JP3678221B2 - 熱収縮性ポリエステル系フィルムロール及びラベルの製造方法 - Google Patents

熱収縮性ポリエステル系フィルムロール及びラベルの製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は熱収縮性ポリエステル系フィルムを巻き取ってなるフィルムロールに関し、さらに詳しくは熱収縮性フィルムロール内での厚みの変動による後加工の工程でのシワの発生やラベルの装着不良などのトラブル発生が極めて少ない熱収縮性ポリエステル系フィルムロールに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
熱収縮性フィルムは加熱により収縮する性質を利用して、収縮包装、収縮ラベルなどの用途に広く用いられている。中でも、塩化ビニル系樹脂やポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂などからなる延伸フィルムは、ポリエチレンテレフタレート(PET)容器、ポリエチレン容器、ガラス容器などの各種容器において、ラベルやキャップシールあるいは集積包装の目的で使用されている。
【0003】
これらの中でも、熱収縮性ポリエステル系フィルムは、低温域から高温域までの広い温度範囲での収縮仕上り性が優れており、ラベルにした際も美麗な光沢感や透明性を有しており、多用されている。
【0004】
熱収縮性ポリエステル系フィルムは、製造後、一旦ロール状に巻き取られ、このフィルムロールの形態で、各種図柄の印刷工程へ送られる。そして、印刷終了後は、必要に応じて、最終製品に用いられるラベルなどのサイズに合わせてスリット加工され、さらに溶剤接着などの手段によりフィルムの左右端部を重ね合わせてシールしてチューブ状体にされる。このチューブ状体が裁断されて、ラベル、袋などの形態に加工される。そして、上記のラベルや袋などを容器に装着し、スチームを吹き付けて熱収縮させるタイプの収縮トンネル(スチームトンネル)や、熱風を吹き付けて熱収縮させるタイプの収縮トンネル(熱風トンネル)の内部を、ベルトコンベアーなどにのせて通過させ、熱収縮させて容器に密着させている。
【0005】
上記印刷、スリット、溶剤接着の各加工工程において、フィルムロール内における長尺フィルムの長さ方向での厚みの差が大きいと(すなわち、厚みの変動が大きいと)、フィルムの加工時にシワが発生したり、厚み変動に起因する張力変動が発生して破断トラブルの原因となる。また、長尺フィルムの長さ方向に直交する方向の厚みの変動が大きいと、多色印刷時に各色の重ね合わせが困難となり加工不良が発生する。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記のようなフィルムロール内での厚みの変動に起因するトラブルの発生を低減することができ、加工性に優れた熱収縮性ポリエステル系フィルムロールと、その製造方法を提供することを課題とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
熱収縮性ポリエステル系フィルムを巻き取ってなるフィルムロールであって、この熱収縮性ポリエステル系フィルムは、
フィルムの長さ方向にフィルム物性が安定している定常領域におけるフィルムの巻き始め側の端部を第1端部、巻き終わり側の端部を第2端部とし、前記第2端部の内側2m以内の箇所に1番目の試料切り出し部を、また、前記第1端部の内側2m以内の箇所に最終の試料切り出し部を設けると共に、1番目の試料切り出し部から約100m毎に試料切り出し部を設け、夫々の試料切り出し部から10cm×10cmの正方形状に切り出した試料を、85℃の温水中に10秒浸漬して引き上げ、次いで25℃の水中に10秒浸漬して引き上げたときの最大収縮方向の熱収縮率が、全ての試料について20%以上であり、
上記試料切り出し部毎にフィルムの長さ方向の長さが50cm、幅が5cmの試験片を複数採取し、該試験片について、前記長さ方向における厚み変位測定を行ったとき、全ての試料切り出し部において、下式(1)で規定される厚み変動が、10%以下であるところに要旨が存在する。
厚み変動=[(最大厚み−最小厚み)/平均厚み]×100 (1)。
【0008】
上記の特性を有する熱収縮性ポリエステル系フィルムロールは、フィルムの定常領域全長に亘って、優れた加工性と収縮仕上り性を有するものであり、印刷、スリット、溶剤接着の各工程において、厚み変動に起因するシワや蛇行、張力変動による破断の発生が極めて少ない。また、熱収縮工程においても加工後の、ラベルや袋などの単位での厚み変動が少ないため、装着ミスの発生が少なく安定した加工性を得ることができ、製品の不良率を低減することが可能となる。
【0009】
また、本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムロールでは、上記各試料切り出し部から採取した、フィルムの長さ方向に直交する方向(以下、単に「直交方向」という場合がある)の長さが20cm、幅が5cmの複数の試験片について、該試験片の長さ方向(すなわち、フィルムの長さ方向に直交する方向)の厚み変位を測定したとき、各試料切り出し部において、上式(1)で規定される厚み変動が、8%以下であることが好ましい。このような特性を有する熱収縮性ポリエステル系フィルムロールは、特にフィルムに多色の図柄を印刷加工する際の加工性に優れ、複数の色を重ね合わせる場合にズレなどが生じ難く、非常にハンドリング性が良好である。
【0010】
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムロールでは、該ロールを構成する熱収縮性ポリエステル系フィルムが、2種以上の組成の異なるポリマーの混合物から形成されているものであることが好ましい。このような場合には、フィルムの長さ方向において、厚みの変動が起こり易く、本発明を適用する意義があるからである。
【0011】
熱収縮性ポリエステル系フィルムが、幅0.2m以上、長さ300m以上である場合も、本発明を適用しないとフィルムの長さ方向に厚みの変動が生じ易いので、本発明を適用する意義がある。しかも、上記幅および長さを有するフィルムは、加工性およびハンドリング性に優れているため、本発明の好ましい実施態様である。
【0012】
このような本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムロールを製造するに当たっては、原料ポリマーを溶融押出後冷却して得られるフィルムを一旦巻き取った後に、あるいは該冷却後引き続いて、延伸する工程を含み、前記溶融押出工程において、原料ポリマーの吐出量を平均吐出量±2%以内の範囲とする製造方法、および/または前記溶融押出工程後のキャスティング工程において、キャスティングロールの回転速度の変動を平均速度±2%以内の範囲とする製造方法を採用することが推奨される。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムロール(以下、単に「フィルムロール」という場合がある)は、公知の多価カルボン酸成分と、多価アルコール成分から形成されるエステルユニットを主たる構成ユニットとする単一の、あるいは2以上のポリエステルから得られる熱収縮性ポリエステル系フィルム(以下、単に「フィルム」という場合がある)を巻き取ってなるものである。以下、本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムロールを詳細に説明する。
【0014】
[熱収縮率]
本発明に係るフィルムは、フィルムの長さ方向にフィルム物性が安定している定常領域におけるフィルムの巻き始め側の端部を第1端部、巻き終わり側の端部を第2端部とし、前記第2端部の内側2m以内の箇所に1番目の試料切り出し部を、また、前記第1端部の内側2m以内の箇所に最終の試料切り出し部を設けると共に、1番目の試料切り出し部から約100m毎に試料切り出し部を設け、夫々の試料切り出し部から10cm×10cmの正方形状に切り出した試料を85℃の温水中に10秒浸漬して引き上げ、次いで25℃の水中に10秒浸漬して引き上げたときの最大収縮方向の熱収縮率が、いずれの試料においても20%以上である。
【0015】
本発明に係るフィルムにおいて、各試料切り出し部は、フィルムの長さ方向にフィルム物性が安定している定常領域に設けることとする。熱収縮性フィルムは、後述するように溶融した樹脂を押出して製膜し、その後延伸することによって製造されるが、これら製膜工程や延伸工程での操業が安定するまでは、フィルムの物性は大きく変動する。また、製膜工程や延伸工程での操業が安定した後でも、製膜条件や延伸条件を変更するとフィルム物性は変動する。本発明では、上記製膜工程や延伸工程での操業が不安定な時に得られるフィルムの長さ方向や直交方向の厚みの均一化を図ることを技術思想とするものではなく、これらの工程での操業が安定し、製造が定常状態に入ったときに得られる物性の安定したフィルムにおいて、従来よりも高度にフィルムの長さ方向や直交方向の厚みの均一化を図るものである。
【0016】
なお、フィルム物性が安定した定常領域(製造が定常状態に入ったときに得られるフィルム部分)の数は、通常、一本のフィルムロール中、一箇所(フィルムロールに巻き取られたフィルム全長に亘って一箇所の場合を含む)だけである。しかし、製造状況によっては複数箇所に存在することもあり得るので、この場合、試料切り出し部は、定常領域でのみ設ければよい。上記定常領域は、例えば、後述の測定方法で得られる熱収縮率によって評価できる。すなわち、熱収縮率は20%程度以内の幅(すなわち、複数のサンプルの熱収縮率の最大値と最小値の差が20%程度以下)で安定しているところを定常領域と見ればよい。
【0017】
上記の各試料の採取方法をより詳細に説明する。例えば、長さ498mの熱収縮性フィルムがロールに巻回されており、該フィルム中、巻き終わりから5mの箇所が定常領域の始端(すなわち、第2端部)、巻き始めから5mの箇所が定常領域の終端(すなわち、第1端部)である場合、第2端部から2m以内までの間で、最初の試料(i)を切り取る。続いて、切り取った部分から100m離れたところで、2番目の試料(ii)を切り取る。同様にして、200m目で3番目の試料(iii)を、300m目で4番目の試料(iv)を、400m目で5番目の試料(v)を切り取る。ここで、残りは100mよりも短くなるため、6番目(最終)の試料(vi)は、定常領域の第1端部から2m以内のいずれかの部分を切り取る。
【0018】
上記の各試料切り出し部から得られた10cm×10cmの試料について、最大収縮方向の熱収縮率を測定する。ここで、最大収縮方向の熱収縮率とは、試料の最も多く収縮した方向での熱収縮率の意味であり、最大収縮方向は、正方形の縦方向または横方向の長さで決められる。また、熱収縮率(%)は、10cm×10cmの試料を、85℃±0.5℃の温水中に、無荷重状態で10秒間浸漬して熱収縮させた後、直ちに25℃±0.5℃の水中に無荷重状態で10秒間浸漬した後の、フィルムの縦および横方向の長さを測定し、下記式に従って求めた値である(以下、この条件で測定した最大収縮方向の熱収縮率を、単に「熱収縮率」と省略する)。
熱収縮率=100×(収縮前の長さ−収縮後の長さ)÷(収縮前の長さ)。
【0019】
フィルムの熱収縮率が20%未満であると、フィルムの熱収縮力が不足して、容器などに被覆収縮させたときに、容器に密着せず、外観不良が発生するため好ましくない。より好ましい熱収縮率は40%以上、さらに好ましくは60%以上である。また、フィルムの熱収縮率は70%以下であることが好ましい。
【0020】
[フィルムの長さ方向の厚み変動]
本発明の熱収縮性フィルムロールに巻回されているフィルムでは、フィルムの長さ方向において、厚みが均一であることが要求される。具体的には、フィルムの長さ方向での厚み変位測定を、前記長さ方向の長さ50cm、幅5cmの試験片について行ったとき、上述の各試料切り出し部において、上記式(1)で求められる厚み変動が10%以下でなければならない。
【0021】
フィルムの長さ方向の厚み変動の測定は、次のようにして行う。熱収縮率の測定方法で上述した各試料切り出し部より得た各試料から、フィルムの長さ方向(流れ方向)の長さが50cm、幅が5cmの試験片を複数作成し、接触式厚み計にて試験片の長さ方向の厚み測定を行い、最大厚み、最小厚み、および平均厚みを求め、上式(1)により試験片における厚み変動を算出した後、その平均値を各試料切り出し部におけるフィルムの厚み変動とし、フィルムの定常領域全長の厚み変動の最大値および最小値を求める。
【0022】
フィルムの長さ方向の厚み変動が10%を超える箇所が存在すると、フィルムに印刷する際やセンターシールにより溶剤接着する際に、フィルムにシワが入ったり、加工時のフィルム張力の変動により部分的な印刷の抜けが発生したり、破断のトラブルが発生する場合がある。さらに、フィルムの長さ方向の厚みの変動が大きいと、このフィルムから製造したラベル・袋などの製品単位での厚みの差が大きくなる。この場合、これらのラベルなどを容器などに被覆収縮させる工程において、製品間での剛性(腰)の差が生じて、装着ミスによる不良率が増大する。フィルムの長さ方向の厚み変動は、9%以下であることが好ましく、8%以下であることがより好ましい。
【0023】
次に本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムロールに巻回されたフィルムの好適な物性について説明する。
【0024】
[フィルムの長さ方向に直交する方向の厚み変動]
さらに、本発明に係るフィルムでは、フィルムの長さ方向に直交する方向の長さが20cm、幅が5cmの試験片を上記各試料切り出し部から複数切り出し、上述の「フィルムの長さ方向の厚み変動」の測定方法と同様にして試験片の長さ方向(フィルムの長さ方向と直交する方向)の厚みを測定したとき、この厚み変動が8%以下であることが好ましい。
【0025】
フィルムの長さ方向に直交する方向の厚み変動が8%を超える箇所が存在すると、フィルムに多色の図柄を印刷する際の加工性が悪くなり、複数の色を重ね合わせる場合にズレを発生し易くなる。また、溶剤接着でのチュービング加工においてもフィルムの接着部分の重ね合わせが困難となる。さらに、フィルムの長さ方向に直交する方向の厚み変動が8%を超えると、フィルムロール状態での部分的な巻き硬度の差が発生し、これに起因するフィルムのタルミやシワが発生して該フィルムが使用不能となる場合もある。上記直交方向の厚み変動は6%以下がより好ましく、さらに好ましくは5%以下である。
【0026】
[最大熱収縮応力値]
本発明のフィルムロールに巻回されたフィルムでは、熱収縮率について上述した各試料切り出し部から別途切り出した各試料について測定される最大熱収縮応力値の平均値を算出したとき、該平均値が4.0MPa以上であり、且つ各試料の最大熱収縮応力値が該平均値±1.0MPa以内の範囲に収まっていることが好ましい。
【0027】
上記最大熱収縮応力値の測定方法は、以下の通りである。
(1)熱収縮性フィルムから、最大収縮方向を長さ方向とし、長さ200mm、幅20mmの試験片を切り出す。
(2)熱風式加熱炉を備えた引張試験機(例えば、東洋精機製「テンシロン」)の加熱炉内を、90℃に昇温する。
(3)送風を止め、加熱炉内に上記試験片を、チャック間距離100mm(一定)でセットする。
(4)加熱炉の扉を静かに閉め、送風(90℃、吹き出し速度5m/秒の熱風を、奥、左および右の三方向から供給)を再開し、熱収縮応力を検出・測定する。
(5)測定チャートから最大値を読み取り、これを最大熱収縮応力値(MPa)とする。
【0028】
そして、各試験片の、最大熱収縮応力値の測定結果から最大熱収縮応力値の平均値を算出する。平均熱収縮応力値がX(MPa)で、試験片(i)(試験片番号は、上記試料切り出し部の番号に対応する。以下同じ。)の最大熱収縮応力値をY1(MPa)とすると、|X−Y1|(X−Y1の絶対値)が1.0MPa以下で、試験片(ii)〜(vi)についての最大熱収縮応力値Y2〜Y6(MPa)においても同様に、|X−Yn|がいずれも1MPa以下であることが、最大熱収縮応力値の平均値±1.0MPaの意味である。換言すれば、Ynの最大値YmaxとXとの差と、最小値YminとXとの差のいずれもが±1.0MPa以内であれば、本発明の好ましい要件を満足する。
【0029】
フィルムロール内での最大熱収縮応力値の変動が平均値±0.5MPaを超えて±1.0MPa以内の範囲の場合、被覆収縮させる工程(上述の熱収縮工程)での調整により、収縮後の製品不良率をさらに低減させることができる。さらに最大熱収縮応力値の変動が平均値±0.5MPa未満の場合には、工程調整も不要となる。上記最大熱収縮応力値の変動は、平均値±0.4MPa以内の範囲であることがより好ましい。
【0030】
また、上記最大熱収縮応力値の平均値が4.0MPaを下回るフィルムでは、収縮応力の不足により容器などに被覆収縮させたフィルムが緩んだり、フィルムの機械的強度不足により耐破れ性に劣るといった問題が生じる傾向にある。より好ましくは4.5MPa以上、さらに好ましくは5.0MPa以上である。
【0031】
[溶融比抵抗値]
本発明に係る熱収縮性ポリエステル系フィルムは、上記のように、フィルムの長さ方向に直交する方向の厚み変動を抑制する観点から、温度275℃における溶融比抵抗値が0.70×108Ω・cm以下であることも推奨される。このようなフィルムを用いると、以下に詳細に説明するように、フィルムの直交方向の厚みの均一性を高めることができ、フィルムへの印刷性や、フィルムを容器に装着可能な形態に加工する際の加工性(安定加工性)を高めることができる。
【0032】
すなわち本発明では、押出機から溶融押出ししたフィルムを導電性冷却ロール(キャスティングロールなど)で冷却するに際して、押出機とキャスティングロールの間に電極を配設し、電極とキャスティングロールとの間に電圧を印加し(すなわち、前記電極からフィルムに電気を与え)、静電気的にフィルムをロールに密着させることが推奨される。溶融比抵抗値が小さいと、フィルムとロールとの密着性(静電密着性)を高めることができる。ロールへの静電密着性が低いと、キャスティングした未延伸フィルム原反の厚みが不均一化し、この未延伸フィルムを延伸した延伸フィルムにおいては厚みの不均一性がより拡大されてしまうのに対し、静電密着性が十分に高い場合には、延伸フィルムにおいても厚みを均一化できる。
【0033】
なお溶融比抵抗値を下げて静電密着性を高めると、フィルムの長さ方向に直交する方向の厚みの均一性を高めることができるだけでなく、フィルムの生産性を高めることができ、フィルムの外観も向上できる。すなわち、静電密着性が高いと、フィルムの冷却固化の安定性を高めることができ、キャスティング速度(生産速度)を高めることができる。また、静電密着性が高いと、フィルムの冷却固化が不完全となって、ロールとフィルムとの間に局部的にエアーが入り込み、フィルム表面にピンナーバブル(スジ状の欠陥)が発生するのを防止でき、フィルム外観を高めることもできる。
【0034】
上記溶融比抵抗値は、好ましくは0.65×108Ω・cm以下、さらに好ましくは0.60×108Ω・cm以下である。なお、ここでいう溶融比抵抗値は、後述する実施例において用いる方法により測定される値である。
【0035】
[耐破れ性]
本発明のフィルムロールに巻回されているフィルムは、良好な機械的強度を有していることが好ましく、その目安として、フィルムの最大収縮方向と直交する方向についての引張試験を、上記の各試料切り出し部から切り出した複数の熱収縮性ポリエステル系フィルム試験片について、チャック間距離100mm、試験片幅15mm、温度23℃、引張速度200mm/分の条件で行ったとき、破断伸度5%以下の試験片数が、試験片を採取したフィルムの各試料切り出し部において、各試料切り出し部毎の全試験片数の10%以下である。
【0036】
なお、この試験条件は、JIS K 7127に準じ、最大収縮方向と直交する方向の長さ200mm、幅15mmの試験片を複数作成し、上記条件で引張試験を行う。この際に、破断伸度が5%以下の試験片数を各試料切り出し部毎に数え、これを各試料切り出し部毎の試験片総数に対する百分率とし、上記破断率を算出する。
【0037】
上記条件は、換言すれば、5%も伸びないうちに破断してしまう試験片が、いずれの試料切り出し部においても、夫々の試料切り出し部毎の全試験片数の10%(1割)以下である、という意味である。破断伸度5%以下の試験片数は少なければ少ないほど好ましく、0%であれば最も好ましい。
【0038】
本発明に用いられる熱収縮性ポリエステル系フィルムでは、主に最大収縮方向にポリエステル分子が配向しているが、こうしたフィルムでは一般に、分子の配向方向に沿って最も裂け易い。よって、上記条件を満足し得ないフィルムでは、印刷やスリット、溶剤接着などの工程において、フィルムにかかる張力の変動に基づく破断のトラブルが発生し易くなるのである。
【0039】
上記破断率を10%以下とするためには、例えば、原料となるポリエステルの極限粘度は0.5dl/g以上、好ましくは0.6dl/g以上であって、1.3dl/g以下、好ましくは1.2dl/g以下とし、さらに押出工程での極限粘度の低下を抑制することが望ましい。この詳細については、後述する。
【0040】
次に、本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムロールに巻回されたフィルムの組成について説明する。
【0041】
[フィルム組成]
本発明では、熱収縮工程において、低温から高温までの幅広い温度域において優れた収縮仕上り性を有し、特に比較的低温域においても収縮斑、シワ、歪みが少ない収縮仕上り外観を得ることができ、また美麗な光沢感や透明性を得ることができることから、ポリエステル系樹脂から構成されるフィルムを採用する。
【0042】
ポリエステル系樹脂としては、多価カルボン酸成分として、芳香族ジカルボン酸、それらのエステル形成誘導体、脂肪族ジカルボン酸の1種以上を用い、多価アルコール成分と重縮合した公知の(共重合)ポリエステルを用いることができる。芳香族ジカルボン酸として、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレン−1,4−もしくは−2,6−ジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸等が挙げられる。またこれらのエステル誘導体としてはジアルキルエステル、ジアリールエステルなどの誘導体が挙げられる。また脂肪族ジカルボン酸としては、ダイマー酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、シュウ酸、コハク酸などが挙げられる。その他、p−オキシ安息香酸などのオキシカルボン酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸などの多価のカルボン酸を、必要に応じて併用してもよい。
【0043】
多価アルコール成分としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ダイマージオール、1,3−プロパンジオール、トリエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオールなどのアルキレングリコール、ビスフェノール化合物またはその誘導体のアルキレンオキサイド付加物、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、ポリオキシテトラメチレングリコール、ポリエチレングリコールなどが挙げられる。
【0044】
また、多価アルコール類ではないが、ε−カプロラクトンに代表されるラクトン類も一部使用してよい。ラクトン類は、開環して両端にエステル結合を有するユニットとなるものであり、1つのラクトン類由来のユニットがカルボン酸成分であり、かつ、アルコール成分であると考えることができる。よって、ラクトン類を用いる場合、各多価アルコール成分の量は、フィルムの全多価アルコール成分量に、ラクトン類由来のユニット量を加えた量を100モル%として計算する。また、各多価カルボン酸成分の量を求める場合も、フィルムの全多価カルボン酸成分量に、ラクトン類由来のユニット量を加えたものを100モル%として計算する。
【0045】
なお、本発明に係るフィルムでは、耐破れ性、強度、耐熱性などを発揮させるために、結晶性のエチレンテレフタレートユニットを主たる構成成分とすることが望ましい。しかし、エチレンテレフタレートユニットは、フィルムの結晶性を高めるユニットであり、該ユニットの含有率が高いフィルムでは、1,3−ジオキソランなどによる溶剤接着性や、熱収縮率が不十分となる。よって、フィルムの結晶性を下げ、非晶化度合いを高める成分を導入する必要がある。
【0046】
フィルム中で非晶性のユニットを形成し得るものとしては、上記例示の多価カルボン酸類や多価アルコール類の中でも、例えば、イソフタル酸、ナフタレン−1,4−もしくは−2,6−ジカルボン酸、1,3−プロパンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコールなどが特に好ましいものとして挙げられ、これら由来の成分を少なくとも一種フィルム中に存在させることで、フィルムの非晶化度合いを高めることができる。また、1,3−プロパンジオールや1,4−ブタンジオールなどは、ポリエステルのガラス転移温度(Tg)を低下させ、低温域での熱収縮性を向上させる作用も有する。
【0047】
テレフタル酸成分以外の多価カルボン酸成分を導入する場合、フィルム中の全多価カルボン酸成分100モル%中、例えば、5モル%以上、好ましくは7モル%以上、さらに好ましくは9モル%以上とすることが推奨される。またエチレングリコール成分以外の多価アルコール成分を導入する場合でも、フィルム中の全多価アルコール成分100モル%中、例えば、5モル%以上、好ましくは6モル%以上、さらに好ましくは7モル%以上とすることが望ましい。非晶性向上成分を上記程度導入することで、フィルムの溶剤接着性や熱収縮性を確保することが可能となる。
【0048】
また、上述したように、フィルムの耐破れ性、強度、耐熱性などを考慮すれば、結晶性のエチレンテレフタレートユニットが主たる構成成分であることが好ましく、具体的には、構成ユニット100モル%中、エチレンテレフタレートユニットが50モル%以上となるように選択することが推奨される。従って、多価カルボン酸成分100モル%中、テレフタル酸成分を50モル%以上、多価アルコール成分100モル%中、エチレングリコール成分を50モル%以上、とすることが好ましい。エチレンテレフタレートユニットは、55モル%以上がより好ましく、60モル%以上がさらに好ましい。
【0049】
ポリエステル系熱収縮性フィルムを構成するポリエステル原料は、単独でもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。単独の場合は、ポリブチレンテレフタレート、ポリシクロヘキシレンジメチルテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエチレンテレフタレート以外のホモポリエステルが好ましい。ポリエチレンテレフタレート単独では、熱収縮性が発現しないからである。
【0050】
熱収縮特性の点からは、Tgの異なる2種以上のポリエステルをブレンドして使用することが好ましい。ポリエチレンテレフタレートと共重合ポリエステル(2種以上であってもよい)を混合して使用することが好ましいが、共重合ポリエステル同士の組み合わせであってもよい。また、ポリブチレンテレフタレート、ポリシクロヘキシレンジメチルテレフタレート、ポリエチレンナフタレート同士を組み合わせたり、これらと他の共重合ポリエステルを組み合わせて用いることもできる。最も熱収縮特性的に好ましいのは、ポリエチレンテレフタレートと、ポリブチレンテレフタレートと、エチレングリコールとネオペンチルグリコールとの混合ジオール成分とテレフタル酸とからなる共重合ポリエステルとの3種類のブレンドタイプである。2種以上のポリエステルを併用する場合は、例えば、夫々のポリマーのチップをホッパ内でブレンドする(後述する)ことが、生産効率の点からは好ましい。
【0051】
また、フィルムの溶融比抵抗値を上記範囲に制御するためには、フィルム中にアルカリ土類金属化合物と、リン化合物とを含有させるのが望ましい。アルカリ土類金属化合物だけでも溶融比抵抗値を下げることができるが、リン化合物を共存させると溶融比抵抗値を著しく下げることができる。アルカリ土類金属化合物とリン化合物とを組合わせることによって溶融比抵抗値を著しく下げることができる理由は明らかではないが、リン化合物を含有させることによって、異物の量を減少でき、電荷担体の量を増大できるためと推定される。
【0052】
フィルム中のアルカリ土類金属化合物の含有量は、アルカリ土類金属原子M2を基準にして、例えば、20ppm(質量基準、以下同じ)以上、好ましくは40ppm以上、さらに好ましくは50ppm以上、特に60ppm以上であることが推奨される。アルカリ土類金属化合物の量が少なすぎると溶融比抵抗値の低下効果が十分に発揮されない。なお、アルカリ土類金属化合物の含有量を多くし過ぎても、溶融比抵抗値の低減効果が飽和してしまい、むしろ異物生成や着色などの弊害が大きくなる。そのためアルカリ土類金属化合物の含有量は、アルカリ土類金属原子M2を基準にして、例えば、400ppm以下、好ましくは350ppm以下、さらに好ましくは300ppm以下であることが望ましい。
【0053】
フィルム中のリン化合物の含有量は、リン原子Pを基準にして、例えば、5ppm(質量基準、以下同じ)以上、好ましくは20ppm以上、さらに好ましくは40ppm以上、特に60ppm以上であることが推奨される。リン化合物の量が少なすぎると、溶融比抵抗値の低下効果が不十分となり、異物の生成量を低減することもできない。なおリン化合物の含有量を多くしすぎても、溶融比抵抗値の低減効果が飽和してしまう。さらにはジエチレングリコールの生成を促進してしまい、しかもその生成量をコントロールすることが困難であるため、フィルムの物性が予定していたものと異なる虞がある。そのためリン化合物の含有量は、リン原子Pを基準にして、例えば、500ppm以下、好ましくは450ppm以下、さらに好ましくは400ppm以下、特に350ppm以下であることが望ましい。
【0054】
アルカリ土類金属化合物、およびリン化合物でフィルムの溶融比抵抗値を下げる場合、フィルム中のアルカリ土類金属原子M2とリン原子Pとの質量比(M2/P)は、1.2以上(好ましくは1.3以上、さらに好ましくは1.4以上)であることが望ましい。質量比(M2/P)を1.2以上にすることによって、溶融比抵抗値を著しく低減できる。なお、質量比(M2/P)が5.0を超えると、異物の生成量が増大したり、フィルムが着色したりする。そのため質量比(M2/P)は、5.0以下、好ましくは4.5以下、さらに好ましくは4.0以下であることが望ましい。
【0055】
フィルムの溶融比抵抗値をさらに下げるためには、上記アルカリ土類金属化合物、およびリン化合物に加えて、フィルム中にアルカリ金属化合物を含有させることが望ましい。アルカリ金属化合物は、単独でフィルムに含有させても溶融比抵抗値を下げることはできないが、アルカリ土類金属化合物、およびリン化合物の共存系に追加することで、溶融比抵抗値を著しく下げることができる。その理由については明確ではないが、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、およびリン化合物の三者で錯体を形成することによって、溶融比抵抗値を下げているものと推定される。
【0056】
フィルム中のアルカリ金属化合物の含有量は、アルカリ金属原子M1を基準にして、例えば、0ppm(質量基準、以下同じ)以上、好ましくは5ppm以上、さらに好ましくは6ppm以上、特に7ppm以上であることが推奨される。なお、アルカリ金属化合物の含有量を多くしすぎても、溶融比抵抗値の低減効果が飽和してしまい、さらには異物の生成量が増大する。そのためアルカリ金属化合物の含有量は、アルカリ金属原子M1を基準にして、例えば、100ppm以下、好ましくは90ppm以下、さらに好ましくは80ppm以下であることが望ましい。
【0057】
上記アルカリ土類金属化合物としては、アルカリ土類金属の水酸化物、アルコキシド、脂肪族カルボン酸塩(酢酸塩、酪酸塩など、好ましくは酢酸塩)、芳香族カルボン酸塩(安息香酸塩)、フェノール性水酸基を有する化合物との塩(フェノールとの塩など)などが挙げられる。またアルカリ土類金属としては、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムなど(好ましくはマグネシウム)が挙げられる。好ましいアルカリ土類金属化合物としては、水酸化マグネシウム、マグネシウムメトキシド、酢酸マグネシウム、酢酸カルシウム、酢酸ストロンチウム、酢酸バリウムなどが例示でき、特に酢酸マグネシウムが好ましい。上記アルカリ土類金属化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0058】
上記リン化合物としては、リン酸類(リン酸、亜リン酸、次亜リン酸など)、およびそのエステル(アルキルエステル、アリールエステルなど)、並びにアルキルホスホン酸、アリールホスホン酸およびそれらのエステル(アルキルエステル、アリールエステルなど)などが挙げられる。好ましいリン化合物としては、リン酸、リン酸の脂肪族エステル(リン酸のアルキルエステルなど;例えば、リン酸モノメチルエステル、リン酸モノエチルエステル、リン酸モノブチルエステルなどのリン酸モノC1-6アルキルエステル、リン酸ジメチルエステル、リン酸ジエチルエステル、リン酸ジブチルエステルなどのリン酸ジC1-6アルキルエステル、リン酸トリメチルエステル、リン酸トリエチルエステル、リン酸トリブチルエステルなどのリン酸トリC1-6アルキルエステルなど)、リン酸の芳香族エステル(リン酸トリフェニル、リン酸トリクレジルなどのリン酸のモノ、ジ、またはトリC6-9アリールエステルなど)、亜リン酸の脂肪族エステル(亜リン酸のアルキルエステルなど;例えば、亜リン酸トリメチル、亜リン酸トリブチルなどの亜リン酸のモノ、ジ、またはトリC1-6アルキルエステルなど)、アルキルホスホン酸(メチルホスホン酸、エチルホスホン酸などのC1-6アルキルホスホン酸)、アルキルホスホン酸アルキルエステル(メチルホスホン酸ジメチル、エチルホスホン酸ジメチルなどのC1-6アルキルホスホン酸のモノまたはジC1-6アルキルエステルなど)、アリールホスホン酸アルキルエステル(フェニルホスホン酸ジメチル、フェニルホスホン酸ジエチルなどのC6-9アリールホスホン酸のモノまたはジC1-6アルキルエステルなど)、アリールホスホン酸アリールエステル(フェニルホスホン酸ジフェニルなどのC6-9アリールホスホン酸のモノまたはジC6-9アリールエステルなど)などが例示できる。特に好ましいリン化合物には、リン酸、リン酸トリアルキル(リン酸トリメチルなど)が含まれる。これらリン化合物は単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用できる。
【0059】
上記アルカリ金属化合物としては、アルカリ金属の水酸化物、炭酸塩、脂肪族カルボン酸塩(酢酸塩、酪酸塩など、好ましくは酢酸塩)、芳香族カルボン酸塩(安息香酸塩)、フェノール性水酸基を有する化合物との塩(フェノールとの塩など)などが挙げられる。またアルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウムなど(好ましくはナトリウム)が挙げられる。好ましいアルカリ土類金属化合物としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウムなどが例示でき、特に酢酸ナトリウムが好ましい。
【0060】
本発明に係るポリエステル系フィルムを構成するポリエステルは、常法により溶融重合することによって製造できるが、ジカルボン酸類とグリコール類とを直接反応させ得られたオリゴマーを重縮合する、いわゆる直接重合法、ジカルボン酸のジメチルエステル体とグリコールとをエステル交換反応させたのちに重縮合する、いわゆるエステル交換法などが挙げられ、任意の製造法を適用することができる。また、その他の重合方法によって得られるポリエステルであってもよい。
【0061】
なお、ポリエステル系フィルムの場合、押出工程では、熱分解や加水分解によるポリエステルの極限粘度の低下を考慮することが好ましい。極限粘度が低過ぎると、フィルム中のポリエステルの分子量が低くなるため、熱収縮する際の収縮応力が、収縮時間の経過にしたがって急激に低下するようになり、収縮初期に発生した収縮白化や収縮斑などの欠点が、その後時間が経過しても改善されることはなく、収縮仕上り性や外観が劣るものとなる。さらにポリエステル系フィルムの分子量の低下は、フィルムの機械的強度や耐破れ性を低下させ、破断率悪化の原因ともなる。
【0062】
本発明で用いるポリエステルは、上記の通り、結晶性のエチレンテレフタレートユニットに、非晶化度合いを高め、熱収縮性を確保するための他のユニット(例えば、テレフタル酸と、1,4−シクロヘキサンジメタノールやネオペンチルグリコール、1,4−ブタンジオールなどとから形成されるユニット)を導入して得られるものである。このようなポリエステルをフィルム化するためには、少なくとも結晶性のエチレンテレフタレートユニット部分が溶融する温度で押出す必要がある。しかし、上記他のユニット部分は、エチレンテレフタレートユニット部分が溶融する温度よりも低い温度で溶融(軟化)し得ると共に、エチレンテレフタレートユニット部分よりも耐熱分解性・耐加水分解性が低い。よって、本発明のフィルムロールを製造する際に採用すべき溶融押出温度では、上記他のユニット部分において、熱分解や加水分解が生じ易いのである。
【0063】
このような事情から、本発明では、上記の通り、原料となるポリエステルの極限粘度は0.5dl/g以上、好ましくは0.6dl/g以上であって、1.3dl/g以下、好ましくは1.2dl/g以下とし、さらに押出工程での極限粘度の低下を抑制することが望ましい。上記極限粘度の低下抑制方法としては、原料となるポリエステルを予備乾燥して水分率を好ましくは100ppm以下、さらに好ましくは50ppm以下とすることによって、溶融時のポリエステルの加水分解を抑制することが挙げられる。この他、酸化防止剤を添加し、熱分解を抑制することも有効である。
【0064】
上記酸化防止剤の具体例としては、フェノール類、ビスフェノール類、チオビスフェノール類、ポリフェノール類などのフェノール系酸化防止剤;ジフェニルアミン類、キノリン類などのアミン系酸化防止剤;ホスファイト類、ホスホナイト類などのリン系酸化防止剤;チオジプロピオン酸エステル類等のイオウ系酸化防止剤などが挙げられる。
【0065】
より具体的な化合物を示せば、n−オクタデシル−β−(4’−ヒドロキシ−3,5’−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオネート、テトラキス〔メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕(この化合物は、チバスペシャリティケミカルズ社から商品名「イルガノックス1010」として市販されている)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−S−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン(この化合物は、チバスペシャリティケミカルズ社から商品名「イルガノックス1330」として市販されている)、トリス(ミックスドモノおよび/またはジノニルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタテトライルビス(オクタデシルホスファイト)(この化合物は、旭電化社から商品名「PEP−36」として市販されている)、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニルホスファイト)、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト)、ジラウリルチオジプロピオネート、ジミリスチルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネートなどが挙げられる。
【0066】
これらの酸化防止剤は単独で使用しても良く、2種以上を併用しても良い。一次酸化防止剤と二次酸化防止剤とを併用することもできる。中でも二次酸化を抑制する酸化防止剤が好ましく、中でもリン系の化合物が特に好ましい。酸化防止剤の好ましい使用量は、押出原料組成物中で0.01〜1質量%である。
【0067】
なお、原料ポリエステルが、複数種のポリエステルの混合物である場合は、混合前の各ポリエステルの極限粘度と質量比の積を算出し、混合物中に含まれる全ポリエステルの前記積を全て足して得られるポリエステル混合物の極限粘度が、上記の範囲内であればよい。例えば、原料ポリエステルが、極限粘度:0.7のポリエステルaと極限粘度:1.2のポリエステルbの混合物(質量比で、ポリエステルa:ポリエステルb=0.6:0.4)の場合、該ポリエステル混合物の極限粘度は、0.7×0.6+1.2×0.4=0.9である。
【0068】
ここで、上記のポリエステルの極限粘度は、後述する実施例において用いる方法により測定される値である。
【0069】
重合触媒としては、慣用の種々の触媒が使用でき、例えば、チタン系触媒、アンチモン系触媒、ゲルマニウム系触媒、スズ系触媒、コバルト系触媒、マンガン系触媒など、好ましくはチタン系触媒(チタニウムテトラブトキシドなど)、アンチモン系触媒(三酸化アンチモンなど)、ゲルマニウム系触媒(二酸化ゲルマニウムなど)、コバルト系触媒(酢酸コバルトなど)などが挙げられる。
【0070】
上述の溶融比抵抗値を下げるための化合物(アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、リン化合物など)の添加時期は特に限定されず、エステル化反応前、エステル化中、エステル化終了から重合工程開始までの間、重合中、および重合後のいずれの段階であってもよい。好ましくはエステル化工程の後の任意の段階、さらに好ましくはエステル化終了から重合工程開始までの間である。エステル化工程の後にアルカリ土類金属化合物、リン化合物(および必要に応じてアルカリ金属化合物)を添加すると、それ以前に添加する場合に比べて異物の生成量を低減できる。
【0071】
また、必要に応じて、シリカ、二酸化チタン、カオリン、炭酸カルシウム等の微粒子をフィルム原料に添加してもよく、さらに酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、着色剤、抗菌剤などを添加することもできる。
【0072】
次に、本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムロールを得るための好ましい製造方法について説明する。
【0073】
本発明のフィルムロール、すなわち、フィルムの長さ方向の厚み変動が抑制された長尺フィルムが巻回されたフィルムロールを製造するに当たっては、[I]フィルム組成の変動を抑制すること、[II]フィルムの溶融押出工程において、原料ポリマーの吐出量の変動を抑制すること、および/または溶融押出後のキャスティング工程において、キャスティングロールの回転速度の変動を抑制すること、[III]フィルムの延伸工程においてフィルム表面の温度変動を抑制すること、が重要となる。このような製造方法を採用することで、フィルムの長さ方向の厚み変動を、上記範囲内に制御することが可能となる。また、特に[I]および[III]を実施することは、上述したフィルムの熱収縮率や最大熱収縮応力値を確保すると共に、この最大熱収縮応力値の変動を抑制したり、耐破れ性を向上させる上でも好ましい。
【0074】
[フィルム組成の変動抑制]
上述のように、一般に熱収縮性ポリエステル系フィルムは、熱収縮特性と強度などを両立させる観点から、2種以上の種類・組成の異なるポリマーをブレンドしたり、共重合モノマー成分を複数にするなどして、主たる構成ユニット以外に他の構成ユニットを原料ポリマー中に導入して、得られるフィルムの特性を変化させる手法が採用されている。ここで、他の構成ユニットをフィルム中に含有させる手法としては、共重合を行ってこの共重合ポリマーを単独使用する方式と、異なる種類のホモポリポリマーあるいは共重合ポリマーをブレンドする方式とがある。
【0075】
共重合ポリマーを単独使用する方式では、フィルムロールに巻回された長尺フィルムにおいて、組成の変動はほとんど起こらない。
【0076】
一方、ブレンド方式では、ブレンド比率を変更するだけでフィルムの物性を容易に変更でき、多品種のフィルムの工業生産にも対応できるため、工業的には広く行われている。そして、このようなポリマーブレンドの場合に、1本のロールに巻回されるフィルムの組成変動や物性変動(厚みや最大熱収縮応力値などの変動)が大きくなり易いことが見出されている。よって、ブレンド方式の場合には、下記の手法を用いることが好ましい。
【0077】
(a)チップ形状の均一化
ブレンド方式では、通常、組成の異なる複数の原料ポリエステルチップをホッパ内でブレンドした後、溶融混練して押出機から押出して、フィルム化する。例えば、原料となるポリエステルが3種類ある場合、3個のホッパに夫々のポリエステルチップを連続式あるいは間欠式に供給し、必要に応じて緩衝ホッパを介して、最終的には、押出機直前あるいは直上のホッパ(便宜上「最終ホッパ」という)で3種類のポリエステルチップを混ぜながら、押出機の押出量に合わせて原料チップを定量的に押出機に供給してフィルムを形成する。
【0078】
ところが、最終ホッパの容量あるいは形状によっては、最終ホッパ内のチップ量が多い場合と残量が少なくなった場合に、最終ホッパから押出機へと供給されるチップの組成が異なってくるという原料偏析の現象が発生していることが本発明者等によって見出された。この問題は、各種ポリエステルチップの形状あるいは比重が異なっている場合、特に、顕著に現れる。その結果、長尺フィルムの組成(各エステルユニットなどの含有率)が変動してしまうのである。
【0079】
組成の変動の少ないフィルムを得るためには、フィルムを構成するポリエステルの組成変動を低減する手段として、使用する複数種のポリエステルチップの形状を合わせて、最終ホッパ内での原料偏析の現象を抑止することが好ましい。
【0080】
ポリエステルの原料チップは、通常、重合後に溶融状態で重合装置よりストランド状で取り出され、直ちに水冷された後、ストランドカッターでカットされて形成される。このため、ポリエステルのチップは、通常、断面が楕円形の楕円柱状となる。このとき、使用量の最も多いポリエステルチップに混合される他のポリエステルチップとして、使用量の最も多いポリエステルの原料チップの断面楕円の平均長径(mm)、平均短径(mm)および平均チップ長さ(mm)に対して、夫々±20%以内の範囲であるものを用いれば、上記原料偏析を低減させ得ることを突き止めた。これらの平均値が夫々±15%以内の範囲のものを用いることがより好ましい。
【0081】
チップの大きさに違いがある場合、最終ホッパ内をチップの混合物が落下していくときに、小さいチップは先に落下し易い。このため、最終ホッパ内のチップ残量が少なくなると、大きいチップの比率が多くなり、これが原料偏析の原因になるのである。しかし、上記範囲内のチップを用いることで、これらの原料偏析を低減させることができ、組成の均一な長尺フィルムを得ることができる。
【0082】
なお、異なる組成のホモポリエステル同士、あるいはホモポリエステルと共重合ポリエステルをブレンドして用いても、例えば、相溶性が悪いことに起因するフィルムの白化などの問題は起こらない。これは、後述する押出機内での溶融混練工程で、原料ポリエステルがかなり加熱されるため、夫々のポリエステルの間でエステル交換反応が起こり、押出機から押出されるときには、同じような組成の共重合ポリエステルの混合物に変性する傾向があるからである。このことは、フィルムのTgを示すピークが一つしか観察されないことからも確認できる。
【0083】
(b)ホッパ形状の適正化
上述の最終ホッパ形状の適正化も、組成が均一な長尺フィルムを得るための好ましい手段である。すなわち、最終ホッパとして漏斗状ホッパを用い、その傾斜角を65゜以上にすることで、大きいチップも小さいチップと同様に落とし易くすることができ、内容物の上端部が水平面を保ちつつ下降していくため、原料偏析の低減に効果的である。より好ましい傾斜角は70゜以上である。なお、ホッパの傾斜角とは、漏斗状の斜辺と、水平な線分との間の角度である。最終ホッパの上流に複数のホッパを使用してもよく、この場合、いずれのホッパにおいても、傾斜角を65゜以上、より好ましくは70゜以上とするとよい。
【0084】
(c)ホッパ容量の適正化
ホッパ内での原料偏析を低減する手段として、使用するホッパの容量を適正化することも好ましい手段である。ここで、ホッパの適正な容量としては、押出機の1時間当たりの吐出量の15〜120質量%の範囲内である。この吐出量の15質量%程度以上の容量がホッパにないと、原料の安定供給が難しいこと、また、大きすぎるホッパでは、原料チップ混合物が長時間に亘ってホッパ内に留まることとなり、その間にチップの偏析が生じる恐れがあること、などがホッパ容量を上記範囲内とする理由である。ホッパ容量は、押出機の1時間当たりの吐出量の20〜100質量%の範囲内であることがより好ましい。
【0085】
(d)微粉体の低減
使用する原料チップの削れなどにより発生する微粉体の比率を低減することも、フィルムの組成の変動を抑制するために好ましい手段である。微粉体が原料偏析の発生を助長するので、工程内で発生する微粉体を除去して、ホッパ内に含まれる微粉体の比率を低減することが好ましい。含まれる微粉体の比率は、原料チップが押出機に入るまでの全工程を通じて、1質量%以内に制御することが好ましく、0.5質量%以内に制御することがさらに好ましい。具体的には、ストランドカッターでチップ形成時に篩を通す方法、原料チップを空送などする場合にサイクロン式エアフィルタを通す方法などにより、微粉体を除去すればよい。
【0086】
長尺フィルムの組成の均一化を図るためには、上記(a)〜(d)のいずれかを採用すればよい。これらの4つの手段のうち、2つ以上を採用することがより好ましく、(a)〜(d)のすべてを採用することがさらに好ましい。
【0087】
[溶融押出工程および/またはキャスティング工程における変動の抑制]
本発明に係る熱収縮性ポリエステル系フィルムは、通常、原料ポリエステルをフィルム形状に溶融押出し、これを冷却するためにキャスティングロールでキャスティングして未延伸フィルムとし、この未延伸フィルムを延伸して製造される。そして、こうして得られた熱収縮性ポリエステル系フィルムを巻き取って、本発明のフィルムロールが得られる。なお、「未延伸フィルム」には、製造工程でのフィルム送りのために必要な張力が作用したフィルムも含まれる。
【0088】
こうしたフィルムロールの製造工程において、フィルムロール内でのフィルムの長さ方向における厚みの変動要因として、上記のフィルム組成の変動の他に、ポリマーを押出す工程(溶融押出工程)での吐出量変動と、溶融押出後、フィルムを冷却するためのキャスティング工程におけるキャスティングロールの回転速度の変動が挙げられる。
【0089】
溶融押出工程での吐出量の変動が大きいと、未延伸フィルムにおいて、吐出量が大きい部分では厚みが大きくなり、他方、吐出量が小さい部分では厚みが小さくなる。また、キャスティング工程でのキャスティングロールの回転速度の変動が大きいと、未延伸フィルムにおいて、該ロールの回転速度が速いときにキャスティングされた部分では厚みが小さくなり、他方、回転速度が遅いときにキャスティングされた部分では厚みが大きくなる。このような厚みの不均一な未延伸フィルムを延伸すると、より厚みの不均一性が拡大されてしまう。
【0090】
ポリマーの吐出量の変動については、溶融押出工程中にギアポンプなどを導入して、常に一定量のポリマーを押出せるようにすることが好ましく、吐出量を平均吐出量±2%以内の範囲とすることが推奨される。より好ましくは、平均吐出量±1%以内の範囲である。
【0091】
また、キャスティングロールの回転速度の変動については、ロール駆動系の回転精度をインバーターなどにより制御してキャスティングロールの回転速度の変動を平均速度±2%以内の範囲とすることが好ましい。より好ましくは、平均速度±1%以内の範囲である。
【0092】
なお、溶融押出工程での吐出量変動抑制と、キャスティングロールの回転速度の変動抑制は、いずれか一方を行えばフィルムの長さ方向の厚み変動は改善されるが、両方を実施することがより好ましい。
【0093】
[延伸工程におけるフィルム表面温度の均一化]
長尺フィルムの物性(特に長さ方向の厚み)を変動させる要因には、上述のポリマー成分の組成変動や、溶融押出工程・キャスティング工程での変動の他に、フィルムを延伸する際の工程変動も挙げられる。すなわち、長尺フィルムの長さ方向の厚み変動を低減するには、フィルムを延伸する工程での温度変動を抑制して、フィルムの表面温度の変動幅をできるだけ低減することが好ましい。
【0094】
ポリエステル系フィルムの場合、テンターを用いて横方向に一軸延伸する際には、延伸前の予備加熱工程、延伸工程、延伸後の熱処理工程、緩和処理、再延伸処理工程などがある。特に、予備加熱工程、延伸工程の各段階および延伸後の熱処理工程において、任意ポイントにおいて測定されるフィルムの表面温度の変動幅が、平均温度±1℃以内であることが好ましく、平均温度±0.5℃以内であればさらに好ましい。
【0095】
特に予備加熱工程、延伸工程、および延伸後の熱処理工程での温度変動は、熱収縮率の変動に大きく影響を及ぼす。従って、これらの工程でのフィルムの表面温度の変動幅が小さいと、フィルム全長に亘って同一温度で延伸や熱処理されることになって、フィルムの物性(厚みなど)が均一化する。勿論、緩和処理や再延伸処理工程においても、フィルムの表面温度の変動幅が小さいことが好ましい。
【0096】
フィルム表面温度の変動を小さくするには、例えば、フィルムを加熱する熱風の風速を制御できるようにインバーターを取り付けた風速変動抑制設備を用いたり、熱源に500kPa以下(5kgf/cm2以下)の低圧蒸気を使用して、熱風の温度変動を抑制できる設備などを用いるとよい。
【0097】
任意ポイントにおいて測定されるフィルムの表面温度の変動幅とは、例えば、延伸工程に入ってから2m経過したところで、フィルム製造中、連続的にフィルム表面温度を、例えば赤外式の非接触表面温度計で測定した場合の変動幅をいう。1ロール分のフィルム製造が終了した時点で、平均温度が算出できるので、フィルム表面温度の変動幅が、平均温度±1℃以内であれば、フィルムの定常領域の全長に亘って同条件で延伸されていることとなり、フィルム物性(厚みなど)の変動も小さくなる。
【0098】
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムロールを製造するに当たっては、以上の[I]〜[III]以外にも、特に、フィルムの長さ方向に直交する方向の厚みの変動を抑制する点で、以下の手法を採用することも好ましい。
【0099】
[キャスティング工程における導電性冷却ロールの採用]
本発明に係るフィルムにおいては、フィルムの長さ方向に直交する方向の厚みの変動を抑制するためには、上述したように、キャスティングロールに導電性冷却ロールを採用し、押出機とキャスティングロールの間に電極を配設し、電極とキャスティングロールとの間に電圧を印加し(すなわち、前記電極からフィルムに電気を与え)、静電気的にフィルムをロールに密着させることが好ましい。なお、フィルムとロールの静電密着性を確保するためには、フィルム中に、アルカリ土類金属化合物、リン化合物、アルカリ金属化合物を、夫々上述の範囲で含有させることが望ましい。
【0100】
また、フィルムの長さ方向に直交する方向の厚み変動を、長尺フィルム全長に亘って抑制するためには、溶融ポリエステルを押出して冷却用ロールで冷却する際のフィルムの静電密着性を、フィルム製造の初期から終期に亘って安定化することが望ましい。そこで、上記冷却の際に使用する電極として、電極汚染面の退避手段と、電極非汚染面の供給手段とを備えている電極を使用することが推奨される。すなわち溶融ポリエステルの製膜中に電極から電気を与えて、フィルムを静電密着させる場合、前記ポリエステルは複数種のポリマー(ホモポリマー、共重合ポリマーなど)やモノマーを含有しており、種々の低分子量成分を含有していることが多いため、溶融押出時に前記低分子量成分が揮発し、電極を徐々に汚染する。そのためフィルムの生産を続けると、徐々に電極の汚染が激しくなり、フィルムに十分な電気を与えることができなくなり、フィルムの静電密着性が低下してくる虞がある。そこで、上記特定の電極を用いることにより、電極汚染面を退避させ、代わりに非汚染面を供給させて、電極面を汚れの少ないフレッシュな状態に維持するのである。これにより、フィルムの生産を続けても、静電密着性が低下してくる虞がなく、フィルムの長さ方向に直交する方向の厚み変動を、上記所定範囲内とすることができる。
【0101】
上記特定の電極としては、例えば、下記(1)〜(3)の電極が例示できる。
【0102】
(1)上記フィルム面と対面可能なワイヤー状の電極であって、ワイヤーの送り出し装置(供給手段)と、ワイヤーの巻取装置などの収納装置(退避手段)とを備えた電極;
(2)円筒状の電極であって、モーターなどの前記円筒電極を回転させるための回転手段(この場合、回転手段が供給手段と退避手段の双方を兼ねる)を備えた電極;
(3)複数の電極ユニット(ワイヤー状電極ユニット、ブラシ状電極ユニットなど)を備え、各電極ユニットを独立してフィルムに近接させる近接手段(供給手段)と、各電極ユニットを独立してフィルムから遠ざける手段(退避手段)を備えた電極。
【0103】
なお上記電極(1)および電極(2)を用いる場合、送り出し装置からのワイヤー状電極の送り出しや、回転手段による円筒状電極の回転は、連続的に行ってもよく、断続的に行ってもよいが、連続的に行うのが好ましい。
【0104】
電極の材質は特に限定されないが、タングステン製の電極を用いることが、静電密着の安定性および電極の強度の観点から好ましい。
【0105】
またワイヤー状の電極を用いる場合、ワイヤー径は、0.15〜0.35mm程度の範囲にあることが静電密着の安定性および電極の強度の観点から好ましい。
【0106】
一方冷却用ロールは、導電性を有する限り特に限定されないが、表面が金属で被覆されているのが好ましく、特に表面がクロムメッキされているのが好ましい。また冷却用ロールは、表面温度が25〜50℃の範囲で制御されているのが好ましい。
【0107】
印加電圧は、静電密着の安定性の観点から、例えば、6.5kV以上、好ましくは7.5kV以上、さらに好ましくは8.5kV以上であり、通常、10kV以下である。また、電流値は、例えば、3.0mA以上、好ましくは3.5mA以上、さらに好ましくは4.0mA以上であり、通常、5.0mA以下である。
【0108】
[フィルム延伸工程での各条件の制御]
さらに、本発明に係るフィルムの長さ方向や、これに直交する方向の厚み変動を均一化させることに着目すれば、テンターなどを用いて横方向に延伸する際の、延伸工程の前の上記予備加熱工程では、フィルムを徐々に加熱するように制御するのが望ましい。予備加熱工程でフィルムを徐々に加熱すると、フィルムの温度分布を略均一にできるため、延伸後のフィルム(熱収縮性ポリエステル系フィルム)の厚みの均一性を高めることができる。
【0109】
上記加熱条件としては、熱伝達係数が0.00544J/cm2・sec・℃(0.0013カロリー/cm2・sec・℃)以下となるように、低風速で、フィルム表面温度がTg+0℃〜Tg+60℃の範囲内のある温度になるまで加熱を行うことが好ましい。
【0110】
また、延伸に伴うフィルムの内部発熱を抑制すると、延伸方向(幅方向など)のフィルム温度斑を小さくでき、延伸後のフィルム(熱収縮性ポリエステル系フィルム)の厚みの均一性を高めることができる。フィルムの内部発熱を抑制するためには、加熱条件を適宜制御して(例えば、熱風の供給速度を速くして)フィルムを加熱し易くするのが望ましい。加熱不足の部分があると延伸配向に伴う内部発熱が発生するのに対し、フィルムが十分に加熱されていると延伸時に分子鎖が滑り易くなるため、内部発熱が発生し難くなる。
【0111】
上記加熱条件は、例えば、熱伝達係数を0.0038J/cm2・sec・℃(0.0009カロリー/cm2・sec・℃)以上、好ましくは0.0046〜0.0071J/cm2・sec・℃(0.0011〜0.0017カロリー/cm2・sec・℃)程度とすることが望ましい。
【0112】
次に具体的なポリエステル系フィルムの製造例を説明する。
【0113】
[ポリエステル系フィルムの製造例]
上記手段(a)を満足する大きさに制御した原料ポリエステルチップを、ホッパドライヤー、パドルドライヤーなどの乾燥機、または真空乾燥機を用いて乾燥し、押出機を用いて200〜300℃の温度でフィルム状に押出す。あるいは、未乾燥のポリエステル原料チップをベント式押出機内で水分を除去しながら同様にフィルム状に押出す。押出しに際してはTダイ法、チューブラ法など、既存のどの方法を採用しても構わない。上記押出し後は、キャスティングロールで冷却(急冷)して未延伸フィルムを得る。
【0114】
次いで、上記未延伸フィルムに対して延伸処理を行う。最大収縮方向がフィルム横(幅)方向であることが、生産効率上、実用的であるので、ここでも、最大収縮方向を横方向とする場合の延伸法の例を示す。なお、最大収縮方向をフィルム縦(長手)方向とする場合も、下記方法における延伸方向を90゜変えるなど、通常の操作に準じて延伸することができる。
【0115】
延伸前の予備加熱工程では、加熱条件を上述のように制御することが好ましい。
【0116】
横方向の延伸は、Tg−20℃〜Tg+40℃の範囲内の所定温度で、2.3〜7.3倍、好ましくは2.5〜6.0倍に延伸する。その後、60℃〜110℃の範囲内の所定温度で、0〜15%の伸張あるいは0〜15%の緩和をさせながら熱処理し、必要に応じて40℃〜100℃の範囲内の所定温度でさらに熱処理をして、熱収縮性ポリエステル系フィルムを得る。この横延伸工程においては、上記したようにフィルム表面温度の変動を小さくすることのできる設備を使用することが推奨される。
【0117】
延伸の方法としては、テンターでの横1軸延伸ばかりでなく、縦方向に1.0倍〜4.0倍、好ましくは1.1倍〜2.0倍の延伸を施してもよい。このように2軸延伸を行う場合は、逐次2軸延伸、同時2軸延伸のいずれでもよく、必要に応じて、再延伸を行ってもよい。また、逐次2軸延伸においては、延伸の順序として、縦横、横縦、縦横縦、横縦横などのいずれの方式でもよい。これらの縦延伸工程あるいは2軸延伸工程を採用する場合においても、横延伸と同様に、予備加熱工程、延伸工程などにおいて、フィルム表面温度の変動をできるだけ小さくすることが好ましい。
【0118】
[その他]
本発明における熱収縮性ポリエステル系フィルムロールは、幅0.2m以上の熱収縮性フィルムを巻き取りコア(芯)に長さ300m以上巻取ったものであることが好ましい。幅が0.2mに満たないフィルムのロールは、工業的に利用価値の低いものであり、また、長さ300mに満たないフィルムロールは、フィルムの巻長が少ないために、フィルムの全長に亘る厚みや最大熱収縮応力値の変動が小さくなるので、本発明の効果が発現し難くなる。フィルムロールの幅は0.3m以上がより好ましく、0.4m以上がさらに好ましい。また、ロールに巻回されるフィルムの長さは400m以上がより好ましく、500m以上がさらに好ましい。
【0119】
フィルムロールの幅および巻長の上限は特に制限されるものではないが、取扱いのし易さから、一般的には幅1.5m以下、巻長はフィルム厚み45μmの場合に6000m以下であることが好ましい。また、巻き取りコアとしては、通常、3インチ、6インチ、8インチなどのプラスチックコア、金属製コア、あるいは紙管を使用することができる。
【0120】
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムロールを構成するフィルムの厚みは特に限定するものではないが、例えばラベル用熱収縮性ポリエステル系フィルムとしては、10〜200μmであることが好ましく、20〜100μmであることがさらに好ましい。
【0121】
【実施例】
以下、実施例によって本発明をさらに詳述するが、下記実施例は本発明を制限するものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更実施する場合は、本発明に含まれる。なお、合成例で得られたチップ、および実施例、参考例や比較例で得られたフィルムの物性の測定方法は、以下の通りである。
【0122】
(1)定常領域の確認と試料切り出し部の設定
後述する実施例、参考例および比較例で得られた長さ1000mのフィルムが巻回されたフィルムロールについて、フィルムの第2端部(巻き終り部)から20m間隔で5点試料を切出し、フィルムの第1端部(巻き始め部)から200m内側の部分から前記第1端部に向けて20m間隔で5点の試料を切り出し、これら試料について、後述する方法で最大収縮方向の熱収縮率を測定した。各試料の熱収縮率は、20%以内の幅に収まっていた。しかもフィルムの製造中、製造・延伸工程は安定していた。従って各フィルムロールは、フィルムの全長に亘って定常領域に該当していることが確認された。
【0123】
また、各物性測定においては、1番目の試料切り出し部をフィルムの第2端部(巻き終わりから0m)とし、最終の試料切り出し部は、フィルムの第1端部(巻き始めから0m)とし、全部で11箇所の試料切り出し部から試料を採取した。各物性測定においては、特に断らない限り、各試料切り出し部から10個の試料(試験片)を切り出し、各試料切り出し部における10個の試料(試験片)の物性の平均値を、その切り出し部における試料の物性値とした。
【0124】
(2)組成
試料を、クロロホルムD(ユーリソップ社製)とトリフルオロ酢酸D1(ユーリソップ社製)を10:1(体積比)で混合した溶媒に溶解させて、試料溶液を調製し、NMR(「GEMINI−200」;Varian社製)を用いて、温度23℃、積算回数64回の測定条件で試料溶液のプロトンのNMRを測定する。NMR測定では、プロトンのピーク強度に基づいて、フィルムを構成する成分の構成比率を算出する。
【0125】
フィルム組成は、実施例1および比較例5において、1,4−シクロヘキサンジメタノール成分含有率を測定することとし、結果を表8に示す。表8において、平均値(S)は測定した11試料の全ての1,4−シクロヘキサンジメタノール成分含有率(モル%)の平均値を、最大値(Tmax)は11試料のうちの1,4−シクロヘキサンジメタノール成分含有率の最大値を、最小値(Tmin)は11試料のうち最小の1,4−シクロヘキサンジメタノール成分含有率を夫々示し、平均値との差も示す。
【0126】
(3)金属成分
試料(チップまたはフィルム)に含まれるNa,Mg,Pの量を以下に示す方法によって測定する。
【0127】
[Na]
試料2gを白金ルツボに入れ、温度500〜800℃で灰化分解した後、塩酸(濃度:6mol/L)を5mL加えて蒸発乾固する。残渣を1.2mol/Lの塩酸10mLに溶解し、Na濃度を原子吸光分析装置(島津製作所製「AA−640−12」を用いて測定(検量線法)する。
【0128】
[Mg]
試料2gを白金ルツボに入れ、温度500〜800℃で灰化分解した後、塩酸(濃度:6mol/L)を5mL加えて蒸発乾固する。残渣を1.2mol/Lの塩酸10mLに溶解し、Na濃度をICP発光分析装置(島津製作所製「ICPS−200」を用いて測定(検量線法)する。
【0129】
[P]
下記▲1▼〜▲3▼のいすれかの方法により、試料中のリン成分を正リン酸にする。この正リン酸と、モリブデン酸塩とを硫酸(濃度:1mol/L)中で反応させて、リンモリブデン酸とした後、硫酸ヒドラジンを加えて還元する。生ずるヘテロポリ青の濃度を、吸光光度計(島津製作所製「UV−150−02」)を用いて830nmの吸光度を測定することによって求める(検量線法)。
▲1▼試料と炭酸ソーダとを白金ルツボに入れ、乾式灰化分解する。
▲2▼硫酸・硝酸・過塩素酸系における湿式分解。
▲3▼硫酸・過塩素酸系における湿式分解。
【0130】
(4)極限粘度
原料チップ0.1gを精秤し、25mlのフェノール/テトラクロロエタン=3/2(質量比)の混合溶媒に溶解した後、オストワルド粘度計で30±0.1℃で測定する。極限粘度[η]は、下式(Huggins式)によって求められる。
【0131】
【数1】
Figure 0003678221
【0132】
ここで、ηsp :比粘度、t0:オストワルド粘度計を用いた溶媒の落下時間、t:オスワルド粘度計を用いたフィルム溶液の落下時間、C:フィルム溶液の濃度である。
【0133】
なお、実際の測定では、Huggins式においてk=0.375とした下記近似式で極限粘度を算出する。
【0134】
【数2】
Figure 0003678221
【0135】
ここで、ηr:相対粘度である。
【0136】
(5)熱収縮率
フィルムを走行方向およびその直交方向に沿うように10cm×10cmの正方形に裁断し、85℃±0.5℃の温水中に、無荷重状態で10秒間浸漬して熱収縮させた後、直ちに25℃±0.5℃の水中に10秒浸漬し、その後試料の縦および横方向の長さを測定し、下記式に従って求めた値である。
熱収縮率(%)=100×(収縮前の長さ−収縮後の長さ)÷(収縮前の長さ)
最も収縮率の大きい方向を最大収縮方向とする。結果を表10に示す。
【0137】
なお、参考例1、比較例4,5については、11箇所の試料切り出し部での熱収縮率の変動も、表10に併記する。すなわち、表10において、平均値(U)は測定した11試料の全ての熱収縮率(%)の平均値を、最大値(Vmax)は11試料のうちの熱収縮率の最大値を、最小値(Vmin)は11試料のうち最小の熱収縮率を夫々示し、平均値との差も示す。
【0138】
(6)溶融比抵抗値
温度275℃で溶融した試料中に一対の電極板を挿入し、120Vの電圧を印加した。電流を測定し、下記式に基づいて溶融比抵抗値(Si;単位Ω・cm)を求める。
Si(Ω・cm)=(A/I)×(V/io)
[式中、Aは電極の面積(cm2)を示し、Iは電極間距離(cm)を示し、Vは電圧(V)を示し、ioは電流(A)を示す]。
【0139】
(7)厚み変動
上記各試料切り出し部から、フィルムの長さ方向の長さ50cm、幅5cmの試験片と、フィルムの長さ方向と直交する方向の長さ20cm、幅5cmの試験片を夫々10枚ずつ切り出す(厚み変位測定用試験片)。接触式厚み計[「KG60/A」;アンリツ(株)製]を用いて、フィルムの各方向毎に各試験片の長さ方向の厚みを連続的に測定してチャートに出力し、該出力結果から、最大厚み、最小厚み、および平均厚みを求め、下記式(1)に基づいて厚み変動を算出した後、その平均値を各試料切り出し部におけるフィルムの各方向の厚み変動とする。
厚み変動=[(最大厚み−最小厚み)/平均厚み]×100 (1)。
【0140】
(8)印刷加工性
熱収縮性ポリエステル系フィルムロールのフィルム全長に東洋インキ製造社製の草色インキをベタ印刷後、格子模様(1cm角格子)のグラビア版を使い、金色、白色の順に印刷して、印刷時のシワの発生、色の重ね合わせの不良、フィルムの破断の発生状況を下記の3段階で評価する。○:印刷性良好、△:印刷時部分的にシワ入り、または色の重ね合わせ不良が発生、×:印刷時シワ入り大、または破断発生、として、○を合格レベルとする。なお、後述する「耐破れ性」評価を行う実施例4,5、および比較例3,4については、上記印刷時の1000m当たりの破断回数も測定する。
【0141】
(9)収縮仕上り性
熱収縮性ポリエステル系フィルムロールに巻回されていたフィルム全長に、東洋インキ製造社製の草色、金色、白色のインキで3色印刷した後、フィルムをスリットし、続いて、センターシールマシンを用いて1,3−ジオキソランで溶剤接着してチューブを作り、二つ折り状態で巻き取る。
【0142】
このチューブを適宜長さに裁断して、熱収縮性フィルムラベルを作成し、1.5Lペットボトルに熱収縮性フィルムラベルを装着する。これをフジ・アステック社製のスチームトンネル(型式:SH−1500−L)を使用し、トンネル通過時間10秒、1ゾーン温度/2ゾーン温度=80℃/90℃の条件で、作製したラベル全量を通過させ、収縮仕上り性を目視で判定する。なお、収縮仕上り性は、下記5段階評価で行う。5:仕上り性最良、4:仕上り性良、3:欠点少し有り(2ヶ所以内)、2:欠点有り(3〜5ヶ所)、1:欠点多い(6ヶ所以上)、として、4以上を合格レベル、3以下のものを不良とし、下記式に従って収縮仕上り不良率(%)を求める。なお、ここで欠点とは、シワ、ラベル端部折れ込み、色斑、収縮不足である。
収縮仕上り不良率=100×不良サンプル数÷全サンプル数。
【0143】
(10)最大熱収縮応力値
加熱炉付引張試験機(東洋精機(株)製「テンシロン」)を用い、熱収縮性フィルムロールから後述するサンプリング方法で、最大収縮方向の長さ200mm、幅20mmのサンプルを切り出し、予め90℃に加熱した加熱炉中の送風をとめて、サンプルの両端からそれぞれ50mmの位置でサンプルをチャックに取付けてチャック間距離が100mmとなるようにし、その後速やかに加熱炉の扉を閉め、送風(温度90℃、吹き出し速度5m/秒の熱風を、奥、左および右の三方向から供給)を再開し検出される収縮応力を測定し、チャートから求まる最大値を最大熱収縮応力値(MPa)とする。結果を表11に示す。
【0144】
表11において、平均値(X)は測定した11試料全ての最大熱収縮応力値の平均値を、最大値(Ymax)は11試料のうちの最大熱収縮応力値の最大値を、最小値(Ymin)は11試料のうち最小の最大熱収縮応力値を夫々示しており、平均値との差も示している。
【0145】
(11)耐破れ性(破断率)
JIS K 7127に準じ、熱処理前のフィルムの最大収縮方向と直交する方向についての引張試験を行う。上記厚み変動測定における各試料切り出し部から、長さ200mm(フィルムの最大収縮方向と直交する方向)、幅15mmの試験片を、各試料切り出し部毎に20個作成する。試験条件は、チャック間距離100mm、温度23℃、引張速度200mm/分とする。伸度5%以下で破断した試験片数を数え、各試料切り出し部の全試験片数(20個)に対する百分率を求め破断率とする。耐破れ性の評価は、実施例4,5、および比較例3,4について行うこととする。後述する表12における破断率には、各試料切り出し部の測定結果のうち、最大の破断率を示す。
【0146】
合成例1
撹拌機、温度計および部分還流式冷却器を備えたステンレススチール製オートクレーブに、多価カルボン酸成分としてジメチルテレフタレート100モル%と、多価アルコール成分として、エチレングリコール68モル%と1,4−シクロヘキサンジメタノールCHDM32モル%を、グリコールがモル比でメチルエステルの2.2倍になるように仕込み、エステル交換触媒として酢酸亜鉛を0.05モル%(酸成分に対して)と、重縮合触媒として三酸化アンチモン0.025モル%(酸成分に対して)添加し、生成するメタノールを系外へ留去しながらエステル交換反応を行った。その後、280℃で26.7Paの減圧条件の下で重縮合反応を行い、極限粘度0.80dl/gのポリエステルAを得た。重合後に溶融状態で重合装置からストランド状で取り出し、直ちに水冷し、その後、ストランドカッターでカットして、原料チップAを得た。チップのサイズと極限粘度を表4に示す。
【0147】
合成例2,3
合成例1と同様の方法により、表1に記載のポリエステルチップB,Cを得た。各チップのサイズと極限粘度を表4に示す。
【0148】
【表1】
Figure 0003678221
【0149】
なお、表1中、DMTはジメチルテレフタレートを,EGはエチレングリコールを、CHDMは1,4−シクロヘキサンジメタノールを、BDは1,4−ブタンジオールを示す。
【0150】
合成例4
エステル化反応釜に、57036質量部のテレフタル酸、35801質量部のエチレングリコール、および11461質量部のネオペンチルグリコールを仕込み、圧力:0.25MPa,温度:220〜240℃の条件で120分間エステル化反応を行った。次いで、反応釜内を常圧とし、酢酸コバルト・4水塩(重合触媒)6.02質量部、チタニウムテトラブトキシド(重合触媒)7.60質量部、酢酸マグネシウム・4水塩(アルカリ土類金属化合物)125.72質量部、トリメチルホスフェート(リン化合物)58.4質量部を加え、10分間撹拌後、反応系内を徐々に減圧し、75分間で0.5hPaとすると共に、温度を280℃に昇温した。温度280℃で溶融粘度が7000ポイズとなるまで撹拌を続けて重合反応を行い(約40分間)、その後水中にストランド状に吐出して冷却し、得られたストランドをストランドカッターで切断してポリエステルのチップDを得た。各チップ中の無機成分量を表3に、サイズと極限粘度を表4を示す。
【0151】
合成例5〜12
合成例4と同様の方法により、表2に記載のポリエステルチップE〜Kを得た。各チップ中の無機成分量を表3に、サイズと極限粘度を表4に示す。
【0152】
【表2】
Figure 0003678221
【0153】
なお、表2中、DMT,EG,CHDM,BDは、夫々表1と同じ意味であり、NPGはネオペンチルグリコールを示す。
【0154】
【表3】
Figure 0003678221
【0155】
なお、表3中、各無機成分の由来は下記の通りである。Na:主に酢酸ナトリウムに由来する、Mg:主に酢酸マグネシウム・4水塩に由来する、P:主にトリメチルホスフェートに由来する、Ti:主にチタニウムテトラブトキシドに由来する、Co:主に酢酸コバルト・4水塩に由来する、Sb:主に三酸化アンチモンに由来する。
【0156】
【表4】
Figure 0003678221
【0157】
参考例
上記合成例1で各チップを別個に予備乾燥し、表5に示したように、チップA:75質量%、チップB:10質量%およびチップC:15質量%を、押出機直上のホッパに定量スクリューフィーダーで連続的に別々に供給しながら、このホッパ内で混合し、280℃で単軸式押出機で溶融押出しし、その後キャスティングロールで急冷して、厚さ180μmの未延伸フィルムを得た。原料ポリエステルの構成ユニットは表2の通りである。ホッパは、原料チップが100kg入る容量を有しており、押出機の吐出量は、1時間あたり450kgである。また、ホッパの傾斜角は70゜であった。未延伸フィルム製造時における原料ポリマーの吐出量の変動は、上記押出機に取り付けたギアポンプによって抑制し、キャスティングロールの回転速度の変動は、ロール駆動系の回転精度をインバーターで制御することにより抑制した。未延伸フィルム製造開始時から終了時までに亘る原料ポリマーの吐出量の変動を表6に、キャスティングロールの回転速度の変動を表7に示す。
【0158】
上記の未延伸フィルムについて、100℃で10秒間予熱した後、テンターで横方向に82℃で4.0倍延伸し、続いて80℃で10秒間熱処理を行って、厚さ45μmの熱収縮性ポリエステル系フィルムを1000m以上に亘って連続的に製膜した。フィルムを連続製造したときのフィルム表面温度の変動幅は、予熱工程で平均温度±0.5℃、延伸工程で平均温度±0.5℃、熱処理工程で平均温度±0.5℃の範囲内に制御した。なお、フィルムの表面温度は、赤外式の非接触表面温度計を用いて測定した(以下の実施例、比較例でも同じ)。得られた各フィルムを幅0.4m、長さ1000mにスリットして、3インチ紙管に巻き取り、熱収縮性ポリエステル系フィルムロールを得た。
【0159】
すなわち、参考例1の熱収縮性ポリエステル系フィルムロールでは、原料チップの適正化、ホッパ形状の適正化、およびホッパ容量の適正化といった手法を採用しており、長尺フィルムの全長に亘って組成の変動を小さくしている。また、溶融押出工程での原料ポリマーの吐出量の変動およびキャスティング工程でのキャスティングロールの回転速度の変動を抑制しており、さらにフィルム延伸の際に、予熱、延伸、熱処理の各工程で、該フィルムの表面温度の変動幅を、平均温度±1.0℃の範囲内に制御して製造した例である。得られたフィルムロールのフィルムの特性値を表8、表10および表11に示す。
【0160】
実施例2
上記合成例で得られた各チップを別個に予備乾燥し、表5に示したように、チップD:69質量%、チップG:6質量%、およびチップH:25質量%を、押出機直上のホッパに、定量スクリューフィーダーで連続的に別々に供給しながら、このホッパ内で混合し、280℃で単軸式押出機で溶融押出しし、その後、表面温度を30℃±1℃に制御したキャスティングロール(クロムメッキロール)で急冷して、厚さ180μmの未延伸フィルムを得た。
【0161】
未延伸フィルム製造時における原料ポリマーの吐出量の変動、およびキャスティングロールの回転速度の変動は、参考例1と同様にして抑制した。未延伸フィルム製造開始時から終了時までに亘る原料ポリマーの吐出量の変動を表6に、キャスティングロールの回転速度の変動を表7に示す。
【0162】
なお、上記押出しの際には、押出された未固化のフィルムと対面するようにタングステン製ワイヤー(直径0.25mm)を配設し、このワイヤーからフィルムに電気を与え(印加電圧9.5kV、電流値4mA)、フィルムをキャスティングロールに静電気的に密着させた。また、上記ワイヤーは、速度1.8m/hrの速度で片側から連続的に供給し、他方の側で巻き取った。
【0163】
ホッパは、原料チップが150kg入る容量を有しており、押出機の吐出量は、1時間あたり400kgである。また、ホッパの傾斜角は75゜であった。
【0164】
上記未延伸フィルムを100℃で10秒間予熱した後、テンターで横方向に80℃で4.0倍延伸し、続いて80℃で10秒間熱処理を行って、厚さ45μmの熱収縮性ポリエステル系フィルムを1000m以上に亘って連続的に製膜した。フィルムを1000m連続製造したときのフィルム表面温度の変動幅は、予熱工程で平均温度±0.4℃、延伸工程で平均温度±0.5℃、熱処理工程で平均温度±0.6℃の範囲内に制御した。得られたフィルムを幅0.4m、長さ1000mにスリットして、3インチ紙管に巻き取り、熱収縮性ポリエステル系フィルムロールを得た。
【0165】
すなわち、実施例2の熱収縮性ポリエステル系フィルムロールでは、原料チップの適正化、ホッパ形状の適正化、およびホッパ容量の適正化といった手法を採用しており、長尺フィルムの全長に亘って組成の変動を小さくしている。また、溶融押出工程での原料ポリマーの吐出量の変動およびキャスティング工程でのキャスティングロールの回転速度の変動を抑制しており、さらにフィルム延伸の際に、予熱、延伸、熱処理の各工程で、該フィルムの表面温度の変動幅を、平均温度±1.0℃の範囲内に制御して製造した例である。加えて、実施例2では、キャスティングロールへの静電密着性が良好な条件でキャスティング工程を実施している。得られたフィルムロールのフィルムの特性値を表9〜表11に示す。
【0166】
実施例3
上記合成例で得られた各チップを別個に予備乾燥し、表5に示したように、チップF:62質量%、チップG:18質量%、およびチップH:20質量%を、押出機直上のホッパに、定量スクリューフィーダーで連続的に別々に供給しながら、このホッパ内で混合し、280℃で単軸式押出機で溶融押出しし、その後急冷して、厚さ180μmの未延伸フィルムを得た。ホッパは、原料チップが100kg入る容量を有しており、押出機の吐出量は、1時間あたり450kgである。また、ホッパの傾斜角は75゜であった。
【0167】
未延伸フィルム製造時における原料ポリマーの吐出量の変動、およびキャスティングロールの回転速度の変動は、参考例1と同様にして抑制した。未延伸フィルム製造開始時から終了時までに亘る原料ポリマーの吐出量の変動を表6に、キャスティングロールの回転速度の変動を表7に示す。
【0168】
また、溶融押出し後のキャスティング工程(急冷)は、実施例2と同様のキャスティングロールおよびタングステン製ワイヤーを用い、実施例2と同じ条件でフィルムをキャスティングロールに静電気的に密着させて実施した。
【0169】
上記未延伸フィルムを80℃で10秒間予熱した後、テンターで横方向に72℃で4.0倍延伸し、続いて76℃で10秒間熱処理を行って、厚さ45μmの熱収縮性ポリエステル系フィルムを1000m以上に亘って連続的に製膜した。フィルムを1000m連続製造したときのフィルム表面温度の変動幅は、予熱工程で平均温度±0.8℃、延伸工程で平均温度±0.5℃、熱処理工程で平均温度±0.6℃の範囲内に制御した。得られたフィルムを幅0.4m、長さ1000mにスリットして、3インチ紙管に巻き取り、熱収縮性ポリエステル系フィルムロールを得た。
【0170】
すなわち、実施例3の熱収縮性ポリエステル系フィルムロールでは、原料チップの適正化、ホッパ形状の適正化、およびホッパ容量の適正化といった手法を採用しており、長尺フィルムの全長に亘って組成の変動を小さくしている。また、溶融押出工程での原料ポリマーの吐出量の変動およびキャスティング工程でのキャスティングロールの回転速度の変動を抑制しており、さらにフィルム延伸の際に、予熱、延伸、熱処理の各工程で、該フィルムの表面温度の変動幅を、平均温度±1.0℃の範囲内に制御して製造した例である。加えて、実施例3では、キャスティングロールへの静電密着性が良好な条件でキャスティング工程を実施している。得られたフィルムロールのフィルムの特性値を表9〜表11に示す。
【0171】
実施例4
上記合成例で得られたチップを夫々別個に予備乾燥し、表5に示すように、チップI:68質量%、チップG:8質量%およびチップK:24質量%を、押出機直上のホッパに定量スクリューフィーダーで連続的に別々に供給しながら、このホッパ内で混合し、280℃で単軸押出機で溶融押出し、その後急冷して、厚さ180μmの未延伸フィルムを得た。ホッパは、原料チップが150kg入る容量を有しており、押出機の吐出量は、1時間当たり450kgである。また、ホッパの傾斜角は70゜であった。
【0172】
未延伸フィルム製造時における原料ポリマーの吐出量の変動、およびキャスティングロールの回転速度の変動は、参考例1と同様にして抑制した。未延伸フィルム製造開始時から終了時までに亘る原料ポリマーの吐出量の変動を表6に、キャスティングロールの回転速度の変動を表7に示す。
【0173】
また、溶融押出し後のキャスティング工程(急冷)は、実施例2と同様のキャスティングロールおよびタングステン製ワイヤーを用い、実施例2と同じ条件でフィルムをキャスティングロールに静電気的に密着させて実施した。
【0174】
上記未延伸フィルムを100℃で10秒間予熱した後、テンターを用いて横方向に80℃で4.0倍延伸し、その後80℃で10秒間熱処理して、厚さ45μmの熱収縮性ポリエステル系フィルムを1000m以上に亘って連続的に製膜した。フィルムを1000m連続製造したときのフィルム表面温度の変動幅は、予熱工程で平均温度±0.4℃、延伸工程で平均温度±0.5℃、熱処理工程で平均温度±0.5℃の範囲内に制御した。得られたフィルムを幅0.5m、長さ1000mにスリットして、3インチ紙管に巻き取り、熱収縮性ポリエステル系フィルムロールを得た。
【0175】
すなわち、実施例4の熱収縮性ポリエステル系フィルムロールでは、原料チップの適正化、ホッパ形状の適正化、およびホッパ容量の適正化といった手法を採用しており、長尺フィルムの全長に亘って組成の変動を小さくしている。また、溶融押出工程での原料ポリマーの吐出量の変動およびキャスティング工程でのキャスティングロールの回転速度の変動を抑制しており、さらにフィルム延伸の際に、予熱、延伸、熱処理の各工程で、該フィルムの表面温度の変動幅を、平均温度±1.0℃の範囲内に制御して製造した例である。加えて、実施例4では、キャスティングロールへの静電密着性が良好な条件でキャスティング工程を実施している。得られたフィルムロールのフィルムの特性値を表9〜表12に示す。
【0176】
実施例5
上記合成例で得られたチップを夫々別個に予備乾燥し、表5に示すように、チップI:55質量%、チップG:34質量%およびチップK:11質量%を、押出機直上のホッパに定量スクリューフィーダーで連続的に別々に供給しながら、このホッパ内で混合し、280℃で単軸押出機で溶融押出し、その後急冷して、厚さ180μmの未延伸フィルムを得た。ホッパは、原料チップが100kg入る容量を有しており、押出機の吐出量は、1時間当たり450kgである。また、ホッパの傾斜角は75゜であった。
【0177】
未延伸フィルム製造時における原料ポリマーの吐出量の変動、およびキャスティングロールの回転速度の変動は、参考例1と同様にして抑制した。未延伸フィルム製造開始時から終了時までに亘る原料ポリマーの吐出量の変動を表6に、キャスティングロールの回転速度の変動を表7に示す。
【0178】
また、溶融押出し後のキャスティング工程(急冷)は、実施例2と同様のキャスティングロールおよびタングステン製ワイヤーを用い、実施例2と同じ条件でフィルムをキャスティングロールに静電気的に密着させて実施した。
【0179】
上記未延伸フィルムを98℃で10秒間予熱した後、テンターを用いて横方向に80℃で4.0倍延伸し、その後81℃で10秒間熱処理して、厚さ45μmの熱収縮性ポリエステル系フィルムを1000m以上に亘って連続的に製膜した。フィルムを1000m連続製造したときのフィルム表面温度の変動幅は、予熱工程で平均温度±0.7℃、延伸工程で平均温度±0.5℃、熱処理工程で平均温度±0.6℃の範囲内に制御した。得られたフィルムを幅0.5m、長さ1000mにスリットして、3インチ紙管に巻き取り、熱収縮性ポリエステル系フィルムロールを得た。
【0180】
すなわち、実施例5の熱収縮性ポリエステル系フィルムロールでは、原料チップの適正化、ホッパ形状の適正化、およびホッパ容量の適正化といった手法を採用しており、長尺フィルムの全長に亘って組成の変動を小さくしている。また、溶融押出工程での原料ポリマーの吐出量の変動およびキャスティング工程でのキャスティングロールの回転速度の変動を抑制しており、さらにフィルム延伸の際に、予熱、延伸、熱処理の各工程で、該フィルムの表面温度の変動幅を、平均温度±1.0℃の範囲内に制御して製造した例である。加えて、実施例5では、キャスティングロールへの静電密着性が良好な条件でキャスティング工程を実施している。得られたフィルムロールのフィルムの特性値を表9〜表12に示す。
【0181】
比較例1
表5に示した配合で、すなわち、チップE:69質量%、チップG:6質量%、およびチップH:25質量%を事前に混合し、その後予備乾燥した。原料チップが400kg入り、ホッパの傾斜角が60゜である同一の形状のホッパを4個直列に並べて一番上流のホッパにチップ混合物を入れ、2個目、3個目および4個目(最終ホッパ)へと移動させたこと以外は、実施例2と同様にして、厚さ45μmの熱収縮性ポリエステル系フィルムが1000m巻回された熱収縮性ポリエステル系フィルムロールを得た。
【0182】
すなわち、比較例1の熱収縮性ポリエステル系フィルムロールは、原料偏析の発生を抑制する手法を積極的に採用しておらず、長尺フィルムの全長に亘って組成の変動が大きくなっている例である。得られたフィルムロールのフィルムの特性値を表9〜表11に示す。
【0183】
比較例2
実施例2と同じ方法で未延伸フィルムを得た。この未延伸フィルムを100℃で10秒間予熱した後、テンターで横方向に80℃で4.0倍延伸し、続いて80℃で10秒間熱処理を行って、厚さ45μmの熱収縮性ポリエステル系フィルムを1000m以上に亘って連続的に製膜した。フィルムを1000m連続製造したときのフィルム表面温度の変動幅は、予熱工程で平均温度±1.5℃、延伸工程で平均温度±2.0℃、熱処理工程で平均温度±2.5℃の範囲内であった。得られたフィルムを幅0.4m、長さ1000mにスリットして、3インチ紙管に巻き取り、熱収縮性ポリエステル系フィルムロールを得た。
【0184】
すなわち、比較例2の熱収縮性ポリエステル系フィルムロールは、原料偏析を抑制する手段を採用して長尺フィルムの全長に亘って組成の変動を小さくしているが、フィルム延伸の際に、予熱、延伸、熱処理の各工程で、該フィルムの表面温度の変動幅を、平均温度±1.0℃の範囲内に制御せずに製造した例である。得られたフィルムロールのフィルムの物性値を表9〜表12に示す。
【0185】
比較例3
上記合成例で得られたチップJ:68質量%、チップG:8質量%、チップK:24質量%を混合した後乾燥し、原料チップが400kg入り、傾斜角が60゜である同一形状のホッパを4個直列に並べ、一番上流のホッパにこの混合物を入れ、2個目、3個目および4個目(最終ホッパ)の各ホッパへと移動させたこと以外は、実施例4と同様にして、厚さ45μmの熱収縮性ポリエステル系フィルムが1000m巻回された熱収縮性ポリエステル系フィルムロールを得た。
【0186】
すなわち、比較例3の熱収縮性ポリエステル系フィルムロールは、原料偏析の発生を抑制する手法を積極的に採用しておらず、長尺フィルムの全長に亘って組成の変動が大きくなっている例である。得られたフィルムロールのフィルムの特性値を表9〜表12に示す。
【0187】
比較例4
実施例4と同様にして未延伸フィルムを得た。この未延伸フィルムを100℃で10秒間予熱した後、テンターを用いて横方向に80℃で4.0倍延伸し、続いて80℃で10秒間熱処理を行って、厚さ45μmの熱収縮性ポリエステル系フィルムを1000m以上に亘って連続的に製膜した。フィルムを1000m連続製造したときのフィルム表面温度の変動幅は、予熱工程で平均温度±1.0℃、延伸工程で平均温度±2.5℃、熱処理工程で平均温度±2.1℃の範囲内であった。得られたフィルムを幅0.5m、長さ1000mにスリットして、3インチ紙管に巻き取り、熱収縮性ポリエステル系フィルムロールを得た。
【0188】
すなわち、比較例4の熱収縮性ポリエステル系フィルムロールは、原料偏析を抑制する手段を採用して長尺フィルムの全長に亘って組成の変動を小さくしているが、フィルム延伸の際に、予熱、延伸、熱処理の各工程で、該フィルムの表面温度の変動幅を、平均温度±1.0℃の範囲内に制御せずに製造した例である。得られたフィルムロールのフィルムの物性値を表9〜表12に示す。
【0189】
比較例5および6
押出機にギアポンプを取り付けずに原料ポリマーを溶融押出し、さらに、キャスティングロールの回転精度をインバーターによって制御しなかった以外は、参考例1と同様にして未延伸フィルムを得た。この未延伸フィルムを長さ方向に2等分し、2本の未延伸フィルムロールを得た。各未延伸フィルムについて、100℃で10秒間予熱した後、テンターで横方向に82℃で4.0倍延伸し、続いて80℃で10秒間熱処理を行って、厚さ45μmの熱収縮性ポリエステル系フィルムを1000m以上に亘って連続的に製膜した。フィルムを連続製造したときのフィルム表面温度の変動幅は、比較例5では、予熱工程で平均温度±1.0℃、延伸工程で平均温度±2.5℃、熱処理工程で平均温度±2.0℃の範囲内であった。また、比較例6では、予熱工程で平均温度±0.6℃、延伸工程で平均温度±0.5℃、熱処理工程で平均温度±0.5℃の範囲内に制御した。得られた各フィルムを幅0.4m、長さ1000mにスリットして、3インチ紙管に巻き取り、熱収縮性ポリエステル系フィルムロールを得た。
【0190】
すなわち、比較例5の熱収縮性ポリエステル系フィルムロールでは、原料偏析を抑制する手段を採用して長尺フィルムの全長に亘って組成の変動を小さくしているが、溶融押出工程時の原料ポリマーの吐出量の変動およびキャスティング工程でのキャスティングロールの回転速度の変動を抑制する手法を積極的に採用しておらず、さらにフィルム延伸の際に、予熱、延伸、熱処理の各工程で、該フィルムの表面温度の変動幅を、平均温度±1.0℃の範囲内に制御せずに製造した例である。また、比較例6の熱収縮性ポリエステル系フィルムロールは、原料偏析を抑制する手段を採用して長尺フィルムの全長に亘って組成の変動を小さくしており、フィルム延伸の際に、予熱、延伸、熱処理の各工程で、該フィルムの表面温度の変動幅を、平均温度±1.0℃の範囲内に制御しているが、溶融押出工程時の原料ポリマーの吐出量の変動およびキャスティング工程でのキャスティングロールの回転速度の変動を抑制する手法を積極的に採用せずに製造した例である。これらのフィルムロールのフィルムの特性値を表8(比較例4のみ)、表10および表11に示す。
【0191】
【表5】
Figure 0003678221
【0192】
【表6】
Figure 0003678221
【0193】
なお、表6では、未延伸フィルム製造開始時から終了時までに亘り、製膜したフィルムの質量を30秒毎に測定して求めた吐出量の平均値(kg/時間)を表している。また、吐出量測定時の最大値Omaxと最小値Ominについて、平均吐出量を100(%)とした場合(表6中、P)の百分率で表わし、Pとの差も表している。
【0194】
【表7】
Figure 0003678221
【0195】
なお、表7では、未延伸フィルム製造開始時から終了時までに亘り、レーザードップラー速度計を用いて連続的に測定したキャスティングロールの回転速度の平均値(m/秒)を表している。また、この回転速度測定時の最大値Qmaxと最小値Qminについて、平均回転速度を100(%)とした場合(表7中、R)の百分率で表わし、Rとの差も表している。
【0196】
【表8】
Figure 0003678221
【0197】
【表9】
Figure 0003678221
【0198】
【表10】
Figure 0003678221
【0199】
なお、表10中、「長さ方向」は、フィルムロールに巻回されたフィルムの長さ方向を、「直交方向」は、該長さ方向に直交する方向を意味する。
【0200】
【表11】
Figure 0003678221
【0201】
【表12】
Figure 0003678221
【0202】
【発明の効果】
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムロールは、該ロールに巻回された長尺フィルムにおいて、長さ方向での厚み変動が少ないため、加工工程でのシワの発生や、ラベルなどに加工後、該ラベルを容器などに装着する際の不良などのトラブルの発生が極めて少ない。また、本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムロールの製造方法は、加工性に優れた長尺フィルムを容易に得ることができるので、工業生産上において非常に有用なものである。

Claims (5)

  1. 長さ1000〜6000mの熱収縮性ポリエステル系フィルムを巻き取ってなるフィルムロールであって、
    この熱収縮性ポリエステル系フィルムは、エチレンテレフタレートユニットを主たる構成成分とし、さらに多価アルコール類として1,3−プロパンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,4−ブタンジオール及びネオペンチルグリコールから選択される少なくとも1種の多価アルコール類を含むものであり
    しかも上記熱収縮性ポリエステル系フィルムロールは、
    (1)フィルムの長さ方向にフィルム物性が安定している定常領域におけるフィルムの巻き始め側の端部を第1端部、巻き終わり側の端部を第2端部とし、前記第2端部の内側2m以内の箇所に1番目の試料切り出し部を、また、前記第1端部の内側2m以内の箇所に最終の試料切り出し部を設けると共に、1番目の試料切り出し部から約100m毎に試料切り出し部を設け、夫々の試料切り出し部から10cm×10cmの正方形状に切り出した試料を、85℃の温水中に10秒浸漬して引き上げ、次いで25℃の水中に10秒浸漬して引き上げたときの最大収縮方向の熱収縮率が、全ての試料について20%以上であり、
    (2)また上記夫々の試料切り出し部から切り出された各試料について、最大収縮方向についての最大熱収縮応力値を、温度90℃、吹き出し速度5m/秒中、試料幅20mm、チャック間距離100mmの条件で測定し、全ての試料の最大熱収縮応力値の平均値を算出したとき、当該平均値が4.0MPa以上であり、且つ各試料の最大熱収縮応力値が該平均値±1.0MPa以内の範囲に収まっており、
    (3)さらに上記試料切り出し部毎にフィルムの長さ方向の長さが50cm、幅が5cmの試験片を複数採取し、該試験片について、前記長さ方向における厚み変位測定を行ったとき、全ての試料切り出し部において、下式(1)で規定される厚み変動が、10%以下であり、
    (4)加えて上記各試料切り出し部から採取した、フィルムの長さ方向に直交する方向の長さが20cm、幅が5cmの複数の試験片について、該試験片の長さ方向の厚み変位を測定したとき、各試料切り出し部において、下式(1)で規定される厚み変動が、3.8%以下であることを特徴とする熱収縮性ポリエステル系フィルムロール。
    厚み変動=[(最大厚み−最小厚み)/平均厚み]×100 (1)
  2. 上記熱収縮性ポリエステル系フィルムが、2種以上の異なるポリマーの混合物から形成されているものである請求項1に記載の熱収縮性ポリエステル系フィルムロール。
  3. 上記熱収縮性ポリエステル系フィルムは、幅0.2m以上である請求項1又は2に記載の熱収縮性ポリエステル系フィルムロール。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の熱収縮性ポリエステル系フィルムロールを用いることを特徴とする熱収縮性ポリエステル系ラベルの製造方法。
  5. 請求項1〜3のいずれかに記載の熱収縮性ポリエステル系フィルムロールに印刷し、スリット加工した後、左右端部を重ね合わせてシールしてチューブ状体にし、次いで裁断する熱収縮性ポリエステル系ラベルの製造方法。
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