以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
《第1実施形態》
図1は、本発明の実施形態に係る電力変換装置のブロックである。本例の電力変換装置は、電気自動車等の車両に搭載され、車両に搭載されたバッテリの電力を変換して、負荷であるモータ等に供給するためのインバータ装置である。以下、電気自動車を例に説明するが、本例の電力変換装置は車両以外の他の装置に適用してもよい。
電力変換装置は、スイッチング素子Q1〜Q4、ダイオードD1〜D6及びコントローラ100及び駆動回路200を備えている。また、電力変換装置は、車両の電力源となるバッテリ1と、モータなどの共振性負荷2との間に接続されている。バッテリ1は、リチウムイオン電池などの二次電池を複数直列に接続した電池であり、電力変換装置に対して直流電力を供給する。共振性負荷2は、インダクタンスL1とコンデンサC1との組み合わせからなる負荷であり、本例の電力変換装置から供給される交流電力で動作する。
スイッチング素子Q1〜Q4は、IGBTやMOSFET等のトランジスタである。ダイオードD1〜D4は、還流ダイオード(フライホイールダイオード:FWD)である。以下、本例ではスイッチング素子Q1〜Q4としてNチャネルMOSFETを用いた例を説明する。
スイッチング素子Q1の高電位側であるドレイン端子はバッテリ1の正極側に接続された電源線Pに接続され、スイッチング素子Q1の低電位側であるソース端子は、スイッチング素子Q2の高電位側であるドレイン端子に接続されている。スイッチング素子Q2の低電位側であるソース端子はバッテリ1の負極側に接続された電源線Nに接続されている。
スイッチング素子Q3の高電位側であるドレイン端子はバッテリ1の正極側に接続された電源線Pに接続され、スイッチング素子Q3の低電位側であるソース端子は、スイッチング素子Q4の高電位側であるドレイン端子に接続されている。スイッチング素子Q4の低電位側であるソース端子はバッテリ1の負極側に接続された電源線Nに接続されている。
これにより、スイッチング素子Q1及びスイッチング素子Q2は、電線線P、Nを介して、バッテリ1の両極間に直列に接続され、スイッチング素子Q3及びスイッチング素子Q4は、電線線P、Nを介して、バッテリ1の両極間に直列に接続されている。
ダイオードD1のカソード端子はスイッチング素子Q1のドレイン端子に接続され、ダイオードD1のアノード端子はスイッチング素子Q1のソース端子に接続されている。ダイオードD2〜D4についても、同様に、各ダイオードD2〜D4のカソード端子が、スイッチング素子Q2〜Q4のドレイン端子にそれぞれ接続され、各ダイオードD2〜D4のアノード端子が、スイッチング素子Q2〜Q4のソース端子にそれぞれ接続されている。これにより、ダイオードD1〜D4は、スイッチング素子Q1〜Q4に、それぞれ逆並列に接続されている。
またスイッチング素子Q1とダイオードD1との並列回路に対して、並列にスナバ回路11が接続されている。同様に、スイッチング素子Q2〜Q4とダイオードD2〜D4の各並列回路に、スナバ回路12〜14がそれぞれ接続されている。スナバ回路は、抵抗とコンデンサの直列回路で形成されている。
スイッチング素子Q1とスイッチング素子Q2の接続点(中点)、及び、スイッチング素子Q3とスイッチング素子Q4の接続点(中点)が出力となり、共振性負荷2の一端がスイッチング素子Q1とスイッチング素子Q2との接続点に接続され、共振性負荷2の他端がスイッチング素子Q3とスイッチング素子Q4との接続点に接続されている。
すなわち、スイッチング素子Q1〜Q4及びダイオードD1〜D4で形成される回路がHブリッジ回路となり、Hブリッジ回路はスイッチング素子Q1〜Q4のスイッチング動作によりバッテリ1から入力される直流電力を交流電力に変換して共振性負荷2に出力する。
各スイッチング素子Q1〜Q4には、温度センサ31〜34が設けられている。温度センサ31はスイッチング素子Q1の温度を検出し、温度センサ32〜34はスイッチング素子Q2〜Q4の温度を検出する。温度センサ31〜34の検出値は、コントローラ100に出力される。
コントローラ100は、スイッチング素子Q1〜Q4のスイッチング動作を制御し、駆動回路200を制御する制御部であり、検出部101、判断部102、スイッチング信号生成部103を有している。
検出部101は、温度センサ31〜34の出力値から、各スイッチング素子Q1〜Q4の温度を検出する回路である。判断部102は、検出部101からの出力に含まれるスイッチング素子Q1〜Q4の検出温度と、予め設定されている閾値温度(Tc)とを比較する。閾値温度(Tc)は、スイッチング素子Q1〜Q4を過温からする保護ために予め設定された温度であって、スイッチング素子Q1〜Q4の制御方式を切り換えるための温度である。
判断部102は、スイッチング素子Q1〜Q4の検出温度のうち、いずれかの検出温度が閾値温度以上である場合には、スイッチング素子Q1〜Q4を過温から保護するための保護制御が必要であると判断する。一方、判断部102は、スイッチング素子Q1〜Q4の検出温度が閾値温度より低い場合には、スイッチング素子Q1〜Q4の温度は適温の範囲内であると判断し、スイッチング素子Q1〜Q4を通常通りに制御すればよいと判断する。そして、判断部102は、この判断結果をスイッチング信号生成部103に出力する。
スイッチング信号生成部103は、コントローラ100の外部から入力される要求トルクに基づいて、スイッチング素子Q1〜Q4をスイッチング動作させるためのスイッチング信号を生成し、駆動回路200に送信する。コントローラ100は、PWM制御によりスイッチング素子Q1〜Q4を制御する。そのため、スイッチング信号生成部103は、三角波などのキャリアと、要求されたトルクに基づく指令値を比較することで、スイッチング信号のデューティ比を設定する。要求トルクは、車両の運転手のアクセル操作による、アクセル開度に基づいて、車両コントローラ(図示しない)により設定されるトルク値(Td)である。要求トルク(Td)は車両コントローラからコントローラ100に入力される。
また、スイッチング信号生成部103は、外部からの要求トルクに加えて、判断部102からの判断結果に基づいて、スイッチング信号を生成する。判断部102により、スイッチング素子Q1〜Q4が適温の範囲内で動作していると判断された場合には、スイッチング信号生成部103は、上記の通り、要求トルクにより算出された指令値とキャリアとの比較による通常のPWM制御で、スイッチング信号を生成する。一方、判断部102により、スイッチング素子Q1〜Q4の温度が閾値温度(Tc)以上であると判断された場合には、スイッチング信号生成部103は、スイッチング素子Q1〜Q4を保護するために、所定のタイミングで、上アームのスイッチング素子Q1のデューティ比と下アームのスイッチング素子Q2のデューティ比とを入れ替え、上アームのスイッチング素子Q3のデューティ比と下アームのスイッチング素子Q4のデューティ比とを入れ替えて、スイッチング信号を生成する。なお、コントローラ100による通常のスイッチング制御及びスイッチング素子Q1〜Q4の保護制御については、後述する。
駆動回路200は、スイッチング素子Q1〜Q4のオン及びオフを切り換えるために回路であり、スイッチング信号生成部103で生成されたスイッチング信号に基づいて、スイッチング素子Q1〜Q4を駆動させる。駆動回路200は、スイッチング信号生成部103のスイッチング信号に基づいて、スイッチング信号Q1〜Q4のゲート端子に、ゲート信号を出力する。
コントローラ100によるスイッチング素子Q1〜Q4の通常の制御について、図2を用いて説明する。図2の(a)は、スイッチング素子Q1、Q3の指令値とキャリアとの関係を示すグラフであり、(b)はスイッチング素子Q1〜Q4のスイッチング信号の波形を示すグラフであり、(c)はブリッジ回路の出力電圧(Vout)である。なお、各グラフの横軸は時間を示している。また、(a)、(b)に示す丸印は、スイッチング素子Q1〜Q4のオンとオフとを切り換えるタイミングを示している。
スイッチング素子Q1の指令値及びスイッチング素子Q3の指令値は、要求トルクに応じてブリッジ回路から負荷に供給すべき電力の大きさにより設定され、指令値はキャリアに対して一定の出力レベルで表される。そして、以下のように、キャリアと指令値を比較することで、スイッチング素子Q1〜Q4のオン、オフの切り換えるデューティ比を設定する。デューティ比は、スイッチン信号の周期に対してオン時間の比率を示す。
スイッチング素子Q1及びスイッチング素子Q2のスイッチング信号について、キャリア信号の値がスイッチング素子Q1の指令値より高い場合には、スイッチング素子Q1をオンに、スイッチング素子Q2をオフにする。一方、キャリア信号の値がスイッチング素子Q1の指令値より低い場合には、スイッチング素子Q1をオフに、スイッチング素子Q2をオンにする。
スイッチング素子Q3及びスイッチング素子Q4のスイッチン信号について、キャリア信号の値がスイッチング素子Q3の指令値より高い場合には、スイッチング素子Q4をオンに、スイッチング素子Q3をオフにする。一方、キャリア信号の値がスイッチング素子Q3の指令値より低い場合には、スイッチング素子Q3をオフに、スイッチング素子Q4をオンにする。
また、スイッチング素子Q1、Q2のスイッチング信号に対して、スイッチング素子Q3、Q4のスイッチング信号は、キャリア周期の半周期分ずれている。
すなわち、キャリアとスイッチング素子Q1の指令値との比較で生成される矩形波が、スイッチング素子Q1のスイッチング信号となり、当該矩形波の上下を反転させた矩形波が、スイッチング素子Q2のスイッチング信号となる。また、キャリアとスイッチング素子Q3の指令値との比較で生成される矩形波が、スイッチング素子Q3のスイッチング信号となり、当該矩形波の上下を反転させた矩形波が、スイッチング素子Q4のスイッチング信号となる。
ブリッジ回路からの出力を調整するためには、スイッチング素子Q1〜Q4のデューティ比を調整すればよく、スイッチング素子Q1、Q3のオン時間の幅を短くすれば、ブリッジ回路からの出力は小さくなるように制御される。出力の開始時で、ブリッジ回路からの出力がゼロの場合には、スイッチング素子Q1の指令値はキャリアの山の頂点のレベルとなり、スイッチング素子Q3の指令値は、キャリアの谷の頂点のレベルとなり、スイッチング素子Q1、Q3のデューティ比は0パーセントになる。そして、徐々に出力電圧を上げるためには、スイッチング信号生成部103は、スイッチング素子Q1の指令値をキャリアの山の頂点のレベルから下げて、スイッチング素子Q3の指令値をキャリアの谷の頂点のレベルから上げる。この時、スイッチング素子Q1の指令値のレベルの下げ幅と、スイッチング素子Q1の指令値のレベルの上げ幅は同じである。これにより、スイッチング素子Q1、Q3のデューティ比を同じにしつつ、高い値に設定する。
上記の通り、コントローラ100は、要求トルクに応じて、ブリッジ回路から負荷に供給すべき電力によりスイッチング素子Q1、Q3の指令値を設定し、キャリアと比較することで、各スイッチング素子Q1〜Q4のデューティ比を設定し、各スイッチング素子Q1〜Q4のスイッチング信号を生成して出力する。なお、図2及び上記説明において、説明を簡単にするために、スイッチング素子Q1(Q3)とスイッチング素子Q2(Q4)とを共にオフにするデットタイムは省略されている。
ここで、スイッチング素子Q1〜Q4のデューティ比と損失との関係について、図3を用いて説明する。図3は、スイッチング素子Q1のデューティ比に対する、スイッチング素子Q1、Q2の損失特性、ダイオードD1、D2の損失特性及びスイッチング素子Q1、Q2の平均損失特性を示すグラフである。グラフaはスイッチング素子Q1の損失特性であり、グラフbはスイッチング素子Q2の損失特性であり、グラフcはスイッチング素子Q1、Q2の平均の損失特性であり、グラフdはダイオードD1の損失特性であり、グラフeはダイオードD2の損失特性である。
スイッチング素子Q1、Q3のデューティ比を0パーセントから100パーセントまで間で変化させると、ブリッジ回路の出力電力は、デューティ比を50パーセントに設定した場合に最も高くなる。
スイッチング素子Q1〜Q4の性質として、スイッチング損失が発生することが知られている。スイッチング素子Q1〜Q4をオンにする際の損失は、逆回復損失やスナバ損失などの損失を含み、スイッチング素子Q1〜Q4をオフにする際の損失よりも大きくなる。
スイッチング素子Q1〜Q4のデューティ比が50パーセントでない場合には、スイッチング素子Q1(Q3)又はスイッチング素子Q2(Q4)のいずれか一方のスイッチング素子のオン時間が、他方のスイッチング素子のオン時間より長くなる。またオン時間が長い方のスイッチング素子には、共振性負荷2による還流、共振を含めた電流が当該オン時間に流れるため損失が大きくなる。ゆえに、デューティ比の長い方のスイッチング素子の方が、デューティ比の短い方のスイッチング素子と比較して損失が大きくなる。
スイッチング素子Q1、Q2について、スイッチング素子Q1のデューティ比を10パーセントから90パーセントまで変化させた場合に、スイッチング素子Q1、Q2の損失は、図3のグラフa、bで表される。スイッチング素子Q1の損失は、50パーセントより高いデューティ比で最大となり、スイッチング素子Q2の損失は、50パーセントより低いデューティ比で最大となる。そのため、出力電力をゼロから最大値まで上げる制御を、上記の通常制御下で行った場合には、スイッチング素子Q1のデューティ比が50パーセントに達する前に、スイッチング素子Q2の損失が大きくなることで、スイッチング素子Q2の温度が他のスイッチング素子の温度と比較して高くなり、スイッチング素子Q1の温度が閾値温度を大きく超えて過温状態になる可能性がある。
さらに、上記と同様に、出力電力をゼロから最大値まで上げる制御を、上記の通常制御下で行った場合に、スイッチング素子Q2の損失が最大になった時(デューティ比が35〜39パーセントの場合)には、スイッチング素子Q2の温度が閾値温度(Tc)より低かったとしても、その後、デューティ比が50パーセントに近づくにつれて、スイッチング素子Q2の温度はさらに高くなる。そのため、スイッチング素子Q2の温度が閾値温度(Tc)を越える可能性がある。
本例は、以下のような保護制御により、スイッチング素子Q1〜Q4の温度が閾値温度を超えて、スイッチング素子Q1〜Q4が過温状態になることを抑制する。図4を用いて、コントローラ100による、スイッチング素子Q1〜Q4の保護制御について説明する。なお、図4の時間(tp)の前後で、外部からの要求トルクは変わらず、ブリッジ回路の出力電圧を変えないように制御する。図4の(a)は、スイッチング素子Q1、Q3の指令値とキャリアとの関係を示すグラフであり、(b)はスイッチング素子Q1〜Q4のスイッチング信号の波形を示すグラフであり、(c)はブリッジ回路の出力電圧(Vout)である。なお、各グラフの横軸は時間を示している。また、(a)、(b)に示す丸印は、スイッチング素子Q1〜Q4のオンとオフとを切り換えるタイミングを示している。
検出部101は、温度センサ31〜34の検出値を用いて所定の周期でスイッチング素子Q1〜Q4の温度を検出し、判断部102は温度センサ31〜34の検出値と閾値温度(Tc)とを比較する。スイッチング信号生成部103は、外部から入力される要求トルクからブリッジ回路から負荷に供給すべき電力を算出し、スイッチング素子Q1〜Q4のスイッチング信号を生成するためのスイッチング素子Q1の指令値及びスイッチング素子Q3の指令値を設定する。
図4において、時間(tp)までは、温度センサ31〜34の検出温度が閾値温度(Tc)より低い。スイッチング信号生成部103は、判断部102の出力から、温度センサ31〜34の検出温度が閾値温度(Tc)より低いと判断された場合には、キャリアの山の頂点のレベルから共振性負荷2への供給電力に応じた値分、下げたレベルに、スイッチング素子Q1の指令値を設定し、キャリアの谷の頂点のレベルから共振性負荷2への供給電力に応じた値分、上げたレベルにスイッチング素子Q3の指令値を設定する。
スイッチング信号生成部103は、スイッチング素子Q1の指令値とキャリアとを比較して、スイッチング素子Q1のデューティ比(DQ1a)及びスイッチング素子Q2のデューティ比(DQ2a)を設定し、スイッチング素子Q3の指令値とキャリアとを比較して、スイッチング素子Q3のデューティ比(DQ3a)及びスイッチング素子Q4のデューティ比(DQ4a)を設定する。デューティ比(DQ1a)はデューティ比(DQ3a)と同じデューティ比に設定され、デューティ比(DQ2a)はデューティ比(DQ4a)と同じデューティ比に設定される。
そして、スイッチング信号生成部103は、各デューティ比(DQ1a、DQ2a、DQ3a、DQ4a)を示すスイッチング信号を駆動回路200に出力する。これにより、スイッチング素子Q1〜Q4の温度が閾値温度(Tc)より低い場合には、スイッチング素子Q1〜Q4は、上記の通常制御の下で制御される。
図4における時間(tp)の時点で、温度センサ31〜34の検出温度は閾値温度(Tc)以上になる。スイッチング信号生成部103は、判断部102の出力から、温度センサ31〜34の検出温度が閾値温度(Tc)以上であると判断された場合には、キャリアの山の頂点のレベルから、共振性負荷2への供給電極に応じた値分、下げたレベルに、スイッチング素子Q3の指令値を設定し、キャリアの谷の頂点のレベルから、共振性負荷2への供給電極に応じた値分、上げたレベルにスイッチング素子Q1の指令値を設定する。すなわち、時間(tp)より前に設定したスイッチング素子Q1の指令値を、時間(tp)より後のスイッチング素子Q3の指令値に入れ替えて、時間(tp)より前に設定したスイッチング素子Q3の指令値を、時間(tp)より後のスイッチング素子Q1の指令値に入れ替える。
そして、スイッチング信号生成部103は、入れ替わった後のスイッチング素子Q1の指令値とキャリアとを比較して、スイッチング素子Q1のデューティ比(DQ1b)及びスイッチング素子Q2のデューティ比(DQ2b)を設定し、入れ替わった後のスイッチング素子Q3の指令値とキャリアとを比較して、スイッチング素子Q3のデューティ比(DQ3b)及びスイッチング素子Q4のデューティ比(DQ4b)を設定する。
指令値の入れ替えにより、スイッチング素子Q1のオン時間とオフ時間は、時間(tp)より前のスイッチング素子Q1のオン時間及びオフ時間に対して反転した時間となり、時間tp後のスイッチング素子Q1のデューティ比(DQ1b)は、時間tp前のスイッチング素子Q2のデューティ比(DQ2a)と同じ値になる。また、スイッチング素子Q2のオン時間とオフ時間は、時間(tp)より前のスイッチング素子Q2のオン時間及びオフ時間に対して反転した時間となり、時間tp後のスイッチング素子Q2のデューティ比(DQ2b)は、時間tp前のスイッチング素子Q1のデューティ比(DQ1a)と同じ値になる。同様に、時間tp後のスイッチング素子Q3のデューティ比(DQ3b)は、時間tp前のスイッチング素子Q4のデューティ比(DQ4a)と同じ値になり、時間tp後のスイッチング素子Q4のデューティ比(DQ4b)は、時間tp前のスイッチング素子Q3のデューティ比(DQ3a)と同じ値になる。
また、時間(tp)後も、デューティ比(DQ1a)はデューティ比(DQ3a)と同じデューティ比に設定され、デューティ比(DQ2a)はデューティ比(DQ4a)と同じデューティ比に設定される。そのため、図4(c)に示すように、時間(tp)の前後で出力電圧(Vout)の電圧波形は同じになる。
これにより、スイッチング信号生成部103は、所定のタイミングの直前に設定したスイッチング素子Q1のデューティ比を、所定のタイミングの直後のスイッチング素子Q2のデューティ比に設定し、所定のタイミングの直前に設定したスイッチング素子Q2のデューティ比を、所定のタイミングの直後のスイッチング素子Q1のデューティ比に設定し、所定のタイミングの直前に設定したスイッチング素子Q3のデューティ比を、所定のタイミングの直後のスイッチング素子Q4のデューティ比に設定し、所定のタイミングの直前に設定したスイッチング素子Q4のデューティ比を、所定のタイミングの直後のスイッチング素子Q3のデューティ比に設定に設定する。そして、スイッチング信号生成部103は、入れ替わった後の各デューティ比のスイッチング信号を駆動回路200に出力する。
スイッチング素子Q1とスイッチング素子Q2との間において、時間(tp)前後のデューティ比の入れ替えによる温度変化について、説明する。デューティ比の高い側のスイッチング素子Q2は、デューティ比を入れ替えることで、デューティ比が低くなるため、スイッチング素子Q2の損失が減少し、スイッチング素子の温度上昇が抑制される。一方、デューティ比の入れ替え前に、デューティ比が低かった方のスイッチング素子Q1は、デューティ比を入れ替えることで、スイッチング素子Q1の損失は大きくなる。
しかし、時間(tp)まで、スイッチング素子Q1は低いデューティ比により動作していたため、時間(tp)の時点で、スイッチング素子Q1の温度はスイッチング素子Q2の温度より低い。そのため、スイッチング素子Q1のデューティ比を高くしても、スイッチング素子Q1の温度を閾値温度(Tc)より低くした状態で、スイッチング動作を継続することができる。また、スイッチング素子Q3とスイッチング素子Q4との間におけるデューティ比の入れ替えについても、スイッチング素子Q1、Q2と同様に、スイッチング素子Q3、Q4の温度を閾値温度(Tc)より低くした状態で、スイッチング動作を継続することができる。
これにより、スイッチング素子Q1〜Q4の温度上昇を抑制しつつ、電力変換装置のシステム全体の出力を継続して出すことができる。また、スイッチング素子Q1〜Q4のデューティ比の入れ替えによる、上記の保護制御を行った場合には、図3のグラフcに示すように、スイッチング素子Q1、Q2の損失を平均化させていることと等価になるため、スイッチング素子Q1〜Q4の温度上昇を抑制しつつ、ブリッジ回路の出力を最大出力まで出せることができる。
次に、図5を用いて、本例のコントローラ100の制御フローを説明する。図5はコントローラ100の制御手順を示すフローチャートである。なお、図5に示す制御は所定の周期で繰り返し行われている。
ステップS1にて、スイッチング信号生成部103は、外部からの要求トルク(Td)を入力して、当該トルクを共振性負荷2から出力すべく、共振性負荷2への供給電力に応じた指令値を設定する。ステップS2にて、検出部101は温度センサ31〜34の検出値から、各スイッチング素子Q1〜Q4の温度を検出し、検出温度を判断部102に送信する。ステップS3にて、判断部102は、各スイッチング素子Q1〜Q4の検出温度と閾値温度(Td)とを比較し、スイッチング素子Q1〜Q4のうち、いずれか一つのスイッチング素子の検出温度が閾値温度以上になったか否かを判断し、判断結果をスイッチング生成部103に送信する。
スイッチング素子Q1〜Q4のうち、いずれか一つのスイッチング素子の検出温度が閾値温度以上になった場合には、ステップS4にて、スイッチング生成部103は、上アームのスイッチング素子Q1、Q3のデューティ比と、下アームのスイッチング素子Q2、Q4のデューティ比とを入れ替える制御を行う。具体的には、スイッチング生成部103は、ステップS1で設定したスイッチング素子Q3の指令値をスイッチング素子Q1の指令値に設定し、ステップS1で設定したスイッチング素子Q1の指令値をスイッチング素子Q3の指令値に設定する。
ステップS5にて、スイッチング信号生成部103は、設定された指令値とキャリアとを比較することで、スイッチング信号を生成し、駆動回路200に送信する。ステップS6にて、駆動回路200は、ステップS5のスイッチング信号に基づき、各スイッチング素子Q1〜Q4のゲート信号を、スイッチング素子Q1〜Q4のゲート端子に送信することで、スイッチング制御を行う。
ステップS3に戻り、スイッチング素子Q1〜Q4の検出温度が閾値温度より低い場合には、ステップS5に遷り、ステップS5にて、スイッチング生成部103は、ステップS1で設定された指令値を用いて、スイッチング信号を生成する。これにより、スイッチング素子Q1〜Q4の検出温度が閾値温度より低い場合には、通常制御下で、スイッチング制御が行われる。
上記のように、本例は、所定のタイミングで、スイッチング素子Q1のデューティ比とスイッチング素子Q2のデューティ比とを入れ替え、スイッチング素子Q3のデューティ比とスイッチング素子Q4のデューティ比とを入れ替える。これにより、当該所定のタイミングを含む期間において、スイッチング素子Q1〜Q4の損失の大小を抑制することで、温度の高いスイッチング素子Q1〜Q4の損失を低減し、温度上昇を抑制することができる。また、温度上昇を抑制しつつ、ブリッジ回路の出力を継続して増加させることができる。
また本例は、温度センサ31〜34の検出温度が閾値温度(Tc)より高くなった場合に、デューティ比を切り換える所定のタイミングである、と判断する。これにより、閾値温度(Tc)以上のスイッチング素子Q1〜Q4の温度上昇が緩やかになるため、スイッチング素子Q1〜Q4が過温状態になることを防ぐことができる。
また、図3に示す特性はシミュレーションの一例であり、共振性負荷2を用いた場合には、共振点の変動により損失の発生状況が変動するため、シミュレーション結果よりも更に大きな損失の偏りが発生する可能性がある。そのため、ブリッジ回路の最大出力時に合わせて、ヒートシンクなどの冷却器の冷却能力を設計すると、図3に示すように、デューティ比が50パーセントではない場合に、スイッチング素の損失が最大になり、また共振性負荷の共振点の変動により最大出力よりも小さな出力の時にスイッチング素子Q1〜Q4の温度が最大になるため、スイッチング素子Q1〜Q4の温度が設計上の上限温度を超えてしまう可能性がある。また、スイッチング素子Q1〜Q4の温度上昇に余裕をもたせて、冷却能力を高くして設計することも考えられるが、装置の大型化や冷却器のコストが高くなるなどの問題が生じる。
本例では、上記のように、所定のタイミングでデューティ比を入れ替えることで、スイッチング素子Q1〜Q4の温度上昇を抑制するため、ブリッジ回路の動作時の、スイッチング素子Q1〜Q4の最大温度を従来よりも低くすることができる。その結果として、冷却器の小型化及びコストダウンを実現することができる。
なお、本例では、デューティ比の値に関わらず、温度センサ31〜34の検出値に基づいて、デューティ比を入れ替える制御を行ったが、デューティ比が所定の範囲内である場合に、温度センサ31〜34の検出値に基づいて、デューティ比を入れ替える制御を行ってもよい。
上記のスイッチング素子Q1が本発明の「第1スイッチング素子」に、スイッチング素子Q2が本発明の「第2スイッチング素子」に、スイッチング素子Q3が本発明の「第3スイッチング素子」に、スイッチング素子Q4が本発明の「第4スイッチング素子」に、コントローラ100が本発明の「制御部」に、スイッチング素子Q1の指令値が「第1指令値」に、スイッチング素子Q3の指令値が「第2指令値」に相当する。
《第2実施形態》
図6は、発明の他の実施形態に係る電力変換装置のブロック図である。本例では上述した第1実施形態に対して、スイッチング素子Q1〜Q4を流れる電流を検出する電流センサを設ける点が異なる。これ以外の構成は上述した第1実施形態と同じであり、その記載を援用する。
図6に示すように、本例の電力変換装置は電流センサ41〜44を備えている。電流センサ41は、スイッチング素子Q1のソース電流を検出するセンサであり、スイッチング素子Q1のソース端子と、スイッチング素子Q1、Q2の接続点との間に接続されている。電流センサ42は、スイッチング素子Q2のドレイン電流を検出するセンサであり、スイッチング素子Q1、Q2の接続点とスイッチング素子Q2のドレイン端子との間に接続されている。
センサ43はスイッチング素子Q3のソース電流を検出するセンサであり、センサ44はスイッチング素子Q4のドレイン電流を検出するセンサである。センサ43はスイッチング素子Q3のソース端子とスイッチング素子Q3、Q4の接続点との間に接続され、センサ44はスイッチング素子Q3、Q4の接続点とスイッチング素子Q4のドレイン端子との間に接続されている。
センサ41〜44の検出電流は、各センサから検出部101に送信される。検出部101は、電流センサ41〜44の出力値から、各スイッチング素子に流れる電流を検出し、検出電流と予め設定されている閾値電流(Ic)とを比較する。閾値電流(Ic)は、スイッチング素子Q1〜Q4を過温から保護するために予め設定された電流値である。
ここで、スイッチング素子Q1、Q2に流れる電流とデューティ比との関係について、図7を用いて説明する。図7は、スイッチング素子Q1のデューティ比に対するスイッチング素子Q1の電流特性及びスイッチング素子Q2の電流特性を示すグラフである。図7のグラフaがスイッチング素子Q1の電流特性、グラフbはスイッチング素子Q2の電流特性である。
図7に示すように、スイッチング素子Q1のデューティ比に対して、スイッチング素子Q1、Q2に流れる電流には偏りがある。スイッチング素子Q1のデューティ比を0パーセントから50パーセントまで徐々に挙げた場合に、スイッチング素子Q2の電流はスイッチング素子Q1の電流より高くなるため、スイッチング素子Q2の温度の上昇度はスイッチング素子Q1の温度の上昇度よりも高くなる。
すなわち、スイッチング素子Q1〜Q4の電流は、図3に示す、デューティ比と損失との特性と対応させて考えることができるため、本例はスイッチング素子Q1〜Q4が過温状態にならないような、スイッチング素子Q1〜Q4の電流の上限値を、閾値電流(Ic)で規定する。そして、本例は、スイッチング素子Q1〜Q4を過温から保護する保護制御の切り替えのタイミングを、閾値電流(Ic)で規定する。
次に、図6を用いて、本例のコントローラ100の制御について説明する。判断部102は、スイッチング素子Q1〜Q4の検出電流と閾値電流(Ic)とを比較し、スイッチング素子Q1〜Q4の検出電流のうち、いずれか一つの検出電流が閾値電流(Ic)以上になったか否かを判断し、判断結果をスイッチング信号生成部103に送信する。
スイッチング信号生成部は、外部の要求トルクに応じて共振性負荷2への供給電極からスイッチング素子Q1、Q2のスイッチング信号を生成するための指令値と、スイッチング素子Q3、Q4のスイッチング信号を生成するための指令値とを設定する。判断部102からの出力信号により、スイッチング素子Q1〜Q4の検出電流が閾値電流(Ic)より低い場合には、設定した指令値とキャリアとを比較することで、各スイッチング素子Q1〜Q4のデューティ比を設定して、スイッチング信号として、駆動回路200に送信する。
一方、判断部102からの出力信号により、スイッチング素子Q1〜Q4の検出電流が閾値電流(Ic)以上である場合には、スイッチング信号生成部103は、設定した指令値を入れ替え、入れ替え後の指令値とキャリアとを比較して、デューティ比を設定する。これにより、スイッチング信号生成部103は、所定のタイミングで、スイッチング素子Q1のデューティ比とスイッチング素子Q2のデューティ比とを入れ替え、スイッチング素子Q3のデューティ比とスイッチング素子Q4のデューティ比とを入れ替える。そして、スイッチング信号生成部103は、スイッチング素子Q1〜Q4の入れ替え後のデューティ比を、スイッチング信号として、駆動回路200に送信する。
上記のように、本例は、電流センサ41〜44の検出電流が閾値電流(Ic)より高くなった場合に、デューティ比を切り換える所定のタイミングであると判断する。これにより、スイッチング素子Q1〜Q4の損失の大小を抑制することで、温度の高いスイッチング素子Q1〜Q4の損失を低減し、温度上昇を抑制することができる。また、温度上昇を抑制しつつ、ブリッジ回路の出力を継続して増加させることができる。
《第3実施形態》
図8は、発明の他の実施形態に係る電力変換装置のブロック図である。本例では上述した第1実施形態に対して、磁界センサを設ける点が異なる。これ以外の構成は上述した第1実施形態と同じであり、第1実施形態又は第2実施形態の記載を適宜、援用する。
図8に示すように、本例の電力変換装置は磁界センサ51、52を備えている。磁界センサ51は、スイッチング素子Q1、スイッチング素子Q3及び共振性負荷2により形成される閉回路内の磁界の大きさを検出するセンサである。磁界センサ52は、スイッチング素子Q2、スイッチング素子Q4及び共振性負荷2により形成される閉回路内の磁界の大きさを検出するセンサである。磁界センサ51、52は検出した検出値を検出部101に送信する。
図2に示すような、スイッチング制御を行った場合には、デューティ比が高いスイッチング素子Q2、Q4に対して大きな電流が流れる。また共振性負荷の還流及び共振による電流も、スイッチング素子Q2、Q4に大きく流れる。例えば、スイッチング素子Q4がオンに、スイッチング素子Q2がオフになっている場合に、図2のスイッチング制御で、ブリッジ回路に流れる電流は、図9のように流れる。図9はブリッジ回路に流れる電流を流れる説明するための回路図である。
図9に示すように、電流がダイオードD2、共振性負荷2及びスイッチング素子Q4に流れると、下アームと共振性負荷2により形成される閉回路内で磁界が発生する。そして、この磁界の強さは、スイッチング素子Q4に流れる電流と比例する。そのため、磁界センサ52で磁界の強さを計測することは、スイッチング素子Q2又はスイッチング素子Q4の電流を検出することと対応する。
コントローラ100には、スイッチング素子Q1〜Q4が過温状態にならない閾値(Hc)が、磁界の強さで予め設定されており、この閾値はスイッチング素子Q1〜Q4を過温から保護する保護制御の切り替えのタイミングを示す。
次に、図8を用いて、本例のコントローラ100の制御について説明する。判断部102は、磁界センサ51、52の検出値と閾値(Hc)とを比較する。スイッチング素子Q1、Q3のいずれのスイッチング素子に電流が流れているか、あるいは、スイッチング素子Q2、Q4のいずれのスイッチング素子に電流が流れているかは、磁界の向きから判断することができる。そのため、判断部102は、磁界センサ51の検出値と、プラスの閾値(+Hc)及びマイナスの閾値(−Hc)とをそれぞれ比較することで、スイッチング素子Q1〜Q4のうち、どのスイッチング素子Q1〜Q4に過温状態に相当する電流が流れているか否かを判断する。
そして、スイッチング信号生成部103は、磁界センサ51の検出値が、マイナスの閾値(−Hc)より高く、かつ、プラスの閾値(+Hc)より低い場合には、通常のスイッチング制御するためのスイッチング信号を生成する。一方、スイッチング信号生成部103は、磁界センサ51の検出値が、マイナスの閾値(−Hc)以下、または、プラスの閾値(+Hc)以上である場合には、スイッチング素子Q1〜Q4の保護制御のためのスイッチング信号を生成する。なお、それぞれの制御内容は、第1実施形態又は第2実施形態の制御と同様であるため、説明を省略する。
上記のように、本例は、磁気センサ51、52の検出値が閾値より高くなった場合に、デューティ比を切り換えるための所定のタイミングであると判断する。これにより、スイッチング素子Q1〜Q4の損失の大小を抑制することで、温度の高いスイッチング素子Q1〜Q4の損失を低減し、温度上昇を抑制することができる。また、温度上昇を抑制しつつ、ブリッジ回路の出力を継続して増加させることができる。
《第4実施形態》
図10は、発明の他の実施形態に係る電力変換装置のブロック図である。本例では上述した第1実施形態に対して、デューティ比を入れ替えるタイミングが異なる。これ以外の構成は上述した第1実施形態と同じであり、第1〜第3実施形態の記載を適宜、援用する。
図10に示すように、コントローラ100は、タイミング設定部104を有している。本例は、電流センサ等の検出値に基づいて、デューティ比を入れ替え、スイッチング素子を保護制御せずに、タイミング設定部104により、デューティ比を入れ替える。
タイミング設定部104は、スイッチング制御生成部103で、スイッチング素子Q1の指令値とスイッチング素子Q3の指令値とを入れ替えるために制御信号を、所定の周期(Tx)で送信する。スイッチング制御生成部103は、タイミング設定部104からの信号を受信すると、スイッチング素子Q1の指令値とスイッチング素子Q3の指令値とを入れ替える。
次に、図11を用いて、コントローラ100による、スイッチング素子Q1〜Q4の保護制御について説明する。図11(a)はスイッチング素子Q1、Q3の指令値とキャリアとの関係を示すグラフであり、(b)はスイッチング素子Q1〜Q4のスイッチング信号の波形を示すグラフであり、(c)はブリッジ回路の出力電圧(Vout)である。なお、図11において、各グラフの横軸は時間を示し、(a)、(b)に示す丸印は、スイッチング素子Q1〜Q4のオンとオフとを切り換えるタイミングを示している。なお、図11に示す期間中、外部からの要求トルクは変わらず、ブリッジ回路の出力電圧を変えないように制御している。
初期状態として、スイッチング信号生成部103は、外部からの要求トルクに基づき、共振性負荷2への供給電力を算出し、当該供給電力に応じたスイッチング素子Q1の指令値及びスイッチング素子Q3の指令値を設定し、キャリアとの比較で、スイッチング信号を生成する。また、タイミング設定部104は、デューティ比を入れ替える制御信号を送信するために、所定の周期(Tx)のカウントを開始する。周期(Tx)のカウントは、コントローラ100のシステムの起動時でもよく、あるいは、上記の初期状態である、外部からの要求トルクの入力時でもよい。
そして、タイミング設定部104は、図11に示すように、時間(t1)の時点で周期(Tx)を経過すると、スイッチング信号生成部103に制御信号を送信する。スイッチング信号生成部103は、時間(t1)より前に設定したスイッチング素子Q1の指令値を、時間(t1)より後のスイッチング素子Q3の指令値に入れ替えて、時間(t1)より前に設定したスイッチング素子Q3の指令値を、時間(t1)より後のスイッチング素子Q1の指令値に入れ替える。そして、スイッチング信号生成部103は、入れ替え後の指令値とキャリアとの比較で、スイッチング信号を生成する。これにより、コントローラ100は、時間(t1)の時点で、スイッチング素子Q1のデューティ比とスイッチング素子Q2のデューティ比とを入れ替えて、スイッチング素子Q3のデューティ比とスイッチング素子Q4のデューティ比とを入れ替える。
さらに、時間(t1)から周期(Tx)を経過した時間(t2)の時点になると、タイミング設定部104は、スイッチング信号生成部103に制御信号を送信する。スイッチング信号生成部103は、時間(t1)時に設定したスイッチング素子Q1の指令値を、時間(t2)より後のスイッチング素子Q3の指令値に入れ替えて、時間(t1)時に設定したスイッチング素子Q3の指令値を、時間(t2)より後のスイッチング素子Q1の指令値に入れ替える。そして、スイッチング信号生成部103は、入れ替え後の指令値とキャリアとの比較で、スイッチング信号を生成する。これにより、時間(t2)の時点でスイッチング素子Q1のデューティ比とスイッチング素子Q2のデューティ比とを入れ替えて、スイッチング素子Q3のデューティ比とスイッチング素子Q4のデューティ比とを入れ替える。そして、時間(t2)後のスイッチング素子Q1のデューティ比は、時間(t1)より前のスイッチング素子Q1のデューティ比と同じ値になり、時間(t2)後のスイッチング素子Q3のデューティ比は、時間(t1)より前のスイッチング素子Q3のデューティ比と同じ値になる。
そして、コントローラ100は、同様に、時間(t2)から所定の周期(Tx)毎に、上記のデューティ比の入れ替え制御を行う。
上記のように、本例は、所定の周期(Tx)で、スイッチング素子Q1のデューティ比とスイッチング素子Q2のデューティ比とを入れ替えて、スイッチング素子Q3のデューティ比とスイッチング素子Q4のデューティ比とを入れ替える。これにより、スイッチング素子Q1〜Q4の損失の大小を抑制することで、温度の高いスイッチング素子Q1〜Q4の損失を低減し、温度上昇を抑制することができる。また、温度上昇を抑制しつつ、ブリッジ回路の出力を継続して増加させることができる。
また、本例は、電流センサ等のセンサの検出値に基づいて、デューティ比を入れ替えるタイミングを設定していないため、センサを省略することができる。
なお、本例では、デューティ比の値に関わらず、所定の周期(Tx)で、デューティ比を入れ替える制御を行ったが、デューティ比が所定の範囲内である場合に、所定の周期(Tx)毎に、デューティ比を入れ替える制御を行ってもよい。図3に示すように、スイッチング素子Q1〜Q4のデューティ比が高い場合(例えば70パーセントより高い場合)に、あるいは、デューティ比が低い場合(例えば30パーセントより低い場合)には、スイッチング素子Q1〜Q4の損失は低く、スイッチング素子Q1〜Q4の温度は低い。そのため、本例では、スイッチング素子Q1〜Q4の温度が高くなる制御状態で、スイッチング素子Q1〜4の保護制御を行う。
すなわち、スイッチング制御生成部103から、外部からの要求トルクにより指令値を設定すると、キャリアとの比較で、スイッチング素子Q1〜Q4のデューティ比を設定する。タイミング設定部104には、スイッチング素子Q1〜Q4の保護制御を行うための所定のデューティ比の範囲が予め設定されており、例えばスイッチング素子Q1のデューティ比に対して範囲(例えば30パーセント以上で70パーセント以下の間)が設定されている。
そして、タイミング設定部104は、スイッチング制御生成部103で設定されたスイッチング素子Q1のデューティ比と所定の範囲とを比較する。スイッチング素子Q1のデューティ比が所定の範囲内にある場合には、タイミング設定部104は、所定の周期で、デューティ比を入れ替えるための制御信号をスイッチング制御生成部103に送信する。一方、スイッチング素子Q1のデューティ比が所定の範囲内にない場合には、タイミング設定部104はデューティ比を入れ替えるための制御信号を送信しないため、スイッチング制御生成部103において、デューティ比を入れ替える制御が行われないことになる。
上記の通り、本例は、デューティ比が所定の範囲内になる場合に、スイッチング素子Q1とスイッチング素子Q2とのデューティ比を入れ替え、スイッチング素子Q3とスイッチング素子Q4とのデューティ比を入れ替える。これにより、スイッチング素子Q1〜Q4の損失の大小を抑制することで、温度の高いスイッチング素子Q1〜Q4の損失を低減し、温度上昇を抑制することができる。また、温度上昇を抑制しつつ、ブリッジ回路の出力を継続して増加させることができる。
また、本例において、タイミング設定部104は、デューティ比を入れ替えるための所定の周期をキャリア周期と同期させてもよく、例えば、キャリアの三角波の頂点毎を、所定の周期(Tx)として設定してもよい。すなわち、本例は、キャリアの三角波の頂点で、スイッチング素子Q1のデューティ比とスイッチング素子Q2のデューティ比とを入れ替えて、スイッチング素子Q3のデューティ比とスイッチング素子Q4のデューティ比とを入れ替える。これにより、ブリッジ回路の出力電流を断絶することなく、ブリッジ回路を駆動させることができる。
《第5実施形態》
図12は、発明の他の実施形態に係る電力変換装置のブロック図である。本例では上述した第1実施形態に対して、タイマー105を設ける点が異なる。これ以外の構成は上述した第1実施形態と同じであり、第1〜第4実施形態の記載を適宜、援用する。
コントローラ100は、タイマー105を有している。タイマー105は、各スイッチング素子Q1〜Q4のオン時間を計測するタイマーである。スイッチング信号生成部103は、共振性負荷2への供給電極から指令値を設定し、キャリアとの比較で各スイッチング素子Q1〜Q4のデューティ比を設定し、デューティ比を含むスイッチング信号を駆動回路200に送信する。また、スイッチング信号生成部103は、設定したデューティ比をタイマー105に送信する。
タイマー105は、各スイッチング素子Q1〜Q4のデューティ比により規定される、各スイッチング素子Q1〜Q4のオン時間を基準値としてそれぞれ設定しつつ、それぞれのオン時間をカウントする。図2又は図4に示すように、本例では、スイッチング素子Q1とスイッチング素子Q3のデューティ比は同じ値であり、スイッチング素子Q2とスイッチング素子Q4のデューティ比は同じ値であるため、タイマー105は、スイッチング素子Q1、Q3の基準値と、スイッチング素子Q2、Q4の基準値とを設定する。オン時間のカウントは、スイッチング信号生成部103からの信号の受信時に開始する。
タイマー105は、オン時間のカウント値が各スイッチング素子の基準値に達すると、オン時間が基準値に達したことを示す信号をスイッチング信号生成部103に送信する。スイッチング信号生成部103は、当該信号に基づき、オン時間に達したスイッチング素子Q1〜Q4のゲート信号をオフにするためのスイッチング信号を、駆動回路200に送信する。
判断部102は、スイッチング素子Q1〜Q4の検出温度のうち、いずれかの検出温度が閾値温度以上である場合には、スイッチング素子Q1〜Q4を過温から保護するための保護制御が必要であると判断し、判断結果をタイマー105に送信する。タイマー105は、判断部102によりスイッチング素子Q1〜Q4のいずれかの検出温度が閾値温度以上である判断された場合には、スイッチング素子Q1の基準値とスイッチング素子Q2の基準値を入れ替え、スイッチング素子Q3の基準値とスイッチング素子Q4の基準値とを入れ替える。これにより、コントローラ100は、スイッチング素子Q1のデューティ比とスイッチング素子Q2のデューティ比とを入れ替え、スイッチング素子Q3のデューティ比とスイッチング素子Q4のデューティ比とを入れ替える。
すなわち、第1実施形態では、外部からの要求トルクに対する、共振性負荷2への供給電力により設定される指令値を入れ替えることで、スイッチング素子Q1〜Q4のデューティ比を入れ替えたが、本例では、スイッチング素子Q1〜Q4のオン、オフを切り換えるためのオン、オフ時間の基準値を、スイッチング素子Q1とスイッチング素子Q2との間、及び、スイッチング素子Q3とスイッチング素子Q4との間で入れ替えることで、スイッチング素子Q1〜Q4のデューティ比を入れ替えている。
上記のように、本例は、スイッチング素子Q1〜Q4のオン時間を計測するタイマー105を備え、スイッチング素子Q1、Q3のデューティ比に相当する基準値と、スイッチング素子Q2、Q4のデューティ比に相当する基準値とを設定し、デューティ比を入れ替えるタイミングで、スイッチング素子Q1、Q3の基準値と、スイッチング素子Q2、Q4の基準値とを入れ替える。これにより、スイッチング素子Q1〜Q4の損失の大小を抑制することで、温度の高いスイッチング素子Q1〜Q4の損失を低減し、温度上昇を抑制することができる。また、温度上昇を抑制しつつ、ブリッジ回路の出力を継続して増加させることができる。
上記のスイッチング素子Q1、Q3の基準値が本発明の「第1基準値」に相当し、スイッチング素子Q2、Q4の基準値が本発明の「第2基準値」に相当する。