JP4267191B2 - 光学補償シート、偏光板および液晶表示装置 - Google Patents

光学補償シート、偏光板および液晶表示装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光学補償シートおよびそれを用いた偏光板と液晶表示装置とに関する。
【0002】
【従来の技術】
液晶表示装置は、偏光板と液晶セルから構成されている。
現在主流であるTNモードのTFT液晶表示装置においては、特開平8−50206号公報に記載のように光学補償フイルムを偏光板と液晶セルの間に挿入し、表示品位の高い液晶表示装置を実現している。しかし、この方法によると液晶表示装置自体が厚くなるなどの問題点があった。
特開平1−68940号公報には、偏光膜の片面に位相差板、他方の面に保護フイルムを有する楕円偏光板を用いることで、液晶表示装置を厚くすることなく、正面コントラストを高くすることができるとの記載がある。ところが、この発明の位相差フイルム(光学補償シート)は、熱等の歪みにより位相差が発生しやすく、耐久性に問題のあることがわかった。この位相差により液晶表示装置に額縁状の光漏れ(透過率の上昇)が生じ、液晶表示装置の表示品位は低下してしまう。
歪みによる位相差発生の問題に対し、特開平7−191217号公報および欧州特許0911656A2号明細書においては、透明支持体上にディスコティック(円盤状)化合物からなる光学異方性層を塗設した光学補償フイルムを直接偏光板の保護フイルムとして用いることで液晶表示装置を厚くすることなく、上述の耐久性に関する問題を解決した。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、17インチ以上の大型パネルに、前記の光学補償フイルムを保護フイルムに用いた偏光板を装着したところ、熱歪みによる光漏れは完全には無くならないことが判明した。光学補償シートは、液晶セルを光学的に補償する機能を有するのみでなく、使用環境の変化による耐久性にも優れている必要がある。
本発明の目的は、光学補償シートを用いて液晶セルを光学的に補償することである。
別の本発明の目的は、光学補償シートを偏光膜の片側に配置し、それを液晶表示装置に用いることで、光漏れなどの問題を生じることなく、表示品位の高い液晶表示装置を提供することである。
さらに別の本発明の目的は、偏光板の構成要素の数を増加することなく、偏光板に光学補償機能を追加することである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
液晶セルを光学的に補償するために、セルロースアセテートフイルム上に、液晶性化合物から形成された光学異方性層が備えられてなる光学補償シートを用いる。
このような光学補償シートに用いられるポリマーフイルムは、使用する環境条件の変化により膨張あるいは収縮などの歪みを生る。ところが、光学補償シートを液晶表示装置に用いる場合、光学補償シートは粘着剤などで液晶セルなどに固定されて用いられるのが一般的である。従って、ポリマーフイルムにおいて発生した歪みは、光学補償シート全体として抑制されてしまい、ポリマーフイルムの光学特性が変化してしまう。
本発明者の鋭意研究により、光漏れを発生させる歪みの原因は、光学補償シートの使用環境における温度の変化のみによるものではなく、湿度の変化にも関係があることがわかった。さらに、セルロースエステルのような水酸基を有するポリマーでは湿度の影響が大きいことが判明した。
【0005】
本発明の目的は、下記(1)〜(4)の光学補償シート、下記(5)の偏光板および下記(6)〜(7)の液晶表示装置により達成された。
(1)酢化度が59.0乃至61.5%の範囲にあるセルロースアセテート、およびセルロースアセテート100質量部に対して、少なくとも二つの芳香族環を有し、芳香族環の少なくとも一つが1,3,5−トリアジン環であり、芳香族環の結合関係がいずれも−NH−を介しての結合である芳香族化合物(以下、単に「少なくとも二つの芳香族環を有する芳香族化合物」と略す場合がある)を0.01乃至20質量部含むセルロースアセテートフイルム上に、液晶性化合物から形成された光学異方性層が備えられてなる光学補償シートであり、セルロースアセテートフイルムの、下記式(I)により定義されるReレターデーション値が0乃至20nmの範囲にあり、下記式(II)により定義されるRthレターデーション値が70乃至400nmの範囲にあり、そして吸湿膨張係数が30×10−5/%RH以下であることを特徴とする光学補償シート。
(I) Re=(nx−ny)×d
(II) Rth={(nx+ny)/2−nz}×d
[式中、nxは、フイルム面内の遅相軸方向の屈折率であり;nyは、フイルム面内の進相軸方向の屈折率であり;nzは、フイルムの厚み方向の屈折率であり;そして、dは、フイルムの厚さである。]
【0006】
(2)セルロースアセテートフイルムの残留溶剤量が、0.02乃至0.07質量%であることを特徴とする(1)に記載の光学補償シート。
(3)前記の液晶性化合物が円盤状液晶性化合物であることを特徴とする(1)に記載の光学補償シート。
(4)TNモードの液晶セル用であることを特徴とする(1)に記載の光学補償シート。
【0007】
(5)偏光膜およびその両側に配置された二枚の透明保護膜からなる偏光板であって、透明保護膜の一方が、酢化度が59.0乃至61.5%の範囲にあるセルロースアセテート、およびセルロースアセテート100質量部に対して、少なくとも二つの芳香族環を有する芳香族化合物を0.01乃至20質量部含むセルロースアセテートフイルム上に、液晶性化合物から形成された光学異方性層が備えられてなる光学補償シートであり、セルロースアセテートフイルムの、下記式(I)により定義されるReレターデーション値が0乃至20nmの範囲にあり、下記式(II)により定義されるRthレターデーション値が70乃至400nmの範囲にあり、そして吸湿膨張係数が30×10-5/%RH以下であることを特徴とする偏光板。
(I) Re=(nx−ny)×d
(II) Rth={(nx+ny)/2−nz}×d
[式中、nxは、フイルム面内の遅相軸方向の屈折率であり;nyは、フイルム面内の進相軸方向の屈折率であり;nzは、フイルムの厚み方向の屈折率であり;そして、dは、フイルムの厚さである。]
【0008】
(6)液晶セルおよびその両側に配置された二枚の偏光板からなり、偏光板が偏光膜およびその両側に配置された二枚の透明保護膜からなる液晶表示装置であって、液晶セルと偏光膜の間の透明保護膜のうちの少なくとも一方が、酢化度が59.0乃至61.5%の範囲にあるセルロースアセテート、およびセルロースアセテート100質量部に対して、少なくとも二つの芳香族環を有する芳香族化合物を0.01乃至20質量部含むセルロースアセテートフイルム上に、液晶性化合物から形成された光学異方性層が備えられてなる光学補償シートであり、セルロースアセテートフイルムの、下記式(I)により定義されるReレターデーション値が0乃至20nmの範囲にあり、下記式(II)により定義されるRthレターデーション値が70乃至400nmの範囲にあり、そして吸湿膨張係数が30×10-5/%RH以下であることを特徴とする液晶表示装置。
(I) Re=(nx−ny)×d
(II) Rth={(nx+ny)/2−nz}×d
[式中、nxは、フイルム面内の遅相軸方向の屈折率であり;nyは、フイルム面内の進相軸方向の屈折率であり;nzは、フイルムの厚み方向の屈折率であり;そして、dは、フイルムの厚さである]。
(7)液晶セルがTNモードの液晶セルである(6)に記載の液晶表示装置。
【0009】
なお、本明細書において、「実質的に平行」とは、厳密な角度よりも±5゜未満の範囲内であることを意味する。この範囲は、±4゜未満であることが好ましく、±3゜未満であることがさらに好ましく、±2゜未満であることが最も好ましい。また、本明細書において、「遅相軸( slow axis)」は屈折率が最大となる方向を、そして「透過軸(transmission axis)」は透過率が最大となる方向をそれぞれ意味する。
【0010】
【発明の効果】
本発明の光学補償シートは、セルロースアセテートフイルム上に、液晶性化合物から形成された光学異方性層が備えられてなる。この光学補償シートを液晶表示装置に用いることで、副作用なしに液晶セルを光学的に補償することに成功した。
さらに、本発明の光学補償シートを液晶表示装置に用いることで、液晶セルを光学的に充分補償するのみではなく、使用環境の変化により発生する光学補償シートの歪みが原因の額縁状の透過率上昇を抑えることができる。
本発明においては、額縁状の透過率上昇を抑えるために、光学補償シートに用いられるセルロースアセテートフイルムの吸湿膨張係数を調整している。この吸湿膨張係数を調節することで、光学補償シートの光学補償機能を維持したまま、他の問題を発生せずに前記の問題を解決することができる。
偏光板の保護膜は、一般にセルロースアセテートフイルムからなる。上記の光学補償シートを偏光板の一方の保護膜として用いると、偏光板の構成要素の数を増加することなく、偏光板に光学補償機能を追加するができる。
上記の光学補償シートおよび上記の光学補償シートを保護膜として用いた偏光板は、TN(Twisted Nematic)型の液晶表示装置に有利に用いることができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の光学補償シートは、セルロースアセテートフイルム上に、液晶性化合物から形成された光学異方性層が備えられている。まず最初に、光学補償シートに用いるセルロースアセテートフイルムについて説明する。
【0012】
[フイルムのレターデーション]
フイルムのReレターデーション値およびRthレターデーション値は、それぞれ、下記式(I)および(II)で定義される。
(I) Re=(nx−ny)×d
(II) Rth={(nx+ny)/2−nz}×d
式(I)および(II)において、nxは、フイルム面内の遅相軸方向(屈折率が最大となる方向)の屈折率である。
式(I)および(II)において、nyは、フイルム面内の進相軸方向(屈折率が最小となる方向)の屈折率である。
式(II)において、nzは、フイルムの厚み方向の屈折率である。
式(I)および(II)において、dは、単位をnmとするフイルムの厚さである。
【0013】
本発明では、セルロースアセテートフイルムのReレターデーション値を0乃至20nmの範囲に、そして、Rthレターデーション値を70乃至400nmの範囲に調節する。
液晶表示装置に二枚の光学的異方性セルロースアセテートフイルムを使用する場合、フイルムのRthレターデーション値は70乃至250nmの範囲にあることが好ましい。
液晶表示装置に一枚の光学的異方性セルロースアセテートフイルムを使用する場合、フイルムのRthレターデーション値は150乃至400nmの範囲にあることが好ましい。
なお、セルロースアセテートフイルムの複屈折率(Δn:nx−ny)は、0.00028乃至0.020の範囲にあることが好ましい。また、セルロースアセテートフイルムの厚み方向の複屈折率{(nx+ny)/2−nz}は、0.001乃至0.04の範囲にあることが好ましい。
【0014】
[吸湿膨張係数]
吸湿膨張係数は、一定温度下において相対湿度を変化させた時の試料の長さの変化量を示す。
額縁状の透過率上昇(歪みによる光漏れ)を防止するために、本発明の光学補償シートに用いるセルロースアセテートフイルムの吸湿膨張係数を30×10-5/%RH以下とする。吸湿膨張係数は、15×10-5/%RH以下とすることが好ましく、10×10-5/%RH以下であることがさらに好ましい。また、吸湿膨張係数は小さい方が好ましいが、通常は、1.0×10-5/%RH以上の値である。
【0015】
吸湿膨張係数の測定方法について以下に示す。作製したポリマーフイルム(位相差板)から幅5mm。長さ20mmの試料を切り出し、片方の端を固定して25℃、20%RH(R0 )の雰囲気下にぶら下げた。他方の端に0.5gの重りをぶら下げて、10分間放置し長さ(L0 )を測定した。次に、温度は25℃のまま、湿度を80%RH(R1 )にして、長さ(L1 )を測定した。吸湿膨張係数は下式により算出した。測定は同一試料につき10サンプル行い、平均値を採用した。
吸湿膨張係数[/%RH]={(L1 −L0 )/L0 }/(R1 −R0
【0016】
吸湿膨張係数で表される、吸湿による寸度変化を小さくするには、ポリマーフイルム中の自由体積を小さくすればよい。自由体積を大きく左右するのは、成膜時の残留溶剤量であり、残留溶剤量が少ない方が自由堆積が小さくなり、従って寸度変化も小さくなる。
残留溶剤を減らすための一般的手法は、高温かつ長時間で乾燥することであるが、残留溶剤量を極端に減らそうとすると乾燥に長時間を要するため生産性が落ちる。従って、セルロースアセテートフイルムに対する残留溶剤量が、0.01乃至1.00質量%の範囲となる条件で乾燥することが好ましい。この残留溶剤量は、0.02乃至0.07質量%の範囲にあることがより好ましく、0.03乃至0.05質量%の範囲にあることが最も好ましい。この様に残留溶剤量を制御することで、セルロースアセテートフイルムの吸湿膨張係数を上記の範囲に制御できる。
【0017】
残留溶剤量は、一定量の試料をクロロフォルムに溶解し、ガスクロマトグラフ(GC18A、島津製作所(株)製)を用いて測定した。
溶液流延法では、ポリマー材料を有機溶媒に溶解した溶液(ドープ)を用いてフイルムを製造する。溶液流延法での乾燥は、後述するように、ドラム(またはバンド)面での乾燥と、フイルム搬送時の乾燥に大きく分かれる。ドラム(またはバンド)面での乾燥時には、使用している溶剤の沸点を越えない温度(沸点を越えると泡となる)でゆっくりと乾燥させることが好ましい。また、フイルム搬送時の乾燥は、ポリマー材料のガラス転移点±30℃、更に好ましくは±20℃で行うことが好ましい。
【0018】
また、上記吸湿による寸度変化を小さくする別な方法として、疎水基を有する化合物を添加することが好ましい。疎水基を有する素材としては、分子中にアルキル基やフェニル基のような疎水基を有する素材であれば特に制限はないが、後述のセルロースアセテートフイルムに添加する可塑剤や劣化防止剤の中で該当する素材が特に好ましく用いられる。これら好ましい素材の例としては、トリフェニルフォスフェート(TPP)、トリベンジルアミン(TBA)などを挙げることができる。
これらの疎水基を有する化合物の添加量は、調整する溶液(ドープ)に対して0.01乃至10質量%の範囲にあることが好ましく、0.1乃至5質量%の範囲にあることがさらに好ましく、1乃至3質量%の範囲にあることが最も好ましい。
【0019】
[セルロースアセテート]
本発明では、酢化度が59.0乃至61.5%の範囲にあるセルロースアセテートを使用する。
酢化度とは、セルロース単位質量当たりの結合酢酸量を意味する。酢化度は、ASTM:D−817−91(セルロースアセテート等の試験法)におけるアセチル化度の測定および計算に従う。
セルロースエステルの粘度平均重合度(DP)は、250以上であることが好ましく、290以上であることがさらに好ましい。
また、本発明に使用するセルロースエステルは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるMw/Mn(Mwは質量平均分子量、Mnは数平均分子量)の分子量分布が狭いことが好ましい。具体的なMw/Mnの値としては、1.0乃至1.7であることが好ましく、1.3乃至1.65であることがさらに好ましく、1.4乃至1.6であることが最も好ましい。
【0020】
[レターデーション上昇剤]
セルロースアセテートフイルムのレターデーションを調整するため、少なくとも二つの芳香族環を有する芳香族化合物をレターデーション上昇剤として使用する。
芳香族化合物は、セルロースアセテート100質量部に対して、0.01乃至20質量部の範囲で使用する。芳香族化合物は、セルロースアセテート100質量部に対して、0.05乃至15質量部の範囲で使用することが好ましく、0.1乃至10質量部の範囲で使用することがさらに好ましい。二種類以上の芳香族化合物を併用してもよい。
芳香族化合物の芳香族環には、芳香族炭化水素環に加えて、芳香族性ヘテロ環を含む。
【0021】
芳香族炭化水素環は、6員環(すなわち、ベンゼン環)であることが特に好ましい。
芳香族性ヘテロ環は一般に、不飽和ヘテロ環である。芳香族性ヘテロ環は、5員環、6員環または7員環であることが好ましく、5員環または6員環であることがさらに好ましい。芳香族性ヘテロ環は一般に、最多の二重結合を有する。ヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子および硫黄原子が好ましく、窒素原子が特に好ましい。芳香族性ヘテロ環の例には、フラン環、チオフェン環、ピロール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、イミダゾール環、ピラゾール環、フラザン環、トリアゾール環、ピラン環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環および1,3,5−トリアジン環が含まれる。
芳香族環としては、ベンゼン環、フラン環、チオフェン環、ピロール環、オキサゾール環、チアゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、ピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環および1,3,5−トリアジン環が好ましく、ベンゼン環および1,3,5−トリアジン環がさらに好ましい。
芳香族化合物は、少なくとも一つの1,3,5−トリアジン環を有することが特に好ましい。
【0022】
芳香族化合物が有する芳香族環の数は、2乃至20であることが好ましく、2乃至12であることがより好ましく、2乃至8であることがさらに好ましく、2乃至6であることが最も好ましい。
香族環は、連結基を介して結合する。
【0024】
結基は、−NH−である
【0025】
芳香族環および連結基は、置換基を有していてもよい。
置換基の例には、ハロゲン原子(F、Cl、Br、I)、ヒドロキシル、カルボキシル、シアノ、アミノ、ニトロ、スルホ、カルバモイル、スルファモイル、ウレイド、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、脂肪族アシル基、脂肪族アシルオキシ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アルコキシカルボニルアミノ基、アルキルチオ基、アルキルスルホニル基、脂肪族アミド基、脂肪族スルホンアミド基、脂肪族置換アミノ基、脂肪族置換カルバモイル基、脂肪族置換スルファモイル基、脂肪族置換ウレイド基および非芳香族性複素環基が含まれる。
【0026】
アルキル基の炭素原子数は、1乃至8であることが好ましい。環状アルキル基よりも鎖状アルキル基の方が好ましく、直鎖状アルキル基が特に好ましい。アルキル基は、さらに置換基(例、ヒドロキシ、カルボキシ、アルコキシ基、アルキル置換アミノ基)を有していてもよい。アルキル基の(置換アルキル基を含む)例には、メチル、エチル、n−ブチル、n−ヘキシル、2−ヒドロキシエチル、4−カルボキシブチル、2−メトキシエチルおよび2−ジエチルアミノエチルが含まれる。
アルケニル基の炭素原子数は、2乃至8であることが好ましい。環状アルケニル基よりも鎖状アルケニル基の方が好ましく、直鎖状アルケニル基が特に好ましい。アルケニル基は、さらに置換基を有していてもよい。アルケニル基の例には、ビニル、アリルおよび1−ヘキセニルが含まれる。
アルキニル基の炭素原子数は、2乃至8であることが好ましい。環状アルキケニル基よりも鎖状アルキニル基の方が好ましく、直鎖状アルキニル基が特に好ましい。アルキニル基は、さらに置換基を有していてもよい。アルキニル基の例には、エチニル、1−ブチニルおよび1−ヘキシニルが含まれる。
【0027】
脂肪族アシル基の炭素原子数は、1乃至10であることが好ましい。脂肪族アシル基の例には、アセチル、プロパノイルおよびブタノイルが含まれる。
脂肪族アシルオキシ基の炭素原子数は、1乃至10であることが好ましい。脂肪族アシルオキシ基の例には、アセトキシが含まれる。
アルコキシ基の炭素原子数は、1乃至8であることが好ましい。アルコキシ基は、さらに置換基(例、アルコキシ基)を有していてもよい。アルコキシ基の(置換アルコキシ基を含む)例には、メトキシ、エトキシ、ブトキシおよびメトキシエトキシが含まれる。
アルコキシカルボニル基の炭素原子数は、2乃至10であることが好ましい。アルコキシカルボニル基の例には、メトキシカルボニルおよびエトキシカルボニルが含まれる。
アルコキシカルボニルアミノ基の炭素原子数は、2乃至10であることが好ましい。アルコキシカルボニルアミノ基の例には、メトキシカルボニルアミノおよびエトキシカルボニルアミノが含まれる。
【0028】
アルキルチオ基の炭素原子数は、1乃至12であることが好ましい。アルキルチオ基の例には、メチルチオ、エチルチオおよびオクチルチオが含まれる。
アルキルスルホニル基の炭素原子数は、1乃至8であることが好ましい。アルキルスルホニル基の例には、メタンスルホニルおよびエタンスルホニルが含まれる。脂肪族アミド基の炭素原子数は、1乃至10であることが好ましい。脂肪族アミド基の例には、アセトアミドが含まれる。
脂肪族スルホンアミド基の炭素原子数は、1乃至8であることが好ましい。脂肪族スルホンアミド基の例には、メタンスルホンアミド、ブタンスルホンアミドおよびn−オクタンスルホンアミドが含まれる。
脂肪族置換アミノ基の炭素原子数は、1乃至10であることが好ましい。脂肪族置換アミノ基の例には、ジメチルアミノ、ジエチルアミノおよび2−カルボキシエチルアミノが含まれる。
脂肪族置換カルバモイル基の炭素原子数は、2乃至10であることが好ましい。脂肪族置換カルバモイル基の例には、メチルカルバモイルおよびジエチルカルバモイルが含まれる。
脂肪族置換スルファモイル基の炭素原子数は、1乃至8であることが好ましい。脂肪族置換スルファモイル基の例には、メチルスルファモイルおよびジエチルスルファモイルが含まれる。
脂肪族置換ウレイド基の炭素原子数は、2乃至10であることが好ましい。脂肪族置換ウレイド基の例には、メチルウレイドが含まれる。
非芳香族性複素環基の例には、ピペリジノおよびモルホリノが含まれる。
レターデーション上昇剤の分子量は、300乃至800であることが好ましい
【0029】
[セルロースアセテートフイルムの製造]
ソルベントキャスト法によりセルロースアセテートフイルムを製造することが好ましい。ソルベントキャスト法では、セルロースアセテートを有機溶媒に溶解した溶液(ドープ)を用いてフイルムを製造する。
有機溶媒は、炭素原子数が3乃至12のエーテル、炭素原子数が3乃至12のケトン、炭素原子数が3乃至12のエステルおよび炭素原子数が1乃至6のハロゲン化炭化水素から選ばれる溶媒を含むことが好ましい。
エーテル、ケトンおよびエステルは、環状構造を有していてもよい。エーテル、ケトンおよびエステルの官能基(すなわち、−O−、−CO−および−COO−)のいずれかを二つ以上有する化合物も、有機溶媒として用いることができる。有機溶媒は、アルコール性水酸基のような他の官能基を有していてもよい。二種類以上の官能基を有する有機溶媒の場合、その炭素原子数は、いずれかの官能基を有する化合物の規定範囲内であればよい。
【0030】
炭素原子数が3乃至12のエーテル類の例には、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン、アニソールおよびフェネトールが含まれる。
炭素原子数が3乃至12のケトン類の例には、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノンおよびメチルシクロヘキサノンが含まれる。
炭素原子数が3乃至12のエステル類の例には、エチルホルメート、プロピルホルメート、ペンチルホルメート、メチルアセテート、エチルアセテートおよびペンチルアセテートが含まれる。
二種類以上の官能基を有する有機溶媒の例には、2−エトキシエチルアセテート、2−メトキシエタノールおよび2−ブトキシエタノールが含まれる。
ハロゲン化炭化水素の炭素原子数は、1または2であることが好ましく、1であることが最も好ましい。ハロゲン化炭化水素のハロゲンは、塩素であることが好ましい。ハロゲン化炭化水素の水素原子が、ハロゲンに置換されている割合は、25乃至75モル%であることが好ましく、30乃至70モル%であることがより好ましく、35乃至65モル%であることがさらに好ましく、40乃至60モル%であることが最も好ましい。メチレンクロリドが、代表的なハロゲン化炭化水素である。
二種類以上の有機溶媒を混合して用いてもよい。
【0031】
一般的な方法でセルロースアセテート溶液を調製できる。一般的な方法とは、0℃以上の温度(常温または高温)で、処理することを意味する。溶液の調製は、通常のソルベントキャスト法におけるドープの調製方法および装置を用いて実施することができる。なお、一般的な方法の場合は、有機溶媒としてハロゲン化炭化水素(特にメチレンクロリド)を用いることが好ましい。
セルロースアセテートの量は、得られる溶液中に10乃至40質量%含まれるように調整する。セルロースアセテートの量は、10乃至30質量%であることがさらに好ましい。有機溶媒(主溶媒)中には、後述する任意の添加剤を添加しておいてもよい。
溶液は、常温(0乃至40℃)でセルロースアセテートと有機溶媒とを攪拌することにより調製することができる。高濃度の溶液は、加圧および加熱条件下で攪拌してもよい。具体的には、セルロースアセテートと有機溶媒とを加圧容器に入れて密閉し、加圧下で溶媒の常温における沸点以上、かつ溶媒が沸騰しない範囲の温度に加熱しながら攪拌する。加熱温度は、通常は40℃以上であり、好ましくは60乃至200℃であり、さらに好ましくは80乃至110℃である。
【0032】
各成分は予め粗混合してから容器に入れてもよい。また、順次容器に投入してもよい。容器は攪拌できるように構成されている必要がある。窒素ガス等の不活性気体を注入して容器を加圧することができる。また、加熱による溶媒の蒸気圧の上昇を利用してもよい。あるいは、容器を密閉後、各成分を圧力下で添加してもよい。
加熱する場合、容器の外部より加熱することが好ましい。例えば、ジャケットタイプの加熱装置を用いることができる。また、容器の外部にプレートヒーターを設け、配管して液体を循環させることにより容器全体を加熱することもできる。
容器内部に攪拌翼を設けて、これを用いて攪拌することが好ましい。攪拌翼は、容器の壁付近に達する長さのものが好ましい。攪拌翼の末端には、容器の壁の液膜を更新するため、掻取翼を設けることが好ましい。
容器には、圧力計、温度計等の計器類を設置してもよい。容器内で各成分を溶剤中に溶解する。調製したドープは冷却後容器から取り出すか、あるいは、取り出した後、熱交換器等を用いて冷却する。
【0033】
冷却溶解法により、溶液を調製することもできる。冷却溶解法では、通常の溶解方法では溶解させることが困難な有機溶媒中にもセルロースアセテートを溶解させることができる。なお、通常の溶解方法でセルロースアセテートを溶解できる溶媒であっても、冷却溶解法によると迅速に均一な溶液が得られるとの効果がある。
冷却溶解法では最初に、室温で有機溶媒中にセルロースアセテートを撹拌しながら徐々に添加する。
セルロースアセテートの量は、この混合物中に10乃至40質量%含まれるように調整することが好ましい。セルロースアセテートの量は、10乃至30質量%であることがさらに好ましい。さらに、混合物中には後述する任意の添加剤を添加しておいてもよい。
【0034】
次に、混合物を−100乃至−10℃(好ましくは−80乃至−10℃、さらに好ましくは−50乃至−20℃、最も好ましくは−50乃至−30℃)に冷却する。冷却は、例えば、ドライアイス・メタノール浴(−75℃)や冷却したジエチレングリコール溶液(−30乃至−20℃)中で実施できる。このように冷却すると、セルロースアセテートと有機溶媒の混合物は固化する。
冷却速度は、4℃/分以上であることが好ましく、8℃/分以上であることがさらに好ましく、12℃/分以上であることが最も好ましい。冷却速度は、速いほど好ましいが、10000℃/秒が理論的な上限であり、1000℃/秒が技術的な上限であり、そして100℃/秒が実用的な上限である。なお、冷却速度は、冷却を開始する時の温度と最終的な冷却温度との差を冷却を開始してから最終的な冷却温度に達するまでの時間で割った値である。
【0035】
さらに、これを0乃至200℃(好ましくは0乃至150℃、さらに好ましくは0乃至120℃、最も好ましくは0乃至50℃)に加温すると、有機溶媒中にセルロースアセテートが溶解する。昇温は、室温中に放置するだけでもよし、温浴中で加温してもよい。
加温速度は、4℃/分以上であることが好ましく、8℃/分以上であることがさらに好ましく、12℃/分以上であることが最も好ましい。加温速度は、速いほど好ましいが、10000℃/秒が理論的な上限であり、1000℃/秒が技術的な上限であり、そして100℃/秒が実用的な上限である。なお、加温速度は、加温を開始する時の温度と最終的な加温温度との差を加温を開始してから最終的な加温温度に達するまでの時間で割った値である。
以上のようにして、均一な溶液が得られる。なお、溶解が不充分である場合は冷却、加温の操作を繰り返してもよい。溶解が充分であるかどうかは、目視により溶液の外観を観察するだけで判断することができる。
【0036】
冷却溶解法においては、冷却時の結露による水分混入を避けるため、密閉容器を用いることが望ましい。また、冷却加温操作において、冷却時に加圧し、加温時の減圧すると、溶解時間を短縮することができる。加圧および減圧を実施するためには、耐圧性容器を用いることが望ましい。
なお、セルロースアセテート(酢化度:60.9%、粘度平均重合度:299)を冷却溶解法によりメチルアセテート中に溶解した20質量%の溶液は、示差走査熱量測定(DSC)によると、33℃近傍にゾル状態とゲル状態との疑似相転移点が存在し、この温度以下では均一なゲル状態となる。従って、この溶液は疑似相転移温度以上、好ましくはゲル相転移温度プラス10℃程度の温度で保する必要がある。ただし、この疑似相転移温度は、セルロースアセテートの酢化度、粘度平均重合度、溶液濃度や使用する有機溶媒により異なる。
【0037】
調製したセルロースアセテート溶液(ドープ)から、ソルベントキャスト法によりセルロースアセテートフイルムを製造する。ドープには前記のレターデーション上昇剤を添加することが好ましい。
ドープは、ドラムまたはバンド上に流延し、溶媒を蒸発させてフイルムを形成する。流延前のドープは、固形分量が18乃至35%となるように濃度を調整することが好ましい。ドラムまたはバンドの表面は、鏡面状態に仕上げておくことが好ましい。ソルベントキャスト法における流延および乾燥方法については、米国特許2336310号、同2367603号、同2492078号、同2492977号、同2492978号、同2607704号、同2739069号、同2739070号、英国特許640731号、同736892号の各明細書、特公昭45−4554号、同49−5614号、特開昭60−176834号、同60−203430号、同62−115035号の各公報に記載がある。
ドープは、表面温度が10℃以下のドラムまたはバンド上に流延することが好ましい。流延してから2秒以上風に当てて乾燥することが好ましい。得られたフイルムをドラムまたはバンドから剥ぎ取り、さらに100から160℃まで逐次温度を変えた高温風で乾燥して残留溶剤を蒸発させることもできる。以上の方法は、特公平5−17844号公報に記載がある。この方法によると、流延から剥ぎ取りまでの時間を短縮することが可能である。この方法を実施するためには、流延時のドラムまたはバンドの表面温度においてドープがゲル化することが必要である。
【0038】
調整したセルロースアセテート溶液(ドープ)を用いて二層以上の流延を行いフイルム化することもできる。この場合、ソルベントキャスト法によりセルロースアセテートフイルムを作製することが好ましい。ドープは、ドラムまたはバンド上に流延し、溶媒を蒸発させてフイルムを形成する。流延前のドープは、固形分量が10乃至40%の範囲となるように濃度を調整することが好ましい。ドラムまたはバンドの表面は、鏡面状態に仕上げておくことが好ましい。
【0039】
二層以上の複数のセルロースアセテート液を流延する場合、複数のセルロースアセテート溶液を流延することが可能で、支持体の進行方向に間隔をおいて設けられた複数の流延口からセルロースアセテートを含む溶液をそれぞれ流延させて積層させながらフイルムを作製してもよい。例えば、特開昭61−158414号、特開平1−122419号、および、特開平11−198285号の各明細書に記載の方法を用いることができる。また、2つの流延口からセルロースアセテート溶液を流延することによってもフイルム化することもできる。例えば、特公昭60−27562号、特開昭61−94724号、特開昭61−947245号、特開昭61−104813号、特開昭61−158413号、および、特開平6−134933号の各明細書に記載の方法を用いることができる。また、特開昭56−162617号明細書に記載の高粘度セルロースアセテート溶液の流れを低粘度のセルロースアセテート溶液で包み込み、その高、低粘度のセルロースアセテート溶液を同時に押し出すセルロースアセテートフイルムの流延方法を用いることもできる。
【0040】
また、二個の流延口を用いて、第一の流延口により支持体に成形したフイルムを剥ぎ取り、支持体面に接していた側に第二の流延を行うことにより、フイルムを作製することもできる。例えば、特公昭44−20235号明細書に記載の方法を挙げることができる。
流延するセルロースアセテート溶液は同一の溶液を用いてもよいし、異なるセルロースアセテート溶液を用いてもよい。複数のセルロースアセテート層に機能をもたせるために、その機能に応じたセルロースアセテート溶液を、それぞれの流延口から押し出せばよい。
さらに本発明のセルロースアセテート溶液は、他の機能層(例えば、接着層、染料層、帯電防止層、アンチハレーション層、紫外線吸収層、偏光層など)と同時に流延することもできる。
【0041】
従来の単層液では、必要なフイルムの厚さにするためには高濃度で高粘度のセルロースアセテート溶液を押し出すことが必要である。その場合セルロースアセテート溶液の安定性が悪くて固形物が発生し、ブツ故障となったり、平面性が不良となったりして問題となることが多かった。この問題の解決方法として、複数のセルロースアセテート溶液を流延口から流延することにより、高粘度の溶液を同時に支持体上に押し出すことができ、平面性も良化し優れた面状のフイルムが作製できるばかりでなく、濃厚なセルロースアセテート溶液を用いることで乾燥負荷の低減化が達成でき、フイルムの生産スピードを高めることができる。
【0042】
セルロースアセテートフイルムには、機械的物性を改良するため、または乾燥速度を向上するために、可塑剤を添加することができる。可塑剤としては、リン酸エステルまたはカルボン酸エステルが用いられる。リン酸エステルの例には、トリフェニルフォスフェート(TPP)およびトリクレジルホスフェート(TCP)が含まれる。カルボン酸エステルとしては、フタル酸エステルおよびクエン酸エステルが代表的である。フタル酸エステルの例には、ジメチルフタレート(DMP)、ジエチルフタレート(DEP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジオクチルフタレート(DOP)、ジフェニルフタレート(DPP)およびジエチルヘキシルフタレート(DEHP)が含まれる。クエン酸エステルの例には、O−アセチルクエン酸トリエチル(OACTE)およびO−アセチルクエン酸トリブチル(OACTB)が含まれる。その他のカルボン酸エステルの例には、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバシン酸ジブチル、種々のトリメリット酸エステルが含まれる。フタル酸エステル系可塑剤(DMP、DEP、DBP、DOP、DPP、DEHP)が好ましく用いられる。DEPおよびDPPが特に好ましい。
可塑剤の添加量は、セルロースエステルの量の0.1乃至25質量%であることが好ましく、1乃至20質量%であることがさらに好ましく、3乃至15質量%であることが最も好ましい。
【0043】
セルロースアセテートフイルムには、劣化防止剤(例、酸化防止剤、過酸化物分解剤、ラジカル禁止剤、金属不活性化剤、酸捕獲剤、アミン)を添加してもよい。劣化防止剤については、特開平3−199201号、同5−1907073号、同5−194789号、同5−271471号、同6−107854号の各公報に記載がある。劣化防止剤の添加量は、調製する溶液(ドープ)の0.01乃至1質量%であることが好ましく、0.01乃至0.2質量%であることがさらに好ましい。添加量が0.01質量%未満であると、劣化防止剤の効果がほとんど認められない。添加量が1質量%を越えると、フイルム表面への劣化防止剤のブリードアウト(滲み出し)が認められる場合がある。特に好ましい劣化防止剤の例としては、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、トリベンジルアミン(TBA)を挙げることができる。
【0044】
セルロースアセテートフイルムは、さらに延伸処理によりレターデーションをを調整することができる。延伸倍率は、3乃至100%の範囲にあることが好ましい。
【0045】
[セルロースアセテートフイルムの表面処理]
セルロースアセテートフイルムは、表面処理を施すことが好ましい。具体的方法としては、コロナ放電処理、グロー放電処理、火炎処理、酸処理、アルカリ処理または紫外線照射処理が挙げられる。また、特開平7−333433号明細書に記載のように、下塗り層を設けることも好ましい。
フイルムの平面性を保持する観点から、これら処理においてセルロースアセテートフイルムの温度をTg(ガラス転移温度)以下、具体的には150℃以下とすることが好ましい。
偏光板の透明保護膜として使用する場合、偏光膜との接着性の観点から、酸処理またはアルカリ処理、すなわちセルロースアセテートに対するケン化処理を実施することが特に好ましい。以下、アルカリ鹸化処理を例に、具体的に説明する。
【0046】
アルカリ鹸化処理は、フイルムの表面をアルカリ溶液に浸漬した後、酸性溶液で中和し、水洗して乾燥するサイクルで行われることが好ましい。
アルカリ溶液の例としては、水酸化カリウム溶液、水酸化ナトリウム溶液が挙げられる。アルカリ溶液の水酸化イオンの規定濃度は、0.1乃至3.0Nの範囲にあることが好ましく、0.5乃至2.0Nの範囲にあることがさらに好ましい。アルカリ溶液の温度は、室温乃至90℃の範囲にあることが好ましく、40乃至70℃の範囲にあることがさらに好ましい。
【0047】
表面処理後のフイルムの表面エネルギーは、55mN/m以上であることが好ましく、60mN/m以上75mN/m以下であることがさらに好ましい。
固体の表面エネルギーは、「ぬれの基礎と応用」(リアライズ社 1989.12.10発行)に記載のように接触角法、湿潤熱法、および吸着法により求めることができる。本発明のセルロースアセテートフイルムの場合、接触角法を用いることが好ましい。
具体的には、表面エネルギーが既知である2種の溶液をセルロースアセテートフイルムに滴下し、液滴の表面とフイルム表面との交点において、液滴に引いた接線とフイルム表面のなす角で、液滴を含む方の角を接触角と定義し、計算によりフイルムの表面エネルギーを算出できる。
【0048】
本発明の光学補償シートは、作製したセルロースアセテートフイルム上に、液晶性化合物から形成された光学異方性層を設けることにより作製することができる。セルロースアセテートフイルムと、その上に設ける光学異方性層との間に、配向膜を設けることが好ましい。配向膜は本発明で用いる液晶性化合物を一定の方向に配向させる働きをする。従って、配向膜は本発明の光学補償シートを製造する上では必須である。しかし、液晶性化合物を配向後にその配向状態を固定してしまえば、配向膜はその役割を果たしているために、光学補償シートの構成要素としては必ずしも必須のものではない。すなわち、配向状態が固定された配向膜上の光学異方性層のみをセルロースアセテートフイルム上に転写して光学補償シートを作製することも可能である。
【0049】
[配向膜]
配向膜は、液晶性化合物の配向方向を規定する機能を有する。配向膜は、有機化合物(好ましくはポリマー)のラビング処理、無機化合物の斜方蒸着、マイクログルーブを有する層の形成、あるいはラングミュア・ブロジェット法(LB膜)による有機化合物(例、ω−トリコサン酸、ジオクタデシルメチルアンモニウムクロライド、ステアリル酸メチル)の累積のような手段で、設けることができる。さらに、電場の付与、磁場の付与あるいは光照射により、配向機能が生じる配向膜も知られている。配向膜は、ポリマーのラビング処理により形成することが好ましい。
【0050】
配向膜は、ポリマーのラビング処理により形成することが好ましい。ポリビニルアルコールが、好ましいポリマーである。疎水性基が結合している変性ポリビニルアルコールが特に好ましい。
配向膜は、一種類のポリマーから形成することもできるが、架橋された二種類のポリマーからなる層をラビング処理することにより形成することがさらに好ましい。少なくとも一種類のポリマーとして、それ自体架橋可能なポリマーか、架橋剤により架橋されるポリマーのいずれかを用いることが好ましい。配向膜は、官能基を有するポリマーあるいはポリマーに官能基を導入したものを、光、熱、PH変化等により、ポリマー間で反応させて形成するか;あるいは、反応活性の高い化合物である架橋剤を用いてポリマー間に架橋剤に由来する結合基を導入して、ポリマー間を架橋することにより形成することができる。
【0051】
このような架橋は、上記ポリマーまたはポリマーと架橋剤の混合物を含む配向膜塗布液を、セルロースアセテートフイルム上に塗布したのち、加熱等を行なうことにより実施される。最終商品(光学補償シート)で耐久性が確保できれば良いので、配向膜をセルロースアセテートフイルム上に塗設した後から、光学補償シートを得るまでのいずれの段階で架橋させる処理を行なっても良い。
配向膜上に形成される液晶性化合物からなる層(光学異方性層)の配向性を考えると、液晶性化合物を配向させたのちに、充分架橋を行なうことも好ましい。
配向膜の架橋は、セルロースアセテートフイルム上に配向膜塗布液を塗布し、加熱乾燥することで行われることが一般的である。この塗布液の加熱温度を低く設定して、後述の光学異方性層を形成する際の加熱処理の段階で配向膜の充分な架橋を行うことが好ましい。
【0052】
配向膜に用いるポリマーとしては、それ自体架橋可能なポリマーあるいは架橋剤により架橋されるポリマーのいずれも使用することができる。勿論両方可能なポリマーもある。ポリマーの例としては、ポリメチルメタクリレート、アクリル酸/メタクリル酸共重合体、スチレン/マレインイミド共重合体、ポリビニルアルコール及び変性ポリビニルアルコール、ポリ(N−メチロールアクリルアミド)、スチレン/ビニルトルエン共重合体、クロロスルホン化ポリエチレン、ニトロセルロース、ポリ塩化ビニル、塩素化ポリオレフィン、ポリエステル、ポリイミド、酢酸ビニル/塩化ビニル共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリカーボネート等のポリマー及びシランカップリング剤等の化合物を挙げることができる。
好ましいポリマーの例としては、ポリ(N−メチロールアクリルアミド)、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン、ポリビルアルコール及び変性ポリビニルアルコール等の水溶性ポリマーが挙げられる。ゼラチン、ポリビルアルコール及び変性ポリビニルアルコールを用いることが好ましく、ポリビルアルコール及び変性ポリビニルアルコールを用いることがさらに好ましい。
また、重合度の異なるポリビニルアルコールまたは変性ポリビニルアルコールを二種類併用することが最も好ましい。
【0053】
ポリビニルアルコールの例としては、鹸化度が70乃至100%の範囲にあるポリビニルアルコールが挙げられる。一般に鹸化度は80乃至100%の範囲にあり、85乃至95%の範囲にあることがさらに好ましい。また、ポリビニルアルコールの重合度は、100乃至3000の範囲にあることが好ましい。
変性ポリビニルアルコールの例としては、共重合変性、連鎖移動による変性、またはブロック重合による変性をしたポリビニルアルコールなどを挙げることができる。共重合変性する場合の変性基の例としては、COONa、Si(OX)3 、N(CH3 3 ・Cl、C9 、H19COO、SO3 、Na、C1225などが挙げられる。連鎖移動による変性をする場合の変性基の例としては、COONa、SH、C1225などが挙げられる。また、ブロック重合による変性をする場合の変性基の例としては、COOH、CONH2 、COOR、C6 5 などが挙げられる。
これらの中でも、鹸化度が80乃至100%の範囲にある未変性もしくは変性ポリビニルアルコールが好ましい。また、鹸化度が85乃至95%の範囲にある未変性ポリビニルアルコールおよび変性ポリビニルアルコールがさらに好ましい。
【0054】
変性ポリビニルアルコールとしては、特に、下記一般式で表わされる化合物によるポリビニルアルコールの変性物を用いることが好ましい。この変性ポリビニルアルコールを、以下、特定の変性ポリビニルアルコールと記載する。
【0055】
【化1】
Figure 0004267191
式中、R1 は、アルキル基、アクリロイルアルキル基、メタクリロイルアルキル基、またはエポキシアルキル基を表わし;Wは、ハロゲン原子、アルキル基、またはアルコキシ基を表わし;Xは、活性エステル、酸無水物、または酸ハロゲン化物を形成するために必要な原子群を表わし;pは、0または1を表わし;そしてnは、0乃至4の整数を表わす。
上記の特定の変性ポリビニルアルコールは、さらに下記一般式で表わされる化合物によるポリビニルアルコールの変性物であることが好ましい。
【0056】
【化2】
Figure 0004267191
式中、X1 は、活性エステル、酸無水物、または酸ハロゲン化物を形成するために必要な原子群を表わし、そしてmは2乃至24の整数を表わす。
【0057】
これらの一般式により表される化合物と反応させるために用いるポリビニルアルコールとしては、前述の、未変性のポリビニルアルコール、および、共重合変性したもの、即ち連鎖移動により変性したもの、ブロック重合による変性をしたものなどのポリビニルアルコールの変性物を挙げることができる。特定の変性ポリビニルアルコールの好ましい例は、特開平9−152509号明細書に詳しく記載されている。
これらポリマーの合成方法、可視吸収スペクトル測定、および変性基導入率の決定方法等は、特開平8−338913号公報に詳しく記載がある。
【0058】
架橋剤の例としては、アルデヒド類、N−メチロール化合物、ジオキサン誘導体、カルボキシル基を活性化することにより作用する化合物、活性ビニル化合物、活性ハロゲン化合物、イソオキサゾール類、およびジアルデヒド澱粉などを挙げることができる。アルデヒド類の例としては、ホルムアルデヒド、グリオキザール、およびグルタルアルデヒドが挙げられる。N−メチロール化合物の例としては、ジメチロール尿素およびメチロールジメチルヒダントインが挙げられる。ジオキサン誘導体の例としては、2,3−ジヒドロキシジオキサンが挙げられる。カルボキシル基を活性化することにより作用する化合物の例としては、カルベニウム、2−ナフタレンスルホナート、1,1−ビスピロリジノ−1−クロロピリジニウム、および1−モルホリノカルボニル−3−(スルホナトアミノメチル)が挙げられる。活性ビニル化合物の例としては、1,3,5−トリアクロイル−ヘキサヒドロ−s−トリアジン、ビス(ビニルスルホン)メタン、およびN,N’−メチレンビス−[βー(ビニルスルホニル)プロピオンアミド]が挙げられる。そして、活性ハロゲン化合物の例としては、2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−S−トリアジンが挙げられる。これらは、単独または組合せて用いることができる。
これらは上記水溶性ポリマー、特にポリビニルアルコール及び変性ポリビニルアルコール(上記特定の変性物も含む)と併用する場合に好ましい。生産性を考慮した場合、反応活性の高いアルデヒド類、とりわけグルタルアルデヒドの使用が好ましい。
【0059】
ポリマーに対する架橋剤の添加量に特に限定はない。耐湿性は、架橋剤を多く添加した方が良化傾向にある。しかし、架橋剤をポリマーに対して50質量%以上添加した場合には、配向膜としての配向能が低下する。従って、ポリマーに対する架橋剤の添加量は、0.1乃至20質量%の範囲にあることが好ましく、0.5乃至15質量%の範囲にあることがさらに好ましい。配向膜は、架橋反応が終了した後でも、反応しなかった架橋剤をある程度含んでいるが、その架橋剤の量は、配向膜中に1.0質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下であることがさらに好ましい。配向膜中に1.0質量%を超える量で未反応の架橋剤が含まれていると、充分な耐久性が得られない。即ち、液晶表示装置に使用した場合、長期使用、あるいは高温高湿の雰囲気下に長期間放置した場合に、レチキュレーションが発生することがある。
【0060】
配向膜は、上記ポリマーを含む溶液、あるいは上記ポリマーと架橋剤を含む溶液を、セルロースアセテートフイルム上に塗布した後、加熱乾燥し(架橋させ)、ラビング処理することにより形成することができる。架橋反応は、塗布液をセルロースアセテートフイルム上に塗布した後、任意の時期に行なっても良い。
そして、ポリビニルアルコール等の水溶性ポリマーを配向膜形成材料として用いる場合、その塗布液を作製するための溶媒は、消泡作用のあるメタノール等の有機溶媒とするか、あるいは有機溶媒と水の混合溶媒とすることが好ましい。有機溶媒としてメタノールを用いる場合、その比率は質量比で水:メタノールが、0:100〜99:1が一般的であり、0:100〜91:9であることがさらに好ましい。これにより、泡の発生が抑えられ、配向膜、更には光学異方性層の表面の欠陥が著しく減少する。
塗布方法としては、スピンコーティング法、ディップコーティング法、カーテンコーティング法、エクストルージョンコーティング法、バーコーティング法及びE型塗布法を挙げることができる。この中でも、特にE型塗布法が好ましい。
【0061】
配向膜の膜厚は、0.1乃至10μmの範囲にあることが好ましい。加熱乾燥は、加熱温度が20乃至110℃の範囲で行なうことができる。充分な架橋を形成させるためには、加熱温度は60乃至100℃の範囲にあることが好ましく、80乃至100℃の範囲にあることが好ましい。乾燥時間は、1分〜36時間の範囲にあることが好ましく、5乃至30分間の範囲にあることがさらに好ましい。pHも、使用する架橋剤に最適な値に設定することが好ましく、グルタルアルデヒドを使用した場合は、pH4.5乃至5.5の範囲にあることが好ましく、特にpH5であることが好ましい。
【0062】
ラビング処理は、LCDの液晶配向処理工程として広く採用されている処理方法を利用することができる。即ち、配向膜の表面を、紙やガーゼ、フェルト、ゴムあるいはナイロン、ポリエステル繊維などを用いて一定方向に擦ることにより配向を得る方法を用いることができる。一般的には、長さ及び太さが均一な繊維を平均的に植毛した布などを用いて数回程度ラビングを行うことにより実施される。
【0063】
[光学異方性層]
光学異方性層は、液晶性化合物から形成される。光学異方性層は、セルロースアセテートフイルム上に設けられた配向膜の上に形成することが好ましい。
光学異方性層に用いる液晶性化合物には、棒状液晶性化合物および円盤状液晶性化合物が含まれる。棒状液晶性化合物および円盤状液晶性化合物は、高分子液晶でも低分子液晶でもよく、さらに、低分子液晶が架橋され液晶性を示さなくなったものも含まれる。
光学異方性層は、液晶性化合物および必要に応じて重合性開始剤や任意の成分を含む塗布液を、配向膜の上に塗布することで形成できる。
【0064】
塗布液の調整に使用する溶媒としては、有機溶媒が好ましく用いられる。有機溶媒の例には、アミド(例、N,N−ジメチルホルムアミド)、スルホキシド(例、ジメチルスルホキシド)、ヘテロ環化合物(例、ピリジン)、炭化水素(例、ベンゼン、ヘキサン)、アルキルハライド(例、クロロホルム、ジクロロメタン、テトラクロロエタン)、エステル(例、酢酸メチル、酢酸ブチル)、ケトン(例、アセトン、メチルエチルケトン)、エーテル(例、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン)が含まれる。アルキルハライドおよびケトンが好ましい。二種類以上の有機溶媒を併用してもよい。
塗布液の塗布は、公知の方法(例、ワイヤーバーコーティング法、押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、ダイコーティング法)により実施できる。
光学異方性層の厚さは、0.1乃至20μmであることが好ましく、0.5乃至15μmであることがさらに好ましく、1乃至10μmであることが最も好ましい。
本発明に用いる液晶性化合物としては、円盤状液晶性化合物を用いることが好ましい。
【0065】
[棒状液晶性化合物]
棒状液晶性化合物としては、アゾメチン類、アゾキシ類、シアノビフェニル類、シアノフェニルエステル類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類およびアルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類が好ましく用いられる。
なお、棒状液晶性化合物には、金属錯体も含まれる。また、棒状液晶性化合物を繰り返し単位中に含む液晶ポリマーも、棒状液晶性化合物として用いることができる。言い換えると、棒状液晶性化合物は、(液晶)ポリマーと結合していてもよい。
棒状液晶性化合物については、季刊化学総説第22巻液晶の化学(1994)日本化学会編の第4章、第7章および第11章、および液晶デバイスハンドブック日本学術振興会第142委員会編の第3章に記載がある。
棒状液晶性化合物の複屈折率は、0.001乃至0.7の範囲にあることが好ましい。
棒状液晶性化合物は、その配向状態を固定するために、重合性基を有することが好ましい。重合性基(Q)の例を、以下に示す。
【0066】
【化3】
Figure 0004267191
【0067】
重合性基(Q)は、不飽和重合性基(Q1〜Q7)、エポキシ基(Q8)またはアジリジニル基(Q9)であることが好ましく、不飽和重合性基であることがさらに好ましく、エチレン性不飽和重合性基(Q1〜Q6)であることが最も好ましい。
棒状液晶性化合物は、短軸方向に対してほぼ対称となる分子構造を有することが好ましい。そのためには、棒状分子構造の両端に重合性基を有することが好ましい。
以下に、棒状液晶性化合物の例を示す。
【0068】
【化4】
Figure 0004267191
【0069】
【化5】
Figure 0004267191
【0070】
【化6】
Figure 0004267191
【0071】
【化7】
Figure 0004267191
【0072】
【化8】
Figure 0004267191
【0073】
【化9】
Figure 0004267191
【0074】
【化10】
Figure 0004267191
【0075】
【化11】
Figure 0004267191
【0076】
【化12】
Figure 0004267191
【0077】
【化13】
Figure 0004267191
【0078】
【化14】
Figure 0004267191
【0079】
【化15】
Figure 0004267191
【0080】
【化16】
Figure 0004267191
【0081】
光学異方性層は、棒状液晶性化合物あるいは後述の重合性開始剤や任意の添加剤(例、可塑剤、モノマー、界面活性剤、セルロースエステル、1,3,5−トリアジン化合物、カイラル剤)を含む液晶組成物(塗布液)を、配向膜の上に塗布することで形成する。
【0082】
[円盤状液晶性化合物]
円盤状(ディスコティック)液晶性化合物の例としては、C.Destradeらの研究報告、Mol.Cryst.71巻、111頁(1981年)に記載されているベンゼン誘導体、C.Destradeらの研究報告、Mol.Cryst.122巻、141頁(1985年)、Physics lett,A,78巻、82頁(1990)に記載されているトルキセン誘導体、B.Kohneらの研究報告、Angew.Chem.96巻、70頁(1984年)に記載されたシクロヘキサン誘導体及びJ.M.Lehnらの研究報告、J.Chem.Commun.,1794頁(1985年)、J.Zhangらの研究報告、J.Am.Chem.Soc.116巻、2655頁(1994年)に記載されているアザクラウン系やフェニルアセチレン系マクロサイクルなどを挙げることができる。さらに、円盤状液晶性化合物としては、一般的にこれらを分子中心の母核とし、直鎖のアルキル基やアルコキシ基、置換ベンゾイルオキシ基等がその直鎖として放射線状に置換された構造のものも含まれ、液晶性を示す。ただし、分子自身が負の一軸性を有し、一定の配向を付与できるものであればこれらに限定されるものではない。また、本発明において、円盤状液晶性化合物から形成する光学異方性層は、最終的にできた物が前記化合物である必要はなく、例えば、低分子の円盤状液晶性化合物が熱、光等で反応する基を有しており、結果的に熱、光等で反応により重合または架橋し、高分子量化し液晶性を失ったものも含まれる。円盤状液晶性化合物の好ましい例は、特開平8−50206号公報に記載されている。また、円盤状液晶性化合物の重合については、特開平8−27284公報に記載がある。
【0083】
円盤状液晶性化合物を重合により固定するためには、円盤状液晶性化合物の円盤状コアに、置換基として重合性基を結合させる必要がある。ただし、円盤状コアに重合性基を直結させると、重合反応において配向状態を保つことが困難になる。そこで、円盤状コアと重合性基との間に、連結基を導入する。従って、重合性基を有する円盤状液晶性化合物は、下記式(III)で表わされる化合物であることが好ましい。
【0084】
(III) D(−L−P)n
式中、Dは円盤状コアであり;Lは二価の連結基であり、Pは重合性基であり、そして、nは4乃至12の整数である。
円盤状コア(D)の例を以下に示す。以下の各例において、LP(またはPL)は、二価の連結基(L)と重合性基(P)との組み合わせを意味する。
【0085】
【化17】
Figure 0004267191
【0086】
【化18】
Figure 0004267191
【0087】
【化19】
Figure 0004267191
【0088】
【化20】
Figure 0004267191
【0089】
【化21】
Figure 0004267191
【0090】
【化22】
Figure 0004267191
【0091】
【化23】
Figure 0004267191
【0092】
【化24】
Figure 0004267191
【0093】
【化25】
Figure 0004267191
【0094】
式(III)において、二価の連結基(L)は、アルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基、−CO−、−NH−、−O−、−S−およびそれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基であることが好ましい。二価の連結基(L)は、アルキレン基、アリーレン基、−CO−、−NH−、−O−および−S−からなる群より選ばれる二価の基を少なくとも二つ組み合わせた二価の連結基であることがさらに好ましい。二価の連結基(L)は、アルキレン基、アリーレン基、−CO−および−O−からなる群より選ばれる二価の基を少なくとも二つ組み合わせた二価の連結基であることが最も好ましい。アルキレン基の炭素原子数は、1乃至12であることが好ましい。アルケニレン基の炭素原子数は、2乃至12であることが好まし。アリーレン基の炭素原子数は、6乃至10であることが好ましい。
【0095】
二価の連結基(L)の例を以下に示す。左側が円盤状コア(D)に結合し、右側が重合性基(P)に結合する。ALはアルキレン基またはアルケニレン基、ARはアリーレン基を意味する。なお、アルキレン基、アルケニレン基およびアリーレン基は、置換基(例、アルキル基)を有していてもよい。
L1:−AL−CO−O−AL−
L2:−AL−CO−O−AL−O−
L3:−AL−CO−O−AL−O−AL−
L4:−AL−CO−O−AL−O−CO−
L5:−CO−AR−O−AL−
L6:−CO−AR−O−AL−O−
L7:−CO−AR−O−AL−O−CO−
L8:−CO−NH−AL−
L9:−NH−AL−O−
L10:−NH−AL−O−CO−
【0096】
L11:−O−AL−
L12:−O−AL−O−
L13:−O−AL−O−CO−
L14:−O−AL−O−CO−NH−AL−
L15:−O−AL−S−AL−
L16:−O−CO−AR−O−AL−CO−
L17:−O−CO−AR−O−AL−O−CO−
L18:−O−CO−AR−O−AL−O−AL−O−CO−
L19:−O−CO−AR−O−AL−O−AL−O−AL−O−CO−
L20:−S−AL−
L21:−S−AL−O−
L22:−S−AL−O−CO−
L23:−S−AL−S−AL−
L24:−S−AR−AL−
【0097】
式(III)の重合性基(P)は、重合反応の種類に応じて決定する。重合性基(P)の例を以下に示す。
【0098】
【化26】
Figure 0004267191
【0099】
【化27】
Figure 0004267191
【0100】
【化28】
Figure 0004267191
【0101】
【化29】
Figure 0004267191
【0102】
【化30】
Figure 0004267191
【0103】
【化31】
Figure 0004267191
【0104】
重合性基(P)は、不飽和重合性基(P1、P2、P3、P7、P8、P15、P16、P17)またはエポキシ基(P6、P18)であることが好ましく、不飽和重合性基であることがさらに好ましく、エチレン性不飽和重合性基(P1、P7、P8、P15、P16、P17)であることが最も好ましい。
式(III)において、nは4乃至12の整数である。具体的な数字は、円盤状コア(D)の種類に応じて決定される。なお、複数のLとPの組み合わせは、異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。
【0105】
円盤状液晶性化合物を用いる場合、光学異方性層は負の複屈折を有する層であって、そして円盤状構造単位の面が、セルロースアセテートフイルム表面に対して傾き、且つ円盤状構造単位の面とセルロースアセテートフイルム表面とのなす角度が、光学異方性層の深さ方向に変化していることが好ましい。
【0106】
円盤状構造単位の面の角度(傾斜角)は、一般に、光学異方性層の深さ方向でかつ光学異方性層の底面からの距離の増加と共に増加または減少している。傾斜角は、距離の増加と共に増加することが好ましい。さらに、傾斜角の変化としては、連続的増加、連続的減少、間欠的増加、間欠的減少、連続的増加と連続的減少を含む変化、及び増加及び減少を含む間欠的変化などを挙げることができる。間欠的変化は、厚さ方向の途中で傾斜角が変化しない領域を含んでいる。傾斜角は、傾斜角が変化しない領域を含んでいても、全体として増加または減少していることが好ましい。さらに、傾斜角は全体として増加していることが好ましく、特に連続的に変化することが好ましい。
【0107】
支持体側の円盤状単位の傾斜角は、一般に円盤状液晶性化合物あるいは配向膜の材料を選択することにより、またはラビング処理方法の選択することにより、調整することができる。また、表面側(空気側)の円盤状単位の傾斜角は、一般に円盤状液晶性化合物あるいは円盤状液晶性化合物とともに使用する他の化合物を選択することにより調整することができる。円盤状液晶性化合物とともに使用する化合物の例としては、可塑剤、界面活性剤、重合性モノマー及びポリマーなどを挙げることができる。更に、傾斜角の変化の程度も、上記と同様の選択により調整できる。
【0108】
円盤状液晶性化合物とともに使用する可塑剤、界面活性剤及び重合性モノマーとしては、円盤状液晶性化合物と相溶性を有し、円盤状液晶性化合物の傾斜角の変化を与えられるか、あるいは配向を阻害しない限り、どのような化合物も使用することができる。これらの中で、重合性モノマー(例、ビニル基、ビニルオキシ基、アクリロイル基及びメタクリロイル基を有する化合物)が好ましい。上記化合物の添加量は、円盤状液晶性化合物に対して一般に1〜50質量%の範囲にあり、5〜30質量%の範囲にあることが好ましい。
【0109】
円盤状液晶性化合物とともに使用するポリマーとしては、円盤状液晶性化合物と相溶性を有し、円盤状液晶性化合物に傾斜角の変化を与えられる限り、どのようなポリマーでも使用することができる。ポリマーの例としては、セルロースエステルを挙げることができる。セルロースエステルの好ましい例としては、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、ヒドロキシプロピルセルロース及びセルロースアセテートブチレートを挙げることができる。円盤状液晶性化合物の配向を阻害しないように、上記ポリマーの添加量は、円盤状液晶性化合物に対して一般に0.1〜10質量%の範囲にあり、0.1〜8質量%の範囲にあることがより好ましく、0.1〜5質量%の範囲にあることがさらに好ましい。
【0110】
光学異方性層は、一般に円盤状液晶性化合物および他の化合物を溶剤に溶解した溶液を配向膜上に塗布し、乾燥し、次いでディスコティックネマチック相形成温度まで加熱し、その後配向状態(ディスコティックネマチック相)を維持して冷却することにより得られる。あるいは、上記光学異方性層は、円盤状液晶性化合物及び他の化合物(更に、例えば重合性モノマー、光重合開始剤)を溶剤に溶解した溶液を配向膜上に塗布し、乾燥し、次いでディスコティックネマチック相形成温度まで加熱したのち重合させ(UV光の照射等により)、さらに冷却することにより得られる。本発明に用いる円盤状液晶性化合物のディスコティックネマティック液晶相−固相転移温度としては、70〜300℃が好ましく、特に70〜170℃が好ましい。
【0111】
[液晶性化合物の配向状態の固定]
配向させた液晶性化合物を、配向状態を維持して固定することが好ましい。固定化は、重合反応により実施することが好ましい。重合反応には、熱重合開始剤を用いる熱重合反応と光重合開始剤を用いる光重合反応とが含まれる。光重合反応が好ましい。 光重合開始剤の例には、α−カルボニル化合物(米国特許2367661号、同2367670号の各明細書記載)、アシロインエーテル(米国特許2448828号明細書記載)、α−炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許2722512号明細書記載)、多核キノン化合物(米国特許3046127号、同2951758号の各明細書記載)、トリアリールイミダゾールダイマーとp−アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許3549367号明細書記載)、アクリジンおよびフェナジン化合物(特開昭60−105667号公報、米国特許4239850号明細書記載)およびオキサジアゾール化合物(米国特許4212970号明細書記載)が含まれる。
光重合開始剤の使用量は、塗布液の固形分の0.01乃至20質量%の範囲にあることが好ましく、0.5乃至5質量%の範囲にあることがさらに好ましい。
液晶性化合物の重合のための光照射は、紫外線を用いることが好ましい。
照射エネルギーは、20mJ/cm2 乃至50J/cm2 の範囲にあることが好ましく、20乃至5000mJ/cm2 の範囲にあることがより好ましく、100乃至800mJ/cm2 の範囲にあることがさらに好ましい。また、光重合反応を促進するため、加熱条件下で光照射を実施してもよい。保護層を、光学異方性層の上に設けてもよい。
以上のように、セルロースアセテートフイルム上に光学異方性層を設けることにより本発明の光学補償シートを作製することができる。
【0112】
[偏光板]
偏光板は、偏光膜およびその両側に配置された二枚の透明保護膜からなる。一方の保護膜として、上記の光学補償シートを用いることができる。他方の保護膜は、通常のセルロースアセテートフイルムを用いてもよい。
偏光膜には、ヨウ素系偏光膜、二色性染料を用いる染料系偏光膜やポリエン系偏光膜がある。ヨウ素系偏光膜および染料系偏光膜は、一般にポリビニルアルコール系フイルムを用いて製造する。
【0113】
また、偏光板の生産性には保護フイルムの透湿性が重要であることがわかった。偏光膜と保護フイルムは水系接着剤で貼り合わせられており、この接着剤溶剤は保護フイルム中を拡散することで、乾燥される。保護フイルムの透湿性が高ければ、高いほど乾燥は早くなり、生産性は向上するが、高くなりすぎると、液晶表示装置の使用環境(高湿下)により、水分が偏光膜中に入ることで偏光能が低下する。
光学補償シートの透湿性は、ポリマーフイルム(および重合性液晶化合物)の厚み、自由体積、もしくは、親疎水性などにより決定される。
光学補償シートを偏光板の保護フイルムとして用いる場合、光学補償シートの透湿性は100乃至1000(g/m2 )/24hrsの範囲にあることが好ましく、300乃至700(g/m2 )/24hrsの範囲にあることが更に好ましい。
光学補償シートの厚みは、セルロースアセテートフイルムを製膜する場合の、リップ流量とラインスピード、あるいは、延伸、圧縮により調整することができる。使用する主素材により透湿性が異なるので、厚み調整により好ましい範囲にすることが可能である。
光学補償シートの自由体積は、製膜の場合、乾燥温度と時間により調整することができる。この場合もまた、使用する主素材により透湿性が異なるので、自由体積調整により好ましい範囲にすることが可能である。
光学補償フイルムの親疎水性は、添加剤により調整することができる。自由体積中に親水的添加剤を添加することで透湿性は高くなり、逆に疎水性添加剤を添加することで透湿性を低くすることができる。
光学補償シートの透湿性を調整することにより、光学補償能を有する偏光板を安価に高い生産性で製造することが可能となる。
【0114】
[液晶表示装置]
上記の光学補償シート、または光学補償シートと偏光膜とを貼り合わせて得られた偏光板は、液晶表示装置、特に透過型液晶表示装置に有利に用いられる。
透過型液晶表示装置は、液晶セルおよびその両側に配置された二枚の偏光板からなる。偏光板は、偏光膜およびその両側に配置された二枚の透明保護膜からなる。液晶セルは、二枚の電極基板の間に液晶を担持している。
本発明の光学補償シートは、液晶セルと一方の偏光板との間に一枚配置するか、あるいは液晶セルと双方の偏光板との間に二枚配置する。
本発明の偏光板は、液晶セルの両側に配置された二枚の偏光板のうちの少なくとも一方として用いればよい。この際には、光学補償シートが液晶セル側となるように本発明の偏光板を配置する。
TNモードの液晶セルでは、電圧無印加時に棒状液晶性分子が実質的に水平配向し、さらに60乃至120゜にねじれ配向している。
TNモードの液晶セルは、カラーTFT液晶表示装置として最も多く利用されており、多数の文献に記載がある。
【0115】
【実施例】
[実施例1]
(セルロースアセテートフイルムの作製)
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、セルロースアセテート溶液を調製した。
【0116】
Figure 0004267191
【0117】
別のミキシングタンクに、下記のレターデーション上昇剤16質量部、メチレンクロライド80質量部およびメタノール20質量部を投入し、加熱しながら攪拌して、レターデーション上昇剤溶液を調製した。
セルロースアセテート溶液487質量部にレターデーション上昇剤溶液13質量部を混合し、充分に攪拌してドープを調製した。レターデーション上昇剤の添加量は、セルロースアセテート100質量部に対して、1.8質量部であった。
【0118】
【化32】
Figure 0004267191
【0119】
得られたドープを、バンド流延機を用いて流延した。バンド上での膜面温度が40℃となってから、60℃の温風で1分乾燥し、フイルムをバンドから剥ぎ取った。次いでフイルムを140℃の乾燥風で10分乾燥し、残留溶剤量が0.3質量%のセルロースアセテートフイルム(厚さ:80μm)を製造した。
作製したセルロースアセテートフイルム(CAF−01)について、光学特性と吸湿膨張係数を測定した。結果は第1表および第2表に示す。
尚、光学特性は、エリプソメーター(M−150、日本分光(株)製)を用いて、波長550nmにおけるReレターデーション値およびRthレターデーション値を測定した。
【0120】
(配向膜の形成)
このセルロースアセテートフイルム上に、下記の組成の塗布液を#16のワイヤーバーコーターで28ml/m2 塗布した。60℃の温風で60秒、さらに90℃の温風で150秒乾燥した。
次に、セルロースアセテートフイルムの長手方向と平行な方向に、形成した膜にラビング処理を実施した。
【0121】
Figure 0004267191
【0122】
【化33】
Figure 0004267191
【0123】
(光学異方性層の形成)
配向膜上に、下記の円盤状(液晶性)化合物41.01g、エチレンオキサイド変成トリメチロールプロパントリアクリレート(V#360、大阪有機化学(株)製)4.06g、セルロースアセテートブチレート(CAB551−0.2、イーストマンケミカル社製)0.90g、セルロースアセテートブチレート(CAB531−1、イーストマンケミカル社製)0.23g、光重合開始剤(イルガキュアー907、チバガイギー社製)1.35g、増感剤(カヤキュアーDETX、日本化薬(株)製)0.45gを、102gのメチルエチルケトンに溶解した塗布液を、#3.6のワイヤーバーで塗布した。これを130℃の恒温ゾーンで2分間加熱し、円盤状化合物を配向させた。次に、60℃の雰囲気下で120W/cm高圧水銀灯を用いて、1分間UV照射し円盤状化合物を重合させた。その後、室温まで放冷した。このようにして、光学異方性層を形成し、光学補償シート(KH−01)を作製した。
波長546nmで測定した光学異方性層のReレターデーション値は43nmであった。また、円盤面とセルロースアセテートフイルム表面との間の角度(傾斜角)は平均で42゜であった。
【0124】
【化34】
Figure 0004267191
【0125】
[実施例2]
(セルロースアセテートフイルムの作製)
セルロースアセテート溶液474質量部にレターデーション上昇剤溶液25質量部を混合してドープを調製した(セルロースアセテート100質量部に対して、レターデーション上昇剤3.5質量部を使用し)以外は、実施例1と同様にして、残留溶剤量が0.5質量%のセルロースアセテートフイルムを作製した。
作製したセルロースアセテートフイルム(CAF−02)について、光学特性と吸湿膨張係数を測定した。結果は第1表および第2表に示す。
尚、光学特性は、エリプソメーター(M−150、日本分光(株)製)を用いて、波長550nmにおけるReレターデーション値およびRthレターデーション値を測定した。
さらに、作製したセルロースアセテートフイルムを、1.5Nの水酸化カリウム溶液(40℃)に5分間浸漬した後、硫酸で中和し、純水で水洗、乾燥した。このセルロースアセテートフイルムの表面エネルギーを接触角法により求めたところ、68mN/mであった。
【0126】
(配向膜の形成)
このセルロースアセテートフイルム上に、実施例1で用いた配向膜塗布液を#16のワイヤーバーコーターで28ml/m2 塗布した。60℃の温風で60秒、さらに90℃の温風で150秒乾燥した。
次に、セルロースアセテートフイルムの遅相軸(波長632.8nmで測定)と45゜の方向に、形成した膜にラビング処理を実施した。
【0127】
(液晶性化合物の作製)
まず、液晶性高分子の合成と、無配向処理基板上でのホメオトロピック配向の確認を行う。
4−n−ヘプチル安息香酸10mmol、テレフタル酸95mmol、メチルヒドロキノンジアセテート50mmol、カテコールジアセテート50mmol、および酢酸ナトリウム100mgを用いて窒素雰囲気下、270℃で12時間重合を行った。得られた反応生成物をテトラクロロエタンに溶解したのち、メタノールで再沈澱を行って精製し、液晶性ポリエステル22.0gを得た。
この液晶性ポリエステルの対数粘度は0.15、液晶相としてネマチック相をもち、等方相−液晶相転移温度は240℃、ガラス転移点は75℃であった。
【0128】
この液晶性ポリエステルを用いて、10wt%のフェノール/テトラクロロエタン混合溶媒(6/4質量比)溶液を調製した。この溶液を、ソーダガラス板上に、バーコート法により塗布し、溶媒を除去した。次いで、190℃で30分間熱処理した後、室温下で冷却・固定化した。その結果、膜厚15μmの均一に配向した液晶性フイルムを得た。コノスコープ観察したところ高分子液晶は正の一軸性構造を持つことがわかり、このポリマーがホメオトロピック配向性を持つことがわかった。
【0129】
(光学異方性層の形成)
前記のようにして得られた液晶性ポリエステルの8wt%テトラクロロエタン溶液を調製した。次いで、スピンコート法により、溶液を配向膜上に塗布した。次いで溶媒を除去した後、190℃で20分間熱処理した。熱処理後、空冷し、液晶性化合物の配向状態を固定化した。得られた光学補償シート(KH−02)は、透明で配向欠陥はなく、均一な膜厚(1.55μm)を有していた。
【0130】
[比較例1]
実施例1で用いたセルロースアセテート溶液をそのままドープとして、バンド流延機を用いて流延した。バンド上での膜面温度が40℃となってから、40℃の温風で1分乾燥し、バンドからフイルムを剥ぎ取った。次いでフイルムを120℃の乾燥風で5分乾燥し、残留溶剤量が3.0質量%のセルロースアセテートフイルム(厚さ:100μm)を製造した。
作製したセルロースアセテートフイルム(CAF−H1)について、光学特性と吸湿膨張係数を測定した。結果は第1表および第2表に示す。
尚、光学特性は、エリプソメーター(M−150、日本分光(株)製)を用いて、波長550nmにおけるReレターデーション値およびRthレターデーション値を測定した。
【0131】
【表1】
Figure 0004267191
【0132】
【表2】
Figure 0004267191
【0133】
[実施例3]
延伸したポリビニルアルコールフイルムにヨウ素を吸着させて偏光膜を作製した。ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、実施例1で作成した光学補償シート(KH−01)を、セルロースアセテートフイルム(CAF―01)が偏光膜側となるように偏光膜の片側に貼り付けた。偏光膜の透過軸と光学補償シート(KH―01)の遅相軸とは平行になるように配置した。
市販のセルローストリアセテートフイルム(フジタックTD80UF、富士写真フイルム(株)製)にケン化処理を行い、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、偏光膜の反対側に貼り付けた。偏光膜の透過軸と市販のセルローストリアセテートフイルムの遅相軸とは、直交するように配置した。
このようにして偏光板を作製した。
【0134】
[実施例4]
延伸したポリビニルアルコールフイルムにヨウ素を吸着させて偏光膜を作製した。ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、実施例2で作成した光学補償シート(KH−02)を、セルロースアセテートフイルム(CAF―02)が偏光膜側となるように偏光膜の片側に貼り付けた。偏光膜の透過軸と光学補償シート(KH―02)の遅相軸とは直交になるように配置した。
市販のセルローストリアセテートフイルム(フジタックTD80UF、富士写真フイルム(株)製)にケン化処理を行い、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、偏光膜の反対側に貼り付けた。偏光膜の透過軸と市販のセルローストリアセテートフイルムの遅相軸とは、直交するように配置した。
このようにして偏光板を作製した。
【0135】
[比較例2]
延伸したポリビニルアルコールフイルムにヨウ素を吸着させて偏光膜を作製した。ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、比較例1で作成したセルロースアセテートフイルムを偏光膜の片側に貼り付けた。偏光膜の透過軸とセルロースアセテートフイルム(CAF−H1)の遅相軸とは平行になるように配置した。
市販のセルローストリアセテートフイルム(フジタックTD80UF、富士写真フイルム(株)製)にケン化処理を行い、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、偏光膜の反対側に貼り付けた。偏光膜の透過軸と市販のセルローストリアセテートフイルムの遅相軸とは、直交するように配置した。
このようにして偏光板を作製した。
【0136】
[実施例5]
TN型液晶セルを使用した液晶表示装置(6E−A3、シャープ(株)製)に設けられている一対の偏光板を剥がし、代わりに実施例3で作製した偏光板を、光学補償シート(KH−01)が液晶セル側となるように粘着剤を介して、観察者側およびバックライト側に一枚ずつ貼り付けた。観察者側の偏光板の透過軸と、バックライト側の偏光板の透過軸とが直交するように配置した。
作製した液晶表示装置について、測定機(EZ−Contrast160D、ELDIM社製)を用いて、黒表示(L1)から白表示(L8)までの8段階で視野角を測定した。結果を第3表に示す。
【0137】
[実施例6]
TN型液晶セルを使用した液晶表示装置(6E−A3、シャープ(株)製)に設けられている一対の偏光板を剥がし、代わりに実施例4で作製した偏光板を、光学補償シート(KH−02)が液晶セル側となるように粘着剤を介して、観察者側およびバックライト側に一枚ずつ貼り付けた。観察者側の偏光板の透過軸と、バックライト側の偏光板の透過軸とが直交するように配置した。
作製した液晶表示装置について、測定機(EZ−Contrast160D、ELDIM社製)を用いて、黒表示(L1)から白表示(L8)までの8段階で視野角を測定した。結果を第3表に示す。
【0138】
[比較例3]
TN型液晶セルを使用した液晶表示装置(6E−A3、シャープ(株)製)について、測定機(EZ−Contrast160D、ELDIM社製)を用いて、黒表示(L1)から白表示(L8)までの8段階で視野角を測定した。結果を第3表に示す。
【0139】
【表3】
Figure 0004267191
【0140】
[実施例7]
TN型液晶セルを使用した20インチの液晶表示装置(LC−20V1、シャープ(株)製)に設けられている一対の偏光板を剥がし、代わりに実施例3で作製した偏光板を、光学補償シート(KH−01)が液晶セル側となるように粘着剤を介して、観察者側およびバックライト側に一枚ずつ貼り付けた。観察者側の偏光板の透過軸と、バックライト側の偏光板の透過軸とが直交するように配置した。
温度25℃、相対湿度60%の環境条件において、バックライトを5時間連続点灯し、全面黒表示状態を暗室にて目視で観察して光漏れを評価した。その結果、液晶表示装置の表示画面において光漏れ(透過率の上昇)は観測されなかった。
【0141】
[実施例8]
実施例4で作製した偏光板を用いる以外は、実施例7と同様にして偏光板を液晶表示装置に実装した。
実施例7と同様にして光漏れを評価した。その結果、液晶表示装置の表示画面において光漏れは観測されなかった。
【0142】
[比較例4]
比較例2で作製した偏光板を用いる以外は、実施例7と同様にして偏光板を液晶表示装置に実装した。
実施例7と同様にして、光漏れを評価した。その結果、液晶表示装置の表示画面において額縁状の光漏れが観測された。

Claims (9)

  1. 酢化度が59.0乃至61.5%の範囲にあるセルロースアセテート、およびセルロースアセテート100質量部に対して、少なくとも二つの芳香族環を有し、芳香族環の少なくとも一つが1,3,5−トリアジン環であり、芳香族環の結合関係がいずれも−NH−を介しての結合である芳香族化合物を0.01乃至20質量部含むセルロースアセテートフイルム上に、液晶性化合物から形成された光学異方性層が備えられてなる光学補償シートであり、セルロースアセテートフイルムの、下記式(I)により定義されるReレターデーション値が0乃至20nmの範囲にあり、下記式(II)により定義されるRthレターデーション値が70乃至400nmの範囲にあり、そして吸湿膨張係数が30×10−5/%RH以下であることを特徴とする光学補償シート:
    (I) Re=(nx−ny)×d
    (II) Rth={(nx+ny)/2−nz}×d
    [式中、nxは、フイルム面内の遅相軸方向の屈折率であり;nyは、フイルム面内の進相軸方向の屈折率であり;nzは、フイルムの厚み方向の屈折率であり;そして、dは、フイルムの厚さである]。
  2. セルロースアセテートフイルムの残留溶剤量が、0.02乃至0.07質量%であることを特徴とする請求項1に記載の光学補償シート。
  3. 前記の液晶性化合物が円盤状液晶性化合物であることを特徴とする請求項1に記載の光学補償シート。
  4. TNモードの液晶セル用であることを特徴とする請求項1に記載の光学補償シート。
  5. 前記の芳香族環または連結基の置換基が炭素原子数1乃至8のアルキル基または炭素原子数1乃至8のアルコキシ基であることを特徴とする請求項1に記載の光学補償シート
  6. 前記の芳香族環または連結基の置換基が炭素原子数1乃至8のアルキル基であることを特徴とする請求項1に記載の光学補償シート
  7. 偏光膜およびその両側に配置された二枚の透明保護膜からなる偏光板であって、透明保護膜の一方が、酢化度が59.0乃至61.5%の範囲にあるセルロースアセテート、およびセルロースアセテート100質量部に対して、少なくとも二つの芳香族環を有し、芳香族環の少なくとも一つが1,3,5−トリアジン環であり、芳香族環の結合関係がいずれも−NH−を介しての結合である芳香族化合物を0.01乃至20質量部含むセルロースアセテートフイルム上に、液晶性化合物から形成された光学異方性層が備えられてなる光学補償シートであり、セルロースアセテートフイルムの、下記式(I)により定義されるReレターデーション値が0乃至20nmの範囲にあり、下記式( II )により定義されるR th レターデーション値が70乃至400nmの範囲にあり、そして吸湿膨張係数が30×10 −5 /%RH以下であることを特徴とする偏光板:
    (I) Re=(nx−ny)×d
    II ) R th ={(nx+ny)/2−nz}×d
    [式中、nxは、フイルム面内の遅相軸方向の屈折率であり;nyは、フイルム面内の進相軸方向の屈折率であり;nzは、フイルムの厚み方向の屈折率であり;そして、dは、フイルムの厚さである]
  8. 液晶セルおよびその両側に配置された二枚の偏光板からなり、偏光板が偏光膜およびその両側に配置された二枚の透明保護膜からなる液晶表示装置であって、液晶セルと偏光膜の間の透明保護膜のうちの少なくとも一方が、酢化度が59.0乃至61.5%の範囲にあるセルロースアセテート、およびセルロースアセテート100質量部に対して、少なくとも二つの芳香族環を有し、芳香族環の少なくとも一つが1,3,5−トリアジン環であり、芳香族環の結合関係がいずれも−NH−を介しての結合である芳香族化合物を0.01乃至20質量部含むセルロースアセテートフイルム上に、液晶性化合物から形成された光学異方性層が備えられてなる光学補償シートであり、セルロースアセテートフイルムの、下記式(I)により定義されるReレターデーション値が0乃至20 nmの範囲にあり、下記式( II )により定義されるR th レターデーション値が70乃至400nmの範囲にあり、そして吸湿膨張係数が30×10 -5 /%RH以下であることを特徴とする液晶表示装置:
    (I) Re=(nx−ny)×d
    II ) R th ={(nx+ny)/2−nz}×d
    [式中、nxは、フイルム面内の遅相軸方向の屈折率であり;nyは、フイルム面内の進相軸方向の屈折率であり;nzは、フイルムの厚み方向の屈折率であり;そして、dは、フイルムの厚さである]。
  9. 液晶セルがTNモードの液晶セルである請求項8に記載の液晶表示装置。
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