JP5843112B2 - 標的塩基配列の識別方法 - Google Patents

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Description

本発明は、試料に含まれる核酸が、標的塩基配列を有する核酸であるか否かを識別する方法に関し、さらに詳述すると、競合ハイブリダイゼーションにおいて、核酸識別性の改善及び反応時間の短縮を可能にする方法に関する。
本願は、2010年3月29日に日本に出願された、特願2010−075297号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
ヒトゲノムの解読、特にSNP(Single Nucleotide Polymorphism)地図を作成する国際ハップマッププロジェクトにより、ヒトゲノムに関する情報は増加の一途をたどっている。さらに、得られたゲノム情報と個人の体質との関連を見出し、遺伝子レベルで個人の体質の違いを把握し、個人の特性に応じた病気の診断・治療・予防や薬剤の投与を可能とする「個人の遺伝情報に応じた医療」(オーダーメード医療)の実現をめざした研究が、世界全体で大規模に展開されている。ここでの遺伝子の違いは、個々人のゲノムの塩基配列上での違いを意味し、その主たる違いは一塩基の違い(SNP)である。また、最近では、短い塩基配列が繰り返される回数(コピー数)の違い(Copy Number variation:CNV)も、ゲノム全体に広がっていることがわかり、このCNVの違いと病気との関連性も指摘されている。
ここで、個人の遺伝子レベルでの違いを把握するためには、各個人の遺伝子型を調べる必要が生じてくる。たとえば、あるSNPでは、その遺伝子型はAA、AG、GGの3種類であることが分かっているとする。Aはアデニン、Gはグアニン塩基を示し、このSNPは、ゲノムのその位置がアデニンの場合とグアニンの場合がある一例である。従って、当該SNPの遺伝子型を識別するための検査は、この3種類の遺伝子型のいずれであるかを決定することになる。すなわち、Aについて0と100のいずれであるか、Gについて0と100のいずれであるか、又は、AとGが50と50であるかどうかを見ればよい。
このように、SNP等の生殖細胞系列変異の検出は、ほぼ定性的な検出といってよく、その方法は比較的容易で簡便な各種方法が実用化されている。
一方、がん細胞においては、体細胞のレベルで変異が生じ、その変異ががんの引き金となって異常な増殖につながると考えられている。従って、ある特定の種類のがん細胞では、特定の遺伝子の変異がみられることがあり、当該変異を指標にがん細胞の検出を行うことも可能である。但し、がん細胞は多様性に富み、一種類の変異でがん細胞を特定することは必ずしも容易ではない。
また、最近の薬物療法においては、生体内の特定の分子(タンパク質等)を標的とした薬剤が開発され、副作用が少なく、効果が高いものが見出されてきている。これらは分子標的薬と呼ばれ、主にがん治療の領域で活発に開発されている。ごく最近、これら分子標的薬では、標的としている分子のシグナル伝達の下流のタンパク質に変異が生じている場合には当該薬剤の効果が発揮できないこと等が明らかになってきている。この場合、変異を生じているタンパク質をコードする遺伝子の変異を調べることにより、当該薬剤の効果を予測することが可能となってきており、SNP検出とは異なる新たなオーダーメード医療の領域が開けつつある。
ここで述べた、がん細胞に特徴的な変異又は分子標的薬に抵抗性を示す変異は、そのほとんどが体細胞変異である。先に述べた生殖細胞系列変異の場合、どの細胞でも共通の変異が見られるのに対し、体細胞変異では変異を起こした細胞でのみ変異が見られ、変異を起こしていない細胞(通常は正常細胞)では変異は見られない。従って、通常、検体(検査の対象となる試料)中では、変異した細胞と正常細胞が混在する状況が一般的であり、それらの細胞の存在比に応じて、変異した遺伝子と正常の遺伝子が存在することになる。
つまり、試料の大部分が正常細胞であって一部変異細胞が含まれる場合、多くの正常な遺伝子中に存在するわずかな変異遺伝子を検出しなければならず、この点が体細胞遺伝子の変異検出と生殖細胞系列における変異検出とで異なる点であり、体細胞の遺伝子変異検出をより困難にしている点である。
体細胞の遺伝子変異検出法には大きく分けて二つの方法がある。一つは、検出過程での遺伝子増幅の段階で正常な遺伝子と変異遺伝子を区別する方法であり、具体的には、変異遺伝子のみを特異的に増幅する方法である。
例えば、最も感度がよいとされている方法は、正常な遺伝子のみを制限酵素を用いて切断し、切断されていない変異遺伝子のみを増幅する“mutant−enriched PCR”と呼ばれている方法である(例えば、非特許文献1参照。)。この方法では、変異遺伝子を増幅する反応を繰り返すことにより、正常遺伝子10分子中の1分子の変異遺伝子を検出できるとされている(例えば、非特許文献2参照。)。この方法は高感度という点では優れているが、操作は非常に煩雑で一般の診断適用できる方法ではない。
また、PCR等のプライマーの伸張反応において、1塩基の違いを区別して増幅する方法が開発されている。この方法は、“ARMS(amplification refractory mutation system)”(例えば、非特許文献3参照。)、あるいは“ASPCR(allele specific PCR)”(例えば、非特許文献4参照。)等とも呼ばれている。この方法は、比較的高感度であり、さらに一般的なPCRの増幅反応以外の操作を必要とせず、反応のすべてを閉鎖系で行うことができるため、非常に簡便であり、PCRのキャリーオーバーコンタミネーションのない優れた方法である。しかしながら、一度でも一塩基識別を誤って正常遺伝子を増幅した場合、以後の増幅反応において、変異遺伝子の増幅と同じように正常遺伝子も増幅されてしまうため、擬陽性の危険が高い方法とも言える。この方法を用いる場合、反応条件、すなわち反応温度や塩濃度等を厳密に制御する必要があり、また鋳型量も厳密に同じにする必要があり(例えば、非特許文献5参照。)、不特定多数の検体を検査する臨床検査や、高い精度が要求される診断には不向きである。
体細胞の遺伝子変異を検出するもう一つの方法は、検出の過程で変異遺伝子と正常遺伝子を同時に増幅し、その後変異遺伝子と正常遺伝子を区別して検出する方法である。増幅された変異遺伝子と正常遺伝子を区別して検出する方法としては、電気泳動を利用する方法、ハイブリダイゼーションを利用する各種方法がある(例えば、非特許文献5参照。)。しかしながら、ほとんどの方法において、多量の正常遺伝子に含まれる少量の変異遺伝子を精度よく検出することは困難である。例えば、変異遺伝子検出のゴールドスタンダードといわれている方法として、ジデオキシシークエンシング法がある。ジデオキシシークエンシング法は、変異遺伝子を比較的高感度で検出することが可能であるものの、変異遺伝子と正常遺伝子が混在する場合に、変異遺伝子の検出感度は10%程度であり、実際の検査で望まれている感度としては十分ではない。その他、ピロシークエンシング法では、5%程度まで検出感度を高めることができ、ジデオキシシークエンシング法より優れていることが報告されている(例えば、非特許文献6参照)。
さらに、変異を含む配列をPCRにより増幅し、その生成物の2本鎖DNAの融解曲線を求め、変異遺伝子と正常遺伝子の融解曲線の違いから変異遺伝子の割合を求める方法が開発されている。この方法でも、正常遺伝子に含まれる変異遺伝子を5%程度まで検出できるとされている(例えば、非特許文献7参照。)。
例えば、ストリンジェンシーを正確にコントロールすることによって1つのヌクレオチドの相違を検出する方法が報告されている(例えば、非特許文献8参照。)。この方法は、オリゴヌクレオチドプローブが標的配列と完全に相補的である場合(フルマッチ)よりも、プローブが標的配列と1塩基でも相補的でない塩基対が含まれる場合(ミスマッチ)の方が、会合体の融解温度が低下することを利用している。この方法はDNAアレイ等にも利用されているが、1塩基の識別性はプローブの塩基配列等に大きく影響を受け、また非常に厳密な温度コントロールが必要とされる等、臨床診断への応用は必ずしも容易ではない。
その他、1塩基の違いを厳密に区別する方法として、同じ塩基配列をもつ2本鎖間での競合ハイブリダイゼーションを利用したPCR−PHFA法が開発された。PCR−PHFA法は、遺伝子型の識別対象であるサンプル(2本鎖核酸)と配列既知の標準2本鎖核酸との間で塩基配列がまったく同じであれば、それぞれの鎖を区別することができず、ハイブリダイゼーションによって鎖の組換え(鎖置換)が起こるが、サンプルと標準2本鎖核酸との間に1塩基でも違いがあれば、競合ハイブリダイゼーションにより完全に相補的な塩基配列を持つ鎖同士が優先的に2本鎖を形成するために、結果としてサンプルと標準2本鎖核酸との間で鎖の組換えが起こらないことを利用した変異検出法である。このPCR−PHFA法を用いることにより、実際の検体から1%程度という高感度で変異遺伝子を検出できることが報告されている(例えば、特許文献1及び非特許文献9参照。)。
PCR−PHFA法の改良法も幾つか提案されている。例えば特許文献2には、PCR−PHFA法の改良法として、蛍光共鳴エネルギー移動を利用する方法が開示されている。微量の変異遺伝子を高感度で正確に測定するPCR−PHFA法においては、同じ配列をもつ二つの2本鎖核酸の間での鎖の組換えを検出する必要があるが、サンプルの2本鎖核酸は非標識とし、鎖の組換えを起こさせるための配列既知の標準核酸を標識する場合が多い。特許文献2記載の方法では、標準核酸の一方の鎖の5’末端付近に蛍光物質を結合させて標識し、他方の鎖の3’末端付近を別の蛍光物質で標識する。競合ハイブリダイゼーションにより鎖組み換えが起こらず標準核酸が元の2本鎖の状態に戻った場合には、二つの異なる蛍光物質の間での蛍光共鳴エネルギー移動が観察される。これに対して、サンプルの2本鎖核酸との間での鎖組み換えが起こると、蛍光共鳴エネルギー移動は観察されなくなる。従って、この蛍光共鳴エネルギー移動の程度を測定することで鎖の組換えの程度を測定することができる。
具体的には、例えば、ある核酸配列のある位置(識別対象とする変異部位)がアデニンである場合とグアニンである場合とを区別する場合、当該位置を含み、かつ当該位置の塩基がアデニン(相補鎖ではチミン)である標準2本鎖核酸を準備する。さらに、その標準2本鎖核酸を、一方の鎖は蛍光物質Xで、他方の鎖は蛍光物質Xと互いにエネルギー移動可能な蛍光物質Yで、それぞれ標識する。つまり、標準2本鎖核酸では、二つの蛍光物質が近接しているために、そのままでは蛍光共鳴エネルギー移動が生じる状態にある。
一方で、サンプル由来の核酸を、核酸増幅反応により、標準2本鎖核酸とまったく同じ長さとなるように増幅して調製する。得られたサンプル由来2本鎖核酸と標準2本鎖核酸を混合し、熱を加えて2本鎖を変性させた後、徐々に温度を低下させて再び2本鎖を形成させる。このとき、サンプル由来2本鎖核酸の変異部位が、すべて標準2本鎖核酸と同じアデニンであった場合、サンプル由来2本鎖核酸と標準2本鎖核酸との間では鎖の組み換え反応が生じる。理論上は、サンプル由来2本鎖核酸と標準2本鎖核酸の分子数の比が1:1であった場合、組み換わる確率は1/2であり、また元の2本鎖にもどる確率も1/2であり、蛍光共鳴エネルギー移動の程度も1/2となる。サンプル由来2本鎖核酸の変異部位が、すべて標準2本鎖核酸とは異なるグアニンであった場合、鎖組み換えは起こらず、従って蛍光共鳴エネルギー移動の程度は変化しない。これをもって、サンプル中の検出(識別)したい目的の塩基がアデニンであるかグアニンであるかを検出することが可能となる。サンプル由来2本鎖核酸と標準2本鎖核酸との比を増大させることにより、組換えの程度を大きくすることができる。たとえば、サンプル由来2本鎖核酸と標準2本鎖核酸の比が20:1である場合、組換えの割合は20/21、すなわち標準2本鎖核酸が元の2本鎖に戻る確率は1/21となり、蛍光共鳴エネルギー移動の変化が大きくなり検出が容易になる。
このように、PCR−PHFA法は、検出感度が高く、再現性に優れた方法であるが、長時間を要する、という問題がある。例えば、特許文献1や非特許文献9に記載の方法においては、PCR−PHFA法において精度良く競合ハイブリダイゼーションを行うためには、DNAの変性温度から、70℃若しくはハイブリダイゼーションが完結するそれ以下の温度まで、非常に緩やかな温調(0.1℃/分)をかけて、ハイブリダイゼーションを行う必要があるとされている。蛍光PHFAは非酵素反応であるため、標準2本鎖核酸と試料2本鎖核酸の鎖交換効率は熱力学に支配されており、極端な温度変化は識別の精度を悪くすると言われているためである(例えば、非特許文献10参照。)。つまり、十分な精度で核酸を識別する場合には、PHFAに数時間必要となり、本法による変異検査を実用化する上で大きな課題であった。
一方で、2本鎖核酸と1本鎖核酸との間での鎖置換反応の反応速度を促進するために、カチオン性高分子を用いる方法が開示されている(例えば、特許文献3参照。)。さらに、このようなカチオン性高分子による鎖置換反応の反応促進効果を利用して、等温環境下において、試料とする1本鎖核酸と標準(基準)とする2本鎖核酸との間での鎖置換反応や、試料とする2本鎖核酸と標準とする部分2本鎖核酸との間での鎖置換反応を利用することにより、1つのヌクレオチドの相違を検出する方法も開示されている(例えば、特許文献4及び5参照。)。これらの方法は、試料核酸の塩基配列と、標準核酸の塩基配列とが完全に相補的である場合(フルマッチ)には、1塩基でも相補的でない塩基対が含まれる場合(ミスマッチ)よりも、両者の間での鎖置換反応の反応速度が速いことを利用している。これらの方法は塩基の違いを識別する能力には優れているものの、反応速度の差を検出するため、1塩基の相違の検出において望ましい精度を担保するためには、十分な反応時間を要する、という問題がある。また、特許文献4記載の方法では、試料核酸が1本鎖であることを要し、特許文献5記載の方法では、試料となる二本鎖核酸において、塩基を識別する部分が二本鎖核酸の末端部分に位置する必要があり、実用的な観点ではそのような試料二本鎖核酸を用意することは困難である。
特許第2982304号公報 特開2003−174882号公報 特開2001−78769号公報 特許第4178194号公報 特開2008−278779号公報
チェン(Chen)、外1名、アナリティカル・バイオケミストリー(Analytical biochemistry)、1991年、第195巻、第51〜56ページ。 ジャコブソン(Jacobson)、外1名、オンコジーン(Oncogene)、1994年、第9巻、第553〜563ページ。 ニュートン(Newton)、外7名、ヌクレイック・アシッズ・リサーチ(Nucleic acids research)、1989年、第17巻、第2503〜2516ページ。 ウ(Wu)、外3名、プロシーディング・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシズ・オブ・ザ・ユナイテッド・ステーツ・オブ・アメリカ(Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America)、1989年、第86巻、第2757〜2760ページ。 ノラウ(Nollau)、外1名、クリニカル・ケミストリー(Clinical Chemistry)、1997年、第43巻、第1114〜1128ページ。 オギノ(Ogino)、外9名、ザ・ジャーナル・オブ・モレキュラー・ダイアグノスティックス(The Journal of Molecular Diagnostics)、2005年、第7巻、第413〜421ページ。 クリプィ(Krypuy)、外4名、ビーエムシー・キャンサー(BMC Cancer)、2006年、第6巻、第295ページ。 ワレース(Wallace)、外5名、プロシーディング・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシズ・オブ・ザ・ユナイテッド・ステーツ・オブ・アメリカ(Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America)、1983年、第80巻、第278〜282ページ。 タダ(Tada)、外7名、クリニカ・キミカ・アクタ(Clinica Chimica Acta)、2002年、第324巻、第105ページ。 オカ(Oka)、外5名、ヌクレイック・アシッズ・リサーチ(Nucleic acids research)、1994年、第22巻、第9号、第1541〜1547ページ。
本発明はこのような状況下、PCR−PHFA法などの競合ハイブリダイゼーションを伴う塩基配列の識別方法において、塩基配列の相違を識別する精度を保持しつつ、従来法よりも非常に短時間で、試料に含まれる核酸が、標的塩基配列を有する核酸であるか否かを識別し得る方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、PCR−PHFA法などの競合ハイブリダイゼーション法において、反応液中にカチオン性くし型重合体を添加することにより、試料核酸と標準核酸との間の競合ハイブリダイゼーションにおける平衡速度を超える速度で温度を降下させても、識別精度を損なうことなく塩基配列を識別できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、
(1) 標的塩基配列を識別する方法であって、
試料2本鎖核酸と、標的塩基配列と同一の塩基配列を含む標準2本鎖核酸とを、一の反応液内において熱変性処理する熱変性工程と、
前記熱変性工程の後、前記反応液の温度を低下させることにより、前記試料2本鎖核酸と前記標準2本鎖核酸とにおいて競合ハイブリダイゼーションを行う降温工程と、
前記標準2本鎖核酸を構成していた核酸鎖と、前記試料2本鎖核酸を構成していた核酸鎖とにより形成された2本鎖核酸を測定する測定工程と、
前記測定工程により得られた測定結果に基づき、前記標準2本鎖核酸と前記試料2本鎖核酸との同一性を識別する識別工程と、
を有し、
前記降温工程を、カチオン性くし型重合体の存在下で行い、
前記降温工程において、前記反応液の降温速度が0.2〜3℃/秒であることを特徴とする、標的塩基配列の識別方法、
(2) 前記カチオン性くし型重合体が、カチオン性基を含む高分子鎖である主鎖と、親水性基である側鎖とを有することを特徴とする前記(1)記載の標的塩基配列の識別方法、
(3) 前記カチオン性くし型重合体の主鎖がポリリジンであることを特徴とする前記(2)記載の標的塩基配列の識別方法、
(4) 前記カチオン性くし型重合体の側鎖がデキストランであることを特徴とする前記(2)又は(3)記載の標的塩基配列の識別方法、
(5) 前記カチオン性くし型重合体の主鎖がグアニジル基を含むことを特徴とする前記(2)〜(4)のいずれかに記載の標的塩基配列の識別方法、
(6) 前記カチオン性くし型重合体の主鎖部分の分子量が5,000以上であることを特徴とする前記(2)〜(5)のいずれかに記載の標的塩基配列の識別方法、
) 前記試料2本鎖核酸と前記標準2本鎖核酸の鎖長が同一であることを特徴とする前記(1)〜()のいずれかに記載の標的塩基配列の識別方法、
) 前記標的塩基配列が、遺伝子変異の特定の遺伝子型の変異部位を含む領域と相同的な塩基配列であることを特徴とする前記(1)〜()のいずれかに記載の標的塩基配列の識別方法、
) 前記標準2本鎖核酸を構成する2本の核酸鎖が、互いに異なる種類の標識物質によりそれぞれ標識されていることを特徴とする前記(1)〜()のいずれかに記載の標的塩基配列の識別方法、
10) 前記標準2本鎖核酸を構成する2本の核酸鎖のうち、一方の核酸鎖を標識する標識物質と他方の鎖を標識する標識物質との間で、エネルギー移動が可能であることを特徴とする前記()記載の標的塩基配列の識別方法、
11) 前記標準2本鎖核酸を構成する2本の核酸鎖が、いずれも蛍光物質により標識されていることを特徴とする前記()又は(10)記載の標的塩基配列の識別方法、
12) 前記標準2本鎖核酸を構成する2本の核酸鎖のうち、一方の核酸鎖が蛍光物質により標識されており、他方の核酸鎖が消光物質により標識されていることを特徴とする前記()又は(10)記載の標的塩基配列の識別方法、
13) 前記標準2本鎖核酸を構成する2本の核酸鎖のうち、一方の核酸鎖が、固相担体と結合可能な標識物質により標識されていることを特徴とする前記()〜(12)のいずれかに記載の標的塩基配列の識別方法、
提供するものである。
本発明の標的塩基配列の識別方法により、識別精度を損なうことなく、競合ハイブリダイゼーションに要する時間を従来法よりも劇的に短縮することができる。
本発明の識別方法と従来法とにおける、標準2本鎖核酸と、標準2本鎖核酸とは異なる塩基配列を有する試料2本鎖核酸との競合ハイブリダイゼーションの一例を模式的に示した図である。 実施例1において、各温度における反応液の蛍光強度をリアルタイムで測定した結果を示した図である。 図2(B)の第3回目の温度降下(96℃/分)の部分を拡大して表したものである。 実施例2において、野生型の標識標準2本鎖核酸を用いた場合の各温度における反応液の蛍光強度をリアルタイムで測定した結果を示した図である。 実施例3において、温度降下を急速(2.5℃/秒)に行ったときの結果をINDEX値の棒グラフで示したものである。
本発明及び本願明細書において、「標的塩基配列を識別する」とは、試料に含まれる核酸が、標的塩基配列を有する核酸であるか否かを識別することを意味する。
本発明及び本願明細書において、「試料2本鎖核酸」とは、標的塩基配列を有するか否かを検出する対象となる試料から調製された核酸であって、互いに相補的な2本の核酸鎖(1本鎖核酸)により構成される2本鎖核酸を意味する。また、「標準2本鎖核酸」とは、標的塩基配列と同一の塩基配列を含む核酸鎖と、当該核酸鎖と相補的な塩基配列を有する核酸鎖とにより構成される2本鎖核酸を意味する。
なお、本発明及び本願明細書においては、互いに相補的な2つの1本鎖核酸の組み合わせにおいて、それらが2本鎖を形成している場合はもちろんのこと、1本鎖核酸に解離している状態のものも、2本鎖核酸と呼ぶことがある。なぜなら、互いに相補的な1本鎖核酸は、溶液状態で共存していると自然に2本鎖を形成することがあるからである。
本発明の標的塩基配列の識別方法(以下、「本発明の識別方法」ということがある。)は、試料2本鎖核酸の塩基配列が標的塩基配列を含むか否かを識別する方法において、試料2本鎖核酸と、標的塩基配列と同一の塩基配列を含む標準2本鎖核酸とを混合して熱変性させた後、温度を低下させて競合ハイブリダイゼーションを行う際に、カチオン性くし型重合体存在下で競合ハイブリダイゼーションを行うことを特徴とする。カチオン性くし型重合体が添加されていることにより、降温速度を速めた場合であっても、塩基配列を高い精度で識別することができる。
図1は、本発明の識別方法と従来法とにおける、標準2本鎖核酸と、標準2本鎖核酸とは異なる塩基配列を有する試料2本鎖核酸との競合ハイブリダイゼーションの一例を模式的に示した図である。図1(A)は、従来法の競合ハイブリダイゼーションを緩やかな温度降下条件で行う場合を示し、図1(B)は、従来法の競合ハイブリダイゼーションを急激な温度降下条件で行う場合を示し、図1(C)は、本発明の識別方法の競合ハイブリダイゼーションを急激な温度降下条件で行う場合を示している。
競合ハイブリダイゼーション法の一例としてPCR−PHFA法がある。PCR−PHFA法では、一般的には、2本鎖核酸の熱変性温度から温度を降下させながらハイブリダイゼーション反応を行うが、緩やかな温度降下(0.1℃/分)が重要とされている。競合ハイブリダイゼーション反応の際の降温速度が緩やかであれば、完全に相補的な核酸鎖同士の2本鎖形成(ホモデュープレックス)が、塩基配列の異なる核酸鎖同士の2本鎖形成(ヘテロデュープレックス)に対して優先的に起こる{図1(A)}。一方、降温速度を速めた場合には、ハイブリダイゼーション反応が各温度での平衡に達する前に温度が変化するため、塩基配列の識別精度が十分ではなく、ホモデュープレックスの形成のみならずヘテロデュープレックスの形成も起こってしまう{図1(B)}。特に、標準2本鎖核酸と試料2本鎖核酸との間の塩基配列の違いがわずか1塩基である場合は、ヘテロデュープレックスが生じやすく、変異の識別を誤ることになる。従って、従来のPCR−PHFA法では、反応の時間を容易に短縮できないことが問題であった。
これに対して、本発明の識別方法では、反応液中にカチオン性くし型重合体を添加しているため、反応液の温度を急激に低下させた場合でも、ホモデュープレックスが優先的に起こるため、試料2本鎖核酸が標的塩基配列と同一の塩基配列を有するか否かを、高精度に検出することができる。競合ハイブリダイゼーション反応をカチオン性くし型重合体存在下で行うことによりこのような効果が得られる理由は明らかではないが、カチオン性くし型重合体により、ハイブリダイゼーション反応の反応速度を大幅に速められる結果、平衡状態に速やかに達することができるためではないかと推察される。
本発明の識別方法では、カチオン性くし型重合体が存在しない場合には、温度変化が急速なため異なる塩基配列間で区別ができないような場合であっても、塩基配列の識別が可能である。実際に、後記実施例1では、反応液中にカチオン性くし型重合体を添加した場合、通常の条件よりも降温速度を100倍速めた条件で競合ハイブリダイゼーションを行った場合にも、1塩基のみが相違する塩基配列の識別性を保持していた。一方で、カチオン性くし型重合体未添加の場合、標準2本鎖核酸と試料2本鎖核酸の塩基配列が1塩基のみ異なる場合には、誤ったハイブリダイゼーション、すなわちヘテロデュープレックスが多く形成され、標準2本鎖核酸と試料2本鎖核酸の塩基配列が同じ場合(マッチ)と異なる場合(ミスマッチ)とを区別することができなかった。この結果は、カチオン性くし型重合体未添加の場合、熱力学平衡の観点からは当然のことである。
反応液中に似かよった塩基配列を有する核酸鎖が存在する場合、カチオン性くし型重合体存在下では、高速な温度変化にもかかわらず、完全に相補的な塩基配列を有する核酸鎖同士が優先的に相補鎖を形成することは、本発明者らにより初めて見出された知見であって、従来の核酸化学、熱力学の常識を大きく覆すものである。この知見により、PCR−PHFA法などの競合ハイブリダイゼーション反応において、従来必要とされていた精度の高い温度制御が不要となり、測定時間も1分以内にまで短縮することが可能であることが示された。
本発明において用いられるカチオン性くし型重合体は、主鎖に対してくし型状に側鎖が導入されており、かつカチオン性基を含む重合体であれば、特に限定されるものではないが、カチオン性基を含む高分子鎖(ポリカチオン)を主鎖とする重合体に、側鎖としてくし型状に親水性基を導入した重合体であることが好ましく、主鎖であるポリカチオンに、親水性基を含む高分子をくし型状に導入した共重合体(以下、カチオン性くし型共重合体」)であることがより好ましい。
カチオン性くし型共重合体の主鎖であるポリカチオンとしては、リジン、アルギニン、ヒスチジン、オルニチン等のアミノ酸、グルコサミン等の糖、アリルアミン、エチレンイミン等のカチオン性単量体のうち、1種類又は複数種類を重合して得られた重合体や、これらの誘導体が挙げられる。本発明においては、ポリリジン、ポリアルギニン、リジンとアルギニンの共重合体、又はこれらの誘導体を主鎖とするカチオン性くし型共重合体を用いることが好ましい。
カチオン性単量体の重合体の誘導体としては、例えば、重合体を構成する単量体の一部又は全部に官能基を付加したもの等が挙げられる。このような官能基としては、重合体が有するカチオン性を損なわない限り特に限定されるものではないが、例えば、グアニジル基等が挙げられる。
カチオン性くし型共重合体の側鎖である親水性基を含む高分子としては、デキストラン、アミロース、セルロース等の多糖類、ポリエチレングリコール等のポリエーテル、及びこれらの誘導体等が挙げられる。本発明においては、デキストラン、ポリエチレングリコール、又はこれらの誘導体を側鎖とするカチオン性くし型共重合体を用いることが好ましい。
側鎖として用いる親水性基を含む高分子の誘導体としては、親水性を損なわないものであれば特に限定されるものではなく、例えば、カルボキシメチル誘導体、アミノ酸誘導体、アルデヒド誘導体等が挙げられる。
本発明において用いられるカチオン性くし型重合体としては、主鎖がポリリジン若しくはポリアルギニン又はこれらの誘導体であり、側鎖がデキストランであるカチオン性くし型共重合体であることが好ましく、主鎖がポリリジン若しくはポリアルギニン又はこれらのグアニジン誘導体(グアニジル基を含む誘導体)であり、側鎖がデキストランであるカチオン性くし型共重合体であることがより好ましく、ポリリジン又はグアニジド化ポリリジンにデキストランをグラフト重合して得られるカチオン性くし型共重合体であることがさらに好ましい。
本発明において用いられるカチオン性くし型重合体の大きさは、競合ハイブリダイゼーションに用いる試料2本鎖核酸や標準2本鎖核酸の鎖長に応じて適切なものを選択すればよい。本発明においては、主鎖部分の分子量が2,000以上であることが好ましく、5,000以上であることがより好ましい。例えば、ポリリジン又はグアニジド化ポリリジンにデキストランをグラフト重合して得られるカチオン性くし型共重合体を用いる場合には、主鎖部分の分子量が2,000〜20,000、好ましくは5,000〜15,000であることが好ましい。なお、主鎖のポリカチオンの重合度を調整することにより、所望の大きさの主鎖部分を有するカチオン性くし型重合体を得ることができる。
なお、特許文献3〜5に記載されているように、カチオン性くし型重合体が鎖置換反応における鎖交換促進効果を有していることは公知である。しかしながら、特許文献3〜5には、1本鎖核酸同士の2本鎖形成あるいは競合ハイブリダイゼーションにおける作用効果については、なんら示されていない。競合ハイブリダイゼーションをカチオン性くし型重合体存在下で行うことにより、塩基配列の識別精度を損なうことなく反応液の降温速度を上げて反応に要する時間を大幅に短縮することができることは、本発明者らにより初めて得られた知見である。
ここで、鎖置換反応とは、2本鎖核酸の一方の核酸鎖と類似あるいは全く同一の塩基配列を有する1本鎖核酸が、実際に2本鎖を形成している2本鎖核酸のうちの一方の核酸鎖と置き換わる反応をいう。これに対して、ハイブリダイゼーション反応は、相補的な塩基配列を有する2つの1本鎖核酸同士が2本鎖核酸を形成する反応をいう。さらに、競合ハイブリダイゼーション反応は、1つの1本鎖核酸に対して、2本以上の1本鎖核酸が競争的にハイブリダイズすることによって2本鎖核酸を形成する反応である。最適な反応条件で競合ハイブリダイゼーション反応を行った場合には、競合する1本鎖核酸の中でもより安定な2本鎖核酸を形成する1本鎖核酸が優先的にハイブリダイズするため、結果として、最も安定な2本鎖核酸が形成される。
本発明において用いられる試料2本鎖核酸は、例えば、核酸増幅反応を利用して調整することができる。核酸増幅反応としては、特に限定されるものではなく、PCR法、LCR(Ligase chain Reaction)法、3SR(Self−sustained Sequence Replication)法、SDA(Strand Displacement Amplification)法等の公知の核酸増幅反応の中から適宜選択して用いることができる(Manak,DNA Probes 2nd Edition p255〜291,Stockton Press(1993))。増幅された核酸断片を2本鎖核酸として得ることができるため、本発明においては、特にPCR法が好適である。なお、核酸増幅物が2本鎖核酸ではない場合には、プライマー伸長反応等を利用して2本鎖核酸として調製する工程が必要である。
本発明において用いられる標準2本鎖核酸も試料2本鎖核酸と同様に、核酸増幅反応を利用して調製することができるが、公知の化学合成によって調製することが好ましい。化学合成法のほうが、標識物質の導入位置等の自由度が高いためである。化学合成法としては、トリエステル法、亜リン酸法等が挙げられる。例えば、液相法又は不溶性の担体を使った固相合成法等を利用した通常の自動合成機(APPLIED BIOSYSTEMS社392等)を使用して1本鎖のDNAを大量に調製し、その後アニーリングを行うことにより2本鎖DNAを調製することができる。
本発明の識別方法においては、試料2本鎖核酸と標準2本鎖核酸の鎖長は相違していてもよいが、両者が同じ鎖長であることが好ましい。鎖長の違いによるハイブリダイゼーション効率の影響を抑えることができるため、より高精度に1塩基の相違を識別することができるためである。
具体的には、本発明の識別方法は、試料2本鎖核酸と、標的塩基配列と同一の塩基配列を含む標準2本鎖核酸とを、一の反応液内において熱変性処理する熱変性工程と、前記熱変性工程の後、前記反応液の温度を低下させることにより、前記試料2本鎖核酸と前記標準2本鎖核酸とにおいて競合ハイブリダイゼーションを行う降温工程と、前記標準2本鎖核酸を構成していた核酸鎖と、前記試料2本鎖核酸を構成していた核酸鎖とにより形成された2本鎖核酸を測定する測定工程と、前記測定工程により得られた測定結果に基づき、前記標準2本鎖核酸と前記試料2本鎖核酸との同一性を識別する識別工程と、を有し、前記降温工程を、カチオン性くし型重合体の存在下で行うことを特徴とする。
熱変性工程は、試料2本鎖核酸と標準2本鎖核酸とを、一の反応液内において熱変性処理する工程である。具体的には、適当な組成の反応液に、試料2本鎖核酸と標準2本鎖核酸とをそれぞれ添加した後、当該反応液を加熱することにより熱変性処理を行う。例えば、当該反応液を90〜100℃、好ましくは95〜100℃に一定時間加熱することにより、当該反応液に含有される試料2本鎖核酸と標準2本鎖核酸とを変性させることができる。なお、試料2本鎖核酸又は標準2本鎖核酸は、それぞれを含有する溶液として、反応液に添加してもよい。
カチオン性くし型重合体は、熱変性処理後降温工程開始前に反応液に添加してもよいが、熱変性工程前に反応液に添加しておくことが好ましい。反応液に添加するカチオン性くし型重合体の量は、反応液中において、カチオン性くし型重合体と核酸の荷電比([カチオン性くし型重合体の電荷]/[核酸の電荷])に基づいて決定することができ、荷電比が0.01〜10,000の範囲内で適切な値を選択する。なお、「核酸の電荷」は、反応液中に存在する全核酸の電荷の総和である。
また、反応液には、その他、反応液のpHを調整する緩衝剤や、2本鎖形成に必要な1価あるいは2価の陽イオン、2本鎖核酸の安定性に影響を与える有機溶媒等を添加することができる。緩衝剤としては、例えば、トリス塩酸等が挙げられる。陽イオンとしては、例えば、ナトリウムイオンやマグネシウムイオン等が挙げられる。有機溶媒としては、例えば、ジメチルスルフォキシド(DMSO)、ジメチルフォルムアミド(DMF)等が挙げられる。
次いで、降温工程として、熱変性工程後の反応液の温度を低下させることにより、カチオン性くし型重合体の存在下で、前記試料2本鎖核酸と前記標準2本鎖核酸とにおいて競合ハイブリダイゼーションを行う。降温工程においては、変性温度から標準2本鎖核酸のTm値以下の温度まで低下させればよく、反応終了時点の反応液の温度は、標準2本鎖核酸及び試料2本鎖核酸の鎖長や塩基配列に応じて適宜設定することができる。
本発明の識別方法においては、カチオン性くし型重合体存在下で行うため、高速で、例えば0.2℃/秒以上の速度で、変性温度から標準2本鎖核酸のTm値以下の温度まで降下させて競合ハイブリダイゼーションを行うことができる。なお、0.2℃/秒よりも穏やかな降温速度で実施することもできる。このような高速な温度変化は、温度調節が可能な専用の装置やリアルタイム−PCR装置等を用いて行うことができる。
本発明においては、反応液の降温速度が0.2〜3℃/秒であることが好ましく、0.5〜3℃/秒であることがより好ましく、0.5〜2℃/秒であることも好ましい。このように、高速で降温させることにより、降温工程に要する時間を大幅に短縮することができる。このため、本発明の識別方法により、30秒間程度、長くても60秒間程度で、競合ハイブリダイゼーションを行うことができる。
次いで、測定工程として、標準2本鎖核酸を構成していた核酸鎖と、試料2本鎖核酸を構成していた核酸鎖とにより形成された2本鎖核酸を測定し、識別工程として、得られた測定結果に基づき、前記標準2本鎖核酸と前記試料2本鎖核酸との同一性を識別する。以後、「標準2本鎖核酸を構成していた核酸鎖と、試料2本鎖核酸を構成していた核酸鎖とにより形成された2本鎖核酸」を、「鎖組み換えにより形成された2本鎖核酸」ともいう。
反応液中に十分量の鎖組み換えにより形成された2本鎖核酸が存在していた場合には、試料2本鎖核酸は標準2本鎖核酸と同一であり、標的塩基配列を有していると判断する。一方、十分量の鎖組み換えにより形成された2本鎖核酸が存在していなかった場合には、試料2本鎖核酸は標準2本鎖核酸と同一ではないと判断することができる。なお、本発明において、「鎖組み換えにより形成された2本鎖核酸を測定する」とは、鎖組み換えにより形成された2本鎖核酸自体を検出することに加えて、標準2本鎖核酸に対する鎖組み換えにより形成された2本鎖核酸の割合を測定することも含む。
なお、鎖組み換えにより形成された2本鎖核酸の測定は、降温工程の終了時、すなわち競合ハイブリダイゼーション後(エンドポイント)において行ってもよく、降温工程の開始時及び終了時に行い、両者の測定値を比較することにより、試料2本鎖核酸が標準2本鎖核酸と同一であるか否かを識別してもよい。また、測定工程における測定は、降温工程において経時的に(リアルタイムに)行ってもよい。
標準2本鎖核酸と試料2本鎖核酸のいずれかを予め標識物質により標識しておくことにより、当該標識物質を指標として、鎖組み換えにより形成された2本鎖核酸を測定することができる。一般的には予め準備できるため、標準2本鎖核酸を標識しておくほうが好都合である。中でも、標準2本鎖核酸を構成する2本の核酸鎖が、互いに異なる種類の標識物質によりそれぞれ標識されていることが好ましい。このように予め標識した場合には、鎖組み換えにより形成された2本鎖核酸は、1種類の標識物質でのみ標識されており、2種類の標識物質により標識されている標準2本鎖核酸と区別して検出することができる。
標識物質としては、非放射性、放射性物質のどちらを用いてもよいが、好ましくは非放射性物質が用いられる。非放射性の標識物質としては、直接標識可能なものとして蛍光物質[例えばフルオレッセイン誘導体(フルオレッセインイソチオシアネート等)、ローダミン及びその誘導体(テトラメチルローダミンイソチオシアネート等)]、化学発光物質(例えばアクリジン等)等が挙げられる。また、標識物質と特異的に結合する物質を利用することにより、間接的に標識物質を検出することができる。このような標識物質としては、ビオチン、リガンド、特定の核酸あるいはタンパク質ハプテン等が挙げられる。そして、標識物質と特異的に結合する物質としては、ビオチンの場合にはこれに特異的に結合するアビジンあるいはストレプトアビジンが、ハプテンの場合はこれに特異的に結合する抗体が、リガンドの場合はレセプターが、特定の核酸あるいはタンパク質の場合はこれと特異的に結合する核酸、核酸結合タンパク質あるいは特定のタンパク質と親和性のあるタンパク質等が利用できる。 上記ハプテンとしては2,4−ジニトロフェニル基を有する化合物やジゴキシゲニンを使うことができ、更にはビオチンあるいは蛍光物質等もハプテンとして使用することができる。これらの標識物質は、いずれも単独又は必要があれば複数種の組み合わせで公知の手段(特開昭59−93099号公報、特開昭59−148798号公報、特開昭59−204200号公報参照。)により、導入することができる。
また、2種類の標識物質のうち、いずれかの標識物質を固相単体に結合可能な物質とした場合には、汎用されている固液分離作業を行うことにより、標準2本鎖核酸と試料2本鎖核酸との間で鎖組み換えが生じた程度を測定することができる。例えば、標準2本鎖核酸の一方の鎖を標識物質Aで標識し、他方の鎖を固相単体に結合可能な標識物質Bで標識し、競合ハイブリダイゼーション後の反応液を標識物質Bが結合可能な固相単体に接触させる。その後、当該固相担体に結合している2本鎖核酸中の標識物質Aを検出する。鎖組み換えが起こった場合には、固相担体に結合している2本鎖核酸中の標識物質Aにより標識されている2本鎖核酸の割合が減少する。なお、標識した2本鎖核酸の一方の鎖が標識されていない鎖と置換した場合には、新しく生成した2本鎖核酸は固相担体への結合は可能であるが、検出のための標識がないため、検出することはできない。
特に、本発明においては、互いにエネルギー移動可能な2種類の標識物質(例えば、励起により蛍光を発生するドナー標識物質と、その蛍光を吸収するアクセプター標識物質)を用いて、これらの標識物質間のエネルギー移動によるエネルギー変化の度合いを指標として、鎖組み換えにより形成された2本鎖核酸を測定することが好ましい。
標識物質間のエネルギー移動とは、エネルギーを発生するドナー標識物質とこのドナー標識物質から発生したエネルギーを吸収するアクセプター標識物質との少なくとも2種の標識物質が、互いに近接した状態にある場合に、ドナー標識物質からアクセプター標識物質へのエネルギーの移動をいう。例えば、2種の標識物質が蛍光物質である場合、ドナー標識物質を励起して生じる蛍光をアクセプター標識物質が吸収し、このアクセプター標識物質が発する蛍光を測定するか、又はドナー標識物質を励起して生じる蛍光をアクセプター標識物質が吸収することにより起こるドナー標識物質の消光を測定することができる(PCR Methods and applications 4,357−362(1995)、Nature Biotechnology 16,49−53(1998))。なお、ドナー標識物質の蛍光波長とアクセプター標識物質の吸収波長に重なりがなくてもエネルギー移動が起こる場合があるが、このようなエネルギー移動も本発明に含まれるものである。また、アクセプター標識物質は消光物質であってもよい。このようなくクエンチャーとして、例えばDABCYLやブラックホール等が挙げられる。
互いにエネルギー移動可能な2種類の標識物質としては、互いに近接した状態でエネルギー移動可能なものであれば特に制限されないが、中でも蛍光物質、遅延蛍光物質が好ましく、場合によっては化学発光物質、生物発光物質等を用いることもできる。このような標識物質の組み合せとしては、フルオレセイン及びその誘導体(例えばフルオレセインイソチオシアネート等)とローダミン及びその誘導体(例えばテトラメチルローダミンイソチオシアネート、テトラメチルローダミン−5−(and−6−)ヘキサノイックアシッド等)との組み合わせ、フルオレセインとDABCYLとの組み合わせ等が挙げられ、これらの中から任意の組み合わせを選択することができる(Nonisotopic DNA Probe Techniques.Academic Press(1992))。
その他、近接させた場合に熱エネルギーの放出が生じる組み合わせの分子であってもよい。このような標識物質の組み合わせとしては、Alexa Fluor(登録商標)488(インビトロジェン社製)、ATTO 488(ATTO-TEC GmbH社製)、Alexa Fluor(登録商標)594(インビトロジェン社製)、及びROX(Carboxy-X-rhodamine)からなる群より選択される1とBHQ(登録商標、Black hole quencher)−1又はBHQ(登録商標)−2との組み合わせ等が挙げられる。
なお、グアニンは、FAMが近接した場合にクエンチする能力があるため(Nucleic acids Research 2002,vol.30.no.9 2089-2195)、これを利用してもよい。例えば、標準2本鎖核酸の一方の鎖の3’端部をFAMで標識した場合であって、他方の鎖の5’末端の塩基がグアニンである場合には、当該他方の鎖を標識物質で標識せずともよい。
標準2本鎖核酸又は試料2本鎖核酸に、標識物質を導入する方法としては、一般的な核酸への標識導入方法を採用することができる。例えば、標識物質を核酸に直接化学的に導入する方法(Biotechniques 24,484−489(1998))、DNAポリメラーゼ反応あるいはRNAポリメラーゼ反応により標識物質結合モノヌクレオチドを導入する方法(Science 238,336−3341(1987))、標識物質を導入したプライマーを用いてPCR反応を行うことにより導入する方法(PCR Methods and Applications 2,34−40(1992))等が挙げられる。
標準2本鎖核酸又は試料2本鎖核酸に標識物質を導入する位置は、鎖置き換え反応によりエネルギー移動が生じたり、消失する位置、すなわち、核酸鎖の3’端部及び/又は5’端部である必要がある。具体的には、本発明において、5’端部及び3’端部とは、核酸鎖の5’末端及び3’末端からそれぞれ30塩基以内の範囲を示すが、両方の標識物質が近ければ近いほどエネルギー移動を起こし易いため、好ましくはそれぞれの末端から10塩基以内であり、最も好ましくは5’末端及び3’末端である。ここで、標識物質を相補鎖とハイブリダイズする塩基部分に多数導入すると1塩基程度の置換が検出できなくなる可能性があるため、それぞれの核酸鎖の端部分のみに導入することが好ましい。例えば、2種の標識物質の一方を一方の核酸鎖の5’端部(3’端部)に導入すると共に、これと相補的な他方の核酸鎖の3’端部(5’端部)に他方の標識物質を導入することにより、ハイブリダイゼーション反応に影響を与えることなく、両核酸鎖は鎖置き換え反応により、エネルギー移動を生じたり、消失したりする。
本発明の識別方法は、遺伝子変異の識別に好適に用いることができる。具体的には、遺伝子変異の変異部位を含む領域の塩基配列を標的塩基配列とする。なお、本発明において遺伝子変異とは、同一生物種の個体間において存在する遺伝子の塩基配列の相違を意味し、変異部位とは、塩基配列中の相違する部位を意味する。具体的には、塩基配列中の1又は複数の塩基が置換・欠失・挿入されていることにより、塩基配列の相違は生じる。このような遺伝子変異として、例えば、SNPやCNV多型等が挙げられる。また、本発明において遺伝子変異とは、SNP等の遺伝子多型のような先天的な変異に加えて、同一個体中の細胞間において存在する遺伝子の塩基配列の相違である体細胞変異等のように後天的な変異も含む。
本発明の識別方法において、標的となる遺伝子変異としては、がん関連遺伝子、遺伝病に関連する遺伝子、薬剤の代謝や効き目に関する遺伝子、ウィルス遺伝子、及び細菌遺伝子における変異と呼ばれるものである。がん関連遺伝子としては、例えばKRAS遺伝子、BRAF遺伝子、PTEN遺伝子、PIK3CA遺伝子、ALK融合遺伝子、EGFR遺伝子、NRAS遺伝子、p53遺伝子、BRCA1遺伝子、BRCA2遺伝子、又はAPC遺伝子等が挙げられる。遺伝病に関連する遺伝子としては、各種先天性代謝異常症等との関連が報告されている遺伝子等が挙げられる。薬剤の代謝に関しては薬剤の代謝に関わる酵素であるシトクロムP450やトランスポーター等の遺伝子が挙げられる。ウィルス遺伝子、細菌遺伝子としては、例えばC型肝炎ウィルス、B型肝炎ウィルス等の遺伝子が挙げられる。さらに、病気等の原因とは必ずしも直接は関係のないヒト白血球抗原遺伝子であるHLA等も移植の適合性や薬の副作用等と関連して重要である。さらに、ミトコンドリアにコードされている遺伝子変異も病気との関連が示唆されており、これらの遺伝子の変異も標的となりうる。
本発明の識別方法は、その高い識別精度及び迅速性から、臨床検査等においても有用である。医療現場における遺伝子検査の実用性を考えた場合に、測定時間の短縮は非常に重要である。本発明の識別方法により、SNP等の生殖細胞変異のみならず、体細胞変異も高精度にかつ超短時間で識別することができる。
例えば、KRASはシグナル伝達系のタンパク質であり、プロトオンコ―ジーンである。多くのがん細胞においてKRAS遺伝子に変異が生じていることが報告されている。特にKRAS遺伝子のコドン12、13にアミノ酸置換を伴う変異が顕著に見られ、13種類の変異パターンが存在することが知られている。最近、KRAS遺伝子に変異がある患者では、抗がん剤であるEGFR抗体薬(セツキシマブ、パニツムマブ)等が効力を発揮できないことが次々に明らかとなっている。このような抗がん剤治療は副作用のみならず高額な費用を要する。したがって、治療前にKRAS遺伝子変異の検査を行い、効く患者のみを選別して治療することがオーダーメード医療の一環として提案されている。
また、EGFR抗体薬であるセツキシマブは、大腸がん治療薬として使用されている。大腸がんの年間罹患数は10万人弱であり、平成17年の死亡者数は4万800人であった。食生活の欧米化により増え続ける傾向にあり、4年後には40,000人の大腸がん患者がEGFR抗体薬治療の対象となるとのEGFR抗体薬のメーカーによる試算もある。当該試算が正しければ、KRAS遺伝子の検査市場は日本国内だけで4年後には4億円を越すものと予想される。
しかしながら、従来の識別法では、体細胞変異を十分な精度で迅速に識別することは困難であり、擬陽性が多い、と言う問題があった。本発明の識別方法は、体細胞変異をも非常に精度よく迅速に識別可能であることから、臨床検査における精度改善のみならず、医療費の削減にも資することが期待できる。
本発明の識別方法は、以下のようにして、PCR−PHFA法に応用することができる。まず、検出したい変異部分(標的塩基配列)を増幅するプライマーを設計し、試料核酸を鋳型として、変異部分を含む増幅産物を得る。一方、変異部分を含む増幅産物と同じ領域を含み、かつ、エネルギー移動が可能な2種類の標識物質により、それぞれ標識された核酸鎖から形成される標準標識2本鎖核酸も用意する。
例えば、一方の核酸鎖の5’末端をフルオレッセイン等のドナー標識物質で標識し、もう一方の核酸鎖の3’末端をDABCYL等のアクセプター標識物質で標識する。この二つの標識された核酸鎖を混合して標準標識2本鎖核酸とする。標識された核酸鎖は、標識の導入も含めて化学合成を利用して調製することができる。
実際に試料中の遺伝子変異を検出するには、PCRにて増幅した反応液、標準標識2本鎖核酸、カチオン性くし型重合体を添加して反応液を調製する。この反応液を90℃程度で熱処理を行って変性し、それから、反応液の温度を、標準標識2本鎖核酸のTm値程度、例えば70℃程度まで、0.2℃/秒以上、例えば2℃/秒程度の降温速度で下げることにより、競合ハイブリダイゼーションを行い、最後に蛍光測定を行う。蛍光測定を行う温度は、70℃でもよく、室温付近でもよい。また、リアルタイム−PCR装置等を使って降温中の蛍光変化を逐次測定してもよい。得られた蛍光値から、鎖組み換えにより形成された2本鎖核酸を測定して鎖の組換えの程度を判断し、試料中の核酸の塩基配列が、標準標識2本鎖核酸と同じかどうかを判定する。蛍光測定の測定誤差等を小さくするため、熱変性処理前の反応液の蛍光値、あるいは熱変性処理時の蛍光値を利用して補正することもできる。
本発明の標的塩基配列識別用キットは、標的塩基配列を識別する方法に用いられるキットであって、標的塩基配列と同一の塩基配列を含む標準2本鎖核酸と、カチオン性くし型重合体とを含むことを特徴とする。その他、標的塩基配列識別用キットには、緩衝剤、陽イオン、有機溶媒等の競合ハイブリダイゼーションの反応液に添加する試薬や、標識物質の標識を検出するための試薬等を組み合わせても良い。このように、本発明の識別方法に必要な試薬等をキット化することにより、より簡便かつ短時間で標的塩基配列の識別を行うことができる。
本発明の標的塩基配列識別用キットは、特に、遺伝子変異の特定の遺伝子型の変異部位を含む領域と相同的な塩基配列を標的塩基配列とし、遺伝子変異を検出するために用いられることが好ましい。
以下、実施例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
がん遺伝子であるKRASのコドン12の遺伝子変異を識別対象の変異部位とし、当該変異部位を含む部分領域の塩基配列を標的塩基配列として、試料2本鎖核酸の遺伝子型が、標準2本鎖核酸の遺伝子型と同一か否かを、本発明の識別方法を用いて識別した。なお、使用する標準2本鎖核酸及び試料2本鎖核酸は、常法の化学合成法により調製した。
まず、コドン12の野生型(Wild)及び変異型(G12S)の標準2本鎖核酸をそれぞれ作製した。変異型(G12S)は、コドン12の点突然変異により、グリシンがセリンに改変されている変異型である。各標準2本鎖核酸は、一方の核酸鎖の両末端をFAM標識(グレンリサーチ社製)し、他方の核酸鎖の両末端をDABCYL標識(グレンリサーチ社製)した。各遺伝子型の標準2本鎖核酸は、構成する2本の核酸鎖を1本ずつ化学合成したものをハイブリダイズさせることにより調製した。表1に、化学合成した核酸鎖の配列を、遺伝子型ごとに示す。表1中、コドン12及びコドン13は下線で示し、変異部位は小文字で表した。また、「6−FAM」はFAM標識を、「DAB」はDABCYL標識を、右欄の数字は配列表中の対応する配列番号を、それぞれ示す。
また、表1に記載の塩基配列と同じ塩基配列であって、標識のないものを合成し、互いに相補的な核酸鎖同士を混合したものを、試料2本鎖核酸とした。
500nM wild−FAM(野生型の標準2本鎖核酸のうちのFAM標識された1本鎖核酸)(1μL)、500nM wild−DAB(野生型の標準2本鎖核酸のうちのDABCYL標識された1本鎖核酸)(1μL)、2M NaCl(1μL)、ROX(0.6μL) 、0.5M EDTA(2μL)、カチオン性くし型重合体(1μL)、1xPCR buffer(12.4μL)、及び5μM 試料2本鎖核酸 (2μL)を混合し、蛍光PHFA反応液とした。カチオン性くし型共重合体のかわりに純水(1μL)を混合したものを対照とした。ROX溶液はインビトロジェン社製のものを使用した。
なお、カチオン性くし型重合体としては、ポリリジンを主鎖としてデキストランを側鎖に重合させたものであり、3種類のカチオンポリマー(CP1〜CP3)を用いた。CP1は分子量が5,000のポリリジン主鎖に88wt%のデキストランが付加されたもの、CP2は分子量15,000のポリリジン主鎖に88wt%のデキストランが付加されたもの、CP3は分子量15,000のグアニジド化ポリリジン主鎖に88wt%のデキストランが付加されたものである。反応液には、カチオンポリマーを、反応液全体に存在する核酸のリン酸残基濃度から総アニオン量を算出し、そのアニオン量に対しカチオンポリマー量が約8倍量になるように添加した。
この調製した蛍光PHFA反応液を、リアルタイムPCR装置(ABI−7900)にセットし、35℃で15分間保持し、その後、95℃から35℃までの温度域に関して3種類の降温速度条件でFAMの蛍光を連続的に測定した。なお、ROXは内部標準物質として添加し、FAMの蛍光値をROXの蛍光値で割った値をFAMの相対蛍光値とした。
各温度における反応液の蛍光強度をリアルタイムで測定した結果を図2と図3に示す。
図中、CP(−)はポリマーを添加しなかった場合の結果を、CP1〜CP3は各ポリマーを添加した結果を、それぞれ示す。
図2(A)は、試料2本鎖核酸と標識標準2本鎖核酸の塩基配列がいずれもG12Sであり、両者が完全に一致する場合の温度変化に対する蛍光変化である。標識標準2本鎖核酸は、過剰に存在する試料2本鎖核酸により競合され、鎖組換え反応が起こる。この場合には、FAMの蛍光はDABCYLで消光することができず、温度が降下してもFAMの蛍光は一定の値を保つ。
一方、図2(B)は、試料2本鎖核酸が野生型であり、標識標準2本鎖核酸がG12Sであり、両者が1塩基異なる場合を示したものである。この場合には、標識標準2本鎖核酸と試料2本鎖核酸の両方がそれぞれで優先的に2本鎖を形成するために、鎖の組み換えは起きにくい。従って、鎖組み換えによる2本鎖核酸の形成とともに、FAMの蛍光はDABCYLで消光され低下する。
図2(C)は、温度変化のプロフィールを示す。35℃で15分間保持し、その後、第1回目の温度降下では、95℃から65℃まで0.25℃/分の速度で比較的ゆっくり降下させた。ふたたび95℃に加熱し、第2回目の温度降下では、65℃まで1℃/分で温度を降下させた。再度95℃に加熱し、第3回目の温度降下では、96℃/分で35℃まで温度降下させたことを示す。
図3は、図2(B)の第3回目の温度降下(96℃/分)の部分を拡大して表したものである。
この結果、図2(A)では、いずれのポリマーを添加した場合でも、すべての温度変化速度において蛍光は低下せず、FRETは観察されなかった。これは、すべての反応において標識標準2本鎖核酸は過剰の試料2本鎖核酸との間で鎖組み換えが起き、FAMの蛍光はDABCYLで消光できなくなっていたためと考えられる。
一方、図2(B)では、第1回目の温度降下(0.25℃/分)では、CP3のポリマーを添加した場合を除いて、温度降下により蛍光が減少していた。これは、CP1及びCP2のポリマーを添加した反応では、標識標準2本鎖核酸がもとの状態にもどり、FRETが起こり、FAMの蛍光がDABCYLで消光されていることを示している。第2回目の温度降下(1℃/分)でも、第1回目の温度降下とほぼ同じ挙動を示しており、この温度降下速度でも、CP3を除いたすべての反応で、完全に相補的な核酸鎖同士が優先的に2本鎖を形成していた。図3に示すように、第3回目の温度降下(96℃/分)では、すべてのポリマーを添加した反応で、温度降下により蛍光が減少しており、1塩基の相違が識別できた。
なお、CP3のポリマーを添加した場合に、第1回目と第2回目の温度降下で蛍光が減少しなかった。これは、CP3のポリマーを添加したことにより、標準2本鎖核酸のTm値が降下し、第1回目と第2回目の65℃までの温度降下では2本鎖が形成されなかったためと考えられる。第3回目の温度降下で35℃まで降下させることにより、2本鎖を形成されたため、効果が観察されたものである。
[実施例2]
PCRにより調製した試料2本鎖核酸を用いて、実施例1と同様にして、KRASのコドン12の野生型(Wild)及び変異型(G12S)を、本発明の識別方法を用いて識別した。カチオン性くし型重合体として、実施例1で最も効果が高かったCP2のポリマーを用いた。
PCR反応液の組成は、250nM KFプライマー、250nM KRプライマー、250μM dNTP、1×PCRバッファー、2.5ユニット Taq DNAポリメラーゼ(Takara Taq HotStart Version)とし、全体の反応液を47.5μLとした。このPCR反応液に10ng/μLの鋳型DNAを2.5μL添加し、全体の反応容量を50μLとした。PCRの反応条件は95℃3分間の処理後、95℃(20秒間)→57℃(30秒間)→72℃(30秒)の変性、アニーリング、伸長反応を、40サイクル行った。使用したKFプライマー及びKRプライマーの塩基配列を表2に示す。表中の右欄の数字は配列表中の対応する配列番号を示す。なお、鋳型DNAはがん細胞由来DNA(DLD−1とA549)を用いた。DLD−1のKRASの遺伝子型はG13D(ヘテロ)であり、A549のKRASの遺伝子型はG12Sの変異型(ホモ)である。これらの配列についてはダイレクトシークエンスにより配列を確認している。
得られたPCR反応液(12.4μL)、500nM wild−FAM(野生型の標準2本鎖核酸のうちのFAM標識された1本鎖核酸)(1μL)、500nM wild−DAB(野生型の標準2本鎖核酸のうちのDABCYL標識された1本鎖核酸)(1μL)、2M NaCl(1μL)、ROX(0.6μL) 、0.5M EDTA(2μL)、及びCP3のポリマー(1μL)を混合し、蛍光PHFA反応液とした。反応液には、カチオンポリマーを、反応液全体に存在する核酸のリン酸残基濃度から総アニオン量を算出し、そのアニオン量に対しカチオンポリマー量が約8倍量になるように添加した。PCR反応液は、DLD−1由来のゲノム(野生型とG13Dの変異の両方の遺伝子を持つゲノム)を鋳型としたもの(DLD−1)と、A549由来のゲノム(G12Sの変異遺伝子のみを持つゲノム)を鋳型としたものの2種類を、それぞれ使用した。実施例1と同様にリアルタイムPCR装置を用いて、調製した蛍光PHFA反応液の温度変化に対する蛍光変化を測定した。
野生型の標識標準2本鎖核酸を用いた場合の各温度における反応液の蛍光強度をリアルタイムで測定した結果を図4に示す。図4(A)はカチオンポリマー未添加の場合の蛍光挙動を、図4(B)はカチオンポリマーを添加した場合の蛍光挙動を、それぞれ示す。図4(C)は温度変化のプロフィールを示す。実施例1と同様、3種類の降温速度での実験を行った。図4(A)及び(B)中、「wt」はDLD−1由来のゲノムを鋳型としたPCR反応液の結果を、「G12S」はA549由来のゲノムを鋳型としたPCR反応液の結果を、「labeled DNA only」は鋳型とするゲノム無しで行ったPCR反応液の結果を、それぞれ示す。
この結果、図4(A)に示すように、試料2本鎖核酸として野生型の塩基配列を持つゲノム(DLD−1)から調製したPCR反応液を使用した場合には、いずれの降温速度においてもFAMの蛍光の減少は見られず、標識標準2本鎖核酸と同一の塩基配列であると識別できた。一方で、試料2本鎖核酸としてG12Sの変異型の塩基配列を持つゲノム(A549)から調製したPCR反応液を使用した場合には、第1回目及び第2回目の温度降下では、試料2本鎖核酸を添加せず、標識標準2本鎖核酸のみを加えた反応液と同様、低温でFAMの蛍光が低下していた。この結果から、試料2本鎖核酸は、標識標準2本鎖核酸と同一の塩基配列ではないことが識別できた。しかしながら、第3回目の温度降下の場合(96℃/分)では、野生型とG12Sのいずれの試料2本鎖核酸を用いた場合でも、FAMの蛍光は低温で減少せず、両者の相違が識別できなかった。これは、温度降下速度が速く、野生型とG12Sの間で区別がつかず、ヘテロデュープレックスが形成されたためである。
一方で、カチオン性くし型重合体を添加した図4(B)では、第3回目の温度降下でも、G12Sの試料2本鎖核酸を用いた場合では温度降下によりFAMの蛍光が低下しており、野生型の標識標準2本鎖核酸と、G12Sの試料2本鎖核酸のそれぞれが優先的に2本鎖を形成しており、ヘテロデュープレックスの形成が抑制されていた。これらの結果から、PCR産物を試料2本鎖核酸とした場合においても、カチオン性くし型重合体を添加した反応系では、急速な温度降下中でも1塩基の識別性を保持していることが観察された。
[実施例3]
本発明の識別方法を用いて、アルコールデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子(ALDH2)のアルコール代謝に関与するといわれているSNPを識別して検出した。カチオン性くし型重合体として、実施例1で最も効果が高かったCP2のポリマーを用いた。
SNP部位がA及びGアリルの遺伝子型の標準2本鎖核酸を、それぞれ常法の化学合成法により調製した。A遺伝子型検出用の標準2本鎖核酸は、一方の核酸鎖の5’末端をFAM標識(グレンリサーチ社製)し、他方の核酸鎖の3’末端をDABCYL標識(グレンリサーチ社製)した。一方でG遺伝子型の標準2本鎖核酸は、一方の核酸鎖の5’末端をAlexa594標識(グレンリサーチ社製)し、他方の核酸鎖の3’末端をDABCYL標識(グレンリサーチ社製)した。各標準2本鎖核酸は、構成する2本の核酸鎖を1本ずつ化学合成したものをハイブリダイズさせることにより調製した。表3に、化学合成した核酸鎖の配列を、遺伝子型ごとに示す。表3中、「AL(A)」はA遺伝子型、「AL(G)」はG遺伝子型、「Ale594」はAlexa594標識を、それぞれ示す。
また、「6−FAM」、「DAB」、右欄の数字は、表1と同じである。
一方、試料2本鎖核酸は、PCRにより調製した。PCR反応液の組成は、250nMプライマーF、250nM プライマーR、250μM dNTP、1×PCRバッファー、2.5ユニット Taq DNAポリメラーゼ(Takara Taq HotStart Version)とし、全体の反応液を47.5μLとした。このPCR反応液に10ng/μLの鋳型DNA(東洋紡)を2.5μL添加し、全体の反応容量を50μLとした。PCRの反応条件は95℃3分間の処理後、95℃(20秒間)→57℃(30秒間)→72℃(30秒)の変性、アニーリング、伸長反応を、40サイクル行った。使用したコントロールDNA、プライマーF及びプライマーRの塩基配列を表4に示す。表中の右欄の数字は配列表中の対応する配列番号を示す。なお、遺伝子型がAアリルホモ又はGアリルホモの試料2本鎖核酸としては、鋳型DNAとして、A遺伝子型のもの又はG遺伝子型のものをそれぞれ用いた。また、遺伝子型がヘテロの試料2本鎖核酸としては、両方の鋳型を等量ずつ混ぜたものを鋳型DNAとした。全体の添加するDNA量は同一にした。
このようにして調製した標準2本鎖核酸及び試料2本鎖核酸をそれぞれ用いて、実施例2と同様にして蛍光PHFA反応液を調製した。調製した蛍光PHFA反応液の温度変化に対する蛍光変化を、MX3000P(Stratagene社製)用いて測定した。温度降下の条件は、95℃、30秒間で変性後、90℃まで温度を降下させ、その後35℃まで2.5℃/秒の速度にて温度を下げた。90℃と35℃での蛍光強度をそれぞれFAM及びAlexa594について測定した。90℃と35℃の間での蛍光値の違いを、次に示すINDEX値で示した。ここで、「ΔF」は、FAMあるいはAlexa594の90℃における蛍光値から35℃における蛍光値を差し引いた値である。また、「対照反応液」は、試料2本鎖核酸を添加していない反応液(標識標準2本鎖核酸とカチオン性くし型重合体のみ添加した反応液)を意味する。
INDEX(%)= ΔF[反応液] / ΔF[対照反応液]×100
反応液のΔFを対照反応液のΔFで除することにより、標識ごとの蛍光変化の違いを標準化した。蛍光値には温度依存性があり、低温で高くなる傾向がある。従って、試料2本鎖核酸と標準標識2本鎖核酸の塩基配列が同じである場合、90℃の蛍光値よりも35℃の蛍光値の方が高くなる場合があり、その場合にはINDEX値はマイナスの値となる。INDEX値がマイナスあるいはゼロに近い場合は、試料2本鎖核酸と標識標準2本鎖核酸の間での鎖の組み換えが起きており、それらの塩基配列が同一であることを示している。
一方、INDEX値がプラスで十分大きい値の場合には、試料2本鎖核酸と標識標準2本鎖核酸の塩基配列に違いがあることを示している。
図5は、温度降下を急速(2.5℃/秒)に行ったときの結果をINDEX値の棒グラフで示したものである。図5(A)はカチオン性くし型重合体が未添加の場合、図5(B)はカチオン性くし型重合体を添加した場合である。図5中、「Aホモ」は遺伝子型がAアリルホモの試料2本鎖核酸を用いた結果であり、「A/Gへテロ」は遺伝子型がヘテロの試料2本鎖核酸を用いた結果であり、「Gホモ」は遺伝子型がGアリルホモの試料2本鎖核酸を用いた結果である。また、図中、左カラムはFAMのINDEX値(FAMで修飾されたAアリル検出用の標識2本鎖核酸のINDEX値)を示し、右カラムはAlexa594のINDEX値(Alexa594修飾でされたGアリル検出用の標識2本鎖核酸のINDEX値)を示している。
図5(A)に示すように、カチオン性くし型重合体未添加の場合、Alexa594のINDEX値は、試料2本鎖核酸がAアリルホモの場合にプラスで十分大きく、Gアリルホモの場合にマイナスの値であり、遺伝子型Gを遺伝子型Aから識別して検出することができた。しかしながら、FAMのINDEX値は、試料2本鎖核酸がGアリルホモの場合にもAアリルホモの場合と同様に高く、遺伝子型Aを遺伝子型Gから識別して検出することができなかった。
これに対して、図5(B)に示すように、カチオン性くし型重合体を添加した場合には、FAMのINDEX値が、試料2本鎖核酸がGアリルホモの場合にプラスで十分大きく、Aアリルホモの場合にゼロに近い値であり、遺伝子型Gと遺伝子型Aを明瞭に識別することができた。
これらの結果から、反応液中にカチオン性くし型重合体を添加することにより、反応液の温度を高速で降下させた場合でも、競合ハイブリダイゼーションにより1塩基の識別が可能であることが明らかになった。また、本実施例により、蛍光標識の異なる対立する遺伝子型に対応する標識標準2本鎖核酸を同時に存在させることにより、両方の遺伝子型の同時検出も可能であることが明らかとなった。
本発明の標的塩基配列の識別方法は、遺伝子型等の1又は数塩基程度の相違しかない塩基配列同士を、高精度かつ迅速に(例えば、わずか数分間で)識別することができるため、臨床検査等の分野、特に体細胞変異の検査等の分野において利用が可能である。

Claims (13)

  1. 標的塩基配列を識別する方法であって、
    試料2本鎖核酸と、標的塩基配列と同一の塩基配列を含む標準2本鎖核酸とを、一の反応液内において熱変性処理する熱変性工程と、
    前記熱変性工程の後、前記反応液の温度を低下させることにより、前記試料2本鎖核酸と前記標準2本鎖核酸とにおいて競合ハイブリダイゼーションを行う降温工程と、
    前記標準2本鎖核酸を構成していた核酸鎖と、前記試料2本鎖核酸を構成していた核酸鎖とにより形成された2本鎖核酸を測定する測定工程と、
    前記測定工程により得られた測定結果に基づき、前記標準2本鎖核酸と前記試料2本鎖核酸との同一性を識別する識別工程と、
    を有し、
    前記降温工程を、カチオン性くし型重合体の存在下で行い、
    前記降温工程において、前記反応液の降温速度が0.2〜3℃/秒であることを特徴とする、標的塩基配列の識別方法。
  2. 前記カチオン性くし型重合体が、カチオン性基を含む高分子鎖である主鎖と、親水性基である側鎖とを有することを特徴とする請求項1記載の標的塩基配列の識別方法。
  3. 前記カチオン性くし型重合体の主鎖がポリリジンであることを特徴とする請求項2記載の標的塩基配列の識別方法。
  4. 前記カチオン性くし型重合体の側鎖がデキストランであることを特徴とする請求項2又は3記載の標的塩基配列の識別方法。
  5. 前記カチオン性くし型重合体の主鎖がグアニジル基を含むことを特徴とする請求項2〜4のいずれか一項に記載の標的塩基配列の識別方法。
  6. 前記カチオン性くし型重合体の主鎖部分の分子量が5,000以上であることを特徴とする請求項2〜5のいずれか一項に記載の標的塩基配列の識別方法。
  7. 前記試料2本鎖核酸と前記標準2本鎖核酸の鎖長が同一であることを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載の標的塩基配列の識別方法。
  8. 前記標的塩基配列が、遺伝子変異の特定の遺伝子型の変異部位を含む領域と相同的な塩基配列であることを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載の標的塩基配列の識別方法。
  9. 前記標準2本鎖核酸を構成する2本の核酸鎖が、互いに異なる種類の標識物質によりそれぞれ標識されていることを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載の標的塩基配列の識別方法。
  10. 前記標準2本鎖核酸を構成する2本の核酸鎖のうち、一方の核酸鎖を標識する標識物質と他方の鎖を標識する標識物質との間で、エネルギー移動が可能であることを特徴とする請求項記載の標的塩基配列の識別方法。
  11. 前記標準2本鎖核酸を構成する2本の核酸鎖が、いずれも蛍光物質により標識されていることを特徴とする請求項又は10記載の標的塩基配列の識別方法。
  12. 前記標準2本鎖核酸を構成する2本の核酸鎖のうち、一方の核酸鎖が蛍光物質により標識されており、他方の核酸鎖が消光物質により標識されていることを特徴とする請求項又は10記載の標的塩基配列の識別方法。
  13. 前記標準2本鎖核酸を構成する2本の核酸鎖のうち、一方の核酸鎖が、固相担体と結合可能な標識物質により標識されていることを特徴とする請求項9〜12のいずれか一項に記載の標的塩基配列の識別方法。
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