JP5842138B2 - SiC基板のエッチング方法 - Google Patents

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本発明は、エッチングガスとして六フッ化硫黄(SF)を使用した炭化珪素(SiC)基板のドライエッチング方法に関する。
反応ガスとして六フッ化硫黄(SF)を含むエッチングガスを使用した反応性イオンエッチング(RIE; Reactive Ion Etching)により、二酸化珪素(SiO)のマスクが形成された炭化珪素(SiC)基板にトレンチを形成する技術が従来より種々知られている(例えば特許文献1参照)。
特開2007−324503号公報
しかしながら、SiC基板上にSiOのマスク、という構成においては、基板を構成する材料であるSiCが加工し難い材料であることもあり、エッチングにより得られる選択比(基板のエッチングレート/マスクのエッチングレート)は低くなり、それに伴い基板形状の加工精度も低くなるといった課題がある。
従って、本発明の目的は、上記問題を解決することにあって、SiC基板に対するドライエッチングにおいて、選択比を向上させつつ、基板形状の加工精度を向上させることにある。
上記目的を達成するために、本発明は以下のように構成する。
本発明の第1態様によれば、SiOによるマスクパターンが形成されたSiC基板に対して、少なくともSFガス、Oガス、SiFガスを含むエッチングガスを使用して生成されるプラズマにより、プラズマエッチング処理を行うSiC基板のエッチング方法であって、
SFガス、Oガス、SiFガスの総量に対するSiFガスの添加割合が18.9%以上、40%以下である、SiC基板のエッチング方法を提供する。
本発明の第2態様によれば、SFガス、Oガス、SiFガスの総量に対するSiFガスの添加割合が25%以上40%以下である、第1態様に記載のSiC基板のエッチング方法を提供する。
本発明では、SiC基板に対するドライエッチングにおいて、少なくともSFガス、酸素(O)ガス、四フッ化珪素(SiF)ガスを含むエッチングガスを用いるとともに、SFガス、Oガス、SiFガスの総量に対するSiFガスの添加割合を18.9%以上、40%以下とすることにより、選択比を向上させつつ、基板形状の加工精度を向上させることができる。
ドライエッチング装置の模式図 SiC基板の模式的な断面図 比較例のドライエッチング方法によるSiC基板の加工形状を示す断面図 実験例におけるSiFの割合と選択比の関係を示す分布図 実験例におけるSiFの割合とCD shiftの関係を示す図 実験例における選択比とCD shiftの関係を示す図 実施例のドライエッチング方法によるSiC基板の加工形状を示す断面図
以下に、本発明にかかる実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明のドライエッチング方法を実行可能な誘導結合プラズマ(ICP;Inductively Coupled Plasma)型のドライエッチング装置1の一例を示す。
ドライエッチング装置1は、基板2(図2を併せて参照)を搬入出するための図示しない出入口を備えるチャンバ(真空チャンバ)3を備える。チャンバ3のガス導入口3aにはエッチングガス源4が接続され、排気口3bにはチャンバ3内を真空排気するための真空ポンプを含む減圧機構5が接続されている。チャンバ3の頂部は誘電体壁6で閉鎖され、その上方には上部電極としてのアンテナ(プラズマ源)7が配置されている。アンテナ7は第1の高周波電源8Aに電気的に接続されている。一方、チャンバ3内の下部側には、基板2が載置されて保持されるステージ11が配置されている。ステージ11は金属ブロック12上に配置され、金属ブロック12はベース部13内に収容されている。金属ブロック12は第2の高周波電源部8Bに電気的に接続されて下部電極として機能する。
ステージ11の冷却装置14は、金属ブロック12内に形成された冷媒流路12aと、温調された冷媒を冷媒流路12a中で循環させる冷媒循環装置15とを備える。ステージ11には、基板2を静電吸着するための静電吸着用電極16が備えられている。この静電吸着用電極16には、駆動電源17が電気的に接続されている。ステージ11において、基板2が載置される位置には、図示しない伝熱ガスの供給孔が設けられている。これらの供給孔は伝熱ガス源18に接続されている。
コントローラ19は、第1及び第2の高周波電源8A、8B、エッチングガス源4、伝熱ガス源18、減圧機構5、冷却装置14、及び駆動電源17を含むドライエッチング装置1を構成する要素の動作を制御する。
図2を参照すると、基板2は炭化珪素(SiC)からなる(以下、SiC基板という)。SiC基板2の表面にはトレンチ2a(図7参照)を形成するための開口を備えた二酸化珪素(SiO)膜からなるマスク21を設けている。
このドライエッチング装置1を使用したドライエッチング方法の概要は以下の通りである。
まず、SiC基板2をチャンバ3内に搬入してステージ11の上面に載置する。次に、静電吸着用電極16に対して駆動電源17から直流電圧を印加し、SiC基板2をステージ11に静電吸着させる。続いて、ステージ11の上面に載置されたSiC基板2の下面に伝熱ガスとしてヘリウム(He)を伝熱ガス源18から供給して充填する。その後、エッチングガス源4からチャンバ3内にエッチングガスが供給され、減圧機構5により減圧されたチャンバ3内を所定圧力に維持する。続いて、高周波電源8Aから上部電極としてのアンテナ7に高周波電圧を印加してチャンバ3内にプラズマを発生させると共に、高周波電源8Bにより下部電極としての金属ブロック12に高周波電力(バイアス電力)を印加して、ステージ11上のSiC基板2にバイアスが印加される。チャンバ3内に発生するプラズマにより基板2がエッチングされる。
エッチング中は、冷媒循環装置15によって冷媒流路12a中で冷媒を循環させて金属ブロック12を冷却する。SiC基板2で発生する熱は、伝熱ガス(前述のように本実施の形態ではヘリウム)を介した熱伝導によりステージ11に伝わり、さらに金属ブロック12に伝わる。その結果、金属ブロック12を冷却することで、ステージ11上に保持されたSiC基板2は、ステージ11を介して冷却される。
次に、本実施の形態のエッチング方法について説明する前に、本発明の比較例におけるSFガスとOガスとを混合したエッチングガスによるドライエッチングについて説明する。図3は、SFガスとOガスとを含むエッチングガスを用いたドライエッチングによるSiC基板22の加工形状を示す断面図である。図3に示されるように、比較例のドライエッチング方法によれば、SiC基板22が深さ方向(厚み方向)にエッチングされることによりSiC基板22の表面側にトレンチ22aが形成されるとともに、それと同時にSiC基板22の表面側に設けられたマスク41も深さ方向に大きくエッチングされる。エッチング前のマスク41の厚みH1は、エッチング後に厚みH2まで減少している。このように比較例のドライエッチング方法によれば、マスク41の深さ方向のエッチングが大きく進行するため選択比は低くなっている。
また、マスク41の深さ方向のエッチング量が大きいことによりマスク41の厚みが薄くなると、トレンチ22aの入口部分の近傍におけるエッチング作用が活発になるため、マスク41は幅方向(SiC基板22の表面沿いの方向)にも削られやすくなる。図3に示す比較例では、エッチング前のマスク41の開口の幅D1がエッチング後には幅D2となっており、大きく広がっていることが分かる。このようにマスク41が深さ方向だけでなく幅方向にも大きく削られることにより、マスク41間の下方に形成されたトレンチ22aも幅方向に広がりやすい。図3に示すトレンチ22aは、トレンチ22aの底部の寸法と入口部分の寸法が略同じである所望のストレート形状ではなく、底部の寸法よりも入口部分の寸法の方が大幅に大きいラッパ形状となっている。このように比較例のドライエッチング方法によれば、所望のSiC基板22の加工形状(トレンチ22a)を得ることが困難である。
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、上述した選択比の低下を招くマスク41のエッチングが、SiC基板22のエッチングにより生じるCOによって促進されているという知見を見出した。これに関してドライエッチング中における反応式を以下の化1、2に示す。
Figure 0005842138
Figure 0005842138
化1はSiC基板22にて生じるエッチングの反応式を示し、化2はマスク41(SiO)にて生じるエッチングの反応式を示す。上記化1、2より、比較例のエッチング方法によれば、SiC基板22のエッチングが進行する一方で、SiC基板22のエッチング時に生じたCOによってマスク41のエッチングが促進されており、これにより選択比が低くなっているということが分かる。
上記知見に基づき本発明者らは、SFガスおよびOガスを含むエッチングガスを用いたドライエッチングにおいて、COによる影響を抑制することを目的として、エッチングガスにSiFガスを添加したものを使用するとともに、SiFガスの添加割合を種々変化させた条件にてSiC基板のドライエッチングを実行する実験を行った。以下、この実験について説明する。
以下の表1に示すように、実験例No.1−12で示す種々のエッチング条件でSiC基板のドライエッチングを実行した。
Figure 0005842138
実験No.1〜6が比較例に相当し、実験No.7〜12が本発明の実施例に相当する。実験No.1〜12の具体的なエッチング条件は以下の通りである。
SFガス、Oガス、SiFガスの総量に対するSiFガスの添加割合(以降、SiFの割合とする)は、実験No.1,2が0.0%、実験No.3が4.8%、実験No.4が9.1%、実験No.5が12.5%、実験No.6が14.3%、実験No.7が18.9%、実験No.8が25.0%、実験No.9,10が33.3%、実験No.11が36.2%、実験No.12が40.0%である。
エッチングガスの組成は以下の通りである。実験No.1,2はSFガス、Oガス、及びArガスの混合ガスである。実験No.3〜12はSFガス、Oガス、SiFガス、及びArガスの混合ガスである。
チャンバ3内の圧力(絶対圧力表記)は実験No.1〜12で4Paである。
アンテナ7に供給するパワーは実験No.1〜12で1200Wである。
下部電極としての金属ブロック12に供給するバイアスのパワーは実験No.1〜12で350Wである。
実験No.1〜12について、SiC(基板)のエッチングレート、SiO(のマスク)のエッチングレート、選択比、及び寸法シフト(CD shift;Critical Dimension shift)を測定した。
選択比は、SiOのマスクのエッチングレートに対するSiC基板のエッチングレートの比である。選択比が大きいことは、精度の良好なエッチングが可能であることを示す。
図3を参照すると、実線はエッチング加工後のSiC基板22の外形を示し、点線はエッチング加工前のSiC基板22の外形を示す。図3において、CD shiftはエッチング加工により広がったマスク41の開口の幅方向の寸法差分である。すなわち、CD shiftはD2(エッチング後のマスク41の開口の幅)−D1(エッチング前のマスク41の開口の幅)で表される。CD shiftが小さいことは、エッチング加工による基板形状の加工精度が良好であることを示す。
図4〜6に、主な項目についてデータを成立した分布図を示す。
図4および図5は、SiFの割合に対する、選択比とCD shiftを示す。図4より、高い選択比、すなわち実験No.1,2(比較例)における選択比の約2倍以上の選択比(例えば10以上)は、SiFの割合が18.9%(20%)以上で実現することができる。次に、図5より、例えば100以下のCD shift、つまり良好な基板形状の加工精度は、SiFの割合が18.9%(20%)以上で実現することができる。さらにSiFの割合が25%以上であれば選択比がより大きくなるとともに、CD shiftはより小さくなる傾向がある。一方で、SiFの割合が40%を超えると、SiC基板のエッチングに寄与するSFガス及びOガスの作用が弱くなって、SiC基板のエッチングレートが低下し、実用的ではない。以上より、選択比を向上させつつ、CD shiftを小さくして基板形状の加工精度を向上させるには、SiFの割合は18.9%(20%)以上、40%以下が好ましく、より好ましくは25%以上、40%以下である。
図6は、上述した選択比とCD shiftとの関係を示す。図6からも分かるように、SiFの割合を調整して選択比を向上させることによってCD shiftも小さくなっている。
図7は、本発明の実施例における、エッチング後のSiC基板2の加工形状の概略断面図を示す。図7に示す本実施例(実験No.8)と、図3に示す比較例(実験No.1)とを比較すると、両例ともに同じ厚みH1のマスクを用いているにもかかわらず、略同じ深さのトレンチ2a、22aをエッチングによって形成したときに、図7に示す本実施例におけるマスク21の厚みH3の方が、図3に示す比較例におけるマスク41の厚みH2よりも大きくなっている。すなわち選択比が大きくなっている。さらに、比較例においては図3に示すように、マスク41が深さ方向だけでなく幅方向にも大きく削られCD shiftが大きくなっているのに対し、本実施例においては図7に示すように、マスク21は幅方向にあまり削られておらず、CD shiftは小さくなっている(エッチング後のマスク21の開口の幅はD3(<D2))。
ここで、SiFガスを添加することによる選択比向上の原理について説明する。
上述したように、本発明者らは比較例のドライエッチング方法における選択比低下の一因として、SiC基板のエッチングにより生じたCOによってSiOのマスクのエッチングが促進されることを見出している。そこで、本発明者らは、マスクのエッチングに寄与するCOの反応性を抑制するために、SFガスおよびOガスを含むエッチングガス中にSiFガスを添加することにより、チャンバ内におけるSiFの分圧を増加させることで、COの分圧を相対的に低下させている。COの分圧の低下により、マスク21に対するCOのエッチング作用が弱くなるため、マスク21のエッチングレートを低下させることができ、結果的に選択比を向上させることができる。
さらに、エッチングガス中にSiFガスを添加した場合には以下に示す反応が促進される(化3)。
Figure 0005842138
化3に示すように、エッチングガス中にSiFガスを添加することで新たにSiOが生成される。このようにマスク21と同じ成分であるSiO量の増加により、マスク21のエッチングを抑制することができる。このようにして同様に選択比を向上させることができる。
本実施の形態にかかるSiC基板2のドライエッチング方法によれば、エッチングガス中にSiFを添加することで、マスク21のエッチングに寄与するCOの分圧を低下させる作用、およびマスク21と同じ成分であるSiO量を増加させる作用を併せ持ち、選択比を相乗的に向上させている。
特に、SFガスおよびOガスを含むエッチングガス中にSiFガスを添加する際に、SFガス、Oガス、SiFガスの総量に対するSiFガスの添加割合を18.9%(20%)〜40%、好ましくは25%〜40%とすることで、選択比を向上させつつ、基板の加工形状精度を向上させることができる。
また、図7に示すように、本実施の形態にかかるSiC基板2のドライエッチング方法では、エッチング時におけるマスク21の厚みの変化量も小さいので、厚みの薄いマスク21を用いたエッチングを実施することができる。これにより、マスク21を生成するための成膜にかかる時間を短縮し、生産性を向上させることができる。
なお、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その他種々の態様で実施できる。
なお、上記様々な実施の形態のうちの任意の実施の形態を適宜組み合わせることにより、それぞれの有する効果を奏するようにすることができる。
本発明は、SiOによるマスクパターンが形成されたSiC基板に対するドライエッチング方法に適用することができる。
1 ドライエッチング装置
2 SiC基板
2a トレンチ
3 チャンバ
3a ガス導入口
3b 排気口
4 エッチングガス源
5 減圧機構
6 誘電体壁
7 アンテナ
8A,8B 高周波電源
11 ステージ
12 金属ブロック

Claims (2)

  1. SiOによるマスクパターンが形成されたSiC基板に対して、少なくともSFガス、Oガス、SiFガスを含むエッチングガスを使用して生成されるプラズマにより、プラズマエッチング処理を行う、SiC基板のエッチング方法であって、
    SFガス、Oガス、SiFガスの総量に対するSiFガスの添加割合が18.9%以上、40%以下である、SiC基板のエッチング方法。
  2. SFガス、Oガス、SiFガスの総量に対するSiFガスの添加割合が25%以上40%以下である、請求項1に記載のSiC基板のエッチング方法。
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