本発明の垂直配向型液晶表示装置は、垂直配向モードの液晶セルと、当該液晶セルの視認側に設けられた第1の偏光板、及び当該液晶セルのバックライト光源側に設けられた第2の偏光板を有する垂直配向型液晶表示装置であって、前記要件(1)〜(5)を満たすことを特徴とする。この特徴は、請求項1から請求項4までの請求項に係る発明に共通する技術的特徴である。
本発明の実施態様としては、本発明の効果発現の観点から、前記第2の偏光子保護フィルムに含有されているセルロースエステル樹脂が、炭素数が3若しくは4のアシル基又は炭素数が2のアシル基及び炭素数3若しくは4のアシル基で置換されており、当該アシル基の総置換度が1.0以上、2.0未満であり、かつ当該アシル基の総炭素数が4.4を超えていることが好ましい。また、前記第3の偏光子保護フィルムが、セルロースエステル樹脂又はアクリル樹脂を含有していることが、特に、表示ムラの低減の観点から、好ましい。
さらに、本発明においては、前記第2の偏光子保護フィルムが、(a)重量平均分子量が500〜10,000の範囲内にあるビニル系ポリマー、(b)ピラノース構造若しくはフラノース構造の少なくとも一種を1〜12個の範囲内で有し、かつ平均置換度が2.8〜6.0の範囲内にあるカルボン酸糖エステル又は(c)芳香族末端若しくはヒドロキシ基末端ポリエステル化合物を含有していることが、特に、相溶性の観点から、好ましい。
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。なお、本願において、「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
(垂直配向型液晶表示装置の概要)
本発明の垂直配向型液晶表示装置は、垂直配向モードの液晶セルと、当該液晶セルの視認側に設けられた第1の偏光板、及び当該液晶セルのバックライト光源側に設けられた第2の偏光板を有する垂直配向型液晶表示装置であって、下記要件(1)〜(5)を満たすことを特徴とする(図1参照)。
(1)前記第1の偏光板は、偏光子、当該偏光子の視認側に設けられた第1の偏光子保護フィルムと、前記液晶セル側に設けられた第2の偏光子保護フィルムとを有する。
(2)前記第2の偏光板は、偏光子、当該偏光子の前記液晶セル側に設けられた第3の偏光子保護フィルムと、バックライト側に設けられた第4の偏光子保護フィルムとを有する。
(3)前記液晶セルは、第1及び第2の基板と、当該第1及び第2の基板の間に配置される液晶層と、当該第2の基板の表面上に配置されるカラーフィルタ層とを有する。ただし、前記第1の基板は第1の偏光板の偏光子のより液晶セルに近い位置に配置され、前記第2の基板は第2の偏光板の偏光子のより液晶セルに近い位置に配置される。
(4)前記第2の偏光子保護フィルムは、炭素数が2〜4の範囲内にあるアシル基を有し、かつアシル基置換度が1.0〜2.0の範囲内にあるセルロースエステルを含有し、23℃・55%RHにおいて波長590nmで測定した、面内方向のリターデーション値Roが40〜80nmの範囲内にあり、かつ厚さ方向のリターデーション値Rtが180〜350nmの範囲内にある。
(5)前記第3の偏光子保護フィルムは、23℃・55%RHにおいて波長590nmで測定した、面内方向のリターデーション値Roが0〜10nmの範囲内にあり、かつ厚さ方向のリターデーション値Rtが0〜10nmの範囲内にある。
(偏光板)
本発明に係る偏光子保護フィルムは、位相差フィルムとしての機能をも有するが、当該偏光子保護フィルム用いる場合、偏光板は一般的な方法で作製することができる。本発明に係る偏光子保護フィルムの裏面側に粘着層を設け、沃素溶液中に浸漬延伸して作製した偏光子の少なくとも一方の面に、貼り合わせることが好ましい。
もう一方の面には、本発明に係る偏光子保護フィルムを用いても、別の偏光子保護フィルムを用いてもよい。例えば、市販のセルロースエステルフィルム(例えば、コニカミノルタタック KC8UX、KC4UX、KC5UX、KC8UY、KC4UY、KC12UR、KC8UCR−3、KC8UCR−4、KC8UCR−5、KC8UE、KC4UE、KC4FR−3、KC4FR−4、KC4HR−1、KC8UY−HA、KC8UX−RHA、以上コニカミノルタオプト(株)製)等が好ましく用いられる。
偏光板の主たる構成要素である偏光子とは、一定方向の偏波面の光だけを通す素子であり、現在知られている代表的な偏光子は、ポリビニルアルコール系偏光フィルムで、これはポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を染色させたものと二色性染料を染色させたものがある。
偏光子は、ポリビニルアルコール水溶液を製膜し、これを一軸延伸させて染色するか、染色した後一軸延伸してから、好ましくはホウ素化合物で耐久性処理を行ったものが用いられている。
上記粘着層に用いられる粘着剤としては、粘着層の少なくとも一部分において25℃での貯蔵弾性率が1.0×104〜1.0×109Paの範囲である粘着剤が用いられていることが好ましく、粘着剤を塗布し、貼り合わせた後に種々の化学反応により高分子量体又は架橋構造を形成する硬化型粘着剤が好適に用いられる。
具体例としては、例えば、ウレタン系粘着剤、エポキシ系粘着剤、水性高分子−イソシアネート系粘着剤、熱硬化型アクリル粘着剤等の硬化型粘着剤、湿気硬化ウレタン粘着剤、ポリエーテルメタクリレート型、エステル系メタクリレート型、酸化型ポリエーテルメタクリレート等の嫌気性粘着剤、シアノアクリレート系の瞬間粘着剤、アクリレートとペルオキシド系の二液型瞬間粘着剤等が挙げられる。
上記粘着剤としては一液型であっても良いし、使用前に二液以上を混合して使用する型であっても良い。
また、上記粘着剤は有機溶剤を媒体とする溶剤系であってもよいし、水を主成分とする媒体であるエマルジョン型、コロイド分散液型、水溶液型などの水系であってもよいし、無溶剤型であってもよい。上記粘着剤液の濃度は、粘着後の膜厚、塗布方法、塗布条件等により適宜決定されれば良く、通常は0.1〜50質量%である。
なお、本発明に係る偏光板は、ポリビニルアルコールを用いた偏光子を挟持する二枚の偏光子保護フィルムを有しており、当該偏光板の液晶セル側の偏光子保護フィルムの面内遅相軸が当該偏光子の吸収軸と直交していることが好ましい。
〈第2の偏光子保護フィルム〉
本発明においては、垂直配向型液晶セルの表示面側の偏光板の液晶セル側の偏光子保護フィルムは、炭素数が2〜4の範囲内にあるアシル基を有していることを特徴とする。
本発明においては、第2の偏光子保護フィルムについて、23℃・55%RHにおいて測定波長590nmで測定した、下記式(I)で定義される面内のリターデーション値Roは40〜80nmの範囲内にあり、下記式(II)で定義される厚さ方向のリターデーション値Rtは180〜350nmの範囲内にあることが好ましい。
式(I):Ro=(nx−ny)×d(nm)
式(II):Rt={(nx+ny)/2−nz}×d(nm)
〔上記式中、Roは、偏光子保護フィルム内の面内リターデーション値を表す。Rtは、同フィルム内の厚さ方向の位相差を表す。また、dは、偏光子保護フィルムの厚さを表す。nxは、偏光子保護フィルムの面内の最大(遅相軸方向)の屈折率を表す。nyは、偏光子保護フィルム面内で遅相軸に直角な方向(進相軸方向)の屈折率を表す。nzは、厚さ方向における偏光子保護フィルムの屈折率を表す。なお、測定条件は、上記と同じである。〕
本発明においては、上記面内のリターデーション値Roは60〜80nmの範囲内にあり、厚さ方向のリターデーション値Rtは200〜350nmの範囲内にあることが更に好ましい。
〈第3の偏光子保護フィルム〉
本発明においては、垂直配向型液晶セルのバックライト側の偏光板の液晶セル側の偏光子保護フィルムは、面内のリターデーション値Roは0〜10nmの範囲内にあり、厚さ方向のリターデーション値Rtは0〜10nmの範囲内にあることが好ましい。
第3の偏光子保護フィルムについても23℃・55%RHにおいて測定波長590nmで測定した。
本発明においては、上記面内のリターデーション値Roは0〜5nmの範囲内にあり、厚さ方向のリターデーション値Rtは0〜5nmの範囲内にあることが更に好ましい。
本発明に係る第3の偏光子保護フィルムは、セルロースエステル樹脂又はアクリル樹脂を含有していることが好ましい。
セルロースエステル樹脂、アクリル樹脂、及びビニル系ポリマー、カルボン酸糖エステル、ポリエステル化合物については、後述する。
〈カラーフィルタ〉
本発明の垂直配向型液晶表示装置は、カラーフィルタ・オン・アレイ(COA)方式を採用した垂直配向型液晶セルを用いるものである。
当該COA方式は、例えば、特開平10−206888号公報などに記載されているように、カラーフィルタが液晶セルの駆動側基板に直接形成されたカラーフィルタ一体型駆動基板と、対向電極(導電層)を備える対向基板とをスペーサを介在させて対向配置し、その間隙部に液晶材料を封入して構成されるものであり、カラーフィルタを反射電極の上に形成し、高精細時に貼り合わせマージンを広くして歩留まりや開口率を向上させることができる。
〈垂直配向型液晶セル〉
本発明の垂直配向型液晶表示装置は、垂直配向型液晶セルを有することを特徴とするが、本発明に係る液晶セルとしては、従来公知の種々の液晶セルを用いることができる。
ただし、本発明においては、誘電率異方性が負の液晶が二枚の透明基板で挟持されている構成の垂直配向型液晶セルを用いることを特徴とする。また、前記透明基板の一方は、薄膜トランジスタ(TFT)とカラーフィルタを有していることを特徴とする。この点については、特開2010−44362号公報に開示されている液晶表示装置の構成が参考となる。なお、透明基板としては、従来公知の透明なガラス又は樹脂を用いることができる。
このようなガラス基板間に負の誘電率異方性を有するネマチック液晶を封入することで液晶セルを形成する。負の誘電率異方性を有するネマチック液晶としては、特開2004−204133号、特開2004−250668号、特開2005−047980号等各公報等に記載されている従来公知のものを用いることができる。
本発明において、当該液晶セルは、一例として上下基板間に、誘電異方性が負で、Δn=0.0815、Δε=−4.5程度のネマチック液晶材料などを用いることができる。
液晶層の厚さdについては特に制限されないが、前記範囲の特性の液晶を用いる場合、例えば3.5μm程度に設定することができる。
なお、垂直配向型(VA型)液晶表示装置では、TNモードの液晶表示装置で一般的に使われているカイラル材の添加は、動的応答特性を劣化させるため用いることは少ないが、配向不良を低減するために添加されることもある。
また、マルチドメイン構造とする場合には、各ドメイン間の境界領域の液晶分子の配向を調整するのに有利である。
なお、「マルチドメイン構造」とは、液晶表示装置の一画素を複数の領域に分割した構造をいう。例えば、垂直配向型(VA型)液晶表示装置において、白表示時には液晶分子が傾斜しているので、傾斜方向とその逆方向では、斜めから観察した時の液晶分子の複屈折の大きさが異なり、輝度や色調に差が生じるが、マルチドメイン構造にすると、輝度や色調の視野角特性が改善されるので好ましい。
具体的には、画素のそれぞれを液晶分子の初期配向状態が互いに異なる2以上の領域で構成して平均化することで、視野角に依存した輝度や色調の偏りを低減することができる。また、それぞれの画素を、電圧印加状態において液晶分子の配向方向が連続的に変化する互いに異なる2以上の領域から構成しても同様の効果が得られる。
全方向で均等な視野角を得るにはこの分割数を多くすればよいが、4分割あるいは8分割以上とすることで、ほぼ均等な視野角が得られる。特に8分割時は偏光板吸収軸を任意の角度に設定できるので好ましい。
(セルロースエステル)
本発明に係るセルロースエステルフィルムは、炭素数が3〜4のアシル基、又は、炭素数が2のアシル基及び炭素数3〜4のアシル基で置換され、かつアシル基置換度が1.0以上2.0未満、炭素数3以上のアシル基の置換度が0.9以上2.0未満、総炭素数が4.4を超えた範囲内であるセルロースエステルを含有することを要するが、炭素数が2〜4の範囲内であるアシル基としては、アセチル基、プロピオニル基、及びブタノイル基を挙げることができる。
また、本発明において、アシル置換基の総炭素数とは、置換されている総ての種類のアシル置換基について、その、それぞれのアシル基の炭素数に置換度を乗じ、得られた数値の総計をいう。具体的には、例えば、アセチル基の置換度が0.1でプロピオニル基の置換度が1.5の場合、
アセチル基由来の炭素数:2×0.1=0.2
プロピオニル基由来の炭素数:3×1.5=4.5なので、総炭素数は4.7となる。
セルロースを構成するβ−1,4結合しているグルコース単位は、2位、3位及び6位に遊離のヒドロキシ基(水酸基)を有している。セルロースエステルは、これらのヒドロキシ基(水酸基)の一部又は全部をアシル基によりアシル化した重合体(ポリマー)である。アシル基総置換度は、グルコース単位一つ当たり、2位、3位及び6位に位置するセルロースのヒドロキシ基(水酸基)のすべてがアシル化している割合(100%のアシル化は置換度3)を意味する。
アシル基置換度は、1.1〜1.9が好ましく、1.2〜1.8がさらに好ましい。また、炭素数3以上のアシル基の置換度は、1.0〜1.9が好ましく、1.4〜1.8がさらに好ましい。
このような超低置換度のセルロースエステルは面品質の劣化や延伸によるヘイズ上昇などが起こりやすいと言われるが、これはアセチル基のみでの置換の場合であり、炭素数3以上のアシル基で置換されているセルロースエステルはこの限りではないことが分かった。低置換度の酢綿を使用すると、過剰な延伸をせずに、所望のリターデーション値を発現することができるため、フィルムにスジや横段(や白濁)などが生じにくく、表示装置にしたときに、コントラスト(CR)を向上させることができ、さらに画像のにじみが生じにくいことが分かった。
本発明においては、上記要件を満たす限りにおいて、セルロースエステルは、下記のアシル基を有することができ、脂肪族基でもアリール基でもよく特に限定されない。例えば、セルロースのアルキルカルボニルエステル、アルケニルカルボニルエステルあるいは芳香族カルボニルエステル、芳香族アルキルカルボニルエステルなどであり、それぞれさらに置換された基を有していてもよい。
好ましいアシル基の例としては、アセチル基、プロピオニル基、ブタノイル基、ヘプタノイル基、ヘキサノイル基、オクタノイル基、デカノイル基、ドデカノイル基、トリデカノイル基、テトラデカノイル基、ヘキサデカノイル基、オクタデカノイル基、イソブタノイル基、tert−ブタノイル基、シクロヘキサンカルボニル基、オレオイル基、ベンゾイル基、ナフチルカルボニル基、シンナモイル基などを挙げることができる。これらの中でも、アセチル基、プロピオニル基、ブタノイル基、ドデカノイル基、オクタデカノイル基、tert−ブタノイル基、オレオイル基、ベンゾイル基、ナフチルカルボニル基、シンナモイル基などがより好ましく、特に好ましくはアセチル基、プロピオニル基、ブタノイル基(アシル基が炭素原子数2〜4である場合)であり、より特に好ましくはアセチル基(セルロースエステルが、セルロースアセテートである場合)である。
セルロースのアシル化において、アシル化剤としては、酸無水物や酸クロライドを用いた場合、反応溶媒である有機溶媒としては、有機酸、例えば、酢酸、メチレンクロライド等が使用される。
触媒としては、アシル化剤が酸無水物である場合には、硫酸のようなプロトン性触媒が好ましく用いられ、アシル化剤が酸クロライド(例えば、CH3CH2COCl)である場合には、塩基性化合物が用いられる。
本発明に用いられるセルロースエステルの重量平均分子量(Mw)は、50000〜150000の範囲が、好ましく、更に100000〜150000のものが好ましく用いられる。このような分子量をもつセルロースエステルは、フィルムにしたときの透過率が高いことが分かった。
セルロースエステルの重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比Mw/Mnの値は、1.4〜3.0であることが好ましい。
セルロースエステルの数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定した。
測定条件は以下の通りである。
溶媒: メチレンクロライド
カラム: Shodex K806、K805、K803G(昭和電工(株)製を3本接続して使用した)
カラム温度:25℃
試料濃度: 0.1質量%
検出器: RI Model 504(GLサイエンス社製)
ポンプ: L6000(日立製作所(株)製)
流量: 1.0ml/min
校正曲線: 標準ポリスチレンSTK standard ポリスチレン(東ソー(株)製)Mw=1000000〜500の13サンプルによる校正曲線を使用した。13サンプルは、ほぼ等間隔に用いる。
最も一般的なセルロースの混合脂肪酸エステルの工業的合成方法は、セルロースをアセチル基及び他のアシル基に対応する脂肪酸(酢酸、プロピオン酸、吉草酸等)又はそれらの酸無水物を含有する混合有機酸成分でアシル化する方法である。
本発明に用いるセルロースエステルは、例えば、特開平10−45804号公報に記載されている方法により合成できる。
(アクリル樹脂)
本発明に用いられるアクリル樹脂としては、メチルメタクリレート単位50〜99質量%及びこれと共重合可能な他の単量体単位1〜50質量%からなるもの、又はラクトン環を含有するアクリル樹脂であることが好ましい。
〈メチルメタクリレート単位50〜99質量%及びこれと共重合可能な他の単量体単位1〜50質量%からなるアクリル樹脂〉
共重合可能な他の単量体としては、アルキル数の炭素数が2〜18のアルキルメタクリレート、アルキル数の炭素数が1〜18のアルキルアクリレート、アクリル酸、メタクリル酸等のα,β−不飽和酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和基含有二価カルボン酸、スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のα,β−不飽和ニトリル、無水マレイン酸、マレイミド、N−置換マレイミド、グルタル酸無水物等が挙げられ、これらは単独で、あるいは二種以上の単量体を併用して用いることができる。
これらの中でも、共重合体の耐熱分解性や流動性の観点から、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、s−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート等が好ましく、メチルアクリレートやn−ブチルアクリレートが特に好ましく用いられる。
本発明に係る光学フィルムに用いられるアクリル樹脂(A)は、特にセルロースエステル樹脂(B)と相溶した際の透明性の改善の観点で、重量平均分子量(Mw)が80000以上である。アクリル樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)は、80000〜1000000の範囲内であることが更に好ましく、100000〜600000の範囲内であることが特に好ましく、150000〜400000の範囲であることが最も好ましい。アクリル樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)の上限値は、製造上の観点から1000000以下とされることが好ましい形態である。
本発明に係るアクリル樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定することができる。測定条件は以下の通りである。
溶媒: メチレンクロライド
カラム: Shodex K806、K805、K803G(昭和電工(株)製を3本接続して使用した)
カラム温度:25℃
試料濃度: 0.1質量%
検出器: RI Model 504(GLサイエンス社製)
ポンプ: L6000(日立製作所(株)製)
流量: 1.0ml/min
校正曲線: 標準ポリスチレンSTK standard ポリスチレン(東ソー(株)製)Mw=2,800,000〜500迄の13サンプルによる校正曲線を使用した。13サンプルは、ほぼ等間隔に用いることが好ましい。
本発明におけるアクリル樹脂(A)の製造方法としては、懸濁重合、乳化重合、塊状重合、あるいは溶液重合等の公知の方法のいずれを用いても良い。ここで、重合開始剤としては、通常のパーオキサイド系及びアゾ系のものを用いることができ、また、レドックス系とすることもできる。
重合温度については、懸濁又は乳化重合では30〜100℃、塊状又は溶液重合では80〜160℃で実施しうる。得られた共重合体の還元粘度を制御するために、アルキルメルカプタン等を連鎖移動剤として用いて重合を実施することもできる。
本発明に係るアクリル樹脂としては、市販のものも使用することができる。例えば、デルペット60N、80N(旭化成ケミカルズ(株)製)、ダイヤナールBR52、BR80、BR83、BR85、BR88(三菱レイヨン(株)製)、KT75(電気化学工業(株)製)等が挙げられる。アクリル樹脂は二種以上を併用することもできる。
〈ラクトン環を有するアクリル樹脂〉
本発明において用いられるアクリル樹脂は、下記一般式(RA1)で表されるラクトン環を有するアクリル樹脂であることが好ましい。
一般式(RA1)で表されるアクリル樹脂は、ラクトン環含有重合体であって、R1、R2、及びR3は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜20の有機残基を表す。
R1で表される有機残基として、例えば、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、アリール基等が挙げられるが、水素原子であることが好ましい。
R2で表される有機残基として、例えば、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、アリール基、炭素数1〜8のヒドロキシアルキル基、−(CH2)mNR11R12、−(CH2)mN(R11R12R13)+・M−、又は(C2H4O)pR14等が挙げられる。
ここで、R11、R12及びR13は、同一でも異なっていてもよく、各々、炭素数1〜8のアルキル基である。R14は、炭素数1〜18のアルキル基であり、m=2〜5、p=1〜80である。M−は、Cl−、Br−、SO4 2−、PO4 3−、CH3COO−又はHCOO−である。R2は、水素原子、又は炭素数1〜18のアルキル基であることが好ましく、水素原子、メチル基、又はエチル基であることがより好ましい。
R3で表される有機残基として、例えば、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、アリール基、炭素数1〜8のヒドロキシアルキル基等が挙げられる。
R3は、水素原子、炭素数1〜18のアルキル基、又は炭素数1〜8のヒドロキシアルキル基であることが好ましく、水素原子、メチル基、又は2−ヒドロキシエチル基であることがより好ましい。
本発明に係るラクトン環含有重合体であるアクリル樹脂(A)を得るための製造方法は、公知の製造方法、例えば、特開2005−281589号、同2006−96960号、同2006−171464号、同2008−299096号に記載の方法を使用することができる。
例えば、ラクトン環含有重合体は、好ましくは、分子鎖中にヒドロキシ基(水酸基)とエステル基とを有する重合体(a)を得る重合工程、得られた重合体(a)を加熱処理することにより分子内環化して、ラクトン環構造を重合体(a)に導入するラクトン環化縮合工程を行うことによって得られる。
前記重合工程においては、下記一般式(1a)で表される単量体を含む単量体成分の重合反応を行うことにより、分子鎖中にヒドロキシ基(水酸基)とエステル基とを有する重合体(a)を得る。
(式中、R7及びR8は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜20の有機残基を表す。)
一般式(1a)で表される単量体としては、例えば、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸エチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸イソプロピル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸ノルマルブチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸ターシャリーブチルなどが挙げられる。
これらの中でも、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸エチルが好ましく、本発明の効果を十分に発揮させる点で、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチルが特に好ましい。一般式(1a)で表される単量体は、一種のみ用いても良いし、二種以上を併用しても良い。
重合工程において供する単量体成分中の一般式(1a)で表される単量体の含有割合は、好ましくは5〜90質量%、より好ましくは10〜70質量%、さらに好ましくは10〜60質量%、特に好ましくは10〜50質量%である。
ラクトン環含有重合体は、一般式(RA1)で表されるラクトン環構造以外の構造を有していてもよい。一般式(RA1)で表されるラクトン環構造以外の構造としては、(メタ)アクリル酸エステル、ヒドロキシ基(水酸基)含有単量体、不飽和カルボン酸、下記一般式(2a)で表される単量体から選ばれる少なくとも一種を重合して構築される重合体構造単位(繰り返し構造単位)が好ましい。
(式中、R4は水素原子又はメチル基を表し、Xは水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、−OAc基、−CN基、−CO−R5基、又はC−O−R6基を表し、Ac基はアセチル基を表し、R5及びR6は水素原子又は炭素数1〜20の有機残基を表す。)
ラクトン環含有重合体構造中の一般式(RA1)で表されるラクトン環構造以外の構造の含有割合は、(メタ)アクリル酸エステルを重合して構築される重合体構造単位(繰り返し構造単位)の場合、好ましくは10〜95質量%、より好ましくは10〜90質量%、さらに好ましくは40〜90質量%、特に好ましくは50〜90質量%である。
ヒドロキシ基(水酸基)含有単量体を重合して構築される重合体構造単位(繰り返し構造単位)の場合、好ましくは0〜30質量%、より好ましくは0〜20質量%、さらに好ましくは0〜15質量%、特に好ましくは0〜10質量%である。
不飽和カルボン酸を重合して構築される重合体構造単位(繰り返し構造単位)の場合、好ましくは0〜30質量%、より好ましくは0〜20質量%、さらに好ましくは0〜15質量%、特に好ましくは0〜10質量%である。
一般式(2a)で表される単量体を重合して構築される重合体構造単位(繰り返し構造単位)の場合、好ましくは0〜30質量%、より好ましくは0〜20質量%、さらに好ましくは0〜15質量%、特に好ましくは0〜10質量%である。
(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ベンジルなどのアクリル酸エステル;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジルなどのメタクリル酸エステル;などが挙げられ、これらは一種のみ用いても良いし、二種以上を併用しても良い。これらの中でも特に、本発明の効果を十分に発揮させる点から、メタクリル酸メチルが好ましい。
ヒドロキシ基(水酸基)含有単量体としては、例えば、α−ヒドロキシメチルスチレン、α−ヒドロキシエチルスチレン、2−(ヒドロキシエチル)アクリル酸メチルなどの2−(ヒドロキシアルキル)アクリル酸エステル;2−(ヒドロキシエチル)アクリル酸などの2−(ヒドロキシアルキル)アクリル酸;などが挙げられ、これらは一種のみ用いても良いし、二種以上を併用しても良い。
不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、α−置換アクリル酸、α−置換メタクリル酸などが挙げられ、これらは一種のみ用いても良いし、二種以上を併用しても良い。これらの中でも特に、本発明の効果を十分に発揮させる点で、アクリル酸、メタクリル酸が好ましい。
一般式(2a)で表される単量体としては、例えば、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、アクリロニトリル、アクリロイルモルホリン、メチルビニルケトン、エチレン、プロピレン、酢酸ビニル、N−ビニルピロリドンなどが挙げられ、これらは一種のみ用いても良いし、二種以上を併用しても良い。これらの中でも特に、本発明の効果を十分に発揮させる点で、スチレン、α−メチルスチレンが好ましい。
重合工程で得られた重合体(a)は、分子鎖中にヒドロキシ基(水酸基)とエステル基とを有する重合体(a)であり、重合体(a)の重量平均分子量は、好ましくは1000〜1000000、より好ましくは5000〜500000、特に好ましくは10000〜200000である。重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて測定することができる。
重合工程で得られた重合体(a)は、続くラクトン環化縮合工程において、加熱処理されることによりラクトン環構造が重合体(a)に導入され、ラクトン環含有重合体となる。
この重合体(a)へラクトン環構造を導入するための反応は、加熱により、重合体(a)の分子鎖中に存在するヒドロキシ基(水酸基)とエステル基が環化縮合してラクトン環構造を生じる反応であり、その環化縮合によってアルコールが副生する。
ラクトン環構造が重合体の分子鎖中(重合体の主骨格中)に形成されることにより、本発明の効果を十分に発揮させることができる。
重合体(a)を加熱処理する方法については、公知の方法、例えば、特開2005−281589号、同2006−96960号、同2006−171464号、同2008−299096号に記載の方法を使用することができる。
例えば、重合工程によって得られた、溶剤を含む重合反応混合物を、そのまま加熱処理してもよい。また、溶剤の存在下で、必要に応じて閉環触媒を用いて加熱処理してもよい。また、揮発成分を除去するための真空装置あるいは脱揮装置を持つ加熱炉や反応装置、脱揮装置のある押出機等を用いて加熱処理を行うこともできる。
ラクトン環含有重合体構造中の一般式(RA1)で表されるラクトン環構造の含有割合は、好ましくは5〜90質量%、より好ましくは10〜70質量%、さらに好ましくは10〜60質量%、特に好ましくは10〜50質量%である。
ラクトン環含有重合体は、重量平均分子量が、好ましくは1000〜1000000、より好ましくは5000〜500000、特に好ましくは10000〜200000である。
ラクトン環含有重合体は、ダイナミックTG(熱重量)測定における150〜300℃の間での質量減少率が1%以下であることが好ましく、より好ましくは0.5%以下、さらに好ましくは0.3%以下である。
ラクトン環含有重合体は、15質量%のクロロホルム溶液中での着色度(YI)が6以下となるものが好ましく、より好ましくは3以下、さらに好ましくは2以下、最も好ましくは1以下である。
ラクトン環含有重合体は、ガラス転移温度(Tg)が、好ましくは115℃以上、より好ましくは125℃以上、さらに好ましくは130℃以上、さらに好ましくは135℃以上、最も好ましくは140℃以上である。
ラクトン環含有重合体は、それに含まれる残存揮発分の総量が、好ましくは5000ppm以下、より好ましくは2000ppm以下である。残存揮発分の総量が5000ppmよりも多いと、成形時の変質等によって着色したり、発泡したり、シルバーストリークなどの成形不良の原因となる。
ラクトン環含有重合体は、射出成形により得られる成形品の、ASTM−D−1003に準じた方法で測定された全光線透過率が、好ましくは85%以上、より好ましくは88%以上、さらに好ましくは90%以上である。
(ビニル系ポリマー)
本発明においては、前記第2の偏光子保護フィルムが、(a)重量平均分子量が500〜10,000の範囲内にあるビニル系ポリマー、(b)ピラノース構造若しくはフラノース構造の少なくとも一種を1〜12個の範囲内で有し、かつ平均置換度が2.8〜6.0の範囲内にあるカルボン酸糖エステル又は(c)芳香族末端若しくはヒドロキシ基末端ポリエステル化合物を含有していることが好ましい。
本発明において用いられるビニル系ポリマーは、重量平均分子量が500〜10,000の範囲内にあることが、相溶性等の観点から、好ましい。
また、当該ビニル系ポリマーは、溶解度係数が17.5(MPa1/2)以上20.0(MPa1/2)未満であることが好ましい。
本発明において、ビニル系ポリマーは、溶解度係数が17.5(MPa1/2)以上20.0(MPa1/2)未満であるビニル系モノマーを単独で重合して得てもよく、溶解度係数が17.5(MPa1/2)以上20.0(MPa1/2)未満である複数種のビニル系モノマーを共重合して得てもよい。
本発明に係るビニル系モノマーの溶解度係数(以下「SP値」という)は、下記式より求めたものである。また、以下において「SP値」と記載した場合には、そのモノマーのSP値を意味することとし、SP値の数値については単に数値のみを示し、その単位「MPa1/2」については省略する。
このSP値は、von Kreevelenが提唱した原子団総和法によるものであり、具体的にはPolymer Handbook, Fourth Edition, John Wiley & Sons, Inc.,1999のVII/675頁〜VII/686頁記載の方法により算出する。
本発明に係るビニル系モノマーの具体例としては、特に制限はないが、例えば、アクリル酸メチル(SP値:18.2)、メタクリル酸メチル(SP値:18.3)等のアクリル系モノマー、スチレン(SP値:17.9)、α−メチルスチレン(SP値:18.2)等のスチレン系モノマー、酢酸ビニル(SP値:18.2)、プロピオン酸ビニル(SP値:17.9)等のビニルエステル系モノマー等が挙げられる。これらの中で、アクリル系モノマーが特に好ましい。
本発明において用いることができるアクリル系モノマーは、下記一般式(AM−I)で表される。
前記一般式(AM−I)において、R1、R2、R3及びR4はそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。R1、R2、R3又はR4が置換基を表すとき、R1、R2、R3又はR4で表される置換基としては、アクリル系モノマーのSP値が本発明の範囲内となる置換基であれば特に制限が無いが、例えば、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、トリフルオロメチル基等)、シクロアルキル基(例えば、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基等)、アリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基等)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、エチルチオ基等)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ基、ナフチルチオ基等)、アルケニル基(例えば、ビニル基、2−プロペニル基、3−ブテニル基、1−メチル−3−プロペニル基、3−ペンテニル基、1−メチル−3−ブテニル基、4−ヘキセニル基、シクロヘキセニル基等)、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、沃素原子等)、アルキニル基(例えば、プロパルギル基等)、複素環基(例えば、ピリジル基、チアゾリル基、オキサゾリル基、ピラゾリル基、イミダゾリル基、フリル基、チエニル基、ピロリル基等)、アルキルスルホニル基(例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基等)、アリールスルホニル基(例えば、フェニルスルホニル基、ナフチルスルホニル基等)、アルキルスルフィニル基(例えば、メチルスルフィニル基等)、アリールスルフィニル基(例えば、フェニルスルフィニル基等)、ホスホノ基、アシル基(例えば、アセチル基、ピバロイル基、ベンゾイル基等)、シアノ基、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等)、複素環オキシ基、シロキシ基、アシルオキシ基(例えば、アセチルオキシ基、ベンゾイルオキシ基等)、アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、フェノキシカルボニル等)、アリールオキシカルボニル基(例えば、フェノキシカルボニル基等)、複素環チオ基、ニトロ基等の各基が挙げられる。これらの置換基は同様の置換基によって更に置換されていてもよい。
前記一般式(AM−I)において、R1は水素原子又はメチル基であることが好ましく、水素原子であることが特に好ましい。
前記一般式(AM−I)において、R2は水素原子又はメチル基であることが好ましく、水素原子であることが特に好ましい。
前記一般式(AM−I)において、R3は水素原子又はメチル基であることが好ましい。
前記一般式(AM−I)において、R4は総炭素数1〜8の置換基であることが好ましく、総炭素数1〜6の置換基であることがより好ましく、メチル基又はエチル基であることが特に好ましい。
アクリル系モノマーの具体例としては、例えば、アクリル酸メチル(SP値:18.2)、メタクリル酸メチル(SP値:18.3)、アクリル酸エチル(SP値:17.9)、メタクリル酸エチル(SP値:18.0)、アクリル酸n−ブチル(SP値:17.5)、メタクリル酸n−ブチル(SP値:17.7)、メタクリル酸シクロヘキシル(SP値:18.5)、メタクリル酸2−エトキシエチル(SP値:18.5)、メタクリル酸2−(2−メトキシエトキシ)エチル(SP値:19.1)等が挙げられる。これらのアクリル系モノマーのうち、アクリル酸メチル又はメタクリル酸メチルが特に好ましい。
本発明において、ビニル系モノマーのSP値は17.5以上20.0未満であることが好ましい。この範囲であれば、セルロースエステルと混合した際に大きなリターデーション値が得られ、リターデーション値の湿度変動が小さくなり、また、セルロースエステルの鹸化液への溶出を抑えることができる。
ビニル系ポリマーの重量平均分子量(Mw)は、前述のように、相溶性等の観点から、好ましくは500〜10,000であり、より好ましくは1,000〜5,000である。
本発明におけるビニル系ポリマーの分子量分布(Mw/Mn)は、リターデーション値、光弾性係数の観点から、好ましくは1.1〜3.0であり、より好ましくは1.1〜2.5である。
なお、重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、下記の測定条件によるゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いた測定により算出した。
溶媒: テトラヒドロフラン
カラム: TSKgel SuperHM−M(東ソー(株)製)
カラム温度:40℃
試料濃度: 0.1質量%
装置: HLC−8220(東ソー(株)製)
流量: 0.6ml/min
校正曲線: 標準ポリスチレンSTK standard ポリスチレン(東ソー(株)製)Mw=1000000〜500迄の13サンプルによる校正曲線を使用する。13サンプルは、ほぼ等間隔に用いる。
本発明に係るビニル系ポリマーは、任意の適切な方法により、合成することが出来る。
本発明に係るビニル系ポリマーを得るための重合反応の形態としては、特に限定はなく、塊状重合、溶液重合、乳化重合、懸濁重合等の重合形態を用いることができる。
重合温度、重合時間は、使用する単量体の種類、使用比率等によって異なるが、好ましくは、重合温度が0〜150℃、重合時間が0.5〜20時間であり、より好ましくは、重合温度が80〜140℃、重合時間が1〜10時間である。
溶剤を用いた重合形態の場合、重合溶剤は特に限定されず、例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素系溶剤;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンケトンなどのケトン系溶剤;テトラヒドロフランなどのエーテル系溶剤;などが挙げられ、これらの一種のみを用いても良いし、二種以上を併用しても良い。
重合反応時には、必要に応じて、重合開始剤を添加してもよい。重合開始剤としては特に限定されないが、例えば、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートなどの有機過酸化物;2,2′−アゾビス(イソブチロニトリル)、1,1′−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、2,2′−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)などのアゾ化合物;などが挙げられ、これらは一種のみを用いても良いし、二種以上を併用しても良い。重合開始剤の使用量は、用いる単量体の組み合わせや反応条件などに応じて適宜設定すればよく、特に限定されない。
本発明に係るビニル系ポリマーを合成するには、重量平均分子量を10,000以下にでき、分子量分布を3.0以下にできる方法を用いることが好ましい。かかる重合方法としては、クメンハイドロパーオキサイドのような有機過酸化物重合開始剤を使用する方法、重合開始剤を通常の重合より多量に使用する方法、重合開始剤の他にメルカプト化合物や四塩化炭素等の連鎖移動剤を使用する方法、重合開始剤の他にベンゾキノンやジニトロベンゼンのような重合低資材を使用する方法、特開2000−128911号公報又は特開2000−344823号公報にあるような一つのチオール基と2級のヒドロキシ基(水酸基)とを有する化合物、あるいは、該化合物と有機金属化合物を併用した重合触媒を用いて塊状重合する方法等を挙げることができ、何れも本発明において好ましく用いられる。
<カルボン酸糖エステル>
本発明に係る偏光子保護フィルムには必要に応じてカルボン酸糖エステルを添加することが好ましい。ここで、「カルボン酸糖エステル」とは、糖類のヒドロキシ基(OH基:「水酸基」ともいう。)とカルボン酸のカルボキシ基から導かれるエステル結合を有する化合物をいう。
当該カルボン酸糖エステルは、例えば、ピラノース構造又はフラノース構造の少なくとも一種を1個以上12個以下有しその構造のヒドロキシ基の一部がエステル化されたエステル化合物を好ましく用いることができる。エステル化の割合は、70%以上であることが好ましい。
本発明においては、カルボン酸糖エステルとして、下記一般式(1)で表される化合物を好適に用いることができる。
本発明において、一般式(1)で表される化合物の置換度とは、一般式(1)に含まれる8つのヒドロキシ基(水酸基)のうち、水素以外の置換基で置換されている数を表し、すなわち、一般式(1)のR1〜R8のうち、水素以外の基を含む数を表す。したがって、R1〜R8がすべて水素以外の置換基により置換された場合に、置換度は最大値の8.0となり、R1〜R8がすべて水素原子である場合には、0.0となる。
本発明においては、一般式(1)で表される化合物の置換度は、リターデーション、透過率、揮発性、機械強度等の観点から、2.8〜6.0であることが好ましい。また、2.8〜5.2が更に好ましい。
一般式(1)で表される化合物の置換度としては、平均置換度を用いることが適当であり、下記の方法により高速液体クロマトグラフィーによって置換度分布を示すチャートの面積比から平均置換度を測定することができる。
超低置換度のセルロースエステルは、残存ヒドロキシ基(水酸基)が多いため、既存の置換度の高いセルロースエステルよりも耐水性が懸念点である。それを改善させるためには、可塑剤を加えればよいが、相溶性が合っていないと、揮発してしまう。この点を踏まえて、セルロースエステルと構造が似ており、置換度が低い、カルボン酸糖エステルを添加することで、本発明の効果を一層増加させることができる。
また、超低置換度のセルロースエステルは、水分の影響を受けやすいため、偏光板にしたときの耐久時の収縮が問題となる。そこで、カルボン酸糖エステルの置換度をより小さくし、ヒドロキシ基(水酸基)を多く残し、低置換度のセルロースエステルとカルボン酸糖エステルとの水素結合をちょうど良く軟化させることで、偏光板での収縮の影響を小さくできる。
一般式(1)において、R1〜R8は、置換又は無置換のアルキルカルボニル基、或いは、置換又は無置換のアリルカルボニル基、すなわちアシル基を表し、R1〜R8は、同じであっても、異なっていてもよい(以下、R1〜R8をアシル基ともいう)。
本発明に係るカルボン酸糖エステルの合成原料の糖の例としては、例えば、以下のようなものを挙げることができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース、キシロース、あるいはアラビノース、ラクトース、スクロース、ニストース、1F−フラクトシルニストース、スタキオース、マルチトール、ラクチトール、ラクチュロース、セロビオース、マルトース、セロトリオース、マルトトリオース、ラフィノースあるいはケストース挙げられる。
この他、ゲンチオビオース、ゲンチオトリオース、ゲンチオテトラオース、キシロトリオース、ガラクトシルスクロースなども挙げられる。
その中でも、特にスクロースが相溶性と揮発性の観点で好ましい。
本発明に係るカルボン酸糖エステルの合成時に用いられるモノカルボン酸としては、公知の脂肪族モノカルボン酸、脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸等を用いることが出来る。用いられるカルボン酸は一種類でもよいし二種以上の混合であってもよい。
好ましい脂肪族モノカルボン酸の例としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、2−エチル−ヘキサンカルボン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸等の飽和脂肪酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、オクテン酸等の不飽和脂肪酸等を挙げることができる。
好ましい脂環族モノカルボン酸の例としては、シクロペンタンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロオクタンカルボン酸、又はそれらの誘導体を挙げることができる。
好ましい芳香族モノカルボン酸の例としては、安息香酸、トルイル酸等の安息香酸のベンゼン環に1〜5個のアルキル基もしくはアルコキシ基を導入した芳香族モノカルボン酸、ケイ皮酸、ベンジル酸、ビフェニルカルボン酸、ナフタリンカルボン酸、テトラリンカルボン酸等のベンゼン環を2個以上有する芳香族モノカルボン酸、又はそれらの誘導体を挙げることができるが、特に安息香酸が好ましい。
本発明に係る一般式(1)で表される化合物の具体例の一部を以下に示すが、下表におけるRは、一般式(1)における、R1〜R8のいずれかを表していることとする。
本発明に係るカルボン酸糖エステルは、糖エステルに、アシル化剤(エステル化剤ともいう、例えば、アセチルクロライドの酸ハロゲン化物、無水酢酸等の無水物)を反応させることによって製造することが可能であり、エステル化率の分布は、アシル化剤の量、添加タイミング、エステル化反応時間の調節によって成されるが、エステル化率違いのカルボン酸糖エステルの混合、あるいは純粋に単離したエステル化率違いの化合物を混合することにより、目的のカルボン酸糖エステルを作製することができる。
(合成例:本発明に係る化合物の合成の例)
撹拌装置、還流冷却器、温度計及び窒素ガス導入管を備えた四頭コルベンに、ショ糖34.2g(0.1モル)、無水安息香酸135.6g(0.6モル)、ピリジン284.8g(3.6モル)を仕込み、撹拌下に窒素ガス導入管から窒素ガスをバブリングさせながら昇温し、70℃で5時間エステル化反応を行った。
次に、コルベン内を4×102Pa以下に減圧し、60℃で過剰のピリジンを留去した後に、コルベン内を1.3×10Pa以下に減圧し、120℃まで昇温させ、無水安息香酸、生成した安息香酸の大部分を留去した。そして、次にトルエン1L、0.5質量%の炭酸ナトリウム水溶液300gを添加し、50℃で30分間撹拌後、静置して、トルエン層を分取した。最後に、分取したトルエン層に水100gを添加し、常温で30分間水洗後、トルエン層を分取し、減圧下(4×102Pa以下)、60℃でトルエンを留去させ、化合物A−1、A−2、A−3、A−4及びA−5等の混合物であるカルボン酸糖エステル1を得た。
得られた混合物を高速液体クロマトグラフィー−質量分析(HPLC−MS)で解析したところ、A−1が1.2質量%、A−2が13.2質量%、A−3が14.2質量%、A−4が35.4質量%、A−5等が40.0質量%であった。平均置換度は5.2であった。
同様に、無水安息香酸158.2g(0.7モル)、146.9g(0.65モル)、124.3g(0.55モル)と当モルのピリジンとを反応させて、表1記載のような成分の糖エステルを得た。
次いで、得られた混合物の一部を、シリカゲルを用いたカラムクロマトグラフィーにより精製することで、それぞれ純度100%のA−1、A−2、A−3、A−4及びA−5等を得た。
なお、A−5等とは、置換度4以下のすべての成分、つまり、置換度4、3、2、1の化合物の混合物であることを意味する。また、平均置換度は、A−5等を置換度4として計算した。
本発明においては、ここで作製した方法により、所望の平均置換度に近いカルボン酸糖エステル及び単離したA−1〜A−5等を組み合わせ添加することにより、平均置換度を調整した。
<HPLC−MSの測定条件>
1)LC部
装置:日本分光(株)製カラムオーブン(JASCO CO−965)、ディテクター(JASCO UV−970−240nm)、ポンプ(JASCO PU−980)、デガッサ−(JASCO DG−980−50)
カラム:Inertsil ODS−3 粒子径5μm 4.6×250mm(ジーエルサイエンス(株)製)
カラム温度:40℃
流速:1ml/min
移動相:THF(1%酢酸):H2O(50:50)
注入量:3μl
2)MS部
装置:LCQ DECA(Thermo Quest(株)製)
イオン化法:エレクトロスプレーイオン化(ESI)法
Spray Voltage:5kV
Capillary温度:180℃
Vaporizer温度:450℃
(ポリエステル化合物)
本発明においては、前記第2の偏光子保護フィルムが、ポリエステル化合物(以下「ポリエステル」ともいう。)を含有していることが、相溶性と位相差発現性の観点から、好ましい。
本発明で用いられるポリエステルとしては、特に芳香族基末端ポリエステル又はヒドロキシ基末端ポリエステルであることが好ましい。
〈芳香族基末端ポリエステル化合物〉
本発明においては、垂直配向型液晶セルの表示面側の偏光板の液晶セル側の偏光子保護フィルムが、ポリエステルを含有していることが好ましい。
当該ポリエステルとしては、従来、光学フィルムに含有されている種々のポリエステル化合物を用いることができる。
本発明では、特に、下記一般式(E−I)で表される芳香族基末端ポリエステル化合物を使用することが好ましい。
一般式(E−I):B−(G−A)n−G−B
(式中、Bは、アリールカルボン酸残基を表す。Gは、炭素数2〜12のアルキレングリコール残基、炭素数6〜12のアリールグリコール残基又は炭素数が4〜12のオキシアルキレングリコール残基を表す。Aは、炭素数4〜12のアルキレンジカルボン酸残基又は炭素数6〜12のアリールジカルボン酸残基を表す。nは、1以上の整数を表す。)
一般式(E−I)中、Bで示されるアリールカルボン酸残基と、Gで示されるアルキレングリコール残基、オキシアルキレングリコール残基又はアリールグリコール残基と、Aで示されるアルキレンジカルボン酸残基又はアリールジカルボン酸残基とから構成されるものであり、通常のポリエステル化合物と同様の反応により得られる。
本発明で使用される芳香族基末端ポリエステル化合物のアリールカルボン酸成分としては、例えば、安息香酸、パラターシャリブチル安息香酸、オルソトルイル酸、メタトルイル酸、パラトルイル酸、ジメチル安息香酸、エチル安息香酸、ノルマルプロピル安息香酸、アミノ安息香酸、アセトキシ安息香酸等があり、これらはそれぞれ一種又は二種以上の混合物として使用することができる。
本発明に用いることのできる芳香族基末端ポリエステル化合物の炭素数2〜12のアルキレングリコール成分としては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−プロパンジオール、2−メチル1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール(3,3−ジメチロールペンタン)、2−n−ブチル−2−エチル−1,3プロパンジオール(3,3−ジメチロールヘプタン)、3−メチル−1,5−ペンタンジオール1,6−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル1,3−ペンタンジオール、2−エチル1,3−ヘキサンジオール、2−メチル1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−オクタデカンジオール等があり、これらのグリコールは、一種又は二種以上の混合物として使用される。
特に炭素数2〜12のアルキレングリコールがセルロースエステルとの相溶性に優れているため、特に好ましい。
また、上記芳香族基末端ポリエステル化合物の炭素数4〜12のオキシアルキレングリコール成分としては、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等があり、これらのグリコールは、一種又は二種以上の混合物として使用できる。
芳香族基末端ポリエステル化合物の炭素数4〜12のアルキレンジカルボン酸成分としては、例えば、コハク酸、マレイン酸、フマール酸、グルタール酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸等があり、これらは、それぞれ一種又は二種以上の混合物として使用される。
炭素数6〜12のアリーレンジカルボン酸成分としては、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、1,5ナフタレンジカルボン酸、1,4ナフタレンジカルボン酸等がある。
本発明で使用される芳香族基末端ポリエステル化合物は、nが1以上100以下であることが好ましく、数平均分子量が、好ましくは300〜1500、より好ましくは400〜1000の範囲が好適である。
また、その酸価は、0.5mgKOH/g以下、ヒドロキシ(水酸基)価は25mgKOH/g以下、より好ましくは酸価0.3mgKOH/g以下、ヒドロキシ(水酸基)価は15mgKOH/g以下のものである。
本発明に係る一般式(E−I)に示す芳香族基末端ポリエステル化合物は、セルロースエステルに対して、0.5〜30質量%含有させることが好ましい。
以下に、本発明に用いることのできる芳香族基末端ポリエステル化合物の具体的化合物を示すが、本発明はこれに限定されない。
本発明に係るセルロースエステルフィルムは、リターデーション値の変動を抑制して、表示品位を安定化する為に、本発明に係るカルボン酸糖エステルを、セルロースエステルフィルムの0.5〜30質量%含むことが好ましく、特には、5〜30質量%含むことが好ましい。
本発明に係る一般式(E−I)に示す芳香族基末端ポリエステル化合物とカルボン酸糖エステルの含有量は、質量比で99:1〜1:99の範囲で選択することができ、両化合物の全体量は、セルロースエステルに対して、1〜40質量%であることが好ましい。
<ヒドロキシ基末端ポリエステル化合物>
本発明においては、垂直配向型液晶セルの表示面側の偏光板の液晶セル側の偏光子保護フィルムが、ポリエステルを含有していることが好ましい。当該ポリエステル化合物としては、従来、光学フィルムに含有されている種々のポリエステル化合物を用いることができる。
本発明においては、ポリエステル化合物として、下記一般式(E−II)で表される様に化学構造式の末端部分にヒドロキシ基を有するポリエステル(「ヒドロキシ基末端ポリエステル化合物」、「ヒドロキシ基末端ポリエステル」ともいう。)も好ましい。
(式中、Bは、炭素数が2〜6の直鎖若しくは分岐のアルキレン、又はシクロアルキレン基を表す。Aは、炭素数が6〜14の芳香族環を表す。nは、1以上の自然数を表す。)
上式で表される化合物は、芳香環を有するジカルボン酸(「芳香族ジカルボン酸」ともいう。)と、炭素数が2〜6の直鎖若しくは分岐のアルキレン又はシクロアルキレンジオールから得られ、両末端がモノカルボン酸で封止されていないことが特徴である。
炭素数6〜16の芳香族ジカルボン酸としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,8−ナフタレンジカルボン酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,8−ナフタレンジカルボン酸、2,2′−ビフェニルジカルボン酸、4,4′−ビフェニルジカルボン酸、等が挙げられる。その中でも好ましくは、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4′−ビフェニルジカルボン酸である。
炭素数が2〜6の直鎖もしくは分岐のアルキレンもしくはシクロアルキレンジオールとしては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。その中でも、好ましくはエタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオールである。
中でも、Aが置換基を有していてもよいナフタレン環もしくはビフェニル環であることが本発明の効果を得る上で好ましい。ここで置換基とは、炭素数1以上6以下のアルキル基、アルケニル機、アルコキシル基である。
本発明に係るポリエステル化合物のヒドロキシ(水酸基)価(OH価)としては、100〜500mgKOH/gであることが好ましく、170〜400mgKOH/gであることがさらに好ましい。ヒドロキシ(水酸基)価が、この範囲より大きくても小さくても、低アセチル置換度のセルロースアセテートとの相溶性が低下する。
また、ヒドロキシ(水酸基)価の測定は、日本工業規格 JIS K1557−1:2007に記載の無水酢酸法等を適用できる。
本発明に係るポリエステル化合物の数平均分子量(Mn)は、下記式から計算することができる。
Mn=(分子中のヒドロキシ基(水酸基)の数)×56110/(ヒドロキシ(水酸基)価)
=2×56110/(ヒドロキシ(水酸基)価)
本発明に係るポリエステルは、常法により上記ジカルボン酸とジオールとのポリエステル化反応又はエステル交換反応による熱溶融縮合法か、あるいはこれら酸の酸クロライドとグリコール類との界面縮合法のいずれかの方法によっても容易に合成できる。
以下に、本発明に係るポリエステルを例示する。
一般式(E−II)で表される化合物はセルロースアセテートに対し、1質量%以上5質量%未満添加することが好ましい。
<添加剤>
本発明では、カルボン酸糖エステル以外に、可塑剤、リターデーション調整剤(リターデーション発現剤及びリターデーション低減剤)、紫外線吸収剤、酸化防止剤、マット剤などの添加剤を加えることもできる。
<リターデーション調整剤>
リターデーション調整剤としては、特に制限はなく、可塑剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、マット剤などの添加剤がリターデーション調整剤としても用いられる場合、これらの添加剤は本発明におけるリターデーション調整剤に含まれる。
(リターデーション発現剤)
本発明ではリターデーション値を発現するために、棒状又は円盤状化合物からなるものを挙げることができる。上記棒状又は円盤状化合物としては、少なくとも二つの芳香族環を有する化合物をリターデーション発現剤として好ましく用いることができる。
棒状化合物からなるリターデーション発現剤の添加量は、セルロースアシレートを含有するポリマー成分100質量部に対して0.1〜30質量部であることが好ましく、0.5〜20質量部であることがさらに好ましい。円盤状のリターデーション発現剤は、前記セルロースアシレートを含有するポリマー成分100質量部に対して、0.05〜20質量部の範囲で使用することが好ましく、1.0〜15質量部の範囲で使用することがより好ましく、3.0〜10質量部の範囲で使用することがさらに好ましい。
円盤状化合物はRtリターデーション発現性において棒状化合物よりも優れているため、特に大きなRtリターデーションを必要とする場合には好ましく使用される。二種類以上のリターデーション発現剤を併用してもよい。
リターデーション発現剤は、250〜400nmの波長領域に最大吸収を有することが好ましく、可視領域に実質的に吸収を有していないことが好ましい。
円盤状化合物について説明する。円盤状化合物としては少なくとも二つの芳香族環を有する化合物を用いることができる。
本明細書において、「芳香族環」は、芳香族炭化水素環に加えて、芳香族性ヘテロ環を含む。
芳香族炭化水素環は、6員環(すなわち、ベンゼン環)であることが特に好ましい。
芳香族性ヘテロ環は一般に、不飽和ヘテロ環である。芳香族性ヘテロ環は、5員環、6員環又は7員環であることが好ましく、5員環又は6員環であることがさらに好ましい。芳香族性ヘテロ環は一般に、最多の二重結合を有する。ヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子が好ましく、窒素原子が特に好ましい。芳香族性ヘテロ環の例には、フラン環、チオフェン環、ピロール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、イミダゾール環、ピラゾール環、フラザン環、トリアゾール環、ピラン環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環及び1,3,5−トリアジン環が含まれる。
芳香族環としては、ベンゼン環、縮合ベンゼン環、ビフェニール類が好ましい。特に1,3,5−トリアジン環が好ましく用いられる。具体的には例えば特開2001−166144号公報に開示の化合物が好ましく用いられる。
リターデーション発現剤が有する芳香族環の炭素数は、2〜20であることが好ましく、2〜12であることがより好ましく、2〜8であることがさらに好ましく、2〜6であることが最も好ましい。
二つの芳香族環の結合関係は、(a)縮合環を形成する場合、(b)単結合で直結する場合及び(c)連結基を介して結合する場合に分類できる(芳香族環のため、スピロ結合は形成できない)。結合関係は、(a)〜(c)のいずれでもよい。
(a)の縮合環(二つ以上の芳香族環の縮合環)の例には、インデン環、ナフタレン環、アズレン環、フルオレン環、フェナントレン環、アントラセン環、アセナフチレン環、ビフェニレン環、ナフタセン環、ピレン環、インドール環、イソインドール環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、インドリジン環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾトリアゾール環、プリン環、インダゾール環、クロメン環、キノリン環、イソキノリン環、キノリジン環、キナゾリン環、シンノリン環、キノキサリン環、フタラジン環、プテリジン環、カルバゾール環、アクリジン環、フェナントリジン環、キサンテン環、フェナジン環、フェノチアジン環、フェノキサチイン環、フェノキサジン環及びチアントレン環が含まれる。ナフタレン環、アズレン環、インドール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾトリアゾール環及びキノリン環が好ましい。
(b)の単結合は、二つの芳香族環の炭素原子間の結合であることが好ましい。二以上の単結合で二つの芳香族環を結合して、二つの芳香族環の間に脂肪族環又は非芳香族性複素環を形成してもよい。
(c)の連結基も、二つの芳香族環の炭素原子と結合することが好ましい。連結基は、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、−CO−、−O−、−NH−、−S−又はそれらの組み合わせであることが好ましい。組み合わせからなる連結基の例を以下に示す。なお、以下の連結基の例の左右の関係は、逆になってもよい。
c1:−CO−O−
c2:−CO−NH−
c3:−アルキレン−O−
c4:−NH−CO−NH−
c5:−NH−CO−O−
c6:−O−CO−O−
c7:−O−アルキレン−O−
c8:−CO−アルケニレン−
c9:−CO−アルケニレン−NH−
c10:−CO−アルケニレン−O−
c11:−アルキレン−CO−O−アルキレン−O−CO−アルキレン−
c12:−O−アルキレン−CO−O−アルキレン−O−CO−アルキレン−O−
c13:−O−CO−アルキレン−CO−O−
c14:−NH−CO−アルケニレン−
c15:−O−CO−アルケニレン−
芳香族環及び連結基は、置換基を有していてもよい。
置換基の例には、ハロゲン原子(F、Cl、Br、I)、ヒドロキシ基、カルボキシ基、シアノ基、アミノ基、ニトロ基、スルホ基、カルバモイル基、スルファモイル基、ウレイド基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、脂肪族アシル基、脂肪族アシルオキシ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アルコキシカルボニルアミノ基、アルキルチオ基、アルキルスルホニル基、脂肪族アミド基、脂肪族スルホンアミド基、脂肪族置換アミノ基、脂肪族置換カルバモイル基、脂肪族置換スルファモイル基、脂肪族置換ウレイド基及び非芳香族性複素環基が含まれる。
アルキル基の炭素原子数は、1〜8であることが好ましい。環状アルキル基よりも鎖状アルキル基の方が好ましく、直鎖状アルキル基が特に好ましい。アルキル基は、さらに置換基(例えば、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アルコキシ基、アルキル置換アミノ基)を有していてもよい。アルキル基の(置換アルキル基を含む)例には、メチル基、エチル基、n−ブチル基、n−ヘキシル基、2−ヒドロキシエチル基、4−カルボキシブチル基、2−メトキシエチル基及び2−ジエチルアミノエチル基の各基が含まれる。
アルケニル基の炭素原子数は、2〜8であることが好ましい。環状アルケニル基よりも鎖状アルケニル基の方が好ましく、直鎖状アルケニル基が特に好ましい。アルケニル基は、さらに置換基を有していてもよい。アルケニル基の例には、ビニル基、アリル基及び1−ヘキセニル基が含まれる。
アルキニル基の炭素原子数は、2〜8であることが好ましい。環状アルキニル基よりも鎖状アルキニル基の方が好ましく、直鎖状アルキニル基が特に好ましい。アルキニル基は、さらに置換基を有していてもよい。アルキニル基の例には、エチニル基、1−ブチニル基及び1−ヘキシニル基が含まれる。
脂肪族アシル基の炭素原子数は、1〜10であることが好ましい。脂肪族アシル基の例には、アセチル基、プロパノイル基及びブタノイル基が含まれる。
脂肪族アシルオキシ基の炭素原子数は、1〜10であることが好ましい。脂肪族アシルオキシ基の例には、アセトキシ基が含まれる。
アルコキシ基の炭素原子数は、1〜8であることが好ましい。アルコキシ基は、さらに置換基(例えば、アルコキシ基)を有していてもよい。アルコキシ基の(置換アルコキシ基を含む)例には、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基及びメトキシエトキシ基が含まれる。
アルコキシカルボニル基の炭素原子数は、2〜10であることが好ましい。アルコキシカルボニル基の例には、メトキシカルボニル基及びエトキシカルボニル基が含まれる。
アルコキシカルボニルアミノ基の炭素原子数は、2〜10であることが好ましい。アルコキシカルボニルアミノ基の例には、メトキシカルボニルアミノ基及びエトキシカルボニルアミノ基が含まれる。
アルキルチオ基の炭素原子数は、1〜12であることが好ましい。アルキルチオ基の例には、メチルチオ基、エチルチオ基及びオクチルチオ基が含まれる。
アルキルスルホニル基の炭素原子数は、1〜8であることが好ましい。アルキルスルホニル基の例には、メタンスルホニル基及びエタンスルホニル基が含まれる。
脂肪族アミド基の炭素原子数は、1〜10であることが好ましい。脂肪族アミド基の例には、アセトアミドが含まれる。
脂肪族スルホンアミド基の炭素原子数は、1〜8であることが好ましい。脂肪族スルホンアミド基の例には、メタンスルホンアミド基、ブタンスルホンアミド基及びn−オクタンスルホンアミド基が含まれる。
脂肪族置換アミノ基の炭素原子数は、1〜10であることが好ましい。脂肪族置換アミノ基の例には、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基及び2−カルボキシエチルアミノ基が含まれる。
脂肪族置換カルバモイル基の炭素原子数は、2〜10であることが好ましい。脂肪族置換カルバモイル基の例には、メチルカルバモイル基及びジエチルカルバモイル基が含まれる。
脂肪族置換スルファモイル基の炭素原子数は、1〜8であることが好ましい。脂肪族置換スルファモイル基の例には、メチルスルファモイル基及びジエチルスルファモイル基が含まれる。
脂肪族置換ウレイド基の炭素原子数は、2〜10であることが好ましい。脂肪族置換ウレイド基の例には、メチルウレイド基が含まれる。
非芳香族性複素環基の例には、ピペリジノ基及びモルホリノ基が含まれる。
リターデーション発現剤の分子量は、300〜800であることが好ましい。
円盤状化合物として下記一般式(I)で表されるトリアジン化合物を用いることが好ましい。
上記一般式(I)中:R1は、各々独立に、オルト位、メタ位及びパラ位の少なくともいずれかに置換基を有する芳香族環又は複素環を表す。
Xは、各々独立に、単結合又はNR2−を表す。ここで、R2は、各々独立に、水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、アルケニル基、アリール基又は複素環基を表す。
R1が表す芳香族環は、フェニル又はナフチルであることが好ましく、フェニルであることが特に好ましい。R1が表す芳香族環はいずれかの置換位置に少なくとも一つの置換基を有してもよい。前記置換基の例には、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシ基、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、アルケニルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、スルファモイル基、アルキル置換スルファモイル基、アルケニル置換スルファモイル基、アリール置換スルファモイル基、スルオンアミド基、カルバモイル、アルキル置換カルバモイル基、アルケニル置換カルバモイル基、アリール置換カルバモイル基、アミド基、アルキルチオ基、アルケニルチオ基、アリールチオ基及びアシル基が含まれる。
R1が表す複素環基は、芳香族性を有することが好ましい。芳香族性を有する複素環は、一般に不飽和複素環であり、好ましくは最多の二重結合を有する複素環である。複素環は5員環、6員環又は7員環であることが好ましく、5員環又は6員環であることがさらに好ましく、6員環であることが最も好ましい。複素環のヘテロ原子は、窒素原子、硫黄原子又は酸素原子であることが好ましく、窒素原子であることが特に好ましい。芳香族性を有する複素環としては、ピリジン環(複素環基としては、2−ピリジル又は4−ピリジル)が特に好ましい。複素環基は、置換基を有していてもよい。複素環基の置換基の例は、上記アリール部分の置換基の例と同様である。
Xが単結合である場合の複素環基は、窒素原子に遊離原子価をもつ複素環基であることが好ましい。窒素原子に遊離原子価をもつ複素環基は、5員環、6員環又は7員環であることが好ましく、5員環又は6員環であることがさらに好ましく、5員環であることが最も好ましい。複素環基は、複数の窒素原子を有していてもよい。また、複素環基は、窒素原子以外のヘテロ原子(例えば、O、S)を有していてもよい。以下に、窒素原子に遊離原子価をもつ複素環基の例を示す。ここで、−C4H9nは、n−C4H9を示す。
R2が表すアルキル基は、環状アルキル基であっても鎖状アルキル基であってもよいが、鎖状アルキル基が好ましく、分岐を有する鎖状アルキル基よりも、直鎖状アルキル基がより好ましい。アルキル基の炭素原子数は、1〜30であることが好ましく、1〜20であることがより好ましく、1〜10であることがさらに好ましく、1〜8がさらにまた好ましく、1〜6であることが最も好ましい。アルキル基は、置換基を有していてもよい。置換基の例には、ハロゲン原子、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基)及びアシルオキシ基(例えば、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基)が含まれる。
R2が表すアルケニル基は、環状アルケニル基であっても鎖状アルケニル基であってもよいが、鎖状アルケニル基を表すのが好ましく、分岐を有する鎖状アルケニル基よりも、直鎖状アルケニル基を表すのがより好ましい。アルケニル基の炭素原子数は、2〜30であることが好ましく、2〜20であることがより好ましく、2〜10であることがさらに好ましく、2〜8であることがさらにまた好ましく、2〜6であることが最も好ましい。アルケニル基は置換基を有していてもよい。置換基の例には、前述のアルキル基の置換基と同様である。
R2が表す芳香族環基及び複素環基は、R1が表す芳香族環及び複素環と同様であり、好ましい範囲も同様である。芳香族環基及び複素環基はさらに置換基を有していてもよく、置換基の例にはR1の芳香族環及び複素環の置換基と同様である。
以下に一般式(I)で表される化合物の具体例を挙げるが、こられに限定されない。
円盤状化合物としては下記一般式(II)で表されるトリフェニレン化合物を好ましく用いることもできる。
上記一般式(II)中、R1〜R6は各々独立して、水素原子又は置換基を表す。
R1〜R6が各々表す置換基としては、アルキル基(好ましくは炭素数1〜40、より好ましくは炭素数1〜30、特に好ましくは炭素数1〜20のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ヘキサデシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる)、アルケニル基(好ましくは、炭素数2〜40、より好ましくは炭素数2〜30、特に好ましくは炭素数2〜20のアルケニル基であり、例えば、ビニル基、アリル基、2−ブテニル基、3−ペンテニル基などが挙げられる)、アルキニル基(好ましくは、炭素数2〜40、より好ましくは炭素数2〜30、特に好ましくは炭素数2〜20のアルキニル基であり、例えば、プロパルギル基、3−ペンチニル基などが挙げられる)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12のアリール基であり、例えば、フェニル基、p−メチルフェニル基、ナフチル基などが挙げられる)、置換もしくは無置換のアミノ基(好ましくは炭素数0〜40、より好ましくは炭素数0〜30、特に好ましくは炭素数0〜20のアミノ基であり、例えば、無置換アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、アニリノ基などが挙げられる)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜40、より好ましくは炭素数1〜30、特に好ましくは炭素数1〜20のアルコキシ基であり、例えば、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基などが挙げられる)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜40、より好ましくは炭素数6〜30、特に好ましくは炭素数6〜20のアリールオキシ基であり、例えば、フェニルオキシ基、2−ナフチルオキシ基などが挙げられる)、アシル基(好ましくは炭素数1〜40、より好ましくは炭素数1〜30、特に好ましくは炭素数1〜20のアシル基であり、例えば、アセチル基、ベンゾイル基、ホルミル基、ピバロイル基などが挙げられる)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜40、より好ましくは炭素数2〜30、特に好ましくは炭素数2〜20のアルコキシカルボニル基であり、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などが挙げられる)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7〜40、より好ましくは炭素数7〜30、特に好ましくは炭素数7〜20のアリールオキシカルボニル基であり、例えば、フェニルオキシカルボニル基などが挙げられる)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜40、より好ましくは炭素数2〜30、特に好ましくは炭素数2〜20のアシルオキシ基であり、例えば、アセトキシ基、ベンゾイルオキシ基などが挙げられる)、アシルアミノ基(好ましくは炭素数2〜40、より好ましくは炭素数2〜30、特に好ましくは炭素数2〜20のアシルアミノ基であり、例えばアセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基などが挙げられる)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜40、より好ましくは炭素数2〜30、特に好ましくは炭素数2〜20のアルコキシカルボニルアミノ基であり、例えば、メトキシカルボニルアミノ基などが挙げられる)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7〜40、より好ましくは炭素数7〜30、特に好ましくは炭素数7〜20のアリールオキシカルボニルアミノ基であり、例えば、フェニルオキシカルボニルアミノ基などが挙げられる)、スルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜40、より好ましくは炭素数1〜30、特に好ましくは炭素数1〜20のスルホニルアミノ基であり、例えば、メタンスルホニルアミノ基、ベンゼンスルホニルアミノ基などが挙げられる)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜40、より好ましくは炭素数0〜30、特に好ましくは炭素数0〜20のスルファモイル基であり、例えば、スルファモイル基、メチルスルファモイル基、ジメチルスルファモイル基、フェニルスルファモイル基などが挙げられる)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜40、より好ましくは炭素数1〜30、特に好ましくは炭素数1〜20のカルバモイル基であり、例えば、無置換のカルバモイル基、メチルカルバモイル基、ジエチルカルバモイル基、フェニルカルバモイル基などが挙げられる)、アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜40、より好ましくは炭素数1〜30、特に好ましくは炭素数1〜20であり、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、ヘプチルチオ基、オクチルチオ基などが挙げられる)、アリールチオ基(好ましくは、炭素数6〜40、より好ましくは炭素数6〜30、特に好ましくは炭素数1〜20、例えば、フェニルチオ基などが挙げられる)、スルホニル基(好ましくは炭素数1〜40、より好ましくは炭素数1〜30、特に好ましくは炭素数1〜20のスルホニル基であり、例えば、メシル基、トシル基などが挙げられる)、スルフィニル基(好ましくは炭素数1〜40、より好ましくは炭素数1〜30、特に好ましくは炭素数1〜20のスルフィニル基であり、例えば、メタンスルフィニル基、ベンゼンスルフィニル基などが挙げられる)、ウレイド基(好ましくは炭素数1〜40、より好ましくは炭素数1〜30、特に好ましくは炭素数1〜20のウレイド基であり、例えば、無置換のウレイド基、メチルウレイド基、フェニルウレイド基などが挙げられる)、リン酸アミド基(好ましくは炭素数1〜40、より好ましくは炭素数1〜30、特に好ましくは炭素数1〜20のリン酸アミド基であり、例えば、ジエチルリン酸アミド基、フェニルリン酸アミド基などが挙げられる)、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、スルホ基、カルボキシ基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロ環基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは1〜12のヘテロ環基であり、例えば、窒素原子、酸素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を有するヘテロ環基であり、例えば、イミダゾリル基、ピリジル基、キノリル基、フリル基、ピペリジル基、モルホリノ基、ベンゾオキサゾリル基、ベンズイミダゾリル基、ベンズチアゾリル基、1,3,5−トリアジル基などが挙げられる)、シリル基(好ましくは、炭素数3〜40、より好ましくは炭素数3〜30、特に好ましくは、炭素数3〜24のシリル基であり、例えば、トリメチルシリル基、トリフェニルシリル基などが挙げられる)が含まれる。これらの置換基はさらにこれらの置換基によって置換されていてもよい。また、置換基を二つ以上有する場合は、同じでも異なってもよい。また、可能な場合には互いに結合して環を形成していてもよい。
R1〜R6が各々表す置換基としては、好ましくはアルキル基、アリール基、置換もしくは無置換のアミノ基、アルコキシ基、アルキルチオ基又はハロゲン原子である。
以下に一般式(II)で表される化合物の具体例を挙げるが、こられに限定されない。
一般式(I)で表される化合物は、例えば特開2003−344655号公報に記載の方法、一般式(II)で表される化合物は、例えば特開2005−134884号公報に記載の方法等、公知の方法により合成することができる。
本発明では前述の円盤状化合物の他に直線的な分子構造を有する棒状化合物も好ましく用いることができる。直線的な分子構造とは、熱力学的に最も安定な構造において棒状化合物の分子構造が直線的であることを意味する。熱力学的に最も安定な構造は、結晶構造解析又は分子軌道計算によって求めることができる。例えば、分子軌道計算ソフト(例えば、WinMOPAC2000、富士通(株)製)を用いて分子軌道計算を行い、化合物の生成熱が最も小さくなるような分子の構造を求めることができる。分子構造が直線的であるとは、上記のように計算して求められる熱力学的に最も安定な構造において、分子構造で主鎖の構成する角度が140度以上であることを意味する。
少なくとも二つの芳香族環を有する棒状化合物としては、下記一般式(11)で表される化合物が好ましい。
一般式(11):Ar1−L1−Ar2
上記一般式(11)において、Ar1及びAr2は、それぞれ独立に、芳香族基である。
本明細書において、芳香族基は、アリール基(芳香族性炭化水素基)、置換アリール基、芳香族性ヘテロ環基及び置換芳香族性ヘテロ環基を含む。
アリール基及び置換アリール基の方が、芳香族性ヘテロ環基及び置換芳香族性ヘテロ環基よりも好ましい。芳香族性ヘテロ環基のヘテロ環は、一般には不飽和である。芳香族性ヘテロ環は、5員環、6員環又は7員環であることが好ましく、5員環又は6員環であることがさらに好ましい。芳香族性ヘテロ環は一般に最多の二重結合を有する。ヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子又は硫黄原子が好ましく、窒素原子又は硫黄原子がさらに好ましい。
芳香族基の芳香族環としては、ベンゼン環、フラン環、チオフェン環、ピロール環、オキサゾール環、チアゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、ピリジン環、ピリミジン環及びピラジン環が好ましく、ベンゼン環が特に好ましい。
置換アリール基及び置換芳香族性ヘテロ環基の置換基の例には、ハロゲン原子(F、Cl、Br、I)、ヒドロキシ基、カルボキシ基、シアノ基、アミノ基、アルキルアミノ基(例えば、メチルアミノ基、エチルアミノ基、ブチルアミノ基、ジメチルアミノ基の各基)、ニトロ基、スルホ基、カルバモイル基、アルキルカルバモイル基(例えば、N−メチルカルバモイル基、N−エチルカルバモイル基、N,N−ジメチルカルバモイル基の各基)、スルファモイル基、アルキルスルファモイル基(例えば、N−メチルスルファモイル基、N−エチルスルファモイル基、N,N−ジメチルスルファモイル基の各基)、ウレイド基、アルキルウレイド基(例えば、N−メチルウレイド基、N,N−ジメチルウレイド基、N,N,N′−トリメチルウレイド基の各基)、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘプチル基、オクチル基、イソプロピル基、s−ブチル基、tert−アミル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基の各基)、アルケニル基(例えば、ビニル基、アリル基、ヘキセニル基の各基)、アルキニル基(例えば、エチニル基、ブチニル基)、アシル基(例えば、ホルミル基、アセチル基、ブチリル基、ヘキサノイル基、ラウリル基の各基)、アシルオキシ基(例えば、アセトキシ基、ブチリルオキシ基、ヘキサノイルオキシ基、ラウリルオキシ基の各基)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基の各基)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基)、アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、ペンチルオキシカルボニル基、ヘプチルオキシカルボニル基の各基)、アリールオキシカルボニル基(例えば、フェノキシカルボニル基)、アルコキシカルボニルアミノ基(例えば、ブトキシカルボニルアミノ基、ヘキシルオキシカルボニルアミノ基)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基、ペンチルチオ基、ヘプチルチオ基、オクチルチオ基の各基)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ基)、アルキルスルホニル基(例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、プロピルスルホニル基、ブチルスルホニル基、ペンチルスルホニル基、ヘプチルスルホニル基、オクチルスルホニル基の各基)、アミド基(例えば、アセトアミド基、ブチルアミド基、ヘキシルアミド基、ラウリルアミド基の各基)及び非芳香族性複素環基(例えば、モルホリル基、ピラジニル基)が含まれる。
なかでも、好ましい置換基としては、ハロゲン原子、シアノ基、カルボキシ基、ヒドロキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アシル基、アシルオキシ基、アミド基、アルコキシカルボニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基及びアルキル基が挙げられる。
アルキルアミノ基、アルコキシカルボニル基、アルコキシ基及びアルキルチオ基のアルキル部分とアルキル基とは、さらに置換基を有していてもよい。アルキル部分及びアルキル基の置換基の例には、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、カルボキシ基、シアノ基、アミノ基、アルキルアミノ基、ニトロ基、スルホ基、カルバモイル基、アルキルカルバモイル基、スルファモイル基、アルキルスルファモイル基、ウレイド基、アルキルウレイド基、アルケニル基、アルキニル基、アシル基、アシルオキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルスルホニル基、アミド基及び非芳香族性複素環基が含まれる。アルキル部分及びアルキル基の置換基としては、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アシル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニル基及びアルコキシ基が好ましい。
一般式(11)において、L1は、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、−O−、−CO−及びそれらの組み合わせからなる基から選ばれる二価の連結基である。
アルキレン基は、環状構造を有していてもよい。環状アルキレン基としては、シクロヘキシレンが好ましく、1,4−シクロヘキシレンが特に好ましい。鎖状アルキレン基としては、直鎖状アルキレン基の方が分岐を有するアルキレン基よりも好ましい。
アルキレン基の炭素原子数は、1〜20であることが好ましく、より好ましくは1〜15であり、さらに好ましくは1〜10であり、さらに好ましくは1〜8であり、最も好ましくは1〜6である。
アルケニレン基及びアルキニレン基は、環状構造よりも鎖状構造を有することが好ましく、分岐を有する鎖状構造よりも直鎖状構造を有することがさらに好ましい。
アルケニレン基及びアルキニレン基の炭素原子数は、好ましくは2〜10であり、より好ましくは2〜8であり、さらに好ましくは2〜6であり、さらに好ましくは2〜4であり、最も好ましくは2(ビニレン基又はエチニレン基)である。
アリーレン基は、炭素原子数は6〜20であることが好ましく、より好ましくは6〜16であり、さらに好ましくは6〜12である。
一般式(11)の分子構造において、L1を挟んで、Ar1とAr2とが形成する角度は、140度以上であることが好ましい。
棒状化合物としては、下記式一般式(12)で表される化合物がさらに好ましい。
一般式(12):Ar1−L2−X−L3−Ar2
上記一般式(12)において、Ar1及びAr2は、それぞれ独立に、芳香族基である。芳香族基の定義及び例は、一般式(12)のAr1及びAr2と同様である。
一般式(12)において、L2及びL3は、それぞれ独立に、アルキレン基、−O−、−CO−及びそれらの組み合わせからなる基より選ばれる二価の連結基である。
アルキレン基は、環状構造よりも鎖状構造を有することが好ましく、分岐を有する鎖状構造よりも直鎖状構造を有することがさらに好ましい。
アルキレン基の炭素原子数は、1〜10であることが好ましく、より好ましくは1〜8であり、さらに好ましくは1〜6であり、さらに好ましくは1〜4であり、1又は2(メチレン基又はエチレン基)であることが最も好ましい。
L2及びL3は、−O−CO−又はCO−O−であることが特に好ましい。
一般式(12)において、Xは、1,4−シクロヘキシレン基、ビニレン基又はエチニレン基である。
一般式(11)又は(12)で表される化合物の具体例としては、特開2004−109657号公報の〔化1〕〜〔化11〕に記載の化合物が挙げられる。
溶液の紫外線吸収スペクトルにおいて最大吸収波長(λmax)が250nmより長波長である棒状化合物を、二種類以上併用してもよい。
棒状化合物は、文献記載の方法を参照して合成できる。文献としては、Mol.Cryst.Liq.Cryst.,53巻、229ページ(1979年)、同89巻、93ページ(1982年)、同145巻、111ページ(1987年)、同170巻、43ページ(1989年)、J.Am.Chem.Soc.,113巻、1349ページ(1991年)、同118巻、5346ページ(1996年)、同92巻、1582ページ(1970年)、J.Org.Chem.,40巻、420ページ(1975年)、Tetrahedron、48巻16号、3437ページ(1992年)を挙げることができる。
また、特開2004−50516号公報の11〜14頁に記載の棒状芳香族化合物を、前記リターデーション発現剤として用いてもよい。
また、リターデーション発現剤として、一種の化合物を単独で、又は二種類以上の化合物を混合して用いることができる。リターデーション発現剤として互いに異なる二種類以上の化合物を用いると、リターデーションの調整範囲が広がり、容易に所望の範囲に調整できるので好ましい。
前記リターデーション発現剤の添加量はセルロースアシレート100質量部に対して、0.1〜20質量%が好ましく、0.5〜10質量%がさらに好ましい。前記セルロースアシレートフィルムをソルベントキャスト法で作製する場合は、前記リターデーション発現剤を、ドープ中に添加してもよい。添加はいずれのタイミングで行ってもよく、例えば、アルコール、メチレンクロライド、ジオキソラン等の有機溶媒にリターデーション発現剤を溶解してから、セルロースアシレート溶液(ドープ)に添加してもよいし、又は直接ドープ組成中に添加してもよい。
特に、前記円盤状化合物の割合が、円盤状化合物と棒状化合物の総質量に対して0.1〜20%であることが好ましく、0.5〜15%であることがより好ましく、1〜10%であることが特に好ましい。
その他、前記各公報に記載されている以外の棒状化合物の好ましい化合物の具体例を以下に示す。
前記具体例(1)〜(34)、(41)、(42)は、シクロヘキサン環の1位と4位とに二つの不斉炭素原子を有する。ただし、具体例(1)、(4)〜(34)、(41)、(42)は、対称なメソ型の分子構造を有するため光学異性体(光学活性)はなく、幾何異性体(トランス型とシス型)のみ存在する。具体例(1)のトランス型(1−trans)とシス型(1−cis)とを、以下に示す。
前述したように、棒状化合物は直線的な分子構造を有することが好ましい。そのため、トランス型の方がシス型よりも好ましい。
具体例(2)及び(3)は、幾何異性体に加えて光学異性体(合計4種の異性体)を有する。幾何異性体については、同様にトランス型の方がシス型よりも好ましい。光学異性体については、特に優劣はなく、D、Lあるいはラセミ体のいずれでもよい。
具体例(43)〜(45)では、中心のビニレン結合にトランス型とシス型とがある。上記と同様の理由で、トランス型の方がシス型よりも好ましい。
本発明に係るリターデーション発現剤としては、前記低分子化合物と同様に、高分子系添加剤を使用することもできる。高分子添加剤としては、ポリエステル系ポリマー、スチレン系ポリマー及びアクリル系ポリマー及びこれら等の共重合体から選択されるが、芳香族ポリエステルが好ましい。
芳香族ポリエステル系ポリマーは、前記ポリエステルポリマーに芳香環を有するモノマーを共重合することによって得られる。芳香環を有するモノマーとしては、炭素数8〜20の芳香族ジカルボン酸、炭素数6〜20の芳香族ジオールから選ばれる少なくとも一種類以上のモノマーである。
炭素数8〜20の芳香族ジカルボン酸としては、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,8−ナフタレンジカルボン酸、2,8−ナフタレンジカルボン酸及び2,6−ナフタレンジカルボン酸等がある。これらの中でも好ましい芳香族ジカルボン酸としてはフタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、である。
炭素数6〜20の芳香族ジオールとしては、特に限定されないがビスフェノールA、1,2−ヒドロキシベンゼン、1,3−ヒドロキシベンゼン、1,4−ヒドロキシベンゼン、1,4−ベンゼンジメタノールが挙げられ、好ましくはビスフェノールA、1,4−ヒドロキシベンゼン、1,4−ベンゼンジメタノールである。
ポリエステルの末端はアルキル基あるいは芳香族基で封止されていても、水酸基が残っていてもかまわない。
本発明で使用されるポリエステル系ポリマーを、以下に記載するが本発明はこれらに限定されない。表中nは、繰り返し数を示す。
本発明に係るリターデーション発現剤としては、前記リターデーション発現剤のうち、例えば、円盤状化合物及び棒状化合物などを挙げることができ、その中でも複数の芳香環を有するトリアジン系化合物及び棒状化合物(1)〜(7)が好ましい。
(紫外線吸収剤)
本発明においてはセルロースエステル溶液に、偏光板又は液晶等の劣化防止の観点から、紫外線吸収剤が好ましく用いられる。紫外線吸収剤としては、波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れ、かつ良好な液晶表示性の観点から、波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものが好ましく用いられる。本発明に好ましく用いられる紫外線吸収剤の具体例としては、例えばヒンダードフェノール系化合物、ヒドロキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物などが挙げられる。ヒンダードフェノール系化合物の例としては、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、N,N′−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナミド)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレイトなどが挙げられる。ベンゾトリアゾール系化合物の例としては、2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2−メチレンビス(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール)、(2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、N,N′−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナミド)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾール、(2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−アミルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾール、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕などが挙げられる。これらの紫外線防止剤の添加量は、セルロースエステルフィルム全体中に質量割合で1ppm〜1.0%が好ましく、10〜1000ppmがさらに好ましい。
(剥離促進剤)
本発明に係るフィルムには、剥離促進剤を含有することが、より剥離性と高める観点から好ましい。剥離促進剤は、例えば、0.001〜1質量%の割合で含めることができ、0.5質量%以下の添加であれば剥離剤のフィルムからの分離等が発生し難いため好ましく、0.005質量%以上であれば所望の剥離低減効果を得ることができるため好ましいため、0.005〜0.5質量%の割合で含めることが好ましく、0.01〜0.3質量%の割合で含めることがより好ましい。剥離促進剤としては、公知のものが採用でき、有機、無機の酸性化合物、界面活性剤、キレート剤等を使用することができる。中でも、多価カルボン酸及びそのエステルが効果的であり、特に、クエン酸のエチルエステル類が効果的に使用することができる。
(マット剤)
特に本発明に係るフィルムには、ハンドリングされる際に、傷が付いたり搬送性が悪化することを防止するために、微粒子を添加することが一般に行われる。それらは、マット剤、ブロッキング防止剤あるいはキシミ防止剤と称されて、従来から利用されている。それらは、前述の機能を呈する素材であれば特に限定されず、無機化合物のマット剤であっても、有機化合物のマット剤であってもよい。
前記無機化合物のマット剤の好ましい具体例としては、ケイ素を含む無機化合物(例えば、二酸化ケイ素、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウムなど)、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化バリウム、酸化ジルコニウム、酸化ストロングチウム、酸化アンチモン、酸化スズ、酸化スズ・アンチモン、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン及びリン酸カルシウム等が好ましく、更に好ましくはケイ素を含む無機化合物や酸化ジルコニウムであるが、セルロースエステルフィルムの濁度を低減できるので、二酸化ケイ素が特に好ましく用いられる。前記二酸化ケイ素の微粒子としては、例えば、アエロジルR972、R974、R812、200、300、R202、OX50、TT600(以上日本アエロジル(株)製)等の商品名を有する市販品が使用できる。前記酸化ジルコニウムの微粒子としては、例えば、アエロジルR976及びR812(以上日本アエロジル(株)製)等の商品名で市販されているものが使用できる。
前記有機化合物のマット剤の好ましい具体例としては、例えば、シリコーン樹脂、弗素樹脂及びアクリル樹脂等のポリマーが好ましく、中でも、シリコーン樹脂が好ましく用いられる。シリコーン樹脂の中でも、特に三次元の網状構造を有するものが好ましく、例えば、トスパール103、トスパール105、トスパール108、トスパール120、トスパール145、トスパール3120及びトスパール240(以上東芝シリコーン(株)製)等の商品名を有する市販品が使用できる。
これらのマット剤をセルロースエステル溶液へ添加する場合は、特にその方法に限定されずいずれの方法でも所望のセルロースエステル溶液を得ることができれば問題ない。例えば、セルロースエステルと溶媒を混合する段階で添加物を含有させてもよいし、セルロースエステルと溶媒で混合溶液を作製した後に、添加物を添加してもよい。更にはドープを流延する直前に添加混合してもよく、所謂直前添加方法でありその混合はスクリュー式混練をオンラインで設置して用いられる。具体的には、インラインミキサーのような静的混合機が好ましい。
本発明に係るフィルムにおいて、前記マット剤は、多量に添加しなければフィルムのヘイズが大きくならず、実際にLCDに使用した場合、コントラストの低下、輝点の発生等の不都合が生じにくい。また、少なすぎなければ上記のキシミ、耐擦傷性を実現することができる。これらの観点から0.01〜5.0質量%の割合で含めることが好ましく、0.03〜3.0質量%の割合で含めることがより好ましく、0.05〜1.0質量%の割合で含めることが特に好ましい。
(偏光子保護フィルムの製造方法)
本発明に係る樹脂フィルム基材をフィルムとして製造する方法としては、通常のインフレーション法、T−ダイ法、カレンダー法、切削法、流延法、エマルジョン法、ホットプレス法等の製造法が使用できるが、着色抑制、異物欠点の抑制、ダイラインなどの光学欠点の抑制などの観点から流延法による溶液流延法、及び溶融流延法が好ましい。
以下、本発明に係る偏光子保護フィルムを作製する場合の製造方法について詳述する。
<溶液流延法による偏光子保護フィルムの製造方法>
《有機溶媒》
本発明に係る偏光子保護フィルム(位相差フィルム)を溶液流延法で製造する場合、ドープを形成するのに有用な有機溶媒は、セルロースエステル樹脂等の熱可塑性樹脂を溶解するものであれば制限なく用いることができる。
例えば、塩素系有機溶媒としては、塩化メチレン、非塩素系有機溶媒としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸アミル、アセトン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、シクロヘキサノン、ギ酸エチル、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−ヘキサフルオロ−1−プロパノール、1,3−ジフルオロ−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−メチル−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール、2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロパノール、ニトロエタン、乳酸エチル、乳酸、ジアセトンアルコール等を挙げることができ、塩化メチレン、酢酸メチル、酢酸エチル、アセトン、乳酸エチル等を好ましく使用し得る。
ドープには、上記有機溶媒の他に、1〜40質量%の炭素原子数1〜4の直鎖又は分岐鎖状の脂肪族アルコールを含有させてもよい。ドープ中のアルコールの比率が高くなるとウェブがゲル化し、金属支持体からの剥離が容易になり、また、アルコールの割合が少ない時は非塩素系有機溶媒系での熱可塑性樹脂の溶解を促進する役割もある。
特に、メチレンクロライド、及び炭素数1〜4の直鎖又は分岐鎖状の脂肪族アルコールを含有する溶媒に、熱可塑性樹脂は、少なくとも計10〜45質量%溶解させたドープ組成物であることが好ましい。
炭素原子数1〜4の直鎖又は分岐鎖状の脂肪族アルコールとしては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノールを挙げることができる。これらの内ドープの安定性、沸点も比較的低く、乾燥性もよいこと等からエタノールが好ましい。
以下、本発明に係る偏光子保護フィルム(以下、単に「フィルム」ともいう。)の好ましい製膜方法について説明する。
1)溶解工程
熱可塑性樹脂に対する良溶媒を主とする有機溶媒に、溶解釜中で熱可塑性樹脂、その他の添加剤を攪拌しながら溶解しドープを形成する工程である。
熱可塑性樹脂の溶解には、常圧で行う方法、主溶媒の沸点以下で行う方法、主溶媒の沸点以上で加圧して行う方法、特開平9−95544号公報、特開平9−95557号公報、又は特開平9−95538号公報に記載の如き冷却溶解法で行う方法、特開平11−21379号公報に記載の如き高圧で行う方法等種々の溶解方法を用いることができるが、特に主溶媒の沸点以上で加圧して行う方法が好ましい。
返材とは、フィルムを細かく粉砕した物で、フィルムを製膜するときに発生する、フィルムの両サイド部分を切り落とした物や、擦り傷などでスペックアウトしたフィルム原反のことをいい、これも再使用される。
2)流延工程
ドープを、送液ポンプ(例えば、加圧型定量ギヤポンプ)を通して加圧ダイに送液し、無限に移送する無端の金属ベルト、例えばステンレスベルト、あるいは回転する金属ドラム等の金属支持体上の流延位置に、加圧ダイスリットからドープを流延する工程である。
ダイの口金部分のスリット形状を調整でき、膜厚を均一にし易い加圧ダイが好ましい。加圧ダイには、コートハンガーダイやTダイ等があり、いずれも好ましく用いられる。金属支持体の表面は鏡面となっている。製膜速度を上げるために加圧ダイを金属支持体上に二基以上設け、ドープ量を分割して重層してもよい。あるいは複数のドープを同時に流延する共流延法によって積層構造のフィルムを得ることも好ましい。
3)溶媒蒸発工程
ウェブ(流延用支持体上にドープを流延し、形成されたドープ膜をウェブと呼ぶ)を流延用支持体上で加熱し、溶媒を蒸発させる工程である。
溶媒を蒸発させるには、ウェブ側から風を吹かせる方法及び/又は支持体の裏面から液体により伝熱させる方法、輻射熱により表裏から伝熱する方法等があるが、裏面液体伝熱方法の乾燥効率が良く好ましい。又、それらを組み合わせる方法も好ましく用いられる。流延後の支持体上のウェブを40〜100℃の雰囲気下、支持体上で乾燥させることが好ましい。40〜100℃の雰囲気下に維持するには、この温度の温風をウェブ上面に当てるか赤外線等の手段により加熱することが好ましい。
面品質、透湿性、剥離性の観点から、30〜120秒以内で該ウェブを支持体から剥離することが好ましい。
4)剥離工程
金属支持体上で溶媒が蒸発したウェブを、剥離位置で剥離する工程である。剥離されたウェブは次工程に送られる。
金属支持体上の剥離位置における温度は好ましくは10〜40℃であり、さらに好ましくは11〜30℃である。
なお、剥離する時点での金属支持体上でのウェブの剥離時残留溶媒量は、乾燥の条件の強弱、金属支持体の長さ等により50〜120質量%の範囲で剥離することが好ましいが、残留溶媒量がより多い時点で剥離する場合、ウェブが柔らか過ぎると剥離時平面性を損ね、剥離張力によるツレや縦スジが発生し易いため、経済速度と品質との兼ね合いで剥離時の残留溶媒量が決められる。
ウェブの残留溶媒量は下記式で定義される。
残留溶媒量(%)=(ウェブの加熱処理前質量−ウェブの加熱処理後質量)/(ウェブの加熱処理後質量)×100
なお、残留溶媒量を測定する際の加熱処理とは、115℃で1時間の加熱処理を行うことを表す。
金属支持体とフィルムを剥離する際の剥離張力は、通常、196〜245N/mであるが、剥離の際に皺が入り易い場合、190N/m以下の張力で剥離することが好ましく、さらには、剥離できる最低張力〜166.6N/m、次いで、最低張力〜137.2N/mで剥離することが好ましいが、特に好ましくは最低張力〜100N/mで剥離することである。
本発明においては、当該金属支持体上の剥離位置における温度を−50〜40℃とするのが好ましく、10〜40℃がより好ましく、15〜30℃とするのが最も好ましい。
5)乾燥及び延伸工程
剥離後、ウェブを乾燥装置内に複数配置したロールに交互に通して搬送する乾燥装置、及び/又はクリップでウェブの両端をクリップして搬送するテンター延伸装置を用いて、ウェブを乾燥する。
乾燥手段はウェブの両面に熱風を吹かせるのが一般的であるが、風の代わりにマイクロウェーブを当てて加熱する手段もある。余り急激な乾燥はでき上がりのフィルムの平面性を損ね易い。高温による乾燥は残留溶媒が8質量%以下くらいから行うのがよい。全体を通し、乾燥は概ね40〜250℃で行われる。特に40〜160℃で乾燥させることが好ましい。
テンター延伸装置を用いる場合は、テンターの左右把持手段によってフィルムの把持長(把持開始から把持終了までの距離)を左右で独立に制御できる装置を用いることが好ましい。また、テンター工程において、平面性を改善するため意図的に異なる温度を持つ区画を作ることも好ましい。
また、異なる温度区画の間にそれぞれの区画が干渉を起こさないように、ニュートラルゾーンを設けることも好ましい。
なお、延伸操作は多段階に分割して実施してもよく、流延方向、幅手方向に二軸延伸を実施することも好ましい。また、二軸延伸を行う場合には同時二軸延伸を行ってもよいし、段階的に実施してもよい。
この場合、段階的とは、例えば、延伸方向の異なる延伸を順次行うことも可能であるし、同一方向の延伸を多段階に分割し、かつ異なる方向の延伸をそのいずれかの段階に加えることも可能である。即ち、例えば、次のような延伸ステップも可能である。
・流延方向に延伸−幅手方向に延伸−流延方向に延伸−流延方向に延伸
・幅手方向に延伸−幅手方向に延伸−流延方向に延伸−流延方向に延伸
また、同時二軸延伸には、一方向に延伸し、もう一方を、張力を緩和して収縮させる場合も含まれる。同時二軸延伸の好ましい延伸倍率は幅手方向、長手方向ともに×1.01倍〜×1.5倍の範囲でとることができる。
テンターを行う場合のウェブの残留溶媒量は、テンター開始時に20〜100質量%であるのが好ましく、かつウェブの残留溶媒量が10質量%以下になる迄テンターを掛けながら乾燥を行うことが好ましく、さらに好ましくは5質量%以下である。
テンターを行う場合の乾燥温度は、30〜160℃が好ましく、50〜150℃がさらに好ましく、70〜140℃が最も好ましい。
テンター工程において、雰囲気の幅手方向の温度分布が少ないことが、フィルムの均一性を高める観点から好ましく、テンター工程での幅手方向の温度分布は、±5℃以内が好ましく、±2℃以内がより好ましく、±1℃以内が最も好ましい。
6)巻き取り工程
ウェブ中の残留溶媒量が2質量%以下となってからフィルムとして巻き取り機により巻き取る工程であり、残留溶媒量を0.4質量%以下にすることにより寸法安定性の良好なフィルムを得ることができる。特に0.00〜0.10質量%で巻き取ることが好ましい。
巻き取り方法は、一般に使用されているものを用いればよく、定トルク法、定テンション法、テーパーテンション法、内部応力一定のプログラムテンションコントロール法等があり、それらを使いわければよい。
本発明に係るフィルムは、長尺フィルムであることが好ましく、具体的には、100m〜10000m程度のものを示し、通常、ロール状で提供される形態のものである。また、フィルムの幅は1.3〜4mであることが好ましく、1.4〜2.5mであることがより好ましい。
本発明に係るフィルムの膜厚に特に制限はないが、10〜80μmであることが好ましい。
以下、本発明について実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<偏光子保護フィルム101の作製>
〈微粒子分散液1〉
微粒子(アエロジル R972V 日本アエロジル(株)製) 11質量部
エタノール 89質量部
以上をディゾルバーで50分間攪拌混合した後、マントンゴーリンで分散を行った。
〈微粒子添加液1〉
メチレンクロライドを入れた溶解タンクに十分攪拌しながら、微粒子分散液1をゆっくりと添加した。更に、二次粒子の粒径が所定の大きさとなるようにアトライターにて分散を行った。これを日本精線(株)製のファインメットNFで濾過し、微粒子添加液1を調製した。
メチレンクロライド 99質量部
微粒子分散液1 5質量部
下記組成の主ドープ液1を調製した。まず加圧溶解タンクにメチレンクロライドとエタノールを添加した。溶剤の入った加圧溶解タンクにセルロースエステルAを攪拌しながら投入した。これを加熱し、攪拌しながら完全に溶解した。これを安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244を使用して濾過し、主ドープ液を調製した。
〈主ドープ液1の組成〉
メチレンクロライド 340質量部
エタノール 64質量部
セルロースエステル1 100質量部
カルボン酸糖エステル1(アシル基種:ベンゾイル基、平均置換度4.8)
10質量部
微粒子添加液1 1質量部
以上を密閉されている主溶解釜1に投入し、攪拌しながら溶解してドープ液を調製した。
ステンレスベルト支持体上で、流延(キャスト)したフィルム中の残留溶媒量が75%になるまで溶媒を蒸発させ、次いで剥離張力130N/mで、ステンレスベルト支持体上から剥離した。剥離した偏光子保護フィルム(位相差フィルム)を、180℃の熱をかけながらテンターを用いて幅方向に30%延伸した。延伸開始時の残留溶媒は15%であった。
次いで、乾燥ゾーンを多数のロールで搬送させながら乾燥を終了させた。乾燥温度は130℃で、搬送張力は100N/mとした。以上のようにして、乾燥膜厚40μmの位相差フィルム101を得た。
〈アクリル粒子(C1)の調製〉
内容積60リットルの還流冷却器付反応器に、イオン交換水38.2リットル、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム111.6gを投入し、250rpmの回転数で攪拌しながら、窒素雰囲気下75℃に昇温し、酸素の影響が事実上無い状態にした。APS0.36gを投入し、5分間攪拌後にMMA1657g、BA21.6g、及びALMA1.68gからなる単量体混合物を一括添加し、発熱ピークの検出後、更に20分間保持して最内硬質層の重合を完結させた。
次に、APS3.48gを投入し、5分間攪拌後にBA8105g、PEGDA(200)31.9g、及びALMA264.0gからなる単量体混合物を120分間かけて連続的に添加し、添加終了後さらに120分間保持して、軟質層の重合を完結させた。
次に、APS1.32gを投入し、5分間攪拌後にMMA2106g、BA201.6gからなる単量体混合物を20分間かけて連続的に添加し、添加終了後さらに20分間保持して最外硬質層1の重合を完結した。
次いで、APS1.32gを投入し、5分後にMMA3148g、BA201.6g、及びn−OM10.1gからなる単量体混合物を20分間かけて連続的に添加し、添加終了後にさらに20分間保持した。次いで、95℃に昇温し60分間保持して、最外硬質層2の重合を完結させた。
このようにして得られた重合体ラテックスを少量採取し、吸光度法により平粒子径を求めたところ0.10μmであった。残りのラテックスを3質量%硫酸ナトリウム温水溶液中へ投入して、塩析・凝固させ、次いで、脱水・洗浄を繰り返したのち乾燥し、3層構造のアクリル粒子(C1)を得た。
上記の略号は各々下記材料である。
MMA;メチルメタクリレート
MA;メチルアクリレート
BA;n−ブチルアクリレート
ALMA;アリルメタクリレート
PEGDA;ポリエチレングリコールジアクリレート(分子量200)
n−OM;n−オクチルメルカプタン
APS;過硫酸アンモニウム
<偏光子保護フィルム102〜110の作製>
以下、表4及び5に記載の材料、延伸倍率、温度など製造条件を変更して、所望のリターデーションに調整し、偏光子保護フィルム102〜110を作製した。
〈樹脂ペレット1の作製〉
攪拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入管を付した30L反応釜に、メタクリル酸メチル(MMA)6000g、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル(MHMA)2000g、メタクリル酸ベンジル(BzMA)2000g、トルエン10000gを仕込んだ。次に、上記反応釜に窒素を流しながら、反応釜の内容物を105℃まで昇温させ、還流開始後に、開始剤としてt−アミルパーオキシイソノナノエート(商品名:ルパゾール570、アトフィナ吉富(株)製)10.0gを添加すると同時に、t−アミルパーオキシイソノナノエート20.0g及びトルエン100gからなる開始剤溶液を2時間かけて滴下しながら、還流下(約105〜110℃)で溶液重合を行った。t−アミルパーオキシイソノナノエート・トルエン溶液の滴下後、更に4時間熟成を行った。
得られた重合体の反応率は95.7%であり、重合体中のMHMA構造単位の含有量は19.8質量%であり、BzMA構造単位の含有量は20.2%であった。
得られた上記重合体溶液に、リン酸オクチル/リン酸ジオクチル混合物(商品名:Phoslex A−8、堺化学製)10gを加え、還流下(約80〜105℃)で2時間環化縮合反応を行い、更に240℃の熱媒を用いて、オートクレーブ中で加圧下(ゲージ圧が最高約1.6MPaまで)、240℃で1.5時間環化縮合反応を行った。
上記環化縮合反応で得られた重合体溶液を、バレル温度250℃、回転数100rpm、減圧度13.3〜400hPa(10〜300mmHg)、リアベント数1個、フォアベント数4個のベントタイプスクリュー二軸押出し機(φ=29.75mm、L/D=30)に、樹脂量換算で2.0kg/時間の処理速度で導入し、押出し機内で環化縮合反応と脱揮とを行い、押出すことにより、透明なペレット1を得た。
得られたペレット1について、ダイナミックTGの測定を行ったところ、0.20質量%の質量減少を検知した。また、ペレット1の重量平均分子量は115,000であり、メルトフローレート(MFR)は49.5g/10分、ガラス転移温度(Tg)は124℃であった。尚、1H−NMR(製品名:FT−NMR UNITY plus400、400MHz、Varian社製、溶媒:重クロロホルム、内標:メシチレン)測定より求めた、ペレット1中のBzMA構造単位の含有量は21.7質量%であった。
<偏光子保護フィルム111及び112の作製>
樹脂ペレット1を、単軸押出機(φ=25mm、L/D=25)を用いて、265℃でコートハンガータイプTダイ(幅150mm)から溶融押出を行い、温度100℃の冷却ロール上に吐出して、フィルムを成形し、標記に記載の延伸条件で延伸し、偏光子保護フィルム111を作製した。
樹脂ペレットの変更以外は、同様にして、偏光子保護フィルム112を作製した。
<偏光子保護フィルム113の作製>
脂環式構造を有する樹脂(JSR社製、FX4727、吸水率0.01%)100部を二軸押出機で混練してストランド状に押し出し、ペレタイザーで切断してペレットを製造した。このペレットを原料として、射出成形機を用いて、膜厚20μmのフィルムを成形した。
上記偏光子保護フィルム101〜113の内容をまとめて表4〜8に示す。
<偏光子保護フィルム114の作製>
(コア層用セルロースエステルドープの調製)
セルロースエステル5 90質量部
ポリエステル(〔化10〕の(3)) 10質量部
ジクロロメタン 406質量部
メタノール 61質量部
(スキンB層用セルロースエステルドープの調製)
セルロースエステル6 96質量部
化合物1(〔化19〕のI−(2)) 4質量部
マット剤:平均粒子径16nmのシリカ粒子(aerosil R972 日本アエロジル(株)製) 0.12質量部
剥離促進剤:クエン酸エチルエステル(モノエステル50%、ジエステル50%)
0.05質量部
ジクロロメタン 406質量部
メタノール 61質量部
(スキンA層用セルロースエステルドープの調製)
セルロースエステル6 96質量部
化合物1(〔化19〕のI−(2)) 4質量部
マット剤:平均粒子径16nmのシリカ粒子(aerosil R972 日本アエロジル(株)製) 0.12質量部
ジクロロメタン 406質量部
メタノール 61質量部
ドープを流延する際には、図2に示すように、走行する流延バンド上に共流延ダイ10から上記三種類のドープを共に流延した。ここで、各ドープの流延量を調整することによりコア層を最も厚くし、結果的に延伸後のフィルムの膜厚が、下記表9の値となるように同時多層流延を行い流延膜を形成させた。
次に、この流延膜を流延バンドから剥ぎ取り、テンターを用いて延伸率30%まで拡幅した後、135℃で60秒間緩和させた。その後、フィルムを乾燥室に送り、ローラーに巻き掛けながら搬送する間に乾燥を十分に行った。
以上のようにして、乾燥膜厚61μmの積層偏光子保護フィルム114を得た。
上記偏光子保護フィルム114の内容を表9に示す。
(評価)
上記偏光子保護フィルム101〜114について、下記の測定及び評価を行った。
(リターデーション値)
測定は、自動複屈折計KOBRA・WR(王子計測器(株)製)を用いて、23℃、55%RHの環境下、測定波長590nmにおいて行い、得られた測定値を下式(a)、(b)に代入して、面内リターデーションRo、厚さ方向リターデーションRtを求めた。
式(a):面内リターデーション:Ro=(nx−ny)×d
式(b):厚さ方向リターデーション:Rt=((nx+ny)/2−nz)×d
(平面性)
蛍光灯下でフィルムのしわやうねりを観察し、評価した。
○:フィルムのしわやうねりがほとんどない。
×:フィルムのしわやうねりがみられる。
上記測定・評価結果を表10に示す。
表10に示した結果から明らかなように、本発明に係る偏光子保護フィルムは、適切なリターデーション値を有し、かつしわやうねりがほとんどなく、平面性が良好であることが分かる。
<偏光板の作製>
次いで、下記工程1〜5に従って偏光子と、下記表3記載のセルロースエステルフィルムと、裏面側にはコニカミノルタタックKC4UY(コニカミノルタオプト(株)製セルロースエステルフィルム)を貼り合わせて偏光板201〜214を作製した。フィルム111〜113に関しては、表面をコロナ処理したものを用いた。また、偏光子と、コニカミノルタタックKC4UY(コニカミノルタオプト(株)製セルロースエステルフィルム)を片側のみに貼り合わせた偏光板215も作製した。
《偏光板作製工程》
工程1:60℃の2モル/Lの水酸化ナトリウム溶液に90秒間浸漬し、次いで水洗し乾燥して、偏光子と貼合する側を鹸化したセルロースエステルフィルムを得た。
工程2:前記偏光子を固形分2質量%のポリビニルアルコール接着剤槽中に1〜2秒浸漬した。
工程3:工程2で偏光子に付着した過剰の接着剤を軽く拭き除き、これを工程1で処理したセルロースエステルフィルムの上にのせて配置した。
工程4:工程3で積層したセルロースエステルフィルムと偏光子と裏面側セルロースエステルフィルムを圧力20〜30N/cm2、搬送スピードは約2m/分で貼合した。
工程5:80℃の乾燥機中に工程4で作製した偏光子と表3記載の各偏光子保護フィルムとコニカミノルタタックKC4UYとを貼り合わせた試料を2分間乾燥し、偏光板201〜215を作製した。
<液晶表示装置の作製>
視野角測定を行う液晶パネルを以下のようにして作製し、液晶表示装置としての特性を評価した。
VAモード型液晶表示装置(SONY製BRAVIA KDL−52W5)の予め貼合されていた両面の偏光板を剥がして、上記作製した偏光板201〜215をそれぞれ表5に示す組み合わせとなるように液晶セルのガラス面の両面に貼合した。
その際、その偏光板の貼合の向きは、偏光子保護フィルムの面が液晶セル側となるように、かつ、予め貼合されていた偏光板と同一の方向に吸収軸が向くように行い、液晶表示装置301〜315を各々作製した。この液晶表示装置の液晶セルは、カラーフィルタと薄膜トランジスタが透明基板の一方に配置されており、本発明の液晶表示装置のセルであり、表5にはW5と記載している。
続いて、VAモード型液晶表示装置(SONY製BRAVIA KDL−40V5)についても同様に予め貼合されていた両面の偏光板を剥がして、上記作製した偏光板201〜215をそれぞれ表5に示す組み合わせとなるように液晶セルのガラス面の両面に、偏光子保護フィルムの面が液晶セル側となるように、かつ、予め貼合されていた偏光板と同一の方向に吸収軸が向くように貼合し、液晶表示装置316〜318を各々作製した。
この液晶表示装置の液晶セルは、カラーフィルタと薄膜トランジスタが異なる透明基板に配置されており、本発明の液晶表示装置の液晶セルに対する比較例であり、表6にはV5と記載している。
《コントラスト》
23℃55%RHの環境で、各々の液晶表示装置のバックライトを1週間連続点灯した後、コントラスト測定を行った。測定にはコニカミノルタセンシング社製分光放射輝度計CS−2000を用いて、液晶表示装置で白表示と黒表示の表示画面の法線方向の輝度を測定し、その比をコントラストとした。なお、△以上であれば、問題ない。
〔コントラストの評価基準〕
◎:コントラストが6500以上
○:コントラストが5500以上6500未満
△:コントラストが4500以上5500未満
×:コントラストが4500未満
《画像のにじみ》
液晶表示装置の上に透明な30cm角のガラス板にテストパターン(1mmピッチのライン&スペース)を記載したものを置き、正面から覗き込み目視でテストパターンににじみが発生した箇所の30cm角あたりの数を観察した。
○:0〜10個
△:10〜20個
×:21〜30個
≪ムラ≫
該当する垂直配向型液晶表示装置を、50℃・90%RH24時間湿熱処理し、バックライト点灯2時間後の黒表示での輝度ムラ(強弱)と、画像表示した時の影響を、下記基準に従って、目視で評価した。
◎:輝度ムラが見えない
○:弱い輝度ムラが見えるが画像表示で気にならない
△:輝度ムラが強いが、画像表示でほとんど気にならない
×:輝度ムラが強く、画像表示でも気になる
△以上であれば、問題ない。
上記評価結果を、まとめて表12に示す。
表12に示した結果から明らかなように、本発明の垂直配向型液晶表示装置は、コントラスト、画像のにじみ、及びムラの評価において、優れていることが分かる。