JP5001801B2 - ポリエステル系熱収縮性フィルムロール - Google Patents
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Description
これらの熱収縮性フィルムは主としてテンター延伸法によりマスターロールを製膜し、その後任意の幅でスリットしながらロール状に巻き取られ、ロールの形態で主として幅方向に1から4面のグラビア印刷にかけられる。その後、各面の幅にスリットし、ロール状に巻き取られた後、チューブ状に溶剤接着等の手法により、製袋され、またロール状に巻き取られる(ラベルロール)。
製袋品は、その後、被覆物の長さにカットされた後、被覆物に被され、蒸気や熱風を吹き付けて収縮させる収縮トンネルを通過することにより、熱収縮させて被覆物に密着させる。
(1)前記フィルムロールの幅方向の少なくとも一方の端部A1と、該端部A1から前記フィルムロール幅方向の中央に向かって10cmの位置B1とを結んだ直線A1B1の中点C1から前記フィルムロールへ下した垂線の長さL1が1mm以下であり、
(2)前記熱収縮性フィルムを80℃温水中に10秒間浸漬した後の主収縮方向の収縮率が少なくとも20%であることを特徴とするポリエステル系熱収縮性フィルムロールである。
本発明のフィルムロールは、フィルムロールの幅方向の少なくとも一方の端部A1と、該端部A1から前記フィルムロール幅方向の中央に向かって10cmの位置B1とを結んだ直線A1B1の中点C1から前記フィルムロールへ下した垂線の長さL1が1mm以下であることが必要である。
本発明の熱収縮性フィルムロールの耳立ちを上記規定の範囲とする方法について以下に説明する。
1−1 ポリエステル系熱収縮性フィルムロールの製造工程
本発明のフィルムロールは、以下に示す3工程を経て得ることができる。
未延伸フィルムは、ポリエステル系樹脂組成物の樹脂ペレット単体、又は複数の樹脂ペレットを混合し、押出しを行うことにより得ることができる。ペレット形成、溶融押出に関しては、公知の従来技術と同様な手法にて行うことが可能であり、例えば、原料となる前記樹脂組成物をあらかじめ200〜300℃の温度で溶融押出し、カッティングしてペレット状とし、次いで該ペレット状樹脂組成物を200〜300℃の温度で溶融押出すことができる。
押出方法としては、特に限定されず、Tダイ法、チューブラー法等を用いることができる。一例として、図3の左側には、押出機31、Tダイ32、及びキャスティングロール33がこの順に配置されたフィルムの製造装置例が示されている。Tダイ法の場合には、押出後、表面温度が15〜80℃のキャスティングロール上で急冷し、厚さ30〜300μmの未延伸フィルムを形成することができる。
その後、未延伸フィルムに温調ロールや赤外線ヒータなどで熱を与えつつロール周速差をもって縦延伸を行なう(図3においてAで示される範囲)。縦延伸ロールを使用し、未延伸フィルムを、ロール温度60〜120℃、好ましくは60〜80℃、延伸倍率1.0〜1.3倍、好ましくは1.0〜1.1倍の条件で延伸した縦延伸フィルムを得る。
なお、本明細書において「縦方向」はフィルムロールの長手方向、「横方向」はフィルムロールの幅方向と同義であり、「縦延伸」とは、フィルムロールの長手方向(熱収縮性フィルムの流れ方向)の延伸を、「横延伸」とは、フィルムロールの幅方向(熱収縮性フィルムの流れ方向の垂直方向)の延伸をそれぞれ意味する。
縦延伸工程にて得られたフィルムを、テンター装置34(図3参照)により、テンター延伸法を用いて延伸することによって横延伸フィルムを得ることができる。上記縦延伸フィルムを、延伸温度55〜100℃、好ましくは70〜90℃、延伸倍率1.7〜7.0倍、好ましくは4.0〜7.0倍の条件下、横延伸した後、60〜120℃、好ましくは70〜110℃の温度で熱処理し、ワインダー装置37により、テンションをかけつつ、タッチロール36の押圧を得ながらマスターロール35として巻き取られる。
その後、図4に示すように、マスターロール35は巻き出されてスリッター40にかけられ、任意の幅にスリットされる。図4の例では、3分割されたフィルムは、長手方向1000〜20000m、好ましくは1000m〜10000m、さらに好ましくは1000〜8000mの長さで巻き取られ、本発明のフィルムロール41〜43となる。なお、ここでも巻き取りに際し、フィルムにテンションがかけられ、巻き取られつつあるフィルムロール41〜43には、それぞれタッチロール44〜46による押圧(以下において「接圧」という。)が与えられる。
上記各工程の内、フィルムロールの耳立ちに影響するのは、主にスリット工程である。一般に熱収縮フィルムは、横方向への一軸延伸を行っており、分子の配列が幅方向に偏っている。スリット工程では分子の配列と垂直の方向に刃を入れるため、抵抗が大きく摩擦などによる発熱も伴って耳立ちが発生すると考えられる。以下にスリット工程におけるフィルムロールの耳立ちをコントロールする方法につき説明する。
耳立ちは、スリット時のスリット刃の材質や表面性状、接圧ロールの硬度、工程条件などを変更することにより少なくすることが可能である。
加えて、フィルムロールの耳立ちを本発明の規定する範囲とするためには、巻き始めから巻き終わりまでの張力を一定とせず、巻き径に準じて変更することで対応することができる。例えば巻き径が大きくなるに従って、張力を減少するパターンがある。その場合、張力は、巻き始めの初期値に対する巻き終わりでの値の比率(以下において「張力制御率」という。)が40〜60%であることが好ましい。張力制御率が低すぎると、巻き上がったフィルムロールの耳立ちが本発明の規定する数値より大きなものとなり、結果として、例えば半年間、冷凍倉庫等で保管した後の印刷評価が劣ったものとなってしまう。張力制御率が低すぎると、保管と共にフィルムの巻き硬さの柔らかい部分(フィルムとフィルムの間)に空気が入り込み、その後輸送や印刷のためにロールを動かしたり傾けたりした際に、上巻き部分がずれ、耳立ちの傾向が高まることがある。その場合、印刷時にフィルム蛇行が発生し印刷ズレにつながることが多い。一方、張力制御率が高すぎると、巻締まり発生による巻下部への影響が大きく、下巻きフィルム上にシワが入ったり、湾曲が増大することが起こり、耳立ちの傾向が高まり、印刷ズレが発生したりすることがあるからである。
加えて、フィルムロールの耳立ちを本発明の規定する範囲にするために、巻き始めから巻き終わりまでのタッチロールによる接圧を一定とせず、巻き径に準じて変更することで対応することができる。例えば巻き径が大きくなるに従って、タッチロールによる接圧を増加してゆくパターンがある。その場合、接圧は、巻き始めの初期値に対する巻き終わりでの値の比率(以下において「接圧制御率」という。)が150〜250%であることが好ましい。接圧制御率が上記範囲から外れると、耳立ちの傾向が強くなり、結果として印刷評価(特に半年間保管した後の印刷評価)が劣ったものとなってしまう。この場合の接圧制御率も、上記のスリッターの張力の場合の制御率と同様の概念であり、例えば、スリッター接圧が150N/m、接圧制御率が200%とした場合は、巻き始めは150N/mの接圧をかけ、長さに比例して徐々に接圧を増加させて、巻き終わりには張力は300N/mとなる。
なお、さらに印刷精度を上げるためには耳立ちの調整に加えて湾曲を少なくするという手法を取ることもできる。湾曲の発生要因としては、一般にプラスチックフィルムは、幅方向に偏った応力や歪みが残存したまま、ロールで巻き取られると、巻き取った直後もしくは巻き出して使用する段階で、上記残存が経時緩和され、歪みが生じ、湾曲が発生すると考えられる。
フィルムロールを構成するフィルムに適度な表面滑り性を付与することで、本発明の規定する耳立ちの範囲を満たすフィルムロールを製造することができ、かつ他の物性を確保することもできる。具体的には、フィルムを構成する樹脂組成物中に、フィラーや、帯電防止剤を塗布したり添加したりする手法をとる。
フィルムを構成する樹脂組成物は、熱収縮フィルムにした際に、耐ブロッキング性及び易滑性を付与できるという点から、無機及び/又は有機の微粒子(フィラー)を含有していることが好ましい。ブロッキングは印刷工程におけるフィルムロールの巻き出し時に、ロールから巻き出されるフィルムが、ロール側の最外層フィルムに接着して、異音を発するほか、バタツキや、張力の変動要因となり、印刷を不安定なものとするので好ましくない。フィルムに易滑性を与えた場合、ロールへのフィルムの巻き取り、巻き出し時に、フィルムとロール本体側との間に、位置的な自由度が増し、円滑な巻き取り、巻き出しが可能となる。微粒子の含有量はフィルム全体に対して、0.005〜1質量%の範囲であることが好ましく、さらには0.01〜0.7質量%の範囲、特には0.02〜0.5質量%の範囲であることが好ましい。
本発明のフィルムロールには帯電防止剤を塗布することができる。例えばテンターにて横延伸する前の縦延伸後のフィルムに塗布ロール速度を、ライン速度に対して0.1〜1.5倍の速度であるロールで帯電防止剤を掻き揚げながら塗布することで、フィルムに帯電防止効果を付与することができ、静電気の発生に由来する耳立ちの傾向を低減することが可能となる。
本発明のフィルムロールを構成するポリエステル系樹脂組成としては、ジカルボン酸成分として、テレフタル酸、多価アルコール成分として、エチレングリコール、つまりエチレンテレフタレートユニットを主たる構成ユニットとすることが望ましい。
本発明のフィルムロールを構成するフィルムは、単層に限定することなく、異質材料又は同質材料からなる他層を積層した多層フィルムとすることができる。多層フィルムは、2種2層、2種3層、3種5層、4種7層といった用途に応じた複数の層で構成できる。
本発明におけるフィルムロールは、コアに任意のテンションをかけながら巻き取られたフィルムであり、幅0.3m以上であることが好ましく、有効長さ1000m以上であるものである。なお、フィルムの長さの上限は特に限定はないが、ハンドリング等の観点から、8000mであることが好ましい。
本発明のフィルムロールに用いるコアは、特に限定されるものではなく、紙管、金属管、プラスチック管などを使用することができる。これらの中でも、ハンドリングの容易さやコストの観点から、紙管が最も汎用的であり、入手のし易さからみて好ましい。さらに、コアごとフィルムロールをスリットできるという、加工上の利点もある。コアとして紙管を使用する場合、紙管の万能材料試験機で計測した扁平耐圧強度が1800〜3000N/100mm幅であることが好ましい。紙管の扁平耐圧強度を1800N/100mm幅以上とすることにより、多少の巻き締まりがあってもコアの変形が少なく、コア変形による巻きズレを防止することができる。また、紙管の扁平耐圧強度を3000N/100mm幅以下とすることにより、巻き始め部分の耳立ちを抑えることができる。コア強度の調整は様々な方法が考えられるが、ポリウレタン系の樹脂などの熱可塑性樹脂コーティングなどによる強度アップが有効である。
本発明のフィルムロールを構成する熱収縮性フィルムは、少なくとも80℃温水に10秒間浸漬した際の収縮率が20%、望ましくは30%、さらに望ましくは40%である必要がある。フィルムの厚みは、10〜100μmの範囲であることが好ましい。熱収縮性フィルムの該収縮率が20%以上であると一般包装用途として用いることができる。また30%以上であると一般的な耐熱PETボトルの肩ラベルとして使用することができる。さらに、収縮率が40%以上であると収縮の際の温度域を下げられるため非耐熱のPETボトルの肩ラベルとして使用することができる。熱収縮率を増加させるためには、予熱温度、延伸温度、及び熱処理温度をそれぞれ下げることにより調整でき、また、熱収縮率を減少させるためには、予熱温度、延伸温度、熱処理温度をそれぞれ上げることにより調整することができる。また、厚さが10μm以上であると二次加工が容易であるという利点があり、100μmを超えるフィルムは加工性に劣る傾向がある。なお、本発明のフィルムロールにより作成されたラベルを加熱収縮させる際の加熱方法は、主として蒸気による加熱が挙げられるが、これによらず熱風や赤外線などの加熱方法によっても収縮加工することができる。
本発明のフィルムロールにより作製されたラベルを被せる被覆物は、内容物充填時の熱に耐え、かつ上記熱収縮の際の熱に耐えるものである必要がある。例えばガラス瓶やスチール缶、ポリエチレン製やポリプロピレン製のカップやトレー、ポリエステル製のボトルなどが挙げられる。また内容物としては例えば弁当や油、牛乳、ジュース、ビールなどの食品、化粧品や医薬品、文房具類などが挙げられる。
後述する7種の樹脂原料について、以下の方法で組成分析、固有粘度、灰分の測定を行った。
ポリエステル樹脂溶液試料を、核磁気共鳴装置(NMR)により1Hをモニターすることにより分析し、ジカルボン酸成分に関しては全ジカルボン酸成分に対するモル%を、ジオール成分に関しては全ジオール成分に対するモル%を求めた。
ポリエステル樹脂約0.25gを、フェノール/テトラクロロエタン(質量比1/1)の混合溶媒約25mlに1.0質量%となるように110℃で溶解させた後、30℃まで冷却し、全自動溶液粘度計(中央理化製「2CH型DJ504」)にて30℃で測定した。
試料約10gを700℃のマッフルにて焼成を行い、焼成前後の質量を測定して、粒子物の含有量を算出した。
各実施例、比較例のフィルムロールのフィルム製造に使用される樹脂のペレット原料として以下のポリエステル系樹脂7種(PET1〜7)を使用した。
イーストマン・ケミカル社製「EASTAR PETG Copolyester6763」を使用した。該ポリエステル樹脂について、上述の方法で組成分析を行った結果、ジカルボン酸成分がテレフタル酸(以下、「TPA」と略記する。)であり、ジオール成分は、エチレングリコール(以下、「EG」と略記する。)が全ジオールに対して68モル%、1,4−シクロヘキサンジメタノール(以下、「CHDM」と略記する。)が全ジオールに対して32モル%であるポリエステル樹脂であった。また、該ポリエステル樹脂の固有粘度を上記方法で測定した結果、0.78dl/gであった。
以下に記載する製造例1の方法にて、ポリエステル樹脂を製造した。該ポリエステル樹脂について、上述の方法で組成分析を行った結果、ジカルボン酸成分は、TPAが全ジカルボン酸に対して70モル%、イソフタル酸(以下、「IPA」と略記する。)が全ジカルボン酸に対して30モル%であり、ジオール成分がEGであるポリエステル樹脂であった。また、該ポリエステル樹脂の固有粘度を上記方法で測定した結果、0.72dl/gであった。
−製造例1−
スラリー調製槽、エステル化反応槽、重縮合槽、及びペレット化装置を備えた回分式重合装置を用い、TPAとIPAの混合物(モル比4:1)とEGのエステル化反応物1トンを入れたエステル化反応槽に、予めスラリー調製槽にて調製したTPA:605kg(3.64キロモル)、IPA:259kg(1.56キロモル)及びEG:388kg(5.20キロモル)(ジカルボン酸とジオールのモル比は1:1.2)のスラリーを314kg/hrの速度で連続的に添加してエステル化反応を行った。エステル化反応は、反応温度250℃、常圧の条件下、エステル化反応触媒としてポリエステル樹脂の理論収量に対して200質量ppmの三酸化アンチモンを添加し、生成する水を連続的に留出させながら、反応率95%に達するまでエステル化反応を行った。エステル化反応終了後、エステル化反応物の1トンをエステル化反応槽に残し、エステル化反応物を重縮合槽に移送した。
引き続いて、エステル化反応物が移送された重縮合槽に、安定剤として正燐酸を添加し、重合触媒として酢酸コバルトと三酸化二アンチモンを添加した(いずれもEG溶液として添加)。正燐酸、酢酸コバルト、三酸化二アンチモンの添加量はそれぞれ、ポリエステル樹脂の理論収量に対して、60質量ppm、150質量ppm、200質量ppmとした。
その後約100分かけて常圧から1.33×102Pa(1mmHg)まで減圧するとともに、内温を約250℃から約280℃まで上昇させ、EGを留出させながら溶融重縮合反応を行った。減圧開始後4時間経過したところで復圧し、重縮合反応を終了した。重縮合槽を復圧後、槽下部よりポリエステル樹脂をストランド状に水中に抜き出した後、ペレット状にカッティングした。また、ポリエステル系樹脂の固有粘度を上記方法で測定した結果、0.72dl/gであった。
三菱エンジニアリングプラスチックス社製「NOVADURAN 5008」をポリエステル系樹脂3として使用した。ポリエステル系樹脂3の組成を上記方法で分析した結果、ジカルボン酸成分がTPAであり、ジオール成分が1,4−ブタンジオール(以下、「BD」と略記する。)であるポリエステル系樹脂であった。また、ポリエステル系樹脂3の固有粘度を上記方法で測定した結果、0.85dl/gであった。
以下に記載する製造例2の方法にて、ポリエステル樹脂を製造した。該ポリエステル樹脂について、上述の方法で灰分分析並びに、組成分析を行った結果、ジカルボン酸成分はTPAであり、ジオール成分は、EGが全ジオールに対して68モル%、CHDMが全ジオールに対して32モル%であり、灰分分析を行った結果、有機物でない無機微粒子が10質量%含有しているポリエステル樹脂であった。また、該ポリエステル樹脂の固有粘度を上記方法で測定した結果、0.76dl/gであった。
−製造例2−
上記ポリエステル系樹脂PET1を90質量部、富士シリシア化学製の平均粒子径が3.1μmの「サイリシア420」を10質量部配合し、同方向二軸押出機で押出後、口金部よりポリエステル樹脂をストランド状に水中に抜き出した後、ペレット状にカッティングした。
以下に記載する製造例3の方法にて、ポリエステル樹脂を製造した。該ポリエステル樹脂について、上述の方法で灰分分析並びに、組成分析を行った結果、ジカルボン酸成分はTPAであり、ジオール成分は、EGが全ジオールに対して68モル%、CHDMが全ジオールに対して32モル%であり、灰分分析を行った結果、有機物でない無機微粒子が10質量%含有しているポリエステル樹脂であった。また、該ポリエステル樹脂の固有粘度を上記方法で測定した結果、0.74dl/gであった。
−製造例3−
上記ポリエステル系樹脂PET1を90質量部、富士シリシア化学製の平均粒子径が2.7μmの「サイリシア320P」を10質量部配合し、同方向二軸押出機で押出後、口金部よりポリエステル樹脂をストランド状に水中に抜き出した後、ペレット状にカッティングした。
スラリー調製槽、エステル化反応槽、重縮合槽、及びペレット化装置を備えた回分式重合装置を用い、TPAとEGとネオペンチルグリコール(以下、「NPG」という。)の混合物とのエステル化反応物1トンを入れたエステル化反応槽に、予めスラリー調製槽にて調製したTPA:820kg、NPG:128kg及びEG:291kgのスラリーを314kg/hrの速度で連続的に添加してエステル化反応を行った。エステル化反応は、反応温度250℃、常圧の条件下、エステル化反応触媒としてポリエステル樹脂の理論収量に対して200質量ppmの三酸化アンチモンを添加し、生成する水を連続的に留出させながら、反応率95%に達するまでエステル化反応を行った。エステル化反応終了後、エステル化反応物の1トンをエステル化反応槽に残し、エステル化反応物を重縮合槽に移送した。
引き続いて、エステル化反応物が移送された重縮合槽に、安定剤として正燐酸を添加し、重合触媒として酢酸コバルトと三酸化二アンチモンを添加した(いずれもEG溶液として添加)。正燐酸、酢酸コバルト、三酸化二アンチモンの添加量はそれぞれ、ポリエステル樹脂の理論収量に対して、60質量ppm、150質量ppm、200質量ppmとした。
その後約100分かけて常圧から1.33×102Pa(1mmHg)まで減圧するとともに、内温を約250℃から約280℃まで上昇させ、EGを留出させながら溶融重縮合反応を行った。減圧開始後4時間経過したところで復圧し、重縮合反応を終了した。重縮合槽を復圧後、槽下部よりポリエステル樹脂をストランド状に水中に抜き出した後、ペレット状にカッティングした。また、ポリエステル系樹脂の固有粘度を上記方法で測定した結果、0.70dl/gであった。
日本ユニペット社製「RT−523C」を使用した。該ポリエステル樹脂について、上述の方法で組成分析を行った結果、ジカルボン酸成分がTPAであり、ジオール成分は、EGが全ジオールに対して98モル%、ジエチレングリコール(以下「DEG」と略記する)が全ジオールに対して2モル%であるポリエステル樹脂であった。また、該ポリエステル樹脂の固有粘度を上記方法で測定した結果、0.70dl/gであった。
以上の樹脂原料7種を用いて、以下の実施例1〜6、比較例1〜5のフィルムロールを得た。配合の一覧を表1に、フィルムの製造条件一覧を表2に示す。
原料ポリエステル樹脂PET1を54.5質量部、ポリエステル樹脂PET2を27質量部と、ポリエステル樹脂PET3を15質量部、ポリエステル樹脂PET4を3.5質量部配合し、270℃の同方向二軸押出機で真空ベントを引きながら溶融混練し、Tダイ口金から冷却ロール上に押出し、厚さ250μmの未延伸フィルムを得た。その後、上記フィルムを縦延伸機の低速−高速ロール間の縦延伸をかけるところは1.1倍で縦倍率をかけ、上記ロール間以外のドローは0.98倍とした。その後、テンターにて101℃で予熱し、延伸温度79℃、延伸速度3000%/分でキャスティング押出方向に対して、垂直方向の横方向に5倍延伸を行い、熱処理温度92℃で処理後、テンター弛緩率0.4%にて厚さ50μmの熱収縮性フィルムを得た。なお、テンター熱風の吹出に関して、平均速度は10m/秒、フィルム幅方向の速度差は3m/秒であり、テンター出口のフィルム幅方向における温度幅は3℃であった。また、ワインダーにてフィルムを巻き取る張力は50N/m、フィルムをガイドするゴムロールの接圧は30N/m、巻き始めの初期値に対する巻き終わりの最終値が、張力、接圧それぞれ75%、200%(制御率)に調整した。更にスリッターにてフィルムを巻き取る張力は65N/m、フィルムをガイドするメタルロールの接圧は160N/m、巻き始めの初期値に対する巻き終わりの最終値が、張力、接圧それぞれ45%、190%(制御率)に調整して、0.98m幅にスリットし、1000m巻き取り、実施例1にかかるフィルムロールを得た。
このとき、使用したスリット刃は、京セラ製のφ60mmセラミック回転丸刃で、タッチロールは、KMC製アルミ芯のφ150mmメッキロールである。
表1の配合表に従い配合した樹脂を実施例1と同様の条件で溶融押出し、250μmのフィルムを得た。なお、表中の単位は質量%である。
上記フィルムを表2の条件にて製膜、巻き取り、スリットし、フィルムロールを得た。表2以外の条件は全て実施例1と同様に製膜、巻き取り、スリットを行った。
(フィルム温度計測)
テンター出口のフィルム温度をTASCO製 非接触の赤外温度計『THI−440N』にて計測した。計測位置としては、フィルム中央/両端/左記間の5点とした。両端は、テンタークリップから50mm以内であるとクリップ輻射熱の影響を受けて、正確なフィルム温度を計測することができないため、クリップから50mm離れた位置とした。
(スリッター張力)
スリッターの初期張力(m幅当たり)を記録した。
(張力制御率)
初期張力に対する巻き終わり時の張力の割合(%)を記録した。
つまり、「張力制御率」=「巻き終わり時の張力」/「初期張力」である。
(スリッター接圧)
スリッターの初期接圧(m幅当たり)を記録した。
(接圧制御率)
初期接圧に対する巻き終わり時の接圧の割合(%)を記録した。
つまり、「接圧制御率」=「巻き終わり時の接圧」/「初期接圧」である。
以下に、フィルムロールの評価方法を説明する。評価結果は表3にまとめて示した。
図7に試験の概略を示す。紙管を幅方向100mmに裁断し、温度23℃、湿度50%雰囲気下に24時間、保管して試料70とした。島津製作所製 油圧サーボ『UH−10A』に、試料70を寝かせてセッティングし、圧縮速度10mm/minでサンプルを圧縮させたときの最大強度を計測し、「コア耐圧強度」として記録した。
図8に示すように、水平平面である矩形湾曲台80に、フィルムロールの巻出部及びコア巻付部からそれぞれ長手方向に5m巻き出したフィルムを載せてシワ、弛みが発生しないように静置し、長手方向両端の幅方向端部同士を直線で結ぶ直線Lの中央において、フィルムエッジと直線Lからずれた距離|Wa|及び|Wb|のそれぞれの値(mm)を測定し、絶対値の大きい方の値を「湾曲」として記録した。また、以下に定義する測定値を「湾曲差」として記録した。
(湾曲差):1本のフィルムロールに巻かれていたフィルムの巻き始め側の端部から5m外側に巻いたところまでのフィルムを採取したものをコア「巻付部」とする。同様にフィルムの巻き終わり側の端部から5m内側に巻いたところまでのフィルムを採取したものを「巻出部」とする。フィルムロールのコア巻付部で測定した湾曲値と、前記フィルムロールの巻出部で測定した湾曲値との差を「湾曲差」とする。
なお、「湾曲」とは、0基準に対して±のある実際に計測した距離をいい、「湾曲値」とは、この「湾曲」を絶対値化した数値をいう。
各実施例又は比較例にて得られたフィルムを、測定延伸方向に150mm、これに対する直交方向に25mmの大きさに切り取り、試料を作成した。試料の延伸方向に100mm間隔の標線を付し、80℃の温水浴に10秒間浸漬させ、その後30秒間23℃の冷水に浸漬した後の標線間隔(A(mm))を測定し、下式(1)により収縮率を算出した。
収縮率(%)=100×(100−A)/100・・・・式(1)
20℃に保った保冷倉庫にフィルムロールを半年間保管し、その後6色印刷機を用いて一般的に用いられるカラーチャート版を使用し150m/分の速度で非帯電防止面に6色印刷を行った。見当ズレ監視装置の見当ズレ精度を観測し、ロール全域にわたる見当ズレの平均を見当ズレの値とした。
○:見当ズレが0.3mm未満
△:0.3〜0.9mm
×:見当ズレが0.9mmを超える。
見当ズレが0.3mm未満の場合には見た目にボヤケを感じられない。見当ズレが0.3〜0.9mmの場合にはわずかにぼやけるものの、商品としては問題がない。見当ズレが0.9mmを超える場合にはボヤケがひどく商品価値がなくなる。
巻き上げた幅0.6〜1.2mのフィルムロールを、さらに表1と同様な各例の巻き条件にて、幅0.2〜0.3mに再スリットした。再スリットされたフィルムロールを製袋機でTHF=100%の溶剤にて100m/minで製袋した際の、シール走行性を以下の基準で評価記録した。
○:シール幅が3〜4mmで均等にシールされ、シールエッジが直線である。
△:シール幅が3〜5mmでシールされ、シールエッジがわずかに波打っている。
×:シール幅が2〜5mmでシールされ、シールエッジが波打ち、シール内に気泡が含まれている。
B1、B2 端部からフィルムロール幅方向の中央に向かって10cmの位置
C1、C2 中点
L1、L2 耳立ち
S 定板
1 フィルムロール
2 端
3 逆の端
31 押出機
32 Tダイ
33 キャスティングロール
34 テンター装置
35 マスターロール
36 タッチロール
37 ワインダー装置
40 スリッター
41、42、43 フィルムロール
44、45、46 タッチロール
51 巻き出しロール
52a、52b インクリザーバ
53a、53b 版ロール
55a、55b 圧胴ロール
56a、56b ドクターブレード
57a、57b センサ
61 マーク
70 紙管
80 湾曲台
81 試料フィルム
100 フィルム
510、517 方向変換ロール
511〜516 調整ロール
518 巻き取りロール
520 グラビア印刷機
530 乾燥ゾーン
Claims (5)
- 長さ1000m以上であり、80℃温水中に10秒間浸漬した後の主収縮方向の収縮率が少なくとも20%であるポリエステル系熱収縮性フィルムをコアに巻き取ってなるフィルムロールであって、
前記フィルムロールを製造する際のスリット工程において、
接圧ロールとして金属ロールを用い、
スリッター張力を30〜100N/mとし、
スリッター張力制御率を40〜60%とし、
接圧を70〜250N/mとし、かつ
接圧制御率を150%〜250%とすることによって、
前記フィルムロール幅方向の少なくとも一方の端部A1と、該端部A1から前記フィルムロール幅方向の中央に向かって10cmの位置B1とを結んだ直線A1B1の中点C1から前記フィルムロールへ下した垂線の長さL1が1mm以下とされたことを特徴とするポリエステル系熱収縮性フィルムロール。 - 前記フィルムロールの他方の端部A2で測定されるL2と、前記L1との差が±0.5mm以下である請求項1に記載のポリエステル系熱収縮性フィルムロール。
- 前記コアが紙管である請求項1又は2に記載のポリエステル系熱収縮性フィルムロール。
- 万能材料試験機で計測される前記紙管の扁平耐圧強度が1800〜3000N/100mm幅である請求項3に記載のポリエステル系熱収縮性フィルムロール。
- 長さ1000m以上であり、80℃温水中に10秒間浸漬した後の主収縮方向の収縮率が少なくとも20%であるポリエステル系熱収縮性フィルムをコアに巻き取ってなるフィルムロールの製造方法であって、
前記フィルムロールを製造する際のスリット工程において、
接圧ロールとして金属ロールを用い、
スリッター張力を30〜100N/mとし、
スリッター張力制御率を40〜60%とし、
接圧を70〜250N/mとし、かつ
接圧制御率を150%〜250%とすることによって、
前記フィルムロール幅方向の少なくとも一方の端部A 1 と、該端部A 1 から前記フィルムロール幅方向の中央に向かって10cmの位置B 1 とを結んだ直線A 1 B 1 の中点C 1 から前記フィルムロールへ下した垂線の長さL 1 を1mm以下としたことを特徴とするポリエステル系熱収縮性フィルムロールの製造方法。
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