JP5908759B2 - 凍結乾燥イカの製造方法 - Google Patents
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Description
しかしながら、注湯時のイカの著しい反り返りと収縮の問題は残されており、更なる改良が求められていた。
まず、加熱処理として、ボイル処理やスチーム(蒸し)処理における処理時間の検討を行った。結果、ボイルまたはスチームの処理時間を長くすることにより、イカの収縮を一定量抑えることができたが、逆にイカの味抜けが見られるという知見を得た。
そこで本発明者らは、さらに検討し、加熱処理として、過熱蒸気処理を採用したところ、過熱蒸気で加熱処理した後のイカを凍結乾燥することにより、注湯時および復元後のイカが収縮して反り返るのを抑制し、しかも、単にボイルやスチーム処理をした場合と比較して、味抜けが少なくなることを見出し、本発明を完成した。
<製造方法>
本発明に用いるイカは、生のイカまたは冷凍のイカである。その種類、産地、サイズ等は特に限定されず、使用する食品の嗜好およびコストに応じて適宜決定される。
なお、即席麺の具材としては、例えば、アメリカオオアカイカの下足等が好適である。
次に、各工程について順に説明する。
冷凍のアメリカオオアカイカの下足を原料とする場合は、常法により解凍する。
解凍処理は、例えば、氷水や流水中に冷凍イカを浸漬して行う方法や、常温や低温で静置する方法等で行う。
なお、品質の劣化を防ぐためには、なるべく低温で解凍する方が望ましい。
イカ原料の喫食可能部分以外の部位(吸盤、烏口等)を除去する。除去方法は触手選別、機械選別がある。また、任意の大きさにカットしてもよい。
イカの食感を軟化、及び凍結乾燥後の復元性を良くするため、アルカリ溶液に浸漬するのが好ましい。使用するアルカリ溶液としては、弱アルカリ性のリン酸塩、例えばポリリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム等があり、また、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等のアルカリ水溶液も使用される。アルカリ溶液の濃度、浸漬時間等は、浸漬するイカのサイズ、求める食感、復元性によって決定される。
なお、アルカリ溶液の濃度は0.5〜3.0%、浸漬時間は1時間〜1日間が標準的である。
本発明においては、加熱処理として、イカに過熱蒸気処理を施すことが重要である。過熱蒸気とは、飽和蒸気を大気圧下において、強制的に100℃以上に温度を上昇させた水蒸気のことをいう。
本発明においては、前記過熱蒸気で加熱処理した後のイカの品温が80℃〜99℃となるように、前記処理条件を適宜設定し、過熱蒸気処理するのがイカの収縮を抑える点で好ましい。
水冷後、一度完全凍結し、解凍して半凍結状態にする。凍結温度は0〜−30℃の範囲が一般的である。また、使用するスライサーの適性にもよるが、品温は−5℃から−1℃が標準的である。
求めるイカの厚さによって任意にスライス厚を設定できる。即席麺の具材としては、スライス厚が1.0〜2.0mmが標準的である。
本発明においては、イカを過熱蒸気で加熱処理した後に、スライス加工して、後述する凍結乾燥処理を施すことにより、収縮がなく反り返りのないイカの形状としやすくなる。
スライス後着味液を混合、静置、液切りする。イカへの味付け、及び凍結乾燥品の吸湿時の水分活性上昇抑制の目的がある。着味資材としては、食塩、旨味調味料、糖類、香辛料、香料、また前述したアルカリ剤も使用できる。
常法にて凍結し、真空凍結乾燥する。凍結温度条件は−10℃から−30℃、真空凍結乾燥の条件としては、0.8Torr以下の真空度、棚温度50〜100℃が標準的である。
加熱方法の種類および加熱条件による影響を確認するため、まず、加熱処理として、ボイル処理およびスチーム(蒸し)処理について下記の通り実験を行った。
また、以下の例中、特に記載しない限り、「重量%」は「%」と表すものとする。
次に、当該イカに表1に示す条件で加熱処理を行った後、水冷し、半凍結(−3℃)で1.5mm厚にスライス後、スライスイカ100部に対し、食塩等の調味資材を10部混ぜ、混合し、着味を行った。
次いで、トレー盛りして−25℃で12時間凍結後、棚温度60℃、0.8Torrで24時間保持して凍結乾燥を行い、試料1〜8の凍結乾燥イカとした。
そして、得られた試料1〜8の各凍結乾燥イカをカップに入れ、熱湯をイカの上からかけて、注湯時のイカの収縮(反り返り)を見た。また、イカを3分間復元させた後、熟練したパネラー5名で試食を行い、イカの外観(復元後の収縮度合)とイカの味抜け等の食味・食感について評価した。その結果を表2に示す。
また、表2に示すように、ボイルまたはスチームの加熱処理時間を長くすることによって、復元後のイカの収縮を一定量抑えることができたが、逆にイカの味抜けが見られるという結果を得た。特に、試料4と試料8については、イカの収縮は抑えられるものの、イカの味が抜けてしまい、イカの繊維の崩れがみられ、食味・食感は悪いものであった。尚、ボイルとスチームでは、わずかにスチームの方が味抜けが抑制される傾向にはあった。
次いで、本発明者らは、加熱方法の種類として過熱蒸気を採用し、その加熱条件による影響を確認するため、下記の通り実験を行った。
次に、当該イカに表3に示す条件で過熱蒸気処理を行った後、水冷し、半凍結(−3℃)で1.5mm厚にスライス後、スライスイカ100部に対し、食塩等の調味資材を10部混ぜ、混合し、着味を行った。
次いで、トレー盛りして−25℃で12時間凍結後、棚温度60℃、0.8Torrで24時間保持して凍結乾燥を行い、試料9〜19の凍結乾燥イカとした。
そして、得られた試料9〜19について、上記実験1と同様に、注湯時のイカの収縮(反り返り)を見た。また、イカを3分間復元させた後、熟練したパネラー5名で試食を行い、イカの外観(復元後の収縮度合)とイカの味抜け等の食味・食感について評価した。その結果を表4に示す。
また、味については、表4に示すように、過熱蒸気で加熱処理した後のイカの品温が80〜99℃である試料10〜19では、復元後のイカの収縮を抑えながらも、イカの味が残り、非常に食味・食感が良好であった。
一方、加熱後のイカの品温が73℃である試料9は、味抜けがなくイカの味がして良いが、イカの収縮を抑えることはできなかった。
表4に示すように、イカを過熱蒸気で加熱処理した後、スライス・凍結乾燥することにより、注湯時および復元後のイカが収縮して反り返るのを抑制し、しかも、ボイルやスチームと比較して、味抜けが少なくなる結果となった。
イカをボイルまたはスチーム処理で長時間加熱することによって、イカ筋肉中の蛋白質が変性、崩壊し、スライス後の凍結乾燥品に注湯しても、反りづらいイカとなる。しかし、同時にイカの呈味物質を変質させたり、流出させたりもする。
これに対し、過熱蒸気での加熱も、同様に筋肉中の蛋白質を変性させるが、イカの表面及び内部の構造変化が呈味物質の変質や流出を抑制する働きがあると思われた。さらに、凍結され、凍結状態での減圧下の乾燥によって、その構造がある程度まで保持されたまま乾燥されるので、注湯後も味が抜けにくいと思われた。
アメリカオオアカイカの下足の凍結品を冷蔵4℃で解凍し、触手検品を行い、喫食不可部分である吸盤、烏口を除去した。下足を3〜5cm幅に切りそろえ、ピロリン酸ナトリウム1%溶液に4℃で1晩浸漬した。
次に、当該イカを過熱蒸気により処理した。なお、過熱蒸気処理条件は庫内蒸気温度150℃、蒸気流量は150Kg/時間、45分間で行った。
前記過熱蒸気処理後のイカを水冷し、−20℃で凍結後、半凍結(−3℃)状態とし、1.5mm厚にスライス後、スライスイカ100部に対し、食塩等の調味資材を10部混ぜ、混合し、着味を行った。
これをトレー盛りして−25℃で12時間凍結後、棚温度60℃、0.8Torrで24時間保持して凍結乾燥を行い、本発明の凍結乾燥イカを得た(図1)。
また、イカを3分間復元させた後も、イカの収縮は抑えられ、見栄えが良いものであった。次いで、復元後のイカを試食した結果、イカの味抜けがない良好な食味・食感を有するものであった(図2)。
アメリカオオアカイカの下足の凍結品を冷蔵4℃で解凍し、触手検品を行い、喫食不可部分である吸盤、烏口を除去した。下足を3〜5cm幅に切りそろえ、ピロリン酸ナトリウム1%溶液に4℃で1晩浸漬した。
次に、当該イカをスチームした後、過熱蒸気により処理した。なお、スチーム処理条件は蒸気流量200Kg/h、15分間、過熱蒸気処理条件は庫内蒸気温度150℃、蒸気流量は150Kg/時間、15分間で行った。
前記過熱蒸気処理後のイカを水冷し、−20℃で凍結後、半凍結(−3℃)で1.5mm厚にスライス後、スライスイカ100部に対し、食塩等の調味資材を10部混ぜ、混合し、着味を行った。
これをトレー盛りして−25℃で12時間凍結後、棚温度60℃、0.8Torrで24時間保持して凍結乾燥を行い、本発明の凍結乾燥イカを得た。
Claims (2)
- 加熱処理後の品温が80〜99℃となるように、大気圧下において150〜180℃の過熱蒸気で8分〜60分間加熱処理したイカを凍結乾燥することを特徴とする凍結乾燥イカの製造方法。
- 過熱蒸気による加熱処理前にボイル及び/又はスチーム処理することを特徴とする請求項1に記載の凍結乾燥イカの製造方法。
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