JP6338137B2 - 二重鎖核酸の解離の制御方法、二重鎖核酸の鎖交換反応の制御方法および核酸の増幅方法 - Google Patents

二重鎖核酸の解離の制御方法、二重鎖核酸の鎖交換反応の制御方法および核酸の増幅方法 Download PDF

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Description

本発明は、二重鎖核酸の解離の制御方法に関する。また、本発明は、二重鎖核酸の鎖交換反応の制御方法および核酸の増幅方法にも関する。
研究や医療などの様々な分野において、標的とする核酸を増幅するためにPCR(Polymerase chain reaction)法、LAMP(Loop-mediated isothermal amplification)法(特許文献1参照)などの核酸増幅法が知られている。これらの核酸増幅法においては、核酸増幅の際、二重鎖核酸を一本鎖に解離した上でプライマーを結合させ、核酸増幅に供する。
PCR法においては、二重鎖核酸の解離を90℃以上に加熱することにより行っている。しかし、PCR法は熱反応サイクルを自動で制御するため、現実的にはサーマルサイクラーを必要とする。また、高温に加熱するため反応液中の他の成分(酵素など)の劣化を促進する。
LAMP法においては、実質的に等温の条件下で反応し、インナープライマーからの伸長鎖と鋳型核酸との二重鎖核酸の解離を鎖置換型ポリメラーゼにより行っている。しかし、LAMP法は特殊な構造をしたインナープライマーや鎖置換型ポリメラーゼなどの試薬が必要となる。また、等温増幅であるが故、一度反応が開始されると連続的に鎖置換反応が進行し、制御することができない。
国際公開第00/28082号パンフレット
本発明者らは、実質的に等温の条件下で二重鎖核酸の解離および鎖交換反応を行うことができ、且つ、二重鎖核酸の解離および鎖交換反応を制御することができる新規方法を提供することを課題とした。また、本発明者らは、そのような方法を利用した新規な核酸の増幅方法を提供することも課題とした。
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討した結果、驚くべきことに、光応答性核酸が、一定の温度条件下で二重鎖核酸の一方の鎖と会合して、該二重鎖核酸の他方の鎖を解離させることを見出した。そして、本発明者らは、この光応答性核酸を用いることで、二重鎖核酸の解離および鎖交換反応を光照射依存的に制御することができるという知見を得て、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、第1の波長の光の照射によって光応答性核酸を、一本鎖である第1の核酸と、一本鎖であり且つ該第1の核酸と相補的な配列を有する第2の核酸とから構成される二重鎖核酸の該第1の核酸に会合可能な形態にする工程と、
光応答性核酸を該第1の核酸に相補的に会合させることにより、該二重鎖核酸における該第2の核酸を解離させる工程と
を含む、光照射による二重鎖核酸の解離の制御方法を提供する。
また、本発明は、第1の波長の光の照射によって光応答性核酸を、一本鎖である第1の核酸と、一本鎖であり且つ該第1の核酸と相補的な配列を有する第2の核酸とから構成される二重鎖核酸の該第1の核酸に会合可能な形態にする工程と、
光応答性核酸を該第1の核酸に相補的に会合させることにより、該二重鎖核酸における該第2の核酸を解離させる工程と
第1の波長とは異なる第2の波長の光の照射によって光応答性核酸を該第1の核酸に会合できない形態にする工程と、
光応答性核酸と該第1の核酸との会合を解離させる工程と
を含む、光照射による二重鎖核酸の解離の制御方法を提供する。
さらに、本発明は、第1の波長の光の照射によって光応答性核酸を、一本鎖である第1の核酸と、一本鎖であり且つ該第1の核酸と相補的な配列を有する第2の核酸とから構成される二重鎖核酸の該第1の核酸に会合可能な形態にする工程と、
光応答性核酸を該二重鎖核酸の第1の核酸に相補的に会合させることにより、該二重鎖核酸における第2の核酸を解離させる工程と、
解離した第2の核酸に第3の核酸を相補的に会合させる工程と
を含む、光照射による二重鎖核酸の鎖交換反応の制御方法を提供する。
また、本発明は、第1の波長の光の照射によって光応答性核酸を、一本鎖である第1の核酸と、一本鎖であり且つ該第1の核酸と相補的な配列を有する第2の核酸とから構成される二重鎖核酸の該第1の核酸に会合可能な形態にする工程と、
光応答性核酸を該二重鎖核酸の第1の核酸に相補的に会合させることにより、該二重鎖核酸における第2の核酸を解離させる工程と、
該第1の波長とは異なる第2の波長の光の照射によって光応答性核酸を、該第1の核酸に会合できない形態にする工程と、
光応答性核酸と該第1の核酸との会合を解離させる工程と、
解離した第1の核酸に第3の核酸を相補的に会合させる工程と
を含む、光照射による二重鎖核酸の鎖交換反応の制御方法を提供する。
そして、本発明は、実質的に等温条件下で以下の(1)〜(4)の工程を繰り返すことにより核酸を増幅する方法を提供する:
(1)一本鎖の標的核酸に第1ポリヌクレオチドを相補的に会合させ、該標的核酸の該第1ポリヌクレオチドが会合する領域に隣接する領域に第2ポリヌクレオチドを相補的に会合させる工程;
(2)該第1ポリヌクレオチドと第2ポリヌクレオチドを連結させる工程;
(3)該標的核酸と、該第1ポリヌクレオチドおよび第2ポリヌクレオチドが連結した連結鎖との二重鎖核酸に、第1の波長の光の照射によって該標的核酸に会合可能な形態にした光応答性核酸を接触させることにより、該標的核酸と該光応答性核酸とを相補的に会合させ、該連結鎖を解離させる工程;
(4)該第1の波長とは異なる第2の波長の光の照射によって該光応答性核酸を該標的核酸と会合できない形態にすることにより、該標的核酸を該光応答性核酸から解離させ、解離した標的核酸を工程(1)における一本鎖の標的核酸とする工程。
本発明によれば、実質的に等温の条件下で二重鎖核酸の解離および鎖交換反応を行うことができる。また、本発明では、二重鎖核酸の解離および鎖交換反応を光照射によって制御することが可能となる。
二重鎖核酸の解離の制御方法に関して、一つの実施態様の望ましい反応原理を例示する概念図である。 アゾベンゼンを結合させた光応答性核酸の光応答を例示する概念図である。 二重鎖核酸の解離の制御方法に関して、別の実施態様の望ましい反応原理を例示する概念図である。 二重鎖核酸の鎖交換反応の制御方法に関して、一つの実施態様の望ましい反応原理を例示する概念図である。 二重鎖核酸の鎖交換反応の制御方法に関して、別の実施態様の望ましい反応原理を例示する概念図である。 核酸の増幅方法に関して、望ましい反応原理を例示する概念図である。 二重鎖核酸の解離の制御方法に関して、実施例1の反応原理を示す概念図である。 可視光および紫外光の照射に依存して二重鎖核酸の解離と再形成が行われていることを示すグラフである。 アゾベンゼンを結合させた光応答性核酸を用いた二重鎖核酸の解離の制御方法における鎖交換促進物質の有効性を示すグラフである。 ジメチルアゾベンゼンを結合させた光応答性核酸を用いた二重鎖核酸の解離の制御方法における鎖交換促進物質の有効性を示すグラフである。 二重鎖核酸の解離の制御方法において、鎖交換促進物質を用いなかった場合の低温条件の影響を示すグラフである。 二重鎖核酸の解離の制御方法において、鎖交換促進物質を用いた場合の低温条件の影響を示すグラフである。 二重鎖核酸の解離の制御方法における高塩濃度条件の有効性を示すグラフである。 二重鎖核酸の解離の制御方法における光応答性核酸の配列依存性を示すグラフである。 二重鎖核酸の鎖交換反応の制御方法に関して、実施例6の反応原理を示す概念図である。 可視光および紫外光の照射に依存して二重鎖核酸の鎖交換反応が行われていることを示すグラフである。 可視光および紫外光の照射サイクルの回数に依存して核酸の増幅反応が行われていることを示す蛍光画像である。 可視光および紫外光の照射サイクルの回数に依存して核酸の増幅反応が行われていることを示すグラフである。
本発明の二重鎖核酸の解離の制御方法および二重鎖核酸の鎖交換反応の制御方法では、光応答性核酸を用いることで、光照射によって二重鎖核酸の解離および鎖交換反応の進行を制御することができる。本発明のこれらの制御方法では、二重鎖核酸を変性して解離させるための加熱工程と、鎖交換のための新たな核酸鎖および解離した二重鎖核酸の鎖とを相補的に会合させるための冷却工程とを必要としない。よって、実質的に一定の温度で反応系をインキュベートすればよい。
なお、反応系とは、所望の反応に必要な因子が存在し、その反応が起こる限定された場または空間を意味する。本発明においては、反応系として、例えば、二重鎖核酸および光応答性核酸を含む、光の透過が可能な容器に収められた反応液やエマルションのような微小液滴が挙げられるが、これらに限定されない。なお、反応系には、二重鎖核酸の解離および鎖交換反応を好適に行う環境を提供するための添加剤が含まれていてもよい。そのような添加剤は当該技術において公知であり、例えば、緩衝剤や塩類などが挙げられる。緩衝剤は、二重鎖核酸の解離および鎖交換反応に好適なpHを与えるものであれば特に限定されず、例えば、Tris-HCl、MES、リン酸緩衝剤などが挙げられる。また、塩類としては、例えば、NaCl、KCl、(NH4)2SO4などが挙げられる。
本明細書において、「二重鎖核酸」とは、一本鎖核酸である第1の核酸と、この第1の核酸と会合可能な程度に相補的な一本鎖核酸である第2の核酸とが会合した状態の核酸をいう。また、本明細書においては、ステムループ構造を形成している核酸も「二重鎖核酸」に含まれる。この場合、二重鎖状態となっている「ステム」部分における一方の鎖を第1の核酸とし、他方の鎖を第2の核酸とする。
本明細書において、「相補的に会合する」との表現は、あるポリヌクレオチドの全部または一部の領域が、ストリンジェントな条件下で、別のポリヌクレオチドの全部または一部の領域と水素結合を介して結合することをいう。本発明においては、「相補的な会合」と「ハイブリダイゼーション」とは、2つのポリヌクレオチドが水素結合を介して二重鎖を形成する点で同義である。なお、「ストリンジェントな条件」は、ポリヌクレオチドのハイブリダイゼーションを行う際に当業者が一般的に用いる条件であればよく、例えば、2つのポリヌクレオチドの間に少なくとも90%以上、好ましくは少なくとも95%以上の配列同一性があるときに、一方のポリヌクレオチドが他方のポリヌクレオチドに特異的にハイブリダイズすることができる条件が挙げられる。ハイブリダイゼーションでのストリンジェンシーは、温度、塩濃度、ポリヌクレオチドの鎖長およびGC含量、ならびにハイブリダイゼーション緩衝液に含まれるカオトロピック剤の濃度の関数であることが知られている。ストリンジェントな条件としては、例えば、Sambrook, J.ら, 1998, Molecular Cloning: A Laboratory Manual (第2編), Cold Spring Harbor Laboratory Press, New Yorkに記載された条件などを用いることもできる。
本明細書において、「完全に相補的な塩基配列」とは、あるポリヌクレオチドに含まれる全ての塩基に対して、ワトソン・クリックモデルの相補的塩基対を形成するポリヌクレオチドの塩基配列をいう。
[二重鎖核酸の解離の制御方法]
本発明の二重鎖核酸の解離の制御方法に関して、光応答性核酸によって、二重鎖核酸を構成する2本の核酸鎖を解離させる態様(実施態様1)を、以下に説明する。ここで、二重鎖核酸の解離の制御方法に関して、便宜上、二重鎖核酸を構成する2本の核酸鎖のうち、光応答性核酸と相補的に会合する方の鎖を「第1の核酸」と呼び、この会合によって解離される方の鎖を「第2の核酸」と呼ぶ。なお、実施態様1について、望ましい反応原理を図1に例示したので参照されたい。図1には、アゾベンゼンまたはその誘導体を結合させた光応答性核酸を用いた場合の反応原理が示されている。
本実施態様では、まず、第1の波長の光の照射によって光応答性核酸を二重鎖核酸の第1の核酸に会合可能な形態にする工程が行われる。図1を参照すると、この工程では、第1の核酸に会合できない形態の光応答性核酸(図1のA)が、可視光照射によって、第1の核酸に会合可能な形態となる(図1のB)。
本発明において、二重鎖核酸は、二重鎖DNA、二重鎖RNA、および一本鎖鎖RNAと一本鎖DNAとのハイブリッドのいずれであってもよい。また、PS−オリゴ、PNA(ペプチド核酸)、モルホリノオリゴ、2’O−置換RNA、BNA (Bridged Nucleic Acid)など従来公知の人工核酸であってもよい。二重鎖核酸の形状は特に限定されず、プラスミドDNAのような環状の二重鎖核酸であってもよいし、一本鎖核酸が分子内で相補的に自己会合したヘアピン状の二重鎖核酸であってもよい。二重鎖核酸の由来は特に限定されず、ゲノムDNAなどの天然由来の二重鎖核酸であってもよいし、天然由来の核酸から合成または増幅された二重鎖核酸(例えば、mRNA-cDNAハイブリッド、二重鎖cDNAなど)であってもよい。相補鎖合成のための鋳型となり得るのであれば、二重鎖核酸は、公知の標識物質などで修飾されていてもよいし、核酸を構成するヌクレオチドが人工的な誘導体に置換されていてもよい。
本明細書において、「光応答性核酸」とは、所定の波長の光の照射によって異性化して立体構造が変化する有機基を1つ以上結合させた一本鎖核酸である。なお、そのような有機基を結合させた核酸自体は当該技術において公知であり、例えば、国際公開第01/21637号パンフレットに記載の光応答性オリゴヌクレオチドが挙げられる。本発明においては、光照射による光応答性核酸中の有機基の立体構造の変化を利用して、二重鎖核酸の一方の鎖との相補的な会合および会合状態からの解離を可逆的に行うことができる。
光応答性核酸に用いられる核酸としては、DNAやRNAを用いることができる。また、PS−オリゴ、PNA(ペプチド核酸)、モルホリノオリゴ、2’O−置換RNA、BNA (Bridged Nucleic Acid)など従来公知の人工核酸であってもよい。これらの中でも、DNAが好ましい。
光応答性核酸において、核酸と、該核酸に光応答性を与えうる有機基(以下、「光応答性有機基」ともいう)との結合様式は、該有機基が核酸の側鎖部分となるように結合されている限り、特に限定されない。ここで、核酸の側鎖部分とは、核酸を構成する各ヌクレオチドの五炭糖から分岐する塩基に相当する部分である。なお、核酸の主鎖は、核酸を構成するヌクレオチド間の五炭糖とリン酸との結合からなる鎖である。本発明では、光応答性有機基が核酸の5’末端のヌクレオチドまたは3’末端のヌクレオチドに結合している場合も、核酸の側鎖部分として結合されているものとする。光応答性有機基の核酸への結合様式の例として、核酸の側鎖部分となるように有機基をヌクレオチドに直接結合させるか、または、核酸の主鎖に適当な介在基を挿入し、この介在基に有機基を連結させることにより間接的に核酸に有機基を結合させることが挙げられる。そのような介在基は当業者が適宜決定できるが、例えば、炭素原子数が1〜10、好ましくは1〜6のアルキレン基、あるいはアミノ酸またはその誘導体からなる基などが挙げられる。
光応答性有機基としては、所定の波長の光の照射により、実質的に平面状の構造から非平面状の構造へ可逆的に異性化することができる基が好適である。そのような有機基として用いうる化合物としては、例えば、アゾベンゼン、スチルベン、スピロピラン、およびこれらの誘導体などが挙げられる。アゾベンゼンおよびスチルベンは光照射によりトランス型からシス型へ異性化し、スピロランは光照射によりメロシアニン型からスピロピラン型へ異性化することが知られている。
本発明においては、光応答性核酸としては、その融解温度(Tm)が、同一の塩基配列の核酸のTmに比べて向上するような光応答性有機基を結合させた核酸が好ましい。そのような光応答性核酸としては、アゾベンゼンおよびその誘導体から選択される少なくとも1種を1つ以上結合させた核酸が好適に用いられる。アゾベンゼンの誘導体の種類は、二重鎖の形成を妨げない限り特に限定されないが、熱による異性化が生じにくいことからジメチルアゾベンゼンが特に好ましい。なお、アゾベンゼンまたはその誘導体を結合した核酸自体は、当該技術において公知であり、一般に製造または入手可能である。
アゾベンゼンまたはその誘導体は、波長400 nm以上の可視光の照射によって平面状のトランス体となり、波長300〜400 nmの紫外光の照射によって立体的な形状のシス体となる。したがって、可視光の照射により、光応答性核酸中のアゾベンゼンまたはその誘導体は、二重鎖の形成を妨げない平面状のトランス体となるので、光応答性核酸は所定の核酸鎖と相補的に会合して、二重鎖を形成することができる。他方で、紫外光の照射により、光応答性核酸中のアゾベンゼンまたはその誘導体は立体的な形状のシス体となるので、二重鎖の形成が妨げる立体障害が生じる。これにより、光応答性核酸と所定の核酸鎖との二重鎖は解離する。なお、アゾベンゼンまたはその誘導体を結合させた光応答性核酸による二重鎖の形成と解離を例示したモデルを図2に示したので参照されたい。図2に示される光応答性核酸では、アゾベンゼンは、核酸の主鎖に挿入されたD-トレオニノールを介して核酸の側鎖部分となるように結合されているが、本発明はこれに限定されない。
よって、アゾベンゼンまたはその誘導体を結合させた光応答性核酸を本発明の方法に用いる場合は、第1の波長の光として波長400 nm以上の可視光の照射によって、当該光応答性核酸を第1の核酸に会合可能な形態にすることができる。
光応答性核酸における光応答性有機基の数は、異性化により二重鎖を解離することができる限り特に限定されない。一例を挙げれば、光応答性有機基は、光応答性核酸において2〜10塩基に1つの割合で導入すればよい。
本明細書においては、光応答性核酸の塩基配列に言及する場合は、核酸に結合された光応答性有機基を無視して、通常の核酸の塩基配列と同様にヌクレオチドの塩基部分にのみ着目する。例えば、光応答性核酸が、所定の一本鎖核酸にアゾベンゼンまたはその誘導体が複数結合したものであるとき、この光応答性核酸の塩基配列は、その所定の一本鎖核酸と同じ塩基配列であると考える。
光応答性核酸の塩基配列は、第1の核酸と相補的に会合できる塩基配列であれば特に限定されないが、光応答性核酸は、第1の核酸の塩基配列に対して完全に相補的な塩基配列を有することが特に好ましい。
光応答性核酸の鎖長は、第1の核酸との相補的な会合を維持できる長さであれば特に限定されないが、通常10〜100ヌクレオチド、好ましくは15〜50ヌクレオチドを有する。なお、後述の二重鎖核酸の鎖交換反応の制御方法では、光応答性核酸の塩基配列および鎖長によって、二重鎖核酸における後述の第3の核酸の会合可能な領域が決まる。よって、光応答性核酸は、二重鎖核酸における鎖交換したい領域に応じて設計することが好ましい。
光応答性核酸は、必要に応じて、公知の標識物質で標識されていてもよい。核酸の標識は、放射活性同位体または非放射活性物質を用いて行うことができる。放射活性同位体としては、32P、33P、35S、3Hおよび125Iが挙げられる。非放射活性物質としては、ビオチン、アビジン、ストレプトアビジンまたはジゴキシゲニンのようなリガンド、ハプテン、色素、消光物質、および、化学発光性、生物発光性、蛍光またはリン光性の試薬のような発光性試薬が挙げられる。
本発明において、照射する光の波長(第1波長および後述の第2波長)は、光応答性有機基の種類に応じて適宜設定することができる。また、光の照射時間も光応答性有機基の種類に応じて適宜設定できるが、アゾベンゼンまたはその誘導体の場合では、通常5〜300秒、好ましくは10〜60秒である。光源は、反応系に所定の波長の光を照射できるものであれば特に限定されず、例えば、アゾベンゼンまたはその誘導体の場合では、水銀ランプと可視光フィルターの組み合わせ、所定波長のLEDなどが挙げられる。
本実施態様では、上記のようにして核酸鎖に会合可能な形態となった光応答性核酸を、第1の核酸に相補的に会合させることにより、二重鎖核酸の第2の核酸を解離させる工程が行われる。図1を参照すると、この工程では、二重鎖核酸と光応答性核酸との鎖交換により(図1のB)、光応答性核酸と第1の核酸とが二重鎖を形成し、第2の核酸が第1の核酸から解離した状態となる(図1のC)。
この工程は、第2の核酸が、光応答性核酸により鎖交換されうる状態で行われることが望ましい。このような状態は、二重鎖核酸において塩基対間の水素結合の形成と解離の両方が起こりうる条件下で生じさせることができる。そのような条件は、二重鎖核酸の長さに依存するが、例えば、40塩基ならば45〜70℃、好ましくは55〜60℃で反応系をインキュベートするか、または後述の鎖交換反応促進物質を反応系に添加することなどが挙げられるが、本発明はこれらに限定されない。このような条件下では、二重鎖核酸を構成する2本の核酸鎖が解離したときに、光応答性核酸がその塩基配列の相補性によって、該二重鎖核酸の第1の核酸に相補的に会合することができる。これにより、二重鎖核酸の第2の核酸を解離させることができる。
なお、第2の核酸における解離する部分の鎖長は、光応答性核酸の鎖長(より詳細には、光応答性核酸における第1の核酸と相補的に会合する部分の鎖長)に依存する。すなわち、本発明においては、光応答性核酸の鎖長が二重鎖核酸の鎖長よりも短い場合は、第2の核酸の一部分が解離される。反対に、光応答性核酸の鎖長が、二重鎖核酸の鎖長と同じかまたは二重鎖核酸の鎖長よりも長い場合は、第2の核酸の全部が解離される。
本発明においては、光応答性核酸と第1の核酸とを効率よく会合させるために、解離反応の開始時において、光応答性核酸の濃度を、二重鎖核酸の濃度よりも高くすることが好ましい。各核酸の具体的な濃度は当業者が適宜設定できるが、光応答性核酸の濃度を、二重鎖核酸の濃度の10倍以上にすることが特に好ましい。
光応答性核酸と第1の核酸とを効率よく会合させるためには、二重鎖核酸の解離の制御方法を、高塩濃度の条件下で行うことも有利である。そのような塩は、核酸を損傷しうるものでなければ特に限定されないが、例えば、NaCl、KClなどが挙げられる。塩濃度としては、2本の核酸鎖が相補的に会合した状態を維持できる範囲内で設定することが望ましく、例えば、NaClを用いる場合は2Mまでの濃度とすることができる。
さらに、光応答性核酸と第1の核酸とを効率よく会合させるためには、二重鎖核酸の解離の制御方法を、公知の鎖交換反応促進物質の存在下で行うことも有利である。そのような鎖交換反応促進物質は当該技術において公知であり、例えば、カチオン性ホモポリマーおよびカチオン性コポリマーから選択される少なくとも1種が挙げられる。そのようなカチオン性ホモポリマーおよびカチオン性コポリマーとしては、例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジンなどのアミノ酸、グルコサミンなどの糖、エチレンイミン、ジエチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレートなどの合成モノマーのようなカチオン性基を形成しうるモノマーに由来するホモポリマーおよびコポリマーが挙げられる。
さらに、上記のカチオン性のホモポリマーまたはコポリマーは、親水性高分子で側鎖修飾されたグラフト型構造を有していることが好ましい。このような側鎖(グラフト鎖)は、例えば、ポリエチレングリコールなどの水溶性ポリアルキレングリコール、デキストラン、プルラン、アミロース、アラビノガラクタンなどの水溶性多糖、セリン、アスパラギン、グルタミン、スレオニンなどの親水性アミノ酸を含む水溶性ポリアミノ酸、アクリルアミドおよびその誘導体をモノマーとして用い合成される水溶性高分子、メタクリル酸およびアクリル酸並びにその誘導体(例えばヒドロキシエチルメタクリレート)をモノマーとして用いて合成される水溶性高分子、ポリビニルアルコールおよびその誘導体からなる群より選ばれる1種以上の水溶性高分子により形成される。なお、カチオン性のホモポリマーまたはコポリマーの分子量、並びに側鎖修飾基自体の鎖長およびグラフトの程度は、特に限定されず、当業者が適宜設定できる。
鎖交換反応促進物質の中でも、カチオン性コポリマーであるポリLリジン−デキストラン共重合体(PLL-g-Dex)が特に好ましい。なお、PLL-g-Dex自体は特開2001−78769号公報に開示されている。
反応系における鎖交換反応促進物質の濃度は、核酸の解離および鎖交換反応が阻害されない限り特に限定されず、当業者が適宜設定できる。
上記の実施態様1では、二重鎖核酸の第2の核酸が解離されるが、二重鎖核酸の第1の核酸と光応答性核酸とが会合したままの状態となっている。そこで、二重鎖核酸の解離の制御方法に関して、光応答性核酸と第1の核酸とを解離させる工程を含む態様(実施態様2)を、以下に説明する。なお、実施態様2について、望ましい反応原理を図3に例示したので参照されたい。図3には、アゾベンゼンを結合させた光応答性核酸を用いた場合の反応原理が示されている。
本実施態様では、まず、第1の波長の光の照射によって光応答性核酸を第1の核酸に会合可能な形態にする工程が行われる(図3のAおよびB参照)。次に、光応答性核酸を第1の核酸に相補的に会合させることにより、二重鎖核酸の第2の核酸を解離させる工程が行われる(図3のC参照)。これらの工程の詳細は、実施態様1について述べたことと同様である。
そして、本実施態様では、第2の波長の光の照射によって光応答性核酸を第1の核酸に会合できない形態にする工程が行われる(図3のD参照)。
第2の波長の光は、光応答性核酸を第1の核酸に会合可能な形態にする工程で照射された第1の波長の光とは異なる波長を有し、当該光応答性核酸の有機基を立体異性化させて、光応答性核酸を核酸鎖に会合できない形態にすることができる光であればよい。例えば、アゾベンゼンまたはその誘導体を結合させた光応答性核酸を用いる場合は、第2の波長の光として波長300〜400 nmの紫外光を照射することにより、アゾベンゼンが立体構造のシス体となるので、当該光応答性核酸を第1の核酸に会合できない形態にすることができる。
第1の波長の光を照射してから第2の波長の光を照射するまでの時間間隔は、特に限定されず適宜設定できるが、通常1〜300秒、好ましくは5〜60秒である。また、第2の波長の光の照射時間は、光応答性核酸に用いた有機基の種類に応じて適宜設定できるが、アゾベンゼンまたはその誘導体の場合では、通常1〜60秒、好ましくは5〜30秒である。光源は、反応系に所定の波長の光を照射できるものであれば特に限定されず、例えば、アゾベンゼンまたはその誘導体の場合では、水銀ランプと紫外光フィルターの組み合わせ、所定波長のLEDなどが挙げられる。
本実施態様では、上記のようにして第1の核酸に会合できない形態となった光応答性核酸と、第1の核酸との会合を解離させる工程が行われる。この工程では、光応答性核酸の有機基の立体障害により、光応答性核酸の塩基と、二重鎖核酸の第1の核酸の塩基との間の水素結合が維持できず、光応答性核酸と第1の核酸とが解離する(図3のE参照)。したがって、本実施態様では、光応答性核酸の鎖長に応じて二重鎖核酸の全部または一部が解離し、且つ光応答性核酸が遊離している状態となる。
ここで、遊離した光応答性核酸は核酸鎖に会合できない形態となっているので、二重鎖核酸から解離した2本の核酸鎖は、再び会合して元の二重鎖核酸に戻ることが可能である(図3のF参照)。よって、本実施態様の解離反応を繰り返す場合、第2の波長の光の照射後、通常1〜300秒、好ましくは5〜60秒後に、第1の波長の光を照射すればよい。
[二重鎖核酸の鎖交換反応の制御方法]
本発明においては、上記の光応答性核酸を用いる二重鎖核酸の解離の制御方法を利用して、光照射によって二重鎖核酸の鎖交換反応を制御することも可能となる。すなわち、本発明の範囲には、二重鎖核酸の鎖交換反応の制御方法も含まれる。ここで、二重鎖核酸の鎖交換反応の制御方法に関して、便宜上、二重鎖核酸を構成する2本の核酸鎖のうち、光応答性核酸と相補的に会合する方の鎖を「第1の核酸」と呼び、この会合によって解離される方の鎖を「第2の核酸」と呼ぶ。また、第1の核酸または第2の核酸と交換するための核酸を「第3の核酸」と呼ぶ。まず、光応答性核酸を用いることで、第2の核酸と第3の核酸とを相補的に会合させる態様(実施態様1)について、以下に説明する。なお、実施態様1について、望ましい反応原理を図4に例示したので参照されたい。図4には、アゾベンゼンまたはその誘導体を結合させた光応答性核酸を用いた場合の反応原理が示されている。
本実施態様では、まず、第1の波長の光の照射によって光応答性核酸を、二重鎖核酸の第1の核酸に会合可能な形態にする工程が行われる。図4を参照すると、この工程では、第1の核酸に会合できない形態の光応答性核酸(図4のA)が、可視光照射によって、第1の核酸に会合可能な形態となる(図4のB)。
本実施態様では、二重鎖核酸を構成する2本の核酸鎖のうち、第3の核酸と交換されることとなる鎖は、第1の核酸である。第1の核酸における交換される領域は、第1の核酸の全部であってもよいし一部分であってもよいが、これは、光応答性核酸の鎖長(より詳細には、光応答性核酸における第1の核酸と相補的に会合する部分の鎖長)に依存して決定される。すなわち、本発明においては、光応答性核酸の鎖長が二重鎖核酸の鎖長よりも短い場合、交換される領域は第1の核酸の一部分となる。反対に、光応答性核酸の鎖長が、二重鎖核酸の鎖長と同じかまたは二重鎖核酸の鎖長より長い場合は、交換される領域は第1の核酸の全部となる。なお、図4では、二重鎖核酸を構成する第1の核酸および第2の核酸をそれぞれ「n」および「N」と称し、第3の核酸を「n'」と称する。
本実施態様においては、光応答性核酸の塩基配列は、第1の核酸と相補的に会合できる塩基配列であれば特に限定されないが、光応答性核酸は、第1の核酸の塩基配列に対して完全に相補的な塩基配列を有することが特に好ましい。なお、光応答性核酸および照射する光の詳細は、二重鎖核酸の解離の制御方法について述べたことと同様である。
本実施態様では、上記のようにして第1の核酸に会合可能な形態となった光応答性核酸を、二重鎖核酸の第1の核酸に相補的に会合させることにより、二重鎖核酸における第2の核酸を解離させる工程が行われる(図4のBおよびC参照)。
本実施態様において、光応答性核酸によって第1の核酸とその相補鎖である第2の核酸とを解離させる当該工程は、上記の二重鎖核酸の解離の制御方法における解離工程と実質的に同じである。したがって、この工程での反応条件や添加物(例えば、塩や鎖交換反応促進物質)などの詳細は、上記の二重鎖核酸の解離の制御方法について述べたことと同様である。
図4のCに示されるように、この工程を経ることにより、反応系は、光応答性核酸と二重鎖核酸の第1の核酸とが会合し、且つ第2の核酸が解離している状態となる。なお、このとき、第3の核酸も反応系中に遊離している。
本実施態様では、上記のようにして解離した第2の核酸に、第3の核酸を相補的に会合させる工程が行われる。上述のように、この工程では、二重鎖核酸を構成する2本の核酸鎖のうちの第2の核酸が、鎖交換反応により、第3の核酸と相補的に会合することとなる(図4のD参照)。
本実施態様において、第3の核酸は、ストリンジェントな条件下で、第2の核酸に相補的に会合することができるオリゴヌクレオチドであれば特に限定されないが、好ましくは、第2の核酸に完全に相補的な塩基配列を有するオリゴヌクレオチドである。第3の核酸の鎖長は、第2の核酸の鎖長に応じて適宜設定できる。なお、第3の核酸は、当該技術において公知の核酸合成方法により製造することができる。
ここで、本実施態様では、光応答性核酸は、二重鎖核酸の第1の核酸に相補的に会合しうる塩基配列を有しており、第3の核酸は、第2の核酸に相補的に会合しうる塩基配列を有している。したがって、第3の核酸と光応答性核酸とが相補的に会合する場合が起こりうる。そこで、第3の核酸と光応答性核酸とが相補的に会合する確率を減少させるために、例えば、第3の核酸における第1の核酸と相補的に会合する部分の鎖長が光応答性核酸の鎖長よりも短くなるように、第3の核酸を設計してもよい。
本実施態様では、第3の核酸は、1種のみ用いてもよいし、2種以上用いてもよい。第3の核酸を2種以上用いる場合は、それらは、第2の核酸において互いに異なる領域に会合するように設計することが望ましい。なお、第2の核酸において2種以上の第3の核酸が会合する領域は、隣接していてもよいし、離れていてもよい。
本発明においては、第3の核酸は公知の標識物質で標識されていてもよい。なお、第3の核酸の標識は、光応答性核酸の標識について述べたことと同様である。また、必要に応じて、第3の核酸の5'末端および/または3'末端に、所定の制限酵素の認識配列やタグ配列などの機能的配列のオリゴヌクレオチドを付加してもよい。
次に、光応答性核酸を用いることで、第1の核酸と第3の核酸とを相補的に会合させる態様(実施態様2)について、以下に説明する。なお、実施態様2について、望ましい反応原理を図5に例示したので参照されたい。図5では、アゾベンゼンまたはその誘導体を結合させた光応答性核酸を用いた場合の反応原理が示されている。
本実施態様では、まず、第1の波長の光の照射によって光応答性核酸を、二重鎖核酸の第1の核酸に会合可能な形態にする工程が行われる。図5を参照すると、この工程では、第1の核酸に会合できない形態の光応答性核酸(図5のA)が、可視光照射によって、第1の核酸に会合可能な形態となる(図5のB)。
本実施態様では、二重鎖核酸を構成する2本の核酸鎖のうち、第3の核酸と交換されることとなる鎖は、第2の核酸である。第2の核酸における交換される領域は、第2の核酸の全部であってもよいし一部分であってもよいが、これは、光応答性核酸の鎖長(より詳細には、光応答性核酸における第1の核酸と相補的に会合する部分の鎖長)に依存して決定される。すなわち、本発明においては、光応答性核酸の鎖長が二重鎖核酸の鎖長よりも短い場合、交換される領域は第2の核酸の一部分となる。反対に、光応答性核酸の鎖長が、二重鎖核酸の鎖長と同じかまたは二重鎖核酸の鎖長よりも長い場合は、交換される領域は第2の核酸の全部となる。なお、図5では、二重鎖核酸を構成する第1の核酸および第2の核酸をそれぞれ「n」および「N」と称し、第3の核酸を「n'」と称する。
本実施態様に用いられる光応答性核酸の塩基配列は、上記の実施態様1について述べたことと同様である。また、光応答性核酸および照射する光の詳細は、二重鎖核酸の解離の制御方法について述べたことと同様である。
本実施態様では、上記のようにして第1の核酸に会合可能な形態となった光応答性核酸を、第1の核酸に相補的に会合させることにより、二重鎖核酸における第2の核酸を解離させる工程が行われる(図5のBおよびC参照)。
本実施態様において、光応答性核酸によって第1の核酸とその相補鎖である第2の核酸とを解離させる当該工程は、上記の実施態様1と同様である。よって、この工程での反応条件や添加物(例えば、塩や鎖交換反応促進物質)などの詳細も、二重鎖核酸の解離の制御方法について述べたことと同様である。
そして、本実施態様では、第2の波長の光の照射によって光応答性核酸を、第1の核酸に会合できない形態にする工程が行われる(図5のCおよびD参照)。
この工程は、第2の波長の光によって光応答性核酸の有機基を立体異性化させて、光応答性核酸を第1の核酸に会合できない形態にする点で、上記の二重鎖核酸の解離の制御方法と同じである。したがって、第1の波長の光および第2の波長の光の詳細は、二重鎖核酸の解離の制御方法について述べたことと同様である。
本実施態様では、上記のようにして第1の核酸に会合できない形態となった光応答性核酸と、第1の核酸との会合を解離させる工程が行われる(図5のD参照)。
この工程では、光応答性核酸の有機基の立体障害により、光応答性核酸の塩基と、二重鎖核酸の第1の核酸の塩基との間の水素結合が維持できず、光応答性核酸と第1の核酸とが解離する。したがって、この工程により、反応系は、二重鎖核酸の全部または一部が解離し、且つ、光応答性核酸および第3の核酸が遊離している状態となる(図5のD参照)。
そして、本実施態様では、上記のようにして解離した第1の核酸に、第3の核酸を相補的に会合させる工程が行われる(図5のE参照)。本実施態様において、第3の核酸は、ストリンジェントな条件下で、第1の核酸に相補的に会合することができるオリゴヌクレオチドであれば特に限定されないが、好ましくは、第1の核酸に完全に相補的な塩基配列を有するオリゴヌクレオチドである。第3の核酸の鎖長は、第1の核酸の鎖長に応じて適宜設定できる。なお、第3の核酸は、当該技術において公知の核酸合成方法により製造することができる。
ここで、先の工程では、遊離した光応答性核酸は核酸鎖に会合できない形態となっているので、二重鎖核酸から解離した2本の核酸鎖(第1の核酸および第2の核酸)は、再び会合して元の二重鎖核酸に戻ることが可能である。しかし、元の二重鎖核酸に戻ってしまっては、鎖交換反応が起こらないこととなる。そこで、第3の核酸との会合が促進されるようにするために、本実施態様においては、鎖交換反応の開始時において、第3の核酸の濃度を二重鎖核酸の濃度よりも高くすることが望ましい。具体的な濃度は当業者が適宜設定できるが、第3の核酸の濃度を二重鎖核酸の濃度の10倍以上にすることが特に好ましい。
[核酸の増幅方法]
本発明においては、上記の光応答性核酸を用いる二重鎖核酸の解離および鎖交換反応の制御方法を利用して、光照射によって核酸の増幅を行うことも可能となる。具体的には、本発明の二重鎖核酸の解離および鎖交換反応は、二重鎖核酸を構成する2本の核酸鎖のうちの一方を標的核酸として、この標的核酸に対する複数の連結可能な核酸プローブを用いて核酸連結体を形成させることによって核酸を増幅する方法に応用することができる。そこで、本発明の核酸増幅方法(以下、「増幅方法」ともいう)について、以下に説明する。なお、本発明の増幅方法では、二重鎖核酸および一本鎖核酸のいずれをサンプル調製時の鋳型として用いても核酸の増幅が可能であるが、説明の便宜上、一本鎖核酸(以下、「一本鎖の標的核酸」ともいう)をサンプル調製時の鋳型として核酸増幅反応を行う場合について、以下に述べる。また、この増幅方法について、望ましい反応原理を図6に例示したので参照されたい。図6には、アゾベンゼンまたはその誘導体を結合させた光応答性核酸を用いた場合の反応原理が示されている。
本発明の増幅方法では、一本鎖の標的核酸に第1ポリヌクレオチドを結合させ、この標的核酸の第1ポリヌクレオチドが結合する領域に隣接する領域に第1ポリヌクレオチドを結合させる工程が行われる(図6のAおよびB参照)。この工程では、第1ポリヌクレオチドおよび第2ポリヌクレオチドが標的核酸に相補的に会合したとき、一方のポリヌクレオチドの3'末端と他方のポリヌクレオチドの5'末端とが連結可能に隣接することとなる。
本発明の増幅方法において、第1ポリヌクレオチドおよび第2ポリヌクレオチドは、一本鎖の標的核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、且つ、連結部位となる5'末端および3'末端の塩基が該標的核酸の塩基と塩基対を形成するポリヌクレオチドである。第1ポリヌクレオチドおよび第2ポリヌクレオチドは、増幅したい領域の塩基配列および鎖長に応じて、互いに隣接するように設計すればよい。また、各ポリヌクレオチドは、後述の連結工程を阻害しない限り、公知の標識物質で標識されていてもよい。そのような標識物質の詳細は、光応答性核酸について述べたことと同様である。
そして、本発明の増幅方法では、第1ポリヌクレオチドと第2ポリヌクレオチドを連結させる工程が行われる(図6のBおよびC参照)。この工程で得られる第1ポリヌクレオチドと第2ポリヌクレオチドとの連結鎖を、以下、単に「連結鎖」ともいう。なお、これらのポリヌクレオチドを連結する手段は特に限定されず、当該技術において公知の手段から選択すればよい。例えば、酵素反応、化学ライゲーション反応、光ライゲーション反応などによりプローブを連結することができる。
酵素反応により、隣接している2つのポリヌクレオチドを連結させる場合は、核酸のライゲーション反応に一般に用いられる公知のリガーゼを用いればよい。そのようなリガーゼとしては、例えば、T4 DNAリガーゼ、Tth DNAリガーゼなどが挙げられる。
化学ライゲーション反応により、隣接している2つのポリヌクレオチドを連結させる場合は、一方のポリヌクレオチドの5'末端および他方のポリヌクレオチドの3'末端に、化学反応によって結合する公知の有機基を付加すればよい。そのような有機基としては、例えば、N−シアノイミダゾール、臭化シアンなどのカップリング試薬や、ホスホロチオエート基およびヨード基の組み合わせなどが挙げられる。なお、化学ライゲーション反応自体は当該技術において公知であり、例えば、国際公開第2007/133703号パンフレットに記載されている。
光ライゲーション反応により、隣接している2つのポリヌクレオチドを連結させる場合は、一方のポリヌクレオチドの5'末端および他方のポリヌクレオチドの3'末端に、光照射によって結合する公知の有機基を付加すればよい。そのような有機基としては、例えば、カルボキシビニル基などが挙げられる。具体的には、5位にカルボキシビニル基を有するピリミジン塩基を5'末端に有する核酸は、光照射により、シトシンを3'末端に有する核酸と結合することができる。なお、光ライゲーション反応自体は当該技術において公知であり、例えば、国際公開第01/66556号パンフレットに記載されている。
そして、本発明の増幅方法では、標的核酸と連結鎖とで構成される二重鎖核酸に、第1の波長の光の照射によって該標的核酸に会合可能な形態にした光応答性核酸(図6のEおよびF参照)を接触させることにより、該標的核酸と該光応答性核酸とを相補的に会合させ(図6のD参照)、該連結鎖を解離させる工程が行われる(図6のG参照)。
光応答性核酸の塩基配列は、標的核酸と相補的に会合できる塩基配列であれば特に限定されないが、光応答性核酸は、標的核酸の塩基配列に対して完全に相補的な塩基配列を有することが特に好ましい。なお、光応答性核酸および照射する光の詳細は、二重鎖核酸の解離の制御方法について述べたことと同様である。また、この工程における光応答性核酸による鎖交換反応の詳細は、二重鎖核酸の解離の制御方法および鎖交換反応の制御方法について述べたことと同様である。
本発明の増幅方法では、第1の波長とは異なる第2の波長の光の照射によって光応答性核酸を標的核酸と会合できない形態にすることにより、標的核酸を光応答性核酸から解離させ(図6のD、EおよびA参照)、解離した標的核酸を上記の最初の工程における一本鎖の標的核酸とする工程が行われる(図6のAおよびB参照)。なお、この工程における照射する光および光応答性核酸による核酸の解離の詳細は、二重鎖核酸の解離の制御方法について述べたことと同様である。
本発明の増幅方法において、増幅反応を繰り返す場合、第2の波長の光の照射後、通常1秒〜30分、好ましくは5〜60秒後に、第1の波長の光を照射すればよい。
本発明の増幅方法において、増幅産物は、従来公知の電気泳動などにより検出することができる。また、増幅産物は、上述の第1ポリヌクレオチドおよび/または第2ポリヌクレオチドに結合した標識物質から生じるシグナルに基づいて検出することもできる。例えば、標識物質として、蛍光物質、放射性同位体などを結合させておくことにより、増幅産物を電気泳動して蛍光や放射線を測定することができる。蛍光物質はポリヌクレオチドに間接的に結合させておいてもよい。例えば、アビジンとビオチンを介した蛍光物質の結合、ハプテンと抗ハプテン抗体を介した蛍光物質の結合などが挙げられる。具体的には、アビジンとビオチンを介した蛍光物質の結合は、プローブにビオチンを結合させておき、蛍光物質にアビジンやストレプトアビジンなどを結合させておき、これらを接触させることによってプローブを標識することができる。
また、複数種類のプローブのうち、第1ポリヌクレオチドおよび第2ポリヌクレオチドに、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)が生じる蛍光物質をそれぞれに標識しておくことができる。例えば、第1ポリヌクレオチドと第2ポリヌクレオチドとが連結され、それぞれの蛍光物質が近接した場合に一方が他方の蛍光を消光するようにしてもよい。また、それぞれの蛍光物質が近接した場合にFRETが生じ、蛍光物質が近接していない場合の励起波長とは異なる波長で蛍光が励起されるようにしてもよい。
なお、上述の二重鎖核酸の解離の制御方法、二重鎖核酸の鎖交換反応の制御方法および核酸の増幅方法においては、光応答性核酸を二種類以上用いることもできる。例えば、2種類の光応答性核酸を用いる場合、二重鎖核酸の第1の核酸の塩基配列において、第1の光応答性核酸が会合する領域とは異なる領域に会合する第2の光応答性核酸をさらに用いることができる。第1の光応答性核酸が会合する領域と第2の光応答性核酸が会合する領域とは、二重鎖核酸の第1の核酸の塩基配列において離れた位置にあってもよいし、隣接していてもよい。二種類以上の光応答性核酸を用いることによって、二重鎖核酸が長い配列を有している場合でも精度よく解離させることができる。
以下に、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例1: 光応答性核酸を用いた二重鎖核酸の解離の制御
本実施例では、光応答性核酸を用いて、光照射による二重鎖核酸の解離を行うことができるか否かについて評価した。本実施例の反応原理を、図7に例示する。なお、図7には、アゾベンゼンを結合させた光応答性核酸を用いた場合の反応原理が示されている。
(1)測定用試料の調製
(1-1)光応答性核酸
光応答性核酸として、アゾベンゼンまたは2', 6'-ジメチルアゾベンゼンを2塩基ごとに1つ結合させた一本鎖DNAを、つくばオリゴサービス株式会社に委託して合成した。この光応答性核酸の配列を以下に示す。
5’- CT(Z)TT(Z)AA(Z)GA(Z)AG(Z)GA(Z)GA(Z)TA(Z)TA(Z)CC(Z)TG(Z)AG(Z)TG(Z)AT(Z)CT(Z)
AG(Z)TG(Z)TA(Z)CT(Z)TA -3’(配列番号1および2)
上記の配列において、(Z)は、アゾベンゼンまたは2', 6'-ジメチルアゾベンゼンの挿入箇所を示す。なお、アゾベンゼンおよび2', 6'-ジメチルアゾベンゼンは、一本鎖DNAの主鎖に挿入されたD-トレオニノールを介して、核酸の側鎖部分となるように結合されている。
光応答性核酸の陰性対照として、上記の光応答性核酸と同じ塩基配列を含む40塩基の未修飾一本鎖DNAを、ライフテクノロジーズジャパン株式会社に委託して合成した。この一本鎖DNAの配列を以下に示す。
5’- CTTTAAGAAGGAGATATACCTGAGTGATCTAGTGTACTTA -3’(配列番号3)
(1-2)二重鎖核酸
二重鎖核酸を、蛍光物質を標識した一本鎖DNAと、消光物質を標識した一本鎖DNAとをアニールさせることによって作製した。この二重鎖核酸では、2本の核酸鎖が解離していない状態では、消光物質の存在により蛍光物質からのシグナルは消失するが、2本の核酸鎖が解離すると、蛍光物質からシグナルが放出される。よって、二重鎖核酸が解離しているか否かは、試料の蛍光強度を測定することにより評価することができる。
蛍光物質を標識した一本鎖DNAとして、5'末端をFITCで標識した一本鎖DNAを日本バイオサービス株式会社に委託して合成した。また、消光物質を標識した一本鎖DNAとして、3'末端をブラックホールクエンチャー(商標)1(BHQ1)で標識した一本鎖DNAを日本バイオサービス株式会社に委託して合成した。これらの一本鎖DNAの配列を以下に示す。
5'-FITC- CTTTAAGAAGGAGATATACCTGAGTGATCTAGTGTACTTA -3'(配列番号4)
5'- TTAAGTACACTAGATCACTCAGGTATATCTCCTTCTTAAAG -BHQ1-3'(配列番号5)
二重鎖核酸は、次のようにして作製した。まず、塩化ナトリウム(0.15 M)およびジチオスレイトール(1mM)を含有する10 mMリン酸緩衝溶液(pH7)に、上記のFITC標識DNAおよびBHQ1標識DNAを、それぞれの終濃度が90 nMおよび100 nMとなるように溶解させた。得られた溶液を85℃にまで加熱し、これを1分間に1℃下降する条件で4℃まで冷却して、FITC標識DNAおよびBHQ1標識DNAからなる二重鎖核酸の溶液を得た。
(1-3)測定用試料
上記で得た二重鎖核酸の溶液をチューブに分注した。そして、これらのチューブに、紫外光を照射した光応答性核酸(アゾベンゼン修飾DNAおよびジメチルアゾベンゼン修飾DNA)および未修飾一本鎖DNAのそれぞれを終濃度120 nMとなるように添加した。そして、各チューブにミネラルオイルを滴下して、測定用試料を得た。
(2)二重鎖核酸の解離
測定用試料の入ったチューブを、サーモプレート(東海ヒット)上に設置したステンレス製チューブラックにて59℃に加熱した。各チューブを蛍光顕微鏡(BX51,オリンパス株式会社)のステージ上に設置し、水銀ランプ(超高圧UVランプUSH-1030L、オリンパス株式会社)を光源として、可視光フィルター(U-MNIBA3、オリンパス株式会社)を通過させた光(波長470〜495 nm)を各チューブに30秒間照射した。そして、FITC由来の蛍光画像を得た(これを「照射前」と呼ぶ)。この測定の5分後に、水銀ランプを光源として、紫外光フィルター(U-MWU2、オリンパス株式会社)を通過させた光(波長330〜385 nm)を各チューブに30秒間照射した。5分後、FITC由来の蛍光画像を得た(これを「紫外光1」と呼ぶ)。この測定の5分後に、水銀ランプを光源として、可視光フィルターを通過させた光(波長470〜495 nm)を各チューブに30秒間照射した。5分後、FITC由来の蛍光画像を得た(これを「可視光1」と呼ぶ)。この測定の5分後に、水銀ランプを光源として、紫外光フィルターを通過させた光(波長330〜385 nm)を各チューブに30秒間照射した。5分後、FITC由来の蛍光画像を得た(これを「紫外光2」と呼ぶ)。この測定の5分後に、水銀ランプを光源として、可視光フィルターを通過させた光(波長470〜495 nm)を各チューブに30秒間照射した。5分後、FITC由来の蛍光画像を得た(これを「可視光2」と呼ぶ)。
得られた蛍光画像をtifファイルに変換し、蛍光シグナルの強度をImage Jソフトウェア(米国国立衛生研究所(NIH)のウェブサイトから入手可能)で数値化した。各測定用試料について、「照射前」の蛍光強度を1として、光照射後の蛍光強度の相対値を算出した。結果を図8に示す。また、可視光照射時の光応答性核酸および陰性対照の未修飾DNAの融解温度を、表1に示す。
(3)結果
図8より、未修飾DNAを添加した試料では、いずれの波長の光を照射しても蛍光強度はほとんど変化していなかった。これに対して、アゾベンゼンまたはジメチルアゾベンゼンで修飾した光応答性核酸を添加した試料では、蛍光強度は、紫外光の照射により減少し、可視光の照射により増加していた。ここで、可視光の照射による蛍光強度の増加は、可視光の照射により光応答性核酸が二重鎖核酸からFITC標識DNA鎖を解離させて、FITC由来の蛍光シグナルが生じたことを意味する。そして、紫外光の照射による蛍光強度の減少は、紫外光の照射により光応答性核酸が二重鎖核酸のBHQ1標識DNA鎖との会合を維持できなくなり、元の二重鎖核酸が再形成されて、FITC由来の蛍光シグナルが消失したことを意味している。したがって、アゾベンゼンまたはジメチルアゾベンゼンを結合させた光応答性核酸により、光照射依存的に二重鎖核酸の解離の可逆的な制御が可能であることがわかった。
また、解離の効率は、ジメチルアゾベンゼンを結合させた光応答性核酸を用いた場合が最も高いことが明らかとなった。この点に関して、光応答性核酸のTmは、ジメチルアゾベンゼン修飾DNAが最も高いことから、Tmの高い光応答性核酸を用いることが、光照射による二重鎖核酸の解離には有効であることが示唆された。
実施例2: 二重鎖核酸の解離における鎖交換促進物質の有効性の評価
本実施例では、光応答性核酸を用いた光照射による二重鎖核酸の解離において、鎖交換促進物質が有用であるか否かについて評価した。
(1)測定用試料の調製
本実施例では、実施例1と同じ光応答性核酸、未修飾DNAおよび二重鎖核酸を用いた。また、測定用試料は、鎖交換促進物質としてPLL-g-Dex(PLLの分子量8000、グラフト率90%)を終濃度15.6μMとなるように添加したこと以外は、実施例1と同様にして調製した。なお、比較のために、PLL-g-Dexを添加していない測定用試料も調製した。
(2)二重鎖核酸の解離
調製した各測定用試料について、実施例1と同様にして、各波長の光を照射したときのFITC由来の蛍光画像を得た。そして、得られた蛍光画像をtifファイルに変換し、蛍光シグナルの強度をImage Jソフトウェアで数値化した。各測定用試料について、「照射前」の蛍光強度を1として、光照射後の蛍光強度の相対値を算出した。結果を図9に示す。
(3)結果
PLL-g-Dex存在下では、非存在下に比べて、光照射による蛍光強度の変化が著しく大きくなっていた。具体的には、可視光を照射した直後に蛍光強度が著しく上昇し、上昇した蛍光強度は、紫外光の照射により顕著に減少した。そして、減少した蛍光強度は。可視光の照射により再び顕著に上昇していた。したがって、PLL-g-Dex存在下においては、二重鎖の解離と再形成がより積極的に誘導され、光照射によって二重鎖核酸の解離を可逆的に制御することができることが明らかとなった。また、実施例1と同様に、解離の効率は、ジメチルアゾベンゼンを結合させた光応答性核酸を用いた場合が最も高いことが明らかとなった。
実施例3: 二重鎖核酸の解離における温度条件の影響の評価
本実施例では、実施例1および2よりも低い温度条件(45℃)でも、光照射による二重鎖核酸の解離の制御が可能であるか否かについて評価した。
(1)測定用試料の調製
本実施例では、実施例1と同じ光応答性核酸、未修飾DNAおよび二重鎖核酸を用いた。また、測定用試料は、鎖交換促進物質としてPLL-g-Dex(PLLの分子量8000、グラフト率90%)を終濃度15.6μMとなるように添加したこと以外は、実施例1と同様にして調製した。
なお、比較のために、PLL-g-Dexを添加していない測定用試料も調製した。
(2)二重鎖核酸の解離
測定用試料の入ったチューブを45℃で加熱したこと以外は実施例1と同様にして、各測定用試料について、各波長の光を照射したときのFITC由来の蛍光画像を得た。そして、得られた蛍光画像をtifファイルに変換し、蛍光シグナルの強度をImage Jソフトウェアで数値化した。各測定用試料について、「照射前」の蛍光強度を1として、光照射後の蛍光強度の相対値を算出した。結果を図10に示す。
(3)結果
鎖交換反応促進物質であるPLL-g-Dexの非存在下では、紫外光および可視光の光照射サイクルに依存した蛍光強度の変化は全く見られなかった。これに対して、PLL-g-Dex存在下では、蛍光強度の変化に光照射依存性が見られた。したがって、PLL-g-Dexを用いれば、低温条件においても光照射によって二重鎖核酸の解離を可逆的に制御できることが示唆された。
実施例4: 二重鎖核酸の解離における高塩濃度の有効性の評価
本実施例では、光応答性核酸を用いた光照射による二重鎖核酸の解離において、高い塩濃度条件が有用であるか否かについて評価した。
(1)測定用試料の調製
(1-1)光応答性核酸および二重鎖核酸
本実施例では、実施例1と同じ光応答性核酸(ジメチルアゾベンゼン修飾DNA)および二重鎖核酸を用いた。ただし、高塩濃度の測定用試料のために、塩化ナトリウム(1M)およびジチオスレイトール(1mM)を含有する10 mMリン酸緩衝溶液(pH7)中に、実施例1のFITC標識DNAおよびBHQ1標識DNAを、それぞれの終濃度が90 nMおよび100 nMとなるように溶解させて得た二重鎖核酸を用いた。
(1-2)測定用試料の調製
以下の3種の試料を調製した。なお、いずれの試料もジメチルアゾベンゼン修飾DNAを終濃度120 nMで含む。
・PLL-g-Dex(PLLの分子量8000、グラフト率90%、終濃度15.6μM)を含む、通常の塩濃度(0.15 M塩化ナトリウム)の試料
・PLL-g-Dexを含まない、高い塩濃度(1M塩化ナトリウム)の試料
・PLL-g-Dexを含まない、通常の塩濃度(0.15 M塩化ナトリウム)の試料
(2)二重鎖核酸の解離
測定用試料の入ったチューブを、サーモプレート(東海ヒット)上に設置したステンレス製チューブラックにて59℃に加熱した。各チューブを蛍光顕微鏡(BX51,オリンパス株式会社)のステージ上に設置し、水銀ランプ(超高圧UVランプUSH-1030L、オリンパス株式会社)を光源として、可視光フィルター(U-MNIBA3、オリンパス株式会社)を通過させた光(波長470〜495 nm)を各チューブに30秒間照射した。そして、FITC由来の蛍光画像を得た(これを「照射前」と呼ぶ)。そして、水銀ランプを光源として、可視光フィルターを通過させた光(波長470〜495 nm)を各チューブに30秒間照射した。5分後、FITC由来の蛍光画像を得た(これを「可視光照射後」と呼ぶ)。この測定の5分後に、水銀ランプを光源として、紫外光フィルター(U-MWU2、オリンパス株式会社)を通過させた光(波長330〜385 nm)を各チューブに30秒間照射した。5分後、FITC由来の蛍光画像を得た(これを「紫外光照射後」と呼ぶ)。
得られた蛍光画像をtifファイルに変換し、蛍光シグナルの強度をImage Jソフトウェアで数値化した。各測定用試料について、「照射前」の蛍光強度を1として、光照射後の蛍光強度の相対値を算出した。結果を図11に示す。
(3)結果
PLL-g-Dexの非存在下での光照射による蛍光強度の変化に比べて、1M塩化ナトリウムの存在下での光照射による蛍光強度の変化は著しく大きかった。これは、鎖交換反応促進物質を用いる代わりに、反応系の塩濃度を高くすることによっても、光照射による二重鎖核酸の解離を制御できることを示している。
実施例5: 光応答性核酸の配列特異性の評価
本実施例では、二重鎖核酸の塩基配列に対する光応答性核酸の特異性が、二重鎖核酸の解離において重要であるか否かを評価した。
(1)測定用試料の調製
(1-1)光応答性核酸および二重鎖核酸
本実施例では、実施例1と同じ光応答性核酸(ジメチルアゾベンゼン修飾DNA)および二重鎖核酸を用いた。ここで、実施例1の二重鎖核酸を、便宜上、「特異配列の二重鎖核酸」とも呼ぶ。また、光応答性核酸の塩基配列に対して相補的ではない塩基配列の二重鎖核酸(以下、「非特異配列の二重鎖核酸」とも呼ぶ)を作製するために、以下の塩基配列の標識一本鎖DNAを日本バイオサービス株式会社に委託して合成した。
5'-FITC- CAGATTACGATTCAGGTAAGGCTTAGACTTGAAAACCGGT -3'(配列番号6)
5'- ACCGGTTTTCAAGTCTAAGCCTTACCTGAATCGTAATCTG -BHQ1-3'(配列番号7)
なお、非特異配列の二重鎖核酸は、次のようにして作製した。まず、塩化ナトリウム(0.15 M)およびジチオスレイトール(1mM)を含有する10 mMリン酸緩衝溶液(pH7)に、上記のFITC標識DNAおよびBHQ1標識DNAを、それぞれの終濃度が90 nMおよび100 nMとなるように溶解させた。そして、得られた溶液を85℃にまで加熱し、これを1分間に1℃下降する条件で4℃まで冷却して、非特異配列の二重鎖核酸の溶液を得た。
(1-2)測定用試料の調製
測定用試料として、特異配列の二重鎖核酸を含む試料および非特異配列の二重鎖核酸を含む試料を実施例1と同様にして作製した。なお、いずれに試料にも、ジメチルアゾベンゼン修飾DNA(終濃度120 nM)およびPLL-g-Dex(PLLの分子量8000、グラフト率90%、終濃度15.6μM)が含まれている。
(2)二重鎖核酸の解離
調製した各測定用試料について、実施例4と同様にして、各波長の光を照射したときのFITC由来の蛍光画像を得た。そして、得られた蛍光画像をtifファイルに変換し、蛍光シグナルの強度をImage Jソフトウェアで数値化した。各測定用試料について、「照射前」の蛍光強度を1として、光照射後の蛍光強度の相対値を算出した。結果を図12に示す。
(3)結果
特異配列の二重鎖核酸に対しては、これまでの実施例の結果と同様に、可視光の照射後に蛍光強度が上昇した。これに対して、非特異配列の二重鎖核酸に対しては、可視光を照射しても蛍光強度に変化が全く見られなかった。このことから、光応答性核酸による二重鎖核酸の解離は、二重鎖核酸の塩基配列に非依存的に起こるのではなく、塩基配列に依存して起こることが明らかとなった。
実施例6: 光応答性核酸を用いた鎖交換反応の制御
本実施例では、光応答性核酸を用いて、光照射による二重鎖核酸の鎖交換反応を行うことができるか否かについて評価した。なお、本実施例の反応原理を、図13に示す。
(1)測定用試料の調製
(1-1)光応答性核酸
本実施例では、実施例1と同じ光応答性核酸(ジメチルアゾベンゼン修飾DNA)を用いた。
(1-2)二重鎖核酸
二重鎖核酸を、上記の光応答性核酸と同じ塩基配列を含む40塩基の未修飾一本鎖DNAと、消光物質を標識した一本鎖DNAとをアニールさせることによって作製した。未修飾一本鎖DNAと、5'末端をブラックホールクエンチャー(商標)2(BHQ2)で標識した一本鎖DNAとを日本バイオサービス株式会社に委託して合成した。これらの一本鎖DNAの配列を以下に示す。
5’- CTTTAAGAAGGAGATATACCTGAGTGATCTAGTGTACTTA -3’(配列番号3)
5'-BHQ2- TTAAGTACACTAGATCACTCAGGTATATCTCCTTCTTAAAG -3'(配列番号8)
二重鎖核酸は、次のようにして作製した。まず、塩化ナトリウム(0.15 M)およびジチオスレイトール(1mM)を含有する10 mMリン酸緩衝溶液(pH7)に、上記の未修飾DNAおよびBHQ2標識DNAを、それぞれの終濃度が90 nMおよび100 nMとなるように溶解させた。得られた溶液を85℃にまで加熱し、これを1分間に1℃下降する条件で4℃まで冷却して、未修飾DNAおよびBHQ2標識DNAからなる二重鎖核酸の溶液を得た。
(1-3)一本鎖交換核酸(第3の核酸)
一本鎖交換核酸として、20塩基の未修飾一本鎖DNAおよび3'末端をTexasRedで標識した20塩基の一本鎖DNAを用いた。これらの一本鎖DNAの塩基配列をつなげると、上記の配列番号3と同一の塩基配列となる。なお、標識一本鎖DNAは、ライフテクノロジーズジャパン株式会社に委託して合成した。また、20塩基の未修飾一本鎖DNAは、日本バイオサービス株式会社に委託して合成した。これらの一本鎖DNAの配列を以下に示す。
5'- CTTTAAGAAGGAGATATACC -3'(配列番号9)
5’- TGAGTGATCTAGTGTACTTA -TexasRed-3’(配列番号10)
本実施例では、二重鎖核酸の未修飾DNA鎖が、TexasRedで標識された一本鎖交換核酸と交換された場合、TexasRed由来のシグナルは、二重鎖核酸のBHQ2により消失する。よって、鎖交換反応が生じたか否かは、試料の蛍光強度を測定することにより評価することができる。
(1-4)測定用試料の調製
上記で得た二重鎖核酸の溶液をチューブに分注した。そして、これらのチューブに、一本鎖交換核酸(終濃度100 nM)に添加した。これらのうちの1つを、光応答性核酸およびPLL-g-Dexを含まない対照試料とした。そして、残りのチューブに光応答性核酸および/またはPLL-g-Dex(PLLの分子量8000、グラフト率90%)を適宜添加して、以下の3種の試料を調製した。
・光応答性核酸を含まないが、PLL-g-Dex(終濃度15.6μM)を含む試料
・PLL-g-Dexを含まないが、光応答性核酸(終濃度120 nM)を含む試料
・光応答性核酸(終濃度120 nM)およびPLL-g-Dex(終濃度15.6μM)を含む試料
そして、各チューブにミネラルオイルを滴下して、測定用試料を得た。
(2)二重鎖核酸の解離
測定用試料の入ったチューブを、サーモプレート(東海ヒット)上に設置したステンレス製チューブラックにて60℃に加熱した。各チューブを蛍光顕微鏡(BX51,オリンパス株式会社)のステージ上に設置し、水銀ランプ(超高圧UVランプUSH-1030L、オリンパス株式会社)を光源として、可視光フィルター(U-MNIBA3、オリンパス株式会社)を通過させた光(波長470〜495 nm)を各チューブに30秒間照射した。そして、TexasRed由来の蛍光画像を得た(これを「照射前」と呼ぶ)。そして、水銀ランプを光源として、可視光フィルターを通過させた光(波長470〜495 nm)を各チューブに30秒間照射した。可視光の照射から10分後、水銀ランプを光源として、紫外光フィルターを通過させた光(波長330〜385 nm)を各チューブに30秒間照射した。10分後、TexasRed由来の蛍光画像を得た(これを「照射後」と呼ぶ)。
得られた蛍光画像をtifファイルに変換し、蛍光シグナルの強度をImage Jソフトウェアで数値化した。各測定用試料について、「照射前」の蛍光強度を1として、光照射後の蛍光強度の相対値を算出した。結果を図14に示す。
(3)結果
対照試料およびPLL-g-Dexのみを含む試料では、光を照射しても、鎖交換反応が生じたことを示す蛍光強度の減少が見られなかった。これに対して、光応答性核酸を含む試料では、光照射によって蛍光強度が約97%にまで減少していた(図14中の「+アゾベンゼン修飾DNA」のバーを参照)。また、光応答性核酸およびPLL-g-Dexを含む試料では、光照射によって蛍光強度が約90%にまで減少していた(図14中の「+アゾベンゼン修飾DNA+PLL-g-Dex」のバーを参照)。したがって、ジメチルアゾベンゼンを結合させた光応答性核酸により、光照射依存的に二重鎖核酸の鎖交換反応の制御が可能であることがわかった。また、鎖交換の効率はPLL-g-Dexの添加により促進されることがわかった。なお、本実施例では、二重鎖核酸の交換対象鎖(未修飾DNA)の濃度と一本鎖交換核酸の濃度が同じである条件下で、鎖交換の効率が最大で約10%であった。この鎖交換の効率は、反応系における一本鎖交換核酸の濃度を上げることでさらに向上できると考えられる。
実施例7: 光応答性核酸を用いた二重鎖核酸の増幅反応
本実施例では、光応答性核酸を用いる鎖交換反応を利用して、核酸連結体の形成することによる二重鎖核酸の増幅反応を行うことができるか否かについて評価した。具体的には、次のような一連の反応について検討する。まず、鋳型となる一本鎖核酸に、2つのポリヌクレオチドを互いに隣接するように相補的に会合させる。そして、2つのポリヌクレオチドをライゲーションさせて核酸連結体を形成させることにより、二重鎖核酸を生成させる。そして、光応答性核酸を用いる鎖交換反応を利用することにより、生成した二重鎖核酸において核酸連結体と鋳型核酸鎖とを解離させて、2つのポリヌクレオチドによる核酸連結体の形成を繰り返す。なお、本実施例では、2つのポリヌクレオチドのライゲーションには、ホスホロチオート基とヨードチミジン基との化学反応を利用した化学ライゲーション法を用いた。
(1)測定用試料の調製
(1-1)光応答性核酸
本実施例では、実施例1と同じ光応答性核酸(ジメチルアゾベンゼン修飾DNA)を用いた。
(1-2)鋳型核酸
鋳型核酸として、上記の光応答性核酸の塩基配列に対して完全に相補的な塩基配列を有する40塩基の未修飾一本鎖DNAを日本バイオサービス株式会社に委託して合成した。この一本鎖DNAの配列を以下に示す。
5’- TAAGTACACTAGATCACTCAGGTATATCTCCTTCTTAAAG -3’(配列番号11)
(1-3)ポリヌクレオチド
ポリヌクレオチドとして、3'末端をホスホロチオート基で修飾した20塩基の一本鎖DNA(第1ポリヌクレオチド)と、5'末端をヨードチミジン基で修飾し、3'末端をTexasRedで標識した20塩基の一本鎖DNA(第2ポリヌクレオチド)を用いた。第1ポリヌクレオチドおよび第2ポリヌクレオチドの塩基配列をつなげると、上記の配列番号11の塩基配列に対して完全に相補的な塩基配列となる。なお、これらのポリヌクレオチドは、日本バイオサービス株式会社に委託して合成した。これらのポリヌクレオチドの配列を以下に示す。
第1ポリヌクレオチド:5'- CTTTAAGAAGGAGATATACC -ホスホロチオエート基-3'(配列番号12)
第2ポリヌクレオチド:5’-ヨードチミジン基- TGAGTGATCTAGTGTACTTA -TexasRed-3’(配列番号13)
本実施例では、鋳型核酸に会合した第1ポリヌクレオチドおよび第2ポリヌクレオチドが連結して核酸連結体となった場合、TexasRedで標識された40塩基の核酸鎖が生じることとなる。したがって、本実施例では、核酸増幅反応が生じたか否かは、40塩基の核酸鎖の蛍光強度を測定することにより評価することができる。
(1-4)測定用試料の調製
塩化ナトリウム(0.15 M)およびジチオスレイトール(1mM)を含有する10 mMリン酸緩衝溶液(pH7)に、光応答性核酸(終濃度0.75 nM)、鋳型核酸(終濃度1nM)およびPLL-g-Dex(PLLの分子量8000、グラフト率90%、終濃度15.6μM)を溶解させた。得られた溶液を、石英ガラス製8連マイクロウェル(島津製作所)に分注し、サーモプレート(東海ヒット)上で60℃に加熱した。なお、対照として、光応答性核酸を含まない溶液も調製して、同様に8連マイクロウェルに分注し60℃に加熱した。そして、各ウェルに、第1ポリヌクレオチドおよび第2ポリヌクレオチドをそれぞれ終濃度1nMとなるように添加して、測定用試料を調製した。
(2)増幅反応
ポリヌクレオチドを添加した5分後に、水銀ランプ(超高圧UVランプUSH-1030L、オリンパス株式会社)を光源として、紫外光フィルター(U-MWU2、オリンパス株式会社)を通過させた光(波長330〜385 nm)を1分間照射した。紫外光の照射から30分後、水銀ランプを光源として、可視光フィルター(U-MNIBA3、オリンパス株式会社)を通過させた光(波長470〜495 nm)を1分間照射した。なお、比較のために、この一連の光照射を計5回行った試料および光照射を全く行わなかった試料を用意した。
各ウェルから試料を10μLずつ取り出し、これらに1M ポリビニル硫酸カリウム溶液を最終濃度0.1 Mとなるように添加した。そして、4℃で90分間静置した。さらに、これらに、等量のホルムアミドローディング溶液(95%ホルムアミド、NaOH、2%ブロモフェノールブルー)を添加し、95℃で5分間加熱して、電気泳動用サンプルを得た。得られたサンプルを4%尿素含有20%アクリルアミドゲルで電気泳動した(300V、30分間)。そして、モレキュラーイメージャー(バイオラッド社)で、電気泳動後のゲルの蛍光画像を取得した。得られた蛍光画像をtifファイルに変換し、蛍光シグナルの強度をImage Jソフトウェアで数値化した。そして、それぞれの光照射サイクルの回数ごとに、光応答性核酸を含まない試料の蛍光強度を1として、光応答性核酸を含む試料の蛍光強度の相対値を算出した。ゲルの蛍光画像および蛍光強度のグラフを、図15に示す。
(3)結果
光応答性核酸を含まない試料では、ポリヌクレオチドが鋳型核酸に会合することにより、光照射非依存的に核酸連結体が形成されていた。これに対して、光応答性核酸を含む試料では、光を照射する前はポリヌクレオチドの連結体の形成反応が起こっていないが、紫外光および可視光の照射を一度行うと、ポリヌクレオチドの連結体の形成反応が起こることが確認できた。さらに、紫外光および可視光の照射サイクルを4回繰り返すことにより、形成される連結体の量が増加したことが確認できた。したがって、光応答性核酸を用いることにより、光照射回数に依存した二重鎖核酸の増幅反応を行うことができることが明らかとなった。

Claims (8)

  1. 以下の(1)〜(4)の工程:
    (1)一本鎖の標的核酸に第1ポリヌクレオチドを相補的に会合させ、前記標的核酸の前記第1ポリヌクレオチドが会合する領域に隣接する領域に第2ポリヌクレオチドを相補的に会合させる工程;
    (2)前記第1ポリヌクレオチドと第2ポリヌクレオチドを連結させる工程;
    (3)前記標的核酸と、前記第1ポリヌクレオチドおよび第2ポリヌクレオチドが連結した連結鎖との二重鎖核酸に、第1の波長の光の照射によって前記標的核酸に会合可能な形態にした光応答性核酸を接触させることにより、前記標的核酸と前記光応答性核酸とを相補的に会合させ、前記連結鎖を解離させる工程;
    (4)前記第1の波長とは異なる第2の波長の光の照射によって前記光応答性核酸を前記標的核酸と会合できない形態にすることにより、前記標的核酸を前記光応答性核酸から解離させ、解離した標的核酸を工程(1)における一本鎖の標的核酸とする工程
    を実質的に等温条件下で繰り返すことにより核酸を増幅する方法であって、
    前記光応答性核酸が、アゾベンゼンおよびその誘導体から選択される少なくとも1種を1つ以上結合させた核酸であり、
    前記光応答性核酸の融解温度が、前記光応答性核酸と同一の塩基配列を有し、且つアゾベンゼンおよびその誘導体のいずれも含まない核酸の融解温度よりも高い
    核酸の増幅方法。
  2. 前記第1のポリヌクレオチドおよび前記第2のポリヌクレオチドのうち少なくとも一方に標識物質が結合しており、前記連結鎖の標識物質を検出することにより、前記連結鎖の増幅を確認する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
  3. 前記第1の波長の光を照射し、前記アゾベンゼンおよびその誘導体から選択される少なくとも1種を、シス体からトランス体に変形させることにより、前記光応答性核酸を前記標的核酸に会合可能な形態にする、請求項1又は2に記載の方法。
  4. 前記第2の波長の光を照射し、前記アゾベンゼンおよびその誘導体から選択される少なくとも1種を、トランス体からシス体に変形させることにより、前記光応答性核酸を前記標的核酸に会合できない形態にする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
  5. アゾベンゼンの誘導体が、ジメチルアゾベンゼンである請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
  6. ポリLリジン−デキストラン共重合体(PLL-g-Dex)の存在下で行われる請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
  7. 前記光応答性核酸が、アゾベンゼンおよびその誘導体から選択される少なくとも1種を、2〜10残基に1つの割合で結合させた核酸である請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
  8. 前記光応答性核酸が、前記標的核酸の塩基配列に対して完全に相補的な塩基配列を有する請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
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