JP5848521B2 - ゴルフクラブ - Google Patents

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Description

本発明は、ゴルフクラブに関する。
ゴルフクラブの設計では、種々のスペックが考慮される。
特開2002−35186公報は、ヘッド重量が175g以上であり且つクラブ長さが46インチ以上であるゴルフクラブにおいて、ヘッドを除いた部分の総質量がAとされ、グリップの後端から170mmまでのバット部分の質量がBとされたとき、総質量Aに対する質量Bの割合が55%以上70%以下であるゴルフクラブを開示する。
特開2002−35186公報
反発係数、クラブ長さ及びヘッドの慣性モーメントは、ルールによって規制されている。このため、従来技術では、飛距離性能を更に向上させることは難しい。
本発明の目的は、飛距離性能を高めうるゴルフクラブの提供にある。
本発明のゴルフクラブは、シャフト及びヘッドを備えている。シャフト全長がLsとされ、シャフトのチップ端からシャフト重心Gまでの距離がLgとされるとき、比(Lg/Ls)が0.52以上0.65以下である。クラブ長さがX(インチ)とされ、クラブ重量がY(g)とされるとき、このゴルフクラブは、次の関係式(1)を満たす。
Y≦−7.62X+635 ・・・ (1)
好ましくは、上記距離Lgが、615mm以上660mm以下である。好ましくは、シャフト重量Wsは52g以下である。好ましくは、上記クラブ長さXは46インチ以下である。
飛距離性能に優れたゴルフクラブが得られうる。
図1は、本発明の一実施形態に係るシャフトを備えたゴルフクラブを示す。 図2は、第1実施形態に係るシャフトの展開図である。 図3は、図2のシャフトに係る第1の合体シートを示す平面図である。 図4は、図2のシャフトに係る第2の合体シートを示す平面図である。 図5は、第2実施形態に係るシャフトの展開図である。 図6(a)は順式フレックスの測定方法を示し、図6(b)は逆式フレックスの測定方法を示す。 図7は、三点曲げ強度の測定方法を示す。 図8は、比較例に係るシャフトの展開図の一例である。 図9は、テスト1に係る実施例及び比較例がプロットされたグラフである。 図10は、テスト1における一部の実施例がプロットされたグラフである。 図11は、テスト1における一部の実施例がプロットされたグラフである。 図12は、テスト1における一部の実施例がプロットされたグラフである。 図13は、テスト2に係る実施例及び比較例がプロットされたグラフである。
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
なお本願では、「層」という文言と、「シート」という文言とが用いられる。「層」は、巻回された後における称呼であり、これに対して「シート」は、巻回される前における称呼である。「層」は、「シート」が巻回されることによって形成される。即ち、巻回された「シート」が、「層」を形成する。また、本願では、層とシートとで同じ符号が用いられる。例えば、シートa1によって形成された層は、層a1とされる。
本願において「内側」とは、シャフト半径方向における内側を意味する。本願において「外側」とは、シャフト半径方向における外側を意味する。
本願において、「軸方向」とは、シャフト軸方向を意味する。
軸方向に対する繊維の角度に関して、本願では、角度Af及び絶対角度θaが用いられる。角度Afは、プラス又はマイナスを伴う角度である。絶対角度θaは、角度Afの絶対値である。換言すれば、絶対角度θaとは、軸方向と繊維方向との成す角度の絶対値である。例えば、「絶対角度θaが10°以下」とは、「角度Afが−10度以上+10度以下」であることを意味する。
[第一実施形態]
図1は、本発明の第一実施形態に係るゴルフクラブシャフト6を備えたゴルフクラブ2を示す。ゴルフクラブ2は、ヘッド4と、シャフト6と、グリップ8とを備えている。シャフト6の先端部に、ヘッド4が設けられている。シャフト6の後端部に、グリップ8が設けられている。なおヘッド4及びグリップ8は限定されない。ヘッド4として、ウッド型ゴルフクラブヘッド、ハイブリット型ゴルフクラブヘッド、ユーティリティ型ゴルフクラブヘッド、アイアン型ゴルフクラブヘッド、パターヘッド等が例示される。
本実施形態のヘッド4は、ウッド型ゴルフクラブヘッドである。比較的長いクラブでは、飛距離向上の効果が高い。この観点から、ヘッド4として、ウッド型ゴルフクラブヘッド、ハイブリット型ゴルフクラブヘッド及びユーティリティ型ゴルフクラブヘッドが好ましい。中空のヘッドは、慣性モーメントが大きい。ヘッドの慣性モーメントが大きいクラブでは、飛距離向上の効果が安定的に得られる。この観点から、ヘッド4は中空であるのが好ましい。
ヘッド4の材質は限定されない。ヘッド4の材質として、チタン、チタン合金、CFRP(炭素繊維強化プラスチック)、ステンレス鋼、マルエージング鋼、軟鉄等が挙げられる。複数の材質の組み合わせも可能である。例えば、CFRPとチタン合金とが組み合わせられうる。ヘッド重心を下げる観点から、クラウンの少なくとも一部がCFRPであり、ソールの少なくとも一部がチタン合金であるヘッドであってもよい。強度の観点から、フェースの全体がチタン合金であるのが好ましい。
シャフト6は、繊維強化樹脂層の積層体からなる。シャフト6は、管状体である。シャフト6は中空構造を有する。図1が示すように、シャフト6は、チップ端Tpとバット端Btとを有する。チップ端Tpは、ヘッド4の内部に位置している。バット端Btは、グリップ8の内部に位置している。
シャフト6は、いわゆるカーボンシャフトである。好ましくは、シャフト6は、プリプレグシートを硬化させてなる。このプリプレグシートでは、繊維は実質的に一方向に配向している。このように繊維が実質的に一方向に配向したプリプレグは、UDプリプレグとも称される。「UD」とは、ユニディレクションの略である。UDプリプレグ以外のプリプレグが用いられても良い。例えば、プリプレグシートに含まれる繊維が編まれていてもよい。
プリプレグシートは、繊維と樹脂とを有している。この樹脂は、マトリクス樹脂とも称される。典型的には、この繊維は炭素繊維である。典型的には、このマトリクス樹脂は、熱硬化性樹脂である。
シャフト6は、いわゆるシートワインディング製法により製造されている。プリプレグにおいて、マトリクス樹脂は、半硬化状態にある。シャフト6は、プリプレグシートが巻回され且つ硬化されてなる。この硬化とは、半硬化状態のマトリクス樹脂を硬化させることである。この硬化は、加熱により達成される。シャフト6の製造工程には、加熱工程が含まれる。この加熱工程により、プリプレグシートのマトリクス樹脂が硬化する。
図2は、シャフト6を構成するプリプレグシートの展開図(シート構成図)である。シャフト6は、複数枚のシートにより構成されている。図2の実施形態では、シャフト6は、a1からa12までの12枚のシートにより構成されている。本願において、図2等で示される展開図は、シャフトを構成するシートを、シャフトの半径方向内側から順に示している。展開図において上側に位置しているシートから順に巻回される。本願の展開図において、図面の左右方向は、シャフト軸方向と一致する。本願の展開図において、図面の右側は、シャフトのチップ端Tp側である。本願の展開図において、図面の左側は、シャフトのバット端Bt側である。
本願の展開図は、各シートの巻き付け順序のみならず、各シートのシャフト軸方向における配置をも示している。例えば図2において、シートa1の端はチップ端Tpに位置している。例えば図2において、シートa5及びシートa6の端はバット端Btに位置している。
シャフト6は、ストレート層とバイアス層と、フープ層とを有する。本願の展開図において、繊維の配向角度が記載されている。「0°」と記載されているシートが、ストレート層を構成している。ストレート層用のシートは、本願においてストレートシートとも称される。
ストレート層は、繊維の配向がシャフトの長手方向(シャフト軸方向)に対して実質的に0°とされた層である。巻き付けの際の誤差等に起因して、繊維の配向はシャフト軸線方向に対して完全に0°とはならない場合がある。通常、ストレート層では、上記絶対角度θaが10°以下である。
図2の実施形態において、ストレートシートは、シートa1、シートa5、シートa6、シートa7、シートa8、シートa10、シートa11及びシートa12である。ストレート層は、シャフトの曲げ剛性及び曲げ強度との相関が高い。
一方、バイアス層は、シャフトの捻れ剛性及び捻れ強度との相関が高い。好ましくは、バイアス層は、繊維の配向が互いに逆方向に傾斜した2枚のシートペアから構成されている。捻れ剛性の観点から、バイアス層の絶対角度θaは、好ましくは15°以上であり、より好ましくは25°以上であり、更に好ましくは40°以上である。捻れ剛性及び曲げ剛性の観点から、バイアス層の絶対角度θaは、好ましくは60°以下であり、より好ましくは50°以下である。
シャフト6において、バイアス層を構成するシートは、シートa2及びシートa3である。図2には、シート毎に、上記角度Afが記載されている。角度Afにおけるプラス(+)及びマイナス(−)は、バイアスシートの繊維が互いに逆方向に傾斜していることを示している。本願において、バイアス層用のシートは、単にバイアスシートとも称される。
なお、図2の実施形態では、シートa2が−45度であり且つシートa3が+45度であるが、逆にシートa2が+45度であり且つシートa3が−45度であってもよいことは当然である。
シャフト6において、フープ層を構成するシートは、シートa4及びシートa9である。好ましくは、フープ層における上記絶対角度θaは、シャフト軸線に対して実質的に90°とされる。ただし、巻き付けの際の誤差等に起因して、繊維の配向はシャフト軸線方向に対して完全に90°とはならない場合がある。通常、フープ層では、上記絶対角度θaが80°以上90°以下である。本願において、フープ層用のプリプレグシートは、フープシートとも称される。
フープ層は、シャフトのつぶし剛性及びつぶし強度を高めるのに寄与する。つぶし剛性とは、シャフトをその半径方向内側に向かって押し潰す力に対する剛性である。つぶし強度とは、シャフトをその半径方向内側に向かって押し潰す力に対する強度である。つぶし強度は、曲げ強度とも関連しうる。曲げ変形に連動してつぶし変形が生じうる。特に肉厚の薄い軽量シャフトにおいては、この連動性が大きい。つぶし強度の向上により、曲げ強度も向上しうる。
図示しないが、使用される前のプリプレグシートは、カバーシートにより挟まれている。通常、カバーシートは、離型紙及び樹脂フィルムである。即ち、使用される前のプリプレグシートは、離型紙と樹脂フィルムとで挟まれている。プリプレグシートの一方の面には離型紙が貼られており、プリプレグシートの他方の面には樹脂フィルムが貼られている。以下において、離型紙が貼り付けられている面が「離型紙側の面」とも称され、樹脂フィルムが貼り付けられている面が「フィルム側の面」とも称される。
本願の展開図は、フィルム側の面が表側とされた図である。即ち、本願の展開図において、図面の表側がフィルム側の面であり、図面の裏側が離型紙側の面である。例えば図2では、シートa2の繊維方向とシートa3の繊維方向とは同じであるが、後述される貼り合わせの際にシートa3が裏返される。この結果、シートa2の繊維方向とシートa3の繊維方向とは互いに逆となる。従って、巻回された後の状態では、シートa2の繊維方向とシートa3の繊維方向とが互いに逆となる。この点を考慮して、図2では、シートa2の繊維方向が「−45°」と表記され、シートa3の繊維方向が「+45°」と表記されている。
プリプレグシートを巻回するには、先ず、樹脂フィルムが剥がされる。樹脂フィルムが剥がされることにより、フィルム側の面が露出する。この露出面は、タック性(粘着性)を有する。このタック性は、マトリクス樹脂に起因する。即ち、このマトリクス樹脂が半硬化状態であるため、粘着性が発現する。次に、この露出したフィルム側の面の縁部(巻き始め縁部ともいう)を、巻回対象物に貼り付ける。マトリクス樹脂の粘着性により、この巻き始め縁部の貼り付けが円滑になされうる。巻回対象物とは、マンドレル、又はマンドレルに他のプリプレグシートが巻き付けられてなる巻回物である。次に、離型紙が剥がされる。次に、巻回対象物が回転されて、プリプレグシートが巻回対象物に巻き付けられる。このように、先に樹脂フィルムが剥がされ、次に巻き始め端部が巻回対象物に貼り付けられ、次に離型紙が剥がされる。即ち、先に樹脂フィルムが剥がされ、巻き始め縁部が巻回対象物に貼り付けられた後に、離型紙が剥がされる。この手順により、シートの皺や巻き付け不良が抑制される。なぜなら、離型紙が貼り付けられたシートは、離型紙に支持されているため、皺となりにくいからである。離型紙は、樹脂フィルムと比較して、曲げ剛性が高い。
図2の実施形態では、合体シートが用いられる。合体シートは、2枚以上のシートが貼り合わされることによって形成される。
図2の実施形態では、二つの合体シートが形成される。図2は、第一の合体シートa234を示す。この合体シートa234は、シートa2、シートa3及びシートa4を貼り合わせることによって形成される。図3は、第二の合体シートa910を示す。この合体シートa910は、シートa9とシートa10とを貼り合わせることによって形成される。
第一の合体シートa234を作製する手順は次の通りである。先ず、2枚のシートが貼り合わせられた予備合体シートa34が作製される。シートa3とシートa4とが貼り合わせられる。予備合体シートa34の作製では、第二のバイアスシートa3が裏返されつつ、フープシートa4に貼り合わせされる。予備合体シートa34では、シートa4の上端とシートa3の上端とが一致している。次に、予備合体シートa34と、第一のバイアスシートa2とが貼り合わせられる。予備合体シートa34とシートa2とは、互いに半周分ずれた状態で貼り合わせられる。
合体シートa234において、シートa2とシートa3とは、半周分ズレている。即ち、巻回後のシャフトにおいて、シートa2の周方向位置とシートa3の周方向位置とは、周方向において相違している。この相違角度は、好ましくは、180°(±15°)である。
この合体シートa234が用いられる結果、第一のバイアス層a2と第二のバイアス層a3とは、互いに周方向でズレている。このズレにより、バイアス層の端の位置が周方向に分散される。この分散は、シャフトの周方向における均一性を向上させる。また、合体シートa234においては、フープシートa4の全体が、第一のバイアスシートa2と第二のバイアスシートa3との間に挟まれている(図3参照)。よって、巻回工程において、フープシートa4の巻回不良が抑制される。合体シートa234の使用は、巻回精度を向上させうる。なお、巻回不良とは、繊維の乱れ、皺の発生、繊維角度のズレ等を意味する。
図3が示すように、第二の合体シートa910において、シートa9の上端とシートa10の上端とが一致している。シートa910において、シートa9の全体がシートa10に貼り付いている。よって、巻回工程において、シートa9の巻回不良が抑制される。
前述の通り、本願では、繊維の配向角度によって、シート及び層が分類される。更に、本願では、シャフト軸方向の長さによって、シート及び層が分類される。
本願において、シャフト軸方向の全体に配置される層が、全長層と称される。本願において、シャフト軸方向の全体に配置されるシートが、全長シートと称される。巻回された全長シートが、全長層を形成する。
一方、本願において、シャフト軸方向において部分的に配置される層が、部分層と称される。本願において、シャフト軸方向において部分的に配置されるシートが、部分シートと称される。巻回された部分シートが、部分層を形成する。
本願では、ストレート層である全長層が、全長ストレート層と称される。図2の実施形態において、全長ストレート層は、シートa7及びシートa10である。
本願では、フープ層である全長層が、全長フープ層と称される。図2の実施形態において、全長フープ層は、シートa9である。
本願では、ストレート層である部分層が、部分ストレート層と称される。図2の実施形態において、部分ストレート層は、シートa1、シートa5、シートa6、シートa8、シートa11及びシートa12である。
本願では、フープ層である部分層が、部分フープ層と称される。図2の実施形態において、部分フープ層は、シートa4である。
シートa8は、中間部分層である。中間部分層の先端はチップ端Tpから離れている。中間部分層の後端はバット端Btから離れている。好ましくは、中間部分層は、シャフト軸方向中央位置S1を含む位置に配置される。好ましくは、中間部分層は、B点を含む位置に配置される。このB点については、後述の三点曲げ強度の測定方法において定義されている。シャフトの軸方向中央部はしなりによる変形が大きい。中間部分層は、変形が大きい部分を選択的に補強しうる。中間部分層は、シャフトの軽量化に寄与しうる。
本願では、バット部分層との文言が用いられる。バット部分層は、部分層の一態様である。図2において符号A1で示されているのは、バット部分層のチップ側の辺において最もバット側に位置する点である。好ましくは、点A1が、シャフト軸方向中央位置S1よりもバット側に位置する。図2において符号B1で示されているのは、バット部分層のチップ側の辺の中点である。より好ましくは、この中点B1が、シャフト軸方向中央位置S1よりもバット側に位置する。バット部分層として、バットストレート層、バットフープ層及びバットバイアス層が挙げられる。
本願では、バットストレート層との文言が用いられる。バットストレート層は部分ストレート層である。好ましくは、バットストレート層の全体が、シャフト軸方向中央位置よりもバット部に位置する。バットストレート層の後端は、シャフトのバット端Btに位置していなくてもよいし、シャフトのバット端Btに位置していてもよい。シャフト重心の位置をバット端Btに近づける観点から、好ましくは、このバットストレート層の配置範囲が、シャフトのバット端Btから100mm隔てた位置P1を含む。シャフト重心をバット端Btに近づける観点から、より好ましくは、バットストレート層の後端は、シャフトのバット端Btに位置している。
図2の実施形態において、バットストレート層は、シートa5及びシートa6である。
図2の実施形態では、本願では、バットフープ層との文言が用いられる。バットフープ層は部分フープ層である。バットフープ層の後端は、シャフトのバット端Btに位置していなくてもよいし、シャフトのバット端Btに位置していてもよい。シャフトの後端部分を補強する観点から、好ましくは、このバットフープ層の配置範囲が、シャフトのバット端Btから100mm隔てた位置P1を含む。より好ましくは、バットフープ層の後端は、シャフトのバット端Btに位置している。
図2に示されるシートを用いて、シートワインディング製法により、シャフト6が作製される。
以下に、このシャフト6の製造工程の概略が説明される。
[シャフト製造工程の概略]
(1)裁断工程
裁断工程では、プリプレグシートが所望の形状に裁断される。この工程により、図2に示された各シートが切り出される。
なお、裁断は、裁断機によりなされてもよいし、手作業でなされてもよい。手作業の場合、例えば、カッターナイフが用いられる。
(2)貼り合わせ工程
貼り合わせ工程では、複数のシートが貼り合わされて、前述した合体シートa234及び合体シートa910が作製される。
貼り合わせ工程では、加熱又はプレスが用いられてもよい。より好ましくは、加熱とプレスとが併用される。後述する巻回工程において、合体シートの巻き付け作業中に、シートのズレが生じうる。このズレは、巻き付け精度を低下させる。加熱及びプレスは、シート間の接着力を向上させる。加熱及びプレスは、巻回工程におけるシート間のズレを抑制する。
シート同士の接着力を高める観点から、貼り合わせ工程における加熱温度は、30℃以上が好ましく、35℃以上がより好ましい。この加熱温度が高すぎる場合、マトリクス樹脂の硬化が進行し、シートの粘着性が低下することがある。この粘着性の低下は、合体シートと巻回対象物との接着性を低下させる。この接着性の低下は、皺の発生を許容することがあり、巻き付け位置のズレを生じさせうる。この観点から、貼り合わせ工程における加熱温度は、60℃以下が好ましく、50℃以下がより好ましく、40℃以下がより好ましい。
シート同士の接着力を高める観点から、貼り合わせ工程における加熱時間は、20秒以上が好ましく、30秒以上がより好ましい。シートの粘着性を維持する観点から、貼り合わせ工程における加熱時間は、300秒以下が好ましい。
シート同士の接着力を高める観点から、貼り合わせ工程におけるプレスの圧力は、300g/cm以上が好ましく、350g/cm以上がより好ましい。プレスの圧力が過大である場合、プリプレグが押し潰される場合がある。この場合、プリプレグの厚みが設計値よりも薄くなる。プリプレグの厚み精度の観点から、貼り合わせ工程におけるプレスの圧力は、600g/cm以下が好ましく、500g/cm以下がより好ましい。
シート同士の接着力を高める観点から、貼り合わせ工程におけるプレスの時間は、20秒以上が好ましく、30秒以上がより好ましい。プリプレグの厚み精度の観点から、貼り合わせ工程におけるプレスの時間は、300秒以下が好ましい。
(3)巻回工程
巻回工程では、マンドレルが用意される。典型的なマンドレルは、金属製である。このマンドレルに、離型剤が塗布される。更に、このマンドレルに、粘着性を有する樹脂が塗布される。この樹脂は、タッキングレジンとも称される。このマンドレルに、裁断されたシートが巻回される。このタッキングレジンにより、シート端部をマンドレルに貼り付けることが容易とされている。
貼り合せに係るシートに関しては、合体シートの状態で巻回される。
この巻回工程により、巻回体が得られる。この巻回体は、マンドレルの外側にプリプレグシートが巻き付けられてなる。巻回は、例えば、平面上で巻回対象物を転がすことによりなされる。この巻回は、手作業によりなされてもよいし、機械によりなされてもよい。この機械は、ローリングマシンと称される。
(4)テープラッピング工程
テープラッピング工程では、上記巻回体の外周面にテープが巻き付けられる。このテープは、ラッピングテープとも称される。このラッピングテープは、張力を付与されつつ巻き付けられる。このラッピングテープにより、巻回体に圧力が加えられる。この圧力はボイドを低減させる。
(5)硬化工程
硬化工程では、テープラッピングがなされた後の巻回体が加熱される。この加熱により、マトリクス樹脂が硬化する。この硬化の課程で、マトリクス樹脂が一時的に流動化する。このマトリクス樹脂の流動化により、シート間又はシート内の空気が排出されうる。ラッピングテープの圧力(締め付け力)により、この空気の排出が促進されている。この硬化により、硬化積層体が得られる。
(6)マンドレルの引き抜き工程及びラッピングテープの除去工程
硬化工程の後、マンドレルの引き抜き工程とラッピングテープの除去工程とがなされる。両者の順序は限定されないが、ラッピングテープの除去工程の能率を向上させる観点から、マンドレルの引き抜き工程の後にラッピングテープの除去工程がなされるのが好ましい。
(7)両端カット工程
この工程では、硬化積層体の両端部がカットされる。このカットにより、チップ端Tpの端面及びバット端Btの端面が平坦とされる。
(8)研磨工程
この工程では、硬化積層体の表面が研磨される。硬化積層体の表面には、ラッピングテープの跡として残された螺旋状の凹凸が存在する。研磨により、このラッピングテープの跡としての凹凸が消滅し、表面が平滑とされる。
(9)塗装工程
研磨工程後の硬化積層体に塗装が施される。
このような工程で、シャフト6が得られる。シャフト6では、比(Lg/Ls)が大きい。シャフト6は、軽量であり且つ比(Lg/Ls)が大きい。
本願においては、シャフト重心率との文言が用いられる。シャフト重心率(%)は、[(Lg/Ls)×100]である。
このように製造されたシャフト6に、ヘッド4及びグリップ8が装着されて、ゴルフクラブ2が得られる。
本願では、クラブ長さがX(インチ)とされ、クラブ重量がY(g)とされる。このとき、ゴルフクラブ2は、次の関係式(1)を満たす。
Y≦−7.62X+635 ・・・ (1)
比(Lg/Ls)が0.52以上であり且つ関係式(1)を満たすゴルフクラブ2では、高い飛距離性能が得られうる。この関係式(1)の根拠は、後述される実施例1、3、5、7、9及び11である。
好ましくは、ゴルフクラブ2は、次の関係式(2)を満たす。
Y≧−7.62X+619 ・・・ (2)
この関係式(2)の根拠は、後述される実施例2、4、6、8、10及び12である。
更に好ましくは、ゴルフクラブ2は、次の関係式(3)を満たす。
Y≦−7.60X+626 ・・・ (3)
この関係式(3)の根拠は、後述される実施例13、14及び15である。
[第二実施形態]
図5は、第二実施形態に係るシャフト10を構成するプリプレグシートの展開図である。シャフト10は、複数枚のシートにより構成されている。この実施形態では、シャフト10は、b1からb13までの13枚のシートにより構成されている。
シャフト10は、ストレート層とバイアス層と、フープ層とを有する。図5の実施形態において、ストレートシートは、シートb1、シートb5、シートb6、シートb7、シートb8、シートb9、シートb11、シートb12及びシートb13である。シャフト10において、バイアス層を構成するシートは、シートb2及びシートb3である。シャフト10において、フープ層を構成するシートは、シートb4及びシートb10である。
図5の実施形態では、合体シートが用いられる。図5の実施形態では、二つの合体シートが形成される。図示しないが、第一の合体シートb234は、シートb2、シートb3及びシートb4を貼り合わせることによって形成される。この合体シートb234の製造方法及び構成は、前述した合体シートa234と同様である。図示しないが、第二の合体シートb1011は、シートb10とシートb11とを貼り合わせることによって形成される。
図5の実施形態において、バットストレート層は、シートb6及びシートb7である。図5の実施形態において、バットフープ層は、シートb4である。
このシャフト10の製造方法は、シャフト6と同じである。このシャフト10でも、シャフト重心率が大きくされている。シャフト10では、軽量でありながらシャフト重心率が大きくされうる。
[シャフト重心G]
図1において符号Gで示されるのは、シャフト6の重心である。この重心Gは、シャフト内部に位置する。この重心Gは、シャフト軸線上に位置する。
[シャフト全長Ls]
図1において両矢印Lsで示されているのは、シャフト全長である。本発明は、比較的長いゴルフクラブにおいて効果的である。この観点から、シャフト全長Lsは、42インチ以上が好ましく、43インチ以上がより好ましく、44インチ以上がより好ましく、44.5インチ以上がより好ましく、45インチ以上が特に好ましい。振りやすさ及びゴルフルールの観点から、シャフト全長Lsは47インチ以下が好ましい。
[チップ端Tpからシャフト重心Gまでの距離Lg]
図1において両矢印Lgで示されているのは、チップ端Tpからシャフト重心Gまでの軸方向距離である。距離Lgが長い場合、シャフト重心Gがバット端Btに近くなる。この重心位置は、スイングバランスを軽くし、振りやすさを向上させうる。この重心位置は、ヘッドスピードの向上に寄与しうる。
振りやすさ及びヘッドスピードの観点から、上記距離Lgは、615mm以上が好ましく、620mm以上がより好ましく、625mm以上がより好ましく、630mm以上が更に好ましい。
シャフト重心Gがバット端Btに近すぎる場合、シャフト重心Gに作用する遠心力が低下しやすい。即ち、シャフト重心率が大きい場合、シャフト重心Gに作用する遠心力が低下しやすい。この場合、シャフトのしなりが感じられにくいことがある。しなりが感じられにくいシャフトでは、硬いフィーリングが生じやすい。硬いフィーリングを抑制する観点から、上記距離Lgは、660mm以下が好ましく、655mm以下がより好ましく、650mm以下が更に好ましい。
硬いフィーリングに起因して、ゴルファーは、振りにくさを感じる。振りやすさの観点から、硬いフィーリングが抑制されるのが好ましい。
[Lg/Ls](シャフト重心率)
振りやすさ及びヘッドスピードの観点から、比(Lg/Ls)は、0.52以上が好ましく、0.53以上がより好ましく、0.54以上がより好ましい。比(Lg/Ls)が過度に大きい場合、先端部のシャフト強度が低下する場合がある。シャフト強度の観点から、比(Lg/Ls)は、0.65以下が好ましく、0.64以下がより好ましい。
シャフト重心率を調整する手段として、次の(a1)から(a8)が挙げられる。
(a1)バット部分層の巻回数の増減。
(a2)バット部分層の厚みの増減。
(a3)バット部分層の長さL1(後述)の増減。
(a4)バット部分層の長さL2(後述)の増減。
(a5)チップ部分層の巻回数の増減。
(a6)チップ部分層の厚みの増減。
(a7)チップ部分層の軸方向長さの増減。
(a8)シャフトのテーパー率の増減。
[シャフト重量Ws]
前述した通り、シャフト重量Wsが小さい場合、シャフト重心Gがチップ端Tpに近くなる傾向にある。この場合、軽量化はヘッドスピードの向上に寄与するが、シャフト重心Gがチップ端Tpに近くなることは、ヘッドスピード低下の要因となりうる。ヘッドスピードを向上させる効果が減退しうる。これに対して上記実施形態では、軽いシャフト重量Wsと大きなシャフト重心率との相乗効果により、ヘッドスピードが更に向上しうる。この観点から、シャフト重量Wsは、60g以下が好ましく、52g以下がより好ましく、51g以下がより好ましく、50g以下がより好ましく、50g未満がより好ましく、49g以下がより好ましく、48g以下が更に好ましい。シャフト強度の観点から、シャフト重量Wsは、30g以上が好ましく、36g以上がより好ましく、38g以上がより好ましく、40g以上が更に好ましい。
[バット部分層の重量比率]
シャフト重心率を大きくする観点から、バット部分層の重量は、シャフト重量Wsに対して、5重量%以上が好ましく、10重量%以上がより好ましい。硬いフィーリングを抑制する観点から、バット部分層の重量は、シャフト重量Wsに対して、50重量%以下が好ましく、45重量%以下がより好ましい。図2の実施形態では、シートa5及びシートa6の合計重量が、バット部分層の重量である。
[特定バット範囲におけるバット部分層の重量比率]
図1においてP2で示されるのは、バット端Btから250mm隔てた地点である。上記地点P2からバット端Btまでの範囲が、特定バット範囲と定義される。この特定バット範囲に存在するバット部分層の重量がWaとされ、上記特定バット範囲におけるシャフトの重量がWbとされる。シャフト重心率を大きくする観点から、比(Wa/Wb)は、0.4以上が好ましく、0.42以上がより好ましく、0.44以上が更に好ましい。硬いフィーリングを抑制する観点から、比(Wa/Wb)は、0.7以下が好ましく、0.65以下がより好ましく、0.6以下が更に好ましい。
[バット部分層の繊維弾性率]
バット部の強度の観点から、バット部分層の繊維弾性率は、5t/mm以上が好ましく、7t/mm以上がより好ましい。シャフト重心Gがバット端Btに近い場合、シャフト重心Gに作用する遠心力が低下しやすい。即ち、シャフト重心率が大きい場合、シャフト重心Gに作用する遠心力が低下しやすい。この場合、シャフトのしなりが感じられにくいことがある。よって、硬いフィーリングが生じやすい。この硬いフィーリングを抑制する観点から、バット部分層の繊維弾性率は、20t/mm以下が好ましく、15t/mm以下がより好ましく、10t/mm以下が更に好ましい。
[バット部分層の樹脂含有率]
シャフト重心率を大きくし、且つ、硬いフィーリングを抑制する観点から、バット部分層の樹脂含有率は、20重量%以上が好ましく、25重量%以上がより好ましい。バット部の強度の観点から、バット部分層の樹脂含有率は、50重量%以下が好ましく、45重量%以下がより好ましい。
[バットストレート層の重量]
シャフト重心率を大きくする観点から、バットストレート層の重量は、2g以上が好ましく、4g以上がより好ましく、8g以上が更に好ましい。硬いフィーリングを抑制する観点から、バットストレート層の重量は、30g以下が好ましく、20g以下がより好ましく、10g以下が更に好ましい。
[バットストレート層の重量比率]
シャフト重心率を大きくする観点から、バットストレート層の重量は、シャフト重量Wsに対して、5重量%以上が好ましく、10重量%以上がより好ましい。硬いフィーリングを抑制する観点から、バットストレート層の重量は、シャフト重量Wsに対して、50重量%以下が好ましく、45重量%以下がより好ましい。図2の実施形態では、シートa5及びシートa6の合計重量が、バットストレート層の重量である。
[バットストレート層の繊維弾性率]
バット部の強度の観点から、バットストレート層の繊維弾性率は、5t/mm以上が好ましく、7t/mm以上がより好ましい。硬いフィーリングを抑制する観点から、バットストレート層の繊維弾性率は、20t/mm以下が好ましく、15t/mm以下がより好ましく、10t/mm以下が更に好ましい。
[バットストレート層の樹脂含有率]
シャフト重心率を大きくし、且つ、硬いフィーリングを抑制する観点から、バットストレート層の樹脂含有率は、20重量%以上が好ましく、25重量%以上がより好ましい。バット部の強度の観点から、バットストレート層の樹脂含有率は、50重量%以下が好ましく、45重量%以下がより好ましい。
[バット部分層の軸方向最大長さL1]
図2において両矢印L1で示されているのは、バット部分層の軸方向最大長さである。長さL1は、バット部分シートのそれぞれにおいて定まる。なお、図2の実施形態では、シートa5の長さL1と、シートa6の長さL1とが同じである。
バット部分層の重量を確保する観点から、長さL1は、100mm以上が好ましく、125mm以上がより好ましく、150mm以上が更に好ましい。シャフト重心率を大きくする観点から、長さL1は、700mm以下が好ましく、650mm以下がより好ましく、600mm以下が更に好ましい。
[バット部分層の軸方向最小長さL2]
図2において両矢印L2で示されているのは、バット部分層の軸方向最小長さである。長さL2は、バット部分シートのそれぞれにおいて定まる。なお、図2の実施形態では、シートa5の長さL2と、シートa6の長さL2とが同じである。
バット部分層の重量を確保する観点から、長さL2は、50mm以上が好ましく、75mm以上がより好ましく、100mm以上が更に好ましい。シャフト重心率を大きくする観点から、長さL2は、650mm以下が好ましく、600mm以下がより好ましく、550mm以下が更に好ましい。
[バイアスシート]
バット部分層が配置されている場合、グリップ近傍の剛性が高くなる。この高い剛性により、ゴルファーに、シャフトが硬いというフィーリングを与える。硬いフィーリングは、特にアベレージゴルファーにとって好ましくない。この硬いフィーリングを与えるクラブは、多くのゴルファーにとって、振りにくい。この硬いフィーリングを抑制する観点から、バット部の捻れ剛性が抑制されるのが好ましい。この観点から、全長バイアス層の巻回数(PLY数)は、バット端Btに近づくにつれて徐々に又は段階的に少なくされるのが好ましい。図2の実施形態では、シートa2及びシートa3は、長方形である。よって、テーパー形状のシャフトにおいて、全長バイアス層の巻回数は、バット端Btに近づくにつれて徐々に又は段階的に少なくされている。
[シャフト外径]
バット部分層を用いた場合、上記特定バット範囲におけるシャフト外径が大きくなる。シャフト外径が大きい場合、断面二次モーメントが大きくなり、シャフトの曲げ剛性が過大となりやすい。硬いフィーリングを抑制する観点から、上記特定バット範囲におけるシャフト外径は、17mm以下が好ましく、16.5mm以下がより好ましく、16mm以下が更に好ましい。バット部における適度な剛性を確保する観点から、上記特定バット範囲におけるシャフト外径は、11mm以上が好ましく、12mm以上がより好ましく、13mm以上が更に好ましい。
[シャフト肉厚]
バット部分層を用いた場合、上記特定バット範囲におけるシャフト肉厚が大きくなる。シャフト肉厚が大きい場合、断面二次モーメントが大きくなり、シャフトの曲げ剛性が過大となりやすい。硬いフィーリングを抑制する観点から、上記特定バット範囲におけるシャフト肉厚は、1.3mm以下が好ましく、1.2mm以下がより好ましく、1.1mm以下が更に好ましい。バット部における適度な剛性を確保する観点から、上記特定バット範囲におけるシャフト肉厚は、0.4mm以上が好ましく、0.5mm以上がより好ましく、0.6mm以上が更に好ましい。シャフト肉厚は、外径と内径との差を2で割ることによって算出されうる。
[順式フレックスF1]
過度にしなるシャフトの場合、打球がばらつくことがある。この観点から、順式フレックスF1は、155mm以下が好ましく、150mm以下がより好ましい。アベレージゴルファーへの適合性を考慮すると、順式フレックスF1は、125mm以上が好ましく、130mm以上がより好ましい。
図6(a)は、順式フレックスF1の測定方法を示す。図6(a)が示すように、バット端Btから75mmの位置に、第一支持点32が設定される。更に、バット端Btから215mmの位置に、第二支持点36が設定される。第一支持点32には、シャフト20をを上方から支持する支持体34が設けられる。第二支持点36には、シャフト20を下方から支持する支持体38が設けられる。荷重のない状態において、シャフト20のシャフト軸線は略水平とされる。バット端Btから1039mmである荷重点m1に、2.7kgの荷重を鉛直下向きに作用させる。荷重のない状態から、荷重をかけた状態までの荷重点m1の移動距離(mm)が、順式フレックスF1である。この移動距離は、鉛直方向に沿った移動距離である。
なお、支持体34の、シャフトと当接する部分(以下、当接部分という)の断面形状は、次の通りである。シャフト軸方向に対して平行な断面において、支持体34の当接部分の断面形状は、凸状の丸みを有する。この丸みの曲率半径は、15mmである。シャフト軸方向に対して垂直な断面において、支持体34の当接部分の断面形状は、凹状の丸みを有する。この凹状の丸みの曲率半径は、40mmである。シャフト軸方向に対して垂直な断面において、支持体34の当接部分の水平方向長さ(図6における奥行き方向長さ)は、15mmである。支持体38の当接部分の断面形状は、支持体34のそれと同一である。荷重点m1において2.7kgの荷重を与える荷重圧子(図示省略)の当接部分の断面形状は、シャフト軸方向に対して平行な断面において、凸状の丸みを有する。この丸みの曲率半径は、10mmである。荷重点m1において2.7kgの荷重を与える荷重圧子(図示省略)の当接部分の断面形状は、シャフト軸方向に対して垂直な断面において、直線である。この直線の長さは、18mmである。
[逆式フレックスF2]
過度にしなるシャフトの場合、打球がばらつくことがある。この観点から、逆式フレックスF2は、145mm以下が好ましく、140mm以下がより好ましい。アベレージゴルファーへの適合性を考慮すると、逆式フレックスF2は、118mm以上が好ましく、120mm以上がより好ましい。
[逆式フレックスF2]
逆式フレックスの測定方法が、図6(b)で示される。第一支持点32がチップ端Tpから12mm隔てた点とされ、第二支持点36がチップ端Tpから152mm隔てた点とされ、荷重点m2がチップ端Tpから932mm隔てた点とされ、荷重が1.3kgとされた他は順式フレックスF1と同様にして、逆式フレックスF2が測定される。
[シャフトの調子率C1]
本願において、シャフトの調子率C1(%)は、次の式によって定義される。
C1=[F2/(F1+F2)]×100
ただし、F1は順式フレックス(mm)であり、F2は逆式フレックス(mm)である。
シャフト重心Gがバット端Btに近い場合、シャフト重心Gに作用する遠心力が低下しやすい。即ち、シャフト重心率が大きい場合、シャフト重心Gに作用する遠心力が低下しやすい。この場合、シャフトのしなりが感じられにくいことがある。しなりが感じられにくいシャフトでは、硬いフィーリングが生じやすい。グリップに近い部分がしなりやすくすることで、硬いフィーリングが緩和されうる。この観点から、シャフトの調子率C1は、50%以下が好ましく、49%以下がより好ましく、48%以下が更に好ましい。シャフトの調子率C1が過度に小さい場合、バット部分の撓みが過大となり、強度が低下することがある。この観点から、シャフトの調子率C1は38%以上が好ましく、40%以上がより好ましい。
[三点曲げ強度]
本願における三点曲げ強度は、SG式三点曲げ強度試験に準拠している。これは、製品安全協会が定める試験である。このSG式三点曲げ強度試験の測定方法は、後述される。測定点は、T点、A点、B点及びC点である。T点は、チップ端Tpから90mmの地点である。A点は、チップ端Tpから175mmの地点である。B点は、チップ端Tpから525mmの地点である。C点は、バット端Btから175mmの地点である。
図7は、三点曲げ強度の測定方法を示す。図7が示すように、2つの支持点e1、e2においてシャフト20を下方から支持しつつ、荷重点e3において上方から下方に向かって荷重Fを加える。荷重点e3の位置は、支持点e1と支持点e2とを二等分する位置である。荷重点e3が、測定点である。T点が測定される場合、上記スパンSは、150mmとされる。A点、B点及びC点が測定される場合、上記スパンSは、300mmとされる。シャフト20が破損したときの荷重Fの値(ピーク値)が測定される。
耐久性の観点から、T点の三点曲げ強度は、150kgf以上が好ましく、180kgf以上がより好ましい。シャフト重心率を大きくするためには、シャフト先端部の重量を抑制するのが好ましい。この観点から、T点の三点曲げ強度は、350kgf以下が好ましく、300kgf以下がより好ましい。
耐久性の観点から、A点の三点曲げ強度は、40kgf以上が好ましく、50kgf以上がより好ましい。シャフト重心率を大きくするためには、シャフト先端部の重量を抑制するのが好ましい。この観点から、A点の三点曲げ強度は、150kgf以下が好ましく、130kgf以下がより好ましい。
耐久性の観点から、B点の三点曲げ強度は、40kgf以上が好ましく、50kgf以上がより好ましい。シャフト軽量化の観点から、B点の三点曲げ強度は、150kgf以下が好ましく、130kgf以下がより好ましい。
耐久性の観点から、C点の三点曲げ強度は、50kgf以上が好ましく、55kgf以上がより好ましい。シャフト軽量化の観点から、C点の三点曲げ強度は、200kgf以下が好ましく、180kgf以下がより好ましい。
[クラブ長さX]
ヘッドスピードを高める観点からは、クラブ長さXは長いのが好ましい。一方、ミート率の観点からは、クラブ長さXは短いのが好ましい。ミート率とは、ヘッドのスイートエリアにボールが当たる確率である。ドライバー(1番ウッド)の場合、クラブ長さXは46インチ以上であってもよい。ミート率の観点からは、クラブ長さXは、46インチ未満が好ましく、45.75インチ以下がより好ましく、45.5インチ以下が更に好ましい。上記シャフトは、シャフト重心率が大きいため、クラブ長さが短くても、速いヘッドスピードを達成しうる。シャフトのしなりによりヘッドスピードを向上させる観点から、クラブ長さXは、44インチ以上が好ましく、44.5インチ以上がより好ましく、45インチ以上がより好ましく、45.25インチ以上がより好ましい。なおクラブ長さXには、±0.1インチの誤差が認められる。
本願におけるクラブ長さXは、R&A(Royal and Ancient Golf Club of Saint Andrews;全英ゴルフ協会)が定めるゴルフ規則「付属規則II クラブのデザイン」の「1 クラブ」における「1c 長さ」の記載に基づいて測定される。
なお、ドライバーヘッドのロフトは、通常、8°以上13°以下である。ヘッドの慣性モーメントの観点から、ドライバーヘッドの体積は、400cc以上が好ましく、420cc以上がより好ましい。ゴルフルールの観点から、ドライバーヘッドの体積は、470cc以下が好ましい。本発明は、特にドライバー(1番ウッド)において効果的である。
[クラブ重量Y]
振りやすさの観点から、クラブ重量Yは、300g以下が好ましく、290g以下がより好ましく、285g以下が更に好ましい。シャフト及びヘッドの強度の観点から、クラブ重量は、250g以上が好ましく、260g以上がより好ましく、270g以上が更に好ましい。
[グリップエンド回りのクラブ慣性モーメントMI(クラブ慣性モーメント)]
グリップエンド(クラブの後端)を通り且つシャフト軸方向に対して垂直な回転軸を考える。この回転軸回りのクラブの慣性モーメントMI(g・cm)は、次式によって計算されうる。
MI=(T・M・g・H)/4π
ただし、Tは、グリップエンドを中心とした振り子運動の周期(秒)であり、Mはクラブ重量(g)であり、Hはグリップエンドからクラブ重心までの距離(cm)であり、gは重力加速度である。
過度な軽量化は、強度を低下させる。また、ヘッドの過度な軽量化は、反発係数を低下させる。この観点から、上記MIは、240×10(g・cm)以上が好ましく、250×10(g・cm)以上がより好ましい。振りやすさ及びヘッドスピードの観点から、上記MIは、320×10(g・cm)以下が好ましく、310×10(g・cm)以下がより好ましい。
[スイングバランス(14インチ方式)]
ヘッドの過度な軽量化は、反発係数を低下させる。この観点から、上記スイングバランスは、C9以上が好ましくD0以上がより好ましい。振りやすさ及びヘッドスピードの観点から、上記スイングバランスは、D5以下が好ましく、D4以下がより好ましい。
プリプレグシートのマトリクス樹脂としては、エポキシ樹脂の他、エポキシ樹脂以外の熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂等も用いられ得る。シャフト強度の観点から、マトリクス樹脂は、エポキシ樹脂が好ましい。
下記の表1は、本発明のシャフトに使用可能なプリプレグの例を示す。
Figure 0005848521
以下、実施例によって本発明の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきではない。
[テスト1]
実施例1から15及び比較例1から8のゴルフクラブが作製され、これらが評価された。全てのゴルフクラブには同じ形状のヘッドが用いられた。このヘッドの体積は460ccであり、材質はチタン合金であった。所望のスペックが得られるように、クラブ長さ、ヘッド重量及びグリップ重量は調整された。例えば実施例14のグリップ重量は38gであった。
実施例1から15に係るシャフトは、図2又は図5の展開図に基づき作製された。製造方法については、前述のシャフト6と同様とされた。また、各シートにおいて、巻回数、プリプレグの厚み、プリプレグの繊維含有率、炭素繊維の引張弾性率等が適宜選択された。例えば実施例14は、図2の展開図に基づき、以下の材料を用いて作製された。
・シートa1 :TR350C−125S
・シートa2 :HRX350C−075S
・シートa3 :HRX350C−075S
・シートa4 :805S−3
・シートa5 :E1026A−09N
・シートa6 :E1026A−09N
・シートa7 :TR350C−100S
・シートa8 :TR350C−100S
・シートa9 :805S−3
・シートa10 :MR350C−100S
・シートa11 :TR350C−100S
・シートa12 :TR350C−100S
比較例に係るシャフトの展開図の一例が図8に示される。比較例1から8に係るシャフトは、図8の展開図に基づき作製された。製造方法については、前述のシャフト6と同様とされた。また、各シートにおいて、巻回数、プリプレグの厚み、プリプレグの繊維含有率、炭素繊維の引張弾性率等が適宜選択された。例えば比較例2は、図8の展開図に基づき、以下の材料を用いて作製された。
・シートc1 :TR350C−125S
・シートc2 :HRX350C−075S
・シートc3 :HRX350C−075S
・シートc4 :805S−3
・シートc5 :TR350C−100S
・シートc6 :805S−3
・シートc7 :MR350C−100S
・シートc8 :TR350C−100S
・シートc9 :TR350C−100S
実施例1から15の仕様及び評価結果が下記の表2に示される。比較例1から8の仕様及び評価結果が下記の表3に示される。
Figure 0005848521
Figure 0005848521
[テスト2]
実施例2−1から2−21及び比較例2−1から2−3のゴルフクラブが作製され、これらが評価された。全てのゴルフクラブには同じ形状のヘッドが用いられた。このヘッドの体積は460ccであり、材質はチタン合金であった。全てのクラブで、クラブ長さは45.5インチとされた。所望のスペックが得られるように、ヘッド重量及びグリップ重量は調整された。
実施例2−1から2−21に係るシャフトは、図2又は図5の展開図に基づき作製された。製造方法については、前述のシャフト6と同様とされた。また、各シートにおいて、巻回数、プリプレグの厚み、プリプレグの繊維含有率、炭素繊維の引張弾性率等が適宜選択された。シャフト重心率の調整には、前述した(a1)から(a8)から選ばれる1又は2以上の手段が用いられた。
比較例2−1から2−3に係るシャフトは、図8の展開図に基づき作製された。製造方法については、前述のシャフト6と同様とされた。また、各シートにおいて、巻回数、プリプレグの厚み、プリプレグの繊維含有率、炭素繊維の引張弾性率等が適宜選択された。
実施例2−1から2−10の仕様及び評価結果が下記の表4に示される。実施例2−10から2−21の仕様及び評価結果が下記の表5に示される。比較例2−1から2−3の仕様及び評価結果が下記の表6に示される。
Figure 0005848521
Figure 0005848521
Figure 0005848521
[評価方法]
[順式フレックスF1、逆式フレックスF2、シャフトの調子率C1]
前述した方法により、順式フレックスF1及び逆式フレックスF2が測定された。前述した計算式により、シャフトの調子率C1が算出された。順式フレックスF1及びシャフトの調子率C1が、表に示されている。
[振りやすさ]
10名のゴルファーが振りやすさを5段階で評価した。この評価は官能評価である。最も高い評価が5点とされ、最も低い評価が1点とされた。10名のゴルファーの平均点(小数点以下は四捨五入)が表に示されている。
[B/S]
B/Sは、ボールの初速である。上記10名のゴルファーが5球ずつ打球して、50のデータが得られた。これらのデータの平均値が、表に示されている。
[トータル飛距離]
トータル飛距離は、ランを含めた飛距離である。上記10名のゴルファーが5球ずつ打球して、50のデータが得られた。これらのデータの平均値が、表に示されている。
[左右ズレ量]
左右ズレ量は、目標方向からのズレである。打球地点と目標地点とを結ぶ直線と打球到達点との距離が、ズレ量である。右のずれても左にずれてもズレ量はプラスの値である。上記10名のゴルファーが5球ずつ打球して、50のデータが得られた。これらのデータの平均値が、表に示されている。左右ズレ量が少ないほど、方向安定性が高い。
図9は、テスト1の実施例及び比較例がプロットされたグラフである。横軸がクラブ長さX(インチ)であり、縦軸がクラブ重量Y(g)である。
図10は、テスト1の実施例1、3、5、7、9及び11がプロットされたグラフである。図10が示すように、これらの実施例は、ほぼ直線上に位置している。これらの実施例に基づき、一次の近似線が算出された。この算出では、エクセル(マイクロソフト社)の機能が用いられた。この近似は、最小二乗法である。この近似線の式が図10に示されている。この式が、上記関係式(1)の根拠である。テスト1では、この直線上又はこの直線よりも下側にある場合に、良好な結果が得られることが分かった。
図11は、テスト1の実施例2、4、6、8、10及び12がプロットされたグラフである。図11が示すように、これらの実施例は、ほぼ直線上に位置している。これらの実施例に基づき、一次の近似線が算出された。この算出では、エクセル(マイクロソフト社)の機能が用いられた。この近似は、最小二乗法である。この近似線の式が図11に示されている。この直線の式が、上記式(2)の根拠である。テスト1では、この式(2)の直線上又はこの直線よりも上側にある場合に、比較的良好な結果が得られることが分かった。
図12は、テスト1の実施例13、14及び15がプロットされたグラフである。図12が示すように、これらの実施例は、ほぼ直線上に位置している。これらの実施例に基づき、一次の近似線が算出された。この算出では、エクセル(マイクロソフト社)の機能が用いられた。この近似は、最小二乗法である。この近似線の式が図12に示されている。この式が、上記関係式(3)の根拠である。テスト1では、この直線上又はこの直線よりも下側にある場合に、更に良好な結果が得られることが分かった。
図13は、テスト2の実施例及び比較例がプロットされたグラフである。このグラフ及びテスト2の結果に基づき、シャフト重量Ws及びシャフト重心率の好ましい範囲が明らかとなった。
これらのグラフ及び表が示すように、本発明の優位性は明らかである。
本発明は、あらゆるゴルフクラブに適用されうる。
2・・・ゴルフクラブ
4・・・ヘッド
6・・・シャフト
8・・・グリップ
a1〜a12・・・シート(層)
a234・・・合体シート
a910・・・合体シート
b1〜b13・・・シート(層)
20・・・シャフト
Tp・・・シャフトのチップ端
Bt・・・シャフトのバット端

Claims (3)

  1. シャフト及びヘッドを備えており、
    シャフト全長がLsとされ、シャフトのチップ端からシャフト重心Gまでの距離がLgとされるとき、比(Lg/Ls)が0.52以上0.65以下であり、
    クラブ長さがX(インチ)とされ、クラブ重量がY(g)とされるとき、次の関係式(1)を満たしており、
    Y≦−7.62X+635 ・・・ (1)
    上記シャフトがバット部分層を有しており、
    上記シャフトのバット端から250mm隔てた地点がP2とされ、このP2から上記バット端までの範囲が特定バット範囲とされ、この特定バット範囲に存在する上記バット部分層の重量がWaとされ、上記特定バット範囲における上記シャフトの重量がWbとされるとき、比(Wa/Wb)が0.4以上0.7以下であるゴルフクラブ。
  2. シャフト及びヘッドを備えており、
    シャフト全長がLsとされ、シャフトのチップ端からシャフト重心Gまでの距離がLgとされるとき、比(Lg/Ls)が0.52以上0.65以下であり、
    クラブ長さがX(インチ)とされ、クラブ重量がY(g)とされるとき、次の関係式(1)を満たしており、
    Y≦−7.62X+635 ・・・ (1)
    上記シャフトがバット部分層を有しており、
    上記バット部分層のチップ側の辺において最もバット側に位置する点A1が、シャフト軸方向中央位置S1よりもバット側に位置しており、
    上記バット部分層の軸方向最大長さL1が、100mm以上700mm以下であり、
    このバット部分層の重量が、シャフト重量Wsに対して、5重量%以上50重量%以下であるゴルフクラブ。
  3. 上記距離Lgが、615mm以上660mm以下であり、
    シャフト重量Wsが52g以下であり、
    上記クラブ長さXが46インチ以下である請求項1又は2に記載のゴルフクラブ。
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