JP5406580B2 - ポジィテイブcプレートのセルロースアシレートカルバモイルフィルム及びその原料 - Google Patents

ポジィテイブcプレートのセルロースアシレートカルバモイルフィルム及びその原料 Download PDF

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本発明は、膜厚方向のレタデーション値(厚み方向のレタデーション)が極めて大きい(絶対値として大きい)負のレタデーションを有するセルロースアシレートカルバモイルフィルムに関し、より具体的にはポジティブCプレートに関する、及びそのフィルムを用いた光学素子、及びその原料であるセルロースアシレートカルバモイルに関する。
セルロースエステルフィルムは、ハロゲン化写真感光材料の支持体、位相差板、位相差板の支持体、偏光板の保護フィルム及び液晶表示装置に使用されている。
セルロースエステルフィルムのうち、画像表示装置等の光学用途として最も一般的に用いられているセルロースアセテートフィルムでは、主として溶液流延製膜法が採用されており、平面性の高い良好なフィルムが製造されている。
これらフィルムの膜厚方向のレタデーション(Rth)は正の値を示している。例えば、一般的なセルローストリアセテートフィルムの場合は厚みが80μmの場合には厚み方向のレタデーションが45程度である。一般光学フィルムが使用される液晶素子を用いた光学素子においては、液晶層自体がポジティブプレートとして振舞う。すなわち、液晶層自体は負の厚み方向のレタデーションを有するものである。
尚、厚み方向のレタデーションの定義式は絶対値として標記される場合もあるが、絶対値ではなく正負の符号付きの数値として示される場合もある。このため定義式によると正負の符号が逆転する。一般的に厚み方向のレタデーションを定義する式は当業界では次式で定義されている。
Rth={(nx+ny)/2−nz}×d
式中、nxは、横方向の屈折率;nyは、縦方向の屈折率;nzは、厚さ方向の屈折率であり;そして、dは、フィルムの厚さ(nm)で定義されている。
一方、光学の定義では異常軸(この場合は厚み方向)の複屈折が他の軸の複屈折に対して高い場合に「正」の複屈折として表現されるので、前記式に従うとRthが負の値を示す場合にポジティブプレートと表現する。前記のRthの定義式は一部に混乱が認められ、光学の定義式に従ったRthを定義し、または採用している文献も散見されるが、当業界で一般的に用いられているは前記式であるので、以下本発明においては前記のRthの定義式を用いることにする。この場合、前記の通り、ポジティブプレートとは負のRthを有しているものである。レタデーションとしては厚み方向の他に幅方向もあり、Reと称されている。Reの定義式は以下の式で定義される。
Re=(nx+ny)×d
(式中、nxは、横方向の屈折率;nyは、縦方向の屈折率;そして、dは、フィルムの厚さ(nm))
ReとRthの絶対値が同じ程度のフィルムは二軸位相差を示し、二軸位相差フィルムとして光学素子において採用されている場合もある。前式のReの定義式から明らかな通り、Reを大きくすにはnx(横方向の屈折率)またはny(縦方向の屈折率)の何れかを大きくすれば良く、一般的には一軸(主には縦すなわちフィルムの長さ方向)に延伸することで達成できる。しかしながら、Rthの絶対値を大きくするには厚み方向に延伸する必要がありこれは容易ではなかった。
セルロースアシレートフィルムの延伸方法の改善により、厚み方向のレタデーションを低下される試みも行われている。例えば特開 H02−47629号公報(特許文献1)では、フィルムの厚み方向に延伸することで厚み方向の屈折率を大きくして、厚み方向のレタデーションを低下させている。しかしながら、この方法では厚み方向に延伸する限度があるためRthが負でその絶対値が大きなフィルムを得ることはできなかった。
また、セルロースアシレートの置換度を高くすることで、可塑剤が存在しない状態で負のRthを有する技術も特開2006−117896号公報(特許文献2)に開示されている。
特許文献2では、総平均置換度が2.900〜2.965であり、グルコース単位の2位および3位の平均置換度の合計が1.97以上かつ組成分布半値幅が、置換度単位で0.07以下のセルロースアシレートを用いて、可塑剤を含まない条件下で測定したときの厚み方向のレタデーション値が、厚み80μmにおいて、−20nm〜+10nmであるセルロースエステルフィルムを開示している。(請求項1及び請求項10)しかしながら、負のRthとしてはその絶対値は不十分であった。
一方において本発明に記載されているような、セルロースアシレートフェニルカルバメートを用いた光学フィルムは開示されている。例えば、国際公開番号2005/022215号公報(特許文献4)においては、セルロースの水酸基が炭素数が5から20の脂肪族アシル基により、セルロース1モノマーユニット当り1〜3の置換度で置換され、該脂肪族アシル基以外の置換基で0〜2の置換度で置換されたセルロース誘導体から形成された位相差フィルムが開示されている。(請求項1)
そして、さらには該脂肪族アシル基以外の置換基として芳香族カルバモイル基が例示されており、そして、該置換基と該脂肪族アシル基での合計置換度が1.50から2.99である位相差フィルムも開示されている。(請求項3)しかしながら、具体的な物質については一切開示がなく、またこのような置換度を有する物質の性状についても全く記載がない。そして特許文献4においては実施例は、セルロースペンタネート、セルロースペンタネートアセテート、セルロースヘキサネート、セルロースオクタネート、である。そしてそれらから得られたフィルムでRthが負の絶対値として大きな値を示すフィルムが得られることは何ら開示されていない。
特開2007−197508号公報(特許文献3)には光学フィルムとして好適に用いることができて、レターデーション発現性に優れ、湿度によるレターデーション変化が少ないセルロース誘導体フィルムが開示されている。そして下記式(1)〜(3)を満足するセルロース誘導体を含有するフィルム。
式(1):2≦A+B≦3
式(2):0.05≦A≦2.0
式(3):0.05≦B≦2.95
(式中、Aはセルロースの水酸基を構成する水素原子に対する(Ar) C−で表される基の置換度;Arは炭素数6〜20の芳香族基;Bはセルロースの水酸基を構成する水素原子に対する炭素数2〜6のアルカノイル基の置換度を表す。)によりその目的を達成することが開示されている。
そしてセルロース誘導体の好ましい例として、6−トリチル−2,3−ジアセチルセルロース、6−トリチル−2,3−ジプロピオニルセルロース、6−トリチル−2,3−ジブチリルセルロース、などが開示されている。(段落番号[0031])
特許文献3に記載されているの製造方法ではセルロースを溶解した後エーテル化して、更にエステル化をしており、トリチルアシルセルロースが開示されている。そして、トリチル置換度0.95、プロピオニル置換度1.85の6−トリチル−2,3−ジプロピオニルセルロースが厚み100μmでRthでー63を示すことが記載されている。(段落番号[0198])
しかしながら、その置換度の範囲に特異性があることは記載されておらず、Rthで−63よりも大きな負の絶対値を示す物質については一切開示されていない。
また、セルロースフェニルカルバメート(セルロースフェニルカルバモイル)も公知である。例えば特開2006−317813号公報(特許文献5)にはカルバミン酸エステル、N−置換カルバミン酸エステル、尿素、N−置換尿素から選ばれる少なくとも一つからなることを特徴とするセルロース N−置換カーバメート用位相差調整剤が開示されている。この文献では、光学補償用塗工膜の厚み位相差を負の方向に調整することができる位相差調整剤を提供するとともに、煩雑なフィルム化工程を必要とせずに〔(nx+ny)/2−nz〕×d<0の特性をもつ光学補償用塗工膜を提供し、フィルム貼り付け等の手間を必要とせずにその特性を有する光学素子を提供することを解決課題としており、解決手段は、カルバミン酸エステル、N−置換カルバミン酸エステル、尿素、N−置換尿素から選ばれる少なくとも一つからなることを特徴とするセルロース N−置換カーバメート用位相差調整剤とすることであることが記載されている。
そして、N−置換カーバメート用位相差調整剤を用いると、負の方向に厚み位相差が調整でき、また、本発明の光学補償用塗工膜を用いると、煩雑なフィルム化工程やフィルム貼り付け等の手間を必要とせずに〔(nx+ny)/2−nz〕×d<0の光学補償層を有する光学素子が製造できることから、工業的に極めて有用であることが記載されている。そして、特許文献5の実施例においては、セルロース N−(p−トリル)カーバメートを合成(合成例1)し、合成品を2−ブタノンに溶解し、所定量のN−フェニルカルバミン酸エチルを添加した溶液をガラス基盤に塗布することにより厚みが10.2μm(実施例1)と10.3μm(実施例2)の薄膜(塗工膜)を得ている。
これら塗工膜の厚み方向のレタデーションは−95(実施例1)と−16(実施例2)であった。したがって、80μmに換算すると、それぞれ−745(実施例1)と−124に相当する。特許文献5では厚み方向のレタデーションを低くするための方法としては、N−フェニルカルバミン酸エチルを添加することが開示されているだけである。
セルロースアシレートカルバモイルを本発明のように光学フィルムの素子(構成体)に用いることも提案されている。特開2006−342226号公報(特許文献6)には、ロール状に巻かれたフィルムのリターデーション斑が低減された幅広のセルロースエステルフィルム、偏光板作製時の故障が少ない偏光板、及び視認性に優れた表示装置を提供することが記載されており、セルロース誘導体と溶液の紫外線吸収スペクトルの最大吸収波長(λmax)が250nmより短波長である棒状化合物とを含むセルロースエステルフィルムが提案されている。(要約)
この特許文献6には、アシル基とカルバモイル基の混合エステルであるセルロースエステルが開示されており、カルバモイル基は好ましくは炭素数2〜24、更に好ましくは炭素数4〜22、特に好ましくは炭素数4〜19の脂肪族カルバモイル基であることが開示されている。しかしながら、これらセルロース誘導体での厚み方向のレタデーション値(Rth)の変化については、何ら示唆も開示もない。そしてフィルム厚み方向のリターデーション値Rthが70〜400nmの範囲であることが好ましいことが記載されている。そして、具体的なRthとしては118〜133のものが記載されている。(表5)
上記の通り、セルロース誘導体としての物質の固有物性である厚み方向のレタデーションが負の絶対値として大きなセルロース誘導体であるセルロースアセテートカルバメートについては何ら示唆も開示もなく、またそのような物質を用いポジィテイブCプレートについては一切記載がなかった。
特開H02−47629号公報 特開2006−117896号公報(特許請求の範囲、発明の効果) 特開2007−197508号公報(段落番号[0031]、[0198]) 国際公開番号2005/022215号公報 特開2006−317813号公報(特許請求の範囲、要約、段落[0112]〜[0115]) 特開2006−342226号公報(要約、段落[0119]、表5)
セルロースエステルは、一般にRe面内レタデーション(正面方向レタデーション)は低いものである。しかし、厚み方向のレタデーション(Rth)を負の絶対値として大きくすることができたフィルムは存在していなかった。
従って、本発明が解決しようとする課題は、厚み方向のレタデーション(Rth)が負の絶対値として大きな光学用フィルムを得ることであり、それに適するセルロースアシレートカルバモイルを得ることである。
セルロースエステル、特にセルローストリアセテートは、一般に面内レタデーションは低く、低複屈折と言われている。これはセルローストリアセテートの嵩高いアセチル基がグルコース環が連結したセルローストリアセテートの分子鎖の配向方向と直交する方向に配列するためである。このため、セルローストリアセテートは、一般的に面方向レタデーション(Re)[正面方向レタデーションと呼ばれる場合もある]を低くすることができる。
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、セルロース誘導体の複屈折が置換基の種類と置換度に依存し、特に、置換基としてアシル基及びフェニルカルバモイル基を選んだ場合には、セルロース誘導体の固有複屈折(Δn0)は近似的に次の式で表わされることを見出した。
Δn0=a+b×DSacyl+c×DSpc (III)
ここで、
DSacyl:アシル基の置換度
DSpc:フェニルカルバモイル基の置換度
ところで、全置換度はアシル基及びフェニルカルバモイル基の置換度の和であるので、
Δn0=a+b×(DStotal−DSpc)+c×DSpc
ここで、
DStatal:全置換度
DSpc:フェニルカルバモイル基の置換度
この上記の(I)式及び(II)式における定数項と係数について、アシル基特には炭素数1から4のアシル基とフェニルカルバモイル基を用いた場合には、これらの定数項と係数は下記の通りに計算できることを見出した。
a: 0.0550
b: -0.0164
c: -0.0367
さらに、セルロース誘導体のレタデーション(Rth)は、近似的に次の式で表わされる。
Rth=Δn0×d×(−0.05) (IV)
d: フィルム材料の厚さ
したがって、アシル基とファニルカルバモイル基からなるセルロースアシレートファニルカルバモイルの場合にはアシル基とフェニルカルバモイル基の置換度より、所望するRthに適合するようにセルロースアシレートファニルカルバモイルを設計することができる。
なお、本発明においては厚み方向のレタデーション(Rth)は光学に関する一般的な規則に従い次の式で定義される。(光学フィルムに関する技術分野では下式のRthとは定義が異なり、面内レタデーション(Re)の平均値から厚み方向の屈折率を引いた標記方法、すなわち本願でのRthとは符号が逆転している標記方法を採用している場合もある。尚、光学に関する一般的な規則に従えば、前記の通り次式の定義が妥当であると思われる。しかしながら、本発明の実施例での記載は光学フィルムの技術分野での標準的な記載に習い、次式とは符号が逆転する標記方法を用いている。次式に従えばポジィテイブプレートとはすなわち、次式でのRth*(以下識別のため*を付与する)が大きなフィルムあるいはプレートということができる。
Rth*=nz-(nx+ny)/2
nz: フィルム材料の長手方向の屈折率
nx: フィルム材料の幅方向の屈折率
ny: フィルム材料の厚さ方向の屈折率
発明者らは、式(1)及び式(2)の関係を見出し、アシル基及びフェニルカルバモイル基の置換度を制御することでセルロース誘導体の複屈折を制御できることを見出し、本発明を完成した。
本発明において厚み方向のレタデーション(Rth)は負でありその絶対値が大きいほど好ましい、通常は厚み100μmで例えば550nmの波長で測定した場合に、−300nm以上―25nm以下。好ましくは−250nm以上−75nm以下。さらに好ましくは−175nm以上−125nm以下である。そして、Rthが高いほど、薄いフィルムを用いて上記の負のRthを得ることができ、光学的透明性を向上させる。また液晶素子自体を薄くすることができる。
厚み方向のレタデーションの負の絶対値が75nmを超えた場合には、特に−250nm以上でかつ−250nm以下の場合には特に、ポジィテイブCプレートとして有用である。このようなフィルムを長さ方向に延伸することによりReを調整してReが250nmから300nmでかつ、Rthが−100nmから−200nmのプレートを得た場合にはネガティブAプレートと称される光学素子を一枚で得ることができる。
本発明におけるセルロースアシレートファニルカルバモイルにおいて、上記のような厚み方向のレタデーションを獲得するためには、式(I)で記載されているa,b,c,dの各数値を
式(I) (a+b×DStotal-d)/(b-c) < DSpc での
a:0.0550、b:-0.0164、c:-0.0367そしてd:-0.0050となるDstotal及びDSpcを定めれば良い。
上記の式(I)を充たす、任意の総置換度(DStotal)におけるフェニルカルバモイル基置換度(DSpc)において総置換度(DStotal)が2.8以上である場合は、得られたセルロースアシレートファニルカルバモイルの吸湿性がより小さくなり、セルロースアシレートフェニルカルバメートが組み込まれた液晶表示装置の長期間における使用による吸湿による部分的な光学的特性の変化が抑制されて好ましい。
特に、この特性が要求される場合には総置換度(DStotal)を2.9以上にすることが望ましい。
そして式(2)で記載されているa,b,c,dの各数値を
a: 0.0550
b: -0.0164
c: -0.0367
d: -0.0150
となるようにすることにより、更にRthの負の絶対値を大きくすることができる。すなわち、上記の様にa,b,c,d,eの各数値を組み合わせることにより、Rthは−300nm以上 nm−25nm以下とすることが可能である。
さらに好ましくは(式II)において
a: 0.0550
b: -0.0164
c: -0.0367
d: -0.0250
となるようにa,b,c,d,eの各数値を組み合わせることによりRthは−250 nm以上―75 nm以下とすることができる。
本発明におけるセルロースアシレートフェニルカルバモイルにおけるフェニルカルバモイル基の置換度としては0.6から2.0が好ましい。より好ましくは1.0から1.9である。特に好ましくは1.4から1.9であり、より良く好ましくは1.8から1.9である。フェニルカルバモイル基の置換度が1.0より大きくなるRthを大きくすることができる。
本発明では、総置換度が2.3から2.8であり溶解性に優れながらRthを0付近とすることができる。本発明で構成した光学フィルムではレタデーション調整剤を用いることなくRthを0付近とすることができ、レタデーション調整剤に起因する様々な品質不良や経時的な性能変化を避けることができる。そして、総置換度が適当な範囲にあるために溶剤に対する溶解性に優れる。更には、フィルムに加わる応力によるRthの変化が少なく液晶ディスプレイを製造する場合の取扱いの利便性が高まる。
本発明の方法は、特に以下に述べる方法に限定されるものではないが、一般的に本発明のセルロースアシレートファニルカルバモイルを得るためにはセルロースアシレートを出発原料として用いことが好適である。特に一般的にはセルロースプロピオネート(プロピオン酸セルロース)やセルロースブチレート(酪酸セルロース)はセルロースアセテートとの混合脂肪酸エステル、すなわちセルロースアセテートプロピオネートやセルロースアセテートブチレートとして製造される。
これはプロピオン酸や酪酸が結晶構造(セルロースI型構造)を有しているセルロースと反応がし難いため、エステル化においてアセチル化剤とプロピオニル化剤またはブチル化剤と混合してエステル化を行い混合脂肪酸エステルとして製造されるためである。そのため、純粋なセルロースプロピオネートやセルロースブチレートを得るためには一般的に入手し易いセルロースアセテートを加水分解して再生セルロース(セルロースII型構造を有しているセルロース)としてセルロースを得たうえで、改めてプロピオン酸や酪酸でエステル化をする方法が有意には採用できる。
[セルロースアセテート]
出発原料とするセルロースアセテートについては一般的に入手できるセルロースアセテートであればよい。特に好適なものとしては総置換度が2.4〜2.7程度のセルロースアセテートであればよい。本発明においてはアシル置換度が1.0から2.7、より好ましくは1.2から2.6、特に好ましくは1.4から2.4のものが用いることができる。一般的にセルロースアセテートで置換度が0.6から1.4のものはセルロースモノアセテートとよばれており、このようなセルロースアセテートは水溶性を示すので、通常販売されているセルロースアセテートはセルロースジアセテートか、またはセルローストリアセテートである。セルロースジアセテートの場合は置換度は2.2から2.4のものが販売されている。本発明においてセルロースアセテートで置換度が2.2未満のものを使用する場合は、これらの置換度が2.2から2.4のセルロースジアセテートを加水分解すればよい。セルロースジアセテートはダイセル化学工業株式会社より酢酸綿として販売されている。また試薬として購入することもできる。
本発明に使用するセルロースアセテートの数平均分子量は40,000から100,000であり、より好ましくは45,000から80,000、特に好ましくは、50,000から70,000である。セルロースアセテートの数平均分子量はゲル濾過カラムに、屈折率、光散乱を検出する検出器を接続した高速液体クロマトグラフィーシステム「GPC-LALLS 」を用いて測定できる。測定条件は、以下の通りである。
溶媒:メチレンクロラロイド
カラム:GMHx2(東ソー(株)製)
試料濃度:0.2 %(w/v)
流量:0.8ml/分
試料注入量:100 μl
標準試料:ポリメタクリル酸メチル(Mw=27,600)
測定温度:室温23℃、装置表示温度 29℃
検出装置:多角光散乱検出器(MALLS)(15検出器)
[加水分解]
上記の通り総置換度が2.2未満のセルロースアセテートは一般的には市販されていない。このため、本発明においてこのようなセルロースアセテートを得るためには市販されている置換度は2.2から2.4のセルロースアセテートを加水分解すればよい。加水分解の方法としては水と親和性がありセルロースを溶解するような溶媒例えばジメチルスルフォオキシドと水の混合溶媒にセルロースアセテートを溶解し、触媒として酸ないしはヒドラジンなどを添加して加水分解(脱エステル化)反応を行なわせる。所望する置換度になった段階で過剰量の非溶媒を添加して沈殿物を得ることで低置換度のセルロースアセテートは得ることができる。尚置換度が1.4程度までの低置換度のセルロースアセテートであれば水非溶媒として好適に用いることができる。置換度が1.4未満のセルロースモノアセテートの場合はアセトンなどの有機溶媒非溶媒として用いることができる。
完全に加水分解して再生セルロースを得るためには、セルロースアセテートをアンモニア水などに縣濁して攪拌しながら、時間を置くことで完全加水分解物すなわち再生セルロースを得ることができる。
[アセチルセルロース以外のアシル化セルロース]
アセチルセルロース以外のアシル化セルロース例えば、プロピオン酸セルロース及び酪酸セルロースを得るためには、上記のセルロースアセテートの完全加水分解物(再生セルロース)を用いることでもよい。すなわちこれらのセルロースを12重量%以上の塩化リチウムを含むアミド類で 100℃以下で処理して溶解し、酸無水物、酸塩化物などで80℃以下でエステル化反応を行なうことでもよい。
このような方法を用いるとセルロースを高温に晒すことなく溶液に溶解することができるのでセルロースの重合度の低下が生じず好適である。このような方法を用いてセルロースをプロピオン酸セルロース及び酪酸セルロースとする場合には、出発原料を再生セルロースに限定する必要はなく、木材パルプ(銅エチレンジアミン溶液粘度から評価した重量平均重合度1820程度のもの)を50重量部の純水に30分間浸漬したのち、グラスフィルターを用いて脱液し、10重量部のジメチルアセトアミドで3回洗浄、脱液したものを用いることもできる。
溶解したセルロースのエステル化に際しては、酸塩化物、酸無水物等のエステル化剤を用い、反応を80℃以下、さらに好ましくは60℃以下で行なう。これは、80℃を超える反応温度はセルロースの重合度を著しく低下させるためである。また、好ましくはこの反応においてエステル化剤と等モル以上の三級アミンを共存させる。これは反応の触媒として働くと同時に、エステル化剤から副生し、解重合を惹き起こす酸性物質を中和するためである。酸無水物としては、例えば、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸等が挙げられ、酸塩化物としては、例えば、塩化プロピオニル、塩化ブチリル、塩化ステアロイル、塩化ベンゾイル等が挙げられる。所望する性能を発揮するセルロースアシレートを得るため意これたのエステル化剤は任意に選択することができる。それらの中でもプロピオン酸セルロース及び酪酸セルロースを用いることが最も好適である。
[セルロースアシレートのカルバモイル化]
本発明のセルロースアシレートカルバモイルは前記のセルロースアシレートをカルバモイル化することにより得られる。セルロースアシレートのカルバモイル化は前記のセルロースアシレートをピリジン、トリエチルアミン等の溶媒に溶解した状態でイソシアネート系化合物を反応させることにより得られる。前記塩基性溶媒はまた触媒としての作用も有している。これらの溶媒にはN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどのアミド系溶媒を加えることもできる。本発明の場合、カルバモイル化はセルロースアシレートに対して行なわれる。セルロースアシレートは再生セルロースを含むセルロースに比較して有機溶媒に対する溶解性が優れるためカルバモイル化が容易に行なえる特徴がある。
すなわち、カルバモイル化する出発原料を縣濁状態でカルバモイル化するのではなく、均一に溶解した溶液の状態でカルバモイル化することができる点で光学フィルムに要求される組成が均一セルロース骨格を有したカルバモイル化合物を得ることができる。特に好適なものは、セルロースアシレートの置換度が1.2から2.8のものであり、より好ましくはセルロースアシレートの置換度が1.4から2.6のものであり、更に好ましくは1.8から2.4のものである。特にセルロースアシレートがセルロースアセテートであるよりも、セルロースプロピオネートまたはセルロースブチレートの方が溶解性の点から好ましく用いることができる。
反応に用いるイソシアネート系の化合物について言えば具体的に例示すると、フェニルイソシアネート、o−トリルイソシアネート、m−トリルイソシアネート、p−トリルイソシアネート、2−エチルフェニルイソシアネート、3−エチルフェニルイソシアネート、4−エチルフェニルイソシアネート、2−プロピルフェニルイソシアネート、3−プロピルフェニルイソシアネート、4−プロピルフェニルイソシアネート、2−ブチルフェニルイソシアネート、3−ブチルフェニルイソシアネート、4−ブチルフェニルイソシアネート、2,3−ジメチルフェニルイソシアネート、2,4−ジメチルフェニルイソシアネート、2,5−ジメチルフェニルイソシアネート、2,6−ジメチルフェニルイソシアネート、3,4−ジメチルフェニルイソシアネート、3,5−ジメチルフェニルイソシアネート、2,3−ジエチルフェニルイソシアネート、2,4−ジエチルフェニルイソシアネート、2,5−ジエチルフェニルイソシアネート、2,6−ジエチルフェニルイソシアネート、3,4−ジエチルフェニルイソシアネート、3,5−ジエチルフェニルイソシアネート、2,4,6−トリメチルフェニルイソシアネート、2−メトキシフェニルイソシアネート、3−メトキシフェニルイソシアネート、4−メトキシフェニルイソシアネート、2−エトキシフェニルイソシアネート、3−エトキシフェニルイソシアネート、4−エトキシフェニルイソシアネート、などを用いることができる。
本発明においては、Rthを小さくする効果は、セルロースに結合したフェニルカルバモイルの置換基の並び方に依存する。このため、ファニル基の水素原子が他の置換基に置換されることは妨げられないが、一方において余りに大きな置換基がフェニル基の水素原子と置換わった場合には、フェニルカルバモイル基の置換基の並び方を妨げる可能性があり、好ましくない。
従って本発明において最も好ましく用いることができるイソシアネート系の化合物はイソシアン酸フェニルである。
本発明のセルロースアシレートフェニルカルバモイルの具体的な製造方法としてはセルロースアシレートをピリジンに溶解しこの溶解液の中に所定量のイソシアン酸フェニルなどのイソシアネート系化合物を滴下して反応させることができる。反応時間としてはフェニルカルバモイル置換基の置換度にも依存するか2から10時間程度の反応で反応させることができる。反応物は例えばメチルアルコールなどのセルロースアシレートカルバモイルの貧溶媒を過剰量添加することにより沈殿させ、濾別することができる。沈殿物の回収はロ布、ガラスフィルターなどの既知のものを適宜使用することができる。好適にはガラスフィルターを用いて濾別することができる。濾過物は、真空乾燥などの公知の乾燥により乾燥して得られる。乾燥の程度は重量減少を測定して恒量なることを確認すればよい。
[置換基構成の分析]
本発明のセルロースアシレートカルバモイルでの各置換基の置換度を求めるためには、最も簡便な方法として核磁気共鳴分析装置を用いることができる。即ち本発明のセルロースアシレートカルバモイルは1H−NMRを用いて各置換基別の置換度を測定することができる。具体的には、本発明のセルロースアシレートカルバモイルを重クロロホルムに適当量溶解した上でケミカルシフトを2ppm付近として、アシル基由来のメチル及びメチレンプロトンのシグナル強度を測定することにより求めることができる。またケミカルシフト3.4から5.5ppm付近にはグルコース残基由来(セルロース骨格由来)のメチルおよびメチン基プロトンシグナルを観測することができる。更にはケミカルシフトが6ppm付近(例えば6.6〜7.7ppm)にはフェニル基由来のプロトンシグナル強度を測定することが可能であり、これらの強度比からアシル置換度及びファニルカルバモイル置換度を測定することができる。
尚、セルロースアセテートの平均置換度を求める最も一般的な方法は、ASTM−D−817−91(セルロースアセテートなどの試験方法)における酢化度の測定方法である。通常市販されているセルロースアセテートの置換度は上記のASTMで測定された酢化度を標記している。ASTMに従い求めた酢化度(結合酢酸量)は、次式で置換度に換算できる。
DS=162×AV×0.01/(60−42×AV×0.01)
上記式において、DSはアセチル置換度であり、AVは酢化度(%)である。なお、換算して得られる置換度の値は、前記のNMR測定値との間に若干の誤差が生じることが普通である。換算値とNMR測定値とが異なる場合は、NMR測定値を採用する。また、NMR測定の具体的方法によって値が相違する場合は、上記手塚の方法によるNMR測定値を採用する。
[セルロースアシレートカルバモイル溶液]
本発明のセルロースアシレートカルバモイルは、溶媒に溶解して溶液(ドープ)を調製してフィルムを製膜できる。溶媒としては、有機溶媒、例えば、ハロゲン化炭化水素類(塩化メチレンなど)が好適である。これらのハロゲン化炭化水素類に、ケトン類(アセトンなど)、アセチル類(酢酸メチルなど)などの他の有機溶媒を混合してもよい。最も好適な組合せはハロゲン化炭化水素とアルコール類との組合せが例示できる。
本発明のセルロースアシレートカルバモイル溶液は、一般的なソルベントキャスト法におけるドープの調製方法および装置を用いて調製することができる。比較的低濃度の溶液は常温で攪拌することにより得ることができる。
セルロースアシレートカルバモイル溶液には、その用途に応じて、添加剤を添加してもよい。添加剤としては、可塑剤、紫外線防止剤や劣化防止剤(例えば、酸化防止剤、過酸化物分解剤、ラジカル禁止剤、金属不活性化剤、酸捕獲剤、アミン類)などが例示できる。
可塑剤としては、トリフェニルフォスフェート(TPP)、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート(TCP)などのリン酸アセチル系可塑剤、ジオクチルフタレート(DOP)などのフタル酸系可塑剤、O−アセチルクエン酸トリブチル(OACTB)およびクエン酸アセチルトリエチルなどのクエン酸系可塑剤などが含まれる。尚、本発明においてはレタデーション調整剤を含まなくてもRthを充分に低くすることができる。
[セルロースアシレートフェニルカルバモイルのフィルム]
本発明のフィルムを製造する方法および設備は、従来のセルローストリアセテートフイルム製造に供する溶液流延製膜方法と溶液流延製膜装置が使用できる。例えば、前記溶液を、支持体としての平滑なバンド上或いはドラム上に流延する。複数の前記溶液を、逐次流延あるいは共流延して二層以上のフィルムを製造してもよい。
[面内のレタデーション(Re)および厚さ方向のレタデーション(Rth)]
本発明に従うセルロースアシレートカルバモイルは、厚み方向の光学的な等方性が高いとの特徴がある。光学的等方性としては、面内のレタデーション(Re)および厚さ方向のレタデーション(Rth)があるが、特に重要なのは、厚さ方向のレタデーション(Rth)の値が小さいことである。
面内のレタデーション(Re)の測定では、エリプソメーター(偏光解析計AEP−100 商品名:島津製作所(株)製)を用いて、波長632.8nmにおける面内の縦横の屈折率差を求める。面内のレタデーション(Re)は、得られた屈折率差にフィルム膜厚さを乗じた値であり、下記の式で求められる。
Re=(nx−ny)×d
式中、nxは、横方向の屈折率であり;nyは、縦方向の屈折率であり;そして、dは、フィルムの厚さ(nm)である。面内のレタデーション(Re)が小さいほど、面内方向の光学的等方性が高い(光学異方性がない)ことを意味する。面内のレタデーション(Re)は、0乃至300nmであることが好ましく、この範囲内で目的に応じて自由に設定できる最も簡便な面内のレタデーション(Re)の調整方法は延伸することである。
フィルムの厚さ方向のレタデーション(Rth)は、エリプソメーター(偏光解析計AEP−100 商品名:島津製作所(株)製)を用いて波長632.8nmにおける厚さ方向の複屈折を求めこれにフィルム膜厚さを乗じた値であり、下記の式で求められる。
Rth={(nx+ny)/2−nz}×d
式中、nxは、横方向の屈折率;nyは、縦方向の屈折率;nzは、厚さ方向の屈折率であり;そして、dは、フィルムの厚さ(nm)である。[実施例]
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
(実施例1〜6、比較例1〜6、9〜14の酢酸セルロースの合成)
実施例1〜6はセルロースアシレートカルバモイルのアシレート基がアセテートの場合である。出発原料としては置換度2.44、数平均分子量50,000の酢酸セルロースを用いた。この酢酸セルロースは、Aldrichから購入して用いた(カタログ番号419028-500G)。
本実施例、比較例で用いた置換度2.40未満の酢酸セルロースは、前記の置換度2.44の酢酸セルロースから加水分解する方法で調製した。すなわち、140gの酢酸セルロース(置換度2.44)をj2,000mlのジメチルスルフォキシド/水の混合溶媒(前者/後者の重量比9/1)に溶解した。表1に記載した所定量のヒドラジン一水和物を20mlのジメチルスルフォキシドで希釈し、攪拌下で前記の酢酸セルロース/ジメチルスルフォキシド/水溶液に滴下した。この反応混合物を23℃で24時間攪拌し、部分脱アシル化を行った。脱アシル化時間を調整することにより、置換度1.4から2.2の酢酸セルロースを得た。その後、反応混合物を20Lの水中に攪拌下で滴下し、沈殿物を得た。沈殿物は、ガラスフィルター(G3)で回収し、水洗し、60℃で恒量になるまで減圧乾燥した。この生成物を2,500mlの酢酸に溶解し、前記と同様に20Lの操作で沈殿化し、乾燥を行い、所定の置換度の酢酸セルロースを得た。得られた酢酸セルロースの置換度は、ASTM−D−817−91(セルロースアセテートなどの試験方法)で分析した。
(実施例7、15、比較例7、比較例15のプロピオン酸セルロースの合成)
これらの実施例、比較例においてはセルロースアシレートカルバモイルのアシレート基がプロピオニル基の場合である。出発原料としては酢酸セルロースを用いた。すなわち、前記実施例と同様に300gの酢酸セルロース(Aldrich、置換度2.44、数平均分子量50,000、カタログ番号419028-500G)を6,000mlの28%アンモニア水に懸濁し、23℃で1週間攪拌を行い、再生セルロースを得た。この再生セルロース1重量部を50重量部の純水に30分間浸漬したのち、グラスフィルターを用いて脱液し、10重量部のジメチルアセトアミドで3回洗浄、脱液した。この前処理を施したのち、脱液した再生セルロースを塩化リチウム濃度13重量%のジメチルアセトアミド溶液に加え、100℃で5時間加熱した。さらに室温で85重量部のジメチルアセトアミドを加え、均一なセルロース溶液を得た。
このセルロース溶液に60重量部のピリジン及び 120重量部の無水プロピオン酸を加え、60℃で5時間反応を行った。反応浴を2000重量部の純水に投入し、生成物の置換度3のプロピオン酸セルロースを得た。前記置換度3のプロピオン酸セルロース14gを表1に記載の所定量のヒドラジン一水和物を用いて実施例1〜6に記載の方法と同様に脱アシル化し、置換度2.4のプロピオン酸セルロースを得た。得られたプロピオン酸セルロースの置換度はNMR法で測定した。
(実施例8、16、比較例8、比較例16の酪酸セルロースの合成)
これらの実施例、比較例においてはセルロースアシレートカルバモイルのアシレート基がブチリル基の場合である。出発原料としては酢酸セルロースを用いた。前記実施例7と同様の方法で酢酸セルロースを加水分解して再生セルロースを得た。その後、前置実施例7と同様の方法で均一なセルロース溶液を得た。このセルロース溶液に対して、前記実施例7と同様にして無水酪酸を用いてアシル化を行い、置換度3の酪酸セルロースを得た。この酪酸セルロースを前記実施例と同様に表1に記載のヒドラジン一水和物を加えて脱アシル化することで置換度が2.4の酪酸セルロースを得た。酢酸セルロースの置換度はNMR法で分析した。
Figure 0005406580
(フェニルカルバモイル化セルロースアシレートの合成)
上記の実施例比較例のセルロースアシレートに対して下記の方法でファニルカルバモイル化を行なった。70gのセルロースアシレートを、1,500mlのピリジンに溶解(または懸濁)した。表2に記載の所定量のイソシアン酸フェニルを滴下し、80℃で6時間フェニルカルバモイル化を行った。反応混合物は、40Lのメタノールに攪拌下で滴下し、沈殿物を得た。沈殿物はグラスフィルター(G3)で回収し、メタノールで洗浄し、60℃で恒量になるまで減圧乾燥し、実施例比較例の各種のアシル置換度及びフェニルカルバモイル置換度のフェニルカルバモイル化セルロ−スアシレートを得た。得られたセルロースアシルフェニルカルバモイルは重クロロホルムを溶媒とし1H-NMR分析を行い、アシル置換度及びフェニルカルバモイル置換度を算出した。
Figure 0005406580
(Rthの測定)
得られた各種のセルロースアシルフェニルカルバモイルについて、エリプソメーターを用いてRthを測定した。
Figure 0005406580
表3から明らかなように、比較例に比べ、実施例では、同じセルロースアシレートカルバモイルであってもRthが小さく(絶対値としても小さく)かつ総置換度を2.3から2.8の範囲に調整することができ、有機溶媒への溶解性にも優れる。
本発明のセルロースアシレートカルバモイルは光学的特性に優れるため、種々の光学フィルム、例えば、偏光板の保護フィルム、位相差フィルム、光学補償フィルム、カラーフィルタ、視野角拡大フィルム、反射防止フィルム、液晶表示装置用フィルムなどとして使用できる。特に、偏光板の保護フィルム(例えば、ポリビニルアルコールとヨウ素との錯体で構成された偏光膜の保護フィルム)、位相差フィルム、光学補償フィルム(液晶表示装置用光学補償フィルムなど)から選択された光学フィルムとして有用である。
光学補償フィルムについて言及すると、本発明のセルロースアセテートフィルムは、VAモードの液晶セルを有するVA型液晶表示装置の光学補償シートの支持体、OCBモードの液晶セルを有するOCB型液晶表示装置あるいはHANモードの液晶セルを有するHAN型液晶表示装置の光学補償シートの支持体、ASM(AxiallySymmetricAlignedMicrocell)モードの液晶セルを有するASM型液晶表示装置の光学補償シートの支持体として好ましく用いられる。

Claims (5)

  1. セルロースの水酸基の一部または全てをアシル基及びフェニルカルバモイル基で置換した誘導体であって、任意の総置換度(DStotal)におけるフェニルカルバモイル基置換度(DSpc)が次の範囲にあることを特徴とするセルロースアセテートフェニルカルバモイル。
    (但し、DStotal>DSpc)
    (a+b×DStotal−d)/(b−c)<DSpc (式1)
    a: 0.0550
    b:−0.0164
    c:−0.0367
    d:−0.0050
  2. アシル基がアセチル基、プロピオニル基、またはブチリル基の何れかである請求項1に記載のセルロースアシルファニルカルバモイル。
  3. 総置換度(DStotal)が2.8以上でかつ3.0以下である請求項1に記載のセルロースアシルフェニルカルバモイル。
  4. フェニルカルバモイル置換度が0.6以上でかつ2.0以下である請求項に記載のセルロースアシルフェニルカルバモイル。
  5. 100μmのフィルムの厚み方向のレタデーションが‐30〜−160nmであるセルロースアシレートカルバモイルからなるポジィテイブCプレート。
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