JP2005165308A - 光学補償シート、偏光板及び液晶表示装置 - Google Patents

光学補償シート、偏光板及び液晶表示装置 Download PDF

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JP2005165308A JP2004329377A JP2004329377A JP2005165308A JP 2005165308 A JP2005165308 A JP 2005165308A JP 2004329377 A JP2004329377 A JP 2004329377A JP 2004329377 A JP2004329377 A JP 2004329377A JP 2005165308 A JP2005165308 A JP 2005165308A
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Minoru Wada
実 和田
Ryosuke Miyauchi
亮介 宮内
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Abstract

【課題】 光学補償シートを偏光板の片側に配置し、それを液晶表示装置に用いることで、熱等のひずみによる光漏れなどの問題を生じることなく、表示品位の高い光学補償シート及びその光学部材を有する液晶表示装置を提供する。
【解決手段】 液晶表示装置の偏光板の液晶セル側の光学補償シートの膜厚(μm)の平方根とその光弾性係数(1/Pa)との積を液晶セルのガラス板の光弾性係数(1/Pa)でわった値(Y)が36未満、22以上である光学補償シート及びこの光学補償シートを有する液晶表示装置。
【選択図】 なし

Description

本発明は、光学補償シート、偏光板、及びそれを用いた液晶表示装置に関する。
液晶表示装置は、偏光板と液晶セルから構成されている。現在主流であるTNモードの
TFT液晶表示装置においては、特許文献1に記載のように光学補償シートを偏光板と液
晶セルの間に挿入し、表示品位の高い液晶表示装置を実現している。しかし、この方法に
よると液晶表示装置自体が厚くなるなどの問題点があった。特許文献2には、偏光膜の片
面に位相差板、他方の面に保護フイルムを有する楕円偏光板を用いることで、液晶表示装
置を厚くすることなく、正面コントラストを高くすることができるとの記載がある。とこ
ろが、この発明の位相差フイルム(光学補償シート)は、熱等の歪みにより位相差が発生
しやすく、耐久性に問題のあることがわかった。この位相差により液晶表示装置に額縁状
の光漏れ(透過率の上昇)が生じ、液晶表示装置の表示品位は低下してしまう。歪みによ
る位相差発生の問題に対し、特許文献3および特許文献4においては、透明支持体上にデ
ィスコティック(円盤状)化合物からなる光学異方性層を塗設した光学補償シートを直接
偏光板の保護フイルムとして用いることで液晶表示装置を厚くすることなく、上述の耐久
性に関する問題を解決した。
また、特許文献5では、光学補償シートの光弾性係数と粘着剤の弾性率との積を1.2
×10-5以下とすることにより、特許文献6では、粘着剤の弾性率を0.06MPa以下
とすることにより、特許文献7では、偏光板保護層の線膨張係数と粘着剤の弾性率との積
を1.0×10-5(℃-1・MPa)以下とすることにより、特許文献8では、偏光板保護
層の光弾性係数と粘着剤の弾性率との積を8.0×10-12(m2/N・MPa)以下とす
ることにより、各々上記耐久性に関する問題を解決した。
特開平8−50206号公報 特開平2−247602号公報 特開平7−191217号公報 欧州特許0911656A2号明細書 特開2001−264538号公報 特開2001−272542号公報 特開2002−122739号公報 特開2002−122740号公報
しかし、17インチ以上の大型パネルに、前記の光学補償シートを保護フイルムに用い
た偏光板を装着したところ、熱歪みによる光漏れは完全には無くならないことが判明した
。光学補償シートは、液晶セルを光学的に補償する機能を有するのみでなく、使用環境の
変化による耐久性にも優れている必要がある。
本発明の目的は、光学補償シートを偏光膜の片側に配置し、それを液晶表示装置に用い
ることで、熱等の歪みによる光漏れなどの問題を生じることなく、表示品位の高い液晶表
示装置を提供することである。
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、液晶パネルに熱がかかった場合、上記の光学補
償シートに、光弾性による位相差が発生するだけではなく、液晶セルのガラス板にも位相
差が発生し、その位相差は上記光学補償シートの位相差をややうち消す方向に発生し、上
記熱歪みによる光漏れが発生していることを発見した。
図1および2は以上のことを表した例で、図1は液晶セルのガラス板の光弾性係数が2
.5×10-12(1/Pa)、3.3×10-12(1/Pa)、3.8×10-12(1/Pa)の場合に、光学補償シートの光弾性係数が変化した場合の上記熱歪みによる光漏れ量
を表している。この図からも分かるように、熱歪みによる光漏れ量を小さくするためには
、上記光学補償シートの光弾性係数は大きすぎても、小さすぎても良くなく、液晶セルの
ガラス板の光弾性係数と釣り合う必要がある。またその値は、液晶セルのガラス板の光弾
性係数の応じて変える必要があることがわかる。
また、図2は光学補償シートの膜厚が各60μm、80μm、110μmの場合、光学
補償シートの光弾性係数が変化したときの上記熱歪みによる光漏れ量を表している。これ
より光学補償シートの光弾性係数の最適値は光学補償シートの膜厚によって異なることが
わかる。以上より本発明の目的を達成するためには、上記の光学補償シートに光弾性によ
り発生する位相差と液晶セルのガラス板に発生する位相差とを釣り合うように物性定数を
設定する必要があることがわかる。
検討の結果、我々は、上記光漏れ量が0.03%以下にすれば上記熱歪みによる光漏れ
が肉眼では観察できなくなり上記目的を達成できることがわかり、さらに鋭意検討を重ね
た結果、この図からも推定できるるように、以下構成の光学補償シートにより上記目的が
達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明によれば、下記の光学補償シートおよび液晶表示装置が提供される。
1.液晶表示装置の偏光板の液晶セル側に儲けられた光学補償シートであって、
膜厚(μm)の平方根とその光弾性係数(1/Pa)との積を液晶セルのガラス板の光
弾性係数(1/Pa)で除した値(Y)が、22以上36未満であることを特徴とする光
学補償シート。
2.高分子フイルムからなることを特徴とする上記1に記載の光学補償シート。
3.高分子フイルムがトリアセチルセルロースフィルムであることを特徴とする上記2
に記載の光学補償シート。
4.高分子フイルムがノルボルネン類の重合体のフィルムからなることを特徴とする上
記2に記載の光学補償シート。
5.高分子フイルムがスチレン系重合体のフィルムからなることを特徴とする上記2に
記載の光学補償シート。
6.透明支持体上に液晶化合物からなる光学異方性層が備えられていることを特徴とす
る上記1に記載の光学補償シート。
7.液晶セルのガラス板および偏光板を有する液晶表示装置の偏光板であって、
該偏光板は、液晶セルのガラス板側に設けられた光学補償シート、偏光膜、透明保護膜
をこの順に有し、
該光学補償シートは、上記1〜6のいずれかに記載の光学補償シートであることを特徴
とする液晶表示装置の偏光板。
8.上記1乃至6のいずれかに記載の光学補償シート及び上記7に記載の偏光板を有す
る液晶表示装置。
9.ガラス板が、石英ガラス、パイレックスガラス、ほう珪酸ガラス、バイコールガラ
ス、ソーダ石灰ガラス、アルミノシリケートガラス、鉛ガラス、無アルカリガラスから選
ばれる少なくとも一つを有することを特徴とする上記8に記載の液晶表示装置。
10.光漏れ量が0.03%以下であることを特徴とする上記8又は9に記載の液晶表示装置。
本発明によれば、液晶表示装置の偏光板の液晶セル側の光学補償シートの光弾性係数(1/Pa)とその膜厚(μm)の平方根との積を液晶セルのガラス板の光弾性係数(1/Pa)で除した値(Y)を22以上36未満とすることにより、熱歪みにより額縁状に透過率が上昇することが抑制されて光漏れを生ずることがなく、表示品位の高い液晶表示装置を与えることができる。
また本発明は、TNモードの液晶表示装置の他、OCB(Optically Compensatory B
end)、VA(Vertically Aligned)、IPS(In Plane Switching)等に有利に用い
ることができる。
まず、本発明の液晶セル用のガラス板について説明する。
本発明で使用できるガラス板の種類としては、例えば、石英ガラス(光弾性係数は約3
.4×10-12(1/Pa))、パイレックスガラス(光弾性係数は約3.8×10-12
1/Pa))、ほう珪酸ガラス(光弾性係数は約3.4×10-12(1/Pa))、バイ
コールガラス(光弾性係数は約3.9×10-12(1/Pa))、ソーダー石灰ガラス(
光弾性係数は約2.5×10-12(1/Pa))、アルミノシリケートガラス(光弾性係
数は約2.6×10-12(1/Pa))、鉛ガラス(光弾性係数は約2.6×10-12(1
/Pa))、無アルカリガラス等(以上ガラスの種類及び光弾性係数の測定法はガラスの
事典、作花済夫編集、朝倉書店1980年に記載されている。)があり、さらにより小さ
な光弾性係数のガラスを使う場合はSchwiecker著、Komponentabh
angigkeit der spaaungsoptischen Koeffizi
enten von Glas.Glasstech.Ber.30,84−88(19
57)に記載されているような組成のもの等があるが、これらに限定されるものではなく
、前記Yの値の条件を満たせば、特に制限無く使用できる。しかし、液晶の経時安定性よ
り、アルカリ成分が極力少ないものが好ましいが、もしそうでない場合はガラス板の液晶
が触れる面にインジウムティンオキサイド等のアルカリ遮断層を設ければよい。
ガラスの弾性率としては特に問わないが、たわみの観点より、4000kg/mm2以上であることが好ましい。厚みは0.1〜2mmが好ましいが、0.5〜1.5mmが特に好ましい。また熱膨張係数はより小さいほうが好ましい。
次に、本発明の偏光板について説明する。
[偏光板]
偏光板は、偏光膜およびその両側に配置された二枚の透明保護膜からなる。一方の保護
膜として、後述する光学補償シートを用いることができる。他方の保護膜は、光透過率が
80%以上の通常のポリマーフイルムを用いることができ、該ポリマーフィルムとしてセ
ルロースアセテートフイルムを用いることが好ましい。セルロースアセテートフイルムに
ついては、支持体の項で詳しく説明されており、そこの記載が適用される。
本発明の偏光板は、粘着剤層、光学補償シート、偏光膜、透明保護層を順次積層した層
構成を有することが好ましい。該粘着剤層を介して偏光板は、液晶表示装置に装着される
上記偏光膜には、ヨウ素系偏光膜、二色性染料を用いる染料系偏光膜やポリエン系偏光膜がある。ヨウ素系偏光膜および染料系偏光膜は、一般にポリビニルアルコール系フイル
ムを用いて製造する。
粘着剤としては、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤等の各種のも
のを例示できるが、これらのなかでもアクリル系粘着剤が好ましく、そのベースポリマー
の質量平均分子量は、30万〜250万程度であるのが好ましい。
なお、アクリル系粘着剤のベースポリマーであるアクリル系重合体に使用されるモノマ
ーとしては、各種(メタ)アクリル酸エステル{(メタ)アクリル酸エステルとはアクリ
ル酸エステルおよびメタクリル酸エステルを総称した表現であり、以下(メタ)の付く化
合物名は同様の意味である。}を使用できる。かかる(メタ)アクリル酸エステルの具体
例としては、たとえば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ
)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル等を例示でき、これらを単
独もしくは組合せて使用できる。また、得られるアクリル系重合体に極性を付与するため
に前記(メタ)アクリル酸エステルの一部に代えて(メタ)アクリル酸を少量使用するこ
ともできる。さらに、架橋性単量体として(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アク
リル酸2−ヒドロキシエチル、N−メチロール(メタ)アクリルアミド等も併用しうる。 更に所望により、(メタ)アクリル酸エステル重合体の粘着特性を損なわない程度において他の共重合可能な単量体、たとえば酢酸ビニル、スチレン等を併用しうる。
ゴム系粘着剤のベースポリマーとしては、たとえば、天然ゴム、イソプレン系ゴム、ス
チレン−ブタジエン系ゴム、再生ゴム、ポリイソブチレン系ゴム、さらにはスチレン−イ
ソプレン−スチレン系ゴム、スチレン−ブタジエン−スチレン系ゴム等があげられる。シ
リコーン系粘着剤のベースポリマーとしては、たとえば、ジメチルポリシロキサン、ジフ
ェニルポリシロキサン等があげられる。
上記粘着剤は、たとえば、前記ベースポリマー(a)に、分子量10万以下の化合物(b)をブレンドすることにより調製することができる。(a):(b)の割合(質量比)は、90:10〜20:80とするのがより好ましい。
分子量10万以下の化合物(b)としては、ベースポリマー(a)とブレンドした際に
相溶性がよく、光学的に透明であり、ガラス転移点(Tg)が30℃以上のものが好まし
い。たとえば、質量平均分子量10万以下の前記ベースポリマーと同様のポリマーであっ
て、モノマー成分としてTgの高い成分を多く用いたもの等があげられる。
また、前記粘着剤は、架橋剤を含有することができる。架橋剤としては、ポリイソシア
ネート化合物、ポリアミン化合物、メラミン樹脂、尿素樹脂、エポキシ樹脂等があげられ
る。さらに、前記粘着剤には、必要に応じて、粘着付与剤、可塑剤、充填剤、酸化防止剤
、紫外線吸収剤等を、また本発明の目的を逸脱しない範囲で各適宜に使用することもでき
る。
偏光板上への、粘着剤層の形成方法としては、特に制限されず、偏光板に粘着剤(溶液
)を塗布し乾燥する方法、粘着剤層を設けた離型シートにより転写する方法等があげられ
る。
粘着剤層の厚さ(乾燥膜厚)は、特に限定されないが、10〜40μm程度とするのが
好ましい。以上のようにして偏光板の光学異方性層のある面に粘着剤層を設けて粘着偏光
板が得られる。
次に、本発明の偏光板に好ましく用いられる光学補償シートについて説明する。
[光学補償シート]
本発明で用いられる光学補償シートとしては、特に限定は無く、前記Yの値の条件を満
たせば、どのようなものでも使用できる。例えば、トリアセチルセルロースやノルボルネ
ン類の重合体等の高分子フイルム、または透明支持体上に液晶化合物からなる光学異方性
層が備えられているフイルムを用いることができる。
本発明の光学補償シートの光弾性係数は、好ましくは0〜20×10-12(1/Pa)である。
本発明の光学補償シートの膜厚は、好ましくは10〜200μm、より好ましくは30
〜170μmである。本発明において、光学補償シートが単層または複数層からなる場合
も、光学補償シートの透明支持体の厚みを膜厚として扱う。
(高分子の光学補償シート、透明支持体)
高分子の光学補償シート、や光学補償シートの透明支持体としては、前記のYの値の条
件を満たせば、特に制限無く使用することができるが、光透過率が80%以上であるポリ
マーフィルムを用いることが好ましい。フィルムを構成するポリマーの例には、セルロー
スエステル(例、セルロースアセテート、セルロースジアセテート)、セルローストリア
セテート(トリアセチルセルロース)、ポリオレフィン、環状オレフィン重合体(例、ノ
ルボルネン類の重合体(以下、「ノルボルネン系ポリマー」とも言う))、ポリ(メタ)
アクリル酸エステル(例、ポリメチルメタクリレート)、ポリカーボネートおよびポリス
ルホンが含まれる。市販のポリマー(ノルボルネン系ポリマーでは、アートン(JSR製
)、ゼオノア(日本ゼオン製)など)を用いてもよい。上記ノルボルネン系ポリマーとし
て、ノルボルネン類(例えば、ノルボルネン、ノルボルネンにシクロオレフィン環が縮合
した化合物等が含まれる)の開環重合体、その水素付加物、ノルボルネン類とエチレンと
の付加共重合体等が挙げられる。
上記ポリマー中、セルロースエステルが好ましく、セルロースの低級脂肪酸エステルが
さらに好ましい。低級脂肪酸とは、炭素原子数が6以下の脂肪酸を意味する。炭素原子数
は、2(セルロースアセテート)、3(セルロースプロピオネート)または4(セルロー
スブチレート)であることが好ましい。セルセルロースアセテートが特に好ましい。セル
ロースアセテートプロピオネートやセルロースアセテートブチレートのような混合脂肪酸
エステルを用いてもよい。セルロースの低級脂肪酸エステルは、セルロースアセテートで
あることが最も好ましい。
セルロースアセテートの酢化度は、55.0乃至62.5%であることが好ましく、5
9.0乃至61.5%であることがさらに好ましい。酢化度とは、セルロース単位質量当
たりの結合酢酸量を意味する。酢化度は、ASTM D−817−91(セルロースアセ
テート等の試験法)におけるアセチル化度の測定および計算に従う。
セルロースアセテートの粘度平均重合度(DP)は、250以上であることが好ましく
、290以上であることがさらに好ましい。また、本発明に使用するセルロースエステル
は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるMw/Mn(Mwは質量平均分子量
、Mnは数平均分子量)の分子量分布が狭いことが好ましい。具体的なMw/Mnの値は
、1.0乃至1.7の範囲にあることが好ましく、1.3乃至1.65の範囲にあること
がさらに好ましく、1.4乃至1.6の範囲にあることが最も好ましい。
一般に、セルロースアセテートの2,3,6の水酸基は全体の置換度の1/3づつに均
等に分配されるわけではなく、6位水酸基の置換度が小さくなる傾向がある。本発明では
セルロースアセテートの6位水酸基の置換度が、2,3位に比べて多いほうが好ましい。
全体の置換度に対して6位の水酸基が30%以上アセチル基で置換されていることが好ましく、更には31%以上、特に32%以上であることが好ましい。さらにセルロースアセテートの6位アセチル基の置換度が0.88以上であることが好ましい。6位水酸基は、アセチル基以外に炭素数3以上のアシル基であるプロピオニル基、ブチロイル基、バレロイル基、ベンゾイル基、アクリロイル基などで置換されているものも本発明の光学補償シートとして用いることが出来る。各位置の置換度の測定は、NMRによって求める事ができる。本発明のセルロースアセテートとして、特開平11−5851号公報の段落番号0043〜0044に記載の合成例1、段落番号0048〜0049に記載の合成例2、そして段落番号0051〜0052に記載の合成例3の方法で得られたセルロースアセテートを用いることができる。
(レターデーション上昇剤)
セルロースアセテートフイルムのレターデーションを調整するため、少なくとも二つの
芳香族環を有する芳香族化合物をレターデーション上昇剤として使用することが好ましい。
芳香族化合物は、セルロースアセテート100質量部に対して、0.01乃至20質量
部の範囲で使用する。芳香族化合物は、セルロースアセテート100質量部に対して、0
.05乃至15質量部の範囲で使用することが好ましく、0.1乃至10質量部の範囲で
使用することがさらに好ましい。二種類以上の芳香族化合物を併用してもよい。
芳香族化合物の芳香族環には、芳香族炭化水素環に加えて、芳香族性ヘテロ環を含む。
芳香族炭化水素環は、6員環(すなわち、ベンゼン環)であることが特に好ましい。芳
香族性ヘテロ環は一般に、不飽和ヘテロ環である。芳香族性ヘテロ環は、5員環、6員環
または7員環であることが好ましく、5員環または6員環であることがさらに好ましい。
芳香族性ヘテロ環は一般に、最多の二重結合を有する。ヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子および硫黄原子が好ましく、窒素原子が特に好ましい。芳香族性ヘテロ環の例には、フラン環、チオフェン環、ピロール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、イミダゾール環、ピラゾール環、フラザン環、トリアゾール環、ピラン環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環および1,3,5−トリアジン環が含まれる。芳香族環としては、ベンゼン環、フラン環、チオフェン環、ピロール環、オキサゾール環、チアゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、ピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環および1,3,5−トリアジン環が好ましく、ベンゼン環および1,3,5−トリアジン環がさらに好ましい。芳香族化合物は、少なくとも一つの1,3,5−トリアジン環を有することが特に好ましい。
芳香族化合物が有する芳香族環の数は、2乃至20であることが好ましく、2乃至12
であることがより好ましく、2乃至8であることがさらに好ましく、2乃至6であること
が最も好ましい。
二つの芳香族環の結合関係は、(a)縮合環を形成する場合、(b)単結合で直結する
場合および(c)連結基を介して結合する場合に分類できる(芳香族環のため、スピロ結
合は形成できない)。結合関係は、(a)〜(c)のいずれでもよい。
(a)の縮合環(二つ以上の芳香族環の縮合環)の例には、インデン環、ナフタレン環
、アズレン環、フルオレン環、フェナントレン環、アントラセン環、アセナフチレン環、
ナフタセン環、ピレン環、インドール環、イソインドール環、ベンゾフラン環、ベンゾチ
オフェン環、インドリジン環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾイミ
ダゾール環、ベンゾトリアゾール環、プリン環、インダゾール環、クロメン環、キノリン
環、イソキノリン環、キノリジン環、キナゾリン環、シンノリン環、キノキサリン環、フ
タラジン環、プテリジン環、カルバゾール環、アクリジン環、フェナントリジン環、キサ
ンテン環、フェナジン環、フェノチアジン環、フェノキサチイン環、フェノキサジン環お
よびチアントレン環が含まれる。ナフタレン環、アズレン環、インドール環、ベンゾオキ
サゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾトリアゾール環および
キノリン環が好ましい。
(b)の単結合は、二つの芳香族環の炭素原子間の結合であることが好ましい。二以上
の単結合で二つの芳香族環を結合して、二つの芳香族環の間に脂肪族環または非芳香族性
複素環を形成してもよい。
(c)の連結基も、二つの芳香族環の炭素原子と結合することが好ましい。連結基は、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、−CO−、−O−、−NH−、−S−
またはそれらの組み合わせであることが好ましい。組み合わせからなる連結基の例を以下
に示す。なお、以下の連結基の例の左右の関係は、逆になってもよい。
c1:−CO−O−
c2:−CO−NH−
c3:−アルキレン−O−
c4:−NH−CO−NH−
c5:−NH−CO−O−
c6:−O−CO−O−
c7:−O−アルキレン−O−
c8:−CO−アルケニレン−
c9:−CO−アルケニレン−NH−
c10:−CO−アルケニレン−O−
c11:−アルキレン−CO−O−アルキレン−O−CO−アルキレン−
c12:−O−アルキレン−CO−O−アルキレン−O−CO−アルキレン−O−
c13:−O−CO−アルキレン−CO−O−
c14:−NH−CO−アルケニレン−
c15:−O−CO−アルケニレン−
芳香族環および連結基は、置換基を有していてもよい。置換基の例には、ハロゲン原子
(F、Cl、Br、I)、ヒドロキシル、カルボキシル、シアノ、アミノ、ニトロ、スル
ホ、カルバモイル、スルファモイル、ウレイド、アルキル基、アルケニル基、アルキニル
基、脂肪族アシル基、脂肪族アシルオキシ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、
アルコキシカルボニルアミノ基、アルキルチオ基、アルキルスルホニル基、脂肪族アミド
基、脂肪族スルホンアミド基、脂肪族置換アミノ基、脂肪族置換カルバモイル基、脂肪族
置換スルファモイル基、脂肪族置換ウレイド基および非芳香族性複素環基が含まれる。
なお、本明細書においては、水素原子が水素原子以外の原子で置換されている場合も、
該水素原子以外の原子も便宜上置換基として取り扱う。
アルキル基の炭素原子数は、1乃至8であることが好ましい。環状アルキル基よりも鎖
状アルキル基の方が好ましく、直鎖状アルキル基が特に好ましい。アルキル基は、さらに
置換基(例、ヒドロキシ、カルボキシ、アルコキシ基、アルキル置換アミノ基)を有して
いてもよい。アルキル基の(置換アルキル基を含む)例には、メチル、エチル、n−ブチ
ル、n−ヘキシル、2−ヒドロキシエチル、4−カルボキシブチル、2−メトキシエチル
および2−ジエチルアミノエチルが含まれる。アルケニル基の炭素原子数は、2乃至8で
あることが好ましい。環状アルケニル基よりも鎖状アルケニル基の方が好ましく、直鎖状
アルケニル基が特に好ましい。アルケニル基は、さらに置換基を有していてもよい。アル
ケニル基の例には、ビニル、アリルおよび1−ヘキセニルが含まれる。アルキニル基の炭
素原子数は、2乃至8であることが好ましい。環状アルキケニル基よりも鎖状アルキニル
基の方が好ましく、直鎖状アルキニル基が特に好ましい。アルキニル基は、さらに置換基
を有していてもよい。アルキニル基の例には、エチニル、1−ブチニルおよび1−ヘキシ
ニルが含まれる。
脂肪族アシル基の炭素原子数は、1乃至10であることが好ましい。脂肪族アシル基の
例には、アセチル、プロパノイルおよびブタノイルが含まれる。脂肪族アシルオキシ基の
炭素原子数は、1乃至10であることが好ましい。脂肪族アシルオキシ基の例には、アセ
トキシが含まれる。アルコキシ基の炭素原子数は、1乃至8であることが好ましい。アル
コキシ基は、さらに置換基(例、アルコキシ基)を有していてもよい。アルコキシ基の(
置換アルコキシ基を含む)例には、メトキシ、エトキシ、ブトキシおよびメトキシエトキ
シが含まれる。アルコキシカルボニル基の炭素原子数は、2乃至10であることが好まし
い。アルコキシカルボニル基の例には、メトキシカルボニルおよびエトキシカルボニルが
含まれる。アルコキシカルボニルアミノ基の炭素原子数は、2乃至10であることが好ま
しい。アルコキシカルボニルアミノ基の例には、メトキシカルボニルアミノおよびエトキ
シカルボニルアミノが含まれる。
アルキルチオ基の炭素原子数は、1乃至12であることが好ましい。アルキルチオ基の
例には、メチルチオ、エチルチオおよびオクチルチオが含まれる。アルキルスルホニル基
の炭素原子数は、1乃至8であることが好ましい。アルキルスルホニル基の例には、メタ
ンスルホニルおよびエタンスルホニルが含まれる。脂肪族アミド基の炭素原子数は、1乃
至10であることが好ましい。脂肪族アミド基の例には、アセトアミドが含まれる。脂肪
族スルホンアミド基の炭素原子数は、1乃至8であることが好ましい。脂肪族スルホンア
ミド基の例には、メタンスルホンアミド、ブタンスルホンアミドおよびn−オクタンスル
ホンアミドが含まれる。脂肪族置換アミノ基の炭素原子数は、1乃至10であることが好
ましい。脂肪族置換アミノ基の例には、ジメチルアミノ、ジエチルアミノおよび2−カル
ボキシエチルアミノが含まれる。脂肪族置換カルバモイル基の炭素原子数は、2乃至10
であることが好ましい。脂肪族置換カルバモイル基の例には、メチルカルバモイルおよび
ジエチルカルバモイルが含まれる。脂肪族置換スルファモイル基の炭素原子数は、1乃至
8であることが好ましい。脂肪族置換スルファモイル基の例には、メチルスルファモイル
およびジエチルスルファモイルが含まれる。脂肪族置換ウレイド基の炭素原子数は、2乃
至10であることが好ましい。脂肪族置換ウレイド基の例には、メチルウレイドが含まれ
る。非芳香族性複素環基の例には、ピペリジノおよびモルホリノが含まれる。
レターデーション上昇剤の分子量は、300乃至800であることが好ましい。レター
デーション上昇剤の具体例としては、特開2000−111914号公報、同2000−
275434号公報、PCT/JP00/02619号に記載の化合物が挙げられる。
(セルロースアセテートフイルムの製造)
ソルベントキャスト法によりセルロースアセテートフイルムを製造することが好ましい
。ソルベントキャスト法では、セルロースアセテートを有機溶媒に溶解した溶液(ドープ
)を用いてフイルムを製造する。有機溶媒は、炭素原子数が3乃至12のエーテル、炭素
原子数が3乃至12のケトン、炭素原子数が3乃至12のエステルおよび炭素原子数が1
乃至6のハロゲン化炭化水素から選ばれる溶媒を含むことが好ましい。エーテル、ケトン
およびエステルは、環状構造を有していてもよい。エーテル、ケトンおよびエステルの官
能基(すなわち、−O−、−CO−および−COO−)のいずれかを二つ以上有する化合
物も、有機溶媒として用いることができる。有機溶媒は、アルコール性水酸基のような他
の官能基を有していてもよい。二種類以上の官能基を有する有機溶媒の場合、その炭素原
子数は、いずれかの官能基を有する化合物の規定範囲内であればよい。
炭素原子数が3乃至12のエーテル類の例には、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシ
メタン、ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、テトラヒドロ
フラン、アニソールおよびフェネトールが含まれる。炭素原子数が3乃至12のケトン類
の例には、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジイソブチルケトン、シク
ロヘキサノンおよびメチルシクロヘキサノンが含まれる。炭素原子数が3乃至12のエス
テル類の例には、エチルホルメート、プロピルホルメート、ペンチルホルメート、メチル
アセテート、エチルアセテートおよびペンチルアセテートが含まれる。二種類以上の官能
基を有する有機溶媒の例には、2−エトキシエチルアセテート、2−メトキシエタノール
および2−ブトキシエタノールが含まれる。ハロゲン化炭化水素の炭素原子数は、1また
は2であることが好ましく、1であることが最も好ましい。ハロゲン化炭化水素のハロゲ
ンは、塩素であることが好ましい。ハロゲン化炭化水素の水素原子が、ハロゲンに置換さ
れている割合は、25乃至75モル%であることが好ましく、30乃至70モル%である
ことがより好ましく、35乃至65モル%であることがさらに好ましく、40乃至60モ
ル%であることが最も好ましい。メチレンクロリドが、代表的なハロゲン化炭化水素であ
る。二種類以上の有機溶媒を混合して用いてもよい。
一般的な方法でセルロースアセテート溶液を調製できる。一般的な方法とは、0℃以上
の温度(常温または高温)で、処理することを意味する。溶液の調製は、通常のソルベン
トキャスト法におけるドープの調製方法および装置を用いて実施することができる。なお
、一般的な方法の場合は、有機溶媒としてハロゲン化炭化水素(特にメチレンクロリド)
を用いることが好ましい。セルロースアセテートの量は、得られる溶液中に10乃至40
質量%含まれるように調整する。セルロースアセテートの量は、10乃至30質量%であ
ることがさらに好ましい。有機溶媒(主溶媒)中には、後述する任意の添加剤を添加して
おいてもよい。溶液は、常温(0乃至40℃)でセルロースアセテートと有機溶媒とを攪
拌することにより調製することができる。高濃度の溶液は、加圧および加熱条件下で攪拌
してもよい。具体的には、セルロースアセテートと有機溶媒とを加圧容器に入れて密閉し
、加圧下で溶媒の常温における沸点以上、かつ溶媒が沸騰しない範囲の温度に加熱しなが
ら攪拌する。加熱温度は、通常は40℃以上であり、好ましくは60乃至200℃であり
、さらに好ましくは80乃至110℃である。
各成分は予め粗混合してから容器に入れてもよい。また、順次容器に投入してもよい。
容器は攪拌できるように構成されている必要がある。窒素ガス等の不活性気体を注入して容器を加圧することができる。また、加熱による溶媒の蒸気圧の上昇を利用してもよい。
あるいは、容器を密閉後、各成分を圧力下で添加してもよい。加熱する場合、容器の外部より加熱することが好ましい。例えば、ジャケットタイプの加熱装置を用いることができる。また、容器の外部にプレートヒーターを設け、配管して液体を循環させることにより容器全体を加熱することもできる。容器内部に攪拌翼を設けて、これを用いて攪拌することが好ましい。攪拌翼は、容器の壁付近に達する長さのものが好ましい。攪拌翼の末端には、容器の壁の液膜を更新するため、掻取翼を設けることが好ましい。容器には、圧力計、温度計等の計器類を設置してもよい。容器内で各成分を溶剤中に溶解する。調製したドープは冷却後容器から取り出すか、あるいは、取り出した後、熱交換器等を用いて冷却する。
冷却溶解法により、溶液を調製することもできる。冷却溶解法では、通常の溶解方法で
は溶解させることが困難な有機溶媒中にもセルロースアセテートを溶解させることができ
る。なお、通常の溶解方法でセルロースアセテートを溶解できる溶媒であっても、冷却溶
解法によると迅速に均一な溶液が得られるとの効果がある。冷却溶解法では最初に、室温
で有機溶媒中にセルロースアセテートを撹拌しながら徐々に添加する。セルロースアセテ
ートの量は、この混合物中に10乃至40質量%含まれるように調整することが好ましい
。セルロースアセテートの量は、10乃至30質量%であることがさらに好ましい。さら
に、混合物中には後述する任意の添加剤を添加しておいてもよい。
次に、混合物を−100乃至−10℃(好ましくは−80乃至−10℃、さらに好まし
くは−50乃至−20℃、最も好ましくは−50乃至−30℃)に冷却する。冷却は、例
えば、ドライアイス・メタノール浴(−75℃)や冷却したジエチレングリコール溶液(
−30乃至−20℃)中で実施できる。このように冷却すると、セルロースアセテートと
有機溶媒の混合物は固化する。冷却速度は、4℃/分以上であることが好ましく、8℃/
分以上であることがさらに好ましく、12℃/分以上であることが最も好ましい。冷却速
度は、速いほど好ましいが、10000℃/秒が理論的な上限であり、1000℃/秒が
技術的な上限であり、そして100℃/秒が実用的な上限である。なお、冷却速度は、冷
却を開始する時の温度と最終的な冷却温度との差を冷却を開始してから最終的な冷却温度
に達するまでの時間で割った値である。
さらに、これを0乃至200℃(好ましくは0乃至150℃、さらに好ましくは0乃至
120℃、最も好ましくは0乃至50℃)に加温すると、有機溶媒中にセルロースアセテ
ートが溶解する。昇温は、室温中に放置するだけでもよし、温浴中で加温してもよい。加
温速度は、4℃/分以上であることが好ましく、8℃/分以上であることがさらに好まし
く、12℃/分以上であることが最も好ましい。加温速度は、速いほど好ましいが、10
000℃/秒が理論的な上限であり、1000℃/秒が技術的な上限であり、そして10
0℃/秒が実用的な上限である。なお、加温速度は、加温を開始する時の温度と最終的な
加温温度との差を加温を開始してから最終的な加温温度に達するまでの時間で割った値で
ある。以上のようにして、均一な溶液が得られる。なお、溶解が不充分である場合は冷却
、加温の操作を繰り返してもよい。溶解が充分であるかどうかは、目視により溶液の外観
を観察するだけで判断することができる。
冷却溶解法においては、冷却時の結露による水分混入を避けるため、密閉容器を用いる
ことが望ましい。また、冷却加温操作において、冷却時に加圧し、加温時の減圧すると、
溶解時間を短縮することができる。加圧および減圧を実施するためには、耐圧性容器を用
いることが望ましい。なお、セルロースアセテート(酢化度:60.9%、粘度平均重合
度:299)を冷却溶解法によりメチルアセテート中に溶解した20質量%の溶液は、示
差走査熱量測定(DSC)によると、33℃近傍にゾル状態とゲル状態との疑似相転移点
が存在し、この温度以下では均一なゲル状態となる。従って、この溶液は疑似相転移温度
以上、好ましくはゲル相転移温度プラス10℃程度の温度で保する必要がある。ただし、
この疑似相転移温度は、セルロースアセテートの酢化度、粘度平均重合度、溶液濃度や使
用する有機溶媒により異なる。
調製したセルロースアセテート溶液(ドープ)から、ソルベントキャスト法によりセル
ロースアセテートフイルムを製造する。ドープには前記のレターデーション上昇剤を添加
することが好ましい。ドープは、ドラムまたはバンド上に流延し、溶媒を蒸発させてフイ
ルムを形成する。流延前のドープは、固形分量が18乃至35%となるように濃度を調整
することが好ましい。ドラムまたはバンドの表面は、鏡面状態に仕上げておくことが好ま
しい。ソルベントキャスト法における流延および乾燥方法については、米国特許2336
310号、同2367603号、同2492078号、同2492977号、同2492
978号、同2607704号、同2739069号、同2739070号、英国特許6
40731号、同736892号の各明細書、特公昭45−4554号、同49−561
4号、特開昭60−176834号、同60−203430号、同62−115035号
の各公報に記載がある。ドープは、表面温度が10℃以下のドラムまたはバンド上に流延
することが好ましい。流延してから2秒以上風に当てて乾燥することが好ましい。得られ
たフイルムをドラムまたはバンドから剥ぎ取り、さらに100から160℃まで逐次温度
を変えた高温風で乾燥して残留溶剤を蒸発させることもできる。以上の方法は、特公平5
−17844号公報に記載がある。この方法によると、流延から剥ぎ取りまでの時間を短
縮することが可能である。この方法を実施するためには、流延時のドラムまたはバンドの
表面温度においてドープがゲル化することが必要である。
調整したセルロースアセテート溶液(ドープ)を用いて二層以上の流延を行いフイルム
化することもできる。この場合、ソルベントキャスト法によりセルロースアセテートフイ
ルムを作製することが好ましい。ドープは、ドラムまたはバンド上に流延し、溶媒を蒸発
させてフイルムを形成する。流延前のドープは、固形分量が10乃至40%の範囲となる
ように濃度を調整することが好ましい。ドラムまたはバンドの表面は、鏡面状態に仕上げ
ておくことが好ましい。
二層以上の複数のセルロースアセテート液を流延する場合、複数のセルロースアセテー
ト溶液を流延することが可能で、支持体の進行方向に間隔をおいて設けられた複数の流延
口からセルロースアセテートを含む溶液をそれぞれ流延させて積層させながらフイルムを
作製してもよい。例えば、特開昭61−158414号、特開平1−122419号、お
よび、特開平11−198285号の各公報に記載の方法を用いることができる。また、
2つの流延口からセルロースアセテート溶液を流延することによってもフイルム化するこ
ともできる。例えば、特公昭60−27562号、特開昭61−94724号、特開昭6
1−947245号、特開昭61−104813号、特開昭61−158413号、およ
び、特開平6−134933号の各公報に記載の方法を用いることができる。また、特開
昭56−162617号公報に記載の高粘度セルロースアセテート溶液の流れを低粘度の
セルロースアセテート溶液で包み込み、その高、低粘度のセルロースアセテート溶液を同
時に押し出すセルロースアセテートフイルムの流延方法を用いることもできる。
また、二個の流延口を用いて、第一の流延口により支持体に成形したフイルムを剥ぎ取
り、支持体面に接していた側に第二の流延を行うことにより、フイルムを作製することも
できる。例えば、特公昭44−20235号公報に記載の方法を挙げることができる。流
延するセルロースアセテート溶液は同一の溶液を用いてもよいし、異なるセルロースアセ
テート溶液を用いてもよい。複数のセルロースアセテート層に機能をもたせるために、そ
の機能に応じたセルロースアセテート溶液を、それぞれの流延口から押し出せばよい。さ
らにセルロースアセテート溶液は、他の機能層(例えば、接着層、染料層、帯電防止層、
アンチハレーション層、紫外線吸収層、偏光層など)と同時に流延することもできる。
従来の単層液では、必要なフイルムの厚さにするためには高濃度で高粘度のセルロース
アセテート溶液を押し出すことが必要である。その場合セルロースアセテート溶液の安定
性が悪くて固形物が発生し、ブツ故障となったり、平面性が不良となったりして問題とな
ることが多かった。この問題の解決方法として、複数のセルロースアセテート溶液を流延
口から流延することにより、高粘度の溶液を同時に支持体上に押し出すことができ、平面
性も良化し優れた面状のフイルムが作製できるばかりでなく、濃厚なセルロースアセテー
ト溶液を用いることで乾燥負荷の低減化が達成でき、フイルムの生産スピードを高めるこ
とができる。
セルロースアセテートフイルムには、機械的物性を改良するためにポリエステルウレタ
ンを添加することが好ましい。またポリエステルウレタンは、下記一般式(1)で表され
るポリエステルとジイソシアナートとの反応物であることが好ましく、さらに、ジクロロ
メタンに可溶であることが好ましい。
一般式(1):
H−(−O−(CH2)p−OOC−(CH2)m−CO)n−O−(CH2)p−OH
一般式(1)中、pは、2乃至4の整数を表し;mは、2乃至4の整数を表し;nは、
1乃至100の整数を表す。
さらに詳細に述べると、その構成ポリエステルは、グリコール成分が、エチレングリコ
ール、1,3−プロパンジオール、または1,4−ブタンジオールであり、二塩基性酸成
分が、コハク酸、グルタル酸、またはアジピン酸からなる両末端にヒドロキシル基を有す
るポリエステルであり、その重合度nは1〜100の範囲にある。その最適な重合度は、
用いるグリコールおよび二塩基性酸の種類により若干異なり、ポリエステルの分子量とし
て1000乃至4500の範囲となることが特に好ましい。
ジクロロメタン可溶のポリエステルウレタン樹脂は、一般式(1)のポリエステルとジ
イソシアナートとの反応により得られ、下記一般式(2)で表される繰返し単位を有する
化合物である。
一般式(2):
−CONH−R−NHCO−(O−(CH2)p−OOC−(CH2)m−CO)n−O−(C
2)p−O)−
一般式(2)中、pは、2乃至4の整数を表し;mは、2乃至4の整数を表し;nは、
1乃至100の整数を表し;Rは、2価の原子団残基を表す。2価の原子団残基の例とし
ては、例えば下式のようなものが挙げられる。
Figure 2005165308
ポリウレタン化合物に用いられるジイソシアナート成分の例としては、エチレンジイソ
シアナート、トリメチレンジイソシアナート、テトラメチレンジイソシアナート、ヘキサ
メチレンジイソシアナート等で代表されるポリメチレンジイソシアナート(一般式:OC
N(CH2)pNCO(pは、2〜8の整数を表す))、p−フェニレンジイソシアナート
、トリレンジイソシアナート、p,p'−ジフェニルメタンジイソシアナート、1,5−
ナフチレンジイソシアナート等の芳香族ジイソシアナート、および、m−キシリレンジイ
ソシアナート等が挙げられるが、これらに制限されるものではない。これらの中でも、ト
リレンジイソシアナート、m−キシリレンジイソシアナート、およびテトラメチレンジイ
ソシアナートは、入手も容易であり、比較的安定で取扱いも容易であり、そして、ポリウ
レタン化した場合にセルロースアセテートとの相溶性が優れているので好ましい。
ポリエステルウレタン樹脂の分子量は、2,000乃至50,000の範囲にあること
が好ましく、成分ポリエステル類またはこれらの連結グループであるジイソシアナート成
分の種類又は分子量等により、適宜選定する。ポリエステルウレタン樹脂の分子量は、セ
ルロースアセテートフイルムの機械的物性の向上とセルロースアセテートに対する相溶性
の点で、5,000乃至15,000の範囲にあることがさらに好ましい。ジクロロメタ
ン可溶性ポリエステルウレタンの合成は、一般式(1)で表わされるポリエステルジオー
ル類とジイソシアナートとを混合し、攪拌下加熱することにより容易に得ることができる
。一般式(1)で表されるポリエステル類は、相当する二塩基性酸もしくはそのアルキル
エステル類と、グリコール類とのポリエステル化反応もしくはエステル交換反応による熱
溶融縮合法、あるいは、これらの酸の酸クロリドとグリコール類との界面縮合法のいずれ
かの方法により、末端基がヒドロキシル基となるよう適宜調整すれば容易に合成できる。
本発明に用いるジクロロメタン可溶性ポリエステルウレタン樹脂は、酢化度58%以上
のセルロースアセテートと極めて相溶性がよい。樹脂の構造により若干の相異は認められ
るが、ポリエステルウレタンの分子量が10,000以下の場合、酢酸繊維素100質量
部に対してポリエステルウレタン200質量部でも相溶する。
従って、ポリエステルウレタン樹脂をセルロースアセテートに混合し、その皮膜の機械
的物性を改善しようとする場合、ポリエステルウレタン樹脂の含有量は、ウレタン樹脂の
種類、分子量、所望の機械的物性により適当に定めればよい。セルロースアセテートの特
性を保持したまま機械的物性を改善しようとする場合には、セルロースアセテートに対し
て、ポリエステルウレタン樹脂を10乃至50質量%含有させることが好ましい。また、
このポリエステルウレタン樹脂は、少くとも180℃までは安定で熱分解しない。このジ
クロロメタン可溶性のポリエステルウレタン類は、特に58%以上の酢化度のセルロース
アセテートに対して極めて相溶性がよい。従って、両者を混合して製膜すると、極めて透
明度の高いフイルムが得られる。しかも、これらのポリエステルウレタン類は、その平均
分子量が高いため、従来の低分子の可塑剤とは異なり、高温においても揮発性は殆んどな
い。従って、これらの混合物より製膜して得られた皮膜は、その後の加工において、従来
の可塑剤においてみられた可塑剤の揮発や、移行による不都合が少ない。
ポリエステルウレタンをセルロースアセテートフイルムに添加することにより、高温お
よび低温における耐折強度および引裂き強度が大きくなり、そして、フイルムが裂けるよ
うな不都合がなくなる。従来、皮膜の耐折強度や引裂き強度を向上するのに、低分子可塑
剤が用いられていた。この方法では、常温、高湿状態においてはある程度の効果はあるが
、低温、高湿状態においては皮膜の柔軟性がなくなり、必ずしも満足すべき結果は得られ
なかった。さらに、低分子可塑剤により機械的性質の改善を試みると、可塑剤の添加量と
共に引張り強度の様な機械的性質が著しく低下するのが一般的であった。ジクロロメタン
可溶性ポリエステルウレタン樹脂をセルロースアセテートに添加した場合は、樹脂の添加
量と共に若干の引張り強度の低下は認められるが、低分子可塑剤添加の場合と比較して、
明らかに強度の低下が少く、無添加の場合とほぼ同等の耐折強度の大きい強靱なフイルム
が得られる。さらに、このポリエステルウレタンを混合することにより、低温、高湿にお
ける可塑剤の移行を防止できる。そのため、フイルム相互が接着せず、かつ非常に柔軟性
があり、しわもきしむことのない透明で光沢のあるフイルムが得られる。
セルロースアセテートフイルムには機械的物性を改良するために、上記のポリエステル
ウレタンを添加することが好ましいが、ポリエステルウレタンに代え、またはポリエステ
ルウレタンと併用して、以下の可塑剤を用いることができる。
可塑剤としては、リン酸エステルまたはカルボン酸エステルが用いられる。リン酸エステルの例には、トリフェニルフォスフェート(TPP)およびトリクレジルホスフェート(TCP)が含まれる。カルボン酸エステルとしては、フタル酸エステルおよびクエン酸エステルが代表的である。
フタル酸エステルの例には、ジメチルフタレート(DMP)、ジエチルフタレート(DEP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジオクチルフタレート(DOP)、ジフェニルフタレート(DPP)およびジエチルヘキシルフタレート(DEHP)が含まれる。クエン酸エステルの例には、O−アセチルクエン酸トリエチル(OACTE)およびO−アセチルクエン酸トリブチル(OACTB)が含まれる。その他のカルボン酸エステルの例には、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバシン酸ジブチル、種々のトリメリット酸エステルが含まれる。フタル酸エステル系可塑剤(DMP、DEP、DBP、DOP、DPP、DEHP)が好ましく用いられる。DEPおよびDPPが特に好ましい。
可塑剤の添加量は、セルロースエステルの量の0.1乃至25質量%であることが好ましく、1乃至20質量%であることがさらに好ましく、3乃至15質量%であることが最も好ましい。
セルロースアセテートフイルムには、劣化防止剤(例、酸化防止剤、過酸化物分解剤、
ラジカル禁止剤、金属不活性化剤、酸捕獲剤、アミン)を添加してもよい。劣化防止剤に
ついては、特開平3−199201号、同5−1907073号、同5−194789号
、同5−271471号、同6−107854号の各公報に記載がある。劣化防止剤の添
加量は、調製する溶液(ドープ)の0.01乃至1質量%であることが好ましく、0.0
1乃至0.2質量%であることがさらに好ましい。添加量が0.01質量%未満であると
、劣化防止剤の効果がほとんど認められない。添加量が1質量%を越えると、フイルム表
面への劣化防止剤のブリードアウト(滲み出し)が認められる場合がある。特に好ましい
劣化防止剤の例としては、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、トリベンジルアミン
(TBA)を挙げることができる。
(二軸延伸)
セルロースアセテートフイルムは、仮想歪みを低減させるために、延伸処理をすること
が好ましい。延伸することにより、延伸方向の仮想歪みが低減できるので、面内すべての
方向で歪みを低減するために二軸延伸することがさらに好ましい。二軸延伸には、同時二
軸延伸法と逐次二軸延伸法があるが、連続製造の観点から逐次二軸延伸方法が好ましく、
ドープを流延した後、バンドもしくはドラムよりフイルムを剥ぎ取り、幅方向(長手方法
)に延伸した後、長手方向(幅方向)に延伸される。幅方向に延伸する方法は、例えば、
特開昭62−115035号、特開平4−152125号、同4−284211号、同4
−298310号、同11−48271号などの各公報に記載されている。
フイルムの延伸は、常温または加熱条件下で実施する。加熱温度は、フイルムのガラス
転移温度以下であることが好ましい。フイルムは、乾燥中の処理で延伸することができ、
特に溶媒が残存する場合は有効である。長手方向の延伸の場合、例えば、フイルムの搬送
ローラーの速度を調節して、フイルムの剥ぎ取り速度よりもフイルムの巻き取り速度の方
を速くするとフイルムは延伸される。幅方向の延伸の場合、フイルムの巾をテンターで保
持しながら搬送して、テンターの巾を徐々に広げることによってもフイルムを延伸できる
。フイルムの乾燥後に、延伸機を用いて延伸すること(好ましくはロング延伸機を用いる
一軸延伸)もできる。フイルムの延伸倍率(元の長さに対する延伸による増加分の比率)
は、5乃至50%の範囲にあることが好ましく、10乃至40%の範囲にあることがさら
に好ましく、15乃至35%の範囲にあることが最も好ましい。
これら流延から後乾燥までの工程は、空気雰囲気下でもよいし窒素ガスなどの不活性ガ
ス雰囲気下でもよい。本発明に用いるセルロースアセテートフイルムの製造に用いる巻き
取り機は一般的に使用されているものでよく、定テンション法、定トルク法、テーパーテ
ンション法、内部応力一定のプログラムテンションコントロール法などの巻き取り方法で
巻き取ることができる。
(セルロースアセテートフイルムの表面処理)
セルロースアセテートフイルムは、表面処理を施すことが好ましい。具体的方法として
は、コロナ放電処理、グロー放電処理、火炎処理、酸処理、アルカリ処理または紫外線照
射処理が挙げられる。また、特開平7−333433号公報に記載のように、下塗り層を
設けることも好ましい。フイルムの平面性を保持する観点から、これら処理においてセル
ロースアセテートフイルムの温度をTg(ガラス転移温度)以下、具体的には150℃以
下とすることが好ましい。
セルロースアセテートフイルムを偏光板の透明保護膜として使用する場合、偏光膜との
接着性の観点から、酸処理またはアルカリ処理、すなわちセルロースアセテートに対する
ケン化処理を実施することが特に好ましい。表面エネルギーは55mN/m以上であるこ
とが好ましく、60mN/m以上75mN/m以下であることが更に好ましい。
以下、アルカリ鹸化処理を例に、具体的に説明する。セルロースアセテートフイルムの
アルカリ鹸化処理は、フイルム表面をアルカリ溶液に浸漬した後、酸性溶液で中和し、水
洗して乾燥するサイクルで行われることが好ましい。アルカリ溶液としては、水酸化カリ
ウム溶液、水酸化ナトリウム溶液が挙げられ、水酸化イオンの規定濃度は0.1乃至3.
0Nの範囲にあることが好ましく、0.5乃至2.0Nの範囲にあることがさらに好まし
い。アルカリ溶液温度は、室温乃至90℃の範囲にあることが好ましく、40乃至70℃
の範囲にあることがさらに好ましい。
固体の表面エネルギーは、「ぬれの基礎と応用」(リアライズ社 1989.12.1
0発行)に記載のように接触角法、湿潤熱法、および吸着法により求めることができる。
本発明のセルロースアセテートフイルムの場合、接触角法を用いることが好ましい。具体的には、表面エネルギーが既知である2種の溶液をセルロースアセテートフイルムに滴下し、液滴の表面とフイルム表面との交点において、液滴に引いた接線とフイルム表面のなす角で、液滴を含む方の角を接触角と定義し、計算によりフイルムの表面エネルギーを算出できる。
[配向膜]
本発明の偏光板に用いられる光学補償シートは、支持体、好ましくはセルロースアセテ
ートフイルム(以下、支持体の例示であるセルロースアセテートフイルムを支持体の代表
として用いて説明する)の上に、液晶性化合物から形成された光学異方性層を設けること
により作製することができる。本発明では、セルロースアセテートフイルム上に設ける光
学異方性層との間に、配向膜を設けることが好ましい。配向膜は、本発明で用いる液晶性
化合物を一定の方向に配向させる働きをする。従って、配向膜は本発明の光学補償シート
を製造する上では必須である。しかし、液晶性化合物を配向後にその配向状態を固定して
しまえば、配向膜はその役割を果たし終えているために、光学補償シートの構成要素とし
ては必ずしも必須のものではない。すなわち、配向状態が固定された配向膜上の光学異方
性層のみをセルロースアセテートフイルム上に転写して光学補償シートを作製することも
可能である。
配向膜は、液晶性化合物の配向方向を規定する機能を有する。配向膜は、有機化合物(
好ましくはポリマー)のラビング処理、無機化合物の斜方蒸着、マイクログルーブを有す
る層の形成、あるいはラングミュア・ブロジェット法(LB膜)による有機化合物(例、
ω−トリコサン酸、ジオクタデシルメチルアンモニウムクロライド、ステアリル酸メチル
)の累積のような手段で、設けることができる。さらに、電場の付与、磁場の付与あるい
は光照射により、配向機能が生じる配向膜も知られている。配向膜は、ポリマーのラビン
グ処理により形成することが好ましい。
配向膜は、ポリマーのラビング処理により形成することが好ましい。ポリビニルアルコ
ールが、好ましいポリマーである。疎水性基が結合している変性ポリビニルアルコールが
特に好ましい。配向膜は、一種類のポリマーから形成することもできるが、架橋された二
種類のポリマーからなる層をラビング処理することにより形成することがさらに好ましい
。少なくとも一種類のポリマーとして、それ自体架橋可能なポリマーか、架橋剤により架
橋されるポリマーのいずれかを用いることが好ましい。配向膜は、官能基を有するポリマ
ーあるいはポリマーに官能基を導入したものを、光、熱、PH変化等により、ポリマー間
で反応させて形成するか;あるいは、反応活性の高い化合物である架橋剤を用いてポリマ
ー間に架橋剤に由来する結合基を導入して、ポリマー間を架橋することにより形成するこ
とができる。
このような架橋は、上記ポリマーまたはポリマーと架橋剤の混合物を含む配向膜塗布液
を、セルロースアセテートフイルム上に塗布したのち、加熱等を行なうことにより実施さ
れる。光学補償シートの耐久性が確保できれば良いので、配向膜をセルロースアセテート
フイルム上に塗設した後から、光学補償シートを得るまでのいずれの段階で架橋させる処
理を行なっても良い。配向膜上に形成される液晶性化合物からなる層(光学異方性層)の
配向性を考えると、液晶性化合物を配向させたのちに、充分架橋を行なうことも好ましい
。配向膜の架橋は、セルロースアセテートフイルム上に配向膜塗布液を塗布し、加熱乾燥
することで行われることが一般的である。この塗布液の加熱温度を低く設定して、後述の
光学異方性層を形成する際の加熱処理の段階で配向膜の充分な架橋を行うことが好ましい。
配向膜に用いるポリマーとしては、それ自体架橋可能なポリマーあるいは架橋剤により
架橋されるポリマーのいずれも使用することができる。勿論両方可能なポリマーもある。
ポリマーの例としては、ポリメチルメタクリレート、アクリル酸/メタクリル酸共重合体、スチレン/マレインイミド共重合体、ポリビニルアルコール及び変性ポリビニルアルコール、ポリ(N−メチロールアクリルアミド)、スチレン/ビニルトルエン共重合体、クロロスルホン化ポリエチレン、ニトロセルロース、ポリ塩化ビニル、塩素化ポリオレフィン、ポリエステル、ポリイミド、酢酸ビニル/塩化ビニル共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレン、ポリプロピレン、およびポリカーボネート等のポリマー、およびシランカップリング剤等の化合物を挙げることができる。好ましいポリマーの例としては、ポリ(N−メチロールアクリルアミド)、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン、ポリビルアルコールおよび変性ポリビニルアルコール等の水溶性ポリマーが挙げられる。ゼラチン、ポリビルアルコールおよび変性ポリビニルアルコールを用いることが好ましく、ポリビルアルコールおよび変性ポリビニルアルコールを用いることがさらに好ましい。また、重合度の異なるポリビニルアルコールまたは変性ポリビニルアルコールを二種類併用することが最も好ましい。
ポリビニルアルコールの例としては、鹸化度が70乃至100%の範囲にあるポリビニ
ルアルコールが挙げられる。一般に鹸化度は80乃至100%の範囲にあり、85乃至9
5%の範囲にあることがさらに好ましい。また、ポリビニルアルコールの重合度は、10
0乃至3000の範囲にあることが好ましい。変性ポリビニルアルコールの例としては、
共重合変性、連鎖移動による変性、またはブロック重合による変性をしたポリビニルアル
コールなどを挙げることができる。共重合変性する場合の変性基の例としては、COON
a、Si(OX)3、N(CH33・Cl、C919COO、SO3、Na、C1225などが挙げられる。連鎖移動による変性をする場合の変性基の例としては、COONa、SH、C1225などが挙げられる。また、ブロック重合による変性をする場合の変性基の例としては、COOH、CONH2、COOR、C65などが挙げられる。これらの中でも、鹸化度が80乃至100%の範囲にある未変性もしくは変性ポリビニルアルコールが好ましい。また、鹸化度が85乃至95%の範囲にある未変性ポリビニルアルコールおよび変性ポリビニルアルコールがさらに好ましい。
変性ポリビニルアルコールとしては、特に、下記一般式で表される化合物により変性さ
れたポリビニルアルコールの変性物を用いることが好ましい。この変性ポリビニルアルコ
ールを、以下、特定の変性ポリビニルアルコールと記載する。
Figure 2005165308
式中、R1は、アルキル基、アクリロイルアルキル基、メタクリロイルアルキル基、ま
たはエポキシアルキル基を表し;Wは、ハロゲン原子、アルキル基、またはアルコキシ基
を表し;Xは、活性エステル、酸無水物、または酸ハロゲン化物を形成するために必要な
原子群を表し;pは、0または1を表し;そしてnは、0乃至4の整数を表す。上記の特
定の変性ポリビニルアルコールは、さらに下記一般式で表される化合物によるポリビニル
アルコールの変性物であることが好ましい。
Figure 2005165308
式中、X1は、活性エステル、酸無水物、または酸ハロゲン化物を形成するために必要
な原子群を表し、そしてmは2乃至24の整数を表す。
これらの一般式により表される化合物と反応させるために用いるポリビニルアルコール
としては、前述の、未変性のポリビニルアルコール、および、共重合変性したもの、即ち
連鎖移動により変性したもの、ブロック重合による変性をしたものなどのポリビニルアル
コールの変性物を挙げることができる。特定の変性ポリビニルアルコールの好ましい例は
、特開平9−152509号公報に詳しく記載されている。これらポリマーの合成方法、
可視吸収スペクトル測定、および変性基導入率の決定方法等は、特開平8−338913
号公報に詳しく記載がある。
架橋剤の例としては、アルデヒド類、N−メチロール化合物、ジオキサン誘導体、カル
ボキシル基を活性化することにより作用する化合物、活性ビニル化合物、活性ハロゲン化
合物、イソオキサゾール類、およびジアルデヒド澱粉などを挙げることができる。アルデ
ヒド類の例としては、ホルムアルデヒド、グリオキザール、およびグルタルアルデヒドが
挙げられる。N−メチロール化合物の例としては、ジメチロール尿素およびメチロールジ
メチルヒダントインが挙げられる。ジオキサン誘導体の例としては、2,3−ジヒドロキ
シジオキサンが挙げられる。カルボキシル基を活性化することにより作用する化合物の例
としては、カルベニウム、2−ナフタレンスルホナート、1,1−ビスピロリジノ−1−
クロロピリジニウム、および1−モルホリノカルボニル−3−(スルホナトアミノメチル
)が挙げられる。活性ビニル化合物の例としては、1,3,5−トリアクロイル−ヘキサ
ヒドロ−s−トリアジン、ビス(ビニルスルホン)メタン、およびN,N'−メチレンビ
ス−[β−(ビニルスルホニル)プロピオンアミド]が挙げられる。そして、活性ハロゲ
ン化合物の例としては、2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−S−トリアジンが挙げられ
る。これらは、単独または組合せて用いることができる。これらは上記水溶性ポリマー、
特にポリビニルアルコール及び変性ポリビニルアルコール(上記特定の変性物も含む)と
併用する場合に好ましい。生産性を考慮した場合、反応活性の高いアルデヒド類、とりわ
けグルタルアルデヒドの使用が好ましい。
ポリマーに対する架橋剤の添加量に特に限定はない。耐湿性は、架橋剤を多く添加した
方が良化傾向にある。しかし、架橋剤をポリマーに対して50質量%以上添加した場合に
は、配向膜としての配向能が低下する。従って、ポリマーに対する架橋剤の添加量は、0
.1乃至20質量%の範囲にあることが好ましく、0.5乃至15質量%の範囲にあるこ
とがさらに好ましい。配向膜は、架橋反応が終了した後でも、反応しなかった架橋剤をあ
る程度含んでいるが、その架橋剤の量は、配向膜中に1.0質量%以下であることが好ま
しく、0.5質量%以下であることがさらに好ましい。配向膜中に1.0質量%を超える
量で未反応の架橋剤が含まれていると、充分な耐久性が得られない。即ち、液晶表示装置
に使用した場合、長期使用、あるいは高温高湿の雰囲気下に長期間放置した場合に、レチ
キュレーションが発生することがある。
配向膜は、上記ポリマーを含む溶液、あるいは上記ポリマーと架橋剤を含む溶液を、セ
ルロースアセテートフイルム上に塗布した後、加熱乾燥し(架橋させ)、ラビング処理す
ることにより形成することができる。架橋反応は、塗布液をセルロースアセテートフイル
ム上に塗布した後、任意の時期に行なっても良い。そして、ポリビニルアルコール等の水
溶性ポリマーを配向膜形成材料として用いる場合、その塗布液を作製するための溶媒は、
消泡作用のあるメタノール等の有機溶媒とするか、あるいは有機溶媒と水の混合溶媒とす
ることが好ましい。有機溶媒としてメタノールを用いる場合、その比率は質量比で水:メ
タノールが、0:100〜99:1が一般的であり、0:100〜91:9であることが
さらに好ましい。これにより、泡の発生が抑えられ、配向膜、更には光学異方性層の表面
の欠陥が著しく減少する。
塗布方法としては、スピンコーティング法、ディップコーティング法、カーテンコーテ
ィング法、エクストルージョンコーティング法、バーコーティング法及びE型塗布法を挙
げることができる。この中でも、特にE型塗布法が好ましい。
配向膜の膜厚は、0.1乃至10μmの範囲にあることが好ましい。加熱乾燥は、加熱
温度が20乃至110℃の範囲で行なうことができる。充分な架橋を形成させるためには
、加熱温度は60乃至100℃の範囲にあることが好ましく、80乃至100℃の範囲に
あることが好ましい。乾燥時間は1分〜36時間で行なうことができる。好ましくは5乃
至30分間である。pHも、使用する架橋剤に最適な値に設定することが好ましく、グル
タルアルデヒドを使用した場合は、pH4.5乃至5.5の範囲にあることが好ましく、
特にpH5であることが好ましい。
ラビング処理は、液晶表示装置の液晶配向処理工程として広く採用されている処理方法
を利用することができる。即ち、配向膜の表面を、紙やガーゼ、フェルト、ゴムあるいは
ナイロン、ポリエステル繊維などを用いて一定方向に擦ることにより配向を得る方法を用
いることができる。一般的には、長さ及び太さが均一な繊維を平均的に植毛した布などを
用いて数回程度ラビングを行うことにより実施される。
[光学異方性層]
本発明において、液晶性化合物から形成される光学異方性層は、セルロースアセテート
フイルム上に設けられた配向膜の上に形成される。光学異方性層に用いる液晶性化合物に
は、棒状液晶性化合物および円盤状液晶性化合物が含まれる。棒状液晶性化合物および円
盤状液晶性化合物は、高分子液晶でも低分子液晶でもよく、さらに、低分子液晶が架橋し
て液晶性を示さなくなったものも含まれる。
光学異方性層は、液晶性化合物および必要に応じて重合性開始剤や任意の成分を含む塗
布液を、配向膜の上に塗布することで形成できる。
塗布液の調整に使用する溶媒としては、有機溶媒が好ましく用いられる。有機溶媒の例
には、アミド(例、N,N−ジメチルホルムアミド)、スルホキシド(例、ジメチルスル
ホキシド)、ヘテロ環化合物(例、ピリジン)、炭化水素(例、ベンゼン、ヘキサン)、
アルキルハライド(例、クロロホルム、ジクロロメタン、テトラクロロエタン)、エステ
ル(例、酢酸メチル、酢酸ブチル)、ケトン(例、アセトン、メチルエチルケトン)、エ
ーテル(例、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン)が含まれる。アルキルハ
ライドおよびケトンが好ましい。二種類以上の有機溶媒を併用してもよい。塗布液の塗布
は、公知の方法(例、ワイヤーバーコーティング法、押し出しコーティング法、ダイレク
トグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、ダイコーティング法)に
より実施できる。
光学異方性層の厚さは、0.1乃至20μmであることが好ましく、0.5乃至15μ
mであることがさらに好ましく、1乃至10μmであることが最も好ましい。本発明に用
いる液晶性化合物としては、円盤状液晶性化合物を用いることが好ましい。
(棒状液晶性化合物)
棒状液晶性化合物としては、アゾメチン類、アゾキシ類、シアノビフェニル類、シアノ
フェニルエステル類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル
類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置
換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類およびアルケニルシクロヘキ
シルベンゾニトリル類が好ましく用いられる。なお、棒状液晶性化合物には、金属錯体も
含まれる。また、棒状液晶性化合物を繰り返し単位中に含む液晶ポリマーも、棒状液晶性
化合物として用いることができる。言い換えると、棒状液晶性化合物は、(液晶)ポリマ
ーと結合していてもよい。棒状液晶性化合物については、季刊化学総説第22巻液晶の化
学(1994)日本化学会編の第4章、第7章および第11章、および液晶デバイスハン
ドブック日本学術振興会第142委員会編の第3章に記載がある。棒状液晶性化合物の複
屈折率は、0.001乃至0.7の範囲にあることが好ましい。棒状液晶性化合物は、そ
の配向状態を固定するために、重合性基を有することが好ましい。重合性基(Q)の例を
、以下に示す。
Figure 2005165308
重合性基(Q)は、不飽和重合性基(Q1〜Q7)、エポキシ基(Q8)またはアジリ
ジニル基(Q9)であることが好ましく、不飽和重合性基であることがさらに好ましく、
エチレン性不飽和重合性基(Q1〜Q6)であることが最も好ましい。棒状液晶性化合物
は、短軸方向に対してほぼ対称となる分子構造を有することが好ましい。そのためには、
棒状分子構造の両端に重合性基を有することが好ましい。以下に、棒状液晶性化合物の例
を示す。
Figure 2005165308
Figure 2005165308
Figure 2005165308
Figure 2005165308
Figure 2005165308
Figure 2005165308
Figure 2005165308
Figure 2005165308
Figure 2005165308
Figure 2005165308
Figure 2005165308
Figure 2005165308
Figure 2005165308
光学異方性層は、棒状液晶性化合物あるいは後述の重合性開始剤や任意の添加剤(例、
可塑剤、モノマー、界面活性剤、セルロースエステル、1,3,5−トリアジン化合物、
カイラル剤)を含む液晶組成物(塗布液)を、配向膜の上に塗布することで形成すること
ができる。
(円盤状液晶性化合物)
円盤状(ディスコティック)液晶性化合物の例としては、C.Destradeらの研
究報告、Mol.Cryst.71巻、111頁(1981年)に記載されているベンゼ
ン誘導体、C.Destradeらの研究報告、Mol.Cryst.122巻、141
頁(1985年)、Physics lett,A,78巻、82頁(1990)に記載
されているトルキセン誘導体、B.Kohneらの研究報告、Angew.Chem.9
6巻、70頁(1984年)に記載されたシクロヘキサン誘導体及びJ.M.Lehnら
の研究報告、J.Chem.Commun.,1794頁(1985年)、J.Zhan
gらの研究報告、J.Am.Chem.Soc.116巻、2655頁(1994年)に
記載されているアザクラウン系やフェニルアセチレン系マクロサイクルなどを挙げること
ができる。さらに、円盤状液晶性化合物としては、一般的にこれらを分子中心の母核とし
、直鎖のアルキル基やアルコキシ基、置換ベンゾイルオキシ基等がその直鎖として放射線
状に置換された構造のものも含まれ、液晶性を示す。ただし、分子自身が負の一軸性を有
し、一定の配向を付与できるものであればこれらに限定されるものではない。また、本発
明において、円盤状液晶性化合物から形成する光学異方性層は、最終的にできた物が前記
化合物である必要はなく、例えば、低分子の円盤状液晶性化合物が熱、光等で反応する基
を有しており、結果的に熱、光等で反応により重合または架橋し、高分子量化し液晶性を
失ったものも含まれる。円盤状液晶性化合物の好ましい例は、特開平8−50206号公
報に記載されている。また、円盤状液晶性化合物の重合については、特開平8−2728
4公報に記載がある。
円盤状液晶性化合物を重合により固定するためには、円盤状液晶性化合物の円盤状コア
に、置換基として重合性基を結合させる必要がある。ただし、円盤状コアに重合性基を直
結させると、重合反応において配向状態を保つことが困難になる。そこで、円盤状コアと
重合性基との間に、連結基を導入する。従って、重合性基を有する円盤状液晶性化合物は
、下記一般式(3)で表される化合物であることが好ましい。
一般式(3):D(−L−P)n
一般式(3)中、Dは円盤状コアであり;Lは二価の連結基であり、Pは重合性基であ
り、そして、nは4乃至12の整数である。円盤状コア(D)の例を以下に示す。以下の
各例において、LP(またはPL)は、二価の連結基(L)と重合性基(P)との組み合
わせを意味する。
Figure 2005165308
Figure 2005165308
Figure 2005165308
Figure 2005165308
Figure 2005165308
Figure 2005165308
Figure 2005165308
Figure 2005165308
Figure 2005165308
一般式(3)において、二価の連結基(L)は、アルキレン基、アルケニレン基、アリ
ーレン基、−CO−、−NH−、−O−、−S−およびそれらの組み合わせからなる群よ
り選ばれる二価の連結基であることが好ましい。二価の連結基(L)は、アルキレン基、
アリーレン基、−CO−、−NH−、−O−および−S−からなる群より選ばれる二価の
基を少なくとも二つ組み合わせた二価の連結基であることがさらに好ましい。二価の連結
基(L)は、アルキレン基、アリーレン基、−CO−および−O−からなる群より選ばれ
る二価の基を少なくとも二つ組み合わせた二価の連結基であることが最も好ましい。アル
キレン基の炭素原子数は、1乃至12であることが好ましい。アルケニレン基の炭素原子
数は、2乃至12であることが好まし。アリーレン基の炭素原子数は、6乃至10である
ことが好ましい。
二価の連結基(L)の例を以下に示す。左側が円盤状コア(D)に結合し、右側が重合
性基(P)に結合する。ALはアルキレン基またはアルケニレン基、ARはアリーレン基
を意味する。なお、アルキレン基、アルケニレン基およびアリーレン基は、置換基(例、
アルキル基)を有していてもよい。
L1:−AL−CO−O−AL−
L2:−AL−CO−O−AL−O−
L3:−AL−CO−O−AL−O−AL−
L4:−AL−CO−O−AL−O−CO−
L5:−CO−AR−O−AL−
L6:−CO−AR−O−AL−O−
L7:−CO−AR−O−AL−O−CO−
L8:−CO−NH−AL−
L10:−NH−AL−O−CO−
L11:−O−AL−
L12:−O−AL−O−
L13:−O−AL−O−CO−
L14:−O−AL−O−CO−NH−AL−
L15:−O−AL−S−AL−
L16:−O−CO−AR−O−AL−CO−
L17:−O−CO−AR−O−AL−O−CO−
L18:−O−CO−AR−O−AL−O−AL−O−CO−
L19:−O−CO−AR−O−AL−O−AL−O−AL−O−CO−
L20:−S−AL−
L21:−S−AL−O−
L22:−S−AL−O−CO−
L23:−S−AL−S−AL−
L24:−S−AR−AL−
一般式(3)の重合性基(P)は、重合反応の種類に応じて決定する。重合性基(P)の例を以下に示す。
Figure 2005165308
Figure 2005165308
Figure 2005165308
Figure 2005165308
Figure 2005165308
Figure 2005165308
重合性基(P)は、不飽和重合性基(P1、P2、P3、P7、P8、P15、P16
、P17)またはエポキシ基(P6、P18)であることが好ましく、不飽和重合性基で
あることがさらに好ましく、エチレン性不飽和重合性基(P1、P7、P8、P15、P
16、P17)であることが最も好ましい。
一般式(3)において、上記したように、nは4乃至12の整数である。具体的な数字
は、円盤状コア(D)の種類に応じて決定される。なお、複数のLとPの組み合わせは、
異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。
円盤状液晶性化合物を用いる場合、光学異方性層は負の複屈折を有する層であって、そ
して円盤状構造単位の面が、セルロースアセテートフイルム表面に対して傾き、且つ円盤
状構造単位の面とセルロースアセテートフイルム表面とのなす角度が、光学異方性層の深
さ方向に変化していることが好ましい。
円盤状構造単位の面の角度(傾斜角)は、一般に、光学異方性層の深さ方向でかつ光学
異方性層の底面からの距離の増加と共に増加または減少している。傾斜角は、距離の増加
と共に増加することが好ましい。さらに、傾斜角の変化としては、連続的増加、連続的減
少、間欠的増加、間欠的減少、連続的増加と連続的減少を含む変化、及び増加及び減少を
含む間欠的変化などを挙げることができる。間欠的変化は、厚さ方向の途中で傾斜角が変
化しない領域を含んでいる。傾斜角は、傾斜角が変化しない領域を含んでいても、全体と
して増加または減少していることが好ましい。さらに、傾斜角は全体として増加している
ことが好ましく、特に連続的に変化することが好ましい。
支持体側の円盤状単位の傾斜角は、一般に円盤状液晶性化合物あるいは配向膜の材料を
選択することにより、またはラビング処理方法の選択することにより、調整することがで
きる。また、表面側(空気側)の円盤状単位の傾斜角は、一般に円盤状液晶性化合物ある
いは円盤状液晶性化合物とともに使用する他の化合物を選択することにより調整すること
ができる。円盤状液晶性化合物とともに使用する化合物の例としては、可塑剤、界面活性
剤、重合性モノマー及びポリマーなどを挙げることができる。更に、傾斜角の変化の程度
も、上記と同様の選択により調整できる。
円盤状液晶性化合物とともに使用する可塑剤、界面活性剤及び重合性モノマーとしては
、円盤状液晶性化合物と相溶性を有し、円盤状液晶性化合物の傾斜角の変化を与えられる
か、あるいは配向を阻害しない限り、どのような化合物も使用することができる。これら
の中で、重合性モノマー(例、ビニル基、ビニルオキシ基、アクリロイル基及びメタクリ
ロイル基を有する化合物)が好ましい。上記化合物の添加量は、円盤状液晶性化合物に対
して一般に1〜50質量%の範囲にあり、5〜30質量%の範囲にあることが好ましい。
円盤状液晶性化合物とともに使用するポリマーとしては、円盤状液晶性化合物と相溶性
を有し、円盤状液晶性化合物に傾斜角の変化を与えられる限り、どのようなポリマーでも
使用することができる。ポリマーの例としては、セルロースエステルを挙げることができ
る。セルロースエステルの好ましい例としては、セルロースアセテート、セルロースアセ
テートプロピオネート、ヒドロキシプロピルセルロース及びセルロースアセテートブチレ
ートを挙げることができる。円盤状液晶性化合物の配向を阻害しないように、上記ポリマ
ーの添加量は、円盤状液晶性化合物に対して一般に0.1〜10質量%の範囲にあり、0
.1〜8質量%の範囲にあることがより好ましく、0.1〜5質量%の範囲にあることが
さらに好ましい。
光学異方性層は、一般に円盤状液晶性化合物および他の化合物を溶剤に溶解した溶液を
配向膜上に塗布し、乾燥し、次いでディスコティックネマチック相形成温度まで加熱し、
その後配向状態(ディスコティックネマチック相)を維持して冷却することにより得られ
る。あるいは、上記光学異方性層は、円盤状液晶性化合物及び他の化合物(更に、例えば
重合性モノマー、光重合開始剤)を溶剤に溶解した溶液を配向膜上に塗布し、乾燥し、次
いでディスコティックネマチック相形成温度まで加熱したのち重合させ(UV光の照射等
により)、さらに冷却することにより得られる。本発明に用いる円盤状液晶性化合物のデ
ィスコティックネマティック液晶相−固相転移温度としては、70〜300℃が好ましく
、特に70〜170℃が好ましい。
(液晶性化合物の配向状態の固定)
配向させた液晶性化合物を、配向状態を維持して固定することができる。固定化は、重
合反応により実施することが好ましい。重合反応には、熱重合開始剤を用いる熱重合反応
と光重合開始剤を用いる光重合反応とが含まれる。光重合反応が好ましい。
光重合開始剤の例には、α−カルボニル化合物(米国特許2367661号、同236
7670号の各明細書記載)、アシロインエーテル(米国特許2448828号明細書記
載)、α−炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許2722512号明細書記載
)、多核キノン化合物(米国特許3046127号、同2951758号の各明細書記載
)、トリアリールイミダゾールダイマーとp−アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米
国特許3549367号明細書記載)、アクリジンおよびフェナジン化合物(特開昭60
−105667号公報、米国特許4239850号明細書記載)およびオキサジアゾール
化合物(米国特許4212970号明細書記載)が含まれる。
光重合開始剤の使用量は、塗布液の固形分の0.01乃至20質量%の範囲にあること
が好ましく、0.5乃至5質量%の範囲にあることがさらに好ましい。液晶性化合物の
重合のための光照射は、紫外線を用いることが好ましい。照射エネルギーは、20mJ/
cm2乃至50J/cm2の範囲にあることが好ましく、20乃至5000mJ/cm2
範囲にあることがより好ましく、100乃至800mJ/cm2の範囲にあることがさら
に好ましい。
また、光重合反応を促進するため、加熱条件下で光照射を実施してもよい。保護層を、
光学異方性層の上に設けてもよい。以上のように、セルロースアセテートフイルム上に光
学異方性層を設けることにより光学補償シートを作製することができる。
[液晶表示装置]
上記の光学補償シートと偏光膜とを貼り合わせて作製される偏光板は、液晶表示装置、
特に透過型液晶表示装置に有利に用いられる。透過型液晶表示装置は、液晶セルおよびそ
の両側に配置された二枚の偏光板からなる。液晶セルは、二枚の電極基板の間に液晶を担
持している。本発明の偏光板は、液晶セルの両側に配置された二枚の偏光板のうちの少な
くとも一方として用いればよい。TNモードの液晶セルでは、電圧無印加時に棒状液晶性
分子が実質的に水平配向し、さらに60乃至120゜にねじれ配向している。TNモード
の液晶セルは、カラーTFT液晶表示装置として最も多く利用されており、多数の文献に
記載がある。
また本発明の光学補償シートは、TNモードの液晶セル以外にも、OCB(Optically
Compensatory Bend)、VA(Vertically Aligned)、IPS(In Plane Switching
)等の液晶表示装置にも有利に利用できる。
以下に実施例等をあげて本発明を詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定され
るものではない。
[参考例1:TN用光学補償シート1を有する偏光板の作製]
(セルロースアセテートフイルムの作製)
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、
セルロースアセテート溶液(ドープ)を調製した。
<セルロースアセテート溶液組成>
酢化度60.9%のセルロースアセテート 100質量部
トリフェニルホスフェート(可塑剤) 7.8質量部
ビフェニルジフェニルホスフェート(可塑剤) 3.9質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 250質量部
メタノール(第2溶媒) 20質量部
得られたドープを、バンド流延機を用いて流延した。残留溶剤量が40質量%のフィル
ムをバンドから剥がし、120℃の熱風を吹かせながら、搬送方向に101%のドローを
かけながら搬送しつつ、テンターで幅方向に3%拡幅しながら乾燥させた。次いでテンタ
ークリップを外した後、フイルムを140℃の熱風で20分乾燥し、残留溶剤量が0.3
質量%のセルロースアセテートフイルム(CF−01)(厚さ:110μm)を製造した。
作製したセルロースアセテートフイルムを2.0Nの水酸化カリウム溶液(25℃)に
2分間浸漬した後、硫酸で中和し、純水で水洗、乾燥し鹸化処理を行った。
(配向膜の形成)
作製したセルロースアセテートフイルム上に、下記の組成の塗布液を#14のワイヤー
バーコーターで24ml/m2塗布した。60℃の温風で60秒、さらに90℃の温風で
150秒乾燥した。次に、セルロースアセテートフイルムの長手方向と平行な方向に、形
成した膜にラビング処理を実施した。
<配向膜塗布液組成>
下記の変性ポリビニルアルコール 20質量部
水 360質量部
メタノール 120質量部
グルタルアルデヒド(架橋剤) 1.0質量部
Figure 2005165308
(光学異方性層の形成・光学補償シートの作製)
配向膜上に、下記の円盤状(液晶性)化合物91.0g、エチレンオキサイド変成トリ
メチロールプロパントリアクリレート(V#360、大阪有機化学(株)製)9.0g、
セルロースアセテートブチレート(CAB551−0.2、イーストマンケミカル社製)
2.0g、セルロースアセテートブチレート(CAB531−1、イーストマンケミカル
社製)0.5g、光重合開始剤(イルガキュアー907、チバガイギー社製)3.0g、
増感剤(カヤキュアーDETX、日本化薬(株)製)1.0gを、207gのメチルエチ
ルケトンに溶解した塗布液を、#3.6のワイヤーバーで6.2cc/m2塗布した。こ
れを130℃の恒温ゾーンで2分間加熱し、円盤状化合物を配向させた。次に、60℃の
雰囲気下で120W/cm高圧水銀灯を用いて、1分間UV照射し円盤状化合物を重合さ
せた。その後、室温まで放冷した。このようにして、光学異方性層を形成し、光学補償シ
ートを作製した。
このフイルムの光弾性係数を日本分光社製、エリプソメーターM−150で測定したと
ころ、12.8×10-12(1/Pa)であった。
Figure 2005165308
延伸したポリビニルアルコールフイルムにヨウ素を吸着させて偏光膜を作製し、ポリビ
ニルアルコール系接着剤を用いて、以上のように作製した光学補償シート(RF−01)
を、以上記載の鹸化処理を行った後、セルロースアセテートフイルムが偏光膜側となるよ
うに偏光膜の片側に貼り付けた。偏光膜の透過軸とセルロースアセテートフイルムの遅相
軸とは平行になるように配置した。市販のセルローストリアセテートフイルム(フジタッ
クTD80UF、富士写真フイルム(株)製)にケン化処理を行い、ポリビニルアルコー
ル系接着剤を用いて、偏光膜の反対側に保護膜として貼り付けた。このようにして偏光板
を作製した。この偏光板の片面にアクリル系粘着剤を乾燥後の厚みが25μmとなるよう
に形成し、偏光板の端の辺に対し吸収軸角度を45度となるように17インチ大の偏光板
を作成した。
[参考例2]
{TN用光学補償シート2を有する偏光板の作製}
(セルロースアセテートフイルムの作製)
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、
セルロースアセテート溶液を調製した。
<セルロースアセテート溶液組成>
酢化度60.9%のセルロースアセテート 100質量部
トリフェニルホスフェート(可塑剤) 7.8質量部
ビフェニルジフェニルホスフェート(可塑剤) 3.9質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 336質量部
メタノール(第2溶媒) 29質量部
得られたドープを、バンド流延機を用いて流延した。残留溶剤量が40質量%のフィル
ムをバンドから剥がし、120℃の熱風を吹かせながら、搬送方向に101%のドローを
かけながら搬送しつつ、テンターで幅方向に3%拡幅しながら乾燥させた。次いでテンタ
ークリップを外した後、フイルムを140℃の熱風で20分乾燥し、残留溶剤量が0.3
質量%のセルロースアセテートフイルム(厚さ:60μm)を製造した。
作製したセルロースアセテートフイルム上に参考例1と同様の方法で配向膜及び光学異
方性層を形成した。
このフイルムの光弾性係数を日本分光社製、エリプソメーターM−150で測定したと
ころ、15.5×10-12(1/Pa)であった。
以上のように作製した光学補償シートを用いて参考例1と同様の方法で偏光板を作製し
た。
[参考例3]
{TN用光学補償シート3を有する偏光板の作製}
ノルボルネンフイルム(厚さ80μm、日本ゼオン製)にコロナ放電処理を行った後、
そのフイルム上に参考例1と同様の方法で配向膜及び光学異方性層を形成した。
このフイルムの光弾性係数を日本分光社製、エリプソメーターM−150で測定したと
ころ、6.5×10-12(1/Pa)であった。
以上のように作製した光学補償シートに鹸化処理の代わりにコロナ処理を行い、その他
は参考例1と同様の方法で偏光板を作製した。
(比較例1)
石英ガラス板(光弾性係数が3.3×10-12(1/Pa))の両面に参考例1の偏光
板をクロスニコルに貼り合わせた。この場合のY値は40.7であった。
そのガラス板を60℃ドライの乾燥機に17時間入れ取り出した後、2000cd/m
2のライトテーブルの上に設置し目視にて暗室で確認を行い、光漏れの状態を確認した。 その結果、偏光板の周辺部に光漏れが観察された。また輝度計にて輝度分布を計り漏れ光量を測定した。その結果、最大漏れ光は0.04%であった。
(比較例2)
石英ガラス板(光弾性係数が3.3×10-12(1/Pa))の両面に参考例2の偏光
板をクロスニコルに貼り合わせた。この場合のY値は36.4であった。
そのガラス板を60℃ドライの乾燥機に17時間入れ取り出した後、2000cd/m
2のライトテーブルの上に設置し目視にて暗室で確認を行い、光漏れの状態を確認した。 その結果、偏光板の周辺部に光漏れが観察された。また輝度計にて輝度分布を計り漏れ光量を測定した。その結果、最大漏れ光は0.035%であった。
(比較例3)
鉛ガラス板(光弾性係数が2.9×10-12(1/Pa))の両面に参考例3の偏光板
をクロスニコルに貼り合わせた。この場合のY値は20.0であった。
そのガラス板を60℃ドライの乾燥機に17時間入れ取り出した後、2000cd/m
2のライトテーブルの上に設置し目視にて暗室で確認を行い、光漏れの状態を確認した。 その結果、偏光板の周辺部に光漏れが観察された。また輝度計にて輝度分布を計り漏れ光量を測定した。その結果、最大漏れ光は0.04%であった。
(実施例1)
パイレックスガラス板(光弾性係数が3.8×10-12(1/Pa))の両面に参考例
1の偏光板をクロスニコルに貼り合わせた。この場合のY値は35.3であった。
そのガラス板を60℃ドライの乾燥機に17時間入れ取り出した後、2000cd/m
2のライトテーブルの上に設置し目視にて暗室で確認を行い、光漏れの状態を確認した。 その結果、偏光板の周辺部には光漏れは観察されなかった。また輝度計にて輝度分布を計り漏れ光量を測定した。その結果、最大漏れ光は0.025%であった。
(実施例2)
パイレックスガラス板(光弾性係数が3.8×10-12(1/Pa))の両面に参考例
2の偏光板をクロスニコルに貼り合わせた。この場合のY値は31.6であった。
そのガラス板を60℃ドライの乾燥機に17時間入れ取り出した後、2000cd/m
2のライトテーブルの上に設置し目視にて暗室で確認を行い、光漏れの状態を確認した。 その結果、偏光板の周辺部には光漏れは観察されなかった。また輝度計にて輝度分布を計り漏れ光量を測定した。その結果、最大漏れ光は0.023%であった。
(実施例3)
ほう珪酸ガラス板(光弾性係数が4.0×10-12(1/Pa))の両面に参考例1の
偏光板をクロスニコルに貼り合わせた。この場合のY値は33.6であった。
そのガラス板を60℃ドライの乾燥機に17時間入れ取り出した後、2000cd/m
2のライトテーブルの上に設置し目視にて暗室で確認を行い、光漏れの状態を確認した。 その結果、偏光板の周辺部には光漏れは観察されなかった。また輝度計にて輝度分布を計り漏れ光量を測定した。その結果、最大漏れ光は0.024%であった。
(実施例4)
ほう珪酸ガラス板(光弾性係数が4.0×10-12(1/Pa))の両面に参考例2の
偏光板をクロスニコルに貼り合わせた。この場合のY値は30.0であった。
そのガラス板を60℃ドライの乾燥機に17時間入れ取り出した後、2000cd/m
2のライトテーブルの上に設置し目視にて暗室で確認を行い、光漏れの状態を確認した。 その結果、偏光板の周辺部には光漏れは観察されなかった。また輝度計にて輝度分布を計り漏れ光量を測定した。その結果、最大漏れ光は0.022%であった。
(実施例5)
アルミノシリケートガラス板(光弾性係数が2.6×10-12(1/Pa))の両面に
参考例3の偏光板をクロスニコルに貼り合わせた。この場合のY値は22.3であった。
そのガラス板を60℃ドライの乾燥機に17時間入れ取り出した後、2000cd/m
2のライトテーブルの上に設置し目視にて暗室で確認を行い、光漏れの状態を確認した。 その結果、偏光板の周辺部には光漏れは観察されなかった。また輝度計にて輝度分布を計り漏れ光量を測定した。その結果、最大漏れ光は0.025%であった。
(実施例6)
(VA用光学補償シート)
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、
セルロースアセテート溶液を調製した。
<セルロースアセテート溶液組成>
酢化度60.9%のセルロースアセテート 100質量部
トリフェニルホスフェート(可塑剤) 7.8質量部
ビフェニルジフェニルホスフェート(可塑剤) 3.9質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 300質量部
メタノール(第2溶媒) 54質量部
1−ブタノール(第3溶媒) 11質量部
別のミキシングタンクに、下記レターデーション上昇剤16質量部、メチレンクロライ
ド80質量部およびメタノール20質量部を投入し、加熱しながら攪拌して、レターデー
ション上昇剤溶液を調製した。セルロースアセテート溶液474質量部にレターデーショ
ン上昇剤溶液25質量部を混合し、充分に攪拌してドープを調製した。レターデーション
上昇剤の添加量は、セルロースアセテート100質量部に対して、3.5質量部であった。
Figure 2005165308
得られたドープを、バンド流延機を用いて流延した。残留溶剤量が15質量%のフイル
ムを、130℃の条件で、テンターを用いて25%の延伸倍率で横延伸して、セルロース
アセテートフイルム(厚さ:80μm)を製造した。
このフイルムの光弾性係数を日本分光社製、エリプソメーターM−150で測定したと
ころ、14.0×10-12(1/Pa)であった。
延伸したポリビニルアルコールフイルムにヨウ素を吸着させて偏光膜を作製した。作製
したセルロースアセテートフイルムにケン化処理を行い、ポリビニルアルコール系接着剤
を用いて、偏光膜の片側に貼り付けた。市販のセルローストリアセテートフイルム(フジ
タックTD80UF、富士写真フイルム(株)製)にケン化処理を行い、ポリビニルアル
コール系接着剤を用いて、偏光膜の反対側に貼り付けた。偏光膜の透過軸と作製したセル
ロースアセテートフイルムの遅相軸とは平行になるように配置した。偏光膜の透過軸と市
販のセルローストリアセテートフイルムの遅相軸とは、直交するように配置した。このよ
うにして17インチ大の偏光板を作製した。
パイレックスガラス板(光弾性係数が3.8×10-12(1/Pa))に作製した偏光
板を、作製したセルロースアセテートフイルムが液晶セル側となるように粘着剤を介して
一枚、観察者側に貼り付けた。また、バックライト側には、市販の偏光板(HLC2−5
618HCS、(株)サンリッツ製)を一枚貼り付けた。観察者側の偏光板の透過軸が上
下方向に、そして、バックライト側の偏光板の透過軸が左右方向になるように、クロスニ
コル配置とした。この場合のY値は33であった。
そのガラス板を60℃ドライの乾燥機に40時間入れ取り出した後、2000cd/m
2のライトテーブルの上に設置し目視にて暗室で確認を行い、光漏れの状態を確認した。 以上の結果、偏光板の周辺部には光漏れは観察されなかった。
(実施例7)
(IPS用光学補償シート)
下記の(A)の共重合体10質量部に、下記(B)のモノマー混合物90質量部をグラ
フト重合させたスチレン系ポリマー170gを二塩化メチレン830gに溶解させた。
(A)スチレン/ブタジエン共重合体(質量比:20/80)
(B)スチレン/アクリロニトリル/α−メチルスチレン(質量比:60/20/20)
この溶液を乾燥後の膜厚が70μmとなるようにガラス板上に流延し、5分間室温で放
置した後、45℃の温風で20分間乾燥させ、得られたフィルム(膜)をガラス板から剥
した。このフィルムを矩形の枠に張り付け、70℃で1時間乾燥させた。更に110℃で
15時間乾燥させた後、115℃の条件でテンターを用いて、1.9倍の倍率で一軸延伸
を行なった。上記のようにして、17インチ大のスチレン系ポリマーの一軸延伸フィルム
(光学補償シート)を作製した。(株)島津製作所製エリプソメーター(AEP−100
)を用いて得られたフィルムのレターデーションを測定した。即ち、(nx−ny)×d
(nxは、光学異方性層面内の遅相軸方向の屈折率であり、nyは、光学異方性層面内の
進相軸方向の屈折率であり、そして、dは光学異方性層面内の厚さである)算出されるR
e(1)は122nmであり、|(nx−nz)×d|(nzは、光学異方性層の厚み方
向の屈折率である)で算出されるRe(2)は0nmであった。また、シートの光軸はフ
ィルム面に平行な方向にあった(即ちフィルム面内にあった)。また、このフイルムの光
弾性係数を日本分光社製、エリプソメーターM−150で測定したところ、12.8×1
-12(1/Pa)であった。
パイレックスガラス板(光弾性係数が3.8×10-12(1/Pa))の一方に、前記
で作製した光学補償シートを貼り付け、更に、光学補償シート上及びカラス板のもう一方
の側に偏光板を、クロスニコルの配置で貼り付け、液晶表示装置を作製した。上記液晶表
示装置では、偏光板の一方をその透過軸とガラス板の縦の端とが80度となるように、も
う一方をその透過軸とxガラス板の縦の端とが−10度となるように配置した。また、光
学補償シートはその光軸がガラス板の縦の端と80度となるように、透過軸とガラス板の
縦の端とが80度の偏光板と液晶セルとの間に配置した。この場合のY値は28.2であ
った。
そのガラス板を60℃ドライの乾燥機に40時間入れ取り出した後、2000cd/m
2のライトテーブルの上に設置し目視にて暗室で確認を行い、光漏れの状態を確認した。
その結果、偏光板の周辺部には光漏れは観察されなかった。
以上の実施例および比較例より、光学補償シートのY値を36未満22以上とすること
により、熱歪みによる光漏れを生ずることがなく、表示品位の高い液晶表示装置を得るこ
とができることが明らかである。
液晶セルのガラス板の光弾性係数が各々2.5×10-12(1/Pa)、3.3×10-12(1/Pa)、3.8×10-12(1/Pa)ときに、光学補償シートの光弾性係数が変化した場合の熱歪みによる光漏れ量を示すグラフである。 光学補償シートの膜厚が各々60μm、80μm、110μmのときに、光学補償シートの光弾性係数が変化したときの熱歪みによる光漏れ量を示すグラフである。

Claims (10)

  1. 液晶表示装置の偏光板の液晶セル側に設けられた光学補償シートであって、
    膜厚(μm)の平方根とその光弾性係数(1/Pa)との積を液晶セルのガラス板の光
    弾性係数(1/Pa)で除した値(Y)が、22以上36未満であることを特徴とする光
    学補償シート。
  2. 高分子フイルムからなることを特徴とする請求項1に記載の光学補償シート。
  3. 高分子フイルムがトリアセチルセルロースフィルムであることを特徴とする請求項2に
    記載の光学補償シート。
  4. 高分子フイルムがノルボルネン類の重合体のフィルムからなることを特徴とする請求項
    2に記載の光学補償シート。
  5. 高分子フイルムがスチレン系重合体のフィルムからなることを特徴とする請求項2に記
    載の光学補償シート。
  6. 透明支持体上に液晶化合物からなる光学異方性層が備えられていることを特徴とする請
    求項1に記載の光学補償シート。
  7. 液晶セルのガラス板および偏光板を有する液晶表示装置の偏光板であって、
    該偏光板は、液晶セルのガラス板側に設けられた光学補償シート、偏光膜、透明保護膜
    をこの順に有し、
    該光学補償シートは、請求項1〜6のいずれかに記載の光学補償シートであることを特
    徴とする液晶表示装置の偏光板。
  8. 請求項1乃至6のいずれかに記載の光学補償シート及び請求項7に記載の偏光板を有す
    ることを特徴とする液晶表示装置。
  9. ガラス板が、石英ガラス、パイレックスガラス、ほう珪酸ガラス、バイコールガラス、
    ソーダ石灰ガラス、アルミノシリケートガラス、鉛ガラス、無アルカリガラスから選ばれ
    る少なくとも一つを有することを特徴とする請求項8に記載の液晶表示装置。
  10. 光漏れ量が0.03%以下であることを特徴とする請求項8に記載の液晶表示装置。
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