JP4248779B2 - 液晶表示装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、セルロースアセテートフイルムを用いた光学補償シートに関する。
【0002】
【従来の技術】
液晶表示装置は、偏光板と液晶セルから構成されている。
現在主流であるTNモードTFT液晶表示装置においては、特開平8−50206号公報に記載のように光学補償フイルムを偏光板と液晶セルの間に挿入し、表示品位の高い液晶表示装置が実現されている。しかし、この方法によると液晶表示装置自体が厚くなるなどの問題点があった。
特開平1−68940号公報には、偏光フイルムの片面に位相差板、他方の面に保護フイルムを有する楕円偏光板を用いることで、液晶表示装置を厚くすることなく、正面コントラストを高くすることができるとの記載がある。ところが、この発明の位相差フイルムは、熱等の歪みにより位相差が発生しやすく、耐久性に問題のあることがわかった。
【0003】
歪みによる位相差発生の問題に対し、特開平7−191217号公報、およびに欧州特許0911656A2号明細書には、透明支持体上にディスコティック化合物からなる光学異方性層を塗設した光学補償フイルムを直接偏光板の保護フイルムとして用いることで液晶表示装置を厚くすることなく、上述の耐久性に関する問題を解決した。
これらの従来技術により、高コントラストで、かつ耐久性も十分に満足する液晶表示装置が実現できた。しかし、大型パネル、特にテレビに使用した際に、視角による色味変化が大きく、複数の人間が同時に同じ画像を見ることができない問題があった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者の研究により、視角による色味変化の原因が、特開平7−191217号公報および欧州特許0911656A2号明細書に記載されている透明支持体、特にセルローストリアセテートフイルムの複屈折の波長依存性にあることが判明した。セルローストリアセテートフイルムは、特開平7−218724号公報に記載されているように測定波長が長くなるほど、複屈折が大きくなる特徴を有している。これに対して、市販の液晶セルに用いられている液晶化合物は、測定波長が大きくなるほど、複屈折は小さくなる。視感度の高い550nmの光で見た場合、視角によるコントラスト変化は非常に高度に補償されるが、短波長、および長波長での光学補償に微妙にズレが生じるため、色味の変化となる。特にセルローストリアセテートフイルム上に、液晶化合物からなる光学異方層を設けた光学補償シートの場合、この光学異方層の短波長レターデーション/長波長レターデーションの比が液晶セルにおける比よりも大きい場合に、この色味変化が大きい。
【0005】
本発明の目的は、液晶セルの視角による色味変化を高度に補償できる、セルロースアセテートフイルム上に液晶化合物を塗設してなる光学補償シートを、偏光膜の片側に配置し、従来以下の厚みで何の問題も生じることなく、表示品位の高い液晶表示装置を提供することにある。
さらに別の本発明の目的は、偏光板の構成要素の数を増加することなく、偏光板に光学補償機能を追加することである。
本発明者の研究の結果、下記式(1)により定義されるA値が、1.0乃至2.0の範囲にあるセルロースアセテートフイルムを透明支持体に持いることで色味変化の問題が解決できることが判明した。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の目的は、下記(1)〜(3)の液晶表示装置により達成された。
(1)ベンド配向モード、またはTNモードの液晶セル、その両側に配置された二枚の偏光板、および液晶セルと一方の偏光板との間に一枚配置するか、あるいは液晶セルと双方の偏光板との間に二枚配置する光学補償シートからなる液晶表示装置であって、該光学補償シートが、酢化度が59.0乃至61.5%の範囲にあるセルロースアセテートフイルムと、セルロースアセテートフイルムの上に塗設されたディスコティック液晶性化合物からなる光学異方性層を有し、該セルロースアセテートフイルムが、セルロースアセテート、およびセルロースアセテート100質量部に対して、少なくとも二つの芳香族環を有し、少なくとも一つが1,3,5−トリアジン環である芳香族化合物を5.5乃至20質量部の範囲で含み、該芳香族化合物のモル吸光係数の極大波長が、150乃至400nmの範囲にあり、これにより該セルロースアセテートフイルムの下記式(1)により定義されるA値が、1.02乃至1.5の範囲にあることを特徴とする液晶表示装置:
(1)A値=Re(420)/Re(550)
[式中、Re(420)は、波長420nmの光に対するフイルムのレターデーション値であり;Re(550)は、波長550nmの光に対するフイルムのレターデーション値である]。
(2)セルロースアセテートフイルムの、Reレターデーション値が0乃至200nmの範囲にあり、そしてRthレターデーション値が70乃至400nmの範囲にあることを特徴とする(1)に記載の液晶表示装置。
【0007】
(3)セルロースアセテートフイルムの厚みが、10乃至70μmの範囲にあることを特徴とする(1)に記載の液晶表示装置。
【0008】
【発明の効果】
本発明者は、副作用なしに液晶セルの視角による色味変化を光学的に補償することに成功し、更に安価に大量生産できる製造方法を見出した。
本発明の光学補償シートを保護膜として用いた偏光板は、TN(Twisted Nematic)型の液晶表示装置に有利に用いることができる。
【0009】
【発明の実施の形態】
[フイルムのレターデーション]
フイルムのReレターデーション値は、下記式により定義される。
レターデーション値(Re)=(nx−ny)×d
式中、nxは、位相差板の面内の遅相軸方向の屈折率(面内の最大屈折率)であり;nyは、位相差板の面内の遅相軸に垂直な方向の屈折率であり;そして、dは、位相差板の厚さ(nm)である。
【0010】
フイルムのA値は下式(1)で定義される。
A値=Re(420)/Re(550)
[式中、Re(420)は、波長420nmの光に対するフイルムのレターデーション値であり;Re(550)は、波長550nmの光に対するフイルムのレターデーション値である。]
視角による色味変化を最小とするには、A値が1.0乃至1.5であることが好ましく、1.02乃至1.3であることがさらに好ましい。色味変化はセルに用いられる液晶のA値とのマッチングで決まるため、液晶セルに合わせて、A値は適宜調整することが好ましい。
【0011】
またフイルムのRthレターデーション値は、下記式(II)により定義される。(II) Rth={(nx+ny)/2−nz}×d
式(II)において、nxは、フイルム面内の遅相軸方向(屈折率が最大となる方向)の屈折率であり;nyは、フイルム面内の進相軸方向(屈折率が最小となる方向)の屈折率であり;nzは、フイルムの厚み方向の屈折率であり;そしてdは、単位をnmとするフイルムの厚さである。
【0012】
本発明では、セルロースアセテートフイルムのReレターデーション値を0乃至200nmに、そして、Rthレターデーション値を70乃至400nmに調節する。
液晶表示装置に二枚の光学的異方性セルロースアセテートフイルムを使用する場合、フイルムのRthレターデーション値は70乃至250nmであることが好ましい。
液晶表示装置に一枚の光学的異方性セルロースアセテートフイルムを使用する場合、フイルムのRthレターデーション値は150乃至400nmであることが好ましい。
なお、セルロースアセテートフイルムの複屈折率(Δn:nx−ny)は、0.00乃至0.002であることが好ましい。また、セルロースアセテートフイルムの厚み方向の複屈折率{(nx+ny)/2−nz}は、0.001乃至0.04であることが好ましい。
【0013】
[セルロースアセテート]
本発明では、酢化度が59.0乃至61.5%の範囲にあるセルロースアセテートを使用する。
酢化度とは、セルロース単位質量当たりの結合酢酸量を意味する。酢化度は、ASTM:D−817−91(セルロースアセテート等の試験法)におけるアセチル化度の測定および計算に従う。
セルロースアセテートの粘度平均重合度(DP)は、250以上であることが好ましく、290以上であることがさらに好ましい。
また、本発明に使用するセルロースアセテートは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるMw/Mn(Mwは質量平均分子量、Mnは数平均分子量)の分子量分布が狭いことが好ましい。具体的なMw/Mnの値としては、1.0乃至1.7であることが好ましく、1.3乃至1.65であることがさらに好ましく、1.4乃至1.6であることが最も好ましい。
【0014】
一般に、セルロースアセテートの2位、3位、6位の水酸基は全体の置換度の1/3づつに均等に分配されるわけではなく、6位水酸基の置換度が小さくなる傾向がある。本発明ではセルロースアセテートの6位水酸基の置換度が、2位と3位と同じ程度であることが好ましく、多くなることがさらに好ましい。具体的な比率としては、6位の置換度は、全体の置換度(2位、3位、6位の置換度の合計)に対して32%以上であることが好ましく、33%以上であることがさらに好ましく、34%以上であることが最も好ましい。具体的な数値としては、セルロースアセテートの6位置換度は、0.88以上であることが好ましい。
各位置の置換度の測定は、NMRによって求めることができる。
上記のようなセルロースアセテートは、特開平11−5851号公報の段落番号[0043]〜[0044][実施例][合成例1]、段落番号[0048]〜[0049][合成例2]、段落番号[0051]〜[0052][合成例3]の方法により得ることができる。
【0015】
[レターデーション上昇剤]
セルロースアセテートフイルムのレターデーションおよび波長分散は、同じ化合物を用いて調整することができる。例えば、レターデーション上昇剤を用いて波長分散を調節することができる。具体的には、少なくとも二つの芳香族環を有する芳香族化合物を添加剤として使用することにより、レターデーションと波長分散とを制御できる。
芳香族化合物は、セルロースアセテート100質量部に対して、0.01乃至20質量部の範囲で使用する。可視域での波長分散を調整するには、芳香族化合物の吸収極大波長ができる限り長波長にあることが好ましい。ただし、あまり長波長側となると、芳香族化合物がフイルムを着色する。芳香族化合物の吸収極大波長は150乃至400nmであることが好ましく、180乃至370nmであることがさらに好ましく、200乃至350nmであることが最も好ましい。
芳香族化合物の添加量を調節することにより、波長分散を調整することが好ましい。芳香族化合物は、セルロースアセテート100質量部に対して、0.1乃至15質量部の範囲で使用することが好ましく、1.0乃至10質量部の範囲で使用することがさらに好ましい。二種類以上の芳香族化合物を併用してもよい。
【0016】
芳香族化合物の芳香族環には、芳香族炭化水素環に加えて、芳香族性ヘテロ環を含む。
芳香族炭化水素環は、6員環(すなわち、ベンゼン環)であることが特に好ましい。
芳香族性ヘテロ環は一般に、不飽和ヘテロ環である。芳香族性ヘテロ環は、5員環、6員環または7員環であることが好ましく、5員環または6員環であることがさらに好ましい。芳香族性ヘテロ環は一般に、最多の二重結合を有する。ヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子および硫黄原子が好ましく、窒素原子が特に好ましい。芳香族性ヘテロ環の例には、フラン環、チオフェン環、ピロール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、イミダゾール環、ピラゾール環、フラザン環、トリアゾール環、ピラン環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環および1,3,5−トリアジン環が含まれる。
芳香族環としては、ベンゼン環、フラン環、チオフェン環、ピロール環、オキサゾール環、チアゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、ピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環および1,3,5−トリアジン環が好ましく、ベンゼン環および1,3,5−トリアジン環がさらに好ましい。
芳香族化合物は、少なくとも一つの1,3,5−トリアジン環を有することが特に好ましい。
【0017】
芳香族化合物が有する芳香族環の数は、2乃至20であることが好ましく、2乃至12であることがより好ましく、2乃至8であることがさらに好ましく、2乃至6であることが最も好ましい。
二つの芳香族環の結合関係は、(a)縮合環を形成する場合、(b)単結合で直結する場合および(c)連結基を介して結合する場合に分類できる(芳香族環のため、スピロ結合は形成できない)。結合関係は、(a)〜(c)のいずれでもよい。
【0018】
(a)の縮合環(二つ以上の芳香族環の縮合環)の例には、インデン環、ナフタレン環、アズレン環、フルオレン環、フェナントレン環、アントラセン環、アセナフチレン環、ナフタセン環、ピレン環、インドール環、イソインドール環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、インドリジン環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾトリアゾール環、プリン環、インダゾール環、クロメン環、キノリン環、イソキノリン環、キノリジン環、キナゾリン環、シンノリン環、キノキサリン環、フタラジン環、プテリジン環、カルバゾール環、アクリジン環、フェナントリジン環、キサンテン環、フェナジン環、フェノチアジン環、フェノキサチイン環、フェノキサジン環およびチアントレン環が含まれる。ナフタレン環、アズレン環、インドール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾトリアゾール環およびキノリン環が好ましい。
(b)の単結合は、二つの芳香族環の炭素原子間の結合であることが好ましい。二以上の単結合で二つの芳香族環を結合して、二つの芳香族環の間に脂肪族環または非芳香族性複素環を形成してもよい。
【0019】
(c)の連結基も、二つの芳香族環の炭素原子と結合することが好ましい。連結基は、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、−CO−、−O−、−NH−、−S−またはそれらの組み合わせであることが好ましい。組み合わせからなる連結基の例を以下に示す。なお、以下の連結基の例の左右の関係は、逆になってもよい。
c1:−CO−O−
c2:−CO−NH−
c3:−アルキレン−O−
c4:−NH−CO−NH−
c5:−NH−CO−O−
c6:−O−CO−O−
c7:−O−アルキレン−O−
c8:−CO−アルケニレン−
c9:−CO−アルケニレン−NH−
c10:−CO−アルケニレン−O−
c11:−アルキレン−CO−O−アルキレン−O−CO−アルキレン−
c12:−O−アルキレン−CO−O−アルキレン−O−CO−アルキレン−O−
c13:−O−CO−アルキレン−CO−O−
c14:−NH−CO−アルケニレン−
c15:−O−CO−アルケニレン−
【0020】
芳香族環および連結基は、置換基を有していてもよい。
置換基の例には、ハロゲン原子(F、Cl、Br、I)、ヒドロキシル、カルボキシル、シアノ、アミノ、ニトロ、スルホ、カルバモイル、スルファモイル、ウレイド、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、脂肪族アシル基、脂肪族アシルオキシ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アルコキシカルボニルアミノ基、アルキルチオ基、アルキルスルホニル基、脂肪族アミド基、脂肪族スルホンアミド基、脂肪族置換アミノ基、脂肪族置換カルバモイル基、脂肪族置換スルファモイル基、脂肪族置換ウレイド基および非芳香族性複素環基が含まれる。
【0021】
アルキル基の炭素原子数は、1乃至8であることが好ましい。環状アルキル基よりも鎖状アルキル基の方が好ましく、直鎖状アルキル基が特に好ましい。アルキル基は、さらに置換基(例、ヒドロキシ、カルボキシ、アルコキシ基、アルキル置換アミノ基)を有していてもよい。アルキル基の(置換アルキル基を含む)例には、メチル、エチル、n−ブチル、n−ヘキシル、2−ヒドロキシエチル、4−カルボキシブチル、2−メトキシエチルおよび2−ジエチルアミノエチルが含まれる。
アルケニル基の炭素原子数は、2乃至8であることが好ましい。環状アルケニル基よりも鎖状アルケニル基の方が好ましく、直鎖状アルケニル基が特に好ましい。アルケニル基は、さらに置換基を有していてもよい。アルケニル基の例には、ビニル、アリルおよび1−ヘキセニルが含まれる。
アルキニル基の炭素原子数は、2乃至8であることが好ましい。環状アルキケニル基よりも鎖状アルキニル基の方が好ましく、直鎖状アルキニル基が特に好ましい。アルキニル基は、さらに置換基を有していてもよい。アルキニル基の例には、エチニル、1−ブチニルおよび1−ヘキシニルが含まれる。
【0022】
脂肪族アシル基の炭素原子数は、1乃至10であることが好ましい。脂肪族アシル基の例には、アセチル、プロパノイルおよびブタノイルが含まれる。
脂肪族アシルオキシ基の炭素原子数は、1乃至10であることが好ましい。脂肪族アシルオキシ基の例には、アセトキシが含まれる。
アルコキシ基の炭素原子数は、1乃至8であることが好ましい。アルコキシ基は、さらに置換基(例、アルコキシ基)を有していてもよい。アルコキシ基の(置換アルコキシ基を含む)例には、メトキシ、エトキシ、ブトキシおよびメトキシエトキシが含まれる。
アルコキシカルボニル基の炭素原子数は、2乃至10であることが好ましい。アルコキシカルボニル基の例には、メトキシカルボニルおよびエトキシカルボニルが含まれる。
アルコキシカルボニルアミノ基の炭素原子数は、2乃至10であることが好ましい。アルコキシカルボニルアミノ基の例には、メトキシカルボニルアミノおよびエトキシカルボニルアミノが含まれる。
【0023】
アルキルチオ基の炭素原子数は、1乃至12であることが好ましい。アルキルチオ基の例には、メチルチオ、エチルチオおよびオクチルチオが含まれる。
アルキルスルホニル基の炭素原子数は、1乃至8であることが好ましい。アルキルスルホニル基の例には、メタンスルホニルおよびエタンスルホニルが含まれる。脂肪族アミド基の炭素原子数は、1乃至10であることが好ましい。脂肪族アミド基の例には、アセトアミドが含まれる。
脂肪族スルホンアミド基の炭素原子数は、1乃至8であることが好ましい。脂肪族スルホンアミド基の例には、メタンスルホンアミド、ブタンスルホンアミドおよびn−オクタンスルホンアミドが含まれる。
脂肪族置換アミノ基の炭素原子数は、1乃至10であることが好ましい。脂肪族置換アミノ基の例には、ジメチルアミノ、ジエチルアミノおよび2−カルボキシエチルアミノが含まれる。
脂肪族置換カルバモイル基の炭素原子数は、2乃至10であることが好ましい。脂肪族置換カルバモイル基の例には、メチルカルバモイルおよびジエチルカルバモイルが含まれる。
脂肪族置換スルファモイル基の炭素原子数は、1乃至8であることが好ましい。脂肪族置換スルファモイル基の例には、メチルスルファモイルおよびジエチルスルファモイルが含まれる。
脂肪族置換ウレイド基の炭素原子数は、2乃至10であることが好ましい。脂肪族置換ウレイド基の例には、メチルウレイドが含まれる。
非芳香族性複素環基の例には、ピペリジノおよびモルホリノが含まれる。
レターデーション上昇剤の分子量は、300乃至800であることが好ましい。
レターデーション上昇剤については、特開2000−111014号、同2000−275434号、同2000−284124号、同2001−13323号の各公報およびWO00/65384号明細書に記載されている。
【0024】
[セルロースアセテートフイルムの製造]
ソルベントキャスト法によりセルロースアセテートフイルムを製造することが好ましい。ソルベントキャスト法では、セルロースアセテートを有機溶媒に溶解した溶液(ドープ)を用いてフイルムを製造する。
有機溶媒は、炭素原子数が3乃至12のエーテル、炭素原子数が3乃至12のケトン、炭素原子数が3乃至12のエステルおよび炭素原子数が1乃至6のハロゲン化炭化水素から選ばれる溶媒を含むことが好ましい。
エーテル、ケトンおよびエステルは、環状構造を有していてもよい。エーテル、ケトンおよびエステルの官能基(すなわち、−O−、−CO−および−COO−)のいずれかを二つ以上有する化合物も、有機溶媒として用いることができる。有機溶媒は、アルコール性水酸基のような他の官能基を有していてもよい。二種類以上の官能基を有する有機溶媒の場合、その炭素原子数は、いずれかの官能基を有する化合物の規定範囲内であればよい。
【0025】
炭素原子数が3乃至12のエーテル類の例には、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン、アニソールおよびフェネトールが含まれる。
炭素原子数が3乃至12のケトン類の例には、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノンおよびメチルシクロヘキサノンが含まれる。
炭素原子数が3乃至12のエステル類の例には、エチルホルメート、プロピルホルメート、ペンチルホルメート、メチルアセテート、エチルアセテートおよびペンチルアセテートが含まれる。
二種類以上の官能基を有する有機溶媒の例には、2−エトキシエチルアセテート、2−メトキシエタノールおよび2−ブトキシエタノールが含まれる。
ハロゲン化炭化水素の炭素原子数は、1または2であることが好ましく、1であることが最も好ましい。ハロゲン化炭化水素のハロゲンは、塩素であることが好ましい。ハロゲン化炭化水素の水素原子が、ハロゲンに置換されている割合は、25乃至75モル%であることが好ましく、30乃至70モル%であることがより好ましく、35乃至65モル%であることがさらに好ましく、40乃至60モル%であることが最も好ましい。メチレンクロリドが、代表的なハロゲン化炭化水素である。
二種類以上の有機溶媒を混合して用いてもよい。
【0026】
一般的な方法でセルロースアセテート溶液を調製できる。一般的な方法とは、0℃以上の温度(常温または高温)で、処理することを意味する。溶液の調製は、通常のソルベントキャスト法におけるドープの調製方法および装置を用いて実施することができる。なお、一般的な方法の場合は、有機溶媒としてハロゲン化炭化水素(特にメチレンクロリド)を用いることが好ましい。
セルロースアセテートの量は、得られる溶液中に10乃至40質量%含まれるように調整する。セルロースアセテートの量は、10乃至30質量%であることがさらに好ましい。有機溶媒(主溶媒)中には、後述する任意の添加剤を添加しておいてもよい。
溶液は、常温(0乃至40℃)でセルロースアセテートと有機溶媒とを攪拌することにより調製することができる。高濃度の溶液は、加圧および加熱条件下で攪拌してもよい。具体的には、セルロースアセテートと有機溶媒とを加圧容器に入れて密閉し、加圧下で溶媒の常温における沸点以上、かつ溶媒が沸騰しない範囲の温度に加熱しながら攪拌する。加熱温度は、通常は40℃以上であり、好ましくは60乃至200℃であり、さらに好ましくは80乃至110℃である。
【0027】
各成分は予め粗混合してから容器に入れてもよい。また、順次容器に投入してもよい。容器は攪拌できるように構成されている必要がある。窒素ガス等の不活性気体を注入して容器を加圧することができる。また、加熱による溶媒の蒸気圧の上昇を利用してもよい。あるいは、容器を密閉後、各成分を圧力下で添加してもよい。
加熱する場合、容器の外部より加熱することが好ましい。例えば、ジャケットタイプの加熱装置を用いることができる。また、容器の外部にプレートヒーターを設け、配管して液体を循環させることにより容器全体を加熱することもできる。
容器内部に攪拌翼を設けて、これを用いて攪拌することが好ましい。攪拌翼は、容器の壁付近に達する長さのものが好ましい。攪拌翼の末端には、容器の壁の液膜を更新するため、掻取翼を設けることが好ましい。
容器には、圧力計、温度計等の計器類を設置してもよい。容器内で各成分を溶剤中に溶解する。調製したドープは冷却後容器から取り出すか、あるいは、取り出した後、熱交換器等を用いて冷却する。
【0028】
冷却溶解法により、溶液を調製することもできる。冷却溶解法では、通常の溶解方法では溶解させることが困難な有機溶媒中にもセルロースアセテートを溶解させることができる。なお、通常の溶解方法でセルロースアセテートを溶解できる溶媒であっても、冷却溶解法によると迅速に均一な溶液が得られるとの効果がある。
冷却溶解法では最初に、室温で有機溶媒中にセルロースアセテートを撹拌しながら徐々に添加する。
セルロースアセテートの量は、この混合物中に10乃至40質量%含まれるように調整することが好ましい。セルロースアセテートの量は、10乃至30質量%であることがさらに好ましい。さらに、混合物中には後述する任意の添加剤を添加しておいてもよい。
【0029】
次に、混合物を−100乃至−10℃(好ましくは−80乃至−10℃、さらに好ましくは−50乃至−20℃、最も好ましくは−50乃至−30℃)に冷却する。冷却は、例えば、ドライアイス・メタノール浴(−75℃)や冷却したジエチレングリコール溶液(−30乃至−20℃)中で実施できる。このように冷却すると、セルロースアセテートと有機溶媒の混合物は固化する。
冷却速度は、4℃/分以上であることが好ましく、8℃/分以上であることがさらに好ましく、12℃/分以上であることが最も好ましい。冷却速度は、速いほど好ましいが、10000℃/秒が理論的な上限であり、1000℃/秒が技術的な上限であり、そして100℃/秒が実用的な上限である。なお、冷却速度は、冷却を開始する時の温度と最終的な冷却温度との差を冷却を開始してから最終的な冷却温度に達するまでの時間で割った値である。
【0030】
さらに、これを0乃至200℃(好ましくは0乃至150℃、さらに好ましくは0乃至120℃、最も好ましくは0乃至50℃)に加温すると、有機溶媒中にセルロースアセテートが溶解する。昇温は、室温中に放置するだけでもよし、温浴中で加温してもよい。
加温速度は、4℃/分以上であることが好ましく、8℃/分以上であることがさらに好ましく、12℃/分以上であることが最も好ましい。加温速度は、速いほど好ましいが、10000℃/秒が理論的な上限であり、1000℃/秒が技術的な上限であり、そして100℃/秒が実用的な上限である。なお、加温速度は、加温を開始する時の温度と最終的な加温温度との差を加温を開始してから最終的な加温温度に達するまでの時間で割った値である。
以上のようにして、均一な溶液が得られる。なお、溶解が不充分である場合は冷却、加温の操作を繰り返してもよい。溶解が充分であるかどうかは、目視により溶液の外観を観察するだけで判断することができる。
【0031】
冷却溶解法においては、冷却時の結露による水分混入を避けるため、密閉容器を用いることが望ましい。また、冷却加温操作において、冷却時に加圧し、加温時の減圧すると、溶解時間を短縮することができる。加圧および減圧を実施するためには、耐圧性容器を用いることが望ましい。
なお、セルロースアセテート(酢化度:60.9%、粘度平均重合度:299)を冷却溶解法によりメチルアセテート中に溶解した20質量%の溶液は、示差走査熱量測定(DSC)によると、33℃近傍にゾル状態とゲル状態との疑似相転移点が存在し、この温度以下では均一なゲル状態となる。従って、この溶液は疑似相転移温度以上、好ましくはゲル相転移温度プラス10℃程度の温度で保する必要がある。ただし、この疑似相転移温度は、セルロースアセテートの酢化度、粘度平均重合度、溶液濃度や使用する有機溶媒により異なる。
【0032】
調製したセルロースアセテート溶液(ドープ)から、ソルベントキャスト法によりセルロースアセテートフイルムを製造する。
ドープは、ドラムまたはバンド上に流延し、溶媒を蒸発させてフイルムを形成する。流延前のドープは、固形分量が18乃至35%となるように濃度を調整することが好ましい。ドラムまたはバンドの表面は、鏡面状態に仕上げておくことが好ましい。ソルベントキャスト法における流延および乾燥方法については、米国特許2336310号、同2367603号、同2492078号、同2492977号、同2492978号、同2607704号、同2739069号、同2739070号、英国特許640731号、同736892号の各明細書、特公昭45−4554号、同49−5614号、特開昭60−176834号、同60−203430号、同62−115035号の各公報に記載がある。
ドープは、表面温度が10℃以下のドラムまたはバンド上に流延することが好ましい。流延してから2秒以上風に当てて乾燥することが好ましい。得られたフイルムをドラムまたはバンドから剥ぎ取り、さらに100から160℃まで逐次温度を変えた高温風で乾燥して残留溶剤を蒸発させることもできる。以上の方法は、特公平5−17844号公報に記載がある。この方法によると、流延から剥ぎ取りまでの時間を短縮することが可能である。この方法を実施するためには、流延時のドラムまたはバンドの表面温度においてドープがゲル化することが必要である。
【0033】
調製したセルロースアシレート溶液(ドープ)を用いて2層以上の流延でフイルム化することもできる。この場合、ソルベントキャスト法によりセルロースアシレートフイルムを作製することが好ましい。ドープは、ドラムまたはバンド上に流延し、溶媒を蒸発させてフイルムを形成する。流延前のドープは、固形分量が10〜40%となるように濃度を調整することが好ましい。ドラムまたはバンドの表面は、鏡面状態に仕上げておくことが好ましい。
【0034】
2層以上の複数のセルロースアシレート液を流延する場合、複数のセルロースアシレート溶液を流延することが可能で、支持体の進行方向に間隔を置いて設けた複数の流延口からセルロースアシレートを含む溶液をそれぞれ流延させて積層させながらフイルムを作製してもよく、例えば特開昭61−158414号、特開平1−122419号、および特開平11−198285号の各公報に記載の方法が適応できる。また、2つの流延口からセルロースアシレート溶液を流延することによってもフイルム化することでもよく、例えば特公昭60−27562号、特開昭61−94724号、特開昭61−947245号、特開昭61−104813号、特開昭61−158413号、および特開平6−134933号の各公報に記載の方法で実施できる。また、特開昭56−162617号公報に記載の高粘度セルロースアシレート溶液の流れを低粘度のセルロースアシレート溶液で包み込み、その高,低粘度のセルロースアシレート溶液を同時に押出すセルロースアシレートフイルム流延方法でもよい。
【0035】
或いはまた2個の流延口を用いて、第一の流延口により支持体に成型したフイルムを剥ぎ取り、支持体面に接していた側に第二の流延を行なうことでより、フイルムを作製することでもよく、例えば特公昭44−20235号公報に記載されている方法である。
流延するセルロースアシレート溶液は同一の溶液でもよいし、異なるセルロースアシレート溶液でもよく特に限定されない。複数のセルロースアシレート層に機能を持たせるために、その機能に応じたセルロースアシレート溶液を、それぞれの流延口から押出せばよい。
さらの本発明のセルロースアシレート溶液は、他の機能層(例えば、接着層、染料層、帯電防止層、アンチハレーション層、UV吸収層、偏光層など)を同時に流延することもできる。
【0036】
従来の単層液では、必要なフイルム厚さにするためには高濃度で高粘度のセルロースアシレート溶液を押出すことが必要であり、その場合セルロースアシレート溶液の安定性が悪くて固形物が発生し、ブツ故障となったり、平面性が不良であったりして問題となることが多かった。この解決として、複数のセルロースアシレート溶液を流延口から流延することにより、高粘度の溶液を同時に支持体上に押出すことができ、平面性も良化し優れた面状のフイルムが作製できるばかりでなく、濃厚なセルロースアシレート溶液を用いることで乾燥負荷の低減化が達成でき、フイルムの生産スピードを高めることができる。
【0037】
セルロースアセテートフイルムには、機械的物性を改良するため、または乾燥速度を向上するために、可塑剤を添加することができる。可塑剤としては、リン酸エステルまたはカルボン酸エステルが用いられる。リン酸エステルの例には、トリフェニルフォスフェート(TPP)およびトリクレジルホスフェート(TCP)が含まれる。カルボン酸エステルとしては、フタル酸エステルおよびクエン酸エステルが代表的である。フタル酸エステルの例には、ジメチルフタレート(DMP)、ジエチルフタレート(DEP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジオクチルフタレート(DOP)、ジフェニルフタレート(DPP)およびジエチルヘキシルフタレート(DEHP)が含まれる。クエン酸エステルの例には、O−アセチルクエン酸トリエチル(OACTE)およびO−アセチルクエン酸トリブチル(OACTB)が含まれる。その他のカルボン酸エステルの例には、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバシン酸ジブチル、種々のトリメリット酸エステルが含まれる。フタル酸エステル系可塑剤(DMP、DEP、DBP、DOP、DPP、DEHP)が好ましく用いられる。DEPおよびDPPが特に好ましい。
可塑剤の添加量は、セルロースエステルの量の0.1乃至25質量%であることが好ましく、1乃至20質量%であることがさらに好ましく、3乃至15質量%であることが最も好ましい。
【0038】
セルロースアセテートフイルムには、劣化防止剤(例、酸化防止剤、過酸化物分解剤、ラジカル禁止剤、金属不活性化剤、酸捕獲剤、アミン)を添加してもよい。劣化防止剤については、特開平3−199201号、同5−1907073号、同5−194789号、同5−271471号、同6−107854号の各公報に記載がある。劣化防止剤の添加量は、調製する溶液(ドープ)の0.01乃至1質量%であることが好ましく、0.01乃至0.2質量%であることがさらに好ましい。添加量が0.01質量%未満であると、劣化防止剤の効果がほとんど認められない。添加量が1質量%を越えると、フイルム表面への劣化防止剤のブリードアウト(滲み出し)が認められる場合がある。特に好ましい劣化防止剤の例としては、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、トリベンジルアミン(TBA)を挙げることができる。
【0039】
[二軸延伸]
本発明のセルロースアセテートフイルムは、仮想歪みを低減させるために、延伸処理されることが好ましい。延伸することにより、延伸方向の仮想歪みが低減できるので、面内すべての方向で歪みを低減するために二軸延伸することが更に好ましい。
二軸延伸には、同時二軸延伸法と逐次二軸延伸法があるが、連続製造の観点から逐次二軸延伸方法が好ましく、ドープを流延した後、バンドもしくはドラムより剥ぎ取り、幅方向(長手方法)に延伸した後、長手方向(幅方向)に延伸される。
幅方向に延伸する方法は、例えば、特開昭62−115035号、特開平4−152125号、同4−284211号、同4−298310号、および同11−48271号の各公報などに記載されている。フイルムの延伸は、常温または加熱条件下で実施する。加熱温度は、フイルムのガラス転移温度以下であることが好ましい。フイルムは、乾燥中の処理で延伸することができ、特に溶媒が残存する場合は有効である。長手方向の延伸の場合、例えば、フイルムの搬送ローラーの速度を調節して、フイルムの剥ぎ取り速度よりもフイルムの巻き取り速度の方を速くするとフイルムは延伸される。幅方向の延伸の場合、フイルムの巾をテンターで保持しながら搬送して、テンターの巾を徐々に広げることによってもフイルムを延伸できる。フイルムの乾燥後に、延伸機を用いて延伸すること(好ましくはロング延伸機を用いる一軸延伸)もできる。フイルムの延伸倍率(元の長さに対する延伸による増加分の比率)は、5〜50%が好ましく、さらに好ましくは10乃至40%、最も好ましくは15乃至35%である。
【0040】
これら流延から後乾燥までの工程は、空気雰囲気下でもよいし窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気下でもよい。セルロースアシレートフイルムの製造に係わる巻き取り機は一般的に使用されているものでよく、定テンション法、定トルク法、テーパーテンション法、内部応力一定のプログラムテンションコントロール法などの巻き取り方法で巻き取ることができる。
【0041】
[吸湿膨張係数]
吸湿膨張係数の測定方法について以下に示す。作製したフイルムから幅5mm、長さ20mmの試料を切り出し、片方の端を固定して25℃、20%RHの雰囲気下にぶら下げた。他方の端に0.5gの重りをぶら下げて、一定時間放置した。次に、一定温度のまま、湿度を80%RHにして、長さの変形量を測定した。測定は同一試料につき10サンプル行い、平均値を採用した。
吸湿によるフイルムの寸度変化は、ポリマーフイルム中の自由体積を小さくすればよいことを見出した。自由体積を大きく左右するのは、製膜時の残留溶剤量であり、残留溶剤量が少ない方が寸度変化は少ない。
残留溶剤を減らすための一般的手法は、高温かつ長時間で乾燥することであるが、あまり長時間であると、当然のことながら生産性が落ちるため、0.01質量%乃至1質量%であることが好ましく、0.02質量%乃至0.07質量%が更に好ましく、最も好ましいのは、0.03質量%乃至0.05質量%である。上記残留溶剤量を制御することにより、光学補償能を有する偏光板を安価に高い生産性で製造することが可能となる。
また、上記吸湿による寸度変化を小さくする方法として、疎水性を有する化合物を添加することが好ましい。疎水性を有する素材としては、分子中にアルキル基やフェニル基のような疎水基を有する素材であれば特に制限はないが、後述の可塑剤や劣化防止剤の中で該当する素材が特に好ましく用いられる。添加量は調整する溶液(ドープ)の0.01乃至10質量%が好ましく、0.1乃至5質量%がさらに好ましく、1乃至3質量%が最も好ましい。
【0042】
[セルロースアセテートフイルムの表面処理]
セルロースアセテートフイルムは、表面処理を施すことが好ましい。具体的方法としては、コロナ放電処理、グロー放電処理、火炎処理、酸処理、アルカリ処理または紫外線照射処理が挙げられる。また、特開平7−333433号公報に記載のように、下塗り層を設けることも好ましく利用される。
フイルムの平面性を保持する観点から、これら処理においてセルロースアセテートフイルムの温度をTg以下、具体的には150℃以下とすることが好ましい。
光学補償シートを偏光板の透明保護膜として用いる場合、偏光膜との接着性の観点から、酸処理またはアルカリ処理、すなわちセルロースアセテートに対するケン化処理を実施することが特に好ましい。
表面処理をした後のフイルムの表面エネルギーは、55mN/m以上であることが好ましく、60mN/m以上75mN/m以下であることが更に好ましい。
【0043】
以下、アルカリ鹸化処理を例に、具体的に説明する。
鹸化処理は、フイルム表面をアルカリ溶液に浸漬した後、酸性溶液で中和し、水洗して乾燥するサイクルで行われることが好ましい。
アルカリ溶液としては、水酸化カリウム溶液、水酸化ナトリウム溶液が挙げられる。アルカリ溶液中の水酸化イオンの規定濃度は、0.1N乃至3.0Nであることが好ましく、0.5N乃至2.0Nであることがさらに好ましい。アルカリ溶液の温度は、室温乃至90℃であることが好ましく、40乃至70℃であることがさらに好ましい。
生産性の観点から、アルカリ液を塗布し、鹸化処理後に水洗によりフイルム表面よりアルカリ除去することが好ましい。濡れ性の観点から、塗布溶媒としてはIPA、n−ブタノール、メタノール、エタノール等のアルコール類が好ましく、アルカリ溶解の助剤として水、プロピレングリコール、エチレングリコールなどを加えることが好ましい。
【0044】
固体の表面エネルギーは、「ぬれの基礎と応用」(リアライズ社 1989.12.10発行)に記載のように接触角法、湿潤熱法、および吸着法により求めることができる。本発明のセルロースアセテートフイルムの場合、接触角法を用いることが好ましい。具体的には、表面エネルギーが既知である2種の溶液をセルロースアセテートフイルムに滴下し、液滴の表面とフイルム表面との交点において、液滴に引いた接線とフイルム表面のなす角で、液滴を含む方の角を接触角と定義し、計算によりフイルムの表面エネルギーを算出できる。
【0045】
[液晶性化合物]
本発明に用いられる液晶化合物は、棒状液晶でも、ディスコティック液晶でも良く、またそれらが高分子液晶、もしくは低分子液晶、さらには、低分子液晶が架橋され液晶性を示さなくなったものも含む。
棒状液晶としては、アゾメチン類、アゾキシ類、シアノビフェニル類、シアノフェニルエステル類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類およびアルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類が好ましく用いられる。なお、棒状液晶性には、金属錯体も含まれる。また、棒状液晶性分子を繰り返し単位中に含む液晶ポリマーも、棒状液晶として用いることができる。言い換えると、棒状液晶は、(液晶)ポリマーと結合していてもよい。
棒状液晶については、季刊化学総説第22巻液晶の化学(1994年)日本化学会編の第4章、第7章および第11章、液晶デバイスハンドブック日本学術振興会第142委員会編の第3章および特開2000−304932号公報に記載がある。
【0046】
液晶性化合物としては、ディスコティック液晶が最も好ましい。ディスコティック液晶の例としては、C.Destradeらの研究報告、Mol.Cryst.71巻、111頁(1981年)に記載されているベンゼン誘導体、C.Destradeらの研究報告、Mol.Cryst.122巻、141頁(1985年)、Physics lett,A,78巻、82頁(1990)に記載されているトルキセン誘導体、B.Kohneらの研究報告、Angew.Chem.96巻、70頁(1984年)に記載されたシクロヘキサン誘導体及びJ.M.Lehnらの研究報告、J.Chem.Commun.,1794頁(1985年)、J.Zhangらの研究報告、J.Am.Chem.Soc.116巻、2655頁(1994年)に記載されているアザクラウン系やフェニルアセチレン系マクロサイクルなどを挙げることができる。上記ディスコティック液晶は、一般的にこれらを分子中心の母核とし、直鎖のアルキル基やアルコキシ基、置換ベンゾイルオキシ基等がその直鎖として放射線状に置換された構造であり、液晶性を示す。ただし、分子自身が負の一軸性を有し、一定の配向を付与できるものであれば上記記載に限定されるものではない。また、本発明において、円盤状化合物から形成したとは、最終的にできた物が前記化合物である必要はなく、例えば、前記低分子ディスコティツク液晶が熱、光等で反応する基を有しており、結果的に熱、光等で反応により重合または架橋し、高分子量化し液晶性を失ったものも含まれる。上記ディスコティック液晶の好ましい例は特開平8−50206号公報に記載されている。
【0047】
光学異方層は、ディスコティック構造単位を有する化合物からなる負の複屈折を有する層であって、そしてディスコティック構造単位の面が、透明支持体面に対して傾き、且つ該ディスコティック構造単位の面と透明支持体面とのなす角度が、光学異方層の深さ方向に変化していることが好ましい。
【0048】
上記ディスコティック構造単位の面の角度(傾斜角)は、一般に、光学異方層の深さ方向でかつ光学異方層の底面からの距離の増加と共に増加または減少している。上記傾斜角は、距離の増加と共に増加することが好ましい。更に、傾斜角の変化としては、連続的増加、連続的減少、間欠的増加、間欠的減少、連続的増加と連続的減少を含む変化、及び増加及び減少を含む間欠的変化等を挙げることができる。間欠的変化は、厚さ方向の途中で傾斜角が変化しない領域を含んでいる。傾斜角は、変化しない領域を含んでいても、全体として増加または減少していることが好ましい。更に、傾斜角は全体として増加していることが好ましく、特に連続的に変化することが好ましい。
【0049】
光学異方層は、一般にディスコティック化合物及び他の化合物を溶剤に溶解した溶液を配向膜上に塗布し、乾燥し、次いでディスコティックネマチック相形成温度まで加熱し、その後配向状態(ディスコティックネマチック相)を維持して冷却することにより得られる。あるいは、光学異方層は、ディスコティック化合物及び他の化合物(更に、例えば重合性モノマー、光重合開始剤)を溶剤に溶解した溶液を配向膜上に塗布し、乾燥し、次いでディスコティックネマチック相形成温度まで加熱したのち重合させ(UV光の照射等により)、さらに冷却することにより得られる。本発明に用いるディスコティック液晶性化合物のディスコティックネマティック液晶相−固相転移温度としては、70〜300℃が好ましく、特に70〜170℃が好ましい。
【0050】
例えば、支持体側のディスコティック単位の傾斜角は、一般にディスコティック化合物あるいは配向膜の材料を選択することにより、またはラビング処理方法の選択することにより、調整することができる。また、表面側(空気側)のディスコティック単位の傾斜角は、一般にディスコティック化合物あるいはディスコティック化合物とともに使用する他の化合物(例、可塑剤、界面活性剤、重合性モノマー及びポリマー)を選択することにより調整することができる。更に、傾斜角の変化の程度も上記選択により調整することができる。
【0051】
上記可塑剤、界面活性剤及び重合性モノマーとしては、ディスコティック化合物と相溶性を有し、液晶性ディスコティック化合物の傾斜角の変化を与えられるか、あるいは配向を阻害しない限り、どのような化合物も使用することができる。これらの中で、重合性モノマー(例、ビニル基、ビニルオキシ基、アクリロイル基及びメタクリロイル基を有する化合物)が好ましい。上記化合物は、ディスコティック化合物に対して一般に1〜50質量%(好ましくは5〜30質量%)の量にて使用される。更に、好ましい重合性モノマーの例としては、多官能アクリレートが挙げられる。官能基の数は3官能以上が好ましく、4官能以上が更に好ましい。最も好ましいのは6官能モノマーである。6官能モノマーの好ましい例としては、ジペンタエリストリトールヘキサアクリレートが挙げられる。また、これら官能基数の異なる多官能モノマーを混合して使用することも可能である。
【0052】
上記ポリマーとしては、ディスコティック化合物と相溶性を有し、液晶性ディスコティック化合物に傾斜角の変化を与えられる限り、どのようなポリマーでも使用することができる。ポリマー例としては、セルロースエステルを挙げることができる。セルロースエステルの好ましい例としては、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、ヒドロキシプロピルセルロース及びセルロースアセテートブチレートを挙げることができる。上記ポリマーは、液晶性ディスコティック化合物の配向を阻害しないように、ディスコティック化合物に対して一般に0.1〜10質量%(好ましくは0.1〜8質量%、特に0.1〜5質量%)の量にて使用される。
【0053】
光学補償シートは、セルロースアセテートフイルム、その上に設けられた配向膜、そして配向膜上に形成されたディスコティック液晶からなる光学異方性層からなる。配向膜は、架橋されたポリマーの表面をラビング処理してなる。
【0054】
[配向膜]
配向膜は、架橋された2種のポリマーからなる層であることが好ましい。少なくとも1種のポリマーが、それ自体架橋可能なポリマーであっても、架橋剤により架橋されるポリマーのいずれも使用することができる。上記配向膜は、官能基を有するポリマーあるいはポリマーに官能基を導入したものを、光、熱、PH変化等により、ポリマー間で反応させて形成するか;あるいは、反応活性の高い化合物である架橋剤を用いてポリマー間に架橋剤に由来する結合基を導入して、ポリマー間を架橋することにより形成することができる。
【0055】
このような架橋は、通常上記ポリマーまたはポリマーと架橋剤の混合物を含む塗布液を、透明支持体上に塗布したのち、加熱等を行なうことにより実施されるが、最終商品の段階で耐久性が確保できれば良いので、配向膜を透明支持体上に塗設した後から、最終の光学補償シートを得るまでのいずれの段階で架橋させる処理を行なっても良い。配向膜上に形成される円盤状構造を有する化合物(光学異方層)の配向性を考えると、円盤状構造を有する化合物の配向させたのちに、充分架橋を行なうことも好ましい。すなわち、透明支持体上に、ポリマー及び該ポリマーを架橋することができる架橋剤を含む塗布液を塗布した場合、加熱乾燥した後(一般に架橋が行なわれるが、加熱温度が低い場合にはディスコティックネマチック相形成温度に加熱された時に更に架橋が進む)、ラビング処理を行なって配向膜を形成し、次いでこの配向膜上に円盤状構造単位を有する化合物を含む塗布液を塗布し、ディスコティックネマチック相形成温度以上に加熱した後、冷却して光学異方層を形成する。
【0056】
配向膜に使用されるポリマーは、それ自体架橋可能なポリマーあるいは架橋剤により架橋されるポリマーのいずれも使用することができる。勿論両方可能なポリマーもある。上記ポリマーの例としては、ポリメチルメタクリレート、アクリル酸/メタクリル酸共重合体、スチレン/マレインイミド共重合体、ポリビニルアルコール及び変性ポリビニルアルコール、ポリ(N−メチロールアクリルアミド)、スチレン/ビニルトルエン共重合体、クロロスルホン化ポリエチレン、ニトロセルロース、ポリ塩化ビニル、塩素化ポリオレフィン、ポリエステル、ポリイミド、酢酸ビニル/塩化ビニル共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリカーボネート等のポリマー及びシランカップリング剤等の化合物を挙げることができる。好ましいポリマーの例としては、ポリ(N−メチロールアクリルアミド)、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン、ポリビルアルコール及び変性ポリビニルアルコール等の水溶性ポリマーであり、さらにゼラチン、ポリビルアルコール及び変性ポリビニルアルコールが好ましく、特にポリビルアルコール及び変性ポリビニルアルコールを挙げることができる。
【0057】
上記ポリマーの中で、ポリビニルアルコール又は変性ポリビニルアルコールが好ましく、重合度の異なるポリビニルアルコール又は変性ポリビニルアルコールを2種類併用することが最も好ましい。
ポリビニルアルコールとしては、例えば鹸化度70〜100%のものであり、一般に鹸化度80〜100%のものであり、より好ましくは鹸化度85乃至95%のものである。重合度としては、100〜3000のも範囲が好ましい。変性ポリビニルアルコールとしては、共重合変性したもの(変性基として、例えば、COONa、Si(OX)3 、N(CH3 )3 ・Cl、C9 H19COO、SO3 、Na、C12H25等が導入される)、連鎖移動により変性したもの(変性基として、例えば、COONa、SH、C12H25等が導入されている)、ブロック重合による変性をしたもの(変性基として、例えば、COOH、CONH2 、COOR、C6 H5 等が導入される)等のポリビニルアルコールの変性物を挙げることができる。これらの中で、鹸化度80〜100%の未変性乃至変性ポリビニルアルコールであり、より好ましくは鹸化度85乃至95%の未変性ないしアルキルチオ変性ポリビニルアルコールである。
これら変性ポリマーの合成方法、可視吸収スペクトル測定、および導入率yの決定方法等は、特開平8−338913号公報に詳しく記載がある。
【0058】
上記ポリビニルアルコール等のポリマーと共に使用される架橋剤の具体例として、下記のものを挙げることができるが、これらは上記水溶性ポリマー、特にポリビニルアルコール及び変性ポリビニルアルコール(上記特定の変性物も含む)、と併用する場合に好ましい。例えば、アルデヒド類(例、ホルムアルデヒド、グリオキザール及びグルタルアルデヒド)、N−メチロール化合物(例、ジメチロール尿素及びメチロールジメチルヒダントイン)、ジオキサン誘導体(例、2,3−ジヒドロキシジオキサン)、カルボキシル基を活性化することにより作用する化合物(例、カルベニウム、2−ナフタレンスルホナート、1,1−ビスピロリジノ−1−クロロピリジニウム及び1−モルホリノカルボニル−3−(スルホナトアミノメチル))、活性ビニル化合物(例、1、3、5−トリアクロイル−ヘキサヒドロ−s−トリアジン、ビス(ビニルスルホン)メタン及びN,N’−メチレンビス−[βー(ビニルスルホニル)プロピオンアミド])、活性ハロゲン化合物(例、2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−S−トリアジン)、イソオキサゾール類、及びジアルデヒド澱粉、などを上げることができる。これらは、単独または組合せて用いることができる。生産性を考慮した場合、反応活性の高いアルデヒド類、とりわけグルタルアルデヒドの使用が好ましい。
【0059】
架橋剤としては、特に限定はなく、添加量は、耐湿性に関しては、多く添加した方が良化傾向にある。しかし、配向膜としての配向能が、ポリマーに対して50質量%以上添加した場合に低下することから、0.1〜20質量%が好ましく、特に0.5〜15質量%が好ましい。本発明の配向膜は、架橋反応が終了した後でも、反応しなかった架橋剤をある程度含んでいるが、その架橋剤の量は、配向膜中に1.0質量%以下であることが好ましく、特に0.5質量%以下であることが好ましい。配向膜中に1.0質量を超える量で架橋剤が含まれていると、充分な耐久性が得られない。即ち、液晶表示装置に使用した場合、長期使用、あるいは高温高湿の雰囲気下に長期間放置した場合に、レチキュレーションが発生することがある。
【0060】
配向膜は、基本的に、配向膜形成材料である、上記ポリマー、架橋剤を含む透明支持体上に塗布した後、加熱乾燥(架橋させ)し、ラビング処理することにより形成することができ、架橋反応は、前記のように、透明支持体上に塗布した後、任意の時期に行なっても良い。そして、前記のポリビニルアルコール等の水溶性ポリマーを配向膜形成材料として用いる場合には、塗布液は消泡作用のあるメタノール等の有機溶媒と水の混合溶媒とすることが好ましく、その比率は質量比で水:メタノールが0:100〜99:1が一般的であり、0:100〜91:9であることが好ましい。これにより、泡の発生が抑えられ、配向膜、更には光学異方層の層表面の欠陥が著しく減少する。塗布方法としては、スピンコーティング法、ディップコーティング法、カーテンコーティング法、エクストルージョンコーティング法、バーコーティング法及びE型塗布法を挙げることができる。特にE型塗布法が好ましい。また、膜厚は0.1〜10μmが好ましい。加熱乾燥は20℃ないし110℃で行なうことができる。充分な架橋を形成させるためには60℃〜100℃が好ましく、特に80℃〜100℃が好ましい。乾燥時間は1分〜36時間で行なうことができる。好ましくは5分間乃至30分間である。pHも、使用する架橋剤に最適な値に設定することが好ましく、グルタルアルデヒドを使用した場合は、pH4.5〜5.5で、特に5が好ましい。
【0061】
配向膜は、透明支持体上又は上記下塗層上に設けられる。配向膜は、上記のようにポリマー層を架橋したのち、表面をラビング処理することにより得ることができる。配向膜は、その上に設けられる液晶性ディスコティック化合物の配向方向を規定するように機能する。
【0062】
前記ラビング処理は、LCDの液晶配向処理工程として広く採用されている処理方法を利用することができる。即ち、配向膜の表面を、紙やガーゼ、フェルト、ゴムあるいはナイロン、ポリエステル繊維などを用いて一定方向に擦ることにより配向を得る方法を用いることができる。一般的には、長さ及び太さが均一な繊維を平均的に植毛した布などを用いて数回程度ラビングを行うことにより実施される。
【0063】
[偏光板]
偏光板は、偏光膜およびその両側に配置された二枚の透明保護膜からなる。一方の保護膜として、上記のセルロースアセテートフイルムを用いることができる。他方の保護膜は、通常のセルロースアセテートフイルムを用いてもよい。
偏光膜には、ヨウ素系偏光膜、二色性染料を用いる染料系偏光膜やポリエン系偏光膜がある。ヨウ素系偏光膜および染料系偏光膜は、一般にポリビニルアルコール系フイルムを用いて製造する。
セルロースアセテートフイルムの遅相軸と偏光膜の透過軸とは、実質的に平行になるように配置する。
偏光板の生産性には保護フイルムの透湿性が重要であることがわかった。 偏光膜と保護フイルムは水系接着剤で貼り合わせられており、この接着剤溶剤は保護フイルム中を拡散することで、乾燥される。 保護フイルムの透湿性が高ければ、高いほど乾燥は早くなり、生産性は向上するが、高くなりすぎると、液晶表示装置の使用環境(高湿下)により、水分が偏光膜中に入ることで偏光能が低下する。
光学補償シートの透湿性は、ポリマーフイルム(および重合性液晶化合物)の厚み、自由体積、親疎水性、等により決定される。
偏光板の保護フイルムとして用いる場合、透湿性は100乃至1000g/m2 ・24hrsであることが好ましく、300乃至700g/m2 ・24hrsであることが更に好ましい。
光学補償フイルムの厚みは、製膜の場合、リップ流量とラインスピード、あるいは、延伸、圧縮により調整することができる。使用する主素材により透湿性が異なるので、厚み調整により好ましい範囲にすることが可能である。
光学補償フイルムの自由体積は、製膜の場合、乾燥温度と時間により調整することができる。この場合もまた、使用する主素材により透湿性が異なるので、自由体積調整により好ましい範囲にすることが可能である。
光学補償フイルムの親疎水性は、添加剤により調整することができる。上記自由体積中に親水的添加剤を添加することで透湿性は高くなり、逆に疎水性添加剤を添加することで透湿性を低くすることができる。
上記透湿性を独立に制御することにより、光学補償能を有する偏光板を安価に高い生産性で製造することが可能となる。
【0064】
[液晶表示装置]
上記の光学補償シート、または上記の光学補償シートを用いた偏光板は、液晶表示装置に有利に用いられる。
TN、MVA、およびOCBモードの液晶表示装置は、液晶セルおよびその両側に配置された二枚の偏光板からなる。液晶セルは、二枚の電極基板の間に液晶を担持している。
光学補償シートは、液晶セルと一方の偏光板との間に、一枚配置するか、あるいは液晶セルと双方の偏光板との間に二枚配置する。
OCBモードの液晶表示装置の場合、本発明の光学補償シートは、ポリマーフイルム上に円盤状化合物、もしくは棒状液晶化合物を含む光学異方性層を有していても良い。光学異方性層は、円盤状化合物(もしくは棒状液晶化合物)を配向させ、その配向状態を固定することにより形成する。
円盤状化合物は、一般に大きな複屈折率を有する。また、円盤状化合物には、多様な配向形態がある。従って、円盤状化合物を用いることで、従来の延伸複屈折フイルムでは得ることができない光学的性質を有する光学補償シートを製造することができる。円盤状化合物を用いた光学補償シートについては、特開平6−214116号公報、米国特許5583679号、同5646703号、西独特許公報3911620A1号の各明細書に記載がある。
【0065】
偏光板では、液晶セルと偏光膜との間に配置される透明保護膜として、上記のポリマーフイルムを用いる。一方の偏光板の(液晶セルと偏光膜との間の)透明保護膜のみ上記のポリマーフイルムを用いるか、あるいは双方の偏光板の(液晶セルと偏光膜との間の)二枚の透明保護膜に、上記のポリマーフイルムを用いる。
液晶セルは、VAモード、OCBモード、またはTNモードであることが好ましい。
VAモードの液晶セルでは、電圧無印加時に棒状液晶性分子が実質的に垂直に配向している。
VAモードの液晶セルには、(1)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直に配向させ、電圧印加時に実質的に水平に配向させる狭義のVAモードの液晶セル(特開平2−176625号公報記載)に加えて、(2)視野角拡大のため、VAモードをマルチドメイン化した(MVAモードの)液晶セル(SID97、Digest of tech. Papers(予稿集)28(1997)845記載)、(3)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直配向させ、電圧印加時にねじれマルチドメイン配向させるモード(n−ASMモード)の液晶セル(日本液晶討論会の予稿集58〜59(1998)記載)および(4)SURVAIVALモードの液晶セル(LCDインターナショナル98で発表)が含まれる。
OCBモードの液晶セルは、棒状液晶性分子を液晶セルの上部と下部とで実質的に逆の方向に(対称的に)配向させるベンド配向モードの液晶セルを用いた液晶表示装置であり、米国特許4583825号、同5410422号の各明細書に開示されている。棒状液晶性分子が液晶セルの上部と下部とで対称的に配向しているため、ベンド配向モードの液晶セルは、自己光学補償機能を有する。そのため、この液晶モードは、OCB(Optically Compensatory Bend) 液晶モードとも呼ばれる。ベンド配向モードの液晶表示装置は、応答速度が速いとの利点がある。
TNモードの液晶セルでは、電圧無印加時に棒状液晶性分子が実質的に水平配向し、さらに60乃至120゜にねじれ配向している。
TNモードの液晶セルは、カラーTFT液晶表示装置として最も多く利用されており、多数の文献に記載がある。
【0066】
【実施例】
[実施例1]
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、セルロースアセテート溶液を調製した。
【0067】
────────────────────────────────────
セルロースアセテート溶液組成
────────────────────────────────────
酢化度60.9%のセルロースアセテート 100質量部
トリフェニルホスフェート(可塑剤) 7.8質量部
ビフェニルジフェニルホスフェート(可塑剤) 3.9質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 300質量部
メタノール(第2溶媒) 54質量部
1−ブタノール(第3溶媒) 11質量部
────────────────────────────────────
【0068】
別のミキシングタンクに、波長分散制御剤として下記のレターデーション上昇剤(吸収極大波長:275nm)25質量部、メチレンクロライド80質量部およびメタノール20質量部を投入し、加熱しながら攪拌して、レターデーション上昇剤溶液を調製した。
セルロースアセテート溶液474質量部にレターデーション上昇剤溶液25質量部を混合し、充分に攪拌してドープを調製した。レターデーション上昇剤の添加量は、セルロースアセテート100質量部に対して、5.5質量部であった。
【0069】
【化1】
【0070】
得られたドープを、バンド流延機を用いて流延した。バンド上での膜面温度が40℃となってから、1分乾燥し、剥ぎ取った後、140℃の乾燥風で、残留溶剤量が0.3質量%のセルロースアセテートフイルム(厚さ:50μm)を製造した。
作製したセルロースアセテートフイルム(CAF−01)について、光学特性を測定した。結果は第1表に示す。
尚、光学特性は、エリプソメーター(M−150、日本分光(株)製)を用いて、波長550nmにおけるReレターデーション値およびRthレターデーション値、さらにはReレターデーション値の波長分散を測定した。
【0071】
作製したセルロースアセテートフイルムを1.5Nの水酸化カリウム/(水/IPA/PG=14/86/15vol%)を5cc/m2 塗布し、約10秒間60℃に保持した後、フイルム表面に残った水酸化カリウムを水洗し、乾燥した。このセルロースアセテートフイルムの表面エネルギーを接触角法により求めたところ、63mN/mであった。
このセルロースアセテートフイルム上に、下記の組成の塗布液を#16のワイヤーバーコーターで28ml/m2 塗布した。60℃の温風で60秒、さらに90℃の温風で150秒乾燥した。
次に、セルロースアセテートフイルムの長手方向と平行な方向に、形成した膜にラビング処理を実施した。
【0072】
────────────────────────────────────
配向膜塗布液組成
────────────────────────────────────
下記の変性ポリビニルアルコール 10質量部
水 371質量部
メタノール 119質量部
グルタルアルデヒド(架橋剤) 0.5質量部
────────────────────────────────────
【0073】
【化2】
【0074】
(光学異方性層の形成)
配向膜上に、下記の円盤状(ディスコティック液晶性)化合物41.01g、エチレンオキサイド変成トリメチロールプロパントリアクリレート(V#360、大阪有機化学(株)製)4.06g、セルロースアセテートブチレート(CAB551−0.2、イーストマンケミカル社製)0.90g、セルロースアセテートブチレート(CAB531−1、イーストマンケミカル社製)0.23g、光重合開始剤(イルガキュアー907、チバガイギー社製)1.35g、増感剤(カヤキュアーDETX、日本化薬(株)製)0.45gを、102gのメチルエチルケトンに溶解した塗布液を、#3.6のワイヤーバーで塗布した。これを130℃の恒温ゾーンで2分間加熱し、円盤状化合物を配向させた。次に、60℃の雰囲気下で120W/cm高圧水銀灯を用いて、1分間UV照射し円盤状化合物を重合させた。その後、室温まで放冷した。このようにして、光学異方性層を形成し、光学補償シート(KH−01)を作製した。
波長550nmで測定した光学異方性層のReレターデーション値は43nmであった。また、円盤面と第1透明支持体面との間の角度(傾斜角)は平均で42゜であった。
【0075】
【化3】
【0076】
[実施例2]
実施例1で得られたドープを、バンド流延機を用いて流延した。バンド上での膜面温度が40℃となってから、1分乾燥し、剥ぎ取った後、130℃の雰囲気でテンターを用いて横一軸方向に、30%延伸し、140℃の乾燥風で、残留溶剤量が0.3質量%のセルロースアセテートフイルム(厚さ:110μm)を製造した。
作製したセルロースアセテートフイルム(CAF−02)について、光学特性を測定した。結果は第1表に示す。
尚、光学特性は、エリプソメーター(M−150、日本分光(株)製)を用いて、波長550nmにおけるReレターデーション値およびRthレターデーション値、さらにはReレターデーション値の波長分散を測定した。
作製したセルロースアセテートフイルムを2.0Nの水酸化カリウム/IPAを5cc/m2 塗布し、約10秒間(室温)に保持した後、フイルム表面に残った水酸化カリウムを水洗し、乾燥した。このセルロースアセテートフイルムの表面エネルギーを接触角法により求めたところ、63mN/mであった。
このセルロースアセテートフイルム上に、下記の組成の塗布液を#16のワイヤーバーコーターで28ml/m2 塗布した。60℃の温風で60秒、さらに90℃の温風で150秒乾燥した。
次に、セルロースアセテートフイルムの長手方向と45°の方向に、形成した膜にラビング処理を実施した。
【0077】
────────────────────────────────────
配向膜塗布液組成
────────────────────────────────────
実施例1で用いた変性ポリビニルアルコール 10質量部
水 371質量部
メタノール 119質量部
グルタルアルデヒド(架橋剤) 0.5質量部
────────────────────────────────────
【0078】
(光学異方性層の形成)
配向膜上に、実施例1で用いた円盤状(ディスコティック液晶性)化合物41.01g、エチレンオキサイド変成トリメチロールプロパントリアクリ レート(V#360、大阪有機化学(株)製)4.06g、光重合開始剤(イルガキュアー907、チバガイギー社製)1.35g、増感剤(カヤキュアーDETX、日本化薬(株)製)0.45gを、102gのメチルエチルケトンに溶解した塗布液を、#3.0のワイヤーバーで塗布した。これを130℃の恒温ゾーンで2分間加熱し、円盤状化合物を配向させた。次に、60℃の雰囲気下で120W/cm高圧水銀灯を用いて、1分間UV照射し円盤状化合物を重合させた。その後、室温まで放冷した。このようにして、光学異方性層を形成し、光学補償シート(KH−02)を作製した。
波長550nmで測定した光学異方性層のReレターデーション値は31nmであった。また、円盤面と第1透明支持体面との間の角度(傾斜角)は平均で35゜であった。
【0079】
[実施例3(参考例)]
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、セルロースアセテート溶液を調製した。
【0080】
────────────────────────────────────
セルロースアセテート溶液組成
────────────────────────────────────
酢化度60.9%のセルロースアセテート 100質量部
トリフェニルホスフェート(可塑剤) 7.8質量部
ビフェニルジフェニルホスフェート(可塑剤) 3.9質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 300質量部
メタノール(第2溶媒) 54質量部
1−ブタノール(第3溶媒) 11質量部
────────────────────────────────────
【0081】
別のミキシングタンクに、下記の波長分散制御剤14質量部、メチレンクロライド80質量部およびメタノール20質量部を投入し、加熱しながら攪拌して、波長分散制御剤溶液を調製した。
セルロースアセテート溶液474質量部に波長分散制御剤溶液25質量部を混合し、充分に攪拌してドープを調製した。レターデーション上昇剤の添加量は、セルロースアセテート100質量部に対して、3.0質量部であった。
【0082】
【化4】
【0083】
得られたドープを、バンド流延機を用いて流延した。バンド上での膜面温度が40℃となってから、1分乾燥し、剥ぎ取った後、140℃の乾燥風で、残留溶剤量が0.3質量%のセルロースアセテートフイルム(厚さ:100μm)を製造した。
作製したセルロースアセテートフイルム(CAF−03)について、光学特性を測定した。結果は第1表に示す。
さらに、作製したセルロースアセテートフイルム(CAF−03)を、1.5Nの水酸化カリウム溶液(40℃)に5分間浸漬した後、硫酸で中和し、純水で水洗、乾燥した。このセルロースアセテートフイルム(CAF−03)の表面エネルギーを接触角法により求めたところ、68mN/mであった。
【0084】
(配向膜、および光学異方層の作製)
実施例1と同様にして、このセルロースアセテートフイルム上に、配向膜、および光学異方層を塗設し、光学補償シート(KH−03)を作製した。
波長550nmで測定した光学異方性層のReレターデーション値は45nmであった。また、円盤面と第1透明支持体面との間の角度(傾斜角)は平均で43゜であった。
【0085】
[比較例1]
セルロースアセテート溶液を、(レターデーション上昇剤を添加しないで)そのままドープとして使用し、残留溶剤が0.5質量%で厚みが160μmのセルロースアセテートフイルム(CAF−H1)を作製した。光学特性の結果は図1および第1表に示す。
【0086】
図1は、実施例1(フイルムCAF−01)、実施例2(フイルムCAF−02)、実施例3(フイルムCAF−03)および比較例1(フイルムCAF−H1)において作製したフイルムの波長分散を示すグラフである。フイルムCAF−02とフイルムCAF−03とは、全く同じ結果であった。
【0087】
【表1】
第1表
────────────────────────────────────
フイルム レターデーション上昇剤 Re Rth A値
────────────────────────────────────
CAF−01 5.5質量部 8nm 80nm 1.413
CAF−02 5.5質量部 40nm 185nm 1.044
CAF−03 3.0質量部 6nm 82nm 1.044
CAF−H1 なし 4nm 78nm −0.505
────────────────────────────────────
【0088】
[実施例4]
延伸したポリビニルアルコールフイルムにヨウ素を吸着させて偏光膜を作製し、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、実施例1で作製したKH−01をCAF―01が偏光膜側となるように偏光膜の片側に貼り付けた。
市販のセルローストリアセテートフイルム(フジタックTD80UF、富士写真フイルム(株)製)にケン化処理を行い、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、偏光膜の反対側に貼り付けた。
偏光膜の吸収軸とKH−01の遅相軸とは平行になるように配置した。
このようにして偏光板を作製した。
【0089】
[実施例5]
延伸したポリビニルアルコールフイルムにヨウ素を吸着させて偏光膜を作製し、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、実施例2で作製したKH−02をCAF―02が偏光膜側となり、さらにその遅相軸が偏光膜の透過軸と平行になるように片側に貼り付けた。
市販のセルローストリアセテートフイルム(フジタックTD80UF、富士写真フイルム(株)製)にケン化処理を行い、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、偏光膜の反対側に貼り付けた。
このようにして偏光板を作製した。
【0090】
[実施例6]
延伸したポリビニルアルコールフイルムにヨウ素を吸着させて偏光膜を作製し、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、実施例2で作製したKH−02をCAF−02が偏光膜側となり、さらにその遅相軸が偏光膜の吸収軸と平行になるように片側に貼り付けた。
市販のセルローストリアセテートフイルム(フジタックTD80UF、富士写真フイルム(株)製)にケン化処理を行い、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、偏光膜の反対側に貼り付けた。
このようにして偏光板を作製した。
【0091】
[比較例2]
延伸したポリビニルアルコールフイルムにヨウ素を吸着させて偏光膜を作製し、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、比較例1で作製したKH−H1をCAF−H1が偏光膜側となり、さらにその遅相軸が偏光膜の吸収軸と平行になるように片側に貼り付けた。
市販のセルローストリアセテートフイルム(フジタックTD80UF、富士写真フイルム(株)製)にケン化処理を行い、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、偏光膜の反対側に貼り付けた。
このようにして偏光板を作製した。
【0092】
[実施例7]
TN型液晶セルを使用した液晶表示装置(6E−A3、シャープ(株)製)に設けられている一対の偏光板を剥がし、代わりに実施例4で作製した偏光板を、KH−01が液晶セル側となるように粘着剤を介して、観察者側およびバックライト側に一枚ずつ貼り付けた。観察者側の偏光板の透過軸と、バックライト側の偏光板の透過軸とは、Oモードとなるように配置した。
作製した液晶表示装置について、測定機(EZ−Contrast160D、ELDIM社製)を用いて、黒表示(L1)から白表示(L8)までの8段階で視野角を測定した。結果を第2表に示す。
【0093】
[実施例8]
TN型液晶セルを使用した液晶表示装置(6E−A3、シャープ(株)製)に設けられている一対の偏光板を剥がし、代わりに実施例6で作製した偏光板を、KH−03が液晶セル側となるように粘着剤を介して、観察者側およびバックライト側に一枚ずつ貼り付けた。観察者側の偏光板の透過軸と、バックライト側の偏光板の透過軸とは、Oモードとなるように配置した。
作製した液晶表示装置について、測定機(EZ−Contrast160D、ELDIM社製)を用いて、黒表示(L1)から白表示(L8)までの8段階で視野角を測定した。結果を第2表に示す。
【0094】
[比較例3]
TN型液晶セルを使用した液晶表示装置(6E−A3、シャープ(株)製)に設けられている一対の偏光板を剥がし、代わりに比較例2で作製した偏光板を、KH−H1が液晶セル側となるように粘着剤を介して、観察者側およびバックライト側に一枚ずつ貼り付けた。観察者側の偏光板の透過軸と、バックライト側の偏光板の透過軸とは、Oモードとなるように配置した。
作製した液晶表示装置について、測定機(EZ−Contrast160D、ELDIM社製)を用いて、黒表示(L1)から白表示(L8)までの8段階で視野角を測定した。結果を第2表に示す。
【0095】
【表2】
第2表
────────────────────────────────────
液晶 視野角
コントラスト比≧10階調反転のない範囲
表示装置 上 下 左右
────────────────────────────────────
実施例7 70゜ 45゜ 160゜
実施例8 75゜ 45゜ 160゜
比較例3 15゜ 25゜ 37゜
────────────────────────────────────
(註)黒側の階調反転:L1とL2との間の反転
【0096】
【表3】
第3表
────────────────────────────────────
液晶 色味変化
Δuv≦0.02となる範囲
表示装置 上 下 左右
────────────────────────────────────
実施例7 80゜ 80゜ 120゜
実施例8 80゜ 80゜ 100゜
比較例3 45゜ 80゜ 80゜
────────────────────────────────────
(註)ΔuvはCIE1976u,v chromaによる色差を指標にした。
【0097】
[実施例9]
(ベンド配向液晶セルの作製)
ITO電極付きのガラス基板に、ポリイミド膜を配向膜として設け、配向膜にラビング処理を行った。得られた二枚のガラス基板をラビング方向が平行となる配置で向かい合わせ、セルギャップを6μmに設定した。セルギャップにΔnが0.1396の液晶性化合物(ZLI1132、メルク社製)を注入し、ベンド配向液晶セルを作製した。
作製したベンド配向セルを挟むように、実施例5で作製した楕円偏光板を二枚貼り付けた。楕円偏光板の光学異方性層がセル基板に対面し、液晶セルのラビング方向とそれに対面する光学異方性層のラビング方向とが反平行となるように配置した。
液晶セルに55Hzの矩形波電圧を印加した。白表示2V、黒表示5Vのノーマリーホワイトモードとした。透過率の比(白表示/黒表示)をコントラスト比として、測定機(EZ−Contrast160D、ELDIM社製)を用いて、黒表示(L1)から白表示(L8)までの8段階で視野角を測定した。
結果を第4表に示す。
【0098】
第4表
────────────────────────────────────────
液晶 視野角(コントラスト比が10以上で黒側の階調反転のない範囲)
表示装置 上 下 左右
────────────────────────────────────────
実施例9 80° 80° 80°
────────────────────────────────────────
(註)黒側の階調反転:L1とL2との間の反転
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1、実施例2、実施例3および比較例1において作製したフイルムの波長分散を示すグラフである。
【符号の説明】
CAF−01 実施例1で作製したフイルム
CAF−02 実施例2で作製したフイルム
CAF−03 実施例3で作製したフイルム
CAF−H1 比較例1で作製したフイルム
Claims (3)
- ベンド配向モード、またはTNモードの液晶セル、その両側に配置された二枚の偏光板、および液晶セルと一方の偏光板との間に一枚配置するか、あるいは液晶セルと双方の偏光板との間に二枚配置する光学補償シートからなる液晶表示装置であって、該光学補償シートが、酢化度が59.0乃至61.5%の範囲にあるセルロースアセテートフイルムと、セルロースアセテートフイルムの上に塗設されたディスコティック液晶性化合物からなる光学異方性層を有し、該セルロースアセテートフイルムが、セルロースアセテート、およびセルロースアセテート100質量部に対して、少なくとも二つの芳香族環を有し、少なくとも一つが1,3,5−トリアジン環である芳香族化合物を5.5乃至20質量部の範囲で含み、該芳香族化合物のモル吸光係数の極大波長が、150乃至400nmの範囲にあり、これにより該セルロースアセテートフイルムの下記式(1)により定義されるA値が、1.02乃至1.5の範囲にあることを特徴とする液晶表示装置:
(1)A値=Re(420)/Re(550)
[式中、Re(420)は、波長420nmの光に対するフイルムのレターデーション値であり;Re(550)は、波長550nmの光に対するフイルムのレターデーション値である]。 - セルロースアセテートフイルムの、Reレターデーション値が0乃至200nmの範囲にあり、そしてRthレターデーション値が70乃至400nmの範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
- セルロースアセテートフイルムの厚みが、10乃至70μmの範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
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