従来、図9に示すバックドア102のように、アウタパネル5とインナパネル4とを固着(接着、溶着)して一体化し、そのリアウインドウ(ウインドウ開口部7a)にリアウインドウシールド7を接着するものにおいて、リアウインドウ上方のアウタパネル5にスポイラ部143を形成したものが知られている。
このスポイラ部143は、走行風をリアウインドウに沿わないように剥離させるために車体のボデーラインから後方に突出するものであるが、空力デザインや低車高(低ルーフ)化の観点から、傾斜ラインL1で示すように、上面部を車両後方かつ下方に傾斜させるニーズがある一方、後方視界拡大の観点から、後方視界の上限ラインL2で示すように、リアウインドウ上端を上方かつ前方に拡大したい(前傾させたい)というニーズもある。
このように、上面部を車両後方かつ下方に傾斜させるニーズと、リアウインドウ上端を上方かつ前方に拡大させるニーズとを両立するためには、二点鎖線で示すスポイラ部143′のように、その下面部をリアウインドウシールド7に隣接(下方に配置)させることが求められる。スポイラ部143′では、リアウインドウシールド7の上端の面直方向に対して交差する方向に下面部が延設されており、これによって、両者のなす角度θが狭まる(鋭角になる)構成、つまりは、前記下面部がリアウインドウシールド7に隣接する構成となっている。
しかしながら、スポイラ部143′のようにその下面部をリアウインドウシールド7に隣接させると、アウタパネル5をインナパネル4に固着する固着部の幅等の設計上の制約で、前記各ニーズを満足することが困難であった。また、アウタパネル5のリアウインドウ側(スポイラ部側)固着部141gは、リアウインドウシールド7の接着部を兼ねるのが一般的であり、それ故、成形性や接着部の幅等の形状の自由度が低かった。
また、従来、リアウインドウにリアウインドウシールド7を接着する際は、シール性や接合力を確保する観点から、二点鎖線で示すように、リアウインドウシールド7に接着剤46を盛り付けるように塗布し、このリアウインドウシールド7を、リアウインドウの面直方向に沿って移動させながら接着することが行われている。
ここで、上述したようにスポイラ部143′の下面部とリアウインドウシールド7とを隣接させると、リアウインドウシールド7を接着する工程でのリアウインドウシールド7の移動軌跡にスポイラ部143′が干渉する虞があり、リアウインドウシールド7の組付けが困難になるという問題もあった。
このように、リアウインドウシールド7の移動軌跡にスポイラ部143′が干渉するという問題は、特に、スポイラ部143′の下面部とリアウインドウシールド7との角度θが50°以下の場合に顕著であり、この場合、スポイラ部143′は、リアウインドウシールド7の移動軌跡と干渉しないようにデザイン上の制約を受けてしまう。このため、スポイラ部143′が車体から車両後方に突出する突出量の増大(走行風の剥離性向上)、及びスポイラ部143′の下面部とリアウインドウシールド7との隣接(後方視界拡大、低車高化、空力デザイン)を両立させることが困難であった。
ところで、下記特許文献1では、金属製のインナパネルにスポイラ部を形成した樹脂製のアウタパネル(スポイラ鋼製部材)を接着して閉断面を形成するものが開示されている。
下記特許文献1では、アウタパネルとリアウインドウシールド(リアウインドウガラス)とをインナパネルの同じ傾斜面に接着しているため、該傾斜面の幅が長くなり、その結果、ウインドウ上端が下方に設定されて後方視界が悪化するという問題があった。
また、アウタパネルやリアウインドウシールドのインナパネルに対する固着部の幅が狭くなり、アウタパネルの固着強度を高められないという問題もあった。そして、アウタパネルのインナパネルに対する前後の固着部の角度差が大きくなり、組付け時に、固着に適した面直方向に圧接させることが困難になるという問題もある。
さらに、アウタパネルをリアウインドウシールドよりも先にインナパネルに固着する場合、スポイラ部の下面部とリアウインドウシールドとの角度によっては、リアウインドウシールドの移動軌跡がスポイラ部に干渉する虞がある。このため、スポイラ部の形状(突出量)や低ルーフ化が制限されるか、または接着剤の盛り付け高さを確保できず、リアウインドウシールドをリアウインドウの面直方向に沿って移動させながら接着させることができないという問題が発生する。
また、下記特許文献2では、インナパネルに固着されるアウタパネルの固着部(固着面の反対面)にリアウインドウシールドを接着する構成が開示されている。下記特許文献2では、下記特許文献1と同様、接着剤の盛り付け高さを確保できず、リアウインドウシールドをリアウインドウの面直方向に沿って移動させながら接着させることができないという問題がある。また、前記固着部の角度がリアウインドウシールドの角度により制約を受けるとともに、幅が後方視界拡大の観点等により制約を受けるため、デザイン条件(成形性、後方視界、固着部の幅)で不利となってしまう。
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を詳述する。なお、以下の説明では、バックドアが閉状態において車両前後方向前方を前側とし、車幅方向内方を内側として説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るバックドア構造を備えた車両Vを示す側面図である。本実施形態に係る車両Vは、ハッチバック型乗用車であり、図1に示すように、そのルーフ部1から、車両Vの後部のバックドア2にかけて流線形をなすように丸みを帯びている。
また、ルーフ部1には、その頂部1aより車両後方の、車両後方かつ下方に傾斜した部位において通信用の車外アンテナ3が取付けられており、その先端は、基部から上方に向かって幅H1だけ突出している。本実施形態では、上述したように車外アンテナ3がルーフ部1の頂部1aより車両後方に取付けられていることで、車外アンテナ3の先端の高さ位置が可及的に低く抑えられている。
上述したバックドア2は、車体後部を開閉自在に覆うべく、車両Vの後部に設けられた開口部(図示略)を車体側に固定されたヒンジ(図示略)を回動中心として回動可能に構成されている。
図2は、バックドア2を車両後方から見た分解斜視図であり、図3は、バックドア2を車両後方から見た分解斜視図である。また、図4は、バックドア2を車両前方から見た縦断面斜視図である。バックドア2は、図2〜図4に示すように、インナパネル4と、アウタパネル5と、左右一対のピラーレインフォースメント6と、リアウインドウシールド7等を備え、側面視にて略湾曲状に形成されている。このバックドア2は、さらに、ワイパユニット機構8と、ラッチ機構9と、インナハンドル部材51等が装着される。
インナパネル4とアウタパネル5とは、溶融された合成樹脂を成形用金型に射出することにより両パネルの板厚が2mm〜2.5mmになるよう形成されている。インナパネル4は長ガラス繊維含有のポリプロピレンを樹脂材料とし、アウタパネル5はポリプロピレンを樹脂材料としている。なお、各パネルを形成する樹脂材料は前記樹脂材に限られず、ポリカーボネート樹脂やABS等を用いて成形することも可能であり、加熱成形される熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂を用いることも可能である。もちろん、強化繊維も前記繊維に限られず、炭素繊維、アラミド繊維、鉱物繊維等、他の強化繊維を用いることも可能である。さらには、インナパネル4、アウタパネル5の両者またはいずれか一方を金属製とすることも可能である。
図3、図4に示すように、インナパネル4は、外枠形成部11と、左右一対の内枠形成部12と、機構収容部13と、左右一対のパネル部14と、ラッチ収容部15と、上端枠部16等が射出成形により一体形成されている。外枠形成部11は、車両後側に開放する断面略コ字状構造により形成され、複数のフランジ壁とこれらフランジ壁の端部を連結する底壁により形成されている。外枠形成部11のコ字状構造は、インナパネル4の周りを正面視にて略U字状に連続する連続断面形状を構成している。
外枠形成部11は、下端枠部17と、左右一対の側縁枠部18等を備えている。下端枠部17は、インナパネル4の下端部分を形成している。図3、図4に示すように、下端枠部17は、上側フランジ壁17aと、下側フランジ壁17cと、これらフランジ壁17a、17cの前側端部を連結する底壁17bと、下側フランジ壁17cの後側端部から車両後側へ張り出した外側フランジ壁17dと、外側フランジ壁17dの後側端部から車両後側下方へ張り出した外縁端部17fを備えている。それ故、下端枠部17は、上側フランジ壁17aと底壁17bと下側フランジ壁17cにより車両後側に開放する断面略コ字状構造を形成している。
図3、図4に示すように、下端枠部17の左右側部分には、左右一対の筒状のインナハンドル部材51が設置されている。
左右一対の側縁枠部18は、下端枠部17の左右端から夫々上方へ延び、インナパネル4の左右端部分を形成している。図3、図4に示すように、左側縁枠部18は、上側フランジ壁17aの左端部(車幅方向外側端部)に連なり上方へ延びる内側フランジ壁18aと、底壁17bの左端部に連なり内側フランジ壁18aの前側端部から外側へ屈曲した第1底壁18bと、下側フランジ壁17cの左端部に連なり第1底壁18bの左端部から車両後側へ延びる中央フランジ壁18cと、外側フランジ壁17dの左端部に連なり中央フランジ壁18cの後側端部から外側へ屈曲した第2底壁18dと、第2底壁18dの左端部から車両後側へ延びる外側フランジ壁18eと、外縁端部17fの左端部に連なり外側フランジ壁18eの後側端部から車幅方向外側へ張り出した外縁端部18fを備えている。右側縁枠部18は、左側縁枠部18と左右対称になるよう形成されている。
左右一対の側縁枠部18は、夫々、内側フランジ壁18aと第1底壁18bと中央フランジ壁18cにより車両後側に開放する断面略コ字状構造を形成し、内側フランジ壁18aと第1底壁18bと中央フランジ壁18cと第2底壁18dと外側フランジ壁18eにより断面鉤状構造を形成している。
左右一対の側縁枠部18は、内枠形成部12よりも上方位置に前方上がり傾斜状に形成された左右一対のピラー部19を備えている。図4に示すように、左側ピラー部19は、内側フランジ壁18aの上端部に連なり上方へ延びる内側フランジ壁19aと、第1底壁18bと第2底壁18dとの上端部に連なり内側フランジ壁19aの前側端部から外側へ屈曲した底壁19dと、外側フランジ壁18eの上端部に連なり底壁19dの左端部から車両後側へ延びる外側フランジ壁19eと、外縁端部18fの上端部に連なり外側フランジ壁19eの後側端部から車幅方向外側へ張り出した外縁端部19fと、内側フランジ壁19aの後側端部から車幅方向内側へ張り出した内縁端部19gを備えている。
図3、図4に示すように、左右一対の内枠形成部12は、インナパネル4の上下方向中段かつリアウインドウシールド7が接着されるウインドウ開口部7aの下縁部に形成されている。左側内枠形成部12は、後側に開放する断面略コ字状に形成され、上下一対のフランジ壁12a、12cと、これらフランジ壁12a、12cの前側端部を連結しかつ内側フランジ壁18aに連なる底壁12bと、上側フランジ壁12aの後側端部から上方へ張り出した内縁端部12gと、複数の内枠リブ部26等を備えている。左側内枠形成部12の上側フランジ壁12aは左側ピラー部19の内側フランジ壁19aに連なり、内縁端部12gは内縁端部19gに連なるよう形成されている。
図3、図4に示すように、機構収容部13は、インナパネル4の下側かつ車幅方向中間部分に後側へ凹入するよう形成され、車両前方からワイパユニット機構8の駆動部(図示略)、ラッチ機構9及びランプ機構(図示略)等バックドア2に装備される各機構部が収容可能に構成されている。機構収容部13は、インナパネル4の前部から前方へ突出した左右一対の縦壁部21と、インナパネル4の前部から車両前方へ突出した横壁部22と、パネル部23と、パネル部23から前方へ突出したリブ部24と、パネル部23から前方へ突出した複数の突出部25等を備えている。
左右一対の縦壁部21は、インナパネル4の車幅方向途中位置において左右一対の内枠形成部12の車幅方向内側端部と夫々接続されている。各縦壁部21は、側縁枠部18とワイパユニット機構8との間を左右に仕切るよう形成され、内枠形成部12より上方位置に形成されたウインドウ開口部7aの下縁部から下端枠部17の上側フランジ壁17aに亙って延設されている。
横壁部22は、ウインドウ開口部7aの下縁部に形成され、左右一対の縦壁部21の上端部を連結するよう形成されている。そして、図4に示すように、横壁部22は、後側に開放する断面略コ字状に形成されている。
パネル部23は、下端枠部17と左右一対の縦壁部21と横壁部22とに囲まれた部分を平面状に塞ぐよう形成されている。パネル部23には、ワイパユニット機構8のワイパ部8aと前記駆動部とを連結するための開口23aと、補強用リブ部24と、複数の突出部25等が形成されている。
開口23aは、車幅方向中央かつウインドウ開口部7aの下縁近傍位置に形成され、ワイパ部8aの駆動軸を挿通可能に形成されている。リブ部24は、パネル部23の前部から前側へ膨出するよう形成されている。突出部25は、パネル部23の前部から前方へ突出するよう略柱状に形成されている。
図3、図4に示すように、左右一対のパネル部14は、機構収容部13の左右両側に夫々配置され、外枠形成部11と内枠形成部12と機構収容部13とに囲まれた部分を塞ぐように形成されている。左右一対のパネル部14には、夫々、アウタ側パネル部31と、アウタ側パネル部31に連なりアウタ側パネル部31よりも車両前側(車室側)へ突出したインナ側パネル部32とが一体形成されている。
図3、図4に示すように、ラッチ収容部15は、機構収容部13の下側かつ車幅方向中間位置に下端枠部17の下側フランジ壁17cを車両前側(車室内方)へ膨出して形成され、下端枠部17のコ字状断面内にラッチ機構9とラッチ機構9を作動させるアクチエータ(図示略)を格納する格納空間を形成している。
ラッチ収容部15は、左右一対の第1取付座部35と、第2取付座部36と、ラッチ用開口部37と、ラッチ機構取付けブラケット38とを備えている。
ラッチ用開口部37は、左右一対の第1取付座部35の間でかつ第2取付座部36よりも下方位置に略矩形状に形成され、ラッチ機構9を取り付ける際、ラッチ機構9を前方から挿通可能に構成されている。左右一対の第1取付座部35と第2取付座部36との後側には、ラッチ機構取付けブラケット38が設けられている。図3に示すように、ラッチ機構取付けブラケット38は、金属製板材を断面W字状に折り曲げ形成されている。
ラッチ機構取付けブラケット38は、左右一対の第1取付座部35と第2取付座部36とに対して後側から重ね合わせて組み付け可能に構成されている。ラッチ機構9は、ラッチ機構取付けブラケット38により補強された左右一対の第1取付座部35と第2取付座部36に対してボルトにより締結固定されている。
図3、図4に示すように、上端枠部16は、左右一対のピラー部19の上端部を連結するよう外枠形成部11と一体形成されている。上端枠部16には、本体部16aと、本体部16aの左右端部分に形成された左右一対のヒンジ取付け部10と、上部に形成された外縁端部16fと、下部に形成された内縁端部16gとが設けられている。それ故、ウインドウ開口部7aは、横壁部22と内縁枠部12g、16g、19gとにより形成されている。そして、このウインドウ開口部7aは、その上端部が車両後方かつ下方に傾斜するように形成されている。
図5は、図4の要部拡大断面図である。図2〜図5に示すように、アウタパネル5は、上側アウタパネル部41と、下側アウタパネル部42とにより2分割形成されている。図2〜図5に示すように、上側アウタパネル部41は、上側アウタパネル部41の上部に形成された前側の外縁端部41fと、後方へ突出されたスポイラ部43と、該スポイラ部43の下面部43aの下端に形成されたスポイラ部43側(後側)の内縁端部41gとが射出成形により一体成形されている。
上側アウタパネル部41(スポイラ部43)は、外縁端部41f、内縁端部41gをそれぞれ外縁端部16f、本体部16aの底壁16bに対して上側から接着することによりインナパネル4へ組付けられ、上端枠部16と協働して車幅方向へ延びる閉断面Aを形成している。
図5に一点鎖線で示すように、上側アウタパネル部41の上部は、ルーフ部1とともに流線形のラインを形成すべく、車両後方かつ下方に緩やかに傾斜した傾斜ラインL1を有している。
図2〜図5に示すように、下側アウタパネル部42は、ワイパユニット機構8のワイパ部8aと前記駆動部とを連結するための開口42aと、左右端部分と下端部分とに形成された外縁端部42fと、後部中央位置に形成されたナンバープレート取付け部44と、左右1対のヘッドライト用開口45とを備えている。下側アウタパネル部42は、外縁端部42fを下端枠部17の外縁端部17fと側縁枠部18の外縁端部18fとに対して後側から接着することによりインナパネル4へ組付けられる。下側アウタパネル部42の組付け後、下側アウタパネル部42の前部はアウタ側パネル部31の後部と面接触している。
ところで、アウタパネル5は、図2に示すように、ピラー部19に対応する部位を有しておらず、バックドア2の車幅方向両端部では、インナパネル4とアウタパネル5とによる閉断面が形成されていない構成となっている。そして、上述したリアウインドウシールド7は、上側アウタパネル部41と下側アウタパネル42との間でウインドウ開口部7a及び左右一対のピラー部19を覆うようにバックドア2の車幅方向の略全幅に亙って装着される。
図5に示すように、リアウインドウシールド7は、その上端が接着剤46によって、ウインドウ開口部7aを構成する内縁端部16gに接着されており、後方視界の上限ラインL2が、この内縁端部16gの下端によって規定されている。
インナパネル4に設けられた内縁端部16gは、スポイラ部43の下面部43aに対して車両後方かつ下方に傾斜しており、それ故、内縁端部16g及びこれに接着されるリアウインドウシールド7が、下面部43aに対して鋭角に傾斜している。本実施形態では、下面部43aが、リアウインドウシールド7の上端の面直方向に対して交差する方向に延設されており、リアウインドウシールド7の上端が、下面部43aの下方に隣接して配置されている。ここで、リアウインドウシールド7と下面部43aとの角度θ(図1、図5参照)は、50°以下に設定される。
下面部43aは、内縁端部41gによりインナパネル4に接着される。図4、図5に示すように、内縁端部41gは、リアウインドウシールド7との接着部となる内縁端部16gの近傍から、外縁端部41fとともに、リアウインドウシールド7よりも水平に近い方向へ延設されている。さらに、内縁端部41gは、リアウインドウシールド7から離間するように、下面部43aの下端から閉断面A内に向かって車両前方へ延設されている。
次に、図6、図7を参照しながら、バックドア2の製造方法について説明する。図6は、下側アウタパネル部42をインナパネル4に接着する工程を示す図であり、図7(a)は、リアウインドウシールド7をインナパネル4のウインドウ開口部7aに接着する工程を示す図、図7(b)は、上側アウタパネル部41をインナパネル4に接着する工程を示す図である。
バックドア2を製造する際には、先ず、図6に示すように、インナパネル4の第1取付座部35と第2取付座部36とに対して、ラッチ機構取付けブラケット38を後側から重ね合わせて組付けるとともに、左右一対のピラーレインフォースメント6及び下側アウタパネル部42を、接着によりインナパネル4に組付ける。
次に、リアウインドウシールド7をインナパネル4のウインドウ開口部7aに接着する。この工程では、図7(a)に示すように、リアウインドウシールド7の上端の接着面に対して予め接着剤46を塗布しておく、このとき、シール性や接合力を確保するために、接着剤46を略円錐状に盛り付けるように塗布しておく。そして、ウインドウ開口部7a(内縁端部16g、12g)の面直方向にリアウインドウシールド7を移動させながら、その上端、下端を内縁端部16g、12gに接着する。
そして、上側アウタパネル部41を、接着によりインナパネル4に組付ける。この工程では、図7(b)に示すように、インナパネル4の外縁端部16f及び本体部16aの底壁16bに対して予め接着剤47、48を塗布しておく。そして、上端枠部16の上側から上側アウタパネル部41を下方に移動させながら、その外縁端部41f、内縁端部41gを、それぞれ外縁端部16f、底壁16bに接着する。
本実施形態では、上述したように、ウインドウ開口部7aのリアウインドウシールド7との接着部(内縁端部16g)近傍から、内縁端部41gをリアウインドウシールド7よりも水平に近い方向へ延設したことにより、前記特許文献1のように、インナパネルに設けられたリアウインドウシールドの接着部と同じ角度で連続する傾斜面にスポイラ部側固着部を固着させる場合に比べて、スポイラ部側固着部(内縁端部41g)の上下幅を抑制できる。
この場合、インナパネル4との接着により閉断面Aを形成するアウタパネル5において、リアウインドウシールド7の上端の面直方向に対して交差する方向に下面部43aが延設される程度まで、下面部43aとリアウインドウシールド7とを隣接して配置しつつ、内縁端部41gの幅を、内縁端部16gの形状や傾斜角度に関係なく十分に延ばすことができる。これにより、空力性能や低車高化に優れたデザインを実現できるとともに、後方視界の拡大と、上側アウタパネル部41の接着強度の向上とを両立させることができる。
特に、本実施形態のように、ルーフ部1の車両後方かつ下方に傾斜した部位に車外アンテナ3を取付けたものにおいては、上述したように低車高化に優れたデザインを実現することによって、車外アンテナ3の先端の高さ位置をより低く抑えることができるという効果がある。この効果は、車外アンテナ3が折り畳んだり伸縮したりできない固定式アンテナの場合、特に好ましい。
また、内縁端部16gを車両後方かつ下方に傾斜して延設するとともに、外縁端部41fと内縁端部41gとを、リアウインドウシールド7よりも水平に近い方向に延設することで、外縁端部41f及び内縁端部41gの幅を拡大したとしても、その上下方向の幅の増大を抑制することができる。このため、上側アウタパネル部41全体の上下方向の幅H2(図5参照)を抑制することができ、その結果、後方視界と外縁端部41f及び内縁端部41gの幅とをともに拡大することができる。
なお、外縁端部41f、内縁端部41gは、互いに略平行とすることが好ましく、この場合、外縁端部41f、内縁端部41gを、インナパネル4に対して同じ面直方向に接着することができるという効果がある。
また、内縁端部41gを、リアウインドウシールド7から離間するように、下面部43aの下端から閉断面A内に向かって延設したことで、下面部43aをよりリアウインドウシールド7に隣接して配置することができる。このため、後方視界の拡大と、上側アウタパネル部41の接着強度の向上とを両立させることができる。
また、バックドア2の製造において、ウインドウ開口部7aの面直方向にリアウインドウシールド7を移動させながら、該リアウインドウシールド7をウインドウ開口部7a(内縁端部16g)に接着する工程と、リアウインドウシールド7の上端の面直方向に対して交差する方向に延設される下面部43aを、ウインドウ開口部7aの直上近傍のインナパネル4(底壁16b)に固着して一体化する工程と、を有することで、リアウインドウシールド7をインナパネル4に接着する工程を、アウタパネル5(上側アウタパネル部41)をインナパネル4に接着する工程の前に行うことが可能になる。
この場合、上述したようにリアウインドウシールド7の上端の面直方向に対して交差する方向に下面部43aが延設される程度まで、下面部43aとリアウインドウシールド7とを隣接して配置したとしても、リアウインドウシールド7の移動軌跡とスポイラ部43とが干渉することを回避できる。このため、空力性能や低車高化に優れたデザインを実現するとともに、後方視界の拡大と、上側アウタパネル部41の接着強度の向上とを両立させるバックドア2の生産性を向上させることができる。
また、ウインドウ開口部7aにリアウインドウシールド7を接着する工程の前に、下側アウタパネル部42をインナパネル4に固着する工程を有することで、下側アウタパネル部42のインナパネル4への接着によって下側の剛性の確保した上で、リアウインドウシールド7を接着することができる。これにより、該リアウインドウシールド7をウインドウ開口部7aに確実に接着することができる。
なお、この場合、通常であれば、リアウインドウシールド7の下側に比べて上側の剛性が相対的に低い状態でリアウインドウシールド7が接着されることになるが、上側の剛性を確保するために、例えば、インナパネル4の上側部分を下側部分よりも厚肉にしてもよい。
図8は、本発明に係るバックドア構造の他の実施形態を示している。なお、図8において、図1〜図7に示す先の実施形態と同様の構成要素については、同一の符号を付して説明を省略する。
本実施形態では、図8に示すように、アウタパネル50の下側アウタパネル52が、その車幅方向両端部にピラー部19に対応する左右一対のピラー部49を備えている。そして、下側アウタパネル部52のインナパネル4への接着により、バックドア2の車幅方向両端部では、ピラー部19、49により上下方向に延びる閉断面が形成されるようになっている。
このように、下側アウタパネル部52の車幅方向両端部にピラー部49を備えて、バックドア2の車幅方向両端部に閉断面を形成することで、リアウインドウシールド70の周縁に沿って剛性を高めることができる。
なお、本実施形態においても、先の実施形態と同様、下側アウタパネル52を接着によりインナパネル4に組付ける工程、リアウインドウシールド70をウインドウ開口部7aに接着する工程、上側アウタパネル部41を接着によりインナパネル4に組付ける工程の順番でバックドア2を製造する。
なお、その他の作用効果は、上述した先の実施形態と同様である。
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、
この発明のリアウインドウは、ウインドウ開口部7aに対応し、
以下同様に、
スポイラ部側固着部は、内縁端部41gに対応し、
接着部は、内縁端部16gに対応し、
前側固着部は、外縁端部41fに対応するも、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。