JP3678220B2 - 熱収縮性ポリエステル系フィルムロール - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は熱収縮性ポリエステル系フィルムを巻き取ってなるフィルムロールに関する。さらに詳しくは、実質的にフィルム全長に亘って均一な組成を示す熱収縮性ポリエステル系フィルムが巻回されたロールであって、さらに、熱収縮性フィルムロール内での耐破れ性の変動により発生する後加工の工程での破断等のトラブルが極めて少ない熱収縮性フィルムロールに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、熱収縮性フィルムは加熱により収縮する性質を利用して、収縮包装、収縮ラベル等の用途に広く用いられている。なかでも、ポリエステル系の延伸フィルムは、ポリエチレンテレフタレート(PET)容器、ポリエチレン容器、ガラス容器等の各種容器において、ラベルやキャップシールあるいは集積包装の目的で使用されている。
【0003】
これらの熱収縮性フィルムは、製造後、一旦ロール状に巻き取られ、このフィルムロールの形態で、各種図柄の印刷工程へ送られ、印刷終了後は、必要に応じて、最終製品に用いられるラベル等のサイズに合わせてスリット加工され、さらに溶剤接着等の手段によりフィルムの左右端部を重ね合わせてシールしてチューブ状体にされ、このチューブ状体が裁断されて、ラベル、袋等の形態に加工される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者等は、1本のロールに巻回された長尺フィルムにおいて、フィルム全長に亘って熱収縮挙動や溶剤接着挙動等が変動しないようにするため鋭意検討した結果、フィルムの組成変動を極力抑制することと、延伸工程におけるフィルム表面温度を厳密に制御することが重要であることを見出し、既に出願した(特願2002−123728号(特開2003−170494号公報))。
【0005】
しかし、上記出願に開示された手段を採用しても、原料のポリエステルが非晶化度合いを高めるためのユニットを多く含む場合に、印刷、スリット、溶剤接着等の加工工程においてフィルムが破断してしまうトラブルが起きることがあった。これは、フィルムロール内において、フィルムの耐破れ性が変動しているためであると考えられる。
【0006】
そこで本発明では、上記各工程におけるトラブルの発生を低減するため、ロール内におけるフィルムの耐破れ性の変動の小さい熱収縮性ポリエステル系フィルムロールの提供を課題とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、熱収縮性ポリエステル系フィルムを巻取ってなるフィルムロールであって、この熱収縮性ポリエステル系フィルムは、その原料ポリマーが、主たる構成ユニットとは別の副次的構成ユニットを1種類以上含むものであり、
フィルムの長さ方向にフィルム物性が安定している定常領域におけるフィルムの巻き始め側の端部を第1端部、巻き終わり側の端部を第2端部としたとき、上記第2端部の内側2m以内に1番目の試料切り出し部を、また、上記第1端部の内側2m以内に最終の切り出し部を設けると共に、1番目の試料切り出し部から約100m毎に試料切り出し部を設け、それぞれの試料切り出し部から10cm×10cmの正方形状に切り出した試料を、85℃の温水中に10秒浸漬して引き上げ、次いで25℃の水中に10秒浸漬して引き上げたときの最大収縮方向の熱収縮率が、全ての試料について20%以上であり、
上記各試料切り出し部から別途切り出された熱収縮性フィルム試験片を複数作成し、該試験片について、フィルムの最大収縮方向と直交する方向での引張試験を、チャック間距離100mm、試験片幅15mm、温度23℃、引張速度200mm/分の条件で行ったとき、各試料切り出し部において、破断伸度5%以下の試験片数が、それぞれの試料切り出し部の全試験片数の10%以下であるところに要旨を有する。
【0008】
このような特性を有するフィルムロールは、フィルム全長に亘って優れた耐破れ性を示すことがわかる。以下、全試験片数に対する破断伸度5%以下の試験片数を百分率で表した数値を、単に「破断率」という場合がある。
【0009】
上記主たる構成ユニットがエチレンテレフタレートユニットであり、上記副次的構成ユニットが、ネオペンチルグリコールとテレフタル酸からなるユニット、1,4−シクロヘキサンジメタノールとテレフタル酸からなるユニット、1,4−ブタンジオールとテレフタル酸からなるユニットのいずれか1種以上であることが好ましい。このようなポリエステルの組み合わせを採用すると、破断率の変動が大きくなる可能性があるが、本発明によればこの変動を抑制することができる。また、熱収縮特性も良好となるため、本発明における好ましい実施態様である。
【0010】
また、上記各試料切り出し部から適宜切り出された各試料について、最大収縮方向についての最大熱収縮応力値を、温度90℃、吹き出し速度5m/秒の熱風中、試料幅20mm、チャック間距離100mmの条件で測定したとき、全ての試料の最大熱収縮応力値が3.0MPa以上であり、これらの最大熱収縮応力値の平均値を算出したときに、全ての試料の最大熱収縮応力値がこの平均値の±1.0MPa以内の範囲に収まっていることが好ましい。上記の特性を有する熱収縮性フィルムロールは、フィルムの定常領域全長に亘って、優れた収縮仕上がり性を有し、熱収縮工程において、個々のラベルや袋等の最大熱収縮応力値の変動が少ないため、極めて安定した収縮仕上がり外観を得ることができ、製品不良を低減することができる。
【0011】
また本発明のフィルムロールには、幅0.2m以上、長さ300m以上の熱収縮性ポリエステル系フィルムが巻き取られていることが好ましい。上記幅および長さを有するフィルムは、本発明を適用しないとフィルムの破断率の変動が起こり易く、本発明を適用する意義があるからである。また、印刷工程や最終製品までの加工工程における加工適性およびハンドリング性において優れている。
【0012】
上記本発明の破断率の変動の小さい熱収縮性ポリエステル系フィルムロールを得るための好ましい製造方法は、原料のポリエステルの極限粘度を0.5〜1.3dl/gの範囲とし、かつ、原料のポリエステルの極限粘度Xと、得られたフィルムの極限粘度Yとの差X−Yが、0.08dl/g以下となるように制御するところに要旨を有する。押出工程中に熱分解や加水分解が起こって原料のポリエステルの極限粘度が低下すると、得られるフィルムの破断率が変動してしまうが、上記要件を満足するように制御して押出工程を行えば、破断率の変動を抑制することができる。
【0013】
極限粘度の低下抑制のためには、水分率が100ppm以下のポリエステルを原料として用いることが好ましい。また、酸化防止剤の配合も好ましい手段である。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明者等は、前記熱収縮性ポリエステル系フィルムからラベルや袋等を製造する工程や、熱収縮工程で起きる種々の不具合について検討した結果、これらの不良は、フィルムの原料ポリマーがホモポリマーではなく、共重合やブレンドによって得られる主たる構成ユニット以外に副次的な構成ユニットを含むポリマーの場合に発生し易いことを見出した。すなわち、長尺フィルムにおいてポリマーの組成変動が発生し、これが熱収縮挙動の変動の一要因になっていると考えられた。
【0015】
そして、特定の手段を用いて製造された熱収縮性ポリエステル系フィルムロールであれば、組成変動や熱収縮挙動の変動が小さく、上記の不具合を起こさないことを見出し、既に出願した(特願2002-123728号;以下、「先願」という)。この先願に開示されているフィルムロール全長に亘って組成変動を極力抑制する手法は以下の通りである。
【0016】
[組成変動抑制手段]
▲1▼チップ形状の均一化
組成の異なるポリエステルチップをブレンドして使用するときに、原料ポリエステルのチップの形状を揃える。これにより、ホッパ内での原料偏析が抑制される。具体的には、断面が楕円形の楕円柱状チップにおいて、使用量の最も多いポリマーの原料チップの断面楕円の平均長径(mm)、平均短径(mm)および平均チップ長さ(mm)に対して、他のチップの平均長径(mm)、平均短径(mm)および平均チップ長さ(mm)が、それぞれ±20%以内、より好ましくは±15%以内の範囲にあるチップを用いる。
【0017】
▲2▼ホッパ形状の適正化
押出機の漏斗状ホッパ、特に最終ホッパ(押出機直上/直前のホッパ)の傾斜角を65゜以上にする。大きいチップも小さいチップと同様に落下しやすくなって原料偏析が抑制できる。より好ましい傾斜角は70°以上である。
【0018】
▲3▼ホッパ容量の適正化
押出機の1時間当たりの吐出量の15〜120質量%の範囲内のホッパを用いる。原料の安定供給が可能で、かつ長時間チップが堆積しない大きさのホッパが適しているからである。より好ましいホッパの容量は押出機の1時間当たりの吐出量の20〜100質量%である。
【0019】
▲4▼微粉体量の低減
チップの削れ等によって発生する微粉体量を原料100質量%中1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下に低減させる。具体的には、篩、サイクロン式エアフィルタ等を利用して微粉体を除去すればよい。
【0020】
上記▲1▼〜▲4▼の各手法によって組成変動が抑制されることにより、熱収縮挙動もかなり高度に均一化されるが、さらに、延伸時の予備加熱工程、延伸工程および延伸後の熱処理工程の各工程で、それぞれの任意ポイントにおいて測定されるフィルムの表面温度の変動幅を、平均温度±1℃以内に制御すると、フィルムの熱収縮挙動の変動を一層抑制することができる。このように制御するには、例えば、テンターの熱風の風速を制御できるようにインバーターを取り付けた風速変動抑制設備を用いたり、熱源に500kPa以下(5kgf/cm2以下)の低圧蒸気を使用して熱風の温度変動を抑制できる設備等を用いるとよい。
【0021】
そして上記先願では、1本のロールに巻回された長尺フィルムの全長に亘って組成変動が抑制されているかどうかを、次の各要件を満足するか否かで判断した。
(1)フィルム全長に亘って一定間隔で設けられた試料切り出し部から切り出された各試料の最大熱収縮方向の熱収縮率(詳細は後述する)が全ての試料について20%以上である、
(2)上記試料切り出し部から切り出された各試料について、副次的構成ユニットのうち最も多量に含まれる最多副次的構成ユニットの含有率を測定したときに、全ての試料の最多副次的構成ユニットの含有率が全構成ユニット100モル%中7モル%以上であると共に、これらの平均値を算出したときに、全ての試料の最多副次的構成ユニットの含有率がこの平均値の±2モル%以内の範囲に収まっている、
(3)上記試料切り出し部から切り出された各試料について、副次的構成ユニットのうち2番目に多量に含まれる第2副次的構成ユニットの含有率を測定したときに、全ての試料の第2副次的構成ユニットの含有率が全構成ユニット100モル%中5モル%以上であると共に、これらの平均値を算出したときに、全ての試料の第2副次的構成ユニットの含有率がこの平均値の±2モル%以内の範囲に収まっている、
(4)フィルムロールから1,3−ジオキソランで溶剤接着してチューブを作り(詳細は先願参照)、一定間隔の試料切り出し部から切り出された各試料について溶剤接着強度を測定したときに、全ての試料の溶剤接着強度が1N/15mm幅以上であると共に、これらの平均値を算出したとき、全試料の溶剤接着強度がこの平均値の±2N/15mm幅以内の範囲に収まっている、
(5)要件(1)に記載の試料切り出し部から適宜切り出された各試料についてガラス転移温度を測定し、ガラス転移温度の平均値を算出したときに、全ての試料のガラス転移温度がこの平均値の±4℃以内の範囲に収まっている。
【0022】
また同じく上記先願では、組成変動に加えて、さらに熱収縮挙動の変動をも抑制されているかどうかを、次の各要件を満足するか否かで判断した。
(6)要件(1)に記載の試料切り出し部から適宜切り出された各試料について、最大収縮方向の熱収縮率の平均値を算出したとき、全ての試料の熱収縮率が、この平均値の±5%以内の範囲に収まっている、
(7)要件(1)に記載の各試料切り出し部から適宜切り出された各試料について、最大収縮方向についての最大熱収縮応力値(詳細は後述)を測定したとき、全ての試料の最大熱収縮応力値が3.0MPa以上であり、これらの最大熱収縮応力値の平均値を算出したときに、全ての試料の最大熱収縮応力値がこの平均値の±1.0MPa以内の範囲に収まっている、
(8)要件(1)に記載の各試料切り出し部から切り出された各試料について、最大収縮方向に直交する方向の熱収縮率を測定したときに、全ての試料の直交方向の熱収縮率が7%以下であり、これらの直交方向熱収縮率の平均値を算出したときに、全ての試料の直交方向熱収縮率がこの平均値の±2%以内の範囲に収まっている。
【0023】
上記要件(1)〜(8)の全ての要件を満足する熱収縮性ポリエステル系フィルムロールは、フィルム全長に亘って組成変動が小さく、熱収縮挙動の変動も小さい。従って、優れた収縮仕上がり性を有し、収縮斑、シワ、歪みが少ない収縮仕上がり外観を得ることができ、また美麗な光沢感や透明性を得ることができる。
【0024】
一方、本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムロールは、上記先願と同じ手法を採用して、組成および熱収縮挙動の変動が小さいものであることが前提である。そして本発明は、さらに、耐破れ性の変動を小さくすることを目的としてなされたものである。以下、本発明を詳細に説明する。
【0025】
まず、本発明のフィルムロールに巻回されている熱収縮性ポリエステル系フィルムは、下記要件(A)を満足するものでなければならない。
(A)上記フィルムの長さ方向にフィルム物性が安定している定常領域におけるフィルムの巻き始め側の端部を第1端部、巻き終わり側の端部を第2端部としたとき、上記第2端部からその内側2m以内に1番目の試料切り出し部を、また、上記第1端部からその内側2m以内に最終の切り出し部を設けると共に、1番目の試料切り出し部から約100m毎に試料切り出し部を設け、それぞれ10cm×10cmの正方形状に切り出した試料を85℃の温水中に10秒浸漬して引き上げ、次いで25℃の水中に10秒浸漬して引き上げたときの最大収縮方向の熱収縮率が、全ての試料について20%以上である。
【0026】
この要件(A)は、上記先願の要件(1)と同じである。熱収縮性フィルムとしては、85℃で20%以上収縮することができなければならないため、必須要件とした。
【0027】
上記要件(A)の「フィルムの長さ方向にフィルム物性が安定している定常領域」の意味について説明する。「フィルムの長さ方向にフィルム物性が安定している定常領域」とは、フィルム製造時に製膜工程や延伸工程が安定して行われて、フィルム物性がほぼ均一状態を示す領域である。本発明では、製膜工程や延伸工程が安定した定常状態で運転されているときに得られた長尺フィルムにおいて、耐破れ性やその他の特性を、従来レベルよりも高度に均一化することを技術思想としている。実操業上は、フィルム製造中に、フィルムの組成が原料供給方法や製膜条件によって変動することがあるが、本発明では、原料供給量や製膜条件が不安定なときに得られたフィルムにまで均一化を要求するものではない。このため、均一化を要求する特性を評価するときのサンプリングは、製膜工程や延伸工程が安定した定常状態で運転されている領域、すなわち「定常領域」においてのみ行うことを前提条件とした。
【0028】
従って、例えば、ロールの巻き始めから10m程度が定常運転されていない時のフィルムであれば、この部分からはサンプリングせず、巻き始めから10m目をフィルムの第1端部としてサンプリングする。
【0029】
前記定常領域(定常運転領域)の数は、通常、一本のフィルムロール当たり1箇所(フィルムロール全体に亘って1箇所)である。ただし、製造状況によっては複数箇所に存在するような場合もあり得るので、この場合は定常領域のみからサンプリングする。前記定常領域は、例えば、後述する方法でフィルムの最大収縮方向の熱収縮率を測定することによって評価できる。すなわち、熱収縮率が20%程度以内の幅(複数のサンプルの熱収縮率の最大値と最小値との差が20%程度以内)となっているところを定常領域であると見ればよい。
【0030】
続いて、サンプリングの方法を説明する。1本のロールに巻かれていたフィルムについて、上記定常領域におけるフィルムの巻き始め側の端部を第1端部、巻き終わり側の端部を第2端部としたとき、上記第2端部からその内側2m以内に1番目の試料切り出し部を、また、上記第1端部からその内側2m以内に最終の切り出し部を設けると共に、1番目の試料切り出し部から約100m毎に試料切り出し部を設けることにより、フィルムの定常領域の全長に亘って略等間隔に試料を選択する。なお、「約100m毎」というのは、100m±1m程度のところで試料を切り出しても構わないという意味である。
【0031】
上記サンプリング方法をより詳細に説明する。例えば、全長が定常領域で、長さが498mの熱収縮性フィルムがロールに巻回されている場合、フィルムの巻き終わり(第2端部)から2m以内までの間で、最初の試料▲1▼を切り取る。切り取る面積は測定する物性値に応じて適宜設定される。続いて、最初の試料▲1▼を切り取ったところから約100m離れたところで、2番目の試料▲2▼を切り取る。同様にして、約200m目で3番目の試料▲3▼を、約300m目で4番目の試料▲4▼を、約400m目で5番目の試料▲5▼を切り取る。ここで、残りは100mよりも短くなるため、6番目(最終)の試料▲6▼はフィルムの巻き始め(第1端部)から2m以内のいずれかの部分を切り取る。
【0032】
本発明の前記要件(A)は、このようにして切り取った全ての試料の最大収縮方向の熱収縮率が、20%以上というものである。熱収縮性ポリエステル系フィルムの熱収縮率が20%未満であると、フィルムの熱収縮力が不足して、容器等に被覆収縮させたときに、容器に密着せず、外観不良が発生するため好ましくない。より好ましい熱収縮率は40%以上、さらに好ましくは60%以上である。
【0033】
ここで、最大収縮方向の熱収縮率とは、試料の最も多く収縮した方向での熱収縮率の意味であり、最大収縮方向は、切り取った正方形の試料の縦方向または横方向の長さで決められる。また、熱収縮率(%)は、10cm×10cmの試料を、85℃±0.5℃の温水中に、無荷重状態で10秒間浸漬して熱収縮させた後、25℃±0.5℃の水中に無荷重状態で10秒間浸漬した後の、フィルムの縦および横方向の長さを測定し、下記式に従って求めた値である(以下、この条件で測定した最大収縮方向の熱収縮率を、単に「熱収縮率」と省略する)。
熱収縮率=100×(収縮前の長さ−収縮後の長さ)÷(収縮前の長さ)
【0034】
また、本発明の熱収縮性フィルムロールに巻回されているフィルムは、破断率が、上記したフィルムの定常領域全長に亘って小さいものでなければならない。すなわち、一定条件で選択された複数の熱収縮性フィルム試験片について、チャック間距離100mm、試験片幅15mm、温度23℃、引張速度200mm/分の条件で引張試験を行ったとき、破断伸度5%以下の試験片数が、試験片を採取したフィルムの各箇所において、各箇所毎の全試験片数の10%以下でなければならない。なお、この試験条件はJIS K 7127に準じたものである。
【0035】
上記破断率は、1本のロールに巻かれていたフィルムについて、熱収縮率測定の際と同様にして、フィルムの定常領域全長に亘って略等間隔に試験片を選択して求める。そして、切り取られた各試料から、最大収縮方向と直交する方向の長さが200mm、幅15mmの試験片を複数作成し、上記条件で引張試験を行う。この際に、破断伸度が5%以下の試験片数を各切り出し部毎に数え、これを各切り出し部毎の試験片総数に対する百分率とし、上記破断率を算出する。
【0036】
本発明で規定する破断率は、換言すれば、5%も伸びないうちに破断してしまう試験片が、いずれの試験片採取箇所(切り出し部)においても、全試験片数の10%(1割)以下である、という意味である。破断伸度5%以下の試験片数は少なければ少ないほど好ましく、全試験片数の5%以下がより好ましく、0%であれば最も好ましい。
【0037】
前記条件を満足するフィルムは、最も裂け易いポリマー分子の配列方向(すなわち最大収縮方向)と直交する方向における耐破れ性に優れているため、印刷やチュービング加工の際にフィルムの破断によるロスを低減することができ、また、高速加工が可能となる。破断率を低減させるための好ましい手段については後述する。
【0038】
本発明の熱収縮性フィルムロールは、上記熱収縮率や破断率測定のための各切り出し部と同じ箇所から試料を準備し、以下の方法に従って最大熱収縮応力値の測定を行ったとき、全ての試料の最大熱収縮応力値が3.0MPa以上であり、これらの最大熱収縮応力値の平均値を算出したときに、全ての試料の最大熱収縮応力値がこの平均値の±1.0MPa以内の範囲に収まっていることが好ましい。この要件は、前記先願の要件(7)と同じである。なお最大熱収縮応力値は、以下のようにして測定する。
【0039】
(1)熱収縮性フィルムの上記破断率測定における各切り出し部から、最大収縮方向の長さが200mm、幅20mmの試験片を切り出す。
【0040】
(2)熱風式加熱炉を備えた引張試験機(例えば、東洋精機製「テンシロン」)の加熱炉内を90℃に加熱する。
【0041】
(3)送風を止め、加熱炉内に試験片をセットする。チャック間距離は100mm(一定)とする。
【0042】
(4)加熱炉の扉を速やかに閉めて、送風(温度90℃、吹き出し速度5m/秒の熱風を、奥、左および右の三方向から供給)を再開し、熱収縮応力値を検出・測定する。
【0043】
(5)チャートから最大値を読み取り、これを最大熱収縮応力値(MPa)とする。
【0044】
そして、切り取られた各試験片の最大熱収縮応力値の測定結果から、最大熱収縮応力値の平均値を算出する。フィルムの最大熱収縮応力値が3.0MPa未満では、フィルムの収縮応力不足による外観不良が発生し、フィルムの機械的強度の不足により、耐破れ性悪化の問題が発生するため好ましくない。最大熱収縮応力値のより好ましい下限は3.5MPa、さらに好ましい下限は4.0MPaである。
【0045】
また、上記のように測定された最大熱収縮応力値から、平均値を算出し、長尺フィルムの最大熱収縮応力値の変動を求める。平均最大熱収縮応力値がP(MPa)で、試験片▲1▼(試験番号については、熱収縮率測定用試験片で上述した各切り出し部の試料番号に対応する。以下同じ。)の最大熱収縮応力値をQ1(MPa)とすると、|P−Q1|(P−Q1の絶対値)が1.0MPa以下で、試験片▲2▼〜▲6▼についての最大熱収縮応力値Q2〜Q6(MPa)においても同様に、|P−Qn|がいずれも1.0MPa以下であることが、最大熱収縮応力値の平均値±1.0MPaの意味である。換言すれば、Qnの最大値QmaxとPとの差と、最小値QminとPとの差のいずれもが±1.0MPa以内であれば、本発明の好ましい要件を満足する。
【0046】
フィルムロール内での最大熱収縮応力値の変動幅が、平均値±0.5MPa以上±1.0MPa以内の場合には、被覆収縮させる工程での調整により不良率を低減させることができる。さらに最大熱収縮応力値の変動が平均値±0.5MPa未満の場合には、工程調整も不要となり、収縮仕上がり性が非常に優れたラベル、袋等が得られる。この最大熱収縮応力値変動は、最大熱収縮応力値の平均値±0.4MPa以内の範囲であるとさらに好ましい。
【0047】
なお、最大熱収縮応力値の平均値自体は、4.0MPa以上が好ましい。フィルムの最大熱収縮応力値の平均値が4.0MPa未満であると、フィルムの収縮応力不足による外観不良が発生すると共に、フィルムの機械的強度の不足によって耐破れ性悪化の問題が発生するため好ましくない。本発明に係るフィルムの最大収縮方向の最大熱収縮応力値の平均値は、好ましくは4.5MPa以上であり、より好ましくは5.0MPa以上である。
【0048】
熱収縮性フィルムは、前述したようにラベルや袋状に加工された後、これらを容器に装着し、スチームを吹きつけて熱収縮させるタイプの収縮トンネル(スチームトンネル)や、熱風を吹きつけて熱収縮させるタイプの収縮トンネル(熱風トンネル)の内部を、ベルトコンベアー等にのせて通過させ、熱収縮させて容器に密着させている。
【0049】
この熱収縮工程において、前記のラベルや袋等の単位において1個1個の最大熱収縮応力値の変動が大きいと、トンネル内の加熱条件は同じであるため、ある適正な最大熱収縮応力値を示さないラベルや袋等が発生することもあり、これらは収縮不足、収縮斑、シワ、図柄の歪み、収縮時のラベル位置のズレ、タテヒケ等による外観不良を起すため、最終製品とすることができなくなる場合がある。通常は、1本のフィルムロールから、同一の最終製品用ラベル、袋等を加工するので、1本のフィルムロールに巻かれたフィルムの最大熱収縮応力値の変動が大きい場合には、このような熱収縮工程での不良率が増大する問題があった。
【0050】
しかしながら、上記のように1本の熱収縮性フィルムロールの最大熱収縮応力値の変動を小さくすることで、1個、1個のラベル、袋等の最大熱収縮応力値の変動が小さくなるため、被覆収縮させる工程での不良も低減し、製品の不良率を激減させることができる。また、フィルムロールが、この最大熱収縮応力値の変動幅の要件を満足していれば、前記した先願の要件(1)〜(8)の全てを満足しているといえる。
【0051】
次に、全長に亘って均一な破断率を示す長尺フィルムの好ましい製造方法を説明する。本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムロールは、公知の多価カルボン酸成分と、多価アルコール成分から形成されるエステルユニットを主たる構成ユニットとする単一の共重合ポリエステル、あるいは2以上のポリエステルの混合物を用いて得られる熱収縮性ポリエステル系フィルムを巻き取ってなるフィルムロールである。
【0052】
この熱収縮性ポリエステル系フィルムロールを構成するフィルムは、その原料ポリマーが、主たる構成ユニットとは別の副次的構成ユニットを1種類以上含むものであることが要件となっている。これは、破断率(耐破れ性)の変動が、熱収縮性ポリエステル系フィルムが強度や耐熱性を担う結晶性の主たる構成ユニットと熱収縮特性を担う副次的構成ユニット1種以上とからなる場合に顕著に認められるからであり、同時に、良好な熱収縮特性を発揮させるためには、非晶度を高めるための副次的構成ユニットが必要だからである。そして、このような原料ポリエステルを、主たる構成ユニットの結晶部分の溶融温度に合わせてフィルムの押出を行うと、主たる構成ユニットよりも耐熱性の低い副次的構成ユニットが溶融押出時に熱履歴を受け、熱分解や加水分解を起こす。本発明は、この熱分解や加水分解を低減させることによって、フィルムロール内の破断率の変動を小さくすることを目的とするのであるから、本発明の対象となる原料ポリエステルは、主たる構成ユニットとは別の副次的構成ユニットを1種類以上含むものであることを要件とした。
【0053】
具体的には、フィルムの耐破れ性、強度、耐熱性等を考慮すれば、エチレングリコールとテレフタル酸(あるいはジメチルエステル)からなる結晶性のエチレンテレフタレートユニットを主たる構成ユニットとすることが好ましく、構成ユニット100モル%中、エチレンテレフタレートユニットが50モル%以上となるように選択することが推奨される。エチレンテレフタレートユニットは、55モル%以上がより好ましく、60モル%以上がさらに好ましい。ただし、副次的構成ユニットの量が少なくなると熱収縮特性が低下するため、80モル%以下が好ましく、70モル%以下がさらに好ましい。
【0054】
そして、1,4−シクロヘキサンジメタノールとテレフタル酸からなるユニット、ネオペンチルグリコールとテレフタル酸からなるユニット、1,4−ブタンジオールとテレフタル酸からなるユニットのいずれか1種以上を、副次的構成ユニットとして用いることが好ましい。1,4−シクロヘキサンジメタノールとテレフタル酸からなるユニットとネオペンチルグリコールとテレフタル酸からなるユニットはポリエステルの非晶化度合いを高め、熱収縮率や最大熱収縮応力値を高める。また、1,4−ブタンジオールとテレフタル酸からなるユニットは、ポリエステル全体のTgを下げるため、低温での熱収縮性を発揮させるために有効である。これらの副次的構成ユニットは合計で、構成ユニット100モル%、5モル%以上、好ましくは10モル%以上、さらに好ましくは15モル%以上とすることが望ましい。非晶性向上成分を導入することで、フィルムの溶剤接着性や熱収縮性を確保することが可能となる。
【0055】
また、本発明のポリエステル系フィルムの原料ポリエステルには、さらに、別のユニットが含まれていても良い。別のユニットを構成する多価カルボン酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレン−1,4−もしくは−2,6−ジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸;ダイマー酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、シュウ酸、コハク酸等の脂肪族ジカルボン酸;これらのジアルキルエステル、ジアリールエステル、酸ハライド等の誘導体等が挙げられる。その他、p−オキシ安息香酸等のオキシカルボン酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸等の多価カルボン酸を、必要に応じて併用してもよい。
【0056】
別のユニットを構成するための多価アルコール成分としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ダイマージオール、1,3−プロパンジオール、トリエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール等のアルキレングリコール、ビスフェノール化合物またはその誘導体のアルキレンオキサイド付加物、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、ポリオキシテトラメチレングリコール、ポリエチレングリコール等が挙げられる。
【0057】
また、多価アルコール類ではないが、ε−カプロラクトンに代表されるラクトン類も一部使用してよい。ラクトン類は、開環して両端にエステル結合を有するユニットとなるものであり、1つのラクトン類由来のユニットがカルボン酸成分であり、かつ、アルコール成分であると考えることができる。よって、ラクトン類を用いる場合、各多価アルコール成分の量は、フィルムの全多価アルコール成分量に、ラクトン類由来のユニット量を加えた量を100モル%として計算する。また、各多価カルボン酸成分の量を求める場合も、フィルムの全多価カルボン酸成分量に、ラクトン類由来のユニット量を加えたものを100モル%として計算する。
【0058】
主たる構成ユニット以外の副次的構成ユニットをフィルム中に含有させる手法としては、共重合を行ってこの共重合ポリマーを単独使用する方式と、異なる種類のホモポリポリマーあるいは共重合ポリマーをブレンドする方式とがあるが、ブレンド方式では、ブレンド比率を変更するだけでフィルムの物性を容易に変更でき、多品種のフィルムの工業生産にも対応できるため、工業的に好ましい。
【0059】
ポリエステルは常法により溶融重合することによって製造できるが、ジカルボン酸類とグリコール類とを直接反応させ得られたオリゴマーを重縮合する、いわゆる直接重合法、ジカルボン酸のジメチルエステル体とグリコールとをエステル交換反応させたのちに重縮合する、いわゆるエステル交換法等が挙げられ、任意の製造法を適用することができる。また、その他の重合方法によって得られるポリエステルであってもよい。なお、ラクトン類由来のユニットの導入は、例えば、上記の重縮合前にラクトン類を添加して重縮合を行う方法や、上記の重縮合により得られたポリマーとラクトン類を添加して重縮合する方法等により達成できる。
【0060】
ポリエステルには、着色やゲル発生等の不都合を起こさないようにするため、酸化アンチモン、酸化ゲルマニウム、チタン化合物等の重合触媒以外に、酢酸マグネシウム、塩化マグネシウム等のMg塩、酢酸カルシウム、塩化カルシウム等のCa塩、酢酸マンガン、塩化マンガン等のMn塩、塩化亜鉛、酢酸亜鉛等のZn塩、塩化コバルト、酢酸コバルト等のCo塩を、ポリエステルに対して、各々金属イオンとして300ppm(質量基準、以下同じ)以下、リン酸またはリン酸トリメチルエステル、リン酸トリエチルエステル等のリン酸エステル誘導体を燐(P)換算で200ppm以下、添加してもよい。
【0061】
上記重合触媒以外の金属イオンの総量がポリエステルに対し300ppm、またP量が200ppmを超えるとポリマーの着色が顕著になるのみならず、ポリマーの耐熱性や耐加水分解性が著しく低下して、耐破れ性が低下していくため好ましくない。
【0062】
このとき、耐熱性、耐加水分解性等の点で、総P量(P)と総金属イオン量(M)との質量比(P/M)は、0.4〜1.0であることが好ましい。質量比(P/M)が0.4未満または1.0を超える場合には、フィルムが着色したり、フィルム中に粗大粒子が混入することがあるため好ましくない。
【0063】
上記金属イオンおよびリン酸およびその誘導体の添加時期は特に限定しないが、一般的には、金属イオン類は原料仕込み時、すなわちエステル交換前またはエステル化前に、リン酸類は重縮合反応前に添加するのが好ましい。また、必要に応じて、シリカ、二酸化チタン、カオリン、炭酸カルシウム等の微粒子や、紫外線吸収剤、帯電防止剤、着色剤、抗菌剤等を添加してもよい。
【0064】
重合中または重合後あるいは後述する溶融押出時における熱分解や加水分解反応を防止するためには、酸化防止剤、紫外線安定剤等の添加が好ましい。酸化防止剤としては、フェノール系またはアミン系化合物であって、ラジカルの捕捉や連鎖停止作用を有する一次酸化防止剤と、リン系またはイオウ系化合物であって、過酸化物分解作用を有する二次酸化防止剤が挙げられ、これらのいずれも用いることができる。
【0065】
上記酸化防止剤の具体例としては、フェノール類、ビスフェノール類、チオビスフェノール類、ポリフェノール類等のフェノール系酸化防止剤;ジフェニルアミン類、キノリン類等のアミン系酸化防止剤;ホスファイト類、ホスホナイト類等のリン系酸化防止剤;チオジプロピオン酸エステル類等のイオウ系酸化防止剤等が挙げられる。
【0066】
より具体的な化合物を示せば、n−オクタデシル−β−(4’−ヒドロキシ−3,5’−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオネート、テトラキス〔メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕(この化合物は、チバスペシャリティケミカルズ社から商品名「イルガノックス1010」として市販されている)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−S−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン(この化合物は、チバスペシャリティケミカルズ社から商品名「イルガノックス1330」として市販されている)、トリス(ミックスドモノおよび/またはジノニルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタテトライルビス(オクタデシルホスファイト)(この化合物は、旭電化社から商品名「PEP−36」として市販されている)、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニルホスファイト)、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト)、ジラウリルチオジプロピオネート、ジミリスチルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート等が挙げられる。
【0067】
これらの酸化防止剤は単独で使用しても良く、2種以上を併用しても良い。一次酸化防止剤と二次酸化防止剤とを併用することもできる。中でも二次酸化を抑制する酸化防止剤が好ましく、中でもリン系の化合物が特に好ましい。酸化防止剤の好ましい使用量は、押出原料組成物中で0.01〜1質量%である。
【0068】
ポリエステル重合後は、公知のストランドカッター等でチップにすることが好ましい。このとき、原料偏析を防止して組成変動を小さくするために、組成変動抑制手段の▲1▼として前記したチップ形状の均一化手段を採用する必要がある。
【0069】
チップ製造後は、加水分解性に影響を与える水を可及的に取り除いて保存することが好ましい。チップの乾燥時には、熱分解を起こさない程度の温度の除湿空気を使用する等、公知の方法が採用可能である。チップの水分率は100ppm以下が好ましく、50ppmがさらに好ましい。
【0070】
フィルムを製造するには、上記原料チップをホッパドライヤー、パドルドライヤー等の乾燥機、または真空乾燥機を用いて充分に乾燥し、200〜300℃の温度でフィルム状に押し出す。あるいは、未乾燥のポリエステル原料チップをベント式押出機内で水分を除去しながら同様にフィルム状に押し出してもよい。このときの水分率も100ppm以下が好ましく、50ppmがさらに好ましい。また、押出工程においては、前記した組成変動抑制手段の▲2▼〜▲4▼のいずれか1種以上、好ましくは全ての手段を採用する。
【0071】
押出工程では、熱分解や加水分解等によるポリエステルの極限粘度の低下を考慮することが好ましい。極限粘度が低すぎるとフィルムを構成するポリエステルの分子量が低くなるために、熱収縮する際の収縮応力が、収縮時間の経過に従って急激に低下するため、収縮初期に発生した収縮白化や収縮班等の欠点がその後時間が経っても改善されることはなく、収縮仕上がり性や、外観性に劣るものになるからである。また、ポリエステルの分子量の低下は、フィルムの機械的強度や耐破れ性を低下させ、破断率悪化の原因となり、さらには破断率の変動を引き起こす要因となるからである。
【0072】
このような観点から、押出前のポリエステル(原料ポリエステル)の極限粘度は0.5〜1.3dl/gの範囲とし、かつ、原料のポリエステルの極限粘度Xと、得られたフィルムの極限粘度Yとの差X−Yが、0.08dl/g以下となるように制御してフィルムを製造することが好ましい。原料ポリエステルの極限粘度のより好ましい下限は0.6dl/gで、より好ましい上限は1.2dl/gであり、X−Yのより好ましい上限は0.05dl/gである。
【0073】
溶融押出工程での極限粘度の低下を抑制するためには、前記した酸化防止剤、紫外線安定剤等の配合、チップの水分率の低減等の手段の他に、適切な溶融温度でフィルムを押し出すこと、押出機内やTダイ内およびこれらの間の経路で対流を生じさせない構造の押出設備を採用すること等が推奨される。なお、本発明で規定するポリエステルの極限粘度は、後述する実施例において用いる方法により測定される値である。
【0074】
押出に際してはTダイ法、チューブラ法等、既存のどの方法を採用しても構わない。押出後は、キャスティングロールで冷却して未延伸フィルムを得る。なお、「未延伸フィルム」には、製造工程でのフィルム送りのために必要な張力が作用したフィルムも含まれる。
【0075】
上記未延伸フィルムに対して延伸処理を行う。延伸処理は、上記キャスティングロール等による冷却後、連続して行ってもよいし、冷却後、一旦ロール上に巻き取り、その後行ってもよい。
【0076】
本発明の熱収縮性フィルムロールにおいて、最大収縮方向がフィルム横(幅)方向であることが、生産効率上、実用的であるので、以下、最大収縮方向を横方向とする場合の延伸法の例を示す。なお、最大収縮方向をフィルム縦(長手)方向とする場合も、下記方法における延伸方向を90゜変える等、通常の操作に準じて延伸することができる。
【0077】
また、熱収縮性ポリエステル系フィルムの厚み分布を均一化させることに着目すれば、テンター等を用いて横方向に延伸する際、延伸工程に先立って予備加熱工程を行うことが好ましく、この予備加熱工程では、熱伝達係数が0.00544J/cm2・sec・℃(0.0013カロリー/cm2・sec・℃)以下となるように、低風速で、フィルム表面温度がTg+0℃〜Tg+60℃の範囲内のある温度になるまで加熱を行うことが好ましい。
【0078】
横方向の延伸は、Tg−20℃〜Tg+40℃の範囲内の所定温度で、2.3〜7.3倍、好ましくは2.5〜6.0倍に延伸する。その後、60℃〜110℃の範囲内の所定温度で、0〜15%の伸張あるいは0〜15%の緩和をさせながら熱処理し、必要に応じて40℃〜100℃の範囲内の所定温度でさらに熱処理をして、熱収縮性ポリエステル系フィルムを得る。この横延伸工程においては、[組成変動抑制手段]の後に記載したフィルム表面温度の変動を小さくする手段を採用すべきである。
【0079】
延伸の方法としては、テンターでの横1軸延伸ばかりでなく、縦方向に1.0倍〜4.0倍、好ましくは1.1倍〜2.0倍の延伸を施してもよい。このように2軸延伸を行う場合は、逐次2軸延伸、同時2軸延伸のいずれでもよく、必要に応じて、再延伸を行ってもよい。また、逐次2軸延伸においては、延伸の順序として、縦横、横縦、縦横縦、横縦横等のいずれの方式でもよい。これらの縦延伸工程あるいは2軸延伸工程を採用する場合においても、横延伸と同様に、予備加熱工程、延伸工程等において、フィルム表面温度の変動をできるだけ小さくしなければならない。
【0080】
延伸に伴うフィルムの内部発熱を抑制し、幅方向のフィルム温度斑を小さくする点に着目すれば、延伸工程の熱伝達係数は、0.00377J/cm2・sec・℃(0.0009カロリー/cm2・sec・℃)以上とすることが好ましい。0.00544〜0.00837J/cm2・sec・℃(0.0013〜0.0020カロリー/cm2・sec・℃)がより好ましい。
【0081】
本発明における熱収縮性フィルムロールは、幅0.2m以上の熱収縮性フィルムを巻き取りコア(芯)に長さ300m以上巻取ったものであることが好ましい。幅が0.2mに満たないフィルムのロールは、工業的に利用価値の低いものであり、また、長さ300mに満たないフィルムロールは、フィルムの巻長が少ないために、フィルムの全長に亘る破断率および最大熱収縮応力値の変動が小さくなるので、本発明の効果が発現しにくくなる。熱収縮性フィルムロールの幅は0.3m以上がより好ましく、0.4m以上がさらに好ましい。また、ロールに巻回される熱収縮性フィルムの長さは400m以上がより好ましく、500m以上がさらに好ましい。
【0082】
フィルムロールの幅および巻長の上限は特に制限されるものではないが、取扱いのしやすさから、一般的には幅1.5m以下、巻長はフィルム厚み45μmの場合に6000m以下が好ましい。また、巻取りコアとしては、通常、3インチ、6インチ、8インチ等の紙管やプラスチックコア、金属製コアを使用することができる。
【0083】
また、本発明の熱収縮性フィルムロールを構成するフィルムの厚みは特に限定するものではないが、例えばラベル用熱収縮性フィルムとしては、10〜200μmが好ましく、20〜100μmがさらに好ましい。
【0084】
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムロールは、例えばラベルの製造等に用いられ、この際には、溶剤を用いて接着することが好ましい。接着用の溶剤としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、トリメチルベンゼンなどの芳香族炭化水素;塩化メチレン、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素;フェノールなどのフェノール類;テトラヒドロフランなどのフラン類;1,3−ジオキソランなどのオキソラン類;などの有機溶剤が用いられる。中でも、安全性が高い点で、1,3−ジオキソランが望ましい。
【0085】
【実施例】
以下、実施例によって本発明をさらに詳述するが、下記実施例は本発明を制限するものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更実施する場合は、本発明に含まれる。なお、合成例で得られたチップや実施例および比較例で得られたフィルムの物性の測定方法は、以下の通りである。
【0086】
(1)極限粘度
試料(チップまたはフィルム)0.1gを精秤し、25mlのフェノール/テトラクロロエタン=3/2(質量比)の混合溶媒に溶解した後、オストワルド粘度計で30±0.1℃で測定する。極限粘度[η]は、下式(Huggins式)によって求められる。
【0087】
【数1】
Figure 0003678220
【0088】
ここで、ηsp:比粘度、t0:オストワルド粘度計を用いた溶媒の落下時間、t:オスワルド粘度計を用いたフィルム溶液の落下時間、C:フィルム溶液の濃度である。
【0089】
なお、実際の測定では、Huggins式においてk=0.375とした下記近似式で極限粘度を算出した。
【0090】
【数2】
Figure 0003678220
【0091】
ここで、ηr:相対粘度である。
【0092】
(2)定常領域の確認
フィルムロールに巻回されているフィルムの定常領域の確認は、以下のようにして行った。フィルムの巻き終わりから0mの箇所から20m毎に試料切り出し部を5箇所設け、さらに巻き始めから100mの箇所から内側(巻き終わり方向)に20m毎に試料切り出し部を5箇所設ける。各試料切り出し部から、フィルムを走行方向およびその直交方向に沿うように10cm×10cmの正方形に裁断し、試験片を作成した。各試験片を、85℃±0.5℃の温水中に、無荷重状態で10秒間浸漬して熱収縮させた後、25℃±0.5℃の水中に10秒浸漬した後、試料の縦および横方向の長さを測定し、熱収縮率を下記式に従って求めた。
熱収縮率(%)=100×(収縮前の長さ−収縮後の長さ)÷(収縮前の長さ)
【0093】
本実施例・比較例で作製した後記のフィルムロールはいずれも、上記全試験片の最大収縮方向の熱収縮率が20%の幅に入っていた(すなわち、いずれのフィルムロールも、熱収縮率の最大値と最小値の差が20%以下であった)。さらにフィルムの巻き始めから巻き終わりまでの全領域に亘って、製膜工程および延伸工程の条件が安定していた。従って、本実施例・比較例で作製した後記のフィルムロールに巻き取られたフィルムはいずれも、全領域が定常領域に該当する。
【0094】
(3)熱収縮率
上記定常領域の確認で得られた熱収縮率の平均値を示した。
【0095】
(4)耐破れ性(破断率)
JIS K 7127に準じ、熱処理前のフィルムの最大収縮方向と直交する方向についての引張試験を行った。試験片長さ200mm、チャック間距離100mm、試験片幅15mm、温度23℃、引張速度200mm/分の条件で行った。伸度5%以下で破断した試験片数を数え、全試験片数(20個)に対する百分率を求め破断率とした。
【0096】
サンプリング方法:1番目の試料切り出し部は、フィルムの巻き終わり部分(巻き終わりから0m)とした。また、最終の切り出し部は、フィルムの巻き始め部分(巻き始めから0m)とし、全部で11試料を切り出した。なお、試験片は、各試料切り出し部からそれぞれ20個ずつ試料を切り出した。後述する表2における破断率には、各切り出し部の測定結果のうち、最大の破断率を示した。
【0097】
(5)最大熱収縮応力値
加熱炉付引張試験機(東洋精機(株)製「テンシロン」)を用い、熱収縮性フィルムロールから後述するサンプリング方法で、最大収縮方向の長さ200mm、幅20mmのサンプルを切り出し、予め90℃に加熱した加熱炉中の送風をとめて、サンプルの両端からそれぞれ50mmの位置でサンプルをチャックに取付けてチャック間距離が100mmとなるようにし、その後速やかに加熱炉の扉を閉め送風(温度90℃、吹き出し速度5m/秒の熱風を、奥、左および右の三方向から供給)を再開し検出される収縮応力を測定し、チャートから求まる最大値を最大熱収縮応力値(MPa)とした。(3)の破断率の場合と同様にして、全部で11箇所の試料切り出し部から切り出した試料について最大熱収縮応力値を測定すると共に、最大熱収縮応力値の平均値を求めた。
【0098】
後述する表2において、平均値(P)は測定した11試料全ての最大熱収縮応力値の平均値を、最大値(Qmax)は11試料のうちの最大熱収縮応力値の最大値を、最小値(Qmin)は11試料のうち最小の最大熱収縮応力値をそれぞれ示しており、平均値との差も示した。
【0099】
(6)収縮仕上がり性
熱収縮性フィルムロールに巻回されていたフィルム全長に、東洋インキ製造社製の草色、金色、白色のインキで3色印刷した後、フィルムをスリットし、続いて、センターシールマシンを用いて1,3−ジオキソランで溶剤接着してチューブを作り、二つ折り状態で巻き取った。
【0100】
このチューブを適宜長さに裁断して、熱収縮性フィルムラベルを作成し、フジ・アステック社製のスチームトンネル(型式:SH−1500−L)を使用し、1.5Lペットボトルに対し、熱収縮性フィルムラベルを装着して、トンネル通過時間10秒、1ゾーン温度/2ゾーン温度=80℃/90℃の条件で、作成したラベル全量を通過させ、収縮仕上がり性を目視で判定した。なお、収縮仕上がり性は、下記5段階評価で行い、5:仕上がり性最良、4:仕上がり性良、3:欠点少し有り(2ヶ所以内)、2:欠点有り(3〜5ヶ所)、1:欠点多い(6ヶ所以上)、として、4以上を合格レベル、3以下のものを不良とし、下記式に従って収縮仕上がり不良率(%)を求めた。なお、ここで欠点とは、シワ、ラベル端部折れ込み、色斑、収縮不足である。
収縮仕上がり不良率=100×不良サンプル数÷全サンプル数
【0101】
(7)印刷時破断回数(回)
上記収縮仕上がり性評価と同じ方法で、印刷を施したフィルムロールについて、1000m当たりの破断回数を測定した。
【0102】
(8)フィルムの表面温度
予備加熱工程、延伸工程、および延伸後の熱処理工程でのフィルムの表面温度は、赤外式の非接触表面温度計を用いてフィルムの走行方向に連続的に測定し、各工程で得られる温度の平均値を求めた。
【0103】
合成例1(ポリエステルの合成)
撹拌機、温度計および部分還流式冷却器を備えたステンレススチール製オートクレーブに、ジカルボン酸成分(多価カルボン酸成分)としてジメチルテレフタレート(DMT)100モル%と、グリコール成分(多価アルコール成分)として、エチレングリコール(EG)72モル%とネオペンチルグリコール(NPG)28モル%を、グリコールがモル比でメチルエステルの2.2倍になるように仕込み、エステル交換触媒として酢酸亜鉛を0.05モル%(酸成分に対して)と、重縮合触媒として三酸化アンチモン0.025モル%(酸成分に対して)添加し、生成するメタノールを系外へ留去しながらエステル交換反応を行った。その後、280℃で26.7Paの減圧条件の下で重縮合反応を行い、極限粘度0.70dl/gのポリエステルAを得た。
【0104】
重合後に溶融状態で重合装置からストランド状で取り出し、直ちに水冷し、その後、ストランドカッターでカットして、原料チップAを得た。また、カット条件を変えて、少し小さいチップを作成した。これを原料チップBとする。
【0105】
合成例2〜4
合成例1と同様な方法により、表1に示すポリエステル原料チップC〜Eを得た。表1中、BDは、1,4−ブタンジオール、EGはエチレングリコール、CHDMは、1,4−シクロヘキサンジメタノールをそれぞれ意味する。なお、それぞれのポリエステルの極限粘度は、チップCが0.68dl/g、チップDが0.73dl/g、チップEが1.20dl/gであった。
【0106】
【表1】
Figure 0003678220
【0107】
実施例1
上記合成例で得られた各チップを別個に予備乾燥した。各チップの水分率(カールフィッシャー水分計で測定)は表1に示したとおりである。なお、実施例1で用いたチップAの水分率は78ppmであった(表中の200ppmは、比較例2で乾燥不充分だったときの値である)。表1に示したように、チップAを70質量%、チップDを5質量%と、25質量%のチップEを、押出機直上のホッパに、定量スクリューフィーダーで連続的に別々に供給しながら、このホッパ内で混合した。また、別のフィーダーで、旭電化社製の酸化防止剤「PEP−36」を0.2質量%となるように供給した。
【0108】
続いて280℃で単軸式押出機でポリエステルを溶融押出しし、その後急冷して、厚さ180μmの未延伸フィルムを得た。ホッパは、原料チップが150kg入る容量を有しており、押出機の吐出量は、1時間あたり450kgである。また、ホッパの傾斜角は70゜であった。
【0109】
上記未延伸フィルムを100℃で10秒間予熱した後、テンターで横方向に80℃で4.0倍延伸し、続いて80℃で10秒間熱処理を行って、厚さ45μmの熱収縮性ポリエステル系フィルムを1000m以上に亘って連続的に製膜した。フィルムを1000m連続製造したときのフィルム表面温度の変動幅は、予熱工程で平均温度±0.5℃、延伸工程で平均温度±0.5℃、熱処理工程で平均温度±0.5℃の範囲内であった。得られたフィルムを幅0.4m、長さ1000mにスリットして、3インチ紙管に巻き取り、熱収縮性フィルムロールを得た。得られたフィルムロールのフィルムの物性値を表2に示す。なお、表2における「フィルムの極限粘度の理論値」とは、フィルムの製造に用いられた各チップの溶融粘度と各チップの質量分率から、下記式で求めた値である。
[溶融粘度の理論値]=η1×(W1/100)+η2×(W2/100)+…+ηn×(Wn/100)
【0110】
ここで、ηiはあるフィルム製造に用いられたチップiの極限粘度、Wiはチップiの使用量の百分率(%)である。ちなみに、実施例1のフィルムでは、
0.70×(70/100)+0.73×(5/100)+1.20×(25/100)=0.83となる。
【0111】
実施例2
上記合成例で得られた各チップを別個に予備乾燥し、表1に示したように、チップCを62質量%、チップDを18質量%と20質量%のチップEを押出機直上のホッパに定量スクリューフィーダーで連続的に別々に供給しながら、このホッパ内で混合した。また、別のフィーダーで、前記「PEP−36」を0.15質量%と、チバスペシャリティケミカルズ社製の商品名「イルガノックス1010」を0.15質量に供給して混合した。フィルム原料を280℃で単軸式押出機で溶融押出しし、その後急冷して、厚さ180μmの未延伸フィルムを得た。ホッパは、原料チップが100kg入る容量を有しており、押出機の吐出量は、1時間あたり450kgである。また、ホッパの傾斜角は75゜であった。
【0112】
上記未延伸フィルムを80℃で10秒間予熱した後、テンターで横方向に72℃で4.0倍延伸し、続いて76℃で10秒間熱処理を行って、厚さ45μmの熱収縮性ポリエステル系フィルムを1000m以上に亘って連続的に製膜した。フィルムを1000m連続製造したときのフィルム表面温度の変動幅は、予熱工程で平均温度±0.8℃、延伸工程で平均温度±0.5℃、熱処理工程で平均温度±0.6℃の範囲内であった。得られたフィルムを幅0.4m、長さ1000mにスリットして、3インチ紙管に巻き取り、熱収縮性フィルムロールを得た。得られたフィルムロールのフィルムの物性値を表2に示す。
【0113】
比較例1
表1に示した配合、すなわち、チップBを70質量%、チップDを5質量%、チップE25質量%を用いたことと、酸化防止剤を配合しなかったこと以外は実施例1と同様にして押出・製膜・延伸工程を行い、熱収縮性フィルムロールを得た。予備乾燥後の各チップの水分率は表1に示した通りである。チップBの乾燥が不充分であったことがわかる。得られたフィルムロールのフィルムの物性値を表2に示す。
【0114】
比較例2
酸化防止剤を配合しなかったこと以外は実施例1と同様にして押出・製膜・延伸工程を行い、熱収縮性フィルムロールを得た。ただし、予備乾燥後の各チップの水分率は表1に示した通りであり、チップAの乾燥が不充分で実施例1とは異なり200ppmの水分率を示していた。得られたフィルムロールのフィルムの物性値を表2に示す。
【0115】
【表2】
Figure 0003678220
【0116】
表2から明らかなように、チップの乾燥が充分で酸化防止剤も配合した実施例1、2では、破断率、印刷時の破断回数のいずれもが良好であった。一方、チップの乾燥が不充分で酸化防止剤も配合していない比較例1、2では、熱収縮特性は実施例と同様にばらつきが無く良好であったが、破断率、印刷時の破断回数が実施例より明らかに劣っていることがわかる。
【0117】
【発明の効果】
本発明の熱収縮性フィルムロールは、フィルムロールに巻回された長尺フィルムの破断率の変動が少ないため、加工工程における破断トラブルの発生が少なく、さらには最大熱収縮応力値の変動が少ないため、熱収縮工程での収縮不足、収縮斑、シワ、歪み、タテヒケ等の発生による不良の発生が極めて少ない。また、本発明の熱収縮性フィルムロールの製造方法は、加工性に優れた長尺フィルムを容易に得ることができるので、工業生産上において非常に有用なものである。

Claims (4)

  1. 長さ1000〜6000mの熱収縮性ポリエステル系フィルムを巻取ってなるフィルムロールであって、
    この熱収縮性ポリエステル系フィルムは、エチレンテレフタレートユニットを主たる構成ユニットとし、ネオペンチルグリコールとテレフタル酸からなるユニット、1,4−シクロヘキサンジメタノールとテレフタル酸からなるユニット、1,4−ブタンジオールとテレフタル酸からなるユニットのいずれか1種以上を副次的構成ユニットとするものであり、
    しかも上記熱収縮性ポリエステル系フィルムロールは、
    (1)フィルムの長さ方向にフィルム物性が安定している定常領域におけるフィルムの巻き始め側の端部を第1端部、巻き終わり側の端部を第2端部としたとき、上記第2端部の内側2m以内に1番目の試料切り出し部を、また、上記第1端部の内側2m以内に最終の切り出し部を設けると共に、1番目の試料切り出し部から約100m毎に試料切り出し部を設け、それぞれの試料切り出し部から10cm×10cmの正方形状に切り出した試料を、85℃の温水中に10秒浸漬して引き上げ、次いで25℃の水中に10秒浸漬して引き上げたときの最大収縮方向の熱収縮率が、全ての試料について20%以上であり、
    (2)上記各試料切り出し部から適宜切り出された各試料について、最大収縮方向についての最大熱収縮応力値を、温度90℃、吹き出し速度5m/秒の熱風中、試料幅20mm、チャック間距離100mmの条件で測定したとき、全ての試料の最大熱収縮応力値が3.0MPa以上であり、これらの最大熱収縮応力値の平均値を算出したときに、全ての試料の最大熱収縮応力値がこの平均値の±1.0MPa以内の範囲に収まっており、
    (3)上記各試料切り出し部から別途切り出された熱収縮性フィルム試験片を複数作成し、該試験片について、フィルムの最大収縮方向と直交する方向での引張試験を、チャック間距離100mm、試験片幅15mm、温度23℃、引張速度200mm/分の条件で行ったとき、各試料切り出し部において、破断伸度5%以下の試験片数が、それぞれの試料切り出し部の全試験片数の%以下であることを特徴とする熱収縮性ポリエステル系フィルムロール。
  2. 幅0.2m以上の熱収縮性ポリエステル系フィルムが巻き取られている請求項1に記載の熱収縮性ポリエステル系フィルムロール。
  3. 請求項1又は2に記載の熱収縮性ポリエステル系フィルムロールを用いることを特徴とする熱収縮性ポリエステル系ラベルの製造方法。
  4. 請求項1又は2に記載の熱収縮性ポリエステル系フィルムロールに印刷し、スリット加工した後、左右端部を重ね合わせてシールしてチューブ状体にし、次いで裁断する熱収縮性ポリエステル系ラベルの製造方法。
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