JP5538853B2 - 液晶表示装置 - Google Patents

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本発明は、正面コントラストが改善された液晶表示装置に関し、特に、水平方向に配向した液晶分子に略横方向の電界を印加することにより表示を行う、いわゆるIPS(インプレーンスイッチング)モードやFFS(フリンジフィールドスイッチング)モードの液晶表示装置に関する。
近年、種々のモードの液晶表示装置について、表示画像の法線方向におけるコントラスト(以下、「正面コントラスト(正面CR)」という)が急激に向上している。横電界を液晶に対して印加する、インプレーンスイッチング(IPS)モードやフリンジフィールドスイッチング(FFS)モードといった、いわゆるIPS型液晶表示装置(特許文献1〜3)もその一つである。これは、カラーフィルタの形成に用いられる顔料の粒径が微細化されたこと、ブラックマトリックスが細線化したこと、及びTFTアレイが改善したこと等、によるものである。正面CRは、カタログにも記載されるような、液晶表示装置の性能を如実に表す指標である。そのため、わずかでも正面CRを改善するため、液晶表示装置に関する様々な部材の改良が検討されており、学会発表、論文及び特許公開公報等によって種々提案されている。IPS型液晶表示装置についても、今後、益々、正面CRの向上が進むであろう。
例えば、透過率を上げるための一手段として、カラーフィルタ・オン・アレイ(COA)構造がある(例えば、特許文献4〜6)。COA構造によれば、開口率を大きくすることができるので、白表示時の透過率を上げることができる。現在、環境問題に対する関心が高く、COA構造を採用して透過率を改善することは消費電力の軽減に寄与するものであり、環境の観点でも好ましい。
ところで、正面CRは、白表示時及び黒表示時の2つの透過率(白輝度及び黒輝度)によって決定されるので、透過率を上昇するだけでは達成できない。白表示時の透過率を上昇できても、同時に黒表示時の透過率も上昇してしまうのでは、高CR化を達成することはできない。白表示時の透過率を改善可能な構造を採用して正面CRを高めるためには、その構造を採用することによる黒透過率の上昇を抑制することが重要である。
一方、液晶表示装置については、正面CRが高いことのみならず、斜め方向のCR(以下、「視野角CR」という場合がある)も高いことが重要である。IPS型液晶表示装置については、黒表示時の斜め方向に生じる光漏れを軽減する技術として、位相差フィルムを採用することが種々提案されている。一例として、液晶セルを中心として、フロント側とリア側にそれぞれ位相差フィルムを配置し、光学補償に必要な位相差を2枚の位相差フィルムのそれぞれに分担させて光学補償を達成している例がある(例えば、特許文献7)。
従来、これらの位相差フィルムが正面CRに与える影響としては、主に、位相差フィルムの軸ズレ及びヘイズによって正面CRが低下するという観点から検討がなされ、これらの影響を軽減するための技術が種々提案されている。
特許第3114065号 USP6,388,726 特許第3465835号 特開2005−99499号公報 特開2005−258004号公報 特開2005−3733号公報 特開2008−065132号公報
本発明者が、IPS型等の水平配向型液晶表示装置にCOA構造を採用することによって正面CRを改善することを試みたところ、正面CRの改善が達成できないことがわかった。さらに検討した結果、その原因は、IPS型液晶表示装置の黒表示時の斜め方向に生じる光漏れの軽減、即ち視野角CRの改善、に寄与する位相差フィルムが存在することが一因であることがわかった。特に、リア側に大きな位相差を有する位相差フィルムが配置されたIPS型液晶表示装置において、COA構造を採用すると、正面CRが改善されないばかりか、むしろ低下することがわかった。位相差フィルムを有するIPS型液晶表示装置において、COA構造を採用することの問題点については、本発明者が知る限りでは、従来なんら知られていなかったといえる。
即ち、本発明は、従来知られていなかった、位相差フィルムを有する水平配向型液晶表示装置において、COA構造を採用することの問題点を解決することを課題とする。具体的には、本発明は、正面コントラストが改善された、COA構造の水平配向型液晶表示装置を提供することを課題とする。
上記した通り、本発明者が検討した結果、COA構造を採用すると、開口率が拡大されるので白表示時の透過率は上昇するが、一方で黒表示時の光漏れも高くなってしまうことがわかった。特に、リア側に位相差が大きな位相差フィルムが配置されているIPS型等の水平配向型液晶表示装置に、COA構造を採用すると、正面CRが改善されないばかりか、COA構造を採用していないものより正面CRがむしろ低下してしまうことがわかった。本発明者は、この問題を解決するために、種々検討した結果、リア側に配置される位相差フィルムの合計のRthが所定の範囲であると、COA構造を採用した水平配向型液晶表示装置の正面CRを改善できるとの知見を得、本発明を完成するに至った。
即ち、上記課題を解決するための手段は以下の通りである。
[1] フロント側偏光子、リア側偏光子、フロント側偏光子とリア側偏光子との間に配置される液晶層、及び該液晶層とリア側偏光子との間に配置されるカラーフィルタ層を有し、前記リア側偏光子と前記カラーフィルタ層との間に配置される1層又は2層以上の位相差層が全体として(以下、リア側偏光子とカラーフィルタ層との間に配置される1層又は2層以上の位相差層の全体を「リア側位相差領域」という)、下記式(I)
(I): −90nm≦Rth(550)≦70nm
但し、Rth(λ)は、波長λnmにおける厚み方向のレターデーション(nm)を意味する;を満足し、並びに
前記液晶層が、前記カラーフィルタ層を備えたアレイ基板であるリア側基板と、前記アレイ基板に対向して配置された対向基板であるフロント側基板とに挟持されており、かつ、黒表示時に該液晶層の液晶分子が前記一対の基板の表面に対して平行に配向することを特徴とする液晶表示装置。
[2] 前記リア側位相差領域が、下記式(II)
(II): |Re(550)|≦300nm
を満足することを特徴とする[1]の液晶表示装置:
但し、Re(λ)は、波長λnmにおける面内レターデーション(nm)を意味する。
[3] 前記リア側位相差領域が、セルロースアシレート系フィルムからなる又はセルロースアシレート系フィルムを含むことを特徴とする[1]又は[2]の液晶表示装置。
[4] 前記リア側位相差領域が、アクリル系ポリマーフィルムからなる又はアクリル系ポリマーフィルムを含むことを特徴とする[1]〜[3]のいずれかの液晶表示装置。
[5] 前記リア側位相差領域が、ラクトン環単位、無水マレイン酸単位、及びグルタル酸無水物単位から選ばれる少なくとも1種の単位を含むアクリル系ポリマーを含有するアクリル系ポリマーフィルムからなる又は当該アクリル系ポリマーフィルムを含有する[4]の液晶表示装置。
[6] 前記リア側位相差領域が、環状オレフィン系ポリマーフィルムからなる、又は環状オレフィン系ポリマーフィルムを含むことを特徴とする[1]〜[5]のいずれかの液晶表示装置。
[7] 前記フロント側偏光子と前記液晶層との間に、1層又は2層以上の位相差層(以下、フロント側偏光子と液晶層との間に配置される1層又は2層以上の位相差層の全体を「フロント側位相差領域」という)を有することを特徴とする[1]〜[6]のいずれかの液晶表示装置。
[8] 前記フロント側位相差領域が、下記式(III)及び(IV)
(III): |Re(550)|≦300nm
(IV): |Rth(550)|≦300nm
を満足することを特徴とする[7]の液晶表示装置。
[9] 前記フロント側位相差領域が、1枚の二軸性の高分子フィルムからなる、又は1枚の二軸性の高分子フィルムを含むことを特徴とする[8]の液晶表示装置。
[10] 前記フロント側位相差領域が、1枚の一軸性の高分子フィルムからなる、又は1枚の一軸性の高分子フィルムを含むことを特徴とする[8]の液晶表示装置。
[11] 前記1枚の二軸性の高分子フィルム又は1枚の一軸性の高分子フィルムが、セルロースアシレート系フィルムであることを特徴とする[9]又は[10]の液晶表示装置。
[12] 前記1枚の二軸性の高分子フィルム又は1枚の一軸性の高分子フィルムが、環状オレフィン系ポリマーフィルムであることを特徴とする[9]又は[10]の液晶表示装置。
[13] 前記アレイ基板が、前記カラーフィルタ層を備えた画素を区画するブラックマトリクスを有するアレイ基板であることを特徴とする[1]〜[12]のいずれかの液晶表示装置。
本発明によれば、正面コントラストが高い、COA構造のIPS型等の水平配向型液晶表示装置を提供することができる。
本発明の液晶表示装置の一例の断面模式図である。 本発明の作用を説明するために用いた模式図である。 参照のために用いた、従来の一般的なIPS型液晶セルの作用を説明するために用いた模式図である。
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
まず、本明細書で用いられる用語について、説明する。
(レターデーション、Re及びRth)
本明細書において、Re(λ)及びRth(λ)は各々、波長λにおける面内のレターデーション(nm)及び厚さ方向のレターデーション(nm)を表す。Re(λ)はKOBRA 21ADH又はWR(王子計測機器(株)製)において波長λnmの光をフィルム法線方向に入射させて測定される。
測定されるフィルム等のサンプルが1軸又は2軸の屈折率楕円体で表されるものである場合には、以下の方法によりRth(λ)は算出される。
Rth(λ)は前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADH又はWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフィルム面内の任意の方向を回転軸とする)のフィルム法線方向に対して法線方向から片側50度まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて全部で6点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADH又はWRが算出する。
上記において、法線方向から面内の遅相軸を回転軸として、ある傾斜角度にレターデーションの値がゼロとなる方向をもつフィルムの場合には、その傾斜角度より大きい傾斜角度でのレターデーション値はその符号を負に変更した後、KOBRA 21ADH又はWRが算出する。
尚、遅相軸を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフィルム面内の任意の方向を回転軸とする)、任意の傾斜した2方向からレターデーション値を測定し、その値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基に、以下の式(X)及び式(XI)よりRthを算出することもできる。
Figure 0005538853
注記:
上記のRe(θ)は法線方向から角度θ傾斜した方向におけるレターデーション値をあらわす。また、式中、nxは面内における遅相軸方向の屈折率を表し、nyは面内においてnxに直交する方向の屈折率を表し、nzはnx及びnyに直交する方向の屈折率を表す。dは膜厚を表す。
測定されるフィルムが1軸や2軸の屈折率楕円体で表現できないもの、いわゆる光学軸(optic axis)がないフィルムの場合には、以下の方法によりRth(λ)は算出される。
Rth(λ)は前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADH又はWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)としてフィルム法線方向に対して−50度から+50度まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて11点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADH又はWRが算出する。
上記の測定において、平均屈折率の仮定値は ポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS,INC)、各種光学フィルムのカタログの値を使用することができる。平均屈折率の値が既知でないものについてはアッベ屈折計で測定することができる。主な光学フィルムの平均屈折率の値を以下に例示する:
セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)である。
これら平均屈折率の仮定値と膜厚を入力することで、KOBRA 21ADH又はWRはnx、ny、nzを算出する。この算出されたnx,ny,nzよりNz=(nx−nz)/(nx−ny)が更に算出される。
また、本明細書では、Re(450)、Re(550)、Re(650)、Rth(450)、Rth(550)、Rth(650)等のRe(λ)及びRth(λ)の値は、測定装置により、3以上の異なる波長(例としてλ=479.2、546.3、632.8、745.3nm)についてRe及びRthをそれぞれ測定し、それらの値から算出するものとする。具体的には、それらの測定値をコーシーの式(第3項まで、Re=A+B/λ2+C/λ4)にて近似して、値A、B及びCをそれぞれ求める。以上より波長λにおけるRe、Rthをプロットし直し、そこから各波長λのRe(λ)およびRth(λ)をそれぞれ求めることができる。
本明細書において、位相差フィルム等の「遅相軸」は、屈折率が最大となる方向を意味する。また、「可視光領域」とは、380nm〜780nmのことをいう。また、本明細書では、測定波長について特に付記がない場合は、測定波長は550nmである。
また、本明細書において、位相差領域、位相差フィルム、及び液晶層等の各部材の光学特性を示す数値、数値範囲、及び定性的な表現(例えば、「同等」、「等しい」等の表現)については、液晶表示装置やそれに用いられる部材について一般的に許容される誤差を含む数値、数値範囲及び性質を示していると解釈されるものとする。
本明細書において、位相差フィルムとは、液晶セルと偏光子の間に配置された自己支持性のある膜を意味する(レターデーションの大小は関係ない)。なお、位相差膜、位相差層、位相差フィルムは同義である。位相差領域は液晶セルと偏光子の間に配置された1
層または2層以上の位相差フィルムの総称である。
また、本明細書では、「フロント側」とは表示面側を意味し、「リア側」とはバックライト側を意味する。また、本明細書で「正面」とは、表示面に対する法線方向を意味し、「正面コントラスト(CR)」は、表示面の法線方向において測定される白輝度及び黒輝度から算出されるコントラストをいい、「視野角コントラスト(CR)」は、表示面の法線方向から傾斜した斜め方向(例えば、表示面に対して、方位角方向45度、極角方向60度で定義される方向)において測定される白輝度及び黒輝度から算出されるコントラストをいうものとする。
また、本明細書では、黒表示時に該液晶層の液晶分子が前記一対の基板の表面に対して平行に配向するモードを「水平配向型」といい、その例には、IPS型及びFFS型が含まれる。
本発明は、COA構造を有するIPS型及びFFS型等の水平配向型液晶表示装置に関する。本発明の液晶表示装置の一例の概略断面図を図1に示す。
図1に示す本発明の一例のIPS型液晶表示装置は、フロント側偏光子26、リア側偏光子24、フロント側偏光子26とリア側偏光子24との間に配置される液晶層10、液晶層10とリア側偏光子24との間に配置されるカラーフィルタ層12、リア側偏光子24とカラーフィルタ層12との間に配置されるリア側位相差領域20、及びフロント側偏光子26と液晶層10との間に配置されるフロント側位相差領域22を有する。図1に示すIPS型液晶表示装置が有する液晶セルLCは、液晶層10が、フロント側基板18とリア側基板16とによって挟持され、アレイ部材14及びカラーフィルタ層12が同一の基板、リア側基板16、上に配置されている、COA構造の液晶セルであり、黒表示時には、液晶層10の液晶分子は、リア側及びフロント側基板16、18の表面に対して平行に配向する。また液晶セルLCは、ブラックマトリックス(図示せず)を有していてもよく、その位置はリア側基板16上であっても、フロント側基板18上であってもよい。
本発明の水平配向型液晶表示装置では、液晶セルLCのリア側に位置するリア側位相差領域20が、低位相差であることに一つの特徴がある。
従来の液晶表示装置では、フロント側位相差領域の位相差及びリア側位相差領域の位相差については、視野角補償のために、割り当てられるのが一般的であった。しかし、近年、液晶セルについては、カラーフィルタ層のみを例にとっても、RGB着色層の形成に利用される顔料の粒子径の微細化が進み、液晶セル中で生じる光の多重散乱が顕著に減少され、高コントラスト化が進んでいる。本発明者が鋭意検討した結果、かかる高コントラストの液晶セルでは、液晶セルに入射した際の偏光状態が散乱によって失われず、正面方向のコントラストに影響を与えることがわかった。なお、正面コントラストは黒表示時の光漏れに大きく依存する。黒表示時の輝度が低いほど、正面コントラストは高くなる。液晶セル外に配置される位相差フィルム等の位相差が、正面CRに与える影響については、本発明者が知る限りでは、従来なんら検討されていなかったと言える。
通常、IPS型等の水平配向型液晶表示装置のバックライトユニットからは、指向性をもった光がリア側偏光子に入射するが、斜め方向から入射した光は、リア側の位相差フィルム等が配置されたリア側位相差領域のレタデーション(以後、Retリア)によって楕円偏光化される。その後、この楕円偏光化された光が、液晶セルに入射するが、本発明者が鋭意検討したところ、この楕円偏光化された光が、液晶セル中の各部材(液晶、カラーフィルタ、ブラックマトリックス、アレイ基板の構造、対向基板の突起構造、対向基板上の共通電極にスリットなど)に入射すると、各部材における散乱や回折などの光学現象によって、正面に散乱されてしまい、その結果、正面CRが低下するとの知見が得られた。即ち、Retリアと液晶セルの各部材の光学現象との関係によって、正面CRの低下量が決まることを、本発明者は見出した。この知見に基づき、さらに検討した結果、COA構造の液晶セルを有するIPS型等の水平配向型液晶表示装置では、液晶セルに入射する前に光が通過するリア側位相差領域(図1中では20)が、下記式(I)
(I): −90nm≦Rth(550)≦70nm
を満足することにより、顕著に正面CRが改善されることを見出した。光が液晶セルに入射する前に通過する位相差領域全体の位相差が、上記式(I)を満足する限り、斜め方向から入射した光が、その後、液晶セル中のアレイ部材及びカラーフィルタ層で拡散もしくは回折等されて、法線方向に進む光となっても、黒表示時の正面方向の光漏れを過度に上昇させることなく、非COA構造の液晶セルを配置した一般的な構成の水平配向型液晶表示装置と比較して、正面CRを改善することができる。
図1に示す本発明の一例のIPS型液晶表示装置が、従来のIPS型液晶表示装置と比較して、正面CRが改善される理由は、図2及び図3に示す通りにまとめられる。図2は、図1に示す本発明のIPS型液晶表示装置、図3は、従来の非COA構造の液晶セルを有するIPS型液晶表示装置の、それぞれのリア側位相差領域(図1中では20)の位相差RetリアのRth(Rthリア)が変化した場合に、COA構造液晶セルLC及び非COA構造液晶セルLC'のそれぞれの中に配置されている各部材に入射する光の偏光状態における楕円率の傾向、及びその影響の強弱をまとめたものである。なお、図2(b)及び図3(b)中、「楕円率↑」は、楕円率が大きくなることを意味し、楕円率が大きくなると、大きな傾向として正面CRは低下する。矢印の本数はその作用の強弱の目安であって、本数が多いほど作用が強いことを示す。なお、図2及び図3中では、説明を簡略化するために、CF部材(カラーフィルターとブラックマトリックス)、液晶層、及びアレイ部材(TFTアレイ)の3つに着目して説明する。
本発明の液晶表示装置では、リア側偏光子と液晶層との間に、リア側基板としてカラーフィルタ・オン・アレイ(COA)基板が配置されていることが一つの特徴である。
なお、カラーフィルタ、ブラックマトリックス、TFTアレイでの光学現象による、黒表示時の光漏れの入射偏光状態依存性は、すべて同じ傾向を示すが、ブラックマトリックスの寄与は相対的に小さいため、本発明の液晶表示装置におけるブラックマトリックスの位置は、液晶セル内のいずれでもよいが、リア側偏光子と液晶層の間に位置することが好ましい。
図3(b)にまとめる通り、従来の一般的な構造のIPS型液晶表示装置では、正面CRに対する影響が大きい、CF部材及びアレイ部材それぞれに入射する光の偏光状態、主に楕円率の大きさが、互いに異なる。これは、アレイ部材には、入射光が、液晶層を通過する前に入射するが、一方、CF部材には、液晶層を通過した後に入射するからであり、液晶層のレターデーションの影響で楕円率、楕円方位が変化するからである。即ち、Rthリアの絶対値を小さくして、アレイ部材による光学現象による正面CRの低下を抑制しても、液晶層を通過することでCF部材に入射する前に、光の偏光状態が変化し、CF部材による光学現象による正面CR低下を抑制できない。その結果、従来の一般的な構造のIPS型液晶表示装置では正面CRの低下を抑制することができなかった。
一方、本発明の一例である図2(a)の液晶セルでは、図2(b)にまとめる通り、正面CRに対する影響が大きい、CF部材及びアレイ部材それぞれに入射する光の偏光状態が等しく、即ち、Rthリアの絶対値を小さくすることで、CF部材及びアレイ部材による光学現象に起因する正面CRの低下を抑制することができる。その結果、図3(a)に示す、通常構造のIPS型液晶セルLC'と比較して、本発明の一例のIPS型液晶表示装置では、正面CRが改善される。
液晶セル内の各部材の光学現象が、その配置によって、正面CRに与える影響の傾向が逆転する理由は以下の通りである。
アレイ部材およびCF部材で起こる散乱の程度は、アレイ部材およびCF部材で散乱が起こる直前の入射偏光の楕円率および楕円方位によって主に決定され、入射偏光の楕円率が小さいほど、および楕円方位がフロント側の偏光子の吸収軸方位に近づくほど、当該部材での散乱による光漏れの影響の程度は小さくなる。当該部材で散乱した光の偏光状態がフロント側偏光子で吸収される偏光状態に近いほど、黒表示時の光漏れを少なくでき、その結果、正面CRは高くなる。液晶層に入射する前に光が入射する部材、例えば、図3(a)中のアレイ部材54では、Retリアの絶対値が小さいほど、アレイ部材54に入射する偏光の楕円率が小さくなるので、アレイ部材54による光学現象による正面CR低下を抑制できる。しかし、液晶層を通過した後に光が入射する部材では、Retリアだけでなく液晶のレターデーションも、入射偏光の楕円率に影響する。IPS型では、黒表示時の液晶層のΔndは275〜550nmの間に設定されるので、結果的に、Retリアが小さいほど、液晶層を通過した後、部材に入射する偏光の楕円率が大きくなる。FFS型でも、液晶層の黒表示時のΔndは275〜550nmの間に設定されるので、同様である。よって、液晶層に入射した後に光が入射する部材、例えば、図3(a)中のカラーフィルタ52では、Retリアの絶対値を小さくしても、液晶層を通過すると光の楕円率が大きくなるので、カラーフィルタ52による正面CR低下を抑制できない。
即ち、図3(a)の従来の一般的な構成のIPS型液晶セルLC'では、Retリアを小さくしても、液晶層のレターデーションの影響によって正面CR低下を抑制することができない。
一方、本発明に係る、図2(a)のIPS型液晶セルLCでは、正面CRに対する影響が大きい、CF部材及びアレイ部材がともに液晶層よりも光源側にあるため、Retリアの絶対値を小さくすると、カラーフィルタ12及びアレイ部材14の光学現象による正面CR低下を抑制できるので、液晶層のレターデーションに大きく影響される、従来のIPS型液晶表示装置と比較して、正面CRを改善することができる。
Retリアが正面CRに与える影響は、低い正面CRの液晶表示装置ではほとんど無視できる程度である。しかし、近年提供されている、高い正面CR(例えば、正面CRが1200以上)のIPS型等の水平配向型液晶表示装置について、さらなる正面CRの改善を図るためには、この影響を無視することはできない。本発明は、正面CRが1200以上の水平配向型液晶表示装置について、正面CRをさらに改善するのに特に有用である。
本発明の正面CRの改善効果は、上記した通り、COA構造の液晶セルを採用して開口率を増加したことによる効果ではなく、COA構造の液晶セルのリア側位相差領域を低位相差とすることで、液晶セル内に入射した偏光の散乱を軽減し、その結果、正面黒輝度を低下させたことによるものである。本発明の効果は、液晶セル内に入射した偏光が内部の各部材で散乱された後も、その偏光状態をほぼ維持すると仮定すると、ポアンカレ球上の偏光の軌跡によっても説明することができる。一方で、従来は、偏光が散乱すると、その偏光状態を維持するとは考えられていなかったので、液晶セル内の散乱による正面CRの低下を解決している本発明の効果が、ポアンカレ球上の偏光の軌跡によって説明できることは、予期せぬことであった。
また、COA構造の液晶セルのリア側位相差領域を低位相差にすることは、正面方向CRのみならず、斜め方向のコントラスト(以下、「視野角CR」という場合がある)の改善にも寄与する。例えば、COA構造の液晶セルを採用しても、リア側位相差領域が高位相差であると、正面CRも視野角CRも改善されない。即ち、本発明のこの視野角CRの改善効果も液晶セルへの入射偏光によって変動する光漏れを軽減することによってもたらされる効果であり、COA構造の液晶セルを採用し、開口率を増加させることのみによっては得られない効果である。
また、後述するフロント側位相差領域によって、一対の偏光板の偏光軸が直交配置からずれるのを補償する、フロント側位相差領域による視野角CRの改善効果とは区別されるものである。
本発明者が鋭意検討した結果、COA構造の液晶セルに入射する前に光が通過するリア側位相差領域(図1中では20)が、下記式(I)
(I): −90nm≦Rth(550)≦70nm
を満足することにより、驚くべきことに、上記問題点を解決し得ることがわかった。光がCOA構造の液晶セルLCに入射する前に通過する位相差領域全体の位相差が、上記式(I)を満足する限り、斜め方向から入射した光が、その後、液晶セル中のアレイ部材14及びカラーフィルタ層12で散乱もしくは回折等されて、法線方向に進む光となっても、並びに液晶層中の液晶分子の揺らぎの影響を受けても、黒表示時の正面方向の光漏れを過度に上昇させることなく、非COA構造の液晶セルを採用した水平配向型液晶表示装置と比較して、正面CRを改善することができる。本発明の効果は、COA構造を採用して開口率を拡大することのみによっては得られない効果であり、COA構造を採用するとともに、リア側位相差領域が上記式(I)を満足することによってはじめて得られる効果である。
図1で図示していない他の部材(例えば、ブラックマトリックス)についても、前述のカラーフィルタ層およびアレイ部材と同様である。すなわち、光が液晶層に入射する前に通過する部材では、上記表の非COA構造のアレイ部材と同様になり、液晶層に入射した後に通過する部材では、上記表の非COA構造のカラーフィルタ部材と同様になる。
なお、前述のように、カラーフィルタ、ブラックマトリックス、アレイ部材での光学現象による、黒表示時の光漏れの入射偏光状態依存性は、すべて同じ傾向を示すが、ブラックマトリックスの寄与は相対的に小さいため、COA構造の液晶表示装置におけるブラックマトリックスの位置は、液晶セル内のいずれでもよいが、高い正面CRを得るためには、リア側偏光子と液晶層の間に位置することが好ましい。
図1中のリア側位相差領域20は、単層構造であっても、2層以上からなる積層体であってもよい。単層構造である態様では、当該層が、式(I)を満足する必要があり、2層以上の積層体の態様では、積層体が全体として前記式(I)を満足する必要がある。
また、より高い正面CRを得るためには、図1中のリア側位相差領域20として配置されるフィルムのヘイズは、0.5以下が好ましく、0.3以下がより好ましく、0.2以下がさらに好ましい。なお、本明細書において、フィルムのヘイズの測定方法は以下の通りである。フィルム試料40mm×80mmを準備し、25℃,60%RHの環境下、ヘイズメーター(NDH−2000、日本電色工業(株)製)により、JIS K−6714に従って測定する。
図1中のフロント側位相差領域22も、単層構造であっても、2層以上からなる積層体であってもよい。フロント側位相差領域22が、視野角CRの改善に寄与する位相差を有すると、本発明の効果、即ち正面CRの改善のみならず、視野角CRの改善も達成できるので好ましい。液晶セルLCの液晶層のΔnd(λ)は、上記した通り、一般的には、275〜550nmの間に設定されるが、フロント側位相差領域22のレターデーション、特にRth、の好ましい範囲は、リア側位相差領域20のレターデーション及び液晶層のΔnd(λ)の値に応じて変動する。斜めCR改善のため、液晶層のΔnd(λ)に対する、フロント側位相差領域とリア側位相差領域の、好ましい組み合わせについては、種々の公報に記載がある。この観点では、フロント側位相差領域22は、下記式(III)及び(IV)
(III): |Re(550)|≦300nm
(IV): |Rth(550)|≦300nm
を満足するのが好ましい。上記特性を満足するために、フロント側位相差領域22は、例えば、1枚もしくは2枚以上の二軸性の高分子フィルムからなっていてもよいし、1枚もしくは2枚以上の二軸性の高分子フィルムを含んでいてもよい。さらに、フロント側位相差領域22は、1枚もしくは2枚以上の一軸性の高分子フィルムを含んでいてもよい。
本発明の一態様では、前記リア側位相差領域(図1中の20)が、下記式(II)
(II): |Re(550)|≦300nm
を満足する。Reが高い位相差フィルムをリア側に配置しても、Rthが前記式(I)を満足する限り、本発明の効果を得ることができる。一方、Reがある程度ある位相差フィルムをリア側に配置する場合は、リア側偏光子の吸収軸との関係等、他の部材の光学的軸との関係で軸合わせを厳密に行う必要が生じるであろう。このような観点から、前記リア側位相差領域が全体として、Reが低く、前記式(II)を満足していると、リア側位相差領域として利用する1枚又は2枚以上の位相差フィルムを液晶表示装置に組み込む際、軸合わせ等が容易となるので好ましい。
さらに、本発明の他の効果として、「サークルムラ」の軽減が挙げられる。「サークルムラ」とは、液晶パネルを高温・高湿の雰囲気下に曝した後、黒表示状態にすると、パネルに環状の光漏れが発生する現象をいう。詳細は、特開2007−187841号公報に記載がある。この原因は、高温・高湿の雰囲気下に曝されることによって、バックライト側の液晶セル基板(即ち図1中ではリア側基板16)に反りが発生することが一因である。COA構造では、リア側基板にアレイ部材の他、カラーフィルタ層も配置されているので、熱がかかっても反りが生じ難く、その結果、サークルムラも軽減することができる。
サークルムラの観点からは、リア側位相差領域(図1中の20)に配置される位相差フィルムの厚みは、薄いほうが好ましくは、具体的には、その厚みは2〜100μm程度が好ましく、2〜60μm程度がより好ましく、2〜40μm程度がさらに好ましい。
再び図1において、図1中の液晶セルLCが有するCOA構造の「COA」とは、カラーフィルタ・オン・アレイの略であり、アクティブマトリクス基板上にカラーフィルタを形成した構造をCOA構造と言う。COA構造は、当初は、通常のTFT基板にカラーフィルムを形成するだけのものであったが、近年では、表示特性改良のため、画素電極をカラーフィルム上側に形成し、コンタクトホールとよばれる小穴を通じて、画素電極とTFTとを接続する構造が一般的となっている。本発明ではいずれの構造であってもよい。COA構造では、カラーフィルタ層の厚みは、従来型のカラーフィルム層(1〜2μm程度)より厚く、2〜4μm程度が一般的である。これは画素電極の端部と配線の間にできる寄生容量を抑制するためである。本発明の液晶表示装置が有するカラーフィルタ層も2〜4μm程度の厚みが好ましいが、この範囲に限定されるものではない。また、COA構造の液晶セルの製造では、カラーフィルタ層上の画素電極をパターニングする必要があり、エッチング液や剥離液への耐性が要求される。この目的で、膜厚を厚めに調整したカラーフィルタ材料(着色感光性組成物)を用いるが、通常のカラーフィルタ材料で形成したカラーフィルタ層+オーバーコート層という2層構成をとることもある。本発明では、いずれの構成であってもよい。
なお、COA構造については、上記特許文献1及び2の他、特開2007−240544号公報、特開2004−163979号公報等にも記載があり、本発明においては、いずれの構成も採用することができる。
また、本発明の液晶表示装置が有するカラーフィルタは、通常の液晶表示装置が有するカラーフィルタと同様、基板の画素部位に複数の異なる色(例えば赤、緑、青の光の3原色、透明、黄色、シアンなど)を配列したカラーフィルタである。その作製方法は様々であり、例えば、着色のための材料(有機顔料、染料、カーボンブラックなど)を用い、カラーレジストと呼ばれる着色感光性組成物(無色の場合もある)を調製し、これを基板の上に塗布して層を形成し、フォトリソグラフィ法によりパターン形成するのが一般的である。前記着色感光性組成物を基板の上に塗布する方法も様々であり、例えば初期には、スピン・コーター法が採用され、省液の観点で、スリット&スピン型コーター法が採用され、現在では、スリット・コーター法が一般的に採用されている。その他にロールコーティング法、バーコーティング法、ダイコーティング法などがある。また近年では、フォトリソグラフィにより離画壁とよばれるパターンを形成した後に、インクジェット方式により画素の色を形成することも行なわれている。この他に、着色非感光性組成物と感光性ポジ型レジストを組み合わせた方法、印刷法、電着法、フィルム転写法によるものなどが知られている。本発明に利用するカラーフィルタは、いずれの方法で作製されたものであってもよい。
カラーフィルタ形成用の材料についても特に制限はない。着色材料として、染料、有機顔料、無機顔料等、いずれを用いることもできる。染料は、高コントラスト化の要求から検討されていたが、近年は有機顔料の分散技術が進歩し、ソルトミリング法などで微細に砕いたブレークダウン顔料や、ビルドアップ法による微細化顔料などが高コントラスト化に用いられている。本発明には、いずれの着色材料を用いてもよい。
図1において、リア側位相差領域20及びフロント側位相差領域22の全部又は一部は、それぞれリア側偏光子24及びフロント側偏光子26の保護フィルムとしても機能していてもよい。また、図1中では省略したが、リア側偏光子24は、そのバックライト28側の表面に、保護フィルム、防汚性フィルム、アンチリフレクションフィルム、アンチグレアフィルム、アンチスタチックフィルム等の機能性フィルムを有していてもよく、同様に、フロント側偏光子は、その表示面側表面に、保護フィルム、防汚性フィルム、アンチリフレクションフィルム、アンチグレアフィルム、アンチスタチックフィルム等の機能性フィルムを有していてもよい。
本発明の正面コントラスト向上の効果は、バックライトからの出射光の角度プロファイルを調整することによって、更に改善することができる場合がある。具体的には、より集光性が強いバックライトを用いると正面コントラストの絶対値が増加するため、本発明で示された正面CR絶対値の増加分も大きくなる。集光性の指標は例えば正面における出射光強度I(0°)に対する極角45度における出射光強度I(45°)の比I(0°)/I(45°)で表され、この値が大きいほど集光性が強いバックライトということになる。集光性が高いバックライトとしては、拡散フィルムと液晶パネルとの間に、光集光機能を備えたプリズムフィルム(プリズム層)を設けることが望ましい。このプリズムフィルムは、導光板の光出射面から出射され、拡散フィルムで拡散された光を、高効率で液晶パネルの有効表示エリアに集光させるものである。一般的な直下型方式のバックライトが搭載された液晶表示装置は、例えば、上部に透明基板や偏光板に挟まれたカラーフィルタ、液晶層からなる液晶パネルと、その下面側にバックライトが設けられている。米国3M社の登録商標である輝度強調フィルム(Brightness Enhancement Film:BEF)が代表例である。BEFは、フィルム基材上に、断面三角形状の単位プリズムが一方向に周期的に配列されたフィルムであり、プリズムは光の波長に比較して大きいサイズ(ピッチ)である。BEFは、"軸外(off−axis)"からの光を集光し、この光を視聴者に向けて"軸上(on−axis)"に方向転換(redirect)または"リサイクル(recycle)"する。BEFに代表されるプリズムの反復的アレイ構造を有する輝度制御部材をディスプレイに採用する旨が開示されている特許文献としては、特公平1−37801号公報、特開平6−102506号公報、特表平10−506500号公報に例示されるように多数のものが知られている。
また、集光性を高めるために、レンズアレイシートを用いることも望ましい。レンズアレイシートは、所定のピッチで凸状に形成された単位レンズが複数個2次元に配列されてなるレンズ面を有する。そのレンズ面の反対側は平坦面になっていて、前記平坦面に、前記レンズの非集光面領域に光線を反射する光反射層が形成されているレンズアレイシートが好ましい。また、所定のピッチで形成された凸状のシリンドリカルレンズが複数個平行に配列されてなるレンチキュラーレンズ面と、そのレンズ面の反対側は平坦面になっていて、前記平坦面には、前記凸状のシリンドリカルレンズの非集光面領域に長手方向のストライプ状の光線を反射する光反射層が形成されているレンズアレイシートも好ましい。また、例えば、シリンドリカル状の曲面から構成される単位レンズを面内に一方向に配列したレンチキュラーレンズアレイシート、あるいは円形、矩形、六角形などの底面形状を有しドーム状の曲面から構成される単位レンズが面内に2次元配列されてなるレンズアレイシートなども使用することができる。これらのレンズアレイシートについては、特開平10−241434号、特開2001−201611号、特開2007−256575号、特開2006−106197号、特開2006−208930号、特開2007−213035号、及び特開2007−41172号等の各公報に記載があり、参照することができる。
本発明は、バックライトの出射光スペクトル、及びカラーフィルタの透過スペクトルを調整することによって、色再現域を広げたディスプレイの態様においても効果を奏する。具体的には、バックライトには赤色LED、緑色LED及び青色LEDを組み合わせて混色させた白色バックライトを用いることが望ましい。また、赤色LED、緑色LED及び青色LEDの出射光ピークの半値幅が小さいことが好ましい。LEDの場合には、CCFLに比べて半値波長幅が20nm程度と小さく、またピーク波長をR(赤)が610nm以上、G(緑)が530nm、B(青)が480nm以下とすることにより、光源自体の色純度を高くすることができる。
また、LEDのピーク波長以外において、カラーフィルタの分光透過率をできるだけ小さく抑制することにより、さらに色再現性を向上させ、NTSC比が100%の特性を有することが報告されている。例えば、特開2004−78102号公報に記載がある。赤色カラーフィルタは、緑色LED及び青色LEDのピーク位置における透過率が小さいことが望ましく、緑色カラーフィルタは、青色LED及び赤LEDのピーク位置における透過率が小さいことが望ましく、青カラーフィルタは、赤色LED及び緑色LEDのピーク位置における透過率が小さいことが望ましい。具体的にはこれら透過率がいずれも、0.1以下であることが望ましく、更に好ましくは0.03以下であり、更に好ましくは0.01以下である。これらのバックライトとカラーフィルタとの関係については、例えば特開2009−192661号公報に記載があり、参照することができる。
また、バックライトにレーザー光源を用いることも色再現域を広げるためには好ましい。赤、緑及び青色のレーザー光源のピーク波長が、それぞれ430〜480nm、520〜550nm、及び620〜660nmであることが好ましい。レーザー光源のバックライトについては、特開2009−14892号公報に記載があり、参照することができる。
以下、本発明の水平配向型液晶表示装置に用いられる種々の部材について、詳細に説明する。
1.リア側位相差領域及びフロント側位相差領域
本発明では、リア側偏光子と水平配向型液晶セル内のカラーフィルタ層との間に配置される1層又は2層以上の位相差層の全体を、「リア側位相差領域」という。リア側位相差領域は全体で、上記式(I)を満足する。上記式(II)をさらに満足するのが好ましい。
前記リア側位相差領域は、上記式(I)を満足し、より好ましくは、
|Rth(550)|≦70nm
を満足し、さらに好ましくは、
|Rth(550)|≦50nm
を満足し、よりさらに好ましくは、下記式:
|Rth(550)|≦20nm
を満足する。Rth(550)の絶対値が小さいほど、サークルムラの観点で好ましい。
また、一態様では、前記リア側位相差領域は、上記式(II)を満足するのが好ましく、より好ましくは、
0nm≦Re(550)≦200nm
を満足し、さらに好ましくは、
0nm≦Re(550)≦50nm
を満足し、よりさらに好ましくは、下記式:
0nm≦Re(550)≦20nm
を満足する。
また、本発明では、フロント側偏光子と水平配向型液晶セル内の液晶層との間に配置される1層又は2層以上の位相差層の全体を、「フロント側位相差領域」という。フロント側位相差領域は全体で、及びリア側位相差領域が有する位相差との関係で、視野角CRの改善に寄与する位相差を有することが好ましい。
フロント側位相差領域が、上記式(III)及び(IV)を満足するのが好ましいが、より好ましい態様について、具体的に説明する。
図1中、液晶セルLCと偏光板PL2との間に、所定の光学特性を示すフロント側位相差領域22を配置することによって、視野角に依存した画像の色味変化がより軽減された液晶表示装置となる。
フロント側位相差領域22として、下記式(IX)を満足する位相差層を、その遅相軸をフロント側偏光子26の吸収軸に対して直交又は平行にして配置してもよい。
(IX) 100nm≦Re(550)≦300nm、且つ|Rth(550)|≦50nm
上記式(IX)を満足する位相差層については特に制限されず、種々の材料から作製することができる。例えば、式(IX)を満足する位相差層として、レターデーションを発現又は上昇させる作用を有する成分を添加したセルロースアシレート組成物を、フィルムとして成形した後、一軸延伸又は二軸延伸することによって作製したセルロースアシレート系フィルムを用いることができる。その他、ポリカーボネイトフィルム(商品名;日東電工NRZフィルム)やノルボルネン系フィルム(商品名:ゼオノア、アートン)を用いることができる。
以下、図1の構成において、フロント側位相差領域22が第1位相差層および第2位相差層からなる場合の好ましい組み合わせ例について説明する。
・第1の例
第2位相差層は、前記式(VI)を満足する光学特性を示すとともに、その遅相軸が、フロント側偏光子26の吸収軸と直交であり、且つフロント側基板18の対向面の配向制御方向(ラビング軸)に対して平行である。及び第1位相差層は、下記式(V)を満足するとともに、その遅相軸が、第2位相差層の遅相軸に対して直交又は平行である。即ち、画面左右方向を0°、上下方向を90°の方向とした場合、リア側偏光子24の吸収軸は0°の方向、リア側基板16及びフロント側基板18の対向面に形成されたラビング軸は0°の方向、第1位相差層の遅相軸は0°又は90°の方向、第2位相差層の遅相軸は0°の方向、及びフロント側偏光子26の吸収軸は90°の方向に配置されている。
(V) −180nm≦Rth(550)≦−25nm、且つ0nm≦Re(550)≦10nm
(VI) 100nm≦Re(550)≦165nm、且つ55nm≦Rth(550)≦80nm
・第2の例
第1位相差層は、上記式(VI)を満足する光学特性を示すとともに、その遅相軸が、フロント側偏光子26の吸収軸と平行であり、且つフロント側基板18の対向面の配向制御方向(ラビング軸)に対して直交である。及び第2位相差層は、上記式(V)を満足するとともに、その遅相軸が、第1位相差層の遅相軸に対して直交又は平行である。即ち、画面左右方向を0°、上下方向を90°の方向とした場合、リア側偏光子24の吸収軸は0°の方向、リア側基板16及びフロント側基板18の対向面に形成されたラビング軸は0°の方向、第1位相差層の遅相軸は90°の方向、第2位相差層の遅相軸は0°又は90°の方向、及びフロント側偏光子26の吸収軸は90°の方向に配置されている。
上記式(V)を満足する位相差層、及び上記式(VI)を満足する位相差層については特に制限されず、種々の材料から作製することができる。例えば、上記式(V)又は(VI)を満足する位相差層として、レターデーションを発現又は上昇させる作用を有する成分を添加したセルロースアシレート組成物を、フィルムとして成形した後、一軸延伸又は二軸延伸することによって作製したセルロースアシレート系フィルムを用いることができる。その他、ポリカーボネイトフィルム(商品名;日東電工NRZフィルム)やノルボルネン系フィルム(商品名:ゼオノア、アートン)を用いることができる。また、液晶性組成物から形成することもき、例えば、式(V)を満足する位相差層は、棒状液晶をその長軸を垂直配向させることで形成でき、また式(VI)を満足する位相差層は、棒状液晶をその長軸を水平配向させることで形成できる。
・第3の例
第2位相差層は、下記式(VIII)を満足する光学特性を示すとともに、その遅相軸が、フロント側偏光子26の吸収軸と平行であり、且つフロント側基板18の対向面の配向制御方向(ラビング軸)に対して直交である。及び第1位相差層は、下記式(VII)を満足する光学特性を示すとともに、その遅相軸が、第2位相差層の遅相軸に対して直交又は平行である。即ち、画面左右方向を0°、上下方向を90°の方向とした場合、リア側偏光子24の吸収軸は0°の方向、リア側基板16及びフロント側基板18の対向面に形成されたラビング軸は0°の方向、第1位相差層の遅相軸は0°又は90°の方向、第2位相差層の遅相軸は90°の方向、及びフロント側偏光子26の吸収軸は90°の方向に配置されている。
(VII) 35nm≦Rth(550)≦135nm、且つ0nm≦Re(550)≦10nm
(VIII) 100nm≦Re(550)≦165nm、且つ−80nm≦Rth(550)≦−55nm
・第4の例
第1位相差層は、上記式(VIII)を満足する光学特性を示すとともに、その遅相軸が、フロント側偏光子26の吸収軸と直交であり、且つフロント側基板18の対向面の配向制御方向(ラビング軸)に対して平行である。及び第2位相差層は上記式(VII)を満足するとともに、その遅相軸は、第1位相差層の遅相軸に対して直交又は平行である。即ち、画面左右方向を0°、上下方向を90°の方向とした場合、リア側偏光子24の吸収軸は0°の方向、リア側基板16及びフロント側基板18の対向面に形成されたラビング軸は0°の方向、第1位相差層の遅相軸は0°の方向、第2位相差層の遅相軸は0°又は90°の方向、及びフロント側偏光子26の吸収軸は90°の方向に配置されている。
上記式(VII)を満足する位相差層、及び上記式(VIII)を満足する位相差層については特に制限されず、種々の材料から作製することができる。例えば、上記式(VII)又は(VIII)を満足する位相差層として、レターデーションを発現又は上昇させる作用を有する成分を添加したセルロースアシレート組成物を、フィルムとして成形した後、一軸延伸又は二軸延伸することによって作製したセルロースアシレート系フィルムを用いることができる。その他、ポリカーボネイトフィルム(商品名;日東電工NRZフィルム)やノルボルネン系フィルム(商品名:ゼオノア、アートン)を用いることができる。また、液晶性組成物から形成することもき、上記式(VIII)を満足する位相差層は、ディスコティック液晶性分子の円盤面を層面に対して垂直にして配向させ、その光軸を層面に対して水平方向にすることによって形成できる。また上記式(VII)を満足する位相差層は、ディスコティック液晶性分子の円盤面を層面に対して平行にして配向させ、その光軸を層面に対して垂直方向にすることによって形成できる。
・第5の例
第2位相差層は、下記式(X)を満足する光学特性を示すとともに、その遅相軸が、フロント側偏光子26の吸収軸と直交であり、且つフロント側基板18の対向面の配向制御方向(ラビング軸)に対して平行である。及び第1位相差層は、下記式(XI)を満足するとともに、その遅相軸が、第2位相差層の遅相軸に対して平行である。即ち、画面左右方向を0°、上下方向を90°の方向とした場合、リア側偏光子24の吸収軸は0°の方向、リア側基板16及びフロント側基板18の対向面に形成されたラビング軸は0°の方向、第1位相差層の遅相軸は0°の方向、第2位相差層の遅相軸は0°の方向、及びフロント側偏光子26の吸収軸は90°の方向に配置されている。
(X) 250nm≦Re(550)≦300nm、且つ−120nm≦Rth(550)≦−18nm
(XI) 250nm≦Re(550)≦300nm、且つ18nm≦Rth(550)≦120nm
・第6の例
第2位相差層は、上記式(XI)を満足する光学特性を示すとともに、その遅相軸が、フロント側偏光子26の吸収軸と平行であり、且つフロント側基板18の対向面の配向制御方向(ラビング軸)に対して直交である。及び第1位相差層は、上記式(X)を満足するとともに、その遅相軸が、第2位相差層の遅相軸に対して平行である。即ち、画面左右方向を0°、上下方向を90°の方向とした場合、リア側偏光子24の吸収軸は0°の方向、リア側基板16及びフロント側基板18の対向面に形成されたラビング軸は0°の方向、第1位相差層の遅相軸は90°の方向、第2位相差層の遅相軸は90°の方向、及びフロント側偏光子26の吸収軸は90°の方向に配置されている。
・第7の例
第2位相差層及び第1位相差層の双方が、上記式(XI)を満足する光学特性を示すとともに、互いの遅相軸を直交にして積層されている。さらに、第2位相差層のその遅相軸は、フロント側偏光子26の吸収軸と平行であり、且つフロント側基板18の対向面の配向制御方向(ラビング軸)に対して直交である。即ち、画面左右方向を0°、上下方向を90°の方向とした場合、リア側偏光子24の吸収軸は0°の方向、リア側基板16及びフロント側基板18の対向面に形成されたラビング軸は0°の方向、第1位相差層の遅相軸は0°の方向、第2位相差層の遅相軸は90°の方向、及びフロント側偏光子26の吸収軸は90°の方向に配置されている。
・第8の例
第2位相差層及び第1位相差層の双方が、上記式(X)を満足する光学特性を示すとともに、互いの遅相軸を直交にして積層されている。さらに、第2位相差層のその遅相軸は、フロント側偏光子26の吸収軸と直交であり、且つフロント側基板18の対向面の配向制御方向(ラビング軸)に対して平行である。即ち、画面左右方向を0°、上下方向を90°の方向とした場合、リア側偏光子24の吸収軸は0°の方向、リア側基板16及びフロント側基板18の対向面に形成されたラビング軸は0°の方向、第1位相差層の遅相軸は90°の方向、第2位相差層の遅相軸は0°の方向、及びフロント側偏光子26の吸収軸は90°の方向に配置されている。
上記式(X)を満足する光学特性を示す位相差層、及び上記式(XI)を満足する光学特性を示す位相差層については特に制限されず、種々の材料から作製することができる。例えば、上記式(X)又は(XI)を満足する位相差層として、レターデーションを発現又は上昇させる作用を有する成分を添加したセルロースアシレート組成物を、フィルムとして成形した後、一軸延伸又は二軸延伸することによって作製したセルロースアシレート系フィルムを用いることができる。その他、ポリカーボネイトフィルム(商品名;日東電工NRZフィルム)やノルボルネン系フィルム(商品名:ゼオノア、アートン)を用いることができる。
図1の液晶表示装置では、光源側偏光板PL1のリア側偏光子24の吸収軸と、リア側基板16及びフロント側基板18の対向面が有する配向制御方向(ラビング軸)とが、互いに平行の方位である構成例を示したが、本発明の液晶表示装置はこの構成に限定されず、光源側偏光板PL1のリア側偏光子24の吸収軸と、リア側基板16及びフロント側基板18の対向面が有する配向制御方向とが、互いに直交の方位にあり、且つ表示面側偏光板PL2のフロント側偏光子26の吸収軸と、リア側基板16及びフロント側基板18の対向面が有する配向制御方向とが、互いに平行の方位に配置された態様であってもよい。
前記リア側位相差領域及びフロント側位相差領域を構成する各層の材料については特に制限はない。式(I)及び(II)を満足する位相差領域、又は式(III)〜(XI)を満足する位相差領域は、1枚又は2枚以上の二軸性フィルムによって構成することができるし、塗布型の高分子層と高分子フィルムとの併用でもよいし、またCプレートとAプレートとの組合せ等、一軸性フィルムを2枚以上組合せることでも構成することができる。勿論、1枚以上の二軸性フィルムと、1枚以上の一軸性フィルムとを組み合わせることによっても構成することができる。低コスト化の観点から、前記リア側位相差領域及びフロント側位相差領域は、どちらかを1枚のフィルムで構成することが好ましく、どちらも1枚のフィルムで構成することがより好ましい。
上記いずれの態様においても、前記リア側及びフロント側位相差領域の面内レターデーションReの波長分散は、可視光域において、波長が長波長になる程大きくなるという、いわゆる逆分散性を示すことが好ましい。即ち、Re(450)<Re(550)<Re(650)を満足するのが好ましい。その理由は、位相差領域のReが逆波長分散性であると、可視光域の中心波長550nm程度で、光学特性を最適化すれば、可視光全域にわたって、最適化される傾向がある。Reが逆分散性であるのが最も好ましく、また波長によらず一定であるのも好ましい。また、前記リア側位相差領域のRthについても同様であり、可視光域において、Rthが逆波長分散性を示すか、波長によらず一定であるのが好ましい。より好ましくは逆波長分散性である。逆波長分散性又は波長によらず一定であることは、例えば、Rthについては、以下の2式
|Rth(450)|/|Rth(550)|≦1、及び
1≦|Rth(650)|/|Rth(550)|
を満足することと同義である。
リア側位相差領域のレターデーションが順波長分散性以外(逆波長分散性又は波長によらず一定)であると、順波長分散性である態様と比較して、正面の黒表示における青味付きを軽減(黒表示時の正面方向の色味付きの改善)できるので好ましい。
一方、フロント側位相差領域が逆波長分散性であると、視野角CR改善や、視野角色味付きの改善効果(黒表示時の斜め方向の色味付きの軽減効果)といった視野角特性が改善されるので好ましい。
より高い正面CRを得るためには、リア側及びフロント側位相差領域を構成する位相差フィルムのヘイズは、0.5以下が好ましく、0.3以下がより好ましく、0.2以下がさらに好ましい。
なお、本明細書において、位相差フィルムのヘイズの測定方法は以下の通りである。位相差フィルム試料40mm×80mmを準備し、25℃,60%RHの環境下、ヘイズメーター(NDH−2000、日本電色工業(株)製)により、JIS K−6714に従って測定する。
前記リア側及びフロント側位相差領域を構成する材料について特に制限はない。種々のポリマーフィルム、例えば、セルロースアシレート、ポリカーボネート系ポリマー、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル系ポリマー、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系ポリマー、ポリスチレンやアクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)等のスチレン系ポリマー等を利用することができる。また、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、エチレン・プロピレン共重合体の如きポリオレフィン系ポリマー、塩化ビニル系ポリマー、ナイロンや芳香族ポリアミド等のアミド系ポリマー、イミド系ポリマー、スルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー、ポリフェニレンスルフィド系ポリマー、塩化ビニリデン系ポリマー、ビニルアルコール系ポリマー、ビニルブチラール系ポリマー、アリレート系ポリマー、ポリオキシメチレン系ポリマー、エポキシ系ポリマー、または前記ポリマーを混合したポリマー等から1種又は2種以上のポリマーを選択し、主成分として用いてポリマーフィルムを作製し、上記特性を満足する組合せで、リア側及びフロント側位相差領域の作製に利用することができる。
単層でもしくは複数層全体として、上記式(I)及び(II)を満足する位相差フィルム、又は上記式(III)〜(XIII)を満足する位相差フィルムとしては、セルロースアシレート系フィルム、アクリル系ポリマーフィルム、及び環状オレフィン系ポリマーフィルムが好ましい。
セルロースアシレート系フィルム:
本明細書では、「セルロースアシレート系フィルム」とは、セルロースアシレートを主成分(全成分の50質量%以上)として含有するフィルムをいう。当該フィルムの作製に用いられるセルロースアシレートは、セルロースの水酸基の水素原子を、アシル基に置換したものである。前記セルロースアシレートはセルロースの水酸基がアシル化されたもので、その置換基はアシル基の炭素原子数が2のアセチル基から炭素原子数が22のものまでいずれも用いることができる。本発明において使用されるセルロースアシレートにおいて、セルロースの水酸基への置換度については特に限定されないが、セルロースの水酸基に置換する酢酸および/または炭素原子数3〜22の脂肪酸の結合度を測定し、計算によって置換度を得ることができる。測定方法としては、ASTMのD−817−91に準じて実施することができる。
前記セルロースアシレートの置換度については特に限定されないが、セルロースのアシル置換度が2.30〜3.00であることが望ましい。
前記セルロースアシレートは、セルロースアセテートであることが好ましいが、アセチル基に代えて、又はアセチル基とともに、アセチル基以外のアシル基で置換されていてもよい。中でも、アセチル、プロピオニル及びブチリル基から選ばれる少なくとも一種のアシル基を有するセルロースアシレートが好ましく、及びアセチル、プロピオニル及びブチリル基から選ばれる少なくとも二種のアシル基を有するセルロースアシレートがより好ましい。さらに、アセチル基と、プロピオニル及び/又はブチリル基とを有するセルロースアシレートが好ましく、アセチル基の置換度が1.0〜2.97で、プロピオニル及び/又はブチリル基の置換度が0.2〜2.5のセルロースアシレートがより好ましい。
また、前記セルロースアシレートは、180〜800の質量平均重合度を有することが好ましく、180〜550の質量平均重合度を有することがさらに好ましい。
セルロースアセテートにおいては、180〜550がより好ましく、180〜400がさらに好ましく、180〜350が特に好ましい。重合度が一定以下とすることによりセルロースアシレートのドープ溶液の粘度が高くなり、流延によりフィルム作製が困難になるのをより効果的に防止することができる。重合度を一定以上とすることにより、作製したフィルムの強度が低下してしまうのをより効果的に防止できる。平均重合度は、例えば、宇田らの極限粘度法(宇田和夫、斉藤秀夫、繊維学会誌、第18巻第1号、105〜120頁、1962年)により測定できる。この方法は、特開平9−95538号公報に詳細に記載されている。
また、本発明で好ましく用いられるセルロースアシレートの分子量分布はゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって評価され、その多分散性指数Mw/Mn(Mwは質量平均分子量、Mnは数平均分子量)が小さく、分子量分布が狭いことが好ましい。具体的なMw/Mnの値としては、1.0〜3.0であることが好ましく、1.0〜2.0であることがさらに好ましく、1.0〜1.6であることが最も好ましい。
また本発明で用いられるセルロースアシレートは、70000〜230000の数平均分子量を有することが好ましく、75000〜230000の数平均分子量を有することがさらに好ましく、78000〜120000の数平均分子量を有することがよりさらに好ましい。
また、前記式(I)を満足するフィルムの作製に利用可能なセルロースアシレートの例には、特開2006−184640号公報の[0019]〜[0210]に詳細な記載があるセルロースアシレートが含まれる。
前記セルロースアシレート系フィルムは、溶液キャスト法により製造することが好ましい。この方法では、セルロースアシレートを有機溶媒に溶解した溶液(ドープ)を用いてフィルムを製造することができる。上記添加剤を使用する場合は、添加剤はドープ調製のいずれのタイミングで添加してもよい。
フロント側位相差領域用のセルロースアシレート系フィルムの作製には、レターデーション発現剤を添加剤として利用することが好ましく、リア側位相差領域用のセルロースアシレート系フィルムの作製には、レターデーション発現剤を使用してもよい。使用可能なレターデーション発現剤としては、円盤状化合物または棒状、正の複屈折性化合物からなるものを挙げることができる。前記円盤状化合物または棒状としては、少なくとも二つの芳香族環を有する化合物をレターデーション発現剤として好ましく用いることができる。前記棒状化合物からなるレターデーション発現剤の添加量は、セルロースアシレートを含むポリマー成分100質量部に対して0.1〜30質量部であることが好ましく、0.5〜20質量部であることがさらに好ましい。前記円盤状のレターデーション発現剤は、前記セルロースアシレート樹脂100質量部に対して、0.05〜20質量部の範囲で使用することが好ましく、0.1〜15質量部の範囲で使用することがより好ましく、0.1〜10質量部の範囲で使用することがさらに好ましい。
前記円盤状化合物はRthレターデーション発現性において前記棒状化合物よりも優れているため、特に大きなRthレターデーションを必要とする場合には好ましく使用される。2種類以上のレターデーション発現剤を併用してもよい。
前記レターデーション発現剤は、250〜400nmの波長領域に最大吸収を有することが好ましく、可視領域に実質的に吸収を有していないことが好ましい。
前記レターデーション発現剤の例には、以下の(1)〜(3)の化合物が含まれる。
(1)円盤状化合物
前記円盤状化合物について説明する。円盤状化合物としては少なくとも二つの芳香族環を有する化合物を用いることができる。
本明細書において、「芳香族環」は、芳香族炭化水素環に加えて、芳香族性ヘテロ環を含む。本発明に用いることができる前記円盤状化合物としては、例えば、特開2008−181105号公報の[0038]〜[0046]に記載される化合物を挙げることができる。
前記円盤状化合物の例には、下記一般式(I)で表される化合物が含まれる。
Figure 0005538853
式中、X1は、単結合、−NR4−、−O−又はS−であり;X2は、単結合、−NR5−、−O−又はS−であり;X3は、単結合、−NR6−、−O−又はS−である。また、R1、R2、及びR3は、それぞれ独立に、アルキル基、アルケニル基、芳香族環基又は複素
環基であり;R4、R5及びR6は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル
基、アリール基又は複素環基である。
以下に前記一般式(I)で表される化合物の好ましい例(I−(1)〜IV−(10))を下記に示すが、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。
Figure 0005538853
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(2)棒状化合物
本発明では前述の円盤状化合物の他に直線的な分子構造を有する棒状化合物も好ましく用いることができる。本発明に用いることができる前記棒状化合物としては、例えば、特開2007−268898号公報の[0053]〜[0095]に記載される化合物を挙げることができる。
(3)正の複屈折性化合物
正の複屈折性化合物とは、分子が一軸性の配向をとって形成された層に光が入射したとき、前記配向方向の光の屈折率が前記配向方向に直交する方向の光の屈折率より大きくなるポリマーをいう。
このような正の複屈折性化合物としては、特に制限ないが、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリエーテルケトン、ポリアミドイミドおよびポリエステルイミド等の固有複屈折値が正のポリマーを挙げることができ、ポリエーテルケトンおよびポリエステル系ポリマー等が好ましく、ポリエステル系ポリマーがより好ましい。
前記ポリエステル系ポリマーは、炭素数2〜20の脂肪族ジカルボン酸と炭素数8〜20の芳香族ジカルボン酸の混合物と、炭素数2〜12の脂肪族ジオール、炭素数4〜20のアルキルエーテルジオールおよび炭素数6〜20の芳香族ジオールから選ばれる少なくとも1種類以上のジオールとの反応によって得られるものであり、かつ反応物の両末端は反応物のままでもよいが、さらにモノカルボン酸類やモノアルコール類またはフェノール類を反応させて、所謂末端の封止を実施してもよい。この末端封止は、特にフリーなカルボン酸類を含有させないために実施されることが、保存性などの点で有効である。本発明のポリエステル系ポリマーに使用されるジカルボン酸は、炭素数4〜20の脂肪族ジカルボン酸残基または炭素数8〜20の芳香族ジカルボン酸残基であることが好ましい。
好ましく用いられる炭素数2〜20の脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸および1,4−シクロヘキサンジカルボン酸が挙げられる。
また炭素数8〜20の芳香族ジカルボン酸としては、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,8−ナフタレンジカルボン酸、2,8−ナフタレンジカルボン酸および2,6−ナフタレンジカルボン酸等がある。
これらの中でも好ましい脂肪族ジカルボン酸としては、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸であり、芳香族ジカルボン酸としては、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸である。特に好ましくは、脂肪族ジカルボン酸成分としてはコハク酸、グルタル酸、アジピン酸であり、芳香族ジカルボン酸としてはフタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、である。
前述の脂肪族ジカルボン酸と芳香族ジカルボン酸のそれぞれの少なくとも一種類を組み合わせて用いられるが、その組み合わせは特に限定されるものではなく、それぞれの成分を数種類組み合わせても問題ない。
前記正の複屈折性化合物に利用されるジオールまたは芳香族環含有ジオールは、例えば、炭素数2〜20の脂肪族ジオール、炭素数4〜20のアルキルエーテルジオールおよび炭素数6〜20の芳香族環含有ジオールから選ばれるものである。
炭素原子2〜20の脂肪族ジオールとしては、アルキルジオールおよび脂環式ジオール類を挙げることができ、例えば、エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール(3,3−ジメチロ−ルペンタン)、2−n−ブチル−2−エチル−1,3プロパンジオール(3,3−ジメチロールヘプタン)、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−オクタデカンジオール等があり、これらのグリコールは、1種または2種以上の混合物として使用される。
好ましい脂肪族ジオールとしては、エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールであり、特に好ましくはエタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールである。
炭素数4〜20のアルキルエーテルジオールとしては、好ましくは、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリエチレンエーテルグリコールおよびポリプロピレンエーテルグリコールならびにこれらの組み合わせが挙げられる。その平均重合度は、特に限定されないが好ましくは2〜20であり、より好ましくは2〜10であり、さらには2〜5であり、特に好ましくは2〜4である。これらの例としては、典型的に有用な市販のポリエーテルグリコール類としては、カーボワックス(Carbowax)レジン、プルロニックス(Pluronics) レジンおよびニアックス(Niax)レジンが挙げられる。
炭素数6〜20の芳香族ジオールとしては、特に限定されないがビスフェノールA、1,2−ヒドロキシベンゼン、1,3−ヒドロキシベンゼン、1,4−ヒドロキシベンゼン、1,4−ベンゼンジメタノールが挙げられ、好ましくはビスフェノールA、1,4−ヒドロキシベンゼン、1,4−ベンゼンジメタノールである。
前記正の複屈折性化合物は、末端がアルキル基あるいは芳香族基で封止された化合物であることが好ましい。これは、末端を疎水性官能基で保護することにより、高温高湿での経時劣化に対して有効であり、エステル基の加水分解を遅延させる役割を示すことが要因となっている。
前記正の複屈折性化合物の両末端がカルボン酸やOH基とならないように、モノアルコール残基やモノカルボン酸残基で保護することが好ましい。
この場合、モノアルコールとしては炭素数1〜30の置換、無置換のモノアルコールが好ましく、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、ペンタノール、イソペンタノール、ヘキサノール、イソヘキサノール、シクロヘキシルアルコール、オクタノール、イソオクタノール、2−エチルヘキシルアルコール、ノニルアルコール、イソノニルアルコール、tert−ノニルアルコール、デカノール、ドデカノール、ドデカヘキサノール、ドデカオクタノール、アリルアルコール、オレイルアルコールなどの脂肪族アルコール、ベンジルアルコール、3−フェニルプロパノールなどの置換アルコールなどが挙げられる。
好ましく使用され得る末端封止用アルコールは、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、イソペンタノール、ヘキサノール、イソヘキサノール、シクロヘキシルアルコール、イソオクタノール、2−エチルヘキシルアルコール、イソノニルアルコール、オレイルアルコール、ベンジルアルコールであり、特にはメタノール、エタノール、プロパノール、イソブタノール、シクロヘキシルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール、イソノニルアルコール、ベンジルアルコールである。
また、モノカルボン酸残基で封止する場合は、モノカルボン酸残基として使用されるモノカルボン酸は、炭素数1〜30の置換、無置換のモノカルボン酸が好ましい。これらは、脂肪族モノカルボン酸でも芳香族環含有カルボン酸でもよい。好ましい脂肪族モノカルボン酸について記述すると、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、カプリル酸、カプロン酸、デカン酸、ドデカン酸、ステアリン酸、オレイン酸が挙げられ、芳香族環含有モノカルボン酸としては、例えば安息香酸、p−tert−ブチル安息香酸、p−tert−アミル安息香酸、オルソトルイル酸、メタトルイル酸、パラトルイル酸、ジメチル安息香酸、エチル安息香酸、ノルマルプロピル安息香酸、アミノ安息香酸、アセトキシ安息香酸等があり、これらはそれぞれ1種または2種以上を使用することができる。
前記正の複屈折性化合物の合成は、常法により上記ジカルボン酸とジオールおよび/または末端封止用のモノカルボン酸またはモノアルコール、とのポリエステル化反応またはエステル交換反応による熱溶融縮合法か、あるいはこれら酸の酸クロライドとグリコール類との界面縮合法のいずれかの方法によっても容易に合成し得るものである。これらのポリエステル系添加剤については、村井孝一編者「添加剤 その理論と応用」(株式会社幸
書房、昭和48年3月1日初版第1版発行)に詳細な記載がある。また、特開平05−155809号、特開平05−155810号、特開平5−197073号、特開2006−259494号、特開平07−330670号、特開2006−342227号、特開2007−003679号各公報などに記載されている素材を利用することもできる。
以下に、前記正の複屈折性化合物の具体例を記すが、本発明で用いることができる正の複屈折性化合物はこれらに限定されるものではない。
Figure 0005538853
Figure 0005538853
表2および表3中、PAはフタル酸を、TPAはテレフタル酸を、IPAはイソフタル酸を、AAはアジピン酸を、SAはコハク酸を、2,6−NPAは2,6−ナフタレンジカルボン酸を、2,8−NPAは2,8−ナフタレンジカルボン酸を、1,5−NPAは1,5−ナフタレンジカルボン酸を、1,4−NPAは1,4−ナフタレンジカルボン酸を、1,8−NPAは1,8−ナフタレンジカルボン酸をそれぞれ示している。
このような前記正の複屈折性化合物の添加量は、セルロースアシレート樹脂100質量部に対して、1〜30質量部であることが好ましく、4〜25質量部であることがより好ましく、10〜20質量部であることが特に好ましい。
前記リア側及びフロント側位相差領域用のセルロースアシレート系フィルムには、前記レターデーション発現剤とともに、又はそれに代えて、その他の添加剤を添加していてもよい。その他の添加剤としては、酸化防止剤、紫外線吸収剤、剥離促進剤、可塑剤、波長分散調整剤、微粒子、光学特性調整剤などをあげることができ、いずれも公知の添加剤を用いることができる。
前記リア側及びフロント側位相差領域用のセルロースアシレート系フィルムには、得られるフィルムの機械的物性を改良するため、または乾燥速度を向上するために、可塑剤を添加することができる。本発明に用いることができる前記可塑剤としては、例えば、特開2008−181105号公報の[0067]に記載される化合物を挙げることができる。
前記式(I)を満足するセルロースアシレート系フィルムの作製には、特開2006−184640号公報の[0026]〜[0218]に詳細な記載がある種々の添加剤を利用することもできる。また添加量の好ましい範囲についても、当該欄に記載されている好ましい範囲と同様である。
アクリル系ポリマーフィルム:
アクリル系ポリマーフィルムは、(メタ)アクリル酸エステルの少なくとも1種から誘導される繰り返し単位を有するアクリル系ポリマーを主成分とするフィルムである。当該アクリル系ポリマーフィルムの好ましい例は、(メタ)アクリル酸エステルから誘導される繰り返し単位とともに、ラクトン環単位、無水マレイン酸単位、及びグルタル酸無水物単位から選ばれる少なくとも1種の単位を含むアクリル系ポリマーである。このアクリル系ポリマーについては、一例として、特開2008−231234号公報や特開2008−9378号公報に詳細な記載があり、参照することができる。
なお該アクリル系ポリマーフィルムには、アクリル系重合体以外の重合体として、セルロース系重合体を加えると、アクリル系とセルロース系の物性が相補的に作用して、所望の特性の材料となるので好ましい。セルロース系重合体の添加量は、5〜40質量%(重合体全体に対する割合)程度が好ましい。例えばアクリル系ポリマーフィルムは、透湿度が低いため、偏光板加工後の残留水分が抜けにくいが、セルロース系重合体を加えることで、適度な透湿度を与えることができる。具体的な例として、セルロースアシレート(表4記載のCTA)を10質量%加えたフィルム、及びセルロースアシレートプロピオネート(CAP482−20(イーストマンケミカル社製))を30質量%加えたフィルムが挙げられる。
環状オレフィン系ポリマーフィルム:
環状オレフィン系ポリマーフィルムの原料及びその製造方法、並びに該原料を用いたフィルムの製造方法については、特開2006−293342号公報の[0098]〜[0193]に詳細な記載があり、本発明において参照することができる。リア側及びフロント側位相差領域を構成する位相差フィルムとして利用可能な環状オレフィン系ポリマーフィルムの例には、ノルボルネン系ポリマーフィルムが含まれ、市販のポリマーでは、アートン(JSR製)、ゼオノア(日本ゼオン製)などを用いることができる。
リア側及びフロント側位相差領域用の位相差フィルムとして用いられる種々のポリマーフィルムは、種々の方法で製造することができる。例えば、溶液キャスト法(溶液流延法)、溶融押出法、カレンダー法、圧縮成形法などが挙げられる。これらのフィルム成形方法のうち、溶液キャスト法(溶液流延法)、溶融押出法が特に好ましい。また、リア側及びフロント側位相差領域用の位相差フィルムとして利用される種々のポリマーフィルムは、成形された後、延伸処理を経て製造されたフィルムであってもよい。フィルムの延伸は、1軸延伸であっても2軸延伸であってもよい。同時あるいは逐次2軸延伸処理を行うのが好ましい。大きな光学異方性を達成するためにはフィルムを高い延伸倍率で延伸することが必要である。例えば、フィルムの幅方向、及びフィルムの縦方向(流れ方向)に延伸することが好ましい。延伸倍率は、3〜100%程度であることが好ましい。延伸処理は、テンターを用いて実施できる。また、ロール間にて縦延伸を行ってもよい。
また、リア側及びフロント側位相差領域を構成する位相差層は、液晶組成物を所望の配向状態とした後、その配向状態を固定して形成された層であってもよいし、又は当該層とともに、当該層を支持するポリマーフィルムを有する積層体であってもよい。後者の態様では、当該ポリマーフィルムを偏光子の保護フィルムとして利用することもできる。フロント側位相差領域を構成する位相差層の作製に利用可能な液晶の例には、棒状液晶、円盤状液晶、コレステリック液晶等、種々の液晶が含まれる。
前記溶液キャスト法として、共流延法、逐次流延法、塗布法などの積層流延法も用いることができる。共流延法および逐次流延法により製造する場合には、先ず、各層用のセルロースアセテート溶液(ドープ)を調製する。共流延法(重層同時流延)は、流延用支持体(バンドまたはドラム)の上に、各層(3層あるいはそれ以上でもよい)各々の流延用ドープを別のスリットなどから同時に押出す流延用ギーサからドープを押出して、各層同時に流延し、適当な時期に支持体から剥ぎ取って、乾燥しフィルムを成形する流延法である。
逐次流延法は、流延用支持体の上に先ず第1層用の流延用ドープを流延用ギーサから押出して、流延し、乾燥あるいは乾燥することなく、その上に第2層用の流延用ドープを流延用ギーサから押出して流延する要領で、必要なら第3層以上まで逐次ドープを流延・積層して、適当な時期に支持体から剥ぎ取って、乾燥しフィルムを成形する流延法である。
塗布法は、一般的には、コア層のフィルムを溶液製膜法によりフィルムに成形し、表層に塗布する塗布液を調製し、適当な塗布機を用いて、片面ずつまたは両面同時にフィルムに塗布液を塗布・乾燥して積層構造のフィルムを成形する方法である。
また、リア側及びフロント側位相差領域を構成する位相差層の厚みは、薄いほうが好ましいが、黒表示時の画面端部に発生する表示ムラ抑制のためには、液晶セルにかかる応力による変形を小さくする必要がある。液晶セルにかかる圧力を軽減するためには、リア側及びフロント側位相差フィルムの膜厚は20μm以上、200μm以下とすることが表示ムラの抑制および製造適性の観点で好ましい。なお、表示ムラについては一例として特開2009−98605等に詳細な記載がある。
リア側及びフロント側位相差領域を構成する位相差層は、上記した通り、延伸等を施されたポリマーフィルムであっても、液晶性組成物から形成された層であってもよい。また、ポリマーフィルムからなる支持体上に、液晶性組成物から形成された位相差層を有する2層以上の積層体であってもよい。
位相差層の形成に利用可能な液晶性化合物の例には、棒状液晶性分子及び円盤状液晶性分子が含まれる。棒状液晶性分子及び円盤状液晶性分子(ディスコティック液晶性化合物)は、高分子液晶でも低分子液晶でもよく、さらに、低分子液晶が架橋され液晶性を示さなくなったものも含まれる。
位相差層の作製に棒状液晶性化合物を用いた場合は、棒状液晶性分子の長軸の配向方向は、層面に対して垂直、平行、ハイブリット配向のいずれでもよく、所望の光学特性に応じて決定される。垂直又は平行に配向させる場合は、その長軸を層面へ投影した軸の平均方向が、配向軸に対して平行であるのが好ましい。また、位相差層の作製に円盤状液晶性化合物を用いた場合も同様であり、円盤状液晶性分子の円盤面の配向方向は、層面に対して垂直、平行、ハイブリッド配向のいずれでもよく、所望の光学特性に応じて決定される。前記位相差層の一例として、円盤状液晶性化合物を含有する組成物から形成され、層中において円盤状液晶性分子が、その短軸を支持体面へ投影した軸の平均方向が配向軸(例えば、ラビング軸)に対して平行である位相差層、及び該組成物から形成され、層中において、円盤状液晶性分子が、円盤面と層平面とのなす角(傾斜角)が深さ方向に変化する、ハイブリッド配向状態に固定された位相差層が挙げられる。
なお、液晶性分子の配向は、形成の際に利用する配向膜の性質、配向膜の表面に施されるラビング軸の方位、形成に用いられる液晶性組成物に含有される各材料の性質等によって調整することができる。
《棒状液晶性分子》
棒状液晶性分子としては、アゾメチン類、アゾキシ類、シアノビフェニル類、シアノフェニルエステル類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類及びアルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類が好ましく用いられる。
なお、棒状液晶性分子には、金属錯体も含まれる。また、棒状液晶性分子を繰り返し単位中に含む液晶ポリマーも、棒状液晶性分子として用いることができる。言い換えると、棒状液晶性分子は、(液晶)ポリマーと結合していてもよい。
棒状液晶性分子については、季刊化学総説第22巻液晶の化学(1994)日本化学会編の第4章、第7章及び第11章、及び液晶デバイスハンドブック日本学術振興会第142委員会編の第3章に記載がある。棒状液晶性分子の複屈折率は、0.001〜0.7の範囲にあることが好ましい。
棒状液晶性分子は、その配向状態を固定するために、重合性基を有することが好ましい。重合性基は、ラジカル重合性不飽基或はカチオン重合性基が好ましく、具体的には、例えば特開2002−62427号公報明細書中の段落番号[0064]〜[0086]記載の重合性基、重合性液晶化合物が挙げられる。
《ディスコティック液晶性化合物》
ディスコティック液晶性化合物は、様々な文献(C.Destrade et al.,Mol.Crysr.Liq.Cryst.,vol.71,page 111(1981);日本化学会編、季刊化学総説、No.22、液晶の化学、第5章、第10章第2節(1994);B.Kohne et al.,Angew. Chem.Soc.Chem.Comm.,page 1794(1985);J.Zhang et al.,J.Am.Chem.Soc.,vol.116,page 2655(1994))等の文献に記載されているものを広く採用することができる。
ディスコティック液晶性化合物は、重合により固定可能なように、例えば、特開平8−27284号公報に記載のように重合性基を有するのが好ましい。例えば、ディスコティック液晶性化合物のディスコティックコアに、置換基として重合性基を結合させた構造が考えられるが、ディスコティックコアに重合性基を直結させると、重合反応において配向状態を保つことが困難になる。そこで、ディスコティックコアと重合性基との間に連結基を有する構造が好ましい。即ち、重合性基を有するディスコティック液晶性化合物は、下記式で表わされる化合物であることが好ましい。
D(−L−P)n
式中、Dはディスコティックコアであり、Lは二価の連結基であり、Pは重合性基であり、nは4〜12の整数である。
前記式中のディスコティックコア(D)、二価の連結基(L)及び重合性基(P)の好ましい具体例は、それぞれ、特開2001−4837号公報に記載の(D1)〜(D15)、(L1)〜(L25)、(P1)〜(P18)であり、同公報に記載の内容を好ましく用いることができる。
これらの液晶性化合物は、位相差層中では、層面に対して、垂直配向した状態に固定されていてもよい。ここでいう「層面」は、位相差層が形成された支持体表面に平行な面、平行な面から±5度の範囲ずれている面のことをいう。また、実質的に均一に配向していることが好ましく、実質的に均一に配向している状態で固定されていることがさらに好ましく、重合反応により液晶性化合物が固定されていることがよりさらに好ましい。重合性基を有するディスコティック液晶性化合物を含有する組成物から形成する場合は、ディスコティック液晶性分子の円盤面を、層面に対して実質的に垂直配向させることが好ましい。実質的に垂直とは、ディスコティック液晶性分子の円盤面と位相差層の面との平均角度(平均傾斜角)が、70度〜90度の範囲内であることを意味する。
位相差層は、液晶性化合物及び下記の重合開始剤や他の添加剤を含む塗布液を、配向膜の上に塗布することで形成してもよい。塗布液の調製に使用する溶媒としては、有機溶媒が好ましく用いられる。有機溶媒の例には、アミド(例、N,N−ジメチルホルムアミド)、スルホキシド(例、ジメチルスルホキシド)、ヘテロ環化合物(例、ピリジン)、炭化水素(例、ベンゼン、ヘキサン)、アルキルハライド(例、クロロホルム、ジクロロメタン)、エステル(例、酢酸メチル、酢酸ブチル)、ケトン(例、アセトン、メチルエチルケトン)、エーテル(例、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン)が含まれる。アルキルハライド及びケトンが好ましい。二種類以上の有機溶媒を併用してもよい。塗布液の塗布は、公知の方法(例、押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、ダイコーティング法)により実施できる。
配向させた液晶性化合物の分子を、配向状態を維持して固定することが好ましい。固定化は、液晶性化合物に導入した重合性基の重合反応により実施することが好ましい。重合反応には、熱重合開始剤を用いる熱重合反応と光重合開始剤を用いる光重合反応とが含まれるが、光重合反応がより好ましい。光重合開始剤の例には、α−カルボニル化合物(米国特許第2367661号、同2367670号号公報に記載のもの)、アシロインエーテル(米国特許第2448828号公報に記載のもの)、α−炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許第2722512号公報に記載のもの)、多核キノン化合物(米国特許第3046127号、同2951758号公報に記載のもの)、トリアリールイミダゾールダイマーとp−アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許第3549367号公報に記載のもの)、アクリジン及びフェナジン化合物(特開昭60−105667号公報、米国特許第4239850号公報に記載のもの)及びオキサジアゾール化合物(米国特許第4212970号公報に記載のもの)が含まれる。
光重合開始剤の使用量は、塗布液の固形分の0.01〜20質量%であることが好ましく、0.5〜5質量%であることがさらに好ましい。液晶性化合物の重合のための光照射は、紫外線を用いることが好ましい。照射エネルギーは、20mJ/cm2〜50J/cm2であることが好ましく、100〜800mJ/cm2であることがさらに好ましい。光重合反応を促進するため、加熱条件下で光照射を実施してもよい。
位相差層の厚さは、0.1〜10μmであることが好ましく、0.5〜5μmであることがさらに好ましい。
液晶性化合物を配向膜側で垂直に配向させて位相差層を形成する場合は、配向膜の表面エネルギーを低下させることが重要である。具体的には、ポリマーの官能基により配向膜の表面エネルギーを低下させ、これにより液晶性化合物を立てた状態にする。配向膜の表面エネルギーを低下させる官能基としては、フッ素原子及び炭素原子数が10以上の炭化水素基が有効である。フッ素原子又は炭化水素基を配向膜の表面に存在させるために、ポリマーの主鎖よりも側鎖にフッ素原子又は炭化水素基を導入することが好ましい。含フッ素ポリマーは、フッ素原子を0.05〜80重量%の割合で含むことが好ましく、0.1〜70重量%の割合で含むことがより好ましく、0.5〜65重量%の割合で含むことがさらに好ましく、1〜60重量%の割合で含むことが最も好ましい。炭化水素基は、脂肪族基、芳香族基又はそれらの組み合わせである。脂肪族基は、環状、分岐状あるいは直鎖状のいずれでもよい。脂肪族基は、アルキル基(シクロアルキル基であってもよい)又はアルケニル基(シクロアルケニル基であってもよい)であることが好ましい。炭化水素基は、ハロゲン原子のような強い親水性を示さない置換基を有していてもよい。炭化水素基の炭素原子数は、10〜100であることが好ましく、10〜60であることがさらに好ましく、10〜40であることが最も好ましい。ポリマーの主鎖は、ポリイミド構造又はポリビニルアルコール構造を有することが好ましい。
ポリイミドは、一般にテトラカルボン酸とジアミンとの縮合反応により合成する。二種類以上のテトラカルボン酸あるいは二種類以上のジアミンを用いて、コポリマーに相当するポリイミドを合成してもよい。フッ素原子又は炭化水素基は、テトラカルボン酸起源の繰り返し単位に存在していても、ジアミン起源の繰り返し単位に存在していても、両方の繰り返し単位に存在していてもよい。ポリイミドに炭化水素基を導入する場合、ポリイミドの主鎖又は側鎖にステロイド構造を形成することが特に好ましい。側鎖に存在するステロイド構造は、炭素原子数が10以上の炭化水素基に相当し、液晶性化合物を垂直に配向させる機能を有する。本明細書においてステロイド構造とは、シクロペンタノヒドロフェナントレン環構造又はその環の結合の一部が脂肪族環の範囲(芳香族環を形成しない範囲)で二重結合となっている環構造を意味する。
さらに液晶性化合物を垂直に配向させる手段として、ポリビニルアルコールやポリイミドの高分子に有機酸を混合する方法を好適に用いることができる。混合する酸としてはカルボン酸やスルホン酸、アミノ酸が好適に用いられる。後述の空気界面配向剤の内、酸性を示すものを使用してもよい。その混合量は高分子に対して、0.1重量%から20重量%であることが好ましく、0.5重量%から10重量%であることがさらに好ましい。
例えば、ディスコティック液晶性化合物の分子を、均一に垂直配向させるには、垂直配向膜の表面をラビング処理し、配向方向を制御するのが好ましい。ラビング処理はポリマー層の表面を紙や布で一定方向に数回擦ることにより実施する。一方、棒状液晶性化合物の分子を垂直配向させるには、配向膜の表面はラビング処理しないのが好ましい。また、いずれの配向膜においても、密着性を改善する目的で、配向膜中に、重合性基を有する分子を含有させるのが好ましい。重合性基は、側鎖に重合性基を有する繰り返し単位を導入するか、あるいは、環状基の置換基として導入することができる。界面で液晶性化合物と化学結合を形成する配向膜を用いることがより好ましく、かかる配向膜としては特開平9−152509号公報に記載されている。配向膜の厚さは0.01〜5μmであることが好ましく、0.05〜1μmであることがさらに好ましい。なお、配向膜の表面に液晶性組成物を塗布し、液晶性化合物の分子を配向させてから、その配向状態を維持して液晶性化合物の分子を固定して位相差層を形成し、該位相差層のみを、他の位相差層であるポリマーフィルム等の支持体上に転写してもよい。
《空気界面配向剤》
通常の液晶性化合物は空気界面側では傾斜して配向する性質を有するので、均一に垂直配向した状態を得るために、空気界面側においても液晶性化合物を垂直に配向制御することが必要である。この目的のために、空気界面側に偏在して、その排除体積効果や静電気的な効果によって液晶性化合物を垂直に配向させる作用を及ぼす化合物を液晶塗布液に配合させる。液晶性化合物を垂直に配向させる作用は、ディスコティック液晶性化合物においてはそのダイレクターの傾斜角度、すなわちダイレクターと塗布液晶空気側表面とがなす角度を減少させる作用に相当する。ディスコティック液晶性分子のダイレクターの傾斜角度を減少させる化合物としては、次に示すような、空気界面側に偏在させるためにF原子を複数結合したものや、スルホニル基やカルボキシル基を結合したものに、さらに液晶性分子に垂直に配向するような排除体積効果を与える剛直性の構造単位を結合した化合物が好ましく用いられる。
Figure 0005538853
例示した化合物以外にも特開2002−20363号公報、特開2002−129162号公報に記載されている化合物を空気界面配向剤として用いることができる。また、特開2004−53981号公報(特願2002−212100号明細書)明細書中の段落番号[0072]〜[0075]、特願2002−243600号明細書の段落番号[0038]〜[0040]と[0048]〜[0049、特願2002−262239号明細書の段落番号[0037]〜[0039]、特開2004−4688号公報(特願2003−91752号明細書)明細書中の段落番号[0071]〜[0078]に記載される事項も本発明に適宜適用することができる。
液晶塗布液への空気界面配向剤の使用量は、0.05質量%〜5質量%であることが好ましい。また、フッ素飽和系空気界面配向剤を用いる場合は、1質量%以下であることが好ましい。
2. 偏光子
フロント側及びリア側に配置される偏光子については特に制限はない。通常用いられている直線偏光膜を利用することができる。直線偏光膜は、Optiva Inc.に代表される塗布型偏光膜、もしくはバインダーと、ヨウ素又は二色性色素からなる偏光膜が好ましい。直線偏光膜におけるヨウ素及び二色性色素は、バインダー中で配向することで偏光性能を発現する。ヨウ素及び二色性色素は、バインダー分子に沿って配向するか、もしくは二色性色素が液晶のような自己組織化により一方向に配向することが好ましい。現在、市販の偏光子は、延伸したポリマーを、浴槽中のヨウ素もしくは二色性色素の溶液に浸漬し、バインダー中にヨウ素、もしくは二色性色素をバインダー中に浸透させることで作製されるのが一般的である。
3. 保護フィルム
フロント側偏光子及びリア側偏光子のそれぞれの両面には、保護フィルムが貼合されているのが好ましい。但し、液晶セル側に配置される保護フィルムは、それぞれリア側位相差領域及びフロント側位相差領域の一部を構成するものとし、前者については、上記式(I)を満足することが要求される。後者についても、フロント側位相差領域の一部を構成し、態様によっては、視野角CRの改善に寄与する光学特性を単独でまたは他の層とともに示すことが要求される。
フロント側偏光子及びリア側偏光子の外側に配置される保護フィルムについては、特に制限はない。種々のポリマーフィルムを使用することができる。上記フロント側位相差領域を構成可能なポリマーフィルムの例と同様である。例えば、セルロースアシレート類(例、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート等のフィルム)、ポリオレフィン(例、ノルボルネン系ポリマー、ポリプロピレン)、ポリ(メタ)アクリル酸エステル(例、ポリメチルメタクリレート)、ポリカーボネート、ポリエステル、又はポリスルホンを主成分とするフィルム等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。市販のポリマーフィルム(セルロースアシレート類では、「フジタック TD80UL」(富士フイルム社製)、ノルボルネン系ポリマーでは、アートン(JSR製)、ゼオノア(日本ゼオン製)など)も使用することができる。
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、試薬、物質量とその割合、操作等は本発明の趣旨から逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下の具体例に制限されるものではない。ただし、実施例1〜7、9〜18、20〜22は参考例である。
(2)フィルム2の作製
特開2007−127893号公報の[0223]〜[0226]の記載に従って、延伸フィルム(保護フィルムA)を作製した。この保護フィルムAの表面に、同公報の[0232]の記載に従って、易接着層コーティング組成物P−2を調製し、当該組成物を、同公報の[0246]に記載の方法に従って、前記延伸フィルムの表面に塗布して、易接着層を形成した。このフィルムをフィルム2として用いた。
(3)フィルム3の作製
市販のノルボルネン系ポリマーフィルム「ZEONOR ZF14−060」((株)オプテス製)の表面に、ソリッドステートコロナ処理機6KVA(ピラー(株)製)によりコロナ放電処理を行った。このフィルムをフィルム3として使用した。このフィルムの厚みは、60μmであった。
(4)フィルム4の作製
市販のシクロオレフィン系ポリマーフィルム「ARTON FLZR50」(JSR(株)製)の表面に、フィルム11と同様の方法でコロナ放電処理を行った。このフィルムをフィルム4として使用した。このフィルムの厚みは、50μmであった。
(5)フィルム5の作製
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、セルロースアシレート溶液を調製した。
<セルロースアシレート溶液の組成>
置換度2.86のセルロースアセテート 100質量部
メチレンクロライド 300質量部
メタノール 54質量部
1−ブタノール 11質量部
別のミキシングタンクに、下記の組成物を投入し、加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、添加剤溶液を調製した。
<添加剤溶液の組成>
メチレンクロライド 80質量部
メタノール 20質量部
下記の光学的異方性低下剤A−7 40質量部
Figure 0005538853
セルロースアシレート溶液の465質量部に、添加剤溶液の17質量部を添加してドープを調製した。このドープ溶液の透明度は85%以上で良好であった。
このドープを支持体上に流延して、厚み80μmのセルロースアシレートフィルムを作製した。これをフィルム5として使用した。
(6)フィルム6の準備
市販のセルロースアシレート系フィルム、商品名 「フジタック TD80UL」(富士フイルム社製)を準備し、フィルム6として利用した。
(7)フィルム7の作製
特開2008−95027号公報記載の比較用化合物C-3の合成法において、中間体2に使用した4-メトキシ桂皮酸クロリドをベンゾイルクロリドに変更した以外は同様の方法により、セルロースアセテートベンゾエート21Aを合成した。
<セルロースアシレート溶液の調製>
下記の原料をミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して、溶解し、セルロースアシレート溶液を有する溶液を調製した。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
セルロースアシレート溶液
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セルロースアセテートベンゾエート21A 100.0質量部
メチレンクロライド 403.0質量部
メタノール 60.2質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
上記の調製したセルロースアシレート溶液を速やかにバンド流延機にて流延した。残留溶剤量が約30質量%のフィルムを、テンターにより160℃の熱風を当てて乾燥した。
さらにこのフィルムを、温度160℃にて1.5倍で固定端一軸延伸を行ってフィルムを作製した。このフィルムを、フィルム7として用いた。なお、このフィルムの膜厚は55μmであった。
(8)フィルム8の作製
下記表に記載のアシル基の種類、置換度のセルロースアシレートを調製した。これは、触媒として硫酸(セルロース100質量部に対し7.8質量部)を添加し、アシル置換基の原料となるカルボン酸を添加し40℃でアシル化反応を行った。この時、カルボン酸の種類、量を調整することでアシル基の種類、置換度を調整した。またアシル化後の40℃で熟成を行った。さらにこのセルロースアシレートの低分子量成分をアセトンで洗浄し除去した。なお、表中、Acとはアセチル基であり、CTAとは、セルローストリアセテート(アシル基がアセテート基のみからなるセルロースエステル誘導体)を意味する。
(セルロースアシレート溶液)
下記組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌して各成分を溶解し、更に90℃に約10分間加熱した後、平均孔径34μmのろ紙および平均孔径10μmの焼結金属フィルターでろ過した。
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セルロースアシレート溶液
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下記表中のCTA 100.0質量部
トリフェニルホスフェイト(TPP) 7.8質量部
ビフェニルジフェニルホスフェイト(BDP) 3.9質量部
メチレンクロライド 403.0質量部
メタノール 60.2質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
(マット剤分散液)
次に上記方法で調製したセルロースアシレート溶液を含む下記組成物を分散機に投入し、マット剤分散液を調製した。
――――――――――――――――――――――――――――――――――
マット剤分散液
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平均粒径16nmのシリカ粒子
(aerosil R972 日本アエロジル(株)製 2.0質量部
メチレンクロライド 72.4質量部
メタノール 10.8質量部
セルロースアシレート溶液 10.3質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――――
(添加剤溶液)
次に上記方法で調製したセルロースアシレート溶液を含む下記組成物をミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して溶解し、添加剤溶液を調製した。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
添加剤溶液
―――――――――――――――――――――――――――――――――
レターデーション発現剤(1) 20.0質量部
メチレンクロライド 58.3質量部
メタノール 8.7質量部
セルロースアシレート溶液 12.8質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
上記セルロースアシレート溶液を100質量部、マット剤分散液を1.35質量部、更にセルロースアシレート系フィルム中のレターデーション発現剤(1)の添加量が10質量部となる量の添加剤溶液を混合し、製膜用ドープを調製した。添加剤の添加割合はセルロースアシレート量を100質量部とした時の質量部で示した。
ここで、表中及び上記の添加剤および可塑剤の略称は下記の通りである。
CTA:セルローストリアセテート、
TPP:トリフェニルホスフェイト、
BDP:ビフェニルジフェニルホスフェイト。
Figure 0005538853
上述のドープをバンド流延機を用いて流延した。下記表に記載の残留溶剤量でバンドから剥ぎ取ったフィルムを、剥ぎ取りからテンターまでの区間で下記表に記載の延伸倍率で縦方向に延伸し、ついでテンターを用いて下記表に記載の延伸倍率で幅方向に延伸し、横延伸直後に、下記表に記載の倍率で幅方向に収縮(緩和)させた後にフィルムをテンターから離脱し、セルロースアシレート系フィルムを製膜した。下記表に、延伸倍率を示してある。
Figure 0005538853
上記方法でフィルムを作製し、フィルム8として用いた。
(9)フィルム9の作製
フィルム8と同様にして、但し最終的膜厚を変えて、フィルム9を作製した。
(10)フィルム10の作製
特開2007−286578号公報に記載の第2位相差領域Gと同様の方法で、但し最終的膜厚を変えて、フィルム10を作製した。
(11)フィルム11の作製
特開2007−286578号公報に記載の第2位相差領域Bと同様の方法で、但し最終的膜厚を変えて、フィルム11を作製した。
(12)フィルム12の作製
TOSHIBA社製の液晶パネル「37Z2000」に搭載されていたノルボルネン系フィルムを剥がし、フィルム2と同様の方法で、フィルム表面に易接着層を形成した。市販のセルロースアシレート系フィルム、商品名「フジタック TD80UL」(富士フイルム社製)を準備し、前記ノルボルネン系フィルムと貼合し、このフィルムをフィルム12として使用した。なお、このフィルムの膜厚は215μmであった。
2. フィルム1〜12の特性
作製したフィルム1〜12の特性を、下記表にまとめる。なお、各フィルムのRe(550)及びRth(550)は、試料30mm×40mmを、25℃、60%RHで2時間調湿し、KOBRA21ADH(王子計測機器(株)製)において波長550nmで測定し、フィルム1、5〜11については、平均屈折率の仮定値1.48及び膜厚を入力し算出した。また、それ以外のフィルムの場合は平均屈折率の仮定値として、フィルム3については1.53を、フィルム2については1.50を、フィルム4、12については1.52を用いた。
Figure 0005538853
3. 偏光板の作製
厚さ80μmのポリビニルアルコール(PVA)フィルムを、ヨウ素濃度0.05質量%のヨウ素水溶液中に30℃で60秒浸漬して染色し、次いでホウ酸濃度4質量%濃度のホウ酸水溶液中に60秒浸漬している間に元の長さの5倍に縦延伸した後、50℃で4分間乾燥させて、厚さ20μmの偏光膜を得た。
上記表に示すフィルムのうちセルロースアシレート類を含むフィルムについては、1.5モル/リットルで55℃の水酸化ナトリウム水溶液中に浸漬した後、水で十分に水酸化ナトリウムを洗い流した。その後、0.005モル/リットルで35℃の希硫酸水溶液に1分間浸漬した後、水に浸漬し希硫酸水溶液を十分に洗い流した。最後に試料を120℃で十分に乾燥させた。
各フィルム(フィルム1〜12)のいずれか2枚で、偏光膜を挟んで、粘着剤を用いて貼り合せ、双方の表面に保護フィルムを有する偏光板をそれぞれ作製した。なお、セルロースアシレート系フィルムについてはポリビニル系粘着剤を用い、それ以外のフィルムについてはアクリル系粘着剤を用いて偏光子と貼合した。組合せについては下記表に示す。
なお下記表中、「*1」を付したフィルムは、偏光膜よりさらに表示面側外側に配置される偏光板保護フィルムとして用いられた位相差フィルムを意味し、「*2」を付したフィルムは、液晶セルと偏光膜との間に配置される偏光板保護フィルムとして用いられた位相差フィルムを意味し、及び「*3」を付したフィルムは、偏光膜よりさらにバックライト側外側に配置される偏光保護フィルムとして用いられた位相差フィルムを意味する。下記のいずれの表でも同義である。
なお、フィルム7については、その面内遅相軸を、偏光子の透過軸と平行にして貼り合せた。フィルム1〜6、8〜12については、その面内遅相軸を、偏光子の透過軸と垂直にして貼り合せた。また、易接着層を有するフィルムについては、易接着層を偏光子の表面側にして貼り合せた。
4. 液晶表示装置の作製及び評価
(1)水平配向型液晶セル1〜4の準備
(1)−1 FFSモードの液晶セル1及び2の準備
図1及び図2に示す構成と同様のCOA構成のFFSモードの液晶セル1、及び図3に示す構成と同様の非COA構成のFFSモードの液晶セル2を作製した。液晶セル1と2は、カラーフィルタの位置が異なる以外は同様の方法で作製された液晶セルである。
なお、カラーフィルタは、着色感光性組成物に特開2009−144126号公報中に記載の実施例17、18及び19に記載の通り調製した組成物、並びに有機系現像液CD2000(富士フイルムエレクトロマテリアルズ社製)を用いて作製した。
作製した液晶セルのΔnd(550)をAXOMETRICS社製のAXOSCANと付属のソフトを使用して測定し、Δnd(550)が400nmであるものを選別し、液晶セル1および2として使用した。
(1)−2 IPSモードの液晶セル3及び4の準備
図1及び図2に示す構成と同様のCOA構成のIPSモードの液晶セル3、及び図3に示す構成と同様の非COA構成のIPSモードの液晶セル4を作製した。液晶セル3と4は、カラーフィルタの位置が異なる以外は同様の方法で作製された液晶セルである。
なお、カラーフィルタは、着色感光性組成物に特開2009−144126号公報中に記載の実施例17、18及び19に記載の通り調製した組成物、並びに有機系現像液CD2000(富士フイルムエレクトロマテリアルズ社製)を用いて作製した。
作製した液晶セルのΔnd(550)をAXOMETRICS社製のAXOSCANと付属のソフトを使用して測定し、Δnd(550)が400nmであるものを選別し、液晶セル3および4として使用した。
(2) 液晶表示装置の評価
作製した各液晶表示装置について、以下の評価を行った。
(2)−1 正面コントラスト比の測定
測定器(BM5A、TOPCON社製)を用いて、暗室において、パネル法線方向の黒表示及び白表示の輝度値を測定し、正面コントラスト(白輝度/黒輝度)を算出した。
このとき、測定器とパネル間の距離は700mmに設定した。
続いて、正面コントラスト比を、基準形態での正面コントラスト比を基に、次の式で算出した。
正面コントラスト比=実施形態での正面コントラスト/基準形態での正面コントラスト
なお、各液晶セルの基準形態は、フロント側およびリア側に同じ偏光板が貼合された、非COA構成の液晶セルとした。
(2)−2 視野角コントラスト(斜め方向のコントラスト)
測定器(BM5A、TOPCON社製)を用いて、暗室において、装置正面から極角方向60度において、方位角方向0度〜360度で10度毎に黒表示及び白表示の輝度値を測定し、視野角コントラスト(白輝度/黒輝度)を算出することで、液晶表示装置の視野角特性を評価した。
○:視野角コントラストがいずれも50以上であり、光漏れが認識できない
△:視野角コントラストの最小値が50未満15以上であり、わずかに光漏れが認識されるが許容できる程度
×:視野角コントラスト最小値が15未満であり、大きな光漏れが認識され許容できない。
(2)−3 サークルムラ
作製した各液晶表示装置を温度40℃、相対湿度90%の環境下で4日間放置した。処理後、温度36℃、相対湿度20%の環境に移した。
その後、ライトテーブル上に前記パネルを置き、暗室で観察して、以下の基準でサークルムラを評価した。
◎:点灯させたライトテーブルの上に前記パネルを置いてから60時間以内に、光漏れが視認されない
○:光漏れがわずかに視認されるが、点灯させたライトテーブルの上に前記パネルを置いてから30時間以内に消失し、その後は光漏れが視認されない
△:光漏れが視認され、点灯させたライトテーブルの上に前記パネルを置いてから30時間以内には消失しないが、その後60時間以内に光漏れが消失する
×:光漏れが視認され、点灯させたライトテーブルの上に前記パネルを置いてから60時間では光漏れが消失しない(許容不可)
評価結果を下記表にまとめる。
Figure 0005538853
Figure 0005538853
Figure 0005538853
Figure 0005538853
上記結果から、上記式(I)を満足する位相差フィルムをリア側偏光子とCOA構造の液晶セルとの間に配置した本発明の実施例のFFS型又はIPS型液晶表示装置は、いずれも正面コントラストが高いことが理解できる。具体的には、COA構造の液晶セルを有する実施例のFFS型液晶表示装置(実施例1〜7及び9〜11)は、非COA構造の液晶セルを用いた以外は同一の構成の比較例のFFS型液晶表示装置(比較例2〜8及び10〜12)と比較して、正面CRが高く;並びにCOA構造の液晶セルを有する実施例のIPS型液晶表示装置(実施例12〜18及び20〜22)は、非COA構造の液晶セルを用いた以外は同一の構成の比較例のIPS型液晶表示装置(比較例14〜20及び22〜24)と比較して、正面CRが高いことが理解できる。
さらに、比較例1及び9を参照すると、これらは液晶セルがCOA構造又は非COA構造の違いがある以外は同一の構成のFFS型液晶表示装置であり、例えば実施例1及び比較例2の関係と同様である。しかし、比較例1では、リア側位相差領域のRth(550)が式(I)−90nm≦Rth(550)≦70nm、を満足していないため、正面CRが比較例9と比較してむしろ低下している。同様に、比較例13と比較例21を参照すると、これらは液晶セルがCOA構造又は非COA構造の違いがある以外は同一の構成のIPS型液晶表示装置であり、例えば実施例12及び比較例14の関係と同様である。しかし、比較例13では、リア側位相差領域のRth(550)が式(I)を満足していないため、正面CRが比較例21と比較してむしろ低下している。
このことから、本発明の効果は、COA構造を採用するとともに、リア側位相差領域が、前記式(I)を満足することによってはじめて得られることは明らかである。
なお、実施例8及び19は、正面コントラストが他の実施例の正面コントラストと同様に高かったが、視野角コントラストは他の実施例と比較して若干劣っていた。これは、フロント側位相差領域のRthが小さく、視野角特性の改善に十分でなかったためと考えられる。
また、上記表に示す結果から、リア側位相差領域のRth(550)の絶対値が小さいほど、サークルムラが軽減されることが理解できる。
10 液晶層
12 カラーフィルタ層
14 アレイ部材
16 リア側基板
18 フロント側基板
20 リア側位相差領域
22 フロント側位相差領域
24 リア側偏光子
26 フロント側偏光子
28 バックライトユニット
LC COA構造のIPS型液晶セル
PL1 リア側偏光板
PL2 フロント側偏光板

Claims (13)

  1. フロント側偏光子、リア側偏光子、フロント側偏光子とリア側偏光子との間に配置される液晶層、及び該液晶層とリア側偏光子との間に配置されるカラーフィルタ層を有し、前記リア側偏光子と前記カラーフィルタ層との間に配置される1層又は2層以上の位相差層が全体として(以下、リア側偏光子とカラーフィルタ層との間に配置される1層又は2層以上の位相差層の全体を「リア側位相差領域」という)、下記式(I)
    (I): −0nmRth(550)≦0nm
    但し、Rth(λ)は、波長λnmにおける厚み方向のレターデーション(nm)を意味する;を満足し
    記液晶層が、前記カラーフィルタ層を備えたアレイ基板であるリア側基板と、前記アレイ基板に対向して配置された対向基板であるフロント側基板とに挟持されており、
    前記フロント側偏光子と前記液晶層との間に、1層又は2層以上の位相差層(以下、フロント側偏光子と液晶層との間に配置される1層又は2層以上の位相差層の全体を「フロント側位相差領域」という)を有し、
    前記フロント側位相差領域が、下記式(III)及び(IV)
    (III): 0≦Re(550)≦300nm
    (IV): −300nm≦Rth(550)≦12nmを満足し、
    前記アレイ基板が、前記カラーフィルタ層を備えた画素を区画するブラックマトリクスを有し、
    且つ、黒表示時に該液晶層の液晶分子が前記一対の基板の表面に対して平行に配向することを特徴とする液晶表示装置。
  2. 前記リア側位相差領域が、下記式(II)(II): |Re(550)|≦300nmを満足することを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置:
    但し、Re(λ)は、波長λnmにおける面内レターデーション(nm)を意味する。
  3. 前記リア側位相差領域が、セルロースアシレート系フィルムからなる又はセルロースアシレート系フィルムを含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の液晶表示装置。
  4. 前記リア側位相差領域が、アクリル系ポリマーフィルムからなる又はアクリル系ポリマーフィルムを含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
  5. 前記リア側位相差領域が、ラクトン環単位、無水マレイン酸単位、及びグルタル酸無水物単位から選ばれる少なくとも1種の単位を含むアクリル系ポリマーを含有するアクリル系ポリマーフィルムからなる又は当該アクリル系ポリマーフィルムを含有する請求項4に記載の液晶表示装置。
  6. 前記リア側位相差領域が、環状オレフィン系ポリマーフィルムからなる、又は環状オレフィン系ポリマーフィルムを含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
  7. 前記フロント側位相差領域が、−50nm≦Rth(550)≦0nmを満足することを特徴とする請求項1〜6に記載の液晶表示装置。
  8. 前記フロント側位相差領域が、1枚の二軸性の高分子フィルムからなる、又は1枚の二軸性の高分子フィルムを含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
  9. 前記フロント側位相差領域が、1枚の一軸性の高分子フィルムからなる、又は1枚の一軸性の高分子フィルムを含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
  10. 前記1枚の二軸性の高分子フィルム又は1枚の一軸性の高分子フィルムが、セルロースアシレート系フィルムであることを特徴とする請求項8又は9に記載の液晶表示装置。
  11. 前記1枚の二軸性の高分子フィルム又は1枚の一軸性の高分子フィルムが、環状オレフィン系ポリマーフィルムであることを特徴とする請求項8又は9に記載の液晶表示装置。
  12. 前記フロント側およびリア側位相差領域が、いずれも、以下の式を満たす、請求項1〜11のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
    |Rth(450)|/|Rth(550)|≦1
    1≦|Rth(650)|/|Rth(550)|
  13. 前記フロント側位相差領域が1層の位相差層からなる、請求項1〜12のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
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