JP5855938B2 - 肌貼付用ナノファイバ積層体 - Google Patents

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本発明は、肌に貼付するために用いられるナノファイバ積層体に関する。
ナノファイバからなるナノファイバシートに粒子を含有させることに関する技術としては、例えば特許文献1ないし特許文献3に記載のものが知られている。特許文献1では、高分子材料のナノファイバからなる網目状構造体に、金属微粒子からなる化粧料成分を保持させた化粧用シートが提案されている。特許文献2には、ナノファイバシートにカオリン、カーボンブラック、酸化チタン、タルク等の粒子を含有させることが記載されている。
これらの技術とは別に、特許文献3には、エレクトロスピニング法で製造した繊維中に着色剤を加えたり、ポリシロキサンを加えたりすることが記載されている。
特開2008−179629号公報 国際公開第2009/031620号パンフレット 特表2004−532802号公報
上述した各特許文献に記載のナノファイバからなるシートを、例えばヒトの肌に貼り付けて肌の皺隠しをする場合、ナノファイバに含有されている顔料及び/又は染料等の着色剤が光を反射して、そのことに起因して肌の表面が強調されて見えてしまうことがあり、逆に皺が目立ちやすくなってしまう場合がある。また、水溶性樹脂からなるナノファイバに光散乱性粒子等が含まれる場合、例えば化粧水等と接触することで水溶性樹脂が溶解してナノファイバ構造がなくなることでファンデーション等の付着性が悪くなり違和感を生じることがある。
したがって本発明の課題は、前述した従来技術が有する欠点を解消し得るナノファイバ積層体を提供することにある。
本発明は、高分子材料を含む着色された層と、水不溶性高分子材料を含み、光散乱性を有する粒子を含有し、かつ顔料及び/又は染料を非含有であるナノファイバを含む層とを積層してなり、
前記着色された層が肌に向き、前記ナノファイバを含む層が外方を向くように肌に貼付される、肌貼付用ナノファイバ積層体を提供するものである。
本発明のナノファイバ積層体を肌に貼り付けると、着色された層がシミを隠す効果を発現するとともに、光散乱性を有する粒子を含有するナノファイバを含む層が光散乱性を有する粒子に起因して、入射した光を乱反射しやすくなり、着色された層に含まれる顔料及び/又は染料等の着色剤のぼかし効果が発現し、貼付部位にマット感や奥行き感が付与され、皺やシミが目立ちにくくなる。
図1(a)は、本発明のナノファイバ積層体における光散乱層の構造を模式的に示す図であり、図1(b)は、図1(a)の要部拡大図である。 図2は、エレクトロスピンニング法を行うために用いられる好適な装置を示す模式図である。 図3(a)及び(b)は、実施例1で得られたナノファイバ積層体における着色層及び光散乱層の表面の走査型電子顕微鏡像である。 図4(a)及び(b)は、実施例2で得られたナノファイバ積層体における着色層及び光散乱層の表面の走査型電子顕微鏡像である。 図5は、実施例3で得られたナノファイバ積層体における光散乱層の表面の走査型電子顕微鏡像である。
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。本発明のナノファイバ積層体は、2層構造を基本構造としたシート状物である。2層構造のうちの一方は、高分子材料を主成分とする着色された層である(以下、この層のことを「着色層」という。)。もう一方の層は、光散乱性を有する粒子を含有する層である(以下、この層のことを「光散乱層」という。)。着色層と光散乱層とは、直接に接触して積層・一体化されている。
本発明のナノファイバ積層体は、上述のとおり、シート状のものであり、ヒトの肌に貼り付けて使用されるものである。この場合、ナノファイバ積層体を構成する着色層及び光散乱層のうち、着色層が肌に向き、かつ光散乱層が外方を向くように、ナノファイバ積層体は肌に貼り付けられる。ナノファイバ積層体は、着色層の外面側及び/又は光散乱層の外面側に、付加的に1層又は2層以上の別の層を有していてもよいが、着色層がヒトの肌に直接貼り付けられることが好ましい。また、光散乱層が直接外方に露出するようにすることが好ましい。つまり、ナノファイバ積層体は、着色層と光散乱層の2層から構成されることが好ましい。
ナノファイバ積層体における着色層は、該ナノファイバ積層体がヒトの肌に貼り付けられたときに、肌と該ナノファイバ積層体との視覚的な一体感を高める目的で用いられる。また、肌のシミを隠蔽する目的で用いられる。これらの目的のために、着色層は、ヒトの肌と同系統の色に着色されていることが好ましい。ここでいう色とは有彩色及び無彩色の双方を含む。また、無色透明は、有色に含まれない。
着色層はその全光線透過率が0〜60%であることが好ましく、特に0〜50%、更に0〜40%であることが好ましい。ここで着色層の全光線透過率は、ナノファイバ積層体を肌に貼付した状態を想定して、着色層が乾燥状態又は水溶液若しくは油性成分等が含浸された状態で、例えばHaze meter HM−150((株)村上色彩技術研究所)で測定することができる。着色層の全光線透過率がこの範囲にあると、肌の色むらを効果的に隠蔽できる点から好ましい。ナノファイバ積層体から着色層を分離するには、着色層と光散乱層の境界を層間剥離させる手法が用いられ、着色層において剥離した面の反対側の面から全光線透過率を測定することが好ましい。
着色層に色を付与するためには、例えば、着色層を構成する材料に着色剤を含有させればよい。着色層を構成する材料がその固有の性質として色を有している場合には、その色を利用しても構わない。ヒトの肌の色は個人差が大きいことから、様々な肌の色に適合するように、種々の色の着色層が必要となる。この観点から、着色剤を用いて着色層に色を付与することが有利である。
着色剤としては、例えば顔料や染料を用いることができる。これらの着色剤のうち、発色の良好さや取り扱い性等の観点から顔料を用いることが好ましい。顔料としては、異なる2色以上の着色顔料を用いることが好ましい。例えば、一般的に肌色を調整するために赤色、黄色及び黒色の顔料を組み合わせるが、更に青色や白色の顔料を併用することもできる。
白色顔料としては、例えば酸化チタンや酸化亜鉛等を用いることができる。一方、白色以外の着色顔料としては、黄色酸化鉄、赤酸化鉄、黒酸化鉄、カーボンブラック、群青、紺青、紺青酸化チタン、黒色酸化チタン、酸化クロム、水酸化クロム、チタン・酸化チタン焼結物等の無機系顔料;赤色201号、赤色202号、赤色226号、黄色401号、青色404号等の有機顔料;赤色104号、赤色230号、黄色4号、黄色5号、青色1号等のレーキ顔料;等が挙げられる。
特に、本発明のナノファイバ積層体を肌に貼付したときの肌の色むら(例えば、そばかす、目の隈、シミ等)を効果的に隠蔽する点から、該着色層の外観色が、マンセル表色系において、色相5.0R〜9.8YR(赤からオレンジを経由して黄色まで)、明度5.0〜8.0、彩度2.5〜6.0の範囲内となるように着色層が着色されていることが好ましく、特に色相2.0YR〜9.0YR、明度5.2〜7.8、彩度2.7〜5.8の範囲内となるように着色層が着色されていることが好ましい。これらの値は、例えばコニカミノルタセンシング株式会社製の色彩色差計・CR−400や分光測色計・CM−700d等、一般に市販されている測色機器を用いて測定される。また、着色層の外観色は、該着色層を色相7.7Y、明度2.6、彩度0.3の黒色の紙に置いて測定する。
着色層に含まれる顔料及び/又は染料の割合は、着色層に付与する色の種類等にもよるが、十分な着色力を発現する観点から、着色層に対して1〜70質量%、特に15〜50質量%であることが好ましい。着色層に含まれる顔料及び/又は染料の量の割合は、着色層を光散乱層から分離した後、該着色層を溶解し得る溶媒に該着色層を浸漬し、場合によっては超音波洗浄機等の機械力を併用して該着色を溶解させた後、洗浄と濾過を繰り返して濾別された固体成分を乾燥し、天秤等を用いることによって測定したり、顔料及び/又は染料が無機成分からなる場合には、窒素下で加熱することで高分子成分を熱分解させ、残存する重量を測定したりすることによって算出される。
着色層は、層状の形態を有する限り、どのような形態であってもよい。例えば着色層はフィルム状であり得る。好ましくは、着色層は複数のナノファイバの堆積物を含む層である。ナノファイバは、顔料及び/又は染料によって着色されていることが好ましい。着色層が水不溶性のナノファイバからなる場合には、本発明のナノファイバ積層体を肌に貼り付けると、ナノファイバ間の空隙に水分や油分が染み込むことで、肌との間に表面張力が発現し密着性が向上するので、有利である。着色層が水不溶性のナノファイバからなる場合、上述した顔料や染料等の着色剤は、ナノファイバ中に含有されており、該着色剤によってナノファイバが着色されていることが好ましい。また、着色層が水溶性のナノファイバを含む場合には、肌に対し、水分を含有する化粧水等を塗ったり、吹き付けたりした後に、該ナノファイバ積層体を貼付すると、光散乱層と肌との密着性を向上する効果が発現するため有利である。この理由は、着色層が、高い比表面積を持つナノファイバから形成されており、そのことに起因してナノファイバの水溶性成分が即座に溶解して接着成分として働くからである。
ナノファイバは、その太さを円相当直径で表した場合、一般に10〜3000nm、特に10〜1000nm、とりわけ特に50〜1000nmのものである。ナノファイバの太さは、例えば走査型電子顕微鏡(SEM)観察によって、10000倍に拡大して観察し、その二次元画像から欠陥(ナノ繊維の塊、ナノ繊維の交差部分、ポリマー液滴)を除き、繊維を任意に10本選び出し、繊維の長手方向に直交する線を引き、繊維径を直接読み取ることで測定することができる。
ナノファイバの長さは本発明において臨界的でなく、後述するナノファイバの製造方法に応じた長さのものを用いることができる。また、ナノファイバは、ナノファイバ積層体において、一方向に配向した状態で存在していてもよく、あるいはランダムな方向を向いていてもよい。更に、ナノファイバは、一般に中実の繊維であるが、これに限られず例えば中空のナノファイバを用いることもできる。更に、ナノファイバは、その長さ方向に沿ってその太さが変化していてもよい。
ナノファイバからなる着色層においては、ナノファイバは、それらの交点において結合しているか、又はナノファイバどうしが絡み合っている。それによって、着色層は、それ単独でシート状の形態を保持することが可能となる。ナノファイバどうしが結合しているか、あるいは絡み合っているかは、ナノファイバからなる層の製造方法によって相違する。
着色層がナノファイバからなる層である場合、ナノファイバに含まれている顔料の大きさは、一般にナノファイバの太さと同程度であるか、又はそれよりも小さいか若しくはそれよりも大きい。顔料の大きさが、一般にナノファイバの太さと同程度であるか又はそれよりも小さい場合には、着色層が薄い場合であっても色むらを低減できる。また、顔料がナノファイバの太さよりも大きくてもよく、その場合には、該ナノファイバの表面には、該顔料に起因する凹凸形状が表出される。この凹凸形状の表出によって、後述する光散乱層による光の乱反射に加えて、着色層に含まれるナノファイバの表面において光の乱反射が起こり、ナノファイバ積層体による皺やシミのぼかし効果を一層顕著にすることができる。
ナノファイバが顔料によって着色されている場合、顔料の大きさは、平均粒径で表して、10〜1000nm、特に50〜900nmであることが好ましい。また、ナノファイバの太さが上述した範囲内である場合には、ナノファイバの太さを100%としたとき、顔料の大きさは、その20〜95%、特に30〜90%であることが好ましい。顔料の大きさがこの範囲であると、ナノファイバの被覆内部に着色顔料を内包するような状態を形成できるために、顔料の凝集を抑制でき、顔料を含有するナノファイバを層状にした場合に、薄い層であっても色むらを低減できる。更に、本発明のナノファイバ積層体を肌に貼付するときに少量の液体で該積層体を湿潤させることができる。平均粒径は、レーザー回折式の粒度分布計等を用いることによって測定される。
着色層がナノファイバからなる層である場合、該着色層の厚みは0.05〜100μm、特に0.1〜50μmであることが好ましい。坪量は、0.01〜50g/m2、特に0.02〜10g/m2であることが好ましい。一方、着色層がフィルム状である場合、該着色層の厚みは0.05〜50μm、特に0.1〜40μmであることが好ましい。坪量は、0.01〜100g/m2、特に0.02〜50g/m2であることが好ましい。着色層の厚みは、接触式の膜厚計ミツトヨ社製ライトマチックVL−50A(R5mm超硬球面測定子)を使用して測定できる。測定時にシートに加える荷重は0.01Nとする。ナノファイバ積層体から着色層を分離するには、着色層と光散乱層の境界を層間剥離させる手法が用いられる。
着色層は、その形態がフィルム状である場合と、ナノファイバからなる層である場合とを問わず、層状の形態を保持でき、かつ上述した各種の着色剤を含有できる材料から構成されている。具体的には、高分子材料を主成分としている。この高分子材料としては、天然高分子及び合成高分子のいずれをも用いることができる。この高分子材料は、水溶性のものでもよく、水不溶性のものでもよい。本発明のナノファイバ積層体が、使用者の肌に貼付されて皺や肌の色むら隠し等の化粧効果を発現することに鑑みると、肌に貼付された後においても着色剤が脱落せずに肌に残存していることが望ましい。この観点から、着色層は少なくとも水不溶性高分子材料を含むものであることが有利である。
着色層に水不溶性高分子材料が含まれている場合、該水不溶性高分子材料は着色層の骨格を形成する材料として機能する。したがって、ナノファイバ積層体を使用者の肌に貼付した後であっても、着色層は汗等の水分に溶解することなく、層としての形態が保たれる。
本明細書において「水不溶性高分子材料」とは、1気圧・23℃の環境下において、高分子材料1gを秤量した後に、10gのイオン交換水に浸漬し、24時間経過後、浸漬した高分子材料の0.5g以上が溶解しない性質を有する高分子材料をいう。
水不溶性高分子材料としては、例えば着色層の形成後に不溶化処理できる完全鹸化ポリビニルアルコール、後述する架橋剤と併用することでナノファイバ形成後に架橋処理できる部分鹸化ポリビニルアルコール、ポリ(N−プロパノイルエチレンイミン)グラフト−ジメチルシロキサン/γ−アミノプロピルメチルシロキサン共重合体等のオキサゾリン変性シリコーン、ツエイン(とうもろこし蛋白質の主要成分)、ポリエステル、ポリ乳酸(PLA)、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリメタクリル酸樹脂等のアクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂等が挙げられる。これらの水不溶性高分子材料は単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの水不溶性高分子材料のうち、着色層の形成後に不溶化処理できる完全鹸化ポリビニルアルコール、後述する架橋剤と併用することでナノファイバ形成後に架橋処理できる部分鹸化ポリビニルアルコール、γ−アミノプロピルメチルシロキサン共重合体等のオキサゾリン変性シリコーン、水溶性ポリエステル、ツエイン等を用いることが好ましい。
着色層は、上述の水不溶性高分子材料のみから構成されていてもよく、あるいは水不溶性高分子材料及び水溶性高分子材料から構成されていてもよい。着色層が水溶性高分子材料を含んでいることで、ナノファイバ積層体の肌への接着性及び密着性が良好となる。詳細には、本発明のナノファイバ積層体の使用時に、例えば水を含有する液状物を肌の表面に適用すると、着色層が水と接触することによって着色層中の水溶性高分子材料が液状物に溶解し、溶解した水溶性高分子材料が接着性を発揮してバインダとして作用し、ナノファイバ積層体と肌との密着性が維持される。しかも、水不溶性高分子材料が着色層の骨格を形成しているので、水溶性高分子材料が溶解した後であっても、着色層は層としての形態が保たれる。
本明細書において「水溶性高分子材料」とは、1気圧・23℃の環境下において、高分子材料1gを秤量した後に、10gのイオン交換水に浸漬し、24時間経過後、浸漬した高分子材料の0.5gを超えて水に溶解する性質を有する高分子材料をいう。
着色層を構成する水溶性高分子材料としては、例えばプルラン、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、ポリ−γ−グルタミン酸、変性コーンスターチ、β-グルカン、グルコオリゴ糖、ヘパリン、ケラト硫酸等のムコ多糖、セルロース、ペクチン、キシラン、リグニン、グルコマンナン、ガラクツロン、サイリウムシードガム、タマリンド種子ガム、アラビアガム、トラガントガム、大豆水溶性多糖、アルギン酸、カラギーナン、ラミナラン、寒天(アガロース)、フコイダン、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等の天然高分子、部分鹸化ポリビニルアルコール(後述する架橋剤と併用しない場合)、低鹸化ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリエチレンオキサイド、ポリアクリル酸ナトリウム等の合成高分子等が挙げられる。これらの水溶性高分子材料は単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの水溶性高分子材料のうち、ナノファイバからなる着色層の製造が容易である観点から、プルラン、並びに部分鹸化ポリビニルアルコール、低鹸化ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン及びポリエチレンオキサイド等の合成高分子を用いることが好ましい。
着色層が、水不溶性高分子材料に加えて水溶性高分子材料を含んでいる場合には、水不溶性高分子材料と水溶性高分子材料との合計量に対する水溶性高分子材料の割合は、30質量%以下が好ましく、特に1〜30質量%、更に10〜25質量%に設定することが好ましい。この場合に併用される水不溶性高分子材料の割合は、70質量%以上が好ましく、特に70〜99質量%、特に75〜90質量%に設定することが好ましい。水溶性高分子材料の割合をこの範囲内に設定することによって、本発明のナノファイバ積層体を肌に貼付する場合に十分な接着性及び密着性が得られる。また着色層がナノファイバからなる層である場合には、ナノファイバどうしが粘着しあったりすることや、ナノファイバに含有されている顔料等の着色粒子が凝集してしまうことによる不具合を軽減することができる。本発明のナノファイバ積層体を、水を含む液状物で湿潤させる際に、着色層が水と接触することによって該着色層中の水溶性高分子材料が液状物に溶解し、溶解した水溶性高分子材料が接着性を発揮してバインダとして作用して、ナノファイバ積層体と肌の表面との密着性を維持できる。
着色層は、上述した着色剤や高分子材料(水不溶性高分子材料及び水溶性高分子材料)に加えて他の成分を含んでいてもよい。そのような成分としては、例えば、架橋剤、香料、界面活性剤、帯電防止剤、粘着剤、保湿剤、美白剤等の肌のケア剤等が挙げられる。架橋剤は、例えば上述の部分鹸化ポリビニルアルコールを架橋して、これを不溶化する目的で用いられる。これら着色剤を除いたその他の成分は、着色層中に、それらの合計量で好ましくは0.01〜20質量%含有させることができる。
次に、着色層に隣接して積層される光散乱層について説明する。上述した着色層が、フィルム状の形態やナノファイバからなる層の形態等の様々な形態をとり得るのに対して、光散乱層はナノファイバを含む層である。このナノファイバの太さや長さの詳細については、先に述べた着色層に関する説明が適宜適用される。光散乱層はナノファイバを含み、かつナノファイバ以外の繊維を含む繊維層であってもよく、あるいはナノファイバのみからなる繊維層であってもよい。
光散乱層を構成するナノファイバは、光散乱性を有する粒子(以下、この粒子のことを「光散乱性粒子」という。)を含有している。また、光散乱層を構成するナノファイバは、顔料及び/又は染料を非含有である。顔料及び/又は染料を非含有であるとは、光散乱層を構成するナノファイバに意図的に顔料及び/又は染料を含有させることを除く趣旨であり、ナノファイバの製造過程において着色層に配合される顔料及び/又は染料が光散乱層に対し5質量%以下で混入することは許容される趣旨である。ナノファイバは、顔料及び染料のどちらも非含有であることが好ましい。なお、光散乱層を構成するナノファイバが顔料及び/又は染料を非含有であることは、該ナノファイバが着色されていないことを意味するものではない。例えばナノファイバを構成する高分子材料自体が固有の色を有している場合には、該ナノファイバに顔料及び/又は染料が含まれていなくても、該ナノファイバは色を有している。光散乱層に顔料及び/又は染料が含まれるか否かは、光散乱層の色合いを確認したり、酸素下で加熱して高分子成分を熱分解させ無機成分の含有量を測定したり、顕微鏡観察におけるEDX分析等で成分を測定したりすることで判断することができる。
光散乱層の全光線透過率は20〜90%が好ましく、特に40〜80%、更に50〜70%であることが好ましい。また、ヘイズ値が70〜99%、特に80〜99%、更に90〜99%であることが好ましい。全光線透過率とヘイズ値がこの範囲にあると、光散乱層にマット感や奥行き感を与え、着色層をぼかす効果が発現しやすくなる。ここで、全光線透過率、ヘイズ値は、ナノファイバ積層体を肌に貼付した状態を想定して、光散乱層が乾燥状態又は水溶液又は油性成分等が含浸された状態で、例えばHaze meter HM−150((株)村上色彩技術研究所)で測定することができる。ナノファイバ積層体から光散乱層を分離するには、着色層と光散乱層の境界を層間剥離させることが好ましい。そして、剥離した光散乱層において、剥離した面の反対側の面から全光線透過率を測定することが好ましい。
光散乱層を構成するナノファイバは、水不溶性高分子材料を含有している。この水不溶性高分子材料の詳細については、先に述べた着色層に関する説明が適宜適用される。このナノファイバは、水不溶性高分子材料のみから構成されていてもよく、あるいは水不溶性高分子材料に加えて、水溶性高分子材料を含んでいてもよい。この水溶性高分子材料の詳細については、先に述べた着色層に関する説明が適宜適用される。ナノファイバが水不溶性高分子材料及び水溶性高分子材料から構成されている場合、水不溶性高分子材料と水溶性高分子材料との合計量に対する水溶性高分子材料の割合は、30質量%以下が好ましく、特に1〜30質量%、更に10〜25質量%に設定することが好ましい。
ナノファイバに含有されている光散乱性粒子は、本発明のナノファイバ積層体が受けた光を乱反射させることで、該ナノファイバ積層体にマット感や奥行き感を付与し、皺やシミを目立ちにくくする作用を有している。本明細書において「光散乱性」とは、光の拡散透過性を高くすることにより、ナノファイバ積層体下の陰影の境界をぼかして見えにくくする性質のことである。また、ナノファイバ積層体表面の光の反射を抑制することにより光の明度差を小さくする性質をいう。
光散乱性粒子としては、例えばシリコーン、アクリル樹脂、ポリアミド、ポリメタクリル酸メチル等の高分子材料の球状物、マイカ等の平面粒子表面に微細構造を形成したもの、酸化チタンの表面にガラスをコーティングした粒子、硫酸バリウム、アルミナ、水酸化アルミニウムの球状物等を用いることができる。これらの粒子は、それぞれ単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの粒子のうち、特に、規則的な凹凸が形成され、屈曲率が連続的に変化するような不均質膜としてみなせるナノファイバ積層体が形成される点から、シリコーン、アクリル樹脂、ポリアミド及びポリメタクリル酸メチル等の高分子材料の球状物、並びに複合粉体を用いることが好ましい。
光散乱性粒子は種々の形状をとり得る。例えば球状、板状、紡錘状、鱗片状、不定形等の形状をとり得る。これらの形状のうち、球状又は板状であると、光散乱効果が高くなるので好ましい。
光散乱性粒子の大きさは、ナノファイバの太さよりも大きくてもよく、あるいは小さくてもよい。図1(a)及び(b)には、ナノファイバの太さよりも大きな光散乱性粒子を用いた場合の光散乱層が模式的に示されている。同図に示すように、ナノファイバ11には光散乱性粒子12が固定化されている。1本のナノファイバ11には、1個又は2個以上の光散乱性粒子12が固定化されている。光散乱性粒子12の粒径Aは、ナノファイバ11の太さBよりも大きくなっている。このような関係を有する光散乱層を有するナノファイバ積層体には以下の利点がある。すなわち該ナノファイバ積層体を例えばヒトの肌に貼付すると、光散乱性粒子12は、肌が縮んで変形するときに、その変形を阻害するように働き、それによって皺等が寄りづらくなるとともに、光の散乱効果で肌の凹凸が目立たなくなる。また、粒径がナノファイバ11の太さより大きい光散乱性粒子12の存在によって、光散乱層の表面に凹凸ができ、このことによっても光が散乱しやすくなるので、着色層のぼかし効果が一層顕著になる。更には、ナノファイバ積層体の表面に凹凸を作ることによって、ファンデーション等の塗布性が向上する利点もある。上述の各効果を一層顕著なものとする観点から、光散乱性粒子12の粒径は、ナノファイバ11の太さより大きいことを条件として、具体的には0.5〜150μm、特に0.7〜100μm、とりわけ1〜50μmであることが好ましい。
一方、ナノファイバ11の太さBは、ヒトの肌に貼付したナノファイバ積層体を目立たなくする観点から細いことが好ましい。尤も、ナノファイバ11が細すぎると、大粒径の光散乱性粒子12を保持することが容易でなくなる。この観点からナノファイバ11の太さB(図1参照)は、円相当直径で表した場合、10〜3000nm、特に10〜1000nm、とりわけ特に50〜1000nmであることが好ましい。また、ナノファイバ11の太さBに対する光散乱性粒子12の粒径A(図1参照)の比(A/B)は1.1〜200、特に5〜100であることが、光散乱性粒子12の確実な保持の点から好ましい。
光散乱性粒子12は、図1(b)に示すとおり、ナノファイバ11の構成材料13によってその表面が被覆されていることが好ましい。光散乱性粒子12を被覆する該材料13は、光散乱性粒子12とナノファイバ11との結合剤として機能している。これによって、光散乱性粒子12はナノファイバ11に確実に保持されている。光散乱性粒子12の確実な保持の観点からは、光散乱性粒子12は、その表面の全域が、ナノファイバ11の構成材料13によって完全に被覆されていることが望ましいが、完全に被覆されていることは必須ではない。
光散乱層に含まれる光散乱性粒子の割合は、該光散乱層に対して10〜80質量%、特に15〜70質量%であることが、十分な光散乱効果の発現の点から好ましい。
光散乱層の厚みは0.5〜1000μm、特に1〜500μmであることが好ましい。坪量は、0.01〜100g/m2、特に0.1〜50g/m2であることが好ましい。光散乱層の厚みは、接触式の膜厚計ミツトヨ社製ライトマチックVL−50A(R5mm超硬球面測定子)を使用して測定できる。測定時にシートに加える荷重は0.01Nとする。ナノファイバ積層体から光散乱層を分離するには、着色層と光散乱層の境界を層間剥離させることが好ましい。
着色層及び光散乱層を有する本発明のナノファイバ積層体は、その全体の厚みが0.55〜1100μm、特に1.1〜550μmであることが好ましい。このような厚みにすることで、ナノファイバ積層体の縁部と、使用者の肌との間に段差が生じにくくなり、ナノファイバ積層体と使用者の肌との外観上の一体感が高まる。また、ナノファイバ積層体を肌の微細な凹凸の部位、例えば小皺の部位や毛穴の部位に貼付した場合に、肌理(キメ)が整ったように見える。
本発明のナノファイバ積層体は、ヒトの肌に貼付されて使用される美容のための皺隠し用シートやシミ隠しシートとして特に好適なものである。本発明のナノファイバ積層体をヒトの肌に付着させる場合、ナノファイバ積層体における着色層の表面又は肌の表面を、水や水を含む水性液等の液状物で湿潤させた状態下に、ナノファイバ積層体を肌に当接させることが好ましい。これによって、表面張力の作用でナノファイバ積層体が肌の表面に良好に密着する。
肌の表面又はナノファイバ積層体の表面を湿潤状態にするためには、例えば各種の液状物を該表面に塗布又は噴霧すればよい。塗布又は噴霧される液状物としては、水を含み、かつ5000mPa・s以下の粘性を有する物質が好ましくは用いられる。そのような液状物としては、例えば水、水溶性塩類や水溶性有機溶媒の水溶液、及び水不溶性微粒子の水分散液等が挙げられる。また、O/WエマルションやW/Oエマルション等の乳化液、増粘剤で増粘された水性液等も挙げられる。具体的には、肌の表面を湿潤させるための液体として、化粧水や化粧クリームを用いることができる。
液状物の塗布又は噴霧によって肌の表面又はナノファイバ積層体の表面を湿潤状態にする程度は、該液状物の表面張力が十分に発現し、かつ水溶性高分子化合物が溶解する程度の少量で十分である。具体的には、ナノファイバ積層体の大きさにもよるが、その大きさが例えば3cm×3cmの正方形の場合、0.01mlの量の液状物を肌の表面に存在させることで、ナノファイバ積層体を容易に該表面に付着させることができる。
本発明のナノファイバ積層体は、これ単独で用いてもよく、あるいは該積層体に他のシートを積層させてもよい。他のシートとしては、例えば使用前のナノファイバ積層体を支持してその取り扱い性を高めるための基材シートが挙げられる。ナノファイバ積層体を、基材シートと組み合わせて用いることで、本発明のように薄いナノファイバ積層体の場合には、肌に付着させるときの操作性が良好になる。この場合、ナノファイバ積層体における光散乱層が基材シートと対向するように両者が積層されることが好ましい。
ナノファイバ積層体の取り扱い性を向上させる観点から、基材シートは、そのテーバーこわさが0.01〜0.4mNm、特に0.01〜0.2mNmであることが好ましい。テーバーこわさは、JIS P8125に規定される「こわさ試験方法」により測定される。
また基材シートは、ナノファイバ積層体を肌に首尾よく転写させる観点から通気性を有することが好ましい。基材シートのガーレ通気度は、30秒/100ml以下、特に20秒/100ml以下であることが好ましい。基材シートのガーレ通気度は、JIS P8117に従い測定される。ガーレ通気度の下限値は、上述した基材シートのテーバーこわさ等を勘案して決定される。
基材シートは、ナノファイバ積層体の上に直接積層されていることが好ましい。この場合、基材シートは、ナノファイバ積層体に対して剥離可能に積層されていることが好ましい。このような構成とすることで、ナノファイバ積層体を、例えば肌に付着させた後に、基材シートをナノファイバ積層体から剥離除去して、ナノファイバ積層体を肌に残すことが可能になるという利点がある。
基材シートとしては、例えばポリオレフィン系の樹脂やポリエステル系の樹脂を始めとする合成樹脂製のフィルムを用いることができる。該フィルムを、ナノファイバ積層体に対して剥離可能に積層する場合には、該フィルムにおけるナノファイバ積層体との対向面に、シリコーン樹脂の塗布やコロナ放電処理等の剥離処理を施しておくことが、剥離性を高める観点から好ましい。
基材シートとしては、メッシュシートを用いることもできる。メッシュシートを用いることで、上述したシリコーン樹脂の塗布等の剥離処理をことさら行わなくても、基材シートを、ナノファイバ積層体に対して剥離可能に積層することができる。この場合、メッシュの目開きは20〜200メッシュ/インチ、特に50〜150メッシュ/インチとすることが好ましい。また、メッシュの線径は、10〜200μm、特に30〜150μmであることが好ましい。メッシュシートを構成する材料としては、上述したフィルムを構成する材料と同様のものを用いることができる。
基材シートとしては、通気性を有する材料である紙や不織布を用いることもできる。紙や不織布を用いることで、上述したシリコーン樹脂の塗布等の剥離処理をことさら行わなくても、基材シートを、ナノファイバ積層体に対して剥離可能に積層することができる。また、液状物を介して肌にナノファイバ積層体を転写するときに、余分な水分を吸収させることもできる。
次に、本発明のナノファイバ積層体の好ましい製造方法を、着色層及び光散乱層の双方がナノファイバからなる層である場合を例にとり説明する。この形態のナノファイバ積層体は、例えばエレクトロスピニング法を用い、平滑な基板の表面にナノファイバからなる各層を堆積させることで好適に製造することができる。図2には、エレクトロスピニング法を実施するための装置30が示されている。エレクトロスピニング法を実施するためには、シリンジ31、高電圧源32、導電性コレクタ33を備えた装置30が用いられる。シリンジ31は、シリンダ31a、ピストン31b及びキャピラリ31cを備えている。キャピラリ31cの内径は10〜1000μm程度である。シリンダ31a内には、ナノファイバの原料となる噴霧液が充填されている。この噴霧液の溶媒は、高分子材料等の種類に応じ、水若しくは有機溶媒、又は水及び水と相溶性のある有機溶媒の混合溶媒とする。噴霧液の詳細については後述する。高電圧源32は、例えば10〜30kVの直流電圧源である。高電圧源32の正極はシリンジ31における噴霧液と導通している。高電圧源32の負極は接地されている。導電性コレクタ33は、例えば金属製の板であり、接地されている。シリンジ31におけるニードル31cの先端と導電性コレクタ33との間の距離は、例えば30〜300mm程度に設定されている。図2に示す装置30は、大気中で運転することができる。運転環境に特に制限はなく、例えば温度20〜40℃、湿度10〜50%RHとすることができる。
コレクタ33の上に基材シートを配置した状態で、シリンジ31と導電性コレクタ33との間に電圧を印加した状態下に、シリンジ31のピストン31bを徐々に押し込み、キャピラリ31cの先端から噴霧液を押し出す。押し出された噴霧液においては、溶媒が揮発し、溶質である高分子材料が固化しつつ、電位差によって伸長変形しながらナノファイバを形成し、導電性コレクタ33に引き寄せられる。このようにして形成されたナノファイバは、その製造の原理上は、無限長の連続繊維となる。
図2に示す装置を用いたエレクトロスピンニング法においては、まず光散乱層を形成し、次いで、形成された光散乱層上に着色層を形成する。光散乱層を形成するために用いられる上述の噴霧液は、高分子化合物及び光散乱性粒子を含むものである。この噴霧液は、高分子化合物、光散乱性粒子及び液媒体を混合することで調製することができる。あるいは、(イ)光散乱性粒子を含む液と、(ロ)高分子化合物を含む溶液とを混合して噴霧液を調製することもできる。
ナノファイバの堆積物からなる光散乱層が形成されたら、その上に着色層を構成するナノファイバを堆積させて、着色層を形成する。着色層を形成するために用いられる噴霧液は、高分子化合物及び着色剤を含むものである。この噴霧液の調製法は、先に述べた光散乱層を形成するために用いられる噴霧液の調製法と同じである。
上述したとおり、光散乱層を構成するナノファイバは、水不溶性高分子材料を含むものである。該水不溶性高分子材料を含むナノファイバは、噴霧液として、例えば、繊維形成後の処理によって水不溶性となる水溶性高分子材料を含む水溶液を用いることで、首尾よく形成できる。繊維形成後の処理によって水不溶性となる水溶性高分子材料としては、完全鹸化ポリビニルアルコールを用いることが有利である。完全鹸化ポリビニルアルコールは水溶性であるととともに、これを加熱することによって結晶化度が高まり水不溶性に変化するからである。したがって、エレクトロスピンニング法によってナノファイバを形成した後に、加熱を行うことで、完全鹸化ポリビニルアルコールからなる水不溶性高分子材料を含有するナノファイバが得られる。繊維形成後の加熱条件は、温度60〜200℃、時間1〜200分であることが好ましい。
水不溶性高分子材料を含むナノファイバを製造するための別の噴霧液として、有機溶媒に溶解する水不溶性高分子材料が有機溶媒に溶解した溶液を用いることもできる。そのような有機溶媒と水不溶性高分子材料との組み合わせとしては、例えばポリ乳酸とクロロホルムの組み合わせや、オキサゾリン変性シリコーンとエタノールとの組み合わせや、ツエイン、ポリビニルブチラール等とエタノールとの組み合わせ等が挙げられる。
エレクトロスピンニング法によって着色層及び光散乱層のいずれを形成する場合であっても、噴霧液における高分子化合物の濃度は3〜50質量%とすることが好ましい。また、顔料及び/又は染料(着色層の場合)や光散乱性粒子(光散乱層の場合)の濃度は2〜30質量%とすることが好ましい。残部は水や有機溶媒である。
着色層がフィルム状の層である場合には、着色されたフィルムに向けてエレクトロスピンニング法を行い、該フィルムの一面上に光散乱層を形成すればよい。フィルムの形成に特に制限はなく、従来公知の方法を採用することができる。
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は前記実施形態に制限されない。例えば前記実施形態においては、ナノファイバの製造方法として、エレクトロスピンニング法を採用した場合を例にとり説明したが、ナノファイバの製造方法はこれに限られない。
また、図2に示すエレクトロスピンニング法においては、形成されたナノファイバが板状の導電性コレクタ33上に堆積されるが、これに代えて導電性の回転ドラムを用い、回転する該ドラムの周面にナノファイバを堆積させるようにしてもよい。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲は、かかる実施例に制限されない。特に断らない限り、「%」は「質量%」を意味する。
〔実施例1〕
(1)光散乱性粒子含有噴霧液の調製
高分子化合物として完全鹸化ポリビニルアルコール(PVA)(PVA117、クラレ(株))を用いた。このPVAは、鹸化度98%、重合度1700のものであった。また、光散乱性粒子として、日光ケミカルズ(株)製のプラスチックパウダーD−800を用いた。この粒子の平均粒径は6μmであった。これらを水と混合して噴霧液を調製した。噴霧液中におけるポリビニルアルコールの濃度が7%、光散乱性粒子の濃度が10%となるように、15g程度の噴霧液を調製した。
(2)エレクトロスピニング法の実施
(1)で得られた噴霧液を用い、図2に示す装置によってエレクトロスピニング法を行い、基材シートとなるべきポリエチレンテレフタレートメッシュ(ボルティングクロス テトロン#120、東京スクリーン(株)、テーバーこわさ0.13mNm)の表面にナノファイバからなる光散乱層を形成した。エレクトロスピニング法の条件は以下のとおりとした。
・印加電圧:33kV
・キャピラリ−コレクタ間距離:200mm
・原料液吐出量:1.0ml/h
・環境:25℃、40%RH
(3)光散乱層の製造
(2)で得られた光散乱層の厚みは 13μmであった。坪量は4.0g/m2であった。この光散乱層を走査型電子顕微鏡で観察したところ、光散乱性粒子がナノファイバに固定化されていることが確認された。光散乱性粒子は、その表面がポリビニルアルコールによって被覆されていた。ナノファイバに占める光散乱性粒子の割合は60%であった。
(4)茶色スラリーの調製
以下の表1に示す処方の茶色スラリーを調製した。詳細には、各原料をビーカーに量りとり、ディスパー(プライミクス株式会社製、ROBOMICS−4.0)によって1000rpm×10分間分散させた。次いでガラスビーズの入ったミルカップに試料を移し、カップを冷却しながら2300rpm×30分間ビーズ式湿式微粒分散粉砕機(RMB型バッチ式レディーミル、アイメックス株式会社製、RMB−08)によって顔料を解砕・分散させた。その後、試料を濾過して茶色スラリーを得た。得られた茶色スラリーの濃度は20%であった。
(5)白色スラリーの調製
以下の表2に示す処方とする以外は、前記の(4)と同様にして白色スラリーを調製した。得られた白色スラリーの濃度は35%であった。
(6)粒度分布の測定
得られた各スラリーを、大塚電子株式会社製粒度分布計・FAR−1000を用いて粒度分布の測定を行った。その結果、白色スラリーの平均粒子径は約250nm、茶色スラリーの平均粒子径は約380nmであり、おおよそ粉体の一次粒子径に近かった。
(7)高分子化合物の水溶液の調製
高分子化合物として、水不溶性高分子化合物である完全鹸化ポリビニルアルコール(PVA117、クラレ(株)鹸化度:99%以上)を用いた。これを水に溶解して濃度10%の水溶液を調製した。
(8)噴霧液の調製
白色スラリー、茶色スラリー及び高分子化合物の水溶液を混合してエレクトロスピニング用の噴霧液を調製した。この噴霧液に占める白色スラリーの割合は7%、茶色スラリーの割合は12%、高分子化合物の水溶液の割合は75%、水は6%となるように着色層噴霧液を調整した。
(9)エレクトロスピニング法の実施
得られた噴霧液を用い、図2に示す装置によって、先に製造した光散乱層の表面に、ナノファイバからなる着色層を形成した。ナノファイバの製造条件は次のとおりである。
・印加電圧: 33kV
・キャピラリ−コレクタ間距離: 200mm
・水溶液吐出量: 1ml/h
・環境: 25℃、40%RH
(10)着色層の製造
得られたナノファイバからなる着色層の厚みは2.5μmであった。ナノファイバの太さは500〜700nmであった。ナノファイバに占める顔料の割合は40%であった。光散乱層から着色層を手で剥離した後に測定した該着色層の着色の程度はマンセル表色系で表して、色相7.6YR、明度7.8、彩度4.3であった。このようにして、光散乱層上にナノファイバからなる着色層を得た。
以上のようにして得られたナノファイバ積層体を200℃で5分間加熱処理し、光散乱層及び着色層の完全鹸化ポリビニルアルコールを結晶化させ水不溶化した。このようにして得られたナノファイバ積層体における着色層及び光散乱層の表面の走査型電子顕微鏡像を図3(a)及び(b)に示す。
〔実施例2及び3並びに比較例1〕
光散乱性粒子として、三京化成(株)製のトスパール145Aを用いた以外は、実施例1と同様にして実施例2のナノファイバ積層体を製造した。実施例2で得られたナノファイバ積層体における着色層及び光散乱層の表面の走査型電子顕微鏡像を図4(a)及び(b)に示す。
また、光散乱性粒子として、三好化成(株)製のTSG30Aを用いた以外は、実施例1と同様にして実施例3のナノファイバ積層体を製造した。実施例3で得られたナノファイバ積層体における光散乱層の表面の走査型電子顕微鏡像を図5に示す。
また、光散乱層を形成しない以外は、実施例1と同様にして、比較例1のナノファイバシートを製造した。
〔評価〕
実施例で得られたナノファイバ積層体及び比較例で得られたナノファイバシートについて、以下の方法でシミの目立ちにくさ及び皺の目立ちにくさを評価した。皺の目立ちにくさの結果を、表3に示す。
〔シミの目立ちにくさ〕
皮膚上のシミのある部分表面を、中性界面活性剤を用いて洗浄し、ウエスを用いて水滴を除去し、23℃50%環境下で十分な時間経過した後、霧吹きを用いてφ70mmの範囲に0.05gのイオン交換水を満遍なく噴霧する。そこに20×20mmに切り分けたナノファイバ積層体及びナノファイバシートを貼り付け、水分が乾燥するまで放置する。その後、以下の方法にて評価を行う。その結果、ナノファイバ積層体及びナノファイバシートを貼付することで、実施例及び比較例のいずれの場合においてもナノファイバ積層体及びナノファイバシートの下に存在するシミを隠す効果が得られた。
〔皺の目立ちにくさ〕
額の皺部表面を、中性界面活性剤を用いて洗浄し、ウエスを用いて水滴を除去し、23℃50%環境下で十分な時間経過した後、霧吹きを用いてφ70mmの範囲に0.05gのイオン交換水を満遍なく噴霧する。そこに20×20mmに切り分けたナノファイバ積層体及びナノファイバシートを貼り付け、水分が乾燥するまで放置する。その後、指でナノファイバ積層体及びナノファイバシート外周外側の皮膚をつまむようにしてナノファイバ積層体及びナノファイバシートとその直下の皮膚に圧縮変形を生じさせた後に、ナノファイバ積層体及びナノファイバシート外周の皮膚を引っ張ることでナノファイバ積層体及びナノファイバシートとその直下の皮膚に引張変形を生じさせることを10回繰り返すことで、ナノファイバ積層体及びナノファイバシートに皺を生じさせた後、以下の方法にて評価を行う。
◎:ナノファイバ積層体及びナノファイバシート貼り付け前と比較して、ナノファイバ積層体及びナノファイバシート上の皺が目立たなくなっている。
○:ナノファイバ積層体及びナノファイバシート貼り付け前後で、皺の目立ちにくさに変化がない。
×:ナノファイバ積層体及びナノファイバシート貼り付け前と比較して、ナノファイバ積層体及びナノファイバシート上の皺が目立ってしまう。
表3に示す結果から明らかなように、実施例で得られたナノファイバ積層体は、これをヒトの肌に貼付すると、皺やシミが目立ちにくくなることが判る。これに対して、着色層のみからなる比較例1のナノファイバシートは、シミを目立ちにくくさせるものの、皺を目立ちにくくさせることはできなかった。
なお、参考例として、実施例1ないし3のナノファイバ積層体を、その光散乱層を肌に向けて貼り付けた場合には、比較例1と同様にシミを目立ちにくくさせるものの、皺を目立ちにくくさせることはできなかった。
11 ナノファイバ
12 光散乱性粒子
13 光散乱性粒子の表面を被覆するナノファイバの構成材料
30 装置
31 シリンジ
32 高電圧源
33 導電性コレクタ

Claims (5)

  1. 高分子材料を含む着色された層と、水不溶性高分子材料を含み、光散乱性を有する粒子を含有し、かつ顔料及び/又は染料を非含有であるナノファイバを含む層とを積層してなり、
    光散乱性を有する前記粒子の粒径は、前記ナノファイバの太さよりも大きくなっており、
    光散乱性を有する前記粒子は、前記ナノファイバの構成材料によってその表面が被覆されており、
    前記着色された層が肌に向き、前記ナノファイバを含む層が外方を向くように肌に貼付される、肌貼付用ナノファイバ積層体。
  2. 前記光散乱性を有する粒子が、球状であるか又は板状のものである請求項1に記載の肌貼付用ナノファイバ積層体。
  3. 前記ナノファイバを含む層に対する、前記光散乱性を有する粒子の割合が10〜80質量%である請求項1又は2に記載の肌貼付用ナノファイバ積層体。
  4. 前記着色された層が、顔料及び/又は染料によって着色されたナノファイバを含む層である請求項1ないし3のいずれか一項に記載の肌貼付用ナノファイバ積層体。
  5. 前記光散乱性を有する粒子の粒径が、水不溶性高分子材料を含み、光散乱性を有する粒子を含有し、かつ顔料及び/又は染料を非含有である前記ナノファイバの太さよりも大きい請求項1ないし4のいずれか一項に記載の肌貼付用ナノファイバ積層体。
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