以下本発明を実施するための形態について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
上記課題に対して本発明者らが鋭意検討した結果、近年のコントラスト比5000:1等の非常に正面コントラストが高い液晶表示装置においては、コントラスト低下や、コントラストのバラつきが、用いられる光学フィルムにおける前方散乱(いわゆるヘイズ)を解消するだけでは、不十分であることを見出したものである。
すなわち、本発明者らは前記コントラスト低下や、コントラストのバラつきの問題について詳細に検討した結果、特許文献3に記載されているような、添加剤とセルロースエステル樹脂の溶解度パラメータ(SP値)を近づけ、且つ延伸適性の高い平均アセチル基置換度が2.0〜2.6のセルロースエステル樹脂を用いた光学フィルムでは、該光学フィルムを透過する光の前方散乱(ヘイズ)に起因するコントラストの低下はある程度抑制できるものの、正面コントラストの高いVA型液晶表示装置においては、それだけでは十分ではなく、後述する後方散乱を抑制する必要があることを突き止めた。
図1は、本発明でいう上記「後方散乱」を説明した図である。
光学フィルム1の法線方向で光源2の入射光とは正逆方向である後方散乱光の出射角を0°とした時に、光ディテクタ3により、590nmにおける出射角25°〜85°の散乱光を測定しその光量積算値S(bs)とした時に、入射光総量S(T)で除した値を後方散乱の目安とする。この値が小さければ小さいほど、後方散乱が少なく光学フィルム中のコントラスト低下要因が少ないことを意味する。
従って本発明の光学フィルムは、上記「後方散乱」が下記式(I)を満たすことを特徴とし、かかる構成により正面コントラストの低下や、コントラストのバラつきを引き起こすことのない光学フィルムを得ることができるものである。
式(I): 0.01<S(bs)/S(T)<0.30
式中、S(bs):フィルム表面への入射光角を0度にした場合の、測定波長590nmにおける出射角25°〜85°方向の後方散乱光量をフィルム表面から距離300mmで1°刻みで光ディテクタ3を用いて測定した時の光量積算値を表し、S(T):光源からフィルム表面への距離600mmで光ディテクタ3を用いて測定した時の入射光総量、を表す。
光源2は、特に制限はないが、例えば朝日分光株式会社製キセノン光源MAX−302を白色光で用いることができる。
光ディテクタ3は、一例として光電子増倍管(フォトマル 浜松フォトニクス R636−10)を用いるこことができる。
また、光学フィルム1への入射光のスポット径は10mmに設定して測定を行う。
但し、ここで当該光学フィルム表面に対する法線と平行で、かつ入射光とは正逆方向である後方散乱光の出射角を0°とし、当該法線と平行で、かつ入射光の進行方向とは同一方向である前方散乱光の出射角を180°とする。
S(bs)/S(T)が0.30以上では、後方散乱が大きすぎて正面コントラストの低下やコントラストムラの発生が見られる。また、S(bs)/S(T)が0.01以下であるように光学フィルムを調整するには、後述するコントラスト低下要因の調整手段を幾重にも組み合わせなければならず、現実的には0.01以上の値にすることが費用対効果の点で好ましい。S(bs)/S(T)の範囲は、より好ましくは0.03以上0.20以下である。
後方散乱で測定されるコントラスト低下要因は、特に平均アセチル基置換度が2.0〜2.6のセルロースアセテートを用いた場合においては、異物等の樹脂自体が内包する要因、製膜工程における製膜基材からの剥離時にその応力によって発生するセルロース分子の歪みによる要因、位相差を調整するための延伸時に発生するフィルム中の微細な割れ(クレーズ)や異物の配列による要因、樹脂と可塑剤等の添加剤との相溶性不良による要因、鹸化耐性(アルカリ耐性)が低いことに起因して偏光板貼合時の歪み、割れ等のアルカリ処理による要因、等が挙げられ、前方散乱(ヘイズ)のみならず、これらコントラスト低下要因をコントロールする必要がある。
例えば、上記異物等の樹脂自体が内包する要因としては、平均アセチル基置換度が2.0〜2.6のセルロースアセテート樹脂を製造する場合、一般的には、一旦セルロースのほぼ全てのヒドロキシ基(水酸基)をアセチル化した後に、熟成の過程でアセチル基を外す(ヒドロキシ基(水酸基)で再置換する。)ことで置換度を調整するため、セルローストリアセテートのように再置換の割合が低い樹脂と比較して、熟成工程における低分子量の異物(ゲル状異物)が多く発生することとなり、これらが、コントラスト低下の要因となることもある。
従って上記コントラスト低下要因をコントロールして後方散乱を低減することで、本発明の光学フィルムを用いた偏光板、液晶表示装置は、正面コントラストが非常に高く、かつコントラストの低下やコントラストのバラつきを引き起こすことのない偏光板、液晶表示装置を提供できる。
更に、本発明の光学フィルムは、光源から50°方向の位置における光散乱強度について、前記光学フィルムをその遅相軸と前記ゴニオフォトメータの受光部の走査方向が一致するように試料台へ設置した場合の散乱光強度(It)と、前記光学フィルムをその進相軸とゴニオフォトメータの受光部の走査方向が一致するように試料台へ設置した場合の散乱光強度(Is)の比(It/Is)の値が0.7以上1.3以下であることが本発明の効果をより高める上で好ましい。
<ゴニオフォトメータにより測定される散乱光>
正面コントラストを改良するためには、光学フィルムのヘイズを低下させることが必要であるとされてきたが、直進光に対応するヘイズ(前方散乱)を低減するだけでは、必ずしも正面コントラストを所望の値にすることはできないというということは前述のとおりである。本発明では、上記後方散乱を排除するのに加えて、ゴニオフォトメータによる下記散乱光強度比(It/Is)の値を0.7以上1.3以下とすることによって、更に本発明の効果を高めることが可能である。ゴニオフォトメータにより測定される散乱を本発明では異方性散乱と呼称する。
〈異方性散乱の測定装置〉
図2A及び図2Bにゴニオフォトメータ(型式:GP−1−3D、オプテック(株)製)の概略を示す。G1.光源ランプ、G2.分光器、G3.試料台(ステージともいう)、G4.試料、G5.受光部分、G6.ストッパーである。
光源は、12V50Wハロゲン球、受光部は光電子増倍管(フォトマル 浜松フォトニクス R636−10)を用いている。
(A)は基準光を測定するリファレンス測定或は透過率測定時における、光源ランプ、分光器、試料台(ステージ)、光の強度を計測する積分球の配置を示す。
(B)は測定サンプルを試料台に載せてその反射率測定時における、光源ランプ、分光器、試料台、積分球の配置を示す。
光源ランプの法線方向から50°方向の位置に、前記光学フィルムをその遅相軸と前記ゴニオフォトメータの受光部の走査方向が一致するように試料台へ設置した場合の散乱光強度(It)とし、更に該光学フィルムの設置を該光学フィルムの進相軸とゴニオフォトメータの受光部の走査方向が一致するように試料台へ設置した場合の散乱光強度(Is)を測定し、その比(It/Is)を求める。この値が0.7以上1.3以下の範囲に入る光学フィルムであることが好ましい。
上記後方散乱と同様に、上記異方性散乱を低減した本発明の光学フィルムを作製するには、前述のように、異物等の樹脂自体が内包する要因、製膜工程における製膜基材からの剥離時にその応力によって発生するセルロース分子の歪みによるコントラスト低下要因、位相差を調整するための延伸時に発生するフィルム中の微細な割れ(クレーズ)や異物の配列によるコントラスト低下要因、樹脂と可塑剤等の添加剤との相溶性不良によるコントラスト低下要因、鹸化耐性(アルカリ耐性)が低いことに起因して偏光板貼合時の歪み、割れ等のアルカリ処理による要因、等を各々コントロールすることが必要である。
本発明の光学フィルムを形成する過程において、種々のコントラスト低下要因をコントロールするのに有効な方法について、以下順次記載するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<セルロースエステル樹脂含有ドープの調製条件の最適化>
本発明の光学フィルムの製造プロセスにおいては、製膜工程における製膜基材からの剥離時にその応力によって発生するセルロース分子の歪みによるコントラスト低下要因を除くため、セルロースエステル樹脂含有組成物(ドープ)と製膜基材との剥離性を向上することが好ましい。
平均アセチル基置換度が2.0〜2.6のセルロースアセテートにおいては、光学フィルム製造初期の剥離力(立ち上げ時の剥離)が高いため応力の発生が大きく、従ってセルロースエステル樹脂に含まれる不純物を低減することが、剥離性を改良し応力によって発生するセルロース分子の歪みを抑制することができる。
剥離性を改良するにはセルロース樹脂原料、又はセルロースエステル製造過程に用いられるアルカリ土類金属塩(Ca塩、Mg塩)や残留硫酸塩を低減することが好ましい。これらはセルロースエステル樹脂製造に用いられる水質の調整や、セルロースエステル樹脂の洗浄を十分に行うことによって低減することができ、前記剥離時に発生するセルロース分子の歪みを低減すると共に寸法変化、機械強度、透明性、耐透湿性、Rth値、Ro値等の光学特性が良好なフィルムを得ることができる。
また、セルロース樹脂原料由来の不純物(ヘミセルロース、リグニン)を低減することも好ましく、樹脂原料としてはウッドパルプ(針葉樹パルプ、広葉樹パルプ)よりもリンターパルプ(綿花)を用いることが好ましい。
(剥離促進剤)
また、本発明の光学フィルムには剥離促進剤を含むことが前記剥離性を高め、剥離時にその応力によって発生するセルロース分子の歪みよるコントラスト低下要因を低減する上で好ましい。
剥離促進剤は、例えば、0.001〜1質量%の割合でドープに含めることができ、0.5質量%以下の添加であれば剥離剤のフィルムからの分離等が発生し難いため好ましく、0.005質量%以上であれば所望の剥離低減効果を得ることができるため好ましい。従って0.005〜0.5質量%の割合で含めることが好ましく、0.01〜0.3質量%の割合で含めることがより好ましい。剥離促進剤としては、公知のものが採用でき、有機、無機の酸性化合物、界面活性剤、キレート剤等を使用することができる。中でも、多価カルボン酸及びそのエステル(例えばクエン酸のエチルエステル類)、アニオン系界面活性剤が効果的に使用することができ、特にアニオン系界面活性剤を使用することが好ましい。
アニオン系界面活性剤は特に限定されないが、例えば脂肪酸塩類、アビエチン酸塩類、ヒドロキシアルカンスルホン酸塩類、アルカンスルホン酸塩類、ジアルキルスルホ琥珀酸エステル塩類、αオレフィンスルホン酸塩類、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、分岐鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキルフェノキシポリオキシエチレンプロピルスルホン酸塩類、ポリオキシエチレンアルキルスルホフェニルエーテル塩類、N−メチル−N−オレイルタウリンナトリウム塩、N−アルキルスルホ琥珀酸モノアミド二ナトリウム塩、石油スルホン酸塩類、硫酸化牛脂油、脂肪酸アルキルエステルの硫酸エステル塩類、アルキル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩類、脂肪酸モノグリセリド硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、アルキルリン酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸エステル塩類、スチレン/無水マレイン酸共重合物の部分鹸化物類、オレフィン/無水マレイン酸共重合物の部分鹸化物類、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物類等が挙げられる。
その中でも、特に下記一般式(HI)若しくは(HII)で示される化合物が好ましい。
一般式(HI)
[R1O(AO)n]p−P(=O)(OM)q
一般式(HII)
R2−L−Q
R1及びR2は、炭素数8〜22の直鎖若しくは分岐のアルキル基を示し、特に好ましくは炭素数10〜18のアルキル基である。
アルキル基には置換基を有していても良く、置換基としては、ハロゲン原子、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシル基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アシル基、ヒドロキシ基、アシルオキシ基、アミノ基、アルコキシカルボニル基、アシルアミノ基、オキシカルボニル基、カルバモイル基、スルホニル基、スルファモイル基、スルホンアミド基、スルホリル基、カルボキシ基等が挙げられる。Aは、炭素数2〜4のアルキレン基を示し、nは0又は1〜20の整数。p及びqは、p+q=3でかつ、p=1又は2の整数。Mは水素原子、アルカリ金属原子、アンモニウム基を示す。Lは2価の連結基を表し、Qはカルボン酸又はその塩、スルホン酸又はその塩、硫酸エステル又はその塩を示す。
以下に、本発明に用いることができるアニオン性系界面活性剤の具体例を挙げるが、本発明はこれに限定されるものではない。RZ−1;C8H17O−P(=O)−(OH)2、RZ−2;C12H25O−P(=O)−(OK)2、RZ−3;C12H25OCH2CH2O−P(=O)−(OK)2、RZ−4;C15H31(OCH2CH2)5O−P(=O)−(OK)2、RZ−5;{C12H25O(CH2CH2O)5}2−P(=O)−OH、RZ−6;{C18H35(OCH2CH2)8O}2−P(=O)−ONH4、RZ−7;(t−C4H9)3−C6H2−OCH2CH2O−P(=O)−(OK)2、RZ−8;(iso−C9H19−C6H4−O−(CH2CH2O)5−P(=O)−(OK)(OH)、RZ−9;C12H25SO3Na、RZ−10;C12H25OSO3Na、RZ−11;C17H33COOH、RZ−12;C17H33COOH・N(CH2CH2OH)3、RZ−13;iso−C8H17−C6H4−O−(CH2CH2O)3−(CH2)2SO3Na、RZ−14;(iso−C9H19)2−C6H3−O−(CH2CH2O)3−(CH2)4SO3Na、RZ−15;トリイソプロピルナフタレンスルフォン酸ナトリウム、RZ−16;トリ−t−ブチルナフタレンスルフォン酸ナトリウム、RZ−17;C17H33CON(CH3)CH2CH2SO3Na、RZ−18;C12H25−C6H4SO3・NH4
セルロースエステル樹脂の溶媒として、アルコール類、ケトン類、水等、極性の高い溶媒を用いることが好ましい。
なお、剥離時の溶媒残量をコントロールすることも好ましい。剥離時のセルロースエステル樹脂含有ドープに対して、溶媒含量は50〜120%であることが好ましい。
溶媒含量のコントロールには、剥離直前に溶媒を噴霧、塗布する方法、剥離時に溶媒蒸気へ曝露する方法を用いてもよい。
製膜基材表面への疎水加工(例えば、フッ素加工)を行うことが好ましい。
また、立ち上げ時の剥離性改良の方法として、剥離性の高いセルロースエステルドープから剥離性の低いドープを逐次混合し、剥離性の低いドープに連続して生産する方法、(例えば、高置換度セルロースから低置換度セルロースに連続して生産する方法)、剥離性の高いドープや剥離性を改良しうる素材を、剥離性の低いドープにインラインで添加する方法、剥離性の高いドープや剥離性を改良しうる素材を剥離性の低いドープに対して製膜基材側に薄層積層する方法が挙げられる。
粘度、アルカリ処理耐性や、機械強度、耐久物性のために、本発明に係るセルロースエステル樹脂は数平均分子量が60000以上であることが好ましいが、高分子量過ぎるセルロースエステル樹脂はドープ粘度が上昇し、フィルム生産適性において問題がある。
セルロースエステル樹脂ドープの低粘度化には、樹脂に含まれる金属塩(酢酸カルシウム、酢酸マグネシウム等のアルカリ金属塩)樹脂原料由来の不純物(ヘミセルロース、リグニン等)を低減することが好ましい。
また、セルロースエステル樹脂の貧溶剤として、アルコール、水などが含まれることが好ましく、メタノール若しくはエタノールが全混合溶媒中の6〜18質量%含まれることが好まし。また、水が0.5〜2.0%含まれることが好ましい。
上記の低粘度化手段により、ドープ濃縮比を高めたセルロースエステル樹脂ドープを作製することが可能となるが、ドープの濃縮化は生産適性を向上させることができ、固形分濃度が20〜35質量%であることが好ましい。
ドープ粘度の好ましい範囲は、33℃における振動粘度が1000mPa・s〜5000Pa・sであり、より好ましくは2600mPa・s〜3200Pa・sである。
また、生産適性向上のために、製膜ダイス温度の調整により、流延製膜時のドープ粘度を制御する方法も好ましく用いられる。
(ゲル状異物・不純物の除去)
本発明において、セルロースエステル樹脂を溶解したドープ中のゲル状異物・不純物を除去することが好ましいが、その除去方法としては、原料の溶解条件(溶媒種類、溶媒比率、濃度、溶解温度、攪拌時間)や濾過条件の適切化・最適化により行うことが好ましい。
例えば、セルロースエステル樹脂を含有するドープは、高温で溶解することが好ましく、溶解温度50〜90℃の範囲内で、1〜6時間溶解を行うことが好ましい。
また、溶媒種類については、後述するような溶媒を用いることが好ましいが、特に、アルコール又は水が含まれることが好ましく、エタノールが10%以上含まれることが好ましい。ドープの濃度については、2.0≦(溶媒の質量)/(セルロースエステル樹脂+添加剤の質量)≦4.0の関係を満たす範囲内であることが好ましい。
ゲル状異物・不純物の低減のためには、例えば、原材料としての前述の金属塩を減量する方向の調製も好ましい。
〈濾過材〉
濾過材としては、不溶物等を除去するために絶対濾過精度が小さい方が好ましいが、絶対濾過精度が小さ過ぎると濾過材の目詰まりが発生しやすいという問題がある。このため絶対濾過精度0.008mm以下の濾材が好ましく、0.001〜0.008mmの濾材がより好ましく、0.003〜0.006mmの濾材が更に好ましい。
なお、「絶対濾過精度」とは、粒径が既知でかつ揃ったガラスビーズ等の標準粒径品を使用し濾過テストを行った場合に、完全に濾別除去される場合の最低粒径をいう。
濾材の材質は特に制限はなく、通常の濾材を使用することができるが、ポリプロピレン、テフロン(登録商標)等のプラスチック製の濾材や、ステンレススティール等の金属製の濾材が繊維の脱落等がなく好ましい。濾過により、原料のセルロースエステル樹脂に含まれている不純物、特に輝点異物を除去、低減することができ好ましい。
「輝点異物」とは、二枚の偏光板をクロスニコル状態にして配置し、その間に光学フィルムを置き、一方の偏光板の側から光を当てて、他方の偏光板の側から観察した時に反対側からの光が漏れて見える点(異物)のことであり、径が0.01mm以上である輝点数が200個/cm2以下であることが好ましい。より好ましくは100個/cm2以下であり、更に好ましくは50個/m2以下であり、更に好ましくは10個/cm2以下である。また、0.01mm以下の輝点も少ない方が好ましい。
ドープの濾過は通常の方法で行うことができるが、溶媒の常圧での沸点以上で、且つ加圧下で溶媒が沸騰しない範囲の温度で加熱しながら濾過する方法が、濾過前後の濾圧の差(差圧という)の上昇が小さく、好ましい。好ましい温度は45〜120℃であり、45〜70℃がより好ましく、45〜55℃であることが更に好ましい。
濾圧は小さい方が好ましい。濾圧は1.6MPa以下であることが好ましく、1.2MPa以下であることがより好ましく、1.0MPa以下であることが更に好ましい。
本発明に係るセルロースエステル樹脂の製造方法は、セルロース樹脂をトリアセチル化した後、更に加水分解して得る方法が一般的であるが、この一連の過程で生成するゲル状の微小な副生成物が配向乱れに影響していると考えられるため、これを除去することで散乱を抑制することができる。このための濾過方法としては、濾過精度5μm未満のフィルターで多段濾過することも好ましい。
本発明において用いることができる濾材としては、例えば、ロキテクノ社製の125L−HC−05、125L−HC−1、250L−HC−05、250L−HC−1、500L−HC−05、500L−HC−1、125L−SHP−005、125L−SHP−010、125L−SHP−030、250L−SHP−005、250L−SHP−010、250L−SHP−030、500L−SHP−005、500L−SHP−010、500L−SHP−030、750L−SHP−005、750L−SHP−010、750L−SHP−030、125L−MPH−006、125L−MPH−012、125L−MPH−025、125L−MPH−045、250L−MPH−006、250L−MPH−012、250L−MPH−025、250L−MPH−045、500L−MPH−006、500L−MPH−012、500L−MPH−025、500L−MPH−045、750L−MPH−006、750L−MPH−012、750L−MPH−025、750L−MPH−045、125L−EX−05、125L−EX−1、125L−EX−3、250L−EX−05、250L−EX−1、250L−EX−3、500L−EX−05、500L−EX−1、500L−EX−3、750L−EX−05、750L−EX−1、750L−EX−3などを挙げることができる。
また、日本ポール社製の濾過精度3μm以下のプロファイルII、濾過精度4.5μm以下のプロファイルUP、濾過精度4.5μm以下のポリファインXLD、濾過精度4.5μm以下のウルチプリーツ・ハイフローを用いることができる。
さらには、ADVANTEC社製のTCPサブミクロンシリーズTSC−3、TSP−3、TMC−2、及びTMP−2、チッソフィルター社製のCP−01、CP−03、CPH−01、CPH−03、CHW−01、CHW−03、CPII−01、CPII−03等も用いることができる。
<延伸条件の最適化>
本発明の光学フィルムの特徴を実現するため、コントラスト低下要因のコントロールに加えて、所定の位相差を実現するための手段の一つとして、光学フィルムを製造する際に延伸を行うことが好ましく、延伸条件を最適に制御することが好ましい。
延伸はテンターによって行うことが好ましい。
本発明の光学フィルムの面内位相差値(Ro)、厚さ方向位相差値(Rth)は以下の式によって求めることができ、測定光波長590nmにおける面内位相差値(Ro)が30〜100nmの範囲内、厚さ方向位相差値(Rth)が70〜400nmの範囲内である。前記位相差値の範囲に制御することにより、VA型液晶表示装置の視野角拡大等の光学補償フィルムとして好適に用いることが可能となる。
式(i):Ro=(nx−ny)×d
式(ii):Rth={(nx+ny)/2−nz}×d(式中、nx、ny、nzは、23℃・55%RH、590nmにおける屈折率nx(フィルムの面内の最大の屈折率、遅相軸方向の屈折率ともいう。)、ny(フィルム面内で遅相軸に直交する方向の屈折率)、nz(フィルム厚み方向の屈折率)であり、dはフィルムの厚さ(nm)である。)
上記位相差値は、自動複屈折計KOBRA−21ADH(王子計測機器(株)製)を用いて、23℃、55%RHの環境下、波長590nmで測定を行うことにより求める。
延伸は、テンターを行う場合、ウェブの残留溶媒量、延伸時の温度を制御することが好ましく、ウェブの残留溶媒量はテンター開始時に20〜100質量%であるのが好ましく、かつウェブの残留溶媒量が10質量%以下になるまでテンターを掛けながら乾燥を行うことが好ましく、さらに好ましくは5質量%以下である。
テンターで延伸を行う場合の乾燥温度は、30〜160℃が好ましく、50〜150℃がさらに好ましく、70〜140℃が最も好ましい。
延伸倍率としては、幅手方向の延伸(TD延伸)を5〜50%施すことが好ましい。また、長手方向への延伸(MD延伸)を1〜10%の範囲で行うこともできる。本発明においてはTD延伸、MD延伸の両方を行う、所謂2軸延伸を行うことがセルロース分子を整える意味からも好ましい。
例えば、160℃に加熱して、ロール延伸により、長手方向に1.05倍延伸し、続いて予熱ゾーン、延伸ゾーン、保持ゾーン、冷却ゾーン(各ゾーン間には各ゾーン間の断熱を確実にするためのニュートラルゾーンも有する)を有するテンターに導入し、幅手方向に160℃で1.20倍延伸した後、幅方向に2%緩和しながら70℃まで冷却することが好ましい。
なお、高延伸倍率では、厚さ方向の屈折率(nz値)が下がりやすく、面方向の位相差(Ro)と厚さ方向の位相差(Rth)のバランスを取る必要がある。
厚さ方向の屈折率(nz値)を低下させるためには、長手方向の延伸(MD延伸)を行うことが好ましい。
また、位相差を調整するのに面内方向に負の複屈折性を有する化合物等の添加剤(スチレン化合物、アクリル化合物等)を添加することも好ましい。また、面内方向の位相差(Ro)、厚さ方向の位相差(Rth)を上昇させる添加剤(トリアジン類など)を添加することも好ましい。これらの添加剤については、詳しく後述する。
また、延伸後、熱処理(アニール処理)して残存する歪を緩和することが好ましい。熱処理は80〜200℃、好ましくは100〜180℃で行うことが好ましく、更に好ましくは130〜160℃で行うことである。このとき、熱伝達係数20〜130×103J/m2hrで熱処理を行うのが好ましい。
更に好ましくは、40〜130×103J/m2hrの範囲であり、最も好ましくは42J/m2hr〜84×103J/m2hrの範囲である。これによって、残存する歪が低減され、90℃などの高温条件、あるいは80℃、90%RHなどの高温高湿条件における寸法安定性が改善される。
なお、当該延伸プロセス後の熱処理により、厚さ方向の屈折率(nz値)をコントロールする方法も好ましく用いられる。また、当該熱処理により、ヘイズの低下も可能であり、好ましい。
配向角の改良には、延伸プロセスの後に1〜10%の緩和プロセスを行うことが好ましく、より好ましくは1〜5%の緩和プロセスを行うことが好ましい。
<光学フィルム>
本発明の光学フィルムは、平均アセチル基置換度が2.0〜2.6の範囲内であるセルロースエステル樹脂を含有することを特徴とする。以下、当該光学フィルムの構成要素について詳細な説明をする。
<セルロースエステル樹脂>
本発明に係るセルロースエステル樹脂は、平均アセチル基置換度が2.0〜2.6の範囲内であるが、2.2〜2.5の範囲内であることがより好ましい。ここでいう平均アセチル基置換度は、セルロースを構成する無水グルコースの有する3個のヒドロキシ基(水酸基)のうち、エステル化(アシル化)されているヒドロキシ基(水酸基)の数を示し、0〜3の範囲内の値を示す。
セルロースエステル樹脂の平均アセチル基置換度が2.0を下回る場合には、ドープ粘度の上昇によるフィルム面品質の劣化、延伸張力の上昇によるヘイズアップなどが発生することがある。また、平均アセチル基置換度が2.6より大きい場合は、複屈折性の発現が小さくなり必要な位相差が得られ難い。
本発明に係るセルロースエステル樹脂としては、特にセルロースジアセテート、セルローストリアセテートから選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。これらの中で特に好ましいセルロースエステル樹脂は、セルロースジアセテートである。
なお、平均アセチル基置換度は、ASTM−D817−96(セルロースアセテート等の試験方法)に規定の方法により求めたものである。
本発明に係るセルロースエステル樹脂の数平均分子量(Mn)は、30000〜300000の範囲が、得られるフィルムの機械的強度が強く好ましい。更に60000〜200000のものが好ましく用いられる。
セルロースエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比Mw/Mnの値は、1.4〜3.0であることが好ましい。
セルロースエステル樹脂の重量平均分子量Mw、数平均分子量Mnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定した。
測定条件は以下のとおりである。
溶媒: メチレンクロライド
カラム: Shodex K806、K805、K803G(昭和電工(株)製を3本接続して使用した)
カラム温度:25℃
試料濃度: 0.1質量%
検出器: RI Model 504(GLサイエンス社製)
ポンプ: L6000(日立製作所(株)製)
流量: 1.0ml/min
校正曲線: 標準ポリスチレンSTK standard ポリスチレン(東ソー(株)製)Mw=1000000〜500の13サンプルによる校正曲線を使用した。13サンプルは、ほぼ等間隔に用いる。
本発明に係るセルロースエステル樹脂の原料のセルロースとしては、特に限定はないが、綿花リンター、木材パルプ、ケナフなどを挙げることができる。またそれらから得られたセルロースエステル樹脂はそれぞれ任意の割合で混合使用することができる。
セルロース樹脂原料由来の不純物(ヘミセルロース、リグニン)を低減するには、樹脂原料としてはウッドパルプ(針葉樹パルプ、広葉樹パルプ)よりもリンターパルプ(綿花)を用いることが好ましい。
本発明に係るセルロースエステル樹脂は、公知の方法により製造することができる。一般的には、原料のセルロースと所定の有機酸(酢酸、プロピオン酸など)と酸無水物(無水酢酸、無水プロピオン酸など)、触媒(硫酸など)と混合して、セルロースをエステル化し、セルロースのトリエステルができるまで反応を進める。トリエステルにおいてはグルコース単位の三個のヒドロキシ基(水酸基)は、有機酸のアシル酸で置換されている。同時に二種類の有機酸を使用すると、混合エステル型のセルロースエステル樹脂、例えばセルロースアセテートプロピオネートやセルロースアセテートブチレートを作製することができる。次いで、セルロースのトリエステルを加水分解することで、所望のアシル置換度を有するセルロースエステル樹脂を合成する。その後、濾過、沈殿、水洗、脱水、乾燥などの工程を経て、セルロースエステル樹脂ができあがる。
具体的には特開平10−45804号公報に記載の方法を参考にして合成することができる。
市販品としては、ダイセル化学工業(株)社のL20、L30、L40、L50、イーストマンケミカル社のCa398−3、Ca398−6、Ca398−10、Ca398−30、Ca394−60Sが挙げられる。
本発明の光学フィルムに含まれるカルシウム及びマグネシウムの総量と酢酸量は下記関係式(a)を満たすことが、前記セルロースエステル樹脂を含有するドープと製膜基材の剥離性を向上する観点から必要である。
関係式(a):1≦(酢酸量)/(カルシウム及びマグネシウムの総量)≦30
カルシウム及びマグネシウムは、光学フィルムの原料となるセルロースエステル樹脂に含まれるが、セルロースエステル樹脂製造過程に添加される酸触媒(特に硫酸)を中和・安定化するため、金属酸化物、金属水酸化物、金属塩(無機酸塩、有機酸塩)として添加されてもよい。また光学フィルム製膜時に金属酸化物、金属水酸化物、金属塩(無機酸塩、有機酸塩)として添加してもよい。本発明でいう光学フィルムに含まれるカルシウム及びマグネシウムの総量は、それらの合計量を指す。
また、セルロースエステル樹脂は製造過程において、反応溶媒やエステル化剤として無水酢酸、酢酸が用いられる。未反応の無水酢酸は反応停止剤(水、アルコール、酢酸等)により加水分解され酢酸を生じる。本発明でいう光学フィルムに含まれる酢酸量は、それらの残留酢酸や、遊離酢酸の総量を指す。
上記関係式(a)において、酢酸量/(カルシウム及びマグネシウムの総量)が1より小さいとき、カルシウム及びマグネシウム金属塩による光散乱が生じ、コントラストを低下させてしまい好ましくない。また30より大きい時、光学フィルムを偏光子に貼り合わせた後、酢酸により偏光子の劣化が促進され好ましくない。
好ましくは5〜20の範囲であると本発明の目的を達成する上で好ましく、更に好ましくは5〜10の範囲である。
光学フィルムに含まれるカルシウム及びマグネシウムの総量は5〜130ppmが好ましく、5〜80ppmがより好ましく、5〜50ppmが更に好ましい。
光学フィルムに含まれるカルシウム及びマグネシウムの定量は、公知の方法を用いることができるが、例えば、乾燥したセルロースエステル樹脂を完全に燃焼させた後、灰分を塩酸に溶解して前処理を行った上で原子吸光法により測定することができる。測定値は絶乾状態のセルロースエステル樹脂1g中のカルシウム及びマグネシウム含有量としてppmを単位として得られる。
光学フィルムに含まれる酢酸量は20〜500ppmが好ましく、25〜250ppmがより好ましく、30〜150ppmが更に好ましい。
光学フィルムに含まれる酢酸の定量は、公知の方法を用いることができるが、例えば、次のような方法を用いることができる。フィルムを塩化メチレンに溶解し、さらにメタノールを加えて再沈殿を行う。上澄み液をろ過し、その上澄み液をガスクロマトグラフィーにて測定することで、酢酸量を得ることができる。
本発明においては、本発明の光学フィルムの融点を200〜290℃の範囲内にすることが好ましい。当該融点を上記範囲内に調整する方法としては、セルロースエステル樹脂の置換度を制御する、又は可塑剤を添加するなどがある。
なお、本発明の光学フィルムには、本発明の効果を害しない限りにおいて、上記セルロースエステル樹脂以外の熱可塑性樹脂を併用することもできる。
ここで、「熱可塑性樹脂」とは、ガラス転移温度又は融点まで加熱することによって軟らかくなり、目的の形に成形できる樹脂のことをいう。
熱可塑性樹脂としては、一般的汎用樹脂としては、ポリエチレン(PE)、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン(PS)、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、テフロン(登録商標)(ポリテトラフルオロエチレン、PTFE)、ABS樹脂(アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂)、AS樹脂、アクリル樹脂(PMMA)等を用いることができる。
また、強度や壊れにくさを特に要求される場合、ポリアミド(PA)、ナイロン、ポリアセタール(POM)、ポリカーボネート(PC)、変性ポリフェニレンエーテル(m−PPE、変性PPE、PPO)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、グラスファイバー強化ポリエチレンテレフタレート(GF−PET)、環状ポリオレフィン(COP)等を用いることができる。
さらに、高い熱変形温度と長期使用できる特性を要求される場合は、ポリフェニレンスルファイド(PPS)、ポリテトラフロロエチレン(PTFE)、ポリスルホン、ポリエーテルサルフォン、非晶ポリアリレート、液晶ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン、熱可塑性ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)等を用いることができる。
なお、本発明の用途にそって樹脂の種類、分子量の組み合わせを行うことが可能である。
<溶解度パラメータの相対的関係>
本発明の光学フィルムにおいては、下記式(b)を満たす少なくとも一種の添加剤を0.01〜30質量%の範囲内で含む態様であることが必要である。該添加剤を加えることで成型時に樹脂にかかる負荷が少なくなり正面コントラストが改良される。
式(b):|SPt−SPc|<1.5
ただし、式中のSPcはHoy法で測定したセルロースエステル樹脂の溶解度パラメー
タ値(SP値)であり、SPtは同方法で測定した添加剤の溶解度パラメータ値(SP値
)である。
また、「|SPt−SPc|」とは、Hoy法で測定した添加剤の溶解度のパラメータの値(SPt値)とHoy法で測定したセルロースエステル樹脂の溶解度パラメータの値(SPc値)との差(「ΔSP」とも表記する。)の絶対値のことをいう。
なお、Hoy法は、POLYMER HANDBOOK FOURT EDITIONに記載がある。
前記好ましい添加剤は、上式を満たす範囲であれば、特に限定されないが、後述する、糖エステル化合物、ポリエステル系化合物等において上式を満たすものが好ましい。
<糖エステル化合物>
本発明に係る光学フィルムは、下記一般式(FA)で表される総平均置換度が3.0〜6.0である化合物(糖エステル化合物ともいう)を可塑剤として用いることが好ましい。
(式中、R1〜R8は、各々独立に、水素原子、置換又は無置換のアルキルカルボニル基、若しくは、置換又は無置換のアリールカルボニル基を表し、R1〜R8は相互に同じであっても、異なっていてもよい。)
本発明に係る一般式(FA)で表される化合物の平均置換度は3.0〜6.0であることが、延伸処理において後方散乱上昇を防ぐ上で有効である。
本発明において、一般式(FA)で表される化合物の置換度とは、一般式(FA)に含まれる8つの水酸基のうち、水素以外の置換基で置換されている数を表し、すなわち、一般式(FA)のR1〜R8のうち、水素以外の基を含む数を表す。したがって、R1〜R8が全て水素以外の置換基により置換された場合に、置換度は最大値の8.0となり、R1〜R8が全て水素原子である場合には、0.0となる。
一般式(FA)で表される構造を有する化合物は、水酸基の数、OR基の数が固定された単一種の化合物を合成することは困難であり、式中の水酸基の数、OR基の異なる成分が数種類混合された化合物となることが知られているため、本発明における一般式(FA)の置換度としては、平均置換度を用いることが適当であり、常法により高速液体クロマトグラフィーによって置換度分布を示すチャートの面積比から平均置換度を測定することができる。
一般式(FA)において、R1〜R8は、置換又は無置換のアルキルカルボニル基、あるいは、置換又は無置換のアリールカルボニル基を表し、R1〜R8は、同じであっても、異なっていてもよい。
本発明に係る糖エステル化合物の合成原料の糖の例としては、例えば以下のようなものを挙げることができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース、キシロース、あるいはアラビノース、ラクトース、スクロース、ニストース、1F−フラクトシルニストース、スタキオース、マルチトール、ラクチトール、ラクチュロース、セロビオース、マルトース、セロトリオース、マルトトリオース、ラフィノースあるいはケストース挙げられる。
この他、ゲンチオビオース、ゲンチオトリオース、ゲンチオテトラオース、キシロトリオース、ガラクトシルスクロースなども挙げられる。
本発明に係る糖エステル化合物の合成時に用いられるモノカルボン酸としては、特に制限はなく、公知の脂肪族モノカルボン酸、脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸等を用いることができる。用いられるカルボン酸は1種類でもよいし2種以上の混合であってもよい。
好ましい脂肪族モノカルボン酸の例としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、2−エチル−ヘキサンカルボン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸等の飽和脂肪酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、オクテン酸等の不飽和脂肪酸等を挙げることができる。
好ましい脂環族モノカルボン酸の例としては、シクロペンタンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロオクタンカルボン酸、又はそれらの誘導体を挙げることができる。
好ましい芳香族モノカルボン酸の例としては、安息香酸、トルイル酸等の安息香酸のベンゼン環に1〜5個のアルキル基若しくはアルコキシ基を導入した芳香族モノカルボン酸、ケイ皮酸、ベンジル酸、ビフェニルカルボン酸、ナフタリンカルボン酸、テトラリンカルボン酸等のベンゼン環を2個以上有する芳香族モノカルボン酸、又はそれらの誘導体を挙げることができるが、特に安息香酸が好ましい。
以下に、本発明に係る糖エステル化合物の具体例を挙げるが、R1〜R8をのうちいずれかを同じ置換基Rとした場合であって、本発明はこれに限定されるものではない。
本発明に係る糖エステル化合物は、前記糖に、アシル化剤(エステル化剤ともいう、例えば、アセチルクロライドの酸ハロゲン化物、無水酢酸等の無水物)を反応させることによって製造することが可能であり、置換度の分布は、アシル化剤の量、添加タイミング、エステル化反応時間の調節によって成されるが、置換度違いの糖エステル化合物の混合、あるいは純粋に単離した置換度違いの化合物を混合することにより、目的の平均置換度、置換度4以下の成分を調整することができる。
(合成例:本発明に係る化合物の合成)
撹拌装置、還流冷却器、温度計及び窒素ガス導入管を備えた四頭コルベンに、ショ糖34.2g(0.1モル)、無水安息香酸135.6g(0.6モル)、ピリジン284.8g(3.6モル)を仕込み、撹拌下に窒素ガス導入管から窒素ガスをバブリングさせながら昇温し、70℃で5時間エステル化反応を行った。
次に、コルベン内を4×102Pa以下に減圧し、60℃で過剰のピリジンを留去した後に、コルベン内を1.3×10Pa以下に減圧し、120℃まで昇温させ、無水安息香酸、生成した安息香酸の大部分を留去した。そして、次にトルエン1L、0.5質量%の炭酸ナトリウム水溶液300gを添加し、50℃で30分間撹拌後、静置して、トルエン層を分取した。最後に、分取したトルエン層に水100gを添加し、常温で30分間水洗後、トルエン層を分取し、減圧下(4×102Pa以下)、60℃でトルエンを留去させ、化合物A−1、A−2、A−3、A−4及びA−5等の混合物である糖エステル化合物1を得た。
得られた混合物を高速液体クロマトグラフィー−質量分析(HPLC−MS)で解析したところ、A−1が1.2質量%、A−2が13.2質量%、A−3が14.2質量%、A−4が35.4質量%、A−5等が40.0質量%であった。平均置換度は5.2であった。
同様に、無水安息香酸158.2g(0.70モル)、146.9g(0.65モル)、135.6g(0.60モル)、124.3g(0.55モル)と当モルのピリジンとを反応させて、表1記載のような成分の糖エステルを得た。
次いで、得られた混合物の一部を、シリカゲルを用いたカラムクロマトグラフィーにより精製することで、それぞれ純度100%のA−1、A−2、A−3、A−4及びA−5等を得た。
なお、A−5等とは、置換度4以下の全ての成分、つまり置換度4、3、2、1の化合物の混合物であることを意味する。また、平均置換度は、A−5等を置換度4として計算した。
本発明においては、ここで作製した方法により所望の平均置換度に近い糖エステル及び単離したA−1〜A−5等を組み合わせ添加することにより、平均置換度を調整した。<HPLC−MSの測定条件>1)LC部
装置:日本分光(株)製カラムオーブン(JASCO CO−965)、ディテクター(JASCO UV−970−240nm)、ポンプ(JASCO PU−980)、デガッサー(JASCO DG−980−50)
カラム:Inertsil ODS−3 粒子径5μm 4.6×250mm(ジーエルサイエンス(株)製)
カラム温度:40℃
流速:1ml/min
移動相:THF(1%酢酸):H2O(50:50)
注入量:3μl2)MS部
装置:LCQ DECA(Thermo Quest(株)製)
イオン化法:エレクトロスプレーイオン化(ESI)法
Spray Voltage:5kV
Capillary温度:180℃
Vaporizer温度:450℃
<ポリエステル系化合物>
本発明では上記糖エステル化合物に加えて、可塑剤として下記一般式(FB)で表されるポリエステル系化合物を用いることが好ましい。
一般式(FB) B−(G−A)n−G−B
(式中、Bはヒドロキシ基又はカルボン酸残基、Gは炭素数2〜12のアルキレングリコール残基又は炭素数6〜12のアリールグリコール残基又は炭素数が4〜12のオキシアルキレングリコール残基、Aは炭素数4〜12のアルキレンジカルボン酸残基又は炭素数6〜12のアリールジカルボン酸残基を表し、またnは1以上の整数を表す。)
一般式(FB)中、Bで示されるヒドロキシ基又はカルボン酸残基と、Gで示されるアルキレングリコール残基又はオキシアルキレングリコール残基又はアリールグリコール残基、Aで示されるアルキレンジカルボン酸残基又はアリールジカルボン酸残基とから構成されるものであり、通常のエステル系化合物と同様の反応により得られる。
一般式(FB)で表されるポリエステル系化合物のカルボン酸成分としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、安息香酸、パラターシャリブチル安息香酸、オルソトルイル酸、メタトルイル酸、パラトルイル酸、ジメチル安息香酸、エチル安息香酸、ノルマルプロピル安息香酸、アミノ安息香酸、アセトキシ安息香酸、脂肪族酸等があり、これらはそれぞれ1種又は2種以上の混合物として使用することができる。
一般式(FB)で表されるポリエステル系化合物の炭素数2〜12のアルキレングリコール成分としては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール(3,3−ジメチロールペンタン)、2−n−ブチル−2−エチル−1,3プロパンジオール(3,3−ジメチロールヘプタン)、3−メチル−1,5−ペンタンジオール1,6−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2−エチル1,3−ヘキサンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−オクタデカンジオール等があり、これらのグリコールは、1種又は2種以上の混合物として使用される。
特に炭素数2〜12のアルキレングリコールがセルロースエステル樹脂との相溶性に優れているため、特に好ましい。
また、上記一般式(FB)で表されるポリエステル系化合物の炭素数4〜12のオキシアルキレングリコール成分としては、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等があり、これらのグリコールは、1種又は2種以上の混合物として使用できる。
一般式(FB)で表されるポリエステル系化合物の炭素数4〜12のアルキレンジカルボン酸成分としては、例えば、コハク酸、マレイン酸、フマール酸、グルタール酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸等があり、これらは、それぞれ1種又は2種以上の混合物として使用される。炭素数6〜12のアリールジカルボン酸成分としては、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸等がある。
一般式(FB)で表されるポリエステル系化合物は、数平均分子量が、好ましくは300〜1500、より好ましくは400〜1000の範囲が好適である。また、その酸価は、0.5mgKOH/g以下、ヒドロキシル(水酸基)価は25mgKOH/g以下、より好ましくは酸価0.3mgKOH/g以下、ヒドロキシル(水酸基)価は15mgKOH/g以下のものである。
以下に、本発明に用いることのできる一般式(FB)で表されるポリエステル系化合物の具体的化合物を示すが、本発明はこれに限定されない。
本発明の光学フィルムは上記糖エステル化合物、及びポリエステル系化合物を光学フィルムの0.1〜30質量%含むことが好ましく、特には、0.5〜10質量%含むことが好ましい。
<位相差発現剤>
本発明の光学フィルムでは、位相差発現剤を含むことは過度な延伸操作を避け、位相差を調整するための延伸時に発生するフィルム中の微細な割れ(クレーズ)や異物の配列によるコントラスト低下要因を抑制する上で好ましい。
位相差発現剤は、例えば、0.5〜10質量%の割合で含有させることができ、さらには、2〜6質量%の割合で含有させることが好ましい。位相差発現剤を採用することにより、低延伸倍率で高いRo発現性を得られる。位相差発現剤の種類としては、特に定めるものではないが、円盤状又は棒状化合物からなるものを挙げることができる。上記円盤状又は棒状化合物としては、少なくとも二つの芳香族環を有する化合物を位相差発現剤として好ましく用いることができる。
円盤状の位相差発現剤は、前記セルロースエステル樹脂100質量部に対して、0.5〜10質量部の範囲で使用することが好ましく、1〜8質量部の範囲で使用することがより好ましく、2〜6質量部の範囲で使用することがさらに好ましい。
棒状化合物からなる位相差発現剤の添加量は、セルロースエステル樹脂100質量部に対して0.5〜10質量部であることが好ましく、2〜6質量部であることがさらに好ましい。
二種類以上の位相差発現剤を併用してもよい。
位相差発現剤は、250〜400nmの波長領域に最大吸収を有することが好ましく、可視領域に実質的に吸収を有していないことが好ましい。
円盤状化合物について説明する。円盤状化合物としては少なくとも二つの芳香族環を有する化合物を用いることができる。
本明細書において、「芳香族環」は、芳香族炭化水素環に加えて、芳香族性ヘテロ環を含む。
芳香族炭化水素環は、6員環(すなわち、ベンゼン環)であることが特に好ましい。
芳香族性ヘテロ環は一般に、不飽和ヘテロ環である。芳香族性ヘテロ環は、5員環、6員環又は7員環であることが好ましく、5員環又は6員環であることがさらに好ましい。芳香族性ヘテロ環は一般に、最多の二重結合を有する。ヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子が好ましく、窒素原子が特に好ましい。芳香族性ヘテロ環の例には、フラン環、チオフェン環、ピロール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、イミダゾール環、ピラゾール環、フラザン環、トリアゾール環、ピラン環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環及び1,3,5−トリアジン環が含まれる。
芳香族環としては、ベンゼン環、縮合ベンゼン環、ビフェニール類が好ましい。特に1,3,5−トリアジン環が好ましく用いられる。具体的には例えば特開2001−166144号公報に開示の化合物が好ましく用いられる。
位相差(リターデーション)発現剤が有する芳香族環の炭素数は、2〜20であることが好ましく、2〜12であることがより好ましく、2〜8であることがさらに好ましく、2〜6であることが最も好ましい。
二つの芳香族環の結合関係は、(a)縮合環を形成する場合、(b)単結合で直結する場合及び(c)連結基を介して結合する場合に分類できる(芳香族環のため、スピロ結合は形成できない)。結合関係は、(a)〜(c)のいずれでもよい。
(a)の縮合環(二つ以上の芳香族環の縮合環)の例には、インデン環、ナフタレン環、アズレン環、フルオレン環、フェナントレン環、アントラセン環、アセナフチレン環、ビフェニレン環、ナフタセン環、ピレン環、インドール環、イソインドール環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、インドリジン環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾトリアゾール環、プリン環、インダゾール環、クロメン環、キノリン環、イソキノリン環、キノリジン環、キナゾリン環、シンノリン環、キノキサリン環、フタラジン環、プテリジン環、カルバゾール環、アクリジン環、フェナントリジン環、キサンテン環、フェナジン環、フェノチアジン環、フェノキサチイン環、フェノキサジン環及びチアントレン環が含まれる。ナフタレン環、アズレン環、インドール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾトリアゾール環及びキノリン環が好ましい。
(b)の単結合は、二つの芳香族環の炭素原子間の結合であることが好ましい。二以上の単結合で二つの芳香族環を結合して、二つの芳香族環の間に脂肪族環又は非芳香族性複素環を形成してもよい。
(c)の連結基も、二つの芳香族環の炭素原子と結合することが好ましい。連結基は、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、−CO−、−O−、−NH−、−S−又はそれらの組み合わせであることが好ましい。組み合わせからなる連結基の例を以下に示す。なお、以下の連結基の例の左右の関係は、逆になってもよい。c1:−CO−O−、c2:−CO−NH−、c3:−アルキレン−O−、c4:−NH−CO−NH−、c5:−NH−CO−O−、c6:−O−CO−O−、c7:−O−アルキレン−O−、c8:−CO−アルケニレン−、c9:−CO−アルケニレン−NH−、c10:−CO−アルケニレン−O−、c11:−アルキレン−CO−O−アルキレン−O−CO−アルキレン−、c12:−O−アルキレン−CO−O−アルキレン−O−CO−アルキレン−O−、c13:−O−CO−アルキレン−CO−O−、c14:−NH−CO−アルケニレン−、c15:−O−CO−アルケニレン−
芳香族環及び連結基は、置換基を有していてもよい。
置換基の例には、ハロゲン原子(F、Cl、Br、I)、ヒドロキシ基、カルボキシ基、シアノ基、アミノ基、ニトロ基、スルホ基、カルバモイル基、スルファモイル基、ウレイド基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、脂肪族アシル基、脂肪族アシルオキシ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アルコキシカルボニルアミノ基、アルキルチオ基、アルキルスルホニル基、脂肪族アミド基、脂肪族スルホンアミド基、脂肪族置換アミノ基、脂肪族置換カルバモイル基、脂肪族置換スルファモイル基、脂肪族置換ウレイド基及び非芳香族性複素環基が含まれる。
アルキル基の炭素原子数は、1〜8であることが好ましい。環状アルキル基よりも鎖状アルキル基の方が好ましく、直鎖状アルキル基が特に好ましい。アルキル基は、さらに置換基(例えば、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アルコキシ基、アルキル置換アミノ基)を有していてもよい。アルキル基の(置換アルキル基を含む)例には、メチル基、エチル基、n−ブチル基、n−ヘキシル基、2−ヒドロキシエチル基、4−カルボキシブチル基、2−メトキシエチル基及び2−ジエチルアミノエチル基の各基が含まれる。
アルケニル基の炭素原子数は、2〜8であることが好ましい。環状アルケニル基よりも鎖状アルケニル基の方が好ましく、直鎖状アルケニル基が特に好ましい。アルケニル基は、さらに置換基を有していてもよい。アルケニル基の例には、ビニル基、アリル基及び1−ヘキセニル基が含まれる。
アルキニル基の炭素原子数は、2〜8であることが好ましい。環状アルキニル基よりも鎖状アルキニル基の方が好ましく、直鎖状アルキニル基が特に好ましい。アルキニル基は、さらに置換基を有していてもよい。アルキニル基の例には、エチニル基、1−ブチニル基及び1−ヘキシニル基が含まれる。
脂肪族アシル基の炭素原子数は、1〜10であることが好ましい。脂肪族アシル基の例には、アセチル基、プロパノイル基及びブタノイル基が含まれる。
脂肪族アシルオキシ基の炭素原子数は、1〜10であることが好ましい。脂肪族アシルオキシ基の例には、アセトキシ基が含まれる。
アルコキシ基の炭素原子数は、1〜8であることが好ましい。アルコキシ基は、さらに置換基(例えば、アルコキシ基)を有していてもよい。アルコキシ基の(置換アルコキシ基を含む)例には、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基及びメトキシエトキシ基が含まれる。
アルコキシカルボニル基の炭素原子数は、2〜10であることが好ましい。アルコキシカルボニル基の例には、メトキシカルボニル基及びエトキシカルボニル基が含まれる。
アルコキシカルボニルアミノ基の炭素原子数は、2〜10であることが好ましい。アルコキシカルボニルアミノ基の例には、メトキシカルボニルアミノ基及びエトキシカルボニルアミノ基が含まれる。
アルキルチオ基の炭素原子数は、1〜12であることが好ましい。アルキルチオ基の例には、メチルチオ基、エチルチオ基及びオクチルチオ基が含まれる。
アルキルスルホニル基の炭素原子数は、1〜8であることが好ましい。アルキルスルホニル基の例には、メタンスルホニル基及びエタンスルホニル基が含まれる。
脂肪族アミド基の炭素原子数は、1〜10であることが好ましい。脂肪族アミド基の例には、アセトアミドが含まれる。
脂肪族スルホンアミド基の炭素原子数は、1〜8であることが好ましい。脂肪族スルホンアミド基の例には、メタンスルホンアミド基、ブタンスルホンアミド基及びn−オクタンスルホンアミド基が含まれる。
脂肪族置換アミノ基の炭素原子数は、1〜10であることが好ましい。脂肪族置換アミノ基の例には、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基及び2−カルボキシエチルアミノ基が含まれる。
脂肪族置換カルバモイル基の炭素原子数は、2〜10であることが好ましい。脂肪族置換カルバモイル基の例には、メチルカルバモイル基及びジエチルカルバモイル基が含まれる。
脂肪族置換スルファモイル基の炭素原子数は、1〜8であることが好ましい。脂肪族置換スルファモイル基の例には、メチルスルファモイル基及びジエチルスルファモイル基が含まれる。
脂肪族置換ウレイド基の炭素原子数は、2〜10であることが好ましい。脂肪族置換ウレイド基の例には、メチルウレイド基が含まれる。
非芳香族性複素環基の例には、ピペリジノ基及びモルホリノ基が含まれる。
位相差(リターデーション)発現剤の分子量は、300〜800であることが好ましい。
円盤状化合物として下記一般式(I)で表されるトリアジン化合物を用いることが好ましい。
上記一般式(I)中、R1は、各々独立に、オルト位、メタ位及びパラ位の少なくともいずれかに置換基を有する芳香族環又は複素環を表す。
Xは、各々独立に、単結合又はNR2−を表す。ここで、R2は、各々独立に、水素原子、置換若しくは無置換のアルキル基、アルケニル基、アリール基又は複素環基を表す。
R1が表す芳香族環は、フェニル又はナフチルであることが好ましく、フェニルであることが特に好ましい。R1が表す芳香族環はいずれかの置換位置に少なくとも一つの置換基を有してもよい。前記置換基の例には、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシ基、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、アルケニルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、スルファモイル基、アルキル置換スルファモイル基、アルケニル置換スルファモイル基、アリール置換スルファモイル基、スルオンアミド基、カルバモイル、アルキル置換カルバモイル基、アルケニル置換カルバモイル基、アリール置換カルバモイル基、アミド基、アルキルチオ基、アルケニルチオ基、アリールチオ基及びアシル基が含まれる。
R1が表す複素環基は、芳香族性を有することが好ましい。芳香族性を有する複素環は、一般に不飽和複素環であり、好ましくは最多の二重結合を有する複素環である。複素環は5員環、6員環又は7員環であることが好ましく、5員環又は6員環であることがさらに好ましく、6員環であることが最も好ましい。複素環のヘテロ原子は、窒素原子、硫黄原子又は酸素原子であることが好ましく、窒素原子であることが特に好ましい。芳香族性を有する複素環としては、ピリジン環(複素環基としては、2−ピリジル又は4−ピリジル)が特に好ましい。複素環基は、置換基を有していてもよい。複素環基の置換基の例は、上記アリール部分の置換基の例と同様である。
Xが単結合である場合の複素環基は、窒素原子に遊離原子価をもつ複素環基であることが好ましい。窒素原子に遊離原子価をもつ複素環基は、5員環、6員環又は7員環であることが好ましく、5員環又は6員環であることがさらに好ましく、5員環であることが最も好ましい。複素環基は、複数の窒素原子を有していてもよい。また、複素環基は、窒素原子以外のヘテロ原子(例えば、O、S)を有していてもよい。以下に、窒素原子に遊離原子価をもつ複素環基の例を示す。
R2が表すアルキル基は、環状アルキル基であっても鎖状アルキル基であってもよいが、鎖状アルキル基が好ましく、分岐を有する鎖状アルキル基よりも、直鎖状アルキル基がより好ましい。
アルキル基の炭素原子数は、1〜30であることが好ましく、1〜20であることがより好ましく、1〜10であることがさらに好ましく、1〜8がさらにまた好ましく、1〜6であることが最も好ましい。アルキル基は、置換基を有していてもよい。置換基の例には、ハロゲン原子、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基)及びアシルオキシ基(例えば、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基)が含まれる。
R2が表すアルケニル基は、環状アルケニル基であっても鎖状アルケニル基であってもよいが、鎖状アルケニル基を表すのが好ましく、分岐を有する鎖状アルケニル基よりも、直鎖状アルケニル基を表すのがより好ましい。アルケニル基の炭素原子数は、2〜30であることが好ましく、2〜20であることがより好ましく、2〜10であることがさらに好ましく、2〜8であることがさらにまた好ましく、2〜6であることが最も好ましい。アルケニル基は置換基を有していてもよい。置換基の例には、前述のアルキル基の置換基と同様である。
R2が表す芳香族環基及び複素環基は、R1が表す芳香族環及び複素環と同様であり、好ましい範囲も同様である。芳香族環基及び複素環基はさらに置換基を有していてもよく、置換基の例にはR1の芳香族環及び複素環の置換基と同様である。
以下に一般式(I)で表される化合物の具体例を挙げるが、こられに限定されない。
円盤状化合物としては下記一般式(II)で表されるトリフェニレン化合物を好ましく用いることもできる。
上記一般式(II)中、R1、R2、R3、R4、R5及びR6は各々独立して、水素原子又は置換基を表す。
R1、R2、R3、R4、R5及びR6が各々表す置換基としては、アルキル基(好ましくは炭素数1〜40、より好ましくは炭素数1〜30、特に好ましくは炭素数1〜20のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ヘキサデシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる)、アルケニル基(好ましくは、炭素数2〜40、より好ましくは炭素数2〜30、特に好ましくは炭素数2〜20のアルケニル基であり、例えば、ビニル基、アリル基、2−ブテニル基、3−ペンテニル基などが挙げられる)、アルキニル基(好ましくは、炭素数2〜40、より好ましくは炭素数2〜30、特に好ましくは炭素数2〜20のアルキニル基であり、例えば、プロパルギル基、3−ペンチニル基などが挙げられる)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12のアリール基であり、例えば、フェニル基、p−メチルフェニル基、ナフチル基などが挙げられる)、置換若しくは無置換のアミノ基(好ましくは炭素数0〜40、より好ましくは炭素数0〜30、特に好ましくは炭素数0〜20のアミノ基であり、例えば、無置換アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、アニリノ基などが挙げられる)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜40、より好ましくは炭素数1〜30、特に好ましくは炭素数1〜20のアルコキシ基であり、例えば、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基などが挙げられる)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜40、より好ましくは炭素数6〜30、特に好ましくは炭素数6〜20のアリールオキシ基であり、例えば、フェニルオキシ基、2−ナフチルオキシ基などが挙げられる)、アシル基(好ましくは炭素数1〜40、より好ましくは炭素数1〜30、特に好ましくは炭素数1〜20のアシル基であり、例えば、アセチル基、ベンゾイル基、ホルミル基、ピバロイル基などが挙げられる)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜40、より好ましくは炭素数2〜30、特に好ましくは炭素数2〜20のアルコキシカルボニル基であり、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などが挙げられる)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7〜40、より好ましくは炭素数7〜30、特に好ましくは炭素数7〜20のアリールオキシカルボニル基であり、例えば、フェニルオキシカルボニル基などが挙げられる)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜40、より好ましくは炭素数2〜30、特に好ましくは炭素数2〜20のアシルオキシ基であり、例えば、アセトキシ基、ベンゾイルオキシ基などが挙げられる)、アシルアミノ基(好ましくは炭素数2〜40、より好ましくは炭素数2〜30、特に好ましくは炭素数2〜20のアシルアミノ基であり、例えばアセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基などが挙げられる)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜40、より好ましくは炭素数2〜30、特に好ましくは炭素数2〜20のアルコキシカルボニルアミノ基であり、例えば、メトキシカルボニルアミノ基などが挙げられる)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7〜40、より好ましくは炭素数7〜30、特に好ましくは炭素数7〜20のアリールオキシカルボニルアミノ基であり、例えば、フェニルオキシカルボニルアミノ基などが挙げられる)、スルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜40、より好ましくは炭素数1〜30、特に好ましくは炭素数1〜20のスルホニルアミノ基であり、例えば、メタンスルホニルアミノ基、ベンゼンスルホニルアミノ基などが挙げられる)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜40、より好ましくは炭素数0〜30、特に好ましくは炭素数0〜20のスルファモイル基であり、例えば、スルファモイル基、メチルスルファモイル基、ジメチルスルファモイル基、フェニルスルファモイル基などが挙げられる)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜40、より好ましくは炭素数1〜30、特に好ましくは炭素数1〜20のカルバモイル基であり、例えば、無置換のカルバモイル基、メチルカルバモイル基、ジエチルカルバモイル基、フェニルカルバモイル基などが挙げられる)、アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜40、より好ましくは炭素数1〜30、特に好ましくは炭素数1〜20であり、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、ヘプチルチオ基、オクチルチオ基などが挙げられる)、アリールチオ基(好ましくは、炭素数6〜40、より好ましくは炭素数6〜30、特に好ましくは炭素数1〜20、例えば、フェニルチオ基などが挙げられる)、スルホニル基(好ましくは炭素数1〜40、より好ましくは炭素数1〜30、特に好ましくは炭素数1〜20のスルホニル基であり、例えば、メシル基、トシル基などが挙げられる)、スルフィニル基(好ましくは炭素数1〜40、より好ましくは炭素数1〜30、特に好ましくは炭素数1〜20のスルフィニル基であり、例えば、メタンスルフィニル基、ベンゼンスルフィニル基などが挙げられる)、ウレイド基(好ましくは炭素数1〜40、より好ましくは炭素数1〜30、特に好ましくは炭素数1〜20のウレイド基であり、例えば、無置換のウレイド基、メチルウレイド基、フェニルウレイド基などが挙げられる)、リン酸アミド基(好ましくは炭素数1〜40、より好ましくは炭素数1〜30、特に好ましくは炭素数1〜20のリン酸アミド基であり、例えば、ジエチルリン酸アミド基、フェニルリン酸アミド基などが挙げられる)、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、スルホ基、カルボキシ基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロ環基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは1〜12のヘテロ環基であり、例えば、窒素原子、酸素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を有するヘテロ環基であり、例えば、イミダゾリル基、ピリジル基、キノリル基、フリル基、ピペリジル基、モルホリノ基、ベンゾオキサゾリル基、ベンズイミダゾリル基、ベンズチアゾリル基、1,3,5−トリアジル基などが挙げられる)、シリル基(好ましくは、炭素数3〜40、より好ましくは炭素数3〜30、特に好ましくは、炭素数3〜24のシリル基であり、例えば、トリメチルシリル基、トリフェニルシリル基などが挙げられる)が含まれる。これらの置換基はさらにこれらの置換基によって置換されていてもよい。また、置換基を二つ以上有する場合は、同じでも異なってもよい。また、可能な場合には互いに結合して環を形成していてもよい。
R1、R2、R3、R4、R5及びR6が各々表す置換基としては、好ましくはアルキル基、アリール基、置換若しくは無置換のアミノ基、アルコキシ基、アルキルチオ基又はハロゲン原子である。
以下に一般式(II)で表される化合物の具体例を挙げるが、こられに限定されない。
一般式(I)で表される化合物は、例えば特開2003−344655号公報に記載の方法、一般式(II)で表される化合物は、例えば特開2005−134884号公報に記載の方法等、公知の方法により合成することができる。
本発明では直線的な分子構造を有する棒状化合物を好ましく用いることができる。直線的な分子構造とは、熱力学的に最も安定な構造において棒状化合物の分子構造が直線的であることを意味する。熱力学的に最も安定な構造は、結晶構造解析又は分子軌道計算によって求めることができる。例えば、分子軌道計算ソフト(例えば、WinMOPAC2000、富士通(株)製)を用いて分子軌道計算を行い、化合物の生成熱が最も小さくなるような分子の構造を求めることができる。分子構造が直線的であるとは、上記のように計算して求められる熱力学的に最も安定な構造において、分子構造で主鎖の構成する角度が140度以上であることを意味する。
少なくとも二つの芳香族環を有する棒状化合物としては、下記一般式(III)で表される化合物が好ましい。
一般式(III):Ar1−L1−Ar2
上記一般式(III)において、Ar1及びAr2は、それぞれ独立に、芳香族基である。本明細書において、芳香族基は、アリール基(芳香族性炭化水素基)、置換アリール基、芳香族性ヘテロ環基及び置換芳香族性ヘテロ環基を含む。
アリール基及び置換アリール基の方が、芳香族性ヘテロ環基及び置換芳香族性ヘテロ環基よりも好ましい。芳香族性ヘテロ環基のヘテロ環は、一般には不飽和である。芳香族性ヘテロ環は、5員環、6員環又は7員環であることが好ましく、5員環又は6員環であることがさらに好ましい。芳香族性ヘテロ環は一般に最多の二重結合を有する。ヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子又は硫黄原子が好ましく、窒素原子又は硫黄原子がさらに好ましい。
芳香族基の芳香族環としては、ベンゼン環、フラン環、チオフェン環、ピロール環、オキサゾール環、チアゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、ピリジン環、ピリミジン環及びピラジン環が好ましく、ベンゼン環が特に好ましい。
置換アリール基及び置換芳香族性ヘテロ環基の置換基の例には、ハロゲン原子(F、Cl、Br、I)、ヒドロキシ基、カルボキシ基、シアノ基、アミノ基、アルキルアミノ基(例えば、メチルアミノ基、エチルアミノ基、ブチルアミノ基、ジメチルアミノ基の各基)、ニトロ基、スルホ基、カルバモイル基、アルキルカルバモイル基(例えば、N−メチルカルバモイル基、N−エチルカルバモイル基、N,N−ジメチルカルバモイル基の各基)、スルファモイル基、アルキルスルファモイル基(例えば、N−メチルスルファモイル基、N−エチルスルファモイル基、N,N−ジメチルスルファモイル基の各基)、ウレイド基、アルキルウレイド基(例えば、N−メチルウレイド基、N,N−ジメチルウレイド基、N,N,N′−トリメチルウレイド基の各基)、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘプチル基、オクチル基、イソプロピル基、s−ブチル基、tert−アミル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基の各基)、アルケニル基(例えば、ビニル基、アリル基、ヘキセニル基の各基)、アルキニル基(例えば、エチニル基、ブチニル基)、アシル基(例えば、ホルミル基、アセチル基、ブチリル基、ヘキサノイル基、ラウリル基の各基)、アシルオキシ基(例えば、アセトキシ基、ブチリルオキシ基、ヘキサノイルオキシ基、ラウリルオキシ基の各基)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基の各基)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基)、アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、ペンチルオキシカルボニル基、ヘプチルオキシカルボニル基の各基)、アリールオキシカルボニル基(例えば、フェノキシカルボニル基)、アルコキシカルボニルアミノ基(例えば、ブトキシカルボニルアミノ基、ヘキシルオキシカルボニルアミノ基)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基、ペンチルチオ基、ヘプチルチオ基、オクチルチオ基の各基)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ基)、アルキルスルホニル基(例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、プロピルスルホニル基、ブチルスルホニル基、ペンチルスルホニル基、ヘプチルスルホニル基、オクチルスルホニル基の各基)、アミド基(例えば、アセトアミド基、ブチルアミド基、ヘキシルアミド基、ラウリルアミド基の各基)及び非芳香族性複素環基(例えば、モルホリル基、ピラジニル基)が含まれる。
なかでも、好ましい置換基としては、ハロゲン原子、シアノ基、カルボキシ基、ヒドロキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アシル基、アシルオキシ基、アミド基、アルコキシカルボニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基及びアルキル基が挙げられる。
アルキルアミノ基、アルコキシカルボニル基、アルコキシ基及びアルキルチオ基のアルキル部分とアルキル基とは、さらに置換基を有していてもよい。アルキル部分及びアルキル基の置換基の例には、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、カルボキシ基、シアノ基、アミノ基、アルキルアミノ基、ニトロ基、スルホ基、カルバモイル基、アルキルカルバモイル基、スルファモイル基、アルキルスルファモイル基、ウレイド基、アルキルウレイド基、アルケニル基、アルキニル基、アシル基、アシルオキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルスルホニル基、アミド基及び非芳香族性複素環基が含まれる。アルキル部分及びアルキル基の置換基としては、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アシル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニル基及びアルコキシ基が好ましい。
一般式(III)において、L1は、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、−O−、−CO−及びそれらの組み合わせからなる基から選ばれる二価の連結基である。
アルキレン基は、環状構造を有していてもよい。環状アルキレン基としては、シクロヘキシレンが好ましく、1,4−シクロヘキシレンが特に好ましい。鎖状アルキレン基としては、直鎖状アルキレン基の方が分岐を有するアルキレン基よりも好ましい。
アルキレン基の炭素原子数は、1〜20であることが好ましく、より好ましくは1〜15であり、さらに好ましくは1〜10であり、さらに好ましくは1〜8であり、最も好ましくは1〜6である。
アルケニレン基及びアルキニレン基は、環状構造よりも鎖状構造を有することが好ましく、分岐を有する鎖状構造よりも直鎖状構造を有することがさらに好ましい。
アルケニレン基及びアルキニレン基の炭素原子数は、好ましくは2〜10であり、より好ましくは2〜8であり、さらに好ましくは2〜6であり、さらに好ましくは2〜4であり、最も好ましくは2(ビニレン基又はエチニレン基)である。
アリーレン基は、炭素原子数は6〜20であることが好ましく、より好ましくは6〜16であり、さらに好ましくは6〜12である。
一般式(III)の分子構造において、L1を挟んで、Ar1とAr2とが形成する角度は、140度以上であることが好ましい。
棒状化合物としては、下記一般式(IV)で表される化合物がさらに好ましい。
一般式(IV):Ar1−L2−X−L3−Ar2
上記一般式(IV)において、Ar1及びAr2は、それぞれ独立に、芳香族基である。芳香族基の定義及び例は、一般式(III)のAr1及びAr2と同様である。
一般式(IV)において、L2及びL3は、それぞれ独立に、アルキレン基、−O−、−CO−及びそれらの組み合わせからなる基より選ばれる二価の連結基である。
アルキレン基は、環状構造よりも鎖状構造を有することが好ましく、分岐を有する鎖状構造よりも直鎖状構造を有することがさらに好ましい。
アルキレン基の炭素原子数は、1〜10であることが好ましく、より好ましくは1〜8であり、さらに好ましくは1〜6であり、さらに好ましくは1〜4であり、1又は2(メチレン基又はエチレン基)であることが最も好ましい。
L2及びL3は、−O−CO−又はCO−O−であることが特に好ましい。
一般式(IV)において、Xは、1,4−シクロヘキシレン基、ビニレン基又はエチニレン基である。
一般式(III)又は(IV)で表される化合物の具体例としては、特開2004−109657号公報の〔化1〕〜〔化11〕に記載の化合物が挙げられる。
溶液の紫外線吸収スペクトルにおいて最大吸収波長(λmax)が250nmより長波長である棒状化合物を、二種類以上併用してもよい。
棒状化合物は、文献記載の方法を参照して合成できる。文献としては、Mol.Cryst.Liq.Cryst.,53巻、229ページ(1979年)、同89巻、93ページ(1982年)、同145巻、111ページ(1987年)、同170巻、43ページ(1989年)、J.Am.Chem.Soc.,113巻、1349ページ(1991年)、同118巻、5346ページ(1996年)、同92巻、1582ページ(1970年)、J.Org.Chem.,40巻、420ページ(1975年)、Tetrahedron、48巻16号、3437ページ(1992年)を挙げることができる。
また、特開2004−50516号公報の11〜14頁に記載の棒状芳香族化合物を、前記位相差(リターデーション)発現剤として用いてもよい。
前記光学フィルムをソルベントキャスト法で作製する場合は、前記位相差(リターデーション)発現剤を、ドープ中に添加してもよい。添加はいずれのタイミングで行ってもよく、例えば、アルコール、メチレンクロライド、ジオキソラン等の有機溶媒に位相差(リターデーション)発現剤を溶解してから、セルロースエステル溶液(ドープ)に添加してもよいし、又は直接ドープ組成中に添加してもよい。
その他、前記各公報に記載されている以外の棒状化合物の好ましい化合物の具体例を以下に示す。
前記具体例(1)〜(34)、(41)、(42)は、シクロヘキサン環の1位と4位とに二つの不斉炭素原子を有する。ただし、具体例(1)、(4)〜(34)、(41)、(42)は、対称なメソ型の分子構造を有するため光学異性体(光学活性)はなく、幾何異性体(トランス型とシス型)のみ存在する。具体例(1)のトランス型(1−trans)とシス型(1−cis)とを、以下に示す。
前述したように、棒状化合物は直線的な分子構造を有することが好ましい。そのため、トランス型の方がシス型よりも好ましい。
具体例(2)及び(3)は、幾何異性体に加えて光学異性体(合計4種の異性体)を有する。幾何異性体については、同様にトランス型の方がシス型よりも好ましい。光学異性体については、特に優劣はなく、D、Lあるいはラセミ体のいずれでもよい。
具体例(43)〜(45)では、中心のビニレン結合にトランス型とシス型とがある。上記と同様の理由で、トランス型の方がシス型よりも好ましい。
〈その他の添加剤〉
(可塑剤)
本発明の光学フィルムは、本発明の効果を得る上で必要に応じて他の可塑剤を含有することができる。
可塑剤は特に限定されないが、好ましくは、多価カルボン酸エステル系可塑剤、グリコレート系可塑剤、フタル酸エステル系可塑剤、脂肪酸エステル系可塑剤及び多価アルコールエステル系可塑剤、エステル系可塑剤、アクリル系可塑剤等から選択される。
そのうち、可塑剤を二種以上用いる場合は、少なくとも一種は多価アルコールエステル系可塑剤であることが好ましい。
多価アルコールエステル系可塑剤は2価以上の脂肪族多価アルコールとモノカルボン酸のエステルよりなる可塑剤であり、分子内に芳香環又はシクロアルキル環を有することが好ましい。好ましくは2〜20価の脂肪族多価アルコールエステルである。
本発明に好ましく用いられる多価アルコールは次の一般式(a)で表される。
一般式(a) R11−(OH)n
但し、R11はn価の有機基、nは2以上の正の整数、OH基はアルコール性、及び/又はフェノール性ヒドロキシ基(水酸基)を表す。
好ましい多価アルコールの例としては、例えば以下のようなものを挙げることができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
アドニトール、アラビトール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ジブチレングリコール、1,2,4−ブタントリオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ヘキサントリオール、ガラクチトール、マンニトール、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオール、ピナコール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、キシリトール等を挙げることができる。
特に、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、キシリトールが好ましい。
多価アルコールエステルに用いられるモノカルボン酸としては、特に制限はなく、公知の脂肪族モノカルボン酸、脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸等を用いることができる。脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸を用いると透湿性、保留性を向上させる点で好ましい。
好ましいモノカルボン酸の例としては以下のようなものを挙げることができるが、本発明はこれに限定されるものではない。
脂肪族モノカルボン酸としては、炭素数1〜32の直鎖又は側鎖を有する脂肪酸を好ましく用いることができる。炭素数は1〜20であることが更に好ましく、1〜10であることが特に好ましい。酢酸を含有させるとセルロースエステル樹脂との相溶性が増すため好ましく、酢酸と他のモノカルボン酸を混合して用いることも好ましい。
好ましい脂肪族モノカルボン酸としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、2−エチル−ヘキサン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸等の飽和脂肪酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸等の不飽和脂肪酸等を挙げることができる。
好ましい脂環族モノカルボン酸の例としては、シクロペンタンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロオクタンカルボン酸、又はそれらの誘導体を挙げることができる。
好ましい芳香族モノカルボン酸の例としては、安息香酸、トルイル酸等の安息香酸のベンゼン環にアルキル基、メトキシ基あるいはエトキシ基などのアルコキシ基を1〜3個を導入したもの、ビフェニルカルボン酸、ナフタリンカルボン酸、テトラリンカルボン酸等のベンゼン環を2個以上有する芳香族モノカルボン酸、又はそれらの誘導体を挙げることができる。特に安息香酸が好ましい。
多価アルコールエステルの分子量は特に制限はないが、300〜1500であることが好ましく、350〜750であることが更に好ましい。分子量が大きい方が揮発し難くなるため好ましく、透湿性、セルロースエステル樹脂との相溶性の点では小さい方が好ましい。
多価アルコールエステルに用いられるカルボン酸は一種類でもよいし、二種以上の混合であってもよい。また、多価アルコール中のOH基は、全てエステル化してもよいし、一部をOH基のままで残してもよい。
以下に、多価アルコールエステルの具体的化合物を例示する。
グリコレート系可塑剤は特に限定されないが、アルキルフタリルアルキルグリコレート類が好ましく用いることができる。
アルキルフタリルアルキルグリコレート類としては、例えばメチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルプロピルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、オクチルフタリルオクチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、エチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルプロピルグリコレート、メチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルブチルグリコレート、ブチルフタリルメチルグリコレート、ブチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルブチルグリコレート、ブチルフタリルプロピルグリコレート、メチルフタリルオクチルグリコレート、エチルフタリルオクチルグリコレート、オクチルフタリルメチルグリコレート、オクチルフタリルエチルグリコレート等が挙げられる。
フタル酸エステル系可塑剤としては、ジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ジオクチルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート、ジシクロヘキシルテレフタレート等が挙げられる。
クエン酸エステル系可塑剤としては、クエン酸アセチルトリメチル、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸アセチルトリブチル等が挙げられる。
脂肪酸エステル系可塑剤として、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバシン酸ジブチル等が挙げられる。
多価カルボン酸エステル化合物としては、2価以上、好ましくは2価〜20価の多価カルボン酸とアルコールのエステルよりなる。また、脂肪族多価カルボン酸は2〜20価であることが好ましく、芳香族多価カルボン酸、脂環式多価カルボン酸の場合は3価〜20価であることが好ましい。
多価カルボン酸は次の一般式(b)で表される。
一般式(b) R12(COOH)m1(OH)n1
式中、R12は(m1+n1)価の有機基、m1は2以上の正の整数、n1は0以上の整数、COOH基はカルボキシ基、OH基はアルコール性又はフェノール性ヒドロキシ基(水酸基)を表す。
好ましい多価カルボン酸の例としては、例えば以下のようなものを挙げることができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸のような3価以上の芳香族多価カルボン酸又はその誘導体、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、シュウ酸、フマル酸、マレイン酸、テトラヒドロフタル酸のような脂肪族多価カルボン酸、酒石酸、タルトロン酸、リンゴ酸、クエン酸のようなオキシ多価カルボン酸などを好ましく用いることができる。特にオキシ多価カルボン酸を用いることが、保留性向上などの点で好ましい。
本発明に用いることのできる多価カルボン酸エステル化合物に用いられるアルコールとしては特に制限はなく公知のアルコール、フェノール類を用いることができる。
例えば炭素数1〜32の直鎖又は側鎖を持った脂肪族飽和アルコール又は脂肪族不飽和アルコールを好ましく用いることができる。炭素数1〜20であることが更に好ましく、炭素数1〜10であることが特に好ましい。
また、シクロペンタノール、シクロヘキサノールなどの脂環式アルコール又はその誘導体、ベンジルアルコール、シンナミルアルコールなどの芳香族アルコール又はその誘導体なども好ましく用いることができる。
多価カルボン酸としてオキシ多価カルボン酸を用いる場合は、オキシ多価カルボン酸のアルコール性又はフェノール性のヒドロキシ基(水酸基)を、モノカルボン酸を用いてエステル化しても良い。好ましいモノカルボン酸の例としては以下のようなものを挙げることができるが、本発明はこれに限定されるものではない。
脂肪族モノカルボン酸としては炭素数1〜32の直鎖又は側鎖を持った脂肪酸を好ましく用いることができる。炭素数1〜20であることが更に好ましく、炭素数1〜10であることが特に好ましい。
好ましい脂肪族モノカルボン酸としては酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、2−エチル−ヘキサンカルボン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸などの飽和脂肪酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸などの不飽和脂肪酸などを挙げることができる。
好ましい脂環族モノカルボン酸の例としては、シクロペンタンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロオクタンカルボン酸、又はそれらの誘導体を挙げることができる。
好ましい芳香族モノカルボン酸の例としては、安息香酸、トルイル酸などの安息香酸のベンゼン環にアルキル基を導入したもの、ビフェニルカルボン酸、ナフタリンカルボン酸、テトラリンカルボン酸などのベンゼン環を2個以上持つ芳香族モノカルボン酸、又はそれらの誘導体を挙げることができる。特に酢酸、プロピオン酸、安息香酸であることが好ましい。
多価カルボン酸エステル化合物の分子量は特に制限はないが、分子量300〜1000の範囲であることが好ましく、350〜750の範囲であることが更に好ましい。保留性向上の点では大きい方が好ましく、透湿性、セルロースエステル樹脂との相溶性の点では小さい方が好ましい。
本発明に用いることのできる多価カルボン酸エステルに用いられるアルコール類は一種類でも良いし、二種以上の混合であっても良い。
本発明に用いることのできる多価カルボン酸エステル化合物の酸価は1mgKOH/g以下であることが好ましく、0.2mgKOH/g以下であることが更に好ましい。酸価を上記範囲にすることによって、リターデーションの環境変動も抑制されるため好ましい。
なお、酸価とは、試料1g中に含まれる酸(試料中に存在するカルボキシ基)を中和するために必要な水酸化カリウムのミリグラム数をいう。酸価はJIS K0070に準拠して測定したものである。
(紫外線吸収剤)
本発明の光学フィルムは、紫外線吸収剤を含有することができる。紫外線吸収剤は400nm以下の紫外線を吸収することで、耐久性を向上させることを目的としており、特に波長370nmでの透過率が10%以下であることが好ましく、より好ましくは5%以下、更に好ましくは2%以下である。
本発明で好ましく用いられる紫外線吸収剤は、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤であり、特に好ましくはベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、である。
例えば、5−クロロ−2−(3,5−ジ−sec−ブチル−2−ヒドロキシルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、(2−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(直鎖及び側鎖ドデシル)−4−メチルフェノール、2−ヒドロキシ−4−ベンジルオキシベンゾフェノン、2,4−ベンジルオキシベンゾフェノン等があり、また、チヌビン109、チヌビン171、チヌビン234、チヌビン326、チヌビン327、チヌビン328等のチヌビン類があり、これらはいずれもBASFジャパン社製の市販品であり好ましく使用できる。
この他、1,3,5トリアジン環を有する化合物等の円盤状化合物も紫外線吸収剤として好ましく用いられる。
本発明に係わる偏光板保護フィルムは紫外線吸収剤を二種以上含有することが好ましい。
また、紫外線吸収剤としては高分子紫外線吸収剤も好ましく用いることができ、特に特開平6−148430号記載のポリマータイプの紫外線吸収剤が好ましく用いられる。
紫外線吸収剤の添加方法は、メタノール、エタノール、ブタノール等のアルコールやメチレンクロライド、酢酸メチル、アセトン、ジオキソラン等の有機溶媒あるいはこれらの混合溶媒に紫外線吸収剤を溶解してからドープに添加するか、又は直接ドープ組成中に添加してもよい。
無機粉体のように有機溶剤に溶解しないものは、有機溶剤とセルロースエステル樹脂中にディゾルバーやサンドミルを使用し、分散してからドープに添加する。
紫外線吸収剤の使用量は、紫外線吸収剤の種類、使用条件等により一様ではないが、光学フィルムの乾燥膜厚が30〜200μmの場合は、光学フィルムに対して0.5〜10質量%が好ましく、0.6〜4質量%が更に好ましい。
(酸化防止剤)
酸化防止剤は劣化防止剤ともいわれる。高湿高温の状態に液晶画像表示装置などがおかれた場合には、光学フィルムの劣化が起こる場合がある。
酸化防止剤は、例えば、光学フィルム中の残留溶媒量のハロゲンやリン酸系可塑剤のリン酸等により光学フィルムが分解するのを遅らせたり、防いだりする役割を有するので、前記光学フィルム中に含有させるのが好ましい。
このような酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系の化合物が好ましく用いられ、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,6−ヘキサンジオール−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、2,2−チオ−ジエチレンビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N′−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレイト等を挙げることができる。
特に、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕が好ましい。また、例えば、N,N′−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル〕ヒドラジン等のヒドラジン系の金属不活性剤やトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト等のリン系加工安定剤を併用してもよい。
これらの化合物の添加量は、セルロースエステル樹脂に対して質量割合で1ppm〜1.0%が好ましく、10〜1000ppmが更に好ましい。
(微粒子)
本発明の光学フィルムには、取扱性を向上させるため、例えば二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、リン酸カルシウム等の無機微粒子や架橋高分子などのマット剤を含有させることが好ましい。中でも二酸化ケイ素がフィルムのヘイズを小さくできるので好ましい。
微粒子の1次平均粒子径としては、20nm以下が好ましく、更に好ましくは、5〜16nmであり、特に好ましくは、5〜12nmである。
これらの微粒子は0.1〜5μmの粒径の2次粒子を形成して光学フィルムに含まれることが好ましく、好ましい平均粒径は0.1〜2μmであり、更に好ましくは0.2〜0.6μmである。これにより、フィルム表面に高さ0.1〜1.0μm程度の凹凸を形成し、これによってフィルム表面に適切な滑り性を与えることができる。
本発明に用いられる微粒子の1次平均粒子径の測定は、透過型電子顕微鏡(倍率50万〜200万倍)で粒子の観察を行い、粒子100個を観察し、粒子径を測定しその平均値をもって、1次平均粒子径とした。
(光学フィルムの製造方法)
次に、本発明の光学フィルムの製造方法について説明する。
本発明の光学フィルムは溶液流延法で製造されたフィルムであっても溶融流延法で製造されたフィルムであっても好ましく用いることができる。
本発明の光学フィルムの溶液流延法での製造は、セルロースエステル樹脂及び添加剤を溶剤に溶解させてドープを調製する工程、ドープを無限に移行する無端の金属支持体上に流延する工程、流延したドープをウェブとして乾燥する工程、金属支持体から剥離する工程、延伸又は幅保持する工程、更に乾燥する工程、仕上がったフィルムを巻取る工程により行われる。
ドープを調製する工程について述べる。ドープ中のセルロースエステル樹脂の濃度は、濃い方が金属支持体に流延した後の乾燥負荷が低減できて好ましいが、セルロースエステル樹脂の濃度が濃過ぎると濾過時の負荷が増えて、濾過精度が悪くなる。これらを両立する濃度としては、10〜35質量%が好ましく、更に好ましくは、15〜25質量%である。
ドープで用いられる溶剤は、単独で用いても二種以上を併用してもよいが、セルロースエステル樹脂の良溶剤と貧溶剤を混合して使用することが生産効率の点で好ましく、良溶剤が多い方がセルロースエステル樹脂の溶解性の点で好ましい。
良溶剤と貧溶剤の混合比率の好ましい範囲は、良溶剤が70〜98質量%であり、貧溶剤が2〜30質量%である。良溶剤、貧溶剤とは、使用するセルロースエステル樹脂を単独で溶解するものを良溶剤、単独で膨潤するか又は溶解しないものを貧溶剤と定義している。
そのため、セルロースエステル樹脂のアシル基置換度によって良溶剤、貧溶剤が変わる。
本発明に用いられる良溶剤は特に限定されないが、メチレンクロライド等の有機ハロゲン化合物やジオキソラン類、アセトン、酢酸メチル、アセト酢酸メチル等が挙げられる。特に好ましくはメチレンクロライド又は酢酸メチルが挙げられる。
また、本発明に用いられる貧溶剤は特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、n−ブタノール、シクロヘキサン、シクロヘキサノン等が好ましく用いられる。また、ドープ中には水が0.01〜2質量%含有していることが好ましい。
また、セルロースエステル樹脂の溶解に用いられる溶媒は、フィルム製膜工程で乾燥によりフィルムから除去された溶媒を回収し、これを再利用して用いられる。
回収溶剤中に、セルロースエステル樹脂に添加されている添加剤、例えば可塑剤、紫外線吸収剤、ポリマー、モノマー成分などが微量含有されていることもあるが、これらが含まれていても好ましく再利用することができるし、必要であれば精製して再利用することもできる。
上記記載のドープを調製する時の、セルロースエステル樹脂の溶解方法としては、一般的な方法を用いることができる。加熱と加圧を組み合わせると常圧における沸点以上に加熱できる。
溶剤の常圧での沸点以上でかつ加圧下で溶剤が沸騰しない範囲の温度で加熱しながら攪拌溶解すると、ゲルやママコと呼ばれる塊状未溶解物の発生を防止するため好ましい。
また、セルロースエステル樹脂を貧溶剤と混合して湿潤あるいは膨潤させた後、更に良溶剤を添加して溶解する方法も好ましく用いられる。
加圧は窒素ガス等の不活性気体を圧入する方法や、加熱によって溶剤の蒸気圧を上昇させる方法によって行ってもよい。加熱は外部から行うことが好ましく、例えばジャケットタイプのものは温度コントロールが容易で好ましい。
溶剤を添加しての加熱温度は、高い方がセルロースエステル樹脂の溶解性の観点から好ましいが、加熱温度が高過ぎると必要とされる圧力が大きくなり生産性が悪くなる。
好ましい加熱温度は45〜120℃であり、60〜110℃がより好ましく、70℃〜105℃が更に好ましい。また、圧力は設定温度で溶剤が沸騰しないように調整される。
若しくは冷却溶解法も好ましく用いられ、これによって酢酸メチルなどの溶媒にセルロースエステル樹脂を溶解させることができる。
次に、このセルロースエステル樹脂溶液を濾紙等の適当な濾過材を用いて濾過する。濾過材、濾過方法に関しては前述のとおりである。
ここで、ドープの流延について説明する。
流延(キャスト)工程における金属支持体は、表面を鏡面仕上げしたものが好ましく、金属支持体としては、ステンレススティールベルト若しくは鋳物で表面をメッキ仕上げしたドラムが好ましく用いられる。
キャストの幅は1〜4mとすることができる。流延工程の金属支持体の表面温度は−50℃〜溶剤の沸点未満の温度で、温度が高い方がウェブの乾燥速度が速くできるので好ましいが、余り高過ぎるとウェブが発泡したり、平面性が劣化する場合がある。
好ましい支持体温度は0〜55℃であり、25〜50℃が更に好ましい。あるいは、冷却することによってウェブをゲル化させて残留溶媒を多く含んだ状態でドラムから剥離することも好ましい方法である。
金属支持体の温度を制御する方法は特に制限されないが、温風又は冷風を吹きかける方法や、温水を金属支持体の裏側に接触させる方法がある。温水を用いる方が熱の伝達が効率的に行われるため、金属支持体の温度が一定になるまでの時間が短く好ましい。温風を用いる場合は目的の温度よりも高い温度の風を使う場合がある。
光学フィルムが良好な平面性を示すためには、金属支持体からウェブを剥離する際の残留溶媒量は10〜150質量%が好ましく、更に好ましくは40〜130質量%であり、特に好ましくは、50〜120質量%である。
本発明においては、残留溶媒量は下記式で定義される。
残留溶媒量(質量%)={(M−N)/N}×100
なお、Mはウェブ又はフィルムを製造中又は製造後の任意の時点で採取した試料の質量で、NはMを115℃で1時間の加熱後の質量である。
また、光学フィルムの乾燥工程においては、ウェブを金属支持体より剥離し、更に乾燥し、残留溶媒量を1質量%以下にすることが好ましく、更に好ましくは0.1質量%以下であり、特に好ましくは0〜0.01質量%以下である。
フィルム乾燥工程では一般にロール乾燥方式(上下に配置した多数のロールにウェブを交互に通し乾燥させる方式)やテンター方式でウェブを搬送させながら乾燥する方式が採られる。
本発明の光学フィルムを作製するためには、ウェブの両端をクリップ等で把持するテンター方式で幅方向(横方向)に延伸を行うことが特に好ましい。延伸処理の好ましい方法については前述のとおりである。
ウェブを乾燥させる手段は特に制限なく、一般的に熱風、赤外線、加熱ロール、マイクロ波等で行うことができるが、簡便さの点で熱風で行うことが好ましい。
ウェブの乾燥工程における乾燥温度は40〜200℃で段階的に高くしていくことが好ましい。
本発明の光学フィルムの膜厚は15〜50μmの範囲内であることが必要であり、該膜厚にすることによって、後方散乱を抑制でき本発明の効果を高めることができる。更に好ましくは20〜50μmである。膜厚が50μmを越える場合は後方散乱の増加と共に前方散乱も増加するため、50μm以下であることが本発明において必要である。膜厚が15μm未満の場合は、光学フィルムとしての強度が保てないことや透湿性が高くなり過ぎて偏光子の保護性が劣化することから、15μm以上であることが本発明の光学フィルムを偏光板に適用するに当たって必要な膜厚である。
本発明の光学フィルムは、幅1〜4mのものが用いられる。特に幅1.4〜4mのものが好ましく用いられ、特に好ましくは1.6〜3mである。4mを超えると搬送が困難となる。
〈光学フィルムの物性〉
本発明の光学フィルムの透湿度は、40℃、90%RHで300〜1800g/m2・24hが好ましく、更に400〜1500g/m2・24hが好ましく、40〜1300g/m2・24hが特に好ましい。透湿度はJIS Z 0208に記載の方法に従い測定することができる。
本発明の光学フィルムの破断伸度は10〜80%であることが好ましく20〜50%であることが更に好ましい。
本発明の光学フィルムの可視光透過率は90%以上であることが好ましく、93%以上であることが更に好ましい。
本発明の光学フィルムのヘイズは1%未満であることが好ましく0〜0.1%であることが特に好ましい。
<偏光板>
本発明の光学フィルムを偏光板用保護フィルムとして用いる場合、偏光板は一般的な方法で作製することができる。本発明の光学フィルムの裏面側に粘着層を設け、沃素溶液中に浸漬延伸して作製した偏光子の少なくとも一方の面に、貼り合わせることが好ましい。
もう一方の面には本発明の光学フィルムを用いても、別の偏光板保護フィルムを用いてもよい。例えば、市販の光学フィルム(例えば、コニカミノルタタック KC8UX、KC4UX、KC5UX、KC8UY、KC4UY、KC12UR、KC8UCR−3、KC8UCR−4、KC8UCR−5、KC8UE、KC4UE、KC4FR−3、KC4FR−4、KC4HR−1、KC8UY−HA、KC8UX−RHA、以上コニカミノルタオプト(株)製)等が好ましく用いられる。
偏光板の主たる構成要素である偏光子とは、一定方向の偏波面の光だけを通す素子であり、現在知られている代表的な偏光子は、ポリビニルアルコール系偏光フィルムで、これはポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を染色させたものと二色性染料を染色させたものがある。
偏光子は、ポリビニルアルコール水溶液を製膜し、これを一軸延伸させて染色するか、染色した後一軸延伸してから、好ましくはホウ素化合物で耐久性処理を行ったものが用いられている。
本発明の光学フィルムを偏光子貼り合わせる場合、その前に当該光学フィルムの表面に親水化処理を施すことが好ましい。親水化処理としては、鹸化処理、プラズマ処理、火炎処理、及び紫外線照射処理が挙げられる。また、鹸化処理には、酸鹸化処理及びアルカリ鹸化処理が含まれるが、本発明においては、アルカリ鹸化処理が好ましく用いられる。
アルカリ鹸化処理をする際に、本発明の光学フィルムは下記鹸化指数(M)が0.5以上、50以下で鹸化することが好ましい。
鹸化指数(M):鹸化用アルカリ溶液の濃度(mol/l)×鹸化温度(×10℃)×鹸化時間(×10秒)
鹸化指数Mとは鹸化効率の指標であり、数値が大きいほど効率が高くなる。アルカリ濃度、鹸化温度、鹸化時間の積で表現されるものである。従ってこの3要素を適宜条件出しを行いその最適値の組み合わせを決定すればよい。
例えば、アルカリ濃度1.5mol%、鹸化温度40℃、鹸化時間60秒の場合、鹸化指数は、1.5×4×6=36となる。
本発明の光学フィルムの鹸化指数を上述の範囲とすることで、偏光膜との接着性を十分に得ながら、偏光板貼合時の歪みや割れ等を抑制し、本発明の偏光板を液晶表示装置に用いた際の、正面コントラストが低下する問題を効果的に抑制することができる。
アルカリ鹸化処理は、光学フィルムを鹸化液の槽に直接浸漬する方法又は鹸化液を塗布する方法で実施することが好ましい。塗布方法としては、ディップコーティング法、カーテンコーティング法、エクストルージョンコーティング法、バーコーティング法及びE型塗布法を挙げることができる。アルカリ鹸化処理塗布液の溶媒は、鹸化液の透明支持体に対して濡れ性が良く、また鹸化液溶媒によって透明支持体表面に凹凸を形成させずに、面状を良好なまま保つ溶媒を選択することが好ましい。具体的には、アルコール系溶媒が好ましく、イソプロピルアルコールが特に好ましい。また、界面活性剤の水溶液を溶媒として使用することもできる。アルカリ鹸化塗布液のアルカリは、上記溶媒に溶解するアルカリが好ましく、KOH、NaOHがさらに好ましい。鹸化塗布液のpHは10以上が好ましく、12以上がさらに好ましい。
アルカリ鹸化時の反応条件は、鹸化温度は、室温から80℃の範囲で選択することができるが、30〜60℃であることが好ましい。
鹸化時間は、必要とする鹸化性能、生産性との関係で適宜選択されるが、10〜120秒、好ましくは10〜100秒である。
アルカリ鹸化反応後、鹸化液塗布面を水洗あるいは酸で洗浄したあと水洗することが好ましい。
上記粘着層に用いられる粘着剤としては、粘着層の少なくとも一部分において25℃での貯蔵弾性率が1.0×104〜1.0×109Paの範囲である粘着剤が用いられていることが好ましく、粘着剤を塗布し、貼り合わせた後に種々の化学反応により高分子量体又は架橋構造を形成する硬化型粘着剤が好適に用いられる。
具体例としては、例えば、ウレタン系粘着剤、エポキシ系粘着剤、水性高分子−イソシアネート系粘着剤、熱硬化型アクリル粘着剤等の硬化型粘着剤、湿気硬化ウレタン粘着剤、ポリエーテルメタクリレート型、エステル系メタクリレート型、酸化型ポリエーテルメタクリレート等の嫌気性粘着剤、シアノアクリレート系の瞬間粘着剤、アクリレートとペルオキシド系の2液型瞬間粘着剤等が挙げられる。
上記粘着剤としては一液型であっても良いし、使用前に二液以上を混合して使用する型であっても良い。
また、上記粘着剤は有機溶剤を媒体とする溶剤系であってもよいし、水を主成分とする媒体であるエマルジョン型、コロイド分散液型、水溶液型などの水系であってもよいし、無溶剤型であってもよい。上記粘着剤液の濃度は、粘着後の膜厚、塗布方法、塗布条件等により適宜決定されれば良く、通常は0.1〜50質量%である。
なお、本発明の光学フィルムは、例えば、片側の偏光子保護フィルム表面にプロテクトフィルムが貼合され、他方の側の粘着剤層表面にセパレートフィルムが貼合され、ロール状に巻かれた状態で製造されるロール状偏光板にも好適に用いられる。
<液晶表示装置>
本発明の光学フィルムを貼合した偏光板を液晶表示装置に組み込むことによって、正面コントラストが高く、コントラストばらつきのない視認性に優れた液晶表示装置を作製することができるが、特に大型の液晶表示装置やデジタルサイネージ等の屋外用途の液晶表示装置に好ましく用いられる。本発明の偏光板は、前記粘着層等を介して液晶セルに貼合する。
本発明の偏光板は反射型、透過型、半透過型LCD又はTN型、STN型、OCB型、HAN型、VA型(PVA型、MVA型)、IPS型(FFS方式も含む)等の各種駆動方式のLCDで好ましく用いられる。特にVA型の画面が30型以上、特に30型〜54型の大画面の表示装置では、画面周辺部での白抜け等もなく、その効果が長期間維持される。
なお、液晶表示装置のバックライト光源としては、平板蛍光ランプ、赤色(R)、緑色(G)、及び青色(B)の発光ダイオード(LED)を有する発光ダイオード(LED)バックライト、有機エレクトロルミネッセンス素子基板を用いた白色バックライト等を用いることができる。特に本発明の光学フィルムは、発光ダイオード(LED)バックライトに適している。
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1
<セルロースエステル樹脂CE−1の作製>
セルロース100質量部に、硫酸16質量部、無水酢酸260質量部、酢酸420質量部をそれぞれ添加し、攪拌しながら室温から60℃まで60分かけて昇温し、15分間その温度を保持しながら酢化反応を行った。次に、酢酸マグネシウム及び酢酸カルシウムの酢酸−水混合溶液を添加して硫酸を中和した後、反応系内に水蒸気を導入して、60℃で120分間維持して鹸化熟成処理を行った。その後、多量の水により洗浄を行い、更に乾燥し、セルロースエステル樹脂CE−1を得た。
なお、得られたセルロースエステル樹脂CE−1は、平均アセチル基置換度2.88のセルローストリアセテートであり、数平均分子量をMn、重量平均分子量をMwとするとき、Mn=80000、Mw/Mn=2.4であった。セルロース樹脂の溶解度パラメータ(SP値)はHoy法に従って求めたところ21.0であった。
<セルロースエステル樹脂CE−2の作製>
セルロースエステル樹脂CE−1の作製と同様にして、平均アセチル基置換度2.45のジアセチルセルロースを作製した。数平均分子量をMn、重量平均分子量をMwとするとき、Mn=62000、Mw/Mn=3.1であった。セルロース樹脂の溶解度パラメータ(SP値)はHoy法に従って求めたところ22.1であった。
セルロースエステル樹脂CE−2の酢酸量は300ppmであり、カルシウム及びマグネシウムの総量は100ppmであり、関係式(酢酸量)/(カルシウム及びマグネシウムの総量)は3であった。
<セルロースエステル樹脂CE−3の作製>
セルロースエステル樹脂CE−2の作製において、酢酸量、硫酸中和量、洗浄の回数を調整して、平均アセチル基置換度2.35、酢酸量300ppm、カルシウム及びマグネシウムの総量30ppmとして、関係式(酢酸量)/(カルシウム及びマグネシウムの総量)を10と調整した以外は同様にしてセルロースエステル樹脂CE−3を作製した。
上記酢酸量、カルシウム及びマグネシウムの総量の測定は前述の公知の方法によって行った。
<セルロースエステル樹脂CE−4の作製>
セルロースエステル樹脂CE−1の作製と同様にして、平均アセチル基置換度1.95のセルロースアセテートを作製した。数平均分子量をMn、重量平均分子量をMwとするとき、Mn=70000、Mw/Mn=3.0であった。セルロース樹脂の溶解度パラメータ(SP値)はHoy法に従って求めたところ23.0であった。
<セルロースエステル樹脂CE−5の作製>
セルロースエステル樹脂CE−1の作製と同様にして、平均アセチル基置換度2.65のセルロースアセテートを作製した。数平均分子量をMn、重量平均分子量をMwとするとき、Mn=65000、Mw/Mn=3.2であった。セルロース樹脂の溶解度パラメータ(SP値)はHoy法に従って求めたところ21.3であった。
<光学フィルム101〜122の作製>
(光学フィルム101の作製)
〈微粒子分散液〉
微粒子(アエロジル R812 日本アエロジル(株)製) 11質量部
エタノール 89質量部
以上をディゾルバーで50分間攪拌混合した後、マントンゴーリンで分散を行った。
〈微粒子添加液〉
メチレンクロライドを入れた溶解タンクにセルロースエステル樹脂CE−1を添加し、加熱して完全に溶解させた後、これを安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244を使用して濾過した。濾過後のセルロースエステル溶液を充分に攪拌しながら、ここに微粒子分散液をゆっくりと添加した。更に、二次粒子の粒径が所定の大きさとなるようにアトライターにて分散を行った。これを日本精線(株)製のファインメットNFで濾過し、微粒子添加液を調製した。
メチレンクロライド 99質量部
セルロースエステル樹脂CE−1 4質量部
微粒子分散液 11質量部
セルロースエステル樹脂CE−1を用い、下記組成の主ドープを調製した。
まず、加圧溶解タンクにメチレンクロライドとエタノールを添加した。溶剤の入った加圧溶解タンクにセルロースエステル樹脂CE−1を攪拌しながら投入した。これを50℃に加熱し、攪拌しながら完全に溶解し、さらに、表2記載の可塑剤1を添加し、さらに90分間攪拌し完全に溶解させた。
このドープを安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244を使用して濾過し、更に日本精線(株)製のファインメットNM(絶対濾過精度100μm)、ファインポアNF(絶対濾過精度50μm、15μm、5μmの順に順次濾過精度を上げて使用)を使用して濾過圧力9.8kPaで濾過し、主ドープを調製した。
主ドープ100質量部に微粒子添加液を2質量部加えて、インラインミキサー(東レ静止型管内混合機 Hi−Mixer、SWJ)で十分に混合し、次いでベルト流延装置を用い、幅2mのステンレスバンド支持体に均一に流延した。ステンレスバンド支持体上で、残留溶媒量が110%になるまで溶媒を蒸発させ、ステンレスバンド支持体から剥離した。次いで、テンターでウェブ両端部を把持し、幅手(TD)方向の延伸倍率が1.10倍となるように160℃で延伸した。延伸開始時の残留溶媒は30%であった。延伸後、その幅を維持したまま数秒間保持した後幅保持を解放し、更に125℃に設定された第3乾燥ゾーンで30分間搬送させて乾燥を行い、幅1.5m、かつ端部に幅1cm、高さ8μmのナーリングを有する膜厚80μmの比較例の光学フィルム101を作製した。
〈主ドープの組成〉
メチレンクロライド 300質量部
エタノール 30質量部
セルロースエステル樹脂CE−1 100質量部
可塑剤(TPP:トリフェニルフォスフエート) 10質量部
(光学フィルム102の作製)
主ドープの組成を下記のように変更し、膜厚を60μmに調整した以外は光学フィルム101と同様にして、光学フィルム102を作製した。
〈主ドープの組成〉
メチレンクロライド 300質量部
エタノール 30質量部
セルロースエステル樹脂CE−1 100質量部
可塑剤(TPP:トリフェニルフォスフエート) 5質量部
可塑剤(EPEG:エチルフタリルエチルグリコレート) 5質量部
位相差発現剤(トリアジン系化合物:例示化合物I−(3)) 2質量部
(光学フィルム103、104の作製)
用いるセルロースエステル樹脂をCE−1からCE−2に変更した以外は、光学フィルム101、102と同様にして光学フィルム103、104を作製した。
(光学フィルム105の作製)
主ドープの組成を下記のように変更し、膜厚を50μmに調整した以外は光学フィルム101と同様にして、光学フィルム105を作製した。
〈主ドープの組成〉
メチレンクロライド 300質量部
エタノール 30質量部
セルロースエステル樹脂CE−2 100質量部
可塑剤(糖エステル化合物FA−7) 10質量部
(光学フィルム106の作製)
主ドープの組成を下記のように変更した以外は光学フィルム105と同様にして、光学フィルム106を作製した。
〈主ドープの組成〉
メチレンクロライド 300質量部
エタノール 30質量部
セルロースエステル樹脂CE−2 100質量部
可塑剤(糖エステル化合物FA−7) 5質量部
可塑剤(芳香族末端エステル化合物FB−19) 5質量部
剥離促進剤(クエン酸の部分エチルエステル化合物) 0.2質量部
(光学フィルム107の作製)
主ドープの組成を下記のように変更した以外は光学フィルム106と同様にして、光学フィルム107を作製した。
〈主ドープの組成〉
メチレンクロライド 300質量部
エタノール 30質量部
セルロースエステル樹脂CE−2 100質量部
可塑剤(糖エステル化合物FA−7) 5質量部
可塑剤(芳香族末端エステル化合物FB−19) 5質量部
位相差発現剤(トリアジン系化合物:例示化合物I−(3)) 2質量部
剥離促進剤(クエン酸の部分エチルエステル化合物) 0.2質量部
(光学フィルム108〜122の作製)
表2に示されるセルロースエステル樹脂、可塑剤2、可塑剤3、位相差発現剤、剥離促進剤、MD延伸、膜厚を調整した以外は、光学フィルム107と同様にして光学フィルム108〜122を作製した。
なお、MD延伸はMD方向に1.03倍延伸し、延伸後に2%緩和を加えた。
(溶解度パラメータ(SP値)の算出)
表中のセルロースエステル樹脂、可塑剤の溶解度パラメータ(SP値)はHoy法に従って求めた。また、表2に記載のΔSP値は、光学フィルムを形成する可塑剤のSP値とセルロースエステル樹脂のSP値との差の絶対値のうち最大のものを示した。
《評価項目、評価方法》
得られた光学フィルムを用い、以下の評価を行った。
(リターデーションの測定)
リターデーション値Ro、Rthは以下の式によって求めた。
Ro=(nx−ny)×d
Rth=((nx+ny)/2−nz)×d
ここにおいて、dはフィルムの厚さ(nm)、屈折率nx(遅相軸方向の屈折率)、ny(フィルム面内で遅相軸に直角な方向の屈折率)、nz(厚さ方向におけるフィルムの屈折率)である。
リターデーション値(Ro)、(Rth)は自動複屈折率計KOBRA−21ADH(王子計測機器(株))を用いて、23℃、55%RHの環境下で、波長590nmで求めた。
(ヘイズ(前方散乱)測定)
作製した光学フィルムを、23℃55%RHの環境にて5時間以上調湿した後、フィルムのヘイズ値をヘイズメーター(濁度計)(型式:NDH 2000、日本電色工業(株)製)を用いて測定した。光源は5V9Wハロゲン球、受光部はシリコンフォトセル(比視感度フィルター付き)であり、測定はJIS K−7136に準じて測定した。
(後方散乱光強度比S(bs)/S(t)の測定)
図1のように、光学フィルム試料をセットし、光学フィルム1の法線方向でバックライト2の入射光とは正逆方向である後方散乱光の出射角を0°とした時に、光ディテクタ3により、590nmにおける出射角25°〜85°方向の散乱光を測定しS(bs)とし、入射光総量S(T)で除した値を後方散乱の散乱光強度比S(bs)/S(t)の値とした。
具体的な条件は、S(bs):フィルム表面への入射光角を0度にした場合の、測定波長590nmにおける出射角25°〜85°方向の後方散乱光量をフィルム表面から距離300mmで1°刻みで光ディテクタ3を用いて測定した時の光量積算値であり、S(T):光源からフィルム表面への距離600mmで光ディテクタ3を用いて測定した時の入射光総量である。
光源2は、朝日分校株式会社製キセノン光源MAX−302を白色光で用いた。
光ディテクタ3は、光電子増倍管(フォトマル 浜松フォトニクス R636−10)を用いた。光学フィルム1への入射光のスポット径は10mmに設定して測定を行った。
(異方性散乱光強度比測定)
作製した光学フィルムを、23℃55%RHの環境にて5時間以上調湿した後、異方性散乱光強度比をゴニオフォトメータGP−1−3D(オプテック社製:光源は12V50Wハロゲンランプ、受光部は光電子増倍管R636−10(浜松フォトニクス製))を用いて測定した。
図2A及び図2Bにおいて、光源ランプの法線方向から50°方向の位置に、前記光学フィルムをその遅相軸と前記ゴニオフォトメータの受光部の走査方向が一致するように試料台へ設置した時の散乱光強度(It)、更に該光学フィルムの設置を該光学フィルムの進相軸とゴニオフォトメータの受光部の走査方向が一致するように試料台へ設置した場合の散乱光強度(Is)を測定し、その比(It/Is)の値を求めた。
詳しくは、サンプルは下記方法により作製し、フィルムの遅相軸と受光部走査方向が一致するようセットした。フィルムへの光の入射角度は90°とし、受光部を水平に90°から180°まで走査して散乱光プロファイルを求めた。なお、測定時の光量はθ=180°での光量にて補正し(フォトマル感度−185V)、この光量での測定値を散乱光強度(It)とした。
次いで、同様に光学フィルムの設置を該光学フィルムの進相軸とゴニオフォトメータの受光部の走査方向が一致するように試料台へ設置した場合の散乱光強度(Is)とした。
〈サンプルの作製〉
まず、フィルム以外の測定器具のブランクヘイズ1を測定する。1.きれいにしたスライドガラスの上にグリセリンを一滴(0.05ml)垂らす。このとき液滴に気泡が入らないように注意する。ガラスは必ず洗剤で洗浄したものを使用する(図3参照)。2.その上にカバーガラスを乗せる。
次いで以下の手順で、試料を含めたヘイズ2を測定する。3.スライドガラス上にグリセリン0.05mlを滴下する(図3参照)。4.その上に測定する試料フィルムを気泡が入らないように乗せる(図4参照)。5.試料フィルム上にグリセリン0.05mlを滴下する(図5参照)。6.その上にカバーガラスを載せる(図6参照)。7.上記のように作製した積層体(上から、カバーガラス/グリセリン/試料フィルム/グリセリン/スライドガラス)をフィルムの遅相軸が受光部走査方向に一致するようゴニオフォトメータにセットする。
上記測定にて使用したガラス、グリセリンを以下のとおりである。
ガラス :MICRO SLIDE GLASS S9213 MATSUNAMI
グリセリン:関東化学製 鹿特級(純度>99.0%);屈折率1.47
<偏光板の作製>
得られた光学フィルム101〜122を用い、下記方法により偏光板201〜222を作製した。
厚さ、120μmのポリビニルアルコールフィルムを、一軸延伸(温度110℃、延伸倍率5倍)した。これをヨウ素0.075g、ヨウ化カリウム5g、水100gからなる水溶液に60秒間浸漬し、次いでヨウ化カリウム6g、ホウ酸7.5g、水100gからなる68℃の水溶液に浸漬した。これを水洗、乾燥し偏光子を得た。
次いで、下記工程1〜5に従って偏光子と前記光学フィルム101〜122と、裏面側にはコニカミノルタオプト(株)製コニカミノルタタックKC4UYを偏光板保護フィルムとして貼り合わせて偏光板を作製した。
工程1:光学フィルム101〜122を50℃の2モル/lの水酸化カリウム溶液に30秒間浸漬し、次いで水洗し乾燥して表面を鹸化した光学フィルムを得た。
工程2:前記偏光子を固形分2質量%のポリビニルアルコール接着剤槽中に1〜2秒浸漬した。
工程3:工程2で偏光子に付着した過剰の接着剤を軽く拭き除き、これを工程1で処理した光学フィルムの上にのせ、更に裏面側保護フィルムをのせて配置した。このとき、本発明の光学フィルムの遅相軸と偏光子吸収軸が直交するよう注意深く配置した。
工程4:工程3で積層した光学フィルム101〜122と偏光子と裏面側保護フィルムを圧力20〜30N/cm2、搬送スピードは約2m/分で貼合した。
工程5:80℃の乾燥機中に工程4で作製した偏光子と光学フィルム101〜122と裏面側保護フィルムとを貼り合わせた試料を2分間乾燥し、偏光板201〜222を作製した。
<液晶表示装置の作製>
視野角測定を行う液晶パネルを以下のようにして作製し、液晶表示装置としての特性を評価した。
VAモード型液晶表示装置(SONY製BRAVIAV1、40インチ型)のあらかじめ貼合されていた両面の偏光板を剥がして、上記作製した偏光板を光学フィルム101〜122側が、液晶セルのガラス面になるように両面に貼合した。
その際、あらかじめ貼合されていた偏光板と同一の方向に吸収軸が向くように行い、液晶表示装置301〜322を各々作製した。
《液晶表示装置の評価》
(正面コントラストの評価)
23℃55%RHの環境で、各々の液晶表示装置のバックライトを1週間連続点灯した後、測定を行った。測定にはELDIM社製EZ−Contrast160Dを用いて、液晶表示装置で白表示と黒表示の表示画面の法線方向の輝度を測定し、その比を正面コントラストとした。
◎:正面コントラストが5000以上
○:正面コントラストが4500以上5000未満
△:正面コントラストが4000以上4500未満
×:正面コントラストが4000未満
(正面コントラストムラ)
液晶表示装置の任意の点Aを通る直線l上で且つ、点Aより2.5cm離れた2点を点B、点Cとし、また点Aを通り、直線lに垂直な直線上で且つ、点Aより2.5cm離れた2点を点D、点Eとする。
点A〜点Eにおいて正面コントラストをそれぞれ測定し、その測定値の標準偏差を算出し、正面コントラストのムラの指標とした。
前記方法で算出した標準偏差が、0以上10以下の時を◎、11以上20以下の時を○、21以上の時を×と定義した。
光学フィルム101〜122の構成、及び上記評価の結果を表2、表3に示した。
表2の結果から本発明の光学フィルムは、VAモード型液晶表示装置用として望ましいレターデーションを有し、かつ後方散乱光強度比、異方性散乱強度比、ヘイズに優れることから、表3に示したように本発明の光学フィルムを用いた偏光板を貼合した液晶表示装置は、正面コントラスト、正面コントラストムラに優れていることが分かった。
実施例2
実施例1の光学フィルム115を用いて、表4の条件で鹸化処理を施し、鹸化処理済み光学フィルム401〜404を作製した。
次いで実施例1と同様にして、光学フィルム401〜404を用いて偏光板501〜504を作製し、該偏光板を用いて液晶表示装置601〜604を作製した。
《偏光板の評価》
(偏光度ムラの評価)
上記偏光板501〜504を23℃55%RHの環境にて24時間以上調湿した後、各々100mm四方に裁断した。試料上の500μm×500μmの領域について、偏光顕微鏡 BX51−P(オリンパス社製)を用い、検光子の光軸と偏光板吸収軸との角度を0.01°ピッチで0°〜90°に変えて、カラーCCDカメラ(オリンパス社製E−330)を用いて撮影した。この画像を画像処理ソフトウエアImage−Pro Plus(Media Cybernetics社製)を用いて、当該試料を5μmピッチにエリア分割し、当該試料の平均面内位相差と同一の面内位相差を持つ水晶波長板について、波長板遅相軸と偏光子の吸収軸の角度を0.01°ピッチで0°〜90°に変えて撮影した輝度値と比較することで、各エリアの配向角度を求め、試料の配向角度分布及び配向角度の標準偏差を算出した。これを偏光度ムラの評価とした。
〔配向角度の評価基準〕
A:配向角度の標準偏差が0.05以上0.15未満
B:配向角度の標準偏差が0.15以上0.30未満
C:配向角度の標準偏差が0.30以上0.45未満
D:配向角度の標準偏差が0.45以上
《液晶表示装置の評価》
(正面コントラストの評価)
実施例1と同様に上記偏光板を液晶表示装置に貼合し、正面コントラストを評価した。
表4より、鹸化指数(M)が0.5〜50の範囲の鹸化処理にすることによって、偏光度ムラ、正面コントラストに優れることが分かった。