JP2011095694A - Va型液晶表示装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】正面コントラストが高く、表示ムラが少ないVA型液晶表示装置の提供。
【解決手段】フロント側偏光子、リア側偏光子、フロント側偏光子とリア側偏光子との間に配置される液晶層、及び該液晶層とリア側偏光子との間に配置されるカラーフィルタ層を有し、前記リア側偏光子と前記カラーフィルタ層との間に配置される1層又は2層以上の位相差層が全体として(以下、リア側偏光子とカラーフィルタ層との間に配置される1層又は2層以上の位相差層の全体を「リア側位相差領域」という)、下記式(I)
(I): |Rth(590)|≦90nm
を満足し、前記リア側位相差領域が、光弾性係数が3×10-122/N未満である少なくとも1枚の熱可塑性樹脂フィルム(A)からなることを特徴とするVA型液晶表示装置である。但し、Rth(λ)は、波長λnmにおける厚み方向のレターデーション(nm)を意味する。
【選択図】図1

Description

本発明は、正面コントラストが改善され、高温、高湿条件下において表示ムラが低減されたVA(Vertically Aligned)型液晶表示装置に関する。
近年、液晶表示装置の高コントラスト(CR)化が進んでいる。特に、VA型液晶表示装置は、他のモードと比較して法線方向のCR(以下、「正面CR」という)が高いという長所があり、その長所をより改善するための研究開発が種々行われている。その結果、この6年間で、VA型液晶表示装置の正面CRは、400程度から8000程度に、約20倍高くなっている。
例えば、透過率を上げるための一手段として、カラーフィルタ・オン・アレイ(COA)構造がある(例えば、特許文献1、2及び3)。COA構造によれば、開口率を大きくすることができるので、白表示時の透過率を上げることができる。現在、環境問題に対する関心が高く、COA構造を採用して透過率を改善することは消費電力の軽減に寄与するものであり、環境の観点でも好ましい。
ところで、正面CRは、白表示時及び黒表示時の2つの透過率(白輝度及び黒輝度)によって決定されるので、透過率を上昇するだけでは達成できない。白表示時の透過率を上昇できても、同時に黒表示時の透過率も上昇してしまうのでは、高CR化を達成することはできない。白表示時の透過率を改善可能な構造を採用して正面CRを高めるためには、その構造を採用することによる黒透過率の上昇を抑制することが重要である。
一方、液晶表示装置については、正面CRが高いことのみならず、斜め方向のCR(以下、「視野角CR」という場合がある)も高いことが重要である。VA型液晶表示装置については、黒表示時の斜め方向に生じる光漏れを軽減する技術として、位相差フィルムを採用することが種々提案されている(例えば、特許文献4)。一般的には、液晶セルを中心として、フロント側とリア側にそれぞれ位相差フィルムを配置し、光学補償に必要な位相差を2枚の位相差フィルムのそれぞれに分担させて光学補償を達成している。光学補償の組み合わせには通常2つの方式が用いられている。一方の方式は、フロント側及びリア側にそれぞれ配置される位相差フィルムに位相差を等しく分担させる方式であり、使用するフィルムを一種類にできるメリットがある。他方の方式は、片側に配置される位相差フィルムにより大きな位相差を分担させる方式であり、安価なフィルムとの組み合わせで光学補償が可能なことからコスト的に有利である。後者の方式では、リア側に配置される位相差フィルムにより大きな位相差を分担させる方が実用上一般的であった。その理由の1つは、製造コストにある。この理由に関しては、特許文献5に、「一方の偏光板の(液晶セルと偏光膜との間の)保護膜のみに本発明のセルロースアシレート系フィルムを用いた場合、これが、上側偏光板(観察側)、下側偏光板(バックライト側)のどちら側でもよく、機能的には何ら問題がない。ただし、上側偏光板として使用すると機能性膜を観察側(上側)に設ける必要性があり生産得率が下がる可能性があるため、下側偏光板として使用する場合が高いと考えられ、より好ましい実施形態であると考えられる」との記載がある。第2の理由は、リア側により大きな位相差を有するフィルムを配置する方が、耐衝撃性や、温度変化および湿度変化などの耐環境性の点では好ましいためである。
特開2005−99499号公報 特開2005−258004号公報 特開2005−3733号公報 特開2006−184640号公報 特開2006−241293号公報の[0265]欄
本発明者が、VA型液晶表示装置にCOA構造を採用することによって正面CRを改善することを試みたところ、正面CRの改善が達成できないことがわかった。さらに検討した結果、その原因は、VA型液晶表示装置の黒表示時の斜め方向に生じる光漏れの軽減、即ち視野角CRの改善、に寄与する位相差フィルムが存在することが一因であることがわかった。特に、上記の一般的な構成である、リア側に大きな位相差を有する位相差フィルムが配置されたVA型液晶表示装置において、COA構造を採用すると、正面CRが改善されないばかりか、むしろ低下することがわかった。位相差フィルムを有するVA型液晶表示装置において、COA構造を採用することの問題点については、本発明者が知る限りでは、従来なんら知られていなかったといえる。
即ち、本発明は、従来知られていなかった、位相差フィルムを有するVA型液晶表示装置において、COA構造を採用することの問題点を解決することを課題とする。具体的には、本発明は、正面コントラストが改善された、COA構造のVA型液晶表示装置を提供することを課題とする。
また、本発明は高温、高湿条件下において、表示ムラの改善された、COA構造のVA型液晶表示装置を提供することを課題とする。
上記した通り、本発明者が検討した結果、COA構造を採用すると、開口率が拡大されるので白表示時の透過率は上昇するが、一方で黒表示時の光漏れも高くなってしまうことがわかった。特に、リア側に位相差が大きな位相差フィルムが配置されているVA型液晶表示装置に、COA構造を採用すると、正面CRが改善されないばかりか、COA構造を採用していないものより正面CRがむしろ低下してしまうことがわかった。本発明者は、この問題を解決するために、種々検討した結果、リア側に配置される位相差フィルムの合計のRthが所定の範囲であると、COA構造を採用したVA型液晶表示装置の正面CRを格段に改善でき、また、リア側に配置される位相差フィルムの光弾性係数がある範囲内であると、高温・高湿条件下における表示ムラを改善することができるとの知見を得、本発明を完成するに至った。
即ち、上記課題を解決するための手段は以下の通りである。
[1] フロント側偏光子、リア側偏光子、フロント側偏光子とリア側偏光子との間に配置される液晶層、及び該液晶層とリア側偏光子との間に配置されるカラーフィルタ層を有し、前記リア側偏光子と前記カラーフィルタ層との間に配置される1層又は2層以上の位相差層が全体として(以下、リア側偏光子とカラーフィルタ層との間に配置される1層又は2層以上の位相差層の全体を「リア側位相差領域」という)、下記式(I)
(I): |Rth(590)|≦90nm
を満足し、前記リア側位相差領域が、光弾性係数が3×10-122/N未満である少なくとも1枚の熱可塑性樹脂フィルム(A)からなることを特徴とするVA型液晶表示装置:
但し、Rth(λ)は、波長λnmにおける厚み方向のレターデーション(nm)を意味する。
[2] 前記液晶層が、前記カラーフィルタ層を備えた画素を区画するブラックマトリクスを有するアレイ基板と、前記アレイ基板に対向して配置された対向基板とに挟持されていることを特徴とする[1]のVA型液晶表示装置。
[3] 少なくとも1枚の熱可塑性樹脂フィルム(A)の光弾性係数が負である[1]又は[2]のVA型液晶表示装置。
[4] 前記リア側位相差領域が、下記式(II)
(II): |Re(590)|≦20nm
を満足することを特徴とする[1]〜[3]のいずれかのVA型液晶表示装置:
但し、Re(λ)は、波長λnmにおける面内レターデーション(nm)を意味する。
[5] 前記フロント側偏光子と前記液晶層との間に配置される1層又は2層以上の位相差層が全体して(以下、フロント側偏光子と液晶層との間に配置される1層又は2層以上の位相差層の全体を「フロント側位相差領域」という)、下記式(III)及び(IV)
(III): 30nm≦Re(590)≦90nm
(IV): 150nm≦Rth(590)≦300nm
を満足することを特徴とする[1]〜[4]のいずれかのVA型液晶表示装置。
[6] 前記熱可塑性樹脂フィルム(A)が、アクリル系樹脂フィルムであることを特徴とする[1]〜[5]のいずれかのVA型液晶表示装置。
[7] 前記熱可塑性樹脂フィルム(A)が、ラクトン環構造単位、グルタル酸無水物単位、グルタルイミド単位のいずれかを含有するアクリル系樹脂フィルムであることを特徴とする[1]〜[6]のいずれかのVA型液晶表示装置。
[8] 前記熱可塑性樹脂フィルム(A)が、セルロースアシレート系ポリマーを含有することを特徴とする[1]〜[7]のいずれかのVA型液晶表示装置。
[9] 前記フロント側位相差領域が、少なくとも1枚の二軸性の高分子フィルムからなることを特徴とする[1]〜[8]のいずれかのVA型液晶表示装置。
[10] 前記フロント側位相差領域が、少なくとも1枚の一軸性の高分子フィルムからなることを特徴とする[1]〜[9]のいずれかのVA型液晶表示装置。
[11] 前記二軸性の高分子フィルム又は一軸性の高分子フィルムが、セルロースアシレート系フィルム、環状オレフィン系樹脂フィルム、アクリル系樹脂フィルムから選ばれるいずれか1つであることを特徴とする[9]又は[10]のVA型液晶表示装置。
本発明によれば、正面コントラストが高く、高温、高湿条件下において、表示ムラの改善された、COA構造のVA型液晶表示装置を提供することができる。
本発明のVA型液晶表示装置の一例の断面模式図である。 参照のために用いた、非COA構造のVA型液晶表示装置の一例の断面模式図である。
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
まず、本明細書で用いられる用語について、説明する。
(レターデーション、Re及びRth)
本明細書において、Re(λ)及びRth(λ)は各々、波長λにおける面内のレターデーション(nm)及び厚さ方向のレターデーション(nm)を表す。Re(λ)はKOBRA 21ADH又はWR(王子計測機器(株)製)において波長λnmの光をフィルム法線方向に入射させて測定される。なお、KOBRAの標準波長は590nmである。
測定されるフィルム等のサンプルが1軸又は2軸の屈折率楕円体で表されるものである場合には、以下の方法によりRth(λ)は算出される。
Rth(λ)は前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADH又はWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフィルム面内の任意の方向を回転軸とする)のフィルム法線方向に対して法線方向から片側50度まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて全部で6点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADH又はWRが算出する。
上記において、法線方向から面内の遅相軸を回転軸として、ある傾斜角度にレターデーションの値がゼロとなる方向をもつフィルムの場合には、その傾斜角度より大きい傾斜角度でのレターデーション値はその符号を負に変更した後、KOBRA 21ADH又はWRが算出する。
尚、遅相軸を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフィルム面内の任意の方向を回転軸とする)、任意の傾斜した2方向からレターデーション値を測定し、その値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基に、以下の式(X)及び式(XI)よりRthを算出することもできる。
Figure 2011095694
注記:
上記のRe(θ)は法線方向から角度θ傾斜した方向におけるレターデーション値をあらわす。また、式中、nxは面内における遅相軸方向の屈折率を表し、nyは面内においてnxに直交する方向の屈折率を表し、nzはnx及びnyに直交する方向の屈折率を表す。dは膜厚を表す。
測定されるフィルムが1軸や2軸の屈折率楕円体で表現できないもの、いわゆる光学軸(optic axis)がないフィルムの場合には、以下の方法によりRth(λ)は算出される。
Rth(λ)は前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADH又はWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)としてフィルム法線方向に対して−50度から+50度まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて11点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADH又はWRが算出する。
上記の測定において、平均屈折率の仮定値は ポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS,INC)、各種光学フィルムのカタログの値を使用することができる

。平均屈折率の値が既知でないものについてはアッベ屈折計で測定することができる。主な光学フィルムの平均屈折率の値を以下に例示する:
セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)である。
これら平均屈折率の仮定値と膜厚を入力することで、KOBRA 21ADH又はWRはnx、ny、nzを算出する。この算出されたnx,ny,nzよりNz=(nx−nz)/(nx−ny)が更に算出される。
本明細書において、位相差フィルム等の「遅相軸」は、屈折率が最大となる方向を意味する。また、「可視光領域」とは、380nm〜780nmのことをいう。また、本明細書では、測定波長について特に付記がない場合は、測定波長は590nmである。波長590nmは、本発明が属する技術分野の業界において、フィルムの物性値の管理に一般的に用いられている波長である。
また、本明細書において、位相差領域、位相差フィルム、及び液晶層等の各部材の光学特性を示す数値、数値範囲、及び定性的な表現(例えば、「同等」、「等しい」等の表現)については、液晶表示装置やそれに用いられる部材について一般的に許容される誤差を含む数値、数値範囲及び性質を示していると解釈されるものとする。
本明細書において、位相差フィルムとは、液晶セルと偏光子の間に配置された自己支持性のある膜を意味する。(レターデーションの大小は関係ない。)なお、位相差膜、位相差層、位相差フィルムは同義である。位相差領域は液晶セルと偏光子の間に配置された1
層または2層以上の位相差フィルムの総称である。
また、本明細書では、「フロント側」とは表示面側を意味し、「リア側」とはバックライト側を意味する。また、本明細書で「正面」とは、表示面に対する法線方向を意味し、「正面コントラスト(CR)」は、表示面の法線方向において測定される白輝度及び黒輝度から算出されるコントラストをいい、「視野角コントラスト(CR)」は、表示面の法線方向から傾斜した斜め方向(例えば、表示面に対して、方位角方向45度、極角方向60度で定義される方向)において測定される白輝度及び黒輝度から算出されるコントラストをいうものとする。
本発明は、COA構造を有するVA型液晶表示装置に関する。本発明の液晶表示装置の一例の概略断面図を図1に、及び参照のため、非COA構造のVA型液晶表示装置の概略断面図を図2に示す。
図1に示す本発明のVA側液晶表示装置は、フロント側偏光子26、リア側偏光子24、フロント側偏光子26とリア側偏光子24との間に配置される液晶層10、液晶層10とリア側偏光子24との間に配置されるカラーフィルタ層12、リア側偏光子24とカラーフィルタ層12との間に配置されるリア側位相差領域20、及びフロント側偏光子26と液晶層10との間に配置されるフロント側位相差領域22を有する。図1に示すVA型液晶表示装置が有する液晶セルLCは、液晶層10が、フロント側基板18とリア側基板16とによって挟持され、アレイ部材14及びカラーフィルタ層12が同一の基板、リア側基板16、上に配置されている、COA構造の液晶セルである。また液晶セルLCは、ブラックマトリックス(図示せず)を有していてもよく、その位置はリア側基板16上であっても、フロント側基板18上であってもよい。
図2は、参考例であり、非COA構造の液晶セルLC'を有するVA型液晶表示装置の一例の概略断面図である。図2中、液晶セルLC'は、液晶層50と、それを挟持するフロント側基板58及びリア側基板56を有し、さらにカラーフィルタ層52が、アレイ部材54とは異なる基板、フロント側基板58、上に配置されている、非COA構造の液晶セルである。
図1及び図2のVA型液晶表示装置について、黒表示時の正面方向の透過率を上げる、即ち光漏れを悪化させる原因について説明する。
一般的には、VA型液晶表示装置では、黒表示時には液晶層(10又は50)は垂直配向状態になるので、リア側偏光子(24又は64)を通過し、法線方向に進む直線偏光は、その後、液晶層(10又は50)を通過してもその偏光状態は変化せず、原則として全てフロント側偏光子(26又は66)の吸収軸で吸収される。即ち、原則として、黒表示時には法線方向には光漏れはないといえる。しかし、VA型液晶表示装置の黒表示時の正面透過率はゼロではない。この理由の1つは、液晶層(10又は50)中の液晶分子が揺らいでいるためであり、液晶層に入射した光がある程度その揺らぎによって散乱されるためであることが知られている。液晶層(10又は50)に入射した光が、完全に、フロント側偏光子(26又は66)の吸収軸で吸収される直線偏光成分しか含んでいないほど、その影響が大きくなり、正面の光漏れが多くなる傾向がある。即ち、リア側に配置される位相差領域(20又は60)の位相差が大きく、高い楕円偏光率の楕円偏光に変換されているほど、この揺らぎによる正面の光漏れを軽減できる。
しかし、上記した通り、本発明者が検討した結果、液晶層中の液晶分子の揺らぎ以外に、リア側偏光子(24又は64)と液晶層(10又は50)との間に配置される位相差フィルム(20又は60)の位相差にもその一因があることがわかった。バックライト(28又は68)からの指向性のある光がリア側偏光子(24又は64)を通過して、斜め方向から当該位相差フィルム(20又は60)に入射すると、その位相差によって直線偏光は楕円偏光に変換される。この楕円偏光は、液晶セル中のアレイ部材(14又は54)、及びカラーフィルタ層(12又は52)によって回折及び散乱され、少なくとも一部は正面方向に進む光となる。当該楕円偏光には、フロント側偏光子(26又は66)の吸収軸でブロックできない直線偏光成分が含まれるため、黒表示時においても正面方向に光が漏れ、正面CR低下の原因になる。このアレイ部材(TFTアレイ等)やカラーフィルタ層を通過することによって生じる光学現象は、例えば、アレイ部材やカラーフィルタ層の表面が完全に平滑ではなく、ある程度の凹凸があることや、当該部材中に散乱因子等が含有されることによる。このアレイ部材やカラーフィルタ層を通過することによって生じる光学現象が、正面方向の光漏れに与える影響は、前記した液晶層中の液晶分子が揺らいでいることによる影響よりも大きい。
さらに本発明者が鋭意検討した結果、位相差フィルムを通過することで楕円偏光となった光が液晶セル中の所定の部材を通過する際に受ける光学現象(回折及び散乱等)は、光が液晶層に入射する前に当該部材を通過するか、又は液晶層を通過した後に当該部材を通過するかで、正面方向の光漏れに影響する態様が異なることがわかった。図1及び図2のいずれの構成でも、光は、液晶層(10又は50)に入射する前にアレイ部材(14又は54)を通過する。一方、図1に示すCOA構造では、光は、液晶層(10)を通過する前にカラーフィルタ層(12)を通過するが、図2に示す非COA構造では、光は、液晶層(50)を通過した後にカラーフィルタ層(52)を通過する。
アレイ部材やカラーフィルタ層では、より小さい楕円偏光率の楕円偏光が入射すれば、それだけ当該部材を通過することによって生じる光学現象が正面方向の光漏れに与える影響は軽減される。
そのため、アレイ部材での光学現象による光漏れを少なくするためには、より小さい楕円偏光率の楕円偏光が入射すればよく、COA構造の場合、カラーフィルタ層での光学現象による光漏れも同時に少なくできる。
光が液晶層に入射する前に通過する部材では、入射光の楕円偏光率は、その前に通過するリア側位相差領域(20又は60)の位相差によって決まる。一方で、液晶層に入射した後に通過する部材では、リア側位相差領域(20又は60)の位相差に加えて、液晶層の位相差によって決まる。ここで、VA用液晶表示装置の場合、白表示と黒表示のスイッチを考慮すると、通常、液晶層のΔnd(590)(dは液晶層の厚さ(nm)、Δn(λ)は液晶層の波長λにおける屈折率異方性であり、Δnd(λ)はΔn(λ)とdの積のことである。)は280〜350nm程度に設定される。非COA構造の場合、アレイ部材の光漏れが少なくなるようにリア側位相差領域の位相差を設定しても、液晶を通過すると楕円率は逆に大きくなる結果、カラーフィルタ層などの部材を通過することによって生じる光学現象による光漏れが増加する。リア側位相差領域(20又は60)の位相差の高低、各部材を通過することによる正面方向光漏れに与える影響の傾向、及びその影響の強弱をまとめると、以下の表に示す通りになる。
Figure 2011095694
上記表に示す通り、非COA構造の液晶セルを有するVA型液晶表示装置では、リア側位相差フィルム(60)の位相差を低くすると、アレイ部材(54)による光学現象によって生じる正面方向の光漏れは軽減される方向に作用する一方で、カラーフィルタ層(52)による光学現象によって生じる正面方向の光漏れは増加する方向に作用し;リア側位相差フィルム(60)の位相差を高くすると、アレイ部材(54)による光学現象によって生じる正面方向の光漏れは増加する方向に作用する一方で、カラーフィルタ層(52)による光学現象によって生じる正面方向の光漏れは軽減する方向に作用し;即ち、双方の作用が相殺される関係にある。そのため、非COA構造では、リア側位相差フィルムの位相差の高低は、正面CRにはほとんど影響せず、非COA構造のVA型液晶表示装置では、正面CRの観点で、リア側位相差フィルムの位相差を検討する必要はなかった。即ち、リア側位相差フィルムにより高い位相差を分担させても、正面CRの低下の問題は顕在化せず、前記した通り、生産コストや耐衝撃性や耐環境性を考慮して、リア側位相差フィルムに高い位相差を分担させる構成が実用されていたのである。
一方、上記表に示す通り、COA構造の液晶セルを有する図1のVA型液晶表示装置では、リア側位相差領域(20)の位相差を低くすると、アレイ部材(14)による光学現象によって生じる正面方向の光漏れは軽減される方向に作用するとともに、カラーフィルタ層(12)による光学現象によって生じる正面方向の光漏れも軽減する方向に作用するし;逆に、リア側位相差領域(20)の位相差が高くなれば、アレイ部材(14)による光学現象によって生じる正面方向の光漏れは増大する方向に作用するとともに、カラーフィルタ層(12)による光学現象によって生じる正面方向の光漏れも増大する方向に作用する。よって、COA構造を採用し、開口率を拡大しても、後者の構成では、アレイ部材及びカラーフィルタ層を通過することによる光学現象によって、黒表示時の正面の光漏れが増大してしまうため、正面CRを改善することはできず、むしろ正面CRが低下してしまう。この問題点は、本発明者が知る限りでは、従来知られていない問題点である。
なお、リア側の位相差領域のレターデーションが、正面CRに与える影響は、低い正面CRの液晶表示装置ではほとんど無視できる程度である。しかし、近年提供されている、高い正面CR(例えば、正面CRが1500以上)の液晶表示装置について、さらなる正面CRの改善を図るためには、この影響を無視することはできない。本発明は、正面CRが1500以上の液晶表示装置について、正面CRをさらに改善するのに特に有用である。
本発明者が鋭意検討した結果、COA構造の液晶セルに入射する前に光が通過するリア側位相差領域(図1中では20)が、下記式(I)
(I): |Rth(590)|≦90nm
を満足することにより、驚くべきことに、上記問題点を解決し得ることがわかった。光がCOA構造の液晶セルLCに入射する前に通過する位相差領域全体の位相差が、上記式(I)を満足する限り、斜め方向から入射した光が、その後、液晶セル中のアレイ部材14及びカラーフィルタ層12で散乱もしくは回折等されて、法線方向に進む光となっても、並びに液晶層中の液晶分子の揺らぎの影響を受けても、黒表示時の正面方向の光漏れを過度に上昇させることなく、非COA構造の液晶セルを採用したVA型液晶表示装置と比較して、正面CRを格段に改善することができる。本発明の効果は、COA構造を採用して開口率を拡大することのみによっては得られない効果であり、COA構造を採用するとともに、リア側位相差領域が上記式(I)を満足することによってはじめて得られる効果である。さらに、本発明では、リア側位相差領域を、光弾性係数が3×10-122/N未満である少なくとも1枚の熱可塑性樹脂フィルム(A)で構成している。その結果、正面CRの向上効果とともに、高温・高湿条件下における表示ムラの軽減効果も得られる。
図1で図示していない他の部材(例えば、ブラックマトリックス)についても、前述のカラーフィルタ層およびアレイ部材と同様である。すなわち、光が液晶層に入射する前に通過する部材では、上記表の非COA構造のアレイ部材と同様になり、液晶層に入射した後に通過する部材では、上記表の非COA構造のカラーフィルタ部材と同様になる。
なお、前述のように、カラーフィルタ、ブラックマトリックス、アレイ部材での光学現象による、黒表示時の光漏れの入射偏光状態依存性は、すべて同じ傾向を示すが、ブラックマトリックスの寄与は相対的に小さいため、COA構造の液晶表示装置におけるブラックマトリックスの位置は、液晶セル内のいずれでもよいが、高い正面CRを得るためには、リア側偏光子と液晶層の間に位置することが好ましい。
図1中のリア側位相差領域20は、単層構造であっても、2層以上からなる積層体であってもよい。単層構造である態様では、当該層が、式(I)を満足する必要があり、2層以上の積層体の態様では、積層体が全体として前記式(I)を満足する必要がある。
また、より高い正面CRを得るためには、図1中のリア側位相差領域20として配置されるフィルムのヘイズは、0.5以下が好ましく、0.3以下がより好ましく、0.2以下がさらに好ましい。なお、本明細書において、フィルムのヘイズの測定方法は以下の通りである。フィルム試料40mm×80mmを準備し、25℃,60%RHの環境下、ヘイズメーター(NDH−2000、日本電色工業(株)製)により、JIS K−6714に従って測定する。
図1中のフロント側位相差領域22も、単層構造であっても、2層以上からなる積層体であってもよい。フロント側位相差領域22が、視野角CRの改善に寄与する位相差を有すると、本発明の効果、即ち正面CRの改善のみならず、視野角CRの改善も達成できるので好ましい。液晶セルLCの液晶層のΔnd(λ)は、上記した通り、一般的には、280〜350nm程度であるが、フロント側位相差領域22のレターデーション、特にRth、の好ましい範囲は、リア側位相差領域20のレターデーション及び液晶層のΔnd(λ)の値に応じて変動する。斜めCR改善のため、液晶層のΔnd(λ)に対する、フロント側位相差領域とリア側位相差領域の、好ましい組み合わせについては、種々の公報に記載があり、例えば、特許3282986号、第3666666号及び第3556159号等に記載があり、参照することができる。この観点では、フロント側位相差領域22は、下記式(III)及び(IV)
(III): 30nm≦Re(590)≦90nm
(IV): 150nm≦Rth(590)≦300nm
を満足するのが好ましい。上記特性を満足するために、フロント側位相差領域22は、例えば、1枚もしくは2枚以上の二軸性の高分子フィルムからなっていてもよいし、1枚もしくは2枚以上の二軸性の高分子フィルムを含んでいてもよい。さらに、フロント側位相差領域22は、1枚もしくは2枚以上の一軸性の高分子フィルムを含んでいてもよい。
なお、VA型液晶セルのΔnd(590)は一般的に280〜350nm程度であるが、これは白表示時の透過率をなるべく高くするためである。一方で、Δnd(590)が280nm以下の場合、Δnd(590)の低下に伴い白輝度がわずかに低下するものの、セルの厚みdが小さくなるため、高速応答性に優れる液晶表示装置となる。リア側の第1の位相差領域が低レターデーションであれば、正面方向への光漏れが少なくなる結果、高い正面CRが得られるという本発明の特徴は、いずれのΔnd(590)の液晶表示装置においても効果がある。
本発明の一態様では、前記リア側位相差領域(図1中の20)が、下記式(II)
(II): |Re(590)|≦20nm
を満足する。Reが高い位相差フィルムをリア側に配置しても、Rthが前記式(I)を満足する限り、本発明の効果を得ることができる。一方、Reがある程度ある位相差フィルムをリア側に配置する場合は、リア側偏光子の吸収軸との関係等、他の部材の光学的軸との関係で軸合わせを厳密に行う必要が生じるであろう。前記リア側位相差領域が全体として、Reが低く、前記式(II)を満足していると、リア側位相差領域として利用する1枚又は2枚以上の位相差フィルムを液晶表示装置に組み込む際、軸合わせ等が容易となるので好ましい。
図1において、図1中の液晶セルLCが有するCOA構造の「COA」とは、カラーフィルタ・オン・アレイの略であり、アクティブマトリクス基板上にカラーフィルタを形成した構造をCOA構造と言う。COA構造は、当初は、通常のTFT基板にカラーフィルムを形成するだけのものであったが、近年では、表示特性改良のため、画素電極をカラーフィルム上側に形成し、コンタクトホールとよばれる小穴を通じて、画素電極とTFTとを接続する構造が一般的となっている。本発明ではいずれの構造であってもよい。COA構造では、カラーフィルタ層の厚みは、従来型のカラーフィルム層(1〜2μm程度)より厚く、2〜4μm程度が一般的である。これは画素電極の端部と配線の間にできる寄生容量を抑制するためである。本発明の液晶表示装置が有するカラーフィルタ層も2〜4μm程度の厚みが好ましいが、この範囲に限定されるものではない。また、COA構造の液晶セルの製造では、カラーフィルタ層上の画素電極をパターニングする必要があり、エッチング液や剥離液への耐性が要求される。この目的で、膜厚を厚めに調整したカラーフィルタ材料(着色感光性組成物)を用いるが、通常のカラーフィルタ材料で形成したカラーフィルタ層+オーバーコート層という2層構成をとることもある。本発明では、いずれの構成であってもよい。
なお、COA構造については、上記特許文献1及び2の他、特開2007−240544号公報、特開2004−163979号公報等にも記載があり、本発明においては、いずれの構成も採用することができる。
また、本発明の液晶表示装置が有するカラーフィルタは、通常の液晶表示装置が有するカラーフィルタと同様、基板の画素部位に複数の異なる色(例えば赤、緑、青の光の3原色、透明、黄色、シアンなど)を配列したカラーフィルタである。その作製方法は様々であり、例えば、着色のための材料(有機顔料、染料、カーボンブラックなど)を用い、カラーレジストと呼ばれる着色感光性組成物(無色の場合もある)を調製し、これを基板の上に塗布して層を形成し、フォトリソグラフィ法によりパターン形成するのが一般的である。前記着色感光性組成物を基板の上に塗布する方法も様々であり、例えば初期には、スピン・コーター法が採用され、省液の観点で、スリット&スピン型コーター法が採用され、現在では、スリット・コーター法が一般的に採用されている。その他にロールコーティング法、バーコーティング法、ダイコーティング法などがある。また近年では、フォトリソグラフィにより離画壁とよばれるパターンを形成した後に、インクジェット方式により画素の色を形成することも行なわれている。この他に、着色非感光性組成物と感光性ポジ型レジストを組み合わせた方法、印刷法、電着法、フィルム転写法によるものなどが知られている。本発明に利用するカラーフィルタは、いずれの方法で作製されたものであってもよい。
カラーフィルタ形成用の材料についても特に制限はない。着色材料として、染料、有機顔料、無機顔料等、いずれを用いることもできる。染料は、高コントラスト化の要求から検討されていたが、近年は有機顔料の分散技術が進歩し、ソルトミリング法などで微細に砕いたブレークダウン顔料や、ビルドアップ法による微細化顔料などが高コントラスト化に用いられている。本発明には、いずれの着色材料を用いてもよい。
図1において、リア側位相差領域20及びフロント側位相差領域22の全部又は一部は、それぞれリア側偏光子24及びフロント側偏光子26の保護フィルムとしても機能していてもよい。また、図1中では省略したが、リア側偏光子24は、そのバックライト28側の表面に、保護フィルム、防汚性フィルム、アンチリフレクションフィルム、アンチグレアフィルム、アンチスタチックフィルム等の機能性フィルムを有していてもよく、同様に、フロント側偏光子は、その表示面側表面に、保護フィルム、防汚性フィルム、アンチリフレクションフィルム、アンチグレアフィルム、アンチスタチックフィルム等の機能性フィルムを有していてもよい。
ところで、前述した通り、片側に大きな位相差を分担させて光学補償する方式の場合、大きな位相差のフィルムは、リア側に配置されるのが従来一般的であったが、本発明のように、フロント側に配置した方が、偏光板としての得率が向上すると考えられる。その理由を説明する。
大きな位相差のフィルムは、高倍率で延伸する工程が必要であるため、フィルムに多くの添加剤を加えなくとも製造可能な安価フィルムいわゆるプレーンTAC=Reが0〜10nm、Rthが30〜80nmであるトリアセチルセルロースフィルム等)や小さな位相差のフィルムに比べて広幅化が困難である。通常の液晶表示装置には、横長の液晶セルが使用され、フロント側偏光子の吸収軸は水平方向(左右方向)に、リア側偏光子の吸収軸は鉛直方向(上下方向)に配置されるのが一般的である。さらに、工業的生産では、偏光子と位相差フィルムとをロール トゥ ロールで貼合するが一般的である。この製法で作製した偏光板を液晶セルに貼合することを考えると、フロント側に大きな位相差のフィルムを配置した方が、偏光板の幅方向を高い効率で使用することができ、即ち、得率が高くなる。本発明のように、リア側に位相差の小さな位相差のフィルムを配置する場合は、かかるフィルムは、広幅フィルムとしての作製が容易であり、広幅偏光子と組み合わせることで、さらに得率を高くできる。その結果、廃棄する偏光板の量を少なくすることができる。
ここで、具体的な数字で説明する。一般的には、位相差フィルムの幅は、概ね、1100mm、1300mm、1500mm、2000mm、2500mmであり、フィルムの厚さは、概ね25μm、40μm、80μmである。フィルムを巻いたロールの長さは、概ね2500m、4000mである。一方、VA型液晶表示装置の画面サイズは、仮にテレビ用途だと、画面サイズ20インチ、32インチ、40インチ、42インチ、52インチ、68インチなどである。一例として現在出荷が多い42インチを考えると、42インチ(標準4:3)では、画面幅が853mm(42インチワイド16:9は930mm)、画面高さが640mm(42インチワイドは523mm)である。従来一般的であったリア側に、大きな位相差のフィルムを配置する方式では、例えば、1300mm、1500mm幅の位相差フィルムでは、幅方向に一つの画面用の位相差フィルムしか採れない。本発明では、フロント側に位相差の大きなフィルムを配置するので、例えば、1300mm、1500mm幅の位相差フィルムであっても、画面高さ分を位相差フィルムの幅方向に採れればよく、よって、幅方向に二つの画面用の位相差フィルムを採ることができ、生産性が2倍近くになる。テレビのサイズは年々大型化するが、例えば、65インチ(標準)は画面幅が991mm、画面高さが1321mmであるので、従来一般的であったリア側配置では、広幅化した2000mmフィルムであっても幅方向に一つの画面用の位相差フィルムしか採れないが、本発明のように、フロント側配置では、幅方向に二つの画面用の位相差フィルムが採れる。更に68インチ(ワイド)は画面幅が1505mm、画面高さが846mmであるので、同様に2倍近い生産性が期待できる。
本発明のVA型液晶表示装置のモードについてはいずれであってもよく、具体的にはMVA(Multi-domain Vertical Alignment)型、PVA(Patterned Vertical Alignment)型、光配向型(Optical Alignment)、及びPSA(Polymer-Sustained Alignment)のいずれであってもよい。これらのモードの詳細については、特開2006−215326号公報、及び特表2008−538819号公報に詳細な記載がある。
以下、本発明のVA型液晶表示装置に用いられる種々の部材について、詳細に説明する。
1.リア側位相差領域及びフロント側位相差領域
本発明では、リア側偏光子とVA型液晶セル内のカラーフィルタ層との間に配置される1層又は2層以上の位相差層の全体を、「リア側位相差領域」という。リア側位相差領域は全体で、上記式(I)を満足する。上記式(II)をさらに満足するのが好ましい。
一態様では、前記リア側位相差領域は、|Rth(590)|≦20nmを満足する態様では、より好ましくは、
0nm≦Re(590)≦20nm、且つ|Rth(590)|≦20nm
を満足し、さらに好ましくは、
0nm≦Re(590)≦10nm、且つ|Rth(590)|≦10nm
を満足し、よりさらに好ましくは、下記式:
0nm≦Re(590)≦5nm、且つ|Rth(590)|≦5nm
を満足する。
他の態様では、前記リア側位相差領域は、20nm<|Rth(590)|≦90nmを満足する態様では、より好ましくは、
0nm≦Re(590)≦20nm、且つ20nm<|Rth(590)|≦90nmを満足し、さらに好ましくは、
0nm≦Re(590)≦10nm、且つ30nm≦|Rth(590)|≦90nmを満足し、よりさらに好ましくは、下記式:
0nm≦Re(590)≦10nm、且つ40nm≦|Rth(590)|≦80nmを満足する。
また、本発明では、フロント側偏光子とVA型液晶セル内の液晶層との間に配置される1層又は2層以上の位相差層の全体を、「フロント側位相差領域」という。フロント側位相差領域は全体で、及びリア側位相差領域が有する位相差との関係で、視野角CRの改善に寄与する位相差を有することが好ましい。
具体的には、フロント側位相差領域が、上記式(III)及び(IV)を満足するのが好ましく、前記リア側位相差領域が、上記式|Rth(590)|≦20nmを満足する態様では、フロント側位相差領域が、30nm≦Re(590)≦90nm、180nm≦Rth(590)≦300nmを満足するのが好ましく、VA型液晶セルのΔnd(590)が280〜350nm程度の場合は、50nm≦Re(590)≦75nm、且つ220nm≦Rth(590)≦270nmを満足するのがより好ましい。VA型液晶セルのΔnd(590)が280nm以下の場合は、50nm≦Re(590)≦80nm、且つ180nm≦Rth(590)≦280nmを満足することがより好ましく、50nm≦Re(590)≦80nm、且つ180nm≦Rth(590)≦230nmを満足することがさらに好ましい。
また、前記リア側位相差領域が、20nm<|Rth(590)|≦90nmを満足する態様では、フロント側位相差領域は、30nm≦Re(590)≦90nm且つ150nm≦Rth(590)≦270nmを満足するのが好ましく、VA型液晶セルのΔnd(590)が280〜350nm程度の場合は、50nm≦Re(590)≦80nm、且つ170nm≦Rth(590)≦270nmを満足するのがより好ましく、50nm≦Re(590)≦80nm、且つ170nm≦Rth(590)≦230nmを満足するのがさらに好ましい。VA型液晶セルのΔnd(590)が280nm以下の場合は、60nm≦Re(590)≦90nm、且つ150nm≦Rth(590)≦250nmを満足するのがより好ましく、60nm≦Re(590)≦90nm、且つ150nm≦Rth(590)≦230nmを満足するのがさらに好ましい。
前記式(I)及び(II)を満足するリア側位相差領域、又は式(III)及び(IV)を満足するフロント側位相差領域は、1枚又は2枚以上の二軸性フィルムによって構成することができるし、またCプレートとAプレートとの組合せ等、一軸性フィルムを2枚以上組合せることでも構成することができる。勿論、1枚以上の二軸性フィルムと、1枚以上の 一軸性フィルムとを組み合わせることによっても構成することができる。低コスト化の観点から、前記リア側位相差領域及びフロント側位相差領域は、どちらかを1枚のフィルムで構成することが好ましく、どちらも1枚のフィルムで構成することがより好ましい。
上記いずれの態様においても、前記リア側及びフロント側位相差領域の面内レターデーションReの波長分散は、可視光域において、波長が長波長になる程大きくなるという、いわゆる逆分散性を示すことが好ましい。即ち、Re(450)<Re(550)<(Re(590)<)Re(630)を満足するのが好ましい。その理由は、位相差領域のReが逆波長分散性であると、可視光域の中心波長550nm程度で、光学特性を最適化すれば、可視光全域にわたって、最適化される傾向があるからである。
より高い正面CRを得るためには、リア側及びフロント側位相差領域を構成する位相差フィルムのヘイズは、0.5以下が好ましく、0.3以下がより好ましく、0.2以下がさらに好ましい。
なお、本明細書において、位相差フィルムのヘイズの測定方法は以下の通りである。位相差フィルム試料40mm×80mmを準備し、25℃,60%RHの環境下、ヘイズメーター(NDH−2000、日本電色工業(株)製)により、JIS K−6714に従って測定する。
本発明では、単層でもしくは複数層全体として、上記式(I)及び(II)を満足するし、光弾性係数が3×10-122/N未満である少なくとも1枚の熱可塑性樹脂フィルム(A)を、リア側位相差領域に使用する。液晶セルの基板には一般的にガラス板が用いられているが、ガラス板は一般的に正の光弾性係数を示す。高温、高湿環境下においてガラス板に歪みが生じると、その正の光弾性係数に基づく作用により、表示ムラの要因となり得る。リア側位相差領域にも、正に大きい光弾性係数を示す位相差フィルムが存在すると、当該表示ムラをさらに悪化する方向に作用するであろう。本発明では、リア側位相差領域を、光弾性係数が光弾性係数が3×10-122/N未満である少なくとも1枚の熱可塑性樹脂フィルム(A)で構成しているので、高温・高湿条件下における表示ムラにほとんど影響しない。さらに、本発明では、リア側位相差領域に負の光弾性係数を示す位相差フィルムを配置するのが好ましい。この態様では、高温、高湿環境下において位相差フィルムに歪みが生じると、その負の光弾性係数に基づく作用が生じ、即ち、ガラス板の正の光弾性係数に基づく作用による表示ムラを、緩和する方向に作用する。よって、この態様によれば、高温、高湿環境下における表示ムラをさらに軽減することができる。
ここで、光弾性係数について説明する。
位相差フィルムの光弾性係数とは、位相差フィルムに外力を加えて内部に応力を発生させたときの複屈折の生じ易さの係数であり、下式により定義される。
R[/Pa]=Δn/σR
ここで、σRは伸張応力[Pa]、Δnは応力付加時の複屈折であり、Δnは下式により定義される。
Δn=n1−n2
ここで、n1は伸張方向と平行な方向の屈折率、n2は伸張方向と垂直な方向の屈折率である。
本発明では、リア側位相差領域に使用される熱可塑性樹脂フィルム(A)の光弾性係数が光弾性係数が3×10-122/N未満であり、小さいほど好ましく、負であるのがより好ましい。下限値については特に制限はないが、現在の技術では、−20×10-122/N程度が下限値になるであろう。
リア側位相差領域を構成する熱可塑性樹脂フィルム(A)の材料については、上記光弾性係数を満足するものであれば、特に制限はない。例えば、セルロースアシレート、ポリカーボネート系ポリマー、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリメチルメタクリレート等の(メタ)アクリル系樹脂、ポリスチレンやアクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)等のスチレン系樹脂等を利用することができる。また、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、エチレン・プロピレン共重合体の如きポリオレフィン系樹脂、塩化ビニル系ポリマー、ナイロンや芳香族ポリアミド等のアミド系ポリマー、イミド系ポリマー、スルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー、ポリフェニレンスルフィド系ポリマー、塩化ビニリデン系ポリマー、ビニルアルコール系ポリマー、ビニルブチラール系ポリマー、アリレート系ポリマー、ポリオキシメチレン系ポリマー、エポキシ系ポリマー、または前記ポリマーを混合したポリマー等から1種又は2種以上のポリマーを選択し、主成分として用いてポリマーフィルムを作製し、上記特性を満足する組合せで、リア側位相差領域の作製に利用することができる。この中で、(メタ)アクリル系樹脂フィルムが好ましい。
(メタ)アクリル系樹脂フィルム:
(メタ)アクリル系樹脂フィルムは、(メタ)アクリル系樹脂を主成分として含む樹脂組成物で形成される。(メタ)アクリル系樹脂フィルムは光弾性係数が負となりやすく、好ましい。前記(メタ)アクリル系樹脂は、特に限定されず、例えば、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、メタクリル酸メチル−アクリル酸共重合体、メタクリル酸メチル−メタクリル酸共重合体、メタクリル酸メチル−アクリル酸エステル共重合体、メタクリル酸メチル−メタクリル酸エステル共重合体、メタクリル酸メチル−アクリル酸エステル−アクリル酸共重合体、メタクリル酸メチル−アクリル酸エステル−メタクリル酸共重合体、アクリル酸メチル−スチレン共重合体、メタクリル酸メチル−スチレン共重合体(MS樹脂)、脂環族炭化水素基を有する重合体(例えば、メタクリル酸メチル−メタクリル酸シクロへキシル共重合体、メタクリル酸メチル−アクリル酸ノルボルニル共重合体、メタクリル酸メチル−メタクリル酸ノルボルニル共重合体等)等があげられる。これらの中でも、ポリアクリル酸C 1−6アルキル、ポリメタクリル酸C 1−6アルキルが好ましく、メタクリル酸メチル系樹脂が特に好ましい。前記メタクリル酸メチル系樹脂は、好ましくは、全体の50〜100重量%の範囲、より好ましくは、全体の70〜100重量%の範囲でメタクリル酸メチルを含む。
前記(メタ)アクリル系樹脂の具体例としては、例えば、三菱レイヨン(株)製の商品名「アクリペットVH」、同社製の商品名「アクリペットVRL20A」、特開2004−70296号公報に記載の分子内に環構造を有するアクリル系樹脂およびメタクリル系樹脂、分子内架橋や分子内環化反応により得られる高Tgアクリル系樹脂およびメタクリル系樹脂等があげられる。
前記(メタ)アクリル系樹脂としては、ラクトン環構造単位、グルタル酸無水物単位、グルタルイミド単位のいずれかを有する(メタ)アクリル系樹脂を使用することが好ましい。これらの樹脂は、分子内に環構造を有するため、耐熱性、透明性および機械的強度に優れる。
ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂は、好ましくは下記一般式(1)で表される環構造を有する。
Figure 2011095694
式中、R1、R2およびR3は、それぞれ独立に、水素原子または炭素原子数1〜20の有機残基を示す。なお、有機残基は酸素原子を含んでいてもよい。
ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂としては、特開2000−230016号公報、特開2001−151814号公報、特開2002−120326号公報、特開2002−254544号公報、特開2005−146084号公報、特開2006−171464号公報などに記載のものがあげられる。
前記グルタル酸無水物構造としては、例えば、下記一般式(2)で表されるグルタル酸無水物単位が挙げられる。
Figure 2011095694
ただし、上記一般式(2)中、R11及びR12は、それぞれ独立して、水素原子、又は置換若しくは無置換の炭素数1〜5のアルキル基を表す。前記炭素数1〜5のアルキル基が置換基を有する場合、その置換基としては、例えば、ハロゲン、−OH、−COOH、−NH2、−SO3Hなどが挙げられる。
前記グルタル酸無水物単位を有する(メタ)アクリル系樹脂としては、例えば、特開2004−70290号公報、特開2004−70296号公報、特開2004−163924号公報、特開2004−292812号公報、特開2005−314534号公報、特開2006−206881号公報、特開2006−265532号公報、特開2006−283013号公報、特開2006−299005号公報、特開2006−335902号公報などに記載されているものを用いることができる。
グルタルイミド構造を有する(メタ)アクリル系樹脂は、下記一般式(3)で表される環構造を有する。
Figure 2011095694
上記一般式(1)中、R21及びR22は、それぞれ独立して、水素原子、又は置換若しくは無置換の炭素数1〜8のアルキル基を表す。R23は、置換若しくは無置換の炭素数1〜18のアルキル基、置換若しくは無置換の炭素数3〜12のシクロアルキル基、又は置換若しくは無置換の炭素数6〜10のアリール基を表す。前記炭素数1〜8のアルキル基が置換基を有する場合、その置換基としては、例えば、ハロゲン、−OH、−COOH、−NH2、−SO3Hなどが挙げられる。また、前記炭素数1〜18のアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、及び炭素数6〜10のアリール基が置換基を有する場合、その置換基としては、例えば、ハロゲン、−OH、−COOH、−NH2、−SO3Hなどが挙げられる。好ましくは、R21及びR22は、それぞれ独立して、水素原子又はメチル基であり、R23は、水素原子、メチル基、又シクロヘキシル基である。より好ましくは、R1は、メチル基であり、R22は、水素原子である。一般式(3)で表される繰り返し単位(以下、「第1の単位」という場合がある)は、単一の種類でもよく、R21、R22、及びR23が異なる複数の種類を含んでいても構わない。
グルタルイミド構造を有する(メタ)アクリル系樹脂としては、特開2006−309033号公報、特開2006−317560号公報、特開2006−328329号公報、特開2006−328334号公報、特開2006−337491号公報、特開2006−337492号公報、特開2006−337493号公報、特開2006−337569号公報などに記載されているものを用いることができる。
尚、本発明のグルタルイミド構造を有する(メタ)アクリル系樹脂は、メタクリル酸メチルエステルなどのイミド化可能な単位を有する樹脂を、アンモニアまたは置換アミンを用いてイミド化することにより得られるものでもよい。このような樹脂は、米国特許3284425号、米国特許4246374号、特開平2−153904号公報等に記載されているグルタルイミド樹脂が挙げられる。
ラクトン環構造単位、グルタル酸無水物単位、グルタルイミド単位を有する(メタ)アクリル系樹脂は、一般式(1)、(2)、又は(3)で表される環構造以外の構造を有していてもよい。一般式(1)、(2)、又は(3)で表される環構造以外の構造としては、特に限定されないが、(メタ)アクリル酸エステル、水酸基含有単量体、不飽和カルボン酸、および下記一般式(4)で表される単量体から選ばれる少なくとも1種を重合して形成される重合体構造単位(繰り返し構造単位)が好ましい。
Figure 2011095694
式中、R4は水素原子またはメチル基を表し、Xは水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、−OAc基、−CN基、−またはCO−R5基を表し、Ac基はアセチル基を表し、R5は水素原子または炭素数1〜20の有機残基を表す。
フロント側位相差領域を構成する材料について特に制限はなく、上記のリア側位相差領域を構成する材料と同様のものを使用することができる。単層でもしくは複数層全体として、上記式(III)及び(IV)を満足するフロント側位相差フィルムとしては、セルロースアシレート系フィルム、アクリル系樹脂フィルム、及び環状および/または非環状のポリオレフィン系樹脂フィルムが好ましい。アクリル系樹脂フィルムについては、リア側位相差領域と同様に、本発明の[0046]〜[0064]のものを使用することができる。
セルロースアシレート系フィルム:
本明細書では、「セルロースアシレート系フィルム」とは、セルロースアシレートを主成分(全成分の50質量%以上)として含有するフィルムをいう。当該フィルムの作製に用いられるセルロースアシレートは、セルロースの水酸基の水素原子を、アシル基に置換したものである。前記セルロースアシレートはセルロースの水酸基がアシル化されたもので、その置換基はアシル基の炭素原子数が2のアセチル基から炭素原子数が22のものまでいずれも用いることができる。本発明において使用されるセルロースアシレートにおいて、セルロースの水酸基への置換度については特に限定されないが、セルロースの水酸基に置換する酢酸および/または炭素原子数3〜22の脂肪酸の結合度を測定し、計算によって置換度を得ることができる。測定方法としては、ASTMのD−817−91に準じて実施することができる。
前記セルロースアシレートの置換度については特に限定されないが、セルロースのアシル置換度が2.30〜3.00であることが望ましい。また、低いヘイズの位相差フィルムを得るためには、アシル置換度は低い方が好ましく、アシル置換度が2.30〜2.65であることが好ましく、2.35〜2.60であることがより好ましく、2.40〜2.60であることがさらに好ましい。一方、位相差フィルムが逆波長分散性を示すためには、アシル置換度は高い方が好ましく、具体的には、2.65〜3.00であることが好ましく、2.75〜3.00であることがより好ましく、2.80〜3.00であることがさらに好ましい。
前記セルロースアシレートは、セルロースアセテートであることが好ましいが、アセチル基に代えて、又はアセチル基とともに、アセチル基以外のアシル基で置換されていてもよい。中でも、アセチル、プロピオニル及びブチリル基から選ばれる少なくとも一種のアシル基を有するセルロースアシレートが好ましく、及びアセチル、プロピオニル及びブチリル基から選ばれる少なくとも二種のアシル基を有するセルロースアシレートがより好ましい。さらに、アセチル基と、プロピオニル及び/又はブチリル基とを有するセルロースアシレートが好ましく、アセチル基の置換度が1.0〜2.97で、プロピオニル及び/又はブチリル基の置換度が0.2〜2.5のセルロースアシレートがより好ましい。
また、前記セルロースアシレートは、200〜800の質量平均重合度を有することが好ましく、250〜550の質量平均重合度を有することがさらに好ましい。また本発明で用いられるセルロースアシレートは、70000〜230000の数平均分子量を有することが好ましく、75000〜230000の数平均分子量を有することがさらに好ましく、78000〜120000の数平均分子量を有することがよりさらに好ましい。
前記セルロースアシレート系フィルムは、溶液キャスト法により製造することが好ましい。この方法では、セルロースアシレートを有機溶媒に溶解した溶液(ドープ)を用いてフィルムを製造することができる。上記添加剤を使用する場合は、添加剤はドープ調製のいずれのタイミングで添加してもよい。
フロント側位相差領域用のセルロースアシレート系フィルムの作製には、レターデーション発現剤を添加剤として利用することが好ましい。使用可能なレターデーション発現剤としては、円盤状化合物または棒状、正の複屈折性化合物からなるものを挙げることができる。前記円盤状化合物または棒状としては、少なくとも二つの芳香族環を有する化合物をレターデーション発現剤として好ましく用いることができる。前記棒状化合物からなるレターデーション発現剤の添加量は、セルロースアシレートを含むポリマー成分100質量部に対して0.1〜30質量部であることが好ましく、0.5〜20質量部であることがさらに好ましい。前記円盤状のレターデーション発現剤は、前記セルロースアシレート樹脂100質量部に対して、0.05〜20質量部の範囲で使用することが好ましく、0.1〜15質量部の範囲で使用することがより好ましく、0.1〜10質量部の範囲で使用することがさらに好ましい。
前記円盤状化合物はRthレターデーション発現性において前記棒状化合物よりも優れているため、特に大きなRthレターデーションを必要とする場合には好ましく使用される。2種類以上のレターデーション発現剤を併用してもよい。
前記レターデーション発現剤は、250〜400nmの波長領域に最大吸収を有することが好ましく、可視領域に実質的に吸収を有していないことが好ましい。
前記レターデーション発現剤の例には、以下の(1)〜(3)の化合物が含まれる。
(1)円盤状化合物
前記円盤状化合物について説明する。円盤状化合物としては少なくとも二つの芳香族環を有する化合物を用いることができる。
本明細書において、「芳香族環」は、芳香族炭化水素環に加えて、芳香族性ヘテロ環を含む。本発明に用いることができる前記円盤状化合物としては、例えば、特開2008−181105号公報の[0038]〜[0046]に記載される化合物を挙げることができる。
前記円盤状化合物の例には、下記一般式(I)で表される化合物が含まれる。
Figure 2011095694
式中、X1は、単結合、−NR4−、−O−又はS−であり;X2は、単結合、−NR5−、−O−又はS−であり;X3は、単結合、−NR6−、−O−又はS−である。また、R1、R2、及びR3は、それぞれ独立に、アルキル基、アルケニル基、芳香族環基又は複素環基であり;R4、R5及びR6は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基又は複素環基である。
以下に前記一般式(I)で表される化合物の好ましい例(I−(1)〜IV−(10))を下記に示すが、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。
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(2)棒状化合物
本発明では前述の円盤状化合物の他に直線的な分子構造を有する棒状化合物も好ましく用いることができる。本発明に用いることができる前記棒状化合物としては、例えば、特開2007−268898号公報の[0053]〜[0095]に記載される化合物を挙げることができる。
(3)正の複屈折性化合物
正の複屈折性化合物とは、分子が一軸性の配向をとって形成された層に光が入射したとき、前記配向方向の光の屈折率が前記配向方向に直交する方向の光の屈折率より大きくなるポリマーをいう。
このような正の複屈折性化合物としては、特に制限ないが、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリエーテルケトン、ポリアミドイミドおよびポリエステルイミド等の固有複屈折値が正のポリマーを挙げることができ、ポリエーテルケトンおよびポリエステル系ポリマー等が好ましく、ポリエステル系ポリマーがより好ましい。
前記ポリエステル系ポリマーは、炭素数2〜20の脂肪族ジカルボン酸と炭素数8〜20の芳香族ジカルボン酸の混合物と、炭素数2〜12の脂肪族ジオール、炭素数4〜20のアルキルエーテルジオールおよび炭素数6〜20の芳香族ジオールから選ばれる少なくとも1種類以上のジオールとの反応によって得られるものであり、かつ反応物の両末端は反応物のままでもよいが、さらにモノカルボン酸類やモノアルコール類またはフェノール類を反応させて、所謂末端の封止を実施してもよい。この末端封止は、特にフリーなカルボン酸類を含有させないために実施されることが、保存性などの点で有効である。本発明のポリエステル系ポリマーに使用されるジカルボン酸は、炭素数4〜20の脂肪族ジカルボン酸残基または炭素数8〜20の芳香族ジカルボン酸残基であることが好ましい。
好ましく用いられる炭素数2〜20の脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸および1,4−シクロヘキサンジカルボン酸が挙げられる。
また炭素数8〜20の芳香族ジカルボン酸としては、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,8−ナフタレンジカルボン酸、2,8−ナフタレンジカルボン酸および2,6−ナフタレンジカルボン酸等がある。
これらの中でも好ましい脂肪族ジカルボン酸としては、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸であり、芳香族ジカルボン酸としては、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸である。特に好まし
くは、脂肪族ジカルボン酸成分としてはコハク酸、グルタル酸、アジピン酸であり、芳香族ジカルボン酸としてはフタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、である。
前述の脂肪族ジカルボン酸と芳香族ジカルボン酸のそれぞれの少なくとも一種類を組み合わせて用いられるが、その組み合わせは特に限定されるものではなく、それぞれの成分を数種類組み合わせても問題ない。
前記正の複屈折性化合物に利用されるジオールまたは芳香族環含有ジオールは、例えば、炭素数2〜20の脂肪族ジオール、炭素数4〜20のアルキルエーテルジオールおよび炭素数6〜20の芳香族環含有ジオールから選ばれるものである。
炭素原子2〜20の脂肪族ジオールとしては、アルキルジオールおよび脂環式ジオール類を挙げることができ、例えば、エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール(3,3−ジメチロ−ルペンタン)、2−n−ブチル−2−エチル−1,3プロパンジオール(3,3−ジメチロールヘプタン)、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−オクタデカンジオール等があり、これらのグリコールは、1種または2種以上の混合物として使用される。
好ましい脂肪族ジオールとしては、エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールであり、特に好ましくはエタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールである。
炭素数4〜20のアルキルエーテルジオールとしては、好ましくは、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリエチレンエーテルグリコールおよびポリプロピレンエーテルグリコールならびにこれらの組み合わせが挙げられる。その平均重合度は、特に限定されないが好ましくは2〜20であり、より好ましくは2〜10であり、さらには2〜5であり、特に好ましくは2〜4である。これらの例としては、典型的に有用な市販のポリエーテルグリコール類としては、カーボワックス(Carbowax)レジン、プルロニックス(Pluronics) レジンおよびニアックス(Niax)レジンが挙げられる。
炭素数6〜20の芳香族ジオールとしては、特に限定されないがビスフェノールA、1,2−ヒドロキシベンゼン、1,3−ヒドロキシベンゼン、1,4−ヒドロキシベンゼン、1,4−ベンゼンジメタノールが挙げられ、好ましくはビスフェノールA、1,4−ヒドロキシベンゼン、1,4−ベンゼンジメタノールである。
前記正の複屈折性化合物は、末端がアルキル基あるいは芳香族基で封止された化合物であることが好ましい。これは、末端を疎水性官能基で保護することにより、高温高湿での経時劣化に対して有効であり、エステル基の加水分解を遅延させる役割を示すことが要因となっている。
前記正の複屈折性化合物の両末端がカルボン酸やOH基とならないように、モノアルコール残基やモノカルボン酸残基で保護することが好ましい。
この場合、モノアルコールとしては炭素数1〜30の置換、無置換のモノアルコールが好ましく、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、ペンタノール、イソペンタノール、ヘキサノール、イソヘキサノール、シクロヘキシルアルコール、オクタノール、イソオクタノール、2−エチルヘキシルアルコール、ノニルアルコール、イソノニルアルコール、tert−ノニルアルコール、デカノール、ドデカノール、ドデカヘキサノール、ドデカオクタノール、アリルアルコール、オレイルアルコールなどの脂肪族アルコール、ベンジルアルコール、3−フェニルプロパノールなどの置換アルコールなどが挙げられる。
好ましく使用され得る末端封止用アルコールは、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、イソペンタノール、ヘキサノール、イソヘキサノール、シクロヘキシルアルコール、イソオクタノール、2−エチルヘキシルアルコール、イソノニルアルコール、オレイルアルコール、ベンジルアルコールであり、特にはメタノール、エタノール、プロパノール、イソブタノール、シクロヘキシルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール、イソノニルアルコール、ベンジルアルコールである。
また、モノカルボン酸残基で封止する場合は、モノカルボン酸残基として使用されるモノカルボン酸は、炭素数1〜30の置換、無置換のモノカルボン酸が好ましい。これらは、脂肪族モノカルボン酸でも芳香族環含有カルボン酸でもよい。好ましい脂肪族モノカルボン酸について記述すると、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、カプリル酸、カプロン酸、デカン酸、ドデカン酸、ステアリン酸、オレイン酸が挙げられ、芳香族環含有モノカルボン酸としては、例えば安息香酸、p−tert−ブチル安息香酸、p−tert−アミル安息香酸、オルソトルイル酸、メタトルイル酸、パラトルイル酸、ジメチル安息香酸、エチル安息香酸、ノルマルプロピル安息香酸、アミノ安息香酸、アセトキシ安息香酸等があり、これらはそれぞれ1種または2種以上を使用することができる。
前記正の複屈折性化合物の合成は、常法により上記ジカルボン酸とジオールおよび/または末端封止用のモノカルボン酸またはモノアルコール、とのポリエステル化反応またはエステル交換反応による熱溶融縮合法か、あるいはこれら酸の酸クロライドとグリコール類との界面縮合法のいずれかの方法によっても容易に合成し得るものである。これらのポリエステル系添加剤については、村井孝一編者「添加剤 その理論と応用」(株式会社幸
書房、昭和48年3月1日初版第1版発行)に詳細な記載がある。また、特開平05−155809号、特開平05−155810号、特開平5−197073号、特開2006−259494号、特開平07−330670号、特開2006−342227号、特開2007−003679号各公報などに記載されている素材を利用することもできる。
以下に、前記正の複屈折性化合物の具体例を記すが、本発明で用いることができる正の複屈折性化合物はこれらに限定されるものではない。
Figure 2011095694
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表2および表3中、PAはフタル酸を、TPAはテレフタル酸を、IPAはイソフタル酸を、AAはアジピン酸を、SAはコハク酸を、2,6−NPAは2,6−ナフタレンジカルボン酸を、2,8−NPAは2,8−ナフタレンジカルボン酸を、1,5−NPAは1,5−ナフタレンジカルボン酸を、1,4−NPAは1,4−ナフタレンジカルボン酸を、1,8−NPAは1,8−ナフタレンジカルボン酸をそれぞれ示している。
このような前記正の複屈折性化合物の添加量は、セルロースアシレート樹脂100質量部に対して、1〜30質量部であることが好ましく、4〜25質量部であることがより好ましく、10〜20質量部であることが特に好ましい。
前記フロント側位相差領域用のセルロースアシレート系フィルムには、前記レターデーション発現剤とともに、又はそれに代えて、その他の添加剤を添加していてもよい。その他の添加剤としては、酸化防止剤、紫外線吸収剤、剥離促進剤、可塑剤、波長分散調整剤、微粒子、光学特性調整剤などをあげることができ、いずれも公知の添加剤を用いることができる。
前記フロント側位相差領域用のセルロースアシレート系フィルムには、得られるフィルムの機械的物性を改良するため、または乾燥速度を向上するために、可塑剤を添加することができる。本発明に用いることができる前記可塑剤としては、例えば、特開2008−181105号公報の[0067]に記載される化合物を挙げることができる。
環状オレフィン系ポリマーフィルム:
環状オレフィン系ポリマーフィルムの原料及びその製造方法、並びに該原料を用いたフィルムの製造方法については、特開2006−293342号公報の[0098]〜[0193]に詳細な記載があり、本発明において参照することができる。リア側及びフロント側位相差領域を構成する位相差フィルムとして利用可能な環状オレフィン系ポリマーフィルムの例には、ノルボルネン系ポリマーフィルムが含まれ、市販のポリマーでは、アートン(JSR製)、ゼオノア(日本ゼオン製)などを用いることができる。
リア側及びフロント側位相差領域用の位相差フィルムとして用いられる種々のポリマーフィルムは、種々の方法で製造することができる。例えば、溶液キャスト法(溶液流延法)、溶融押出法、カレンダー法、圧縮成形法などが挙げられる。これらのフィルム成形方法のうち、溶液キャスト法(溶液流延法)、溶融押出法が特に好ましい。また、リア側及びフロント側位相差領域用の位相差フィルムとして利用される種々のポリマーフィルムは、成形された後、延伸処理を経て製造されたフィルムであってもよい。フィルムの延伸は、1軸延伸であっても2軸延伸であってもよい。同時あるいは逐次2軸延伸処理を行うのが好ましい。大きな光学異方性を達成するためにはフィルムを高い延伸倍率で延伸することが必要である。例えば、フィルムの幅方向、及びフィルムの縦方向(流れ方向)に延伸することが好ましい。延伸倍率は、3〜100%程度であることが好ましい。延伸処理は、テンターを用いて実施できる。また、ロール間にて縦延伸を行ってもよい。
また、リア側及びフロント側位相差領域を構成する位相差層は、液晶組成物を所望の配向状態とした後、その配向状態を固定して形成された層であってもよいし、又は当該層とともに、当該層を支持するポリマーフィルムを有する積層体であってもよい。後者の態様では、当該ポリマーフィルムを偏光子の保護フィルムとして利用することもできる。フロント側位相差領域を構成する位相差層の作製に利用可能な液晶の例には、棒状液晶、円盤状液晶、コレステリック液晶等、種々の液晶が含まれる。
前記溶液キャスト法として、共流延法、逐次流延法、塗布法などの積層流延法も用いることができる。共流延法および逐次流延法により製造する場合には、先ず、各層用のセルロースアセテート溶液(ドープ)を調製する。共流延法(重層同時流延)は、流延用支持体(バンドまたはドラム)の上に、各層(3層あるいはそれ以上でもよい)各々の流延用ドープを別のスリットなどから同時に押出す流延用ギーサからドープを押出して、各層同時に流延し、適当な時期に支持体から剥ぎ取って、乾燥しフィルムを成形する流延法である。
逐次流延法は、流延用支持体の上に先ず第1層用の流延用ドープを流延用ギーサから押出して、流延し、乾燥あるいは乾燥することなく、その上に第2層用の流延用ドープを流延用ギーサから押出して流延する要領で、必要なら第3層以上まで逐次ドープを流延・積層して、適当な時期に支持体から剥ぎ取って、乾燥しフィルムを成形する流延法である。
塗布法は、一般的には、コア層のフィルムを溶液製膜法によりフィルムに成形し、表層に塗布する塗布液を調製し、適当な塗布機を用いて、片面ずつまたは両面同時にフィルムに塗布液を塗布・乾燥して積層構造のフィルムを成形する方法である。
また、リア側及びフロント側位相差領域を構成する位相差層の厚みは、薄いほうが好ましいが、表示ムラ抑制のためには、位相差フィルムにかかる応力による位相差フィルムの変形を小さくする必要がある。リア側位相差フィルムの膜厚は20μm以上、200μm以下とすることが表示ムラの抑制および製造適性の観点で好ましい。
2. 偏光子
フロント側及びリア側に配置される偏光子については特に制限はない。通常用いられている直線偏光膜を利用することができる。直線偏光膜は、Optiva Inc.に代表される塗布型偏光膜、もしくはバインダーと、ヨウ素又は二色性色素からなる偏光膜が好ましい。直線偏光膜におけるヨウ素及び二色性色素は、バインダー中で配向することで偏光性能を発現する。ヨウ素及び二色性色素は、バインダー分子に沿って配向するか、もしくは二色性色素が液晶のような自己組織化により一方向に配向することが好ましい。現在、市販の偏光子は、延伸したポリマーを、浴槽中のヨウ素もしくは二色性色素の溶液に浸漬し、バインダー中にヨウ素、もしくは二色性色素をバインダー中に浸透させることで作製されるのが一般的である。
3. 保護フィルム
フロント側偏光子及びリア側偏光子のそれぞれの両面には、保護フィルムが貼合されているのが好ましい。但し、液晶セル側に配置される保護フィルムは、それぞれリア側位相差領域及びフロント側位相差領域の一部を構成するものとし、前者については、上記式(I)を満足することが要求される。後者についても、フロント側位相差領域の一部を構成し、態様によっては、視野角CRの改善に寄与する光学特性を単独でまたは他の層とともに示すことが要求される。
フロント側偏光子及びリア側偏光子の外側に配置される保護フィルムについては、特に制限はない。種々のポリマーフィルムを使用することができる。上記フロント側位相差領域を構成可能なポリマーフィルムの例と同様である。例えば、セルロースアシレート類(例、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート等のフィルム)、ポリオレフィン(例、ノルボルネン系ポリマー、ポリプロピレン)、ポリ(メタ)アクリル酸エステル(例、ポリメチルメタクリレート)、ポリカーボネート、ポリエステル、又はポリスルホンを主成分とするフィルム等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。市販のポリマーフィルム(セルロースアシレート類では、「フジタック TD80UL」(富士フイルム社製)、ノルボルネン系ポリマーでは、アートン(JSR製)、ゼオノア(日本ゼオン製)など)も使用することができる。
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、試薬、物質量とその割合、操作等は本発明の趣旨から逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下の具体例に制限されるものではない。
1. フィルム1〜21の準備
(1) フィルム1の作製
ポリメタクリル酸メチル樹脂を用いて偏光子保護フィルムを作製した。ポリメタクリル酸メチル樹脂(三菱レーヨン社製、アクリペットVH、光弾性係数5×10-122/N)90重量部と、アクリロニトリル−スチレン共重合体(旭化成社製、スタイラックAS)10重量部とを溶解してTダイより押し出し、キャストロール上でフィルム状に形成した後、ゾーン延伸法により、縦方向の延伸倍率を1.8倍として縦延伸された分子が一軸配向されたポリメタクリル酸メチルフィルムを得た。そしてテンター延伸法により横方向の延伸倍率を2.2倍として逐次二軸延伸にて、分子が二軸配向された厚さ40μmのポリメタクリル酸メチルフィルムを得た。このフィルムを、フィルム1として用いた。
(2) フィルム2の作製
前記一般式(1)中、R1が水素原子、R2及びR3がメチル基であるラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂[共重合モノマーの重量比:メタクリル酸メチル/2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル=8/2;ラクトン環化率約100%]90重量部とアクリロニトリル−スチレン(AS)樹脂{トーヨーAS AS20,東洋スチレン(株)製}10重量部の混合物を押出成形し、縦2.0倍、横2.4倍に延伸して、フィルム(厚さ40μm)を作製した。このフィルムを、フィルム2として用いた。
(3) フィルム3の作製
前記一般式(1)中、R1が水素原子、R2及びR3がメチル基であるラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂[共重合モノマーの重量比:メタクリル酸メチル/2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル=7/3;ラクトン環化率約100%]を押出成形し、縦1.8倍、横2.2倍に延伸してフィルム(厚さ40μm)を作製した。このフィルムをフィルム3として用いた。
(4) フィルム4の作製
メタクリル酸メチル20重量部と、アクリルアミド80重量部とを共重合した共重合体を、さらに、メタクリル酸27重量部およびメタクリル酸メチル73重量部と反応させて共重合体(a)を得た後、当該共重合体(a)を加熱することにより、分子内環化反応を行い、グルタル酸無水物単位を共重合体中に導入した。当該共重合体の全単位を基準として、不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体単位:グルタル酸無水物単量体単位:不飽和カルボン酸単量体単位の割合は、71:28:1(モル比)である。前記一般式(2)中、R11およびR12はメチル基である。攪拌機を備えた300mlセパラブルフラスコに得られた共重合体(a)50g、2−ブタノン150gを入れ、ダブルヘリカルリボン撹拌翼で24時間撹拌した。得られた溶液を1μmカットのガラスフィルターで濾過し、アクリル系樹脂溶液を得た。アクリル系樹脂溶液の一部を、ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み100μm)を固定したガラス板上に取り、バーコーターを用いて均一な膜を形成せしめ、次いで50℃で10分間加熱し、アクリル系樹脂フィルムを得た。得られたアクリル系樹脂フィルムをポリエチレンテレフタレートフィルムから剥がし、100℃で10分間、120℃で20分間、140℃で20分間、さらに170℃で40分間加熱して、フィルムを作製した。このフィルムを、フィルム4として用いた。
(5) フィルム5の作製
フィルム4の作製において、バーコーターにより形成する膜の厚さを変えた以外は同じ手順でフィルムの作成を行い、最後に縦2倍、横2倍に二軸延伸してフィルム(厚さ40μm)を得た。このフィルム、フィルム5として用いた。
(6) フィルム6の作製
MS樹脂(MS−200;メタクリル酸メチル/スチレン(モル比)=80/20の共重合体,新日鐵化学(株)製)をモノメチルアミンでイミド化(イミド化率:90%)した。得られたイミド化されたMS樹脂は、一般式(3)で表されるグルタルイミド単位(式中、R21およびR23はメチル基、R22は水素原子である)を有する。なお、前記イミド化には、口径15mmの噛合い型同方向回転式二軸押出機を用いた。押出機の各温調ゾーンの設定温度を230℃、スクリュー回転数150rpm、MS樹脂を2.0kg/hrで供給し、モノメチルアミンの供給量はMS樹脂に対して40重量部とした。ホッパーからMS樹脂を投入し、ニーディングブロックによって樹脂を溶融、充満させた後、ノズルからモノメチルアミンを注入した。反応ゾーンの末端にはシールリングを入れて樹脂を充満させた。反応後の副生成物および過剰のメチルアミンをベント口の圧力を−0.08MPaに減圧して脱揮した。押出機出口に設けられたダイスからストランドとして出てきた樹脂は、水槽で冷却した後、ペレタイザでペレット化した。前記イミド化されたMS樹脂を溶融押出製膜し、次いで、縦2倍、横2倍に二軸延伸し、透明性フィルムを作成した。これをフィルム6として利用した。なお、このフィルムの膜厚は40μmであった。
(7) フィルム7の作製
ポリメチルメタクリレート樹脂(アクリペットMD;三菱レイヨン(株)製)をモノメチルアミンでイミド化(イミド化率:80%)した。得られたイミド化されたポリメチルメタクリレート樹脂は、一般式(3)で表されるグルタルイミド単位(式中、R21およびR23はメチル基、R22は水素原子である)を有する。なお、前記イミド化には、口径15mmの噛合い型同方向回転式二軸押出機を用いた。押出機の各温調ゾーンの設定温度を230℃、スクリュー回転数150rpm、ポリメチルメタクリレート樹脂を1.0kg/hrで供給し、モノメチルアミンの供給量はポリメチルメタクリレート樹脂に対して20重量部とした。ホッパーからポリメチルメタクリレート樹脂を投入し、ニーディングブロックによって樹脂を溶融、充満させた後、ノズルからモノメチルアミンを注入した。反応ゾーンの末端にはシールリングを入れて樹脂を充満させた。反応後の副生成物および過剰のメチルアミンをベント口の圧力を−0.08MPaに減圧して脱揮した。押出機出口に設けられたダイスからストランドとして出てきた樹脂は、水槽で冷却した後、ペレタイザでペレット化した。前記イミド化されたポリメチルメタクリレート樹脂を溶融押出製膜し、次いで、縦2倍、横2倍に二軸延伸してフィルム(厚さ40μm)を作製した。このフィルムを、フィルム7として用いた。
(8) フィルム8の作製
下記表に記載のアシル基の種類、置換度のセルロースアシレートを調製した。これは、触媒として硫酸(セルロース100質量部に対し7.8質量部)を添加し、アシル置換基の原料となるカルボン酸を添加し40℃でアシル化反応を行った。この時、カルボン酸の種類、量を調整することでアシル基の種類、置換度を調整した。またアシル化後の40℃で熟成を行った。さらにこのセルロースアシレートの低分子量成分をアセトンで洗浄し除去した。なお、表中、Acとはアセチル基であり、CTAとは、セルローストリアセテート(アシル基がアセテート基のみからなるセルロースエステル誘導体)を意味する。
(セルロースアシレート溶液)
下記組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌して各成分を溶解し、更に90℃に約10分間加熱した後、平均孔径34μmのろ紙および平均孔径10μmの焼結金属フィルターでろ過した。
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セルロースアシレート溶液
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下記表中のCTA 30質量部
ポリメチルメタクリレート 70質量部
トリフェニルホスフェイト(TPP) 7.8質量部
ビフェニルジフェニルホスフェイト(BDP) 3.9質量部
メチレンクロライド 403.0質量部
メタノール 60.2質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
なお、上記の表のポリメチルメタクリレートは質量平均分子量が100000であった。
(マット剤分散液)
次に上記方法で調製したセルロースアシレート溶液を含む下記組成物を分散機に投入し、マット剤分散液を調製した。
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マット剤分散液
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平均粒径16nmのシリカ粒子
(aerosil R972 日本アエロジル(株)製 2.0質量部
メチレンクロライド 72.4質量部
メタノール 10.8質量部
セルロースアシレート溶液 10.3質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――――
(添加剤溶液)
次に上記方法で調製したセルロースアシレート溶液を含む下記組成物をミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して溶解し、添加剤溶液を調製した。
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添加剤溶液
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レターデーション発現剤(1) 20.0質量部
メチレンクロライド 58.3質量部
メタノール 8.7質量部
セルロースアシレート溶液 12.8質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
上記セルロースアシレート溶液を100質量部、マット剤分散液を1.35質量部、更にフィルム中のレターデーション発現剤(1)の添加量が10質量部となる量の添加剤溶液を混合し、製膜用ドープを調製した。添加剤の添加割合はセルロースアシレート量を100質量部とした時の質量部で示した。
ここで、表中及び上記の添加剤および可塑剤の略称は下記の通りである。
CTA:セルローストリアセテート、
TPP:トリフェニルホスフェイト、
BDP:ビフェニルジフェニルホスフェイト。
Figure 2011095694
上述のドープをバンド流延機を用いて流延した。下記表に記載の残留溶剤量でバンドから剥ぎ取ったフィルムを、剥ぎ取りからテンターまでの区間で下記表に記載の延伸倍率で縦方向に延伸し、ついでテンターを用いて下記表に記載の延伸倍率で幅方向に延伸し、横延伸直後に、下記表に記載の倍率で幅方向に収縮(緩和)させた後にフィルムをテンターから離脱し、フィルムを製膜した。テンター離脱時のフィルムの残留溶剤量は、下記表に記載のとおりであった。巻取り部前で両端部を切り落とし幅2000mmとし、長さ4000mのロールフィルムとして巻き取った。下記表に、延伸倍率を示してある。
Figure 2011095694
この様にして作製したセルロースアシレート系フィルムをフィルム8として用いた。
(9) フィルム9の作製
イソブテンおよびN−メチルマレイミドからなる交互共重合体(N−メチルマレイミド含量50モル%、ガラス転移温度157℃)75重量部と、アクリロニトリルの含量が28重量%であるアクリロニトリル・スチレン共重合体25重量部とを、塩化メチレンに溶解して固形分濃度15重量%の溶液を得た。この溶液を、ガラス板上に敷いた二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム上に流延した。得られたサンプルを、室温で60分間放置した。その後ポリエチレンテレフタレートフィルムからサンプルを剥し、サンプルの4辺を固定して、100℃で10分間乾燥し、そして140℃で10分間乾燥した後、さらに160℃で30分間乾燥して、透明性フィルムを得た。
ウレタン変性共重合ポリエステル樹脂(Tg113℃,東洋紡績(株)製)を、メチルエチルケトン/トルエン(=1/1)に固形分濃度が10%となるように希釈した溶液を調製した。この溶液を、前記透明性フィルムの片面に塗布し、120℃のオーブンで2分間乾燥して易接着層付きフィルムを得た。このフィルムを、フィルム9として用いた。
(10) フィルム10の作製
イソブテンおよびN−メチルマレイミドからなる交互共重合体(N−メチルマレイミド含量50モル%、ガラス転移温度157℃)70重量部と、アクリロニトリルの含量が26重量%であるアクリロニトリル・スチレン共重合体30重量部とを、塩化メチレンに溶解して固形分濃度15重量%の溶液を得た。この溶液を、ガラス板上に敷いた二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム上に流延した。得られたサンプルを、室温で60分間放置した。その後ポリエチレンテレフタレートフィルムからサンプルを剥し、サンプルの4辺を固定して、100℃で10分間乾燥し、そして140℃で10分間乾燥した後、さらに160℃で30分間乾燥して、フィルムを得た。このフィルムをMD方向に150℃で2.0倍延伸した後に、TD方向に150℃で2.0倍延伸してフィルムを作製した。フィルム9と同様にして、得られた延伸フィルム表面に易接着層を形成し、易接着層付きフィルムを得た。このフィルムを、フィルム10として用いた。
(11) フィルム11の作製
イソブテンおよびN−メチルマレイミドからなる交互共重合体(N−メチルマレイミド含量50モル%、ガラス転移温度157℃)100重量部(67重量%)と、アクリロニトリルおよびスチレンの含量がそれぞれ29重量%、71重量%であるスチレンおよびアクリロニトリルからなる熱可塑性共重合体49重量部(33重量%)とを、塩化メチレンに溶解して固形分濃度15重量%の溶液を得た。この溶液を、ガラス板上に敷いた二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム上に流延した。得られたサンプルを、室温で60分間放置した。その後ポリエチレンテレフタレートフィルムからサンプルを剥し、サンプルの4辺を固定して100℃で10分間乾燥し、さらに140℃で10分間乾燥を行って、厚さ約100μmの未延伸フィルムを得た。
得られたフィルムから30cm×10cmのサンプルフィルムを切り取った。延伸試験装置(東洋精機製作所、X4HD−HT)を用いて延伸速度10cm/分、延伸倍率1.5倍、延伸温度150℃にてサンプルフィルムを自由端縦一軸で延伸し、一軸延伸フィルムを得た。フィルム9と同様にして、得られた一軸延伸フィルム表面に易接着層を形成し、易接着層付きフィルムを得た。このフィルムを、フィルム11として用いた。
(12) フィルム12の作製
イソブテンおよびN−メチルマレイミドからなる交互共重合体(N−メチルマレイミド含量50モル%、ガラス転移温度157℃)100重量部(55重量%)と、アクリロニトリルおよびスチレンの含量がそれぞれ27重量%、73重量%であるスチレンおよびアクリロニトリルからなる熱可塑性共重合体82重量部(45重量%)とを、塩化メチレンに溶解して固形分濃度15重量%の溶液を得た。この溶液を、ガラス板上に敷いた二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム上に流延した。得られたサンプルを、室温で60分間放置した。その後ポリエチレンテレフタレートフィルムからサンプルを剥し、サンプルの4辺を固定して100℃で10分間乾燥し、さらに140℃で10分間乾燥を行って、厚さ約100μmの未延伸フィルムを得た。
得られたフィルムから30cm×10cmのサンプルフィルムを切り取った。延伸試験装置(東洋精機製作所、X4HD−HT)を用いて延伸速度10cm/分、延伸倍率1.5倍、延伸温度150℃にてサンプルフィルムを自由端縦一軸で延伸し、一軸延伸フィルムを得た。フィルム9と同様にして、得られた一軸延伸フィルム表面に易接着層を形成し、易接着層付きフィルムを得た。このフィルムを、フィルム12として用いた。
(13) フィルム13の準備
市販のセルロースアシレート系フィルム、商品名 「Z−TAC」(富士フイルム社製)を準備し、フィルム13として利用した。
(14) フィルム14の準備
市販のセルロースアシレート系フィルム、商品名 「フジタック TD80UL」(富士フイルム社製)を準備し、フィルム14として利用した。
(15)フィルム15の作製
(低置換度層用セルロースアシレート溶液)
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して各成分を溶解し、低置換度層用セルロースアシレート溶液を調製した。
置換度2.43のセルロースアセテート 100質量部
レターデーション発現剤(2) 18.5質量部
メチレンクロライド 365.5質量部
メタノール 54.6質量部
(高置換度層用セルロースアシレート溶液)
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、撹拌して、各成分を溶解し、高置換度層用セルロースアシレート溶液を調製した。
置換度2.79のセルロースアセテート 100.0質量部
レターデーション発現剤(2) 11.0質量部
平均粒径16nmのシリカ粒子
(aerosil R972 日本アエロジル(株)製) 0.15質量部
メチレンクロライド 395.0質量部
メタノール 59.0質量部
前記レターデーション発現剤(2)の組成を、下記表に示す。なお、下記表中、EGはエチレングリコールを、PGはプロピレングリコールを、BGはブチレングリコールを、TPAはテレフタル酸を、PAはフタル酸を、AAはアジピン酸を、SAはコハク酸をそれぞれ示している。なお、前記レターデーション発現剤(2)は、非リン酸系エステル系化合物であり、かつ、レターデーション発現剤でもある。前記レターデーション発現剤(2)の末端はアセチル基で封止されている。
Figure 2011095694
(セルロースアシレート試料の作製)
前記低置換度層用セルロースアシレート溶液を膜厚37μmのコア層になるように、前記高置換度層用セルロースアシレート溶液を膜厚2μmのスキンA層およびスキンB層になるように、それぞれ流延した。得られたフィルムをバンドから剥離し、フィルム全体の質量に対する残留溶媒量が20%の状態の時に、温度200℃で30分間乾燥した後、130℃で20分間乾燥させ、フィルム15を作製した。
(16)フィルム16の作製
市販のノルボルネン系ポリマーフィルム「ZEONOR ZF14−060」((株)オプテス製)の表面に、ソリッドステートコロナ処理機6KVA(ピラー(株)製)によりコロナ放電処理を行った。このフィルムをフィルム16として使用した。このフィルムの厚みは、60μmであった。
(17)フィルム17の作製
市販のシクロオレフィン系ポリマーフィルム「ARTON FLZR50」(JSR(株)製)の表面に、フィルム17と同様の方法でコロナ放電処理を行った。このフィルムをフィルム17として使用した。このフィルムの厚みは、50μmであった。
(18) フィルム18の作製
フィルム8の作製において、セルロースアシレート溶液として、下記に示すセルロースアシレート溶液を使用した以外は、フィルム8の作製と同様にしてフィルムを作製し、フィルム18として使用した。
(セルロースアシレート溶液)
下記組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌して各成分を溶解し、更に90℃に約10分間加熱した後、平均孔径34μmのろ紙および平均孔径10μmの焼結金属フィルターでろ過した。
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セルロースアシレート溶液
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フィルム8の製造に用いたCTA 100.0質量部
トリフェニルホスフェイト(TPP) 7.8質量部
ビフェニルジフェニルホスフェイト(BDP) 3.9質量部
メチレンクロライド 403.0質量部
メタノール 60.2質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
(19) フィルム19の作製
フィルム15の作製において、原料として、下記表に示すセルロースアシレートを使用し、及び製造条件を下記表に示す通りに代えた以外は、フィルム15の作製と同様にしてフィルムを作製し、フィルム19として使用した。なお、下記の添加剤および可塑剤の略称は、上記と同義である。
Figure 2011095694
この様にして作製したセルロースアシレート系フィルムをフィルム19として使用した。
(20) フィルム20の作製
フィルム18の作製において、原料として、下記表に示すセルロースアシレートを使用し、及び製造条件を下記表に示す通りに代えた以外は、フィルム18の作製と同様にしてフィルムを作製し、フィルム20として使用した。なお、下記の添加剤および可塑剤の略称は、上記と同義である。
Figure 2011095694
(21) フィルム21の作製
TOSHIBA社製の液晶パネル「32C7000」に搭載されていたノルボルネン系フィルムを剥がし、フィルム21として用いた。なお、このフィルムの膜厚は70μmであった。
(22) フィルム22の作製
セルロースアシレートプロピオネート(CAP482−20(イーストマンケミカル社製);アセチル置換度0.2、プロピオニル基置換度2.4)を用意した。これに、可塑剤として、1、4−フェニレン−テトラフェニルリン酸エステルを8質量%、劣化防止剤(酸化防止剤)として、IRGANOX−1010(チバスペシャルティケミカルズ社製)を0.5質量%加え、タンブラー型混合機で30分間混合した。得られた混合物を、除湿熱風式乾燥機((株)松井製作所DMZ2)により熱風温度150℃、露点−36℃で乾燥した。次いで、この混合物をテクノベル(株)製二軸押出し機に供給し、押出し機中間部に設けてある添加剤ホッパーの開口部から、マット剤として、アエロジル(AEROSIL)200V(0.016μmのシリカ微粒子、日本アエロジル社製)を押出し量の0.05%となるように連続式フィーダーにより添加し、紫外線吸収剤として、チヌビン(TINUVIN)360(チバスペシャルティケミカルズ社製)を同開口部から押出し量の0.5%となるように添加して、溶融押出した。溶融押出したフィルムの膜厚は180μmだった。
さらにこのフィルムを142℃にてTD方向に2.2倍で固定端一軸延伸を行ってフィルムを作製した。このフィルムを、フィルム22として使用した。
なお、このフィルムの膜厚は85μmであった。
(23) フィルム23の作製
機械式攪拌装置、ディーンスターク装置、窒素導入管、温度計および冷却管を取り付けた反応容器(500mL)内に2,2'−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−ヘキサフルオロプロパン二無水物17.77g(40mmol)および2,2−ビス(トリフルオロメチル)−4,4'−ジアミノビフェニル12.81g(40mmol)を加えた。続いて、イソキノリン2.58g(20mmol)をm−クレゾール275.21gに溶解させた溶液を加え、23℃で1時間攪拌して(600rpm)均一な溶液を得た。次に、反応容器を、オイルバスを用いて反応容器内の温度が180±3℃になるように加温し、温度を保ちながら5時時間攪拌して黄色溶液を得た。さらに3時間攪拌を行ったのち、加熱および攪拌を停止し、放冷して室温に戻すと、ポリマーがゲル状物となって析出した。
上記反応容器内の黄色溶液にアセトンを加えて上記ゲル状物を完全に溶解させ、希釈溶液(7重量%)を作製した。この希釈溶液を、2Lのイソプロピルアルコール中に攪拌を続けながら少しずつ加えると、白色粉末が析出した。この粉末を濾取し、1.5Lのイソプロピルアルコール中に投入して洗浄した。さらにもう一度同様の操作を繰り返して洗浄した後、上記粉末を再び濾取した。これを60℃の空気循環式恒温オーブンで48時間乾燥した後、150℃で7時間乾燥して、白色粉末として下記式(10)で表される繰り返し単位からなるポリイミドを得た(収率85%)。上記ポリイミドの重合平均分子量(Mw)は124,000、イミド化率は99.9%であった。
Figure 2011095694
上記製造したポリイミド(白色粉末)17.7重量部をメチルイソブチルケトン(沸点116℃)100重量部に溶解し、15重量%のポリイミド溶液を調製した。このポリイミド溶液をアンカーコート層を有する透明フィルムのアンカーコート層の表面にロッドコータにより一方向に塗工した。次に、135±1℃の空気循環式恒温オーブン内で5分間乾燥して溶剤を蒸発させ、厚み3.0μmのポリイミド層を備えた透明フィルム(総厚み83.8μm)を作製した。続いて、上記ポリイミド層を備えた透明フィルムを150±1℃の空気循環式恒温オーブン内で加熱しながら、テンター延伸機を用いてフィルムの長手方向を固定して幅方向に1.22倍で一軸延伸した後、幅方向に0.97倍で緩和処理を施して積層フィルムを作製した。延伸後のこの積層フィルムを、フィルム23として用いた。
(24) フィルム24の作製
下記表に示すセルロースアシレートを用い、下記表に示す通りレターデーション発現剤(1)の添加量を代え、及び延伸条件を代えて延伸処理を実施した以外は、フィルム5と同様にしてセルロースアシレート系フィルムを作製した。このフィルムを、フィルム24として用いた。なお、下記の添加剤および可塑剤の略称については、上記と同義である。
Figure 2011095694
(25)フィルム25の作製
(低置換度層用セルロースアシレート溶液)
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して各成分を溶解し、低置換度層用セルロースアシレート溶液を調製した。
置換度2.43のセルロースアセテート 100質量部
レターデーション発現剤(2) 18.5質量部
メチレンクロライド 365.5質量部
メタノール 54.6質量部
(高置換度層用セルロースアシレート溶液)
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、撹拌して、各成分を溶解し、高置換度層用セルロースアシレート溶液を調製した。
置換度2.79のセルロースアセテート 100.0質量部
レターデーション発現剤(1) 11.0質量部
平均粒径16nmのシリカ粒子
(aerosil R972 日本アエロジル(株)製) 0.15質量部
メチレンクロライド 395.0質量部
メタノール 59.0質量部
(セルロースアシレート試料の作製)
前記低置換度層用セルロースアシレート溶液を、膜厚65μmのコア層になるように、前記高置換度層用セルロースアシレート溶液を膜厚2μmのスキンA層及びスキンB層になるように、それぞれ流延した。得られたフィルムをバンドから剥離し、クリップに挟み、フィルム全体の質量に対する残留溶媒量が20%の状態の時に、延伸温度200℃で幅方向に60%、テンターを用いて横延伸した。その後にフィルムからクリップを外して130℃で20分間乾燥させ、フィルムを作製した。このフィルムを、フィルム25として用いた。
(26)フィルム26の作製
(低置換度層用セルロースアシレート溶液)
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して各成分を溶解し、低置換度層用セルロースアシレート溶液を調製した。
置換度2.43のセルロースアセテート 100質量部
レターデーション発現剤(1) 4.0質量部
レターデーション発現剤(2) 10.0質量部
メチレンクロライド 351.5質量部
メタノール 52.5質量部
(高置換度層用セルロースアシレート溶液)
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、撹拌して、各成分を溶解し、高置換度層用セルロースアシレート溶液を調製した。
置換度2.79のセルロースアセテート 100.0質量部
レターデーション発現剤(1) 11.0質量部
平均粒径16nmのシリカ粒子
(aerosil R972 日本アエロジル(株)製) 0.15質量部
メチレンクロライド 395.0質量部
メタノール 59.0質量部
(セルロースアシレート試料の作製)
前記低置換度層用セルロースアシレート溶液を、膜厚82μmのコア層になるように、前記高置換度層用セルロースアシレート溶液を膜厚2μmのスキンA層及びスキンB層になるように、それぞれ流延した。得られたフィルムをバンドから剥離し、クリップに挟み、フィルム全体の質量に対する残留溶媒量が20%の状態の時に、延伸温度180℃で幅方向に18%、テンターを用いて横延伸した。その後にフィルムからクリップを外して130℃で20分間乾燥させ、フィルムを作製した。このフィルムを、フィルム26として用いた。
フィルム26の製造においては、フィルム18の製造時に発生する問題(乾燥工程等における高温処理時の発煙、揮散した油分等の製造機付着による動作の不具合やフィルム付着による面状故障)が発生しなかった。
これは、フィルム26の作製に、レターデーション発現剤として使用したレターデーション発現剤(2)が可塑剤として機能するため、フィルム18の作製に使用したTPPおよびBDPといった従来の低分子可塑剤を使用しなかったためである。
このように、レターデーション発現剤(2)のような前記正の複屈折性化合物を使用することで、前述の問題を解決することができることから、前記正の複屈折性化合物はフィルム製造の観点から好ましいレターデーション発現剤である。
2. フィルム1〜26の特性
作製したフィルム1〜26の特性を、下記表にまとめる。なお、各フィルムのRe(590)及びRth(590)は、試料30mm×40mmを、25℃、60%RHで2時間調湿し、KOBRA21ADH(王子計測機器(株)製)において波長590nmで測定し、フィルム1〜7については、平均屈折率の仮定値として、1.50および膜厚を入力し算出した。また、それ以外のフィルムの場合は平均屈折率の仮定値として、フィルム8については1.49を、フィルム9〜12については1.54を、フィルム13〜15、18〜20、22、24〜26については1.48を、フィルム16、17、21については1.53を、フィルム23については1.58を用いた。
Figure 2011095694
3. 偏光板の作製
厚さ80μmのポリビニルアルコール(PVA)フィルムを、ヨウ素濃度0.05質量%のヨウ素水溶液中に30℃で60秒浸漬して染色し、次いでホウ酸濃度4質量%濃度のホウ酸水溶液中に60秒浸漬している間に元の長さの5倍に縦延伸した後、50℃で4分間乾燥させて、厚さ20μmの偏光膜を得た。
上記表に示すフィルムのうちセルロースアシレート類を含むフィルムについては、1.5モル/リットルで55℃の水酸化ナトリウム水溶液中に浸漬した後、水で十分に水酸化ナトリウムを洗い流した。その後、0.005モル/リットルで35℃の希硫酸水溶液に1分間浸漬した後、水に浸漬し希硫酸水溶液を十分に洗い流した。最後に試料を120℃で十分に乾燥させた。
各フィルム(フィルム1〜21)のいずれか2枚で、偏光膜を挟んで、粘着剤を用いて貼り合せ、双方の表面に保護フィルムを有する偏光板をそれぞれ作製した。なお、フィルム1〜8、13〜15、18〜20、22〜26についてはポリビニル系接着剤を用い、フィルム9〜12については、ポリウレタン系接着剤を用い、フィルム16、17、21についてはアクリル系粘着剤を用いて偏光子と貼合した。組合せについては下記表11に示す。
なお下記表中、「*1」を付したフィルムは、偏光膜よりさらに表示面側外側に配置される偏光板保護フィルムとして用いられた位相差フィルムを意味し、「*2」を付したフィルムは、液晶セルと偏光膜との間に配置される偏光板保護フィルムとして用いられた位相差フィルムを意味し、及び「*3」を付したフィルムは、偏光膜よりさらにバックライト側外側に配置される偏光保護フィルムとして用いられた位相差フィルムを意味する。
なお、フィルム3、5、7、12、18〜26については、その面内遅相軸を、偏光子の透過軸と平行にして貼り合せた。それ以外のフィルムについては、その面内遅相軸を、偏光子の透過軸と垂直にして貼り合せた。また、易接着層を有するフィルムについては、易接着層を偏光子の表面側にして貼り合せた。
4. VA型液晶表示装置の作製及び評価
(1)VA型液晶セル1〜6の準備
(1)−1 VA型液晶セル1〜3の準備
ソニー社製の液晶パネル「KDL−52W5」の液晶セルを準備した。この液晶セルは、COA構造のVA型液晶セルである。これを液晶セル1として使用した。
液晶セル1のΔndをAXOMETRICS社製のAXOSCANと付属のソフトを使用して測定したところ、Δnd(590)は295nmであった。
着色感光性組成物としては、特開2009−144126号公報の実施例3、8及び10に記載の通り組成物をそれぞれ調製し、それぞれを用い、及び特表2008−516262号公報の[0099]〜[0103]中に記載の実施例9aに記載のプロセスに従い、カラーフィルタ基板を作製した。
上記作製したカラーフィルタ基板の上に、ITO(Indium Tin Oxide)の透明電極をスパッタリングにより形成した。次いで、特開2006−64921号公報の実施例1に従い、このITO膜上の隔壁(ブラックマトリックス)上部に相当する部分にスペーサを形成した。
別途、対向基板としてITOの透明電極を形成したガラス基板を用意し、カラーフィルタ基板及び対向基板の透明電極にそれぞれPVAモード用にパターニングを施し、その上に更に垂直ポリイミドよりなる配向膜を設けた。
その後、カラーフィルタのRGB画素群を取り囲むように周囲に設けられたブラックマトリクス外枠に相当する位置に紫外線硬化樹脂のシール剤をディスペンサ方式により塗布し、PVAモード用液晶を滴下し、対向基板と貼り合わせた後、貼り合わされた基板をUV照射した後、熱処理してシール剤を硬化させた。このようにして液晶セルを作製した。
続いて、作製した液晶セルのΔnd(590)をAXOMETRICS社製のAXOSCANと付属のソフトを使用して測定し、Δnd(590)が、COA構造のVA型液晶セルとして採用した、ソニー製「KDL−52W5」と同じ295nmであるものを選別した。
MITSUBISHI社製の液晶パネル「LCD−40MZW100」から取り出した液晶セルを分解して、光源側に配置されていたアレイ基板を取り出し、エタノールで表面を洗浄した。
前記液晶セルの対向基板側にガラス用マッチングオイルを用いて前記製品アレイ基板を貼り付けたものを液晶セル2(非COA構造)、前記液晶セルのカラーフィルタ基板側にガラス用マッチングオイルを用いて前記製品アレイ基板を貼り付けたものを液晶セル3(COA構造)とし、使用した。
液晶セル2および3の光源には、前記LCD−40MZW100に使用されていたバックライトを使用し、前記製品アレイ基板側に配置した。
(1)−2 VA型液晶セル4の準備
ガラス基板上に、特開2009−141341号公報中に記載の実施例20に従い、TFT素子を作製し、さらにTFT素子上に保護膜を形成した。続いて、保護膜にコンタクトホールを形成した後、上記保護膜上に、TFT素子と電気的に接続したITOの透明電極を形成し、アレイ基板を作製した。
着色感光性組成物に特開2009−144126号公報中に記載の実施例17、18及び19に記載の通り調製した組成物をそれぞれ用い、並びに特表2008−516262号公報の[0099]〜[0103]中に記載の実施例9aに記載のプロセスに従い、カラーフィルタ基板を作製した。
上記作製したカラーフィルタ基板上に、ITOの透明電極をスパッタリングにより形成し、次いで、特開2006−64921号公報の実施例1に従い、このITO膜上の隔壁(ブラックマトリックス)上部に相当する部分にスペーサを形成した。
前記作製したアレイ基板及びカラーフィルタ基板の透明電極にそれぞれPVAモード用にパターニングを施し、その上に更に垂直ポリイミドよりなる配向膜を設けた。
その後、カラーフィルタのRGB画素群を取り囲むように周囲に設けられたブラックマトリクス外枠に相当する位置に紫外線硬化樹脂のシール剤をディスペンサ方式により塗布し、PVAモード用液晶を滴下し、アレイ基板と貼り合わせ、貼り合わされた基板をUV照射した後、熱処理してシール剤を硬化させた。このようにして液晶セルを作製した。
続いて、作製した液晶セルのΔnd(590)をAXOMETRICS社製のAXOSCANと付属のソフトを使用して測定し、Δnd(590)が295nmであるものを選別し、液晶セル4として使用した。
液晶セル4の光源には、前記LCD−40MZW100に使用されていたバックライトを使用し、アレイ基板側に光源を配置した。
(1)−3 VA型液晶セル5の準備
ガラス基板上に、特開2009−141341号公報中に記載の実施例20に従い、TFT素子を作製し、さらにTFT素子上に保護膜を形成した。
続いて、前記保護膜上に、着色感光性組成物に特開2009−144126号公報中に記載の実施例17、18及び19に記載の通り調製した組成物をそれぞれ用い、並びに特表2008−516262号公報の[0099]〜[0103]中に記載の実施例9aに記載のプロセスに従い、カラーフィルタ・オン・アレイ(COA)基板を作製した。但し、各画素の着色感光性樹脂組成物における顔料の濃度は半分にし、さらに塗布量を調整し、ブラック画素が4.2μmに、レッド・グリーン・ブルー画素がいずれも3.5μmになるようにした。さらに、カラーフィルタにコンタクトホールを形成した後、上記カラーフィルタ上に、TFT素子と電気的に接続したITO(Indium Tin Oxide)の透明画素電極を形成した。次いで、特開2006−64921号公報の実施例1に従い、このITO膜上の隔壁(ブラックマトリックス)上部に相当する部分にスペーサを形成した。
別途、対向基板として、ITOの透明電極を形成したガラス基板を用意し、COA基板及び対向基板の透明電極にそれぞれPVAモード用にパターニングを施し、その上に更に垂直ポリイミドよりなる配向膜を設けた。
その後、カラーフィルタのRGB画素群を取り囲むように周囲に設けられたブラックマトリクス外枠に相当する位置に紫外線硬化樹脂のシール剤をディスペンサ方式により塗布し、PVAモード用液晶を滴下し、対向基板と貼り合わせた後、貼り合わされた基板をUV照射した後、熱処理してシール剤を硬化させた。このようにして液晶セルを作製した。
続いて、作製した液晶セルのΔnd(590)をAXOMETRICS社製のAXOSCANと付属のソフトを使用して測定し、Δnd(590)が295nmであるものを選別し、液晶セル5として使用した。
液晶セル5の光源には、前記LCD−40MZW100に使用されていたバックライトを使用し、COA基板側に光源を配置した。
(1)−4 VA型液晶セル6の準備
COA基板上のITO膜上の隔壁上部に相当する部分に形成した柱上スペーサーパターンには、直径16μm、平均高さ3.0μmのものを使用した以外は、液晶セル5と同様の方法で液晶セル6を作製した。
作製した液晶セル6のΔndをAXOMETRICS社製のAXOSCANと付属のソフトを使用して測定したところ、Δnd(590)は240nmであった。
液晶セル6の光源には、前記LCD−40MZW100に使用されていたバックライトを使用し、COA基板側に光源を配置した。
(2) 各液晶セルのフロント側基板およびリア側基板の部材コントラストの算出
液晶セルのリア側基板及びフロント側基板の部材コントラストとは、各基板と各基板上に形成される種々の部材のトータルのコントラストをいうものとする。なお、当該部材の例には、カラーフィルタ、ブラックマトリックス、アレイ部材(TFTアレイ等)、基板上の突起部、共通電極、スリット等、種々の部材が含まれる。
各液晶セルを形成する2枚の基板、すなわち、フロント側基板及びリア側基板を分離し、各基板をエタノールで洗浄した。続いて、フロント側基板(フロント側基板とその基板上に形成されたすべての部材を含む)、及び、リア側基板(リア側基板とその基板上に形成されたすべての部材を含む)の部材コントラストを、次の方法で算出した。
SHARP社製の液晶パネル「LC−32GH5」のバックライト上に、偏光板(HLC2−2518、サンリッツ社製)を配置し、その上に各液晶セルを分解して作製した、フロント側基板、又はリア側基板を、回転ステージ(SGSP−120YAW、シグマ光機製)に取り付けて光源上の偏光板と2mm間隔で平行に配置した。このとき、基板上にあるTFTアレイの配線およびブラックマトリックスの格子パターンが偏光板の偏光軸と一致するように配置した。さらにその上に、回転ステージに取り付けた偏光板(HLC2−2518、サンリッツ社製)を、偏光板間の距離が52mmになるように配置し、測定器(BM5A、TOPCON社製)を用いて、暗室において、法線方向の黒表示および白表示の輝度値を測定し、正面コントラストA(白輝度/黒輝度)を算出した。ここで、偏光板を回転させたときに、最も輝度値が低くなるときを黒表示の輝度値とし、さらに偏光板を90度回転させた場合の輝度値を白表示の輝度値とした。
次に、前述の形態において、フロント側基板またはリア側基板を取り外した形態で、偏光板のみの黒表示および白表示の輝度値を測定し、正面コントラストBを算出した。
正面コントラストAにおける、偏光板の正面コントラストBの影響を排除するため、次の式で部材コントラストを算出した。
部材コントラスト=1/(1/正面コントラストA−1/正面コントラストB)
さらに、各液晶セルについて、フロント基板とリア側基板の部材コントラストの比(フロント基板の部材コントラスト/リア側基板の部材コントラスト)を算出したところ、液晶セル1は13.5、液晶セル2は0.5、液晶セル3は54.5、液晶セル4は1.1、液晶セル5および6は50.2であった。
(3) VA型液晶表示装置の作製
上記で作製した6種の液晶セル(「KDL−52W5」のCOA構造の液晶セル1、非COA構造の液晶セル2及び4、COA構造の液晶セル3、5及び6)のいずれかを選択し、その両基板の外側表面に、下記表に示す組合せで偏光板を貼合して、VA型液晶表示装置を作製した。偏光板の吸収軸は互いに直交にして貼合した。
(4) VA型液晶表示装置の評価
作製した各液晶表示装置について、以下の評価を行った。
(4)−1 正面コントラスト比の測定
測定器(BM5A、TOPCON社製)を用いて、暗室において、パネル法線方向の黒表示および白表示の輝度値を測定し、正面コントラスト(白輝度/黒輝度)を算出した。
このとき、測定器とパネル間の距離は700mmに設定した。
続いて、正面コントラスト比を、基準形態での正面コントラスト比を基に、次の式で算出した。
正面コントラスト比=実施形態での正面コントラスト/基準形態での正面コントラストなお、基準形態は、液晶セル1を使用した液晶表示装置では比較例8の液晶表示装置とし、液晶セル2又は3を使用した液晶表示装置では比較例4の液晶表示装置とし、液晶セル4又は5を使用した液晶表示装置では比較例14の液晶表示装置とし、液晶セル6を使用した液晶表示装置では比較例17の液晶表示装置とした。正面コントラストは、比較例8が3700、比較例4が2900、比較例14が3250、比較例17が2650であった。
(4)−2 視野角コントラスト(斜め方向のコントラスト)
測定器(BM5A、TOPCON社製)を用いて、暗室において、装置正面からの方位角方向45度、極角方向60度における黒表示時の光漏れ率を測定した。この値が小さいほど斜め45度方向での光漏れが少なく、表示装置のコントラストが良いことを示し、液晶表示装置の視野角特性を評価できる。
○:光漏れが認識できない
△:わずかに光漏れが認識されるが、許容できる程度
×:大きな光漏れがある(許容不可)
なお、上記の光漏れ率による評価は、視野角視野角コントラストにも置き換え可能であり、光漏れが認識できないという評価は、視野角視野角コントラストが50以上に、大きな光漏れがあるため許容できないという評価は、視野角コントラストが25未満に対応する。
(4)−3 表示ムラ
偏光板の表示ムラは、37インチサイズの偏光板を、上板0°、下板90°となるようにガラスに貼り付け、下板側からバックライトで照らし、下記基準で評価した。表示ムラの評価は、偏光板のバックライトの反対側(上板から50cm離れた位置)に設置した測定機(2次元色分布測定装置,コニカミノルタ社)製,商品名:CA−1500)を用いて行った。また、加熱試験(80℃,240時間)、加湿試験(60℃,90%RH,240時間)、ヒートサイクル試験(‐35℃と75℃の温度でそれぞれ1時間保持する温度条件の変化を200サイクル)をそれぞれ行った後についても同様に表示ムラを評価した。
○:表示ムラがない。
△:部分的に表示ムラが見られる。
×:全面に表示ムラが見られる。
結果を下記表に示す。
Figure 2011095694
Figure 2011095694
Figure 2011095694
Figure 2011095694
上記結果から、上記式(I)を満足する位相差フィルムをリア側偏光子とCOA構造の液晶セルとの間に配置した本発明の実施例のVA型液晶表示装置は、いずれも正面コントラストが高いことが理解できる。具体的には、実施例2及び8の正面CRと、非COA構造の液晶セルを有する以外は実施例2及び8のそれぞれと同一の構成の比較例2及び1の正面CRとを比較することによって、本発明のVA型液晶表示装置が、正面CRの観点で、非COA構造のVA型液晶表示装置と比較して、格段に優れていることが理解できる。
さらに、比較例4及び3を参照すると、これらは液晶セルがCOA構造又は非COA構造の違いがある以外は同一の構成の液晶表示装置であり、実施例2及び比較例2の関係、及び実施例8及び比較例1の関係と同様である。しかし、比較例4では、リア側位相差領域のRth(590)が95nmであり、式(I)|Rth(590)|≦90nmを満足していないため、正面CRが比較例3と比較してむしろ低下している。このことから、本発明の効果は、COA構造を採用するとともに、リア側位相差領域が、前記式(I)を満足することによってはじめて得られることは明らかである。
また、比較例8及び比較例9は、リア側位相差フィルムのRthが90nm以下であるが、光弾性係数が3×10-122/N以上の例である。これらはそれぞれ、リア側位相差フィルムの光弾性係数が異なる以外は、実施例と同様の構成である。正面CR及び視野角CRは実施例と同様に優れているが、表示ムラは実施例と比較して劣っていることが理解できる。また、比較例5はさらに、光弾性係数が大きいフィルムを位相差フィルムとして利用した例であり、表示ムラがさらに悪化していることが理解できる。これは、実施例ではリア側の位相差フィルムの光弾性係数が3×10-122/N未満であるのに対し、比較例ではリア側の位相差フィルムの光弾性係数が3×10-122/N以上であるためであり、リア側の位相差フィルムの光弾性係数が3×10-122/N未満の場合に表示ムラ改善に有効であることが理解できる。
なお、上記の実施例では、フロント側及びリア側の外側保護フィルムとして用いた位相差フィルムは、実施例18以外は、いずれもTACフィルム(フィルム14又はフィルム15)であるが、実施例18のように他の外側保護フィルムを用いても同様の効果を得ることができる。例えば、セルロースアシレート系フィルムであっても、その他のセルロースアシレート(例、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート等のフィルム)、ポリオレフィン(例、ノルボルネン系ポリマー)、ポリ(メタ)アクリル酸エステル(例、ポリメチルメタクリレート)、ポリカーボネート、ポリエステル、又はポリスルホンを主成分とするフィルムを用いても同様の効果が得られるであろうし、他の市販のポリマーフィルム(ノルボルネン系ポリマーでは、アートン(JSR製)、ゼオノア(日本ゼオン製)など)を用いても同様の効果が得られるであろう。
参考例:
実施例3において、フロント側位相差フィルムとしてフィルム18の代わりに、フィルム1を用いた以外は、実施例3と同様にして作製したVA型液晶表示装置についても同様に評価した。その結果、正面コントラスト比は、121%で実施例と同様に高く、また表示ムラの評価結果も良好であったが、視野角コントラストが低かった。この理由は、フロント側位相差フィルムとして利用したフィルム1の光学特性が、VA型液晶表示装置の視野角特性の補償には不十分であったためと考えられる。
10 液晶層
12 カラーフィルタ層
14 アレイ部材
16 リア側基板
18 フロント側基板
20 リア側位相差領域
22 フロント側位相差領域
24 リア側偏光子
26 フロント側偏光子
28 バックライトユニット
LC COA構造のVA型液晶セル
PL1 リア側偏光板
PL2 フロント側偏光板

Claims (11)

  1. フロント側偏光子、リア側偏光子、フロント側偏光子とリア側偏光子との間に配置される液晶層、及び該液晶層とリア側偏光子との間に配置されるカラーフィルタ層を有し、前記リア側偏光子と前記カラーフィルタ層との間に配置される1層又は2層以上の位相差層が全体として(以下、リア側偏光子とカラーフィルタ層との間に配置される1層又は2層以上の位相差層の全体を「リア側位相差領域」という)、下記式(I)
    (I): |Rth(590)|≦90nm
    を満足し、前記リア側位相差領域が、光弾性係数が3×10-122/N未満である少なくとも1枚の熱可塑性樹脂フィルム(A)からなることを特徴とするVA型液晶表示装置:
    但し、Rth(λ)は、波長λnmにおける厚み方向のレターデーション(nm)を意味する。
  2. 前記液晶層が、前記カラーフィルタ層を備えた画素を区画するブラックマトリクスを有するアレイ基板と、前記アレイ基板に対向して配置された対向基板とに挟持されていることを特徴とする請求項1に記載のVA型液晶表示装置。
  3. 少なくとも1枚の熱可塑性樹脂フィルム(A)の光弾性係数が負である請求項1又は2に記載のVA型液晶表示装置。
  4. 前記リア側位相差領域が、下記式(II)
    (II): |Re(590)|≦20nm
    を満足することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のVA型液晶表示装置:
    但し、Re(λ)は、波長λnmにおける面内レターデーション(nm)を意味する。
  5. 前記フロント側偏光子と前記液晶層との間に配置される1層又は2層以上の位相差層が全体して(以下、フロント側偏光子と液晶層との間に配置される1層又は2層以上の位相差層の全体を「フロント側位相差領域」という)、下記式(III)及び(IV)
    (III): 30nm≦Re(590)≦90nm
    (IV): 150nm≦Rth(590)≦300nm
    を満足することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のVA型液晶表示装置。
  6. 前記熱可塑性樹脂フィルム(A)が、アクリル系樹脂フィルムであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のVA型液晶表示装置。
  7. 前記熱可塑性樹脂フィルム(A)が、ラクトン環構造単位、グルタル酸無水物単位、グルタルイミド単位のいずれかを含有するアクリル系樹脂フィルムであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のVA型液晶表示装置。
  8. 前記熱可塑性樹脂フィルム(A)が、セルロースアシレート系ポリマーを含有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のVA型液晶表示装置。
  9. 前記フロント側位相差領域が、少なくとも1枚の二軸性の高分子フィルムからなることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のVA型液晶表示装置。
  10. 前記フロント側位相差領域が、少なくとも1枚の一軸性の高分子フィルムからなることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載のVA型液晶表示装置。
  11. 前記二軸性の高分子フィルム又は一軸性の高分子フィルムが、セルロースアシレート系フィルム、環状オレフィン系樹脂フィルム、アクリル系樹脂フィルムから選ばれるいずれか1つであることを特徴とする請求項9又は10に記載のVA型液晶表示装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2013003424A (ja) * 2011-06-20 2013-01-07 Konica Minolta Advanced Layers Inc 垂直配向型液晶表示装置
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JP2018041081A (ja) * 2017-09-04 2018-03-15 大日本印刷株式会社 偏光板、画像表示装置、および画像表示装置における明所コントラストの改善方法

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