JP5860638B2 - 苦渋味が抑制された紅茶抽出液を含有する容器詰め無糖紅茶飲料 - Google Patents

苦渋味が抑制された紅茶抽出液を含有する容器詰め無糖紅茶飲料 Download PDF

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Description

本発明は、苦渋味が抑制された紅茶抽出液の製造方法、ならびに、この紅茶抽出液を含有する容器詰め無糖紅茶飲料に関する。
近年、缶やペットボトルなどに充填された紅茶飲料は、手軽さや香味バリエーションの豊富さ、健康志向から消費者の高い支持を得ており、生産量は高い伸びを示している。その多くは糖類あるいは高甘味度甘味料を含んでおり、甘味を有している。一方で、健康への配慮や食事の際など、飲用シーンによっては甘味がない紅茶飲料が求められているが、甘味がない紅茶飲料は苦渋味が強調される。そのため、甘味がない紅茶飲料をより飲みやすくするためには、苦渋味を抑える技術が望まれている。
これまで、紅茶の苦渋味を抑制する種々の方法が提案されている。しかしながら、従来提案されている苦渋味の抑制方法は、甘味を付与するか、その他の添加物を配合する方法が主であり、紅茶本来の味への影響があるなどの課題があった。紅茶の苦渋味を抑制し、かつ、紅茶本来の味を維持する甘味のない紅茶飲料を製造する上では、全く満足できるものではなかった。
従来の紅茶の苦渋味を抑制する方法としては、例えば、紅茶原料の抽出時および/または抽出後に糖類分解酵素処理を行う紅茶エキスの製造方法が開示されている(特許文献1)。この方法により苦味や渋味が少ない紅茶本来の風味を付与させた飲食物の提供が可能になることが示されているが、酵素処理によって紅茶原料に含まれる二糖や多糖類をより小さい糖類に変換することで、旨味や甘味が強くなってしまう。
また、高甘味度甘味料もしくは糖アルコールのいずれかまたは両方を添加することにより、苦渋味が抑制された紅茶飲料が示されている(特許文献2)。しかし、この紅茶飲料も甘味が付与されている。
一方、特許文献3では、糖アルコールを添加することで、苦味、渋味が適度な範囲に抑制され、かつ甘味も適度に抑えられた紅茶飲料の製造方法についても示されているが、添加物を添加するものであるため、紅茶飲料等の調製に際して、紅茶本来の味を保持させて、その香味を調整することが難しいという問題があった。
特開2008−86280号公報 特開2007−117087号公報 特開平7−274829号公報
甘味がない紅茶飲料は、甘みを有する場合に比べて、苦渋味がより強調される。背景技術で記載した酵素処理や高甘味度甘味料による苦渋味の抑制方法では、甘味を有してしまう。また、糖アルコールなどを添加する場合においても甘みが付与されるため、紅茶本来の味をバランスよく維持させることは難しい。そのため、紅茶本来の味を維持しつつも、より飲みやすい甘味がない紅茶飲料を製造するためには、添加物によらない苦渋味低減技術が望まれている。
本発明は、このような事情に鑑みてなされ、苦渋味が強いという特徴を有する甘味がない紅茶飲料に、甘味を有する添加物を用いることなく、紅茶の苦渋味を抑制させた紅茶抽出液及び、該抽出液を用いた容器詰め無糖紅茶飲料を提供することを目的とする。
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、驚くことに、紅茶抽出液の製造工程において、紅茶抽出液中に苦渋味の主原因物質であるタンニンや重合ポリフェノール類を存在させながら、原料である紅茶葉および/またはその紅茶抽出液から紅茶葉由来の揮発性物質を低減または除去することにより、苦渋味を実質的に抑制できることを見出した。この知見を利用して紅茶抽出液を製造し、これを用いることで、甘味を有する添加物を用いることなく苦渋味を実質的に抑制させた容器詰め無糖紅茶飲料を完成させた。また、通常甘味を有する容器詰め紅茶飲料の製造においては、香味設計の一環として、様々なアルカリ塩を添加することが行われるが、容器詰め無糖紅茶飲料においては、特にナトリウム塩を用いることで、甘味がない紅茶飲料に特徴的な苦渋味を顕著に抑制できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は以下の特徴を包含する。
(1)紅茶抽出液の製造工程において、紅茶葉由来の揮発性物質を低減する工程を含み、これによって苦渋味が実質的に抑制された紅茶抽出液が得られることを特徴とする、紅茶抽出液の製造方法。
(2)紅茶抽出工程前の紅茶葉から前記揮発性物質を低減または除去する工程を含むことを特徴とする、上記(1)の方法。
(3)紅茶抽出液から前記揮発性物質を低減または除去することを特徴とする、上記(1)の方法。
(4)前記苦渋味が実質的に抑制された紅茶抽出液が、紅茶抽出液の茶由来のブリックス度が0.8である場合、該抽出液を下記条件でガスクロマトグラフィー−質量(GC−MS)分析したときのトータルイオンクロマトグラムの下記の(A)及び(B)について、
(A)が、面積が100,000以上を示すピークのピーク面積値であり、および、
(B)が、内部標準物質が示すピーク面積値であるとき、
(A)/(B)で示される各ピークにおける比の総和が4.0以下であることを特徴とする、上記(1)〜(3)のいずれかの方法。
[GC−MS分析条件]
使用機器: GC−2010 SHIMADZU製、AOC−5000 AUTO INJECTOR SHIMADZU製 検出方法: 質量分析法。GCMS−QP2010 Plus SHIMADZU製 カラム: Phenomenex製 ZB−WAX(60.0m×0.25μm×0.25mmID)
分析方法:ヘッドスペース固相マイクロ抽出(HS−SPME)法による
SPME条件:
ファイバー: スペルコ製 SPME Fiber Assembly 100μm Polydimethylsiloxane Coating 型番;57301
Pre Incubation Time;10分
Incubation Temperature;60℃
Pre Inc Agitator Speed;250rpm
Agitator On Time;5秒
Agitator Off Time;5秒
Vial Penetration in;22mm
Extraction Time;40分
Injection Penetration in;54mm
Desorption Time;3分
Post FibCond Time;7分
GC条件:
カラムオーブン温度;60℃
気化室温度;240℃
昇温プログラム;60℃に1分保持、5℃/分で昇温、240℃に10分保持
注入モード;スプリットレス
サンプリング時間;5分
キャリアガス;He、キャリアガス線速度一定モード
線速度;25.8cm/秒
MS分析条件:
イオン源温度;200℃
インタフェース温度;240℃
検出器電圧;0.78kV
開始時間;5分
終了時間;40分
測定モード;スキャン
イベント時間;0.5秒
検出分子量;33−450m/z
サンプル調製: 20mlスクリューキャップ付きバイアル瓶に、ブリックス度0.8溶液10ml、NaClを3g、内部標準を100μl封入
内部標準: 0.1%シクロヘキサノール
(5)紅茶抽出液から前記揮発性物質を低減または除去する工程が、該紅茶抽出液を濃縮することを含む上記(3)の方法。
(6)紅茶抽出液の濃縮が減圧濃縮であることを特徴とする上記(5)の方法。
(7)紅茶抽出液の減圧濃縮において紅茶抽出液のpHを5.5以上7.0以下にすることを特徴とする上記(6)の方法。
(8)上記(1)〜(7)のいずれかの方法により得られた、紅茶葉由来の揮発性物質が低減または除去され、かつ、苦渋味が実質的に抑制されたことを特徴とする紅茶抽出液。
(9)上記(1)〜(7)のいずれかの方法によって苦渋味が実質的に抑制された紅茶抽出液を作り、該紅茶抽出液を用いて容器詰め無糖紅茶飲料を製造することを含む、容器詰め無糖紅茶飲料の製造方法。
(10)ナトリウム塩を用いて容器詰め無糖紅茶飲料のpHを調整することを特徴とする上記(9)の方法。
(11)容器詰め無糖紅茶飲料のpHを5.5以上7.0以下に調整することを特徴とする上記(9)または(10)の方法。
(12)上記(8)の紅茶抽出液を含有することを特徴とする容器詰め無糖紅茶飲料。
(13)紅茶抽出液のいずれかの製造工程において紅茶葉由来の揮発性物質を低減または除去し、これによって紅茶抽出液の苦渋味を実質的に抑制することを含む、紅茶抽出液の苦渋味の抑制方法。
本発明の方法により、紅茶葉および紅茶抽出液から苦渋味を抑制することが可能になり、よって、苦渋味が抑制された紅茶抽出液を含有する容器詰め無糖紅茶飲料を提供することを可能にした。
この図は、紅茶葉に通気することによって揮発性物質を低減するための装置例を示す。 この図は、紅茶抽出液の濃縮の割合と苦渋味低減効果を示す(実施例の試験例4参照)。 この図は、紅茶抽出液の濃縮における紅茶抽出液のpHの影響を示す(実施例の試験例5参照)。 この図は、容器詰め無糖紅茶飲料製造におけるpH調整剤と苦渋味低減効果の関係を示す(実施例の試験例6参照)。 この図は、容器詰め無糖紅茶飲料製造における製品液のpH値と苦渋味低減効果の関係を示す(実施例の試験例7参照)。
本発明をさらに詳細に説明する。
上述したように、本発明は、苦渋味が強いという特徴を有する、甘味がない紅茶飲料に、甘味を有する添加物を用いることなく、紅茶の苦渋味を抑制させた容器詰め無糖紅茶飲料を提供することを目的としてなされたものである。この課題は、意外にも、本発明により、原料紅茶葉または紅茶抽出液から紅茶葉由来揮発性物質を低減または除去することによって解決される。本明細書で使用する「低減」なる用語は、原料紅茶葉に含まれる揮発物質を30〜40%以上、好ましくは50〜60%以上、さらに好ましくは70〜80%以上、最も好ましくは90〜95%以上(「実質的な除去」)、減少させることを指す。
本明細書で使用される「無糖紅茶飲料」という用語は、ショ糖などの糖類、キシリトールなどの糖アルコール類、高甘味度甘味料などの甘味料など、甘味を有する物質を含有せず、甘味を感じない紅茶飲料をいう。
また、紅茶の苦渋味は、紅茶に本来含まれる苦味や渋味を指し、その原因となる成分は、主にタンニンや重合ポリフェノール類であろうと考えられている。しかし、本発明の苦渋味抑制は、これら物質の関与とは異なる機序によって発揮されると推定される。本明細書で使用される「苦渋味を実質的に抑制する」とは、苦味や渋味を著しく低減すること、すなわちヒトが苦味や渋味をほとんど感じない状態にすることをいう。
1.紅茶抽出液の製造方法
(1.1)茶葉の製造(製茶)工程
本発明の紅茶飲料に使用する紅茶葉は、カメリア(Camellia)属、例えばC.sinensis、C.assamica又はその雑種から得られる生葉を萎凋し、揉捻工程、発酵工程、乾燥工程を経て荒茶となり、その後、等級分けなどの仕上げ工程を経て製造される。本発明においては、いずれの茶葉を用いてもよい。
萎凋(いちょう)とは、生葉を長時間(約10時間)かけて水分を約50%除去して萎らせることである。
揉捻(じゅうねん)とは、揉捻機を使用して圧力をかけ、よじりながらよく揉むことである。そうすることによって茶葉の組織や細胞を破壊し、茶汁を絞り出す。揉捻は、CTC製法やオーソドックス製法などの一般的方法で行うことができる。
発酵とは、例えば室温(約25〜30℃)、湿度約80〜90%に維持された発酵室の発酵棚に茶葉を広げ、茶葉から出た酸化酵素によって酸化発酵を行うことである。
乾燥とは、例えば、約80〜90℃の温度の熱風で茶葉の水分を20%程度に荒乾燥したのち、さらに約75℃の温度で水分が約4%になるまで熱風乾燥することである。
(1.2)紅茶抽出液の製造工程
本発明の紅茶飲料に使用する紅茶抽出液は、攪拌抽出等の従来方法や今後開発されるいずれの方法で得られたものでもよい。
例えば、抽出溶媒は水であるが、抽出時に、水に予めアスコルビン酸ナトリウム等の有機酸および/または有機酸塩を添加してもよい。紅茶抽出液は、水を用いて通常の抽出条件で製造される場合、紅茶葉から抽出する時の水の温度は、50〜100℃が好ましく、更に好ましくは70〜100℃である。紅茶葉からの抽出時の水の量は、紅茶葉に対して5〜60質量倍が好ましく、更に好ましくは5〜40質量倍である。紅茶葉からの抽出時間は1〜60分が好ましく、より好ましくは1〜40分、更に好ましくは1〜30分である。また、抽出の際、酵素剤等の任意の添加物を加えてもよい。また、多機能抽出器などを用いて100℃以上の水で抽出してもかまわない。
(1.3)紅茶抽出液
本明細書において、「紅茶抽出液」は、特に断らない限り、例えば上記(1.2)の「紅茶抽出液の製造工程」で得られる紅茶抽出液、その紅茶濃縮液(紅茶エキスともいう。)、乾燥粉末化した紅茶パウダーを溶解した溶液の少なくとも1種、あるいは2種以上を混合したものをいう。紅茶エキスおよび紅茶パウダーは、市販のエキスおよびパウダーを包含する。
また、本発明の紅茶抽出液は、原料である上記の紅茶抽出液から本発明の方法によって苦渋味が実質的に抑制された紅茶抽出液をいう。
(1.4)揮発性物質の低減または除去
苦渋味が実質的に抑制された紅茶抽出液を製造するために、本発明は、紅茶抽出液の製造工程において、紅茶葉由来の揮発性物質を低減または除去する方法を提供する。
揮発性物質の低減または除去は、通常、抽出工程にかける前の紅茶葉、または、上記(1.2)の「紅茶抽出液の製造工程」で得られる紅茶抽出液、上記紅茶エキス、あるいは紅茶パウダーを溶解した溶液の少なくとも1種、あるいは2種以上を混合したものを原料とし、この原料から上記揮発性物質を低減または除去することによって行うことができる。
紅茶葉または紅茶抽出液等からの紅茶葉由来揮発性物質の低減または除去方法については、特に制限はなく、いずれの方法も用いることができ、複数の揮発性物質の低減方法を組合せることもできる。ここで、紅茶抽出液は、既述の方法にて得られた抽出液、紅茶濃縮液(エキス)、紅茶パウダーを溶解した溶液の少なくとも1種、あるいは2種以上の混合液のいずれでもよい。この方法には、例えば、蒸留による方法、減圧濃縮による方法、エアレーションにより脱気する方法、紅茶葉に通気する方法、紅茶葉を真空処理する方法などが含まれる。以下にこれらの方法のいくつかを説明する。
(a)減圧濃縮による紅茶抽出液からの揮発性物質の低減または除去方法
この方法では、原料である紅茶抽出液を、減圧下で濃縮することによって、該抽出液に含まれる揮発性物質を低減または除去することを含む。
本明細書では、減圧下で濃縮することを「減圧濃縮」という。紅茶抽出液を減圧濃縮することによって、該抽出液から水分と一緒に紅茶葉由来の揮発性物質が蒸発し、除去される。このとき、濃縮は、苦渋味の原因となる揮発性物質が低減、または実質的に除去されるまで実施することが好ましく、GC−MS分析により得られる値が一定範囲となるまで濃縮を実施することがより好ましい。すなわち、揮発性物質の除去が目的の除去率に達したところで、紅茶抽出液の減圧濃縮を終了してもよいし、あるいは、必要であれば、乾固するまで濃縮を行なってもよい。
本明細書において「揮発性物質」とは、紅茶生葉由来の揮発性物質、あるいは、紅茶葉を製造する工程で形成される揮発性物質であり、苦渋味の原因となる紅茶葉由来揮発性物質を含有する物質である。
減圧濃縮するための装置は、以下のものに限定されないが、例えば、真空ラインを接続した耐圧性蒸発装置、(回転式)エバポレーター、これらに加熱装置を付帯したものなどを包含する。
このような装置に原料紅茶抽出液を仕込み、真空ラインによって減圧度に維持したまま、水の蒸発および留出を実施する。この操作によって、苦渋味の原因となる揮発性物質を含有する揮発性物質が、水と一緒に留出される。
減圧は、特に制限されないが、例えば約30℃〜約90℃の温度で水の留出が起こる程度の減圧度で行われる。減圧度は、例えば約1.33hPa〜約800hPa(約1mmHg〜600mmHg)であるが、この範囲に限定されない。また、温度は、例えば約30℃〜約90℃であるが、この範囲に限定されない。
紅茶抽出液の濃縮の割合は、発明の効果を奏すれば特に限定されない。本発明者らが鋭意検討したところ、驚くことに原料となる紅茶抽出液を1.1倍濃縮した程度であっても、苦渋味が低減することを見出した。したがって、好ましくは本発明の紅茶抽出液は、原料となる紅茶抽出液を1.1倍以上濃縮したもの、より好ましくは1.2倍以上濃縮したもの、さらに好ましくは1.3倍以上濃縮したもの、さらに好ましくは1.4倍以上濃縮したもの、最も好ましくは乾固したものである。
また、濃縮に際してエバポレーターを用いる場合は、真空度20〜100hPaで、5〜20分、好ましくは25hPa以下かつ15分以上である。また、原料となる紅茶抽出液のpHは特に限定されないが、好ましくは4.0〜7.5、より好ましくは、5.5〜7.0、さらに好ましくは6.0〜7.0である。
濃縮に際して凍結乾燥を用いた場合は、抽出液を凍結乾燥機に供し、液部を除去する。
原料紅茶抽出液の仕込み量は、特に制限されないが、例えば50L〜3000Lまたはそれ以上である。
(b)紅茶抽出液を活性炭処理することによる揮発性物質の低減または除去方法
この方法は揮発性物質の低減または除去のために、紅茶抽出液に活性炭を混合し、一定時間静置したのち、活性炭を除去することを含む。
混合する活性炭量は、特に制限されないが、例えば、紅茶抽出液に対して0.001%〜2.0%(重量)の活性炭を混合し、揮発性物質が低減されて紅茶抽出液の苦渋味が実質的に抑制されるまで静置した後、活性炭を除去する。
(c)紅茶抽出液をエアレーションして脱気することによる揮発性物質の低減または除去方法
この方法は、紅茶抽出液に窒素やアルゴンなどのガスをバブリングして揮発性物質を低減または除去することを含む。
紅茶抽出液を処理することによる揮発性物質の低減または除去は、後述する紅茶葉からの揮発性物質の低減または除去に比べて、より効率的である。
(d)紅茶葉に通気することによる揮発性物質の低減または除去方法
この方法は、揮発性物質の低減または除去のために、紅茶抽出液を製造する前の紅茶葉に直接通気を行うことを含む。
一つの方法では、紅茶葉が落下しない程度のメッシュまたは細孔を有する金属、プラスチック、ガラス、布、紙などの材質のフィルターを取り付けた恒温容器に紅茶葉を仕込み、恒温容器の一方向から気体(空気または窒素など)を通気する。このとき、容器や気体の温度は、例えば室温から約70℃であり、好ましくは約40〜約70℃、例えば約50℃に加温してもよい。通気は、揮発性物質が低減または除去されて紅茶抽出液の苦渋味が実質的に抑制されるまで行う。
別の方法では、密閉された容器に紅茶葉を仕込み、茶葉の中まで挿入されかつ通気するための入口チューブと、排気するための出口チューブとを介して、気体(空気または窒素など)を通気し、かつ排気する。このとき、装置や気体の温度は、例えば室温から約70℃であり、好ましくは約40〜約70℃、例えば約50℃に加温してもよい。通気は、揮発性物質が低減または除去されて、紅茶抽出液の苦渋味が実質的に抑制されるまで行う。
これらの処理を施した茶葉を任意の方法で抽出することで、実質的に苦渋味が低減された紅茶抽出液を得ることができる。
(e)紅茶葉を真空処理することによる揮発性物質の低減または除去方法
この方法は、揮発性物質の低減のために、紅茶抽出液を製造する前の紅茶葉を真空乾燥機に入れ、真空処理することを含む。真空処理とは、減圧下で脱気することを含む。そのときに加温してもよい。
真空乾燥機の内部に、任意の段数の棚板を配置し、各棚板に茶葉を敷き詰める。多段にすることによって、多量の茶葉を一度に処理することが可能になる。
このとき、乾燥機の温度は、例えば室温から約70℃であり、好ましくは約40〜約70℃、例えば約50℃に加温してもよい。また、真空度(減圧度)は、装置の気密性能に依存するが、通常、約133hPa〜約665hPa(約100mmHg〜約500mmHg)である。
茶葉を真空下(減圧下)で乾燥することによって、揮発性物質を除去することができる。
これらの処理を施した茶葉を任意の方法で抽出することで、実質的に苦渋味が低減または除去された紅茶抽出液を得ることができる。
(1.5)苦渋味が実質的に抑制された紅茶抽出液
上述したような本発明の方法、すなわち、紅茶抽出液の製造工程において揮発性物質を低減または除去する方法によって、苦渋味が実質的に抑制された紅茶抽出液を製造することができる。言い換えれば、本発明の方法によって、苦渋味が実質的に抑制されるように、紅茶葉または紅茶抽出液から揮発性物質が低減または除去される。
苦渋味が実質的に抑制されるように揮発性物質が低減または除去された本発明の紅茶抽出液は、好ましくは以下の条件を満たす。
すなわち、紅茶抽出液の茶由来のブリックス度が0.8である場合、該抽出液を下記条件でGC―MS分析したときのトータルイオンクロマトグラムの下記の(A)及び(B)について、
(A)が、面積が100,000以上を示すピークのピーク面積値であり、および、
(B)が、内部標準物質が示すピーク面積値であるとき、
(A)/(B)で示される各ピークにおける比の総和が4.0以下である。
本明細書で使用される「茶由来のブリックス度」とは、紅茶葉に由来するもの以外のものを含まない、紅茶葉由来の抽出液のみに由来するブリックス度である。
上記方法により揮発性物質を低減または除去することによって、上記(A)に定義されるようなピークが減少すると考えられる。
抽出によって得られた紅茶抽出液は、希釈や濃縮によりブリックス度を0.8に調整してから上記評価を行う。また、紅茶エキスについても同様に、紅茶濃縮溶液のブリックス度を0.8に調整してから上記評価を行う。紅茶パウダーについては水に溶解し、茶由来のブリックス度を0.8に調整してから上記評価を行う。
GC−MS分析条件は、以下のとおりである。
使用機器: GC−2010 SHIMADZU製、AOC−5000 AUTO INJECTOR SHIMADZU製
検出方法: 質量分析法。GCMS−QP2010 Plus SHIMADZU製
カラム: Phenomenex製 ZB−WAX(60.0m×0.25μm×0.25mmID)
分析方法:ヘッドスペース固相マイクロ抽出(HS−SPME)法による
SPME条件:
ファイバー: スペルコ製 SPME Fiber Assembly 100μm Polydimethylsiloxane Coating 型番;57301
Pre Incubation Time(プレインキュベーション時間);10分
Incubation Temperature(インキュベーション温度);60℃
Pre Inc Agitator Speed(プレインク撹拌器スピード);250rpm
Agitator On Time(撹拌器オン時間);5秒
Agitator Off Time(撹拌器オフ時間);5秒
Vial Penetration in(バイアル瓶へのファイバー挿入長);22mm
Extraction Time(抽出時間);40分
Injection Penetration in(分析機へのファイバー挿入長);54mm
Desorption Time(脱着時間);3分
Post FibCond Time(ファイバークリーニング時間);7分
GC条件:
カラムオーブン温度;60℃
気化室温度;240℃
昇温プログラム;60℃に1分保持、5℃/分で昇温、240℃に10分保持
注入モード;スプリットレス
サンプリング時間;5分
キャリアガス;He、キャリアガス線速度一定モード
線速度;25.8cm/秒
MS分析条件:
イオン源温度;200℃
インタフェース温度;240℃
検出器電圧;0.78kV
開始時間;5分
終了時間;40分
測定モード;スキャン
イベント時間;0.5秒
検出分子量;33−450m/z
サンプル調製: 20mlスクリューキャップ付きバイアル瓶に、ブリックス度0.8溶液10ml、NaClを3g、内部標準を100μl封入
内部標準: 0.1%シクロヘキサノール
本発明の紅茶抽出液は、好ましくは上記(A)/(B)で示される各ピークにおける比の総和が4.0以下であり、紅茶抽出液の苦渋味が実質的に抑制されたというパネラーの官能評価結果と一致する(下記の実施例、特に表1参照)。
このように、本発明は、紅茶抽出液の製造工程において、揮発性物質を低減または除去することによって、紅茶抽出液の苦渋味を実質的に抑制することを可能にするという、従来技術から予測されなかった知見に基づいている。紅茶は、本来、香りを楽しむ飲料であるという考えが一般的であるため、紅茶抽出液から揮発性物質を低減または除去することは、当業者が通常想起しないことであると考えられる。本発明によって、甘味を有する物質を添加しない、かつ紅茶の苦渋味を抑制させたことを特徴とする、容器詰め無糖紅茶飲料に使用するための紅茶抽出液を提供することを可能にした。
2.容器詰め無糖紅茶飲料
本発明はさらに、上記の方法によって苦渋味が実質的に抑制された紅茶抽出液を作る工程、および該紅茶抽出液を用いて容器詰め無糖紅茶飲料を製造する工程(これには、具体的に、該紅茶抽出液を配合した無糖紅茶調合液を作る工程、該無糖紅茶調合液を容器に充填する工程、ならびに殺菌する工程を含む。)、を含む容器詰め無糖紅茶飲料の製造方法を提供する。
本発明はまた、苦渋味が実質的に抑制された本発明の紅茶抽出液を含有する容器詰め無糖紅茶飲料を提供する。
本発明の無糖紅茶飲料は、甘味を有する物質を添加せず甘味を感じない、さらに、苦渋味が実質的に抑制された紅茶抽出液を含有することを特徴とする。
配合する紅茶抽出液は、種類の異なる原料茶葉から上記揮発性物質の低減方法を用いて得られた複数の紅茶抽出液を組み合わせて得られたものでもよい。
無糖紅茶飲料には、苦渋味が実質的に抑制された紅茶抽出液の他に、香味設計に応じて、アスコルビン酸や重曹(炭酸水素ナトリウム)などのpH調整剤、酸化劣化防止剤、栄養物質などの別の成分を配合することができる。
ここで、通常、甘味を有する容器詰め紅茶飲料の製造においては、香味設計に応じて、様々なアルカリ塩をpH調整剤として添加することが行われる。本発明者らの検討によれば、甘味を有する紅茶飲料や、揮発性物質の低減を行っていない無糖紅茶飲料においては、通常用いられるpH調整剤であればいずれであっても、苦渋味に影響を与えるものではないが、本願発明のように、揮発性物質の低減を行った無糖紅茶飲料においては、特定のpH調整剤を用いた場合は、香味上、苦渋味が増強されて感じることがわかった。したがって、本発明の容器詰め無糖紅茶飲料の香味設計を行う際は、pH調整剤として、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、その他ナトリウム塩を含むアルカリ剤などの群から選ばれる1種又は2種以上のアルカリ剤を用いることが好ましく、炭酸水素ナトリウムなどのナトリウム塩を用いることがさらに好ましい。これにより、甘味がない無糖紅茶容器詰め飲料に特徴的な苦渋味を顕著に抑制することができる。
また、本発明の容器詰め無糖紅茶飲料を製造するに際しては、原料となる紅茶抽出液のpHは適宜決定することができるが、好ましくは4.0〜7.5、より好ましくはpH5.5〜7.0であり、さらに好ましくは6.0〜7.0である。
配合して得られた飲料を、金属缶、PETボトル、紙容器のような容器に充填する。内容物の殺菌は、容器の材質に応じて、充填前か、または充填後に行うことができる。
金属缶のように充填後に加熱殺菌できる場合にあっては、食品衛生法に定められた殺菌条件で殺菌処理を行う。一方、PETボトル、紙容器のようにレトルト殺菌できないものについては、充填前に該飲料を、あらかじめ上記と同等の殺菌条件で、例えばプレート式熱交換器等を用いて高温短時間殺菌(UHT殺菌)した後、一定の温度まで冷却し、殺菌済み容器に充填する等の方法が採用される。
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの実施例によって制限されないものとする。
[試験例1] 紅茶葉への通気
図1に示した50℃に設定した恒温槽内で、ガラスフィルターを有したガラス管に、ディンブラを主体とした紅茶葉12gを入れ、ガラス管の一方から紅茶葉が舞う程度の流量で、空気を3日間送り続けた。
該処理された紅茶葉10gに対して、85℃熱水を300g加え、時々攪拌しながら、5分間抽出した。ストレーナーで茶葉を固液分離したのちに、液温が10℃になるまで冷却し、3,000rpm、10分間の遠心分離処理を行い、沈殿物を除去した。これに水を加えて、300gの清澄な抽出液を得た。
未処理の茶葉についても同様の方法で抽出液を調製した。
処理葉、未処理葉それぞれの抽出液を75g秤量し、アスコルビン酸および重曹を用いて該抽出液のpHを約6.3に調整した後、水を用いて250gにメスアップし、官能評価を実施した。
その結果、該処理を行った紅茶葉による抽出液は、未処理のものに比べて苦渋味が抑制されていた。
[試験例2] 茶葉から抽出された紅茶抽出液の減圧濃縮
ディンブラを主体とした茶葉50gに対して、85℃熱水を1,500g加え、時々攪拌しながら、5分間抽出した。ストレーナーで茶葉を固液分離したのちに、液温が10℃になるまで冷却した後、3,000rpm、10分間の遠心処理を行い、再度ストレーナーを通し、水を加えて1,500gの清澄な抽出液を得た(比較例1)。この抽出液500gを減圧濃縮(温度60℃、圧力約30hPa(約22mmHg))し、揮発性物質を低減した乾固物を得た。この乾固物を再度水に溶解し、500gの紅茶抽出液(実施例1)とした。実施例1、比較例1の紅茶抽出液を各々300g秤量し、アスコルビン酸、重曹(炭酸水素ナトリウム)を用いてpHを約6.3に調整し、水にて1,000gにメスアップした後、11人のパネルによる官能評価に供した。官能評価スコアは、各パネルの評価点の平均とした。苦渋味の評価については評価点を以下のとおりとした。点数が低いほど苦渋味が弱いことになる。
苦渋味、後引き(収れん性の不快感)のきわめて強いもの:5点
苦渋味、後引き(収れん性の不快感)の大変強いもの:4点
苦渋味、後引き(収れん性の不快感)の強いもの:3点
苦渋味、後引き(収れん性の不快感)の弱いもの:2点
苦渋味、後引き(収れん性の不快感)を若干感じられるもの:1点
官能評価の結果、スコアは、比較例1は2.7、実施例1は2.0であった。また、比較例1および実施例1の紅茶抽出液のブリックス度を各々0.8に調整し、上記条件によるGC−MS分析を行った。その結果、(A)/(B)は、比較例1は8.7、実施例1は3.9であった。
[試験例3] 茶葉から抽出された紅茶抽出液と紅茶エキスの溶解液の減圧濃縮
(茶葉からの抽出)
ディンブラ、ケニア、ダージリンのそれぞれの茶葉50gに対して、85℃熱水を1,500g加え、時々攪拌しながら、5分間抽出した。ストレーナーで茶葉を固液分離したのちに、液温が10℃になるまで冷却した後、3,000rpm、10分間の遠心分離処理を行い、再度ストレーナーを通し、水を加えて1,500gの清澄な抽出液を得た(比較例2〜4)。
この抽出液500gを減圧濃縮(温度60℃、圧力約30hPa(約22mmHg))し、揮発性物質を低減した乾固物を得た。この乾固物を再度水に溶解し、500gの紅茶抽出液(実施例2〜4)とした。
比較例2〜4、実施例2〜4の紅茶抽出液を各々150g秤量し、アスコルビン酸、重曹を用いてpHを約6.2に調整し、水にて500gにメスアップした後、官能評価を実施した。また、比較例2〜4および実施例2〜4の紅茶抽出液のブリックス度を各々0.8に調整し、上記条件によるGC−MS分析を行った。
(エキスの溶解)
茶葉使用率1%相当となるように、市販エキスA〜Eのそれぞれを水で溶解または希釈し、紅茶抽出液(比較例5〜9)とした。
該抽出液500gを減圧濃縮(温度60℃、圧力約30hPa(約22mmHg))し、揮発性物質を低減した乾固物を得た。この乾固物を再度水に溶解し、500gの紅茶抽出液(実施例5〜9)とした。なお、比較例5〜9、実施例5〜9の官能評価を実施する際には、エキスあるいは乾固物を溶解または希釈し、茶葉使用率が1%相当となるようにメスアップする前にアスコルビン酸、重曹を用いてpHを約6.2に調整した。
また、比較例5〜9および実施例5〜9の紅茶抽出液のブリックス度を各々0.8に調整し、上記条件によるGC−MS分析を行った。
官能評価およびGC−MS分析の結果を表1に示す。
表中、○は苦渋味なし、△は苦渋味弱い、×は苦渋味強い、をそれぞれ表す。
(注)GC分析値は、上記条件でGC−MS分析を行った場合の(A)面積が100,000以上を示すピークの面積値、(B)内部標準物質であるシクロヘキサノールが示すピーク面積値としたときの(A)/(B)で示される各ピークにおける比の総和を表す。
表1に示すとおり、揮発性物質の低減処理を行わない比較例は、GC−MS分析値(A)/(B)が4.0を超えており、かつ苦渋味が感じられた。一方、揮発性物質の低減処理を行った実施例では、GC−MS分析値(A)/(B)は4.0を下回り、かつ苦渋味が低減されていた。
Figure 0005860638
[試験例4]紅茶抽出液の濃縮の割合と苦渋味低減効果
ディンブラを主体とした茶葉50gに対して、85℃熱水を1,500g加え、時々攪拌しながら、5分間抽出した。ストレーナーで茶葉を固液分離したのちに、液温が10℃になるまで冷却した後、3,000rpm、10分間の遠心処理を行い、再度ストレーナーを通し、水を加えて1,500gの清澄な抽出液を得た(比較例10)。この抽出液75gを各条件で減圧濃縮(温度60℃、圧力約25〜100hPa、時間5分〜15分)し、揮発性物質を低減した処理物を得た。該処理物は圧力と時間によって濃縮度が異なり、これを再度水に溶解し、75gの紅茶抽出液とした(実施例10〜14)。各々の条件について、表2に示す。
Figure 0005860638
比較例10、実施例10〜14の紅茶抽出液を各々75g秤量し、アスコルビン酸、重曹を用いてpHを6.0〜6.3に調整し、水にて250gにメスアップした後、4人のパネルによる官能評価に供した。官能評価スコアは、各パネルの評価点の平均とした。苦渋味の評価については比較例10を5点とし、評価点は試験例2を基準とし、0.1点きざみで評価を行った。
図2に示すとおり、減圧濃縮することで、いずれの条件においても苦渋味の低減効果がみられ、濃縮度が高いほど、その効果が向上した。
[試験例5]紅茶抽出液の濃縮における紅茶抽出液のpHの影響
ディンブラを主体とした茶葉50gに対して、85℃熱水を1,500g加え、時々攪拌しながら、5分間抽出した。ストレーナーで茶葉を固液分離したのちに、液温が10℃になるまで冷却した後、3,000rpm、10分間の遠心処理を行い、再度ストレーナーを通し、水を加えて1,500gの清澄な抽出液を得た(比較例11)。この抽出液にアスコルビン酸、又は重曹を加えて、pHを調整した。該抽出液75gを秤量し、温度60℃、40hPaで10分あるいは20分減圧濃縮し、揮発性物質を低減した処理物に水を加え、75gの紅茶抽出液を得た(実施例15〜22)。各々の条件について表3に示す。
Figure 0005860638
比較例11、実施例15〜22の紅茶抽出液を各々75g秤量し、アスコルビン酸、重曹を用いてpHを6.0〜6.3に調整し、水にて250gにメスアップした後、4人のパネルによる官能評価に供した。官能評価スコアは、各パネルの評価点の平均とした。苦渋味の評価については比較例11を5点とし、評価点は試験例2と同様とした。
図3に示すとおり、減圧濃縮条件によらず、濃縮前の紅茶抽出液pHが高いほど苦渋味が低下する傾向が確認された。
[試験例6]容器詰め無糖紅茶飲料製造におけるpH調整剤と苦渋味低減効果の関係
ディンブラを主体とした茶葉50gに対して、85℃熱水を1,500g加え、時々攪拌しながら、5分間抽出した。ストレーナーで茶葉を固液分離したのちに、液温が10℃になるまで冷却した後、3,000rpm、10分間の遠心処理を行い、再度ストレーナーを通し、水を加えて1,500gの清澄な抽出液を得た。この抽出液の一部をエバポレーターによって乾固するまで減圧濃縮した。その後、水を加えて、減圧濃縮前の重量と同じ重量の減圧濃縮処理紅茶抽出液とした。該処理紅茶抽出液あるいは未処理の紅茶抽出液を75g秤量し、各種アルカリを終濃度が2.5mmol/Lとなるように添加した後、アスコルビン酸によって、pHを5.8〜6.1に調整し、250gにメスアップした。またこのとき、グラニュー糖を終濃度3.6%となるように添加した有糖紅茶試験群を設けた。各々の条件について表4に示す(比較例12〜21、実施例23〜27)。
Figure 0005860638
比較例12〜21、実施例23〜27で得られた紅茶飲料を4人のパネルによる官能評価に供した。官能評価スコアは、各パネルの評価点の平均とした。苦渋味の評価については比較例12を5点とし、評価点は試験例2と同様とした。
図4に示すとおり、比較例12〜16ではいずれのアルカリを用いてpH調整を行っても、非常に強い苦渋味が感じられた。一方、比較例17〜21においては、比較例12〜16に較べて、苦渋味の低減はみられたが、アルカリの種類による差異はみられなかった。これに対して、実施例23〜27ではアルカリの種類によって苦渋味の評価点に差異がみられ、カリウム塩よりナトリウム塩の方が評価点は低く、さらに炭酸水素ナトリウム(重曹)を用いた場合が最も評価点が低かった。
[試験例7]容器詰め無糖紅茶飲料製造における製品液のpH値と苦渋味低減効果の関係
ディンブラ及びケニアを主体とした茶葉50gに対して、85℃熱水を1,500g加え、時々攪拌しながら、5分間抽出した。ストレーナーで茶葉を固液分離したのちに、液温が10℃になるまで冷却した後、3,000rpm、10分間の遠心処理を行い、再度ストレーナーを通し、水を加えて1,500gの清澄な抽出液を得た。この抽出液の一部をエバポレーターによって100hPa、5分の条件で減圧濃縮した。その後、水を加えて減圧濃縮する前と同重量とした減圧濃縮処理紅茶抽出液を得た。該処理紅茶抽出液75gに対して、重曹を終濃度0.025%となるように添加し、種々のpHとなるようにアスコルビン酸を加えた後、水を用いて250gにメスアップした(実施例28〜32)。種々の条件について、表5に示す。
Figure 0005860638
比較例22、実施例28〜32で得られた紅茶飲料を4人のパネルによる官能評価に供した。官能評価スコアは、各パネルの評価点の平均とした。苦渋味の評価については比較例22を5点とし、評価点は試験例2と同様とした。
図5に示すとおり、比較例22に較べて実施例28〜32は苦渋味が大きく低減された。また、実施例28〜32の結果から、製品液のpHが高いほど苦渋味が低減される傾向が確認された。
[試験例8] 減圧濃縮した紅茶抽出液を用いた容器詰め無糖紅茶飲料
ディンブラを主体とした茶葉30gに対して、85℃熱水を900g加え、時々攪拌しながら、5分間抽出した。ストレーナーで茶葉を固液分離したのちに、液温が10℃になるまで冷却した後、3,000rpm、10分間の遠心分離処理を行い、再度ストレーナーを通し、水を加えて900gの清澄な抽出液を得た(比較例23)。
この抽出液300gを減圧濃縮(温度60℃、圧力約30hPa(約22mmHg))し、揮発性物質を低減した乾固物を得た。この乾固物を再度水に溶解し、300gの紅茶抽出液(実施例33)とした。
比較例23、実施例33の紅茶抽出液300gに、それぞれアスコルビン酸、重曹を用いてpHを約6.2に調整し、水にて1,000gにメスアップし、調合液とした。この調合液を90℃になるまで昇温したのちに、金属缶に190gずつ充填して、窒素を吹き込みながら缶蓋を巻き締めした。これを121℃、5分間のレトルト殺菌処理をして、容器詰め無糖紅茶飲料を得た。
1週間常温に置いた後に、パネルによる官能評価を行った。
その結果、比較例23は苦渋味が強かったのに対して実施例33は苦渋味が弱く、加熱殺菌処理後の飲料においても、苦渋味の抑制効果が確認された。
[試験例9] 凍結乾燥処理による苦渋味低減効果について
ディンブラを主体とした茶葉50gに対して、85℃熱水を1,500g加え、時々攪拌しながら、5分間抽出した。ストレーナーで茶葉を固液分離したのちに、液温が10℃になるまで冷却した後、3,000rpm、10分間の遠心処理を行い、再度ストレーナーを通し、水を加えて1,500gの清澄な抽出液を得た(比較例24)。この抽出液75gを凍結乾燥機(EYELA製 FDU−810)に供し、凍結乾燥処理を行った後、再度水を加えて75gの抽出液を得た(実施例34)。比較例24、実施例34の紅茶抽出液75gにアスコルビン酸および重曹を用いてpHを6.0〜6.3に調整し、水で250gにメスアップした。これらを官能評価したところ、比較例24に対して、実施例34は苦渋味が弱かった。
[試験例10] 活性炭処理による苦渋味低減効果について
ディンブラを主体とした茶葉50gに対して、85℃熱水を1,500g加え、時々攪拌しながら、5分間抽出した。ストレーナーで茶葉を固液分離したのちに、液温が10℃になるまで冷却した後、3,000rpm、10分間の遠心処理を行い、再度ストレーナーを通し、水を加えて1,500gの清澄な抽出液を得た(比較例25)。この抽出液に対して1%の活性炭(日本エンバイロケミカルズ株式会社製)を添加し、攪拌混合した後、30分静置した。その後、活性炭を除去し、活性炭処理紅茶抽出液を得た(実施例35)。比較例25、実施例35の紅茶抽出液75gにアスコルビン酸および重曹を加え、pHを6.0〜6.3に調整し、水で250gにメスアップした。これらのタンニン値を同値に調整した上で官能評価したところ、比較例25に対して、実施例35は苦渋味が弱かった。
本発明は、容器詰め無糖紅茶飲料において、苦渋味が実質的に抑制された飲料を提供するものであり、容器詰め無糖紅茶飲料の課題を解決する手段となる。

Claims (8)

  1. 紅茶抽出液の製造工程において、紅茶抽出液から紅茶葉由来の揮発性物質を低減または除去する工程を含み、これによって苦渋味が実質的に抑制された紅茶抽出液が得られることを特徴とする、紅茶抽出液の製造方法であって、但し、前記揮発性物質を低減または除去する工程は活性炭処理を除き、
    前記苦渋味が実質的に抑制された紅茶抽出液が、紅茶抽出液の茶由来のブリックス度が0.8である場合、該抽出液を下記条件でガスクロマトグラフィー−質量(GC−MS)分析したときのトータルイオンクロマトグラムの下記の(A)及び(B)について、
    (A)が、面積が100,000以上を示すピークのピーク面積値であり、および、
    (B)が、内部標準物質が示すピーク面積値であるとき、
    (A)/(B)で示される各ピークにおける比の総和が4.0以下であることを特徴とする、前記方法。
    [GC−MS分析条件]
    使用機器: GC−2010 SHIMADZU製、AOC−5000 AUTO INJECTOR SHIMADZU製、検出方法: 質量分析法、GCMS−QP2010 Plus SHIMADZU製、カラム: Phenomenex製 ZB−WAX(60.0m×0.25μm×0.25mmID)
    分析方法:ヘッドスペース固相マイクロ抽出(HS−SPME)法による
    SPME条件:
    ファイバー: スペルコ製 SPME Fiber Assembly 100μm Polydimethylsiloxane Coating 型番;57301
    Pre Incubation Time;10分
    Incubation Temperature;60℃
    Pre Inc Agitator Speed;250rpm
    Agitator On Time;5秒
    Agitator Off Time;5秒
    Vial Penetration in;22mm
    Extraction Time;40分
    Injection Penetration in;54mm
    Desorption Time;3分
    Post FibCond Time;7分
    GC条件:
    カラムオーブン温度;60℃
    気化室温度;240℃
    昇温プログラム;60℃に1分保持、5℃/分で昇温、240℃に10分保持
    注入モード;スプリットレス
    サンプリング時間;5分
    キャリアガス;He、キャリアガス線速度一定モード
    線速度;25.8cm/秒
    MS分析条件:
    イオン源温度;200℃
    インタフェース温度;240℃
    検出器電圧;0.78kV
    開始時間;5分
    終了時間;40分
    測定モード;スキャン
    イベント時間;0.5秒
    検出分子量;33−450m/z
    サンプル調製: 20mlスクリューキャップ付きバイアル瓶に、ブリックス度0.8溶液10ml、NaClを3g、内部標準を100μl封入
    内部標準: 0.1%シクロヘキサノール。
  2. 紅茶抽出工程前の紅茶葉から前記揮発性物質を低減する工程を含むことを特徴とする、請求項1記載の方法。
  3. 紅茶抽出液から前記揮発性物質を低減または除去する工程が、該紅茶抽出液を濃縮することを含む請求項1または2記載の方法。
  4. 紅茶抽出液の濃縮が減圧濃縮であることを特徴とする請求項3記載の方法。
  5. 紅茶抽出液の減圧濃縮において紅茶抽出液のpHを5.5以上7.0以下にすることを特徴とする請求項4記載の方法。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項記載の方法によって苦渋味が実質的に抑制された紅茶抽出液を作り、該紅茶抽出液を用いて容器詰め無糖紅茶飲料を製造することを含む、容器詰め無糖紅茶飲料の製造方法。
  7. ナトリウム塩を用いて容器詰め無糖紅茶飲料のpHを調整することを特徴とする請求項6記載の方法。
  8. 容器詰め無糖紅茶飲料のpHを5.5以上7.0以下に調整することを特徴とする請求項6または7記載の方法。
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