JP5919891B2 - 高分子電解質、高分子電解質膜、固体高分子形燃料電池およびポリマー化可能な基を有するイオン性材料 - Google Patents
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Description
炭化水素系電解質を用いて、低加湿で高いプロトン伝導性を有するためには、例えば、特許文献1では、液晶骨格を有する材料を用いて、スルホン酸基のネットワークを形成させ、低加湿で高いプロトン伝導性を発現させることが報告されている。
本発明の目的は、上記問題を解決するものであって、薄膜化可能な主鎖を有し、加水分解やラジカル耐性に優れた高分子電解質膜材料(例えば、高分子電解質、この高分子電解質からなる高分子電解質膜、この高分子電解質からなる固体高分子形燃料電池およびポリマー化可能な基を有するイオン性材料)を提供することである。
本発明の請求項2に記載の高分子電解質は、請求項1に記載の高分子電解質において、前記化学一般式(1)中、A1およびA2が−(CH2)m−であることを特徴とするものである。(mは1以上の整数である。)
本発明の請求項6に記載の固体高分子形燃料電池は、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の高分子電解質を用いることを特徴とするものである。
本発明の請求項7に記載のポリマー化可能な基を有するイオン性材料は、下記化学一般式(2)で表されることを特徴とするものである。
本発明の実施形態に係る高分子電解質は、下記化学一般式(2)で表されるポリマー化可能な基を有するイオン性材料(以下、「モノマー」ということがある。)を重合させることによって得られる。
上記化学一般式(2)中、A1およびA2はアルキレン基、B1は電子求引性基、B2は電子供与性基、Yはスルホン酸基、ヒドロキシル基、カルボキシル基から選択されるプロトン酸基をそれぞれ示す。X1、X2はそれぞれ独立して塩素原子、臭素原子、またはヨウ素原子のいずれかである。X1およびX2は同一の原子であっても、異なる原子でもよいが、同一の原子であることが好ましい。
上記化学一般式(2)中、A1およびA2で表されるアルキレン基は、−(CH2)m−(mは1以上の整数である。)であることが好ましく、mが3または4であることが特に好ましい。mが3または4であることによって、その高分子電解質からなる高分子電解質膜の柔軟性を維持しつつ、酸価の高い高分子電解質膜を得ることができる。
上記化学一般式(2)中、B2は電子供与性基であることが好ましい。電子供与性としては、特に、エーテル基が好ましい。B2がエーテル基であることにより、上記化学一般式(2)のモノマーを容易に合成できる。
上記化学一般式(2)のモノマーの製造方法は特に限定されないが、例えば、A1が−(CH2)4−、B1がカルボニル基、B2がエーテル基であり、A2が−(CH2)3−、Yがスルホン酸基またはホスホン酸基である場合、以下のようにして合成することができる。なお、A1、B1、A2、Yが上記構成でない場合であっても、以下のような合成方法および公知の合成方法を組み合わせることによって、上記化学式(2)のモノマーを製造することができる。
まず、下記化学一般式(3)で表される化合物(A)を準備する。
次に、上記化合物(A)と、下記化学一般式(4)で表される化合物(B)とを反応させることによって、下記化学一般式(5)で表される化合物(C)を得ることができる。
反応の際の圧力は、特に限定されるものではないが、加圧下、常圧(大気下)、または減圧下いずれかでよく、場合により適宜設定すればよいが、アルゴンガスや窒素ガス等の不活性ガス雰囲気で行うことが好ましい。
また、この際用いられる触媒としては、ルイス酸触媒であれば良く、ルイス酸触媒の例としては、無水塩化アルミニウムが挙げられる。
触媒は、化合物(A)100モル%に対して、100モル%以上200モル%以下の範囲内であることが好ましく、100モル%以上150モル%以下の範囲内であることがより好ましい。
上記反応で用いられる反応溶媒としては、良溶媒であることが望ましく、例えば、テトラヒドロフラン、シクロヘキサノン、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、N,N−ジメチルイミダゾリノンなどが挙げられる。
また、反応を行う雰囲気は、大気雰囲気下でも窒素雰囲気下でも問題ない。
この際用いられる反応溶媒としては、良溶媒であることが望ましく、より好ましくは、アルコール系溶媒であることが望ましい。例えば、エタノール、メタノール、プロパノール、1−ブタノールが挙げられる。
化合物(F)の溶解性が悪い場合には、カチオン交換やエステル保護により、溶解性を改善することが好ましい。
また、上記化合物(D)と上記化合物(E)とを反応させ、その後、スルホン酸基を導入することによっても得られる。
反応の際の圧力は、特に限定されるものではないが、加圧下、常圧(大気圧)下、または減圧下いずれかでよく、場合により適宜設定すればよいが、常圧下であることが好ましい。
また、反応を行う雰囲気は特に限定されるものではないが、アルゴンガスや窒素ガス等の不活性ガス雰囲気で行うことが好ましい。
また、この際用いられる触媒としては、ルイス酸触媒であれば良く、ルイス酸触媒の例としては、無水塩化アルミニウムが挙げられる。触媒は、上記化合物(D)100モル%に対して、100モル%以上200モル%以下の範囲内であることが好ましく、100モル%以上150モル以下の範囲内であることがより好ましい。
本願発明の実施形態に係るモノマーの重合は、特に限定されるものではないが、特定の触媒の存在下に反応させることが好ましい。この際使用される触媒は、遷移金属化合物を含む触媒系であり、この触媒系としては、配位子成分、配位子が配位された遷移金属錯体、および還元剤を必須成分とし、さらに、重合速度を上げるために塩を添加してもよい。
本願発明のモノマーの重合度、すなわち上記化学一般式(1)におけるnは、10〜10000の範囲内であることが好ましく、より好ましくは1000〜10000の範囲内である。上記範囲内であれば、高分子電解質を溶媒に容易に溶解させることができ、成膜性を良好にすることができる。
このようにして得られた高分子電解質を用いて高分子電解質膜を製造する方法としては、特に限定されないが、例えば、本発明のポリフェニレン系電解質を溶媒に溶解して溶液とした後、キャスティングにより、基材上に塗布し、フィルム状に形成する方法や、所定のギャップに制御されたアプリケータを用いて塗工、成膜する方法、ダイコータを用いて成膜する方法等が挙げられる。
また、この際に用いられる溶媒としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、γ−ブチルラクトン、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチル尿素、ジメチルイミダゾリジノンなどの非プロトン系極性溶媒、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、iso−プロピルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコールなどのアルコール系溶媒およびアセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒などが挙げられる。これらの溶媒は、単独で用いてもよく、あるいは2種以上混合させてもよい。またこれらの溶媒に水を添加したものを用いてもよい。
基材上に形成された塗膜は、好ましくは25℃以上140℃以下の範囲内で、0.1時間以上24時間以下の範囲内で加熱され、本発明の実施形態に係る高分子電解質膜が形成される。
固体高分子形燃料電池は、一般に、高分子電解質膜と、高分子電解質膜の両面に設けた空気極側電極触媒層および燃料極側触媒層とからなる膜電極接合体と、空気極側電極触媒層および燃料極側電極触媒層と対向して配置された空気極側ガス拡散層および燃料極側ガス拡散層と、これらを挟持したセパレータとから構成される。
以下、本発明を実施例および比較例により詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[実施例]
<化合物(C−1)の合成>
1,4−ジクロロベンゼン14.6g(0.1mol)、1−クロロへキサン酸を13.6g(0.1mol)、および塩化アルミニウム14.6g(0.11mol)を加え、窒素雰囲気下、1時間撹拌を行った。この反応溶液の有機成分を抽出により回収し、シクロへキサンを用いて再結晶を行った。乾燥後、下記化学式(9)で表される化合物(C−1)を得た。
窒素雰囲気下において、得られた化合物(C−1)50g(0.2mol)、塩化チオニル118.9g(1mol)およびジメチルホルムアミド5mlを加え、45℃で4時間加熱撹拌することにより、下記化学式(10)で表される化合物(D−1)を得た。
窒素雰囲気下、4−フェノキシフェノール(上記化学式(7)で表わされる化合物(E))54g(0.29mol)、プロパンスルトンを141.7g(1.16mol)および水酸化ナトリウム20g(0.5mol)、メタノールを200ml加え、48時間撹拌した。
その後、ジエチルエーテルで再沈殿させ、ろ過した。ろ過物を塩酸にて洗いこみ、上記化学式(8)で表わされる化合物(F)を得た。
窒素雰囲気下、化合物(D−1)を10g(0.038mol)、化合物(F)を11.7g(0.038mol)、塩化アルミニウムを5.56g(0.042mol)、30mlのジメチルホルムアミドを加え、60℃で1時間撹拌させて、下記化学式(11)で表わされる実施例のモノマーを得た。
窒素雰囲気下、実施例のモノマーを8.04g(14.58mmol)、トリフェニルホスフィン1.493g(5.692mmol)、ヨウ化ナトリウム0.293g(1.953mmol)、亜鉛1.281g(19.59mmol)、ビス(トリフェニルホスフィン)ニッケル(II)ジクロリド0.311g(0.475mmol)を加え、溶媒として、20mlのジメチルホルムアミドを加え、60℃で24時間撹拌して、下記一般式(12)で表わされる実施例の高分子電解質を得た。
500mlの三角フラスコにベンゼン100ml及びピリジン1.0gを加え、9−デセン−1−オール25g(0.16mol)を溶解した。次に三臭化リン43.2g(0.16mol)を溶解させたベンゼン溶液100mlを氷冷下でゆっくりと滴下した後、室温で18時間撹拌した。その後、反応液を氷水中に注ぎ、ジエチルエーテル300mlで抽出した。ここで得たエーテル−ベンゼン混合液は無水硫酸ナトリウムで一晩脱水した。求引ろ過により硫酸ナトリウムを除き、エーテル−ベンゼンを減圧除去し、残渣を減圧蒸留して目的物9−ブロモ−1−デセンを得た。
水酸化ナトリウム0.08mol(3.40g)を100mlのエタノールに溶解させた。この溶液を4,4’−ビフェノール0.08mol(14.9g)を溶解させた100mLのエタノールに少量ずつ加え、エタノールを減圧除去した。残渣を150mLのDMFに窒素気流下で加温して溶解させた(A液)。上記で調整した9−ブロム−1−デセン0.072mol(15.8g)、フェノチアジン0.1gを30mLのDMFに溶解させた(B液)。窒素雰囲気下でよく撹拌しながらA液にB液を30分程度かけて加え、40℃で24時間反応させた。反応終了後、反応液を冷却し、300mLの10%冷希塩酸で洗浄した後、300mLのエーテルで抽出し、次いで100mLの冷蒸留水で洗浄した。エーテル層は、無水硫酸ナトリウムで一晩脱水する。硫酸ナトリウムをろ過により取り除き、エーテルを減圧除去する。残渣に300mLのヘキサンを加え、ろ過により沈殿物を得る。次いで200mLのベンゼンを加え、ベンゼン可溶部分をベンゼンを用いたカラムクロマトグラフィーで精製してスルホン化4−(9−デセニルオキシフェニル)フェノールを得た。
N,N−ジメチルホルムアミド30mL中に重合禁止剤であるフェノチアジン0.05gを溶解させた。そこへ、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセン(DBU)0.008mol(1.22g)と4−(9−デセニルオキシフェニル)フェノール0.002mol(0.65g)、3−ブロモプロパンスルホン酸ナトリウム0.008mol(1.32g)を溶解させ、窒素雰囲気下、50℃で48時間撹拌した。反応終了後、溶媒を濃縮したジエチルエーテルを加え、ろ過することにより沈殿を得た。次に、沈殿を蒸留水でよく洗浄した。次に、洗浄後の沈殿を6mol/LのHCl中で24時間撹拌後、遠心分離機により沈殿を得て、この沈殿をジエチルエーテルで洗浄後、乾燥して、比較例のモノマーである3−[6−(9−デセニルオキシ)ビフェニルオキシ]プロピルスルホン酸を得た。
窒素雰囲気下、3−[6−(9−デセニルオキシ)ビフェニルオキシ]プロピルスルホン酸を488mg(1mmol)、開始剤であるAIBNを6.6mg(0.04mmol)加え、ジメチルスルホキシドを4.7ml加えた。その後、60℃で60時間熱重合して高分子量化させた。その後、アセトンで再沈殿させ、比較例の高分子電解質である3−[6−(9−デセニルオキシ)ビフェニルオキシ]プロピルスルホン酸ポリマーを得た。
実施例および比較例の高分子電解質をジメチルスルホキシドに溶解させ、ガラスにキャストし、45℃で12時間、80℃で12時間、80℃で1時間真空乾燥させることで、実施例および比較例の高分子電解質膜を得た。
[評価]
<薄膜化>
実施例の高分子電解質膜は、比較例の高分子電解質膜に比較して、薄膜化しても膜電極接合体が作製できる機械強度を有していた。
<フェントン試験>
60℃、3%過酸化水素水溶液、4ppmFe2+中に、実施例および比較例の高分子電解質膜を浸漬させた。その結果、実施例の高分子電解質膜の方が、耐久性を有していることを確認した。
Claims (7)
- 前記化学一般式(1)中、A1およびA2が−(CH2)m−であることを特徴とする請求項1に記載の高分子電解質。(mは1以上の整数である。)
- 前記化学一般式(1)中、A1のmが3または4であることを特徴とする請求項2に記載の高分子電解質。
- 前記化学一般式(1)中、Yがスルホン酸基またはホスホン酸基であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の高分子電解質。
- 請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の高分子電解質からなることを特徴とする高分子電解質膜。
- 請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の高分子電解質を用いることを特徴とする固体高分子形燃料電池。
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