JP5915709B2 - プラスチック光ファイバ及びその製造方法、並びにプラスチック光ファイバケーブル - Google Patents
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Description
本発明は、長期間保管してもクラッドにクラックが生じて伝送損失が増大することを抑制できる優れた耐久性と、広帯域性能とが両立されたPOF及びその製造方法、並びに前記POFを有するPOFケーブルを提供することを目的とする。
[1]コアと、コアの外側に形成されたクラッドと、クラッドの外側に形成された保護層とを有するプラスチック光ファイバであって、コアがポリメタクリル酸メチルを50質量%以上含有し、コアの屈折率が、1.47〜1.53であり、クラッド単独の波長650nmの光に対する伝送損失が、1,500〜4,000dB/kmであり、クラッド材が、長鎖フルオロアルキルメタクリレートとメタクリル酸メチルとメタクリル酸の共重合体であり、前記長鎖フルオロアルキルメタクリレートが、下式(m1)で表され、クラッドの厚みが、20〜40μmである、プラスチック光ファイバ。
CH 2 =C(CH 3 )COO(CH 2 ) a (CF 2 ) b CF 3 (m1)
(ただし、式(m1)中、aは1または2であり、bは5〜12の整数である。)
[2]下式(1)で定義される開口数NAが、0.25〜0.40である、前記[1]に記載のプラスチック光ファイバ。
NA=(n1 2−n2 2)1/2 (1)
ただし、式(1)中、n1はコアの屈折率であり、n2はクラッドの屈折率である。
[3]保護層の屈折率が、クラッドの屈折率よりも低い、前記[1]又は[2]に記載のプラスチック光ファイバ。
[4]前記[1]〜[3]のいずれかに記載のプラスチック光ファイバの外側にジャケット層が形成されたプラスチック光ファイバケーブル。
[5]JIS C6861によって定められた機械特性試験方法により測定される落下衝撃強度が、1.5N・m以上である、前記[4]に記載のプラスチック光ファイバケーブル。
[6]前記[1]〜[3]のいずれかに記載のプラスチック光ファイバの製造方法であって、重合によりポリメタクリル酸メチルを50質量%以上含有するコア材を得るコア材製造工程と、重合によりクラッド材を得るクラッド材製造工程と、コア材、クラッド材、及び保護層を形成する保護材を、溶融して複合紡糸する紡糸工程と、を有し、クラッド材製造工程及びクラッド材製造工程から紡糸工程にクラッド材を供給する環境において、米国Fed-Std-209D規格で定められたクリーン度が、クラス500以下である、プラスチック光ファイバの製造方法。
また、本発明のPOFの製造方法によれば、広帯域であり、かつ長期間保管してもクラッドにクラックが生じて伝送損失が増大することを抑制でき、耐久性にも優れたPOFが得られる。
また、本発明のPOFケーブルは、本発明のPOFを有しているため、優れた耐久性と広帯域性能が両立されている。
以下、本発明のPOFの実施形態の一例を示して詳細に説明する。
本実施形態のPOF1は、図1に示すように、コア11と、コア11の外側に形成されたクラッド12と、クラッド12の外側に形成された保護層13とを有している。POF1においては、コア11とクラッド12と保護層13が同心円状に形成されている。
ただし、コア材は、PMMAに加えて、主成分であるメタクリル酸メチル(MMA)と少量の他の単量体とを共重合させたPMMA系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、フッ素系樹脂、非晶質ポリオレフィン系樹脂などの他の樹脂が含まれていてもよい。MMAと共重合可能な他の単量体としては、例えば、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸エチル、マレイミド化合物などが挙げられる。
コア材におけるPMMAの割合は、50質量%以上であり、60質量%以上が好ましく、100質量%が特に好ましい。
NA=(n1 2−n2 2)1/2 (1)
(ただし、式(1)中、n1はコアの屈折率であり、n2はクラッドの屈折率である。)
NAが0.25より小さいと、コアとクラッドの屈折率差が小さくなり、POFまたはPOFを屈曲させた際の漏れ光量が増大する(曲げ損失が増大する)恐れがある。また、NAが0.4より大きいと、上述した曲げ損失が改善される反面、伝送帯域が狭くなり、高速通信に使用するPOFとしての必要特性が得られにくい。POF1のNAのより好ましい範囲は、0.27以上、0.32以下である。
PMMAの屈折率n1は1.49である。コア材としてPMMAに加えて前記他の樹脂を用いる場合、コア材の屈折率n1は1.47〜1.53が好ましい。POF1のNAを0.25〜0.40とするには、屈折率n2が1.45〜1.47のクラッド材を用いることが好ましい。
屈折率n1、n2は、例えば、アッベの屈折計を用いて温度20℃で測定される。
CH2=C(CH3)COO(CH2)a(CF2)bCF3 (m1)
(ただし、式(m1)中、aは1または2であり、bは5〜12の整数である。)
CH2=C(CH3)COOCH2(CF2)cX (m2)
(ただし、式(m2)中、Xは水素原子またはフッ素原子であり、cは1〜4の整数である。)
フルオロアルキルメタクリレートとしては、クラッド12の柔軟性が向上し、POF1の側面からの衝撃に対する耐性が向上する点から、長鎖フルオロアルキルメタクリレートが好ましく、1,1,2,2−パーフルオロデシルメタクリレート(17FM、a=2、b=10)が特に好ましい。
共重合体(α1)におけるMAA単位の含有量は、0.05〜2質量%が好ましく、0.5〜2質量%がより好ましい。MAA単位の含有量が0.05質量%以上であれば、クラッド材の耐熱分解性が向上すると共に、コア材との密着性も向上する。MAA単位の含有量が2質量%以下であれば、加工性が向上する。
クラッド12単独の伝送損失は、波長650nm、励振NA0.1の光を用いて、0.7m−0.2mのカットバック法により測定される。
また、クラッド12単独の伝送損失を前記範囲内に調節するには、クラッド材をキャスト重合法により製造することが好ましい。
共重合体(β)においては、VDFを80モル%以上重合させた共重合体(以下、「共重合体(β1)」という。)が最も融点が高い。そのため、保護材として共重合体(β1)を用いれば、コア材との多層紡糸が容易になり、またそれに続く延伸操作も容易に行える。なお、延伸操作は、POFの機械的強度を向上させるために行われるものである。
POF1の伝送帯域(−3dB帯域)は、50m−2mのカットバック法を用いてサンプルを用いてインパルス応答法で測定される。
POF1の製造方法としては、重合によりポリメタクリル酸メチルを含有するコア材を得るコア材製造工程と、重合により共重合体(α)を含有するクラッド材を得るクラッド材製造工程と、該コア材、クラッド材、及び保護材を溶融して複合紡糸する紡糸工程とを有する方法が挙げられる。
コア材製造工程におけるポリメタクリル酸メチルを製造する重合は、公知の重合方法を採用できる。
クラッド材製造工程では、キャスト重合法により重合を行い、得られた重合物を脱揮押出機へ供給した後、残存する単量体成分を除去し、ペレット化する方法が簡便で好ましい。具体的には、前記ペレット化の環境をクリーンルームに準ずる環境とし、また静電気対策を行うなど極力異物の混入を防ぐことが好ましい。クリーン度のレベルは、米国Fed-Std-209D規格で定められたクリーン度がクラス500以下の環境とすることが好ましく、クラス100以下の環境とすることがより好ましい。また、ペレット化後の異物混入を防ぐため、清浄な容器を使用し、ペレットの乾燥に際しても、クリーンオーブンを使用したり、逆止弁を取り付けた密閉容器にペレットを入れ、減圧乾燥する等の方法を取ることが好ましい。
また、紡糸工程へのペレットの供給についても、前記と同様のクリーンルーム環境下にて行う。
(i)連続塊状重合直接紡糸法によって、MMAを重合する工程、重合系から揮発成分を脱気する工程、PMMA(コア材)を紡糸する工程を連続的に行い、コア材と共に、他のスクリュー型押し出し機などからそれぞれ供給されたクラッド材、保護材を共押し出し(複合紡糸)する方法。
(ii)スクリュー型押し出し機などからそれぞれ供給されたPMMA(コア材)、クラッド材、保護材を共押し出しする方法。
なかでも、得られるPOF1の伝送損失を低減しやすい点から、方法(i)が好ましい。
一方、クラッドに混入している異物は、クラッド単独の伝送損失を高める役割も果たしていることがわかった。つまり、クラッドに混入している異物は、クラッドモードの光を減衰させて伝送帯域を確保する役割を果たしていることがわかった。本発明では、クラッド単独の伝送損失が1,500〜6,000dB/kmに調節されることに加えて、クラッドの厚みが20〜40μmに設定されることで、クラッドモードの光が充分に減衰される。そのため、クラッドモードの光によってパルス幅が広がり、パルス間が重なって高周波数の光信号の伝達が困難になることが抑制されるので、充分な伝送帯域が確保される。
以上のように、本発明のPOFは、広帯域性能と、長期間保管してもクラッドにクラックが生じて伝送損失が増大することを抑制できる優れた耐久性とを兼ね備えている。
本発明のPOFケーブルは、前述した本発明のPOFの保護層の外側にジャケット層が形成され、外径が2.2mmのPOFケーブルである。
本発明のPOFケーブルの落下衝撃強度は、1.5N・m以上である。本発明のPOFケーブルは、前述した本発明のPOFを有していることで、前記落下衝撃強度が達成される。前記落下衝撃強度は、JIS C6861によって定められた機械特性試験方法により測定される。
ジャケット層の形成は既存の方法を用いることができる。
各例で得られたPOFの評価は、以下に示す、初期の伝送損失、伝送帯域、長期伝送損失の増加、および落下衝撃強度を測定することにより行った。
[伝送帯域]
50m−2mのカットバック法により、励振NAが0.3、0.65の光に対する長さ50mのPOFの−3dB帯域を、インパルス応答法により測定した。
測定装置として浜松ホトニクス株式会社製の光サンプリングオシロスコープ、光源として東芝株式会社製の半導体レーザTOLD9410を用い、測定波長は650nmとした。
25m−5mのカットバック法によりPOFの伝送損失(dB/km)を測定した。測定波長は650nm、励振NAは0.1、0.65とした。また、励振NAが0.1の条件については、POFの初期状態の伝送損失に加え、長期保管時の評価として、POFをボビンに巻いた状態で、60℃で24時間静置する加速試験を行った後の伝送損失も測定した。また、その差から、長期伝送損失(損失増加量)を求めた。
また、クラッド単独の伝送損失は、0.7m−0.2mのカットバック法により、前記と同様にして測定した。測定波長は650nm、励振NAは0.1とした。
POFのNAは、JIS C6862反射法に準拠した方法で測定した。
[落下衝撃強度]
POFケーブルの落下衝撃強度は、JIS C6861機械特性試験方法に準拠した方法で実施し、POFの損失が3dB増加する衝撃柱の位置エネルギーを算出した。
コア材はPMMAを用いた。
クラッド材は、下記に示す組成及び製法にて得られたものを用いた。キャスト重合容器に、17FM25質量%、MMA74質量%及びMAA1質量%からなる単量体成分と、前記単量体成分に対して、重合開始剤としてジメチル2,2’−アゾビスイソブチレート0.1質量%と、連鎖移動剤としてn−オクチルメルカプタン0.28質量%とを添加し、キャスト重合法(60℃、5時間、次いで120℃、2時間の2段重合)により共重合させた後、脱揮押出機を通じて残存低沸点化合物を除去し、クリーン度のクラスが1000レベルのクリーンルーム内に設置した、クラス100レベルのクリーンブース(縦800mm×横1600mm×高さ2500mm;日本エアーテック社製HEPAユニット「MAC−103」を2基設置)内でペレット化を行い、逆止弁付きのSUS製容器に採取した。この共重合体の屈折率は、1.463であった。
また、保護材は、VDF80モル%とTFE20モル%の共重合体(ダイキン工業株式会社製、商品名「VP−50」)を用いた。前記コア材、クラッド材および保護材を用いて、連続塊状重合直接紡糸法により230℃の紡糸温度にて3層複合紡糸を行い、図1に例示したPOFを製造した。この際、クラッド材は、前記SUS容器の状態で、60℃、24時間減圧乾燥を行った後、直接POF紡糸設備へ接続し、空気中の異物が混入しないようにした。
得られたPOFは、ファイバ直径が1,010μm、クラッド12の厚みが30μm、保護層13の厚みが5μm、クラッド12単独の伝送損失が2,200dB/kmであった。
また、得られたPOFの外周に、ポリエチレン(宇部丸善ポリエチレン社製、商品名「UBE C−180」)を140℃に設定したクロスヘッドダイを用いたクロスヘッド被覆装置で被覆し、外径2.2mmのPOFケーブルとした。
クラッド12の厚みを25μmに変更した以外は、実施例1と同様にして、ファイバ直径が1,000μmのPOFを製造した。
また、得られたPOFに、実施例1と同様にしてポリエチレン被覆を施し、外径2.2mmのPOFケーブルとした。
クリーンブースに設置されたHEPAユニット数を変更することにより、クリーンブース環境のクラスを50〜500に変更し、クラッド12の厚みを表1に示すとおりに変更した以外は、実施例1と同様にして、クラッド12単独の伝送損失が表1に示すとおりであるPOFを製造した。
また、得られたPOFに実施例1と同様にしてポリエチレン被覆を施し、外径2.2mmのPOFケーブルとした。
クラッド12の厚みを10μmに変更した以外は、実施例1と同様にして、ファイバ直径が1,000μmのPOFを製造した。
また、得られたPOFに実施例1と同様にしてポリエチレン被覆を施し、外径2.2mmのPOFケーブルとした。
クリーンブースに設置されたHEPAユニット数(0基から3基)及びクリーンブース設置の有無を変更することにより、クリーンブース環境のクラスを50〜1000に変更し、クラッド12の厚みを表1に示すとおりに変更した以外は、実施例1と同様にして、クラッド12単独の伝送損失が表1に示すとおりであるPOFを製造した。
また、得られたPOFに、により実施例1と同様にしてポリエチレン被覆を施し、外径2.2mmのPOFケーブルとした。
実施例、参考例および比較例で得られたPOFとPOFケーブルの評価結果を表1に示す。
クラッド単独の伝送損失が6,000dB/kmを超える比較例2および3のPOFは、長期伝損増加が大きく、クラッドにクラックが発生することによる伝送損失の増加を抑制できなかった。また、比較例3のPOFケーブルは、落下衝撃強度が低く、耐衝撃性が劣っていた。
クラッド単独の伝送損失が1,500dB/kmに満たない比較例4のPOFは、実施例のPOFに比べて伝送帯域が狭く、充分な伝送帯域を確保することができなかった。
クラッドの厚みが40μmを超える比較例5のPOFは、長期伝損増加が大きく、クラッドにクラックが発生することによる伝送損失の増加を抑制できなかった。
Claims (6)
- コアと、コアの外側に形成されたクラッドと、クラッドの外側に形成された保護層とを有するプラスチック光ファイバであって、
コアがポリメタクリル酸メチルを50質量%以上含有し、
コアの屈折率が、1.47〜1.53であり、
クラッド単独の波長650nmの光に対する伝送損失が、1,500〜4,000dB/kmであり、
クラッド材が、長鎖フルオロアルキルメタクリレートとメタクリル酸メチルとメタクリル酸の共重合体であり、
前記長鎖フルオロアルキルメタクリレートが、下式(m1)で表され、
クラッドの厚みが、20〜40μmである、プラスチック光ファイバ。
CH 2 =C(CH 3 )COO(CH 2 ) a (CF 2 ) b CF 3 (m1)
(ただし、式(m1)中、aは1または2であり、bは5〜12の整数である。) - 下式(1)で定義される開口数NAが、0.25〜0.40である、請求項1に記載のプラスチック光ファイバ。
NA=(n1 2−n2 2)1/2 (1)
ただし、式(1)中、n1はコアの屈折率であり、n2はクラッドの屈折率である。 - 保護層の屈折率が、クラッドの屈折率よりも低い、請求項1又は2に記載のプラスチック光ファイバ。
- 請求項1〜3のいずれか一項に記載のプラスチック光ファイバの外側にジャケット層が形成されたプラスチック光ファイバケーブル。
- JIS C6861によって定められた機械特性試験方法により測定される落下衝撃強度が、1.5N・m以上である、請求項4に記載のプラスチック光ファイバケーブル。
- 請求項1〜3のいずれか一項に記載のプラスチック光ファイバの製造方法であって、
重合によりポリメタクリル酸メチルを50質量%以上含有するコア材を得るコア材製造工程と、
重合によりクラッド材を得るクラッド材製造工程と、
コア材、クラッド材、及び保護層を形成する保護材を、溶融して複合紡糸する紡糸工程と、を有し、
クラッド材製造工程及びクラッド材製造工程から紡糸工程にクラッド材を供給する環境において、米国Fed-Std-209D規格で定められたクリーン度が、クラス500以下である、プラスチック光ファイバの製造方法。
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