JP5896521B2 - 2,2−ジメチルプロパンチオアミドの製造方法 - Google Patents

2,2−ジメチルプロパンチオアミドの製造方法 Download PDF

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本発明は、種々の医薬品、農薬等の製造用中間体として有用な2,2−ジメチルプロパンチオアミドの製造方法に関する。
種々の医薬品、農薬等の製造用中間体として有用な2,2−ジメチルプロパンチオアミドの製造方法としては、たとえば、2,2−ジメチルプロパンアミドと五硫化二燐を反応させて2,2−ジメチルプロパンチオアミドを得る方法(非特許文献1)、トリメチルアセトニトリルと硫化水素とを、イソプロピルアミンの存在下、水溶性極性溶媒(ジメチルホルムアミド)中で反応させて2,2−ジメチルプロパンチオアミドを得る方法(特許文献1)等が知られている。
Canadian Journal of Chemistry,Vol.55,p.2331−2335(1977)
特開平08−092202号公報
しかしながら、非特許文献1に記載されている方法によると、五硫化二燐を用いるため、燐を大量に含む廃水が生じる。この燐廃水は環境に対して有害な物質であり、廃棄において厳密な管理をする必要があること等から、工業的生産において有利な製造方法とは言い難い。
また、特許文献1に記載されている方法によると、水溶性極性溶媒を用いているため、反応後の単離操作の際、目的物の抽出および触媒のイソプロピルアミンの除去等のために大量の水が必要となっている。さらに、大量の水で洗浄するのみでは目的物中に触媒のイソプロピルアミンが残存するおそれがあり、これらアミン化合物が残存すると、目的物の分解がおこりやすくなるといった不具合がある。また、反応時間が長いことからも、工業的に有利な方法とは言い難く、2,2−ジメチルプロパンチオアミドを得る工業的に有利な方法の提案が望まれている。
本発明は、2,2−ジメチルプロパンチオアミドを得る工業的に有利な方法を提供することを目的とする。
本発明は、以下に示すとおりの、2,2-ジメチルプロパンチオアミドの製造方法に関する。
項1.トリメチルアセトニトリルと硫化水素とを、芳香族炭化水素溶媒中で、芳香族炭化水素溶媒100質量部に対して20〜200質量部の脂肪族アミンの存在下で反応させる2,2-ジメチルプロパンチオアミドの製造方法。
本発明によれば、トリメチルアセトニトリルと硫化水素とを、芳香族炭化水素溶媒中で、芳香族炭化水素溶媒100質量部に対して20〜200質量部の脂肪族アミンの存在下で反応させることにより、種々の医薬品、農薬等の製造用中間体として有用な2,2−ジメチルプロパンチオアミドを工業的に有利に製造することができる。
本発明は、2,2−ジメチルプロパンチオアミドの製造方法に関する。
本発明にかかる2,2−ジメチルプロパンチオアミドは、トリメチルアセトニトリルと硫化水素とを、芳香族炭化水素溶媒中で、芳香族炭化水素溶媒100質量部に対して20〜200質量部の脂肪族アミンの存在下で反応させることにより得られる。
本発明に用いられるトリメチルアセトニトリルとしては、市販されたものでもよく、種々の公知の方法により製造されたものでもよい。具体的には、2,2−ジメチルプロパンアミドを脱水剤により脱水させることにより得ることができる。
前記2,2−ジメチルプロパンアミドを脱水剤により脱水させてトリメチルアセトニトリルを得る際に、用いられる脱水剤としては、五酸化燐、五塩化燐、オキシ塩化燐、および塩化チオニル等が挙げられる。これらの中でも、環境に対する負荷が少なく経済的に有利である等の観点から塩化チオニルが好適に用いられる。前記脱水剤を用いる際は、反応を促進する等の観点から、N,N−ジメチルホルムアミド等の触媒を添加してもよい。
前記脱水反応に用いられる脱水剤の使用割合は、2,2−ジメチルプロパンアミド1モルに対して、1〜2モルであることが好ましく、1〜1.5モルであることがより好ましい。
前記脱水反応は、溶媒中で反応させることが好ましい。用いられる溶媒としては、特に限定されないが、芳香族炭化水素溶媒であることが好ましく、トルエンがより好ましい。芳香族炭化水素溶媒を用いることにより、次工程の本発明にかかるトリメチルアセトニトリルと硫化水素との反応に際し、トリメチルアセトニトリルを単離することなく、引き続き反応を行うことができる。溶媒を用いる場合の使用量としては、特に限定されるものではないが、例えば、2,2−ジメチルプロパンアミド100質量部に対して、100〜500質量部であることが好ましい。溶媒の使用量が500質量部を超える場合、容積効率が悪化し、経済的でなくなるおそれがある。
前記脱水反応における反応温度は、50〜75℃であり、反応時間は、反応温度により異なるが、通常3〜7時間である。
かくして得られるトリメチルアセトニトリルは、蒸留等の常法により単離した後に次工程に供してもよいが、前記脱水反応後にトリメチルアセトニトリルを単離することなく、芳香族炭化水素溶媒中で、脂肪族アミン存在下、硫化水素と反応させる工程に用いることができる。
本発明にかかる2,2−ジメチルプロパンチオアミドの製造方法は、トリメチルアセトニトリルと硫化水素とを、芳香族炭化水素溶媒中で、芳香族炭化水素溶媒100質量部に対して20〜200質量部の脂肪族アミンの存在下で反応させる。
本発明に用いられる硫化水素の使用割合は、トリメチルアセトニトリル1モルに対して、2〜4モルであることが好ましく、2〜3モルであることがより好ましい。2モル未満の場合、反応が完結しないおそれがあり、4モルを超える場合、副生成物が多く生成され収率が低下するおそれがある。
本発明に用いられる前記芳香族炭化水素溶媒としては、トルエン、ベンゼン、およびモノクロロベンゼン等が挙げられる。これらの中でもトルエンが好適に用いられる。芳香族炭化水素溶媒を用いることにより、目的物である2,2−ジメチルプロパンチオアミドを単離する際に、水を大量に用いることなく抽出が可能になる。さらに、水を用いる際に、酸を添加した水を用いることにより、触媒である脂肪族アミンを塩に変換することができ、容易に水相側に除くことができる。残存する脂肪族アミンを完全に除去することにより、2,2−ジメチルプロパンチオアミドの安定性が上がると考えられる。
前記芳香族炭化水素溶媒の使用量は、トリメチルアセトニトリル100質量部に対して、50〜150質量部であることが好ましい。
本発明においては、芳香族炭化水素溶媒100質量部に対して20〜200質量部の脂肪族アミンの存在下に反応させることにより、従来では反応速度が極めて遅い芳香族炭化水素溶媒での反応を促進する。反応を促進する理由は詳らかではないが、所望の量の脂肪族アミンを用いるので、溶媒和の影響により、反応を促進すると考えられる。
前記脂肪族アミンとしては、ジメチルアミン、ジエチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、およびtert−ブチルアミン等が挙げられる。中でも、反応性が高い等の観点からジエチルアミン、トリエチルアミンが好ましく用いられる。
前記脂肪族アミンの使用量は、芳香族炭化水素溶媒100質量部に対して、20〜200質量部である。より好ましくは、35〜200質量部であることであり、より好ましくは50〜100質量部である。脂肪族アミンの使用割合が20質量部未満の場合、反応が完結しないおそれがあり、200質量部を超える場合、単離した際に目的物中に脂肪族アミンが残存し、2,2−ジメチルプロパンチオアミドの安定性が低下するおそれがある。
本発明にかかるトリメチルアセトニトリルと硫化水素とを、脂肪族アミン存在下、芳香族炭化水素溶媒中で反応させるに際し、前記反応は、常圧下でも反応は進行するが、加圧下で行うことが好ましい。加圧下で反応させることにより、反応時間を短縮することができ、より工業的に有利である。前記加圧下で反応させる場合の圧力は、通常、1.1MPa(ゲージ圧)以下、好ましくは0.4〜1.1MPa(ゲージ圧)、より好ましくは0.7〜0.9MPa(ゲージ圧)の範囲である。1.1MPa(ゲージ圧)を超える場合、副生成物が多く生成され収率が低下するおそれがある。
本発明にかかる反応は、トリメチルアセトニトリル、脂肪族アミン、及び芳香族炭化水素溶媒との混合物に、硫化水素を吹き込み反応させることが好ましい。なお、加圧下で反応を行う場合は、反応が進行し消費された分の硫化水素を逐次添加(吹き込み)することによって反応させることが好ましい。
前記反応における反応温度は、通常、40〜90℃、好ましくは50〜75℃である。反応時間は、反応温度、圧力により異なるが、通常、硫化水素の添加(吹き込み)時間は2〜3時間、硫化水素の添加(吹き込み)終了後の保温時間は0.5〜3時間である。
かくして得られる反応液から、目的とする2,2−ジメチルプロパンチオアミドを単離する方法としては、特に限定されないが、反応系内から脱気等により過剰の硫化水素を除去、洗浄した後に、晶析する方法等を挙げることができる。なお、晶析する際には収率を上げる観点から、必要に応じ、芳香族炭化水素溶媒の一部を蒸留除去した後にヘプタン等の貧溶媒を滴下して晶析させることが好ましい。
以下に実施例を挙げ、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によってなんら限定されるものではない。
実施例1
攪拌機、温度計、冷却管および滴下漏斗を備えた500ml容の四つ口フラスコに、2,2−ジメチルプロパンアミド50.6g(0.5モル)、トルエン55.0g、およびN,N−ジメチルホルムアミド3.7gを仕込み、65℃に昇温した後、塩化チオニル62.5g(0.53モル)を滴下し、同温度で5時間攪拌した。反応終了後、減圧脱気により副生した酸性ガスを除去し、トリメチルアセトニトリルを含むトルエン溶液99.5g(トリメチルアセトニトリルとして0.49モル)を得た。
次に、攪拌機、温度計、およびガス吹き込み管を備えた500ml容のオートクレーブに、トリメチルアセトニトリルを含むトルエン溶液の全量、ジエチルアミン36.6g(0.5モル)を仕込み、65℃で3時間を要して硫化水素44.2g(1.3モル)を吹き込んだ時点で、反応が停止した。その後、70℃で1時間攪拌した。反応時の圧力は0.30〜0.80MPaであった。反応終了後、25℃まで冷却して、放圧してオートクレーブ内の過剰の硫化水素を除去した。次いで、反応液にトルエン444.5g、水61.4gを添加し、35質量%塩酸水溶液52.1g(0.5モル)を滴下し、残存ジエチルアミンを塩酸塩にした。減圧脱気により、反応系内から過剰の硫化水素を除去した後、5質量%水酸化ナトリウム水溶液12.5g(0.02モル)を滴下して、pH=7〜8として分液した。分液後、有機相に水61.4gを添加して洗浄し、分液有機相を得た。
引き続き、前記有機相が250.5gになるまでトルエンを留去した後、攪拌しながらヘプタン122.8gを滴下後、5℃に冷却し晶析させた。析出した結晶をろ過し、得られた白色固体をヘプタン100gにて洗浄し、2,2-ジメチルプロパンチオアミド46.9g(0.40モル)を得た。得られた2,2-ジメチルプロパンチオアミドの純度は、HPLC分析により99.9面積%であり、得られた2,2-ジメチルプロパンチオアミドの収率は、トリメチルアセトニトリルに対して81.6%であった。
実施例2
攪拌機、温度計、およびガス吹き込み管を備えた500ml容のオートクレーブに、トリメチルアセトニトリル41.6g(0.5モル)、トルエン55.0g、ジエチルアミン36.6g(0.5モル)を仕込み、65℃で3時間を要して硫化水素43.9g(1.3モル)を吹き込んだ時点で、反応が停止した。その後、70℃で1時間攪拌した。反応時の圧力は0.30〜0.80MPaであった。反応終了後、25℃まで冷却して、放圧してオートクレーブ内の過剰の硫化水素を除去した。次いで、反応液に、トルエン444.5g、水61.4gを添加し、35質量%塩酸水溶液52.1g(0.5モル)を滴下し、残存ジエチルアミンを塩酸塩にした。減圧脱気により、反応系内から過剰の硫化水素を除去した後、5質量%水酸化ナトリウム水溶液12.5g(0.02モル)を滴下して、pH=7〜8として分液した。分液後、有機相に水61.4gを添加して洗浄し、分液有機相を得た。
引き続き、前記有機相が250.3gになるまでトルエンを留去した後、攪拌しながらヘプタン122.8gを滴下後、5℃に冷却し晶析させた。析出した結晶をろ過し、得られた白色固体をヘプタン100gにて洗浄し、2,2-ジメチルプロパンチオアミド48.1g(0.41モル)を得た。得られた2,2-ジメチルプロパンチオアミドの純度は、HPLC分析により99.9面積%であり、得られた2,2-ジメチルプロパンチオアミドの収率は、トリメチルアセトニトリルに対して82.0%であった。
実施例3
攪拌機、温度計、およびガス吹き込み管を備えた500ml容のオートクレーブにトリメチルアセトニトリル41.6g(0.5モル)、トルエン55.0g、トリエチルアミン50.6g(0.5モル)を仕込み、65℃で3時間を要して硫化水素43.5g(1.3モル)を吹き込んだ時点で、反応が停止した。その後、70℃で1時間攪拌した。反応時の圧力は0.30〜0.80MPaであった。反応終了後、25℃まで冷却して、放圧してオートクレーブ内の過剰の硫化水素を除去した。次いで、反応液に、トルエン444.5g、水61.4gを添加し、35質量%塩酸水溶液52.1g(0.5モル)を滴下し、残存トリエチルアミンを塩酸塩にした。減圧脱気により、反応系内から過剰の硫化水素を除去した後、5質量%水酸化ナトリウム水溶液12.5g(0.02モル)を滴下して、pH=7〜8として分液した。分液後、有機相に水61.4gを添加して洗浄し、分液有機相を得た。
引き続き、前記有機相が250.0gになるまでトルエンを留去した後、攪拌しながらヘプタン122.8gを滴下後、5℃に冷却し晶析させた。析出した結晶をろ過し、得られた白色固体をヘプタン100gにて洗浄し、2,2-ジメチルプロパンチオアミド46.0g(0.39モル)を得た。得られた2,2-ジメチルプロパンチオアミドの純度は、HPLC分析により99.9面積%であり、得られた2,2-ジメチルプロパンチオアミドの収率は、トリメチルアセトニトリルに対して78.5%であった。
比較例1
特許文献1に従って、撹拌機、温度計、冷却管およびガス吹き込み管を備えた3L容の4つ口フラスコに、トリメチルアセトニトリル83.1g(1.0モル)、イソプロピルアミン24.9g(0.42モル)、ジメチルホルムアミド332mLを仕込んだ。次いで、硫化水素119g(3.5モル)を、30℃で30時間通液した。
反応終了後、反応液を水416gに添加し、反応を完了させた。その後、ジクロロメタン250gを用いて、3回の抽出、分液操作を行い、ジクロロメタン相を得た。引き続き、10gの水でジクロロメタン相を洗浄した。ジクロロメタン相を濃縮し、2,2-ジメチルプロパンチオアミド84.0g(0.72モル)を得た。得られた2,2-ジメチルプロパンチオアミドの純度は、HPLC分析により99.5面積%であり、得られた2,2-ジメチルプロパンチオアミドの収率は、トリメチルアセトニトリルに対して71.7%であった。
比較例2
攪拌機、温度計、およびガス吹き込み管を備えた500ml容のオートクレーブにトリメチルアセトニトリル41.6g(0.5モル)、トルエン55.0g、トリエチルアミン5.5g(0.075モル)を仕込み、65℃で2時間を要して硫化水素22.1g(0.65モル)を吹き込んだ時点で、反応が停止した。その後、70℃で1時間攪拌した。反応時の圧力は0.30〜0.80MPaであった。反応終了後、25℃まで冷却して、放圧してオートクレーブ内の過剰の硫化水素を除去した。次いで、反応液に、トルエン444.5g、水61.4gを添加し、35質量%塩酸水溶液7.8g(0.075モル)を滴下し、残存トリエチルアミンを塩酸塩にした。減圧脱気により、反応系内から過剰の硫化水素を除去した後、5質量%水酸化ナトリウム水溶液12.5g(0.02モル)を滴下して、pH=7〜8として分液した。分液後、有機相に水61.4gを添加して洗浄し、分液有機相を得た。
引き続き、前記有機相が250.0gになるまでトルエンを留去した後、攪拌しながらヘプタン122.8gを滴下後、5℃に冷却し晶析させた。析出した結晶をろ過し、得られた白色固体をヘプタン100gにて洗浄し、2,2-ジメチルプロパンチオアミド7.5g(0.064モル)を得た。得られた2,2-ジメチルプロパンチオアミドの純度は、HPLC分析により99.9面積%であり、得られた2,2-ジメチルプロパンチオアミドの収率は、トリメチルアセトニトリルに対して12.8%であった。

Claims (1)

  1. トリメチルアセトニトリルと硫化水素とを、芳香族炭化水素溶媒中で、芳香族炭化水素溶媒100質量部に対して20〜200質量部の脂肪族アミンの存在下で反応させる2,2-ジメチルプロパンチオアミドの製造方法。
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