JP5873976B2 - 密閉型圧縮機とこれを有する冷凍サイクルシステムを備えた機器 - Google Patents

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Description

本発明は、冷凍冷蔵庫等の冷凍サイクルシステム装置に用いられる密閉型圧縮機に関するものである。
近年、家庭用冷凍冷蔵庫や自動販売機、エアコン等の冷凍サイクルシステム装置に使用される密閉型圧縮機には、高効率で且つ高い信頼性が求められている。
かかることから、従来の密閉型圧縮機においては、給油通路を改善し、潤滑油をより確実にピストン上部に噴出・供給することで、効率と信頼性を改善した圧縮機が知られている(例えば特許文献1参照)。
以下、図面を参照しながら上記従来の密閉型圧縮機について説明する。
図8は、従来の密閉型圧縮機の縦断面図である。図9は、同密閉型圧縮機の上部を拡大した断面図である。
図8および図9において、密閉容器1内部の空間2には、固定子3と永久磁石を内蔵した回転子4からなる電動要素5と、電動要素5によって駆動される圧縮要素6と、密閉容器1内下部に貯溜した潤滑油7を収容している。
電動要素5は、インバーター駆動制御装置(図示せず)によって商用電源周波数未満の回転数を含む複数の運転周波数で駆動される。
また、密閉容器1の内部の空間2には、温暖化係数の低い自然冷媒として代表的な炭化水素系冷媒R600aが充填されている。
圧縮要素6を構成するブロック15は、略円筒形の圧縮室17を具備したシリンダブロック16と、クランクシャフト8の主軸部9を軸支する主軸受け部18を有している。
また、シリンダブロック16の圧縮室17内には、クランクシャフト8の偏心軸部10との間を連結手段20によってピストンピン22を介して連結されたピストン19が往復摺動自在に挿入されている。
さらに、シリンダブロック16における圧縮室17の上壁部には、ピストンピン22を挿入するための半円弧状の切欠き部21が設けられている。
また、クランクシャフト8の偏心軸部10は、主軸部9に対して偏心した位置に形成されており、その主軸部9には、電動要素5の回転子4が圧入固定されている。
クランクシャフト8に形成された給油手段8aは、クランクシャフト8の表面に形成され、かつ軸方向へ螺旋状に延びる粘性ポンプ12と、クランクシャフト8の下部に形成され、かつ一端が潤滑油7中に開口し、他端が粘性ポンプ12と連通する傾斜ポンプ11と、偏心軸部10に設けられ、かつ一端が粘性ポンプ12の他端と連通し、他端が密閉容器1内の空間2へ上向きに開口した連結孔13と、一端が連結孔13と連通し、他端が偏心軸部10の外周面に開口した潤滑油放出孔14とから構成されている。
潤滑油放出孔14は、偏心軸部10が圧縮室17に近づいたときに切欠き部21と対向する高さ位置に設けられている。
以上のように構成された密閉型圧縮機について、以下にその動作を説明する。
電動要素5の回転子4がクランクシャフト8を回転させ、この回転に伴って偏心軸部10の回転運動が連結手段20とピストンピン22を介してピストン19に伝えられることで、ピストン19は圧縮室17内を往復運動する。
これにより、冷却システム(図示せず)からの冷媒ガスは圧縮室17内へ吸入され、ここで圧縮された後、再び冷却システムへと吐出され、以下、このサイクルを繰返す。
またクランクシャフト8の回転に伴い、傾斜ポンプ11内の潤滑油7は、遠心力によって上方へと汲み上げられ、粘性ポンプ12を介して各摺動部へ給油し、その後、偏心軸部10の内周に設けられた連結孔13に汲み上げられる。
そして潤滑油7は、連結孔13の上端および潤滑油放出孔14から円周方向に放出(散布)される。
かかる動作において、連結孔13内では、潤滑油7が偏心軸部10の回転に伴う遠心力によって偏心方向に偏在している。そして、ピストン19が下死点近傍に位置してシリンダブロック16から露出した状態の時に、潤滑油放出孔14から放出された潤滑油7が半円弧状の切欠き部21に衝突し、ピストン19の上面へと散布される。
その結果、ピストン19とシリンダブロック16との間に十分な量の潤滑油7を給油することができ、シール性が高まることで体積効率が上がり、密閉型圧縮機の効率が向上する。
また、同時に十分な給油が得られることでピストン19とシリンダブロック16間での摩耗を減少させることができる。
特開2003−065236号公報
しかしながら、上記従来の構成であると、炭化水素系冷媒R600aを用いた圧縮機の如く、気筒容積を大きくする必然性が生じた場合、シリンダブロック16およびピストン19の外径の大きさに合わせてクランクシャフト8に設けた潤滑油放出孔14の位置を高くする必要がある。
ところが、ピストン19の外径に合わせてクランクシャフト8の潤滑油放出孔14の位置を高くすることは、偏心軸部10が大きくなり、その結果、密閉容器1を大きくする必要があった。
また、気筒容積の大容量化に伴って圧縮要素6の発熱量が増加し、これに起因して潤滑油7の温度が上昇し、潤滑油7の粘度が低下することで、ピストン19とシリンダブロック16間のシール性が不十分となり、さらに、摺動部分の冷却作用も低下し、圧縮機の信頼性が低下する可能性があった。
本発明は、上記従来の課題を解決するもので、大気筒容積においても潤滑油を合理的にピストンの上面へ飛散させ、ピストンとシリンダブロック間のシール性を確保し、またピストンの冷却作用を向上することで、高い信頼性を備えた密閉型圧縮機を提供することを目的とするものである。
上記従来の課題を解決するために、本発明の密閉型圧縮機は、密閉容器内に、潤滑油と、インバーター駆動制御装置によって複数の運転周波数で駆動される電動要素と、前記電動要素によって駆動される圧縮要素を収容し、前記圧縮要素は、主軸部および偏心軸部から構成され前記偏心軸部に前記潤滑油を供給する給油手段を備えたクランクシャフトと、前記主軸部を回転自在に軸支するとともに圧縮室を有するシリンダブロックと、前記圧縮室内を往復動するピストンと、前記偏心軸部の回転運動を前記ピストンへ伝達する連結手段と、を有し、前記シリンダブロックの前記圧縮室の上壁に潤滑油を前記ピストン上部に導く切欠き部を設け、前記偏心軸部に供給された前記潤滑油は、一部は前記偏心軸部の上端部から放射されるとともに、一部は水平方向に飛散して前記ピストンの背面部に衝突するものである。
これにより、クランクシャフトの偏心軸部上端部から噴出する潤滑油は、集油手段に衝突させ、シリンダブロックの切欠き部側へ導いてピストンの上面へ給油するとともに、一部は水平方向に飛散してピストンの背面部に給油することで、シリンダブロックとピストンのシール性を向上するとともに、ピストンの冷却作用を向上することができる。
本発明の密閉型圧縮機は、クランクシャフトの偏心軸部の上端部から噴出する潤滑油を集油手段にてピストンとシリンダブロックへ導き、ピストンとシリンダ間のシール性を確保するとともに、ピストンの冷却をすることができる。その結果、圧縮機の高速運転時における各摺動部の潤滑作用と冷却作用、および低速運転時における圧縮効率の低下を抑制し、圧縮機の信頼性を確保することができる。
本発明の実施の形態1における密閉型圧縮機の縦断面図 同実施の形態1における密閉型圧縮機の低速運転時の要部拡大縦断面図 同実施の形態1における密閉型圧縮機の高速運転時の要部拡大縦断面図 同実施の形態1における密閉型圧縮機のクランクシャフトの偏心軸部の拡大図 本発明の実施の形態2における密閉型圧縮機の低速運転時の要部拡大縦断面図 同実施の形態2における密閉型圧縮機の高速運転時の要部拡大縦断面図 同実施の形態2における密閉型圧縮機の集油板の斜視図 従来の密閉型圧縮機の縦断面図 従来の密閉型圧縮機の要部拡大縦断面図
請求項1に記載の発明は、密閉容器内に、潤滑油と、インバーター駆動制御装置によって複数の運転周波数で駆動される電動要素と、前記電動要素によって駆動される圧縮要素を収容し、前記圧縮要素は、主軸部および偏心軸部から構成され前記偏心軸部に前記潤滑油を供給する給油手段を備えたクランクシャフトと、前記主軸部を回転自在に軸支するとともに圧縮室を有するシリンダブロックと、前記圧縮室内を往復動するピストンと、前記偏心軸部の回転運動を前記ピストンへ伝達する連結手段と、を有し、前記シリンダブロックの前記圧縮室の上壁に潤滑油を前記ピストン上部に導く切欠き部を設け、前記偏心軸部に供給された前記潤滑油は、一部は前記偏心軸部の上端部から放射されるとともに、一部は水平方向に飛散して前記ピストンの背面部に衝突するものである。
かかる構成とすることにより、前記クランクシャフトの偏心軸部上端部から噴出する潤滑油を集油手段に衝突させ、シリンダブロックの切欠き部側へ導いてピストンの上面へ給
油することにより、シリンダブロックとピストンのシール性を向上することができ、圧縮効率の低下を抑制することができる。また、潤滑油の一部は水平方向に飛散してピストンの背面部に給油することで、ピストンの冷却作用を向上し、圧縮効率の低下抑制と圧縮機の信頼性を向上することができる。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記偏心軸部の上端部の先端を、前記シリンダブロックの前記切欠き部の肉厚面に対向する高さ位置とするものである。
かかることにより、圧縮空間容積の拡大化に伴い、シリンダブロックを大形化する場合においてもクランクシャフトの偏心軸部を大きくする必要がなく、シリンダブロックの大形化に伴う切欠き部の肉厚を利用して潤滑油を効果的にピストンの上部へ導くことができ、部品点数、組み立て工数の増加を抑制し、また、シリンダブロックの肉厚を最小限の値に設定することができ、シリンダブロックの大形化を極力抑制することができる。
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の発明において、前記偏心軸部は前記密閉容器内空間に開口した連結孔を備え、前記電動要素の回転数が変化した場合、前記
偏心軸部の上端部から放射される前記潤滑油の放射方向が変化するように、前記連結孔の開口縁が略直角に形成されているものである。
請求項4に記載の発明は、請求項に記載の密閉型圧縮機を有する冷凍サイクルシステムを備えた機器である。
以下、本発明による密閉型圧縮機の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における密閉型圧縮機の縦断面図である。図2は、同実施の形態1における密閉型圧縮機の低速運転時の要部拡大縦断面図である。図3は、同実施の形態1における密閉型圧縮機の高速運転時の要部拡大縦断面図である。図4は、同実施の形態1における密閉型圧縮機のクランクシャフトの偏心軸部の拡大図である。
図1乃至図4において、密閉容器101内部の密閉容器内空間102には、固定子103と永久磁石(図示せず)を内蔵した回転子104からなる電動要素105と、電動要素105によって駆動される圧縮要素106と、密閉容器101内の下部に貯溜した潤滑油107と、冷媒を収容している。
電動要素105は、インバーター駆動制御装置(図示せず)によって商用電源周波数未満の周波数を含む複数の運転周波数で駆動される。
また、密閉容器内空間102の冷媒には、温暖化係数の低い自然冷媒として代表的な炭化水素系冷媒R600aを用いている。
シリンダブロック116を有するブロック115は、略円筒形の圧縮室117を有するとともに、クランクシャフト108の主軸部109を軸支する主軸受け部118を有している。
シリンダブロック116には、クランクシャフト108の偏心軸部110との間を連結手段120によってピストンピン130を介して連結されたピストン119が往復摺動自在に挿入されている。
さらにシリンダブロック116には、圧縮室117の上壁にピストンピン130を挿入
するための半円弧状の切欠き部126を設けている。
クランクシャフト108の偏心軸部110は、主軸部109に対し偏心した箇所に形成されており、主軸部109には回転子104が圧入固定されている。
クランクシャフト108に形成された給油手段108aは、一端が潤滑油107中に開口した傾斜ポンプ111と、クランクシャフト108の表面に形成され、下端が傾斜ポンプ111と連通し、かつ軸方向へ螺旋状に延びる粘性ポンプ112と、偏心軸部110に設けられ、一端が粘性ポンプ112の他端と連通し、他端が偏心軸部110の上端部128において密閉容器内空間102(上方)に開口した連結孔113と、連結孔113から偏心軸部110の半径方向に延出し、外周面に開口した潤滑油放出孔114とから構成されている。
また、クランクシャフト108の偏心軸部110の上端部128の先端は、シリンダブロック116の上部に設けられた半円弧状の切欠き部126の肉厚Lの投影面(以下、肉厚面Lと称す)内に位置するようにその高さ位置が設定されている。
また、偏心軸部110の上端部128の外縁138は、図4に示す如くテーパ形状で0.3mm以下の面取り加工が施され、連結孔113の開口縁148(角部)は、略直角となるように加工が施されている。
したがって、偏心軸部110の先端部は、上述の面取り加工および略直角となる加工により、バリ等の凹凸物がない表面に形成されている。
さらに、潤滑油放出孔114は、偏心軸部110の半径方向に設けられ、ピストン119が、下死点近傍に到達した時点においてピストン119の背面部190と相対する位置に開口するようにその高さ位置が設定されている。
以上のように構成された密閉型圧縮機において、その動作を説明する。
電動要素105の回転子104は、クランクシャフト108を回転させ、この回転に伴って偏心軸部110の回転運動が、連結手段120とピストンピン130を介してピストン119に伝えられ、ピストン119は、圧縮室117内を往復運動する。
これにより、冷却システム(図示せず)からの冷媒ガスは、密閉容器内空間102から圧縮室117内へ吸入され、ここで圧縮された後、再び冷却システムへと吐出され、以下、このサイクルを繰返す。
このクランクシャフト108の回転により、傾斜ポンプ111内の潤滑油107は、遠心力により上方へと汲み上げられ、粘性ポンプ112を介して各摺動部へ供給され、各摺動部の潤滑を行ないながら偏心軸部110に設けられた連結孔113に汲み上げられる。
連結孔113に汲み上げられた潤滑油107は、偏心軸部110の上端部128から上方へ噴出され、また、連結孔113の一部の潤滑油107は、潤滑油放出孔114から円周方向に放出(散布)される。
このときの給油量は、クランクシャフト108の回転に伴う傾斜ポンプ111に発生する遠心力に応じて変化し、遠心力の小さい低速運転時には、図2に示す如く少なく、高速運転時には、図3に示す如く多くなる。
ここで低速運転時においては、ピストン119の摺速度が遅いため、冷媒が漏れやすい状況にあり、ピストン119とシリンダブロック116の間のシールには、高速運転時に比べて多くの給油量を必要とする。
本実施の形態1において、低速運転時は、図2の矢印で示すように、連結孔113を経由して偏心軸部110の上端部128から円周方向に噴出し、飛散する潤滑油107は、自身の表面張力作用によって偏心軸部110の表面に付着しながら遠心力によって飛散するが、偏心軸部110の外縁138に面取り加工を施していることから、その面取り加工面に付着し、その表面張力作用によって、水平方向、または重力方向に落下しながら円周方向に飛散する。
ここで、偏心軸部110の上端部128の先端は、前述の如くピストン119の上面129より上方に位置するとともに、シリンダブロック116に設けられた半円弧状の切欠き部126の肉厚面Lと相対する位置に構成されていることにより、水平方向に飛散した潤滑油107は、切欠き部126の壁面に当たり易い条件となり、この切欠き部126の壁面に衝突した潤滑油107は、壁面を伝ってピストン119の上面129に給油され、また、切欠き部126に衝突することなく重力方向に落下した潤滑油107は、直接、ピストン119の上面129に給油される。
さらに、連結孔113の一部の潤滑油107は、同時に偏心軸部110に設けられた潤滑油放出孔114から水平方向に飛散し、ピストン119の背面部190に衝突する。そして、跳ね返った潤滑油107は、補助的にピストン119とシリンダブロック116の間に給油され、ピストン119と圧縮室117(シリンダブロック116)の間のシール性を確保する。
したがって、ピストン119の外径がフロン系冷媒と比較して大きくなる炭化水素系冷媒を用いた場合でも、潤滑油107により、圧縮室117とピストン119間のシール性を確保して冷媒の漏れを低減し、圧縮効率の低下を抑制することができる。さらに、ピストン119とシリンダブロック116間に潤滑油107を多く供給できるので、信頼性を高めることができる。
また、高速運転時においては、ピストン119の摺速度が速いため、冷媒が比較的漏れにくい状況にあり、ピストン119と圧縮室117(シリンダブロック116)の間のシールには、低速運転時に比べて少ない給油量で賄うことができる。さらに、高速運転をすることで圧縮室117内部の温度上昇に伴い、ピストン119の温度も高くなる傾向にある。
本実施の形態1において、高速運転時は、図3に示すように、図2の低速時と比較して潤滑油107の噴出状態が異なり、連結孔113を経由して偏心軸部110の上端部128および潤滑油放出孔114から円周方向で、かつ遠くへ飛散する。
すなわち、偏心軸部110の上端部128から噴出する潤滑油107は、遠心力が大きく、給油量も多いことに加えて、連結孔113の開口縁148が略直角に形成されていることにより、偏心軸部110の上端部128に発生する表面張力に引きずられることなく、水平方向より上方へ向かって密閉容器101の内面に放射される。
そして、噴出された潤滑油107は、密閉容器101の天面内側に当たり、その内面を伝って密閉容器101の底部に戻されるうちに冷却され、各摺動部の温度上昇を抑制することができる。
一方、潤滑油放出孔114から水平方向に噴出された潤滑油107は、シリンダブロック116から出没するピストン119の背面部190に当たり、ピストン119などを冷却する。また、跳ね返った潤滑油107の一部は、補助的にピストン119とシリンダブロック116の間に給油され、ピストン119と圧縮室117(シリンダブロック116)の間のシール性を確保する。
したがって、圧縮機の低速回転時、および高速回転時にかかわらず、圧縮要素106の各摺動部へ安定した給油を行なうことができ、圧縮機の信頼性を高めることができる。また、かかる給油により、ピストン119と圧縮室117(シリンダブロック116)の間のシール性を確保することができ、両者のシール性を確保して冷媒の漏れを低減し、圧縮効率の低下を抑制することができる。
換言すると、クランクシャフト108に設けた偏心軸部110の上端部128の外縁138(角部)に、面取り加工を施し、0.3mm以下程度の切削面を形成したことにより、外縁138の加工時に発生するバリ等を除去し、偏心軸部110の上端面を滑らかにして、低速運転時における偏心軸部110の上端部128からシリンダブロック116の切欠き部126への給油を効果的に行なうように構成したもので、ピストン119の上面129への給油量を確保して低速運転時の信頼性を高めることができる。
さらに、クランクシャフト108に設けた偏心軸部110の連結孔113の開口縁148(角部)を、略直角となるように加工を施し、高速運転時における偏心軸部110の上端部128から密閉容器101の内面へ潤滑油107を飛散させる際の、偏心軸部110の上端部128に発生する表面張力の影響(表面への付着など)を受け難くし、潤滑油107の密閉容器101の内面への噴出(飛散)を効果的に行なうように構成したもので、潤滑油107を飛散作用に伴う潤滑油107の冷却効果を高め、高速運転時における信頼性を高めることができる。
かかる潤滑油107の各部位への給油構成は、特に圧縮室117の容積の増大に伴い、シリンダブロック116の外郭を大きく形成し、肉厚面Lが確保できる構成の場合に効果的であり、クランクシャフト108および偏心軸部110の特に軸方向寸法を変更することなく、シリンダブロック116を大形化することで達成することができる。
したがって、新たに圧縮要素106を設計する場合において、容易に給油構成を得ることができる。
(実施の形態2)
図5は、本発明の実施の形態2における密閉型圧縮機の低速運転時の要部拡大縦断面図である。図6は、同実施の形態2における密閉型圧縮機の高速運転時の要部拡大縦断面図である。図7は、同実施の形態2における密閉型圧縮機の集油板の斜視図である。
なお、本実施の形態2において、先の実施の形態1と同様の構成要件については、同一の符号を付し、先の実施の形態1と相違する内容を主体に説明する。
図5乃至図7において、先の実施の形態1と大きく相違する構成は、シリンダブロック116の上部に、集油手段である集油板150を設けた構成である。
この集油板150は、図7に示す如く半円弧状の切欠き部126に沿うように湾曲し、かつ上方に延出した形状であり、ねじ151などの適宜手段によってシリンダブロック116に固定されている。そして、集油板150は、密閉容器101の上部内面と所定の間隔が形成されるようにその延出寸法が設定されている。
したがって、電動要素105(クランクシャフト108)の回転に伴い、潤滑油107は、実施の形態1と同様に、連結孔113を経由して偏心軸部110の上端部128から上方に向かい、かつ円周方向に噴出されるとともに、潤滑油放出孔114から円周方向に噴出される。
このときの給油量は、先の実施の形態1と同様に、図5に示す如く遠心力の小さい低速運転時には少なく、図6に示す如く遠心力の大きい高速運転時には多くなる。
すなわち、低速運転時においては、給油量が少ないものの偏心軸部110の上端部128から噴出する潤滑油107が集油板150に衝突し、ピストン119の上面129に流下することに加えて、潤滑油放出孔114からの潤滑油107もピストン119の上面に噴出され、十分な給油量によってピストン119とシリンダブロック116の間のシール性を確保することができる。
したがって、実施の形態1と同様に、冷媒が漏れやすい低速運転時の圧縮効率の低下を抑制することができ、圧縮機の信頼性を確保することができるなどの作用効果が期待できる。
また、高速運転時においては、偏心軸部110の上端部128から噴出する潤滑油107が密閉容器101の天面内側に衝突し、潤滑油放出孔114からも円周方向に潤滑油107が噴出する。
したがって、実施の形態1と同様に、天面内側に衝突した潤滑油107によって各摺動部の温度上昇を抑制し、潤滑油放出孔114からの潤滑油107によってピストン119などの冷却と、ピストン119と圧縮室117(シリンダブロック116)の間のシール性を確保することができる。
さらに、集油板150は、シリンダブロック116に設けた半円弧状の切欠き部126に沿って湾曲し、かつ上方に延出した形状であるため、必要以上の広範囲に飛散する潤滑油を集めることがないため、この集油板150によって集められない潤滑油をシリンダブロック116などの冷却作用に供することができ、圧縮機の信頼性の低下を抑制することができる。
以上のように、本実施の形態2においても、実施の形態1と同様に圧縮機の低速回転時、および高速回転時にかかわらず、圧縮要素106の各摺動部へ安定した給油を行なうことができ、圧縮機の信頼性を高めることができる。また、かかる給油により、ピストン119と圧縮室117(シリンダブロック116)の間のシール性を確保することができ、両者のシール性を確保して冷媒の漏れを低減し、圧縮効率の低下を抑制することができる。
また、本実施の形態2は、実施の形態1と異なり、集油板150を設けた構成であるため、圧縮室117の容積拡大に伴い、シリンダブロック116における切欠き部126の肉厚の確保が難しい構成に適している。
本発明は、回転数可変型の圧縮機であり、低能力から高能力の範囲に亘って冷凍サイクルシステムの制御を行なう家庭用冷蔵庫、あるいは自動販売機、空調機器などのように冷凍サイクルシステムを備えた機器に広く適用できるものである。
101 密閉容器
105 電動要素
106 圧縮要素
107 潤滑油
108 クランクシャフト
108a 給油手段
109 主軸部
110 偏心軸部
113 連結孔
114 潤滑油放出孔
116 シリンダブロック
117 圧縮室
119 ピストン
120 連結手段
126 切欠き部
128 上端部
130 ピストンピン
138 外縁
148 開口縁
150 集油板(集油手段)
190 背面部

Claims (4)

  1. 密閉容器内に、潤滑油と、インバーター駆動制御装置によって複数の運転周波数で駆動される電動要素と、前記電動要素によって駆動される圧縮要素を収容し、
    前記圧縮要素は、主軸部および偏心軸部から構成され前記偏心軸部に前記潤滑油を供給する給油手段を備えたクランクシャフトと、前記主軸部を回転自在に軸支するとともに圧縮室を有するシリンダブロックと、前記圧縮室内を往復動するピストンと、前記偏心軸部の回転運動を前記ピストンへ伝達する連結手段と、を有し、
    前記シリンダブロックの前記圧縮室の上壁に潤滑油を前記ピストン上部に導く切欠き部を設け、
    前記偏心軸部に供給された前記潤滑油は、一部は前記偏心軸部の上端部から放射されるとともに、一部は水平方向に飛散して前記ピストンの背面部に衝突することを特徴とする密閉型圧縮機。
  2. 前記偏心軸部の上端部の先端を、前記シリンダブロックの前記切欠き部の肉厚面に対向する高さ位置とする請求項1に記載の密閉型圧縮機。
  3. 前記偏心軸部は前記密閉容器内空間に開口した連結孔を備え、
    前記電動要素の回転数が変化した場合、前記偏心軸部の上端部から放射される前記潤滑油の放射方向が変化するように、前記連結孔の開口縁が略直角に形成されている請求項1または2に記載の密閉型圧縮機。
  4. 請求項に記載の密閉型圧縮機を有する冷凍サイクルシステムを備えた機器。
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