JP4924073B2 - モータ制御装置及び車両の駆動力制御装置 - Google Patents
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Description
上記インバータは、複数のスイッチング素子のスイッチング動作で電力を変換するが、故障時におけるスイッチング素子の加熱を防止する手段として、所定以上の温度に達したらモータのトルク指令値を小さくしたり、モータの駆動を停止したりしてインバータを保護している。
しかし、例えば、モータで駆動される車輪側からの負荷によって駆動中のモータが機械的に拘束されてロック状態になった場合も、インバータの一部のスイッチング素子がオン状態となるスイッチング相で固定されることで、オン状態で固定されたスイッチング素子の発熱が大きくなる。
このようなロック状態が例えば坂道で停止した際に発生した場合、モータトルク指令値を小さくしたり、駆動していたモータを停止したりすると、車両が不用意にロールバックしたり、そのロールバックが大きくなったりする。
本発明は、上記のような点に着目してなされたもので、モータがロック状態となった場合におけるインバータの発熱を抑えつつモータトルクの低下を抑えることを可能とすることを課題としている。
モータのロータが機械的に拘束されたロック状態であると判定すると、モータの界磁電流の向きを反転させると共に、その界磁電流の反転に同期をとって、インバータの各相における上下アームのスイッチング素子のオン−オフ状態を切り替えることを特徴とする。
図1は、本発明を適用した四輪駆動車両の概略構成図である。また図2は、そのモータ駆動制御に関するパワーエレクトロニクス部の構成図である。
(構成)
図1に示すように、本実施形態の車両は、左右前輪1L、1Rが、内燃機関であるエンジン2によって駆動される主駆動輪であり、左右後輪3L、3Rが、モータ4によって駆動可能な従駆動輪である。
上記発電機7は、4WD制御部20によって調整される界磁電流Ifgに応じてエンジン2に対し負荷となり、その負荷トルクに応じた発電をする。この発電機7の発電電力の大きさは、回転数Ngと界磁電流Ifgとの大きさにより決定される。なお、発電機7の回転数Ngは、エンジン2の回転数Neからプーリ比に基づき演算することができる。
モータ4は、図3のように、界磁巻線型同期モータであり、界磁コイル4aを有したロ一タと回転磁界を発生するための3相巻線(電機子コイル4b)が巻かれたステータを備える。モータ4はロータの界磁コイル3aに電流を流すことで発生する磁界とステータの電機子コイル4bから発生する磁界との相互作用により回転運動する。また、ロータが外力により回転させられる場合には、これらの磁界の相互作用により電機子コイル4bの両端に起電力を発生し発電動作する。モータ4は、モータ制御部21によって指令値に制御される。
ジャンクションボックス10内には、インバータ9と発電機7とを接続・遮断するリレーが設けられている。そして、このリレーが接続されている状態で、発電機7から整流器12を介して供給された直流の電力は、インバータ9内で三相交流に変換されてモータ4を駆動する。
また、ジャンクションボックス10内には、発電電圧を検出する発電機電圧センサ13と、インバータ9の入力電流である発電電流を検出する発電機電流センサ14とが設けられ、これらの検出信号は4WD制御部20に出力される。また、モータ4の駆動軸にはレゾルバが連結されており、モータ4の磁極位置信号θを出力する。
また、上記クラッチ12は、例えば湿式多板クラッチであって、4WD制御部20からの指令に応じて締結及び開放を行う。なお、本実施形態においては、締結手段としてのクラッチを湿式多板クラッチとしたが、例えばパウダークラッチやポンプ式クラッチであってもよい。
上記4WD制御部20は、例えばマイクロコンピュータ等の演算処理装置を備えて構成され、上記各車輪速度センサ27FL〜27RRで検出される車輪速度信号、ジャンクションボックス10内の電圧センサ13及び電流センサ14の出力信号、モータ4に連結されたレゾルバの出力信号及び駆動力指示子であるアクセルペダル(不図示)の踏込み量に相当するアクセル開度等が入力される。
モータ指令演算部30は、ブロック図である図5のように、前後回転数差演算部30a、車速演算部30b、第1モータ4駆動力演算部30c、第2モータ4駆動力演算部30d、セレクトハイ部30e、及び後輪TCS制御部30fからなり、4輪の車輪速度信号に基づいて算出される前後輪の車輪速度差とアクセルペダル開度信号とから、モータトルク指令値Ttを算出する。
ΔV=(Vfr+Vfl)/2−(Vrr−Vrl)/2
そして、前後回転差ΔVに基づいて、第1モータ4駆動力演算部30cで予め格納されたマップを参照し、第1モータ4駆動力TΔVを算出して後述するセレクトハイ部30eに出力する。この第1モータ4駆動力TΔVは、前後回転差ΔVが大きくなると共に比例的に大きく算出されるように設定されている。
第2モータ4駆動力演算部30dでは、第2モータ4駆動力Tvを算出する。具体的には、車速演算部30bから出力された車速Vとアクセル開度Accとに基づいて、予め格納されたマップを参照して、算出する。この第2モータ4駆動力Tvは、アクセル開度Accが大きくなるほど大きく、車速Vが大きくなるほど小さく算出されるように設定されている。
そして、後輪速Vrl,Vrr、車速Vに基づいて、公知の方法により後輪トラクションコントロール制御を行って、モータ4のモータトルク指令値Ttを出力する。
また、発電機制御部31は、ブロック図である図6のように、要求電力演算部31A及び発電機制御部本体31Bを備える。
要求電力演算部31Aは、ブロック図である図7のように、モータ指令演算部30で算出されたモータトルク指令値Ttとモータ4回転速度Vmとに基づいて、次式をもとにモータ4に必要な電力Pmを算出する。
Pm=Tt×Vm
Pg=Pm/Иm
ここで、Иmはモータ・インバータ効率である。モータ・インバータ効率Иmは、モータトルク指令値Ttとモータ4回転速度Vmに基づき、効率マップを使用して算出される。
さらに、その発電機電圧指令と発電機電圧を比較し電圧偏差を求めPI制御を施して発電機電圧指令にする界磁電流Ifgを求め出力する。
・4WDスイッチオン時に車両停止時はクラッチオン
・モータ目標トルクが0でない時はクラッチオン
・モータ目標トルクが0のときはクラッチオフ
・モータ4の回転数が許容回転数を越えた場合には保護の為、クラッチオフ
・4WDスイッチオフ時はクラッチオフ
また、モータ制御部21は、図9に示すように、モータロック判定部21A、通常インバータ駆動制御部21B、通常モータ界磁制御部21C、ロック時処理部21Dと、を備える。
ステップS30では、ロックフラグLKFLGをオンにして処理を終了する。
また、ステップS40では、ロックフラグLKFLGをオフにして処理を終了する。なお、ロックフラグLKFLGの初期値はオフとする。
また、ロック時処理部21Dは、図9に示すように、界磁切替部41と、インバータ反転部42とからなる。
界磁切替部41は、ロックフラグLKFLGがオンの場合に作動して、一定周期たとえば所定時間(例えば数10ms)だけ経過するたびに、界磁電流Ifmの向きを強制的に切り替える。すなわち、界磁コイル4aの前回のスイッチングパターンを記憶しておき、所定時間経過すると、オン状態のスイッチング素子9aをオフ状態に、オフ状態のスイッチング素子9aをオン状態に切り替えるスイッチング制御信号を界磁駆動回路22に出力する。界磁切替部41は、界磁電流切替手段を構成する。
これに鑑みて、インバータ反転部42では、界磁切替部41によるスイッチングパターンの反転と同時には、インバータ9のスイッチングパターンの反転を行わずに、次のような反転処理をしている。
モータ4が駆動制御される4駆状態では、発電機7からの発電電力がインバータ9を介してモータ4の電機子コイル4bに供給されると共に、モータ4の界磁電流Ifmにも電流が供給される。
そして、車両が通常に走行中や発進時において、モータ4がロック状態でない場合には、通常の制御(通常インバータ駆動制御部21B、通常モータ界磁制御部21Cの処理)によってモータトルク指令値となるようにモータ4が回転駆動され、モータ4で駆動される後輪(従駆動輪)が回転する。
一方、坂道発進などにおいて、後輪側からの負荷によってモータ4が機械的に拘束されたロック状態(モータ4が駆動されているにも関わらずモータ4が回転していない状態)になると、ロックフラグLKFLGがオンとなって、通常制御が停止してロック時処理部21Dが作動する。
さらに、インバータ9のスイッチング素子9aのオン状態を周期的に上下アームで切り替えることで、特定のスイッチング素子9aだけが温度上昇してしまうことを防ぐことができて、保護温度に到達するための時間も長くすることができる。
このタイムチャートでは、まずt0の時点において、界磁切替部41からのスイッチ制御信号によって、界磁駆動回路22のオンパターンを図13の状態に切り替えられる。すると、界磁電流Ifmは界磁コイル4aの時定数により徐々に電流値が下がり始める。この界磁電流Ifmがモニタリングされ、界磁電流Ifmが所定閾値Ifthとなったt1の時点で、インバータ反転部42からのスイッチング制御信号によって、インバータ9のスイッチング素子9aを全部オフに切り替えて、電機子電流をオフにする。このとき電機子電流も電機子コイル4bの時定数により電流値が下がり始める。t2において電機子電流はゼロとなり、モータ4の出力トルクもゼロとなる。その後t3において界磁電流Ifmがゼロとなる。t0の時点で界磁回路のスイッチング素子9aのオン状態は切り替わっているので、t3経過後は界磁電流Ifmが逆転して流れ始める。更に、界磁電流Ifmが所定閾値−Ifthとなったt4の時点で、インバータ反転部42からのスイッチング制御信号によって、インバータ9側のスイッチング状態を図2(b)の状態に切り替えることにより電機子電流も逆に流れ始め、t5の時点でスイッチング素子9aを切り替える前の状態と同じ電機子電流値に達する。遅れてt6の時点で界磁電流Ifmも切り替える前と同じ値となり、切り替え動作を完了する。このような動作を行うことで界磁電流Ifmが切り替わるt3の時点で確実に電機子電流をゼロとすることができるため、モータ4の出力トルクが逆方向に出力されるのを防ぐことができる。以下、切り替え周期Tごとに同じ動作をロック状態が解除されるまで継続する。
一般的に界磁コイル4aのL値は電機子コイル4bのL値よりも大きいため、電機子電流Iaがゼロとなる時間は、界磁コイル4aの界磁電流Ifmがゼロになるよりも早い。よって、まずロック状態における電機子電流Ia0を検出し、Ia0と電機子コイル4bのL値Laにより電機子電流をオフとなるようにスイッチ素子を変更してから、実際にゼロとなるまでの時間ta0を演算する。このときの演算式は電機子コイル4bの抵抗とインバータ部の合成抵抗値をRaとして下式となる。
0=exp(−ta0/(La/Ra))
そして、上の式から時間ta0を決定する。もっとも、一般的にt=3×(La/Ra)程度の時間で電流値はほぼゼロになるので、ta0=3×(La/Ra)とすればよい。
Ifta0=Vf/Rf[1−exp{−t/(Lf/Rf)}]
により求められる。
そして、Ifta0に対し安全率を掛け、電機子電流Iaが必ず先にゼロになるように調整した値を界磁電流閾値Ifthとする。
ここで、電機子電流がオフとなる期間はトルクが抜けるが、その間は駆動トルク伝達機構のねじれにより吸収される期間内とすれば、ねじれ分だけ、完全に後輪の駆動力がゼロとなることを低減することが出来る。
また、上記実施形態では、一定周期で、界磁電流Ifmの向きを強制的に切り替えるようにしているが、ロック状態に応じて、周期を徐々に短くするなど、周期不等間部とすることも出来る。
また、上記実施形態では、ハイブリッド車両に本発明のモータ制御装置を適用した例であるが、電気自動車など他の装置に本発明のモータ制御装置を適用しても構わない。
4a 界磁コイル
7 発電機
9 インバータ
9a スイッチング素子
21 モータ制御部
21A モータロック判定部
21B インバータ駆動制御部
21C 通常モータ界磁制御部
21D ロック時処理部
22 界磁駆動回路
22a スイッチング素子
30 モータ指令演算部
31 発電機制御部
41 界磁切替部
42 インバータ反転部
Ia 電機子電流
Ifm 界磁電流
Ifth 界磁電流閾値
LKFLG ロックフラグ
Claims (4)
- モータの各相に対応する各上下アームのスイッチング素子をスイッチングすることで電力供給源から供給された供給電力を交流電力に変換しモータの電機子に通電するインバータと、モータの界磁コイルに流す電流を制御する界磁駆動回路とを備えるモータ制御装置において、
モータのロータが機械的に拘束された状態であるロック状態を検出するロック状態検出手段と、モータの界磁電流の向きを反転させる界磁電流切替手段と、インバータの全アームのスイッチング素子のオン−オフ状態を同期をとって切り替えるスイッチング反転手段と、を備え、
ロック状態検出手段の検出によりモータがロック状態と判定すると、界磁電流切替手段によって、モータの界磁電流の向きを反転させると共に、スイッチング反転手段によって、インバータの各相における上下アームのスイッチング素子のオン−オフ状態を、上記界磁電流の反転に同期をとって切り替えることを特徴とするモータ制御装置。 - 上記界磁電流の向きを反転させる際に、当該界磁電流の向きが逆転する前であって当該界磁電流の絶対値が所定閾値以下に下がったことを検出するとインバータの全アームのスイッチング素子をオフにしてモータ電機子電流を停止し、さらに、界磁電流の向きが逆転したことを検出すると、各相の上下のアームのスイッチング素子のオン−オフ状態を反転した状態に切り替えることを特徴とする請求項1に記載したモータ制御装置。
- 上記所定閾値とは、停止したモータ電機子電流がゼロとなった時点で、界磁電流の向きが逆転しない電流値とすることを特徴とする請求項2に記載したモータ制御装置。
- 上記請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載したモータ制御装置を備え、上記電力供給源は、駆動輪を駆動する内燃機関のトルクで駆動される発電機であり、上記モータのトルクで従駆動輪を駆動することを特徴とする車両の駆動力制御装置。
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