JP5852837B2 - ゴルフクラブ - Google Patents

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Description

本発明はゴルフクラブに関する。
ゴルファーにとってボールの飛距離は、ゴルフクラブを選定する際の重要なファクターの1つである。そこで、ボールの飛距離を延ばすために、従来、ゴルフクラブを構成する要素の材質や形状などに対して種々の工夫がなされてきた。
例えば、ヘッド重量は、重い方が打球時においてボールに与える運動エネルギーが大きくなるため、ボールスピードを速くすることができ、その結果、大きな飛距離を得ることができる。そこで、ゴルフクラブの総重量に占めるヘッド重量の割合を大きくして当該ヘッド重量を重くする手法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特開2004−201911号公報
ヘッド重量を重くすることでボールに与える運動エネルギーを大きくすることが可能となるが、一方において、単にヘッド重量だけを重くすると、クラブ重量が重くなってしまい、非力なゴルファーでは力負けし易くなり、ヘッドスピードをあげることができず、その結果、ボールスピードを速くすることができない。
そこで、クラブ重量の増加を抑制するために、ヘッド以外のシャフトやグリップの重量を軽くすることが考えられるが、この場合、クラブの重心が当該クラブのヘッド側に寄ってしまうため、グリップ端における慣性モーメントが大きくなってしまう。したがって、この場合も、非力なゴルファーでは力負けし易くなり、ヘッドスピードをあげることができず、その結果、ボールスピードを速くすることができない。
また、グリップの重量を軽くしすぎると、当該グリップの肉厚を十分に確保することが難しくなり、グリップの強度を確保することができない。
一方、クラブのグリップ端における慣性モーメントを小さくすることだけを考慮すれば、グリップの重量を重くしてクラブの重心をグリップ側に寄せることも考えられるが、この場合、クラブ重量を増加させることになり、やはり非力なゴルファーでは力負けし易くなり、ヘッドスピードをあげることができず、その結果、ボールスピードを速くすることができない。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、ボールスピードを速くするためにヘッド重量を大きくしつつ、ヘッドスピードを上げることができ、もってボールの飛距離を延ばすことができるゴルフクラブを提供することを目的としている。
(1)本発明のゴルフクラブは、シャフトの先端にヘッドが設けられ、当該シャフトの後端にグリップが設けられてなるゴルフクラブであって、
クラブ重量が290g以下であり、
ヘッド重量とクラブ重量との比(ヘッド重量/クラブ重量)が0.67以上0.72以下であり、
グリップ重量が27g以上45g以下であり、
前記シャフトの先端からシャフト重心までの距離をLとし、シャフトの全長をLとしたときに、0.54≦L/L≦0.65であり、且つ
シャフトのバット端から250mm離間した地点から当該バット端までの範囲に存在するバット部分層の重量をWaとし、当該範囲におけるシャフトの重量をWbとしたときにWa/Wbが0.4以上0.7以下であることを特徴
としている。
本発明のゴルフクラブでは、クラブ重量を一定の値(290g)以下に抑えてクラブ重量を軽くしつつ、クラブ重量に対するヘッド重量の割合を大きくしている。クラブ重量が290g以下と軽いため、非力なゴルファーであっても力負けすることがなく、スイングがし易くなっている。その結果、ヘッドスピードを増大させ、ボールスピードを速くすることができる。また、クラブ重量に対するヘッド重量の割合を大きくしているので、ヘッドの運動エネルギーを大きくすることができる。これにより、打球時においてボールに与える運動エネルギーが大きくなり、ボールスピードを速くすることができる。
また、本発明のゴルフクラブでは、L/Lが0.54〜0.65にされており、シャフトの重心が手元側に位置している。このため、ボールスピードを速くするためにヘッドの重量を大きくしても、クラブ全体の重心がヘッド側に移動するのを抑制するか、又は手元側に移動させることができる。これにより、グリップ端におけるクラブの慣性モーメントが増大するのを抑制するか、又は低減させることができ、スイングがし易くなっている。その結果、ヘッドスピードを増大させ、ボールスピードを速くすることができ、もってボールの飛距離を延ばすことができる。
また、グリップ重量を45g以下としているので、グリップ重量によってクラブ重量が重くなるのを抑制することができ、スイングがし易くなっている。一方、グリップ重量を27g以上としているので、グリップの肉厚を十分に確保することができ、当該グリップの耐久性やクッション性を確保することができる。
また、前記Wa/Wbを0.4以上0.7以下にすることで、硬いフィーリングを抑制しつつ、シャフトの重心位置をグリップ側に配置することができる。

(2)前記(1)のゴルフクラブにおいて、シャフト重量が30g以上58g以下であってもよい。
(3)前記(1)又は(2)のゴルフクラブにおいて、クラブ重量が265g以上290g以下であってもよい。
(4)前記(1)〜(3)のゴルフクラブにおいて、シャフトの全長Lが105cm以上120cm以下であってもよい。
本発明のゴルフクラブによれば、ボールスピードを速くするためにヘッド重量を大きくしつつ、ヘッドスピードを上げることができ、もってボールの飛距離を延ばすことができる。
本発明のゴルフクラブの一実施の形態の説明図である。 図1に示されるゴルフクラブにおけるシャフトを構成するプリプレグシートの展開図である。 図2に示されるシャフトにおける第1の合体シートの平面図である。 図2に示されるシャフトにおける第2の合体シートの平面図である。 グリップ端での慣性モーメントの測定方法を説明する図である。 本発明におけるシャフトの変形例を構成するプリプレグシートの展開図である。 図6に示されるシャフトにおける第1の合体シートの平面図である。 図6に示されるシャフトにおける第2の合体シートの平面図である。
以下、添付図面を参照しつつ、本発明のゴルフクラブの実施の形態を詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施の形態に係るゴルフクラブ1の全体を示す説明図である。本実施の形態におけるゴルフクラブ1は、所定のロフト角を有するウッド型ゴルフクラブヘッド2と、シャフト3と、グリップ4とを有している。ヘッド2は、シャフト3の先端側のチップ端3aを挿入して固着するためのシャフト穴5を備えたホーゼル6を有している。シャフト3の後端側のバット端3bは、グリップ4のグリップ穴7内に挿入されて固着される。チップ端3aはヘッド2の内部に位置しており、バット端3bはグリップ4の内部に位置している。なお、図1において、符号Gで示されるのは、シャフト3の重心である。この重心Gは、シャフト3の内部であって、シャフト軸線上に位置している。
本発明において、ゴルフクラブ1の重量は290g以下の範囲内に設定されている。ゴルフクラブ1の重量が軽すぎると、当該ゴルフクラブ1を構成する各要素(パーツ)の強度が低くなり、耐久性が低下する惧れがある。したがって、ゴルフクラブ1の重量は、265g以上であることが好ましく、さらには270g以上であることが好ましい。一方、ゴルフクラブ1の重量が重すぎると、振りにくくなり、ヘッドスピードを上げることが難しくなる。したがって、ゴルフクラブ1の重量は、287g以下であることが好ましく、さらには284g以下であることが好ましい。
また、ゴルフクラブ1の長さ自体は、本発明において特に限定されるものではないが、通常、42.0〜46.5インチである。ゴルフクラブ1の長さが短すぎると、スイングの回転半径が小さくなり、十分なヘッドスピードを得ることが難しくなる。このため、ボールスピードを速くすることができず、ボールの飛距離を延ばすことができない。したがって、ゴルフクラブ1の長さは、42.5インチ以上であることが好ましく、さらには43.0インチ以上であることが好ましい。一方、ゴルフクラブ1の長さが長すぎると、グリップ端における慣性モーメントが大きくなり、非力なゴルファーでは力負けし易くなる。このため、ボールスピードを速くすることができず、ボールの飛距離を延ばすことができない。したがって、ゴルフクラブ1の長さは、46.3インチ以下であることが好ましく、さらには46.0インチ以下であることが好ましい。
なお、本明細書において「クラブ長さ」とは、R&G(Royal and Ancient Golf Club of Saint Andrews:全英ゴルフ協会)が定めるゴルフ規則「付属規則II クラブのデザイン」の「1 クラブ」における「1c 長さ」の記載に基づいて測定される長さである。
〔ヘッドの構成〕
本実施の形態におけるヘッド2は、中空のヘッドであり、慣性モーメントが大きい。ヘッド2の慣性モーメントが大きいクラブでは、飛距離向上の効果が安定的に得られるので、ヘッド2としては中空であることが好ましい。
ヘッド2の材質は、本発明において特に限定されるものではなく、例えばチタン、チタン合金、CFRP(炭素繊維強化プラスチック)、ステンレス鋼、マルエージング鋼、軟鉄などを用いることができる。また、単一の材質を用いて作製するだけでなく、複数の材質を適宜組み合わせてヘッド2を作製してもよい。例えば、CFRPとチタン合金とを組み合わせることができる。ヘッド2の重心を下げる観点から、クラウンの少なくとも一部がCFRP製であり、ソールの少なくとも一部がチタン合金製であるヘッドを採用することができる。また、強度の観点からは、フェース全体がチタン合金製であることが好ましい。
本発明では、ヘッド2単体の重量は特に限定されないが、185〜210gの範囲内であることが好ましい。ヘッド2が軽すぎると、当該ヘッド2の運動エネルギーをボールに十分に与えることができず、ボールスピードを増大させることが難しくなる。したがって、188g以上であることがさらに好ましく、特に192g以上であることが好ましい。一方、ヘッド2の重量が重くなりすぎると、ゴルフクラブ1が重くなって、振りにくくなる。したがって、206g以下であることがさらに好ましく、特に203g以下であることが好ましい。
また、本発明のゴルフクラブ1では、ヘッド重量とクラブ重量との比(ヘッド重量/クラブ重量)が0.67以上0.72以下に設定されている。この比が小さすぎると、ヘッド2の運動エネルギーが小さくなってしまい、十分なボールスピードを得ることが難しくなる。したがって、前記比は、0.675以上であることが好ましく、さらには0.68以上であることが好ましい。一方、前記比が大きすぎると、ヘッド2が重くなりすぎてクラブが振りにくくなる。したがって、前記比は、0.718以下であることが好ましく、さらには0.715以下であることが好ましい。
〔グリップの構成〕
本発明において、グリップ4の材質や構造は特に限定されるものでなく、通常用いられているものを適宜採用することができる。例えば、天然ゴムに、オイル、カーボンブラック、硫黄及び酸化亜鉛を配合して混練した材料を所定形状に成形し且つ加硫することにより得られるものを用いることができる。
本発明では、グリップ4の重量は、27g以上45g以下にされている。グリップ4の重量が軽すぎると、当該グリップ4の強度が低くなり、その耐久性が低下する惧れがある。したがって、グリップ4の重量は、28g以上であることが好ましく、さらには33g以上であることが好ましい。一方、グリップ4の重量が重すぎると、ゴルフクラブ1が重くなって、振りにくくなる。したがって、グリップ4の重量は、44g以下であることが好ましく、さらには40g以下であることが好ましい。
〔シャフトの構成〕
本実施の形態におけるシャフト3はカーボンシャフトであり、プリプレグシートを材料として通常のシートワインディング製法により作製されている。より詳細には、シャフト3は、繊維強化樹脂層の積層体からなる管状体であり、中空構造を有している。シャフト3の全長はLであり、また、シャフト3のチップ端(先端)3aから前記シャフト3の重心Gまでの距離はLである。
シャフト3の重量は、本発明において特に限定されるものではないが、通常、30〜58gの範囲内である。シャフト3の重量が軽すぎると、当該シャフト3の強度が低くなり、その耐久性が低下する惧れがある。したがって、シャフト3の重量は、34g以上であることが好ましく、さらには38g以上であることが好ましい。一方、シャフト3の重量が重すぎると、ゴルフクラブ1が重くなって、振りにくくなる。したがって、シャフト3の重量は、53g以下であることが好ましく、さらには50g以下であることが好ましい。
また、シャフト3の長さ自体は本発明において特に限定されるものではないが、通常、1050〜1200mmである。シャフト3の長さが短すぎると、スイングの回転半径が小さくなり、十分なヘッドスピードを得ることが難しくなる。このため、ボールスピードを速くすることができず、ボールの飛距離を延ばすことができない。したがって、シャフト3の長さは、1070mm以上であることが好ましく、さらには1100mm以上であることが好ましい。一方、シャフト3の長さが長すぎると、グリップ端における慣性モーメントが大きくなり、非力なゴルファーでは力負けし易くなる。このため、ヘッドスピードを速くすることができず、ボールの飛距離を延ばすことができない。したがって、シャフト3の長さは、1180mm以下であることが好ましく、さらには1160mm以下であることが好ましい。
また、シャフト3の重心位置自体は、本発明において特に限定されるものではないが、通常、当該シャフト3のチップ端3a(先端)から620〜710mmの範囲内である。シャフト3の重心Gの位置が当該シャフト3の先端から620mm未満であると、ゴルフクラブ1の重心がヘッド側に寄ってしまうため、振りにくくなり、十分なヘッドスピードを得ることが難しくなる。したがって、シャフト3の重心位置は、当該シャフト3の先端から625mm以上であることが好ましく、さらには630mm以上であることが好ましい。一方、シャフト3の重心Gの位置が当該シャフト3の先端から710mmを超えると、シャフト先端側の強度が低くなり、その耐久性が低下してしまう。したがって、シャフト3の重心位置は、当該シャフト3の先端から705mm以下であることが好ましく、さらには700mm以下であることが好ましい。
本発明では、シャフト3の先端からシャフト重心Gまでの距離をLとし、シャフト3の全長をLとしたときに、0.54≦L/L≦0.65としている。
/Lが0.54未満の場合、シャフト3の重心がシャフト3の先端側に近くなるので、スイングバランスを考慮すると、ヘッドの重量を大きくすることができない。したがって、L/Lは0.55以上であることが好ましく、さらには0.56以上であることが好ましい。
一方、L/Lが0.65を超える場合、シャフトの手元側の重量を大きくすることになり、同一シャフト重量とした場合に、シャフトの先端側の重量が小さくなり、その結果、シャフト先端側の強度が弱くなる惧れがある。また、シャフト先端側の強度低下を防ぎつつ前記比を0.65よりも大きくすることは、シャフトの先端側の重量を維持しつつ手元側重量を大きくすることを意味し、この場合は、クラブの全重量が大きくなりすぎて、クラブが振りにくくなる。したがって、L/Lは0.64以下であることが好ましく、さらには0.63以下であることが好ましい。
シャフト3は、プリプレグシートを硬化させて作製することができ、このプリプレグシートでは、繊維は実質的に一方向に配向されている。このように繊維が実質的に一方向に配向されたプリプレグは、UD(ユニディレクション)プリプレグとも称されている。なお、本発明では、UDプリプレグ以外のプリプレグを用いることもでき、例えば、シートに含まれる繊維が編まれているプリプレグシートを用いることもできる。
プリプレグシートは、熱硬化性樹脂などからなるマトリクス樹脂と、炭素繊維などの繊維とを有している。前述したように、シャフト3は、シートワインディング製法により作製することができるが、プリプレグの状態において前記マトリクス樹脂は、半硬化状態にある。シャフト3は、かかるプリプレグを巻回して硬化させたものである。プリプレグの硬化は加熱により行なわれ、シャフト3の製造工程には、加熱工程が含まれる。この加熱工程により、プリプレグシートのマトリクス樹脂が硬化する。
プリプレグシートのマトリクス樹脂も、本発明において特に限定されるものではないが、例えばエポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂を用いることができる。シャフトの強度を高めるという点より、エポキシ樹脂を用いることが好ましい。
プリプレグとしては、市販されているものを適宜用いることができるが、以下の表1は、本発明のゴルフクラブのシャフトに用いることができるプリプレグの例を示している。
Figure 0005852837
図2は、シャフト3を構成するプリプレグシートの展開図(シート構成図)である。シャフト3は、複数枚のシートにより構成されており、図2に示される実施の形態では、シャフト3は、a1からa11までの11枚のシートにより構成されている。図2に示される展開図は、シャフトを構成するシートを、当該シャフトの半径方向内側から順に示している。展開図において、上側に位置しているシートから順に巻回される。また、図2に示される展開図において、図面の左右方向はシャフト軸方向と一致し、図面の右側はシャフト3のチップ端3a側であり、図面の左側はシャフト3のバット端3b側である。
なお、本明細書では、「層」という文言と、「シート」という文言が用いられている。「シート」は、巻回される前における称呼であり、「層」は、かかるシートが巻回された後における称呼である。「層」は「シート」が巻回されることにより形成される。また、本明細書では、層とシートとで同じ符号が用いられている。例えば、シートa1を巻回することによって形成された層は、層a1とされる。
また、シャフト軸方向に対する繊維の角度に関し、本明細書では、角度Af及び絶対角度θaが用いられる。角度Afは、プラス又はマイナスを伴う角度であり、絶対角度θaは、角度Afの絶対値である。絶対角度θaとは、シャフト軸方向と繊維方向とのなす角度の絶対値である。例えば、「絶対角度θaが10°以下」とは、「角度Afが−10°以上+10°以下」であることを意味する。
図2に示される展開図は、各シートの巻き付け順序だけでなく、各シートのシャフト軸方向における位置も示している。例えば、シートa1の端はチップ端3aに位置しており、シートa4及びシートa5の端はバット端3bに位置している。
シャフト3は、ストレート層、バイアス層及びフープ層を有している。図2に示される展開図では、プリプレグシートに含まれる繊維の配向角度が記載されており、「0°」と記載されているシートが、ストレート層を構成している。ストレート層用のシートは、本明細書においてストレートシートとも称される。また、バイアス層用のシートは、本明細書においてバイアスシートとも称される。
ストレート層は、繊維の配向がシャフトの長手方向(シャフト軸方向)に対して実質的に0°とされた層である。ただし、巻き付け時の誤差などに起因して、繊維の方向はシャフト軸方向に対して完全に0°とはならない場合がある。通常、ストレート層では、前記絶対角度θaが10°以下である。
図2に示される実施の形態において、ストレートシートは、シートa1、シートa4、シートa5、シートa6、シートa7、シートa9、シートa10、及びシートa11である。ストレート層は、シャフトの曲げ剛性及び曲げ強度との相関が高い。
バイアス層は、繊維の配向がシャフトの長手方向に対して傾斜した層である。かかるバイアス層は、シャフトの捩れ剛性及び捩れ強度との相関が高い。バイアス層は、繊維の配向が互いに逆方向に傾斜した2枚のシートペアから構成されていることが好ましい。バイアス層の絶対角度θaは、捩れ剛性の観点から、好ましくは15°以上であり、より好ましくは25°以上であり、更に好ましくは40°以上である。一方、捩れ剛性及び捩れ強度の観点より、バイアス層の絶対角度θaは、好ましくは60°以下であり、より好ましくは50°以下である。
図2に示される実施の形態において、バイアスシートは、シートa2及びシートa3である。図2では、シート毎に前記角度Afが記載されている。角度Afにおけるプラス(+)及びマイナス(−)は、バイアスシートの繊維が互いに逆方向に傾斜していることを示している。なお、図2に示される実施の形態では、シートa2が−45°であり、シートa3が+45°であるが、これとは逆に、シートa2が+45°であり、シートa3が−45°であってもよい。
図2に示される実施の形態において、フープ層を構成するシートは、シートa8である。フープ層における前記絶対角度θaは、シャフト軸方向に対して実質的に90°とされることが好ましい。ただし、巻き付け時の誤差などに起因して、繊維の方向はシャフト軸方向に対して完全に90°とはならない場合がある。通常、フープ層では、前記絶対角度θaが80°以上90°以下である。
フープ層は、シャフトのつぶし剛性及びつぶし強度を高めるのに寄与する。つぶし剛性とは、シャフトをその半径方向内側に向かって押し潰す力に対する剛性である。つぶし強度とは、シャフトをその半径方向内側に向かって押し潰す力に対する強度である。かかるつぶし強度は、曲げ強度とも関連しうる。また、曲げ変形に連動してつぶし変形が生じうる。特に肉厚の薄い軽量シャフトにおいては、この連動性が大きい。つぶし強度を向上させることで、曲げ強度を向上させることができる。
図示していないが、使用される前のプリプレグシートは、カバーシートにより挟まれている。通常、カバーシートは、離型紙及び樹脂フィルムからなっており、プリプレグシートの一方の面に離型紙が貼着されており、他方の面に樹脂フィルムが貼着されている。以下の説明において、離型紙が貼着されている側の面を「離型紙側の面」、樹脂フィルムが貼着されている側の面を「フィルム側の面」とも称する。
本明細書における展開図は、フィルム側の面が表側とされた図である。すなわち、本明細書における展開図において、図面の表側がフィルム側の面であり、図面の裏側が離型紙側の面である。図2に示される展開図では、シートa2の繊維方向とシートa3の繊維方向とは同じであるが、後述する貼り合わせの際にシートa3が裏返される。その結果、シートa2の繊維方向とシートa3の繊維方向とは互いに逆方向となり、従って、巻回された後の状態では、シートa2の繊維方向とシートa3の繊維方向は互いに逆方向となる。この点を考慮して、図2では、シートa2の繊維方向は「−45°」と表記され、シートa3の繊維方向は「+45°」と表記されている。
前述したプリプレグシートを巻回するには、まず、樹脂フィルムが剥がされる。樹脂フィルムが剥がされることにより、フィルム側の面が露出する。この露出面は、マトリクス樹脂に起因するタック性(粘着性)を有している。巻回時におけるプリプレグのマトリクス樹脂が半硬化状態であるため、粘着性を発現する。次に、露出したフィルム側の面の縁部(巻き始め縁部)を、巻回対象物に貼り付ける。マトリクス樹脂の有する粘着性により、この巻き始め縁部の貼り付けを円滑に行なうことができる。巻回対象物とは、マンドレル、又はマンドレルに他のプリプレグシートが巻き付けられた巻回物である。
ついで、プリプレグシートの離型紙が剥がされる。その後、巻回対象物が回転されて、プリプレグシートが当該巻回対象物に巻き付けられる。このように、まず樹脂フィルムが剥がされ、ついで巻き始め縁部が巻回対象物に貼り付けられ、その後離型紙が剥がされる。かかる手順により、プリプレグシートの皺や巻き付け不良の発生を抑制することができる。離型紙は、樹脂フィルムと比べて曲げ剛性が高く、このような離型紙が貼り付けられた状態のシートは、当該離型紙に支持されているため、皺になりにくい。
図2に示される実施の形態では、2枚以上のシートを貼り合わせることにより形成される合体シートが採用されている。図2に示される実施の形態では、図3〜4に示される二つの合体シートが採用されている。図3は、シートa2及びシートa3を貼り合わせることにより形成される第1の合体シートa23を示している。また、図4は、シートa8及びシートa9を貼り合わせることにより形成される第2の合体シートa89を示している。
第1の合体シートa23を作製する手順は以下の通りである。まず、バイアスシートa3を裏返し、この裏返したバイアスシートa3をバイアスシートa2に貼り合わされる。その際、図3に示されるように、バイアスシートa3のバット端及びチップ端を、それぞれバイアスシートa2の長辺からずらした状態で貼り合わされる。
これにより、合体シートa23のシートa2とシートa3とは、巻回後のシャフトにおいて約半周分ズレるようになっている。
図4に示されるように、第2の合体シートa89において、シートa8の上端とシートa9の上端とが一致している。また、シートa89において、シートa8は、そのバット側端縁をシートa9のバット側端縁からずれた状態で、その全体がシートa9に貼着されている。その結果、巻回工程において、シートa8の巻回不良が抑制される。
前述したように、本明細書では、プリプレグ中の繊維の配向角度によって、シート及び層を分類しているが、更に、シャフト軸方向の長さによって、シート及び層を分類することができる。
本明細書では、シャフト軸方向の全体に亘り配置される層が、全長層と称され、また、シャフト軸方向の全体に亘り配置されるシートが、全長シートと称される。一方、本明細書では、シャフト軸方向において部分的に配置される層が、部分層と称され、シャフト軸方向において部分的に配置されるシートが、部分シートと称される。
本明細書では、ストレート層である全長層が全長ストレート層と称される。図2に示される実施の形態では、シートa6及びシートa9が、巻回後において全長ストレート層を構成する。
また、本明細書では、ストレート層である部分層が部分ストレート層と称される。図2に示される実施の形態では、シートa1、シートa4、シートa5、シートa7、シートa10及びシートa11が、巻回後において部分ストレート層を構成する。
部分層を構成するシートであるシートa7は、巻回後において、シャフト軸方向全体の中間に位置する中間部分層を構成する。すなわち、中間部分層の先端はチップ端3aから離れており、中間部分層の後端はバット端3bから離れている。好ましくは、中間部分層は、シャフト軸方向中央位置Scを含む位置に配置される。また、好ましくは、中間部分層は、三点曲げ強度の測定方法(SG式三点曲げ強度試験の測定方法)において定義されるB点(チップ端から525mmの地点)を含む位置に配置される。中間部分層は、変形が大きい部分を選択的に補強することができ、また、シャフトの軽量化に寄与することができる。
本明細書では、バット部分層という文言が用いられている。バット部分層は、部分層の一態様であり、バット端3b側に位置する部分層である。図2において、符号A1で示されているのは、バット部分層のチップ側の辺において最もバット側に位置する点である。好ましくは、点A1が、シャフト軸方向中央位置Scよりもバット側に位置する。図2において、符号B1で示されているのは、バット部分層のチップ側の辺の中点である。好ましくは、点B1が、シャフト軸方向中央位置Scよりもバット側に位置する。バット部分層として、バットストレート層、バットフープ層及びバットバイアス層を挙げることができる。
また、本明細書では、バットストレート層という文言が用いられている。バットストレート層は部分ストレート層の一態様であり、バット端3b側に位置する部分ストレート層である。好ましくは、バットストレート層の全体が、シャフト軸方向中央位置Scよりもバット側に位置する。バットストレート層の後端は、シャフトのバット端3bに位置していてもよいし、位置していなくてもよい。クラブ重心の位置をバット端3bに近づける観点より、好ましくは、バットストレート層の配置範囲が、シャフトのバット端3bから100mm離間した位置P1を含む。クラブ重心の位置をバット端3bに近づける観点より、より好ましくは、バットストレート層の後端は、シャフトのバット端3bに位置している。図2に示される実施の形態において、バットストレート層は、シートa4及びシートa5である。
図2に示されるプリプレグシートを用いたシートワインディング製法によりシャフト3が作製される。以下、かかるシャフト3の製造工程の概要を説明する。
〔シャフト製造工程の概要〕
(1)裁断工程
裁断工程では、プリプレグシートが所定の形状に裁断され、図2に示される各シートが切り出される。
(2)貼り合わせ工程
貼り合わせ工程では、複数枚のシートが貼り合わされて、前述した合体シートa23及び合体シートa89が作製される。貼り合わせに際しては、加熱又はプレスを用いることができるが、後述する巻回工程における合体シートを構成するシート間のズレを抑制して巻き付け精度を向上させるという観点より、加熱及びプレスを併用することが好ましい。加熱温度及びプレス圧は、シート同士の接着力を高めるなどの観点より適宜選定すればよいが、通常、加熱温度は、30〜60°の範囲内であり、プレス圧は、300〜600g/cmの範囲内である。同様に、加熱時間及びプレス時間も、シート同士の接着力を高めるなどの観点より適宜選定すればよいが、通常、加熱時間は、20〜300秒の範囲内であり、プレスの時間は、20〜300秒の範囲内である。
(3)巻回工程
巻回工程では、マンドレルが用いられる。典型的なマンドレルは金属製であり、このマンドレルの周面に離型剤が塗布される。更に、前記離型剤の上に粘着性を有する樹脂(タッキングレジン)が塗布される。こうして、樹脂を塗布したマンドレルに、裁断されたシートが巻回される。タッキングレジンによって、シート端部をマンドレルに容易に貼り付けることができる。複数枚のシートが貼り合わされたシートについては、合体シートの状態で巻回される。
この巻回工程により、巻回体を得ることができる。巻回体は、マンドレルの外側にプリプレグシートが巻回されたものである。巻回は、例えば、平面上で巻回対象物を転がすことにより行なわれる。
(4)テープラッピング工程
テープラッピング工程では、前記巻回体の外周面にラッピングテープと称されるテープが巻き付けられる。ラッピングテープは、張力を付与されつつ巻回体の外周面に巻き付けられる。かかるラッピングテープによって、巻回体に圧力が加えられ、当該巻回体におけるボイドを低減させる。
(5)硬化工程
硬化工程では、テープラッピングがなされた後の巻回体が所定の温度に加熱される。この加熱により、プリプレグシートのマトリクス樹脂が硬化する。硬化の過程においてマトリクス樹脂が一時的に流動化するが、この流動化によって、シート間又はシート内の空気が排出される。ラッピングテープにより付与される圧力(締め付け力)により、この空気の排出が促進される。硬化工程によって、硬化積層体が得られる。
(6)マンドレルの引抜工程及びラッピングテープの除去工程
硬化工程の後、マンドレルの引抜工程とラッピングテープの除去工程が行なわれる。両工程の順序は、本発明において特に限定されるものではないが、ラッピングテープ除去の能率を向上させる観点からは、マンドレルの引抜工程の後にラッピングテープの除去工程を行うことが好ましい。
(7)両端カット工程
この両端カット工程では、前述した(1)〜(6)の各工程を経た硬化積層体の両端部がカットされる。このカッティングにより、シャフトのチップ端3aの端面及びバット端3bの端面が平坦にされる。
(8)研磨工程
研磨工程では、両端部がカットされた硬化積層体の表面が研磨される。硬化積層体の表面には、前記工程(4)において用いたラッピングテープの跡として螺旋状の凹凸が残っている。研磨することにより、このラッピングテープの跡としての螺旋状の凹凸が消滅し、硬化積層体の表面が平滑になる。
(9)塗装工程
研磨工程後の硬化積層体に所定の塗装が施される。
以上の工程によりシャフト3を製造することができる。そして、製造されたシャフト3のチップ端3aをゴルフクラブヘッド2のホーゼル6のシャフト穴5内に固着し、当該シャフト3のバット端3bをグリップ4のグリップ穴7内に固着することで、ゴルフクラブ1を得ることができる。
本発明の特徴の1つは、前述したゴルフクラブ1において、シャフト3の先端3aからシャフト重心までの距離をLとし、シャフトの全長をLとしたときに、0.54≦L/L≦0.65とし、シャフト3の重心Gを手元側に寄せたことである。
クラブを振り易くするためには、クラブ重量を軽くすることが有効であるが、クラブを構成する要素のうちヘッドの重量は、ボールスピードのアップに影響を与えるファクターであるので、本発明では、このヘッド重量を小さくすることなくボールスピードを速くするアプローチを採用している。そして、シャフト重心位置をグリップ側に配置することで、クラブ慣性モーメントを小さくして、クラブを振り易くしている。
シャフト3の重心位置を調整する手段としては、例えば、以下の(A)〜(H)を挙げることができる。本発明では、これらの手段のうち1つ又は2つ以上を適宜採用することによって、シャフト3の重心位置を手元側に寄せることができる。
(A)バット部分層の巻回数の増減
(B)バット部分層の厚さの増減
(C)バット部分層の長さL1(後述)の増減
(D)バット部分層の長さL2(後述)の増減
(E)チップ部分層の巻回数の増減
(F)チップ部分層の厚さの増減
(G)チップ部分層の軸方向長さの増減
(H)シャフトのテーパー率の増減
<バット部分層の重量比率>
シャフトの重心位置をグリップ側に配置する観点から、バット部分層の重量は、シャフト重量に対して、5重量%以上が好ましく、10重量%以上がより好ましい。一方、硬いフィーリングを抑制する観点から、バット部分層の重量は、シャフト重量に対して、50重量%以下が好ましく、45重量%以下がより好ましい。図2に示される実施の形態において、シートa4及びシートa5の合計重量が、バット部分層の重量である。
<特定バット範囲におけるバット部分層の重量比率>
図1において、P2で示されているのは、バット端3bから250mm離間した地点である。この地点P2からバット端3bまでの範囲が、「特定バット範囲」と定義される。この特定バット範囲に存在するバット部分層の重量をWaとし、当該特定バット範囲におけるシャフトの重量をWbとすると、シャフトの重心位置をグリップ側に配置する観点から、比(Wa/Wb)は、0.4以上が好ましく、0.42以上がより好ましく、0.44以上が更に好ましい。一方、硬いフィーリングを抑制する観点から、比(Wa/Wb)は、0.7以下が好ましく、0.65以下がより好ましく、0.6以下が更に好ましい。
<バット部分層の繊維弾性率>
バット部分層の強度確保の観点から、バット部分層の繊維弾性率は、5t/mm以上が好ましく、7t/mm以上がより好ましい。クラブ重心がバット端3bに近い場合、クラブ重心に作用する遠心力が低下しやすい。すなわち、シャフトの重心位置をグリップ側に配置する場合、クラブ重心に作用する遠心力が低下しやすい。この場合、シャフトのしなりが感じられにくいことがあり、硬いフィーリングが生じやすい。かかる硬いフィーリングを抑制する観点から、バット部分層の繊維弾性率は、20t/mm以下が好ましく、15t/mm以下がより好ましく、10t/mm以下が更に好ましい。
<バット部分層の樹脂含有率>
シャフトの重心位置をグリップ側に配置し、且つ、硬いフィーリングを抑制する観点から、バット部分層の樹脂含有率は、20質量%以上が好ましく、25質量%以上がより好ましい。一方、バット部分層の強度確保の観点から、バット部分層の樹脂含有率は、50質量%以下が好ましく、45質量%以下がより好ましい。
<バットストレート層の重量>
シャフトの重心位置をグリップ側に配置する観点から、バットストレート層の重量は、2g以上が好ましく、4g以上がより好ましい。一方、硬いフィーリングを抑制する観点から、バットストレート層の重量は、30g以下が好ましく、20g以下がより好ましく、10g以下が更に好ましい。
<バットストレート層の重量比率>
シャフトの重心位置をグリップ側に配置する観点から、バットストレート層の重量は、シャフト重量Wsに対して、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましい。一方、硬いフィーリングを抑制する観点から、バットストレート層の重量は、シャフト重量に対して、50質量%以下が好ましく、45質量%以下がより好ましい。図3に示される実施の形態では、シートa4及びシートa5の合計重量が、バットストレート層の重量である。
<バットストレート層の繊維弾性率>
バット部の強度確保の観点から、バットストレート層の繊維弾性率は、5t/mm以上が好ましく、7t/mm以上がより好ましい。一方、硬いフィーリングを抑制する観点から、バットストレート層の繊維弾性率は、20t/mm以下が好ましく、15t/mm以下がより好ましく、10t/mm以下が更に好ましい。
<バットストレート層の樹脂含有率>
シャフトの重心位置をグリップ側に配置し、且つ、硬いフィーリングを抑制する観点から、バット部分層の樹脂含有率は、20質量%以上が好ましく、25質量%以上がより好ましい。一方、バット部の強度確保の観点から、バットストレート層の樹脂含有率は、50質量%以下が好ましく、45質量%以下がより好ましい。
<バット部分層の軸方向最大長さL1>
図2においてL1で示されているのは、バット部分層の軸方向最大長さである。この最大長さL1は、バット部分シートのそれぞれにおいて定まる。図2に示される実施の形態では、シートa4の長さL1と、シートa5の長さL1とは異なっている。
バット部分層の重量を確保する観点から、長さL1は、100mm以上が好ましく、125mm以上がより好ましく、150mm以上が更に好ましい。一方、シャフトの重心位置をグリップ側に配置する観点から、長さL1は、700mm以下が好ましく、650mm以下がより好ましく、600mm以下が更に好ましい。
<バット部分層の軸方向最小長さL2>
図2においてL2で示されているのは、バット部分層の軸方向最小長さである。この最大長さL2は、バット部分シートのそれぞれにおいて定まる。図2に示される実施の形態では、シートa4の長さL2と、シートa5の長さL2とは異なっている。
バット部分層の重量を確保する観点から、長さL2は、50mm以上が好ましく、75mm以上がより好ましく、100mm以上が更に好ましい。一方、シャフトの重心位置をグリップ側に配置する観点から、長さL2は、650mm以下が好ましく、600mm以下がより好ましく、550mm以下が更に好ましい。
〔実施例〕
次に、本発明のゴルフクラブを実施例に基づいて説明するが、本発明はもとよりかかる実施例にのみ限定されるものではない。
実施例1〜21及び比較例1〜31に係るゴルフクラブが常法にしたがって作製され、これらの性能ないし特性が評価された。全てのゴルフクラブに実質的に同一形状のヘッドが採用され、このヘッドの体積は460ccであり、材質はチタン合金であった。所望のスペックが得られるように、ヘッド重量、グリップ重量、シャフト重量、シャフト長さなどが調整された。
実施例及び比較例におけるシャフトは、図2に示される展開図に基づいて作製された。製造方法は、前述したシャフト3と同様であり、前記(1)〜(9)の工程にしたがってシャフトが製造された。各シートa1〜a11において、巻回数、プリプレグの厚さ、プリプレグの繊維含有率、炭素繊維の引張弾性率などが適宜選択された。実施例及び比較例におけるシャフトに用いられたプリプレグの一例を表2に示す。シャフトの重心位置の調整には、前述した(A)〜(H)のうち1つ又は2つ以上が用いられた。
Figure 0005852837
実施例1〜7及び比較例1〜6に係るゴルフクラブ(クラブ重量を275gに設定している)の仕様及び評価を表3に示す。また、実施例8〜14及び比較例7〜12に係るゴルフクラブ(クラブ重量を282gに設定している)の仕様及び評価を表4に示す。また、実施例15〜21及び比較例13〜18に係るゴルフクラブ(クラブ重量を289gに設定している)の仕様及び評価を表5に示す。さらに、比較例19〜31に係るゴルフクラブ(クラブ重量を292gに設定している)の仕様及び評価を表6に示す。なお、表3〜6において、「クラブ重心」の測定基準はグリップ端であり、このグリップ端からクラブ重心までの距離(mm)が表中の「クラブ重心」の値となる。
Figure 0005852837

Figure 0005852837
Figure 0005852837
Figure 0005852837
〔評価方法〕
<ヘッドスピード(m/s)>
ハンディキャップが10〜20のテスター5名にそれぞれ10球ずつ試打してもらい、得られた50個のヘッドスピードの平均値を採用した。
<運動エネルギー(J)>
運動エネルギーE=(mh×v)/2で求めた。ここで、mhはヘッド重量であり、vはヘッドスピードである。
<ボール飛距離(yards)>
ハンディキャップが10〜20のテスター5名にそれぞれ10球ずつ試打してもらい、ミスショットを除く上位8球の落下地点までの飛距離の平均値(8×5=40個の飛距離の平均値)を採用した。
<グリップ端での慣性モーメント(kg・cm)>
図5示されるように、シャフト3の軸中心線CLが水平となるように、慣性モーメント測定器20(イナーシャ ダイナミクス社製のMODEL NUNBER RK/005−002)の測定治具21上にゴルフクラブ1をバランスさせて載置した。このとき、測定治具21には、ゴルフクラブ1の重心Gが位置している。ついで、このゴルフクラブ1の重心G回り(回転軸はZである)の慣性モーメントIaを測定した。グリップの後端4eでの慣性モーメントIは、平行軸定理を用いて、以下の式にしたがって求めた。
(kg・cm)=Ia+m・R
ここで、mはゴルフクラブの重量(kg)、Rはグリップの後端4eからゴルフクラブ1の重心Gまでの軸方向距離(cm)、Iaはゴルフクラブ1の重心G回りの慣性モーメント(kg・cm)である。
<グリップ耐久性>
ヘッドスピード40〜45m/sのテスター5名による実打テストを行い、グリップに裂け、摩滅などが発生した回数の平均を確認し、次の基準にしたがって評価した。
D :3000発未満で破損
C :3000発以上5000発未満で破損
B :5000発以上10000発未満で破損
A :10000発で破損なし
<シャフト耐久性>
株式会社ミヤマエ製のスイングロボットにゴルフクラブを装着し、ヘッドスピード52m/sにてゴルフボールを繰り返し打球した。ゴルフボールは、SRIスポーツ株式会社製の「DDH ツアースペシャル」を用いた。フェースセンターから20mmヒール側へ離れた位置で打球し、500発打球するごとにシャフトの破損状況を確認した。試打の上限は10000発とした。10000発で破損がなかった場合を「A」、10000発に達する前に破損があった場合を「B」とした。
表3〜6に示される結果より、実施例に係るゴルフクラブでは、ヘッドスピードを上げてボールの飛距離を延ばしつつ、グリップやシャフトの耐久性を向上させ得ることがわかる。これに対し、例えば比較例8や比較例14に係るゴルフクラブでは、ヘッド重量が重いためシャフトの耐久性が低下したものと考えられる。また、比較例12や比較例18に係るゴルフクラブでは、L/Lが大きく、先端側が軽量化して当該先端部の強度が不足したことから、シャフトの耐久性が低下したものと考えられる。また、比較例19〜31に係るゴルフクラブでは、クラブ重量が重いため、スイングがし難く、ヘッドスピード及びミート率が低下することからボールの飛距離が低下したものと考えられる。
〔その他の変形例〕
なお、今回開示された実施の形態はすべての点において単なる例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、前記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内のすべての変更が含まれることが意図される。
例えば、前述した実施の形態では、ゴルフクラブのシャフトとして、図2に示される展開図を有するものを採用しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば図6に示される展開図を有するシャフトを用いることもできる。図6に示される展開図を有するシャフトは、b1からb12までの12枚のシートにより構成されている。図6に示される展開図においても、図2と同様に、シャフトを構成するシートを当該シャフトの半径方向内側から順に示しており、展開図において上側に位置しているシートから順に巻回される。また、図6に示される展開図において、図面の左右方向はシャフト軸方向と一致し、図面の右側はシャフト3のチップ端3a側であり、図面の左側はシャフト3のバット端3b側である。
図6に示される変形例において、シートb1、シートb5、シートb6、シートb7、シートb8、シートb10、シートb11及びシートb12がストレート層を構成するシートであり、シートb2及びシートb3がバイアス層を構成するシートであり、さらにシートb4及びシートb9がフープ層を構成するシートである。これらのシートb1〜b12としては、例えば、表1に示した以下のプリプレグを用いることができる。
・シートb1 :TR350C−125S
・シートb2,b3 :HRX350C−075S
・シートb4 :805S−3
・シートb5,b6 :E1026A−09N
・シートb7,b8 :TR350C−100S
・シートb9 :805S−3
・シートb10 :MR350C−100S
・シートb11,b12 :TR350C−100S
図6に示される変形例が、図2に示されるものと大きく異なる点は、バイアス層を構成するシートb2、b3と、部分ストレート層を構成するシートb5、b6との間に部分フープ層を構成するシートb4が配設されていることである。
図6に示される変形例においても、2枚以上のシートを貼り合わせることにより形成される合体シートが採用されている。図6に示される変形例では、図7〜8に示される二つの合体シートが採用されている。図7は、シートb2、シートb3及びシートb4を貼り合わせることにより形成される第1の合体シートb234を示している。また、図8は、シートb9及びシートb10を貼り合わせることにより形成される第2の合体シートb910を示している。
第1の合体シートb234を作製する手順は以下の通りである。まず、2枚のシート(バイアスシートb3及びフープシートb4)が貼り合わされた予備合体シートb34が作製される。予備合体シートb34を作製する際には、バイアスシートb3が裏返されつつ、フープシートb4に貼り合わされる。予備合体シートb34では、シートb4の上端とシートb3の上端とが一致している。ついで、予備合体シートb34と、バイアスシートb2とが貼り合わされる。予備合体シートb34とバイアスシートb2とは、互いに半周分ずれた状態で貼り合わされる。
合体シートb234において、シートb2とシートb3とは、半周分ずれている。すなわち、巻回後のシャフトにおいて、シートb2の周方向位置とシートb3の周方向位置とは、相違している。この相違角度は、好ましくは、180°(±15°)である。
合体シートb234が用いられる結果、バイアス層b2とバイアス層b3とは、周方向において互いにズレている。このズレにより、バイアス層の端の位置が周方向に分散される。これにより、シャフトの周方向における均一性を向上させることができる。また、本変形例における合体シートb234では、フープシートb4の全体が、バイアスシートb2とバイアスシートb3との間に挟まれている。これにより、巻回工程におけるフープシートb4の巻回不良を抑制することができる。合体シートb234を使用することで巻回の精度を向上させることができる。なお、巻回不良とは、繊維の乱れ、皺の発生、繊維角度のズレなどを意味する。
また、図8に示されるように、第2の合体シートb910において、シートb9の上端とシートb10の上端とが一致している。また、シートb910において、シートb9の全体がシートb10に貼着されている。その結果、巻回工程において、シートb9の巻回不良が抑制される。
本変形例においても、前述した(A)〜(H)の手段のうち1つ又は2つ以上を適宜採用することによって、シャフトの重心位置を調整して手元側に寄せることができる。
1 ウッド型ゴルフクラブ
2 ヘッド
3 シャフト
3a チップ端
3b バット端
4 グリップ
4e グリップ端
5 シャフト穴
6 ホーゼル
7 グリップ穴
G シャフトの重心
シャフトのチップ端からシャフトの重心までの距離
シャフト全長

Claims (4)

  1. シャフトの先端にヘッドが設けられ、当該シャフトの後端にグリップが設けられてなるゴルフクラブであって、
    クラブ重量が290g以下であり、
    ヘッド重量とクラブ重量との比(ヘッド重量/クラブ重量)が0.67以上0.72以下であり、
    グリップ重量が27g以上45g以下であり、
    前記シャフトの先端からシャフト重心までの距離をLとし、シャフトの全長をLとしたときに、0.54≦L/L≦0.65であり、且つ
    シャフトのバット端から250mm離間した地点から当該バット端までの範囲に存在するバット部分層の重量をWaとし、当該範囲におけるシャフトの重量をWbとしたときにWa/Wbが0.4以上0.7以下であることを特徴とするゴルフクラブ。
  2. シャフト重量が30g以上58g以下である、請求項1に記載のゴルフクラブ。
  3. クラブ重量が265g以上290g以下である、請求項1又は2に記載のゴルフクラブ。
  4. シャフトの全長Lが105cm以上120cm以下である、請求項1〜3のいずれかに記載のゴルフクラブ。
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