが配列して接合され、前記フランジの上部および前記材軸方向に直交する水平方向の一方側に連続して床スラブが配置された鉄骨梁において、
前記床スラブのコンクリートと定着する補強部材が、前記フランジに接合されていることを特徴とする鉄骨梁。 - 両端部が柱に剛接合されるとともに、フランジの上部に材軸方向に沿って複数のスタッドが配列して接合され、前記フランジの上部および前記材軸方向に直交する水平方向の一方側に連続して床スラブが配置された鉄骨梁において、
前記床スラブのコンクリートと定着する補強部材が、前記スタッドの近傍に配置されていることを特徴とする鉄骨梁。 - 前記補強部材は、U字状に折り曲げられた折り曲げ部を有する異形棒鋼で、該折り曲げ部の内側に前記スタッドが配置されていることを特徴とする請求項2に記載の鉄骨梁。
- 前記補強部材の設置範囲は、前記鉄骨梁の前記材軸方向の一方の端部から他方の端部側に向かって、少なくとも前記鉄骨梁の前記材軸方向の長さの0.1の長さ範囲であって、かつ0.4の長さ以下の範囲であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の鉄骨梁。
- 前記スタッドの前記材軸方向の配列の1箇所当たりの降伏耐力が、前記フランジの軸降伏耐力の0.5%以上に設定されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の鉄骨梁。
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