JP5884361B2 - 高分子電解質、それを用いた高分子電解質膜および固体高分子形燃料電池 - Google Patents
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Description
さらに、フッ素系樹脂電解質を単独で電解質膜として適用した場合、耐久性が低くなるという問題があった。このようなことから、フッ素系樹脂電解質の代替となる新たな材料の必要性が高まってきている。
例えば、特許文献1には、炭化水素系電解質を用いて、低加湿で高いプロトン伝導性を得るために、液晶骨格を有する材料を用いて、スルホン酸基のネットワークを形成させることにより、低加湿で高いプロトン伝導性が得られることについて記載されている。
本発明のある態様による第1の高分子電解質は、下記の化学一般式(1)(A1,A2はアルキレン基を示し、B1は電子求引性基を示し、B2は電子供与性基を示し、Yはスルホン酸基、ホスホン酸基、ヒドロキシル基、またはカルボキシル基から選択されるプロトン酸基を示し、nは10以上10000以下の整数とする。)で表される高分子単位を有し、前記電子求引性基はカルボニル基であり、前記電子供与性基はアミノ基であることを特徴とする。
また、上記の高分子電解質によれば、モノマーを容易に合成することができ、その高分子電解質からなる高分子電解質膜を柔軟にすることが可能となる。一方、電子供与性基を導入すると、例えば、メソゲン部位の電子密度が高くなり、ラジカルに攻撃されやすくなるが、その骨格に電子密度の低いピリミジン骨格を導入しているため、ラジカル安定性を維持することが可能となる。
本発明のある態様による第2の高分子電解質は、前記アルキレン基は、−(CH2)m−(mは1以上の整数とする。)であることを特徴とする。
本発明のある態様による高分子電解質膜は、上記の第1〜3のいずれか1つに記載の高分子電解質を用いて形成されたことを特徴とする。
本発明のある態様による固体高分子形燃料電池は、上の高分子電解質膜を用いて形成されたことを特徴とする。
上記の固体高分子形燃料電池によれば、上記で説明した高分子電解質を用いて形成された高分子電解質膜を用いて膜電極結合体が形成されるため、固体高分子形燃料電池としての発電性能を向上させることが可能となる。
なお、本発明は、以下に記載する各実施の形態に限定されうるものではなく、当事業者の知識に基づいて設計の変更等の変形を加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施の形態も本発明の範囲に含まれうるものである。
図1は、本発明の高分子電解質膜(高分子電解質)1の両面に電極触媒層が形成された膜電極接合体12を装着した固体高分子形燃料電池の単セル11の構成を示す分解断面図である。
上記の空気極側電極触媒層2と空気極側ガス拡散層4とで、電極として機能する空気極6が形成される。さらに、燃料極側電極触媒層3と燃料極側ガス拡散層5とで、同じく電極として機能する燃料極7が形成される。この空気極6と燃料極7とに、図示しない外部の負荷が接続されることで、負荷を駆動することができる。
また、図2は、図1に示した膜電極結合体12の構成を示す要部断面図である。図2に示す膜電極結合体12は、高分子電解質膜1の空気極6側の面に、空気極側電極触媒層2が形成されている。また、膜電極結合体12は、高分子電解質膜1の燃料極7側の面に、空気極側電極触媒層3が形成されている。
上記の化学一般式(2)中のA1,A2はアルキレン基、B1は電子求引性基、B2は電子供与性基、Yはスルホン酸基、ヒドロキシル基、カルボキシル基から選択されるプロトン酸基をそれぞれ示す。さらに、X1,X2はそれぞれ独立して塩素原子、臭素原子、またはヨウ素原子のいずれかである。X1,X2は同一の原子であっても、異なる原子でもよいが、同一の原子であることが好ましい。
上記の化学一般式(2)中のA1,A2で表されるアルキレン基は、−(CH2)m−(mは1以上の整数である。)であることが好ましく、mが3または4であることが特に好ましい。mが3または4であることによって、その高分子電解質からなる高分子電解質膜の柔軟性を維持しつつ、酸価の高い高分子電解質膜を得ることができる。
なお、高分子電解質1のイオン交換容量は、上記で説明したような高分子電解質膜の性能の観点から、2.1meq/g以上2.4meq/g以下であることが特に好ましい。
上記の化学一般式(2)のモノマーの製造方法は特に限定されないが、例えば、A1が−(CH2)4−、B1がカルボニル基、B2がアミノ基であり、A2が(−CH2)3−、Yがスルホン酸基である場合、以下のようにして合成することができる。なお、A1、B1、A2、Yが上記構成でない場合であっても、以下のような合成方法および公知の合成方法を組み合わせることによって、上記の化学一般式(2)のモノマーを製造することができる。
まず、下記の化学一般式(3)で表される化合物(A)を準備する。
次に、上記の化合物(A)と、下記の化学一般式(4)で表される化合物(B)とを反応させることによって、下記の化学一般式(5)で表される化合物(C)を得ることができる。
上記の化合物(B)は、化合物(A)100モル%に対して、50モル%以上100モル%以下であることが好ましく、80モル%以上100モル%以下であることが好ましい。
触媒は、化合物(A)100モル%以上に対して、100モル%以上200モル%以下であることが好ましく、100モル%以上150モル%以下であることがより好ましい。
次に、上記の化合物(C)と塩化チオニルとを反応させることによって、下記の化学一般式(6)で表される化合物(D)を得ることができる。
反応は、反応効率の観点から、窒素雰囲気で行うことが望ましい。
上記の反応で用いられる反応溶媒としては、良溶媒であることが望ましく、例えば、テトラヒドロフラン、シクロヘキサノン、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、N,N−ジメチルイミダゾリノンなどが挙げられる。
この反応を行う際に用いられる反応溶媒としては、良溶媒であることが望ましく、より好ましくは、アルコール系溶媒であることが望ましい。具体的な反応溶媒として、例えば、エタノール、メタノール、プロパノール、1−ブタノールが挙げられる。
この際の反応条件は、特に限定されるものではないが、反応温度が好ましくは25℃以上80℃以下、より好ましくは40℃以上70℃以下、反応時間が好ましくは8時間以上48時間以下、より好ましくは16時間以上32時間以下で反応が行われる。
反応の際の圧力は、特に限定されるものではないが、加圧下、常圧(大気圧)下、または減圧下いずれかでよく、場合により適宜設定すればよいが、常圧下であることが好ましい。
上記の化合物(D)は、上記の化合物(F)100モル%に対して、50モル%以上100モル%以下であることが好ましく、80モル%以上100モル%以下であることが好ましい。
また、この際用いられる触媒としては、ルイス酸触媒であれば良く、ルイス酸触媒の例としては、無水塩化アルミニウムが挙げられる。触媒は、上記の化合物(D)100モル%に対して、100モル%以上200モル%以下であることが好ましく、100モル%以上150モル以下であることがより好ましい。
上記のモノマーの重合は、特に限定されるものではないが、特定の触媒の存在下に反応させることが好ましい。この際使用される触媒は、遷移金属化合物を含む触媒系であり、この触媒系としては、配位子成分、配位子が配位された遷移金属錯体、および還元剤を必須成分とし、さらに、重合速度を上げるために塩を添加してもよい。
また、配位子成分としては、トリフェニルホスフィン、2,2’−ビピリジン、1,5−シクロオクタジエン、または1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパンなどが挙げられる。これらのうち、トリフェニルホスフィン、2,2’−ビピリジンが好ましい。上記の配位子成分である化合物は、1種類だけ単独で用いてもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。配位子成分は、上記のモノマー100モル%に対して、1モル%100モル%以下であることが好ましく、1モル%以上20モル%以下であることがより好ましい。
上記のモノマーの重合度、すなわち上記の化学一般式(1)におけるnは、10以上10000以下であることが好ましく、より好ましくは、1000以上10000以下である。nが上記の範囲であることにより、高分子電解質を溶媒に容易に溶解させることができ、成膜性を良好にすることができる。
このようにして得られた高分子電解質を用いて高分子電解質膜を製造する方法としては、特に限定されないが、例えば、本発明のポリフェニレン系電解質を溶媒に溶解して溶液とした後、キャスティングにより、基材上に塗布し、フィルム状に形成する方法や、所定のギャップに制御されたアプリケータを用いて塗工、成膜する方法、ダイコータを用いて成膜する方法等が挙げられる。
また、この際に用いられる溶媒としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、γ−ブチルラクトン、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチル尿素、ジメチルイミダゾリジノンなどの非プロトン系極性溶媒、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、iso−プロピルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコールなどのアルコール系溶媒およびアセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒などが挙げられる。これらの溶媒は、単独で用いてもよく、あるいは2種以上混合させてもよい。またこれらの溶媒に水を添加したものを用いてもよい。
また、粘度を調整した高分子電解質溶液は、例えば、基材にキャストされる。キャストする基材としては、金属材料、ガラス、セラミックス、プラスチックなどが挙げられる。基材の形状は特に限定されるものではない。
さらに、基材上に形成された塗膜は、好ましくは25℃以上140℃以下、0.1時間以上24時間以下で加熱され、本発明の高分子電解質膜が形成される。
固体高分子形燃料電池は、一般に、高分子電解質膜と、高分子電解質膜の両面に設けた空気極側電極触媒層および燃料極側触媒層とからなる膜電極接合体と、空気極側電極触媒層および燃料極側電極触媒層と対向して配置された空気極側ガス拡散層および燃料極側ガス拡散層と、これらを挟持したセパレータとから構成される。
本発明の高分子電解質は、薄膜化しても十分な機械強度を有し、耐加水分解性およびラジカル安定性を向上させることができることから、上記固体高分子形燃料電池を構成する高分子電解質膜の材料として用いることができる。また、導電性物質および触媒物質とともに、空気極側電極触媒層または燃料極側電極触媒層を形成することもできる。
以下、本発明を実施例および比較例により詳細に説明する。ただし、本発明は、これから説明する実施例および比較例に限定されるものではない。
<化合物(C−1)の合成>
1,4−ジクロロベンゼン14.6g(0.1mol)、1−クロロへキサン酸を13.6g(0.1mol)を用意し、塩化アルミニウム14.6g(0.11mol)を加えて、窒素雰囲気下、1時間撹拌を行った。この反応溶液の有機成分を抽出により回収し、シクロへキサンを用いて再結晶を行った。乾燥後、下記の化学一般式(9)で表される化合物(C−1)を得た。
窒素雰囲気下において、得られた化合物(C−1)50g(0.2mol)に、塩化チオニル118.9g(1mol)およびジメチルホルムアミド5mlを加えて、45℃で4時間加熱撹拌することにより、下記の化学一般式(10)で表される化合物(D−1)を得た。
窒素雰囲気下、2−アミノ−5−フェニルピリミジン(上記の化学一般式(7)で表わされる化合物(E))49.6g(0.29mol)に、プロパンスルトンを141.7g(1.16mol)および水酸化ナトリウム20g(0.5mol)、メタノールを200ml加えて、48時間撹拌した。
その後、ジエチルエーテルで再沈殿させ、ろ過した。ろ過物を塩酸にて洗いこみ、上記の化学一般式(8)で表わされる化合物(F)を得た。
窒素雰囲気下、化合物(D−1)を10g(0.038mol)に、化合物(F)を11.1g(0.038mol)、塩化アルミニウムを5.56g(0.042mol)、30mlのジメチルホルムアミドを加えて、60℃で1時間撹拌させて、下記の化学一般式(11)で表わされる実施例のモノマーを得た。
窒素雰囲気下、実施例のモノマーを7.79g(14.58mmol)に、トリフェニルホスフィン1.493g(5.692mmol)、ヨウ化ナトリウム0.293g(1.953mmol)、亜鉛1.281g(19.59mmol)、ビス(トリフェニルホスフィン)ニッケル(II)ジクロリド0.311g(0.475mmol)を加える。さらに、溶媒として、20mlのジメチルホルムアミドを加えて、60℃で24時間撹拌して、下記の化学一般式(12)で表わされる実施例の高分子電解質を得た。
<9−ブロモ−1−デセンの合成>
500mlの三角フラスコにベンゼン100ml及びピリジン1.0gを加えて、9−デセン−1−オール25g(0.16mol)を溶解した。次に、三臭化リン43.2g(0.16mol)を溶解させたベンゼン溶液100mlを氷冷下でゆっくりと滴下した後、室温で18時間撹拌した。その後、反応液を氷水中に注ぎ、ジエチルエーテル300mlで抽出した。ここで得たエーテル−ベンゼン混合液は、無水硫酸ナトリウムで一晩脱水した。求引ろ過により硫酸ナトリウムを除き、エーテル−ベンゼンを減圧除去し、残渣を減圧蒸留して目的物9−ブロモ−1−デセンを得た。
水酸化ナトリウム0.08mol(3.40g)を100mlのエタノールに溶解させた。この溶液を4,4’−ビフェノール0.08mol(14.9g)を溶解させた100mLエタノールに少量ずつ加えて、エタノールを減圧除去した。残渣を150mLDMFに窒素気流下で加温して溶解させた(A液)。上記で調整した9−ブロム−1−デセン0.072mol(15.8g)、フェノチアジン0.1gを30mLのDMFに溶解させた(B液)。窒素雰囲気下でよく撹拌しながらA液にB液を30分程度かけて加えて、40℃で24時間反応させた。反応終了後、反応液を冷却し、300mLの10%冷希塩酸で洗浄した後、300mLのエーテルで抽出し、次いで100mL冷蒸留水で洗浄した。エーテル層は、無水硫酸ナトリウムで一晩脱水する。硫酸ナトリウムをろ過により取り除き、エーテルを減圧除去する。残渣に300mLのヘキサンを加えて、ろ過により沈殿物を得る。次いで、200mLベンゼンを加えて、ベンゼン可溶部分をベンゼンを用いたカラムクロマトグラフィーで精製してスルホン化4−(9−デセニルオキシフェニル)フェノールを得た。
N,N−ジメチルホルムアミド30mL中に重合禁止剤であるフェノチアジン0.05gを溶解させた。そこへ、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセン(DBU)0.008mol(1.22g)と4−(9−デセニルオキシフェニル)フェノール0.002mol(0.65g)、3−ブロモプロパンスルホン酸ナトリウム0.008mol(1.32g)を溶解させ、窒素雰囲気下、50℃で48時間撹拌した。反応終了後、溶媒を濃縮したジエチルエーテルを加えて、ろ過することにより沈殿を得た。次に、沈殿を蒸留水でよく洗浄した。次に、洗浄後の沈殿を6mol/LのHCl中で24時間撹拌後、遠心分離機により沈殿を得て、この沈殿をジエチルエーテルで洗浄後、乾燥して、比較例のモノマーである3−[6−(9−デセニルオキシ)ビフェニルオキシ]プロピルスルホン酸を得た。
窒素雰囲気下、3−[6−(9−デセニルオキシ)ビフェニルオキシ]プロピルスルホン酸を488mg(1mmol)、開始剤であるAIBNを6.6mg(0.04mmol)加えて、ジメチルスルホキシドを4.7ml加えた。その後、60℃で60時間熱重合して高分子量化させた。その後、アセトンで再沈殿させ、比較例の高分子電解質である3−[6−(9−デセニルオキシ)ビフェニルオキシ]プロピルスルホン酸ポリマーを得た。
実施例および比較例の高分子電解質をジメチルスルホキシドに溶解させた後、ガラスにキャストし、45℃で12時間、80℃で12時間、80℃で1時間真空乾燥させることで、実施例および比較例の高分子電解質膜を得た。
[評価]
<薄膜化>
実施例の高分子電解質膜は、比較例の高分子電解質膜に比較して、薄膜化しても膜電極接合体が作製できる機械強度を有していた。
<フェントン試験>
また、60℃、3%過酸化水素水溶液、4ppmFe2+中に、実施例および比較例の高分子電解質膜を浸漬させた。その結果、実施例の高分子電解質膜の方が、比較例の高分子電解質膜より、高い耐久性を有していることを確認した。
2……空気極側電極触媒層
3……燃料極側電極触媒層
4……空気極側ガス拡散層
5……燃料極側ガス拡散層
6……空気極
7……燃料極
8……ガス流路
9……冷却水流路
10……セパレータ
11……固体高分子形燃料電池の単セル
12……膜電極結合体
Claims (5)
- 前記アルキレン基は、−(CH2)m−(mは1以上の整数とする。)であることを特徴とする請求項1に記載の高分子電解質。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載の高分子電解質を用いて形成されたことを特徴とする高分子電解質膜。
- 請求項4に記載の高分子電解質膜を用いて形成されたことを特徴とする固体高分子形燃料電池。
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