JP5872595B2 - ポリエステル系熱収縮性フィルムロール - Google Patents
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Description
(1)前記フィルムロールの巻き出し部表面を、落球式硬さ試験機を用いてフィルムの幅方向に20mm間隔で測定した際の平均硬さが300〜650の範囲であり、
(2)該平均硬さのばらつきが±200以内であり、
(3)前記巻き出し部から前記フィルムを500m単位で巻き出した後の前記平均硬さの増加率が0.25〜5.0%の範囲である、ポリエステル系熱収縮性フィルムロールである。
本発明のフィルムロール巻き出し部表面(フィルムロール外部)の平均硬さは300〜800の範囲であることが必要である。また、本発明のフィルムロール表面部平均硬さは、望ましくは400〜700の範囲であり、さらに好ましくは400〜650である。平均硬さが300以上の場合ロールを動かした際に、巻きが崩れることなく安定して搬送、加工等することができる。加えて、巻きズレの発生も少なくなり、印刷時のフィルムの走行が安定し、印刷不良が抑制される。また平均硬さが800以下の場合、室温保管経時後もフィルムのブロッキングが発生する確率が低く、印刷時の巻き解きの際にブロッキングに起因する異音(剥離音;パリパリ音)や破断の発生を防止することができる。平均硬さが400以上の場合、印刷にかける際に斜めに吊り上げられた場合でも巻きが崩れることなく、安定して取り扱うことができる。また平均硬さが700以下の場合、印刷時の巻き解きの際に発生する剥離音が少なくなると共に、それに伴う静電気の発生が減少し印刷が安定する。さらに平均硬さが650以下の場合はフィルムロール巻き解きに必要となるテンションが安定するため、さらに印刷速度を高くすることができる。
本発明のフィルムロールの硬さを上記規定の範囲とする方法について以下に説明する。
1−1 ポリエステル系熱収縮性フィルムロールの製造工程
本発明のフィルムロールは、以下に示す3工程を経て得ることができる。
未延伸フィルムは、ポリエステル系樹脂組成物の樹脂ペレット単体、または異なる種類の複数の樹脂ペレットを混合し、押出しを行うことにより得ることができる。ペレット形成、溶融押出に関しては、公知の従来技術と同様な手法にて行うことが可能であり、例えば、原料となる前記樹脂組成物をあらかじめ200〜300℃の温度で溶融押出し、カッティングしてペレット状とし、次いで該ペレット状樹脂組成物を200〜300℃の温度で溶融押出しすることができる。
押出方法としては、特に限定されず、Tダイ法、チューブラー法等を用いることができる。一例として、図3の左側には、押出機31、Tダイ32、およびキャスティングロール33がこの順に配置されたフィルムの製造装置例が示されている。Tダイ法の場合には、押出後、表面温度が15〜80℃のキャスティングロール上で急冷し、厚さ30〜300μmの未延伸フィルムを形成することができる。
その後、未延伸フィルムに温調ロールや赤外線ヒータなどで熱を与えつつロール周速差をもって縦延伸を行う(図3においてAで示される範囲)。縦延伸ロールを使用し、未延伸フィルムを、ロール温度60〜120℃、好ましくは60〜80℃、延伸倍率1.0〜1.3倍、好ましくは1.0〜1.1倍の条件で延伸した縦延伸フィルムを得る。
なお、本明細書において「縦方向」はフィルムロールの長手方向、「横方向」はフィルムロールの幅方向と同義であり、「縦延伸」とは、フィルムロールの長手方向(熱収縮性フィルムの流れ方向)の延伸を、「横延伸」とは、フィルムロールの幅方向(熱収縮性フィルムの流れ方向の垂直方向)の延伸をそれぞれ意味する。
縦延伸工程にて得られたフィルムを、テンター装置34(図3参照)により、テンター延伸法を用いて延伸することによって横延伸フィルムを得ることができる。上記縦延伸フィルムを、延伸温度55〜100℃、好ましくは70〜90℃、延伸倍率1.7〜7.0倍、好ましくは4.0〜7.0倍の条件下、横延伸した後、60〜120℃、好ましくは70〜110℃の温度で熱処理し、ワインダー装置37により、テンションをかけつつ、タッチロール36の押圧を得ながらマスターロール35として巻き取られる。
その後、図4に示すように、マスターロール35は巻き出されてスリッター40にかけられ、任意の幅にスリットされる。図4の例では、3分割されたフィルムは、長手方向1000〜20000m、好ましくは1000〜10000m、さらに好ましくは1000m〜8000mの長さで巻き取られ、本発明のフィルムロール41〜43となる。なお、ここでも巻き取りに際し、フィルムにテンションがかけられ、巻き取られつつあるフィルムロール41〜43には、それぞれタッチロール44〜46による押圧(以下において「接圧」という。)が与えられる。
幅方向に偏った熱履歴をかけないようにする必要がある。フィルムロールの、幅方向の硬さのばらつきを抑えるためである。このため、縦延伸区間でかけているドローを最適値に調整したり、熱処理後のフィルム内歪みを解除するため、弛緩率が最適になるようテンターレール幅を変更したり、フィルム幅方向で均等な温度に達するようにテンター熱風量を幅方向に均一化させたりする工程が必要となる。
スリッターにおいてフィルムにかける張力、およびフィルムロールに与えるタッチロールの接圧は、フィルムロールの硬さに直接影響を与える。スリッターにおける張力は、30〜100N/mとすることが好ましい。張力が少なすぎると、フィルムロールの硬さが小さくなり過ぎて、本発明の規定する硬さの範囲からはずれてしまう虞がある。この結果、輸送時の振動でズレが発生し、印刷時にフィルムが蛇行し印刷ズレが発生することがある。
一方張力が大きすぎると、フィルムロールの硬さが大きくなり過ぎて、本発明の規定する硬さの範囲からはずれてしまう虞がある。この場合には、ロール保管中にフィルムブロッキングが発生し、印刷のため巻出す際にフィルムがばたつき、センサの感知を妨げることにより印刷ズレが発生することがある。
一方、張力制御率が高すぎると、巻き上がったフィルムロールの平均硬さ増加率も本発明の規定する数値より高いものとなり、結果として、こちらも半年在庫後の印刷評価が劣ったものとなってしまう。収縮フィルムは保管と共に巻締まりが発生するが、張力制御率が高すぎると、巻締まり発生による巻下部への影響が大きく、下巻きフィルム上にシワが入ったり、湾曲が増大することが起こり、印刷ズレが発生したりすることがあるからである。
なお、さらに印刷精度を上げるためには巻き硬さの調整に加えて湾曲を少なくするという手法をとることもできる。湾曲の発生要因としては、一般にプラスチックフィルムは、幅方向に偏った応力や歪みが残存したまま、ロールで巻き取られると、巻き取った直後もしくは巻き出して使用する段階で、上記残存が経時緩和され、歪みが生じ、湾曲が発生すると考えられる。
フィルムロールを構成するフィルムに適度な表面滑り性を付与することで、コア巻き付け部から巻き出し部にかけて徐々に巻硬さが下がるフィルムロールを製造することができ、且つ他の物性を確保することもできる。具体的には、フィルムを構成する樹脂組成物中に、フィラーや、帯電防止剤を添加する手法をとる。
フィルムを構成する樹脂組成物は、熱収縮フィルムにした際に、耐ブロッキング性および易滑性を付与できるという点から、無機および/または有機の微粒子(フィラー)を含有していることが好ましい。ブロッキングは印刷工程におけるフィルムロールの巻き出し時に、ロールから巻き出されるフィルムが、ロール側の最外層フィルムに接着して、異音を発するほか、バタツキや、張力の変動要因となり、印刷を不安定なものとするので好ましくない。フィルムに易滑性を与えた場合、ロールへのフィルムの巻き取り、巻き出し時に、フィルムとロール本体側との間に、位置的な自由度が増し、円滑な巻き取り、巻き出しが可能となる。微粒子の含有量はフィルム全体に対して、0.005〜1質量%の範囲であることが好ましく、さらには0.01〜0.7質量%の範囲、特には0.02〜0.5質量%の範囲であることが好ましい。
本発明のフィルムロールには帯電防止剤を塗布することができる。例えばテンターにて横延伸する前の縦延伸後のフィルムに塗布ロール速度を、ライン速度に対して0.1〜1.5倍の速度であるロールで帯電防止剤を掻き揚げながら塗布することで、フィルムに帯電防止効果を付与することができる。
本発明における熱収縮性ポリエステル系フィルムロールの樹脂組成としては、ジカルボン酸成分として、テレフタル酸、多価アルコール成分として、エチレングリコール、つまりエチレンテレフタレートユニットを主たる構成ユニットとすることが望ましい。
本発明のフィルムロールを構成するポリエステル系熱収縮性フィルムは、単層に限定することなく、異質材料または同質材料からなる他層を積層した多層フィルムとすることができる。多層フィルムは、2種2層、2種3層、3種5層、4種7層といった用途に応じた複数の層で構成できる。
本発明におけるフィルムロールは、コアに任意のテンションをかけながら巻き取られたフィルムであり、幅0.3m以上であることが好ましく、有効長さ1000m以上である。なお、フィルムの長さの上限は特に限定はないが、ハンドリング等の観点から、20000m以下、好ましくは15000m以下、より好ましくは10000m以下、さらに好ましくは8000m以下である。
本発明のフィルムロールに用いるコアは、特に限定されるものではなく、紙管、金属管、プラスチック管などを使用することができる。これらの中でも、ハンドリングの容易さやコストの観点から、紙管が最も汎用的であり、入手のし易さからみて好ましい。さらに、コアごとフィルムロールをスリットできるという、加工上の利点もある。コアとして紙管を使用する場合、紙管の万能材料試験機で計測した扁平耐圧強度が1800〜3000N/100mm幅であることが好ましい。紙管の扁平耐圧強度を1800N/100mm幅以上とすることにより、多少の巻き締まりがあってもコアの変形が少なく、コア変形による巻きズレを防止することができる。また、紙管の扁平耐圧強度を3000N/100mm幅以下とすることにより、巻き始め部分の耳立ちを抑えることができる。コア強度の調整は様々な方法が考えられるが、ポリウレタン系の樹脂などの熱可塑性樹脂コーティングなどによる強度アップが有効である。
本発明のフィルムロールを構成する熱収縮性フィルムは、少なくとも80℃温水に10秒間浸漬した際の収縮率が20%、望ましくは30%、さらに望ましくは40%である必要がある。フィルムの厚みは、10〜100μmの範囲であることが好ましい。熱収縮性フィルムの該収縮率が20%以上であると一般包装用途として用いることができる。また30%以上であると一般的な耐熱PETボトルの肩ラベルとして使用することができる。さらに、収縮率が40%以上であると収縮の際の温度域を下げられるため非耐熱のPETボトルの肩ラベルとして使用することができる。また、厚さが10μm以上であると二次加工が容易であるという利点があり、100μmを超えるフィルムは加工性に劣る傾向がある。なお、本発明のフィルムロールにより作成されたラベルを加熱収縮させる際の加熱方法は、主として蒸気による加熱が挙げられるが、これによらず熱風や赤外線などの加熱方法によっても収縮加工することができる。
本発明のフィルムロールにより作成されたラベルを被せる被覆物は、内容物充填時の熱に耐え、且つ上記熱収縮の際の熱に耐えるものである必要がある。例えばガラス瓶やスチール缶、ポリエチレン製やポリプロピレン製のカップやトレー、ポリエステル製のボトルなどが挙げられる。また内容物としては例えば弁当や油、牛乳、ジュース、ビールなどの食品、化粧品や医薬品、文房具類などが挙げられる。
後述する8種の樹脂原料について、以下の方法で組成分析、固有粘度、灰分の測定を行った。
ポリエステル樹脂溶液試料を、核磁気共鳴装置(NMR)により1Hをモニターすることにより分析し、ジカルボン酸成分に関しては全ジカルボン酸成分に対するモル%を、ジオール成分に関しては全ジオール成分に対するモル%を求めた。
ポリエステル樹脂約0.25gを、フェノール/テトラクロロエタン(質量比1/1)の混合溶媒約25mlに1.0質量%となるように110℃で溶解させた後、30℃まで冷却し、全自動溶液粘度計(中央理化製「2CH型DJ504」)にて30℃で測定した。
試料約10gを700℃のマッフルにて焼成を行い、焼成前後の質量を測定して、粒子物の含有量を算出した。
各実施例、参考例、比較例のフィルムロールのフィルム製造に使用される樹脂のペレット原料として以下のポリエステル系樹脂8種(PET1〜8)を使用した。
イーストマン・ケミカル社製「EASTAR PETG Copolyester6763」を使用した。該ポリエステル樹脂について、上述の方法で組成分析を行った結果、ジカルボン酸成分がテレフタル酸(以下、「TPA」と略記する。)であり、ジオール成分は、エチレングリコール(以下、「EG」と略記する。)が全ジオールに対して68モル%、1,4−シクロヘキサンジメタノール(以下、「CHDM」と略記する。)が全ジオールに対して32モル%であるポリエステル樹脂であった。また、該ポリエステル樹脂の固有粘度を上記方法で測定した結果、0.78dl/gであった。
以下に記載する製造例1の方法にて、ポリエステル樹脂を製造した。該ポリエステル樹脂について、上述の方法で組成分析を行った結果、ジカルボン酸成分は、TPAが全ジカルボン酸に対して70モル%、イソフタル酸(以下、「IPA」と略記する。)が全ジカルボン酸に対して30モル%であり、ジオール成分がEGであるポリエステル樹脂であった。また、該ポリエステル樹脂の固有粘度を上記方法で測定した結果、0.72dl/gであった。
−製造例1−
スラリー調製槽、エステル化反応槽、重縮合槽、およびペレット化装置を備えた回分式重合装置を用い、TPAとIPAの混合物(モル比4:1)とEGのエステル化反応物1トンを入れたエステル化反応槽に、あらかじめスラリー調製槽にて調製したTPA:605kg(3.64キロモル)、IPA:259kg(1.56キロモル)およびEG:388kg(5.20キロモル)(ジカルボン酸とジオールのモル比は1:1.2)のスラリーを314kg/hrの速度で連続的に添加してエステル化反応を行った。エステル化反応は、反応温度250℃、常圧の条件下、エステル化反応触媒としてポリエステル樹脂の理論収量に対して200質量ppmの三酸化アンチモンを添加し、生成する水を連続的に留出させながら、反応率95%に達するまでエステル化反応を行った。エステル化反応終了後、エステル化反応物の1トンをエステル化反応槽に残し、エステル化反応物を重縮合槽に移送した。
引き続いて、エステル化反応物が移送された重縮合槽に、安定剤として正リン酸を添加し、重合触媒として酢酸コバルトと三酸化二アンチモンを添加した(いずれもEG溶液として添加)。正リン酸、酢酸コバルト、三酸化二アンチモンの添加量はそれぞれ、ポリエステル樹脂の理論収量に対して、60質量ppm、150質量ppm、200質量ppmとした。
その後約100分かけて常圧から1.33×102Pa(1mmHg)まで減圧すると共に、内温を約250℃から約280℃まで上昇させ、EGを留出させながら溶融重縮合反応を行った。減圧開始後4時間経過したところで復圧し、重縮合反応を終了した。重縮合槽を復圧後、槽下部よりポリエステル樹脂をストランド状に水中に抜き出した後、ペレット状にカッティングした。また、ポリエステル系樹脂の固有粘度を上記方法で測定した結果、0.72dl/gであった。
三菱エンジニアリングプラスチックス社製「NOVADURAN 5008」をポリエステル系樹脂3として使用した。ポリエステル系樹脂3の組成を上記方法で分析した結果、ジカルボン酸成分がTPAであり、ジオール成分が1,4−ブタンジオール(以下、「BD」と略記する。)であるポリエステル系樹脂であった。また、ポリエステル系樹脂3の固有粘度を上記方法で測定した結果、0.85dl/gであった。
以下に記載する製造例2の方法にて、ポリエステル樹脂を製造した。該ポリエステル樹脂について、上述の方法で灰分分析並びに、組成分析を行った結果、ジカルボン酸成分はTPAであり、ジオール成分は、EGが全ジオールに対して68モル%、CHDMが全ジオールに対して32モル%であり、灰分分析を行った結果、有機物でない無機微粒子が10質量%含有しているポリエステル樹脂であった。また、該ポリエステル樹脂の固有粘度を上記方法で測定した結果、0.76dl/gであった。
−製造例2−
上記ポリエステル系樹脂PET1を90質量部、富士シリシア化学製の平均粒子径が3.1μmの「サイリシア420」を10質量部配合し、同方向二軸押出機で押出後、口金部よりポリエステル樹脂をストランド状に水中に抜き出した後、ペレット状にカッティングした。
以下に記載する製造例3の方法にて、ポリエステル樹脂を製造した。該ポリエステル樹脂について、上述の方法で灰分分析並びに、組成分析を行った結果、ジカルボン酸成分はTPAであり、ジオール成分は、EGが全ジオールに対して68モル%、CHDMが全ジオールに対して32モル%であり、灰分分析を行った結果、有機物でない無機微粒子が10質量%含有しているポリエステル樹脂であった。また、該ポリエステル樹脂の固有粘度を上記方法で測定した結果、0.74dl/gであった。
−製造例3−
上記ポリエステル系樹脂PET1を90質量部、富士シリシア化学製の平均粒子径が2.7μmの「サイリシア320P」を10質量部配合し、同方向二軸押出機で押出後、口金部よりポリエステル樹脂をストランド状に水中に抜き出した後、ペレット状にカッティングした。
以下に記載する製造例4の方法にて、ポリエステル樹脂を製造した。該ポリエステル樹脂について、上述の方法で灰分分析並びに、組成分析を行った結果、ジカルボン酸成分はTPAであり、ジオール成分は、EGが全ジオールに対して68モル%、CHDMが全ジオールに対して32モル%であり、灰分分析を行った結果、有機物でない無機微粒子が10質量%含有しているポリエステル樹脂であった。また、該ポリエステル樹脂の固有粘度を上記方法で測定した結果、0.70dl/gであった。
−製造例4−
上記ポリエステル系樹脂PET1を90質量部、富士シリシア化学製の平均粒子径が4.1μmの「サイリシア430」を10質量部配合し、同方向二軸押出機で押出後、口金部よりポリエステル樹脂をストランド状に水中に抜き出した後、ペレット状にカッティングした。
スラリー調製槽、エステル化反応槽、重縮合槽、およびペレット化装置を備えた回分式重合装置を用い、TPAとEGとネオペンチルグリコールの混合物とのエステル化反応物1トンを入れたエステル化反応槽に、あらかじめスラリー調製槽にて調製したTPA:820kg、NPG:128kgおよびEG:291kgのスラリーを314kg/hrの速度で連続的に添加してエステル化反応を行った。エステル化反応は、反応温度250℃、常圧の条件下、エステル化反応触媒としてポリエステル樹脂の理論収量に対して200質量ppmの三酸化アンチモンを添加し、生成する水を連続的に留出させながら、反応率95%に達するまでエステル化反応を行った。エステル化反応終了後、エステル化反応物の1トンをエステル化反応槽に残し、エステル化反応物を重縮合槽に移送した。
引き続いて、エステル化反応物が移送された重縮合槽に、安定剤として正リン酸を添加し、重合触媒として酢酸コバルトと三酸化二アンチモンを添加した(いずれもEG溶液として添加)。正リン酸、酢酸コバルト、三酸化二アンチモンの添加量はそれぞれ、ポリエステル樹脂の理論収量に対して、60質量ppm、150質量ppm、200質量ppmとした。
その後約100分かけて常圧から1.33×102Pa(1mmHg)まで減圧すると共に、内温を約250℃から約280℃まで上昇させ、EGを留出させながら溶融重縮合反応を行った。減圧開始後4時間経過したところで復圧し、重縮合反応を終了した。重縮合槽を復圧後、槽下部よりポリエステル樹脂をストランド状に水中に抜き出した後、ペレット状にカッティングした。また、ポリエステル系樹脂の固有粘度を上記方法で測定した結果、0.70dl/gであった。
日本ユニペット社製「RT−523C」を使用した。該ポリエステル樹脂について、上述の方法で組成分析を行った結果、ジカルボン酸成分がTPAであり、ジオール成分は、EGが全ジオールに対して98モル%、ジエチレングリコール(以下「DEG」と略記する)が全ジオールに対して2モル%であるポリエステル樹脂であった。また、該ポリエステル樹脂の固有粘度を上記方法で測定した結果、0.70dl/gであった。
以上の樹脂原料8種を用いて、以下の実施例1、2、4〜6、8〜11、参考例1〜3、比較例1〜7のフィルムロールを得た。配合の一覧を表1に、フィルムの製造条件一覧を表2に示す。
原料ポリエステル樹脂PET1を54.5質量部、ポリエステル樹脂PET2を27質量部とポリエステル樹脂PET3を15質量部、ポリエステル樹脂PET4を3.5質量部配合し、270℃の同方向二軸押出機で真空ベントを引きながら溶融混練し、Tダイ口金から冷却ロール上に押出し、厚さ250μmの未延伸フィルムを得た。その後、上記フィルムを縦延伸機の低速−高速ロール間の縦延伸をかけるところは1.1倍で縦倍率をかけ、上記ロール間以外のドローは0.98倍とした。その後、テンターにて101℃で予熱し、延伸温度79℃、延伸速度3000%/分でキャスティング押出方向に対して、垂直方向の横方向に5倍延伸を行い、熱処理温度92℃で処理後、テンター弛緩率0.4%にて厚さ50μmの熱収縮性フィルムを得た。なお、テンター熱風の吹出に関して、平均速度は10m/秒、フィルム幅方向の速度差は3m/秒であり、テンター出口のフィルム幅方向における温度幅は3℃であった。また、ワインダーにてフィルムを巻き取る張力は50N/m、フィルムをガイドするゴムロールの接圧は30N/m、巻き始めの初期値に対する巻き終わりの最終値が、張力、接圧ともに75%、200%に調整した。さらにスリッターにてフィルムを巻き取る張力は60N/m、フィルムをガイドするメタルロールの接圧は150N/m、巻き始めの初期値に対する巻き終わりの最終値が、張力、接圧ともに45%、180%に調整して、0.98m幅にスリットし、1000m巻き取り、実施例1にかかるフィルムロールを得た。
表1の配合表に従い配合した樹脂を実施例1と同様の条件で溶融押出し、250μmのフィルムを得た。なお、表1中の数値の単位は、質量部である。
上記フィルムを表2の条件にて延伸、巻き取り、スリットし、フィルムロールを得た。表2以外の条件は全て実施例1と同様に延伸、巻き取り、スリットを行った。
(フィルム温度計測)
テンター出口のフィルム温度をTASCO製 非接触の赤外温度計『THI−440N』にて計測した。計測位置としては、フィルム中央/両端/左記間の5点とした。両端は、テンタークリップから50mm以内であるとクリップ輻射熱の影響を受けて、正確なフィルム温度を計測することができないため、クリップから50mm離れた位置とした。
(テンター弛緩率)
熱処理時の弛緩率を記録した。
(熱風吹き出し温度)
テンターノズルの熱風噴出し口にて風速計を使用して測定した。
(ワインダー張力)
ワインダーの初期張力(m幅当たり)を記録した。
(張力制御率)
初期張力に対する巻き終わり時の張力の割合(%)を記録した。
つまり、「張力制御率」=「巻き終わり時の張力」/「初期張力」である。
(ワインダー接圧)
ワインダーの初期接圧(m幅当たり)を記録した。
(接圧制御率)
初期接圧に対する巻き終わり時の接圧の割合(%)を記録した。
つまり、「接圧制御率」=「巻き終わり時の接圧」/「初期接圧」である。
なお、スリッター工程に関しても、上記ワインダー工程に順じて測定を行った。
以下に、フィルムロールの評価方法を説明する。評価結果は表3にまとめて示した。
(1)80℃収縮率
各実施例、参考例または比較例にて得られたフィルムを、測定延伸方向に150mm、これに対する直交方向に25mmの大きさに切り取り、試料を作成した。試料の延伸方向に100mm間隔の標線を付し、80℃の温水浴に10秒間浸漬させ、その後30秒間23℃冷水に浸漬した後の標線間隔(A(mm))を測定し、下式(1)により収縮率を算出した。
収縮率(%)=100×(100−A)/100・・・・式(1)
20℃に保った保冷倉庫にフィルムロールを半年間保管し、その後6色印刷機を用いて一般的に用いられるカラーチャート版を使用し150m/分の速度で非帯電防止面に6色印刷を行った。見当ズレ監視装置の見当ズレ精度を観測し、ロール全域にわたる見当ズレの平均を見当ズレの値とした。
○: 見当ズレが0.3mm未満
△: 0.3〜0.9mm
×: 見当ズレが0.9mmを超える。
見当ズレが0.3mm未満の場合には見た目にボヤケを感じられない。見当ズレが0.3〜0.9mmの場合にはわずかにぼやけるものの、商品としては問題がない。見当ズレが0.9mmを超える場合にはボヤケがひどく商品価値がなくなる。
スイス、プロセオ社の硬さ試験機パロテスター2を使用した。従来、フィルムや紙のコイルの硬さを現場で計るには、棒でロールを叩き、その音によりロール硬さを推定する方法が行われていた。しかし、この方法では結果に個人差が出る欠点があるため、客観性を担保すべく本試験機を使用した。その原理は、特殊なバネの力でインパクトボディーがロール表面を打撃、反発した際の、インパクト装置のコイルと、インパクトボディーに内蔵された磁石とが働き、生じた誘導電圧を速度に正比例する値として関知するものである。インパクトボディーの反発速度をVa、打撃速度をVbとすると、下記式(2)により、硬さHを算出し、記録した。
H=(Va/Vb)×1000・・・・・式(2)
具体的には、フィルムロール巻き出し部の長さ方向端部から5m除去した部分を最外部の巻外として計測し、500mずつ巻き解きながら計測し、フィルムロール巻き芯側に少なくとも100mの長さを残している点までの長さまで計測する(有効長において巻外から500mおきの計測となる。)。
図7に試験の概略を示す。紙管を幅方向100mmに裁断し、温度23℃、湿度50%雰囲気下に24時間、保管して試料70とした。島津製作所製 油圧サーボ『UH−10A』に、試料70を寝かせてセッティングし、圧縮速度10mm/minでサンプルを圧縮させたときの最大強度を計測し、「コア耐圧強度」として記録した。
図8に示すように、水平平面である矩形湾曲台80に、フィルムロールの巻出部及びコア巻付部からそれぞれ長手方向に5m巻き出したフィルムを載せてシワ、弛みが発生しないように静置し、長手方向両端の幅方向端部同士を直線で結ぶ直線Lの中央において、フィルムエッジと直線Lからずれた距離|Wa|及び|Wb|のそれぞれの値(mm)を測定し、絶対値の大きい方の値を「湾曲」として記録した。また、以下に定義する測定値を「湾曲差」として記録した。
(湾曲差):1本のフィルムロールに巻かれていたフィルムの巻き始め側の端部から5m外側に巻いたところまでのフィルムを採取したものをコア「巻付部」とする。同様にフィルムの巻き終わり側の端部から5m内側に巻いたところまでのフィルムを採取したものを「巻出部」とする。フィルムロールのコア巻付部で測定した湾曲値と、前記フィルムロールの巻出部で測定した湾曲値との差を「湾曲差」とする。
なお、「湾曲」とは、0基準に対して±のある実際に計測した距離をいい、「湾曲値」とは、この「湾曲」を絶対値化した数値をいう。
定板をフィルムロール端面に渡し、定板から端面までの距離をノギスで測定し、その最も大きい値を巻ズレ幅とした。
また、縦積みロールは横で平面に載置させ、横積みロールは横に平面で載置させたまま、前記巻きズレ幅を計測した値を「最初値」とした。さらに、前記の横に載置したロールを縦に平面から45°傾斜させて10秒間保持した後、前記フィルムロールを前記平面に戻して載置したときの最終の巻きズレ幅を計測した値を「最後値」とした。
32 Tダイ
33 キャスティングロール
34 テンター装置
35 マスターロール
36 タッチロール
37 ワインダー装置
40 スリッター
41、42、43 フィルムロール
44、45、46 タッチロール
51 巻き出しロール
52a、52b インクリザーバ
53a、53b インク巻き上げロール
54a、54b 版ロール
55a、55b 接触ロール
57a、57b センサ
61 マーク
70 紙管
80 湾曲台
81 試料フィルム
100 フィルム
510、517 方向変換ロール
511〜516 調整ロール
518 巻き取りロール
520 オフセット印刷機
Claims (3)
- 有効長1000m以上のポリエステル系熱収縮性フィルムをコアに巻き取ってなるフィルムロールであって、前記フィルムロールの巻き出し部表面を、落球式硬さ試験機を用いて前記熱収縮性フィルムの幅方向に20mm間隔で測定した際の平均硬さが300〜650の範囲であり、該平均硬さのばらつきが±200以内であり、前記巻き出し部から前記フィルムを500m単位で巻き出した後の前記平均硬さの増加率が0.25〜5.0%の範囲であり、かつ前記熱収縮性フィルムを80℃温水中に10秒間浸漬した後の主収縮方向の収縮率が少なくとも20%であり、前記主収縮方向がフィルムロールの幅方向であることを特徴とするポリエステル系熱収縮性フィルムロール。
- 前記コアが紙管である請求項1に記載のポリエステル系熱収縮性フィルムロール。
- 前記紙管の万能材料試験機で計測した扁平耐圧強度が1800〜3000N/100mm幅である請求項2に記載のポリエステル系熱収縮性フィルムロール。
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