以下、本発明の第1実施形態を、本発明に係る制御回路を系統連系インバータシステムに用いた場合を例として、図面を参照して具体的に説明する。
まず、本発明の基本的な考え方について説明する。
図1は、三相平衡状態の三相交流の各相の相電圧信号および線間電圧信号をベクトルで説明するための図である。
U相の相電圧信号をVu=A・sin(ωt)とすると、V相の位相はU相より2π/3遅れているので、V相の相電圧信号はVv=A・sin(ωt−2π/3)となる。また、W相の位相はU相より4π/3遅れている(2π/3進んでいる)ので、Vw=A・sin(ωt+2π/3)となる。また、V相に対するU相の線間電圧信号はVuv=Vu−Vv=√(3)・A・sin(ωt+π/6)、W相に対するV相の線間電圧信号はVvw=Vv−Vw=√(3)・A・sin(ωt−π/2)、U相に対するW相の線間電圧信号はVwu=Vw−Vu=√(3)・A・sin(ωt−7π/6)となる。
図1は、相電圧信号Vu,Vv,VwをベクトルPu,Pv,Pwで表し、線間電圧信号Vuv,Vvw,VwuをベクトルPuv,Pvw,Pwuで表している。また、中性点Nを起点としたベクトルPu,Pv,Pwの終点を結んだ正三角形Tを破線で示し、各頂点をu,v,wで示している。同図においては、X軸を位相の基準(θ=0°)とし、U相の相電圧信号Vuに対応するベクトルPuがX軸に一致したときの状態を示している。また、ベクトルPvu,Pwv,Puwは、それぞれベクトルPuv,Pvw,Pwuの向きを逆にしたものである。したがって、ベクトルPvu,Pwv,Puwに対応する信号Vvu,Vwv,Vuwは、それぞれ線間電圧信号Vuv,Vvw,Vwuの位相がπだけずれたものとなり、Vvu=−Vuv=√(3)・A・sin(ωt+7π/6)、Vwv=−Vvw=√(3)・A・sin(ωt+π/2)、Vuw=−Vwu=√(3)・A・sin(ωt−π/6)となる。
図1において、ベクトルPu,Pv,Pwが相互に2π/3の位相差を保持して中性点Nを中心に反時計回りに角速度ωで回転している状態が、三相平衡状態を表している。一般に、中性点Nは0[v]の基準電圧に設定されるので、各相電圧信号Vu,Vv,VwはベクトルPu,Pv,PwのY軸上への正射影となり、上記のように互いに位相が2π/3だけずれた正弦波信号となる。
図2は、NVS制御の考え方を、図1と同様にベクトルで説明するための図である。NVS制御は、中性点Nを0[v]に固定するのではなく1/3周期毎に遷移させて、1/3周期ずつ各相の電位を負極側の電位(例えば、0[v])に固定するものである。
図2においては、中性点NおよびベクトルPuを示しており、同図(a)の左の図以外は、ベクトルPv,Pwの記載を省略している。また、中性点Nを起点としたベクトルPu,Pv,Pwの終点を結んだ正三角形Tを破線で示し、各頂点をu,v,wで示している。また、各図において、固定している頂点に白丸を付している。
同図(a)は、ベクトルPuがX軸となす角度(以下では、「角度θ」とする。)が−π/6からπ/2まで変化するときの状態を示している。−π/6≦θ≦π/2のとき、V相の電位が0[v]に固定される。この状態を「モード1」とする。モード1は、正三角形Tの頂点vが原点に固定され、頂点vを中心として正三角形Tが反時計回り(図に示す破線矢印の方向であり、以下でも同様である。)に2π/3回転することで表される。左の図はθ=−π/6のとき、中央の図はθ=π/6のとき、右の図はθ=π/2のときを示している。θ=π/2になると、W相の電位が0[v]に固定される。右の図は、固定される相がV相からW相に変化することを示しており、正三角形Tが頂点wを原点に一致させるように移動して、中性点Nが遷移していることを示している。
同図(b)は、角度θがπ/2から7π/6まで変化するときの状態を示している。π/2≦θ≦7π/6のとき、W相の電位が0[v]に固定される。この状態を「モード2」とする。モード2は、正三角形Tの頂点wが原点に固定され、頂点wを中心として正三角形Tが反時計回りに2π/3回転することで表される。左の図はθ=π/2のとき、中央の図はθ=5π/6のとき、右の図はθ=7π/6のときを示している。左の図は、図2(a)の右の図の中性点遷移後と同じ図である。θ=7π/6になると、U相の電位が0[v]に固定される。右の図は、固定される相がW相からU相に変化することを示しており、正三角形Tが頂点uを原点に一致させるように移動して、中性点Nが遷移していることを示している。
同図(c)は、角度θが7π/6から11π/6(=−π/6)まで変化するときの状態を示している。7π/6≦θ≦11π/6のとき、U相の電位が0[v]に固定される。この状態を「モード3」とする。モード3は、正三角形Tの頂点uが原点に固定され、頂点uを中心として正三角形Tが反時計回りに2π/3回転することで表される。左の図はθ=7π/6のとき、中央の図はθ=3π/2のとき、右の図はθ=11π/6のときを示している。左の図は、図2(b)の右の図の中性点遷移後と同じ図である。θ=11π/6になると、V相の電位が0[v]に固定される。右の図は、固定される相がU相からV相に変化することを示しており、正三角形Tが頂点vを原点に一致させるように移動して、中性点Nが遷移していることを示している。この遷移後の図は、図2(a)の左の図と同じである。以後、モード1〜3が繰り返される。
図2に示すベクトル図において、各相の相電圧は、正三角形Tの各頂点のY座標によって表される。例えば、U相の相電圧は、頂点uのY座標によって表される。モード1においては頂点vが原点に固定されるので、頂点vから頂点uに向かうベクトル、すなわちベクトルPuからベクトルPvを減算したベクトルPuvのY軸上への正射影がU相の相電圧となる(同図(a)参照)。したがって、モード1におけるNVS制御のU相の相電圧信号Vu’は、V相に対するU相の線間電圧信号Vuvとなる。
モード2においては頂点wが原点に固定されるので、頂点wから頂点uに向かうベクトル、すなわちベクトルPuからベクトルPwを減算したベクトルPuwのY軸上への正射影がU相の相電圧となる(同図(b)参照)。したがって、モード2におけるNVS制御のU相の相電圧信号Vu’は、信号Vuw(=−Vwu)となる。モード3においては頂点uが原点に固定されるので、U相の相電圧は「0」となる(同図(c)参照)。したがって、モード3におけるNVS制御のU相の相電圧信号Vu’は、値が「0」であるゼロ信号となる。
同様に、NVS制御のV相の相電圧信号Vv’は、モード1においてはゼロ信号となり、モード2においては線間電圧信号Vvwとなり、モード3においては信号Vvuとなる。また、NVS制御のW相の相電圧信号Vw’は、モード1においては信号Vwvとなり、モード2においてはゼロ信号となり、モード3においては線間電圧信号Vwuとなる。
以上のことから、NVS指令値信号Xu’は、各モードに応じて、線間電圧指令値信号Xuvと信号Xuwとゼロ信号とを切り替えることで生成する。NVS指令値信号Xv’,Xw’も同様である。生成されたNVS指令値信号Xu’,Xv’,Xw’の波形は、図32(c)のようになる。
図32(c)に示すように、NVS指令値信号Xu’,Xv’,Xw’は、周期の1/3で「0」に固定される。したがって、NVS指令値信号Xu’,Xv’,Xw’とキャリア信号とを比較することで生成されるPWM信号は、NVS指令値信号Xu’,Xv’,Xw’が「0」に固定されている期間でローレベルまたはハイレベルを継続することになる。PWM信号が、ローレベルまたはハイレベルのいずれか一方のみの継続となることから、正極側のスイッチング素子と負極側のスイッチング素子とで、オン状態になっている時間が異なるという問題が生じる。
この問題を解決するためには、PWM信号におけるローレベルの継続時間とハイレベルの継続時間とを同等の長さとすればよい。すなわち、キャリア信号と比較するための指令値信号を、「0」にのみ固定するのではなく、同等の長さの期間で最小値(例えば、「0」)と最大値とに固定するようにすればよい。これを、図2と同様にベクトル図で考えると、正三角形Tの各頂点を原点のみに固定するのではなく、原点に固定するのと同じ長さの期間で、X座標が「0」でY座標が所定の値である点に固定するようにすればよい。
図3は、第1実施形態に係る制御の考え方をベクトルで説明するための図であり、正三角形Tの各頂点を原点とX座標が「0」でY座標がBである点(以下では、「最大点」とする。)とに固定する場合を説明するための図である。
図3においては、図2と同様に、中性点N、ベクトルPu、および正三角形Tを示しており、図3(a)の左の図以外は、ベクトルPv,Pwの記載を省略している。また、各図において、固定している頂点に白丸を付している。
同図(a)は、角度θ(ベクトルPuがX軸となす角度)が−π/6からπ/6まで変化するときの状態を示している。−π/6≦θ≦π/6のとき、正三角形Tの頂点wが最大点に固定され、頂点wを中心として正三角形Tが反時計回り(図に示す破線矢印の方向であり、以下でも同様である。)にπ/3回転する。この状態を「モード1」とする。同図(a)は、モード1では、W相の電位がBに固定されることを示している。左の図はθ=−π/6のとき、中央の図はθ=0のとき、右の図はθ=π/6のときを示している。θ=π/6になると、正三角形Tが頂点vを原点に一致させるように移動して、中性点Nが遷移する。これは、W相の電位がBに固定されている状態から、V相の電位が「0」に固定される状態に変化することを示している。
同図(b)は、角度θがπ/6からπ/2(=3π/6)まで変化するときの状態を示している。π/6≦θ≦π/2のとき、正三角形Tの頂点vが原点に固定され、頂点vを中心として正三角形Tが反時計回りにπ/3回転する。この状態を「モード2」とする。同図(b)は、モード2では、V相の電位が「0」に固定されることを示している。左の図はθ=π/6のとき、中央の図はθ=π/3(=2π/6)のとき、右の図はθ=π/2(=3π/6)のときを示している。左の図は、同図(a)の右の図の中性点遷移後と同じ図である。θ=π/2になると、正三角形Tが頂点uを最大点に一致させるように移動して、中性点Nが遷移する。これは、V相の電位が「0」に固定されている状態から、U相の電位がBに固定される状態に変化することを示している。
同図(c)は、角度θがπ/2(=3π/6)から5π/6まで変化するときの状態を示している。π/2≦θ≦5π/6のとき、正三角形Tの頂点uが最大点に固定され、頂点uを中心として正三角形Tが反時計回りにπ/3回転する。この状態を「モード3」とする。同図(c)は、モード3では、U相の電位がBに固定されることを示している。左の図はθ=π/2(=3π/6)のとき、中央の図はθ=2π/3(=4π/6)のとき、右の図はθ=5π/6のときを示している。左の図は、同図(b)の右の図の中性点遷移後と同じ図である。θ=5π/6になると、正三角形Tが頂点wを原点に一致させるように移動して、中性点Nが遷移する。これは、U相の電位がBに固定されている状態から、W相の電位が「0」に固定される状態に変化することを示している。
同図(d)は、角度θが5π/6から7π/6まで変化するときの状態を示している。5π/6≦θ≦7π/6のとき、正三角形Tの頂点wが原点に固定され、頂点wを中心として正三角形Tが反時計回りにπ/3回転する。この状態を「モード4」とする。同図(d)は、モード4では、W相の電位が「0」に固定されることを示している。左の図はθ=5π/6のとき、中央の図はθ=π(=6π/6)のとき、右の図はθ=7π/6のときを示している。左の図は、同図(c)の右の図の中性点遷移後と同じ図である。θ=7π/6になると、正三角形Tが頂点vを最大点に一致させるように移動して、中性点Nが遷移する。これは、W相の電位が「0」に固定されている状態から、V相の電位がBに固定される状態に変化することを示している。
同図(e)は、角度θが7π/6から3π/2(=9π/6)まで変化するときの状態を示している。7π/6≦θ≦3π/2のとき、正三角形Tの頂点vが最大点に固定され、頂点vを中心として正三角形Tが反時計回りにπ/3回転する。この状態を「モード5」とする。同図(e)は、モード5では、V相の電位がBに固定されることを示している。左の図はθ=7π/6のとき、中央の図はθ=4π/3(=8π/6)のとき、右の図はθ=3π/2(=9π/6)のときを示している。左の図は、同図(d)の右の図の中性点遷移後と同じ図である。θ=3π/2になると、正三角形Tが頂点uを原点に一致させるように移動して、中性点Nが遷移する。これは、V相の電位がBに固定されている状態から、U相の電位が「0」に固定される状態に変化することを示している。
同図(f)は、角度θが3π/2(=9π/6)から11π/6(=−π/6)まで変化するときの状態を示している。3π/2≦θ≦11π/6のとき、正三角形Tの頂点uが原点に固定され、頂点uを中心として正三角形Tが反時計回りにπ/3回転する。この状態を「モード6」とする。同図(f)は、モード6では、U相の電位が「0」に固定されることを示している。左の図はθ=3π/2(=9π/6)のとき、中央の図はθ=5π/3(=10π/6)のとき、右の図はθ=11π/6のときを示している。左の図は、同図(e)の右の図の中性点遷移後と同じ図である。θ=11π/6になると、正三角形Tが頂点wを最大点に一致させるように移動して、中性点Nが遷移する。これは、U相の電位が「0」に固定されている状態から、W相の電位がBに固定される状態に変化することを示している。この遷移後の図は、同図(a)の左の図と同じである。以後、モード1〜6が繰り返される。
図3に示すベクトル図において、各相の相電圧は、正三角形Tの各頂点のY座標によって表される。例えば、U相の相電圧は、頂点uのY座標によって表される。モード1においては頂点wが最大点に固定されるので、頂点wから頂点uに向かうベクトルPuwのY軸上への正射影にBを加算した値がU相の相電圧となる(同図(a)参照)。したがって、モード1においては、U相の相電圧の波形を指令するための指令値信号Xu1を、信号Xuw(=−Xwu)にBを加算したものとすればよい。モード2においては頂点vが原点に固定されるので、頂点vから頂点uに向かうベクトルPuvのY軸上への正射影がU相の相電圧となる(同図(b)参照)。したがって、モード2においては、指令値信号Xu1を、線間電圧指令値信号Xuvとすればよい。モード3においては頂点uが最大点に固定されるので、U相の相電圧はBとなる(同図(c)参照)。したがって、モード3においては、指令値信号Xu1を、値がBである信号とすればよい。モード4においては頂点wが原点に固定されるので、頂点wから頂点uに向かうベクトルPuwのY軸上への正射影がU相の相電圧となる(同図(d)参照)。したがって、モード4においては、指令値信号Xu1を、信号Xuw(=−Xwu)とすればよい。モード5においては頂点vが最大点に固定されるので、頂点vから頂点uに向かうベクトルPuvのY軸上への正射影にBを加算した値がU相の相電圧となる(同図(e)参照)。したがって、モード5においては、指令値信号Xu1を、線間電圧指令値信号XuvにBを加算したものとすればよい。モード6においては頂点uが原点に固定されるので、U相の相電圧は「0」となる(同図(f)参照)。したがって、モード6においては、指令値信号Xu1を、値が「0」であるゼロ信号とすればよい。
同様に、V相の相電圧の波形を指令するための指令値信号Xv1を、モード1においては線間電圧指令値信号XvwにBを加算したものとし、モード2においてはゼロ信号とし、モード3においては信号XvuにBを加算したものとし、モード4においては線間電圧指令値信号Xvwとし、モード5においては値がBである信号とし、モード6においては信号Xvuとすればよい。また、W相の相電圧の波形を指令するための指令値信号Xw1を、モード1においては値がBである信号とし、モード2においては信号Xwvとし、モード3においては線間電圧指令値信号XwuにBを加算したものとし、モード4においてはゼロ信号とし、モード5においては信号XwvにBを加算したものとし、モード6においては線間電圧指令値信号Xwuとすればよい。
図4は、指令値信号Xu1,Xv1,Xw1の波形を説明するための図である。
図4(a)に示す波形Xuv,Xvw,Xwuは、図32(a)に示す波形Xuv,Xvw,Xwuと同一であり、図4(b)に示す波形Xvu,Xwv,Xuwは、図32(b)に示す波形Xvu,Xwv,Xuwと同一なので、説明を省略する。図4においても、相電圧指令値信号Xuの位相を基準として記載している。図3などのベクトル図での説明における角度θは、ベクトルPuがX軸となす角度であり、相電圧指令値信号Xuの位相を示している。したがって、図4に示す位相は、角度θに対応している。
図4(c)に示す波形Xu1は、U相の指令値信号Xu1の波形である。指令値信号Xu1は、図3で説明したように、モード1〜6に分けて生成される。図4(c)においては、B=2のときの各波形を示している。波形Xu1は、モード1(−π/6≦θ≦π/6)においては波形Xuwを「2」だけ上方にシフトさせた波形、モード2(π/6≦θ≦π/2)においては波形Xuv、モード3(π/2≦θ≦5π/6)においては「2」に固定された波形、モード4(5π/6≦θ≦7π/6)においてはXuw、モード5(7π/6≦θ≦3π/2)においては波形Xuvを「2」だけ上方にシフトさせた波形、モード6(3π/2≦θ≦11π/6)においては「0」に固定された波形となっている。同様に、波形Xv1は、モード1においては波形Xvwを「2」だけ上方にシフトさせた波形、モード2においては「0」に固定された波形、モード3においては波形Xvuを「2」だけ上方にシフトさせた波形、モード4においては波形Xvw、モード5においては「2」に固定された波形、モード6においてはXvuとなっている。また、波形Xw1は、モード1においては「2」に固定された波形、モード2においてはXwv、モード3においては波形Xwuを「2」だけ上方にシフトさせた波形、モード4においては「0」に固定された波形、モード5においては波形Xwvを「2」だけ上方にシフトさせた波形、モード6においては波形Xwuとなっている。
指令値信号Xu1,Xv1,Xw1は、周期の1/6で「0」に固定され、周期の1/6で「2」に固定される。したがって、PWM信号は、指令値信号Xu1,Xv1,Xw1が「0」に固定されている期間でローレベル(またはハイレベル)を継続し、指令値信号Xu1,Xv1,Xw1が「2」に固定されている期間でハイレベル(またはローレベル)を継続することになる。PWM信号のローレベル継続時間とハイレベル継続時間とが同等となるので、正極側のスイッチング素子と負極側のスイッチング素子とで、オン状態になっている時間が同等となる。
次に、上述した指令値信号Xu1,Xv1,Xw1を生成して、これに基づくPWM信号をインバータ回路に出力する制御回路について説明する。
図5は、本発明に係る制御回路を備える系統連系インバータシステムを説明するためのブロック図である。
図5に示すように、系統連系インバータシステムAは、直流電源1、インバータ回路2、フィルタ回路3、変圧回路4、および、制御回路5を備えている。直流電源1は、インバータ回路2に接続している。インバータ回路2は三相インバータであり、インバータ回路2、フィルタ回路3、および変圧回路4は、この順で、U相、V相、W相の出力電圧の出力ラインにより、直列に接続されている。出力ラインは、図示しない開閉器を介して三相電力系統B(系統B)に接続している。インバータ回路2には制御回路5が接続されている。系統連系インバータシステムAは、開閉器によって系統Bに連系し、直流電源1が出力する直流電力をインバータ回路2で交流電力に変換して、系統Bに供給する。なお、系統連系インバータシステムAには各種センサが設けられており、制御回路5は当該センサによる検出値に基づいて制御を行う。しかし、図5においては、各種センサの記載を省略している。また、系統連系インバータシステムAの構成は、これに限られない。例えば、変圧回路4に代えて、直流電源1とインバータ回路2との間にDC/DCコンバータ回路を設ける、いわゆるトランスレス方式であってもよい。
直流電源1は、直流電力を出力するものであり、例えば太陽電池を備えている。太陽電池は、太陽光エネルギーを電気エネルギーに変換することで、直流電力を生成する。直流電源1は、生成された直流電力を、インバータ回路2に出力する。なお、直流電源1は、太陽電池により直流電力を生成するものに限定されない。例えば、直流電源1は、燃料電池、蓄電池、電気二重層コンデンサやリチウムイオン電池などであってもよい。また、ディーゼルエンジン発電機、マイクロガスタービン発電機や風力タービン発電機などにより生成された交流電力を直流電力に変換して出力する装置であってもよい。
インバータ回路2は、6つのスイッチング素子を備えた三相フルブリッジ形インバータであり、制御回路5から入力されるPWM信号Pに基づいて各スイッチング素子のオンとオフとを切り替えることで、直流電源1から入力される直流電圧を交流電圧に変換する。なお、PWM信号Pは、各スイッチング素子に入力される6つのPWM信号からなる。
図6は、インバータ回路2の内部構成を説明するための回路図である。
同図に示すように、インバータ回路2は、6個のスイッチング素子S1〜S6、環流ダイオードD1〜D6、および平滑コンデンサCを備えている。本実施形態では、スイッチング素子S1〜S6としてIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor : 絶縁ゲート・バイポーラトランジスタ)を使用している。なお、スイッチング素子S1〜S6はIGBTに限定されず、バイポーラトランジスタ、MOSFET、逆阻止サイリスタなどであってもよい。また、環流ダイオードD1〜D6および平滑コンデンサCの種類も限定されない。
スイッチング素子S1とS4とは、スイッチング素子S1のエミッタ端子とスイッチング素子S4のコレクタ端子とが接続されて、直列接続されている。スイッチング素子S1のコレクタ端子は直流電源1の正極側に接続され、スイッチング素子S4のエミッタ端子は直流電源1の負極側に接続されて、ブリッジ構造を形成している。同様に、スイッチング素子S2とS5とが直列接続されてブリッジ構造を形成し、スイッチング素子S3とS6とが直列接続されてブリッジ構造を形成している。スイッチング素子S1とS4で形成されているブリッジ構造をU相アームとし、スイッチング素子S2とS5で形成されているブリッジ構造をV相アームとし、スイッチング素子S3とS6で形成されているブリッジ構造をW相アームとする。U相アームのスイッチング素子S1とS4との接続点にはU相の出力ラインが接続され、V相アームのスイッチング素子S2とS5との接続点にはV相の出力ラインが接続され、W相アームのスイッチング素子S3とS6との接続点にはW相の出力ラインが接続されている。各スイッチング素子S1〜S6のベース端子には、制御回路5から出力されるPWM信号Pが入力される。
各スイッチング素子S1〜S6は、PWM信号Pに基づいて、オン状態とオフ状態とを切り替えられる。各アームの両端はそれぞれ直流電源1の正極と負極とに接続されているので、正極側のスイッチング素子がオン状態で負極側のスイッチング素子がオフ状態の場合、当該相の出力ラインの電位は直流電源1の正極側の電位となる。一方、正極側のスイッチング素子がオフ状態で負極側のスイッチング素子がオン状態の場合、当該相の出力ラインの電位は直流電源1の負極側の電位となる。これにより、直流電源1の正極側の電位と負極側の電位とが切り替えられたパルス状の電圧信号が各出力ラインから出力され、出力ライン間の電圧である線間電圧が交流電圧となる。
環流ダイオードD1〜D6は、スイッチング素子S1〜S6のコレクタ端子とエミッタ端子との間に、それぞれ逆並列に接続されている。すなわち、環流ダイオードD1〜D6のアノード端子はそれぞれスイッチング素子S1〜S6のエミッタ端子に接続され、環流ダイオードD1〜D6のカソード端子はそれぞれスイッチング素子S1〜S6のコレクタ端子に接続されている。各スイッチング素子S1〜S6には、スイッチングによる逆起電力が発生する。環流ダイオードD1〜D6は、当該逆起電力による逆方向の高い電圧がスイッチング素子S1〜S6に印加されないようにするためのものである。
平滑コンデンサCは、直流電源1から入力される直流電圧を平滑化するものである。
なお、インバータ回路2の構成は、これに限られない。例えば、インバータ回路2は、3レベルインバータなどのマルチレベルインバータであってもよいし、ソフトスイッチング技術を適用したインバータであってもよい。また、インバータ回路2はフルブリッジ形インバータに限定されず、ハーフブリッジ形インバータであってもよい。
フィルタ回路3は、インバータ回路2より入力される交流電圧から、スイッチングによる高周波成分を除去するものである。フィルタ回路3は、リアクトルとコンデンサとからなるローパスフィルタ(図示しない。)を備えている。フィルタ回路3で高周波成分を除去された交流電圧は、変圧回路4に出力される。なお、フィルタ回路3の構成はこれに限定されず、高周波成分を除去するための周知のフィルタ回路であればよい。変圧回路4は、フィルタ回路3から出力される交流電圧を系統Bの系統電圧とほぼ同一のレベルに昇圧または降圧する。
制御回路5は、インバータ回路2のスイッチング素子のスイッチングを制御するPWM信号Pを生成するものである。制御回路5は、図示しない各種センサから検出信号を入力され、インバータ回路2にPWM信号Pを出力する。
制御回路5は、系統連系インバータシステムAが出力する出力電圧の波形を指令するための指令値信号Xu1,Xv1,Xw1を各種センサから入力される検出信号に基づいて生成し、当該指令値信号Xu1,Xv1,Xw1に基づいてPWM信号Pを生成する。インバータ回路2は、入力されるPWM信号Pに基づいて各スイッチング素子のオンとオフとを切り替えることで、指令値信号Xu1,Xv1,Xw1に対応した電圧信号を出力する。制御回路5は、指令値信号Xu1,Xv1,Xw1の波形を変化させてインバータ回路2の出力電圧信号を変化させることで出力電流を制御している。これにより、制御回路5は、各種フィードバック制御を行っている。なお、制御回路5は、過電流、地絡、短絡、単独運転などを検出してインバータ回路2の運転を停止させる構成や、最大電力追従のための構成なども有しているが、本発明の説明に関係しないので、図5への記載および説明を省略している。
次に、図7〜図10を参照して、制御回路5の内部構成および指令値信号Xu1,Xv1,Xw1およびPWM信号Pの生成方法の詳細な説明を行う。
図7は、制御回路5の内部構成を説明するためのブロック図である。
制御回路5は、フィードバック制御部51、指令値信号生成部52、およびPWM信号生成部53を備えている。
フィードバック制御部51は、各種センサより入力される検出信号と予め設定されている目標値との偏差に基づいてフィードバック制御を行い、系統連系インバータシステムAの出力相電圧の波形を指令するために生成した相電圧指令値信号Xu,Xv,Xwを指令値信号生成部52に出力するものである。フィードバック制御部51で行われるフィードバック制御の詳細については記載を省略している。フィードバック制御部51が行うフィードバック制御は、系統連系インバータシステムAが出力する出力電流や出力電圧、出力有効電力、出力無効電力を制御するものであってもよいし、直流電源1から出力される直流電圧を制御するものであってもよい。
指令値信号生成部52は、フィードバック制御部51から入力される相電圧指令値信号Xu,Xv,Xwに基づいて、指令値信号Xu1,Xv1,Xw1を生成してPWM信号生成部53に出力する。指令値信号Xu1,Xv1,Xw1は、系統連系インバータシステムAが出力する相電圧の波形を実際に指令するための信号である。指令値信号Xu1,Xv1,Xw1の波形は、図4(c)に示す波形Xu1,Xv1,Xw1のように特殊な形状の波形となる。すなわち、指令値信号生成部52は、相電圧指令値信号Xu,Xv,Xwを指令値信号Xu1,Xv1,Xw1に変換するものである。
指令値信号生成部52は、相電圧指令値信号Xu,Xv,Xwから線間電圧指令値信号Xuv,Xvw,Xwuを生成する。すなわち、相電圧指令値信号XuとXvとの差分によって線間電圧指令値信号Xuvを生成し、相電圧指令値信号XvとXwとの差分によって線間電圧指令値信号Xvwを生成し、相電圧指令値信号XwとXuとの差分によって線間電圧指令値信号Xwuを生成する。線間電圧指令値信号Xuv,Xvw,Xwuは、系統連系インバータシステムAが出力する線間電圧の波形を指令するための信号である。
また、指令値信号生成部52は、線間電圧指令値信号Xuv,Xvw,Xwuの極性を反転させた信号Xvu,Xwv,Xuwを生成する。なお、極性を反転させるのではなく、相電圧指令値信号XvとXuとの差分によって信号Xvuを生成し、相電圧指令値信号XwとXvとの差分によって信号Xwvを生成し、相電圧指令値信号XuとXwとの差分によって信号Xuwを生成するようにしてもよい。
指令値信号生成部52は、線間電圧指令値信号Xuv,Xvw,Xwu、信号Xvu,Xwv,Xuw、値が「0」であるゼロ信号、および、値が「2」である信号を用いて、指令値信号Xu1,Xv1,Xw1を生成する。本実施形態では、正規化のために相電圧指令値信号Xu,Xv,Xwの振幅を「1」としているので、線間電圧指令値信号Xuv,Xvw,Xwuの振幅は√(3)となる(図4(a)参照)。指令値信号Xu1,Xv1,Xw1の上限値は、線間電圧指令値信号Xuv,Xvw,Xwuの振幅以上の値にする必要がある。したがって、本実施形態では、当該上限値を「2」にするために、値が「2」である信号を用いている。なお、当該上限値は線間電圧指令値信号Xuv,Xvw,Xwuの振幅以上の値であればよいので、設定する変調度に応じて、√(3)以上の所定の値が上限値として設定される。後述するキャリア信号の振幅は、上限値に応じて設定される。
図8は、指令値信号生成部52で行われる、線間電圧指令値信号Xuv,Xvw,Xwuから指令値信号Xu1,Xv1,Xw1を生成する処理(以下では、「指令値信号生成処理」とする。)について説明するためのフローチャートである。指令値信号生成処理は、所定のタイミングで実行される。
まず、相電圧指令値信号Xu,Xv,Xwおよび線間電圧指令値信号Xuv,Xvw,Xwuが取得される(S1)。次に、Xuvの絶対値がXvwの絶対値より大きいか否かが判別される(S2)。Xuvの絶対値の方が大きい場合(S2:YES)、Xuvの絶対値がXwuの絶対値より大きいか否かが判別される(S3)。Xuvの絶対値の方が大きい場合(S3:YES)、すなわち、Xuvの絶対値が最大の場合、ステップS5に進む。一方、Xuvの絶対値がXwuの絶対値以下の場合(S3:NO)、すなわち、Xwuの絶対値が最大の場合、ステップS6に進む。ステップS2において、Xuvの絶対値がXvwの絶対値以下の場合(S2:NO)、Xvwの絶対値がXwuの絶対値より大きいか否かが判別される(S4)。Xvwの絶対値の方が大きい場合(S4:YES)、すなわち、Xvwの絶対値が最大の場合、ステップS7に進む。一方、Xvwの絶対値がXwuの絶対値以下の場合(S4:NO)、すなわち、Xwuの絶対値が最大の場合、ステップS6に進む。ステップS2〜S4では、Xuv,Xvw,Xwuのうち絶対値が最大のものを判定している。
Xuvの絶対値が最大と判定されてステップS5に進んだ場合、Xuが正の値であるか否かが判別される(S5)。Xuが正の値である場合(S5:YES)、指令値信号Xu1はXuvとされ、指令値信号Xv1は「0」とされ、指令値信号Xw1はXvwのマイナス値とされる(S8)。一方、Xuが「0」以下の場合(S5:NO)、Xu1は「2」にXuvを加算した値とされ、Xv1は「2」とされ、Xw1は「2」からXvwを減算した値とされる(S9)。
Xwuの絶対値が最大と判定されてステップS6に進んだ場合、Xwが正の値であるか否かが判別される(S6)。Xwが正の値である場合(S6:YES)、Xu1は「0」とされ、Xv1はXuvのマイナス値とされ、Xw1はXwuとされる(S10)。一方、Xwが「0」以下の場合(S6:NO)、Xu1は「2」とされ、Xv1は「2」からXuvを減算した値とされ、Xw1は「2」にXwuを加算した値とされる(S11)。
Xvwの絶対値が最大と判定されてステップS7に進んだ場合、Xvが正の値であるか否かが判別される(S7)。Xvが正の値である場合(S7:YES)、Xu1はXwuのマイナス値とされ、Xv1はXvwとされ、Xw1は「0」とされる(S12)。一方、Xvが「0」以下の場合(S7:NO)、Xu1は「2」からXwuを減算した値とされ、Xv1は「2」にXvwを加算した値とされ、Xw1は「2」とされる(S13)。
つまり、指令値信号生成処理では、線間電圧指令値信号Xuv,Xvw,Xwuのうち絶対値が最大のものを判定し、絶対値が最大のものに対応する相電圧指令値信号の正負を判定し、その判定結果に応じて指令値信号Xu1,Xv1,Xw1を決定している。すなわち、図3に示すベクトル図のいずれのモードの状態かを判定して、判定されたモードのベクトル図に対応するように各相の指令値信号Xu1,Xv1,Xw1を決定している。
図3(a)に示すモード1の状態の場合、正三角形Tの頂点vと頂点wとを結ぶ辺vwのY軸上への正射影の長さが、他の辺wu,uvのY軸上への正射影の長さ以上になる。つまり、ベクトルPvwのY軸上への正射影の長さが、ベクトルPwu,PuvのY軸上への正射影の長さ以上になる(各ベクトルは図示していない。)。これは、線間電圧指令値信号Xvwの絶対値が線間電圧指令値信号Xwu,Xuvの絶対値以上であることを示している。また、モード1の状態の場合、ベクトルPvのY座標は負の値となる。これは、相電圧指令値信号Xvが負の値であることを示している。すなわち、モード1の状態では、線間電圧指令値信号Xvwの絶対値が最大となり、相電圧指令値信号Xvが負の値となる。
また、モード1の状態の場合、正三角形Tの頂点uのY座標は、B(図8においては、B=「2」の場合について説明しているので、以下では、「2」とする。)にベクトルPuwのY座標を加算した値(すなわち、「2」からベクトルPwuのY座標を減算した値)となる。これは、相電圧指令値信号Xu1が、「2」から線間電圧指令値信号Xwuを減算したものになることを示している。また、正三角形Tの頂点vのY座標は、「2」にベクトルPvwのY座標を加算した値となる。これは、相電圧指令値信号Xv1が、「2」に線間電圧指令値信号Xvwを加算したものになることを示している。また、正三角形Tの頂点wは最大点に固定されているので、頂点wのY座標は、「2」に固定される。これは、相電圧指令値信号Xw1が、「2」になることを示している。
したがって、図8に示すフローチャートにおいて、Xvwの絶対値が最大でXvが負の値である場合(S7:NO)がモード1の状態であり、このとき、Xu1を「2」からXwuを減算した値とし、Xv1を「2」にXvwを加算した値とし、Xw1を「2」としている(S13)。
同様に、図3(b)に示すモード2の状態の場合、ベクトルPuvのY軸上への正射影の長さが最大となり、ベクトルPuのY座標は正の値となる。すなわち、線間電圧指令値信号Xuvの絶対値が最大となり、相電圧指令値信号Xuが正の値となる(図8において、S5:YES)。このとき、頂点u,v,wのY座標は、それぞれ、ベクトルPuvのY座標の値、「0」、ベクトルPvwのY座標のマイナス値となる。したがって、Xu1をXuvとし、Xv1を「0」とし、Xw1をXvwのマイナス値としている(図8におけるS8)。
図3(c)に示すモード3の状態の場合、ベクトルPwuのY軸上への正射影の長さが最大となり、ベクトルPwのY座標は負の値となる。すなわち、線間電圧指令値信号Xwuの絶対値が最大となり、相電圧指令値信号Xwが負の値となる(図8において、S6:NO)。このとき、頂点u,v,wのY座標は、それぞれ、「2」、「2」からベクトルPuvのY座標を減算した値、「2」にベクトルPwuのY座標を加算した値となる。したがって、Xu1を「2」とし、Xv1を「2」からXuvを減算した値とし、Xw1を「2」にXwuを加算した値としている(図8におけるS11)。
図3(d)に示すモード4の状態の場合、ベクトルPvwのY軸上への正射影の長さが最大となり、ベクトルPvのY座標は正の値となる。すなわち、線間電圧指令値信号Xvwの絶対値が最大となり、相電圧指令値信号Xvが正の値となる(図8において、S7:YES)。このとき、頂点u,v,wのY座標は、それぞれ、ベクトルPwuのY座標のマイナス値、ベクトルPvwのY座標の値、「0」となる。したがって、Xu1をXwuのマイナス値とし、Xv1をXvwとし、Xw1を「0」としている(図8におけるS12)。
図3(e)に示すモード5の状態の場合、ベクトルPuvのY軸上への正射影の長さが最大となり、ベクトルPuのY座標は負の値となる。すなわち、線間電圧指令値信号Xuvの絶対値が最大となり、相電圧指令値信号Xuが負の値となる(図8において、S5:NO)。このとき、頂点u,v,wのY座標は、それぞれ、「2」にベクトルPuvのY座標を加算した値、「2」、「2」からベクトルPvwのY座標を減算した値となる。したがって、Xu1を「2」にXuvを加算した値とし、Xv1を「2」とし、Xw1を「2」からXvwを減算した値としている(図8におけるS9)。
図3(f)に示すモード6の状態の場合、ベクトルPwuのY軸上への正射影の長さが最大となり、ベクトルPwのY座標は正の値となる。すなわち、線間電圧指令値信号Xwuの絶対値が最大となり、相電圧指令値信号Xwが正の値となる(図8において、S6:YES)。このとき、頂点u,v,wのY座標は、それぞれ、「0」、ベクトルPuvのY座標のマイナス値、ベクトルPwuのY座標の値となる。したがって、Xu1を「0」とし、Xv1をXuvのマイナス値とし、Xw1をXwuとしている(図8におけるS10)。
指令値信号生成処理により生成された、指令値信号Xu1,Xv1,Xw1の波形は、図4(c)に示す波形Xu1,Xv1,Xw1のようになる。すなわち、モード1においては、図8のフローチャートにおいてステップS13に進むので、波形Xu1は波形Xuw(図4(b)参照)を「2」だけ上方にシフトさせた波形となり、波形Xv1は波形Xvw(図4(a)参照)を「2」だけ上方にシフトさせた波形となり、波形Xw1は「2」に固定された波形となる。また、モード2においては、図8のフローチャートにおいてステップS8に進むので、波形Xu1は波形Xuvとなり、波形Xv1は「0」に固定された波形となり、波形Xw1は波形Xwvとなる。モード3においては、図8のフローチャートにおいてステップS11に進むので、波形Xu1は「2」に固定された波形となり、波形Xv1は波形Xvuを「2」だけ上方にシフトさせた波形となり、波形Xw1は波形Xwuを「2」だけ上方にシフトさせた波形となる。モード4においては、図8のフローチャートにおいてステップS12に進むので、波形Xu1は波形Xuwとなり、波形Xv1は波形Xvwとなり、波形Xw1は「0」に固定された波形となる。モード5においては、図8のフローチャートにおいてステップS9に進むので、波形Xu1は波形Xuvを「2」だけ上方にシフトさせた波形となり、波形Xv1は「2」に固定された波形となり、波形Xw1は波形Xwvを「2」だけ上方にシフトさせた波形となる。モード6においては、図8のフローチャートにおいてステップS10に進むので、波形Xu1は「0」に固定された波形となり、波形Xv1は波形Xvuとなり、波形Xw1は波形Xwuとなる。
なお、図8に示すフローチャートは、指令値信号生成処理の一例であって、これに限られない。例えば、各線間電圧指令値信号Xuv,Xvw,Xwuが各相電圧指令値信号Xu,Xv,Xwの差分によって算出されることを利用して、ステップS8〜S13における指令値信号Xu1,Xv1,Xw1を、相電圧指令値信号Xu,Xv,Xwを用いて算出するようにしてもよい。例えば、ステップS8の場合、Xu1=Xu−Xv、Xv1=0、Xw1=Xw−Xvとし、ステップS9の場合、Xu1=2+Xu−Xv、Xv1=2、Xw1=2+Xw−Xvとしてもよい。
また、U相の相電圧指令値信号Xuの位相に応じて指令値信号Xu1,Xv1,Xw1を生成するようにしてもよい。
図9は、他の指令値信号生成処理について説明するためのフローチャートである。当該指令値信号生成処理では、相電圧指令値信号Xuの位相に応じて指令値信号Xu1,Xv1,Xw1を生成する。
まず、線間電圧指令値信号Xuv,Xvw,Xwuおよび相電圧指令値信号Xuの位相θが取得される(S21)。位相θは、−π/6≦θ<11π/6となるように調整される。次に、位相θが−π/6以上でありπ/6未満であるか否かが判別される(S22)。位相θがこれに該当する場合(S22:YES)、Xu1は「2」からXwuを減算した値とされ、Xv1は「2」にXvwを加算した値とされ、Xw1は「2」とされる(S23)。つまり、−π/6≦θ<π/6の場合、図3に示すベクトル図のモード1の状態であると判定され、モード1のベクトル図に対応するように各相の指令値信号が決定される。
位相θがステップS22の範囲に該当しない場合(S22:NO)、位相θがπ/6以上でありπ/2未満であるか否かが判別される(S24)。位相θがこれに該当する場合(S24:YES)、Xu1はXuvとされ、Xv1は「0」とされ、Xw1はXvwのマイナス値とされる(S25)。つまり、π/6≦θ<π/2の場合、図3に示すベクトル図のモード2の状態であると判定され、モード2のベクトル図に対応するように各相の指令値信号が決定される。
位相θがステップS24の範囲に該当しない場合(S24:NO)、位相θがπ/2以上であり5π/6未満であるか否かが判別される(S26)。位相θがこれに該当する場合(S26:YES)、Xu1は「2」とされ、Xv1は「2」からXuvを減算した値とされ、Xw1は「2」にXwuを加算した値とされる(S27)。つまり、π/2≦θ<5π/6の場合、図3に示すベクトル図のモード3の状態であると判定され、モード3のベクトル図に対応するように各相の指令値信号が決定される。
位相θがステップS26の範囲に該当しない場合(S26:NO)、位相θが5π/6以上であり7π/6未満であるか否かが判別される(S28)。位相θがこれに該当する場合(S28:YES)、Xu1はXwuのマイナス値とされ、Xv1はXvwとされ、Xw1は「0」とされる(S29)。つまり、5π/6≦θ<7π/6の場合、図3に示すベクトル図のモード4の状態であると判定され、モード4のベクトル図に対応するように各相の指令値信号が決定される。
位相θがステップS28の範囲に該当しない場合(S28:NO)、位相θが7π/6以上であり3π/2未満であるか否かが判別される(S30)。位相θがこれに該当する場合(S30:YES)、Xu1は「2」にXuvを加算した値とされ、Xv1は「2」とされ、Xw1は「2」からXvwを減算した値とされる(S31)。つまり、7π/6≦θ<3π/2の場合、図3に示すベクトル図のモード5の状態であると判定され、モード5のベクトル図に対応するように各相の指令値信号が決定される。
位相θがステップS30の範囲に該当しない場合(S26:NO)、すなわち、位相θが7π/6以上であり11π/6未満である場合、Xu1は「0」とされ、Xv1はXuvのマイナス値とされ、Xw1はXwuとされる(S32)。つまり、7π/6≦θ<11π/6の場合、図3に示すベクトル図のモード6の状態であると判定され、モード6のベクトル図に対応するように各相の指令値信号が決定される。
なお、指令値信号生成部52は、指令値信号Xu1,Xv1,Xw1をそれぞれ個別に生成するものに限定されない。指令値信号生成部52は、例えば、指令値信号Xu1だけを生成し、指令値信号Xu1の位相を2π/3遅らせた信号を指令値信号Xv1とし、指令値信号Xu1の位相を4π/3遅らせた信号を指令値信号Xw1として出力するものであってもよい。
図7に戻って、PWM信号生成部53は、その内部で生成される所定の周波数(例えば、4kHz)のキャリア信号(例えば、三角波信号)と、指令値信号生成部52から入力される指令値信号Xu1,Xv1,Xw1とに基づいてPWM信号Pを生成し、インバータ回路2に出力するものである。PWM信号生成部53は、下限値を指令値信号Xu1,Xv1,Xw1の下限値(すなわち「0」)とし、上限値を指令値信号Xu1,Xv1,Xw1の上限値(すなわち「2」)として、この間で変化する三角波信号をキャリア信号として生成する。なお、本実施形態では、キャリア信号の上限値および下限値を指令値信号Xu1,Xv1,Xw1の上限値および下限値にそれぞれ一致させているが、これに限られない。例えば、キャリア信号の振幅が指令値信号Xu1,Xv1,Xw1の振幅より小さくなるようにしてもよい。ただし、この場合は過変調となって変調の精度が悪くなるので、上限値および下限値をそれぞれ一致させるのが望ましい。
PWM信号生成部53は、指令値信号Xu1がキャリア信号以上となる期間にハイレベルとなり、指令値信号Xu1がキャリア信号より小さい期間にローレベルとなるパルス信号をインバータ回路2のスイッチング素子S1(図6参照)に入力するPWM信号P1として生成する。なお、PWM信号P1の生成時に、パルス幅が所定より小さいパルスは除去される。したがって、指令値信号Xu1が「0」に固定されている期間においてキャリア信号が「0」となっても、瞬間的にハイレベルになるのではなく、ローレベルが継続される。また、PWM信号生成部53は、同様に、指令値信号Xv1とキャリア信号との比較により、スイッチング素子S2に入力するPWM信号P2を生成し、指令値信号Xw1とキャリア信号との比較により、スイッチング素子S3に入力するPWM信号P3を生成する。また、PWM信号生成部53は、PWM信号P1,P2,P3の極性を反転させて、スイッチング素子S4,S5,S6にそれぞれ入力するPWM信号P4,P5,P6を生成する。生成されたPWM信号P1〜P6は、それぞれインバータ回路2のスイッチング素子S1〜S6のベース端子に入力される。
図10は、指令値信号Xu1とキャリア信号とからPWM信号P1,P4を生成する方法を説明するための図である。同図においては、指令値信号Xu1を波形X、キャリア信号を波形C、PWM信号P1,P4を波形P1,P4で示している。図10において、波形Xが波形C以上となる期間に波形P1がハイレベルとなっており、波形Xが波形Cより小さい期間に波形P1がローレベルとなっている。また、波形P4は、波形P1の極性を反転した波形となっている。
なお、PWM信号生成部53の構成は、上述したものに限定されない。指令値信号Xu1,Xv1,Xw1からPWM信号Pを生成することができるものであれば、他の方法を用いてもよい。例えば、キャリア信号を三角波信号の代わりにのこぎり波信号としてもよい。また、キャリア信号との比較による方法以外の方法を用いるものであってもよい。また、PWMホールド法を用いて線間電圧指令値信号Xuv,Xvw,Xwuからパルス幅(以下では、「線間電圧に対するパルス幅」とする。)を算出し、所定のアルゴリズムによって線間電圧に対するパルス幅を相電圧に対するパルス幅に変換し、相電圧に対するパルス幅に基づいてPWM信号Pを生成するようにしてもよい(特開2010−68630号公報参照)。
なお、制御回路5は、アナログ回路として実現してもよいし、デジタル回路として実現してもよい。また、各部が行う処理をプログラムで設計し、当該プログラムを実行させることでコンピュータを制御回路5として機能させてもよい。また、当該プログラムを記録媒体に記録しておき、コンピュータに読み取らせるようにしてもよい。
本実施形態において、制御回路5の指令値信号生成部52は図4(c)に示す波形となる指令値信号Xu1,Xv1,Xw1を出力し、PWM信号生成部53は指令値信号Xu1,Xv1,Xw1に基づいてPWM信号Pを生成してインバータ回路2に出力する。インバータ回路2は、PWM信号Pに基づいて、スイッチング素子S1〜S6のスイッチングを行う。これにより、直流電源1が出力する直流電力は、交流電力に変換されて出力される。
系統連系インバータシステムAが出力する相電圧信号Vu1,Vv1,Vw1の波形は図4(c)に示す指令値信号Xu1,Xv1,Xw1の波形と同じになる。図4から明らかなように、指令値信号Xu1とXv1との差分信号は線間電圧指令値信号Xuvに一致する。例えば、モード1においてXu1=2−Xwu、Xv1=2+Xvwであり、Xwu=√(3)・sin(ωt−7π/6)、Xvw=√(3)・sin(ωt−π/2)であることから、その差分はXu1−Xv1=2−Xwu−2−Xvw=−√(3)・sin(ωt−7π/6)−√(3)・sin(ωt−π/2)=√(3)・sin(ωt−π/6)=Xuvとなる。すなわち、指令値信号Xu1とXv1との差分信号が線間電圧指令値信号Xuvに一致することが、計算によっても確認できる。モード2〜6においても同様に、Xu1−Xv1=Xuvとなることが確認できる。同様に、指令値信号Xv1とXw1との差分信号は線間電圧指令値信号Xvwに一致し、指令値信号Xw1とXu1との差分信号は線間電圧指令値信号Xwuに一致する。したがって、相電圧信号Vu1,Vv1,Vw1の差分信号である線間電圧信号Vuv,Vvw,Vwuの波形は、図4(a)に示す線間電圧指令値信号Xuv,Xvw,Xwuの波形Xuv,Xvw,Xwuと同じになる。すなわち、線間電圧信号Vuv,Vvw,Vwuは三相平衡した正弦波信号となるので、系統Bの系統電圧と同期することができる。したがって、系統連系インバータシステムAが出力する交流電力を系統Bに供給することができる。
図10の波形P1が示すように、PWM信号P1は、指令値信号Xu1(波形X)が「0」に固定されている期間でローレベルを継続し、「2」に固定されている期間でハイレベルを継続する。これらの期間で、スイッチング素子S1は、スイッチングを停止する。したがって、スイッチング素子のスイッチングの回数が削減されるので、スイッチングロスを低減することができる。また、PWM信号P1がハイレベルを継続している時間とローレベルを継続している時間とが同等となる。また、PWM信号P4はPWM信号P1の極性を反転させたものである。したがって、PWM信号P1がハイレベルを継続している時間とPWM信号P4がハイレベルを継続している時間とが同等となる。これにより、スイッチング素子S1がオン状態になっている時間とスイッチング素子S4がオン状態になっている時間とは同等となる。したがって、スイッチング素子S1とスイッチング素子S4の劣化は同様に進行し、両者の寿命は同等となる。また、両者の発熱量も同等となるので、冷却部材の設計は容易になる。
本実施形態の制御回路5は、フィードバック制御部51およびPWM信号生成部53が従来の制御回路500(図31参照)のものと共通する。したがって、従来の制御回路500において指令値信号生成部52を追加するだけで実現することができる。
上記実施形態においては、指令値信号Xu1,Xv1,Xw1の下限値が「0」で上限値が「2」の場合について説明したが、これに限られない。例えば、下限値が「−1」で上限値が「1」となるように、指令値信号Xu1,Xv1,Xw1を生成するようにしてもよい。この場合、PWM信号生成部53で用いられるキャリア信号の下限値および上限値も、指令値信号Xu1,Xv1,Xw1の下限値および上限値に応じたものを設定する必要がある。
上記実施形態においては、直流電源1の負極が接地されて負極の電位が「0」である場合について説明したが、これに限られない。例えば、直流電源1の正極が接地されて正極の電位が「0」である場合や、正極の電位が正の電位で負極の電位が負の電位である場合などでも、本発明を適用することができる。
上記実施形態においては、図4(c)に示す波形Xu1,Xv1,Xw1となる指令値信号Xu1,Xv1,Xw1を生成してインバータ回路2の制御を行っているが、これに限られない。他の波形の指令値信号を生成してインバータ回路2の制御を行うようにしてもよい。他の波形の指令値信号を生成する制御方法を第2ないし第4実施形態として、以下に説明する。第2実施形態に係る指令値信号をXu2,Xv2,Xw2とし、第3実施形態に係る指令値信号をXu3,Xv3,Xw3とし、第4実施形態に係る指令値信号をXu4,Xv4,Xw4とする。第2ないし第4実施形態は、指令値信号生成部52で行われる指令値信号生成処理のみが、第1実施形態とは異なる。その他の構成は第1実施形態と共通するので、説明を省略する。
図11は、第2実施形態に係る制御の考え方をベクトルで説明するための図である。
図11に示す第2実施形態の制御の考え方は、図3に示す第1実施形態の制御の考え方と同様に、正三角形Tの各頂点を原点と最大点(X座標が「0」でY座標がBである点)とに固定するものである。しかし、第2実施形態と第1実施形態とでは、固定する頂点が異なる。図11においては、図3と同様に、中性点N、ベクトルPu、および正三角形Tを示しており、図11(a)の左の図以外は、ベクトルPv,Pwの記載を省略している。また、各図において、固定している頂点に白丸を付している。
同図(a)は、角度θ(ベクトルPuがX軸となす角度)が−π/6からπ/6まで変化するときの状態を示している。−π/6≦θ≦π/6のとき、正三角形Tの頂点vが原点に固定され、頂点vを中心として正三角形Tが反時計回り(図に示す破線矢印の方向であり、以下でも同様である。)にπ/3回転する。この状態を「モード1」とする。同図(a)は、モード1では、V相の電位が「0」に固定されることを示している。左の図はθ=−π/6のとき、中央の図はθ=0のとき、右の図はθ=π/6のときを示している。θ=π/6になると、正三角形Tが頂点uを最大点に一致させるように移動して、中性点Nが遷移する。これは、V相の電位が「0」に固定されている状態から、U相の電位がBに固定される状態に変化することを示している。
同図(b)は、角度θがπ/6からπ/2(=3π/6)まで変化するときの状態を示している。π/6≦θ≦π/2のとき、正三角形Tの頂点uが最大点に固定され、頂点uを中心として正三角形Tが反時計回りにπ/3回転する。この状態を「モード2」とする。同図(b)は、モード2では、U相の電位がBに固定されることを示している。左の図はθ=π/6のとき、中央の図はθ=π/3(=2π/6)のとき、右の図はθ=π/2(=3π/6)のときを示している。左の図は、同図(a)の右の図の中性点遷移後と同じ図である。θ=π/2になると、正三角形Tが頂点wを原点に一致させるように移動して、中性点Nが遷移する。これは、U相の電位がBに固定されている状態から、W相の電位が「0」に固定される状態に変化することを示している。
同図(c)は、角度θがπ/2(=3π/6)から5π/6まで変化するときの状態を示している。π/2≦θ≦5π/6のとき、正三角形Tの頂点wが原点に固定され、頂点wを中心として正三角形Tが反時計回りにπ/3回転する。この状態を「モード3」とする。同図(c)は、モード3では、W相の電位が「0」に固定されることを示している。左の図はθ=π/2(=3π/6)のとき、中央の図はθ=2π/3(=4π/6)のとき、右の図はθ=5π/6のときを示している。左の図は、同図(b)の右の図の中性点遷移後と同じ図である。θ=5π/6になると、正三角形Tが頂点vを最大点に一致させるように移動して、中性点Nが遷移する。これは、W相の電位が「0」に固定されている状態から、V相の電位がBに固定される状態に変化することを示している。
同図(d)は、角度θが5π/6から7π/6まで変化するときの状態を示している。5π/6≦θ≦7π/6のとき、正三角形Tの頂点vが最大点に固定され、頂点vを中心として正三角形Tが反時計回りにπ/3回転する。この状態を「モード4」とする。同図(d)は、モード4では、V相の電位がBに固定されることを示している。左の図はθ=5π/6のとき、中央の図はθ=π(=6π/6)のとき、右の図はθ=7π/6のときを示している。左の図は、同図(c)の右の図の中性点遷移後と同じ図である。θ=7π/6になると、正三角形Tが頂点uを原点に一致させるように移動して、中性点Nが遷移する。これは、V相の電位がBに固定されている状態から、U相の電位が「0」に固定される状態に変化することを示している。
同図(e)は、角度θが7π/6から3π/2(=9π/6)まで変化するときの状態を示している。7π/6≦θ≦3π/2のとき、正三角形Tの頂点uが原点に固定され、頂点uを中心として正三角形Tが反時計回りにπ/3回転する。この状態を「モード5」とする。同図(e)は、モード5では、U相の電位が「0」に固定されることを示している。左の図はθ=7π/6のとき、中央の図はθ=4π/3(=8π/6)のとき、右の図はθ=3π/2(=9π/6)のときを示している。左の図は、同図(d)の右の図の中性点遷移後と同じ図である。θ=3π/2になると、正三角形Tが頂点wを最大点に一致させるように移動して、中性点Nが遷移する。これは、U相の電位が「0」に固定されている状態から、W相の電位がBに固定される状態に変化することを示している。
同図(f)は、角度θが3π/2(=9π/6)から11π/6(=−π/6)まで変化するときの状態を示している。3π/2≦θ≦11π/6のとき、正三角形Tの頂点wが最大点に固定され、頂点wを中心として正三角形Tが反時計回りにπ/3回転する。この状態を「モード6」とする。同図(f)は、モード6では、W相の電位がBに固定されることを示している。左の図はθ=3π/2(=9π/6)のとき、中央の図はθ=5π/3(=10π/6)のとき、右の図はθ=11π/6のときを示している。左の図は、同図(e)の右の図の中性点遷移後と同じ図である。θ=11π/6になると、正三角形Tが頂点vを原点に一致させるように移動して、中性点Nが遷移する。これは、W相の電位がBに固定されている状態から、V相の電位が「0」に固定される状態に変化することを示している。この遷移後の図は、同図(a)の左の図と同じである。以後、モード1〜6が繰り返される。
図11に示すベクトル図において、各相の相電圧は、正三角形Tの各頂点のY座標によって表される。モード1においては頂点vが原点に固定されるので、頂点vから頂点uに向かうベクトルPuvのY軸上への正射影がU相の相電圧となる(同図(a)参照)。したがって、モード1においては、指令値信号Xu2を、線間電圧指令値信号Xuvとすればよい。モード2においては頂点uが最大点に固定されるので、U相の相電圧はBとなる(同図(b)参照)。したがって、モード2においては、指令値信号Xu2を、値がBである信号とすればよい。モード3においては頂点wが原点に固定されるので、頂点wから頂点uに向かうベクトルPuwのY軸上への正射影がU相の相電圧となる(同図(c)参照)。したがって、モード3においては、指令値信号Xu2を、信号Xuw(=−Xwu)とすればよい。モード4においては頂点vが最大点に固定されるので、頂点vから頂点uに向かうベクトルPuvのY軸上への正射影にBを加算した値がU相の相電圧となる(同図(d)参照)。したがって、モード4においては、指令値信号Xu2を、信号XuvにBを加算したものとすればよい。モード5においては頂点uが原点に固定されるので、U相の相電圧は「0」となる(同図(e)参照)。したがって、モード5においては、指令値信号Xu2を、値が「0」であるゼロ信号とすればよい。モード6においては頂点wが最大点に固定されるので、頂点wから頂点uに向かうベクトルPuwのY軸上への正射影にBを加算した値がU相の相電圧となる(同図(f)参照)。したがって、モード6においては、指令値信号Xu2を、信号Xuw(=−Xwu)にBを加算したものとすればよい。
同様に、V相の指令値信号Xv2を、モード1においてはゼロ信号とし、モード2においては信号XvuにBを加算したものとし、モード3においては線間電圧指令値信号Xvwとし、モード4においては値がBである信号とし、モード5においては信号Xvuとし、モード6においては線間電圧指令値信号XvwにBを加算したものとすればよい。また、W相の指令値信号Xw2を、モード1においては信号Xwvとし、モード2においては線間電圧指令値信号XwuにBを加算したものとし、モード3においてはゼロ信号とし、モード4においては信号XwvにBを加算したものとし、モード5においては線間電圧指令値信号Xwuとし、モード6においては値がBである信号とすればよい。
図12は、第2実施形態に係る指令値信号生成部52で行われる指令値信号生成処理について説明するためのフローチャートである。指令値信号生成処理は、所定のタイミングで実行される。
同図に示すフローチャートにおいて、ステップS41〜47は、第1実施形態に係る指令値信号生成処理のフローチャート(図8参照)のステップS1〜S7と同一である。したがって、ステップS41〜47の詳細な説明を省略する。ステップS41〜47は、線間電圧指令値信号Xuv,Xvw,Xwuのうち絶対値が最大のものを判定し、絶対値が最大のものに対応する相電圧指令値信号の正負を判定している。そして、ステップS48〜S53では、判定結果に応じて指令値信号Xu2,Xv2,Xw2を決定している。すなわち、図11に示すベクトル図のいずれのモードの状態かを判定して、判定されたモードのベクトル図に対応するように各相の指令値信号Xu2,Xv2,Xw2を決定している。
Xuvの絶対値が最大であり、Xuが正の値であると判定された場合(S45:YES)は、指令値信号Xu2は「2」とされ、指令値信号Xv2は「2」からXuvを減算した値とされ、指令値信号Xw2は「2」にXwuを加算した値とされる(S48)。Xuvの絶対値が最大であり、Xuが負の値であると判定された場合(S45:NO)は、指令値信号Xu2は「0」とされ、指令値信号Xv2はXuvのマイナス値とされ、指令値信号Xw2はXwuとされる(S49)。Xwuの絶対値が最大であり、Xwが正の値であると判定された場合(S46:YES)は、指令値信号Xu2は「2」からXwuを減算した値とされ、指令値信号Xv2は「2」にXvwを加算した値とされ、指令値信号Xw2は「2」とされる(S50)。Xwuの絶対値が最大であり、Xwが負の値であると判定された場合(S46:NO)は、指令値信号Xu2はXwuのマイナス値とされ、指令値信号Xv2はXvwとされ、指令値信号Xw2は「0」とされる(S51)。Xvwの絶対値が最大であり、Xvが正の値であると判定された場合(S47:YES)は、指令値信号Xu2は「2」にXuvを加算した値とされ、指令値信号Xv2は「2」とされ、指令値信号Xw2は「2」からXvwを減算した値とされる(S52)。Xvwの絶対値が最大であり、Xvが負の値であると判定された場合(S47:NO)は、指令値信号Xu2はXuvとされ、指令値信号Xv2は「0」とされ、指令値信号Xw2はXvwのマイナス値とされる(S53)。
図11(a)に示すモード1の状態の場合、ベクトルPvwのY軸上への正射影の長さが最大となり、ベクトルPvのY座標は負の値となる。すなわち、線間電圧指令値信号Xvwの絶対値が最大となり、相電圧指令値信号Xvが負の値となる(図12において、S47:NO)。このとき、頂点u,v,wのY座標は、それぞれ、ベクトルPuvのY座標の値、「0」、ベクトルPvwのY座標のマイナス値となる。したがって、Xu2をXuvとし、Xv2を「0」とし、Xw2をXvwのマイナス値としている(図12におけるS53)。
図11(b)に示すモード2の状態の場合、ベクトルPuvのY軸上への正射影の長さが最大となり、ベクトルPuのY座標は正の値となる。すなわち、線間電圧指令値信号Xuvの絶対値が最大となり、相電圧指令値信号Xuが正の値となる(図12において、S45:YES)。このとき、頂点u,v,wのY座標は、それぞれ、B(なお、図12においては、B=「2」の場合について説明しているので、以下では、「2」とする。)、「2」にベクトルPvuのY座標を加算した値(すなわち、「2」からベクトルPuvのY座標を減算した値)、「2」にベクトルPwuのY座標を加算した値となる。したがって、Xu2を「2」とし、Xv2を「2」からXuvを減算した値とし、Xw2を「2」にXwuを加算した値としている(図12におけるS48)。
図11(c)に示すモード3の状態の場合、ベクトルPwuのY軸上への正射影の長さが最大となり、ベクトルPwのY座標は負の値となる。すなわち、線間電圧指令値信号Xwuの絶対値が最大となり、相電圧指令値信号Xwが負の値となる(図12において、S46:NO)。このとき、頂点u,v,wのY座標は、それぞれ、ベクトルPwuのY座標のマイナス値、ベクトルPvwのY座標の値、「0」となる。したがって、Xu2をXwuのマイナス値とし、Xv2をXvwとし、Xw2を「0」としている(図12におけるS51)。
図11(d)に示すモード4の状態の場合、ベクトルPvwのY軸上への正射影の長さが最大となり、ベクトルPvのY座標は正の値となる。すなわち、線間電圧指令値信号Xvwの絶対値が最大となり、相電圧指令値信号Xvが正の値となる(図12において、S47:YES)。このとき、頂点u,v,wのY座標は、それぞれ、「2」にベクトルPuvのY座標を加算した値、「2」、「2」からベクトルPvwのY座標を減算した値となる。したがって、Xu2を「2」にXuvを加算した値とし、Xv2を「2」とし、Xw2を「2」からXvwを減算した値としている(図12におけるS52)。
図11(e)に示すモード5の状態の場合、ベクトルPuvのY軸上への正射影の長さが最大となり、ベクトルPuのY座標は負の値となる。すなわち、線間電圧指令値信号Xuvの絶対値が最大となり、相電圧指令値信号Xuが負の値となる(図12において、S45:NO)。このとき、頂点u,v,wのY座標は、それぞれ、「0」、ベクトルPuvのY座標のマイナス値、ベクトルPwuのY座標の値となる。したがって、Xu2を「0」とし、Xv2をXuvのマイナス値とし、Xw2をXwuとしている(図12におけるS49)。
図11(f)に示すモード6の状態の場合、ベクトルPwuのY軸上への正射影の長さが最大となり、ベクトルPwのY座標は正の値となる。すなわち、線間電圧指令値信号Xwuの絶対値が最大となり、相電圧指令値信号Xwが正の値となる(図12において、S46:YES)。このとき、頂点u,v,wのY座標は、それぞれ、「2」からベクトルPwuのY座標を減算した値、「2」にベクトルPvwのY座標を加算した値、「2」となる。したがって、Xu2を「2」からXwuを減算した値とし、Xv2を「2」にXvwを加算した値とし、Xw2を「2」としている(図12におけるS50)。
なお、図12に示すフローチャートは、指令値信号生成処理の一例であって、これに限られない。
第2実施形態に係る指令値信号生成処理により生成された、指令値信号Xu2,Xv2,Xw2の波形は、図13(c)に示す波形Xu2,Xv2,Xw2のようになる。
図13は、指令値信号Xu2,Xv2,Xw2の波形を説明するための図である。
図13(a)に示す波形Xuv,Xvw,Xwuは、図32(a)に示す波形Xuv,Xvw,Xwuと同一であり、図13(b)に示す波形Xvu,Xwv,Xuwは、図32(b)に示す波形Xvu,Xwv,Xuwと同一なので、説明を省略する。図13においても、相電圧指令値信号Xuの位相を基準として記載している。
図13(c)に示す波形Xu2,Xv2,Xw2は、それぞれ指令値信号Xu2,Xv2,Xw2の波形である。図11および図12で説明したように、指令値信号Xu2,Xv2,Xw2は、モード1〜6に分けて生成される。図13(c)においては、B=2のときの各波形を示している。
モード1(−π/6≦θ≦π/6)においては、図12のフローチャートにおいてステップS53に進むので、波形Xu2は波形Xuv(図13(a)参照)となり、波形Xv2は「0」に固定された波形となり、波形Xw2は波形Xwv(図13(b)参照)となる。また、モード2(π/6≦θ≦π/2)においては、図12のフローチャートにおいてステップS48に進むので、波形Xu2は「2」に固定された波形となり、波形Xv2は波形Xvuを「2」だけ上方にシフトさせた波形となり、波形Xw2は波形Xwuを「2」だけ上方にシフトさせた波形となる。モード3(π/2≦θ≦5π/6)においては、図12のフローチャートにおいてステップS51に進むので、波形Xu2は波形Xuwとなり、波形Xv2は波形Xvwとなり、波形Xw2は「0」に固定された波形となる。モード4(5π/6≦θ≦7π/6)においては、図12のフローチャートにおいてステップS52に進むので、波形Xu2は波形Xuvを「2」だけ上方にシフトさせた波形となり、波形Xv2は「2」に固定された波形となり、波形Xw2は波形Xwvを「2」だけ上方にシフトさせた波形となる。モード5(7π/6≦θ≦3π/2)においては、図12のフローチャートにおいてステップS49に進むので、波形Xu2は「0」に固定された波形となり、波形Xv2は波形Xvuとなり、波形Xw2は波形Xwuとなる。モード6(3π/2≦θ≦11π/6)においては、図12のフローチャートにおいてステップS50に進むので、波形Xu2は波形Xuwを「2」だけ上方にシフトさせた波形となり、波形Xv2は波形Xvwを「2」だけ上方にシフトさせた波形となり、波形Xw2は「2」に固定された波形となる。
図13から明らかなように、指令値信号Xu2とXv2との差分信号、Xv2とXw2との差分信号、Xw2とXu2との差分信号は、それぞれ線間電圧指令値信号Xuv,Xvw,Xwuに一致する。したがって、系統連系インバータシステムAが出力する相電圧信号Vu2とVv2との差分信号である線間電圧信号Vuv、Vv2とVw2との差分信号である線間電圧信号Vvw、Vw2とVu2との差分信号である線間電圧信号Vwuの波形は、図13(a)に示す波形Xuv,Xvw,Xwuと同じになる。すなわち、線間電圧信号Vuv,Vvw,Vwuは三相平衡した正弦波信号となるので、系統Bの系統電圧と同期することができる。したがって、系統連系インバータシステムAが出力する交流電力を系統Bに供給することができる。
また、指令値信号Xu2,Xv2,Xw2は、周期の1/6で「0」に固定され、周期の1/6で「2」に固定される(図13(c)の波形Xu2,Xv2,Xw2参照)。したがって、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
第2実施形態においても、第1実施形態と同様に、指令値信号Xu2,Xv2,Xw2の下限値および上限値は限定されない。例えば、下限値が「−1」で上限値が「1」となるように、指令値信号Xu2,Xv2,Xw2を生成するようにしてもよい。この場合、PWM信号生成部53で用いられるキャリア信号の下限値および上限値も、指令値信号Xu2,Xv2,Xw2の下限値および上限値に応じたものを設定する必要がある。
次に、第3実施形態について、説明する。
図14は、第3実施形態に係る制御の考え方をベクトルで説明するための図である。
図14に示す第3実施形態の制御の考え方は、図3に示す第1実施形態の制御の考え方と同様に、正三角形Tの各頂点を原点と最大点(X座標が「0」でY座標がBである点)とに固定するものである。しかし、第3実施形態と第1実施形態とでは、固定する頂点を切り替えるタイミングが異なる。図14においては、図3と同様に、中性点N、ベクトルPu、および正三角形Tを示しており、図14(a)の左の図以外は、ベクトルPv,Pwの記載を省略している。また、各図において、固定している頂点に白丸を付している。
同図(a)は、角度θ(ベクトルPuがX軸となす角度)が0からπ/3まで変化するときの状態を示している。0≦θ≦π/3のとき、正三角形Tの頂点vが原点に固定され、頂点vを中心として正三角形Tが反時計回り(図に示す破線矢印の方向であり、以下でも同様である。)にπ/3回転する。この状態を「モード1」とする。同図(a)は、モード1では、V相の電位が「0」に固定されることを示している。左の図はθ=0のとき、中央の図はθ=π/6のとき、右の図はθ=π/3のときを示している。θ=π/3になると、正三角形Tが頂点uを最大点に一致させるように移動して、中性点Nが遷移する。これは、V相の電位が「0」に固定されている状態から、U相の電位がBに固定される状態に変化することを示している。
同図(b)は、角度θがπ/3から2π/3まで変化するときの状態を示している。π/3≦θ≦2π/3のとき、正三角形Tの頂点uが最大点に固定され、頂点uを中心として正三角形Tが反時計回りにπ/3回転する。この状態を「モード2」とする。同図(b)は、モード2では、U相の電位がBに固定されることを示している。左の図はθ=π/3のとき、中央の図はθ=π/2のとき、右の図はθ=2π/3のときを示している。左の図は、同図(a)の右の図の中性点遷移後と同じ図である。θ=2π/3になると、正三角形Tが頂点wを原点に一致させるように移動して、中性点Nが遷移する。これは、U相の電位がBに固定されている状態から、W相の電位が「0」に固定される状態に変化することを示している。
同図(c)は、角度θが2π/3からπ(=3π/3)まで変化するときの状態を示している。2π/3≦θ≦πのとき、正三角形Tの頂点wが原点に固定され、頂点wを中心として正三角形Tが反時計回りにπ/3回転する。この状態を「モード3」とする。同図(c)は、モード3では、W相の電位が「0」に固定されることを示している。左の図はθ=2π/3のとき、中央の図はθ=5π/6のとき、右の図はθ=πのときを示している。左の図は、同図(b)の右の図の中性点遷移後と同じ図である。θ=πになると、正三角形Tが頂点vを最大点に一致させるように移動して、中性点Nが遷移する。これは、W相の電位が「0」に固定されている状態から、V相の電位がBに固定される状態に変化することを示している。
同図(d)は、角度θがπから4π/3まで変化するときの状態を示している。π≦θ≦4π/3のとき、正三角形Tの頂点vが最大点に固定され、頂点vを中心として正三角形Tが反時計回りにπ/3回転する。この状態を「モード4」とする。同図(d)は、モード4では、V相の電位がBに固定されることを示している。左の図はθ=πのとき、中央の図はθ=7π/6のとき、右の図はθ=4π/3のときを示している。左の図は、同図(c)の右の図の中性点遷移後と同じ図である。θ=4π/3になると、正三角形Tが頂点uを原点に一致させるように移動して、中性点Nが遷移する。これは、V相の電位がBに固定されている状態から、U相の電位が「0」に固定される状態に変化することを示している。
同図(e)は、角度θが4π/3から5π/3まで変化するときの状態を示している。4π/3≦θ≦5π/3のとき、正三角形Tの頂点uが原点に固定され、頂点uを中心として正三角形Tが反時計回りにπ/3回転する。この状態を「モード5」とする。同図(e)は、モード5では、U相の電位が「0」に固定されることを示している。左の図はθ=4π/3のとき、中央の図はθ=3π/2(=9π/6)のとき、右の図はθ=5π/3のときを示している。左の図は、同図(d)の右の図の中性点遷移後と同じ図である。θ=5π/3になると、正三角形Tが頂点wを最大点に一致させるように移動して、中性点Nが遷移する。これは、U相の電位が「0」に固定されている状態から、W相の電位がBに固定される状態に変化することを示している。
同図(f)は、角度θが5π/3から2π(=6π/3=0)まで変化するときの状態を示している。5π/3≦θ≦2πのとき、正三角形Tの頂点wが最大点に固定され、頂点wを中心として正三角形Tが反時計回りにπ/3回転する。この状態を「モード6」とする。同図(f)は、モード6では、W相の電位がBに固定されることを示している。左の図はθ=5π/3のとき、中央の図はθ=11π/6のとき、右の図はθ=2πのときを示している。左の図は、同図(e)の右の図の中性点遷移後と同じ図である。θ=2πになると、正三角形Tが頂点vを原点に一致させるように移動して、中性点Nが遷移する。これは、W相の電位がBに固定されている状態から、V相の電位が「0」に固定される状態に変化することを示している。この遷移後の図は、同図(a)の左の図と同じである。以後、モード1〜6が繰り返される。
図14に示すベクトル図において、各相の相電圧は、正三角形Tの各頂点のY座標によって表される。モード1においては頂点vが原点に固定されるので、頂点vから頂点uに向かうベクトルPuvのY軸上への正射影がU相の相電圧となる(同図(a)参照)。したがって、モード1においては、指令値信号Xu3を、線間電圧指令値信号Xuvとすればよい。モード2においては頂点uが最大点に固定されるので、U相の相電圧はBとなる(同図(b)参照)。したがって、モード2においては、指令値信号Xu3を、値がBである信号とすればよい。モード3においては頂点wが原点に固定されるので、頂点wから頂点uに向かうベクトルPuwのY軸上への正射影がU相の相電圧となる(同図(c)参照)。したがって、モード3においては、指令値信号Xu3を、信号Xuw(=−Xwu)とすればよい。モード4においては頂点vが最大点に固定されるので、頂点vから頂点uに向かうベクトルPuvのY軸上への正射影にBを加算した値がU相の相電圧となる(同図(d)参照)。したがって、モード4においては、指令値信号Xu3を、信号XuvにBを加算したものとすればよい。モード5においては頂点uが原点に固定されるので、U相の相電圧は「0」となる(同図(e)参照)。したがって、モード5においては、指令値信号Xu3を、値が「0」であるゼロ信号とすればよい。モード6においては頂点wが最大点に固定されるので、頂点wから頂点uに向かうベクトルPuwのY軸上への正射影にBを加算した値がU相の相電圧となる(同図(f)参照)。したがって、モード6においては、指令値信号Xu3を、信号Xuw(=−Xwu)にBを加算したものとすればよい。
同様に、V相の指令値信号Xv3を、モード1においてはゼロ信号とし、モード2においては信号XvuにBを加算したものとし、モード3においては線間電圧指令値信号Xvwとし、モード4においては値がBである信号とし、モード5においては信号Xvuとし、モード6においては線間電圧指令値信号XvwにBを加算したものとすればよい。また、W相の指令値信号Xw3を、モード1においては信号Xwvとし、モード2においては線間電圧指令値信号XwuにBを加算したものとし、モード3においてはゼロ信号とし、モード4においては信号XwvにBを加算したものとし、モード5においては線間電圧指令値信号Xwuとし、モード6においては値がBである信号とすればよい。
図15は、第3実施形態に係る指令値信号生成部52で行われる指令値信号生成処理について説明するためのフローチャートである。指令値信号生成処理は、所定のタイミングで実行される。
同図に示すフローチャートは、ステップS62〜64において相電圧指令値信号Xu,Xv,Xwのうち絶対値が最大のものを判定している点で、第1実施形態に係る指令値信号生成処理のフローチャート(図8参照)と異なる。
まず、相電圧指令値信号Xu,Xv,Xwおよび線間電圧指令値信号Xuv,Xvw,Xwuが取得される(S61)。次に、Xuの絶対値がXvの絶対値より大きいか否かが判別される(S62)。Xuの絶対値の方が大きい場合(S62:YES)、Xuの絶対値がXwの絶対値より大きいか否かが判別される(S63)。Xuの絶対値の方が大きい場合(S63:YES)、すなわち、Xuの絶対値が最大の場合、ステップS65に進む。一方、Xuの絶対値がXwの絶対値以下の場合(S63:NO)、すなわち、Xwの絶対値が最大の場合、ステップS66に進む。ステップS62において、Xuの絶対値がXvの絶対値以下の場合(S62:NO)、Xvの絶対値がXwの絶対値より大きいか否かが判別される(S64)。Xvの絶対値の方が大きい場合(S64:YES)、すなわち、Xvの絶対値が最大の場合、ステップS67に進む。一方、Xvの絶対値がXwの絶対値以下の場合(S64:NO)、すなわち、Xwの絶対値が最大の場合、ステップS66に進む。ステップS62〜S64では、Xu,Xv,Xwのうち絶対値が最大のものを判定している。
Xuの絶対値が最大と判定されてステップS65に進んだ場合、Xuが正の値であるか否かが判別される(S65)。Xuが正の値である場合(S65:YES)、指令値信号Xu3は「2」とされ、指令値信号Xv3は「2」からXuvを減算した値とされ、指令値信号Xw3は「2」にXwuを加算した値とされる(S68)。一方、Xuが「0」以下の場合(S65:NO)、Xu3は「0」とされ、Xv3はXuvのマイナス値とされ、Xw3はXwuとされる(S69)。
Xwの絶対値が最大と判定されてステップS66に進んだ場合、Xwが正の値であるか否かが判別される(S66)。Xwが正の値である場合(S66:YES)、Xu3は「2」からXwuを減算した値とされ、Xv3は「2」にXvwを加算した値とされ、Xw3は「2」とされる(S70)。一方、Xwが「0」以下の場合(S66:NO)、Xu3はXwuのマイナス値とされ、Xv3はXvwとされ、Xw3は「0」とされる(S71)。
Xvの絶対値が最大と判定されてステップS67に進んだ場合、Xvが正の値であるか否かが判別される(S67)。Xvが正の値である場合(S67:YES)、Xu3は「2」にXuvを加算した値とされ、Xv3は「2」とされ、Xw3は「2」からXvwを減算した値とされる(S72)。一方、Xvが「0」以下の場合(S67:NO)、Xu3はXuvとされ、Xv3は「0」とされ、Xw3はXvwのマイナス値とされる(S73)。
つまり、第3実施形態に係る指令値信号生成処理では、相電圧指令値信号Xu,Xv,Xwのうち絶対値が最大のものを判定し、絶対値が最大の相電圧指令値信号の正負を判定し、その判定結果に応じて指令値信号Xu3,Xv3,Xw3を決定している。すなわち、図14に示すベクトル図のいずれのモードの状態かを判定して、判定されたモードのベクトル図に対応するように各相の指令値信号Xu3,Xv3,Xw3を決定している。
図14(a)に示すモード1の状態の場合、ベクトルPvのY軸上への正射影の長さが最大となり、ベクトルPvのY座標は負の値となる。すなわち、相電圧指令値信号Xvの絶対値が最大となり、相電圧指令値信号Xvが負の値となる(図15において、S67:NO)。このとき、頂点u,v,wのY座標は、それぞれ、ベクトルPuvのY座標の値、「0」、ベクトルPvwのY座標のマイナス値となる。したがって、Xu3をXuvとし、Xv3を「0」とし、Xw3をXvwのマイナス値としている(図15におけるS73)。
図14(b)に示すモード2の状態の場合、ベクトルPuのY軸上への正射影の長さが最大となり、ベクトルPuのY座標は正の値となる。すなわち、相電圧指令値信号Xuの絶対値が最大となり、相電圧指令値信号Xuが正の値となる(図15において、S65:YES)。このとき、頂点u,v,wのY座標は、それぞれ、B(なお、図15においては、B=「2」の場合について説明しているので、以下では、「2」とする。)、「2」にベクトルPvuのY座標を加算した値(すなわち、「2」からベクトルPuvのY座標を減算した値)、「2」にベクトルPwuのY座標を加算した値となる。したがって、Xu3を「2」とし、Xv3を「2」からXuvを減算した値とし、Xw3を「2」にXwuを加算した値としている(図15におけるS68)。
図14(c)に示すモード3の状態の場合、ベクトルPwのY軸上への正射影の長さが最大となり、ベクトルPwのY座標は負の値となる。すなわち、相電圧指令値信号Xwの絶対値が最大となり、相電圧指令値信号Xwが負の値となる(図15において、S66:NO)。このとき、頂点u,v,wのY座標は、それぞれ、ベクトルPwuのY座標のマイナス値、ベクトルPvwのY座標の値、「0」となる。したがって、Xu3をXwuのマイナス値とし、Xv3をXvwとし、Xw3を「0」としている(図15におけるS71)。
図14(d)に示すモード4の状態の場合、ベクトルPvのY軸上への正射影の長さが最大となり、ベクトルPvのY座標は正の値となる。すなわち、相電圧指令値信号Xvの絶対値が最大となり、相電圧指令値信号Xvが正の値となる(図15において、S67:YES)。このとき、頂点u,v,wのY座標は、それぞれ、「2」にベクトルPuvのY座標を加算した値、「2」、「2」からベクトルPvwのY座標を減算した値となる。したがって、Xu3を「2」にXuvを加算した値とし、Xv3を「2」とし、Xw3を「2」からXvwを減算した値としている(図15におけるS72)。
図14(e)に示すモード5の状態の場合、ベクトルPuのY軸上への正射影の長さが最大となり、ベクトルPuのY座標は負の値となる。すなわち、相電圧指令値信号Xuの絶対値が最大となり、相電圧指令値信号Xuが負の値となる(図15において、S65:NO)。このとき、頂点u,v,wのY座標は、それぞれ、「0」、ベクトルPuvのY座標のマイナス値、ベクトルPwuのY座標の値となる。したがって、Xu3を「0」とし、Xv3をXuvのマイナス値とし、Xw3をXwuとしている(図15におけるS69)。
図14(f)に示すモード6の状態の場合、ベクトルPwのY軸上への正射影の長さが最大となり、ベクトルPwのY座標は正の値となる。すなわち、相電圧指令値信号Xwの絶対値が最大となり、相電圧指令値信号Xwが正の値となる(図15において、S66:YES)。このとき、頂点u,v,wのY座標は、それぞれ、「2」からベクトルPwuのY座標を減算した値、「2」にベクトルPvwのY座標を加算した値、「2」となる。したがって、Xu3を「2」からXwuを減算した値とし、Xv3を「2」にXvwを加算した値とし、Xw3を「2」としている(図15におけるS70)。
なお、図15に示すフローチャートは、指令値信号生成処理の一例であって、これに限られない。
第3実施形態に係る指令値信号生成処理により生成された、指令値信号Xu3,Xv3,Xw3の波形は、図16(c)に示す波形Xu3,Xv3,Xw3のようになる。
図16は、指令値信号Xu3,Xv3,Xw3の波形を説明するための図である。
図16(a)に示す波形Xuv,Xvw,Xwuは、図32(a)に示す波形Xuv,Xvw,Xwuと同一であり、図16(b)に示す波形Xvu,Xwv,Xuwは、図32(b)に示す波形Xvu,Xwv,Xuwと同一なので、説明を省略する。図16においても、相電圧指令値信号Xuの位相を基準として記載している。
図16(c)に示す波形Xu3,Xv3,Xw3は、それぞれ指令値信号Xu3,Xv3,Xw3の波形である。図14および図15で説明したように、指令値信号Xu3,Xv3,Xw3は、モード1〜6に分けて生成される。図16(c)においては、B=2のときの各波形を示している。
モード1(0≦θ≦π/3)においては、図15のフローチャートにおいてステップS73に進むので、波形Xu3は波形Xuv(図16(a)参照)となり、波形Xv3は「0」に固定された波形となり、波形Xw3は波形Xwv(図16(b)参照)となる。また、モード2(π/3≦θ≦2π/3)においては、図15のフローチャートにおいてステップS68に進むので、波形Xu3は「2」に固定された波形となり、波形Xv3は波形Xvuを「2」だけ上方にシフトさせた波形となり、波形Xw3は波形Xwuを「2」だけ上方にシフトさせた波形となる。モード3(2π/3≦θ≦π)においては、図15のフローチャートにおいてステップS71に進むので、波形Xu3は波形Xuwとなり、波形Xv3は波形Xvwとなり、波形Xw3は「0」に固定された波形となる。モード4(π≦θ≦4π/3)においては、図15のフローチャートにおいてステップS72に進むので、波形Xu3は波形Xuvを「2」だけ上方にシフトさせた波形となり、波形Xv3は「2」に固定された波形となり、波形Xw3は波形Xwvを「2」だけ上方にシフトさせた波形となる。モード5(4π/3≦θ≦5π/3)においては、図15のフローチャートにおいてステップS69に進むので、波形Xu3は「0」に固定された波形となり、波形Xv3は波形Xvuとなり、波形Xw3は波形Xwuとなる。モード6(5π/3≦θ≦2π)においては、図15のフローチャートにおいてステップS70に進むので、波形Xu3は波形Xuwを「2」だけ上方にシフトさせた波形となり、波形Xv3は波形Xvwを「2」だけ上方にシフトさせた波形となり、波形Xw3は「2」に固定された波形となる。
図16から明らかなように、指令値信号Xu3とXv3との差分信号、Xv3とXw3との差分信号、Xw3とXu3との差分信号は、それぞれ線間電圧指令値信号Xuv,Xvw,Xwuに一致する。したがって、系統連系インバータシステムAが出力する相電圧信号Vu3とVv3との差分信号である線間電圧信号Vuv、Vv3とVw3との差分信号である線間電圧信号Vvw、Vw3とVu3との差分信号である線間電圧信号Vwuの波形は、図16(a)に示す波形Xuv,Xvw,Xwuと同じになる。すなわち、線間電圧信号Vuv,Vvw,Vwuは三相平衡した正弦波信号となるので、系統Bの系統電圧と同期することができる。したがって、系統連系インバータシステムAが出力する交流電力を系統Bに供給することができる。
また、指令値信号Xu3,Xv3,Xw3は、周期の1/6で「0」に固定され、周期の1/6で「2」に固定される(図16(c)の波形Xu3,Xv3,Xw3参照)。したがって、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
第3実施形態においても、第1実施形態と同様に、指令値信号Xu3,Xv3,Xw3の下限値および上限値は限定されない。例えば、下限値が「−1」で上限値が「1」となるように、指令値信号Xu3,Xv3,Xw3を生成するようにしてもよい。この場合、PWM信号生成部53で用いられるキャリア信号の下限値および上限値も、指令値信号Xu3,Xv3,Xw3の下限値および上限値に応じたものを設定する必要がある。
上記第1〜3実施形態においては、指令値信号の1周期を6つのモードに分割する場合について説明したが、これに限られない。例えば、指令値信号の1周期を12のモードに分割して、モードが切り替わるときに固定する相を変更するようにしてもよい。この場合でも、指令値信号は2つのモードで下限値に固定され、2つのモードで上限値に固定される。したがって、生成されるPWM信号がハイレベルを継続している時間とローレベルを継続している時間とが同等となるので、正極側のスイッチング素子がオン状態になっている時間と負極側のスイッチング素子がオン状態になっている時間とを同等とすることができる。したがって、この場合でも、第1〜3実施形態と同様の効果を奏することができる。指令値信号の1周期を24のモードに分割した場合や、36のモードに分割した場合も同様である。なお、モードの切り替え時にスイッチングが必要な場合があるので、モード数が増加すると、スイッチング回数が増加することになる。したがって、モード数は少ないほどよく、モード数が6つの上記第1〜3実施形態がより有効である。
指令値信号の1周期を12のモードに分割する場合を、第4実施形態として以下に説明する。
図17および図18は、第4実施形態に係る制御の考え方をベクトルで説明するための図である。
図17および図18に示す第4実施形態の制御の考え方は、図3に示す第1実施形態の制御の考え方と同様に、正三角形Tの各頂点を原点と最大点(X座標が「0」でY座標がBである点)とに固定するものである。しかし、第4実施形態と第1実施形態とでは、固定する頂点を切り替えるタイミングが異なる。図17および図18においては、図3と同様に、中性点N、ベクトルPu、および正三角形Tを示しており、図17(a)の左の図以外は、ベクトルPv,Pwの記載を省略している。また、各図において、固定している頂点に白丸を付している。
図17(a)は、角度θ(ベクトルPuがX軸となす角度)が0からπ/6まで変化するときの状態を示している。0≦θ≦π/6のとき、正三角形Tの頂点wが最大点に固定され、頂点wを中心として正三角形Tが反時計回り(図に示す破線矢印の方向であり、以下でも同様である。)にπ/6回転する。この状態を「モード1」とする。同図(a)は、モード1では、W相の電位がBに固定されることを示している。左の図はθ=0のとき、右の図はθ=π/6のときを示している。
図17(b)は、角度θがπ/6からπ/3(=2π/6)まで変化するときの状態を示している。π/6≦θ≦π/3のとき、正三角形Tの頂点uが最大点に固定され、頂点uを中心として正三角形Tが反時計回りにπ/6回転する。この状態を「モード2」とする。同図(b)は、モード2では、U相の電位がBに固定されることを示している。左の図はθ=π/6のとき、右の図はθ=π/3のときを示している。左の図は、図17(a)の右の図において、最大点に固定される点を頂点wから頂点uに変更したものである。θ=π/3になると、正三角形Tが頂点vを原点に一致させるように移動して、中性点Nが遷移する。これは、U相の電位がBに固定されている状態から、V相の電位が「0」に固定される状態に変化することを示している。
図17(c)は、角度θがπ/3からπ/2(=3π/6)まで変化するときの状態を示している。π/3≦θ≦π/2のとき、正三角形Tの頂点vが原点に固定され、頂点vを中心として正三角形Tが反時計回りにπ/6回転する。この状態を「モード3」とする。同図(c)は、モード3では、V相の電位が「0」に固定されることを示している。左の図はθ=π/3のとき、右の図はθ=π/2のときを示している。
図17(d)は、角度θがπ/2から2π/3(=4π/6)まで変化するときの状態を示している。π/2≦θ≦2π/3のとき、正三角形Tの頂点wが原点に固定され、頂点wを中心として正三角形Tが反時計回りにπ/6回転する。この状態を「モード4」とする。同図(d)は、モード4では、W相の電位が「0」に固定されることを示している。左の図はθ=π/2のとき、右の図はθ=2π/3のときを示している。左の図は、図17(c)の右の図において、原点に固定される点を頂点vから頂点wに変更したものである。θ=2π/3になると、正三角形Tが頂点uを最大点に一致させるように移動して、中性点Nが遷移する。これは、W相の電位が「0」に固定されている状態から、U相の電位がBに固定される状態に変化することを示している。
図17(e)は、角度θが2π/3から5π/6まで変化するときの状態を示している。2π/3≦θ≦5π/6のとき、正三角形Tの頂点uが最大点に固定され、頂点uを中心として正三角形Tが反時計回りにπ/6回転する。この状態を「モード5」とする。同図(e)は、モード5では、U相の電位がBに固定されることを示している。左の図はθ=2π/3のとき、右の図はθ=5π/6のときを示している。
図17(f)は、角度θが5π/6からπ(=6π/6)まで変化するときの状態を示している。5π/6≦θ≦πのとき、正三角形Tの頂点vが最大点に固定され、頂点vを中心として正三角形Tが反時計回りにπ/6回転する。この状態を「モード6」とする。同図(f)は、モード6では、V相の電位がBに固定されることを示している。左の図はθ=5π/6のとき、右の図はθ=πのときを示している。左の図は、図17(e)の右の図において、最大点に固定される点を頂点uから頂点vに変更したものである。θ=πになると、正三角形Tが頂点wを原点に一致させるように移動して、中性点Nが遷移する。これは、V相の電位がBに固定されている状態から、W相の電位が「0」に固定される状態に変化することを示している。
図18(a)は、角度θがπから7π/6まで変化するときの状態を示している。π≦θ≦7π/6のとき、正三角形Tの頂点wが原点に固定され、頂点wを中心として正三角形Tが反時計回りにπ/6回転する。この状態を「モード7」とする。同図(a)は、モード7では、W相の電位が「0」に固定されることを示している。左の図はθ=πのとき、右の図はθ=7π/6のときを示している。
図18(b)は、角度θが7π/6から4π/3(=8π/6)まで変化するときの状態を示している。7π/6≦θ≦4π/3のとき、正三角形Tの頂点uが原点に固定され、頂点uを中心として正三角形Tが反時計回りにπ/6回転する。この状態を「モード8」とする。同図(b)は、モード8では、U相の電位が「0」に固定されることを示している。左の図はθ=7π/6のとき、右の図はθ=4π/3のときを示している。左の図は、図18(a)の右の図において、原点に固定される点を頂点wから頂点uに変更したものである。θ=4π/3になると、正三角形Tが頂点vを最大点に一致させるように移動して、中性点Nが遷移する。これは、U相の電位が「0」に固定されている状態から、V相の電位がBに固定される状態に変化することを示している。
図18(c)は、角度θが4π/3から3π/2(=9π/6)まで変化するときの状態を示している。4π/3≦θ≦3π/2のとき、正三角形Tの頂点vが最大点に固定され、頂点vを中心として正三角形Tが反時計回りにπ/6回転する。この状態を「モード9」とする。同図(c)は、モード9では、V相の電位がBに固定されることを示している。左の図はθ=4π/3のとき、右の図はθ=3π/2のときを示している。
図18(d)は、角度θが3π/2から5π/3(=10π/6)まで変化するときの状態を示している。3π/2≦θ≦5π/3のとき、正三角形Tの頂点wが最大点に固定され、頂点wを中心として正三角形Tが反時計回りにπ/6回転する。この状態を「モード10」とする。同図(d)は、モード10では、W相の電位がBに固定されることを示している。左の図はθ=3π/2のとき、右の図はθ=5π/3のときを示している。左の図は、図18(c)の右の図において、最大点に固定される点を頂点vから頂点wに変更したものである。θ=5π/3になると、正三角形Tが頂点uを原点に一致させるように移動して、中性点Nが遷移する。これは、W相の電位がBに固定されている状態から、U相の電位が「0」に固定される状態に変化することを示している。
図18(e)は、角度θが5π/3から11π/6まで変化するときの状態を示している。5π/3≦θ≦11π/6のとき、正三角形Tの頂点uが原点に固定され、頂点uを中心として正三角形Tが反時計回りにπ/6回転する。この状態を「モード11」とする。同図(e)は、モード11では、U相の電位が「0」に固定されることを示している。左の図はθ=5π/3のとき、右の図はθ=11π/6のときを示している。
図18(f)は、角度θが11π/6から2π(=12π/6)まで変化するときの状態を示している。11π/6≦θ≦2πのとき、正三角形Tの頂点vが原点に固定され、頂点vを中心として正三角形Tが反時計回りにπ/6回転する。この状態を「モード12」とする。同図(f)は、モード12では、V相の電位が「0」に固定されることを示している。左の図はθ=11π/6のとき、右の図はθ=2πのときを示している。左の図は、図18(e)の右の図において、原点に固定される点を頂点uから頂点vに変更したものである。θ=2πになると、正三角形Tが頂点wを最大点に一致させるように移動して、中性点Nが遷移する。これは、V相の電位が「0」に固定されている状態から、W相の電位がBに固定される状態に変化することを示している。この遷移後の図は、図17(a)の左の図と同じである。以後、モード1〜12が繰り返される。
図17および図18に示すベクトル図において、各相の相電圧は、正三角形Tの各頂点のY座標によって表される。モード1においては頂点wが最大点に固定されるので、頂点wから頂点uに向かうベクトルPuwのY軸上への正射影にBを加算した値がU相の相電圧となる(図17(a)参照)。したがって、モード1においては、指令値信号Xu4を、信号Xuw(=−Xwu)にBを加算したものとすればよい。モード2においては頂点uが最大点に固定されるので、U相の相電圧はBとなる(同図(b)参照)。したがって、モード2においては、指令値信号Xu4を、値がBである信号とすればよい。モード3においては頂点vが原点に固定されるので、頂点vから頂点uに向かうベクトルPuvのY軸上への正射影がU相の相電圧となる(同図(c)参照)。したがって、モード3においては、指令値信号Xu4を、線間電圧指令値信号Xuvとすればよい。モード4においては頂点wが原点に固定されるので、頂点wから頂点uに向かうベクトルPuwのY軸上への正射影がU相の相電圧となる(同図(d)参照)。したがって、モード4においては、指令値信号Xu4を、信号Xuwとすればよい。モード5においては頂点uが最大点に固定されるので、U相の相電圧はBとなる(同図(e)参照)。したがって、モード5においては、指令値信号Xu4を、値がBである信号とすればよい。モード6においては頂点vが最大点に固定されるので、頂点vから頂点uに向かうベクトルPuvのY軸上への正射影にBを加算した値がU相の相電圧となる(同図(f)参照)。したがって、モード6においては、指令値信号Xu4を、線間電圧指令値信号XuvにBを加算したものとすればよい。
モード7においては頂点wが原点に固定されるので、頂点wから頂点uに向かうベクトルPuwのY軸上への正射影がU相の相電圧となる(図18(a)参照)。したがって、モード7においては、指令値信号Xu4を、信号Xuwとすればよい。モード8においては頂点uが原点に固定されるので、U相の相電圧は「0」となる(同図(b)参照)。したがって、モード8においては、指令値信号Xu4を、値が「0」であるゼロ信号とすればよい。モード9においては頂点vが最大点に固定されるので、頂点vから頂点uに向かうベクトルPuvのY軸上への正射影にBを加算した値がU相の相電圧となる(同図(c)参照)。したがって、モード9においては、指令値信号Xu4を、線間電圧指令値信号XuvにBを加算した値とすればよい。モード10においては頂点wが最大点に固定されるので、頂点wから頂点uに向かうベクトルPuwのY軸上への正射影にBを加算した値がU相の相電圧となる(同図(d)参照)。したがって、モード10においては、指令値信号Xu4を、信号XuwにBを加算した値とすればよい。モード11においては頂点uが原点に固定されるので、U相の相電圧は「0」となる(同図(e)参照)。したがって、モード11においては、指令値信号Xu4を、値が「0」であるゼロ信号とすればよい。モード12においては頂点vが原点に固定されるので、頂点vから頂点uに向かうベクトルPuvのY軸上への正射影がU相の相電圧となる(同図(f)参照)。したがって、モード12においては、指令値信号Xu4を、線間電圧指令値信号Xuvとすればよい。
同様に、V相の指令値信号Xv4を、モード1においては線間電圧指令値信号XvwにBを加算したものとし、モード2においては信号XvuにBを加算したものとし、モード3においてはゼロ信号とし、モード4においては線間電圧指令値信号Xvwとし、モード5においては信号XvuにBを加算したものとし、モード6においては値がBである信号とし、モード7においては線間電圧指令値信号Xvwとし、モード8においては信号Xvuとし、モード9においては値がBである信号とし、モード10においては線間電圧指令値信号XvwにBを加算した値とし、モード11においては信号Xvuとし、モード12においてはゼロ信号とすればよい。また、W相の指令値信号Xw4を、モード1においては値がBである信号とし、モード2においては線間電圧指令値信号XwuにBを加算したものとし、モード3においては信号Xwvとし、モード4においてはゼロ信号とし、モード5においては線間電圧指令値信号XwuにBを加算したものとし、モード6においては信号XwvにBを加算したものとし、モード7においてはゼロ信号とし、モード8においては線間電圧指令値信号Xwuとし、モード9においては信号XwvにBを加算したものとし、モード10においては値がBである信号とし、モード11においては線間電圧指令値信号Xwuとし、モード12においては信号Xwvとすればよい。
図19は、第4実施形態に係る指令値信号生成部52で行われる指令値信号生成処理について説明するためのフローチャートである。指令値信号生成処理は、所定のタイミングで実行される。
同図に示すフローチャートは、ステップS81〜86において相電圧指令値信号Xu,Xv,Xwの各絶対値のうち中間の大きさのものを判定している点で、第1実施形態に係る指令値信号生成処理のフローチャート(図8参照)と異なる。
まず、相電圧指令値信号Xu,Xv,Xwおよび線間電圧指令値信号Xuv,Xvw,Xwuが取得される(S81)。次に、Xuの絶対値がXvの絶対値より大きいか否かが判別される(S82)。Xuの絶対値の方が大きい場合(S82:YES)、Xvの絶対値がXwの絶対値より大きいか否かが判別される(S83)。Xvの絶対値の方が大きい場合(S83:YES)、すなわち、Xvの絶対値が中間の大きさの場合、ステップS87に進む。一方、Xvの絶対値がXwの絶対値以下の場合(S83:NO)、Xuの絶対値がXwの絶対値より大きいか否かが判別される(S84)。Xuの絶対値の方が大きい場合(S84:YES)、すなわち、Xwの絶対値が中間の大きさの場合、ステップS88に進む。一方、Xuの絶対値がXwの絶対値以下の場合(S84:NO)、すなわち、Xuの絶対値が中間の大きさの場合、ステップS89に進む。ステップS82において、Xuの絶対値がXvの絶対値以下の場合(S82:NO)、Xvの絶対値がXwの絶対値より大きいか否かが判別される(S85)。Xvの絶対値の方が大きい場合(S85:YES)、Xuの絶対値がXwの絶対値より大きいか否かが判別される(S86)。Xuの絶対値の方が大きい場合(S86:YES)、すなわち、Xuの絶対値が中間の大きさの場合、ステップS89に進む。一方、Xuの絶対値がXwの絶対値以下の場合(S86:NO)、すなわち、Xwの絶対値が中間の大きさの場合、ステップS88に進む。ステップS85において、Xvの絶対値がXwの絶対値以下の場合(S85:NO)、すなわち、Xvの絶対値が中間の大きさの場合、ステップS87に進む。ステップS82〜S86では、Xu,Xv,Xwの各絶対値のうち中間の大きさのものを判定している。
Xvの絶対値が中間の大きさと判定されてステップS87に進んだ場合、Xvが正の値であるか否かが判別される(S87)。Xvが正の値である場合(S87:YES)、指令値信号Xu4は「2」にXuvを加算した値とされ、指令値信号Xv4は「2」とされ、指令値信号Xw4は「2」からXvwを減算した値とされる(S90)。一方、Xvが「0」以下の場合(S87:NO)、Xu4はXuvとされ、Xv4は「0」とされ、Xw4はXvwのマイナス値とされる(S91)。
Xwの絶対値が中間の大きさと判定されてステップS88に進んだ場合、Xwが正の値であるか否かが判別される(S88)。Xwが正の値である場合(S88:YES)、Xu4は「2」からXwuを減算した値とされ、Xv4は「2」にXvwを加算した値とされ、Xw4は「2」とされる(S92)。一方、Xwが「0」以下の場合(S88:NO)、Xu4はXwuのマイナス値とされ、Xv4はXvwとされ、Xw4は「0」とされる(S93)。
Xuの絶対値が中間の大きさと判定されてステップS89に進んだ場合、Xuが正の値であるか否かが判別される(S89)。Xuが正の値である場合(S89:YES)、Xu4は「2」とされ、Xv4は「2」からXuvを減算した値とされ、Xw4は「2」にXwuを加算した値とされる(S94)。一方、Xvが「0」以下の場合(S89:NO)、Xu4は「0」とされ、Xv4はXuvのマイナス値とされ、Xw4はXwuとされる(S95)。
つまり、第4実施形態に係る指令値信号生成処理では、相電圧指令値信号Xu,Xv,Xwの各絶対値のうち中間の大きさのものを判定し、絶対値が中間の大きさの相電圧指令値信号の正負を判定し、その判定結果に応じて指令値信号Xu4,Xv4,Xw4を決定している。すなわち、図17および図18に示すベクトル図のいずれのモードの状態かを判定して、判定されたモードのベクトル図に対応するように各相の指令値信号Xu4,Xv4,Xw4を決定している。
図17(a)に示すモード1の状態の場合、ベクトルPwのY軸上への正射影の長さが中間の大きさとなり、ベクトルPwのY座標は正の値となる。すなわち、相電圧指令値信号Xwの絶対値が中間の大きさとなり、相電圧指令値信号Xwが正の値となる(図19において、S88:YES)。このとき、頂点u,v,wのY座標は、それぞれ、B(なお、図19においては、B=「2」の場合について説明しているので、以下では、「2」とする。)にベクトルPuwのY座標の値を加算した値(すなわち、「2」からベクトルPwuのY座標を減算した値)、「2」にベクトルPvwのY座標を加算した値、「2」となる。したがって、Xu4を「2」からXwuを減算した値とし、Xv4を「2」にXvwを加算した値とし、Xw4を「2」としている(図19におけるS92)。
図17(b)に示すモード2の状態の場合、ベクトルPuのY軸上への正射影の長さが中間の大きさとなり、ベクトルPuのY座標は正の値となる。すなわち、相電圧指令値信号Xuの絶対値が中間の大きさとなり、相電圧指令値信号Xuが正の値となる(図19において、S89:YES)。このとき、頂点u,v,wのY座標は、それぞれ、「2」、「2」からベクトルPuvのY座標を減算した値、「2」にベクトルPwuのY座標を加算した値となる。したがって、Xu4を「2」とし、Xv4を「2」からXuvを減算した値とし、Xw4を「2」にXwuを加算した値としている(図19におけるS94)。
図17(c)に示すモード3の状態の場合、ベクトルPvのY軸上への正射影の長さが中間の大きさとなり、ベクトルPvのY座標は負の値となる。すなわち、相電圧指令値信号Xvの絶対値が中間の大きさとなり、相電圧指令値信号Xvが負の値となる(図19において、S87:NO)。このとき、頂点u,v,wのY座標は、それぞれ、ベクトルPuvのY座標の値、「0」、ベクトルPvwのY座標のマイナス値となる。したがって、Xu4をXuvとし、Xv4を「0」とし、Xw4をXvwのマイナス値としている(図19におけるS91)。
図17(d)に示すモード4の状態の場合、ベクトルPwのY軸上への正射影の長さが中間の大きさとなり、ベクトルPwのY座標は負の値となる。すなわち、相電圧指令値信号Xwの絶対値が中間の大きさとなり、相電圧指令値信号Xwが負の値となる(図19において、S88:NO)。このとき、頂点u,v,wのY座標は、それぞれ、ベクトルPwuのY座標のマイナス値、ベクトルPvwのY座標の値、「0」となる。したがって、Xu4をXwuのマイナス値とし、Xv4をXvwとし、Xw4を「0」としている(図19におけるS93)。
図17(e)に示すモード5の状態の場合、ベクトルPuのY軸上への正射影の長さが中間の大きさとなり、ベクトルPuのY座標は正の値となる。すなわち、相電圧指令値信号Xuの絶対値が中間の大きさとなり、相電圧指令値信号Xuが正の値となる(図19において、S89:YES)。このとき、頂点u,v,wのY座標は、それぞれ、「2」、「2」からベクトルPuvのY座標を減算した値、「2」にベクトルPwuのY座標を加算した値となる。したがって、Xu4を「2」とし、Xv4を「2」からXuvを減算した値とし、Xw4を「2」にXwuを加算した値としている(図19におけるS94)。
図17(f)に示すモード6の状態の場合、ベクトルPvのY軸上への正射影の長さが中間の大きさとなり、ベクトルPvのY座標は正の値となる。すなわち、相電圧指令値信号Xvの絶対値が中間の大きさとなり、相電圧指令値信号Xvが正の値となる(図19において、S87:YES)。このとき、頂点u,v,wのY座標は、それぞれ、「2」にベクトルPuvのY座標を加算した値、「2」、「2」からベクトルPvwのY座標を減算した値となる。したがって、Xu4を「2」にXuvを加算した値とし、Xv4を「2」とし、Xw4を「2」からXvwを減算した値としている(図19におけるS90)。
図18(a)に示すモード7の状態の場合、ベクトルPwのY軸上への正射影の長さが中間の大きさとなり、ベクトルPwのY座標は負の値となる。すなわち、相電圧指令値信号Xwの絶対値が中間の大きさとなり、相電圧指令値信号Xwが負の値となる(図19において、S88:NO)。このとき、頂点u,v,wのY座標は、それぞれ、ベクトルPwuのY座標のマイナス値、ベクトルPvwのY座標の値、「0」となる。したがって、Xu4をXwuのマイナス値とし、Xv4をXvwとし、Xw4を「0」としている(図19におけるS93)。
図18(b)に示すモード8の状態の場合、ベクトルPuのY軸上への正射影の長さが中間の大きさとなり、ベクトルPuのY座標は負の値となる。すなわち、相電圧指令値信号Xuの絶対値が中間の大きさとなり、相電圧指令値信号Xuが負の値となる(図19において、S89:NO)。このとき、頂点u,v,wのY座標は、それぞれ、「0」、ベクトルPuvのY座標のマイナス値、ベクトルPwuのY座標の値となる。したがって、Xu4を「0」とし、Xv4をXuvのマイナス値とし、Xw4をXwuとしている(図19におけるS95)。
図18(c)に示すモード9の状態の場合、ベクトルPvのY軸上への正射影の長さが中間の大きさとなり、ベクトルPvのY座標は正の値となる。すなわち、相電圧指令値信号Xvの絶対値が中間の大きさとなり、相電圧指令値信号Xvが正の値となる(図19において、S87:YES)。このとき、頂点u,v,wのY座標は、それぞれ、「2」にベクトルPuvのY座標を加算した値、「2」、「2」からベクトルPvwのY座標を減算した値となる。したがって、Xu4を「2」にXuvを加算した値とし、Xv4を「2」とし、Xw4を「2」からXvwを減算した値としている(図19におけるS90)。
図18(d)に示すモード10の状態の場合、ベクトルPwのY軸上への正射影の長さが中間の大きさとなり、ベクトルPwのY座標は正の値となる。すなわち、相電圧指令値信号Xwの絶対値が中間の大きさとなり、相電圧指令値信号Xwが正の値となる(図19において、S88:YES)。このとき、頂点u,v,wのY座標は、それぞれ、「2」からベクトルPwuのY座標を減算した値、「2」にベクトルPvwのY座標を加算した値、「2」となる。したがって、Xu4を「2」からXwuを減算した値とし、Xv4を「2」にXvwを加算した値とし、Xw4を「2」としている(図19におけるS92)。
図18(e)に示すモード11の状態の場合、ベクトルPuのY軸上への正射影の長さが中間の大きさとなり、ベクトルPuのY座標は負の値となる。すなわち、相電圧指令値信号Xuの絶対値が中間の大きさとなり、相電圧指令値信号Xuが負の値となる(図19において、S89:NO)。このとき、頂点u,v,wのY座標は、それぞれ、「0」、ベクトルPuvのY座標のマイナス値、ベクトルPwuのY座標の値となる。したがって、Xu4を「0」とし、Xv4をXuvのマイナス値とし、Xw4をXwuとしている(図19におけるS95)。
図18(f)に示すモード12の状態の場合、ベクトルPvのY軸上への正射影の長さが中間の大きさとなり、ベクトルPvのY座標は負の値となる。すなわち、相電圧指令値信号Xvの絶対値が中間の大きさとなり、相電圧指令値信号Xvが負の値となる(図19において、S87:NO)。このとき、頂点u,v,wのY座標は、それぞれ、ベクトルPuvのY座標の値、「0」、ベクトルPvwのY座標のマイナス値となる。したがって、Xu4をXuvとし、Xv4を「0」とし、Xw4をXvwのマイナス値としている(図19におけるS91)。
なお、図19に示すフローチャートは、指令値信号生成処理の一例であって、これに限られない。
第4実施形態に係る指令値信号生成処理により生成された、指令値信号Xu4,Xv4,Xw4の波形は、図20(c)に示す波形Xu4,Xv4,Xw4のようになる。
図20は、指令値信号Xu4,Xv4,Xw4の波形を説明するための図である。
図20(a)に示す波形Xuv,Xvw,Xwuは、図32(a)に示す波形Xuv,Xvw,Xwuと同一であり、図20(b)に示す波形Xvu,Xwv,Xuwは、図32(b)に示す波形Xvu,Xwv,Xuwと同一なので、説明を省略する。図20においても、相電圧指令値信号Xuの位相を基準として記載している。
図20(c)に示す波形Xu4,Xv4,Xw4は、それぞれ指令値信号Xu4,Xv4,Xw4の波形である。図17、図18および図19で説明したように、指令値信号Xu4,Xv4,Xw4は、モード1〜12に分けて生成される。図20(c)においては、B=2のときの各波形を示している。
モード1(0≦θ≦π/6)においては、図19のフローチャートにおいてステップS92に進むので、波形Xu4はXuwを「2」だけ上方にシフトさせた波形(図20(b)参照)となり、波形Xv4は波形Xvw(図20(a)参照)を「2」だけ上方にシフトさせた波形となり、波形Xw4は「2」に固定された波形となる。また、モード2(π/6≦θ≦π/3)においては、図19のフローチャートにおいてステップS94に進むので、波形Xu4は「2」に固定された波形となり、波形Xv4は波形Xvuを「2」だけ上方にシフトさせた波形となり、波形Xw4は波形Xwuを「2」だけ上方にシフトさせた波形となる。モード3(π/3≦θ≦π/2)においては、図19のフローチャートにおいてステップS91に進むので、波形Xu4は波形Xuvとなり、波形Xv4は「0」に固定された波形となり、波形Xw4は波形Xwvとなる。モード4(π/2≦θ≦2π/3)においては、図19のフローチャートにおいてステップS93に進むので、波形Xu4は波形Xuwとなり、波形Xv4は波形Xvwとなり、波形Xw4は「0」に固定された波形となる。モード5(2π/3≦θ≦5π/6)においては、図19のフローチャートにおいてステップS94に進むので、波形Xu4は「2」に固定された波形となり、波形Xv4は波形Xvuを「2」だけ上方にシフトさせた波形となり、波形Xw4は波形Xwuを「2」だけ上方にシフトさせた波形となる。モード6(5π/6≦θ≦π)においては、図19のフローチャートにおいてステップS90に進むので、波形Xu4は波形Xuvを「2」だけ上方にシフトさせた波形となり、波形Xv4は「2」に固定された波形となり、波形Xw4は波形Xwvを「2」だけ上方にシフトさせた波形となる。
モード7(π≦θ≦7π/6)においては、図19のフローチャートにおいてステップS93に進むので、波形Xu4は波形Xuwとなり、波形Xv4は波形Xvwとなり、波形Xw4は「0」に固定された波形となる。また、モード8(7π/6≦θ≦4π/3)においては、図19のフローチャートにおいてステップS95に進むので、波形Xu4は「0」に固定された波形となり、波形Xv4は波形Xvuとなり、波形Xw4は波形Xwuとなる。モード9(4π/3≦θ≦3π/2)においては、図19のフローチャートにおいてステップS90に進むので、波形Xu4は波形Xuvを「2」だけ上方にシフトさせた波形となり、波形Xv4は「2」に固定された波形となり、波形Xw4は波形Xwvを「2」だけ上方にシフトさせた波形となる。モード10(3π/2≦θ≦5π/3)においては、図19のフローチャートにおいてステップS92に進むので、波形Xu4はXuwを「2」だけ上方にシフトさせた波形となり、波形Xv4は波形Xvwを「2」だけ上方にシフトさせた波形となり、波形Xw4は「2」に固定された波形となる。モード11(5π/3≦θ≦11π/6)においては、図19のフローチャートにおいてステップS95に進むので、波形Xu4は「0」に固定された波形となり、波形Xv4は波形Xvuとなり、波形Xw4は波形Xwuとなる。モード12(11π/6≦θ≦2π)においては、図19のフローチャートにおいてステップS91に進むので、波形Xu4は波形Xuvとなり、波形Xv4は「0」に固定された波形となり、波形Xw4は波形Xwvとなる。
図20から明らかなように、指令値信号Xu4とXv4との差分信号、Xv4とXw4との差分信号、Xw4とXu4との差分信号は、それぞれ線間電圧指令値信号Xuv,Xvw,Xwuに一致する。したがって、系統連系インバータシステムAが出力する相電圧信号Vu4とVv4との差分信号である線間電圧信号Vuv、Vv4とVw4との差分信号である線間電圧信号Vvw、Vw4とVu4との差分信号である線間電圧信号Vwuの波形は、図20(a)に示す波形Xuv,Xvw,Xwuと同じになる。すなわち、線間電圧信号Vuv,Vvw,Vwuは三相平衡した正弦波信号となるので、系統Bの系統電圧と同期することができる。したがって、系統連系インバータシステムAが出力する交流電力を系統Bに供給することができる。
また、指令値信号Xu4,Xv4,Xw4は、周期の1/6で「0」に固定され、周期の1/6で「2」に固定される(図20(c)の波形Xu4,Xv4,Xw4参照)。したがって、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
第4実施形態においても、第1実施形態と同様に、指令値信号Xu4,Xv4,Xw4の下限値および上限値は限定されない。例えば、下限値が「−1」で上限値が「1」となるように、指令値信号Xu4,Xv4,Xw4を生成するようにしてもよい。この場合、PWM信号生成部53で用いられるキャリア信号の下限値および上限値も、指令値信号Xu4,Xv4,Xw4の下限値および上限値に応じたものを設定する必要がある。
次に、上記第1〜4実施形態とは異なる波形の指令値信号を生成する制御方法を第5実施形態として、以下に説明する。第5実施形態に係る指令値信号をXu5,Xv5,Xw5とする。第5実施形態は、指令値信号生成処理のみが、第1実施形態とは異なる。その他の構成は第1実施形態と共通するので、説明を省略する。
第5実施形態に係る指令値信号Xu5,Xv5,Xw5は、NVS指令値信号Xu’,Xv’,Xw’(図32(c)参照)と、これらの信号の波形の極性を反転させて所定の値だけ上方にシフトさせた波形を有する信号(以下では、「第2の信号」とする。)Xu”,Xv”,Xw”(後述する図23(c)参照)とを組み合わせた波形の信号である。なお、「NVS指令値信号」を、以下では、「第1の信号」とする。
図21は、第5実施形態に係る指令値信号生成部の内部構成を説明するためのブロック図である。
同図に示すように、指令値信号生成部52’は、第1信号生成部521、第2信号生成部522、フラグ信号生成部523、および、信号組合部524を備えている。
第1信号生成部521は、第1の信号Xu’,Xv’,Xw’を生成するものである。第1信号生成部521は、フィードバック制御部51から入力される相電圧指令値信号Xu,Xv,Xwに基づいて、第1の信号Xu’,Xv’,Xw’を生成して信号組合部524に出力する。第1信号生成部521は、相電圧指令値信号Xu,Xv,Xwから線間電圧指令値信号Xuv,Xvw,Xwuを生成し、これらの極性を反転させた信号Xvu,Xwv,Xuwを生成する。第1信号生成部521は、線間電圧指令値信号Xuvと信号Xuwとゼロ信号とから第1の信号Xu’を生成し、線間電圧指令値信号Xvwと信号Xvuとゼロ信号とから第1の信号Xv’を生成し、線間電圧指令値信号Xwuと信号Xwvとゼロ信号とから第1の信号Xw’を生成する(図32参照)。
第1の信号(NVS指令値信号)Xu’,Xv’,Xw’の波形Xu’,Xv’,Xw’は、図32(c)に示すものとなる。すなわち、波形Xu’は、モード1(−π/6≦θ≦π/2(=3π/6))においては波形Xuvとなり、モード2(π/2≦θ≦7π/6)においては波形Xuwとなり、モード3(7π/6≦θ≦11π/6)においては「0」に固定された波形となっている。また、波形Xv’は、モード1においては「0」に固定された波形となり、モード2においては波形Xvwとなり、モード3においては波形Xvuとなっている。また、波形Xw’は、モード1においては波形Xwvとなり、モード2においては「0」に固定された波形となり、モード3においては波形Xwuとなっている。
第2信号生成部522は、第2の信号Xu”,Xv”,Xw”を生成するものである。第2信号生成部522は、フィードバック制御部51から入力される相電圧指令値信号Xu,Xv,Xwに基づいて、第2の信号Xu”,Xv”,Xw”を生成して信号組合部524に出力する。第2信号生成部522は、相電圧指令値信号Xu,Xv,Xwから線間電圧指令値信号Xuv,Xvw,Xwuを生成し、これらの極性を反転させた信号Xvu,Xwv,Xuwを生成する。第2信号生成部522は、線間電圧指令値信号Xuv,Xvw,Xwuと信号Xvu,Xwv,Xuwとを用いて、第2の信号Xu”,Xv”,Xw”を生成する
図22は、第2の信号Xu”,Xv”,Xw”の生成の考え方をベクトルで説明するための図である。図22においては、第1の信号Xu’,Xv’,Xw’の生成の考え方を示すベクトル図(図2参照)と同様に、中性点N、ベクトルPu、および正三角形Tを示しており、図22(a)の左の図以外は、ベクトルPv,Pwの記載を省略している。また、各図において、固定している頂点に白丸を付している。図2に示すベクトル図では正三角形Tの各頂点を原点に固定しているが、図22に示すベクトル図では正三角形Tの各頂点を最大点に固定している。
同図(a)は、角度θ(ベクトルPuがX軸となす角度)がπ/6から5π/6まで変化するときの状態を示している。π/6≦θ≦5π/6のとき、U相の電位がBに固定される。この状態を「モード1’」とする。モード1’は、正三角形Tの頂点uが最大点に固定され、頂点uを中心として正三角形Tが反時計回り(図に示す破線矢印の方向であり、以下でも同様である。)に2π/3回転することで表される。左の図はθ=π/6のとき、中央の図はθ=π/2(=3π/6)のとき、右の図はθ=5π/6のときを示している。θ=5π/6になると、V相の電位がBに固定される。右の図は、固定される相がU相からV相に変化することを示しており、正三角形Tが頂点vを最大点に一致させるように移動して、中性点Nが遷移していることを示している。
同図(b)は、角度θが5π/6から3π/2(=9π/6)まで変化するときの状態を示している。5π/6≦θ≦3π/2のとき、V相の電位がBに固定される。この状態を「モード2’」とする。モード2’は、正三角形Tの頂点vが最大点に固定され、頂点vを中心として正三角形Tが反時計回りに2π/3回転することで表される。左の図はθ=5π/6のとき、中央の図はθ=7π/6のとき、右の図はθ=3π/2(=9π/6)のときを示している。左の図は、同図(a)の右の図の中性点遷移後と同じ図である。θ=3π/2になると、W相の電位がBに固定される。右の図は、固定される相がV相からW相に変化することを示しており、正三角形Tが頂点wを最大点に一致させるように移動して、中性点Nが遷移していることを示している。
同図(c)は、角度θが3π/2(=9π/6)から13π/6(=π/6)まで変化するときの状態を示している。3π/2≦θ≦13π/6のとき、W相の電位がBに固定される。この状態を「モード3’」とする。モード3’は、正三角形Tの頂点wが最大点に固定され、頂点wを中心として正三角形Tが反時計回りに2π/3回転することで表される。左の図はθ=3π/2(=9π/6)のとき、中央の図はθ=11π/6のとき、右の図はθ=13π/6のときを示している。左の図は、同図(b)の右の図の中性点遷移後と同じ図である。θ=13π/6になると、U相の電位がBに固定される。右の図は、固定される相がW相からU相に変化することを示しており、正三角形Tが頂点uを最大点に一致させるように移動して、中性点Nが遷移していることを示している。この遷移後の図は、同図(a)の左の図と同じである。以後、モード1’〜3’が繰り返される。
図22に示すベクトル図において、各相の相電圧は、正三角形Tの各頂点のY座標によって表される。モード1’においては頂点uが最大点に固定されるので、U相の相電圧はBとなる(同図(a)参照)。したがって、モード1’においては、U相の第2の信号Xu”を、値がBである信号とすればよい。
モード2’においては頂点vが最大点に固定されるので、頂点vから頂点uに向かうベクトルPuvのY軸上への正射影にBを加算した値がU相の相電圧となる(同図(b)参照)。したがって、モード2’においては、U相の第2の信号Xu”を、線間電圧指令値信号XuvにBを加算したものとすればよい。モード3’においては頂点wが最大点に固定されるので、頂点wから頂点uに向かうベクトルPuwのY軸上への正射影にBを加算した値がU相の相電圧となる(同図(c)参照)。したがって、モード3’においては、U相の第2の信号Xu”を、信号Xuw(=−Xwu)にBを加算したものとすればよい。
同様に、V相の第2の信号Xv”を、モード1’においては信号XvuにBを加算したものとし、モード2’においては値がBである信号とし、モード3’においては線間電圧指令値信号XvwにBを加算したものとすればよい。また、W相の第2の信号Xw”を、モード1’においては線間電圧指令値信号XwuにBを加算したものとし、モード2’においては信号XwvにBを加算したものとし、モード3’においては値がBである信号とすればよい。
図23は、第2の信号Xu”,Xv”,Xw”の波形を説明するための図である。
図23(a)に示す波形Xuv,Xvw,Xwuは、図32(a)に示す波形Xuv,Xvw,Xwuと同一であり、図23(b)に示す波形Xvu,Xwv,Xuwは、図32(b)に示す波形Xvu,Xwv,Xuwと同一なので、説明を省略する。図23においても、相電圧指令値信号Xuの位相を基準として記載している。
図23(c)に示す波形Xu”,Xv”,Xw”は、それぞれ第2の信号Xu”,Xv”,Xw”の波形である。図22で説明したように、第2の信号Xu”,Xv”,Xw”は、モード1’〜3’に分けて生成される。同図(c)においては、B=2のときの各波形を示している。
U相の第2の信号Xu”は、線間電圧指令値信号Xuvに「2」を加算したものと信号Xuwに「2」を加算したものと値が「2」である信号とを切り替えて生成される。波形Xu”は、モード1’(π/6≦θ≦5π/6)においては「2」に固定された波形となり、モード2’(5π/6≦θ≦3π/2(=9π/6))においては波形Xuvを「2」だけ上方にシフトさせた波形となり、モード3’(3π/2≦θ≦13π/6)においては波形Xuwを「2」だけ上方にシフトさせた波形となっている。なお、相電圧指令値信号Xuの位相をθとしている。
同様に、V相の第2の信号Xv”は、線間電圧指令値信号Xvwに「2」を加算したものと信号Xvuに「2」を加算したものと値が「2」である信号とを切り替えて生成される。波形Xv”は、モード1’においては波形Xvuを「2」だけ上方にシフトさせた波形となり、モード2’においては「2」に固定された波形となり、モード3’においては波形Xvwを「2」だけ上方にシフトさせた波形となっている。
また、W相の第2の信号Xw”は、線間電圧指令値信号Xwuに「2」を加算したものと信号Xwvに「2」を加算したものと値が「2」である信号とを切り替えて生成される。波形Xw”は、モード1’においては波形Xwuを「2」だけ上方にシフトさせた波形となり、モード2’においては波形Xwvを「2」だけ上方にシフトさせた波形となり、モード3’においては「2」に固定された波形となっている。
図21に戻って、フラグ信号生成部523は、第1の信号と第2の信号とを切り替えるためのフラグ信号fgを生成するものである。フラグ信号fgは、所定の周期で「0」(ローレベル)と「1」(ハイレベル)とが切り替わる信号である。本実施形態においては、フラグ信号fgの周期は第1の信号Xu’,Xv’,Xw’および第2の信号Xu”,Xv”,Xw”の周期の2倍の周期(1/2の周波数)とされており、「0」である期間と「1」である期間とが同一とされている。
信号組合部524は、第1信号生成部521から入力される第1の信号Xu’,Xv’,Xw’と、第2信号生成部522から入力される第2の信号Xu”,Xv”,Xw”とを組み合わせて、指令値信号Xu5,Xv5,Xw5を生成するものである。信号組合部524は、フラグ信号生成部523から入力されるフラグ信号fgに基づいて、第1の信号Xu’,Xv’,Xw’と第2の信号Xu”,Xv”,Xw”とを切り替える。すなわち、信号組合部524は、フラグ信号fgが「1」の間、第2の信号Xu”,Xv”,Xw”を出力し、フラグ信号fgが「0」の間、第1の信号Xu’,Xv’,Xw’を出力する。信号組合部524から出力された信号が指令値信号Xu5,Xv5,Xw5として、PWM信号生成部53に出力される。
図24は、指令値信号Xu5,Xv5,Xw5の波形を説明するための図である。
同図(a)に示す波形fgは、フラグ信号fgの波形を示している。フラグ信号fgの周期は、第1の信号Xu’,Xv’,Xw’および第2の信号Xu”,Xv”,Xw”の周期の2倍の周期とされている。第1の信号Xu’の周期は、相電圧指令値信号Xuの周期(以下では、当該周期を「T」とする。なお、周期Tは系統電圧の周期と一致させるようにしているので、例えば、T=1/60〔s〕である。)と一致しているので、フラグ信号fgの周期は、周期Tの2倍の周期(2T)である。また、本実施形態では、相電圧指令値信号Xuの位相θを基準として、θ=0のときにフラグ信号fgを「1」に切り替えるようにしている。したがって、フラグ信号fgは、θ=2πのときに「0」に切り替えられ、θ=4πのときに「1」に切り替えられている。
同図(b)に示す波形Xu5は、U相の指令値信号Xu5の波形である。0≦θ≦2πの期間においては、フラグ信号fgが「1」なので、指令値信号Xu5は第2の信号Xu”となり、2π≦θ≦4πの期間においては、フラグ信号fgが「0」なので、指令値信号Xu5は第1の信号Xu’となる。したがって、波形Xu5は、0≦θ≦2πの期間で波形Xu”(図23(c)参照)となり、2π≦θ≦4πの期間で波形Xu’(図32(c)参照)となっている。
同様に、V相の指令値信号Xv5の波形Xv5は、0≦θ≦2πの期間で波形Xv”となり、2π≦θ≦4πの期間で波形Xv’となっている。また、W相の指令値信号Xw5の波形Xw5は、0≦θ≦2πの期間で波形Xw”となり、2π≦θ≦4πの期間で波形Xw’となっている。
指令値信号Xu5とXv5との差分信号は、0≦θ≦2πの期間では第2の信号Xu”とXv”との差分信号であり、2π≦θ≦4πの期間では第1の信号Xu’とXv’との差分信号である。第2の信号Xu”とXv”との差分信号は、線間電圧指令値信号Xuv(図23(a)参照)に一致する。また、第1の信号Xu’とXv’との差分信号も、線間電圧指令値信号Xuv(図32(a)参照)に一致する。したがって、指令値信号Xu5とXv5との差分信号は、線間電圧指令値信号Xuvに一致する。同様に、指令値信号Xv5とXw5との差分信号は線間電圧指令値信号Xvwに一致し、指令値信号Xw5とXu5との差分信号は線間電圧指令値信号Xwuに一致する。したがって、系統連系インバータシステムAが出力する相電圧信号Vu4とVv4との差分信号である線間電圧信号Vuv、Vv4とVw4との差分信号である線間電圧信号Vvw、Vw4とVu4との差分信号である線間電圧信号Vwuの波形は、図23(a)および図32(a)に示す波形Xuv,Xvw,Xwuと同じになる。すなわち、線間電圧信号Vuv,Vvw,Vwuは三相平衡した正弦波信号となるので、系統Bの系統電圧と同期することができる。したがって、系統連系インバータシステムAが出力する交流電力を系統Bに供給することができる。
図25は、第5実施形態に係る指令値信号生成部52’で行われる指令値信号生成処理について説明するためのフローチャートである。指令値信号生成処理は、所定のタイミングで実行される。
まず、線間電圧指令値信号Xuv,Xvw,Xwuおよびフラグ信号fgが取得される(S101)。次に、fgが「0」であるか否かが判別される(S102)。fgが「0」である場合(S102:YES)、ステップS103に進み、第1の信号Xu’,Xv’,Xw’を生成する処理が行われる(S103〜S114)。一方、fgが「0」でない場合(S102:NO)、すなわちfgが「1」である場合、ステップS115に進み、第2の信号Xu”,Xv”,Xw”を生成する処理が行われる(S115〜S126)。
ステップS103〜S105およびステップS115〜S117は、それぞれ第1実施形態に係る指令値信号生成処理のフローチャート(図8参照)のステップS2〜S4と同一である。すなわち、これらのステップでは、線間電圧指令値信号Xuv,Xvw,Xwuのうち絶対値が最大のものを判定している。
ステップS102においてfgが「0」であり、Xuvの絶対値が最大であると判定された場合(S102:YES、S103:YES、S104:YES)、Xuvが正の値であるか否かが判別される(S106)。Xuvが正の値である場合(S106:YES)、指令値信号Xu5はXuvとされ、指令値信号Xv5は「0」とされ、指令値信号Xw5はXvwのマイナス値とされる(S109)。一方、Xuvが「0」以下の場合(S106:NO)、Xu5は「0」とされ、Xv5はXuvのマイナス値とされ、Xw5はXwuとされる(S110)。
ステップS102においてfgが「0」であり、Xwuの絶対値が最大であると判定された場合(S102:YES、S103:YESからS104:NO、または、S103:NOからS105:NO)、Xwuが正の値であるか否かが判別される(S107)。Xwuが正の値である場合(S107:YES)、Xu5は「0」とされ、Xv5はXuvのマイナス値とされ、Xw5はXwuとされる(S111)。一方、Xwuが「0」以下の場合(S107:NO)、Xu5はXwuのマイナス値とされ、Xv5はXvwとされ、Xw5は「0」とされる(S112)。
ステップS102においてfgが「0」であり、Xvwの絶対値が最大であると判定された場合(S102:YES、S103:NO、S105:YES)、Xvwが正の値であるか否かが判別される(S108)。Xvwが正の値である場合(S108:YES)、Xu5はXwuのマイナス値とされ、Xv5はXvwとされ、Xw5は「0」とされる(S113)。一方、Xvwが「0」以下の場合(S108:NO)、Xu5はXuvとされ、Xv5は「0」とされ、Xw5はXvwのマイナス値とされる(S114)。
ステップS102においてfgが「1」であり、Xuvの絶対値が最大であると判定された場合(S102:NO、S115:YES、S116:YES)、Xuvが正の値であるか否かが判別される(S118)。Xuvが正の値である場合(S118:YES)、Xu5は「2」とされ、Xv5は「2」からXuvを減算した値とされ、Xw5は「2」にXwuを加算した値とされる(S121)。一方、Xuvが「0」以下の場合(S118:NO)、Xu5は「2」にXuvを加算した値とされ、Xv5は「2」とされ、Xw5は「2」からXvwを減算した値とされる(S122)。
ステップS102においてfgが「1」であり、Xwuの絶対値が最大であると判定された場合(S102:NO、S115:YESからS116:NO、または、S115:NOからS117:NO)、Xwuが正の値であるか否かが判別される(S119)。Xwuが正の値である場合(S119:YES)、Xu5は「2」からXwuを減算した値とされ、Xv5は「2」にXvwを加算した値とされ、Xw5は「2」とされる(S123)。一方、Xwuが「0」以下の場合(S119:NO)、Xu5は「2」とされ、Xv5は「2」からXuvを減算した値とされ、Xw5は「2」にXwuを加算した値とされる(S124)。
ステップS102においてfgが「1」であり、Xvwの絶対値が最大であると判定された場合(S102:NO、S115:NO、S117:YES)、Xvwが正の値であるか否かが判別される(S120)。Xvwが正の値である場合(S120:YES)、Xu5は「2」にXuvを加算した値とされ、Xv5は「2」とされ、Xw5は「2」からXvwを減算した値とされる(S125)。一方、Xvwが「0」以下の場合(S120:NO)、Xu5は「2」からXwuを減算した値とされ、Xv5は「2」にXvwを加算した値とされ、Xw5は「2」とされる(S126)。
つまり、指令値信号生成処理では、fgが「0」であるか「1」であるかを判定し、線間電圧指令値信号Xuv,Xvw,Xwuのうち絶対値が最大のものを判定し、絶対値が最大となる相電圧指令値信号の正負を判定し、その判定結果に応じて指令値信号Xu5,Xv5,Xw5を決定している。すなわち、図2に示すベクトル図のモード1〜3および図22に示すベクトル図のモード1’〜3’のうちのいずれの状態かを判定して、判定されたモードのベクトル図に対応するように各相の指令値信号Xu5,Xv5,Xw5を決定している。
図2(a)に示すモード1の状態のうちの左の図から中央の図までの期間(以下では、「前半部分」とする。)の場合、ベクトルPvwのY軸上への正射影の長さが最大となり、ベクトルPvwのY座標は負の値となる。すなわち、線間電圧指令値信号Xvwの絶対値が最大となり、線間電圧指令値信号Xvwが負の値となる(図25において、S108:NO)。このとき、頂点u,v,wのY座標は、それぞれ、ベクトルPuvのY座標の値、「0」、ベクトルPvwのY座標のマイナス値となる。したがって、Xu5をXuvとし、Xv5を「0」とし、Xw5をXvwのマイナス値としている(図25におけるS114)。
図2(a)に示すモード1の状態のうちの中央の図から右の図までの期間(以下では、「後半部分」とする。)の場合、ベクトルPuvのY軸上への正射影の長さが最大となり、ベクトルPuvのY座標は正の値となる。すなわち、線間電圧指令値信号Xuvの絶対値が最大となり、線間電圧指令値信号Xuvが正の値となる(図25において、S106:YES)。このときも、頂点u,v,wのY座標は、それぞれ、ベクトルPuvのY座標の値、「0」、ベクトルPvwのY座標のマイナス値となる。したがって、Xu5をXuvとし、Xv5を「0」とし、Xw5をXvwのマイナス値としている(図25におけるS109)。
図2(b)に示すモード2の状態のうちの前半部分の場合、ベクトルPwuのY軸上への正射影の長さが最大となり、ベクトルPwuのY座標は負の値となる。すなわち、線間電圧指令値信号Xwuの絶対値が最大となり、線間電圧指令値信号Xwuが負の値となる(図25において、S107:NO)。このとき、頂点u,v,wのY座標は、それぞれ、ベクトルPwuのY座標のマイナス値、ベクトルPvwのY座標の値、「0」となる。したがって、Xu5をXwuのマイナス値とし、Xv5をXvwとし、Xw5を「0」としている(図25におけるS112)。
図2(b)に示すモード2の状態のうちの後半部分の場合、ベクトルPvwのY軸上への正射影の長さが最大となり、ベクトルPvwのY座標は正の値となる。すなわち、線間電圧指令値信号Xvwの絶対値が最大となり、線間電圧指令値信号Xvwが正の値となる(図25において、S108:YES)。このときも、頂点u,v,wのY座標は、それぞれ、ベクトルPwuのY座標のマイナス値、ベクトルPvwのY座標の値、「0」となる。したがって、Xu5をXwuのマイナス値とし、Xv5をXvwとし、Xw5を「0」としている(図25におけるS113)。
図2(c)に示すモード3の状態のうちの前半部分の場合、ベクトルPuvのY軸上への正射影の長さが最大となり、ベクトルPuvのY座標は負の値となる。すなわち、線間電圧指令値信号Xuvの絶対値が最大となり、線間電圧指令値信号Xuvが負の値となる(図25において、S106:NO)。このとき、頂点u,v,wのY座標は、それぞれ、「0」、ベクトルPuvのY座標のマイナス値、ベクトルPwuのY座標の値となる。したがって、Xu5を「0」とし、Xv5をXuvのマイナス値とし、Xw5をXwuとしている(図25におけるS110)。
図2(c)に示すモード3の状態のうちの後半部分の場合、ベクトルPwuのY軸上への正射影の長さが最大となり、ベクトルPwuのY座標は正の値となる。すなわち、線間電圧指令値信号Xwuの絶対値が最大となり、線間電圧指令値信号Xwuが正の値となる(図25において、S107:YES)。このときも、頂点u,v,wのY座標は、それぞれ、「0」、ベクトルPuvのY座標のマイナス値、ベクトルPwuのY座標の値となる。したがって、Xu5を「0」とし、Xv5をXuvのマイナス値とし、Xw5をXwuとしている(図25におけるS111)。
図22(a)に示すモード1’の状態のうちの前半部分の場合、ベクトルPuvのY軸上への正射影の長さが最大となり、ベクトルPuvのY座標は正の値となる。すなわち、線間電圧指令値信号Xuvの絶対値が最大となり、線間電圧指令値信号Xuvが正の値となる(図25において、S118:YES)。このとき、頂点u,v,wのY座標は、それぞれ、「2」、「2」からベクトルPuvのY座標を減算した値、「2」にベクトルPwuのY座標を加算した値となる。したがって、Xu5を「2」とし、Xv5を「2」からXuvを減算した値とし、Xw5を「2」にXwuを加算した値としている(図25におけるS121)。
図22(a)に示すモード1’の状態のうちの後半部分の場合、ベクトルPwuのY軸上への正射影の長さが最大となり、ベクトルPwuのY座標は負の値となる。すなわち、線間電圧指令値信号Xwuの絶対値が最大となり、線間電圧指令値信号Xwuが負の値となる(図25において、S119:NO)。このときも、頂点u,v,wのY座標は、それぞれ、「2」、「2」からベクトルPuvのY座標を減算した値、「2」にベクトルPwuのY座標を加算した値となる。したがって、Xu5を「2」とし、Xv5を「2」からXuvを減算した値とし、Xw5を「2」にXwuを加算した値としている(図25におけるS124)。
図22(b)に示すモード2’の状態のうちの前半部分の場合、ベクトルPvwのY軸上への正射影の長さが最大となり、ベクトルPvwのY座標は正の値となる。すなわち、線間電圧指令値信号Xvwの絶対値が最大となり、線間電圧指令値信号Xvwが正の値となる(図25において、S120:YES)。このとき、頂点u,v,wのY座標は、それぞれ、「2」にベクトルPuvのY座標を加算した値、「2」、「2」からベクトルPvwのY座標を減算した値となる。したがって、Xu5を「2」にXuvを加算した値とし、Xv5を「2」とし、Xw5を「2」からXvwを減算した値としている(図25におけるS125)。
図22(b)に示すモード2’の状態のうちの後半部分の場合、ベクトルPuvのY軸上への正射影の長さが最大となり、ベクトルPuvのY座標は負の値となる。すなわち、線間電圧指令値信号Xuvの絶対値が最大となり、線間電圧指令値信号Xuvが負の値となる(図25において、S118:NO)。このときも、頂点u,v,wのY座標は、それぞれ、「2」にベクトルPuvのY座標を加算した値、「2」、「2」からベクトルPvwのY座標を減算した値となる。したがって、Xu5を「2」にXuvを加算した値とし、Xv5を「2」とし、Xw5を「2」からXvwを減算した値としている(図25におけるS122)。
図22(c)に示すモード3’の状態のうちの前半部分の場合、ベクトルPwuのY軸上への正射影の長さが最大となり、ベクトルPwuのY座標は正の値となる。すなわち、線間電圧指令値信号Xwuの絶対値が最大となり、線間電圧指令値信号Xwuが正の値となる(図25において、S119:YES)。このとき、頂点u,v,wのY座標は、それぞれ、「2」からベクトルPwuのY座標を減算した値、「2」にベクトルPvwのY座標を加算した値、「2」となる。したがって、Xu5を「2」からXwuを減算した値とし、Xv5を「2」にXvwを加算した値とし、Xw5を「2」としている(図25におけるS123)。
図22(c)に示すモード3’の状態のうちの後半部分の場合、ベクトルPvwのY軸上への正射影の長さが最大となり、ベクトルPvwのY座標は負の値となる。すなわち、線間電圧指令値信号Xvwの絶対値が最大となり、線間電圧指令値信号Xvwが負の値となる(図25において、S120:NO)。このときも、頂点u,v,wのY座標は、それぞれ、「2」からベクトルPwuのY座標を減算した値、「2」にベクトルPvwのY座標を加算した値、「2」となる。したがって、Xu5を「2」からXwuを減算した値とし、Xv5を「2」にXvwを加算した値とし、Xw5を「2」としている
(図25におけるS126)。
指令値信号生成処理により生成された指令値信号Xu5,Xv5,Xw5の波形は、図24(b)に示す波形Xu5,Xv5,Xw5のようになる。すなわち、モード1’においては、図25のフローチャートにおいてステップS121またはS124に進むので、波形Xu5は「2」に固定された波形となり、波形Xv5は波形Xvu(図23(b)参照)を「2」だけ上方にシフトさせた波形となり、波形Xw5は波形Xwu(図23(a)参照)を「2」だけ上方にシフトさせた波形となる。また、モード2’においては、図25のフローチャートにおいてステップS122またはS125に進むので、波形Xu5は波形Xuvを「2」だけ上方にシフトさせた波形となり、波形Xv5は「2」に固定された波形となり、波形Xw5は波形Xwvを「2」だけ上方にシフトさせた波形となる。モード3’においては、図25のフローチャートにおいてステップS123またはS126に進むので、波形Xu5は波形Xuwを「2」だけ上方にシフトさせた波形となり、波形Xv5は波形Xvwを「2」だけ上方にシフトさせた波形となり、波形Xw5は「2」に固定された波形となる。モード1においては、図25のフローチャートにおいてステップS109またはS114に進むので、波形Xu5は波形Xuv(図32(a)参照)となり、波形Xv5は「0」に固定された波形となり、波形Xw5は波形Xwv(図32(b)参照)となる。モード2においては、図25のフローチャートにおいてステップS112またはS113に進むので、波形Xu5は波形Xuwとなり、波形Xv5は波形Xvwとなり、波形Xw5は「0」に固定された波形となる。モード3においては、図25のフローチャートにおいてステップS110またはS111に進むので、波形Xu5は「0」に固定された波形となり、波形Xv5は波形Xvuとなり、波形Xw5は波形Xwuとなる。
なお、図25に示すフローチャートは、指令値信号生成処理の一例であって、これに限られない。
図24(b)に示すように、指令値信号Xu5,Xv5,Xw5は、周期的な信号となり、所定の期間で「0」に固定され、他の所定の期間で「2」に固定される。したがって、指令値信号Xu5,Xv5,Xw5とキャリア信号とを比較することで生成されるPWM信号は、指令値信号Xu5,Xv5,Xw5が「0」または「2」に固定されている期間でローレベルまたはハイレベルを継続することになる。これらの期間でスイッチング素子のスイッチングが停止されるので、スイッチング回数を低減することができ、スイッチングロスを低減することができる。また、PWM信号がローレベルでの継続期間とハイレベルでの継続期間との両方を有しているので、正極側のスイッチング素子のオン状態が継続している期間と負極側のスイッチング素子のオン状態が継続している期間とが生じる。したがって、正極側のスイッチング素子と負極側のスイッチング素子のいずれか一方のみがオン状態を継続する場合と比べて、正極側のスイッチング素子がオン状態になっている時間と負極側のスイッチング素子がオン状態になっている時間との差を小さくすることができる。これにより、正極側のスイッチング素子と負極側のスイッチング素子とで劣化の進行のアンバランスを抑制することができる。また、冷却部材の設計が複雑になることを緩和することができる。
第5実施形態においても、第1実施形態と同様に、指令値信号Xu5,Xv5,Xw5の下限値および上限値は限定されない。例えば、下限値が「−1」で上限値が「1」となるように、指令値信号Xu5,Xv5,Xw5を生成するようにしてもよい。この場合、PWM信号生成部53で用いられるキャリア信号の下限値および上限値も、指令値信号Xu5,Xv5,Xw5の下限値および上限値に応じたものを設定する必要がある。
上記第5実施形態では、指令値信号Xu5,Xv5,Xw5の「0」に固定されている期間と「2」に固定されている期間とが、いずれも1周期の1/6の期間となっている。したがって、正極側のスイッチング素子がオン状態になっている時間と負極側のスイッチング素子がオン状態になっている時間とが同等となる。しかし、フラグ信号fgの周期、デューティ比(周期に対するハイレベルである期間の比率)、位相(「1」に切り替えるタイミング)によって、指令値信号Xu5,Xv5,Xw5の「0」に固定されている期間と「2」に固定されている期間とが異なってくる。
図26〜図30は、指令値信号Xu5,Xv5,Xw5のシミュレーション結果を説明するための図である。図26〜図28においては、フラグ信号fgのデューティ比および位相を固定して周期を変化させた場合の指令値信号Xu5,Xv5,Xw5の波形およびフラグ信号fgの波形を示している。
図26(a)はフラグ信号fgの周期が2T(=1/30〔s〕:周波数30Hz)の場合の波形を示しており、同図(b)はフラグ信号fgの周期がT(=1/60〔s〕:周波数60Hz)の場合の波形を示しており、同図(c)はフラグ信号fgの周期が0.5T(=1/120〔s〕:周波数120Hz)の場合の波形を示している。フラグ信号fgの位相は相電圧指令値信号Xuの位相θに一致させている(すなわち、θ=0のときにフラグ信号fgを「1」に切り替えるようにしている。)。また、フラグ信号fgのデューティ比を「0.5」としている。
図26(a)に示す波形は、図24の場合と同じ条件によるものなので、図24に示す波形と一致している。
図26(b)に示す波形は、フラグ信号fgの周期を図26(a)の場合の半分にしたものなので、図23(c)の波形の0≦θ≦πの期間の部分と図32(c)の波形のπ≦θ≦2πの期間の部分とを組み合わせた波形となっている。この場合、図26(a)の波形と比較すると、指令値信号Xu5の「0」に固定されている期間と「2」に固定されている期間とが長くなり、指令値信号Xv5,Xw5の「0」に固定されている期間と「2」に固定されている期間とが短くなっている。しかし、各指令値信号Xu5,Xv5,Xw5における「0」に固定されている期間と「2」に固定されている期間とは同じである。この場合においても、正極側のスイッチング素子がオン状態になっている時間と負極側のスイッチング素子がオン状態になっている時間とが同等となる。しかし、U相のスイッチング素子とV相およびW相のスイッチング素子とでスイッチングが停止される時間が異なってくる。
図26(c)に示す波形は、フラグ信号fgの周期を図26(a)の場合の1/4にしたものなので、図23(c)の波形の0≦θ≦π/2の期間の部分、図32(c)の波形のπ/2≦θ≦πの期間の部分、図23(c)の波形のπ≦θ≦3π/2の期間の部分、および、図32(c)の波形の3π/2≦θ≦2πの期間の部分を組み合わせた波形となっている。この場合、指令値信号Xu5の「0」に固定されている期間と「2」に固定されている期間とは同じであるが、指令値信号Xv5,Xw5の「0」に固定されている期間と「2」に固定されている期間とは異なっている。この場合、V相およびW相においては、正極側のスイッチング素子がオン状態になっている時間と負極側のスイッチング素子がオン状態になっている時間とが同等とはならないが、正極側のスイッチング素子と負極側のスイッチング素子のいずれか一方のみがオン状態を継続する場合と比べて、正極側のスイッチング素子がオン状態になっている時間と負極側のスイッチング素子がオン状態になっている時間との差を小さくすることができる。
図27は、フラグ信号fgの周期を図26(a)の場合(図24の場合)より大きくしたものである。図27(a)はフラグ信号fgの周期が3T(=1/20〔s〕:周波数20Hz)の場合の波形を示しており、同図(b)はフラグ信号fgの周期が4T(=1/15〔s〕:周波数15Hz)の場合の波形を示している。フラグ信号fgの位相は相電圧指令値信号Xuの位相θに一致させている(すなわち、θ=0のときにフラグ信号fgを「1」に切り替えるようにしている。)。また、フラグ信号fgのデューティ比を「0.5」としている。
図27(a)に示す波形は、フラグ信号fgの周期を図26(a)の場合の1.5倍にしたものなので、図23(c)の波形の0≦θ≦3πの期間の部分と図32(c)の波形のπ≦θ≦3πの期間の部分とを組み合わせた波形となっている。この場合、各指令値信号Xu5,Xv5,Xw5における「0」に固定されている期間と「2」に固定されている期間とは同じである。この場合においても、正極側のスイッチング素子がオン状態になっている時間と負極側のスイッチング素子がオン状態になっている時間とが同等となる。しかし、U相のスイッチング素子とV相およびW相のスイッチング素子とでスイッチングが停止される時間が異なってくる。
図27(b)に示す波形は、フラグ信号fgの周期を図26(a)の場合の2倍にしたものなので、図23(c)の波形の0≦θ≦4πの期間の部分と図32(c)の波形の0≦θ≦4πの期間の部分とを組み合わせた波形となっている。この場合、図26(a)の波形と比較すると、指令値信号Xu5,Xv5,Xw5の「0」に固定されている期間と「2」に固定されている期間とが、いずれも1周期の1/6の期間となっている。したがって、正極側のスイッチング素子がオン状態になっている時間と負極側のスイッチング素子がオン状態になっている時間とが同等となる。
図26および図27に示すように、指令値信号Xu5,Xv5,Xw5の波形はそれぞれ互いと異なる波形となっている。特に、周期がTの場合(図26(b)参照)などに、各波形の違いが顕著になっている。指令値信号Xu5,Xv5,Xw5の波形がそれぞれ異なっている場合、PWM信号を生成するときに挿入されるデッドタイムによる誤差電圧の影響が相によって異なる場合が生じる。この問題を解消するためには、指令値信号Xu5,Xv5,Xw5の波形が同一となるようにすればよい。
図28は、指令値信号Xu5,Xv5,Xw5の波形が同一になる場合を説明するためのものである。同図において、フラグ信号fgの位相は相電圧指令値信号Xuの位相θに一致させている。また、フラグ信号fgのデューティ比を「0.5」としている。
フラグ信号fgの周期が4T/3(=1/45〔s〕:周波数45Hz)の場合、指令値信号Xu5,Xv5,Xw5の波形は同じ波形となる。図28(a)は、フラグ信号fgの周期が4T/3の場合の波形を示している。当該波形は、図23(c)の波形の0≦θ≦4π/3の期間の部分、図32(c)の波形の4π/3≦θ≦8π/3の期間の部分、図23(c)の波形の2π/3≦θ≦2πの期間の部分、図32(c)の波形の0≦θ≦4π/3の期間の部分、図23(c)の波形の4π/3≦θ≦8π/3の期間の部分、および、図32(c)の波形の2π/3≦θ≦2πの期間の部分とを組み合わせた波形となっている。この場合、指令値信号Xu5,Xv5,Xw5の波形が同じ波形になっている。フラグ信号fgの周波数が3/4T(45Hz)の倍数の場合(すなわち、3/2T(90Hz)、9/4T(135Hz)、3/T(180Hz)など)も、指令値信号Xu5,Xv5,Xw5の波形が同じ波形になる。図28(b)はフラグ信号fgの周波数が3/2Tの場合の波形を示しており、同図(c)はフラグ信号fgの周波数が3/Tの場合の波形を示している。
フラグ信号fgの周波数が3/Tで、デューティ比が「0.5」の場合において、フラグ信号fgの位相を変化させた場合、指令値信号Xu5,Xv5,Xw5の波形は変化し、所定の場合に特定の波形となる。
図29においては、フラグ信号fgの周波数を3/T(周期がT/3)に、デューティ比を「0.5」に固定して、フラグ信号fgの位相を変化させた場合の指令値信号Xu5,Xv5,Xw5の波形を示している。
同図(a)は、フラグ信号fgの位相をπ/6遅らせた場合(θ=π/6のときにフラグ信号fgを「1」に切り替える場合)の指令値信号Xu5,Xv5,Xw5の波形である。この場合、指令値信号Xu5,Xv5,Xw5の波形は、第2実施形態における指令値信号Xu2,Xv2,Xw2の波形(図13参照)と同じ波形になっている。同図(b)は、フラグ信号fgの位相をπ/3遅らせた場合(θ=π/3のときにフラグ信号fgを「1」に切り替える場合)の指令値信号Xu5,Xv5,Xw5の波形である。この場合、指令値信号Xu5,Xv5,Xw5の波形は、第3実施形態における指令値信号Xu3,Xv3,Xw3の波形(図16参照)と同じ波形になっている。同図(c)は、フラグ信号fgの位相をπ/2遅らせた場合(θ=π/2のときにフラグ信号fgを「1」に切り替える場合)の指令値信号Xu5,Xv5,Xw5の波形である。この場合、指令値信号Xu5,Xv5,Xw5の波形は、第1実施形態における指令値信号Xu1,Xv1,Xw1の波形(図4参照)と同じ波形になっている。つまり、第1ないし第3実施形態に係る各指令値信号は、第5実施形態に係る指令値信号Xu5,Xv5,Xw5における特定の条件(フラグ信号fgの周期が相電圧指令値信号Xuの周期の1/3、デューティ比が「0.5」、位相が相電圧指令値信号Xuの位相よりπ/6,π/3,π/2遅らせる)の場合のものである。なお、相電圧指令値信号Xuの位相θを基準にしているのでπ/6,π/3,π/2遅らせることになるが、フラグ信号fgの周期を基準にした場合は、フラグ信号fgの位相をπ/2,π,3π/2遅らせることになる。なお、図28(c)に示す波形は、フラグ信号fgの位相を変化させない場合(θ=0のときにフラグ信号fgを「1」に切り替える場合)の指令値信号Xu5,Xv5,Xw5の波形であって、第4実施形態における指令値信号Xu4,Xv4,Xw4の波形(図20参照)と同じ波形になっている。
なお、フラグ信号fgの周期(周波数)は、上述したものに限定されない。デューティ比が「0.5」の場合、フラグ信号fgの周期によって指令値信号Xu5,Xv5,Xw5の波形は異なるが、「2」に固定されている期間と「0」に固定されている期間とが生じる。したがって、正極側のスイッチング素子がオン状態を継続する期間と、負極側のスイッチング素子がオン状態を継続する期間とが生じるので、正極側のスイッチング素子と負極側のスイッチング素子のいずれか一方のみがオン状態を継続する場合と比べて、正極側のスイッチング素子がオン状態になっている時間と負極側のスイッチング素子がオン状態になっている時間との差を小さくすることができる。
デューティ比が「0.5」でフラグ信号fgの周期をnT(nは自然数)とした場合、すなわち、相電圧指令値信号Xuの周期Tの倍数の周期とした場合、指令値信号Xu5,Xv5,Xw5における「0」に固定されている期間と「2」に固定されている期間とは同じになり、正極側のスイッチング素子がオン状態になっている時間と負極側のスイッチング素子がオン状態になっている時間とが同等となる。また、デューティ比が「0.5」でフラグ信号fgの周期を2nT(nは自然数)とした場合、すなわち、相電圧指令値信号Xuの周期の偶数倍の周期とした場合、指令値信号Xu5,Xv5,Xw5の「0」に固定されている期間と「2」に固定されている期間とが、いずれも1周期の1/6の期間となる。この場合、正極側のスイッチング素子がオン状態になっている時間と負極側のスイッチング素子がオン状態になっている時間とが同等となり、かつ、U相、V相、W相のスイッチング素子のオン状態になっている時間が同等となる。
フラグ信号fgの位相によって指令値信号Xu5,Xv5,Xw5の波形は異なってくるが、デューティ比が「0.5」の場合、「2」に固定されている期間と「0」に固定されている期間とが生じる。したがって、正極側のスイッチング素子がオン状態を継続する期間と、負極側のスイッチング素子がオン状態を継続する期間とが生じるので、正極側のスイッチング素子と負極側のスイッチング素子のいずれか一方のみがオン状態を継続する場合と比べて、正極側のスイッチング素子がオン状態になっている時間と負極側のスイッチング素子がオン状態になっている時間との差を小さくすることができる。
上記ではフラグ信号fgのデューティ比を「0.5」とした場合について説明しているが、これに限られない。フラグ信号fgのデューティ比によって、指令値信号Xu5,Xv5,Xw5の「0」に固定されている期間と「2」に固定されている期間とが異なってくる。
図30においては、フラグ信号fgの周期および位相を固定してデューティ比を変化させた場合の指令値信号Xu5,Xv5,Xw5の波形およびフラグ信号fgの波形を示している。同図(a)はフラグ信号fgのデューティ比が「0.45」の場合の波形を示しており、同図(b)はフラグ信号fgのデューティ比が「0.5」の場合の波形を示しており、同図(c)はフラグ信号fgのデューティ比が「0.55」の場合の波形を示している。フラグ信号fgの位相は相電圧指令値信号Xuの位相θに一致させている。また、フラグ信号fgの周期は2T(=1/30〔s〕:周波数30Hz)としている。
図30(b)に示す波形は、図24の場合と同じ条件によるものなので、図24に示す波形と一致している。
図30(a)に示す波形は、フラグ信号fgのデューティ比を図30(b)の場合より小さくしたものであり、図23(c)の波形の0≦θ≦1.8π(=4π・0.45)の期間の部分と図32(c)の波形の1.8π≦θ≦4πの期間の部分とを組み合わせた波形となっている。この場合、図30(b)の波形と比較すると、指令値信号Xu5,Xv5の「0」に固定されている期間が長くなり、指令値信号Xw5の「2」に固定されている期間が短くなっている。したがって、各指令値信号Xu5,Xv5,Xw5における「0」に固定されている期間の方が「2」に固定されている期間より長くなっている。この場合、正極側のスイッチング素子がオン状態になっている時間と負極側のスイッチング素子がオン状態になっている時間とが同等とはならないが、正極側のスイッチング素子と負極側のスイッチング素子のいずれか一方のみがオン状態を継続する場合と比べて、正極側のスイッチング素子がオン状態になっている時間と負極側のスイッチング素子がオン状態になっている時間との差を小さくすることができる。
図30(c)に示す波形は、フラグ信号fgのデューティ比を図30(b)の場合より大きくしたものであり、図23(c)の波形の0≦θ≦2.2π(=4π・0.55)の期間の部分と図32(c)の波形の2.2π≦θ≦4πの期間の部分とを組み合わせた波形となっている。この場合、図30(b)の波形と比較すると、指令値信号Xu5,Xw5の「2」に固定されている期間が長くなり、指令値信号Xv5の「0」に固定されている期間が短くなっている。したがって、各指令値信号Xu5,Xv5,Xw5における「0」に固定されている期間の方が「2」に固定されている期間より短くなっている。この場合、正極側のスイッチング素子がオン状態になっている時間と負極側のスイッチング素子がオン状態になっている時間とが同等とはならないが、正極側のスイッチング素子と負極側のスイッチング素子のいずれか一方のみがオン状態を継続する場合と比べて、正極側のスイッチング素子がオン状態になっている時間と負極側のスイッチング素子がオン状態になっている時間との差を小さくすることができる。
なお、フラグ信号fgのデューティ比は、上述したものに限定されない。フラグ信号fgのデューティ比によって指令値信号Xu5,Xv5,Xw5の波形は異なってくる。デューティ比が小さくなるほど各指令値信号Xu5,Xv5,Xw5における「0」に固定されている期間が「2」に固定されている期間と比べて長くなってゆき、デューティ比が小さくなりすぎると「2」に固定されている期間が生じないようになる。また、デューティ比が大きくなるほど各指令値信号Xu5,Xv5,Xw5における「0」に固定されている期間が「2」に固定されている期間と比べて短くなってゆき、デューティ比が大きくなりすぎると「0」に固定されている期間が生じないようになる。したがって、フラグ信号fgのデューティ比は「0.5」に近いほどよく、「0.5」とするのが最も望ましい。
上記第1〜5実施形態においては、系統連系インバータシステムのインバータ回路を制御する制御回路について説明したが、これに限られない。本発明は、他のシステムのインバータ回路を制御する制御回路にも適用することができる。また、本発明は、直流電力を交流電力に変換するインバータ回路の制御回路以外にも適用することができる。例えば、交流電力を直流電力に変換するコンバータ回路など、三相交流電力を用いる電力変換回路の制御回路にも適用することができる。本発明をこれらの制御回路に適用した場合にも、スイッチング素子のスイッチングを周期的に停止させてスイッチングロスを低減することができ、かつ、正極側のスイッチング素子と負極側のスイッチング素子とでオン状態になっている時間を等しくすることができるという効果を奏することができる。
本発明に係る制御回路は、上述した実施形態に限定されるものではない。本発明に係る制御回路の各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。