JP5915052B2 - 高分子電解質、それを用いた高分子電解質膜および固体高分子形燃料電池 - Google Patents
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Description
さらに、フッ素系樹脂電解質を単独で電解質膜として適用した場合、耐久性が低くなるという問題があった。このようなことから、フッ素系樹脂電解質の代替となる新たな材料の必要性が高まってきている。
例えば、特許文献1には、炭化水素系電解質を用いて、低加湿で高いプロトン伝導性を得るために、液晶骨格を有する材料を用いて、スルホン酸基のネットワークを形成させることにより、低加湿で高いプロトン伝導性が得られることについて記載されている。
本発明のある態様による第1の高分子電解質は、下記の化学一般式(1)(A1,A2はアルキル基を示し、Bはプロトン酸基を示し、nを10以上10000以下の整数とする。)で表わされる高分子単位を有し、前記アルキル基は、−(CH2)m−(mは1以上の整数とする。)であり、前記A1、A2におけるmの値が同じ、或いは連続した数であることを特徴とする。
本発明のある態様による第2の高分子電解質は、前記A1、A2におけるmの値が2、3、4のいずれかの組み合わせからなることを特徴とする。
本発明のある態様による第3の高分子電解質は、前記プロトン酸基は、スルホン酸基またはホスホン酸基であることを特徴とする。
本発明のある態様による第4の高分子電解質は、前記化学一般式(1)に対して、ポリマー化が可能な基としてX1,X2を有する下記の化学一般式(2)(X1,X2はそれぞれ独立して、塩素原子、臭素原子、またはヨウ素原子を示す。)で表されるイオン性材料を含んで形成されたことを特徴とする。
本発明のある態様による第5の高分子電解質は、イオン交換容量は、2.1meq/g以上2.4meq/g以下であることを特徴とする。
本発明によれば、イオン交換容量を上記のようにすることにより、上記で説明したような高分子電解質膜の性能を最も高めることが可能となる。
本発明のある態様による高分子電解質膜は、第1〜4のいずれか1つの高分子電解質を用いて形成されたことを特徴とする。
本発明のある態様による固体高分子形燃料電池は、上記の高分子電解質膜を用いて形成されたことを特徴とする。
本発明によれば、上記の高分子電解質膜を用いて形成された固体高分子形燃料電池であり、高い発電性能を備えた固体高分子形燃料電池を提供することが可能となる。
また、本発明によれば、プロトン酸基が、スルホン酸基またはホスホン酸基であることを特徴とする高分子電解質により、プロトンの解離を促進させ、プロトン伝導度を向上させることができる。
また、本発明によれば、上記の化学一般式(2)で表されるX1,X2はそれぞれ独立して、塩素原子、臭素原子、またはヨウ素原子である高分子電解質(イオン性材料)であり、高分子電解質膜を薄膜化しても、膜電極接合体を形成するために必要な機械強度を十分に得ることができる。
なお、本発明は、以下に記載する各実施の形態に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて設計の変更等の変形を加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施の形態も本発明の範囲に含まれうるものである。
図1は、本発明の高分子電解質膜(高分子電解質)1の両面に電極触媒層が形成された膜電極接合体12を装着した固体高分子形燃料電池の単セル11の構成を示す分解断面図である。
上記の空気極側電極触媒層2と空気極側ガス拡散層4とで、電極として機能する空気極6が形成される。さらに、燃料極側電極触媒層3と燃料極側ガス拡散層5とで、同じく電極として機能する燃料極7が形成される。この空気極6と燃料極7とに、図示しない外部の負荷が接続されることで、負荷を駆動することができる。
また、図2は、図1に示した膜電極結合体12の構成を示す要部断面図である。図2に示す膜電極結合体12は、高分子電解質膜1の空気極6側の面に、空気極側電極触媒層2が形成されている。また、膜電極結合体12は、高分子電解質膜1の燃料極7側の面に、空気極側電極触媒層3が形成されている。
図3は、ベンゼン環のπスタックの構造の概念を示す模式図である。一般的に、芳香族化合物は、図3に示すように、芳香環上に非局在化したπ電子同士が相互作用することで、芳香環の面と面を重ね合わせるように分子間でのスタック(πスタック)を形成することが知られている。この図3では、上下のベンゼン環の炭素原子同士が、互いに重なり合う配座の例を具体的に示している。
本実施形態では、メソゲンにプロトン酸基が、連結基を通して結合しており、メソゲンのネットワークが直接プロトンのネットワークになりうる。従って、メソゲンのスタックの形成をさらに促進することで、分子内でのプロトンの輸送を効率よく行うことができ、プロトン伝導度を向上させることができる。
(化合物の合成)
下記の化学一般式(1)におけるA1,A2はアルキル基を示し、Bはプロトン酸基を示し、nを10以上10000以下の整数とする。
上記の化学一般式(2)中のA1,A2で表されるアルキル基は、−(CH2)m−(mは1以上の整数である。)であることが好ましく、mが3または4であることが特に好ましい。mが3または4であることによって、その高分子電解質からなる高分子電解質膜の柔軟性を維持しつつ、酸価の高い高分子電解質膜を得ることができる。
なお、高分子電解質1のイオン交換容量は、上記で説明したような高分子電解質膜の性能を高める観点から、2.1meq/g以上2.4meq/g以下であることが特に好ましい。
また、塩基としては、強塩基であることが望ましく、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどが挙げられる。塩基の量は、1,2−ジ(4−ヒドロキシフェニル)アセチレン100モル%に対して、50モル%以上100モル%以下であることが好ましく、70モル%以上90モル%以下であることが好ましい。
塩基としては、強塩基であることが望ましく、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどが挙げられる。塩基の量は、上記の化学一般式(4)で表わされる化合物100モル%に対して、50モル%以上100モル%以下であることが好ましく、80モル%以上100モル%以下であることが好ましい。
配位子成分としては、トリフェニルホスフィン、2,2’−ビピリジン、1,5−シクロオクタジエン、または1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパンなどが挙げられる。これらのうち、トリフェニルホスフィン、2,2’−ビピリジンが好ましい。上記配位子成分である化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。配位子成分は、上記モノマー100モル%に対して、1モル%以上100モル%以下であることが好ましく、1モル%以上20モル%以下であることがより好ましい。
この際の電解質濃度は、分子量にもよるが、通常、2.5質量%以上50質量%以下、好ましくは7質量%以上25質量%以下である。上記の範囲内であれば、成膜性に優れる。
基材上に形成されたフィルムは、好ましくは25℃以上140℃以下、0.1時間以上24時間以下、加熱することにより、高分子電解質膜を得ることができる。
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例)
(化学一般式(3)の合成)
窒素雰囲気下、1,2−ジ(4−ヒドロキシフェニル)アセチレン105g(0.5mol)を用意し、プロパンスルトンを61g(0.5mol)および水酸化ナトリウム16g(0.4mol)、メタノールを200ml加えて、48時間撹拌した。その後、ジエチルエーテルで再沈殿させ、ろ過した。ろ過物をメタノールにて洗いこみ、上記の化学一般式(3)で表される化合物を得た。
(化学一般式(6)の合成)
窒素雰囲気下、上記の化学一般式(3)で表される化合物177g(0.5mol)に、2−(2,5−ジクロロフェニル)−1−ブロモエタン127g(0.5mol)および水酸化ナトリウム20g(0.5mol)、ジメチルスルホキシドを200mlを加えて、48時間撹拌した。その後、メタノールで再沈殿させ、ろ過した。ろ過物をメタノールにて洗いこみ、下記の化学一般式(6)で表される化合物を得た。
窒素雰囲気下、化学一般式(6)で表される化合物を7.9g(15mmol)に、トリフェニルホスフィン1.5g(5.6mmol)、ヨウ化ナトリウム0.3g(2mmol)、亜鉛1.3g(20mmol)、ビス(トリフェニルホスフィン)ニッケル(II)ジクロリド0.31g(0.48mmol)を加えて、さらに、溶媒として、20mlのジメチルホルムアミドを加えて、60℃で24時間撹拌した。反応物をメタノールで再沈し、固体を濾別したのち、濃塩酸でプロトンフォームした。さらに純水で濾液のpHが7になるまで洗浄したのち、固体を減圧乾燥し、下記の化学一般式(7)で表される化合物を得た。
(9−ブロモ−1−デセンの合成)
500mlの三角フラスコにベンゼン100mlおよびピリジン1.0gを加えて、9−デセン−1−オール25g(0.16mol)を溶解した。次に三臭化リン43.2g(0.16mol)を溶解させたベンゼン溶液100mlを氷冷下でゆっくりと滴下した後、室温で18時間撹拌した。その後、反応液を氷水中に注ぎ、ジエチルエーテル300mlで抽出した。ここで得たエーテル−ベンゼン混合液は無水硫酸ナトリウムで一晩脱水した。吸引ろ過により硫酸ナトリウムを除き、エーテル−ベンゼンを減圧除去し、残渣を減圧蒸留して目的物9−ブロモ−1−デセンを得た。
水酸化ナトリウム3.40g(0.08mol)を100mlのエタノールに溶解させた。この溶液を4,4’−ビフェノール14.9g(0.08mol)を溶解させた100mlエタノールに少量ずつ加えて、エタノールを減圧除去した。残渣を150mlジメチルホルムアミドに窒素気流下で加温して溶解させた(A液)。上記で調整した9−ブロモ−1−デセン15.8g(0.072mol)、フェノチアジン0.1gを30mlのDMFに溶解させた(B液)。窒素雰囲気下でよく撹拌しながら、A液にB液を30分程度かけて加えて、40℃で24時間反応させた。反応終了後、反応液を冷却し、300mlの10%冷却塩酸で洗浄した後、300mlのエーテルで抽出し、次いで100ml冷蒸留水で洗浄した。エーテル層は無水硫酸ナトリウムで一晩脱水する。残渣に300mlのヘキサンを加えて、ろ過により沈殿物を得る。次いで200mlベンゼンを加えて、ベンゼン可溶部分をベンゼンを用いたカラムクロマトグラフィーで精製して4−(9−デセニルオキシフェニル)フェノールを得た。
ジメチルホルムアミド30ml中に重合禁止剤フェノチアジン0.05gを溶解させた。そこへ、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデンセン(DBU)1.22g(0.008mol)と4−(9−デセニルオキシフェニル)フェノール0.65g(0.002mol)、3−ブロモプロパンスルホン酸ナトリウム1.8g(0.008mol)を溶解させ、窒素雰囲気下、50℃で48時間撹拌した。反応終了後、溶媒を濃縮しジエチルエーテルを加えて、ろ過することにより沈殿を得た。次に、沈殿を蒸留水でよく洗浄した。次に、洗浄後の沈殿を6mol/LのHCl中で24時間撹拌後、遠心分離機により沈殿を得て、この沈殿をジエチルエーテルで洗浄後、乾燥して3−[6−(9−デセニルオキシ)ビフェニルオキシ]プロピルスルホン酸を得た。
(3−[6−(9−デセニルオキシ)ビフェニルオキシ]プロピルスルホン酸の高分子量化)
窒素雰囲気下、3−[6−(9−デセニルオキシ)ビフェニルオキシ]プロプルスルホン酸を488mg(1mmol)、開始剤であるAIBNを6.6mg(0.04mmol)加えて、ジメチルスルホキシドを4.8ml加えた。その後、60℃で60時間熱重合して高分子量化させた。その後、アセトンで再沈殿させ、ポリマーを得た。
化学一般式(7)、3−[6−(9−デセニルオキシ)ビフェニルオキシ]プロピルスルホン酸ポリマーをジメチルスルホキシドに溶解させ、ガラスにキャストし、45℃で12時間、80℃で12時間、80℃で1時間真空乾燥させることで、膜を得た。
(薄膜化)
化学一般式(7)で表わされるポリマー膜は、3−[6−(9−デセニルオキシ)ビフェニルオキシ]プロピルスルホン酸ポリマーから得られる膜に比較して、薄膜化しても膜電極接合体が作製できる機械強度を有していた。
(プロトン伝導度の測定)
電解質膜の交流抵抗は、10mm幅の短冊状のプロトン伝導膜試料の表面に、白金線を押し当て、恒温恒湿装置中に試料を保持し、白金線間の交流インピーダンス測定から求めた。すなわち、温度80℃、相対湿度30%の環境下でインピーダンスを測定した。実施例のプロトン伝導度は、比較例と比べて大きく向上した。
2……空気極側電極触媒層
3……燃料極側電極触媒層
4……空気極側ガス拡散層
5……燃料極側ガス拡散層
6……空気極
7……燃料極
8……ガス流路
9……冷却水流路
10……セパレータ
11……固体高分子形燃料電池の単セル
12……膜電極結合体
Claims (7)
- 前記A1、A2におけるmの値が2、3、4のいずれかの組み合わせからなることを特徴とする請求項1に記載の高分子電解質。
- 前記プロトン酸基は、スルホン酸基またはホスホン酸基であることを特徴とする請求項1または2に記載の高分子電解質。
- イオン交換容量は、2.1meq/g以上2.4meq/g以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の高分子電解質。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載の高分子電解質を用いて形成されたことを特徴とする高分子電解質膜。
- 請求項6に記載の高分子電解質膜を用いて形成されたことを特徴とする固体高分子形燃料電池。
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