JP2009108319A - オキソカーボン基を有する高分子及びその使用 - Google Patents

オキソカーボン基を有する高分子及びその使用 Download PDF

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Abstract

【課題】バッテリー及び燃料電池で有用な、オキソカーボン基を有する新規な高分子を提供する。
【解決手段】次の式(1):
Figure 2009108319

〔式中、X及びXは、独立に、−O−、−S−、又は−NR−を表し、Zは、−CO−、−C(S)−、−C(NR′)−、アルキレン基、又はアリーレン基を表し、NR及びNR′のR及びR′は、独立に、水素原子、アルキル基、又はアリール基を表し;n=0〜10であり、n個のZ基は同じでも異なっていてもよく;Bは、水素原子、又は一価の金属原子を表す。〕
により表されるオキソカーボン基を有し、主鎖中にポリアリーレンを有する高分子。
【選択図】なし

Description

(発明の分野)
本発明は、主鎖としてポリアリーレンから構成され、オキソカーボン基(oxocarbon group)を有する新規な高分子に関する。オキソカーボン基を有するポリアリーレンは、特にバッテリー及び燃料電池の用途で有用である。
(発明の背景)
スルホン酸基を有する高分子が、高分子電解質膜燃料電池等に適用される高分子電解質に有用であることはよく知られている。例えば、次の高分子は、高分子電解質膜燃料電池等に適用される高分子電解質として提案されている:典型的には、ナフィオン(Nafion)(デュポン社の商標名)であるフッ素含有高分子中へスルホン酸基を導入した高分子;ポリ(エーテルケトン)中へスルホン酸基を導入した高分子(米国特許第5,438,082号);ポリ(エーテルスルホン)中へスルホン酸基を導入した高分子〔J. Membrane Science,83,211 (1993)〕;ポリイミド中へスルホン酸基を導入した高分子(特開平2003−277501号公報);ポリフェニレン中へスルホン酸基を導入した高分子(米国特許第5,403,675号);及びポリホスファゼン中へスルホン酸基を導入した高分子〔Chemical Material,3,1120 (1991)〕。
一方、オキソカーボン、例えば、四角酸、五角酸、等は、オキソカーボン基から水素原子を解離する安定な共鳴構造により、強酸性基として知られている〔オキソカーボンズ(Oxocarbons)[ロバート・ウエスト(Robert West)編集、アカデミック・プレス(Academic Press)、1980]、第45頁(ISBN:0-12-744580-3);Journal of the American Chemical Society,95,8703 (1973)〕。最近、スルホン酸基の代わりにオキソカーボン基を有する高分子が、高分子電解質として提案されている(特開平2006−225624号公報)。
(発明の開示)
オキソカーボン基を有するそれら高分子の化学的安定性は、主鎖中のポリ(エーテルスルホン)のため満足できるものではない。
本発明の発明者は、主鎖がポリアリーレンから構成され、オキソカーボン基を有する高分子が、一層良好な化学的安定性を有し、水素ガスのようなガス状燃料又はメタノール及びジメチルエーテルのような液体燃料を用いた高分子電解質膜燃料電池のためのプロトン伝導膜の構成成分である高分子電解質のために有用であることを見出し、それにより本発明を完成した。
本発明は、
[1] 次の式(1):
Figure 2009108319
〔式中、X及びXは、独立に、−O−、−S−、又は−NR−を表し、Zは、−CO−、−C(S)−、−C(NR′)−、置換基を有していてもよいアルキレン基、又は置換基を有していてもよいアリーレン基を表し、ここでNR及びNR′のR及びR′は、独立に、水素原子、置換基を有していてもよい1〜6個の炭素原子を有するアルキル基、又は置換基を有していてもよい6〜10個の炭素原子を有するアリール基を表し;nは繰り返し数であり、n=0〜10の数を表し、n個のZ基は同じでも又は互いに異なっていてもよく;Bは、水素原子、又は一価の金属原子を表す。〕
により表されるオキソカーボン基を有し、主鎖中にポリアリーレンを有する高分子を与える。
本発明は、更に次のものを与える:
[2] 上記[1]による高分子で、ポリアリーレンが次の式(2)で表される構造を有する場合の高分子:
Figure 2009108319
式中、R〜Rは置換基又はHであり、mは6以上である。
[3] 上記[1]又は[2]による高分子で、Rがベンゾイル基又はその誘導体である場合の高分子;
[4] 上記[1]〜[3]による高分子で、Zが、−CO−、−C(S)−、及び−C(NR)−からなる群から選択されている場合の高分子;
[5] 上記[1]又は[4]による高分子で、X及びXが、−O−であり、Zが−CO−であり、nが0〜2である場合の高分子;
[6] 上記[1]〜[5]のいずれか一つによる高分子を、有効成分として含有する高分子電解質;
[7] 上記[6]による高分子電解質を含む高分子電解質膜;
[8] 上記[6]による高分子電解質を含む触媒組成物;
[9] 上記[6]による高分子電解質、上記[7]による高分子電解質膜、又は上記[8]による触媒組成物のいずれか一つを含む高分子電解質膜・電極接合体;及び
[10] 上記[6]による高分子電解質、上記[7]による高分子電解質膜、上記[8]による触媒組成物、又は上記[9]による高分子電解質膜・電極接合体いずれか一つを含む高分子電解質膜燃料電池;
[11] 沃素化ポリアリーレン;
[12] 上記[11]による高分子で、ポリアリーレンがポリ(アリールオキシベンゾイルフェニレン)である場合の高分子;
[13] 上記[12]による高分子で、ポリ(アリールオキシベンゾイルフェニレン)が、ポリ(4−フェノキシベンゾイル−1,4−フェニレン)である場合の高分子。
本発明の詳細を次のように説明する。
本発明の高分子は、次の式(1):
Figure 2009108319
〔式中、X及びXは、独立に、−O−、−S−、又は−NR−を表し、Zは、−CO−、−C(S)−、−C(NR′)−、置換基を有していてもよいアルキレン基、又は置換基を有していてもよいアリーレン基を表し、ここでNR及びNR′のR及びR′は、独立に、水素原子、置換基を有していてもよい1〜6個の炭素原子を有するアルキル基、又は置換基を有していてもよい6〜10個の炭素原子を有するアリール基を表し;nは繰り返し数であり、n=0〜10の数を表し、n個のZ基は同じでも又は互いに異なっていてもよく;Bは、水素原子、又は一価の金属原子を表す。〕
により表されるオキソカーボン基を有し、その主鎖にポリアリーレンを有する。
及びXは、独立に、−O−、−S−、又は−NR−を表し、好ましくは−O−、又は−S−、特に好ましくは−O−を表す。
NRのRは、水素原子、例えば、メチル基、トリフルオロメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、及びn−ブチル基のような炭素数1〜6個のアルキル基、又は、例えば、フェニル基、ペンタフルオロフェニル基、及びナフチル基のような炭素数6〜10個のアリール基を表す。これらのアルキル基及びアリール基は、置換基を持っていてもよい。
Zは、−CO−、−C(S)−、−C(NR′)−、置換基を有していてもよいアルキレン基、又は置換基を有していてもよいアリーレン基を表す。NR′のR′は、上で述べたのと同じ意味を有する。
アルキレン基の典型的な例には、炭素数1〜6個のアルキレン基、例えば、メチレン、フルオロメチレン、ジフルオロメチレン、フェニルメチレン、及びジフェニルメチレンが含まれる。置換基を持っていてもよいアリーレン基の典型的な例には、炭素数6〜10個のアリーレン基、例えば、フェニレン基、ナフチレン基、テトラフルオロフェニレン基が含まれる。
Zは、好ましくは−CO−、−C(S)−、又は−C(NR′)−;一層好ましくは−CO−、又は−C(S)−;特に好ましくは−CO−である。
nは、Zの繰り返し数であり、1〜10の整数を表す。nが2以上である場合、n個のZ基は同じでも、又は互いに異なっていてもよい。nは好ましくは0〜4、一層好ましくは0〜2、特に好ましくは1である。
Bには、水素原子又は一価金属原子を表す。一価金属には、リチウム原子、ナトリウム原子、カリウム原子、セシウム原子、銀原子等が含まれる。Bには、好ましくは水素原子、リチウム原子、ナトリウム原子;一層好ましくは水素原子、リチウム原子;特に好ましくは水素原子が含まれる。
イオン交換容量とは、本発明では、高分子1g当たり陽イオン交換基のモル数を意味する。イオン交換容量は、以下の式により決定することができる。
(高分子中の陽イオン交換基のモル数、モル)/(高分子のg数、g)
×1000=(イオン交換容量、meq/g)
参考文献〔オキソカーボンズ(Oxocarbons)、ロバート・ウエスト編集、アカデミック・プレス(Academic Press)、1980、(ISBN:0-12-744580-3)〕によれば、オキソカーボン中Oの代わりにNR又はSを有する構造体は、擬オキソカーボンと呼ばれている。本発明では、式(1)により表される構造体を、式(1)で表される構造体が何ら酸素原子を含まない場合でもオキソカーボン基と呼ぶ。
好ましいオキソカーボン基の例は次の通りである:
Figure 2009108319
上の例の中で、好ましいオキソカーボン基は(1a)〜(1d)であり;一層好ましくはオキソカーボン基は(1a)〜(1c)であり;更に一層好ましいオキソカーボン基は(1b)〜(1c)であり、最も好ましいオキソカーボン基は(1b)である。
オキソカーボン基は、Bが水素原子である場合には遊離酸、Bが一価金属原子である場合には塩を形成する。本発明のオキソカーボン基を有する高分子は、繰り返し単位から構成されていてもよく、それら単位の全てがオキソカーボン基と結合しているか、又はそれらの幾つかがオキソカーボン原子とは結合していない。繰り返し単位は、二つ以上のオキソカーボン基と結合していてもよい。高分子の繰り返し単位に結合しているオキソカーボン基は、同じでも、又は互いに異なっていてもよく、或は、式(1)中のBが水素原子か又は一価の金属原子になっていてもよい。高分子電解質膜燃料電池の成分として用いられた場合、発電能力の観点から、繰り返し単位に結合したオキソカーボン基の全てが、実質的に遊離酸の形になっていることが好ましい。
一価金属原子は、リチウム原子、ナトリウム原子、又はカリウム原子であることが好ましく、一層好ましくはリチウム原子又はナトリウム原子、特に好ましくはリチウム原子である。
本発明の高分子は、式(1)によって表されるオキソカーボン基を有し、主鎖中にポリアリーレンから構成された繰り返し単位を有することを特徴とする。
本発明のポリアリーレンは、芳香族環と、それら芳香族環の間の共有結合から構成された高分子である。単量体単位は、必ずしも直線状である必要はない。或る高分子では、単量体単位の大部分が直線状になっているであろう(下のA参照)。別の高分子では、単量体単位は階段状、又はクランクシャフト状のジグザグに結合した場合になっているであろう(下のB参照)。
Figure 2009108319
鎖A及びBの単量体単位は、模式的に置換基を除いて示してある。本発明のポリアリーレンは、次の式(2)により表されるのが好ましい。
Figure 2009108319
式中、R〜Rは任意の置換基又はHであり、mは6以上である。
置換基R〜Rは、極めて多種類の官能基から選択することができ、それらには、アルコール、アルデヒド、アルカリール、アルコキシ、アルキル、アルキル又はアリールアミド、アルキルケトン、アルキルスルフィド、アルキルスルホネート、アルキルスルホン酸、アミド、アミン、アラルキル、アリール、アリールエステル、アリールエーテル、アリールエーテルエーテルケトン、アリールエーテルケトン、アリールケトン、アリールオキシベンゾイル、アリールオキシ、アリールスルフィド、アリールスルホネート、アリールスルホン、アリールスルホン酸、アリールスルホキシド、ベンゾイル、カルボン酸、エステル、フルオロ又はポリフルオロアルキル、フルオロ又はポリフルオロアルキル、ヘテロアリール、イミド、イミン、ケトン、ナフチル、ナフトイル、フェノキシベンゾイル、フェニル、スルホンアミド、スルホネート、スルホン、スルホン酸、−CH(OH)−Ar、−CH(OH)−Ar′−O−Ar、−COOAr、−CO−Ar′−O−Ar、−OCOAr(ここで、−Arはアリール基であり、−Ar′−はアリーレン基である)、等が含まれるが、それらに限定されるものではない。ポリアリーレンの組成は、二つ以上の異なったR〜R基を持っていてもよい。R基は、オリゴマーでもポリマーでもよく、例えば、ポリ(フェニレンオキシド)、ポリ(エーテルケトン)、ポリ(エーテルエーテルケトン)、ポリ(フェニレンスルフィド)、ポリ(エチレンオキシド)、等でもよく、それらに限定されるものではない。
式(1)により表されるオキソカーボン基を有するポリアリーレンの例は、繰り返し単位を有する高分子で、オキソカーボン基が以下の繰り返し単位を有する高分子で、オキソカーボン基が該繰り返し単位と結合しているものであり、オキソカーボン基が、以下の繰り返し単位の置換可能な水素原子のいずれかと置換しており、ここでmは繰り返し単位の数を表している。この繰り返し単位は、次の構造(A−1)〜(A−10)であり、該繰り返し単位は置換基を持っていてもよい。
Figure 2009108319
上に例示した繰り返し単位に結合したオキソカーボン基の数は、1又は2以上にすることができる。繰り返し単位に結合したオキソカーボン基は、同じでも、又は互いに異なっいてもよい。オキソカーボン基が結合する繰り返し単位は、高分子中に存在する繰り返し単位の全てでなくてもよい。
上に例示した構造を有する本発明の高分子は、その分子量については特に制限はないが、その分子量は、好ましくは約5000〜約1000000、一層好ましくは約10000〜約500000、特に好ましくは約20000〜約300000である。5000より小さいと、高分子を膜として用いた場合、膜の形態を維持するのが困難になる傾向があり、1000000以上であると、膜の形態に成形しにくくなる傾向がある。
本発明の高分子は、0.5meq/g以上のイオン交換容量を有する。本発明の高分子は、好ましくは、1.0meq/g以上のイオン交換容量を有する。もし高分子のイオン交換容量が0.5meq/gより小さいと、プロトン伝導性の観点から好ましくなくなる傾向がある。
本発明の高分子を製造する方法を説明する。
本発明の高分子を製造する方法には次のものが含まれる:
(A) 式(1)で表されるオキソカーボン基を高分子中へ導入する方法;
(B) 式(1)により表されるオキソカーボン基を含む単量体を重合する方法;等。
方法(A)及び(B)のいずれかは、次の方法により行うことができる:
(I) 式(1)により表される基を有する脂肪族化合物又は芳香族化合物を、リチウム試薬を用いて合成する方法〔Journal of Organic Chemistry,53,2482,2477 (1988)〕;
(II) 式(1)により表される基を有する脂肪族化合物又は芳香族化合物を、グリニャール試薬を用いて合成する方法〔Heterocycles,27 (5),1191 (1988)〕;
(III)式(1)により表される基を有する脂肪族化合物又は芳香族化合物を、錫オキソカーボン誘導体を用いて合成する方法〔Journal of Organic Chemistry,55,5359 (1190)、Tetrahedron Letters,31(30),4293 (1990)に記載されている〕;及び
(IV) 式(1)により表される基を有する芳香族化合物を、フリーデル・クラフツ反応を用いて合成する方法〔Synthesis,page 46 (1974)〕。
式(1)により表されるオキソカーボン基を高分子に導入し、特に、式(1)の構造が、X=X=−O−、Z=−CO−、及びn=1として定義される式(1)により表される基を高分子に導入する方法(A)及び(III)を次に説明する。繰り返し単位としてハロゲン化アリーレンを有する高分子を遷移金属触媒を存在させて4−アルコキシ−3−(トリアルキルスタニル)シクロブテ−3−エン−1,2−ジオンと反応させ、次に酸性条件下で処理する方法(III)が含まれる。
アリーレンを有する高分子を製造する方法は、米国特許第5,403,675号明細書に記載されており、この場合、高分子は、ニッケル触媒とのハロゲン・ハロゲンカップリングを用いて合成されている。アリーレンを有する高分子は、酸化重合〔T.オカダ、T.オガタ、M.ウエダ、Macromolecules,29(24),7645-7650 (1996);K.ツチヤ、Y.シバサキ、及びM.ウエダ、Polymer,45(20),6873-6878 (2004)〕、等により合成することもできる。
繰り返し単位としてハロゲン化アリーレンを有する高分子は、ポリアリーレンをハロゲン化することにより合成することができる。ハロゲンは臭素及び沃素であるのが好ましい。
臭素原子は、臭素を用いてポリアリーレン中に導入することができる。もし臭素を導入しにくければ、触媒、例えば、鉄、臭化鉄、等を用いてもよい。繰り返し単位として臭素化アリーレンを有する高分子の例は、次の繰り返し単位を有する高分子であり、この場合、mは繰り返し数を表し、p、q、rは0〜2の数を表し、sは0〜3の数を表す。次の構造(B−1)〜(B−10)で、繰り返し単位は置換基を持っていてもよい。
Figure 2009108319
上記高分子の中で、好ましいハロゲン化ポリアリーレンは(B−1)〜(C−4)であり、一層好ましいハロゲン化ポリアリーレンは(B−1)〜(B−4)であり、最も好ましいハロゲン化ポリアリーレンは(B−2)である。
アリール臭化物は、A.クラパーズ(Klapars)及びS.L.バックワルド(Buchwald)、Journal of the American Chemical Society,124,14844-14845 (2002)に報告されているフィンケルスタイン(Finkelstein)反応を用いて一層反応性が高いアリール沃化物へ転化することができる。上記文献では、臭素化低分子量化合物を沃素化化合物へ転化することができたことが報告されている。本発明の発明者は、ポリアリーレンを含む芳香族高分子のような高分子量化合物へフィンケルスタイン反応を組込むことができることを見出した。フィンケルスタイン反応では、多座配位アミン(multi dentate amine)、遷移金属沃化物、及びアルカリ金属沃化物が、反応物として用いられている。
多座配位アミンには、1,2−エチレンジアミン、1,3−プロピレンジアミン、N,N′−ジメチルエチレンジアミン、N,N′−ジメチルプロピレンジアミン、N,N′−ジメチルシクロヘキサンジアミン、N,N,N′,N′−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N′,N′−テトラメチルプロピレンジアミン、N,N,N′,N″,N"−ペンタメチルジエチレントリアミン、N,N,N′,N″,N"′,N"′−ヘキサメチルトリエチレンテトラミン、N,N′−ジメチルシクロヘキサン−1,2−ジアミン、N,N,N′,N′−テトラメチルシクロヘキサン−1,2−ジアミン、等が含まれる。
上記多座配位アミンの中で、好ましくはN,N′−ジメチルシクロヘキサン−1,2−ジアミンが用いられ、一層好ましくはrac−トランス−N,N′−ジメチルシクロヘキサン−1,2−ジアミンが用いられる。多座配位アミンは、前駆物質高分子中の臭素原子に対し0.1〜100モル%、好ましくは0.2〜50%、一層好ましくは0.3〜10%、最も好ましくは0.4〜5%用いられる。
遷移金属沃化物には、沃化銅、沃化鉄、沃化ニッケル、等が含まれる。好ましくは沃化銅及び沃化鉄が用いられ、一層好ましくは沃化銅が用いられ、最も好ましくは沃化銅(I)が用いられる。遷移金属沃化物は、前駆物質高分子中の臭素原子に対し0.1〜100モル%、好ましくは0.2〜50%、一層好ましくは0.3〜10%、最も好ましくは0.4〜5%用いられる。
アルカリ金属沃化物には、沃化カリウム、沃化ナトリウム、沃化セシウム、沃化リチウム、等が含まれる。好ましくは沃化カリウム及び沃化ナトリウムが用いられる。アルカリ金属沃化物は、前駆物質高分子中の臭素原子に対し100〜1000モル%、好ましくは100〜500モル%用いられる。
この反応は、通常80℃〜250℃、好ましくは100℃〜200℃、一層好ましくは120℃〜180℃の温度で行われる。反応は、通常5時間〜500時間、好ましくは10時間〜200時間継続する。
繰り返し単位として沃素化アリーレンを有する高分子の例は、次の繰り返し単位を有する高分子であり、この場合、mは繰り返し数を表し、p、q、rは0〜2の数を表し、sは0〜3の数を表す。次の構造(C−1)〜(C−10)で、繰り返し単位は置換基を有していてもよい。
Figure 2009108319
臭素基は芳香族環上に残存していてもよいが、好ましくは10モル%以上の臭素が沃素と置換されているのがよく、一層好ましくは30モル%以上の臭素が沃素と置換されているのがよく、最も好ましくは50モル%以上の臭素が沃素と置換されているのがよい。
本発明の沃素化高分子の沃素含有量の比は、5重量%以上、好ましくは10重量%以上、一層好ましくは15重量%以上、更に一層好ましくは20重量%以上、特に好ましくは25重量%以上、最も好ましくは30重量%以上である。
得られた臭素化ポリアリーレン及び沃素化ポリアリーレンは、遷移金属触媒を存在させて4−アルコキシ−3−(トリアルキルスタニル)シクロブテ−3−エン−1,2−ジオンと反応させることができる。沃素化ポリアリーレンが、反応性が高いため好ましい。ここで用いられる4−アルコキシ−3−(トリアルキルスタニル)シクロブテ−3−エン−1,2−ジオンには、例えば、次のものが含まれる:
4−メトキシ−3−(トリメチルスタニル)シクロブテ−3−エン−1,2−ジオン、
4−メトキシ−3−(トリエチルスタニル)シクロブテ−3−エン−1,2−ジオン、
4−メトキシ−3−(トリ−n−プロピルスタニル)シクロブテ−3−エン−1,2−ジオン、
4−メトキシ−3−(トリイソプロピルスタニル)シクロブテ−3−エン−1,2−ジオン、
4−メトキシ−3−(トリ−n−ブチルスタニル)シクロブテ−3−エン−1,2−ジオン、
4−エトキシ−3−(トリメチルスタニル)シクロブテ−3−エン−1,2−ジオン、
4−エトキシ−3−(トリエチルスタニル)シクロブテ−3−エン−1,2−ジオン、
4−エトキシ−3−(トリ−n−プロピルスタニル)シクロブテ−3−エン−1,2−ジオン、
4−エトキシ−3−(トリイソプロピルスタニル)シクロブテ−3−エン−1,2−ジオン、
4−エトキシ−3−(トリ−n−ブチルスタニル)シクロブテ−3−エン−1,2−ジオン、
4−n−プロポキシ−3−(トリメチルスタニル)シクロブテ−3−エン−1,2−ジオン、
4−n−プロポキシ−3−(トリエチルスタニル)シクロブテ−3−エン−1,2−ジオン、
4−n−プロポキシ−3−(トリ−n−プロピルスタニル)シクロブテ−3−エン−1,2−ジオン、
4−n−プロポキシ−3−(トリイソプロピルスタニル)シクロブテ−3−エン−1,2−ジオン、
4−n−プロポキシ−3−(トリ−n−ブチルスタニル)シクロブテ−3−エン−1,2−ジオン、
4−イソプロポキシ−3−(トリメチルスタニル)シクロブテ−3−エン−1,2−ジオン、
4−イソプロポキシ−3−(トリエチルスタニル)シクロブテ−3−エン−1,2−ジオン、
4−イソプロポキシ−3−(トリ−n−プロピルスタニル)シクロブテ−3−エン−1,2−ジオン、
4−イソプロポキシ−3−(トリイソプロピルスタニル)シクロブテ−3−エン−1,2−ジオン、
4−イソプロポキシ−3−(トリ−n−ブチルスタニル)シクロブテ−3−エン−1,2−ジオン、
4−n−ブトキシ−3−(トリメチルスタニル)シクロブテ−3−エン−1,2−ジオン、
4−ブトキシ−3−(トリエチルスタニル)シクロブテ−3−エン−1,2−ジオン、
4−n−ブトキシ−3−(トリ−n−プロピルスタニル)シクロブテ−3−エン−1,2−ジオン、
4−n−ブトキシ−3−(トリイソプロピルスタニル)シクロブテ−3−エン−1,2−ジオン、
4−n−ブトキシ−3−(トリ−n−ブチルスタニル)シクロブテ−3−エン−1,2−ジオン、
4−t−ブトキシ−3−(トリメチルスタニル)シクロブテ−3−エン−1,2−ジオン、
4−t−ブトキシ−3−(トリエチルスタニル)シクロブテ−3−エン−1,2−ジオン、
4−t−ブトキシ−3−(トリ−n−プロピルスタニル)シクロブテ−3−エン−1,2−ジオン、
4−t−ブトキシ−3−(トリイソプロピルスタニル)シクロブテ−3−エン−1,2−ジオン、
4−t−ブトキシ−3−(トリ−n−ブチルスタニル)シクロブテ−3−エン−1,2−ジオン、等。
4−アルコキシ−3−(トリアルキルスタニル)シクロブテ−3−エン−1,2−ジオンは、3,4−ジアルキルオキシ−3−シクロブテン1,2−ジオンと、トリアルキル(トリアルキルスタニル)シランとを、触媒のシアン化テトラアルキルアンモニウムを存在させて反応させることにより合成することができる。
ここで用いられる3,4−ジアルキルオキシ−3−シクロブテン1,2−ジオンには、次のものが含まれる:
3,4−ジメトキシ−3−シクロブテン1,2−ジオン、
3,4−ジエトキシ−3−シクロブテン1,2−ジオン、
3,4−ジ−n−プロポキシ−3−シクロブテン1,2−ジオン、
3,4−ジイソプロポキシ−3−シクロブテン1,2−ジオン、
3,4−ジ−n−ブトキシ−3−シクロブテン1,2−ジオン、
3,4−ジ−t−ブトキシ−3−シクロブテン1,2−ジオン、
等。
ここで用いられるトリアルキル(トリアルキルスタニル)シランには、例えば、次のものが含まれる:
トリメチル(トリメチルスタニル)シラン、
トリメチル(トリエチルスタニル)シラン、
トリメチル(トリ−n−プロピルスタニル)シラン、
トリメチル(トリイソプロピルスタニル)シラン、
トリメチル(トリ−n−ブチルスタニル)シラン、
トリエチル(トリメチルスタニル)シラン、
トリエチル(トリエチルスタニル)シラン、
トリエチル(トリ−n−プロピルスタニル)シラン、
トリエチル(トリイソプロピルスタニル)シラン、
トリエチル(トリ−n−ブチルスタニル)シラン、
トリ−n−プロピル(トリメチルスタニル)シラン、
トリ−n−プロピル(トリエチルスタニル)シラン、
トリ−n−プロピル(トリ−n−プロピルスタニル)シラン、
トリ−n−プロピル(トリイソプロピルスタニル)シラン、
トリ−n−プロピル(トリ−n−ブチルスタニル)シラン、
トリイソプロピル(トリメチルスタニル)シラン、
トリイソプロピル(トリエチルスタニル)シラン、
トリイソプロピル(トリ−n−プロピルスタニル)シラン、
トリイソプロピル(トリイソプロピルスタニル)シラン、
トリイソプロピル(トリ−n−ブチルスタニル)シラン、
トリ−n−ブチル(トリメチルスタニル)シラン、
トリ−n−ブチル(トリエチルスタニル)シラン、
トリ−n−ブチル(トリ−n−プロピルスタニル)シラン、
トリ−n−ブチル(トリイソプロピルスタニル)シラン、
トリ−n−ブチル(トリ−n−ブチルスタニル)シラン、
等。
ここで用いられるシアン化テトラアルキルアンモニウムには、例えば、次のものが含まれる:
シアン化テトラメチルアンモニウム、
シアン化テトラエチルアンモニウム、
シアン化テトラ−n−プロピルアンモニウム、
シアン化テトラ−イソプロピルアンモニウム、
シアン化テトラ−n−ブチルアンモニウム、等。
シアン化テトラアルキルアンモニウムは、4−ジアルキルオキシ−3−シクロブテン1,2−ジオンに対し、0.1〜10モル%用いられる。好ましくはシアン化テトラアルキルアンモニウムは、0.2〜6モル%用いられ、一層好ましくは0.3〜4モル%のシアン化テトラアルキルアンモニウムが用いられ、最も好ましくは0.5〜3モル%のシアン化テトラアルキルアンモニウムが用いられる。
反応のために用いることができる溶媒は、3,4−ジアルキルオキシ−3−シクロブテン1,2−ジオン、トリアルキル(トリアルキルスタニル)シラン、及びシアン化テトラアルキルアンモニウムと反応しない限り限定されるものではない。そのような溶媒には、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキサン、テトラヒドロピラン、ジブチルエーテル、t−ブチルメチルエーテル、ジフェニルエーテル、及びクラウンエーテルのようなエーテル溶媒が含まれる。好ましいエーテルは、環式エーテル、例えば、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキサン、及びテトラヒドロピランであり、特に好ましいエーテルはテトラヒドロフラン及び1,3−ジオキソランであり、最も好ましいエーテルはテトラヒドロフランである。エーテル溶媒は、脂肪族炭化水素溶媒及び/又は芳香族炭化水素溶媒と一緒に用いてもよい。脂肪族炭化水素溶媒には、シクロヘキサン、ヘキサン、ヘプタン、等が含まれ、芳香族炭化水素溶媒には、ベンゼン、トルエン、キシレン等が含まれる。
3,4−ジアルキルオキシ−3−シクロブテン1,2−ジオン及びトリアルキル(トリアルキルスタニル)シランは、高分子と、通常−100℃〜20℃、好ましくは−80℃〜10℃、一層好ましくは−60℃〜0℃の温度で反応する。
酸性条件下で処理するために用いられる薬剤には、塩酸、硫酸、硝酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、蟻酸、蓚酸、及びそれらの混合物が含まれる。処理温度は、通常−150℃〜200℃、好ましくは−100℃〜150℃、一層好ましくは−80℃〜120℃である。処理時間は通常10分〜20時間、好ましくは30分〜15時間、特に好ましくは1時間〜10時間である。酸性条件下での処理は、均一系又は不均一系で行うことができる。処理された高分子は、もし不均一系で処理されたならば、濾過により回収することができ、或は均質系で処理されたならば、貧溶媒又は非溶媒中で沈澱させた後、濾過により回収することができる。
次に、燃料電池のような電気化学的装置の隔膜として本発明の高分子を使用した場合を説明する。
この場合、本発明の高分子をフイルムの形で通常用いる。高分子をフイルムへ転化させる仕方は特に限定されるものではなく、例えば、高分子溶液からフイルムを形成する方法(溶液キャスト法)を用いるのが好ましい。
特に、フイルムは、適当な溶媒中に高分子を溶解し、得られた溶液をガラス板上にキャストし、次に溶媒を除去することにより形成される。フイルム形成のために用いられる溶媒は、高分子を溶解し、次に除去することができる限り、特に限定されるものではない。適当に用いられる溶媒には非プロトン性極性溶媒、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、及びジメチルスルホキシド(DMSO);塩素含有溶媒、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、及びジクロロベンゼン;アルコール系溶媒、例えば、メタノール、エタノール、及びプロパノール;アルキレングリコールモノアルキルエーテル溶媒、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、及びプロピレングリコールモノエチルエーテル;及びエーテル溶媒、例えば、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキサン、テトラヒドロピラン、ジブチルエーテル、t−ブチルメチルエーテル、ジフェニルエーテル、及びクラウンエーテルが含まれる。それらは、必要に応じ、単独で、又はそれらの二種類以上の混合物として用いることができる。
中でも、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、テトラヒドロフラン、及び1,3−ジオキソランが、高分子の溶解性が高く、より好ましい溶媒である。
フイルムの厚さは特に限定しないが、好ましくは10〜300μm、特に好ましくは20〜100μmである。フイルムが10μmより薄いと、それは屡々実際の用途のための強度を満足せず、300μmより厚いと、フイルムの抵抗が大き過ぎて、電気化学的装置の特性を低下する傾向がある。フイルムの厚さは、溶液の濃度又は基体上のキャスト厚みにより調節することができる。
高分子が加水分解前に可溶性であっても、加水分解後の高分子がどのような溶媒にも溶解しない場合、加水分解前に膜を作り、次に膜の成形と共に加水分解することができる。
フイルムの種々の性質を改良する目的で、汎用の高分子に対して用いられている可塑剤、安定化剤、離型性、等を本発明の高分子に添加してもよい。本発明の高分子は、同じ溶媒中に他の高分子と一緒に溶解した混合物をキャストするか、又は別のやり方により、他の高分子とアロイ化することができる。
燃料電池用として、無機又は有機微細粒子を水含有量を調節するための水保持剤として添加することは知られている。本発明の目的を阻害しない限り、そのような既知の方法のいずれでも適用することができる。
フイルムは、その機械的性質を向上させるため、電子ビーム又は放射線を照射することにより架橋してもよい。更に、多孔質フイルム又はシートに含浸するか、又はそれと繊維又はパルプと混合することによりフイルムを複合化することも、フイルムを補強する方法として知られており、それら既知の方法のいずれでも、本発明の目的を阻害しない限り適用することができる。
本発明の燃料電池を次に説明する。
本発明の燃料電池は、高分子フイルムの両面に、触媒及び集電体として電気伝導性材料を組み込むことにより製造することができる。
触媒は、水素又は酸素の酸化還元反応を活性化することができる限り、特に限定されず、既知の触媒を用いることができ、好ましい触媒は白金の微細粒子である。白金の微細粒子は、用いるのが好ましい活性炭又は黒鉛のような粒状又は繊維状の炭素材料の上に保持させて用いることが好ましく、通常このように用いられている。
コレクタとしての電気伝導性材料は、既知の材料を用いてもよく、多孔質炭素織物、炭素不織布、又は炭素紙が、触媒へ原料ガスを効果的に輸送するのに好ましい電気伝導性材料である。
白金微細粒子又は白金微細粒子を保持した炭素材料を、多孔質炭素不織布又は炭素紙と組合せるか、又はそのように組立てたものを更に高分子電解質フイルムと組合せることは、J. Electrochem. Soc.: Electrochemical Science and Technologly, 1988, 135(9), 2209、に記載されているような既知の方法を用いて行うことができる。
本発明の高分子は、高分子電解質膜燃料電池の触媒層を構成する触媒組成物の成分の一つであるプロトン伝導性材料として用いることもできる。このようにして製造された本発明の燃料電池は、水素ガス、改質水素ガス、メタノール、及びジメチルエーテルのような種々の燃料形成物と一緒に用いることができる。
本発明の態様を記載してきたが、本発明の上記態様は例示のためであって、本発明の範囲を限定するものではないことは分かる。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって指定され、更に特許請求の範囲の記載と同等の意味及び範囲に入ることが可能になる全ての変化を包含するものである。
(実施例)
本発明を、実施例を参照して詳細に説明するが、それらに限定されるものと見做すべきではない。
プロトン伝導度
プロトン伝導度は、99%の相対湿度で、80℃で交流法により決定した。
イオン交換容量
イオン交換容量は、酸・塩基逆滴定により決定した。
化学的安定性試験
膜を乾燥し、秤量した。膜を10mlのフェントン試薬〔これは、Fe(II)SO・7HO(149.3mg、0.537mM)及びH(3%、50ml)から構成されていた〕中に浸漬した。膜をフェントン試薬から取り出し、脱イオン水で洗浄した。膜を乾燥し、秤量した。次の式により、残留重量比を計算した。
(残留重量比、%)=(浸漬後の重量)/(浸漬前の重量)×100
参考例1
2,5−ジクロロ−4′−フェノキシベンゾフェノンの合成
塩化2,5−ジクロロベンジル(10.0g、47.74mmol)及びジフェニルエーテル(12.5g、73.44mmol)の撹拌した溶液を0℃に冷却し、8.5gの塩化アルミニウム(63.75mmol)を15分かけて添加し、室温で3時間撹拌を継続した。その後、その混合物を氷水に添加し、50mlのCHClで3回抽出した。有機層をMgSOで乾燥し、揮発性成分を蒸発器で除去した。残留物質を30mlのシクロヘキサンを用いて結晶化により3回精製し、2,5−ジクロロ−4′−フェノキシベンゾフェノンを生成させた。
参考例2
ポリ(4−フェノキシベンゾイル−1,4−フェニレン)の合成
50mlの丸底フラスコ中で、2,5−ジクロロ−4′−フェノキシベンゾフェノン(0.515g、1.50mmol)及び2,2′−ビピリジン(0.681g、4.36mmol)を20mlのNMPに溶解した。その溶液を60℃に温め、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル(0)(1.00g、3.64mmol)を溶液に添加した。撹拌を3時間継続し、反応混合物を、50mlのメタノールと20mlの12NのHClの溶液に添加し、粗製高分子を沈澱させた。この粗製高分子をメタノールで洗浄し、乾燥してポリ(4−フェノキシベンゾイル−1,4−フェニレン)を生成させた。
参考例3
臭素化ポリ(4−フェノキシベンゾイル−1,4−フェニレン)の合成
200mlのフラスコ中で、1.58gのポリ(4−フェノキシベンゾイル−1,4−フェニレン)を160mlのジクロロメタンに溶解した。その溶液に50.0g(0.624mol)の臭素を滴下した。撹拌を20時間継続し、反応混合物を、NaHSO飽和水溶液へ注いだ。ジクロロメタンを蒸発器により除去し、臭素化高分子を沈澱させた。その粗製高分子を水及びメタノールで繰り返し洗浄し、乾燥して2.71gの臭素化ポリ(4−フェノキシベンゾイル−1,4−フェニレン)が得られた。この高分子の臭素含有量は44.3重量%であった。
参考例4
沃素化ポリ(4−フェノキシベンゾイル−1,4−フェニレン)の合成
0.300gの臭素化ポリ(4−フェノキシベンゾイル−1,4−フェニレン)、20mg(0.11mmol)のCuI、1.05g(9.04mmol)の粉砕KI、及び30mg(0.21mmol)のrac−トランス−N,N′−ジメチルシクロヘキサン−1,2−ジアミンを10mlのNMPに溶解した。撹拌を20時間継続し、溶液を50mlのメタノールと50mlの12NのHClとの混合物中に添加した。沈澱した高分子を、溶媒としてメタノールを用いてソックスレー抽出により精製した。高分子の沃素含有量は39.4重量%であった。
参考例5
四角酸イソプロピルを有するポリ(4−フェノキシベンゾイル−1,4−フェニレン)の合成
50mlのフラスコ中で、沃素化ポリ(4−フェノキシベンゾイル−1,4−フェニレン)(0.100g、I:0.310mmol)及び4−(1−イソプロポキシ)−3−(トリ−n−ブチルスタニル)シクロブテ−3−エン−1,2−ジオン〔0.266g、0.620mmol、Journal of Organic Chemistry,55,5359 (1990)の記載により合成したもの〕を、1.0mlのNMPに溶解した。その撹拌溶液に、(phCH)ClPd(PPh(28.2mg、0.0372mmol)及び沃化銅(10.6mg、0.0558mmol)を室温で添加した。撹拌を70℃で20時間継続し、反応混合物を、メタノール(100ml)と12NのHCl(100ml)との混合物中に添加した。沈澱した高分子を濾過により回収した。高分子を水及びメタノールで完全に洗浄し、真空乾燥した。
実施例1
四角酸を有するポリ(4−フェノキシベンゾイル−1,4−フェニレン)の合成及び膜の製造
50mlのフラスコに、四角酸イソプロピルを有するポリ(4−フェノキシベンゾイル−1,4−フェニレン)(0.105g)及びHCl(12N、20ml)を導入した。懸濁物を100℃で5時間撹拌し、その懸濁物を濾過し、水で完全に洗浄した。加水分解された高分子を乾燥し、高分子生成物(高分子A)を与えた。N,N−ジメチルアセトアミドを用いて高分子Aの溶液を調製した後、溶媒を除去して膜Aを得た。膜Aの性質を調べ、表1に要約する。
比較例1
四角酸を有するポリ(4,4′−ビフェニレンオキシ−4,4′−ジフェニルスルホン)の合成及び膜の製造
ポリ(4,4′−ビフェニレンオキシ−4,4′−ジフェニルスルホン)〔1.00g、2.5mmol(繰り返し単位のモル数)〕を120mlの1,3−ジオキソラン中に入れた撹拌溶液を−78℃に冷却し、10.0mmolのブチルリチウム(4.0mlの2.5M溶液)を滴下し、撹拌を−78℃で60分間継続した(溶液J)。別のフラスコ中で、2.4g(12.1mmol)の四角酸ジイソプロピルを20mlの1,3−ジオキソランに溶解し、−78℃に冷却し、1.8mmolのフェニルリチウム(1.0mlの1.8Mのジブチルエーテル溶液)を添加し、酸性不純物をクエンチした(溶液K)。溶液Jを溶液Kへカニュールで導入した。撹拌を−78℃で3時間継続し、−78℃で5mlの2NのHClでクエンチした。約3/4の溶媒を減圧下で除去し、残りの溶液を300mlの2NのHClへ添加し、粗製高分子を沈澱させた。この粗製高分子を濾過し、水で完全に洗浄し、乾燥した。この高分子を20mlのDMFに溶解し、2NのHCl中に注ぎ、精製された高分子を沈澱させた。高分子を室温で乾燥し、0.90gの四角酸イソプロピル形成高分子(高分子E′)を生成させた。
100mlの丸底フラスコ中で、0.90gの高分子E′及び20mlの濃HCl(12N)を100℃で6時間撹拌し、イソプロポキシ基を加水分解した。高分子を濾過し、脱イオン水で完全に洗浄し、周囲温度で乾燥し、四角酸基を有する高分子を生成させた(高分子E)。1,4−ジオキサンを用いて高分子Eの溶液を調製した後、溶媒を除去して膜Eを得た。膜Eの性質を調べ、表1に要約する。
Figure 2009108319
産業上の利用分野
(工業的適用性)
本発明の3.0meq/gより大きなオキソカーボン基を有する高分子は大きなプロトン伝導度を有し、水素ガスのようなガス状燃料又はメタノール及びジメチルエーテルのような液体燃料を用いた高分子電解質膜燃料電池のためのプロトン伝導性膜の成分である高分子電解質に有用である。

Claims (13)

  1. 次の式(1):
    Figure 2009108319
    〔式中、X及びXは、独立に、−O−、−S−、又は−NR−を表し、Zは、−CO−、−C(S)−、−C(NR′)−、置換基を有していてもよいアルキレン基、又は置換基を有していてもよいアリーレン基を表し、ここでNR及びNR′のR及びR′は、独立に、水素原子、置換基を有していてもよい1〜6個の炭素原子を有するアルキル基、又は置換基を有していてもよい6〜10個の炭素原子を有するアリール基を表し;nは繰り返し数であり、n=0〜10の数を表し、n個のZ基は同じでも又は互いに異なっていてもよく;Bは、水素原子、又は一価の金属原子を表す。〕
    により表されるオキソカーボン基を有し、主鎖中にポリアリーレンを有する高分子。
  2. ポリアリーレンが次の式(2):
    Figure 2009108319
    (式中、R〜Rは置換基又はHであり、mは6以上である。)
    で表される構造を有する、請求項1に記載の高分子。
  3. がベンゾイル基又はその誘導体である、請求項1又は2に記載の高分子。
  4. Zが、−CO−、−C(S)−、及び−C(NR)−からなる群から選択されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の高分子。
  5. 及びXが、−O−であり、Zが−CO−であり、nが0〜2である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の高分子。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の高分子を、有効成分として含有する高分子電解質。
  7. 請求項6に記載の高分子電解質を含む高分子電解質膜。
  8. 請求項6に記載の高分子電解質を含む触媒組成物。
  9. 請求項6に記載の高分子電解質、請求項7に記載の高分子電解質膜、又は請求項8に記載の触媒組成物のいずれか一つを含む高分子電解質膜・電極接合体。
  10. 請求項6に記載の高分子電解質、請求項7に記載の高分子電解質膜、請求項8に記載の触媒組成物、又は請求項9に記載の高分子電解質膜・電極接合体のいずれか一つを含む高分子電解質膜燃料電池。
  11. 沃素化ポリアリーレン。
  12. ポリアリーレンが、ポリ(アリールオキシベンゾイルフェニレン)である、請求項11に記載の高分子。
  13. ポリ(アリールオキシベンゾイルフェニレン)が、ポリ(4−フェノキシベンゾイル−1,4−フェニレン)である、請求項12に記載の高分子。
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