JP7241485B2 - 乾燥畜肉の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、乾燥畜肉の製造方法に関する。
乾燥畜肉は、例えば、即席スープ、即席ラーメン及び茶漬け等の即席乾燥食品の具材として用いられている。乾燥畜肉の製造法として、例えば、原料肉を結着剤を用いて成型した後フリーズドライにするフリーズドライチャーシューの製造法(特許文献1)、肉原料を含む即席乾燥具材の湯戻り改善のためにシート状のものを挟み込む方法(特許文献2)、大豆タンパク質を畜肉原料に含有させた乾燥食品の製造法(特許文献3)が開示されている。
特開2003-235515号公報 特開2005-052141号公報 特開2004-041041号公報
乾燥畜肉は、経時劣化により劣化臭を生じることがある。この経時劣化を抑制する手段について、従来、充分な検討がなされていたとは言えない。
そこで本発明は、経時劣化が抑制された乾燥畜肉の製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、重曹溶液で浸漬処理した畜肉を乾燥させる工程を備える、乾燥畜肉の製造方法を提供する。
本発明に係る製造方法は、乾燥前に畜肉を重曹溶液で浸漬処理することを含むため、経時劣化(特に、経時的な劣化臭の発生)が抑制された乾燥畜肉を製造することができる。加えて、本発明に係る製造方法により得られる乾燥畜肉は、湯戻り性及び湯戻り後の柔らかさのいずれにも優れている。
上記乾燥させる工程は、上記畜肉を凍結乾燥させる工程であることが好ましい。これにより、上述の効果がより顕著に奏される。
上記重曹溶液は、重曹濃度が0.1~10重量%であってよい。重曹濃度がこの範囲にあると、上述の効果が充分に得られる。
本発明はまた、重曹溶液で浸漬処理した畜肉を乾燥させる工程を備える、乾燥畜肉の経時劣化を抑制する方法と捉えることもできる。
本発明はさらに、乾燥畜肉の経時劣化を抑制するための重曹の使用であって、乾燥前に畜肉を重曹溶液で浸漬処理する工程を備える、使用(方法)と捉えることもできる。
本発明はさらにまた、重曹を有効成分とする、乾燥畜肉の経時劣化抑制剤と捉えることもできる。
本発明によれば、乾燥前に畜肉を重曹溶液で浸漬処理することにより、経時劣化(特に、経時的な劣化臭の発生)が抑制された乾燥畜肉を製造することができる。
本発明によればまた、乾燥前に畜肉を重曹溶液で浸漬処理することにより、経時劣化が抑制されていると共に、湯戻り性及び湯戻り後の柔らかさのいずれも良好な乾燥畜肉を製造することができる。
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
本実施形態に係る乾燥畜肉の製造方法は、重曹溶液で浸漬処理した畜肉を乾燥させる工程を備える。
本明細書において、「畜肉」とは、食肉用となる家畜及び家禽の肉を意味する。畜肉の具体例としては、牛肉、豚肉、鶏肉、馬肉、羊肉、山羊肉及び合鴨肉が挙げられる。
乾燥畜肉は、畜肉を乾燥させたものであり、水分含有率は通常10重量%以下である。乾燥畜肉の水分含有率は、7.5重量%以下であることが好ましく、5重量%以下であることがより好ましい。乾燥畜肉の水分含有率は、例えば、赤外光水分分析計を用いて測定することができる。
本実施形態に係る製造方法には、成形加工した畜肉、及び成形加工していない畜肉のいずれも用いることができる。ここで、成形加工とは、例えば、複数種の畜肉、及び/又は畜肉以外の原料を混合して固形化する加工、畜肉を特定の形状に成型又は積層する加工を意味する。
重曹溶液は、重曹(炭酸水素ナトリウム)を溶媒に溶解した溶液である。溶媒としては、重曹を溶解できるものであれば特に制限はなく、例えば、水、低級アルコール(例えば、炭素原子数1~3のアルコール)、及びこれらの混合溶液を挙げることができる。重曹溶液は、好ましくは重曹水溶液である。
重曹溶液に含まれる重曹の濃度は、重曹溶液全量を基準として、0.1~10重量%であってよい。重曹濃度は、重曹溶液全量を基準として、0.5~5重量%であることが好ましく、1~4重量%であることがより好ましく、1~3重量%であることが更に好ましい。
重曹溶液のpHは、例えば、7.0~9.0であってよい。重曹溶液のpHがこの範囲にあると、乾燥畜肉の経時劣化が抑制される効果、並びに湯戻り性及び湯戻り後の柔らかさが良好になる効果といった本発明による効果をより顕著に奏することができる。
浸漬処理は、畜肉を重曹溶液に浸漬する処理である。浸漬する畜肉は、目的に応じて、適切な大きさにカットされていてもよい。例えば、厚さ1.5cm以上、又は厚さ2.0~4.0cmに肉厚にカットされた畜肉を用いてもよいし、厚さ1.5cm未満、又は厚さ0.3~1.0cmにカットされた畜肉を用いてもよい。ここで、「厚さ」とは、板状、ブロック状、又は方体状等の畜肉において最短となる面又は曲面の長さ又は幅を意味する。
畜肉の量に対する重曹溶液の使用量は、例えば、畜肉100重量部に対して、重曹溶液50~300重量部であってよく、75~200重量部であることが好ましく、100~150重量部であることがより好ましい。これにより、本発明による効果をより顕著に奏することができる。
浸漬処理は、5時間以上行うことが好ましく、10時間以上行うことがより好ましく、15時間以上行うことが更に好ましく、20時間以上行うことが更により好ましい。これにより、本発明による効果をより顕著に奏することができる。
浸漬処理の際の重曹溶液の温度は、特に制限はなく、室温域(例えば、18~28℃)であってもよく、冷蔵域(例えば、4~10℃程度)であってもよい。浸漬処理の際の重曹溶液の温度は、好ましくは、冷蔵域(例えば、4~10℃程度)である。
浸漬処理に用いる重曹溶液には、調味等及び/又は畜肉の軟化処理を目的として、重曹以外の成分(例えば、糖類、タンパク賀、ビタミン及びミネラル等の栄養素、醤油及び食塩等の調味組成物、スパイス、アミノ酸、核酸、増粘剤、着色料、酸化防止剤及びアルコール等、並びにプロテアーゼ等)を更に添加してもよい。これにより、浸漬処理と調味及び/又は畜肉の軟化処理を同時に行うことができる。また、重曹溶液は、重曹のみを含有するものとし、重曹以外の成分は必要に応じて他の工程で用いてもよい。例えば、調味については、浸漬処理後、後の加熱処理後、又は乾燥処理後等において、本発明の効果を阻害しない範囲で、上記成分等を含む調味液の塗布、又は粉末調味料の散布等を行うことができる。
重曹溶液で浸漬処理した畜肉を乾燥させる工程は、上述のように浸漬処理した畜肉を乾燥処理する工程である。乾燥処理は、例えば、熱風乾燥、加熱乾燥、凍結乾燥、超臨界乾燥等の常法に従って実施することができる。
乾燥畜肉の経時劣化が抑制される効果、並びに湯戻り性及び湯戻り後の柔らかさが良好になる効果といった本発明による効果をより顕著に奏するという観点から、乾燥処理は、凍結乾燥(フリーズドライ)により実施することが好ましい。凍結乾燥は、例えば、浸漬処理した畜肉を凍結するステップ(凍結ステップ)、凍結した畜肉から減圧下で水分(氷)を除去するステップ(除去ステップ)を含む方法により実施することができる。
凍結ステップは、例えば、浸漬処理した畜肉を空冷した後、-20℃~-60℃程度で1~3時間凍結処理を行うものであってよい。
除去ステップは、例えば、凍結した畜肉を凍結乾燥機を使用して、水分含有率10重量%以下、好ましくは7.5重量%以下、より好ましくは5重量%以下とするものであってよい。凍結乾燥機は公知のものを使用することができる。凍結乾燥機による凍結乾燥条件は、畜肉の水分含量を上記範囲にすることができれば特に限定されず、例えば、真空度0.8torr(mmHg)以下、好ましくは0.08torr(mmHg)以下、より好ましくは0.04torr(mmHg)以下の真空条件で、真空度に応じた温度設定で10~36時間程度処理する条件などが例示される。
浸漬処理した畜肉は、そのまま乾燥処理を行ってもよいが、乾燥処理前に加熱処理を行ってもよい。加熱処理としては、例えば、蒸煮処理(スチーム処理)、ボイル処理、及び油調処理(フライ処理)を挙げることができる。加熱処理は、これらの処理を組み合わせて行うものであってもよい。
蒸煮処理は、これに限定されるものではないが、例えば、温度100~130℃、圧力0.01~0.5MPa程度の水蒸気を、30秒~10分間程度、浸漬処理した畜肉に接触させることで行うことができる。蒸煮処理は、密閉された条件で行ってもよい。
油調処理は、これに限定されるものではないが、例えば、160~190℃(常圧)で60~300秒程度、浸漬処理した畜肉を処理することで行うことができる。油調処理は、減圧可能な密閉式の油揚げ装置等を用いて減圧条件で実施してもよい。減圧条件下で実施する場合の条件は、常圧で油調処理した場合と同程度の状態になるように適宜、真空度、温度、フライ時間等を調整して設定すればよい。油調処理に使用する油は、特に限定されず、例えば、動植物由来の各種食用油(大豆油、菜種油、米油、コーン油、パーム油、ベニバナ油、ヒマワリ油、ラード及びヘット等、並びにこれらから選ばれる種以上の混合油)が広く使用できる。さらには、油調処理前にパン粉などのフライ衣原料を畜肉に付けてもよい。
以上説明した本発明は、重曹溶液で浸漬処理した畜肉を乾燥させる工程を備える、乾燥畜肉の経時劣化を抑制する方法と捉えることもできる。また、乾燥畜肉の経時劣化を抑制するための重曹の使用であって、乾燥前に畜肉を重曹溶液で浸漬処理する工程を備える、使用(方法)と捉えることもできる。さらに、重曹を有効成分とする、乾燥畜肉の経時劣化抑制剤と捉えることもできる。
以下、実施例等に基づいて本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。
〔試験例1:経時劣化抑制試験〕
鶏胸肉を2.5cm角のダイスカットにし、下記表1に示す各溶液にそれぞれ15時間浸漬した(冷蔵)。浸漬後、各鶏胸肉を取り出し、スチーム(蒸気)で8分間加熱した後、凍結し、凍結乾燥機(共和真空技術株式会社製品:型式RLE II-103)を用い、真空度0.04torr(mmHg)以下、温度70℃、乾燥時間26時間の条件で乾燥させて、各乾燥鶏胸肉を得た。なお、ビタミンE及びビタミンCは、鶏胸肉の油脂含量を基準に酸化防止効果が認められる量を使用した。
Figure 0007241485000001
製造した各乾燥鶏胸肉をアルミ袋に入れ、37℃の恒温庫で保管した。6週間及び15週間保管した後、オルトネーザルによる劣化臭を官能評価で評価した。同様に、15週間保管した後、レトロネーザルによる劣化臭を官能評価で評価した。
オルトネーザルによる劣化臭の官能評価は、選抜されたパネル3名により実施した。37℃の恒温庫で6週間及び15週間保管した各乾燥鶏胸肉をプラスチックカップに移し、カップから立ち上がる香気を評価対象とした。下記評価尺度に従って6段階で評点を付け、3名のパネルの平均値をとった。
(評価尺度)
5点:「劣化臭」を全く感じない
4点:「劣化臭」を非常に弱く感じる
3点:「劣化臭」を弱く感じる
2点:「劣化臭」をはっきり感じる
1点:「劣化臭」を強く感じる
0点:「劣化臭」を非常に強く感じる
評価結果を下記表2に示す。
Figure 0007241485000002
レトロネーザルによる劣化臭の官能評価は、選抜されたパネル3名により実施した。官能評価は、凍結乾燥直後から冷蔵保管し、品質を維持したサンプル(乾燥鶏胸肉)をコントロール(評点5点)とし、37℃の恒温庫で15週間保管した各乾燥鶏胸肉の劣化臭の強さを相対評価で評価した。具体的には、37℃の恒温庫で15週間保管した各乾燥鶏胸肉をビーカーに移し、各乾燥鶏胸肉が充分に浸る程度の熱湯をポットから注ぎ、1分以上経過した後、各乾燥鶏胸肉を口に含み、口腔内で感じられる風味を評価対象とした。下記評価尺度に従って6段階で評点を付け、3名のパネルの平均値をとった。
(評価尺度)
5点:「劣化臭」を全く感じない(コントロールと同等)
4点:「劣化臭」を非常に弱く感じる
3点:「劣化臭」を弱く感じる
2点:「劣化臭」をはっきり感じる
1点:「劣化臭」を強く感じる
0点:「劣化臭」を非常に強く感じる
評価結果を表3に示す。
Figure 0007241485000003
凍結乾燥前に重曹溶液に浸漬した実施例1の乾燥鶏胸肉は、37℃保管後も乾燥直後と変わらず「劣化臭」が全く感じられなかった。一方、凍結乾燥前に浸漬処理を行わなかった比較例1の乾燥鶏胸肉、凍結乾燥前に水に浸漬した比較例2の乾燥鶏胸肉、凍結乾燥前にリン酸緩衝液(重曹溶液と同等のpH)に浸漬した比較例3の乾燥鶏胸肉、凍結乾燥前にビタミンE又はビタミンC溶液(酸化防止剤)に浸漬した比較例4又は比較例5の乾燥鶏胸肉では、37℃保管後に「劣化臭」が認められた。これらの結果は、「劣化臭」の抑制が、pH又は酸化防止作用に依存しない、重曹に特有の効果であることを示している。
〔試験例2:湯戻り性試験〕
鶏胸肉を一辺が2.5~3cmの立方体にカットし、下記表4に示す各溶液にそれぞれ20時間浸漬した(冷蔵)。なお、実施例2の重曹溶液(pH8.1)は、冷水で重曹を溶解させる方法で調製した。実施例3の重曹溶液(pH8.7)は、熱水で重曹を溶解し、炭酸ナトリウムを発生させる方法で調製した。浸漬後、各鶏胸肉を取り出し、スチーム(蒸気)で8分間加熱した後、試験例1と同様の条件で凍結乾燥させて、各乾燥鶏胸肉を得た。
Figure 0007241485000004
製造した各乾燥鶏胸肉をそれぞれカップに入れ、上から98℃の湯を投入して、1分後の「湯戻り性」及び「柔らかさ」を、選抜されたパネル4名により、以下の基準で官能評価した。
「湯戻り性」は、湯の浸透の程度を以下の基準で総合的に評価した。
○:内部に湯が十分浸透しており、良い
△:湯の浸透状態にばらつきがある
×:内部に湯が浸透しておらず、悪い
「柔らかさ」については、食べた時の食感を以下の基準で評価した。
◎:柔らかくてジューシー
○:柔らかい
△:どちらでもない
×:硬い
評価結果を表5に示す。
Figure 0007241485000005
凍結乾燥前に重曹溶液に浸漬した実施例2及び実施例3の乾燥鶏胸肉は、「湯戻り性」及び「柔らかさ」のいずれも良好な結果であった。

Claims (6)

  1. 重曹溶液(但し、アスコルビン酸又はその塩およびたん白加水分解物由来のメイラード反応肉フレーバを含むものを除く。)で浸漬処理した畜肉を乾燥させる工程を備える、乾燥畜肉の製造方法。
  2. 前記乾燥させる工程は、前記畜肉を凍結乾燥させる工程である、請求項1に記載の製造方法。
  3. 前記重曹溶液は、重曹濃度が0.1~10重量%である、請求項1又は2に記載の製造方法。
  4. 重曹溶液(但し、アスコルビン酸又はその塩およびたん白加水分解物由来のメイラード反応肉フレーバを含むものを除く。)で浸漬処理した畜肉を乾燥させる工程を備える、乾燥畜肉の経時劣化を抑制する方法。
  5. 乾燥畜肉の経時劣化を抑制するための重曹の使用であって、
    乾燥前に畜肉を重曹溶液(但し、アスコルビン酸又はその塩およびたん白加水分解物由来のメイラード反応肉フレーバを含むものを除く。)で浸漬処理する工程を備える、使用。
  6. 重曹を有効成分とする、乾燥畜肉の経時劣化抑制剤(但し、アスコルビン酸又はその塩およびたん白加水分解物由来のメイラード反応肉フレーバを含むものを除く。)
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