JP2004109657A - 偏光板および画像表示装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】粘着剤層、光学異方性を有する位相差板、第1透明保護膜、直線偏光膜および第2透明保護膜をこの順序で有するか、あるいは、粘着剤層、第1透明保護膜となる光学異方性を有する位相差板、直線偏光膜および第2透明保護膜をこの順序で有する偏光板において、偏光板から粘着剤層と位相差板とを除いた構造全体の透湿量を5g/m2 ・日未満として、硬化後に20N/25mm幅より大きい粘着力と2N/mm2 より高い硬度とを示す粘着剤層を用いる。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、二枚の透明保護膜の間に直線偏光膜が配置されており、さらに光学異方性を有する位相差板を含む偏光板に関する。特に本発明は、円偏光板のように、正確な光学異方性(レターデーション値)を有する位相差板を用いる必要がある偏光板に関する。
また、本発明は、液晶表示装置、有機EL素子、タッチパネルのような表示面に偏光板を取り付けて使用する画像表示装置にも関する。
【0002】
【従来の技術】
二枚の透明保護膜の間に直線偏光膜が配置されており、さらに光学異方性を有する位相差板を含む偏光板は、様々な光学分野で利用されている。
位相差板がλ/4板であり、位相差板と直線偏光膜とが位相差板の遅相軸と直線偏光膜の透過軸とが45゜の角度となるように配置されていると、偏光板は円偏光板として機能する。円偏光板の用途では、λ/4板として機能する位相差板の光学的性質(レターデーション値)が非常に重要である。
従来のλ/4板はλ/4板と称していても、特定波長でのみλ/4を達成しているものが大部分であった。
【0003】
特開平5−27118号および同5−27119号の各公報に、レターデーションが大きい複屈折性フイルムと、レターデーションが小さい複屈折率フイルムとを、それらの光軸が直交するように積層させた位相差板が開示されている。二枚のフイルムのレターデーションの差が可視光域の全体にわたりλ/4であれば、位相差板は理論的には、可視光域の全体にわたりλ/4板として機能する。
特開平10−68816号公報には、特定波長においてλ/4となっているポリマーフイルムと、それと同一材料からなり同じ波長においてλ/2となっているポリマーフイルムとを積層させて、広い波長領域でλ/4が得られる位相差板が開示されている。
特開平10−90521号公報にも、二枚のポリマーフイルムを積層することにより広い波長領域でλ/4を達成できる位相差板が開示されている。
ポリマーフイルムとしては、ポリカーボネートのような合成ポリマーの延伸フイルムが使用されている。ポリマーフイルムを2枚を重ね合わせて使用すると、厚みが厚くなり、貼合せ工程が必要なためコストが高くなり易いという欠点が生じる。さらに各波長でのレターデーション値が目標値(各波長の1/4)からのずれが大きく、特に高波長域でのずれが顕著であった。
【0004】
特開2000−137116号公報には、ポリマーフイルムを一枚用いた広帯域λ/4板が開示されている。ポリマーとして具体的には、2.5〜2.8のアセチル化度を有するセルロースアセテートが用いられている。しかし、セルロースアセテートのみでは、光学異方性(複屈折率)が不足気味であって、λ/4板として必要なレターデーション値を得るためには、フイルムを厚くする必要がある。
国際公開第00/65384号パンフレットには、複数の芳香族環を有する芳香族化合物をレターデーション上昇剤として含む一枚のセルロースエステルフイルムからなる広帯域λ/4板が開示されている。レターデーション上昇剤を使用することにより、高い光学異方性(複屈折率)が得られ、薄いセルロースエステルフイルム一枚でも広帯域λ/4を実現できる。
【0005】
【特許文献1】
特開平5−27118号公報
【特許文献2】
特開平5−27119号公報
【特許文献3】
特開平10−68816号公報
【特許文献4】
特開平10−90521号公報
【特許文献5】
特開2000−137116号公報
【特許文献6】
国際公開第00/65384号パンフレット
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者が、国際公開第00/65384号パンフレットに記載のλ/4板を検討したところ、温度や湿度の変化により、レターデーション値やその波長分散性が変化することが判明した。レターデーション値がわずかでも変動すると、λ/4板や円偏光板としての光学的性質や機能が著しく低下する。その結果、λ/4板や円偏光板を取り付けた画像表示装置に対しても、着色やコントラスト低下のような問題が発生する。
本発明者が研究を進めたところ、レターデーション値の変化は、特に湿度変化の影響を受けやすい。国際公開第00/65384号パンフレットに記載のλ/4板を用いて作製した円偏光板を、作製した環境とは異なる湿度雰囲気下で保存すると、変化に時間はかかるが、レターデーション値の変化量が大きいことが判明した。すなわち、日常での使用環境に近い条件下で、問題が発生する。
【0007】
本発明の目的は、長時間使用しても、取り付けられた位相差板の光学的性質が変化しない偏光板を提供することである。
また、本発明の目的は、表示画像が安定している画像表示装置を提供することでもある。
【0008】
本発明の目的は、下記(1)〜(18)により達成された。
(1)粘着剤層、光学異方性を有する位相差板、第1透明保護膜、直線偏光膜および第2透明保護膜をこの順序で有する偏光板であって、偏光板から粘着剤層と位相差板とを除いた構造全体の透湿量が5g/m2 ・日未満であり、粘着剤層が硬化後に20N/25mm幅より大きい粘着力と2N/mm2 より高い硬度とを示すことを特徴とする偏光板。
【0009】
(2)位相差板と第1透明保護膜との間に、さらに第2粘着剤層を有し、第2粘着剤層が20N/25mm幅より大きい粘着力と2N/mm2 より高い硬度とで位相差板と第1透明保護膜とを接着している(1)に記載の偏光板。
(3)さらに防湿層を有する(1)に記載の偏光板。
(4)第2粘着剤層が防湿機能を有する(2)に記載の偏光板。
【0010】
(5)位相差板がセルロースアシレートフイルムからなる(1)に記載の偏光板。
(6)位相差板がλ/4板であって、位相差板と直線偏光膜とが位相差板の遅相軸と直線偏光膜の透過軸とが実質的に45゜の角度となるように配置されており、円偏光板として機能する(1)に記載の偏光板。
【0011】
(7)表示面に偏光板が取り付けられている画像表示装置において、偏光板が表示面側から、粘着剤層、光学異方性を有する位相差板、第1透明保護膜、直線偏光膜および第2透明保護膜をこの順序で有し、偏光板から粘着剤層と位相差板とを除いた構造全体の透湿量が5g/m2 ・日未満であり、粘着剤層が20N/25mm幅より大きい粘着力と2N/mm2 より高い硬度とで表示面と位相差板とを接着していることを特徴とする画像表示装置。
(8)反射型液晶表示装置である(7)に記載の画像表示装置。
(9)有機EL素子である(7)に記載の画像表示装置。
(10)タッチパネルである(7)に記載の画像表示装置。
【0012】
(11)粘着剤層、第1透明保護膜となる光学異方性を有する位相差板、直線偏光膜および第2透明保護膜をこの順序で有する偏光板であって、偏光板から粘着剤層と位相差板とを除いた構造全体の透湿量が5g/m2 ・日未満であり、粘着剤層が硬化後に20N/25mm幅より大きい粘着力と2N/mm2 より高い硬度とを示すことを特徴とする偏光板。
(12)さらに防湿層を有する(11)に記載の偏光板。
【0013】
(13)位相差板がセルロースアシレートフイルムからなる(11)に記載の偏光板。
(14)位相差板がλ/4板であって、位相差板と直線偏光膜とが位相差板の遅相軸と直線偏光膜の透過軸とが実質的に45゜の角度となるように配置されており、円偏光板として機能する(11)に記載の偏光板。
【0014】
(15)表示面に偏光板が取り付けられている画像表示装置において、偏光板が表示面側から、粘着剤層、第1透明保護膜となる光学異方性を有する位相差板、直線偏光膜および第2透明保護膜をこの順序で有し、偏光板から粘着剤層と位相差板とを除いた構造全体の透湿量が5g/m2 ・日未満であり、粘着剤層が20N/25mm幅より大きい粘着力と2N/mm2 より高い硬度とで表示面と位相差板とを接着していることを特徴とする画像表示装置。
(16)反射型液晶表示装置である(15)に記載の画像表示装置。
(17)有機EL素子である(15)に記載の画像表示装置。
(18)タッチパネルである(15)に記載の画像表示装置。
【0015】
【発明の効果】
本発明者は、偏光板に取り付けられた位相差板に関し、湿度変化に伴う光学的性質の変化を抑制する手段について、研究を進めた。
第1に検討した手段は、偏光板の透湿性を低くして、湿度変化が位相差板に与える影響を小さくすることである。
第2に検討した手段は、強力で硬い粘着剤を用いて位相差板を、画像表示面に固定することである。位相差板の光学的性質が変化するのは、湿度変化に伴って位相差板が若干変形するからであって、位相差板を固定すれば光学的性質の変化も防止できる。しかし、大きな湿度変化に伴って位相差板が大きく変形する場合、無理に粘着剤で固定しようとすると、位相差板が画像表示面または偏光板から剥がれるような重大な問題が生じる。
【0016】
本発明者は研究の結果、第1の手段(偏光板の透湿防止)と第2の手段(粘着剤による固定)とを組み合わせることで、以上の問題を解決することに成功した。すなわち、第1の手段である透湿性の低い偏光板構成により、湿度変化が位相差板に及ぼす影響を小さくしておき、その条件下で、第2の手段である強力で硬い粘着剤により位相差板を固定する。
以上の結果、長時間使用しても、取り付けられた位相差板の光学的性質が変化しない偏光板が得られる。本発明に従う偏光板の粘着剤層を、画像表示装置の表示面に貼り付けることで、表示画像が安定している画像表示装置が得られる。
【0017】
【発明の実施の形態】
[偏光板の基本構成]
本発明に従う偏光板は、下記(A)または(B)の基本構成を有する。
【0018】
【0019】
偏光板を画像表示装置の視認側に組み込む際には、下側(粘着剤層側)が内側(画像表示面側)となり、上側(第2透明保護膜側)が外側(視認側)となる。
液晶表示装置に本発明に従う偏光板を組み込む際には、本発明に従う偏光板を液晶セルの表示面側(視認側)に用いる。ただし、表示面側に代えて、または表示面側に加えて、液晶セルの反対側に本発明に従う偏光板を用いてもよい。
本発明では、偏光板から粘着剤層と位相差板とを除いた構造全体の透湿量が5g/m2 ・日未満である。偏光板から粘着剤層と位相差板とを除いた構造全体の透湿量は、0.01乃至4g/m2 ・日であることが好ましく、0.05乃至3g/m2 ・日であることがさらに好ましい。
【0020】
偏光板から粘着剤層と位相差板を除いた必須の構成要素(透明保護膜、直線偏光膜)を改良することにより、上記の低透湿量を達成することも可能である。ただし、少なくとも一層の防湿層を設けて、上記の低透湿量を達成する方が容易である。
代表的な偏光板は、厚さ約25μmのポリビニルアルコールフイルムからなる直線偏光膜を、厚さ約60μmのセルローストリアセテートフイルムからなる透明保護膜二枚で挟んだ構造を有する。そのような代表的な偏光板は、6.3g/m2 ・日程度の透湿量を有する。その値を、5g/m2 ・日未満まで低下させるためには、偏光板を構成する材料を改良する必要がある。既に改良が充分に進められている偏光板の材料を、さらに改良しようとするよりも、防湿層を追加する方が現実的である。
【0021】
前記基本構成(A)の偏光板では、製造工程の都合から、位相差板と第1透明保護膜との間に第2粘着剤層を設けることが普通である。すなわち、(A)の偏光板は、一般に、先に第1透明保護膜〜第2透明保護膜の構造を製造し、それを位相差板と粘着剤で貼り合わせる。
以上の理由から、前記基本構成(A)の偏光板に一層の防湿層を設ける場合、下記(A1)〜(A6)のいずれか一つの態様を採用することが好ましい。
【0022】
【0023】
【0024】
前記基本構成(B)の偏光板に一層の防湿層を設ける場合、下記(B1)〜(B3)のいずれか一つの態様を採用することが好ましい。
【0025】
【0026】
上記(A1)〜(A5)および(B1)〜(B3)に示すように、防湿層は、位相差板(A1)、第1透明保護膜(A2、A3)、第1透明保護膜兼位相差板(B1)または第2透明保護膜(A4、A5、B2、B3)に設けることができる。位相差板および透明保護膜は、一般にポリマーフイルムであって、防湿層はポリマーフイルムの上に形成できる。
【0027】
偏光板に二層以上の防湿層を設けてもよい。一層の防湿層で、前記の低透湿量(5g/m2 ・日未満)を実現することが困難である場合は、さらに防湿層を追加する。二層以上の防湿層は、同じ位置に重ねて設けても良い。二層以上の防湿層を異なる位置に設ける場合は、(A1)〜(A5)の態様または(B1)〜(B3)の態様を複数組み合わせればよい。位相差板よりも下側(画像表示面側)に、防湿層を設けることもできる。
ただし、一般には、防湿層を一層設けるだけで、前記の低透湿量を実現することができる。
【0028】
[粘着剤層]
本発明では、粘着力が大きく(20N/25mm幅より大きく)、硬度が高い(2N/mm2 より高い)粘着剤層を設ける。位相差板と第1透明保護膜との間に第2粘着剤層(または第2粘着剤層兼防湿層)を設ける場合も、第2粘着剤層(または第2粘着剤層兼防湿層)は、粘着力が大きく(20N/25mm幅より大きく)、硬度が高い(2N/mm2 より高い)ことが好ましい。
粘着力および光度は、使用する粘着(または接着)剤の素材や添加剤(例、モノマー、オリゴマー)の量で調整することができる。例えば、モノマーやオリゴマーの添加量を多くすれば、延着力や硬度も大きくすることができる。
粘着剤層は透明であることが好ましく、具体的には、80%以上の光透過率を有することが好ましい。
粘着剤層には、一般的な粘着(または接着)剤を用いることができる。粘着(または接着)剤は、一般に硬化性の樹脂からなる。硬化性の樹脂の例には、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、エーテル樹脂、ブチラール樹脂、アミド樹脂、ビニルアルコール樹脂および合成ゴムが含まれる。アクリル樹脂が特に好ましい。
アクリル樹脂は、(メタ)アクリル酸エステルのポリマーまたはコポリマーを主成分とする。(メタ)アクリル酸エステルは、(メタ)アクリル酸と炭素原子数が2乃至14のアルコールとのエステルであることが好ましい。
【0029】
(メタ)アクリル酸エステルの例には、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8−ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10−ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12−ヒドロキシドデシル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸カルボキシエチル、(メタ)アクリル酸カルボキシペンチル、(メタ)アクリル酸グリシジルおよびジ(メタ)アクリル酸1,4−ブチレンが含まれる。
二種類以上の(メタ)アクリル酸エステルを併用してもよい。
【0030】
粘着剤として用いるアクリル樹脂は、一般に、(メタ)アクリル酸エステルに加えて、他のモノマーまたはオリゴマーを併用してコポリマーを形成し、粘着剤としての特性(接着性、架橋反応性、緩和弾性率、飽和吸水率)を調整することができる。
他のモノマーの例には、ビニルエステル(例、酢酸ビニル)、(メタ)アクリロニトリル、不飽和カルボン酸(例、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、クロトン酸)、不飽和ジカルボン酸無水物(例、無水マレイン酸、無水イタコン酸)、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミド置換スルホン酸(例、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸)、(メタ)アクリロイル置換リン酸(例、2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェート)、イタコンイミド(例、N−シクロヘキシルイタコンイミド、N−ドデシルイタコンイミド)、スクシンイミド(例、N−(メタ)アクリロイルオキシメチレンスクシンイミド)、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカルボン酸アミド、スチレンおよびジビニルベンゼンが含まれる。架橋を形成させる目的でカルボキシル基を含むモノマーを使用できる。主成分である(メタ)アクリル酸エステルは、全体の50重量%以上含まれることが好ましい。
【0031】
アクリル樹脂は、公知の重合法(例、溶液重合法、乳化重合法、塊状重合法、懸濁重合法)で合成できる。
溶液重合法においては、一般に有機溶剤を使用する。有機溶剤の例には、芳香族炭化水素(例、トルエン、キシレン)、エステル(例、酢酸エチル、酢酸ブチル)、アルコール(例、プロパノール)およびケトン(例、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン)が含まれる。二種類以上の有機溶剤を併用してもよい。
乳化重合法、塊状重合法、懸濁重合法では、水性の分散媒中に樹脂の微粒子が分散しているコロイド状の樹脂を合成する。樹脂の微粒子は、界面活性剤を保護コロイドとして用いて安定に分散させることが好ましい。
アクリル樹脂の合成では、重合開始剤を用いることが好ましい。重合開始剤は、モノマー全量の0.001乃至5質量%で用いることが好ましい。一般に、熱重合開始剤または光重合開始剤を使用する。
【0032】
熱重合開始剤の例には、有機過酸化物(例、過酸化ベンゾイル、t−ブチルパーペンゾエイト、クメンヒドロパーオキシド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジ(2−エトキシエチル)パーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート)およびアゾ化合物(例、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)が含まれる。
光重合開始剤の例には、アセトフェノン類(例、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、α−ヒドロキシ−α、α‘−ジメチルアセトフェノン、メトキシアセトフェノン、メトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン)、ベンゾインエーテル類(例、ベンゾインエチルエーテルやベンゾインイソプロピルエーテル)、ケタール類(例、、ベンジルジメチルケタール)、ベンゾフェノン類(例、ベンゾフェノン、ベンソイル安息香酸、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン)、チオキサントン類(例、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン)、カンファーキノン、ハロゲン化ケトン、アシルホスフィノキシド、アシルフォスフォナート、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素、およびこれらと還元剤を併用したレドックス系開始剤が含まれる。
アクリル樹脂の質量平均分子量は、10万以上が好ましく、20万以上がさらに好ましく、40万乃至200万が最も好ましい。
【0033】
粘着剤は、架橋処理してから用いることができる。
架橋処理は、粘着剤の液に分子間架橋剤を配合する。分子間架橋剤は、分子間架橋に関与する粘着剤ポリマーにおける官能基の種類に応じて決定する。
分子間架橋剤の配合量も、粘着剤ポリマーにおける官能基の含有量に応じて決定する。一般に、粘着剤ポリマー100質量部あたり、0.01乃至20質量部が好ましく、0.1乃至15質量部がさらに好ましく、0.2乃至15質量部が最も好ましい。
粘着剤層には必要に応じて、天然樹脂、合成樹脂、ガラス繊維、ビーズ、金属粉、層状の無機化合物からなる充填材や酸化防止剤を添加することができる。また、粘着対象物質(位相差板と画像表示面)との粘着性を上昇させるためにシロキサン構造を有する化合物やシランカップリング剤を添加することもできる。
なお、後述する防湿層の成分を第2粘着剤層に加えることで、第2粘着剤層を防湿層(第2粘着剤層兼防湿層)として機能させることもできる。
【0034】
粘着剤層(および第2粘着剤層)は、位相差板の片面(または両面)に粘着剤溶液を塗布(流延、塗工)することで形成できる。粘着剤溶液の溶媒は、芳香族炭化水素(例、トルエン)またはエステル(例、酢酸エチル)が好ましい。粘着剤溶液の濃度は、10乃至40質量%が好ましい。
また、剥離フイルム上に粘着剤層を形成した後、それを位相差板の片面に転写してもよい。
粘着剤層の厚みは、1μm乃至100μmが好ましく、3μm乃至50μmがさらに好ましく、3μm乃至40μmであることが最も好ましい。
偏光板の製造後、直ちに使用する場合を除き、偏光板を使用する(画像表示面に接着する)前は、粘着剤層の表面を剥離フイルムで保護しておくことが望ましい。
【0035】
[防湿層]
防湿層は、前記の低透湿量を実現するために設ける。防湿層の水蒸気透過係数は、1×10−12 乃至1×10−7(cm3 /cm・sec・cmHg)であることが好ましい。
防湿層は、有機材料または無機材料から形成できる。有機材料と無機材料とを組み合わせてもよい。
【0036】
有機材料は、ポリマーが好ましい。ポリマーの水蒸気透過係数は、1×10−12 乃至1×10−7(cm3 /cm/sec・cmHg)であることが好ましい。防湿層は、前記の低透湿量を実現するために設ける。透湿量は、水蒸気透過係数に比例し、厚みに反比例する。従って、透湿量(g/m2 ・日)は、水蒸気透過係数(cm3 /cm・sec・cmHg)および厚み(μm)から、下記式により計算できる。
透湿量=1010×水蒸気透過係数/厚み
【0037】
防湿層に使用できるポリマーの例を、水蒸気透過係数(cm3 /cm・sec・cmHg)および1g/m2 ・日未満の低透湿量を達成するために必要な厚さと共に以下に示す。
【0038】
(註)ポリヘキサメチレンアジポアミド:6,6−ナイロン
【0039】
ポリマーからなる防湿層は、塗布により設けることができる。
ポリマーからなる防湿層は、ポリマーを結晶化させることにより、防湿機能を高めることができる。ポリマーを結晶化するためには、ポリマーを含む塗布液(溶液、分散液、乳化液)を、塗布および乾燥後に熱処理することが好ましい。
熱処理温度は、100乃至200℃が好ましく、120乃至180℃がさらに好ましく、140乃至170℃が最も好ましい。
熱処理時間は、0.5乃至60分が好ましく、1乃至20分がさらに好ましく、2乃至10分が最も好ましい。
【0040】
無機材料で防湿層を構成することもできる。
ガラス板のように、全く水蒸気を透過しない無機材料のみで防湿層を構成すれば、低い水蒸気透過係数を容易に達成できる。しかし、無機材料のみで構成される層は、一般に脆く厚くなるため、画像表示装置に取り付ける偏光板の構成層としては適切ではない。そのため、無機材料と有機材料とを組み合わせて防湿層を構成することが好ましい。
無機材料と有機材料とを組み合わせて防湿層を構成すると、柔軟な層でありながら、低い透湿係数を容易に達成できる。無機材料と有機材料とを組み合わせると、有機材料を単独で用いた場合に比べて、1/100程度にまで透湿係数を低下させることができる。
【0041】
無機材料と有機材料とを組み合わせる場合は、有機材料として前述した水蒸気透過係数が低いポリマーを使用し、それを無機材料のバインダーとして機能させることが好ましい。
無機材料は、酸化物が好ましい。無機材料の例には、二酸化珪素、アルミナ、タルク、雲母、珪藻土、酸化チタン、テニオライト、モンモリロナイト、サポナイト、ヘクトライトおよびリン酸ジルコニウムが含まれる。
無機材料の形状は、層状であることが好ましい。層状の無機材料としては、雲母およびタルクが好ましい。
【0042】
天然雲母および合成雲母のいずれも好ましく用いられる。天然雲母の例には、白雲母(アスペクト比:25)、ソーダ雲母(アスペクト比:50)、金雲母(アスペクト比:105)、黒雲母(アスペクト比:215)および鱗雲母(アスペクト比:525)が含まれる。合成雲母の例には、フッ素金雲母(アスペクト比:825)、カリ四ケイ素雲母(アスペクト比:950)、Naテトラシリシックマイカ(アスペクト比:3000)、Na又はLiテニオライト(アスペクト比:1万)、モンモリオナイト系のNa又はLiヘクトライト(アスペクト比:3万)が含まれる。フッ素金雲母およびカリ四ケイ素雲母は、非膨潤性雲母に分類され、他の合成雲母は、膨潤性雲母に分類される。合成スメクタイト(アスペクト比:8万)も、層状無機化合物として利用できる。合成雲母が好ましく、フッ素系の膨潤性雲母が特に特に好ましい。
【0043】
無機層状化合物のアスペクト比は、20乃至10万が好ましく、100乃至5万がさらに好ましく、200乃至1万が最も好ましい。アスペクト比は、粒子の長径に対する厚さの比である。
無機層状化合物の平均長径は、0.3乃至20μmが好ましく、0.5乃至10μmがさらに好ましく、1乃至5μmが最も好ましい。無機層状化合物の平均厚さは、0.1μm未満が好ましく、0.05μm未満がさらに好ましく、0.01μm未満が最も好ましい。
【0044】
無機材料と有機材料とを組み合わせて使用する場合、無機材料の量は有機材料の量に対して、1乃至50質量%であることが好ましく、3乃至40質量%であることがさらに好ましく、6乃至30質量%であることが最も好ましい。
無機材料と有機材料とを組み合わせた防湿層は、溶液分散法または溶融分散法により形成できる。
【0045】
溶液分散法では、下記(1)〜(5)の手順で、防湿層を形成する。
(1)有機材料を溶媒に溶解または乳化して、溶液またはラテックスを調製する。溶液またはラテックスの濃度は、0.3乃至30質量%が好ましく、0.5乃至20質量%がさらに好ましく、1乃至10質量%が最も好ましい。溶剤は、無機化合物の分散性を考慮して、極性溶剤が好ましい。極性溶媒は、水、アルコールまたはそれらの混合物が好ましい。
(2)無機材料を、水、アルコールまたはそれらの混合物に分散する。
(3)無機材料の分散液を、有機材料の溶液またはラテックスに、ゆっくり滴下して、撹拌する。
(4)得られた塗布液を、ポリマーフイルム(位相差板、第1透明保護膜、第1透明保護膜兼位相差板または第2透明保護膜)に塗布する。
(5)塗布層を乾燥する。
【0046】
溶融分散法では、下記(1)〜(3)の手順で、防湿層を形成する。
(1)有機材料を加熱して、溶融する。
(2)無機材料を、溶融した有機材料に添加して、撹拌する。攪拌は、ニーダーを用いることが好ましい。
(3)ポリマーフイルム(位相差板、第1透明保護膜、第1透明保護膜兼位相差板または第2透明保護膜)を構成するポリマーと、上記混合物とを共押出しを行い、ポリマーフイルムと防湿層とを同時に形成する。
あるいは、上記混合物のみで押出しを行い形成したフイルムを、ポリマーフイルム上に粘着層を介して貼り合わせて、防湿層とする。
【0047】
溶融分散法よりも、溶液分散法の方が好ましい。
無機材料がポリマー(有機材料)中に分散している防湿層は、ポリマーを結晶化させることにより、防湿機能を高めることができる。ポリマーを結晶化するためには、防湿層を形成後に熱処理することが好ましい。
熱処理温度は、100乃至200℃が好ましく、120乃至180℃がさらに好ましく、140乃至170℃が最も好ましい。
熱処理時間は、0.5乃至60分が好ましく、1乃至20分がさらに好ましく、2乃至10分が最も好ましい。
【0048】
有機材料と無機材料との組み合わせを、水蒸気透過係数(cm3 /cm・sec・cmHg)および1g/m2 ・日未満の低透湿量を達成するために必要な厚さと共に以下に示す。
【0049】
(註)#1:エチレン/ビニルアルコールコポリマー
【0050】
(註)#2:酢酸ビニル/エチレンコポリマー
【0051】
(註)#3:ポリビニルアルコール
【0052】
(註)#4:ポリ塩化ビニリデン
【0053】
(註)#16:エチレン/プロピレンコポリマー
【0054】
防湿層の厚さは、前述したように使用する有機材料、無機材料あるいはそれらの組み合わせの防湿機能(水蒸気透過係数)に応じて決定する。一般には、防湿層の厚さは、1乃至50μm(1μm以上、50μm未満)であることが好ましく、1.2乃至35μmであることがさらに好ましく、1.5乃至10μmであることが最も好ましい。複数の防湿層を設ける場合は、厚さの合計を意味する。
複数の防湿層を積層する場合は、ポリマーフイルム側から、有機材料と無機材料とを含む防湿層、そして有機材料のみからなる防湿層の順序で積層することが好ましい。有機材料と無機材料とを含む防湿層は、無機材料により表面に凹凸が発生し、表面ヘイズが上昇しやすい。その上に、有機材料のみからなる防湿層を設けると、表面凹凸を緩和し、ヘイズを下げることができる。
複数の防湿層の屈折率は、近い値であることが好ましい。そのためには、複数の防湿層に、同じ有機材料を用いることが好ましい。
【0055】
防湿層は、無機材料をポリマーフイルム上に蒸着させて形成することもできる。そのための無機材料は、シリカ、アルミナ、ITO(インジウム・錫の酸化物)、アルカリ土類金属の弗化物(特開平8−224795号公報記載)やマグネシウム酸化物が好ましい。二種類以上の無機材料を併用してもよい。
具体的な蒸着手段としては、真空蒸着法、スパッタリング法やイオンプレーティング法が採用できる。真空蒸着法が好ましい。二層以上の蒸着層を形成してもよい。
蒸着防湿層の厚さは、10乃至1000nm(10nm以上、1000nm未満)が好ましく、20乃至800nmがさらに好ましく、30乃至500nmが最も好ましい。
【0056】
[ポリマーフイルム]
防湿層は、ポリマーフイルム(位相差板、第1透明保護膜、第1透明保護膜兼位相差板または第2透明保護膜)に設けることが好ましい。位相差板または第1透明保護膜兼位相差板に用いるポリマーフイルムは、光学異方性を有する。第1透明保護膜または第2透明保護膜に用いるポリマーフイルムは、光学異方性は不要である(光学等方性である方が好ましい)。
光学異方性との観点を除けば、位相差板、第1透明保護膜、第1透明保護膜兼位相差板および第2透明保護膜に好ましく使用できるポリマーフイルムは、ほぼ同様である。
【0057】
ポリマーフイルムは、80%以上の光透過率を有することが好ましい。
ポリマーフイルムに用いるポリマーは、セルロースアシレートが好ましい。
セルロースアシレートは、セルロースの低級脂肪酸エステルであることが好ましい。低級脂肪酸とは、炭素原子数が6以下の脂肪酸を意味する。炭素原子数は、2(セルロースアセテート)、3(セルロースプロピオネート)または4(セルロースブチレート)であることが好ましい。セルロースアセテートが特に好ましい。セルロースアセテートプロピオネートやセルロースアセテートブチレートのような混合脂肪酸エステルを用いてもよい。
セルロースアセテートは、55.0乃至62.5%の酢化度を有することが好ましい。酢化度は、57.0乃至62.0%であることがさらに好ましく、58.5乃至61.5%であることが最も好ましい。
酢化度は、セルロース単位質量当たりの結合酢酸量を意味する。酢化度は、ASTM:D−817−91(セルロースアセテート等の試験法)におけるアセチル化度の測定および計算に従う。
【0058】
ポリマーフイルムに用いるポリマーの粘度平均重合度(DP)は、250以上であることが好ましく、290以上であることがさらに好ましい。
ポリマーフイルムに用いるポリマーは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるMw/Mn(Mwは質量平均分子量、Mnは数平均分子量)の分子量分布が狭いことが好ましい。具体的なMw/Mnの値としては、1.0乃至1.7であることが好ましく、1.3乃至1.65であることがさらに好ましく、1.4乃至1.6であることが最も好ましい。
【0059】
ソルベントキャスト法によりポリマーフイルムを製造することが好ましい。ソルベントキャスト法では、ポリマーを有機溶媒に溶解した溶液(ドープ)を用いてフイルムを製造する。
有機溶媒は、炭素原子数が2乃至12のエーテル、炭素原子数が3乃至12のケトン、炭素原子数が2乃至12のエステルおよび炭素原子数が1乃至6のハロゲン化炭化水素から選ばれる溶媒を含むことが好ましい。
エーテル、ケトンおよびエステルは、環状構造を有していてもよい。エーテル、ケトンおよびエステルの官能基(すなわち、−O−、−CO−および−COO−)のいずれかを二つ以上有する化合物も、有機溶媒として用いることができる。有機溶媒は、アルコール性ヒドロキシルのような他の官能基を有していてもよい。二種類以上の官能基を有する有機溶媒の場合、その炭素原子数は、いずれかの官能基を有する化合物の規定範囲内であればよい。
【0060】
炭素原子数が3乃至12のエーテルの例には、ジメチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン、アニソールおよびフェネトールが含まれる。
炭素原子数が3乃至12のケトンの例には、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノンおよびメチルシクロヘキサノンが含まれる。
炭素原子数が2乃至12のエステルの例には、メチルホルメート、エチルホルメート、プロピルホルメート、ペンチルホルメート、メチルアセテート、エチルアセテートおよびペンチルアセテートが含まれる。
二種類以上の官能基を有する有機溶媒の例には、2−エトキシエチルアセテート、2−メトキシエタノールおよび2−ブトキシエタノールが含まれる。
【0061】
ハロゲン化炭化水素の炭素原子数は、1または2であることが好ましく、1であることが最も好ましい。ハロゲン化炭化水素のハロゲンは、塩素であることが好ましい。ハロゲン化炭化水素において、炭化水素の水素原子が、ハロゲン原子にに置換されている割合は、25乃至75モル%であることが好ましく、30乃至70モル%であることがより好ましく、35乃至65モル%であることがさらに好ましく、40乃至60モル%であることが最も好ましい。メチレンクロリドが、代表的なハロゲン化炭化水素である。
二種類以上の有機溶媒を混合して用いてもよい。
【0062】
一般的な方法でポリマー溶液を調製できる。一般的な方法とは、0℃以上の温度(常温または高温)で、処理することを意味する。溶液の調製は、通常のソルベントキャスト法におけるドープの調製方法および装置を用いて実施することができる。なお、一般的な方法の場合は、有機溶媒としてハロゲン化炭化水素(特にメチレンクロリド)を用いることが好ましい。
ポリマーの量は、得られる溶液中に10乃至40質量%含まれるように調整する。ポリマーの量は、10乃至30質量%であることがさらに好ましい。有機溶媒(主溶媒)中には、後述する任意の添加剤を添加しておいてもよい。
【0063】
溶液は、常温(0乃至40℃)でポリマーと有機溶媒とを攪拌することにより調製することができる。高濃度の溶液は、加圧および加熱条件下で攪拌してもよい。具体的には、ポリマーと有機溶媒とを加圧容器に入れて密閉し、加圧下で溶媒の常温における沸点以上、かつ溶媒が沸騰しない範囲の温度に加熱しながら攪拌する。加熱温度は、通常は40℃以上であり、好ましくは60乃至200℃であり、さらに好ましくは80乃至110℃である。
【0064】
各成分は予め粗混合してから容器に入れてもよい。また、順次容器に投入してもよい。容器は攪拌できるように構成されている必要がある。窒素ガス等の不活性気体を注入して容器を加圧することができる。また、加熱による溶媒の蒸気圧の上昇を利用してもよい。あるいは、容器を密閉後、各成分を圧力下で添加してもよい。
加熱する場合、容器の外部より加熱することが好ましい。例えば、ジャケットタイプの加熱装置を用いることができる。また、容器の外部にプレートヒーターを設け、配管して液体を循環させることにより容器全体を加熱することもできる。
容器内部に攪拌翼を設けて、これを用いて攪拌することが好ましい。攪拌翼は、容器の壁付近に達する長さのものが好ましい。攪拌翼の末端には、容器の壁の液膜を更新するため、掻取翼を設けることが好ましい。
容器には、圧力計、温度計等の計器類を設置してもよい。容器内で各成分を溶剤中に溶解する。調製したドープは冷却後容器から取り出すか、あるいは、取り出した後、熱交換器等を用いて冷却する。
【0065】
冷却溶解法により、溶液を調製することもできる。冷却溶解法では、通常の溶解方法では溶解させることが困難な有機溶媒中にもポリマーを溶解させることができる。なお、通常の溶解方法でポリマーを溶解できる溶媒であっても、冷却溶解法によると迅速に均一な溶液が得られるとの効果がある。
冷却溶解法では最初に、室温で有機溶媒中にポリマーを撹拌しながら徐々に添加する。
ポリマーの量は、この混合物中に10乃至40質量%含まれるように調整することが好ましく、10乃至30質量%であることがさらに好ましい。さらに、混合物中には後述する任意の添加剤を添加しておいてもよい。
【0066】
次に、混合物を−100乃至−10℃(好ましくは−80乃至−10℃、さらに好ましくは−50乃至−20℃、最も好ましくは−50乃至−30℃)に冷却する。冷却は、例えば、ドライアイス・メタノール浴(−75℃)や冷却したジエチレングリコール溶液(−30乃至−20℃)中で実施できる。このように冷却すると、ポリマーと有機溶媒の混合物は固化する。
冷却速度は、4℃/分以上であることが好ましく、8℃/分以上であることがさらに好ましく、12℃/分以上であることが最も好ましい。冷却速度は、速いほど好ましいが、10000℃/秒が理論的な上限であり、1000℃/秒が技術的な上限であり、そして100℃/秒が実用的な上限である。なお、冷却速度は、冷却を開始する時の温度と最終的な冷却温度との差を冷却を開始してから最終的な冷却温度に達するまでの時間で割った値である。
【0067】
さらに、これを0乃至200℃(好ましくは0乃至150℃、さらに好ましくは0乃至120℃、最も好ましくは0乃至50℃)に加温すると、有機溶媒中にポリマーが溶解する。昇温は、室温中に放置するだけでもよし、温浴中で加温してもよい。
加温速度は、4℃/分以上であることが好ましく、8℃/分以上であることがさらに好ましく、12℃/分以上であることが最も好ましい。加温速度は、速いほど好ましいが、10000℃/秒が理論的な上限であり、1000℃/秒が技術的な上限であり、そして100℃/秒が実用的な上限である。なお、加温速度は、加温を開始する時の温度と最終的な加温温度との差を加温を開始してから最終的な加温温度に達するまでの時間で割った値である。
【0068】
以上のようにして、均一な溶液が得られる。なお、溶解が不充分である場合は冷却、加温の操作を繰り返してもよい。溶解が充分であるかどうかは、目視により溶液の外観を観察するだけで判断することができる。
冷却溶解法においては、冷却時の結露による水分混入を避けるため、密閉容器を用いることが望ましい。また、冷却加温操作において、冷却時に加圧し、加温時の減圧すると、溶解時間を短縮することができる。加圧および減圧を実施するためには、耐圧性容器を用いることが望ましい。
【0069】
調製したポリマー溶液(ドープ)から、ソルベントキャスト法によりポリマーフイルムを製造する。
ドープは、ドラムまたはバンド上に流延し、溶媒を蒸発させてフイルムを形成する。流延前のドープは、固形分量が10乃至40%(好ましくは18乃至35%)となるように濃度を調整することが好ましい。ドラムまたはバンドの表面は、鏡面状態に仕上げておくことが好ましい。ソルベントキャスト法における流延および乾燥方法については、米国特許第2336310号、同2367603号、同2492078号、同2492977号、同2492978号、同2607704号、同2739069号、同2739070号、英国特許第640731号、同736892号の各明細書、特公昭45−4554号、同49−5614号、特開昭60−176834号、同60−203430号、同62−115035号の各公報に記載がある。
【0070】
ドープは、表面温度が10℃以下のドラムまたはバンド上に流延することが好ましい。流延してから2秒以上風に当てて乾燥することが好ましい。得られたフイルムをドラムまたはバンドから剥ぎ取り、さらに100から160℃まで逐次温度を変えた高温風で乾燥して残留溶剤を蒸発させることもできる。以上の方法は、特公平5−17844号公報に記載がある。この方法によると、流延から剥ぎ取りまでの時間を短縮することが可能である。この方法を実施するためには、流延時のドラムまたはバンドの表面温度においてドープがゲル化することが必要である。
【0071】
また、複数のポリマー溶液(ドープ)を用いて、二層以上の共流延でフイルムを形成することもできる。複数のポリマー溶液は、同じ組成であってもよい。
支持体の進行方向に間隔を置いて設けた複数の流延口から、複数のポリマー溶液をそれぞれ流延し、積層させながらフイルムを作製する方法(特開昭61−158414号、特開平1−122419号、同11−198285号の各公報記載)が採用できる。2つの流延口からポリマー溶液を流延することにより、フイルムを形成する方法(特公昭60−27562号、特開昭61−94724号、同61−94725号、同61−104813号、同61−158413号、特開平6−134933号の各公報に記載)を実施してもよい。高粘度ポリマー溶液の流れを低粘度のポリマー溶液で包み込み、その高、低粘度のポリマー溶液を同時に押出すポリマーフイルム流延方法(特開昭56−162617号公報記載)を採用してもよい。
【0072】
2個の流延口を用いて、第一の流延口により支持体に成型したフイルムを剥ぎ取り、支持体面に接していた側に第二の流延を行うことでより、フイルムを作製する方法(特公昭44−20235号公報記載)も採用できる。
ポリマー溶液は、他の機能層(例、粘着剤層、染料層、帯電防止層、アンチハレーション層、UV吸収層、直線偏光膜、防湿層)と同時に流延することもできる。
単一層の流延では、一定のフイルム厚さを得るために高濃度で高粘度のポリマー溶液を押出す場合がある。高濃度で高粘度のポリマー溶液は、安定性が悪く、固形物が発生し、ブツ故障となったり、平面性が不良である問題が生じることが多い。この問題の解決として、複数のポリマー溶液を流延口から流延すればよい。複数の高粘度溶液を同時に支持体上に押出すことにより、平面性が良化し優れた面状のフイルムが作製できる。また、濃厚なポリマー溶液を用いることで、乾燥負荷を低減し、フイルムの生産効率を高めることができる。
【0073】
ポリマーフイルムには、機械的物性を改良するため、または乾燥速度を向上するために、可塑剤を添加することができる。可塑剤としては、リン酸エステルまたはカルボン酸エステルが用いられる。リン酸エステルの例には、トリフェニルフォスフェート(TPP)、ビフェニルジフェニルホスフェート(BDP)およびトリクレジルホスフェート(TCP)が含まれる。カルボン酸エステルとしては、フタル酸エステルおよびクエン酸エステルが代表的である。フタル酸エステルの例には、ジメチルフタレート(DMP)、ジエチルフタレート(DEP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジオクチルフタレート(DOP)、ジフェニルフタレート(DPP)およびジエチルヘキシルフタレート(DEHP)が含まれる。クエン酸エステルの例には、O−アセチルクエン酸トリエチル(OACTE)およびO−アセチルクエン酸トリブチル(OACTB)が含まれる。その他のカルボン酸エステルの例には、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバシン酸ジブチル、種々のトリメリット酸エステルが含まれる。リン酸エステル系可塑剤(TPP、BDP、TCP)およびフタル酸エステル系可塑剤(DMP、DEP、DBP、DOP、DPP、DEHP)が好ましく用いられる。TPP、BDP、DEPおよびDPPが特に好ましい。
可塑剤の添加量は、ポリマーの量の0.1乃至25質量%であることが好ましく、1乃至20質量%であることがさらに好ましく、3乃至15質量%であることが最も好ましい。
【0074】
ポリマーフイルムには、劣化防止剤(例、酸化防止剤、過酸化物分解剤、ラジカル禁止剤、金属不活性化剤、酸捕獲剤、アミン)を添加してもよい。劣化防止剤については、特開平3−199201号、同5−190773号、同5−194789号、同5−271471号、同6−107854号の各公報に記載がある。劣化防止剤の添加量は、調製する溶液(ドープ)の0.01乃至1質量%であることが好ましく、0.01乃至0.2質量%であることがさらに好ましい。
添加量が0.01質量%未満であると、劣化防止剤の効果がほとんど認められない。添加量が1質量%を越えると、フイルム表面への劣化防止剤のブリードアウト(滲み出し)が認められる場合がある。特に好ましい劣化防止剤は、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)およびトリベンジルアミン(TBA)である。
【0075】
ポリマーフイルムに、表面処理を施してもよい。具体的方法としては、コロナ放電処理、グロー放電処理、火炎処理、酸処理、アルカリ処理または紫外線照射処理を実施する。フイルムの平面性を保持する観点から、表面処理においてポリマーフイルムの温度をガラス転位温度(Tg)以下とすることが好ましい。
ポリマーフイルムを、偏光板の透明保護膜として機能させる場合、偏光膜との接着性の観点から、酸処理またはアルカリ処理を実施することが好ましく、アルカリ処理がさらに好ましい。ポリマーがセルロースアシレートである場合、アルカリ処理は、アルカリケン化処理として機能する。
【0076】
アルカリ処理は、フイルム表面をアルカリ溶液に浸漬した後、酸性溶液で中和し、水洗して乾燥するサイクルで行われることが好ましい。
アルカリは、アルカリ金属の水酸化物が好ましく、水酸化カリウムまたは水酸化ナトリウムがナトリウムがさらに好ましい。溶液の溶媒は、水または有機溶媒が好ましい。有機溶媒は、低級アルコールが好ましい。低級アルコールは、炭素原子数が1乃至5のアルコールまたはグリコールであることがさらに好ましい。
低級アルコールの例には、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコールが含まれる。イソプロパノールおよびプロピレングリコールが好ましい。二種類以上の溶媒を混合して用いてもよい。混合溶媒の例には、イソプロパノール/プロピレングリコール/水(容積比:70/15/15)、イソプロパノール/水(容積比:85/15)およびイソプロパノール/プロピレングリコール(容積比:85/15)が含まれる。
【0077】
溶液の規定濃度は、0.1乃至3.0Nであることが好ましく、0.5乃至2.0Nであることがさらに好ましい。アルカリ溶液温度は、室温乃至90℃の範囲が好ましく、40℃乃至70℃がさらに好ましい。アルカリ溶液に界面活性剤を添加してもよい。
ポリマーフイルムは、アルカリ溶液に浸漬することでアルカリ処理を実施できる。アルカリ溶液を、ポリマーフイルムに塗布(バー塗布、カーテン塗布)してもよい。
【0078】
ポリマーフイルムとその上に設けられる層(例、粘着剤層、染料層、帯電防止層、アンチハレーション層、UV吸収層、直線偏光膜、防湿層)との接着を改善するために、下塗り層(特開平7−333433号公報記載)を設けてもよい。
下塗り層の厚みは0.1乃至2μmであることが好ましく、0.2乃至1μmであることがさらに好ましい。
ポリマーフイルムには、製造時のハンドリング性向上のために、マット層を設けてもよい。マット層は、ポリマーフイルムの両面に設けてもよい。マット層は、一般にマット剤とポリマーを含有する。マット剤およびポリマーについては、特開平10−44327号公報に記載がある。
【0079】
[位相差板]
光学等方性のポリマーフイルムは、第1透明保護膜または第2透明保護膜として使用できるが、位相差板もしくは第1透明保護膜兼位相差板に用いるポリマーフイルムは、光学異方性が必要である。
位相差板の光学異方性は、偏光板の用途に応じて決定する。ただし、本発明は、厳密な光学異方性を要求する円偏光板のような用途において、特に有効である。円偏光板の用途においては、位相差板はλ/4板として機能させる。
【0080】
位相差板は、波長550nmで測定したレターデーション値(Re550)が100nm<Re550<330nmであり、波長450nm、550nmおよび650nmで測定したレターデーション値(Re450、Re550、Re650)が、それぞれ0.5<Re450/Re550<0.98、1.01<Re650/Re550<1.35を満足することが好ましい。
Re550は、110nm<Re550<250nmを満足することがさらに好ましく、120nm<Re550<200nmを満足することがさらに好ましい。
【0081】
レターデーション値(Re)は、下記式に従って算出する。
レターデーション値(Re)=(nx−ny)×d
式中、nxは、ポリマーフイルムの面内の遅相軸方向の屈折率(面内の最大屈折率)であり、nyは遅相軸に垂直な方向の屈折率であり、dは厚さ(nm)である。
【0082】
位相差板は、面内の遅相軸方向の屈折率nx、面内の遅相軸に垂直な方向の屈折率nyおよび厚み方向の屈折率nzが、1.1<(nx−nz)/(nx−ny)<3を満足することが好ましい。(nx−nz)/(nx−ny)の値は、NZ値と称する場合もある。NZ値は、1.3<NZ<2.5を満足することがさらに好ましく、1.5<NZ<2を満足することが最も好ましい。
NZ値は、位相差板中の分子の面配向の指数を意味する。NZ値が大きいフイルムは、面配向が大きい。
位相差板に使用する光学異方性を有するポリマーフイルムは、レターデーション上昇剤の使用および延伸処理の実施により製造することができる。
【0083】
レターデーション上昇剤は、少なくとも二つの芳香族環を有する化合物を用いることが好ましい。芳香族環は、芳香族炭化水素環に加えて芳香族性ヘテロ環を含む。
レターデーション上昇剤は、ポリマー100質量部に対して、0.01乃至10質量部の範囲で用いることが好ましく、0.1乃至8質量部の範囲で用いることがさらに好ましく、0.1乃至6質量部の範囲で使用することが最も好ましい。二種類以上のレターデーション上昇剤を併用してもよい。
レターデーション上昇剤は、230乃至360nmの波長領域に最大吸収波長を有することが好ましい。また、レターデーション上昇剤は、可視領域に実質的に吸収を有していないことが好ましい。
【0084】
芳香族炭化水素環は、6員環(すなわち、ベンゼン環)であることが特に好ましい。
芳香族性ヘテロ環は一般に、不飽和ヘテロ環である。ヘテロ環は、5員環、6員環または7員環であることが好ましく、5員環または6員環であることがさらに好ましい。芳香族性ヘテロ環は一般に、最多数の二重結合を有する。ヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子および硫黄原子が好ましく、窒素原子が特に好ましい。芳香族性ヘテロ環の例には、フラン環、チオフェン環、ピロール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、イミダゾール環、ピラゾール環、フラザン環、トリアゾール環、ピラン環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環および1,3,5−トリアジン環が含まれる。
芳香族環は、ベンゼン環、フラン環、チオフェン環、ピロール環、オキサゾール環、チアゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、ピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環および1,3,5−トリアジン環が好ましい。
芳香族環の数は、2乃至20であることが好ましく、2乃至12であることがより好ましく、2乃至6であることが最も好ましい。
【0085】
複数の芳香族環の結合関係は、(a)縮合環を形成する場合、(b)単結合で直結する場合および(c)連結基を介して結合する場合に分類できる(芳香族環のため、スピロ結合は形成できない)。3以上の芳香族環を有する場合、複数の結合関係を組み合わせてもよい。
【0086】
(a)の縮合環(二つ以上の芳香族環の縮合環)の例には、インデン環、ナフタレン環、アズレン環、フルオレン環、フェナントレン環、アントラセン環、アセナフチレン環、ビフェニレン環、ナフタセン環、ピレン環、インドール環、イソインドール環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、インドリジン環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾトリアゾール環、プリン環、インダゾール環、クロメン環、キノリン環、イソキノリン環、キノリジン環、キナゾリン環、シンノリン環、キノキサリン環、フタラジン環、プテリジン環、カルバゾール環、アクリジン環、フェナントリジン環、キサンテン環、フェナジン環、フェノチアジン環、フェノキサチイン環、フェノキサジン環およびチアントレン環が含まれる。ナフタレン環、アズレン環、インドール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾトリアゾール環およびキノリン環が好ましい。
(b)の単結合は、二つの芳香族環の炭素原子間の結合であることが好ましい。二以上の単結合で二つの芳香族環を結合して、二つの芳香族環の間に脂肪族環または非芳香族性複素環を形成してもよい。
(c)の連結基も、二つの芳香族環の炭素原子と結合することが好ましい。連結基は、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、−CO−、−O−、−NH−、−S−またはそれらの組み合わせであることが好ましい。組み合わせからなる連結基の例を以下に示す。なお、以下の連結基の例の左右の関係は、逆になってもよい。
【0087】
c1:−CO−O−
c2:−CO−NH−
c3:−アルキレン−O−
c4:−NH−CO−NH−
c5:−NH−CO−O−
c6:−O−CO−O−
c7:−O−アルキレン−O−
c8:−CO−アルケニレン−
c9:−CO−アルケニレン−NH−
c10:−CO−アルケニレン−O−
c11:−アルキレン−CO−O−アルキレン−O−CO−アルキレン−
c12:−O−アルキレン−CO−O−アルキレン−O−CO−アルキレン−O−
c13:−O−CO−アルキレン−CO−O−
c14:−NH−CO−アルケニレン−
c15:−O−CO−アルケニレン−
【0088】
芳香族環および連結基は、置換基を有していてもよい。
置換基の例には、ハロゲン原子(F、Cl、Br、I)、ヒドロキシル、カルボキシル、シアノ、アミノ、ニトロ、スルホ、カルバモイル、スルファモイル、ウレイド、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、脂肪族アシル基、脂肪族アシルオキシ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アルコキシカルボニルアミノ基、アルキルチオ基、アルキルスルホニル基、脂肪族アミド基、脂肪族スルホンアミド基、脂肪族置換アミノ基、脂肪族置換カルバモイル基、脂肪族置換スルファモイル基、脂肪族置換ウレイド基および非芳香族性複素環基が含まれる。
【0089】
アルキル基の炭素原子数は、1乃至8であることが好ましい。環状アルキル基よりも鎖状アルキル基の方が好ましく、直鎖状アルキル基が特に好ましい。アルキル基は、さらに置換基(例、ヒドロキシ、カルボキシ、アルコキシ基、アルキル置換アミノ基)を有していてもよい。アルキル基の(置換アルキル基を含む)例には、メチル、エチル、n−ブチル、n−ヘキシル、2−ヒドロキシエチル、4−カルボキシブチル、2−メトキシエチルおよび2−ジエチルアミノエチルが含まれる。
アルケニル基の炭素原子数は、2乃至8であることが好ましい。環状アルケニル基よりも鎖状アルケニル基の方が好ましく、直鎖状アルケニル基が特に好ましい。アルケニル基は、さらに置換基を有していてもよい。アルケニル基の例には、ビニル、アリルおよび1−ヘキセニルが含まれる。
アルキニル基の炭素原子数は、2乃至8であることが好ましい。環状アルキケニル基よりも鎖状アルキニル基の方が好ましく、直鎖状アルキニル基が特に好ましい。アルキニル基は、さらに置換基を有していてもよい。アルキニル基の例には、エチニル、1−ブチニルおよび1−ヘキシニルが含まれる。
【0090】
脂肪族アシル基の炭素原子数は、1乃至10であることが好ましい。脂肪族アシル基の例には、アセチル、プロパノイルおよびブタノイルが含まれる。
脂肪族アシルオキシ基の炭素原子数は、1乃至10であることが好ましい。脂肪族アシルオキシ基の例には、アセトキシが含まれる。
アルコキシ基の炭素原子数は、1乃至8であることが好ましい。アルコキシ基は、さらに置換基(例、アルコキシ基)を有していてもよい。アルコキシ基の(置換アルコキシ基を含む)例には、メトキシ、エトキシ、ブトキシおよびメトキシエトキシが含まれる。
アルコキシカルボニル基の炭素原子数は、2乃至10であることが好ましい。
アルコキシカルボニル基の例には、メトキシカルボニルおよびエトキシカルボニルが含まれる。
アルコキシカルボニルアミノ基の炭素原子数は、2乃至10であることが好ましい。アルコキシカルボニルアミノ基の例には、メトキシカルボニルアミノおよびエトキシカルボニルアミノが含まれる。
【0091】
アルキルチオ基の炭素原子数は、1乃至12であることが好ましい。アルキルチオ基の例には、メチルチオ、エチルチオおよびオクチルチオが含まれる。
アルキルスルホニル基の炭素原子数は、1乃至8であることが好ましい。アルキルスルホニル基の例には、メタンスルホニルおよびエタンスルホニルが含まれる。
脂肪族アミド基の炭素原子数は、1乃至10であることが好ましい。脂肪族アミド基の例には、アセトアミドが含まれる。
脂肪族スルホンアミド基の炭素原子数は、1乃至8であることが好ましい。脂肪族スルホンアミド基の例には、メタンスルホンアミド、ブタンスルホンアミドおよびn−オクタンスルホンアミドが含まれる。
脂肪族置換アミノ基の炭素原子数は、1乃至10であることが好ましい。脂肪族置換アミノ基の例には、ジメチルアミノ、ジエチルアミノおよび2−カルボキシエチルアミノが含まれる。
脂肪族置換カルバモイル基の炭素原子数は、2乃至10であることが好ましい。脂肪族置換カルバモイル基の例には、メチルカルバモイルおよびジエチルカルバモイルが含まれる。
脂肪族置換スルファモイル基の炭素原子数は、1乃至8であることが好ましい。脂肪族置換スルファモイル基の例には、メチルスルファモイルおよびジエチルスルファモイルが含まれる。
脂肪族置換ウレイド基の炭素原子数は、2乃至10であることが好ましい。脂肪族置換ウレイド基の例には、メチルウレイドが含まれる。
非芳香族性複素環基の例には、ピペリジノおよびモルホリノが含まれる。
【0092】
(c)の連結基により、複数の芳香族環を直線的に連結した(直線的な分子構造を有する)棒状化合物が特に好ましい。直線的な分子構造とは、熱力学的に最も安定な構造において棒状化合物の分子構造が直線的であることを意味する。熱力学的に最も安定な構造は、結晶構造解析または分子軌道計算によって求めることができる。例えば、分子軌道計算ソフト(例、WinMOPAC2000、富士通(株)製)を用いて分子軌道計算を行い、化合物の生成熱が最も小さくなるような分子の構造を求めることができる。分子構造が直線的であるとは、上記のように計算して求められる熱力学的に最も安定な構造において、分子構造の角度が140度以上であることを意味する。
棒状芳香族化合物は、液晶性を示すことが好ましい。棒状芳香族化合物は、加熱により液晶性を示す(サーモトロピック液晶性を有する)ことがさらに好ましい。液晶相は、ネマチィク相またはスメクティック相が好ましい。
【0093】
棒状芳香族化合物としては、下記式(I)で表されることが好ましい。
(I)Ar1 −L1 −Ar2
式(I)において、Ar1 およびAr2 は、それぞれ独立に、芳香族基である。
芳香族基は、前述した芳香族炭化水素環および芳香族性ヘテロ環を芳香族環として有する。芳香族基の置換基も、前述した芳香族環の置換基と同様である。
【0094】
式(I)において、L1 は、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、二価の飽和ヘテロ環基、−O−、−CO−およびそれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基である。
アルキレン基は、環状構造を有していてもよい。環状アルキレン基としては、シクロヘキシレンが好ましく、1,4−シクロへキシレンが特に好ましい。鎖状アルキレン基としては、直鎖状アルキレン基の方が分岐を有するアルキレン基よりも好ましい。
アルキレン基の炭素原子数は、1乃至20であることが好ましく、1乃至15であることがより好ましく、1乃至10であることがさらに好ましく、1乃至8であることがさらにまた好ましく、1乃至6であることが最も好ましい。
【0095】
アルケニレン基およびアルキニレン基は、環状構造よりも鎖状構造を有することが好ましく、分岐を有する鎖状構造よりも直鎖状構造を有することがさらに好ましい。
アルケニレン基およびアルキニレン基の炭素原子数は、2乃至10であることが好ましく、2乃至8であることがより好ましく、2乃至6であることがさらに好ましく、2乃至4であることがさらにまた好ましく、2(ビニレンまたはエチニレン)であることが最も好ましい。
二価の飽和ヘテロ環基は、3員乃至9員のヘテロ環を有することが好ましい。
ヘテロ環のヘテロ原子は、酸素原子、窒素原子、ホウ素原子、硫黄原子、ケイ素原子、リン原子またはゲルマニウム原子が好ましい。飽和ヘテロ環の例には、ピペリジン環、ピペラジン環、モルホリン環、ピロリジン環、イミダゾリジン環、テトラヒドロフラン環、テトラヒドロピラン環、1,3−ジオキサン環、1,4−ジオキサン環、テトラヒドロチオフェン環、1,3−チアゾリジン環、1,3−オキサゾリジン環、1,3−ジオキソラン環、1,3−ジチオラン環および1,3,2−ジオキサボロランが含まれる。特に好ましい二価の飽和ヘテロ環基は、ピペラジン−1,4−ジイレン、1,3−ジオキサン−2,5−ジイレンおよび1,3,2−ジオキサボロラン−2,5−ジイレンである。
【0096】
組み合わせからなる二価の連結基の例を示す。
L−1:−O−CO−アルキレン基−CO−O−
L−2:−CO−O−アルキレン基−O−CO−
L−3:−O−CO−アルケニレン基−CO−O−
L−4:−CO−O−アルケニレン基−O−CO−
L−5:−O−CO−アルキニレン基−CO−O−
L−6:−CO−O−アルキニレン基−O−CO−
L−7:−O−CO−二価の飽和ヘテロ環基−CO−O−
L−8:−CO−O−二価の飽和ヘテロ環基−O−CO−
【0097】
式(I)の分子構造において、L1 を挟んで、Ar1 とAr2 とが形成する角度は、140度以上であることが好ましい。
【0098】
棒状芳香族化合物は、下記式(II)で表されることがさらに好ましい。
(II)Ar1 −L2 −X−L3 −Ar2
式(II)において、Ar1 およびAr2 は、それぞれ独立に、芳香族基である。
芳香族基は、前述した芳香族炭化水素環および芳香族性ヘテロ環を芳香族環として有する。芳香族基の置換基も、前述した芳香族環の置換基と同様である。
【0099】
式(II)において、L2 およびL3 は、それぞれ独立に、アルキレン基、−O−、−CO−およびそれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基である。
アルキレン基は、環状構造よりも鎖状構造を有することが好ましく、分岐を有する鎖状構造よりも直鎖状構造を有することがさらに好ましい。
アルキレン基の炭素原子数は、1乃至10であることが好ましく、1乃至8であることがより好ましく、1乃至6であることがさらに好ましく、1乃至4であることがさらにまた好ましく、1または2(メチレンまたはエチレン)であることが最も好ましい。
L2 およびL3 は、−O−CO−または−CO−O−であることが特に好ましい。
【0100】
式(II)において、Xは、1,4−シクロへキシレン、ビニレンまたはエチニレンである。
以下に、式(I)で表される棒状芳香族化合物の例を示す。
【0101】
【化1】
【0102】
【化2】
【0103】
【化3】
【0104】
【化4】
【0105】
【化5】
【0106】
【化6】
【0107】
【化7】
【0108】
【化8】
【0109】
【化9】
【0110】
【化10】
【0111】
具体例(1)〜(34)、(41)、(42)、(46)、(47)、(52)、(53)は、シクロヘキサン環の1位と4位とに二つの不斉炭素原子を有する。ただし、具体例(1)、(4)〜(34)、(41)、(42)、(46)、(47)、(52)、(53)は、対称なメソ型の分子構造を有するため光学異性体(光学活性)はなく、幾何異性体(トランス型とシス型)のみ存在する。
具体例(1)のトランス型(1−trans)とシス型(1−cis)とを、以下に示す。
【0112】
【化11】
【0113】
前述したように、レターデーション上昇剤として用いる棒状芳香族化合物は直線的な分子構造を有することが好ましい。そのため、トランス型の方がシス型よりも好ましい。
具体例(2)および(3)は、幾何異性体に加えて光学異性体(合計4種の異性体)を有する。幾何異性体については、同様にトランス型の方がシス型よりも好ましい。光学異性体については、特に優劣はなく、D、Lあるいはラセミ体のいずれでもよい。
具体例(43)〜(45)では、中心のビニレン結合にトランス型とシス型とがある。上記と同様の理由で、トランス型の方がシス型よりも好ましい。
レターデーション上昇剤は、二種類以上の化合物を混合して用いてもよい。
【0114】
ポリマーフイルムの光学異方性を調整するため、延伸処理を実施することが好ましい。延伸処理は、ドライ延伸と含水延伸に分類できる。
【0115】
ドライ延伸は、加熱しながら乾燥雰囲気で行なわれる一般的な延伸方法である。
加熱温度は、100乃至160℃が好ましく、110乃至150℃がさらに好ましく、120乃至145℃であることが最も好ましい。
延伸倍率は、1.1乃至1.7倍が好ましく、1.2乃至1.6倍がさらに好ましく、1.3乃至1.5倍が最も好ましい。
ドライ延伸は、2対以上のニップロールを用い、入口側の送り速度より出口側の速度を大きくする条件で実施することが好ましい。ニップロールの数は、2対乃至8対がさらに好ましく、2対乃至6対が最も好ましい。
加熱は、一定温度に昇温したケーシング内で行う方法が好ましい。ケーシング内で延伸する方が、一般的な加熱手段(加熱ロールまたは放射熱源)を用いる方法よりも、幅方向の光学特性変化を小さくすることができる。
【0116】
含水延伸は、ポリマーフイルムに水を含ませた状態で延伸する。含水延伸では、水分の可塑化効果により、よりスムースな延伸を行うことができる。それゆえ、ドライ延伸よりも、含水延伸の方が好ましい。
延伸前のポリマーフイルムの含水率は、2乃至10質量%が好ましく、2.5乃至8%質量%がさらに好ましく、3乃至6質量%が最も好ましい。ポリマーフイルムに水を含ませるためには、ポリマーフイルムを水に浸漬するか、ポリマーフイルムを水蒸気に曝す。
水に浸漬する場合、水温は、60乃至100℃が好ましく、70乃至100℃がさらに好ましく、80乃至100℃であることが最も好ましい。浸漬時間は、0.1乃至20分が好ましく、0.2乃至10分がさらに好ましく、0.5乃至5分が最も好ましい。ポリマーフイルムは、水槽に設置したロール間を搬送させることで、水を含ませることができる。
【0117】
水蒸気に曝す場合、処理温度は、60乃至150℃が好ましく、70乃至140℃がさらに好ましく、75乃至130℃がさらに好ましい。処理における相対湿度は、70乃至100%が好ましく、80乃至100%がさらに好ましく、85乃至100%が最も好ましい。処理時間は、0.1乃至20分が好ましく、0.2乃至10分がさらに好ましく、0.5乃至5分が最も好ましい。水蒸気を満たした部屋の中にロールを設置し、ポリマーフイルムを搬送することで水蒸気に曝すことができる。
【0118】
水(または水蒸気)は、水以外の成分を含んでもよい。他の成分の例には、有機溶剤、可塑剤および界面活性剤が含まれる。有機溶剤は、炭素原子数が1乃至10の水混和性の液体が好ましい。水と他の成分全体の60質量%以上が水であることが好ましく、80質量%以上が水であることがさらに好ましく、純水であることが最も好ましい。
水に浸漬する方法と、水蒸気に曝す方法とを組み合わせて実施してもよい。水蒸気に曝す方法を単独で実施することが特に好ましい。
【0119】
含水延伸における延伸倍率は、1.1乃至2倍が好ましく、1.2乃至1.8倍がさらに好ましく、1.3乃至1.7倍が最も好ましい。
含水延伸の温度は、50乃至100℃が好ましく、60乃至95℃がさらに好ましく、70乃至95℃が最も好ましい。含水延伸における相対湿度は、60乃至100%が好ましく、70乃至100%がさらに好ましく、80乃至95%が最も好ましい。相対湿度が高い条件での延伸処理は、高湿度雰囲気下あるいは水中に浸漬しながら実施すればよい。高湿度雰囲気下で実施することが好ましい。
高湿度雰囲気下での延伸は、調湿したケーシング内に2対以上のニップロールを設置し、出口側のニップロールの線速度を速くすることで実施できる。水中での延伸は、加熱した水槽内に2対以上のニップロールを設置し、出口側のニップロールの線速度を速くすることで実施できる。
【0120】
ポリマーフイルムの幅(W)と、延伸間距離(L)との縦横比L/Wは、0.3≦L/W≦2を満足することが好ましく、0.3≦L/W≦1.5を満足することがさらに好ましく、0.3≦L/W≦1を満足することが最も好ましい。
縦横比L/Wの調整は、延伸間距離を狭くすることでネックインが発現する前に延伸を終了させようとする意図がある。一般的な延伸方法延伸方法では、厚みおよび幅の両方向が収縮し、延伸による伸張を助ける。上記のような狭い延伸間距離では、厚み方向にしか収縮できないため、延伸において多大な応力がフイルムに掛かる。応力により、分子切断に伴うクレーズが発生しヘイズが上昇しやすい。しかし、含水延伸では、水の可塑化効果により、分子間の滑りが促進され、延伸が容易になる。
【0121】
一般的な延伸方法では、縦横比は2を越える領域になる。一般的な延伸方法では、前述したNZ値が1以下になりやすい。一般的な延伸方法では、延伸に伴いネックインが発生するため、面配向が小さくなる傾向がある。ポリマーフイルムは、延伸に伴い延伸方向に延ばされた分を、厚み方向および幅方向の収縮で吸収しようとする。一般的な延伸方法では両者の収縮は同程度に起こるため、NZ値が小さくなりやすい。
縦横比を2以下とすると、ネックインが抑制され、厚み方向の収縮を優先して起こすことができる。従って、厚み方向に圧縮され面配向の高いフイルムが得られる。面配向の高い(前述したNZ値が1.1を越える)フイルムは、吸脱湿による体積変化が発生しにくい。その結果、フイルムの波長分散も安定である。
ポリマーフイルムは、画像表示装置の表示面(ガラス板のような基板)に固定して使用するため、吸脱湿による寸法変化は、面内方向には起こりにくい。ポリマーフイルムの寸法変化は、大部分が厚み方向である。上記のように、面配向を高めたフイルムは、面に沿って分子が強固に配列しており、厚み方向への寸法変化を小さくできる。この結果、ポリマーフイルムの波長分散の変化が抑制される。
【0122】
含水延伸は、2対以上のニップロールを用いて実施することが好ましい。
延伸処理におけるニップロールの間隔は、縦横比L/W(延伸するポリマーフイルムの幅をWとニップロール間距離Lの比)が0.5≦L/W≦2となるように調整することが好ましい。0.7≦L/W≦1.8であることがさらに好ましく、0.9≦L/W≦1.6であることが最も好ましい。
ニップロールの数は、2対乃至8対がさらに好ましく、2対乃至6対が最も好ましい。2対のニップロールでの延伸は、一段延伸であり、3対以上のニップロールを用いる延伸は、多段延伸でなる。多段延伸が好ましい。上記のような低い縦横比の延伸では、一段で延伸しようとすると破断しやすい。そのため、多段で少しずつ延伸することが好ましい。
延伸時間は、1乃至30秒が好ましく、2乃至25秒がさらに好ましく、3乃至20秒が最も好ましい。
【0123】
延伸処理は、一般に均一温度下で実施されている。しかし、光学異方性を有するポリマーフイルムの延伸処理では、幅方向の光学特性を均一にするため、幅方向に温度差を設ける方が好ましい。
温度差は、1乃至20℃が好ましく、2乃至17℃がさらに好ましく、2乃至15℃が最も好ましい。ポリマーフイルムは、延伸により延伸方向に延ばされる分、幅方向に収縮し体積変化を緩和しようとする。幅方向の端部は、拘束が少なく延伸されやすい。これに対し、中央部は細くなろうとしてもその両側(両端)も細くなろうとするため、充分に細くなれず延伸が進行しにくい。この結果両端の配向が強くなり光学特性の分布が発生する。前述したように、縦横比が低いと、光学特性の分布が顕著に発生する。光学特性の分布を抑制するため、両端の延伸温度を高くし、配向を抑制すれば、配向斑を解消し均一な光学特性を達成できる。
温度分布は、幅方向に沿って設置した分割熱源を用いることで実現できる。具体的には、放射熱源(例、IRヒーター)を用い端部を加熱するか、複数の分割吹き出し口を設け、端部の吹き出し温度を高くすればよい。
【0124】
含水延伸では、延伸に引き続き、乾燥することが好ましい。
乾燥温度は、40乃至150℃が好ましく、50乃至130℃がさらに好ましく、60乃至120℃が最も好ましい。
乾燥時間は、10秒乃至20分が好ましく、20秒乃至10分がさらに好ましく、30秒乃至7分が最も好ましい。
乾燥後のポリマーフイルムの含水率は、2%未満であることが好ましい。
【0125】
延伸後のポリマーフイルムは、徐々に冷却することが好ましい。冷却は、ポリマーフイルムをロールで搬送しながら実施することが好ましい。
冷却におけるロール間隔は、5乃至50cmが好ましく、10乃至45cmがさらに好ましく、15乃至35cmが最も好ましい。ロール間隔は、2本の隣接ロール表面間の最短距離を意味する。
ロールの本数は、2乃至50本が好ましく、3乃至30本がさらに好ましく、4乃至15本が最も好ましい。
冷却速度は、10乃至100℃/分であることが好ましく、15乃至80℃/分がさらに好ましく、20乃至60℃/分が最も好ましい。冷却速度は、延伸温度から、延伸温度より40℃低い温度に達するまでの時間当たり温度変化を意味する。
【0126】
以上のように調整された条件で冷却することにより、従来の自然冷却中に発生していた光学ムラを解消できる。
ポリマーフイルムを高温で延伸した後、降温して、巻き取るまでの間に温度低下に伴う収縮が発生し、幅方向にも収縮しようとする。具体的には、ポリマーフイルムは、延伸出口から巻き取りまでの間に幅が縮む、この寸法変化は長手方向に沿った波打ちを発生し、その部分が光学特性ムラを引き起こす。光学特性ムラはそのままでは観測し難い程度であるが、偏光板に組み込むと顕在化する。上述の条件で、ポリマーフイルムを徐々に冷却すると、収縮による寸法変化を小さくできる。また、ポリマーフイルムを密に配置したロール間を通過させることで、ロールとフイルムの摩擦力により幅方向の収縮を小さくすることもできる。
【0127】
延伸前のポリマーフイルムは、厚みが50乃至300μmであることが好ましく、60乃至280μmであることがさらに好ましく、70乃至250μmであることが最も好ましい。
。延伸前のポリマーフイルムは、幅が60cm乃至3mであることが好ましく、70cm乃至2.5mであることがさらに好ましく、80cm乃至2mであることが最も好ましい。
延伸後のポリマーフイルムは、厚みが40乃至250μmであることが好ましく、50乃至230μmであることがさらに好ましく、60乃至200μmであることが最も好ましい。
延伸後のポリマーフイルムは、ヘイズ値が0乃至2%であることが好ましく、0乃至1.5%であることがさらに好ましく、0乃至1%であることが最も好ましい。
【0128】
位相差板に用いるポリマーフイルムは、さらに加熱処理を実施することが好ましい。
加熱温度は、50乃至150℃が好ましく、70乃至140℃がさらに好ましく、90乃至120℃が最も好ましい。
加熱時間は、0.5乃至200時間が好ましく、1乃至100時間がさらに好ましく、3乃至50時間が最も好ましい。
加熱処理は、ポリマーフイルムを加熱ゾーン内で搬送することにより実施できる。ポリマーフイルムは、ロールを用いて搬送することが好ましい。ロールでの加熱は、フイルム表面と内部とに温度差を生じやすい。温度差は、面状の低下(皺の発生)を起こす。温度差を解消するため、中空の巻心を用いてロール内部から加熱したり、ゆっくりロールを回転しながら加熱することが好ましい。
加熱処理により、ポリマーフイルムに構造緩和を起こし、その結果、ポリマーのガラス転移温度(Tg)近傍の温度に、吸熱ピークを出現させることが好ましい。吸熱ピークは、0.1乃至2.0J/gであることが好ましく、0.3乃至1.8J/gであることがさらに好ましく、0.5乃至1.6J/gであることが最も好ましい。ポリマーフイルムに構造緩和を起こし、吸熱ピークを大きくすると、温度変化に伴う光学異方性(レターデーション値)の変化を小さくすることができる。
【0129】
[光学異方性層]
位相差板に隣接して光学異方性層を設けてもよい。
光学異方性層は、液晶性分子から形成できる。液晶性分子は、棒状液晶性分子または円盤状液晶性分子であることが好ましい。
液晶性分子を配向させるため、位相差板に配向膜を設け、配向膜の上に液晶性分子を塗布してもよい。重合性基を有する液晶性分子を用いて、配向後に重合させ、配向状態を固定してもよい。
液晶性分子から形成する光学異方性層については、位相差板または光学補償シートに関する各種文献に記載がある。
【0130】
[直線偏光膜]
直線偏光膜には、ヨウ素系偏光膜、二色性染料を用いる染料系偏光膜やポリエン系偏光膜がある。ヨウ素系偏光膜および染料系偏光膜は、一般にポリビニルアルコールフイルムを用いて製造する。
ポリビニルアルコールフイルムをヨウ素含有水溶液に含浸した後、25乃至100℃で2乃至7倍以下延伸することで、ヨウ素系の直線偏光膜を製造できる。
延伸は、ポリビニルアルコールフイルムの幅方向に直角に行ってもよい。直交方向の延伸は、特開平7−333425号、同9−274108号、特開2000−141926号、同2000−147251、同2001−290026号の各公報に記載がある。
【0131】
ポリビニルアルコールフイルムを、45度方向に斜め延伸することもできる。
斜め方向の延伸は、テンターをフイルムの幅方向に取り付けて実施できる。左右のテンタークリップの長さを変えることで、斜め延伸が実現できる。具体的には、“く”字型に屈曲したテンターを用い、左右の周長差を利用して延伸する。
延伸フイルムにおける配向軸の傾斜角度は、テンター出口(保持解除点)幅Wと、実質的左右保持手段の行程差|L1−L2|の比率で制御、調整することができる。45゜に近い配向角を得るためには、0.9W<|L1−L2|<1.1Wであることが好ましく、0.97W<|L1−L2|<1.03Wであることがさらに好ましい。
一方端のテンター保持開始点から保持解除点までの長さ(L1)、他端のテンターの保持開始点から保持解除点までの長さ(L2)、そして、保持解除点間の幅(W)が、|L2−L1|>0.4Wの関係を満足することが好ましい。また、揮発分率が5%以上の状態を存在させて延伸したのち、収縮させながら揮発分率を低下させることも好ましい。
斜め延伸法については、米国特許出願公開第2002/8840A1号明細書の記載を参照できる。
【0132】
位相差板の遅相軸と直線偏光膜の透過軸の関係は、偏光板の用途に応じて決定する。偏光板を円偏光板として使用する場合は、λ/4板(位相差板)の遅相軸と直線偏光膜の透過軸とを、実質的に45゜となるように配置する。実質的に45度とは、45゜±5゜の範囲内を意味する。遅相軸と透過軸との角度は、45゜±4゜の範囲内が好ましく、45゜±3゜の範囲内がより好ましく、45゜±2゜の範囲内がさらに好ましく、45゜±1゜の範囲内が最も好ましい。
透過軸が長手方向に対して実質的に45゜であるロール状直線偏光膜を用いると、それをロール状位相差板とロール・ツー・ロールで貼り合わせるだけで、円偏光板を製造できる。
【0133】
直線偏光膜と透明保護膜との接着には、ポリビニルアルコール系樹脂やホウ素化合物水溶液を用いることが好ましく、ポリビニルアルコール系樹脂が特に好ましい。ポリビニルアルコールは、アセトアセチル基、スルホン酸基、カルボキシル基あるいはオキシアルキレン基で変性されていてもよい。
直線偏光膜と透明保護膜との間の接着剤層は、乾燥後の厚さが0.01乃至10μmであることがが好ましく、0.05乃至5μmであることがさらに好ましい。
【0134】
[画像表示装置]
偏光板(特に円偏光板)は、様々な画像表示装置に用いることができる。画像表示装置には、液晶表示装置、タッチパネルおよび有機EL素子が含まれる。タッチパネルは、特開平5−127822号公報に記載がある。有機EL素子は、特開平11−305729号、同11−307250号、特開2000−267097号の各公報に記載がある。
本発明に従う偏光板は、液晶表示装置に有利に用いられる。液晶表示装置は、反射型、半透過型および透過型に分類できる。本発明に従う偏光板は、反射型または半透過型の液晶表示装置に好ましく用いることができる。反射型の液晶表示装置が特に好ましい。
【0135】
反射型液晶表示装置は、下から順に、下基板、反射電極、下配向膜、液晶層、上配向膜、透明電極、上基板、そして偏光板の構成からなる。
下基板と反射電極が反射板を構成する。下配向膜〜上配向膜が液晶セルを構成する。上記偏光板を、本発明に従う構成にする。位相差板をλ/4板として、偏光板を円偏光板として機能させることが好ましい。
カラー表示の場合には、さらにカラーフィルター層を設ける。カラーフィルター層は、反射電極と下配向膜との間、または上配向膜と透明電極との間に設けることが好ましい。
反射電極の代わりに透明電極を用いて、別に反射板を取り付けてもよい。透明電極と組み合わせて用いる反射板としては、金属板が好ましい。反射板の表面が平滑であると、正反射成分のみが反射されて視野角が狭くなる場合がある。そのため、反射板の表面に凹凸構造(特許第275620号公報記載)を導入することが好ましい。反射板の表面が平坦である場合は(表面に凹凸構造を導入する代わりに)、偏光膜の片側(セル側あるいは外側)に光拡散フイルムを取り付けてもよい。
【0136】
液晶セルは、透過型液晶表示装置ではTN(Twisted Nematic )型、STN(Supper Twisted Nematic)型またはOCB(Optically Compensated Bend)型、反射型液晶装置ではTN型、HAN(Hybrid Aligned Nematic)型、VA(Vertically Allignment )型またはゲストホスト型、半透過型液晶表示装置ではTN型、VA型、ECB型(Electricaly Controlled Birefrigence)が好ましい。
TN型液晶セルのツイスト角は、40乃至100゜であることが好ましく、50乃至90゜であることがさらに好ましく、60乃至80゜であることが最も好ましい。液晶層の屈折率異方性(Δn)と液晶層の厚み(d)との積(Δnd)の値は、0.1乃至0.5μmであることが好ましく、0.2乃至0.4μmであることがさらに好ましい。
STN型液晶セルのツイスト角は、180乃至360゜であることが好ましく、220乃至270゜であることがさらに好ましい。液晶層の屈折率異方性(Δn)と液晶層の厚み(d)との積(Δnd)の値は、0.3乃至1.2μmであることが好ましく、0.5乃至1.0μmであることがさらに好ましい。
HAN型液晶セルは、片方の基板上では液晶が実質的に垂直に配向しており、他方の基板上のプレチルト角が0乃至45゜であることが好ましい。液晶層の屈折率異方性(Δn)と液晶層の厚み(d)との積(Δnd)の値は、0.1乃至1.0μmであることが好ましく、0.3乃至0.8μmであることがさらに好ましい。液晶を垂直配向させる側の基板は、反射板側の基板であってもよいし、透明電極側の基板であってもよい。
【0137】
VAモードの液晶セルでは、電圧無印加時に棒状液晶性分子が実質的に垂直に配向している。VAモードの液晶セルには、(1)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直に配向させ、電圧印加時に実質的に水平に配向させる狭義のVAモードの液晶セル(特開平2−176625および特公平7−69536号公報記載)に加えて、(2)視野角拡大のため、VAモードをマルチドメイン化した液晶セルが含まれる。具体的には、MVA(SID97、Digest of tech. Papers(予稿集)28(1997)845、SID99、Digest of tech. Papers(予稿集)30(1999)206及び特開平11−258605号公報記載)、SURVAIVAL(月刊ディスプレイ、第6巻、第3号(1999)14記載)、PVA(Asia Display98、Proc. of the 18th Inter. Display res. Conf.(予稿集)(1998)383記載)、Para−A(LCD/PDP International‘99で発表)、DDVA(SID98、Digest of tech. Papers(予稿集)29(1998)838記載)、EOC(SID98、Digest of tech. Papers(予稿集)29(1998)319記載)、PSHA(SID98、Digest of tech. Papers(予稿集)29(1998)1081記載)、RFFMH(Asia Display98、Proc. of the 18th Inter. Display res. Conf.(予稿集)(1998)375記載)、HMD(SID98、Digest of tech. Papers(予稿集)29(1998)702記載)が含まれる。その他に(3)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直配向させ、電圧印加時にねじれマルチドメイン配向させるモード(n−ASMモード)の液晶セル(IWD’98、Proc. of the 5th Inter. Display Workshop.(予稿集)(1998)143記載))も含まれる。
OCBモードでは棒状液晶性分子を液晶セルの上部と下部とで実質的に逆の方向に(対称的に)配向させる配向モードの液晶セルを用いたものである。この結果自己光学補償能を有する。OCBモードの液晶セルは、米国特許第4583825号、同5410422号の各明細書に記載されている。
【0138】
ECB型液晶セルはカラーフィルタを用いずに、液晶層の複屈折作用と一対の偏光板の偏光作用とを利用して光を着色するものである。即ち、液晶セルの両基板の電極間に印加される電圧に応じた液晶分子の配向状態によって液晶層の複屈折性が変化し、それに応じて他方の偏光板に入射する各波長光の偏光状態が変化するため、液晶セルの電極間への印加電圧を制御することによって上記着色光の色を変化させることができ、したがって、1つの画素で複数の色を表示することができる。
ゲストホスト(GH)反射型液晶セルは二色性色素を混合して黒色化した二色性色素をゲストとし液晶をホストとするいわゆる表示形式であり、相転移型(White−Taylor型)、二層型やλ/4型が知られている。
相転移型は、液晶と二色性色素との混合物にカイラル剤を添加し、コレステリック相と垂直配向との間でスイッチングを行う方式である。この方式は、一つの液晶層で白黒表示ができる。しかし、コントラスト比が低い、駆動電圧が高い、ヒステリシスがあって階調表示が困難であるとの問題がある。
二層型は、液晶と二色性色素との混合物の層を二層設ける方式である。この方式は、コントラスト比が高いとの特徴がある。ただし、液晶表示素子としては厚く、視差が生じるとの問題がある。
λ/4板を備えたゲストホスト反射型液晶表示素子については、特開平6−222350号、同6−222351号、同8−36174号、同10−221688号の各公報に記載がある。
タッチパネルや有機EL表示装置に円偏光板を用いることもできる。タッチパネルは、特開平5−127822号、特開2002−048913号の各公報に記載がある。有機EL表示装置は、特開平11−305729号、同11−307250号、特開2000−267097号の各公報に記載がある。
【0139】
【実施例】
(透湿量の測定)
外径82mm、高さ15mmのステンレス製の円筒であり、一方に直径6cmの穴のあいた容器を用意する。
乾燥剤(無水塩化カルシウム)を20g坪量し、容器に入れる。
容器の穴の周囲に(穴を塞がないように)両面テープを貼り付け、この上に直径82mmのサンプルフイルムを貼り付ける。
サンプルフイルムの外周5mmにマイラー粘着テープを巻き付け、ステンレス容器とくっつける。
これを精密天秤を用いて坪量する。この値をW(0)(g)とする。ここまでの操作は、全て温度25℃、相対湿度10%で実施する。
これを温度25℃、相対湿度60%の環境に移し放置する。
24時間後に、温度25℃、相対湿度60%の環境下で坪量する。この質量をW(1)gとする。下記式から透湿量を求める。
透湿量(g/m2 ・日)=354×(W(1)−W(0))
【0140】
(粘着力の測定)
透明保護膜または位相差板に粘着剤を塗布、乾燥し、25mm幅×500mmの大きさに切り出す。そのうち25mm幅×250mmの部分を、表面を洗浄した平坦なステンレス板に圧着さる。24時間後、温度23℃、相対湿度55%の環境下で、ステンレス板の粘着されていない片末端を引っ張り試験機(STROGRAPH−R2、東洋精機(株)製)の上側クランプにはさみ、位相差板の粘着されていない片末端を下側クランプにはさんで、300mm/分の速度で引っ張りはがしたときの荷重を測定する。
【0141】
(硬度の測定)
硬度(ユニバーサル硬度)は微小表面硬度計(フィッシャースコープH100VP−HCU、フィッシャー・インスツルメンツ社製)を用いて、ダイヤモンド製の四角錐圧子(先端対面角度;136°)を使用し、押し込み深さが下地に影響を与えない範囲で、適当な試験荷重下での押し込み深さを測定し、除荷重時の荷重と変位の変化から硬度を求める。
【0142】
(レターデーションの測定)
位相差板のレターデーション値およびレターデーション値の波長分散性は、自動複屈折計(KOBRA−21ADH/PR:王子計測器(株)製)を用いて、サンプルフイルム表面に対し垂直方向から測定する。
偏光板は、ガラス板(コーニング7137)に貼り付けて、温度25℃、相対湿度60%の環境下でレターデーションを測定し、その後、温度25℃、相対湿度10%の環境で1ヶ月間保存し、その環境下で再度レターデーション測定を行う。
【0143】
[実施例1]
第2透明保護膜/防湿層/直線偏光膜/第1透明保護膜/第2粘着剤層/位相差板/粘着剤層からなる偏光板の作製
【0144】
(第2透明保護膜)
市販のセルロースアセテートフイルム(フジタック、富士写真フイルム(株)製)を第2透明保護膜として用いた。
イソプロパノール/プロピレングリコール/水の混合液(混合体積比:70/15/15)に水酸化カリウムを1.5規定の濃度で溶解し、ケン化液を調製した。
第2透明保護膜の片面に、60℃においてケン化液を#3のバーで塗布し、30秒後に水洗し、60℃で乾燥した。
【0145】
(防湿層)
ケン化度99.5モル%のポリビニルアルコールを加温した水に溶解し、7.0質量%の水溶液を得た。水溶液を60℃に保持したまま、水膨潤性雲母の水溶液(コープケミカル製)を加えて分散し、ポリビニルアルコールに対して雲母が20質量%含まれる防湿層塗布液を調製した。
ケン化処理した第2透明保護膜面に、防湿層塗布液を塗布し、105℃で10分間乾燥させた後、120℃で5分間熱処理した。乾燥後の防湿層の膜厚は5μmであった。
【0146】
(直線偏光膜)
平均重合度4000、ケン化度99.8モル%のポリビニルアルコールを水に溶解し、4.0質量%水溶液を得た。水溶液をバンド流延し、乾燥し、バンドから剥ぎ取り、ポリビニルアルコールフイルムを得た。
ヨウ素2.0g/リットルおよびヨウ化カリウム4.0g/リットルの水溶液に、ポリビニルアルコールフイルムを25℃にて240秒浸漬し、さらにホウ酸10g/リットルの水溶液に25℃にて60秒浸漬した後、水洗槽で20℃で、10秒間水洗した。
ヨウ素含浸ポリビニルアルコールフイルムを未乾燥のまま、80℃において5.3倍に延伸した。
延伸後、80℃で5分間乾燥して直線偏光膜を得た。直線偏光膜の幅は1290mm、厚みは20μmであった。
直線偏光膜は、ポリビニルアルコール(PVA−117H、(株)クラレ製)の3質量%水溶液を接着剤として、防湿層に接着した。
【0147】
(第1透明保護膜)
市販のセルロースアセテートフイルム(フジタック、富士写真フイルム(株)製)を第1透明保護膜として用いた。
第1透明保護膜の片面を、第2透明保護膜と同様にケン化処理した。
第1透明保護膜のケン化処理面を、ポリビニルアルコール(PVA−117H、(株)クラレ製)の3質量%水溶液を接着剤として、直線偏光膜に接着した。
【0148】
(第2粘着剤層)
ブチルアクリル酸、メタクリル酸およびメタクリル酸メチルの共重合体を酢酸エチルに溶解した。溶液に、トリメチロールプロパントリレンジアクリレート0.7質量部を添加し、アクリル共重合体系粘着剤液を調製した。粘着剤液をポリエステルからセパレータフイルム上に塗工し、80℃で2週間熱処理して厚さ25μmの粘着剤層を形成した。
粘着剤層を使用する際には、粘着剤面の一方を位相差板に貼り合わせた後、セパレータを剥がして透明保護フィルムに貼り合わせた。
【0149】
(位相差板)
下記の組成からなるセルロースアセテート溶液を調製した。
【0150】
【0151】
【化12】
【0152】
得られたドープを、製膜用バンド上に流延し、80℃の乾燥風で乾燥させた。
乾燥後の溶剤残留量は30質量%であった。セルロースアセテートフイルムをバンドから剥離し、100℃で10分間乾燥した後、130℃で20分間乾燥し、幅1340mmでロール状のセルロースアセテートフィルムを得た。溶剤残留量は0.1質量%であり、膜厚は130μmであった。
ロール状のセルロースアセテートフィルムの両端をスリットし、920mm幅とし、高湿工程、延伸工程、乾燥工程からなる延伸機の送り出し部に取り付けた。温度85℃、相対湿度95%に設定した高湿工程にフィルムを送り出し、5分間吸湿させた。一部サンプルを切り出し含水率を測定したところ4.6質量%であった。
湿熱処理したセルロースアセテートフィルムを、温度85℃、相対湿度95%の雰囲気にした延伸工程に送り延伸した。延伸はニップロールを用いてフィルム搬送方向に延伸した。延伸倍率は43.5%とした。このときの延伸ロール間距離は740mmとし、延伸速度は5m/分とした。
延伸後、乾燥工程に搬送し、120℃で乾燥して位相差板を得た。含水率を測定したところ、1.5質量%であった。また膜厚は102μmであった。
位相差板を温度25℃、相対湿度60%に調湿後、そのまま(スリットせず全幅)で第2粘着剤層の上に貼り付けた。
直線偏光膜と位相差板とは、直線偏光膜の吸収軸と位相差板の遅相軸(延伸軸)とが45゜になるように配置した。
【0153】
(粘着剤層)
第2粘着剤層と同じ粘着剤を使用して、第2粘着剤層と同様に粘着剤層を形成した。
このようにして、偏光板を作製した。
粘着剤層の粘着力と硬度は、第1表に示す。
【0154】
(偏光板の評価)
偏光板のレターデーションを測定した。得られた結果は、第1表に示す。
【0155】
[実施例2]
第2透明保護膜/直線偏光膜/第1透明保護膜/第2粘着剤層/防湿層/位相差板/粘着剤層からなる偏光板の作製
【0156】
(第2透明保護膜)
実施例1と同じ第2透明保護膜を用いた。
実施例1と同様に、第2透明保護膜の片面をケン化処理した。
【0157】
(直線偏光膜)
実施例1と同様に直線偏光膜を作製した。
直線偏光膜を、ポリビニルアルコール(PVA−117H、(株)クラレ製)の3質量%水溶液を接着剤として、第2透明保護膜のケン化処理面に接着した。
【0158】
(第1透明保護膜)
実施例1と同じ第1透明保護膜を用いた。
実施例1と同様に、第1透明保護膜を直線偏光膜に接着した。
【0159】
(第2粘着剤層)
第1透明保護膜の上に、実施例1と同様に第2粘着剤層を設けた。
【0160】
(防湿層付き位相差板)
実施例1と同様に位相差板を作製した。
位相差板の片面を、第2透明保護膜と同様にケン化処理した。
位相差板のケン化処理面に、実施例1で調製した防湿層塗布液を塗布し、100℃で15分間乾燥させた。乾燥後の防湿層の膜厚は5μmであった。
防湿層付き位相差板を温度25℃、相対湿度60%に調湿後、そのまま(スリットせず全幅)で、防湿層側を第2粘着剤層の上に貼り付けた。
直線偏光膜と位相差板とは、直線偏光膜の吸収軸と位相差板の遅相軸(延伸軸)とが45゜になるように配置した。
【0161】
(粘着剤層)
ブチルアクリル酸、メタクリル酸およびメタクリル酸メチルの共重合体と、ブチルアクリル酸およびメタクリル酸メチルの共重合体とを、7:3の割合で混合して使用した以外は、実施例1と同様にして、粘着剤層を形成した。
このようにして、偏光板を作製した。
粘着剤層の粘着力と硬度は、第1表に示す。
【0162】
(偏光板の評価)
偏光板のレターデーションを測定した。得られた結果は、第1表に示す。
【0163】
[実施例3]
第2透明保護膜/直線偏光膜/第1透明保護膜/第2粘着剤層/防湿層/位相差板/粘着剤層からなる偏光板の作製
【0164】
第2透明保護膜/直線偏光膜/第1透明保護膜/第2粘着剤層/防湿層/位相差板については、実施例2と同様に作製した。
【0165】
(粘着剤層)
位相差板の上に、実施例1と同様に粘着剤層を設けた。
このようにして、偏光板を作製した。
粘着剤層の粘着力と硬度は、第1表に示す。
【0166】
(偏光板の評価)
偏光板のレターデーションを測定した。得られた結果は、第1表に示す。
【0167】
[実施例4]
第2透明保護膜/直線偏光膜/第1透明保護膜/第2粘着剤層/防湿層/位相差板/粘着剤層からなる偏光板の作製
【0168】
第2透明保護膜/直線偏光膜/第1透明保護膜/第2粘着剤層/防湿層/位相差板については、実施例2と同様に作製した。
【0169】
(粘着剤層)
トリメチロールプロパントリレンジアクリレートの添加量を、0.5質量部に変更する以外は、実施例1と同様にして、粘着剤層を設けた。
このようにして、偏光板を作製した。
粘着剤層の粘着力と硬度は、第1表に示す。
【0170】
(偏光板の評価)
偏光板のレターデーションを測定した。得られた結果は、第1表に示す。
【0171】
[実施例5]
第2透明保護膜/直線偏光膜/第1透明保護膜/第2粘着剤層/防湿層/位相差板/粘着剤層からなる偏光板の作製
【0172】
第2透明保護膜/直線偏光膜/第1透明保護膜/第2粘着剤層/防湿層/位相差板については、実施例2と同様に作製した。
【0173】
(粘着剤層)
トリメチロールプロパントリレンジアクリレートの添加量を、0.3質量部に変更する以外は、実施例1と同様にして、粘着剤層を設けた。
このようにして、偏光板を作製した。
粘着剤層の粘着力と硬度は、第1表に示す。
【0174】
(偏光板の評価)
偏光板のレターデーションを測定した。得られた結果は、第1表に示す。
【0175】
[実施例6]
第2透明保護膜/直線偏光膜/防湿層/第1透明保護膜/第2粘着剤層/位相差板/粘着剤層からなる偏光板の作製
【0176】
(第2透明保護膜)
市販のセルロースアセテートフイルム(フジタック、富士写真フイルム(株)製)を第2透明保護膜として用いた。
実施例1と同様に、第2透明保護膜の片面をケン化処理した。
【0177】
(直線偏光膜)
実施例1と同様に直線偏光膜を作製した。
直線偏光膜を、ポリビニルアルコール(PVA−117H、(株)クラレ製)の3質量%水溶液を接着剤として、第2透明保護膜のケン化処理面に接着した。
【0178】
(防湿層付き第1透明保護膜)
市販のセルロースアセテートフイルム(フジタック、富士写真フイルム(株)製)を第1透明保護膜として用いた。
第1透明保護膜の片面を、第2透明保護膜と同様にケン化処理した。
第1透明保護膜のケン化処理面に、実施例1で調製した防湿層塗布液を塗布し、100℃で15分間乾燥させた。乾燥後の防湿層の膜厚は5μmであった。
防湿層付き第1透明保護膜の防湿層側を、ポリビニルアルコール(PVA−117H、(株)クラレ製)の3質量%水溶液を接着剤として、直線偏光膜に接着した。
【0179】
(第2粘着剤層)
第1透明保護膜の上に、実施例1と同様に第2粘着剤層を設けた。
【0180】
(位相差板)
実施例1と同様に位相差板を作製した。
位相差板を温度25℃、相対湿度60%に調湿後、そのまま(スリットせず全幅)で第2粘着剤層の上に貼り付けた。
直線偏光膜と位相差板とは、直線偏光膜の吸収軸と位相差板の遅相軸(延伸軸)とが45゜になるように配置した。
【0181】
(粘着剤層)
位相差板の上に、実施例1と同様に粘着剤層を設けた。
このようにして、偏光板を作製した。
粘着剤層の粘着力と硬度は、第1表に示す。
【0182】
(偏光板の評価)
偏光板のレターデーションを測定した。得られた結果は、第1表に示す。
【0183】
[実施例7]
第2透明保護膜/直線偏光膜/第1透明保護膜/防湿層/第2粘着剤層/位相差板/粘着剤層からなる偏光板の作製
【0184】
(第2透明保護膜)
市販のセルロースアセテートフイルム(フジタック、富士写真フイルム(株)製)を第2透明保護膜として用いた。
実施例1と同様に、第2透明保護膜の片面をケン化処理した。
【0185】
(直線偏光膜)
実施例1と同様に直線偏光膜を作製した。
直線偏光膜を、ポリビニルアルコール(PVA−117H、(株)クラレ製)の3質量%水溶液を接着剤として、第2透明保護膜のケン化処理面に接着した。
【0186】
(防湿層付き第1透明保護膜)
市販のセルロースアセテートフイルム(フジタック、富士写真フイルム(株)製)を第1透明保護膜として用いた。
第1透明保護膜の両面を、第2透明保護膜と同様にケン化処理した。
第1透明保護膜のケン化処理面に、実施例1で調製した防湿層塗布液を塗布し、100℃で15分間乾燥させた。乾燥後の防湿層の膜厚は5μmであった。
防湿層付き第1透明保護膜の第1透明保護膜側を、ポリビニルアルコール(PVA−117H、(株)クラレ製)の3質量%水溶液を接着剤として、直線偏光膜に接着した。
【0187】
(第2粘着剤層)
防湿層の上に、実施例1と同様に第2粘着剤層を設けた。
【0188】
(位相差板)
実施例1と同様に位相差板を作製した。
位相差板を温度25℃、相対湿度60%に調湿後、そのまま(スリットせず全幅)で第2粘着剤層の上に貼り付けた。
直線偏光膜と位相差板とは、直線偏光膜の吸収軸と位相差板の遅相軸(延伸軸)とが45゜になるように配置した。
【0189】
(粘着剤層)
位相差板の上に、実施例1と同様に粘着剤層を設けた。
このようにして、偏光板を作製した。
粘着剤層の粘着力と硬度は、第1表に示す。
【0190】
(偏光板の評価)
偏光板のレターデーションを測定した。得られた結果は、第1表に示す。
【0191】
[実施例8]
第2透明保護膜/防湿層/直線偏光膜/第1透明保護膜兼位相差板/粘着剤層からなる偏光板の作製
【0192】
第2透明保護膜/防湿層/直線偏光膜については、実施例1と同様に作製した。
【0193】
(第1透明保護膜兼位相差板)
実施例1と同様に位相差板を作製して、第1透明保護膜兼位相差板として用いた。
位相差板の片面を、第2透明保護膜と同様にケン化処理した。
位相差板を、温度25℃、相対湿度60%に調湿後、そのまま(スリットせず全幅)で、位相差板のケン化処理面を、ポリビニルアルコール(PVA−117H、(株)クラレ製)の3質量%水溶液を接着剤として、直線偏光膜に接着した。
直線偏光膜と位相差板とは、直線偏光膜の吸収軸と位相差板の遅相軸(延伸軸)とが45゜になるように配置した。
【0194】
(粘着剤層)
位相差板の上に、実施例1と同様に粘着剤層を設けた。
このようにして、偏光板を作製した。
粘着剤層の粘着力と硬度は、第1表に示す。
【0195】
(偏光板の評価)
偏光板のレターデーションを測定した。得られた結果は、第1表に示す。
【0196】
[実施例9]
第2透明保護膜/直線偏光膜/防湿層/第1透明保護膜兼位相差板/粘着剤層からなる偏光板の作製
【0197】
(第2透明保護膜)
市販のセルロースアセテートフイルム(フジタック、富士写真フイルム(株)製)を第2透明保護膜として用いた。
実施例1と同様に、第2透明保護膜の片面をケン化処理した。
【0198】
(直線偏光膜)
実施例1と同様に直線偏光膜を作製した。
直線偏光膜を、ポリビニルアルコール(PVA−117H、(株)クラレ製)の3質量%水溶液を接着剤として、第2透明保護膜のケン化処理面に接着した。
【0199】
(防湿層付き第1透明保護膜兼位相差板)
実施例1と同様に位相差板を作製して、第1透明保護膜兼位相差板として用いた。
位相差板の両面を、第2透明保護膜と同様にケン化処理した。
位相差板の片面に、実施例1で調製した防湿層塗布液を塗布し、100℃で15分間乾燥させた。乾燥後の防湿層の膜厚は5μmであった。
防湿層付き位相差板を、温度25℃、相対湿度60%に調湿後、そのまま(スリットせず全幅)で、位相差板側を、ポリビニルアルコール(PVA−117H、(株)クラレ製)の3質量%水溶液を接着剤として、直線偏光膜に接着した。
直線偏光膜と位相差板とは、直線偏光膜の吸収軸と位相差板の遅相軸(延伸軸)とが45゜になるように配置した。
【0200】
(粘着剤層)
位相差板の上に、実施例1と同様に粘着剤層を設けた。
このようにして、偏光板を作製した。
粘着剤層の粘着力と硬度は、第1表に示す。
【0201】
(偏光板の評価)
偏光板のレターデーションを測定した。得られた結果は、第1表に示す。
【0202】
[実施例10]
第2透明保護膜/直線偏光膜/第1透明保護膜/第2粘着剤層/防湿層/位相差板/防湿層/粘着剤層からなる偏光板の作製
【0203】
第2透明保護膜/直線偏光膜/第1透明保護膜/第2粘着剤層については、実施例2と同様に作製した。
【0204】
(防湿層付き位相差板)
イソプロパノール/プロピレングリコール/水の混合液(混合体積比:70/15/15)に水酸化カリウムを1.5規定の濃度で溶解し、ケン化液を調製した。
ケン化液を60℃の浴槽中に入れ、実施例1で作製した位相差板を30秒間浸漬した。位相差板をさらに水槽中に入れて水洗して取り出した。60℃で乾燥して、位相差板の両面をケン化した。
位相差板の片面に、実施例1で調製した防湿層塗布液を塗布し、100℃で10分間乾燥させた。さらに、位相差板の他方の面に、防湿層塗布液を塗布し、100℃で50分間乾燥させた。乾燥後の防湿層の膜厚は、いずれも5μmであった。
防湿層付き位相差板を温度25℃、相対湿度60%に調湿後、そのまま(スリットせず全幅)で第2粘着剤層の上に貼り付けた。
直線偏光膜と位相差板とは、直線偏光膜の吸収軸と位相差板の遅相軸(延伸軸)とが45゜になるように配置した。
【0205】
(粘着剤層)
位相差板の上に、実施例1と同様に粘着剤層を設けた。
このようにして、偏光板を作製した。
粘着剤層の粘着力と硬度は、第1表に示す。
【0206】
(偏光板の評価)
偏光板のレターデーションを測定した。得られた結果は、第1表に示す。
【0207】
[実施例11]
防湿層/第2透明保護膜/直線偏光膜/第1透明保護膜/第2粘着剤層/位相差板/粘着剤層からなる偏光板の作製
【0208】
(防湿層付き第2透明保護膜)
市販のセルロースアセテートフイルム(フジタック、富士写真フイルム(株)製)を第2透明保護膜として用いた。
第2透明保護膜の両面を、実施例1と同様にケン化処理した。
第2透明保護膜の片面に、実施例1で調製した防湿層塗布液を塗布し、100℃で15分間乾燥させた。乾燥後の防湿層の膜厚は5μmであった。
【0209】
(直線偏光膜)
実施例1と同様に直線偏光膜を作製した。
直線偏光膜を、ポリビニルアルコール(PVA−117H、(株)クラレ製)の3質量%水溶液を接着剤として、第2透明保護膜に接着した。
【0210】
(第1透明保護膜)
市販のセルロースアセテートフイルム(フジタック、富士写真フイルム(株)製)を第1透明保護膜として用いた。
第1透明保護膜の片面を、第2透明保護膜と同様にケン化処理した。
第1透明保護膜のケン化処理面を、ポリビニルアルコール(PVA−117H、(株)クラレ製)の3質量%水溶液を接着剤として、直線偏光膜に接着した。
【0211】
(第2粘着剤層)
第1透明保護膜の上に、実施例1と同様に第2粘着剤層を設けた。
【0212】
(位相差板)
実施例1と同様に位相差板を作製した。
位相差板を温度25℃、相対湿度60%に調湿後、そのまま(スリットせず全幅)で第2粘着剤層の上に貼り付けた。
直線偏光膜と位相差板とは、直線偏光膜の吸収軸と位相差板の遅相軸(延伸軸)とが45゜になるように配置した。
【0213】
(粘着剤層)
位相差板の上に、実施例1と同様に粘着剤層を設けた。
このようにして、偏光板を作製した。
粘着剤層の粘着力と硬度は、第1表に示す。
【0214】
(偏光板の評価)
偏光板のレターデーションを測定した。得られた結果は、第1表に示す。
【0215】
[実施例12]
第2透明保護膜/防湿層/直線偏光膜/第1透明保護膜兼位相差板/粘着剤層からなる偏光板の作製
【0216】
第2透明保護膜/防湿層/直線偏光膜については、実施例1と同様に作製した。
【0217】
(第1透明保護膜兼位相差板)
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、セルロースアセテート溶液を調製した。
【0218】
【0219】
別のミキシングタンクに、下記のレターデーション上昇剤(2)16質量部、メチレンクロライド80質量部およびメタノール20質量部を投入し、加熱しながら攪拌して、レターデーション上昇剤溶液を調製した。
【0220】
【化13】
【0221】
セルロースアセテート溶液477質量部にレターデーション上昇剤溶液52質量部を混合し、攪拌してドープを調製した。レターデーション上昇剤の添加量は、セルロースアセテート100質量部に対して、6.7質量部であった。
得られたドープを、製膜用バンド上に流延し、80℃の乾燥風で乾燥させた。
乾燥後の溶剤残留量は27質量%であった。セルロースアセテートフイルムをバンドから剥離し、100℃で10分間乾燥した後、120℃で20分間乾燥し、幅1340mmでロール状のセルロースアセテートフイルムからなる第1透明保護膜兼位相差板を得た。溶剤残留量は0.3質量%であり、膜厚は133μmであった。
【0222】
位相差板の片面を、第2透明保護膜と同様にケン化処理した。
位相差板を、温度25℃、相対湿度60%に調湿後、そのまま(スリットせず全幅)で、位相差板のケン化処理面を、ポリビニルアルコール(PVA−117H、(株)クラレ製)の3質量%水溶液を接着剤として、直線偏光膜に接着した。
直線偏光膜と位相差板とは、直線偏光膜の吸収軸と位相差板の遅相軸(延伸軸)とが45゜になるように配置した。
【0223】
(粘着剤層)
第1透明保護膜兼位相差板の上に、実施例1と同様に粘着剤層を設けた。
このようにして、偏光板を作製した。
粘着剤層の粘着力と硬度は、第1表に示す。
【0224】
(偏光板の評価)
偏光板のレターデーションを測定した。得られた結果は、第1表に示す。
【0225】
[比較例1]
第2透明保護膜/直線偏光膜/第1透明保護膜/第2粘着剤層/位相差板/粘着剤層からなる偏光板の作製
【0226】
第2透明保護膜/直線偏光膜/第1透明保護膜については、実施例2と同様に作製した。
【0227】
(第2粘着剤層)
トリメチロールプロパントリレンジアクリレートの添加量を、0.05質量部に変更する以外は、実施例1と同様にして、粘着剤層を設けた。
【0228】
(位相差板)
位相差板を温度25℃、相対湿度60%に調湿後、そのまま(スリットせず全幅)で第2粘着剤層の上に貼り付けた。
直線偏光膜と位相差板とは、直線偏光膜の吸収軸と位相差板の遅相軸(延伸軸)とが45゜になるように配置した。
【0229】
(粘着剤層)
第2粘着剤層と同じ粘着剤を使用して、第2粘着剤層と同様に粘着剤層を形成した。
このようにして、偏光板を作製した。
粘着剤層の粘着力と硬度は、第1表に示す。
【0230】
(偏光板の評価)
偏光板のレターデーションを測定した。得られた結果は、第1表に示す。
【0231】
【表1】
(註)
粘着力*:N/25mm幅
【0232】
[実施例13]
(画像表示装置の作製)
(1)TN型反射型液晶表示装置の作製
ITO透明電極を設けたガラス基板と、微細な凹凸が形成されたアルミニウム反射電極を設けたガラス基板とを用意した。二枚のガラス基板の電極側に、それぞれポリイミド配向膜(SE−7992、日産化学(株)製)を形成し、ラビング処理を行った。3.4μmのスペーサーを介して、二枚の基板を配向膜が向かい合うように重ねた。二つの配向膜のラビング方向は、110゜の角度で交差するように、基板の向きを調節した。基板の間隙に、液晶(MLC−6252、メルク社製)を注入し、液晶層を形成した。このようにして、ツイスト角が70゜、Δndの値が269nmのTN型液晶セル(対角12インチ)を作製した。
ITO透明電極を設けたガラス基板の側に、実施例1で作製した偏光板を温度25℃、相対湿度60%で調湿後、粘着剤層側から貼り付けた。
作製した反射型液晶表示装置に、1kHzの矩形波電圧を印加した。白表示1.5V、黒表示4.5Vとして目視で評価を行ったところ、白表示においても、黒表示においても、色味がなく、ニュートラルグレイが表示されていることが確認できた。
次に、測定機(EZcontrast160D、Eldim社製)を用いて反射輝度のコントラスト比を測定し、正面からのコントラスト比、コントラスト比3となる視野角を測定した。液晶表示装置作製直後も、自然環境変化をシミュレートした温度25℃、相対湿度10%および相対湿度80%の1週間間隔でのサイクル条件で6ヶ月経時後も、正面からのコントラスト比が25であり、コントラスト比3となる視野角は、上下130゜、左右130゜であった。
【0233】
(2)STN型反射型液晶表示装置の作製
ITO透明電極を設けたガラス板と、平坦なアルミニウム反射電極を設けたガラス基板とを用意した。二枚のガラス基板の電極側に、それぞれポリイミド配向膜(SE−150、日産化学(株)製)を形成し、ラビング処理を行った。6.0μmのスペーサを介して二枚の基板を配向膜が向かい合うように重ねた。二つの配向膜のラビング方向は、60゜の角度で交差するように、基板の向きを調節した。基板の隙間に、液晶(ZLI−2977、メルク社製)を注入し、液晶層を形成した。このようにしてツイスト角が240゜、Δndの値が791nmのSTN型液晶セル(対角12インチ)を作製した。
ITO透明電極を設けたガラス基板の側に、内部拡散シート(IDS、大日本印刷(株)製)と、実施例1で作製した偏光板を温度25℃、相対湿度60%で調湿後、粘着剤層が最も内側となるように貼り付けた。
作製した反射型液晶表示装置に、55Hzの矩形波電圧を印加した。黒表示2.0V、白表示2.5Vとして目視で評価を行ったところ、白表示においても黒表示においても、色味がなく、ニュートラルグレイが表示されていることが確認できた。
次に、測定機(EZcontrast160D、Eldim社製)を用いて反射輝度のコントラスト比を測定し、正面からのコントラスト比、コントラスト比3となる視野角を測定した。液晶表示装置作製直後も、自然環境変化をシミュレートした温度25℃、相対湿度10%および相対湿度80%の1週間間隔でのサイクル条件で6ヶ月経時後も、正面からのコントラスト比が25であり、コントラスト比3となる視野角は、上下130゜、左右130゜であった。
【0234】
(3)VA型液晶表示装置
VA型液晶表示装置は下から順に、下側ガラス基板、絶縁膜、薄膜トランジスタ、反射板、下側配向膜、液晶、上側配向膜、ITO透明電極、オーバーコート層、カラーフィルター、上側ガラス基板からなる。
ITO透明電極を設けたガラス基板と、微細な凹凸が形成されたアルミニウム反射電極を設けたガラス基板とを用意した。上側配向膜、下側配向膜にはそれぞれ垂直配向膜(RN783、日産化学(株)製)を用意し、ラビング処理を行った。1.7μmのスペーサーを介して、二枚の基板を配向膜が向かい合うように重ねた。二つの配向膜のラビング方向は、110゜の角度で交差するように、基板の向きを調節した。基板の間隙に、Δn=0.08、Δε=−4の液晶(メルク社製)を真空注入法により注入し、液晶層を形成した。このようにして、ツイスト角が45゜、Δndの値が135nmのVA型液晶セルを作製した。
ITO透明電極を設けたガラス基板の側に、実施例1で作製した偏光板を、粘着剤層側から積層した。
液晶表示装置作製直後も、自然環境変化をシミュレートした温度25℃、相対湿度10%および相対湿度80%の1週間間隔でのサイクル条件で6ヶ月経時後も、正面からのコントラスト比が25であり、コントラスト比3となる視野角は、いずれも上下120゜以上、左右120゜以上であった。
【0235】
(4)ECB型液晶表示装置
実施例1で作製した偏光板を用いた以外は、特開平11−316378号公報の実施例6と同様に、ECB型液晶表示素子を作製した。
液晶表示装置作製直後も、自然環境変化をシミュレートした温度25℃、相対湿度10%および相対湿度80%の1週間間隔でのサイクル条件で6ヶ月経時後も、正面からのコントラスト比が25であり、コントラスト比3となる視野角は、いずれも上下120゜以上、左右120゜以上であった。
【0236】
(5)有機EL表示装置
実施例1で作製した偏光板を用いた以外は、特開2000−267097号公報と同様に、有機EL表示装置を作製した。
目視にてその色味の評価を実施したところ、自然環境変化をシミュレートした温度25℃、相対湿度10%および相対湿度80%の1週間間隔でのサイクル条件で6ヶ月経時後も特に黒表示時における着色が少なく、それによりコントラストが高く、視認性に優れることが確認できた。
【0237】
(6)半透過型液晶表示装置への実装
実施例1で作製した偏光板を用いた以外は、特開2001−13495号公報記載の実施例における半透過型液晶表示装置を作製した。
また、実施例1で作製した偏光板を用いた以外は、特開2001−131681号公報記載の実施例1における半透過型液晶表示装置を作製した。
さらに、実施例1で作製した偏光板を用いた以外は、特開2002−31717号公報記載の実施例1における半透過型液晶表示装置を作製した。
上記液晶表示装置は、いずれも、作製直後でも、自然環境変化をシュミレートした温度25℃、相対湿度10%および相対湿度80%の1週間環間隔でのサイクル条件で6ヶ月経時後も、正面からのコントラスト比が25であり、コントラスト比が3となる試薬は、いずれも上下120゜以上、左右120゜以上であった。
【0238】
さらにまた、サイバーショット(ソニー(株)製)の液晶表示部の液晶セルの上側部分の偏光板、λ/2板、λ/4板を剥がし、ガラス基板側に実施例1で作製した偏光板を貼り付けた。
液晶表示装置作製直後も、自然環境変化をシミュレートした温度25℃、相対湿度10%および相対湿度80%の1週間間隔でのサイクル条件で6ヶ月経時後も、正面からのコントラスト比が25であり、コントラスト比3となる視野角は、いずれも上下120゜以上、左右120゜以上であった。
【0239】
(7)反射型液晶表示装置への実装
タッチパネル付き反射型液晶表示装置(シャープ社製、ザウルス)でタッチパネル/偏光板/位相差板/液晶セルの偏光板と光学複合フイルム部分を剥がして、実施例1で作製した偏光板を貼り付けた。
液晶表示装置作製直後も、自然環境変化をシミュレートした温度25℃、相対湿度10%および相対湿度80%の1週間間隔でのサイクル条件で6ヶ月経時後も、正面からのコントラスト比が25であり、コントラスト比3となる視野角は、いずれも上下120゜以上、左右120゜以上であった。
Claims (2)
- 粘着剤層、光学異方性を有する位相差板、第1透明保護膜、直線偏光膜および第2透明保護膜をこの順序で有するか、あるいは、粘着剤層、第1透明保護膜となる光学異方性を有する位相差板、直線偏光膜および第2透明保護膜をこの順序で有する偏光板であって、偏光板から粘着剤層と位相差板とを除いた構造全体の透湿量が5g/m2 ・日未満であり、粘着剤層が硬化後に20N/25mm幅より大きい粘着力と2N/mm2 より高い硬度とを示すことを特徴とする偏光板。
- 表示面に偏光板が取り付けられている画像表示装置において、偏光板が表示面側から、粘着剤層、光学異方性を有する位相差板、第1透明保護膜、直線偏光膜および第2透明保護膜をこの順序で有するか、あるいは、粘着剤層、第1透明保護膜となる光学異方性を有する位相差板、直線偏光膜および第2透明保護膜をこの順序で有し、偏光板から粘着剤層と位相差板とを除いた構造全体の透湿量が5g/m2 ・日未満であり、粘着剤層が20N/25mm幅より大きい粘着力と2N/mm2 より高い硬度とで表示面と位相差板とを接着していることを特徴とする画像表示装置。
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