JP5880727B2 - X線管装置 - Google Patents

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Description

この発明は、X線管装置に関し、特に、磁場発生器を備えたX線管装置に関する。
従来、磁場発生器を備えたX線管装置が知られている。このようなX線管装置は、たとえば、米国特許第6084942号明細書に開示されている。
上記米国特許第6084942号明細書に開示されているX線管装置は、筒状の外囲器と、外囲器内に収容された陰極および陽極と、筒状の外囲器の外側に配置された磁場発生器とを備える。陰極には、例えば熱電子を発生する電子源が備えられており、フィラメント電流を流すことで電子が発生する。また、陰極に負の高電圧、陽極および外囲器に正の高電圧が印加されることにより、陰極から陽極に向けて電子ビームが照射される。磁場発生器は、矩形断面形状を有し、偏向電圧が印加されることにより、陰極と陽極との間の位置で、外囲器の外側から磁場を発生させる。これにより、陽極に向かう電子ビームを偏向させ、外囲器とともに回転する陽極の縁部に電子ビームを集束させる。そして、電子ビームが陽極に衝突することにより、X線が発生する。
米国特許第6084942号明細書
ここで、X線管装置を小型化するためには、磁場発生器を外囲器に近づけて磁場を電子ビームに効率的に作用させるのが望ましい。しかしながら、上記米国特許第6084942号明細書のX線管装置では、高電圧(チューブ電圧)が印加される外囲器と偏向電圧が印加される磁場発生器との間の電位差が大きいため、磁場発生器を外囲器に近づけると、磁場発生器の先端に電界集中が生じて放電の起点となる。このため、上記米国特許第6084942号明細書のX線管装置では、放電の発生を防止可能な距離だけ外囲器から離間した位置に磁場発生器を配置する必要があり、磁場発生器を外囲器に近づけることが困難であるという問題点がある。
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、磁場発生器の先端が放電の起点となるのを抑制しながら、磁場発生器を外囲器に近づけることが可能なX線管装置を提供することである。
上記目的を達成するために、この発明の第1の局面におけるX線管装置は、電子ビームを発生させる陰極と、陰極からの電子ビームが衝突することによりX線を発生させる陽極と、陰極および陽極を内部に収容する外囲器と、外囲器と対向するように配置された磁極を含み、陰極から陽極に向かう電子ビームを集束、偏向させるための磁場を発生させる磁場発生器と、磁極と外囲器との間に配置され、丸みを帯びた形状の外表面を有する電界緩和電極とを備える。
この発明の第1の局面によるX線管装置では、上記のように、磁極と外囲器との間に配置され、丸みを帯びた形状の外表面を有する電界緩和電極を設けることにより、電界緩和電極の丸みを帯びた形状の外表面が磁極(磁場発生器)と外囲器との間に配置されるので、外囲器と対向する磁極の先端における電界集中を緩和することができる。これにより、磁場発生器を外囲器に近づけたとしても放電の起点となる電界集中を緩和することができるため、磁場発生器の先端が放電の起点となるのを抑制しながら、磁場発生器を外囲器に近づけることができる。また、この結果、磁場発生器の磁場を電子ビームに効率的に作用させることができるので、磁場発生器自体の小型化による装置の小型化、および、磁場発生器を外囲器に近づけることによる装置の小型化を図ることができる。
上記第1の局面によるX線管装置において、好ましくは、電界緩和電極の丸みを帯びた形状の外表面は、磁極の先端近傍に配置されている。このように構成すれば、外囲器との間で放電が生じない範囲で電界緩和電極を外囲器に近づけた場合に、磁極の先端が電界緩和電極の外表面近傍まで近づけて配置されるので、磁極(磁場発生器)を外囲器により近づけることができる。
この場合、好ましくは、磁極の先端は、角部を有する形状であり、電界緩和電極は、丸みを帯びた形状の外表面が少なくとも磁極の先端の角部を覆うように設けられている。このように構成すれば、最も電界集中が生じ易い磁極(磁場発生器)の先端の角部を、電界緩和電極の丸みを帯びた外表面によって覆うことができるので、電界集中を効果的に緩和することができる。
電界緩和電極の丸みを帯びた形状の外表面が少なくとも磁極の先端の角部を覆う構成において、好ましくは、電界緩和電極は、磁極の先端の角部と、磁極の角部において互いに交差する先端面および側面とを覆うように設けられている。このように構成すれば、磁極の先端の角部に加えて、磁極の先端面および側面も電界緩和電極の丸みを帯びた外表面によって覆うことができるので、より効果的に電界集中を緩和することができる。
この場合、好ましくは、電界緩和電極は、磁極の先端の角部および先端面を隙間なく取り囲んで覆うように設けられている。このように構成すれば、電界緩和電極が磁極の先端の角部および先端面を完全に覆うことにより、より確実に電界集中を緩和することができる。
上記第1の局面によるX線管装置において、好ましくは、電界緩和電極は、非磁性の金属により形成されている。このように構成すれば、磁場発生器により発生した磁場が電界緩和電極によって遮られるのを抑制することができるので、磁場発生器の磁場を電子ビームに効率的に作用させることができる。
上記第1の局面によるX線管装置において、好ましくは、外囲器は、陰極および陽極を収容する筒状形状を有し、電界緩和電極は、筒状形状の外囲器の周囲を取り囲むように環状に設けられている。このように構成すれば、筒状形状の外囲器を環状の電界緩和電極により切れ目なく連続して取り囲むため、電界緩和電極に対する電界集中を緩和することができる。
この場合、好ましくは、筒状の外囲器の中心軸線に沿った方向の縦断面において、環状の電界緩和電極の先端の外表面は、凸形状の丸みを帯びた形状に形成され、外囲器の中心軸線と直交する方向の横断面において、環状の電界緩和電極の先端の外表面は、円状の内周面により形成されている。このように構成すれば、外囲器の中心軸線に沿った方向の縦断面、および、中心軸線と直交する方向の横断面の両方において、電界緩和電極が外囲器に対して丸みを帯びた外表面を有するため、電界緩和電極に対する電界集中を効果的に緩和することができる。
上記電界緩和電極が外囲器の周囲を取り囲むように環状に設けられる構成において、好ましくは、磁極は、外囲器の周囲に所定の角度間隔で複数設けられており、電界緩和電極は、複数の磁極を覆うように設けられた1つの環状の電界緩和電極を含む。このように構成すれば、1つの電界緩和電極を設けるだけで、複数の磁極をまとめて覆うことができ、複数の電界緩和電極を個別に設ける場合と比較して、部品点数が増加するのを抑制することができる。
この場合、好ましくは、磁場発生器は、環状のコアと、環状のコアから内側に突出するように配置された複数の磁極とを含み、環状の電界緩和電極の外周部には、複数の磁極の先端部分を挿入するための複数の凹部が設けられており、環状の電界緩和電極の複数の凹部に、それぞれ、複数の磁極が挿入されることにより、磁極の先端部分が環状の電界緩和電極により覆われるように構成されている。このように構成すれば、容易かつ確実に、複数の磁極の先端部分を覆うように1つの環状の電界緩和電極を設けることができる。
上記電界緩和電極が外囲器の周囲を取り囲むように環状に設けられる構成において、好ましくは、環状の電界緩和電極は、外囲器の周囲を取り囲むように、外囲器に対して同心状に配置されている。このように構成すれば、たとえば外囲器を中心軸回りに回転させる外囲器回転型のX線管装置を構成した場合にも、外囲器と電界緩和電極との間隔を容易に一定に保つことができるので、電界緩和電極に対する電界集中をより効果的に緩和することができる。
上記電界緩和電極が外囲器の周囲を取り囲むように環状に設けられる構成において、好ましくは、環状の電界緩和電極の内周面は、外囲器の外周面との距離が略一定になるように配置されている。このように構成すれば、電界緩和電極の内周面の全周にわたって、電界強度を略一定にすることができるので、電界緩和電極に対する電界集中をさらに効果的に緩和することができる。
この場合、好ましくは、筒状の外囲器は、外囲器の中心軸線と直交する方向の横断面において、円状の外周面を有し、環状の電界緩和電極の内周面は、円形状を有するとともに、外囲器の外周面との距離が略一定になるように配置されている。このように構成すれば、容易に、電界緩和電極の内周面と外囲器の外周面との距離を略一定に保つことができ、かつ、電界緩和電極の内周面を、周方向に沿って角部が全く存在しない丸みを帯びた形状(円形状)に形成することができる。
上記第1の局面によるX線管装置において、好ましくは、電界緩和電極は、凸形状の外表面を有し、電界緩和電極の凸形状の外表面は、磁極の先端面を覆う円弧状部分を含む。このように構成すれば、通常、柱状に形成される磁極に合わせて、電界緩和電極の外表面を凸形状に形成する場合にも、容易に電界緩和電極を形成することができる。
この場合、好ましくは、電界緩和電極の円弧状部分は、電子ビームの向きに沿った方向における磁極の長さの2分の1よりも大きい曲率半径を有する。このように構成すれば、電界緩和電極の円弧状部分によって、磁極の先端面を覆うように形成することができるので、磁極の先端における電界集中を効果的に緩和することができる。
上記第1の局面によるX線管装置において、好ましくは、電界緩和電極の先端の外表面は、電子ビームの向きに沿った方向における外囲器の外形形状に対応する形状を有する。このように構成すれば、電子ビームの向きに沿った方向における、電界緩和電極の外表面と外囲器の外表面との間の距離が変化するのを抑制することができるので、電子ビームの向きに沿った方向における、電界緩和電極に対する電界集中を効果的に緩和することができる。
この場合、好ましくは、外囲器は、円形断面の筒状形状を有するとともに、中心軸線に沿った方向の外側の直径が大きくなるように傾斜した傾斜面を有し、電界緩和電極の先端の外表面は、外囲器の中心軸線に沿った方向の縦断面において、磁極の先端面を覆う円弧状部分と、傾斜面と略平行に延びる傾斜部分とが滑らかに連続した断面形状を有する。このように構成すれば、電界緩和電極の円弧状部分によって磁極の先端における電界集中を緩和することができ、かつ、円弧状部分と滑らかに連続する電界緩和電極の傾斜部分が外囲器の傾斜面と略平行となるので、電界緩和電極の外表面における電界集中をさらに効果的に緩和することができる。
上記第1の局面によるX線管装置において、好ましくは、磁極の根元部側には、コイルが巻回されており、電界緩和電極は、コイルが巻回されていない磁極の先端部分を覆うように構成されている。このように構成すれば、電界緩和電極を設ける場合にも電界緩和電極がコイルと干渉することがない。また、上記の通り、本発明では磁極(磁場発生器)を外囲器に近づけることができるので、所望の磁場を得るためのコイルを小さくすることができる。このため、小型化したコイルを磁極の根元側だけに配置することができ、容易に、電界緩和電極によって磁極を覆うことができる。
上記第1の局面によるX線管装置において、好ましくは、電界緩和電極は、少なくとも磁極の先端面を覆うように配置され、電界緩和電極の外表面と磁極の先端面との間の距離は、電子ビームの向きに沿った方向における磁極の長さ以下である。このように構成すれば、電界緩和電極の外表面と磁極の先端面との間の距離が小さいほど、磁極を外囲器に近づけることができるので、磁極を外囲器に可及的に近づけることができる。これにより、磁場発生器の小型化およびX線管装置全体の小型化を図ることができる。
上記第1の局面によるX線管装置において、好ましくは、外囲器は、陰極および陽極を軸中心に収納する筒状形状を有し、陽極と一体となって回転するように構成されている。このように構成すれば、磁場発生器の先端が放電の起点となるのを抑制しながら磁場発生器を外囲器に近づけることが可能な外囲器回転型のX線管装置を得ることができる。
上記のように、本発明によれば、磁場発生器の先端が放電の起点となるのを抑制しながら、磁場発生器を外囲器に近づけることが可能なX線管装置を提供することができる。
図2の510−510線に沿った、本発明の第1実施形態によるX線管装置の全体構成を示す模式的な縦断面図である。 図1の500−500線に沿った、本発明の第1実施形態によるX線管装置の全体構成を示す模式的な横断面図である。 図1に示したX線管装置の電界緩和電極を説明するための部分拡大図である。 図5の610−610線に沿った、本発明の第2実施形態によるX線管装置の全体構成を示す模式的な縦断面図である。 図4の600−600線に沿った、本発明の第2実施形態によるX線管装置の全体構成を示す模式的な横断面図である。 図4に示したX線管装置の電界緩和電極を説明するための部分拡大図である。 本発明の実施例1による磁場発生器の磁極の先端近傍の電界強度のシミュレーション結果を示す模式図である。 本発明の実施例2による磁場発生器の磁極の先端近傍の電界強度のシミュレーション結果を示す模式図である。 比較例による磁場発生器の磁極の先端近傍の電界強度のシミュレーション結果を示す模式図である。 本発明の第1および第2実施形態の第1変形例によるX線管装置の電界緩和電極を説明するための模式図である。 本発明の第1および第2実施形態の第2変形例によるX線管装置の電界緩和電極を説明するための模式図である。
以下、実施形態を図面に基づいて説明する。
(第1実施形態)
まず、図1〜図3を参照して、第1実施形態によるX線管装置100の構成について説明する。
図1および図2に示すように、X線管装置100は、電子ビームを発生させる電子源1と、ターゲット2と、電子源1およびターゲット2を内部に収容する外囲器3と、外囲器3の外部に設けられた磁場発生器4と、外囲器3と磁場発生器4との間に設けられた1つの電界緩和電極5とを備えている。第1実施形態では、X線管装置100は、ターゲット2が回転する回転陽極型X線管装置であり、より具体的には、外囲器3がターゲット2と一体的に回転する外囲器回転型のX線管装置である。なお、電子源1およびターゲット2は、それぞれ、本発明の「陰極」および「陽極」の一例である。
電子源1は、外囲器3の軸方向(A方向)の一端に、絶縁部材33を介して固定的に取り付けられている。また、電子源1は、外囲器3の回転軸3a上に配置され、回転軸3a回りに外囲器3と一体的に回転するように構成されている。
ターゲット2は、外囲器3の軸方向(A方向)の他端に、電子源1と対向するようにして一体的(固定的)に取り付けられている。ターゲット2は、縁部2aが外側に向けて薄肉となるように傾斜した円板形状を有する。円盤形状のターゲット2の中心は、外囲器3の回転軸3aと一致しており、ターゲット2は、回転軸3a回りに外囲器3と一体的に回転するように構成されている。
ターゲット2と電子源1とは、それぞれ、電源部6の正負極と接続されている。ターゲット2に正の高電圧が印加され、電子源1に負の高電圧が印加されることにより、電子源1から回転軸3a(軸方向A)に沿ってターゲット2に向かう電子ビームが発生する。
外囲器3は、回転軸(中心軸)3aを中心に軸方向Aに延びる筒状形状を有する。筒状の外囲器3は、軸方向Aの中央部の円筒部31と、軸方向Aの両端に向けて直径が大きくなるように傾斜した傾斜部32とを有する。外囲器3は、両端に設けられたシャフト7および軸受7aによって回転軸(中心軸)3a回りに回転可能に支持されている。そして、外囲器3は、シャフト7に連結された図示しないモータによって回転駆動される。外囲器3の一端は、円板状の絶縁部材33によって塞がれており、外囲器3の他端は、ターゲット2によって塞がれている。そして、外囲器3の内部は真空排気されている。絶縁部材33とターゲット2との直径は同一であり、外囲器3は回転軸3a(中心軸)に沿った縦断面(図2の510−510断面、図1参照)において左右対称となっている。外囲器3は、ステンレス(SUS)などの非磁性の金属材料からなり、絶縁部材33は、セラミックなどの絶縁材料からなる。
また、ターゲット2は外囲器3に一体的に取り付けられているため、外囲器3は、正の高電圧が印加されるターゲット2と同電位となる。これに対し、電子源1と外囲器3との間は、絶縁部材33によって絶縁されている。絶縁部材33の直径は、電子源1と外囲器3との間を十分に絶縁することが可能な大きさに設定されている。
磁場発生器4は、環状のコア4aと、外囲器3と対向するように配置された複数の磁極4bと、それぞれの磁極4bに巻回された複数のコイル4cとを含んでいる。磁場発生器4は、電子源1からターゲット2に向かう電子ビームを集束、偏向させるための磁場を発生させる機能を有する。磁場発生器4は、外囲器3に対して軸方向Aの中央の位置に配置され、外囲器3の円筒部31の周囲を取り囲むように環状に設けられている。
図1および図2に示すように、コア4aは、外囲器3の回転軸3aと同心の円環形状を有する。また、磁極4bは、外囲器3(円筒部31)を取り囲む環状のコア4aから内側に突出するようにして、等角度間隔(約90度)で4つ配置されている。このため、4つの磁極4bは、コア4aの中心(回転軸3a)を挟んで一対ずつ対向している。コア4aおよび磁極4bは、鉄などの高透磁率の磁性材料からなり、グランドに接地されている。このため、外囲器3と磁場発生器4の磁極4bとの間には、大きな電位差が発生する。
図3に示すように、それぞれの磁極4bは、先端面41と、先端の角部42と、角部42において先端面41と直交する側面43とを有する角柱形状に形成されている。具体的には、磁極4bの先端面41は、1辺の長さがL1の正方形状に形成されている。したがって、角部42は先端面41の四隅にそれぞれ設けられている。側面43は、長さL2を有する。後述するように、磁極4bの先端側の略半分は、電界緩和電極5により覆われている。磁極4bの根元部側(コア4a側)の略半分には、コイル4cが巻回されている。磁場発生器4は、コイル4cへの通電によって各磁極4bの先端から磁場を発生させる。図1に示すように、磁場発生器4から発生した磁場の作用によって、軸方向Aに沿ってターゲット2に向かう電子ビームは集束および偏向され、ターゲット2の傾斜した縁部2aに衝突する。この結果、ターゲット2の縁部2aからX線が発生し、外囲器3の図示しない窓部から外部に放出される。
電界緩和電極5は、磁極4bの先端近傍における電界集中を緩和するために設けられている。図1および図2に示すように、第1実施形態では、電界緩和電極5は、環状形状を有し、4つの磁極4bと外囲器3との間に配置されており、丸みを帯びた形状の外表面5aを有する。電界緩和電極5は、非磁性の金属により形成されており、内部は中実である。電界緩和電極5に用いる非磁性の金属としては、高耐電圧の金属が好ましく、たとえばステンレス(SUS)やチタンなどが好ましい。電界緩和電極5は、丸みを帯びた形状の外表面5aがそれぞれの磁極4bの先端近傍に配置され、かつ、磁極4bの先端側の角部42、先端面41、および、側面43を隙間なく取り囲んで覆うように設けられている。電界緩和電極5は、磁極4bを介してグランドに接地されている。
より具体的には、図1および図3に示すように、外囲器3の回転軸(中心軸)3aに沿った方向の縦断面(図2の510−510断面)において、電界緩和電極5は、凸形状の丸みを帯びた形状に形成されている。第1実施形態では、電界緩和電極5の外表面5aは、先端の円弧状部分51と、磁極4bの側面43に沿って延びる直線状部52とが滑らかに連続した略U字状の断面形状に形成されている。先端の円弧状部分51は、磁極4bの電子ビームの向きに沿った方向(軸方向A)の長さL1の2分の1(L1/2)よりも大きい曲率半径R1を有する。また、電界緩和電極5の先端の外表面5a(円弧状部分51の外表面)と磁極4bの先端面41との間の距離D1は、磁極4bの軸方向Aの長さL1以下である。
また、図2に示すように、回転軸(中心軸)3aと直交する方向の横断面(図1の500−500断面)において、電界緩和電極5は、4つの磁極4bを全て覆うように円環状に設けられ、電界緩和電極5の先端の外表面5aは、円状の内周面により形成されている。円環状の電界緩和電極5の中心は、外囲器3の回転軸(中心軸)3aに一致する。したがって、円環状の電界緩和電極5は、外囲器3(円筒部31)を取り囲むように同心円状に配置されている。また、電界緩和電極5の内周面(外表面5a)は、外囲器3の円筒部31の外周面31aとの距離D2が略一定になるように配置されている。電界緩和電極5の外周部には、4つの磁極4bの先端部分を挿入するための4つの凹部53が磁極4bに対応する等角度間隔で設けられている。4つの凹部53に4つの磁極4bがそれぞれ挿入されることにより、磁極4bの先端部分が環状の電界緩和電極5により覆われている。また、電界緩和電極5は、コイル4cが巻回されていない磁極4bの先端部分を覆うように構成されている。
環状のコア4aおよび環状の電界緩和電極5は、それぞれ、連結部4dおよび5bで連結された分割構造を有する。連結部4dおよび5bは、一方が凸状、他方が凹状の嵌合構造となっており、連結部4d(5b)を嵌合させた状態で嵌合方向に対して垂直にねじ止めされる。これにより、分割されたコア4aおよび電界緩和電極5がそれぞれ外囲器3の周囲に環状に設けられる。なお、図2ではコア4aを2分割し、電界緩和電極5を4分割して図示しているが、分割数はこれに限定されず任意である。
第1実施形態では、上記のように、磁極4bと外囲器3との間に配置され、丸みを帯びた形状の外表面5aを有する電界緩和電極5を設けることにより、電界緩和電極5の丸みを帯びた外表面5aが磁極4b(磁場発生器4)と外囲器3との間に配置されるので、外囲器3と対向する磁極4bの先端における電界集中を緩和することができる。これにより、磁場発生器4の先端(磁極4b)を外囲器3に近づけたとしても、放電の起点となる電界集中を緩和することができるため、磁場発生器4の先端が放電の起点となるのを抑制しながら磁場発生器4を外囲器3に近づけることができる。また、この結果、磁場発生器4の磁場を電子ビームに効率的に作用させることができるので、磁場発生器4自体の小型化によるX線管装置100の小型化、および、磁場発生器4を外囲器3に近づけることによるX線管装置100の小型化を図ることができる。
また、第1実施形態では、上記のように、電界緩和電極5の丸みを帯びた形状の外表面5aを、磁極4bの先端近傍に配置する。このように構成すれば、外囲器3との間で放電が生じない範囲で電界緩和電極5を外囲器3に近づけた場合に、磁極4bの先端が電界緩和電極5の外表面5a近傍まで近づけて配置されるので、磁極4b(磁場発生器4)を外囲器3により近づけることができる。
また、第1実施形態では、上記のように、電界緩和電極5を、磁極4bの先端の角部42と、先端面41および側面43とを覆うように設ける。このように構成すれば、電界集中が生じ易い磁極4b(磁場発生器4)の先端の角部42を、電界緩和電極5の丸みを帯びた外表面5aによって覆うことができる。また、磁極4bの先端の角部42に加えて、磁極4bの先端面41および側面43も電界緩和電極5の丸みを帯びた外表面5aによって覆うことができるので、より効果的に電界集中を緩和することができる。
また、第1実施形態では、上記のように、電界緩和電極5を、磁極4bの先端の角部42および先端面41を隙間なく取り囲んで覆うように設ける。このように構成すれば、電界緩和電極5が磁極4bの先端の角部42および先端面41を完全に覆うことにより、より確実に電界集中を緩和することができる。
また、第1実施形態では、上記のように、電界緩和電極5を、非磁性の金属により形成する。このように構成すれば、磁場発生器4により発生した磁場が電界緩和電極5によって遮られるのを抑制することができるので、磁場発生器4の磁場を電子ビームに効率的に作用させることができる。
また、第1実施形態では、上記のように、電界緩和電極5を、筒状形状の外囲器3の周囲を取り囲むように環状に設ける。このように構成すれば、筒状形状の外囲器3を環状の電界緩和電極5により切れ目なく連続して取り囲むため、電界緩和電極5に対する電界集中を緩和することができる。
また、第1実施形態では、上記のように、筒状の外囲器3の軸方向Aに沿う縦断面(図2の510−510断面)において、電界緩和電極5の先端の外表面5aを、凸形状の丸みを帯びた略U字状形状に形成し、軸方向Aと直交する横断面(図1の500−500断面)において、電界緩和電極5の先端の外表面5aを、円状の内周面により形成する。このように構成すれば、軸方向Aに沿う縦断面、および、軸方向Aと直交する横断面の両方において、電界緩和電極5が外囲器3に対して丸みを帯びた外表面5aを有するため、電界緩和電極5に対する電界集中を効果的に緩和することができる。
また、第1実施形態では、上記のように、複数の磁極4bを覆うように、1つの環状の電界緩和電極5を設ける。このように構成すれば、1つの電界緩和電極5を設けるだけで、複数の磁極4bをまとめて覆うことができ、複数の電界緩和電極5を個別に設ける場合と比較して、部品点数が増加するのを抑制することができる。
また、第1実施形態では、上記のように、環状の電界緩和電極5の外周部に設けた4つの凹部53に複数の磁極4bをそれぞれ挿入することにより、磁極4bの先端部分が環状の電界緩和電極5により覆われるように電界緩和電極5を構成する。このように構成すれば、容易かつ確実に、複数の磁極4bの先端部分を覆う1つの環状の電界緩和電極5を設けることができる。
また、第1実施形態では、上記のように、環状の電界緩和電極5を、外囲器3の周囲を取り囲むように、外囲器3に対して同心状に配置する。このように構成すれば、外囲器回転型のX線管装置100を構成した場合にも、外囲器3と電界緩和電極5との間隔を容易に一定に保つことができるので、電界緩和電極5に対する電界集中をより効果的に緩和することができる。
また、第1実施形態では、上記のように、環状の電界緩和電極5の内周面を、外囲器3の外周面31aとの距離D2が略一定になるように配置する。このように構成すれば、電界緩和電極5の内周面(先端側の外表面5a)の全周にわたって、電界強度を略一定にすることができるので、電界緩和電極5に対する電界集中をさらに効果的に緩和することができる。
また、第1実施形態では、上記のように、軸方向Aと直交する横断面(図1の500−500断面)において、環状の電界緩和電極5の内周面を、円形状を有するとともに、外囲器3の外周面31aとの距離D2が略一定になるように配置する。このように構成すれば、容易に、電界緩和電極5の内周面と外囲器3の外周面31aとの距離D2を略一定に保つことができ、かつ、電界緩和電極5の内周面を、周方向に沿って角部が全く存在しない丸みを帯びた形状(円形状)に形成することができる。
また、第1実施形態では、上記のように、電界緩和電極5の凸形状の外表面5aに、磁極4bの先端面41を覆う円弧状部分51を設ける。このように構成すれば、通常、柱状に形成される磁極4bに合わせて、電界緩和電極5の外表面5aを凸形状に形成する場合にも、容易に電界緩和電極5を形成することができる。
また、第1実施形態では、上記のように、電界緩和電極5の円弧状部分51を、電子ビームの向きに沿った方向(軸方向A)における磁極4bの長さL1の2分の1(L1/2)よりも大きい曲率半径R1を有するように形成する。このように構成すれば、電界緩和電極5の円弧状部分51によって、磁極4bの先端面41を覆うように形成することができるので、磁極4bの先端における電界集中を効果的に緩和することができる。
また、第1実施形態では、上記のように、電界緩和電極5を、コイル4cが巻回されていない磁極4bの先端部分を覆うように構成する。このように構成すれば、電界緩和電極5を設ける場合にも電界緩和電極5がコイル4cと干渉することがない。また、上記の通り、第1実施形態では磁極4b(磁場発生器4)を外囲器3に近づけることができるので、所望の磁場を得るためのコイル4cを小さくすることができる。このため、小型化したコイル4cを磁極4bの根元側だけに配置することができ、容易に、電界緩和電極5によって磁極4bを覆うことができる。
また、第1実施形態では、上記のように、電界緩和電極5の外表面5aと磁極4bの先端面41との間の距離D1を、電子ビームの向きに沿った方向(軸方向A)における磁極4bの長さL1以下となるように構成する。このように構成すれば、外表面5aと磁極4bの先端面41との間の距離D1が小さいほど、磁極4bを外囲器3に近づけることができるので、磁極4bを外囲器3に可及的に近づけることができる。これにより、磁場発生器4の小型化およびX線管装置100全体の小型化を図ることができる。
また、第1実施形態では、上記のように、回転軸3aを中心に電子源1およびターゲット2を収納する筒状形状に外囲器3を形成し、外囲器3をターゲット2と一体となって回転するように構成する。このように構成すれば、磁場発生器4の先端が放電の起点となるのを抑制しながら、電界集中を緩和して磁場発生器4を外囲器3に近づけることが可能な外囲器回転型のX線管装置100を得ることができる。
(第2実施形態)
次に、図4〜図6を参照して、本発明の第2実施形態によるX線管装置200について説明する。第2実施形態では、電界緩和電極5の外表面5aを略U字状の断面形状に形成した上記第1実施形態とは異なり、電界緩和電極105の外表面105aを外囲器3の形状に対応する形状に形成した例について説明する。なお、第2実施形態では、上記第1実施形態によるX線管装置100と同一の構成については同一符号を付し、説明を省略する。
図4および図5に示すように、第2実施形態によるX線管装置200の電界緩和電極105は、軸方向Aにおける外囲器3の外形形状に対応する形状を有する。具体的には、図6に示すように、電界緩和電極105の先端の外表面105aは、外囲器3の軸方向Aに沿った方向の縦断面において、磁極4bの先端面41を覆う円弧状部分151と、外囲器3の傾斜面32a(傾斜部32の外周面)と略平行に延びる傾斜部分152と、が滑らかに連続した断面形状を有する。
円弧状部分151は、磁極4bの軸方向Aの長さL1の2分の1(L1/2)よりも大きい曲率半径R2を有する。曲率半径R2は、上記第1実施形態による電界緩和電極5の円弧状部分51の曲率半径R1よりも大きい。曲率半径R2は、外表面105aが軸方向Aの両側の傾斜部分152の先端側端部と滑らかに連続するような大きさに設定されている。円弧状部分151の曲率半径が大きい分、磁極4bの先端面41が電界緩和電極105の先端の外表面105aに接近するように配置されており、電界緩和電極105の先端の外表面(円弧状部分151の外表面)105aと磁極4bの先端面41との間の距離D3は、上記第1実施形態における距離D1よりも小さい。距離D3は、磁極4bの軸方向Aの長さL1以下である。円弧状部分151の先端の外表面105aと、外囲器3の円筒部31の外周面31aとの距離はD4である。
傾斜部分152は、外囲器3の傾斜面32a(傾斜部32の外周面)の傾斜角度θと略等しい傾斜角度で傾斜し、傾斜面32aと略平行に延びるように形成されている。なお、外囲器3は回転軸3a(中心軸)に沿った断面において左右対称となっているため、これに対応して、傾斜部分152も回転軸3a(中心軸)に沿った断面において円弧状部分151を挟んで左右対称となっている。これにより、傾斜部分152(外表面105a)と、外囲器3の傾斜面32aとの間の距離は、略一定のD5となっている。また、傾斜部分152は、円弧状部分151とは反対側の端部153も、丸みを帯びた滑らかな形状に形成されている。
また、図5に示すように、電界緩和電極105は、上記第1実施形態と同様に、回転軸(中心軸)3aと直交する方向の横断面(図5の600−600断面)において、4つの磁極4bを全て覆うように円環状に設けられ、電界緩和電極105の先端(円弧状部分151の先端)の外表面105aは、円状の内周面により形成されている。そして、電界緩和電極105の内周面(外表面105a)は、外囲器3の円筒部31の外周面31aとの距離D4が略一定になるように配置されている。
なお、第2実施形態のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
第2実施形態では、上記のように、電界緩和電極105の先端の外表面105aを、軸方向Aにおける外囲器3の外形形状に対応する形状に形成する。このように構成すれば、軸方向Aにおける、電界緩和電極105の外表面105aと外囲器3の外周面との間の距離D4が変化するのを抑制することができるので、軸方向Aにおける、電界緩和電極105に対する電界集中を効果的に緩和することができる。
また、第2実施形態では、上記のように、電界緩和電極105の先端の外表面105aを、軸方向Aの縦断面において、磁極4bの先端面41を覆う円弧状部分151と、外囲器3の傾斜面32aと略平行に延びる傾斜部分152とが滑らかに連続した断面形状に形成する。このように構成すれば、電界緩和電極105の円弧状部分151によって磁極4bの先端における電界集中を緩和することができ、かつ、円弧状部分151と滑らかに連続する電界緩和電極105の傾斜部分152が外囲器3の傾斜面32aと略平行となるので、傾斜部分152と傾斜面32aとの間の電界を一様に近づけることができる。これにより、電界緩和電極105の外表面105aにおける電界集中をさらに効果的に緩和することができる。
(実施例)
次に、図7〜図9を参照して、本発明の効果を確認するために行った電界強度のシミュレーション(実施例)について説明する。
実施例では、上記第1実施形態によるX線管装置100(実施例1)および上記第2実施形態によるX線管装置200(実施例2)のそれぞれにおける、磁場発生器の磁極の先端部と外囲器との間の領域における電界強度のシミュレーションを行った。また、比較例として、電界緩和電極を設けない場合の例(比較例)についてのシミュレーションを行い、実施例との比較を行った。外囲器および磁極の寸法、外囲器3および磁極4bの電位等のシミュレーション条件は、実施例1および2と比較例とで共通である。
図7に実施例1のシミュレーション結果を示す。実施例1では、磁場発生器4の磁極4bの先端面41から外囲器3(円筒部31)の外周面31aまでの距離Dm(D1+D2)を、10mmとした。
図8に実施例2のシミュレーション結果を示す。実施例2では、磁場発生器4の磁極4bの先端面41から外囲器3(円筒部31)の外周面31aまでの距離Dm(D3+D4)を、10mmとした。実施例2は、電界緩和電極の形状のみが上記実施例1とは異なる。
図9に比較例のシミュレーション結果を示す。比較例では、磁場発生器4の磁極4bの先端面41から外囲器3(円筒部31)の外周面31aまでの距離Dmを、15mmとした。比較例は、電界緩和電極を設けていない点、および、実施例1および実施例2と比較して距離Dmを大きく設定している点で、上記実施例1および実施例2と異なる。
図7に示すように、実施例1では、磁極4bの角部42近傍における電界緩和電極5の外表面5a(P1)において、電界強度が最大を示し、12kV/mmとなった。図8に示すように、実施例2では、電界緩和電極105の円弧状部分151と傾斜部分152との境界近傍における外表面5a(P2)において、電界強度が最大を示し、10.6kV/mmとなった。図9に示すように、比較例では、磁極4bの先端の角部42(P3)において、電界強度が最大を示し、18.8kV/mmとなった。なお、本実施例による条件設定では、電界強度20kV/mmの近傍で放電の可能性があり、10kV/mm前後であれば、十分に放電を防止することが可能である。
上記の通り、比較例では、磁極4bの先端面41から外囲器3の外周面までの距離Dmを15mmまで離した状態でも、磁極4bの角部42で電界集中が生じて高い電界強度を示した。このため、比較例の条件下では、磁極4bの角部42を起点とする放電の発生を防止するため、磁極4bをDm(=15mm)以上外囲器3に近づけることは困難である。一方、実施例1および2では、距離Dmを10mmまで近づけても、10kV/mmを若干越える程度の電界強度に抑制することができている。このことから、電界緩和電極による磁極4bの先端における電界集中の緩和効果が確認され、磁極4bを外囲器3に近づけることが可能であることが確認された。
また、実施例1と実施例2とを比較した結果、電界緩和電極の形状のみが異なる条件設定において、実施例2の方がより電界緩和電極の外表面における電界集中を緩和することができている。このことから、電界緩和電極を外囲器の形状と対応するように形成した実施例2(上記第2実施形態)の構成による、電界集中の緩和効果の向上が確認された。
なお、今回開示された実施形態および実施例は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態および実施例の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
たとえば、上記第1および第2実施形態では、外囲器回転型のX線管装置に本発明を適用した例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、外囲器のみを固定した陽極回転型のX線管装置や、陽極固定型のX線管装置などの外囲器回転型以外のX線管装置に本発明を適用してもよい。
また、上記第1実施形態では、軸方向の縦断面においてU字形状の電界緩和電極を設けた例を示し、上記第2実施形態では、軸方向の縦断面において円弧状部と傾斜部分とを含む電界緩和電極を設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、電界緩和電極の縦断面形状を完全な円弧状形状(扇状または半円状など)にしてもよいし、円弧状以外の曲面形状にしてもよい。電界緩和電極は、角部における電界集中を緩和することが可能なように、丸みを帯びた外表面を有するように形成されていればよい。
また、上記第1および第2実施形態では、電界緩和電極が磁極の先端の角部、先端面および側面の先端側部分を完全に覆うように形成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、磁極の先端の角部、先端面や側面が部分的に覆われていなくともよい。
また、上記第1および第2実施形態では、電界緩和電極を非磁性の金属材料により形成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、電界緩和電極を金属以外の非磁性材料により形成してもよい。また、磁場発生器による磁場を電子ビームに作用させることができれば、電界緩和電極を磁性材料により形成してもよい。
また、上記第1および第2実施形態では、軸方向と直交する横断面において、電界緩和電極を環状に形成し、複数の電極を覆うように設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、図10に示す第1変形例のように、複数の磁極4bの各々に対して、電界緩和電極205を個別に設けてもよい。
また、上記第1および第2実施形態では、軸方向と直交する横断面において、電界緩和電極を円環状に形成した例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、図11に示す第2変形例のように、丸みを帯びた角丸形状の電界緩和電極305など、円環以外の形状の電界緩和電極を設けてもよい。なお、図11の電界緩和電極305において、内周面のみを円形状に形成してもよい。
また、上記第1および第2実施形態では、軸方向と直交する横断面において、円環状の電界緩和電極を外囲器の円筒部と同心円状に配置した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、電界緩和電極の中心が筒状の外囲器の軸中心とずれていてもよい。
また、上記第1および第2実施形態では、軸方向と直交する横断面において、円環状の電界緩和電極の内周面と外囲器の外表面との間の距離D2(D4)が周方向に略一定となるように構成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、電界緩和電極の外表面と外囲器の外表面との間の距離が周方向の位置によって変化するように電界緩和電極を形成してもよい。
また、上記第2実施形態では、円弧状部分151の先端の外表面105aと、外囲器3の円筒部31の外周面31aとの距離をD4とし、傾斜部分152と、外囲器3の傾斜面32aとの間の距離を略一定のD5とした例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、距離D4と距離D5とが等しくなるように、電界緩和電極を形成してもよい。
また、上記第1および第2実施形態では、コイルが巻回されていない磁極の先端部分のみを覆うように電界緩和電極を設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、コイルの巻回部分も覆うように電界緩和電極を形成してもよい。
また、上記第1および第2実施形態では、中実構造の電界緩和電極を設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、中空構造の電界緩和電極を設けてもよい。
また、上記第1および第2実施形態では、電界緩和電極の外表面と磁極の先端面との間の距離D1(D3)が、軸方向における磁極の長さL1以下となるように電界緩和電極を形成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、電界緩和電極の外表面と磁極の先端面との間の距離が、軸方向における磁極の長さよりも大きくなるように電界緩和電極を形成してもよい。
また、上記第1および第2実施形態では、4つの磁極を含む磁場発生器を設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、磁極の数は4つ以外の複数であってよく、たとえば2つ、6つまたは8つの磁極を設けてもよい。所望の磁場が得られれば、磁極の数はいくつでもよい。
また、上記第1および第2実施形態では、角柱形状の磁極を設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、たとえば円柱形状などの角柱形状以外の形状の磁極を設けてもよい。
また、上記第1および第2実施形態では、外囲器に、軸方向Aの両端に向けて直径が大きくなるように傾斜した傾斜部を設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、ターゲット側にのみ傾斜部を有し、電子源側には円筒部がそのまま軸方向に延びる形状の外囲器を設けてもよい。
また、上記第1および第2実施形態では、ステンレスなどの金属材料からなる外囲器を設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、金属以外の材料により外囲器を設けてもよい。また、外囲器は、たとえばセラミックなどの絶縁材料により形成してもよい。
また、上記第1および第2実施形態では、外囲器3は回転軸3a(中心軸)に沿った断面において左右対称となっている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、絶縁部材33とターゲット2との直径は同一ではなくてもよく、外囲器3は回転軸3a(中心軸)に沿った断面において左右非対称であってもよい。
また、上記第1および第2実施形態では、磁極の先端は、角部を有する形状となっている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、磁極の先端は、角部を有する形状でなくてもよく、L1/2より小さい曲率半径を有する形状であってもよい。
1 電子源(陰極)
2 ターゲット(陽極)
3 外囲器
4 磁場発生器
4a コア
4b 磁極
4c コイル
5、105、205、305 電界緩和電極
5a 外表面
31a 外周面
32a 傾斜面
41 先端面
42 角部
43 側面
51、151 円弧状部分
53 凹部
152 傾斜部分
100、200 X線管装置

Claims (20)

  1. 電子ビームを発生させる陰極と、
    前記陰極からの電子ビームが衝突することによりX線を発生させる陽極と、
    前記陰極および前記陽極を内部に収容する外囲器と、
    前記外囲器と対向するように配置された磁極を含み、前記陰極から前記陽極に向かう電子ビームを集束、偏向させるための磁場を発生させる磁場発生器と、
    前記磁極と前記外囲器との間に配置され、丸みを帯びた形状の外表面を有する電界緩和電極とを備える、X線管装置。
  2. 前記電界緩和電極の丸みを帯びた形状の外表面は、前記磁極の先端近傍に配置されている、請求項1に記載のX線管装置。
  3. 前記磁極の先端は、角部を有する形状であり、
    前記電界緩和電極は、丸みを帯びた形状の外表面が少なくとも前記磁極の先端の角部を覆うように設けられている、請求項2に記載のX線管装置。
  4. 前記電界緩和電極は、前記磁極の先端の角部と、前記磁極の角部において互いに交差する先端面および側面とを覆うように設けられている、請求項3に記載のX線管装置。
  5. 前記電界緩和電極は、前記磁極の先端の角部および前記先端面を隙間なく取り囲んで覆うように設けられている、請求項4に記載のX線管装置。
  6. 前記電界緩和電極は、非磁性の金属により形成されている、請求項1に記載のX線管装置。
  7. 前記外囲器は、前記陰極および前記陽極を収容する筒状形状を有し、
    前記電界緩和電極は、筒状形状の前記外囲器の周囲を取り囲むように環状に設けられている、請求項1に記載のX線管装置。
  8. 前記筒状の外囲器の中心軸線に沿った方向の縦断面において、環状の前記電界緩和電極の先端の外表面は、凸形状の丸みを帯びた形状に形成され、
    前記外囲器の中心軸線と直交する方向の横断面において、環状の前記電界緩和電極の先端の外表面は、円状の内周面により形成されている、請求項7に記載のX線管装置。
  9. 前記磁極は、前記外囲器の周囲に所定の角度間隔で複数設けられており、
    前記電界緩和電極は、複数の前記磁極を覆うように設けられた1つの環状の前記電界緩和電極を含む、請求項7に記載のX線管装置。
  10. 前記磁場発生器は、環状のコアと、前記環状のコアから内側に突出するように配置された複数の前記磁極とを含み、
    前記環状の電界緩和電極の外周部には、前記複数の磁極の先端部分を挿入するための複数の凹部が設けられており、
    前記環状の電界緩和電極の複数の凹部に、それぞれ、前記複数の磁極が挿入されることにより、前記磁極の先端部分が前記環状の電界緩和電極により覆われるように構成されている、請求項9に記載のX線管装置。
  11. 前記環状の電界緩和電極は、前記外囲器の周囲を取り囲むように、前記外囲器に対して同心状に配置されている、請求項7に記載のX線管装置。
  12. 前記環状の電界緩和電極の内周面は、前記外囲器の外周面との距離が略一定になるように配置されている、請求項7に記載のX線管装置。
  13. 前記筒状の外囲器は、前記外囲器の中心軸線と直交する方向の横断面において、円状の外周面を有し、
    前記環状の電界緩和電極の内周面は、円形状を有するとともに、前記外囲器の外周面との距離が略一定になるように配置されている、請求項12に記載のX線管装置。
  14. 前記電界緩和電極は、凸形状の外表面を有し、
    前記電界緩和電極の凸形状の外表面は、前記磁極の先端面を覆う円弧状部分を含む、請求項1に記載のX線管装置。
  15. 前記電界緩和電極の円弧状部分は、電子ビームの向きに沿った方向における前記磁極の長さの2分の1よりも大きい曲率半径を有する、請求項14に記載のX線管装置。
  16. 前記電界緩和電極の先端の外表面は、電子ビームの向きに沿った方向における前記外囲器の外形形状に対応する形状を有する、請求項1に記載のX線管装置。
  17. 前記外囲器は、円形断面の筒状形状を有するとともに、中心軸線に沿った方向の外側の直径が大きくなるように傾斜した傾斜面を有し、
    前記電界緩和電極の先端の外表面は、前記外囲器の中心軸線に沿った方向の縦断面において、前記磁極の先端面を覆う円弧状部分と、前記傾斜面と略平行に延びる傾斜部分とが滑らかに連続した断面形状を有する、請求項16に記載のX線管装置。
  18. 前記磁極の根元部側には、コイルが巻回されており、
    前記電界緩和電極は、前記コイルが巻回されていない前記磁極の先端部分を覆うように構成されている、請求項1に記載のX線管装置。
  19. 前記電界緩和電極は、少なくとも前記磁極の先端面を覆うように配置され、
    前記電界緩和電極の外表面と前記磁極の先端面との間の距離は、電子ビームの向きに沿った方向における前記磁極の長さ以下である、請求項1に記載のX線管装置。
  20. 前記外囲器は、前記陰極および前記陽極を軸中心に収納する筒状形状を有し、前記陽極と一体となって回転するように構成されている、請求項1に記載のX線管装置。
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