JP2021000080A - 焙煎コーヒー豆の製造方法 - Google Patents

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梨菜 竹内
康彰 高倉
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康彰 高倉
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Eriko Ono
恵理子 小野
綾子 笹原
Ayako Sasahara
綾子 笹原
瑞貴 田森
Mizuki Tamori
瑞貴 田森
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Abstract

【課題】甘い香りが強化されたコーヒー抽出液を得るための焙煎コーヒー豆を製造する方法、及び当該製造方法により製造された焙煎コーヒー豆からコーヒー抽出液を製造する方法の提供。【解決手段】コーヒー生豆を加水分解酵素処理した後、焙煎することを特徴とする、焙煎コーヒー豆の製造方法、及び前記の焙煎コーヒー豆の製造方法により、改質された焙煎コーヒー豆を得る工程と、前記焙煎コーヒー豆の可溶性固形分を含有するコーヒー抽出液を調製する工程と、を有することを特徴とする、コーヒー抽出液の製造方法。【選択図】なし

Description

本発明は、甘い香りが強化されたコーヒー抽出液を得るための焙煎コーヒー豆を製造する方法、及び当該製造方法により製造された焙煎コーヒー豆からコーヒー抽出液を製造する方法に関する。
コーヒーは、日常的に広く親しまれている嗜好性飲料であり、容器詰飲料や、水等の液体に溶解させることにより喫飲可能となるインスタントコーヒーが多数上市されている。より味や香りに優れたコーヒー抽出液を原料とすることにより、容器詰コーヒー飲料やインスタントコーヒーの味や香りを改善することができると期待できる。特に香りはコーヒーの重要な品質の1つであり、香気成分の強い焙煎コーヒー豆を原料とすることにより、より嗜好性に優れたコーヒー飲料を製造することができる。
一方で、リナロール(3,7−ジメチルオクタ−1,6−ジエン−3−オール)は、フルーティフローラルな香りであり、コーヒー抽出液に含まれている香気成分の1つである。コーヒー抽出液にリナロールを添加することにより、嗜好性の高いコーヒー飲料が得られる(例えば、特許文献1参照。)。コーヒー生豆には、2種類のリナロール配糖体が含まれている。これらのリナロール配糖体は、香りはないが、コーヒー生豆を焙煎する過程でこれらの配糖体が分解されて、甘い香りの遊離リナロールが産生される(例えば、非特許文献1参照。)。また、リナロール誘導体のうち、リナロールオキシド(2−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)−5−メチル−5−ビニルテトラヒドロフラン)も、甘い香りの香気成分であることが知られている(非特許文献2)。その他、リナロールと同様に甘いフルーティフローラルな香りの香気成分として、サリチル酸メチル、安息香酸メチル、酢酸ベンジル等が知られている。
特許第4711958号公報
Weckerle et al.,European Food Research and Technology,2003,vol.216,p.6-10. Wust and Mosandl, European Food Research and Technology,1999, vol.209, p.3-11. Bera et al., Plant Science,2017, vol.256, p.25-38.
本発明は、甘い香りが強化されたコーヒー抽出液を得るための焙煎コーヒー豆を製造する方法、及び当該製造方法により製造された焙煎コーヒー豆からコーヒー抽出液を製造する方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、焙煎前にコーヒー生豆を加水分解酵素処理、特にグリコシダーゼ(EC 3.2.1.−)処理又はプロテアーゼ(EC 3.4.−)処理することにより、遊離リナロールの含有量が高められること、グリコシダーゼ処理又はプロテアーゼ処理されたコーヒー生豆を焙煎し、得られた焙煎コーヒー豆を熱水抽出することにより、甘い香りが強化されたコーヒー抽出液が得られることを見出し、本発明を完成させた。
[1]本発明の第一の態様に係る焙煎コーヒー豆の製造方法は、コーヒー生豆を加水分解酵素処理した後、焙煎することを特徴とする。
[2]前記[1]の焙煎コーヒー豆の製造方法においては、前記加水分解酵素処理を、コーヒー生豆を加水分解酵素水溶液に接触させて行うことが好ましい。
[3]前記[1]又は[2]の焙煎コーヒー豆の製造方法においては、前記加水分解酵素処理を、前記コーヒー生豆100質量部当たり10質量部以上の加水分解酵素水溶液をコーヒー生豆と混合することが好ましい。
[4]前記[2]又は[3]のいずれかの焙煎コーヒー豆の製造方法においては、前記加水分解酵素水溶液が、加水分解酵素製剤の水溶液であることが好ましい。
[5]前記[1]〜[4]のいずれかの焙煎コーヒー豆の製造方法においては、前記加水分解酵素が、グリコシダーゼ及びプロテアーゼからなる群より選択される1種以上であることが好ましい。
[6]前記[5]の焙煎コーヒー豆の製造方法においては、前記グリコシダーゼが、β−グルコシダーゼ、ヘミセルラーゼ、ペクチナーゼ、セルラーゼ、及びエンド−1,4−キシラナーゼからなる群より選択される1種以上であることが好ましい。
[7]本発明の第二の態様に係るコーヒー抽出液の製造方法は、前記[1]〜[6]のいずれかの焙煎コーヒー豆の製造方法により、改質された焙煎コーヒー豆を得る工程と、前記焙煎コーヒー豆の可溶性固形分を含有するコーヒー抽出液を調製する工程と、を有することを特徴とする。
[8]本発明の第三の態様に係るコーヒー飲料の製造方法は、前記[7]のコーヒー抽出液の製造方法によりコーヒー抽出液を製造した後、得られたコーヒー抽出液を原料としてコーヒー飲料を製造することを特徴とする。
[9]本発明の第四の態様に係るインスタントコーヒー飲料用組成物の製造方法は、前記[7]のコーヒー抽出液の製造方法によりコーヒー抽出液を製造した後、得られたコーヒー抽出液を原料としてインスタントコーヒー飲料用組成物を製造することを特徴とする。
[10]本発明の第五の態様に係る焙煎コーヒー豆の改質方法は、コーヒー生豆を加水分解酵素処理した後、焙煎することを特徴とする。
[11]本発明の第六の態様に係るコーヒー生豆の可溶性固形分の改質方法は、コーヒー生豆から可溶性固形分を抽出し、得られた抽出液を加水分解酵素処理することを特徴とする。
本発明に係る焙煎コーヒー豆の製造方法により製造された焙煎コーヒー豆は、甘い香りの成分であるリナロールの含有量が多い。このため、当該方法により得られた焙煎コーヒー豆から抽出されたコーヒー抽出液を原料とすることにより、甘い香りが強いコーヒー飲料やインスタントコーヒー飲料用組成物を製造することができる。
実施例1において、条件A〜Cで処理したコーヒー生豆と無処理のコーヒー生豆について、リナロール配糖体1(Ara−Glc−LNL)、リナロール配糖体2(Api−Glc−LNL)、及びリナロール(LNL)を定量した測定結果を示した図である。
本発明及び本願明細書において、「インスタントコーヒー飲料用組成物(IC飲料用組成物)」とは、水や牛乳等の液体に溶解又は希釈させることによってコーヒー飲料を調製し得る組成物を意味する。IC飲料用組成物は、粉末であってもよく、液体であってもよい。
本発明及び本願明細書において、「粉末」とは粉粒体(異なる大きさの分布をもつ多くの固体粒子からなり,個々の粒子間に,何らかの相互作用が働いているもの)を意味する。また、「顆粒」は粉末から造粒された粒子(顆粒状造粒物)の集合体である。粉末には、顆粒も含まれる。
<焙煎コーヒー豆の製造方法>
本発明に係る焙煎コーヒー豆の製造方法は、コーヒー生豆を加水分解酵素処理した後、焙煎することを特徴とする。リナロール配糖体は、加水分解酵素処理によりリナロールに変換される。コーヒー生豆を加水分解酵素処理することにより、コーヒー生豆中のリナロール配糖体の少なくとも一部がリナロールに変換される。このため、加水分解酵素処理後のコーヒー生豆を焙煎することにより、リナロールが増強された焙煎コーヒー豆が得られる。そして、このリナロールが増強された焙煎コーヒー豆を原料とすることにより、リナロールを別添せずとも、リナロール含有量が多くて甘い香りの良好なコーヒー抽出液が得られる。
また、加水分解酵素処理により、コーヒー生豆中のリナロールオキシド(CAS No.:60047−17−8)とサリチル酸メチル(CAS No.:119−36−8)の含有量も増大する。リナロールオキシドとサリチル酸メチルは、いずれもコーヒー抽出液中の含有量が増大すると、甘い香りが強化される。このため、加水分解酵素処理後のコーヒー生豆を焙煎することにより、リナロールにくわえて、リナロールオキシドとサリチル酸メチルも増強された焙煎コーヒー豆が得られる。そして、これらの成分が増強された焙煎コーヒー豆を原料とすることにより、リナロールオキシドやサリチル酸メチルを別添せずとも、これらの成分の含有量が多くて甘い香りの良好なコーヒー抽出液が得られる。
原料として用いるコーヒー生豆の種類や産地は特に限定されず、アラビカ種であってもよく、ロバスタ種であってもよく、リベリカ種であってもよく、これらをブレンドしたものであってもよい。
コーヒー生豆の加水分解酵素処理に用いる加水分解酵素としては、糖又はタンパク質を加水分解する酵素が好ましく、グリコシダーゼ(EC 3.2.1.−)又はプロテアーゼ(EC 3.4.−)がより好ましい。コーヒー生豆のグリコシダーゼ処理に用いるグリコシダーゼとしては、グリコシド結合の加水分解活性を有する酵素であれば特に限定されるものではない。例えば、β−グルコシダーゼ(EC 3.2.1.21)、ヘミセルラーゼ(EC 3.2.1.4)、ペクチナーゼ(EC3.2.1.15)、セルラーゼ(エンドグルカナーゼ(EC 3.2.1.4)、セロビオヒドロラーゼ(EC 3.2.1.91))、エンド−1,4−キシラナーゼ(EC 3.2.1.8)、β−プリメベロシダーゼ(EC 3.2.1.149)等を用いることができる。コーヒー生豆のプロテアーゼ処理に用いるプロテアーゼとしては、ペプチド結合の加水分解活性を有する酵素であれば特に限定されるものではない。例えば、分子内部のペプチド結合を加水分解するプロテイナーゼであってもよく、エンドペプチダーゼであってもよい。
本発明において使用されるグリコシダーゼ等の加水分解酵素としては、例えば、市販の加水分解酵素製剤を使用することもでき、微生物等により発現させた組換え加水分解酵素タンパク質を用いることもできる。コーヒー生豆の加水分解酵素処理には、1種類の加水分解酵素を用いてもよく、2種類以上の加水分解酵素を組み合わせて使用してもよい。例えば、コーヒー生豆のグリコシダーゼ処理には、1種類のグリコシダーゼを用いてもよく、2種類以上のグリコシダーゼを組み合わせて使用してもよい。
コーヒー生豆のグリコシダーゼ処理等の加水分解酵素処理は、例えば、コーヒー生豆をグリコシダーゼ水溶液等の加水分解酵素水溶液に接触させることにより行うことができる。加水分解酵素水溶液は、加水分解酵素を水又は可食性の緩衝液に溶解させることで調製することができる。可食性の緩衝液としては、例えば、リン酸緩衝液、トリス緩衝液等が挙げられる。本発明において使用される加水分解酵素水溶液としては、コーヒー生豆の呈味への影響等の点から、加水分解酵素を水に溶解させた溶液が好ましく、グリコシダーゼを水に溶解させたグリコシダーゼ水溶液やプロテアーゼを水に溶解させたプロテアーゼ水溶液が好ましい。
グリコシダーゼ処理等の加水分解酵素処理に使用する加水分解酵素の量は、特に限定されるものではなく、使用する加水分解酵素の種類、酵素活性、コーヒー生豆に接触させた後の酵素反応の時間及び温度等の条件等を考慮して適宜調整することができる。本発明においては、コーヒー生豆中のリナロール配糖体をより効率よくリナロールへ変換するため、加水分解酵素処理に使用する加水分解酵素の量は、コーヒー生豆100質量部に対して、0.01〜10質量部が好ましく、0.05〜5質量部がより好ましく、0.1〜2質量部がさらに好ましく、0.5〜1.0質量部がよりさらに好ましく、0.1〜0.5質量部であってもよい。
コーヒー生豆と加水分解酵素水溶液の接触は、コーヒー生豆と加水分解酵素水溶液を混合することにより行うことができる。コーヒー生豆と混合する加水分解酵素水溶液の量は特に限定されるものではないが、コーヒー生豆に均一に効率よく加水分解酵素水溶液を吸収させられることから、コーヒー生豆100質量部当たり、10質量部以上の加水分解酵素水溶液を混合することが好ましく、30〜200質量部以上の加水分解酵素水溶液を混合することがより好ましく、70〜100質量部以上の加水分解酵素水溶液を混合することがさらに好ましい。
コーヒー生豆と加水分解酵素水溶液を混合した後、コーヒー生豆への加水分解酵素の吸収とその後の酵素反応のため、コーヒー生豆と加水分解酵素水溶液の混合物は加水分解酵素の酵素反応に適した温度で所定時間保持することが好ましい。また、混合物中の全てのコーヒー生豆に対して均一に効率よく反応を行うため、加水分解酵素反応中に当該混合物を攪拌することも好ましい。
加水分解酵素反応の温度及び時間は、使用する加水分解酵素と処理対象であるコーヒー生豆の量等を考慮して適宜調整される。よりリナロールが強化された焙煎コーヒー豆を得るために、コーヒー生豆中のリナロール配糖体全量のうち、少なくとも1質量%以上、好ましくは10質量%以上、より好ましくは40質量%以上がリナロールに変換されるように、加水分解酵素反応の反応条件を調整することが好ましい。例えば、一般的に温度が高いほど化学反応効率は高くなるため、本発明においては、コーヒー生豆と加水分解酵素水溶液の混合物を、30〜80℃で30分間〜120時間、好ましくは1〜72時間、より好ましくは1〜48時間保持して加水分解酵素反応を行うことが好ましい。
加水分解酵素反応後のコーヒー生豆は、そのまま焙煎処理に供してもよいが、予め乾燥させた後に焙煎処理に供することが好ましい。乾燥処理の条件は特に限定されるものではなく、固定層でもよく、流動層でもよい。
加水分解酵素処理したコーヒー生豆の焙煎方法は特に限定されるものではなく、直火焙煎法、熱風焙煎法、遠赤外線焙煎法、炭火式焙煎法、マイクロ波焙煎法等の一般的にコーヒー豆の焙煎に使用されるいずれの方法で行ってもよい。また、加水分解酵素処理によるリナロール等の増強効果を損なわない限り、加水分解酵素処理以外にも、さらに、公知の焙煎前処理を行った後のコーヒー生豆を焙煎してもよい。
本発明に係る焙煎コーヒー豆の製造方法により製造された焙煎コーヒー豆は、常法により製造された焙煎コーヒー豆と同様に、各種飲食品の原料として用いることができる。当該焙煎コーヒー豆からの各種飲食品の製造は、常法により行うことができる。
<コーヒー抽出液の製造方法>
本発明に係るコーヒー抽出液の製造方法は、本発明に係る焙煎コーヒー豆の製造方法により製造された焙煎コーヒー豆を原料とすることを特徴とする。これにより、可溶性固形分当たりのリナロール、リナロールオキシド、及びサリチル酸メチルの含有量が多く、甘い香りが強化されたコーヒー抽出液を得ることができる。すなわち、リナロール等の含有量が高くなるように改質された焙煎コーヒー豆を得る工程と、改質された焙煎コーヒー豆の可溶性固形分を含有するコーヒー抽出液を調製する工程とを有する。
可溶性固形分の抽出効率が高くなるため、焙煎コーヒー豆は、可溶性固形分が抽出される前に粉砕されていることが好ましい。焙煎コーヒー豆の粉砕は、ロールミル等の一般的な粉砕機を用いて行うことができる。粉砕度は特に限定されるものではなく、粗挽き、中粗挽き、中挽き、中細挽き、細挽きなどの種々の形状の焙煎コーヒー豆を用いることができる。
コーヒー抽出液は、焙煎コーヒー豆に加熱した水を接触させて可溶性固形分を抽出させることにより得られる。抽出方法は、一般的にコーヒーを淹れる際に用いられる方法や、インスタントコーヒーを製造する際に、焙煎コーヒー豆の粉砕物から可溶性固形分を抽出する際に用いられる方法により行うことができる。具体的には、ドリップ式、エスプレッソ式、サイフォン式、パーコレーター式、コーヒープレス(フレンチプレス)式、高圧抽出、連続高圧抽出等のいずれを用いて行ってもよい。
原料として2種類以上の焙煎コーヒー豆を用いる場合、原料とする全ての焙煎コーヒー豆がリナロール等の含有量が高くなるように改質されたものであってもよく、原料の一部の焙煎コーヒー豆のみがリナロール等の含有量が高くなるように改質されたものであってもよい。原料として2種類以上の焙煎コーヒー豆を用いる場合、本発明に係るコーヒー抽出液の製造方法においては、2種類以上の焙煎コーヒー豆からなる混合物(ブレンド豆)から可溶性固形分を抽出してコーヒー抽出液を調製してもよく、別個に可溶性固形分を抽出して得られた2種類以上のコーヒー抽出液を混合することによりコーヒー抽出液を調製してもよい。
本発明に係るコーヒー抽出液の製造方法により製造されたコーヒー抽出液は、コーヒー飲料やIC飲料用組成物の原料として好適である。リナロール等の含有量が高く、甘い香りが強化されたコーヒー抽出液を原料とすることにより、リナロール等を別添させることなく、リナロール等の含有量が多く甘い香りの強いコーヒー飲料やIC飲料用組成物が得られる。
<コーヒー飲料の製造方法>
具体的には、コーヒー飲料は、原料とするコーヒー抽出液をそのまま、又は目的とするコーヒー飲料の製品品質に応じてその他の原料を添加して混合した後、殺菌処理が施される。殺菌処理としては、例えば、加熱殺菌処理、レトルト殺菌処理、紫外線照射殺菌処理等のコーヒー飲料の製造工程において通常行われている殺菌処理の中から適宜選択して行うことができる。例えば、加熱殺菌処理としては、100℃以下の低温殺菌であってもよく、100℃以上の高温殺菌であってもよい。
通常、コーヒー飲料は容器に密封充填された容器詰飲料として市場を流通する。コーヒー飲料を充填する容器や充填方法は、容器詰コーヒー飲料の製造工程において通常使用されている容器や充填方法の中から適宜選択して行うことができる。当該容器としては、例えば、缶、プラスチック容器、紙製容器、ガラス瓶等が挙げられる。また、容器への充填は、大気中で行ってもよく、窒素ガス雰囲気下で行うこともできる。
容器詰コーヒー飲料を製造する場合、予め殺菌処理したコーヒー飲料を殺菌処理済の容器に無菌充填して密封してもよく、コーヒー飲料を充填し密封した容器に対して殺菌処理を施してもよく、加熱したコーヒー飲料を高温のまま容器に充填して密封するホットパック充填を行ってもよい。
コーヒー飲料の製造においては、原料とするコーヒー抽出液は、予め濃縮処理や希釈処理、不要物除去処理等の各種処理を施しておいてもよい。コーヒー抽出液の濃縮処理は、熱濃縮方法、冷凍濃縮方法、逆浸透膜や限外濾過膜等を用いた膜濃縮方法等の汎用されている濃縮方法により行うことができる。不要物除去処理は、濾過処理、遠心分離処理等の一般的に飲料から不溶物を除去するために行われている処理で行うことができる。また、これらの処理は、その他の原料を添加して混合した後のコーヒー抽出液に対して行ってもよい。
コーヒー飲料の製造において、コーヒー抽出液に添加されるその他の原料としては、飲料に配合可能な成分が挙げられる。具体的には、甘味料、クリーミングパウダー(クリームの代用として、コーヒー等の嗜好性飲料に添加される粉末)、乳原料、香料、酸化防止剤、pH調整剤、増粘剤、乳化剤等が挙げられる。
甘味料としては、砂糖、ショ糖、オリゴ糖、ブドウ糖、果糖等の糖類、ソルビトール、マルチトール、エリスリトール、キシリトール、還元水あめ等の糖アルコール、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、スクラロース、ネオテーム、アドバンテーム、サッカリン等の高甘味度甘味料、ステビア等が挙げられる。砂糖としては、グラニュー糖であってもよく、粉糖であってもよい。
乳原料としては、全粉乳、脱脂粉乳、ホエイパウダー、牛乳、低脂肪乳、濃縮乳、脱脂濃縮乳、乳糖、生クリーム、バター等が挙げられる。なお、全粉乳及び脱脂粉乳は、それぞれ、牛乳(全脂乳)又は脱脂乳を、スプレードライ等により水分を除去して乾燥し粉末化したものである。
クリーミングパウダーは、ヤシ油、硬化ヤシ油、パーム油、水添パーム油、パーム核油、水添パーム核油、大豆油、コーン油、綿実油、ナタネ油、こめ油、サフラワー油(ベニバナ油)、ひまわり油、中鎖脂肪酸トリグリセライド、乳脂、牛脂、豚脂等の食用油脂;ショ糖、グルコース、澱粉加水分解物等の糖質;カゼインナトリウム、第二リン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、脱脂粉乳、乳化剤等のその他の原料等を、望まれる品質特性に応じて選択し、水に分散し、均質化し、乾燥することによって製造できる。クリーミングパウダーは、例えば、食用油脂をはじめとする原料を水中で混合し、次いで乳化機等で水中油型乳化液(O/Wエマルション)とした後、水分を除去することによって製造することができる。水分を除去する方法としては、噴霧乾燥、噴霧凍結、凍結乾燥、凍結粉砕、押し出し造粒法等、任意の方法を選択して行うことができる。得られたクリーミングパウダーは、必要に応じて、分級、造粒及び粉砕等を行ってもよい。
香料としては、コーヒー香料、ミルク香料等が挙げられる。
酸化防止剤としては、例えば、ビタミンC(アスコルビン酸)、ビタミンE(トコフェロール)、BHT(ジブチルヒドロキシトルエン)、BHA(ブチルヒドロキシアニソール)、エリソルビン酸ナトリウム、没食子酸プロピル、亜硫酸ナトリウム、二酸化硫黄、クロロゲン酸、カテキン等が挙げられる。
pH調整剤としては、例えば、クエン酸、コハク酸、酢酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸。グルコン酸等の有機酸や、リン酸等の無機酸、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム(重炭酸ナトリウム)、二酸化炭素等が挙げられる。
増粘剤としては、デキストリン等の澱粉分解物、麦芽糖、トレハロース等の糖類、難消化性デキストリン、ペクチン、グアーガム、カラギーナン等の食物繊維、カゼイン等のタンパク質等が挙げられる。
乳化剤としては、例えば、モノグリセライド、ジグリセライド、有機酸モノグリセライド、ポリグリセリンエステル等のグリセリン脂肪酸エステル系乳化剤;ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート等のソルビタン脂肪酸エステル系乳化剤;プロピレングリコールモノステアレート、プロピレングリコールモノパルミテート、プロピレングリコールオレエート等のプロピレングリコール脂肪酸エステル系乳化剤;ショ糖ステアリン酸エステル、ショ糖パルミチン酸エステル、ショ糖オレイン酸エステル等のシュガーエステル系乳化剤;レシチン、レシチン酵素分解物等のレシチン系乳化剤等が挙げられる。
コーヒー抽出液にその他の原料を混合する順番は特に限定されるものではなく、全ての成分を同時にコーヒー抽出液に添加して混合してもよく、順次添加して混合させてもよい。
<IC飲料用組成物の製造方法>
IC飲料用組成物の原料とするためには、コーヒー抽出液を予め濃縮又は粉末化しておくことが好ましい。得られたIC飲料用組成物の保存安定性が良好であるため、本発明に係るIC飲料用組成物の製造方法においては、コーヒー抽出液を粉末化したもの(インスタントコーヒー粉末)を原料とすることが好ましい。
コーヒー抽出液の濃縮処理は、コーヒー飲料の製造方法で列挙された方法と同様にして行うことができる。
コーヒー抽出液の粉末化は、コーヒー抽出液を乾燥することにより得られる。抽出物の乾燥方法としては、凍結乾燥、噴霧乾燥、真空乾燥等が挙げられる。また、コーヒー豆からの抽出物は、乾燥前に、必要に応じて濃縮してもよい。
IC飲料用組成物は、コーヒー抽出液の濃縮液又は粉末を、その他の原料と混合することによって製造される。混合の順番は特に限定されるものではなく、全ての原料を同時に混合してもよく、順次混合させてもよい。
全ての原料が粉末の場合には、全ての原料をそのまま混合することによって、粉末のIC飲料用組成物が製造される。一方で、全ての原料が液状の場合には、全ての原料をそのまま混合することによって、液状のIC飲料用組成物が製造される。
粉末原料と液状の原料を用いる場合、粉末の原料を全て予め混合し、得られた混合粉末に、液状の原料の混合液を噴霧して乾燥させることによって、粉末のIC飲料用組成物が製造される。また、液状の原料の混合液に、粉末の原料を溶解又は分散させることによって、液状のIC飲料用組成物が製造される。
原料としてコーヒー抽出液の濃縮液を用いる場合には、コーヒー抽出液の濃縮液にその他の原料を添加し、溶解させることによって、液体のIC飲料用組成物が製造される。また、粉末のIC飲料用組成物を製造した後、水や牛乳等に溶解させることによっても、液体のIC飲料用組成物が製造される。
IC飲料用組成物に添加されるその他の原料としては、甘味料、クリーミングパウダー、乳原料、香料、酸化防止剤、pH調整剤、増粘剤、乳化剤、賦形剤、結合剤、流動性改良剤(固結防止剤)等が挙げられる。甘味料、クリーミングパウダー、乳原料、香料、酸化防止剤、pH調整剤、増粘剤、及び乳化剤としては、コーヒー飲料の製造方法で列挙されたものと同様のものを用いることができる。
賦形剤や結合剤としては、デキストリン等の澱粉分解物、麦芽糖、トレハロース等の糖類、難消化性デキストリン等の食物繊維、カゼイン等のタンパク質等が挙げられる。なお、賦形剤や結合剤は、造粒時の担体としても用いられる。
流動性改良剤としては、微粒酸化ケイ素、第三リン酸カルシウム等の加工用製剤が用いられてもよい。
本発明に係るIC飲料用組成物は、飲用1杯分を小パウチなどに個包装したり、使用時に容器から振り出したりスプーンで取り出したりして使用するように瓶などの容器に数杯分をまとめて包装して商品として供給することもできる。
個包装タイプとは、スティック状アルミパウチ、ワンポーションカップなどにコーヒー飲料1杯分の中身を充填包装するものであり、容器を開けて指で押し出すなどの方法で中身を取り出すことができる。個包装タイプは、1杯分が密閉包装されているので取り扱いも簡単で、衛生的であるという利点を有する。
<コーヒー生豆の可溶性固形分の改質方法>
コーヒー生豆中のリナロール配糖体は、コーヒー生豆から抽出された後にリナロールに変換することもできる。例えば、リナロール配糖体は可溶性固形分であり、コーヒー生豆から熱水抽出法により抽出できる。リナロール配糖体を含むコーヒー生豆抽出液を加水分解酵素処理することにより、当該抽出液中のリナロール配糖体の少なくとも一部がリナロールに変換される。このため、コーヒー生豆から可溶性固形分を抽出し、得られた抽出液を加水分解酵素処理することにより、当該可溶性固形分のリナロールを増強して改質することができる。リナロールが増強された抽出液からリナロールを精製してもよい。
コーヒー生豆からのリナロール配糖体を含む可溶性固形分の抽出は、焙煎コーヒー豆からの熱水抽出によるコーヒー抽出液の調製と同様にして行うことができる。また、得られた抽出液の加水分解酵素反応は、前記のコーヒー生豆の加水分解酵素反応と同様にして行うことができる。当該抽出液中のリナロール配糖体全量のうち、少なくとも1質量%以上、好ましくは10質量%以上、より好ましくは40質量%以上がリナロールに変換されるように、加水分解酵素反応の反応条件を調整することが好ましい。
コーヒー生豆抽出液を加水分解酵素処理することにより、コーヒー生豆の可溶性固形分中のリナロールオキシドとサリチル酸メチルの含有量も、増大させることができる。リナロールのみならず、リナロールオキシドとサリチル酸メチルの含有量が増大したコーヒー生豆抽出液は、改質され、甘い香りが強化されている。
次に実施例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下、特に記載のない限り、「%」は「質量%」を意味する。
[参考例1]
コロンビア産アラビカ豆を焙煎し、得られた焙煎コーヒー豆の抽出液に、リナロール香料(0.02% アルコール希釈液)を添加し、甘い香りについて官能評価を行った。官能評価は、トレーニングされた専門パネル4名により、5段階(1がコーヒーらしい甘い香りが弱い、5がコーヒーらしい甘い香りが最も強い。)で評価し、コントロールを1点とした。評価結果を表1及び2に示す。
Figure 2021000080
Figure 2021000080
これらの結果から、リナロールを添加することにより、甘い香りが増強されること、特に、リナロール濃度が1〜20μg/100mLでは、より好ましくは2.5〜5.5μg/100mLでは、コーヒーらしい甘い香りが増強され、嗜好性の高いコーヒー抽出液が得られることが明らかとなった。
[実施例1]
エチオピア産アラビカ豆の生豆をグリコシダーゼ処理し、得られたコーヒー生豆のリナロール配糖体とリナロールを定量した。グリコシダーゼとして、市販のβ−グルコシダーゼ製剤であるアロマーゼH2(天野エンザイム社製)を用いた。
まず、コーヒー生豆320gに、β−グルコシダーゼ製剤16g(コーヒー生豆100質量部に対して、5質量部)と水208gに溶解した酵素液を混合し、45℃で48時間、3rpmで攪拌した状態で酵素反応を行った。次いで、酵素反応後のコーヒー生豆を60℃で18時間乾燥させた(条件A)。
比較対象として、β−グルコシダーゼ製剤を水に溶解させた酵素液を70℃で1時間処理して酵素活性を失活させた後にコーヒー生豆と混合した以外は、条件Aと同様にして、45℃で48時間、3rpmで攪拌した状態で保持した後、乾燥させた(条件B)。
また、β−グルコシダーゼ製剤を添加せず、コーヒー生豆320gに水224gを混合した以外は、条件Aと同様にして、45℃で48時間、3rpmで攪拌した状態で保持した後、乾燥させた(条件C)。
コントロールとして、コーヒー生豆320gを用いた(無処理)。
各コーヒー生豆について、リナロール配糖体1(Ara−Glc−LNL)、リナロール配糖体2(Api−Glc−LNL)、及びリナロール(LNL)を、以下の方法により定量した。
[分析サンプルの調製]
ネジ口試験管に、粉砕したコーヒー豆を分析サンプルとして約100mg正確に秤取り、0.4mLのn−ヘプタンを加え、30℃で30分間振盪した。その後、当該試験管に2mLの純水を加えて3時間振盪した。次いで、上清をサンプリングして0.45μmのMF(精密ろ過)でろ過した後、水層及び有機層をそれぞれ0.1mLずつ分析用バイアルに分取した。水槽は以下に示したリナロール配糖体定量方法に従って、有機層は以下に示したリナロール定量方法に従って、それぞれ分析、定量した。いずれのサンプルもN=3で分析サンプルを調製し、3つの分析サンプルの平均値を定量値とした。
[リナロール定量方法]
以降の実験において、コーヒー豆のリナロールの定量は、ガスクロマトグラフィー−FID法(GC−FID法)により定量した。
<GC−FID条件>
システム:GC−2010plus(島津製作所社製)
カラム:Rxi 5ms(0.25μm、0.25mmID×30m)
注入量:1μL
気化室温度:260℃
圧力:65.8kPa
全流量:10.3mL/分
カラム流量:0.67mL/分
カラム線速:19.4cm/秒
パージ流量:3.0mL/分
スプリット比: 10
カラムオーブン温度:70℃(5分間保持)→115℃(5℃/分)→350℃(25℃/分、10分間保持)
<リナロール標準溶液調製>
約10mLのn−ヘプタンを入れた20mL容メスフラスコに、標準物質リナロール(CAS:78−70−6)約10mgを正確に秤取り、n−ヘプタンでメスアップした。得られた溶液を1000倍希釈し、これをリナロール標準溶液とした。
[リナロール配糖体定量方法]
以降の実験において、コーヒー豆のリナロール配糖体の定量は、液体クロマトグラフィー質量分析法(LC/MS法)により定量した。
<LC/MS条件:HPLC部>
システム:Prominence LC20A UFLC(島津製作所社製)
ポンプ:LC−20AD
オートサンプラー:SIL−20AC
検出器:SPD−20A
カラムオーブン:CTO−20AC
デガッサー:DGU−20A3
カラム:InertSustain C18(3μm、2.1mmID×250mm)
カラム槽温度:40℃
溶離液流量:0.2mL/分
検出:UV 210nm
注入量:2μL
溶離液組成:A液は0.1%ギ酸水溶液、B液はアセトニトリル
グラジエントプログラム:表3
Figure 2021000080
<LC/MS条件:MS部>
システム:LCMS−2020
イオン化法:エレクトロスプレーイオン化(ESI(+/−)) SIM:m/z 493(−)
分子量測定範囲:m/z 50〜1000
ドライガス温度:350℃
ドライガス流速:15L/分
<リナロール配糖体標準溶液調製>
標準物質Linalyl-3-O-β-D-glucopyranosyl-(1-6)-α-L-arabinopyranoside(Ara−Glc−LNL)約10mgを100mL容メスフラスコに正確に秤取り、純水で溶解させてメスアップした。調製された溶液を200倍希釈し、Ara−Glc−LNL標準溶液とした。Linalyl-3-O-β-D-glucopyranosyl-(1-6)-β-D-apiofuranoside(Api−Glc−LNL)についても同様に調製した。
定量結果を図1に示す。β−グルコシダーゼ製剤処理により、コーヒー生豆中のリナロール配糖体量が低下し、リナロール量が増加した。
[実施例2]
エチオピア産アラビカ豆の生豆をグリコシダーゼ処理し、処理後のコーヒー生豆のリナロール量について調べた。グリコシダーゼとして、市販のβ−グルコシダーゼ製剤であるアロマーゼH2を用いた。
まず、コーヒー生豆10gに、β−グルコシダーゼ製剤0.03g(コーヒー生豆100質量部に対して、0.3質量部)を表4に記載の水量(コーヒー生豆の重量に対する割合)に溶解した酵素液を混合し、50℃で48時間、3rpmで攪拌した状態で酵素反応を行った。次いで、酵素反応後のコーヒー生豆を60℃で18時間乾燥させた。
得られた生豆のリナロール量を、実施例1と同様にして定量した。測定結果を表4に示す。
Figure 2021000080
この結果、生豆とグリコシダーゼの量は同じであるにもかかわらず、グリコシダーゼ処理時の水量により、最終的に得られるコーヒー抽出液のリナロール量が影響されることがわかった。コーヒー生豆に対するグリコシダーゼ処理時の水量は、10〜90質量%の範囲内では、水量依存的にリナロール量が多く、リナロール増強効果が高いことが確認された。
[実施例3]
コーヒー生豆を各種の加水分解酵素で処理し、処理後のコーヒー生豆の香気成分を定量した。コーヒー生豆として、エチオピア産のアラビカ豆を用いた。また、加水分解酵素として、表5に記載の10種の加水分解酵素製剤を用いた。
Figure 2021000080
<酵素処理>
コーヒー生豆を、酵素製剤水溶液に浸漬させて酵素処理を行った。各酵素製剤水溶液は、コーヒー生豆に対する酵素量が0.5質量%又は1.0質量%となるように調整した。コーヒー生豆に対する酵素量が0.5質量%となるように調整された酵素製剤水溶液は、酵素50mgと超純水7.95gを50mL容チューブ内で混合して調製した。コーヒー生豆に対する酵素量が1.0質量%となるように調整された酵素製剤水溶液は、酵素100mgと超純水7.90gを50mL容チューブ内で混合して調製した。
酵素製剤水溶液が収容されている各50mL容チューブに、コーヒー生豆10gをそれぞれ添加して浸漬させ、50℃、48時間、3rpmで攪拌した状態で酵素反応を行った。次いで、酵素反応後のコーヒー生豆を60℃で18時間乾燥させた。
<コーヒー生豆中の成分の定量>
各コーヒー生豆について、リナロール(LNL)、トランス−リナロールオキシド、及びサリチル酸メチルの含有量を定量した。比較対象として、無処理のコーヒー生豆と、酵素製剤を含有していない単なる超純水に同様に浸漬させたコーヒー生豆(水浸漬処理)についても、同様に定量した。
[リナロール及びサリチル酸メチルの定量]
コーヒー生豆中のリナロール及びサリチル酸メチルの定量は、以下の方法で行った。
<標準液調整>
100mL容のメスフラスコに、約10mgの標準物質リナロールと標準物質サリチル酸メチルと2,3−ジメトキシトルエン(CAS No.:4463―33−6)を正確に秤取り、ペンタン:ジエチルエーテル=50:50の混合溶媒でメスアップした。得られた溶液を標準液とした。
<前処理条件>
2L容マントルフラスコに、沸騰石約21gを入れ、さらに駒込ピペットを用いて消泡剤を数滴入れた。当該マントルフラスコに、サンプル約8gを秤量し、常温の超純水を1L加えた。さらに、当該マントルフラスコに、内部標準物質として、1mLの2,3−ジメトキシトルエン溶液(2,3−ジメトキシトルエンを約25mg/100mLとなるようにペンタン:ジエチルエーテル=50:50の混合溶媒に溶解させた溶液)を添加し、軽く振り混ぜた。
これとは別に、200mL容三角フラスコに、沸騰石約2gと、ペンタン:ジエチルエーテル=1:1の混合溶媒約100mLを入れた。
次いで、当該マントルフラスコと当該三角フラスコを、抽出器にセットした後、マントルヒーターの最大出力で20分間加熱して沸騰させた。沸騰後から90分間抽出を行った。
抽出後の溶媒は、水分を取り除くため、硫酸ナトリウムを適量入れて混和静置した後、デカンテーションにて濃縮管に移して、TurboVap(登録商標)500(Zymark Corporation社製)を用いて1mLまで濃縮した。
<GC/MS条件>
濃縮したサンプルはGC/MSを用いて下記の条件で分析を行った。
GC部:7890A(Agilent Technologies社製)
MS部:5975C(Agilent Technologies社製)
カラム:InertCap WAX−HT(0.25μm×0.25mm×60m)
注入量:1μL
圧力:50psi
カラム流量:1.737mL/分
カラム線速:33.701cm/秒
カラムオーブン温度:35℃(1分間保持)→60℃(25℃/分)→190℃(2℃/分)→250℃(5℃/分、26分間保持)
[トランス−リナロールオキシドの定量]
コーヒー生豆中のトランス−リナロールオキシドの定量は、以下の方法で行った。
<標準液調整>
100mL容のメスフラスコに、約10mgのリナロールオキシド異性体混合物と2,3−ジメトキシトルエンを正確に秤取り、ペンタン:ジエチルエーテル=50:50の混合溶媒でメスアップした。得られた溶液を標準液とした。
本標準液を分析したところ、3つの異性体ピークが得られた。各ピークの面積値を取り、それらの検出感度は同程度と考えて面積比を存在比として、トランス−リナロールオキシドの定量値を算出した。
<前処理条件>
前処理条件は、前記[リナロール及びサリチル酸メチルの定量]の前処理条件と同様にして行った。
<GC/MS条件>
濃縮したサンプルはGC/MSを用いて下記の条件で分析を行った。
GC部:7890B(Agilent Technologies社製)
MS部:5977A(Agilent Technologies社製)
カラム:InertCap WAX−HT(0.25μm×0.25mm×60m)
注入量:1μL
圧力:50psi
カラム流量:2.5mL/分
カラム線速:33.693cm/秒
カラムオーブン温度:35℃(1分間保持)→60℃(25℃/分)→190℃(2℃/分)→250℃(5℃/分、26分間保持)
1kgのコーヒー生豆(GB)当たりの各成分の含有量(μg/kg(GB))の定量結果を表6〜8に示す。無処理や水浸漬処理のコーヒー生豆に比べて、各加水分解酵素製剤による処理を行ったコーヒー生豆では、リナロール、リナロールオキシド、及びサリチル酸メチルの含有量がいずれも増加した。無処理や水浸漬処理のコーヒー生豆に対する増量効果は、リナロールオキシドとサリチル酸メチルよりも、リナロールのほうが高かった。
Figure 2021000080
Figure 2021000080
Figure 2021000080

Claims (11)

  1. コーヒー生豆を加水分解酵素処理した後、焙煎することを特徴とする、焙煎コーヒー豆の製造方法。
  2. 前記加水分解酵素処理を、コーヒー生豆を加水分解酵素水溶液に接触させて行う、請求項1に記載の焙煎コーヒー豆の製造方法。
  3. 前記加水分解酵素処理を、前記コーヒー生豆100質量部当たり10質量部以上の加水分解酵素水溶液をコーヒー生豆と混合する、請求項1又は2に記載の焙煎コーヒー豆の製造方法。
  4. 前記加水分解酵素水溶液が、加水分解酵素製剤の水溶液である、請求項2又は3に記載の焙煎コーヒー豆の製造方法。
  5. 前記加水分解酵素が、グリコシダーゼ及びプロテアーゼからなる群より選択される1種以上である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の焙煎コーヒー豆の製造方法。
  6. 前記グリコシダーゼが、β−グルコシダーゼ、ヘミセルラーゼ、ペクチナーゼ、セルラーゼ、及びエンド−1,4−キシラナーゼからなる群より選択される1種以上である、請求項5に記載の焙煎コーヒー豆の製造方法。
  7. 請求項1〜6のいずれか一項に記載の焙煎コーヒー豆の製造方法により、改質された焙煎コーヒー豆を得る工程と、
    前記焙煎コーヒー豆の可溶性固形分を含有するコーヒー抽出液を調製する工程と、
    を有することを特徴とする、コーヒー抽出液の製造方法。
  8. 請求項7に記載のコーヒー抽出液の製造方法によりコーヒー抽出液を製造した後、得られたコーヒー抽出液を原料としてコーヒー飲料を製造することを特徴とする、コーヒー飲料の製造方法。
  9. 請求項7に記載のコーヒー抽出液の製造方法によりコーヒー抽出液を製造した後、得られたコーヒー抽出液を原料としてインスタントコーヒー飲料用組成物を製造することを特徴とする、インスタントコーヒー飲料用組成物の製造方法。
  10. コーヒー生豆を加水分解酵素処理した後、焙煎することを特徴とする、焙煎コーヒー豆の改質方法。
  11. コーヒー生豆から可溶性固形分を抽出し、得られた抽出液を加水分解酵素処理することを特徴とする、コーヒー生豆の可溶性固形分の改質方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2022230798A1 (ja) * 2021-04-30 2022-11-03 サントリーホールディングス株式会社 コーヒー焙煎豆、コーヒーエキス、及びその製造方法

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